(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】フリーホイーリング要素
(51)【国際特許分類】
F16D 41/07 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
F16D41/07 Z
F16D41/07 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525349
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 DE2020100914
(87)【国際公開番号】W WO2021083458
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】202019106004.2
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506320738
【氏名又は名称】パウル ミュラー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー ウンターネーメンスベタイリグンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】エルバッハー マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ラトケ アンドレアス
(57)【要約】
本発明は、保持器(10)と、複数のクランプ体(20)と、複数の転動体(30)と、を備えるフリーホイール要素(1)に関する。クランプ体(20)の各々は、保持器(10)に形成された関連するクランプ体ポケット(11)に受容され、転動体(30)の各々は、保持器(10)に形成された関連する転動体ポケット(12)に受容され、保持器(10)は、クランプ体(20)及び転動体(30)よりも高い弾性を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持器(10)と、
複数のスプラグ(20)であって、該スプラグ(20)の各々が、前記保持器(10)に形成されたそれぞれのスプラグポケット(11)に収容されている複数のスプラグ(20)と、
複数の転動体(30)であって、該転動体(30)の各々が、前記保持器(10)に形成された、それぞれの転動体ポケット(12)に収容されている複数の転動体(30)と、
を有するフリーホイーリング要素(1)において、
前記保持器(10)は、前記スプラグ(20)及び前記転動体(30)よりも高いレベルの弾性を有する、フリーホイーリング要素(1)。
【請求項2】
前記転動体ポケット(12)は、前記保持器(10)の円周に沿って等距離に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のフリーホイーリング要素。
【請求項3】
奇数個の転動体ポケット(12)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のフリーホイーリング要素。
【請求項4】
ちょうど3個、5個、又は7個の転動体ポケット(12)が形成されていることを特徴とする、請求項3に記載のフリーホイーリング要素。
【請求項5】
複数のスプラグポケット(11)が、隣接する転動体ポケット(12)の間で、前記保持器(10)の円周に沿って形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフリーホイーリング要素。
【請求項6】
前記転動体(30)は、前記転動体ポケット(12)に形状適合的に、特にラッチ、又はスナップフィット接続の方法で収容されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフリーホイーリング要素。
【請求項7】
前記スプラグ(20)は、前記スプラグポケット(11)に形状適合的に、特にラッチ、又はスナップフィット接続の方法で収容されることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフリーホイーリング要素。
【請求項8】
前記保持器(10)は、ポリマー材料、特にポリアミドからなることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のフリーホイーリング要素。
【請求項9】
前記ポリマー材料は充填材を含み、特に繊維及び/又はボールを含むことを特徴とする、請求項8に記載のフリーホイーリング要素。
【請求項10】
前記保持器(10)は、ガラス繊維強化ポリアミドからなり、特にPA 66 GF 25からなることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のフリーホイーリング要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーホイーリング要素に関する。
