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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】海水からの水素の電気化学的生産
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20221223BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20221223BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20221223BHJP
   C25B 11/02 20210101ALI20221223BHJP
   C25B 11/046 20210101ALI20221223BHJP
   C25B 11/042 20210101ALI20221223BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20221223BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/65
C25B11/02 307
C25B11/046
C25B11/042
C25B9/00 C
C25B15/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525086
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 GB2020052798
(87)【国際公開番号】W WO2021090005
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】1916190.0
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520413254
【氏名又は名称】トルヴェックス エナジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TORVEX ENERGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート ハドソン
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA15
4K011AA17
4K011CA11
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA03
4K021CA03
4K021CA06
4K021DA10
4K021DA13
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、塩水から水素ガスを電気化学的に生成するための装置に関する。本装置は、少なくとも1つの陰極を含んでおり、前記陰極から既定の距離だけ離間した少なくとも1つの陽極を含んでおり、これらの電極を脈動DC電源に電気的に接続するためのコネクタを含んでいる。前記陰極は常磁性材料を含んでおり、前記陽極は反磁性材料を含んでいる。本発明は、また、海水から水素ガスを製造するための環境に優しい方法に関するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩水から水素ガスを電気化学的に生成するための装置であって、該装置は、
複数の陰極と、
前記複数の陰極のそれぞれから既定の距離だけ離間した少なくとも1つの陽極と、
前記陰極を電源装置の負端子に電気的に接続するための陰極端コネクタと、
前記陽極を電源装置の正端子に電気的に接続するための少なくとも1つの陽極端コネクタと、
AC電源と少なくとも1つの整流器を含む電源装置と、を備えること、
前記電源装置はAC電源を脈動DC電源に変換するように構成されていること、
前記陰極は常磁性材料を含み、前記陽極は反磁性材料を含むこと、及び
前記陽極と前記各陰極との間の距離は、前記陽極の半径の3.0倍~3.7倍に等しいこと、を特徴とする、装置。
【請求項2】
前記電源装置が単相または3相全波整流器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記陽極が陰極のアレイの中心になるように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記陰極が前記陽極から等しい距離だけ離間している、請求項1から3のいずれかに一項に記載の装置。
【請求項5】
前記アレイ内の各陰極間の距離が前記陰極の直径の3.0倍~3.7倍に等しい、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの陽極と前記複数の陰極が四面体構造に配置されている、請求項3または4に記載の装置。
【請求項7】
