(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】放射能汚染された材料を除染するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20221222BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G21F9/28 521Z
G21F9/06 591
G21F9/06 561
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547378
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2020040333
(87)【国際公開番号】W WO2021066205
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522141744
【氏名又は名称】ハイエネルギー技術IPホールディング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】230130764
【氏名又は名称】榎本 啓▲祐▼
(72)【発明者】
【氏名】西間木 潤
(72)【発明者】
【氏名】古谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博之
(72)【発明者】
【氏名】古谷 徹矢
(57)【要約】
本発明は、放射能汚染された材料を除染するためのプロセスであり、このプロセスは、a)放射能汚染された材料を除染槽(200)内に提供するステップと、b)第2リアクタチャンバ(103)に接続された第1リアクタチャンバ(102)を含むリアクタユニット(107)を設けるステップと、c)ph>7の水を第1リアクタチャンバ(102)内で電気分解して(H3O2
-)nを発生させるステップと、d)第2リアクタチャンバ(103)の電解水内にナノバブルを発生させるステップと、e)任意選択的にステップc)及びd)を繰り返すステップと、f)ナノバブルを含む水に圧力を加えるステップと、g)ナノバブルを含む加圧水を、α線発生器及び放射能汚染された材料を収容している除染槽(200)に移送するステップと、h)ナノバブルを、α線発生器により放出されるα粒子により帯電させるステップと、i)帯電されたナノバブルを、除染槽(200)内の放射能汚染された材料に接触させるステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射能汚染された材料を除染するためのプロセスであって、
a)前記放射能汚染された材料を除染槽(200)内に提供するステップと、
b)第2リアクタチャンバ(103)に接続された第1リアクタチャンバ(102)を含むリアクタユニット(107)を設けるステップと、
c)ph>7の水を前記第1リアクタチャンバ(102)内で電気分解して(H
3O
2
-)
nを発生させるステップと、
d)前記第2リアクタチャンバ(103)の電解水内にナノバブルを発生させるステップと、
e)任意選択的にステップc)及びd)を繰り返すステップと、
f)ナノバブルを含む水に圧力を加えるステップと、
g)ナノバブルを含む前記加圧された水を、α線発生器及び前記放射能汚染された材料を収容している除染槽(200)に移送するステップと、
h)前記ナノバブルを、前記α線発生器により放出されるα粒子により帯電させるステップと、
i)前記帯電されたナノバブルを、前記除染槽(200)内の前記放射能汚染された材料に接触させるステップと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記ステップb~d及びf~hが以下のように、すなわち、
b)第1リアクタチャンバ(102)に接続されたフィルタチャンバ(130)を含むリアクタユニット(107)を設けるステップと、
c)水を前記フィルタチャンバ(130)内でイオン化、標準化及び水素化するステップと、
d)ph>7の水を前記第1リアクタチャンバ(102)内で電気分解して(H
3O
2
-)
nを発生させるステップと、
f)(H
3O
2
-)
nを含む水に圧力を加えるステップと、
g)(H
3O
2
-)
nを含む前記加圧された水を、α線発生器及び前記放射能汚染された材料を収容している除染槽(200)に移送するステップと、
h)前記除染槽(200)内でナノバブルを発生させ、当該ナノバブルを、前記α線発生器により放出されるα粒子により帯電させるステップと、により置き換えられることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
放射能汚染された材料の、請求項1~11の一項に記載の除染プロセスを行うための装置であって、
i 除染タンク(201)と、
ii リアクタユニット(107)と、
iii 中和設備(300)と、
iv パイプ(212)と、を備えた、装置。
【請求項18】
前記中和設備(300)が、
i 液体チャンバ(310)と、
ii ガスチャンバ(320)と、
iii スパイラルチャンバ(330)と、
iv ノズル(340)と、を含む、請求項15~17の一項に記載の装置。
【請求項25】
前記リアクタユニット(107)が、
i 電極(105)を含む第1リアクタチャンバ(102)と、
ii スパイラル(104)を含む第2リアクタチャンバ(103)と、を備えている、請求項15~24の一項に記載の装置。
【請求項26】
前記リアクタユニット(107)が、
i フィルタチャンバ(130)と、
ii 電極(105)を含む第1リアクタチャンバ(102)と、を備えている、請求項15~24の一項に記載の装置。
【請求項32】
前記リアクタユニット(107)が複数のフィルタチャンバ(130)を含み、当該フィルタチャンバ(130)が、
i イオン交換フィルタ(130’)、及び/又は、
ii ストーンフィルタ(130’’)、及び/又は
iii 黒曜石フィルタ(130’’’)である、請求項26に記載の、且つ任意選択的に請求項27~31の一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射能汚染された材料を洗浄液中に浸漬することによる、放射性物質の放射能の弱化に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月の東日本大震災後の福島第一原子力発電所の原発事故による放射能漏れの後、様々な産業分野が深刻な被害を受けた。
【0003】
最も差し迫った問題の1つは、除染作業中に発生する大量の放射能汚染された材料の取り扱いである。放射能汚染された材料は放射線量が高いため、一般廃棄物ではなく一時的な保管場所に放置されるため、ついには一時保管さえ確保できなくなる。従って、最も急を要する目標及び課題の1つは、高度に汚染された廃棄物を生み出さずに放射能を効果的に低減できる方法を開発することであった。原発事故由来の放射性物質には、ヨウ素-131、セシウム-134、セシウム-137、ストロンチウム-90、プルトニウム-239などがある。
【0004】
大量に発生された放射性材料の1つが、福島周辺の森林から採取された木材である。
【0005】
事故の直後、特に樹皮が大量の放射性核種により汚染された。
【0006】
放射能汚染を低減するための多くの方法が提案されており、それらのほとんどが、放射性核種を吸着するためにゼオライト又は植物などの材料を使用し、そして特定の容器内に密閉することだけに依存している。そのようなプロセスでは吸着剤が放射性になり、それに続く処分(通常、長期間の埋設)が必須になる。従って、放射性核種を、放射能を有さない安定した元素に変換することにより放射能除染する方法を見つけることが強く望まれている。
【0007】
