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特表2023-500241水蒸気バリア性が増大されたMFC基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】水蒸気バリア性が増大されたMFC基材
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20221223BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20221223BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20221223BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20221223BHJP
   C08J 7/048 20200101ALI20221223BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H19/20 B
D21H19/82
B32B23/08
C08J7/048 CEP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525089
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 IB2020060349
(87)【国際公開番号】W WO2021090192
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】1951259-9
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】リーティケイネン、カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】ニーレン、オットー
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F006AA02
4F006AA51
4F006AB20
4F006AB64
4F006BA05
4F006BA11
4F006CA07
4F006EA05
4F100AJ04A
4F100AJ07B
4F100AK21B
4F100AK25B
4F100AT00
4F100BA02
4F100BA03
4F100CA02B
4F100CA02H
4F100JD04
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG34
4L055AG44
4L055AG45
4L055AG47
4L055AG64
4L055AG71
4L055AH50
4L055AJ01
4L055BE08
4L055BE09
4L055CD01
4L055EA04
4L055EA12
4L055EA14
4L055EA31
4L055EA32
4L055FA14
4L055GA47
(57)【要約】
(a)MFCを含むセルロース基材の少なくとも1つの層、および(b)前記セルロース基材の少なくとも1つの表面上に配置された第1のバリア層を含むバリア材料、ならびに、セルロース基材の水蒸気透過率(WVTR)を低減するための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むセルロース基材の水蒸気透過率(WVTR)を低減するための方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
i.MFCを含むセルロース基材を提供するステップ;
ii.前記セルロース基材の少なくとも1つの表面に第1の表面処理組成物を適用するステップであって、前記第1の表面処理組成物が水溶性ポリマーおよび架橋剤を含むステップ;ならびに
iii.前記第1の表面処理組成物を硬化させて、前記セルロース基材の前記少なくとも1つの表面上に第1のバリア層を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
MFCを含む前記セルロース基材が、少なくとも40重量%のMFC、好ましくは少なくとも60重量%のMFC、より好ましくは少なくとも80重量%のMFCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋剤が、有機酸、好ましくは有機ポリ酸;有機酸もしくは有機ポリ酸の金属塩;または、有機酸および有機酸の金属塩の混合物から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機酸が、クエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、1,2,3,4-ブチルテトラカルボン酸、マレイン酸または酒石酸から選択され、好ましくはクエン酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