前記陽極と各陰極との間の距離が前記陽極の半径の3.2倍~3.6倍に等しい、請求項3または4に記載の装置。
【請求項8】
前記アレイ内の前記陰極間の距離が前記陰極の直径の3.2倍~3.6倍に等しい、請求項3から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記常磁性材料は、316-904Lステンレス鋼、317Lステンレス鋼、317LMステンレス鋼、317LMNステンレス鋼、モリブデン、タングステン、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、マンガン、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、ロジウム、パラジウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび鉄パイライトから選択され、好ましくは、前記常磁性材料は316Lステンレス鋼である、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記反磁性材料は、Zn64、Zn66、Zn67、Zn68又はZn70である、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
塩水から水素ガスを生成する方法であって、該方法は、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置を準備するステップと、少なくとも1つの陽極と少なくとも1つの陰極に脈動DC電流を供給するステップと、それにより生成された水素ガスを収集するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水から水素ガスを電気化学的に製造するための装置及び方法に関する。本発明の幾つかの態様では、本装置および方法は、塩水からの水素、酸素および/または窒素ガスのターゲット製造に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
水は豊富な天然資源であり、地球の表面の約71%を覆っている。この水の約96.5%が塩水として海洋に含まれていると推定されている。したがって、水素の生産に塩水資源を利用することは明らかに有利であろう。
【0003】
アルカリ水電解は、現在、大規模な電解水素製造に最も一般的に使用されている手法である。ただし、この手法では通常、塩水ではなく、塩分が少ない淡水を使用する。塩水を使用する場合には、電気分解によって水素ガスを生成する前に、塩水の少なくとも部分的な脱塩が必要である。これは、水処理と脱塩に関連する追加の資本コストをもたらし、脱塩中に生成される残留塩の処分の必要性ももたらす。さらに、近年、技術の大幅な改善がなされているが、これらのシステムの効率は通常、最大で約70%である。
【0004】
また、多くの他の非効率性が塩水から水素ガスを製造する既知の製造プロセスに関連している。特に、非緩衝液中の標準的な電気分解は、塩水から酸素を生成する(約2.25V未満)。ただし、約2.26Vを超えると、塩素が生成される。陽極で生成された塩素はすぐに加水分解され、Hも生成される。陽極がより酸性になると、塩化物が陽極で優先的に酸化され、腐食性物質である塩素ガスClを生成する。Clは水とも反応して次亜塩素酸(HOCI)を形成する。
【0005】
このプロセスでは、溶液の酸性度が増加して電極材料を腐食し、電極材料を交換する必要が生じるとともに、溶液を有毒化し、有害な化学物質を処分する必要が生じる。これらの問題はすべて、資本コストとランニングコストの両方を増加させ、大規模化を困難にする。
【0006】
さらに、すべての大気ガスが海水の溶液に含まれている。しかし、現在のプロセスは通常、海水からの水素ガスの抽出に依存しており、石油およびガス精製所や化学薬品製造所などのさまざまな産業で頻繁に使用される窒素ガス(N)や酸素ガス(O)などの副産物は、抽出することも、さらに利用することもされていない。
【0007】
要するに、既知のプロセスは、効率が低い、電流密度が高い、効率的な大規模化に欠けるという問題がある。通常、塩水をこれらのシステムで使用する前に、塩水の追加処理と部分的な脱塩も必要とされる。既知のプロセスはまた、水素ガスの生成をターゲットにしており、酸素ガスと窒素ガスは未開発のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
結果として、これらの従来技術の方法と関連するいくつかの不利な点を軽減または除去する、塩水から水素ガスを生成するための改善されたプロセスおよび装置が必要である。
【0009】
理想的には、塩水から水素ガスを製造するための環境に優しいプロセスが必要である。電極の分解速度の低減と同様に、危険な副産物の低減が有利となる。効率の向上と低いエネルギー入力要件も、資本コストの削減と同様に有利となる。NやOなどの他のガス状生成物もターゲットにする能力も特に有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、塩水から水素ガスを電気化学的に生成するための装置が提供され、本装置は、