スギハラ(Sugihara)は、福島の放射能汚染土壌を除染するために特別に設計された活性ポット内に高圧下で置かれた活性水を含むインフォトンの使用を提案し、土壌の放射能が最大で60%低減されたと主張した(非特許文献1及び非特許文献2)。放射能は、活性水又は活性水に曝された通電物質による処理により低減され得る。この実験は、特別に処理されたポットに水と一緒に入れられた汚染土壌試料で行われた。ポットは、アクリル-スチレンのペレット(アクリル-スチレンを加圧水に浸漬して繰り返しデトネーションした)から作製された。ペレットの射出成形によりポットが生成された。
【0008】
この著者らは、放射能の低減というこの現象を、核(例えばセシウム-137)に対する拡張粒子の影響として説明した(非特許文献3)。また、シマ・エイチ(Shima H)、オノ・エス(Ono S)、タハラ・エイチ(Taira H)は、原子核及び粒子の周りのポテンシャルが、ガウス曲率を有する球形状であり、非常に短い時間で非常に小さい空間(それぞれピコ秒及びピコメータ範囲)での反応を可能にすることを提示している(非特許文献4)。水分子の水素結合が切断されると、陽子及び電子は、ヒドロニウムイオン又はヒドロキシルイオンを形成する代わりに水分子の内部にとどまる。スピン及び運動量に関連するエネルギーが保持され、弱いテラヘルツ波が放射される。水分子にエネルギーを持った断片をインフォトンと称する。インフォトンは安定的に存在する素粒子であり、プラズマ状態にある陽子と電子とから成る。この仮想粒子は、長波長電磁波として機能すると推測される。そのエネルギーは別の物質に、電磁波の形で伝達される。前記著者らは、セシウム-137と高エネルギーインフォトン(そのエネルギーは、例えば、セシウム-137からの光子エネルギーに近い光速の5%で1170keVに相当する)との反応による元素の長波長合成について説明している。セシウム-137とインフォトンの間の距離が短くなるにつれて、光子の放出によるセシウム-137原子核のエネルギーの減少下でポテンシャル曲率が増大する。同時に、インフォトンはセシウム-137からエネルギーを取り戻し、ポテンシャルスロープを上昇させ、これが、原子核との相互作用を促進し、安定した元素の形成をもたらす。
【0009】
インフォトン処理された水性土壌抽出物の分析調査により、放射性物質が、バリウム、ランタン、及びセリウムに変換されたことが示された。これらの元素の検出されたレベルは、土壌中に通常見られるものとは著しく異なっていた。
【0010】
スギハラ(Sugihara)(非特許文献5)は、最近、不安定な放射性元素から安定的な放射性元素への変化について説明した。
【0011】
トリウム原子核は、強い核力が陽子間の電磁反発に打ち勝つことができないため、α崩壊の影響を受けやすい。トリウム-232のα崩壊は、4で割り切れる質量数を持つ同位体を含む4n崩壊系列を開始する。この連続したα崩壊とβ-の崩壊の連鎖は、天然に存在するトリウム-232からラドン-228への崩壊から開始し、鉛-208で終了する。トリウムカスケードは、以下の元素を含む。すなわち、アクチニウム、ビスマス、鉛、ポロニウム、ラジウム、ラドン、タリウムである。全ての元素が、金属、化合物又は鉱物のいずれであっても、天然のトリウム含有試料中に少なくとも一時的に存在する。トリウム-232から鉛-208への総エネルギー放出は、ニュートリノに奪われたエネルギーも含めて42.6MeV(メガ電子ボルト)である。トリウム-232崩壊系列は、α崩壊及びβ-崩壊を含む。α崩壊は、α粒子の放出により定義される。α粒子は原子質量4uであり、2個の中性子と2個の陽子から成り、ヘリウム原子の原子核と一致し、4He2+の形態(2倍に正帯電されたヘリウム原子)で表すこともできる。α粒子の放出により、崩壊している元素の原子質量は4だけ減少し、すなわち2個の陽子と2個の中性子(2p2n)が減少する。これにより、元素の周期系において番号が2だけ減少した元素の新しい同位体が得られる。一方、β-崩壊は、原子核からの高エネルギー電子であるβ粒子の放出により定義される。β-崩壊の場合、原子核の中性子が、反ニュートリノを伴う電子の放出により、陽子に変換される。β-崩壊により、崩壊する原子核内の陽子の個数が1つ増加し、従って、崩壊前の原子核の質量がほぼ同じである元素の周期系において、番号が1つ増加した新しい元素の同位体が得られる。トリウム-232カスケードの最初のステップは、2p2nの放出下で232Th90(90個の陽子と142個の中性子を持つトリウム原子核:90p142n)から228Ra88(88個の陽子と140個の中性子を持つラドン原子核:88p140n)への崩壊である。このステップに続いて、アクチニウム(228Ac89)及びトリウム(228Th90)への2つのβ-崩壊が生じる。連続的なα崩壊により、ラジウム(224Ra88)、ラドン(220Rn86)、ポロニウム(216Po84)、そして最後に鉛(212Pb82)の同位体が形成され、それにより複数のβ-崩壊も生じている。これらの多数のα崩壊により、ヘリウム核が形成される。
【0012】
トリチウムは、放射性廃液中に様々な形態で発生する。トリチウムは、原子炉内の核分裂反応により生成され、トリチウム化された水分子又はそのイオン[3
1H]+及び[O3
1H]-としてガスの形態であり得る。しかし、原子力発電所の気体及び液体の、環境への排出物からトリチウムを濾過するための、経済的に実現可能な技術は存在しない。廃液の処理は、原子力産業では特に複雑である。具体的な事例は、福島事故におけるトリチウム問題の処理である。
【0013】
福島からの廃液を処理する会社は、2011年3月の地震と津波による事故の結果として原子力発電所が毎日発生させる数千トンの放射性水を、濾過システムを使用して浄化している。しかし、トリチウムは、濾過システムが除去できない唯一の放射性同位体である。日本の経済産業省は、国際原子力機関(IAEA)との合意に基づき、これに関し、トリチウムの海への制御された排出の実施が許容可能であると考えている。その費用は34億円(2,750万ユーロ)と見積もられており、その手続きには約7年半かかる。
【0014】
トリチウムは、質量が3.01605g/molで半減期が12.33年である水素の
keVの放出下で、正帯電されたヘリウム-3同位体、電子(β粒子)、及び電子反ニュートリノになる。中性子が陽子に変わると、水素はヘリウムに変わる。平均電子の運動エネルギーは5.7keVであり、残りのエネルギーは、ほとんど検出不可能な電子反ニュートリノにより引き離される。トリチウムからのβ
-粒子は、約6mmの空気しか浸透しない。1gのトリチウムは、それぞれ毎秒3.56×10
14ベクレル又は崩壊の活性を有する。
【0015】
トリチウムは、重水素又はプロチウムと同じ化学的挙動を有し、化学的性質は外側の電子に依存する。この特徴が、その他の同位体から化学的に分離することを困難にしている。
【0016】
放出された低エネルギーのβ粒子は皮膚に侵入できない。しかし、トリチウムは、口から身体内に取り込まれたり、吸入されたり、或いは、開いた傷口から身体内に入ると健康上のリスクをもたらす。トリチウムは、身体内で放射し、細胞、骨及びリンパ系、並びに、一般的に内部組織全体を照射する。従って、汚染により組織内にトリチウムが取り込まれることは、深刻な健康問題である。
【0017】
トリチウムは、主に三体核分裂により核燃料中に形成される。また、トリチウムは、一連の軽元素(不純物として、又は、燃料、クーラント、モデレータ、シース及びその他の核物質の構成要素として存在する)の中性子活性化により形成される。そのため、トリチウムは、重水(酸化重水素)をモデレータとして使用する核分裂リアクタ(反応炉)で生成され、重水素がトリチウムの形成下で中性子を捕捉する。加圧水型リアクタにおいては、酸性度を調節するために水酸化リチウムが使用される。これにより、トリチウムが、リチウム-6と中性子との相互作用により形成される。また、リアクタ内での核分裂速度を調節するホウ酸もトリチウムの形成をもたらす。
【0018】