の表面処理組成物が緩衝水溶液であり、そこで前記架橋剤が、有機酸、好ましくは有機ポリ酸、およびクエン酸ナトリウムなどの前記有機酸の金属塩を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリラート、多糖、例えばデンプン、セルロース、グアーガム;またはそれらの混合物もしくはコポリマーから選択され、好ましくはポリビニルアルコールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が、前記第1の表面処理組成物の適用前に、25000秒/100ml未満、好ましくは20000秒/100ml未満、より好ましくは15000秒/100ml未満のISO 5636-5に従って測定された空気抵抗値を有し、かつ、前記第1の表面処理組成物の硬化後に、25000秒/100ml超、好ましくは30000秒/100ml超、より好ましくは40000秒/100ml超のISO 5636-5に従って測定された空気抵抗値を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記基材が、前記第1の表面処理組成物の適用前に、100g/m/日を超える、好ましくは200g/m/日を超える、より好ましくは500g/m/日を超えるASTM F-1249に従って測定されたWVTR(23℃および50%相対湿度にて)を有し、かつ、前記第1の表面処理組成物の硬化後に、100g/m/日未満、好ましくは75g/m/日未満、より好ましくは50g/m/日未満のASTM F-1249に従って測定されたWVTR(23℃および50%相対湿度にて)を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の表面処理組成物が、1~10gsm、好ましくは1~4gsmのコーティング重量で適用される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の表面処理組成物の硬化後に、第2の表面処理組成物を前記第1のバリア層に適用するステップであって、この第2の表面処理組成物が第2の水溶性ポリマーおよび任意選択で架橋剤を含むステップ、ならびに、前記第2の表面処理組成物を乾燥および/または硬化させて、第2のバリア層を形成するステップを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の表面処理組成物が少なくとも10重量%の水溶性ポリマーを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
2層以上の第1のバリア層、例えば、2、3、4、5または10層の第1のバリア層が適用されるように、前記ステップiiおよびiiiが繰り返される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の表面処理組成物が3~7の間のpHを有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
バリア材料であって、
- MFCを含むセルロース基材の少なくとも1つの層、ならびに
- 前記セルロース基材の少なくとも1つの表面上に配置された第1のバリア層であって、水溶性ポリマーおよび架橋剤を含む第1の表面処理組成物を前記セルロース基材に適用し、前記第1の表面処理組成物を硬化させることによって形成される前記第1のバリア層を含み、
前記バリア材料が、100g/m/日未満、好ましくは75g/m/日未満、より好ましくは50g/m/日未満のASTM F-1249に従って測定されたWVTR(23℃および50%相対湿度にて)を有する、バリア材料。
【請求項15】
MFCを含む前記セルロース基材が、少なくとも40重量%のMFC、好ましくは少なくとも60重量%のMFC、より好ましくは少なくとも80重量%のMFCを含む、請求項14に記載のバリア材料。
【請求項16】
前記架橋剤が、有機酸、好ましくは有機ポリ酸、ならびに、有機酸もしくは有機ポリ酸の金属塩、または、有機酸および有機酸の金属塩の混合物から選択される、請求項14または15に記載のバリア材料。
【請求項17】
前記第1の表面処理組成物が緩衝水溶液であり、そこで前記架橋剤が、有機酸、好ましくは有機ポリ酸、および前記有機酸の金属塩を含む、請求項14~16のいずれか1項に記載のバリア材料。
【請求項18】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリラート、多糖、例えばデンプン、セルロース、もしくはグアーガム;またはそれらの混合物もしくはコポリマーから選択され、好ましくはポリビニルアルコールである、請求項14~17のいずれか1項に記載のバリア材料。
【請求項19】