複数の陰極と、
前記複数の陰極のそれぞれから既定の距離だけ離間した少なくとも1つの陽極と、
前記複数の陰極のそれぞれを電源装置の負端子に電気的に接続するための陰極端コネクタと、
前記陽極を電源装置の正端子に電気的に接続するための少なくとも1つの陽極端コネクタと、
AC電源と少なくとも1つの整流器を含む電源装置と、を備えること、
前記陰極は常磁性材料を含み、前記陽極は反磁性材料を含むこと、及び
前記陽極と前記各陰極との間の距離は、前記陽極の半径の3.0倍~3.7倍に等しいこと、を特徴とする。
【0011】
本発明者は、陽極及び陰極の材料及び構成を注意深く制御すると、本装置は、高効率なプロセスで水素ガスを生成するために使用できることを確かめた。本装置は、相当量の水素ガスを生成しながら、非常に低いエネルギー入力を必要とする。電極の分解も低減される。具体的には、脈動DC電源を使用することにより、高い水素生産効率が達成される。
【0012】
本発明によれば、電源装置は、AC電源と、AC電源を脈動DC電源に変換することができる少なくとも1つの整流器とを備える。したがって、電源装置は、脈動DC(直流)電力を本装置に供給するように構成される。
【0013】
脈動DC(直流)とは、信号の大きさが周期的に変化するが、信号の極性は一定のままであるDC(直流)である。図1は、比較のために、さまざまなタイプの電流、つまり(i)脈動、(ii)直流(一般にDCとして知られている)、(iii)可変、および(iv)交流(一般にACとして知られている)を示している。
【0014】
脈動DC電流は、入力AC電源を整流することによって生成される。整流は全波整流であってもよい。全波整流は、入力波形の両方の極性を脈動DC(直流)に変換する。
【0015】
全波整流器は、センタータップ付き変圧器または全波ブリッジ回路を使用することができる。
【0016】
全波整流器は、単相または三相整流回路とすることができる。
【0017】
一実施形態では、整流器は全波ブリッジ回路である。
【0018】
一実施形態では、電源装置は変圧器を構成する。この変圧器は、ストレイフィールド変圧器(漏れ変圧器としても知られている)とすることができる。変圧器はAC入力電源に接続することができる。
【0019】
一実施形態では、電源装置は、複数の整流器を並列に備える。一実施形態では、電源装置は、2つの整流器を並列に備える。整流器はブリッジ整流器とすることができる。
【0020】
電気構成要素はオイル内に、例えばオイルバス内に沈めることができる。適切なミネラルオイルは当業者に知られており、例えば、ASTM D3487に示されるように、電気装置で使用される絶縁オイルを含む。
【0021】
動作中、AC電源は、本明細書に記載の装置に電力を供給するために使用される脈動DC電源を生成するように整流される。
【0022】
本発明によれば、本装置は、複数の陰極のそれぞれから既定の距離だけ離間した少なくとも1つの陽極を含む。陽極は、陰極のアレイの中心となるように構成することができる。一実施形態では、電極は、四面体構造で提供することができる。「四面体構造」とは、各陽極が、陽極から等距離離間された複数の陰極によって囲まれていることを意味する。例えば、各陽極は、2~20個の陰極、又は4~10個の陰極で囲むことができるが、これは、全体の陽極表面積が全体の陰極表面積にほぼ等しければ、特に制限されない。「ほぼ等しい」とは、陽極の表面積が、陰極の表面積の20%、好ましくは15%、より好ましくは10%以内であることを意味する。
【0023】
陽極と各陰極との間の距離は、陽極の半径の3.0~3.7倍に等しく、好ましくは、陽極の半径の3.2倍~3.6倍に等しく、より好ましくは、約3.5倍に等しい。
【0024】
アレイ内の陰極間の距離は、陰極の直径の3.0~3.72倍に等しくしてよい。好ましくは、アレイ内の陰極間の距離は、陰極の直径の3.2倍~3.6倍に等しくしてよく、より好ましくは、陰極の直径の約3.5倍にしてよい。
【0025】
各陽極は、円柱ロッドの形態としてよい。
【0026】
各陰極は、円柱ロッドの形態としてよい。
【0027】
電極間の距離は、定規、デジタルノギス、巻尺などの従来の手段で測定することができる。
【0028】