ホウ素-10同位体が中性子を吸収してホウ素-11を形成し、ホウ素-11は不安定なリチウム-7に変わり、これが分解してトリチウムとヘリウムになる。トリチウムは、ウラン-235とプルトニウム-239の三体核分裂において核分裂生成物としても生じる。
【0019】
核反応で発生されたトリチウムは、部分的にはトリチウムガス3
1H2の形態で生じるが、主に3
1H-O-H-(T-OH);(3
1H)2O(T2O)の形態の水分子の一部として生じる。
【0020】
現在の努力は、トリチウム種の分離に焦点を当てている。トリチウムの化学的及び物理的特性、並びに、水分子の形成における異なる組み合わせのオプションが、現在、大規模な工業的分離を複雑にしている。トリチウムの濾過の問題に対処するために、工業的にスケーラブルな技術が幾つか存在する。例えばトリチウムは、水素化物の形成下で遷移金属又はコバルトジルコニウム合金を用いて捕捉されることができ(非特許文献6)、これが、トリチウム化された水をT2及びその他の水素同位体に変換する電気分解に先行する極低温蒸留と組み合わされる(非特許文献7)。
【0021】
ナノバブルは最近数年にわたり多くの注目を集めている(例えば、非特許文献8)を参照)。
【0022】
ナノバブル又は超微細気泡は、水溶液中の直径200nm未満の気体の空洞として定義される。ナノバブルの産業応用は、その反応性及び安定性により、マクロバブル及びマイクロバブルと比較して、過去20年間で指数関数的に増加した。
【0023】
ナノバブルは、そのサイズゆえに、高い比表面積及び高い停滞時間を有し、これが、気液界面での質量輸送効率、物理的吸収、及び化学反応を促進させる。さらに、これらの気泡は、溶液及び帯電した表面において長い滞留時間を有する。上記により、ナノバブルは多くの産業用途を有し、これらは、例えば、機能性材料の製造、土壌及び堆積物の除染、医薬品送達、飲料水及び廃水の処理、並びに食品の消毒である(非特許文献9)。
【0024】
ナノバブルは、発生後、数週間にわたり水溶液中に存在することが分かっている。半径150nm~200nmの気泡が2週間にわたり検出可能であったことが報告されている。理論に束縛されるものではないが、ナノバブルの帯電した液体-気体界面は、気泡合体を妨げる反発力を生成し、従って、気泡密度が高いと水中の高溶存ガス濃度を生成し、界面とバルク液体との間の濃度勾配が小さくなると仮定される。また、気泡の安定性は、ブラウン運動及び低い浮力による無視できる低い上昇速度により増大した。これらの理由以外にも、ナノバブルは、ガスの拡散的な流出に対する相互遮蔽(気泡が十分に近接しているか、又は集まってマイクロメートルサイズのクラスターになる場合に達成され得る)により安定であると考えられる。また、ナノバブルが水の物理化学的特性を変え得るとも思われる(非特許文献10)。
【0025】
現在のところ、安定なナノバブルの存在は実験的に確認されているが、その長期安定性を説明する明確な理論的根拠は確立されていない。従って、これらの気泡の効果的で機能的な使用のためには、それらの特性及び挙動を知ることが非常に重要である。しかし、ナノバブルの挙動は複雑であると考えられる。リ(Li)らが、地下水浄化のための水ナノバブルの使用を記載している(特許文献11)。
【0026】
ナノバブルの効果的で機能的な使用のためには、それらの長期安定性の理由を知ることが重要である。従って、ナノバブルの気泡サイズ分布及びゼータ電位を測定するために包括的な実験室調査が行われた。最初は、4つの異なるガス(テストシリーズI)で行われ、次いで、異なる塩濃度、pHレベル、及び、溶液の温度で行われた(テストシリーズII)。
【0027】
テストシリーズIの実験結果は、平均気泡サイズが水中のガス溶解度に依存し、また、ゼータ電位が水-気体界面でOH-イオンを発生するガスの能力に依存することを示した。
【0028】
テストシリーズズIIの実験結果は、高pH、低温、及び低塩濃度の溶液中で、高い負のゼータ電位を有する気泡を発生できることを示した。高pH溶液は、より小さいが安定したナノバブルを生成した(非特許文献12)。
【0029】
この動電ゼータ電位は、気泡表面上の負の表面電荷から生じる。ガスが充填された状態で測定されたナノバブルの負のゼータ電位は、気体-水界面でのOH-イオンの吸収の結果であると推測される(非特許文献13、非特許文献14)。気泡-水界面でのOH-イオンの形成に寄与し得る、気泡に取り囲まれたガスが、最も高いゼータ電位値を示した。オゾン(非常に可溶性であり、水中に溶解すると非常に反応性の高いガスである)が、水酸化物イオンの形成下で水と反応し得る(非特許文献15)。
【0030】
トリチウム廃水中でナノバブルを発生させると、気体状のトリチウム以外にも主に2つの形態のトリチウム化水分子が存在するが、ナノバブルもトリチウム化合物により部分的に構築される。具体的には、トリチウム化水化合物は、化学的又はそれらの電気的特徴において何ら異なるものではない。従って、それらは水分子と共にナノバブルを形成できる。
【0031】
気体成分は、液体に高圧が加えられたためナノバブルに取り囲まれ易く、それによりそれらの安定化に寄与する。
【0032】
トリチウムはベータ放射下で崩壊しているため、ナノバブルの一部であるトリチウム化水分子も分解する。ベータ崩壊によれば、モノトリチウム化水分子(1つの酸素原子、1つのプロチウム原子、1つのトリチウム原子から成る)が崩壊してヘリウム-3同位体、電子反ニュートリノ、電子、及びOHラジカルになる。
【0033】
放出された低エネルギー電子は、水中で数ミクロンの最大範囲を有し、ヒドロキシルイオン(OH-)の形成に寄与でき、そして、気泡のゼータ電位の増大によりナノバブルサイズを安定化させることができる。安定なナノバブルは、より小さいサイズであり、成長する傾向はごくわずかであり、それらの高いゼータ電位が、気泡合体の可能性を低減させる。一方、安定に形成されたヘリウム-3同位体はナノバブルに充填されることができ、ナノバブルの発生を容易にする。
【0034】
ナノバブルの負の電位は、クーロン力により周囲の水分子にゆるやかに結合された正帯電したプロチウム原子又はトリチウム原子のいずれかにより補償される。このプロセスにより、核領域における修正された電子相空間が、原子核の遷移モーメント及び崩壊プロセスを変化させると推測される。例えば、ベータ崩壊する裸の核は、結合状態のベータ崩壊を受けることが知られており、これは、完全にイオン化されたジスプロシウム-163 66+核(中性ジスプロシウム-163原子が安定である間に約50日以内に崩壊する)に関して観察されたものと同様である(非特許文献16)。この結合状態のベータ崩壊は、連続ベータ崩壊モード(電子が真空に放出されず、結合軌道の1つを占める)とは異なる。崩壊エネルギーの一部は崩壊に蓄えられ、従って、中性原子の崩壊エネルギーと比較して速度を変化させる。トリチウム崩壊を介したベータ電子の形成の分析が、3
1H+から3
1He+への結合状態での崩壊確率の増大を示した(非特許文献17)。これは、汚染された溶液中のトリチウム濃度の減少をもたらす。63-Ni(NO)3水溶液中で超音波発生器を用いて、10μmを超えないマイクロバブルが生成され、これが、変形された時空反応の発生を可能にした。100秒間の超音波処理の2回の実行の前後に、ニッケル-63により放出されたベータ電子の記録された制動放射を分析すると、平均放射能が14%減少していた。ニッケル-63の半減期は101.2±1.5年であるため、これらの実験により記録された放射能の低減を得るためには約22年が必要であることになる。前記著者らは、この現象は、気泡発生に必要なエネルギー密度に到達して処理するための実験条件に対して特に敏感であると述べている。
【0035】
アルベルト・ロサダ(Alberto Rosada)らは、明確な放射能により証明された放射性核種ニッケル-63の変換を報告した(非特許文献18)。彼らは、この現象を、変形した時空条件下での核変換反応の発生(すなわち、放射性核が、放射能放出のない安定した非放射性核に変態したこと)に起因するとしている。