前記第1のバリア層上に第2のバリア層をさらに含み、前記第2のバリア層が、第2の水溶性ポリマーおよび任意選択で架橋剤を含む第2の表面処理組成物を前記第1のバリア層に適用すること、ならびに、前記第2の表面処理組成物を乾燥および/または硬化させることによって形成される、請求項14~18のいずれか1項に記載のバリア材料。
【請求項20】
前記第2の表面処理組成物が架橋剤を含まない、請求項14~19のいずれか1項に記載のバリア材料。
【請求項21】
2層以上の第1のバリア層、例えば、2、3、4、5または10層の第1のバリア層を含む、請求項14~20のいずれか1項に記載のバリア材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(a)ミクロフィブリル化セルロースを含むセルロース基材の少なくとも1つの層、および(b)前記セルロース基材の少なくとも1つの表面上に配置された第1のバリア層を含むバリア材料が提供され、さらに、セルロース基材の水蒸気透過率(WVTR)を低減し、任意選択でセルロース基材の酸素バリア性(OTR)ならびに/または油および/もしくはグリースに対するバリア性を改善する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
セルロースベースの基材の問題の1つは、水分(湿分)に非常に敏感であり、高い相対湿度(RH)では実質的に酸素バリア性を提供せず、低または高RHで水分バリア性をほとんどまたはまったく提供しないことである。別の問題は、高速脱水が困難であり、ウェブの品質、特にその後のバリア特性に影響を与えるため、製紙機(抄紙機)などのワイヤを使用したウェットレイド技術(湿式技法)でセルロースフィルムを製造することが非常に難しいことである。
【0003】
ミクロフィブリル化セルロース材料等のナノセルロース材料の水分感受性の問題は、水蒸気によって誘発される膨潤、および良好な酸素バリア性などの多くの理論や効果を含む多数の科学論文に記載されている(例えば、Wang,J.,et al., Moisture and Oxygen Barrier Properties of Cellulose Nanomaterial-Based Films(セルロースナノ材料ベースのフィルムの水分および酸素バリア特性)、ACS Sustainable Chem,Eng.,2018,6(1),49-70ページ参照)。セルロースの結晶化度とポリマー添加剤の役割(Kontturi,K., Kontturi,E., Laine,J., Specific water uptake of thin films from nanofibrillar cellulose(ナノフィブリルセルロースからの薄膜の特定の吸水率)、Journal of Materials Chemistry A,2013,1,13655参照)に加えて、多くの様々な疎水性コーティング溶液が提案されてきた。
【0004】
これらの問題は、ニート(neat)の基材だけでなく、変換された基材にも当てはまる(すなわち、水分の拡散によって時間の経過と共にバリア特性が低下するため、基材が例えば紙や板紙などの他の基材とラミネートされているものもまた、水分バリア性が欠如する)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの課題は、PEなどのプラスチック層(単層/多層)を使用せずに多くのバリア特性を備えた薄い基材を作成すること、または、プラスチック層(単層/多層)を減少させること、もしくは適用されるプラスチック層(単層/多層)の厚みを減少させることを可能にすることである。本発明の技術によれば、プラスチックのラミネートまたはコーティングを使用せずに、増大されたバリア特性(酸素、水蒸気および他のガスに対して)を有する持続可能な基材またはフィルムの作成が可能になる。この基材は、ポリマーまたはプラスチック層でラミネートされ、非常に高いバリア特性を達成し、あるいはヒートシール性(熱封止性)や液体バリア性などの他の特徴を与えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下が提供される。
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むセルロース基材の水蒸気透過率(WVTR)を低減するための方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
a.MFCを含むセルロース基材を提供するステップ;
b.前記セルロース基材の少なくとも1つの表面に第1の表面処理組成物を適用するステップであって、前記第1の表面処理組成物が水溶性ポリマーおよび架橋剤を含むステップ;ならびに
c.前記第1の表面処理組成物を硬化させて、前記セルロース基材の前記少なくとも1つの表面上に第1のバリア層を形成するステップ
を含む、方法。
【0007】
また、以下が提供される。
バリア材料であって、
- MFCを含むセルロース基材の少なくとも1つの層、ならびに