常磁性材料は、外部から印加された磁場への引力が弱く、印加された磁場の方向に内部誘導磁場を形成する材料である。常磁性材料は、これらの特性を示すなら特に限定されず、例えば、316-904Lステンレス鋼、317Lステンレス鋼、317LMステンレス鋼、317LMNステンレス鋼、モリブデン、タングステン、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、マンガン、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、ロジウム、パラジウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウム又は鉄パイライトであってよい。一実施形態では、常磁性材料は316Lステンレス鋼であってもよい。代替の実施形態では、常磁性材料は黄鉄鉱であってもよく、これは、その天然の多孔質構造のために水素生成のための大きな表面積を与え、有利であり得る。
【0029】
反磁性材料は、磁場の印加によって反発され、印加された磁場と反対の方向に誘導磁場を形成する材料である。この場合も、反磁性材料は、これらの特性を示すなら特に限定されず、適切な反磁性材料が当業者に知られている。反磁性材料は、例えば、亜鉛、好ましくはZn64、Zn66、Zn67、Zn68又はZn70であってよい。
【0030】
本装置は、電極ハウジングを備えることができる。電極ハウジングは、任意の適切な材料で形成することができる。好ましくは、ハウジングは、非導電性/絶縁性材料で形成される。一実施形態では、ハウジングは、パイレックス(登録商標)又はガラスで形成される。
【0031】
あるいは、ハウジングは、金属などの導電性材料で形成してもよい。この実施形態では、ハウジングは、ネオプレンなどの非導電性材料でコーティングすることができ、又は外側電極(すなわち、ハウジングに最も近い電極)を、ネオプレンで部分的にコーティングすることができる。あるいは、電極は、外側電極とハウジングとの間に、電極の直径の3~3.7倍に等しい最小距離、好ましくは電極の直径の3.2~3.6倍に等しい最小距離が存在するように構成することができる。一実施形態では、電極の直径の約3.5倍に等しい最小距離が存在する。
【0032】
ハウジングは、電極を含む電極区画を含むことができる。
【0033】
本装置は、1つ又は複数の入口及び出口を含むことができる。
【0034】
1つ又は複数の入口は、海水入口パイプを含むことができる。
【0035】
本装置は、海水貯蔵タンクを含むことができる。海水貯蔵タンクは、重力供給を可能にするために、ハウジングの上方に設置することができる。
【0036】
1つ又は複数の出口は、水素ガス収集ユニットを含むことができる。
【0037】
本発明の一態様によれば、塩水から水素ガスを生成する方法が提供され、この方法は、上述のような装置を準備するステップと、陽極及び少なくとも1つの陰極に脈動DC電流を供給するステップと、それにより生成された水素ガスを収集するステップを含む。
【0038】
本発明者らは、脈動DC電源を使用すると、水素効率を高めることができると判定した。彼らはまた、装置に印加される電圧が制御されると、発生するガスの組成を操作できることを実証した。これは、他のガス、例えば本発明の実施形態における酸素または窒素をターゲットにする手段として使用することができる。
【0039】
また、本明細書では、電極に使用する反磁性材料を処理する方法について説明する。この方法は、反磁性材料および常磁性材料を海水環境に浸漬し、反磁性材料をDC電源の負入力端に接続し、常磁性材料をDC電源の正入力端に接続し、これらの材料に電圧を印加し、海水環境からこれらの材料を取り除き、反磁性材料を酸化させる。一実施形態では、常磁性材料はモリブデンである。電圧は30分から12時間の期間印加することができる。電圧は1時間から5時間印加することもできる。
【0040】
印加電圧は、使用する反磁性材料の寸法に基づいて、材料の1cmあたり0.075~0.65V(1平方インチあたり約0.5~10ボルト)、または1cmあたり0.15~0.75V(約1~5ボルト)にすることができる。処理ステップは、前述した装置で実行することができる。
【0041】
反磁性材料は、1時間から48時間酸化することができる。一実施形態では、反磁性材料は、12時間から36時間、または15から33時間酸化することができる。
【0042】
反磁性材料は、周囲条件下で酸化することができる。反磁性材料は、室温で酸化することができる。
【0043】
上記の方法を実行する前に、材料を海水環境に浸漬することによって、さらなる初期前処理ステップを実行し、反磁性材料を正入力端に接続し、常磁性材料を負入力端に接続し、これらの材料に電圧を印加する。電圧は、使用する反磁性材料の寸法に基づいて、材料の1cmあたり0.075~0.65V(1平方インチあたり約0.5~10ボルト)、または材料の1cmあたり0.15~0.75V(約1~5ボルト)にすることができる。電圧は、30分から12時間の期間印加することができる。電圧は1時間から5時間印加することもできる。この初期ステップでは、製造プロセスから残った材料をすべて取り除き、前処理を実行する前にいかなる汚染も取り除くことができる。初期前処理ステップは、前述した装置で実行することができる。
【0044】
本発明の様々なさらなる特徴および態様は、特許請求の範囲に特定されている。