【0036】
これまで、ナノバブルは空洞を生成することにより溶液中に発生されることが多かった。キャビテーションが、特定の臨界値を下回る圧力低下により引き起こされる。減圧機構に基づいて、キャビテーション機構を以下の4つの異なるタイプに分類できる(非特許文献19)。すなわち、
・システム形状による液体フラックスの圧力の流体力学的変化
・音響:液体に超音波を付与することにより生成される音響キャビテーション
・粒子:液体中の高強度光光子を通過
・光学:低吸収係数溶液に集束した短パルスレーザ
【0037】
ナノバブルは、以下の方法を用いてさらに流体力学的に発生される。すなわち、
・液体中のガス流を圧縮することにより液体中のガスを溶解し、次いで、これらの混合物を、ナノサイズのノズルを通して放出してナノバブルを生成する
・低圧ガスを液体に注入し、ガスを、集束、流体振動、又は機械的振動により分解して気泡にする。
【0038】
マイクロバブル発生器が、ウシクボ(Ushikubo)ら(特許文献20)及びタケヒロ・サトウ(Takehiko Sato)ら(特許文献21)により記載されている。
【0039】
(H3O2
-)nは、水付加体H3O2
-の凝集体である。H3O2
-イオンは、さらなる水分子により溶媒和され、加水分解により発生され得る。
【0040】
特許文献1は、放射性材料を除染するためにナノバブルを水のような水溶液中で用いる洗浄方法を開示している。このナノバブルは、市販のナノバブル水製造装置を用いて、高圧と高電圧とを印加しながら生成される。α粒子によるナノバブルの帯電は開示されていない。
【0041】
特許文献2は、ナノバブルによる水処理方法及びそのための装置を開示している。この開示において、ナノバブルは、水のような水溶液を高圧に曝すことにより流体力学的に発生される。そして、この水溶液にβ線が照射され、トリウム-234により、ウラン-ラジウム崩壊系列の一部として安定的に放射され得る。こうして、ヒドロキシル基及び/又はOHラジカルが発生され、ナノバブル中に配置される。
【0042】
近距離でのα粒子によるナノバブルの照射(異なる崩壊系列を必要とするであろう)は開示されていない。構造的改変が、α粒子の近接効果が低いことを克服するために必要であろう。また、(H3O2
-)nの発生は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2013-140096号明細書
【特許文献2】特開2008-183502号明細書
【非特許文献】
【0044】
【非特許文献1】ウォータ(Water)誌、2013年、5,69~85
【非特許文献2】インターナショナル・ジャーナル・オブ・カレントリサーチ(Int.J Curr.Res.)誌、Aca.Rec.2015年、3(8):196~207
【非特許文献3】ブリーカー・ディー(Bleecker D)、ウィルソン・エル(Wilson L)著「ガウスマップの安定性」、イリノイ・ジャーナル・オブ・マセマティクス(Illinois J Math)誌、1978年第22巻、270~289
【非特許文献4】「曲面上の量子力学と材料科学へのその応用」(ジャーナル・オブ・サーフェス・サイエンス・ソサイエティ・ジャパン(J Surf Sci Soc Jpn)誌、2009年、第30巻:652~658)
【非特許文献5】スギハラら著、イー・シー・アグリカルチャ(EC Agriculture)誌、2019年5.3:134~138
【非特許文献6】ティー・モティカ(T.Motyka)著、「トリチウムの処理及び貯蔵のための水素化物」、サバンナ・リバー・テクノロジー誌の水素技術セクション、WSRC、2000年、187頁~195頁)
【非特許文献7】アール・シャーマン(R.Sherman)著、「核融合燃料サイクルのための極低温水素蒸留」、ヒュージョン・テクノロジ(Fusion Technology)誌、1985年9月、第8巻、2175頁~2183頁
【非特許文献8】ジェイ・エヌ・ミーゴダ(Jay N.Meegoda)、シャイニ・アルスガン・ヒュージ(Shaini Aluthgun Hewage)、ジャニーサ・エイチ・バタゴダ(Janitha H.Batagoda)著「ナノバブルの安定性」、エンヴァイロンメンタル・エンジニアリング・サイエンス(Env.Eng.Sci.)誌、2018年11月、第35巻、
【非特許文献9】リ(Li)ら著、インターナショナル・ジャーナル・オブ・エンヴァイロンメンタル・リサーチ・パブリックヘルス(Int.J.Environ.Res.Public Health)誌、2014年11月号、473~486
【非特許文献10】ウシクボ(Ushikubo)ら著、コロイド・アンド・サーフェス・エー・フィジコケミカル・アンド・エンジニアリング・アスペクツ(Colloids and Surfaces A Physicochem.Eng.Aspects)誌、2010年
【非特許文献11】リ(Li)ら著、インターナショナル・ジャーナル・オブ・エンヴァイロンメンタル・リサーチ・パブリックヘルス(Int.J.Environ.Res.Public Health)、2014年11月号、473~486)
【非特許文献12】ジェイ・エヌ・ミーゴダ(Jay N.Meegoda)、シャイニ・アルスガン・ヒュージ(Shaini Aluthgun Hewage)、ジャニーサ・エイチ・バタゴダ(Janitha H.Batagoda)著「ナノバブルの安定性」エンヴァイロンメンタル・エンジニアリング・サイエンス(Eng.Sci.Vol.)誌、2018年11月第35巻(DOI(Digital Object Identifier):10.1089/ees.2018.0203)
【非特許文献13】エム・タカハシ(Takahashi,M)著「水溶液中のマイクロバブルのゼータ電位:気体-水界面での電気的特性」、ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリ・ビー誌(J.Phys.Chem.B)、2005年、109,21858
【非特許文献14】テメスゲン・ティー(Temesgen,T.)、ブイ・ティー・ティー(Bui,T.T.)、ハン・エム(Han,M.)、キム・ティー・アイ(Kim,T.I.)、パーク・エイチ(Park,H.)著「水処理技術の新しい領域としてのマイクロ技術及びナノバブル技術」(レビュー アドバンスコロイドインタフェース サイエンス(A review.Adv.Colloid Interface Sci.)誌、2017年246,40
【非特許文献15】イーグルトン・ジェイ(Eagleton,J.)著、「飲料水処理におけるオゾン」、1999年
【非特許文献16】エム・ユング(M.Jun g)ら著(フィジカル・レビュー・レター(Phys.Rev.Lett.)69、1992年、2164
【非特許文献17】ユー・エー・アークロフ(Yu A.Akulov.)、ビー・エー・マミリン(B.A.Mamyrin)著「フィジックス・レターズ B」誌、2005年、第610巻、45~49
【非特許文献18】アルベルト-ロサド(Alberto Rosado)ら著、“Fabio Cardone,Pasquale Avino,”、シュプリンガー・ネイチャー、アプライドサイエンス(SN Applied Sciences)誌、2019年、1:1319
【非特許文献19】ジャイ・エヌ・ミーゴダ(Jay N.Meegoda)、シャイニ・アルスガン・ヒュージ(Shaini Aluthgun Hewage)、ジャニーサ・エイチ・バタゴダ(Janitha H.Batagoda)著「ナノバブルの安定性」(エンヴァイロンメンタル・エンジニアリング・サイエンス(Env.Eng.Sci.Vol.)2018年11月、第35巻)
【非特許文献20】ウシクボ(Ushikubo)ら著、フィジコケミカル・アンド・エンジニアリング・アスペクツ(Physicochem.Eng.Aspects)誌、2010年