【背景技術】
【0002】
フリーホイーリング要素は、例えば、一方向に、適合した力によってトルクを伝達及び/又は支持し、その反対方向に空転を許容とする方向クラッチに使用される。スプラグ型クラッチの場合、スプラグが適合した力、すなわち摩擦適合によってトルクを伝達しているときには、いわゆるクランプ位置にあり、空転を許容しているときには、いわゆるフリーホイーリング位置にある。
【0003】
スプラグに加えて、従来のスプラグクラッチは、特に、保持器(ケージ)を有し、この保持器の中で、スプラグがポケットに収容されている。このようなスプラグクラッチは、特許文献1に開示されている。先行技術のスプラグクラッチにおける欠点は、従来のフリーホイールには軸受け特性(支承性)がなく、したがって耐荷重性がないため、追加の取り付けが必要になることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐荷重性が統合されたフリーホイーリング要素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有するフリーホイーリング要素によって達成される。フリーホイールの有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明によるフリーホイーリング要素は、保持器(ケージ)と、複数のスプラグと、複数の転動体とを備える。スプラグの各々は、保持器に形成されたそれぞれのスプラグポケットに収容されている。転動体の各々は、保持器に形成されたそれぞれの転動体ポケットに収容されている。保持器は、スプラグ及び転動体よりも高いレベルの弾性を有している。
【0008】
転動体を設けることで、耐荷重性をフリーホイーリング要素に統合することができる。さらに、スプラグや転動体と比較してより高いレベルの弾性は、保持器が弾力性のある要素として機能することを意味する。そうでなければ、バネ荷重要素の形で必要とされる金属バネを省くことができる。また、あるレベルの弾性のある保持器材料を選択することで、スプラグのばね荷重挙動及び/又は転動体の位置安定性を広い範囲で調整することができる。
【0009】
スプラグ及び転動体は、好ましくは、金属材料、特に鋼材から製造される。したがって、保持器は、金属材料の弾性よりも大きいレベルの弾性を有する。しかし、例えば、セラミック材料で作られた転動体を使用することもできる。この場合、保持器は、使用されている金属材料及びセラミック材料の弾性よりも大きいレベルの弾性を有する。
【0010】
転動体ポケット(したがって、これらの転動体ポケットに収容される転動体)は、保持器の円周上に等距離に配置されることが好ましい。これにより、円周に沿って均一な支持を実現し、それに対応して均一な方法でフリーホイールの耐荷重性を高めることができる。
【0011】
保持器の円周に沿って奇数個の転動体ポケットを設けることが有利であることが判明している。ここでは、等距離に配置された3個、5個、又は7個の転動体ポケットを設けることが特に有利である。転動体の数が多いほど耐荷重性が大きくなるが、その分、要素のフリーホイール特性が犠牲になる。
【0012】
有利な実施形態では、転動体は転動体ポケットに形状適合的(フォームフィッティング)に収容され、特にラッチ式、又はスナップフィット接続の方法で収容される。一方では、これにより、転動体の取り付け及び取り外しが容易になり、他方では、転動体の確実な取り付けが達成される。保持器材料の弾性特性により、転動体をポケットにラッチ又はスナップフィットするために、転動体ポケットを弾性的に拡張できる。
【0013】
有利な実施形態では、保持器は、ポリマー材料、特にポリアミドからなる。ポリマー材料は、好ましくは、特に繊維及び/又はボールの形態の充填材を含む。ガラス繊維強化ポリアミド、特に好ましくはPA 66 GF 25(ガラス繊維分率25%のポリアミド66)は、保持器に特に適した材料である。転動体ポケット及び/又はスプラグポケットの周りの保持器の領域のみ、及び保持器全体を前述の材料で構成することが可能である。前述の材料を使用することにより、保持器の特に有利な弾力的な挙動を達成できる。また、材料及び/又は塩基性ポリマー物質と充填材との混合比を選択することにより、保持器の弾性レベル及び復元挙動を適合させることも可能である。
【0014】
本発明は、図中の例示的な実施形態を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1のフリーホイーリング要素の正面図である。
【
図3】
図2のフリーホイーリング要素の側面図である。
【
図4】
図3の断面A-Aに沿って取られた断面図である。
【
図5】