【0045】
次に、本発明の実施形態が、同様の部品に対応する参照番号が付与されている添付図面を参照して、ほんの一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】電流のタイプ、つまり(i)脈動、(ii)直流、(iii)可変、および(iv)交流を示す。
図2】本発明の一実施形態による電源装置の概略図を提示する。
図3】本発明の一実施形態による装置の概略図を提示する。
図4】本発明の一実施形態による電極構成の概略図である。
図5】実施例8a~8cのそれぞれについて、主電源(i)からの波形、二次巻線(ii)からの波形、および第2段ブリッジ整流器(iii)からの波形を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(詳細な説明)
上記のように、図1は、比較のためにさまざまなタイプの電流を示している。脈動DCは(i)で識別されている。脈動DCは、AC電源を整流することで周期的に大きさが変化するが極性は変化しない脈動信号を生成することにより形成される。
【0048】
図2は、本発明の実施形態による電源装置の構成を示す。詳細には、漂遊変圧器の一次巻線(01)がAC入力電源に接続され、所望のAC電圧をコイル状の二次巻線(03)に提供する。可変AC電圧信号が、磁気シャント(02)を介して二次コイル巻線(03)に印加される。二次コイル状巻線の出力が、AC出力端(04)および(05)を介して第1ブリッジ整流器(06)の入力端に印加される。第1のブリッジ整流器出力端子(06)からのDC整流信号が、端末接続(07)、(08)を介して第2ブリッジ整流器(09)の入力端子に供給される。リアクタの電流需要と逆起電力をサポートするために、さらに指向性ダイオードが位置(11)、(12)、および(13)に配置され、コンデンサが第2段ブリッジ整流器の出力端子(09)を出る位置(10)に配置され、脈動DC波信号を端末コネクタ(14)および(15)を介して本発明の装置に直接入力する。
【0049】
本発明の実施形態が図3に示されている。図3を参照すると、装置は、この実施形態ではパイレックス(登録商標)で形成されたハウジング(01)を備える。ハウジングは、海水入口(02)と水素ガス及び水収集用出口(03)を備える。ハウジングは、Zn64の円柱ロッドの形態の2つの陽極(04)を含む。各陽極は、陽極から等間隔に配置された複数のステンレス鋼316Lの円柱陰極ロッド(05)によって囲まれている。陽極と陰極は、正の入力端(06)と負の入力端(07)を介して、それぞれ正のDC電源入力端と負のDC電源入力端に接続される。
【0050】
陽極及び陰極は、図4に概略的に示されている四面体構造に配置されている。図4において、各陽極(08)は、複数の陰極(09)によって囲まれている。各陰極は、陽極から、及び他の陰極から、所定の距離で離間されている。動作中、この構成は、領域全体(単にロッドの周囲領域)が導電性ではないことを意味し、アンペアの引き出しが低くなり、効率が向上すると考えられる。
【0051】
次に、本発明を以下の実施例を参照して説明するが、それらは例示にすぎず、添付の請求の範囲によって特定される本発明を限定することを意図するものではない。
【0052】
(実施例)
(材料と方法論)
実験は、ホフマン装置に接続され且つ2リットルの海水で満たされた専用システムで実施された。このシステムは、海水を導入するための入口を備えたパイレックス(登録商標)ハウジングと、ガス状反応生成物を収集するためのインラインタップ付きの100ml標準シリンジを備えた出口パイプで構成されている。電圧と電流の測定値は、シグレント(登録商標)オシロスコープ(シグレントSDS1202DL)を使用して測定した。スニッファーBCガス検知器(メタン校正済み)を使用した。
【0053】
ガス分析は、多くの分析についてUKAS認定を受けている独立のISO17025認定施設によって実施した。認定ガス混合物(CKガスサプライヤー(現在はBuseガス))を使用したが、水素はエアプロダクツ社から供給した(99.95%vol超で認定)。この目的のために、サンプルトレースを、分析時に実行されたキャリブレーションと比較した。
【0054】
(実施例1:海水の分析)
実験に使用した海水を個別に分析し、その結果を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例2:装置の初期試験と汚染物質除去)
(2.1)
初期試験は、科学的スケールを使用して金属サンプルの初期重量測定を行うことによって実施した。次に、サンプルを装置内のS/S316L陰極に接続し、3ボルト@0.64アンペア=1.92ワットの正電荷に1時間さらした。次に、サンプルを大気圧及び大気温度で24時間乾燥させた後、再度計量した。この実験の結果を以下の表2.1に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