【非特許文献21】タケヒコ・サトー(Takehiko Sato)ら著、ジャーナル・オブ・フィジックス(J.Phys)誌、2015年、Conf. Ser.656012036
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
従って、本発明の根底にある課題は、放射能汚染された材料を除染する新規のプロセスを提供することであった。前記材料は、水を含むトリチウムのような液体材料又は固体材料のいずれであってもよい。除染された材料は、これらの材料により放射能汚染されることを恐れることなく、人間により使用されることが可能であろう。本発明のさらなる目的は、原子力発電所事故による原子力汚染が自然界に与える影響を平滑化するために、自然界、例えば、土壌、木材、刈り取られた草、干し草などから有機物を除染することであった。
【課題を解決するための手段】
【0046】
この問題は、放射能汚染された材料の、以下のステップを含む除染プロセスにより解決された。これらのステップは、
a)前記放射能汚染された材料を除染槽内に提供するステップと、
b)第2リアクタチャンバに接続された第1リアクタチャンバを含むリアクタユニットを設けるステップと、
c)ph>7の水を前記第1リアクタチャンバ内で電気分解して(H3O2
-)nを発生させるステップと、
d)前記第2リアクタチャンバの電解水内にナノバブルを発生させるステップと、
e)任意選択的にステップc)及びd)を繰り返すステップと、
f)ナノバブルを含む水に圧力を加えるステップと、
g)ナノバブルを含む前記加圧された水を、α線発生器及び前記放射能汚染された材料を収容している除染槽に移送するステップと、
h)前記ナノバブルを、前記α線発生器により放出されるα粒子により帯電させるステップと、
i)前記帯電されたナノバブルを、前記除染槽内の前記放射能汚染された材料に接触させるステップと、である。
【0047】
また、この問題は、代替的なプロセスによっても解決され、このプロセスは、前記ステップb~d及びf~hが以下のように置き換えられることを特徴とする。すなわち、
b)第1リアクタチャンバに接続されたフィルタチャンバを含むリアクタユニットを設けるステップと、
c)水を前記フィルタチャンバ内でイオン化、標準化及び水素化するステップと、
d)ph>7の水を前記第1リアクタチャンバ内で電気分解して(H3O2
-)nを発生させるステップと、
f)(H3O2
-)nを含む水に圧力を加えるステップと、
g)(H3O2
-)nを含む前記加圧された水を、α線発生器及び前記放射能汚染された材料を収容している除染槽に移送するステップと、
h)前記除染槽内でナノバブルを発生させ、当該ナノバブルを、前記α線発生器により放出されるα粒子により帯電させるステップと、である。
【0048】
好ましくは、前記第1リアクタチャンバ内の水は、pH>7、より好ましくは、pHは10未満である。安定なナノバブルが7よりも高いpH値で発生され、pHが7.5~8.5であることが好ましいことがわかった。pH値が上がると、ナノバブルのゼータ電位が上昇する。さらに、これがナノバブル周囲の水素結合を増大させ、それらの安定性も高める。ナノバブルは、中性のpH状態と比較して、pH値が増大するとサイズが小さくなる傾向がある。ナノバブルは、5nm~50nmの粒径を有し、水の量に関して3体積%~15体積%の割合である。
【0049】
高pH溶液中のナノバブルは、発生時には高い負のゼータ電位値を示したが、中性溶液pHで生成したナノバブルのゼータ電位値に近い値まで急速に低下した。また、ナノバブルは酸性溶液中では生成し難く、これらのゼータ電位値が正である傾向にあることが分かった。これは、ナノバブルの表面電荷がOH-イオン濃度と強く関係しているという見解を裏付ける。
【0050】
水分子とOH-陰イオンは凝集体を形成し(ステップc))、これを、一般式(H3O2
-)nで表すことができ、nは、実質的に2よりも大きく、おそらく1,000までの整数である。
【0051】
前記α線発生器により放出されたα粒子によりナノバブルを帯電させること(ステップh))により、前記除染槽がリフレッシュされる。さらに、α粒子、及び、He2
2+を含むα粒の発生が、反応性ナノバブルの形成を促進し、これがプロセスの除染効率を高める。
【0052】
代替的に、前記フィルタチャンバ内の水をイオン化、標準化、水素化し(ステップc))、その後、ph>7の水を前記第1リアクタチャンバ内で電気分解して(H3O2
-)nを発生する(ステップd))ことにより、大量のエネルギーを節約でき、従って、コストを節減できる。同時に、前記第1リアクタチャンバ及び前記第2リアクタチャンバ内で生成される(H3O2
-)nと同様に除染に有効な(H3O2
-)nが提供される。
【0053】
前記代替的なプロセスにおいて、最初に前記除染槽内でナノバブルが発生される。これにより、前記除染槽の外側に配置されている前記第1リアクタチャンバ及び前記第2リアクタチャンバからのナノバブルの移送を省略できる。これにより、プロセスコストを削減でき、より高い経済効率につながる。
【0054】
前記放射能汚染された材料は、水、好ましくは、トリチウム化水、又は、水に溶媒和された固体の汚染された材料の溶液であり得る。これにより、トリチウムを水から、(例えば、福島原発が毎日発生している水から)除去することが初めて可能になる。従って、潜在的に重大な環境損傷を回避できる。
【0055】
前記放射能汚染された材料は、固体材料であり得る。この固体材料は、有機材料、例えば木材、樹皮、干し草、土壌の有機成分、及び、任意の製品(綿、羊毛などの有機成分を含む)であり得る。また、固体材料は、無機材料、例えば粉砕コンクリート、鋼、プラスチック、又は、任意のその他の無機成分であり得る。固体物質はセシウム-137により汚染され得る。
【0056】
α線発生器はトリウムを含むことができる。トリウムにより放射されるα粒子は、正帯電されたヘリウム核である。水中では、これらの原子核は、熱化されるまで約40μmの典型的な拡散波長を有する。圧力を加えることにより水流量が増大するため、α粒子は熱化前にはるかに大きい距離を克服できる。はるかに大きい距離を確実に克服するために、ステップf)で加えられる圧力は、1hPa~20hPaの範囲であり得る。液体内を進む途中で、これらの原子核はヘリウム原子の形成下で電子を捕捉できる。ヘリウムは希ガスであるため、化学反応を生じ難く、非常に安定した単原子化合物である。
【0057】
熱化されたHe2+原子核は、周囲から2つの電子を取り込むことにより、非帯電の安定なヘリウム状態に到達する傾向が強い。原子核は、熱化された状態において中性原子又は正帯電粒子として捕捉され、周囲の水分子とのナノバブルを形成する。これにより、非常に効果的な除染を達成できる。
【0058】
前記放射能汚染された材料は、前記除染槽中で0.25時間~1時間にわたり処理され得る。より長い処理は有効でも必要でもない。なぜなら、除染効率が時間の経過と共に急速に低下し、また一方、所望の除染度を、その他の幾つかのプロセスパラメータを変更することにより達成できるからである。
【0059】
ステップc)~e)において、水の温度を、その特性に応じて室温から80℃又は90℃まで上昇させ得る。前記温度は、直線的に、漸進的に上昇されても、或いは、指数関数的に上昇されてもよく、指数関数的上昇は漸進的な上昇よりも優れている。これが、ナノバブルを含む水の特性に応じて、30分以上にわたり行われ得る。この上昇は、ポンプにより加えられる圧力により制御されることができ、圧力弁により調整され得る。
【0060】
放射能汚染された材料の全処理の間、ナノバブルを追加的に前記除染槽内で発生させることができる。これは、放射能汚染された材料の除染のプロセス全体を通して、前記除染槽をナノバブルでリフレッシュできるという利点をもたらす。これにより、プロセス効率が高められる。
【0061】
本発明はさらに、上述のようなプロセスにより得られる放射能除染された材料に関する。
【0062】