- 前記セルロース基材の少なくとも1つの表面上に配置された第1のバリア層であって、水溶性ポリマーおよび架橋剤を含む第1の表面処理組成物を前記セルロース基材に適用し、前記第1の表面処理組成物を硬化させることによって形成される前記第1のバリア層を含む、バリア材料。
【0008】
本発明の追加の態様が、以下の詳細な説明、実施例および添付の特許請求の範囲に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
MFC基材の水蒸気バリア特性の大幅な改善が、以下によって達成され得ることが分かった:
a.MFCを含むセルロース基材を提供するステップ;
b.前記セルロース基材の少なくとも1つの表面に第1の表面処理組成物を適用するステップであって、前記第1の表面処理組成物が水溶性ポリマーおよび架橋剤を含むステップ;ならびに
c.前記第1の表面処理組成物を硬化させて、前記セルロース基材の前記少なくとも1つの表面上に第1のバリア層を形成するステップ。
【0010】
従って、本明細書には以下が開示されている:
MFCを含むセルロース基材の水蒸気透過率(WVTR)を低減するための方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
a.MFCを含むセルロース基材を提供するステップ;
b.前記セルロース基材の少なくとも1つの表面に第1の表面処理組成物を適用するステップであって、前記第1の表面処理組成物が水溶性ポリマーおよび架橋剤を含むステップ;ならびに
c.前記第1の表面処理組成物を硬化させて、前記セルロース基材の前記少なくとも1つの表面上に第1のバリア層を形成するステップ
を含む、方法。
【0011】
本明細書に記載された方法に従って製造され得るバリア材料は、以下を含む:
MFCを含むセルロース基材の少なくとも1つの層、ならびに
前記セルロース基材の少なくとも1つの表面上に配置された第1のバリア層であって、水溶性ポリマーおよび架橋剤を含む第1の表面処理組成物を前記セルロース基材に適用し、前記第1の表面処理組成物を硬化させることによって形成される前記第1のバリア層。
【0012】
理論に拘束されることなく、本明細書に開示されたバリア材料の改善された特性は、1つの層が良好な酸素バリア性(この場合はMFCの基材)を提供し、1つのバリア層が良好なWVTR(架橋層)を提供し、ここで、架橋剤が適用されたコーティングは、ベース基材に補完的な物理的および機械的特性を与えることができることであると考えられる。
【0013】
一実施形態では、バリア層は、1つ、2つ、またはそれより多くのバリア層(単層/多層)の形態であってよく、基材の片面または両面のいずれかに配置され得る。一実施形態では、第1のバリア層は、基材の片面のみ、または基材の両側に配置される。一実施形態では、第1および第2のバリア層は、基材の片面のみ、または基材の両側に配置される。
【0014】
好ましくは、本明細書に開示されたバリア材料は、少なくとも2つのバリア特性を同時に改善し、これは例えば、改善されたWVTR、改善されたOTR、油および/またはグリースに対する耐性である。一実施形態では、コーティングは、主に良好な水蒸気バリア性を与えるが、それはまた、基材のOTRを改善するのを助けるであろう。一実施形態では、バリア材料は、食品由来の油および/またはグリースに対して良好な耐性を与える。
【0015】
別の実施形態では、バリア材料は、産業、食品、化粧品、およびパーソナルケアまたは電子機器の用途などの包装またはラッピング用に使用される。バリア材料は、耐油紙などの包装紙や、例えばストローなどのベースシートとしても使用され得る。
【0016】
本発明の方法およびバリア材料の詳細を以下に説明する。本発明の方法の詳細は、本発明のバリア材料に適用され得るものであり、必要な変更を加えて逆もまた同様である。
【0017】
MFCを含むセルロース基材
本発明の技術は、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むセルロース基材を必要とする。
【0018】
MFCについては、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノセルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル凝集体、セルロースミクロフィブリル凝集体などのさまざまな同義語がある。セルロース繊維は、好ましくは、溶媒交換および凍結乾燥された材料についてBET法で測定するとき、形成されたナノセルロースの最終比表面積が約1~約400m/g、例えば10~300m/g、より好ましくは50~200m/gである程度までフィブリル化される。MFCの平均フィブリル直径(mean average fibril diameter)は1~1000nm、好ましくは10~1000nmである。一実施形態では、MFCは、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも60重量%、適切には少なくとも70重量%の100nm未満の平均フィブリル直径を有するフィブリルを含む。MFCは、高解像度のSEMまたはESEM画像を分析することによって特徴付けることができる。