(2.2)
サンプルを亜鉛陽極(負電荷)に接続して、例1.1と同じ方法を繰り返した。この実験の結果を以下の表2.2に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
(実施例3)
実施例2で試験したものと同じ材料を常磁性陽極(この場合はステンレス鋼(S/S316L))に接続した。サンプルを3ボルト@0.64アンペアの正電荷に1時間さらした。抵抗をアナログプローブによって反応全体を通して測定した。この実験の結果を以下の表3.1に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
出力液の目視観察は茶色を示し、Clの生成を示した。
【0063】
反磁性陽極であるZn64に接続して試験を繰り返した。この試験の結果を以下の表3.2に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
実験終了後に除去された液体の目視観察は、透明色を示し、塩素が発生しなかったことを示唆している。
【0066】
(実施例4:水素製造)
100mlシリンジを事前に計量し、S/S316L陰極とZn64アノードを備えた装置に取り付けた。3V@0.64アンペアの電圧を印加し、生成されたガスをシリンジに収集した。シリンジの重さを再計量した。結果は、反応開始時の重量が50.425gであったのに対して、反応終了時のシリンジの重量は50.33gであり、水素ガスの存在を示唆している。
【0067】
ガスは4.6ml/分(276ml/時)の速度で生成された。
【0068】
発生したガスは、ホフマン装置の出力部上方の試験管に集められ、副木で点火した。ガスは発火時にポップ音を発し、水素ガスの存在を示した。さらにガス検知をスニファー法で実行し、密度チャートとクロスチェックした。再度、水素ガスの存在が確認された。
【0069】
生成されたガスのシリンジは、次の条件下で、独立GC-TCD試験に送った。
【0070】
【表6】
【0071】
結果は、ガスの組成が以下の通りであることを示した。
【0072】
【表7】

*実験は、サンプルに含まれる窒素による検出器の飽和のために窒素の存在量に軽微な誤差が発生する可能性があることを示した。
【0073】
(実施例5:電極距離の影響)
中央に位置するアノードと配列されたカソードとの間の距離が装置によって引き出されるアンペアに与える影響を調べた。アレイシステムの概略図が図2に示されている。距離Dは、アノードの中心からカソードの中心までの距離を測定したものである。流速は4.6ml/分であった。
【0074】
【表8】
【0075】
これらの結果は、アノードと配列されたカソードとの間の距離がアノードの半径の約3~3.2倍に制御されている場合、引き出されるアンペアは安定して低いままであることを示している。これは、電極アレイの全体的な設計が、電気分解の標準プレート構成に関連する問題のいくつかを軽減しながら、海水から水素ガスを生成する安定で効率的な方法を維持する上で重要な役割を果たすことを示している。
【0076】
時間の経過とともに温度はわずかに上昇するが、ハウジングの単純なフロー設計構造によって温度を制御することができる。
【0077】
(実施例6)
実施例4の実験を、10v@9アンペアのDC電源入力と1Lシリンダー内のガス収集で再現した。ガス収集後に濾過ステップを追加し、ガスを、それぞれ12インチ/30.48cmの、(1)ポリマーフィルタ(水に予め浸したポリマービーズ)、(2)カーボンフィルタ及び(3)ゼオライトフィルタからなる3段フィルタ(全長36インチ/91.44cmのフィルタ)に通した。3段ろ過は、(1)反応プロセスからの塩残留物の吸収、(2)一酸化炭素/二酸化炭素の吸収、(3)残りの水分の吸収に役立つ。次に、ガスを3バールに圧縮した後で独立分析に送った。分析結果を以下の表6.1に示す。
【0078】
【表9】
【0079】
ASTM D2504:ガスクロマトグラフィーによるC及び軽質炭化水素製品中の非凝縮性ガスの標準試験方法。modは、以下に詳述するように、標準方法に変更が加えられたことを示す。
【0080】
セクション9.2:キャリブレーション
純粋なガス又は認定ブレンドを使用して、分析対象の製品で望まれる濃度範囲で決定される化合物を含む、少なくとも3つの合成標準サンプルを準備する。mod:サンプル中の個々の成分濃度に応じて、2点又は1点のキャリブレーションを使用したことを示す。
【0081】
セクション10.1:手順
ガス状サンプルを含むサンプルシリンダーを金属管でガスサンプルバルブに接続し、サンプルを約1/2分間、70から100ml/分の速度で流す。mod:流量は測定しないで、この特定のGC構成の経験及び連続実行の再現性に従って実行する。これはシステムごとに異なる。
【0082】
セクション12:精度と偏り
反復性と再現性に関するデータ。mod:この特定のアプリケーションの精度データはない。