前記放射能除染された材料の放射能は、好ましくは200ベクレル/kg未満である。より好ましくは、放射能は、100ベクレル/kg未満、又は、50ベクレル/kg未満でもある。この放射能は、人間が使用するために許容される限界よりもかなり低いため、前記放射能除染された材料を、さらに処理又は再利用して、人間と接触させることができる。
【0063】
本発明はさらに、上述のような放射能汚染された材料の除染プロセス行うための装置に関する。
【0064】
この装置は、
i 除染タンクと、
ii リアクタユニットと、
iii 中和設備と、
iv パイプと、を備えている。
【0065】
前記装置は、さらに、前記除染タンク内に配置された浸漬バスケット備え得る。汚染された固体材料を当該浸漬バスケット内に入れることができる。これにより、前記固体材料を除染プロセス後に容易に取り出すことができる。
【0066】
前記中和設備は、好ましくは水中に配置される、これは、前記放射能汚染された材料の除染の全プロセス中に、前記除染槽をα粒子及びナノバブルにより永続的にリフレッシュできるという利点をもたらす。これにより、プロセス効率が高められる。
【0067】
前記中和設備は、好ましくは、
i 液体チャンバと、
ii ガスチャンバと、
iii スパイラルチャンバと、
iv ノズルと、を含む。
【0068】
前記液体チャンバは、好ましくは、メッシュ及びグリッドを含む。これらの両方を、ステンレス鋼などの金属材料、又は、水中での使用に適したその他の任意の材料から作ることができる。これにより、長い耐用期間を達成できる。
【0069】
好ましくは、前記メッシュ及び/又は前記グリッドは、α線発生酸化物によりコーティングされる。こうして、前記液体チャンバを通してガイドされた水を、除染プロセス全体を通してα粒子によりリフレッシュできる。これにより、プロセス効率を高めることができる。
【0070】
好ましくは、前記ガスチャンバはグリッド及びセラミックボールを含む。より好ましくは、複数のセラミックボールが含まれる。
【0071】
好ましくは、前記スパイラルチャンバは、スパイラル、セラミックボール及び出口ポートを含む。より好ましくは、複数のセラミックボール及び出口ポートが含まれる。
【0072】
前記出口ポートを介して、リフレッシュされた水を前記除染タンクに永続的に移送できる。これにより、高いプロセス効率を達成できる。
【0073】
前記ガスチャンバ及び前記スパイラルチャンバ内のセラミックボールは、α線発生酸化物でコーティングされていることが好ましい。これにより、前記液体チャンバを通してガイドされたガス、及び、前記スパイラルチャンバを通してガイドされた水が、除染プロセス全体の間にα粒子によりリフレッシュされ得る。これにより、プロセス効率を高めることができる。
【0074】
好ましくは、前記ノズルはガスパイプを含む。これにより、水へのガスの正確な注入が達成され、それによりナノバブルの形成が支持される。これにより、プロセス効率を高めることができる。
【0075】
前記リアクタユニットは、
i 電極を含む第1リアクタチャンバと、
ii スパイラルを含む第2リアクタチャンバと、を備えている。
【0076】
これらの構成要素は、前記リアクタユニットの一部であり得る。これにより、前記第1チャンバの構造により、ph>7の水の電気分解、及び(H3O2
-)nの生成が可能になる。また、前記第2リアクタチャンバ内でのナノバブルの発生が可能になる。こうして、本発明のプロセスが効率的に実行され得る。
【0077】
代替的に、前記リアクタユニットは、
i フィルタチャンバと、
ii 電極を含む第1リアクタチャンバと、を備えている。
【0078】
これらの構成要素は、前記リアクタユニットの一部であり得る。これにより、水をイオン化し、標準化し、また、フィルタチャンバにより水素化できる。また、前記第1チャンバの構造により、ph>7の水の電気分解、及び(H3O2
-)nの生成が可能になる。また、こうして、本発明の代替のプロセスが効率的に実行され得る。
【0079】
前記電極は、複数の電極棒及び複数のシートを含み得る。前記シートは、前記電極を単一の電解槽にセグメント化するために使用され得る。電解水を、複数の、好ましくは6個~7個の電解槽に通すことにより、高効率のナノバブル作成が達成できる。
【0080】
例えば、7つの電解槽を用いると、3個、4個及び5個、又は、8個、9個及び10個の電解槽を使用する場合よりも約40%多いナノバブルを生成できる。
【0081】
前記装置の前記シートは開口部を含み得る。これにより、前記第1リアクタチャンバ内の流体のガス部分の効率的な流動挙動が可能になる。開口部がなければ、流体の液体部分が塞き止められる傾向がある。
【0082】
前記電極は、セグメント状に長手方向に配置された三相電極であり得る。直流の二相電極で行われる二相電解(H2Oが単に2つのHに分解され、1つのOが蒸発する)とは異なり、前記第1リアクタチャンバ内の前記三相電極を介して印加される三相電流は、水と、水中に溶存する酸素とを(H3O2
-)nに変換させる。このようなプロセスが、前記セグメント化された構造により強化され、前記セグメントと共に形成された複数の三相電極のシステムとして効果的に機能する。前記セグメントは横方向の開口部を介して接続され得る。こうして、このプロセスが数回繰り返される。
【0083】
前記装置の前記電極は、開口部を有するハウジング内に配置され得る。前記ハウジングは、前記電極と電気分解される水との制御された接触を可能にする。これにより、プロセス効率が高められる。前記ハウジングの前記開口部が連続的な処理を可能にする。これにより、水処理量を高めることができる。
【0084】
前記電極は少なくとも12本の電極棒を含み得る。これにより、ナノバブル生成の高効率化が達成され得る。組み立てスペース及びコストの制限により、前記電極棒の本数は21本を超えるべきではない。
【0085】
代替的なリアクタユニットは、好ましくは、複数のフィルタチャンバを含む。これらは、
i イオン交換フィルタ、及び/又は、
ii ストーンフィルタ、及び/又は
iii 黒曜石フィルタである。
【0086】
このようにして、最小限のエネルギー消費で(H3O2
-)nの効率的な発生が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1a】ナノバブルを(H
3O
2
-)
nで発生させるのに使用するためのリアクタユニットのシステムの概略図である。
【
図1b】(H
3O
2
-)
nを発生させるフィルタチャンバ及び第1リアクタチャンバから成るシステムの概略図である。
【
図3b】中和設備の一部としての液体チャンバの概略図である。
【
図3c】中和設備の一部としてのガスチャンバの概略図である。
【
図3d】中和設備の一部としてのスパイラルチャンバの概略図である。
【
図4a】12本の電極棒を有する円筒状電極の概略図である。
【
図4b】開口部を有するハウジング内に7本の電極棒を有する円筒状電極の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明を、以下の記載により、より詳細に説明する。これは、本発明の範囲を特定の実施形態に過度に限定することを意味しない。
【0089】
本発明のプロセスを、ナノバブルを(H
3O
2
-)
nで発生させるリアクタユニットのシステム100(
図1aに示す)に基づいて説明する。水(例えば濾過された水道水)が、ナノバブルを(H
3O
2
-)
nで発生させるリアクタユニットのシステム100に、入力ポンプ101を用いて圧送される。ナノバブルを(H
3O
2
-)
nで発生させるリアクタユニットのシステム100における作用圧力が、圧力弁109により制御される。
【0090】
ナノバブルを(H
3O
2
-)
nで発生させるリアクタユニットのシステム100は、第1リアクタチャンバ102及び第2リアクタチャンバ103から成るリアクタユニット107を備える。