図4に示すフリーホイーリング要素の取り付け状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図に示されたフリーホイーリング要素1は、本質的に環状の設計であり、ポリマー材料(例えば、25%のガラス繊維分率を有するポリアミド66)で作られた保持器(ケージ)10を有する。保持器10には、複数のスプラグポケット11と、合計3つの転動体ポケット12とが形成されている。分かりやすくするために、何度も登場する全ての要素に、図中では別々の参照符号を付していない。したがって、例えば、
図4では、単に1つのスプラグポケット11に参照符号が付されている。ここで、スプラグポケット11及び転動体ポケット12は、保持器10の開口部及び/又は孔を構成している。言い換えれば、保持器10は、軸方向に延びる第1及び第2横材13、14と、環状の終端フランジ15、16も有している。それぞれ2つの隣接する横材13、14と2つの終端フランジ15、16との間の空間容積は、それぞれスプラグポケット11と転動体ポケット12を形成している。横材13は、それぞれ本質的に立方体であり、フリーホイーリング要素1の軸方向において凸状の断面を有している。フリーホイーリング要素1の円周方向において、2つの転動体ポケット12の間に、それぞれ複数のスプラグポケット11が配置されている。
【0017】
それぞれのスプラグ20は、スプラグポケット11のそれぞれに収容される。ここでのスプラグ20と保持器10との間の接続は、スナップフィット接続の形態で設計されている。スプラグ20は、鋼材から製造される。
【0018】
それぞれの転動体30は、転動体ポケット12のそれぞれに収容される。ここで転動体30は、円筒型ころの形態で設計され、鋼材から製造される。ここでの転動体30と保持器10との間の接続も同様に、スナップフィット接続の形態で設計されている。ここでの転動体ポケット12は、転動体30を2つの側面から囲む(オーバーラップする)ように具体化されており、したがって、ローラ状の転動体30は保持器10に保持される。同時にそのオーバーラップ量は、保持器材料の弾性特性が、単純な手動力を伴って転動体ポケット12を弾性的に拡張できる程度に十分小さく選択されるので、転動体30が、転動体ポケット12内にクリック/スナップフィットされる。
【0019】
転動体ポケット12は、スプラグポケット11よりも円周方向に広くなるように設計されている。すなわち、第1横材13は、第2横材14よりも互いに小さい距離にある。
【0020】
保持器10の弾性レベル(特に、横材13、14の弾性レベル)は、スプラグ20及び転動体30の弾性レベルよりも高い。横材13、14のこのより高いレベルの弾性は、特に、スプラグ20及び転動体30が製造される材料よりも高い弾性係数を有する材料から製造される保持器10(又は、少なくとも横材13、14)によって達成される。
【0021】
図5は、内側の第1の(完全)円筒形部品50と、外側の第2の中空円筒形部品60との間の隙間40に取り付けられているフリーホイーリング要素1の一例を示している。ここでの部品50、60の寸法及び形状は、純粋に例示であると見なされるべきである。第1部品50は、第2部品60に対して同軸に配置されている。フリーホイーリング要素1は、隙間40内に配置されている。クランプ位置では、スプラグ20は、第1部品50及び第2部品60と摩擦による嵌合接続を形成する。これに対し、フリーホイール位置では、スプラグ20は、第1部品50が第2部品60に対して相対的に回転することを可能にする。横材13の各々は、ばね荷重面を有する。フリーホイール位置では、隣接するスプラグ20が、このばね荷重面と接触している。より正確には、フリーホイール位置では、横材13のばね荷重面と隣接するスプラグ20との間に、表面積接触及び/又はオーバーラップが形成される。これに対し、クランプ位置では、スプラグ20は横材13のばね荷重面と接触していない。
【0022】
クランプ位置とフリーホイーリング位置の両方で、転動体30は、第1部品50及び第2部品60と接触しており、2つの部品50、60の低摩擦取り付けを提供する。このように、フリーホイーリング要素1は、高い耐荷重性を有し、同時に、方向依存型クラッチとして機能できる。
【0023】
したがって、図に示されたフリーホイーリング要素1は、保持器10と、複数のスプラグ20と、複数の転動体30とを有する。スプラグ20及び転動体30は、ラッチ接続又はスナップフィット接続によって、それぞれスプラグポケット11及び転動体ポケット12に収容される。保持器10は、スプラグ20及び転動体30よりも高いレベルの弾性を有する。合計3つの転動体ポケット12は、保持器10の円周上に等距離に配置(分布)されている。
【符号の説明】
【0024】
1 フリーホイーリング要素
10 保持器
11 スプラグポケット
12 転動体ポケット
13 第1横材
14 第2横材
15 第1終端フランジ
16 第2終端フランジ
20 スプラグ
30 転動体
40 隙間
50 円筒形部品
60 中空円筒形部品
【国際調査報告】