【0019】
ミクロフィブリル化セルロースを作成するためのさまざまな方法が存在する。例えば、1回もしくは複数回の精製、予備加水分解に続く精製または高せん断崩壊またはフィブリルの遊離などである。ミクロフィブリル化セルロース製造をエネルギー効率的かつ持続可能なものとするために、通常1つまたは複数の前処理ステップが必要である。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、例えばヘミセルロースもしくはリグニンの量を減少させるために、酵素的または化学的に前処理されてよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に変性されていてよく、ここでセルロース分子は、元のセルロースに見られる以外の(またはそれより多くの)官能基を含む。そのような基には、とりわけ、カルボキシメチル、アルデヒドおよび/もしくはカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化により得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、または四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が含まれる。上記の方法の1つで変性または酸化された後、繊維をミクロフィブリル化セルロースに分解するのがより容易である。
【0020】
ミクロフィブリル化セルロースには、幾分かのヘミセルロースが含まれている場合がある。その量は、植物源に依存している。前処理された繊維、例えば加水分解された、予備膨潤された、または酸化されたセルロース原料の機械的分解は、精製機、グラインダー、ホモジナイザー、コロイド化機、摩擦グラインダー、超音波ソニケーター、単軸もしくは二軸押出機、または、ミクロ流動化機、マクロ流動化機もしくは他の流動化機型ホモジナイザー等の流動化装置などの適切な装置で実行される。MFCの製造方法に応じて、製品には、微粉、もしくはナノ結晶セルロース、または、木質繊維もしくは製紙(抄紙)プロセスに存在するその他の化学物質が含まれている可能性もある。製品には、効率的にフィブリル化されなかった様々な量のミクロンサイズの繊維粒子が含まれている場合もある。
【0021】
MFCは、広葉樹繊維(硬材繊維)または針葉樹繊維(軟材繊維)の両方に由来する木材セルロース繊維から製造されうる。また、MFCは、微生物源、麦わらパルプなどの農業用繊維、竹、バガス、または他の非木材繊維源から作ることもできる。好ましくは、MFCは、バージン繊維からのパルプを含むパルプ、例えば、機械パルプ、化学パルプ、および/または熱機械パルプから作られる。MFCはまた、損紙(broke:ブローク、廃棄紙)や再生紙(すなわち、消費者使用前または消費者使用後の廃棄物)から作ることもできる。
【0022】
MFCは、ネイティブ(つまり化学的に変性されていないもの)であってよく、あるいは化学的に変性されていてもよい。
【0023】
リン酸化ナノセルロース(リン酸化ミクロフィブリル化セルロース;P-MFCとも呼ばれる)は、通常、NHPO、水および尿素の溶液に浸したセルロース繊維を反応させ、続いて繊維をP-MFCにフィブリル化することによって得られる。1つの特定の方法は、水中のセルロースパルプ繊維の懸濁液を提供し、前記水懸濁液中のセルロースパルプ繊維をリン酸化剤でリン酸化し、続いて当技術分野で一般的な方法でフィブリル化することを含む。適切なリン酸化剤には、リン酸、五酸化リン、オキシ塩化リン、リン酸水素二アンモニウム、およびリン酸二水素ナトリウムが含まれる。
【0024】
ミクロフィブリル化セルロースの懸濁液は、セルロース基材を形成するために使用される。典型的には、セルロース系基材は、総固形分に基づいて0.01~100重量%の量のミクロフィブリル化セルロースを含み、例えば30~100重量%、適切には40~100重量%、例えば50~100重量%または70~100重量%の量のミクロフィブリル化セルロースを含む。
【0025】
セルロース基材を形成するために使用される懸濁液は、典型的には水性懸濁液である。懸濁液は、製紙プロセス(抄紙プロセス)で知られている追加の化学成分を含み得る。これらの例としては、ナノフィラーまたはフィラー、例えば、ナノクレイ、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、SiO、Al、TiO、石膏などを挙げることができる。繊維性基材はまた、セルロース誘導体もしくは天然デンプン、または、例えばカチオン性デンプン、非イオン性デンプン、アニオン性デンプンもしくは両性デンプンなどの加工デンプン等の強化材を含み得る。強化剤はまた、合成ポリマーであり得る。さらなる実施形態において、繊維性基材はまた、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、シリカ、ナノクレイ、ミョウバン、P-DADMAC、PEI、PVAmなどの保持剤および排水剤(retention and drainage chemicals)を含み得る。さらに別の実施形態では、セルロース基材はまた、染料または蛍光増白剤、消泡剤、湿潤強度樹脂、殺生物剤、疎水性剤、バリア性化学物質などの他の典型的なプロセス添加剤または性能向上剤を含み得る。