図1aに、4つのリアクタユニット107が示されているが、好ましい実施形態において、6つ又は7つのリアクタユニット107が使用される。こうして、約40%以上のナノバブルが、より少数の又はより多数のリアクタユニット107と同様に生成され得る。
【0091】
第1リアクタチャンバ102は、酸素を水と交換し、水中に気泡を生成するために使用され、こうして、水を(H3O2
-)nに変換する。そして、第2リアクタチャンバ103内でナノバブルが生成される。
【0092】
第1リアクタチャンバ102は、典型的には、長さ260mmで直径55mmのステンレス製シリンダ、すなわち、約617.76cm
3の体積を有するステンレス鋼シリンダから成る。別の実施形態において、第1リアクタチャンバ102は、これよりもはるかに大きい体積、例えば30m
3を有する。第1リアクタチャンバ102は電極105を含み、これは、例えば
図4aに示されており、この後の章で説明する。
【0093】
好ましい実施形態において、第1リアクタチャンバ102内の電極105は三相電極である。これにより、例えば平均電圧が200Vで電流が220Aの三相電流を印加できる。三相電流のパラメータは、使用される水質に依存し、幾つかの簡単な予備試験を用いて当業者により調整され得る。第1ナノバブルが、第1リアクタチャンバ102を通過した後に観察される。水の流れが矢印で示されている。
【0094】
第2リアクタチャンバ103は、長さ120mm、直径19mm、すなわち、約339.6cm3の体積を有するステンレス鋼シリンダから成る。このシリンダはスパイラル(螺旋状物)104を含み、スパイラルは、好ましい実施形態において、120mm×18mmの寸法の長方形の金属シートから作成される。金属はステンレス鋼又はアルミニウムであり得る。
【0095】
第2リアクタチャンバ103内でナノバブルが生成される。第1リアクタチャンバ102内での電気分解と第2リアクタチャンバ103内でのナノバブルの作成とを繰り返すことにより、プロセスの最後に、すなわち、水が全てのリアクタユニット107を通過した後、水中で凝集体を有する、(H3O2
-)nの高濃度ナノバブル((H3O2
-)n210と称する)の流れが生成される。
【0096】
好ましい実施形態において、ナノバブルはα放射線に曝される。これにより、α粒子自体が、ナノバブル形成を促進する強力な双極子水分子により安定化され得る。正帯電したヘリウム原子は、ヘリウム原子との結合順序が1であり、安定なHe2
2+分子を形成しやすい。これは、原子軌道の線形結合の方法を用いて標準的な量子力学的計算により示され得る。2つの正電荷により駆動されて、分子は、周囲環境からさらなる2つの電子を引き付ける強い傾向を有する。
【0097】
このイベントにより、2つの別々のヘリウム原子への解離が生じ得、これが、生成されたナノバブルを安定化させるか、或いは、拡散による更なるナノバブルの形成に寄与する。しかし、He2
2+分子は、α粒子の相互作用により再びヘリウムに変換され得る。また、トリウム崩壊カスケード中に形成された希ガスラドンが、周囲の水中に放出され、ナノバブル中でα線発生器として作用し得る。
【0098】
(H
3O
2
-)
nを生成するための代替的な装置が
図1bに示されている。この装置は、(H
3O
2
-)
nを発生させるフィルタチャンバ及び第1リアクタチャンバシステムを有する。(H
3O
2
-)
nの発生は、入力ポンプ101によりリアクタユニット107に水を圧送することにより開始する。最初に、水は、水をイオン化するイオン交換フィルタ130’に移送される。これにより、イオン化された水142が生成され、これが、ストーン(石)フィルタ130”に移送され、ストーンフィルタ130”にて水クラスターが分解される。これにより、イオン化及び標準化された水144が生成され、それが黒曜石フィルタ130’’’に移送され、そこで水144の活性水素含有量が増大される。こうして、イオン化、標準化及び水素化された水146が生成され、これが第1リアクタチャンバ102に移送される。第1リアクタチャンバ102にて、水素化された水146が電極105により電気分解される。
【0099】
イオン交換フィルタ130’は、イオン交換用媒体として作用するイオン交換樹脂又はイオン交換ポリマーを含み得る。交換されたイオンは、陽イオン又は陰イオンであり得る。
【0100】
ストーンフィルタ130”は、大麦石、花崗岩又はその他の任意の微細孔状鉱石から作られることができる。
【0101】
固体材料及び水の除染は、除染槽200の特定の実施形態を用いて行われる。固体材料の場合、
図2aに示されているような固体材料用の除染槽200’である。水の場合、
図2bに示されているような、水用の除染槽200’’である。
【0102】
両実施形態において、除染槽200は除染タンク201を含み、除染タンク201は、好ましい実施形態において、開放上部を有するステンレス製容器から成る。好ましい実施形態において、除染タンク201は、例えば150mm×200mm×100mmの寸法で3リットルの体積を有する矩形の形状である。
【0103】
除染のために、ナノ-(H3O2
-)n210が除染タンク201に充填され、そこでα粒子により帯電される。好ましい実施形態において、ナノバブルは、追加の撹拌装置によりリフレッシュ(refresh)される。
【0104】
固体材料の除染に関し、汚染された固体材料は、固体材料用除染槽200’内で浸漬バスケット203に浸漬される。好ましい実施形態において、除染されるべき固体材料は、除染タンク201内に少なくとも15分間、最大で30分間放置される。除染タンク201内に配置された循環ポンプ205が、処理流体を液体チャンバ310内に圧送する。好ましい実施形態において、循環ポンプ205は、20mのてこを有する標準的なカスケードポンプである。
【0105】
液体チャンバ310は、好ましくは、長さ200mm、直径25mmのアルミニウム-真鍮混合シリンダである。好ましい実施形態において、液体チャンバ310には、
図3bに示されているように、メッシュ312が充填されている。メッシュ312は、トリウムでコーティングされたアルミニウムメッシュのロールであり得る。別の好ましい実施形態において、液体チャンバ310はセラミックボール322を収容している。好ましくは、セラミックボール322は5mmの直径を有し、トリウムでコーティングされ、コーティング厚さは0.1~0.5mmの範囲である。トリウムコーティングは、20分~30分間の熱プロセスによりセラミックボール322上に固定される。
【0106】
セラミックボール322は、好ましくは球状である。しかし、セラミックボール322の幾何学的形状は球形に限定されない。代替的に、トリウムによりコーティングされるのに適した任意のその他の幾何学的形状(例えば、立方体、管状、顆粒状又はフレーク状)のセラミックボール322を使用できる。好ましい実施形態において、液体チャンバ310には約750個のセラミックボール322が充填され、これらのセラミックボール322は、入口側及び出口側を封止するグリッド314によりチャンバ内に保持されている。好ましい実施形態において、これらのグリッド314は、α粒子放出材料(例えばトリウム)でコーティングされている。別の好ましい実施形態において、液体チャンバに酸化トリウム顆粒が充填される。
【0107】
α線の放射能は、1MBq/kg~100MBq/kg、好ましくは10MBq/kg~80MBq/kgの範囲にある。放射能の好ましい例は17MBq/kgである。放射されるα放射線のエネルギーは、好ましくは、4MeV~10MeVの範囲である。ナノ-(H3O2
-)n210がα放射線に曝される時間は、15分~1時間、好ましくは15~45分の範囲である。
【0108】
同時に、コンプレッサ207が、ガス(例えば、空気、ヘリウム、水素又はCO
2)をガスチャンバ320を通して押し出す。ガスの種類は、放射能汚染された液体材料220、及び、それぞれの除染プロセスのその他の特徴に応じて変化する。好ましい実施形態において、このガスチャンバ320には、