IP405:市販のプロパン及びブタン-GCによる分析。modは、以下に詳述するように、標準方法に変更が加えられたことを示す。
【0083】
セクション3:原理
ガスクロマトグラフィーによる物理的分離。標準参照混合物又は純粋な炭化水素をカラムに通すことによる、又は典型的なクロマトグラムの相対リテンションボリュームとの比較による成分の同定。ピーク面積を測定し、補正係数を適用することによる成分濃度の計算。本方法は、0.1%未満のレベルを除外する。mod:ガス標準を使用して相対面積により濃度を計算し、サンプルに炭化水素が殆ど又は全く含まれていないことが判明したときレポート制限が緩和されることを除いて、すべての標準方法を使用したことを示す。レポート制限を計算するために、ppmガス標準を使用し、3:1の信号対雑音比を使用した。
【0084】
セクション5.2:材料
純粋なガス又は認定された組成のガスの混合物。mod:上記のように使用したことを示す。
【0085】
セクション6:装置
6.3:カラム
この節で説明されるカラムのタイプは適切であることがわかっており、推奨されている。6.3.3で引用した分離性能が達成され、他の炭化水素の相対保持が周知であれば、他のカラムを使用することができる。mod:標準方法は、「その他」のカラムを、それらが分離能及び保持時間による正しい同定に適合する限り、使用可能である。キャピラリカラムは、この分析の場合と同様に、おおむね充填カラムの性能を上回った。
【0086】
6.3.3:分離能
abは>1.5である必要がある。ここで、RabはピークAとBの間の分離能であり、AとBはプロパンとプロペン、又はプロペンとイソブタンのいずれかである。mod:>1.5に設定された分離能Rabは、C3が3.28インチ、プロペンが5.70インチ、イソブタンが8.11インチで溶出するカラムを使用して簡単に超えられた。
【0087】
セクション8:定量化
8.2.2.2.フレームイオン化検出器
ピーク面積補正係数は、炭素原子、水素原子、及び成分の質量係数に基づく式に従って標準ブレンドが使用されていない場合にのみ使用される。mod:ピーク面積補正係数は使用されないが、認定された標準は使用される。
【0088】
セクション10:精度
反復性と再現性に関するデータ。mod:この特定のアプリケーションの精度データはない。
【0089】
(実施例7)
実施例6の実験を、フィルタの長さを12インチ/30.48cmのポリマー、24インチ/60.96cmのゼオライト、及び24インチ/60.96cmのカーボン(すなわち、60インチ/152.4cmのフィルタ全長)に増加したことを除いて、再現した。結果を以下の表7.1に示す。
【0090】
【表10】
【0091】
(実施例8)
実施例7の実験を、いくつかの変更を加えて再現した。フィルタの長さを、12インチ/30.48cmのポリマー、12インチ/30.48cmのゼオライト、12インチ/30.48cmのカーボンとした(つまり、全長36インチ/91.44cmのインラインフィルタ)。ガス収集チャンバーの前に第2段のカーボンフィルタ(36インチ/91cm)を配置し、銅メッシュフィルタをガスボトルに接続した。電極距離は3.5の比率であり、脈動DC入力は、図2で説明したように構成された電源装置によって、151Vac、167Vac、および185Vacの初期AC電圧で生成された(それぞれ実施例8a、8b、8c)。一次巻線へのAC電圧入力、二次巻線からの出力、および第2段のブリッジ整流から装置の端子入力へのDC出力が測定され、以下の表8.1に示されている。
【0092】
【表11】
【0093】
実施例8a、8b、および8cのそれぞれについて、主電源(i)から、2次巻線(ii)から、および第2段のブリッジ整流器(iii)から得られたAC出力波形が図5に示されている。図5Aは、実施例8aから得られた、主電源(151Vac)からの、変圧器(18Vac)からの、および第2段のブリッジ整流器(14.2Vdc)からの結果を示す。図5Bは、実施例8bから得られた、主電源(167Vac)からの、変圧器(20Vac)からの、第2段のブリッジ整流器(16.3Vdc)から得られた結果を示す。図5Cは、実施例8cにおいて、主電源(185Vac)から、変圧器(23Vac)から、第2段ブリッジ整流器(18.9Vdc)から得られた結果を示す。
【0094】
さらなる結果は、第2段のブリッジ整流器から20Vdcまでの正の波形が生成されることを示唆しており、その時点で、極性が逆になり、陰極が正に充電され、陽極が負に充電される。電圧の増加に対応するために、電極間の距離を3.5の比率に増加させた(つまり、陽極とアレイ陰極間の距離を陽極の半径の3.5倍にした)。このより大きな距離は、磁力線の相互作用が妨げられるように思われ、この距離では極性の反転は見られなかった。
【0095】
したがって、電極距離を3.5の比率にしたこと(および上述のフィルタの変更)を除いて、第2段の整流器からの脈動DC出力(上記の8a~8cに示される)を、実施例7のように装置に供給した。