【0026】
ミクロフィブリル化セルロース懸濁液は、カチオン性またはアニオン性ミクロフィブリル化セルロース、例えばカルボキシメチル化ミクロフィブリル化セルロースなどをさらに含み得る。一実施形態では、カチオン性またはアニオン性ミクロフィブリル化セルロースは、ミクロフィブリル化セルロースの総量の50重量%未満の量で、好ましくは40重量%未満の量で、またはより好ましくは30重量%未満の量で存在する。
【0027】
懸濁液からのセルロース基材の形成プロセスは、セルロース基材が除去されていない基材上に自立(free-standing)フィルムまたはコーティングを作成するためのキャスティングまたは湿式適用(ウェットレイ)であり得る。本発明の方法で形成されたセルロース基材は、2つの対向する一次表面を有すると理解されるべきである。したがって、セルロース基材は、フィルムまたはコーティングであり得、そして最も好ましくはフィルムである。セルロース基材は、1~80gsm、好ましくは10~50gsm、例えば10~40gsm、最も好ましくは20~35gsmの坪量を有し得る。特にコーティングの場合、坪量を低くすることができ、例えば0.1~20gsmであってよく、より好ましくは0.1~10gsmであってさえ良い。
【0028】
本明細書に記載された方法の一態様において、セルロース基材は、それが乾燥された後に表面処理され、例えば、それは40~99.5重量%の固形分、例えば60~99重量%、80~99重量%、または90~99重量%の固形分を有する。
【0029】
本明細書に記載された方法の一態様において、表面処理されるセルロース基材は、好ましくは紙または板紙の製紙機(抄紙機)上の多孔質ワイヤの上に、湿式適用によって形成されたものであり、50~99重量%の固形分を有する。
【0030】
本明細書に記載された方法の別の態様では、表面処理されるセルロース基材は、キャスティングによって形成されたものであり、50~99重量%の固形分を有する。
【0031】
本明細書に記載された方法の別の態様では、セルロース基材は、それが乾燥された後に表面処理され、例えば、それは50~99重量%の固形分、例えば60~99重量%、80~99重量%、または90~99重量%の固形分を有する。
【0032】
本明細書に記載された方法の別の態様では、セルロース基材は、それが乾燥された後に表面処理され、例えば、それは0.1~50重量%の固形分、例えば1~40重量%または10~30重量%の固形分を有する。
【0033】
本明細書に記載された方法の別の態様では、表面処理されるセルロース基材は、処理後において1~100g/mの範囲、より好ましくは10~50g/mの範囲の坪量を有する自立型フィルム(free-standing film)である。この自立型フィルムは、キャリア基材上に直接取り付けられてもよいし、1つまたは複数のタイ層(tie layers)を介して取り付けられてもよい。
【0034】
一実施形態では、キャリア基材は、紙もしくは板紙、または、プラスチックもしくは鉱物コーティングされた紙または板紙である。基材の例としては、例えば、耐油紙、グラシン紙、パーチメント紙、ラベル紙、鞄および袋クラフト紙、含浸紙、固形漂白ボード、固形無漂白ボード、折りたたみボックスボード、ホワイトライニングされた(白で裏打ちされた)チップボード、段ボールが挙げられる。
【0035】
したがって、本明細書に開示されたバリア材料は、オフラインまたはオンラインプロセスで前記基材上に適用され得る。好ましくは、本明細書に開示されたバリア材料は、さらに積層(ラミネート)され、所望の最終製品に製造され得る。
【0036】
パルプ繊維および粗微粉の量は、0~60重量%の範囲であってよい。パルプ繊維と微粉の量は、例えば、乾燥または湿潤サンプルを分解し、次いで分画し、それら画分の粒子サイズの分析を行うことによって、後から見積もることができる。好ましくは、未乾燥の完成紙料(furnish)は、それぞれ微粉および繊維の量を測定するために、分画および分析される。
【0037】
セルロース基材はまた、1~50重量%の範囲のナノフィラーなどの1種または複数種のフィラー(充填剤)を含み得る。典型的なナノフィラーは、ナノクレイ、ベントナイト、シリカまたはケイ酸塩、炭酸カルシウム、タルカムなどであり得る。好ましくは、フィラーの少なくとも一部は板状フィラーである。好ましくは、フィラーの1つの寸法は、1nm~10μmの平均の厚みまたは長さを有するべきである。たとえば光散乱技法を使用してフィラーの粒子サイズ(粒径)分布を測定する場合、好ましい粒子サイズは、90%超が2μm未満であるべきである。