図3cに示されているように、セラミックボール322が充填されている。
【0109】
そして、液体チャンバ310及びガスチャンバ320からの両方の流れがノズル340内で混合され、そこからスパイラルチャンバ330内に循環ポンプ205により押し込まれる。好ましい実施形態において、ノズル340は、ガスチャンバ320に隣接したガス管342を呈し、ガスをガスチャンバ320からノズル340へと目標を定めて移送することを可能にする。
【0110】
好ましい実施形態において、ノズル340は、
図3aに示されているような3つの端部開口部を含む。開口部の断面は、隣接するチャンバに対応しており、好ましい実施形態において、円滑な流れを可能にする円形である。好ましい実施形態において、液体チャンバ310に面した開口部は25mmの直径を有し、ガスチャンバに面しては15mmの直径を有し、スパイラルチャンバに面しては10mmの直径を有する。流れ方向に沿って流れ断面積の寸法が低減することが、中和設備300内の圧力の増大をもたらし、従って、高いプロセス効率を可能にする。
【0111】
好ましい実施形態において、スパイラルチャンバ330は、長さ150mmで直径15mmのステンレス鋼シリンダであり、長さ150mmで直径13mmの別のアルミニウムスパイラル104を収容している。好ましい実施形態において、出口ポート332がスパイラルチャンバ330の外壁に配置される。これにより、ナノバブルが除染タンク201に連続的に放出され得る。好ましくは、追加のセラミックボール322がスパイラルチャンバ330内に、スパイラル104に隣接して配置される。スパイラル104がナノバブルをリフレッシュし、セラミックボール322が、電荷をα粒子でリフレッシュし、スパイラルチャンバ330の出力の除染度を安定化させる。好ましい実施形態において、複数のスパイラルチャンバ330が、一列に、例えば最大18回、次々に接続される。こうして、除染度が高められる。
【0112】
好ましい実施形態において、液体チャンバ310、ガスチャンバ320、スパイラルチャンバ330及びノズル340が、
図3aに示されているような中和設備300を形成している。中和設備300内で処理された水はパイプ212を介して抜き出される。この処理された水は、除染タンク201に直接導入されても、或いは、別の除染槽200の別の除染タンク201に導入されてもよい。これにより、例えば、固体材料用除染槽200’及び水用除染槽200”を、単一の中和設備、単一のコンプレッサ207、及び単一の循環ポンプ205と組み合わせることが可能である。こうして、施工スペースだけでなく設置コストも削減できる。
【0113】
固形材料用除染槽200’とは異なり、水用除染槽200”の循環ポンプ205は除染槽201の外側に配置されている。水用除染槽200”内に設置された液体チャンバ310の水処理量の要求に従って、循環ポンプ205は、固体材料用除染槽200’の循環ポンプ205よりもサイズが小さくてもよい。従って、ガスチャンバ320が含むセラミックボール322の量は、より少なくてよく、ノズル340は、より小さいサイズであってよい。
【0114】
放射能汚染された液体材料220(例えば、トリチウム化水、又は、水に溶媒和された、汚染された地盤固体材料の溶液)が、ナノ-(H3O2
-)n210と共に除染タンク201に充填される。2つの液体の比率は、放射能汚染された液体材料220の汚染度に依存する。除染度が高いほど、より多くのナノ-(H3O2
-)n210が必要であり、その逆も同様である。
【0115】
中和設備300を通しての混合液体の循環は、除染タンク201内の放射能が、放射線学的に臨界でないレベル(例えば200ベクレル/kg未満の放射能)に達するまで、繰り返される。
【0116】
図4aに、電極105の好ましい実施形態が示されている。電極105は、複数の電極棒401から構成された全長215mmの三相電極である。三相電流を可能にするために、電極棒401の本数が、3の倍数、例えば12本,15本,18本又は21本でなければならない。好ましくは、電極棒401は、5mmの直径を有し、チタン又は鉄から成る。得られるナノ-(H
3O
2
-)
n210が、人間による消費を意図されていない場合、電極棒401は、ステンレス鋼(有害なクロムを放出するため、飲料液体の製造使用に許可されていない)により構成されてもよい。好ましい実施形態において、電極棒401は、腐食を防止するためにプラチナが混合された(platina amalgamated)表面を備えている。
【0117】
好ましくは、電極棒401は、鉛直方向に配置されたシート402(例えばPTFEなどのプラスチックから作られている)を貫通している。好ましい実施形態において、電極105は6枚のシート402を含み、これにより、電極105を7つのセグメント412にセグメント化している。このセグメント化が
図4bに示されている。好ましくは、シート402は、ハウジング414の壁部と密閉されているが、隣接するセグメント412の反対側の一辺にある各シート402における横方向の開口部403とは密閉されていない。好ましくは、電極105のハウジング414は、入口側及び出口側に開口部416を備え、これにより、連続的な流れと、従って連続的なプロセスとを可能にしている。好ましくは、水は電極105を通って徐々に上昇する。シート402における横方向の開口部403は、水の螺旋状の流れを誘導する。この流れ方向が、
図1aに、第1リアクタチャンバ102内の矢印で示されている。
【0118】
好ましくは、電極棒401に印加される最大電力は145,000±2,000Wである。この値は、使用される水質に依存し、当業者により、幾つかの簡単な予備試験を用いて上述の範囲に調整され得る。
【0119】
以下に説明する実験を、上述のような本発明の装置を用いて実施するプロセスにより行った。福島の原子炉まで35kmの距離のポプラの木から採取した、放射能汚染された樹皮(試料A、B及びC)を、除染タンク201内で、ナノ-(H3O2
-)n210と、通常の水道水(対照試料A)で洗浄した。ヨウ素-131及びセシウム同位体、セシウム-134及びセシウム-137の量を、除染プロセスを行う前後(洗浄前/洗浄後)に測定した。核種測定の測定方法を、ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線分析法で行った。結果を次の表に示す。
【0120】
【表1】
試料A、B及びCの樹皮は、放射能が200ベクレル/kg未満又はそれよりも低下したことを示している。従って、樹皮を、堆肥及び土壌改良材の原材料として再利用できる。
【符号の説明】
【0121】
100 ナノバブルを(H3O2
-)nで発生させるリアクタユニットのシステム
101 入力ポンプ
102 第1リアクタチャンバ
103 第2リアクタチャンバ
104 スパイラル
105 電極
107 リアクタユニット
109 圧力弁
120 フィルタチャンバ、及び、(H3O2
-)nを発生させる第1リアクタチャンバから成るシステム
130 フィルタチャンバ
130’ イオン交換フィルタ
130” ストーンフィルタ
130’’’ 黒曜石フィルタ
142 イオン化された水
144 イオン化及び標準化された水
146 イオン化、標準化及び水素化された水
200 除染槽
200’ 固体材料用除染槽
200” 水用除染槽
201 除染タンク
203 浸漬バスケット
205 循環ポンプ
207 コンプレッサ
210 ナノ-(H3O2
-)n
212 パイプ
220 放射能汚染された液体材料
300 中和設備
310 液体チャンバ
312 メッシュ
314 グリッド
320 ガスチャンバ
322 セラミックボール
330 スパイラルチャンバ
332 出口ポート
340 ノズル
342 ガスパイプ
401 電極棒
402 シート
403 開口部
412 セグメント
414 ハウジング
416 開口部
【国際調査報告】