【0096】
これらの各実施例の発生ガスの組成を以下の表8.2に示す。
【0097】
【表12】
【0098】
したがって、これらの結果は、79.9%の水素含有量が得られることで、プロセスの効率を強調している。
【0099】
コンパイルされたデータは、水素ガスが電圧の増加とともに増加することを示しており、21.4Vdcの最終電圧が99.98%の水素生成をもたらすことを示唆している。
【0100】
本明細書(添付の請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示されたすべての特徴、及び/又は同じく開示された任意の方法又はプロセスのすべてのステップは、相互排他的であるそのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかの組み合わせを除いて、任意に組み合わせることができる。本明細書(添付の請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された各特徴は、特に明記しない限り、同じ、同等又は類似の目的を果たす代替特徴と置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示された各特徴は、同等又は類似の特徴の一般的例の一例にすぎない。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴のうちの任意の新規の1つ、任意の新規の組み合わせ、又は同じく開示された任意の方法又はプロセスのステップのうちの任意の新規の1つ、又は任意の新規の組み合わせに及ぶ。
【0101】
本明細書で使用されている実質的に複数形及び/又は単数形の用語は、当業者であれば、文脈及び/又は妥当性に応じて複数形の用語を単数のものとして、及び/又は単数形の用語を複数のものとして解釈することができる。明瞭のために、様々な単数形/複数形の用語は本明細書において適宜置き換えることができる。
【0102】
本開示で及び特に添付の請求の範囲で使用される用語は、概して、広義の(open)用語として意図される(例えば、用語「含む(including)」は「含むが、限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「含むが、限定されない」と解釈されるべきである)ことは当業者に理解されるだろう。更に、導入された請求項の記載の具体的な数が意図される場合、そのような意図は、請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合には、そのような意図は存在しないことも当業者に理解されるだろう。例えば、理解の一助として、以下の添付の請求の範囲は、請求項の記載を導入するために導入句「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」の使用を含んでもよい。しかしながら、このような句の使用は、同じ請求項が、導入句「少なくとも1つの」又は「1つ又は複数の」、及び「a」又は「an」などの不定冠詞含む(例えば、「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つの」又は「1つ又は複数の」を意味すると解釈されるべきである)場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入が、そのような、導入された請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、そのような1つの記載のみを含む実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、同じことが、請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても当てはまる。加えて、導入された請求項の記載の具体的な数が明示的に記載されている場合であっても、そのような記載は、少なくとも記載された数(例えば、他の修飾語句を伴わない「2つの記載」のそのままの記載は、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)を意味すると解釈されるべきであることは、当業者に理解されるであろう。
【0103】
本開示の様々な実施形態は例示の目的で本明細書に開示されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができることが理解されよう。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態は限定を意図するものではなく、真の範囲は以下の請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】