【0038】
表面処理されたセルロース基材は、好ましくは3~12の表面pH、またはより好ましくは5.5~11の表面pHを有する。より具体的には、表面処理されたセルロース基材は、3より高い、好ましくは5.5より高い表面pHを有し得る。特に、表面処理されたセルロース基材は、12未満、好ましくは11未満の表面pHを有し得る。
【0039】
セルロース基材の表面のpHは、最終製品、つまり乾燥製品について測定される。「表面pH」は、表面に置かれた新鮮な純水を使用して測定される。5つの並行測定が実行され、平均pH値が計算される。センサーを純水または超純水で洗い流し、次いで湿気を含んだ/濡れたセンサーの表面上に紙のサンプルを置き、30秒後にpHを記録する。測定には標準的なpHメーターを使用する。
【0040】
表面処理の前に、セルロース基材は、好適には、10~50gsmの坪量にて、ASTM D-3985に従って測定された100~5000cc/m/24時間(38℃、85%RH(相対湿度)にて)の範囲の酸素透過率(OTR)値を有し、より好ましくは100~1000cc/m/24時間の範囲の酸素透過率(OTR)値を有する。
【0041】
セルロース基材の坪量は、好ましくは10~50gsmである。通常、このような基材には、基本的に水蒸気バリア性がないか、または非常に低い。それゆえ、基材は、前記第1の表面処理組成物の適用前において、100g/m/日より大きい、好ましくは200g/m/日より大きい、より好ましくは500g/m/日より大きいWVTR(23℃および50%RHにて)を有し得る。
【0042】
基材は半透明または透明であってよい。一実施形態では、セルロース基材は、DIN 53147に従って測定された、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%の半透明性を有する。MFC基材はまた、例えば板紙上のMFCコーティングまたはフィルムであり得る。基材のプロファイルは、例えば、均一な水分プロファイルによって、またはスーパーカレンダー処理によって、または再湿潤化および再乾燥によって制御される。したがって、本明細書に開示された方法は、前記第1の表面処理組成物を適用する前に、セルロース基材をカレンダー処理するステップをさらに含み得る。
【0043】
第1の表面処理組成物
第1の表面処理組成物は、セルロース基材の少なくとも1つの表面に適用される。第1の表面処理組成物は、水溶性ポリマーおよび架橋剤を含む。
【0044】
従って、第1のバリア層は、第1の表面処理組成物を前記セルロース基材に適用し、前記第1の表面処理組成物を硬化させることによって形成される。第1の表面処理組成物は、通常1~10gsm、好ましくは1~4gsmのコーティング重量で適用される。
【0045】
硬化の程度は様々な手段によって測定され得るが、硬化の効果は通常バリア特性の改善として観察される。硬化の程度はまた、例えば、分光学的方法を使用することによる新しいタイプの結合の形成として検出することも可能である場合がある。
【0046】
一実施形態では、第1の表面処理組成物を架橋することができる架橋剤が選択され、これによって、架橋剤なしで行われる対応する表面処理と比較して、その物理化学的特性が変化する。架橋剤とポリマーとの比率は、好ましくは5:95~95:5、より好ましくは10:90~90:10、より好ましくは20:80~80:20、最も好ましくは30:70~70:30(重量比)である。
【0047】
架橋剤はまた、MFCを架橋させ、さらに水溶性ポリマーとMFCとの間を架橋させることができ、それにより、基材の完全性(一体性)を高めることが好ましい。従って、架橋剤は、特にバリア層を架橋させるだけでなく、バリア層を基材と架橋させ、さらには基材自体の中である程度まで架橋を生じさせる。
【0048】
架橋剤は、有機酸、好ましくは有機ポリ酸;および有機酸または有機ポリ酸の金属塩;または有機酸と有機酸の金属塩との混合物から適切に選択される。「有機酸」は、カルボン酸部分(-COH)を含む有機分子であり、「有機ポリ酸」は、そのようなカルボン酸部分の2つ以上を含む有機分子である。適切な有機酸は、クエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、マロン酸または酒石酸から選択される。クエン酸が最も好ましい。クエン酸の量は5:95~95:5(重量比)の間で変動し得るが、この比率は、ポリマー、コーティング方法、および適用された層に応じて変化し得る。
【0049】
有機酸またはポリ酸の適切な金属塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩であり、クエン酸ナトリウムなどのナトリウム塩が最も好ましい。有機酸またはポリ酸の金属塩を含めることにより、架橋剤が有機酸、好ましくは有機ポリ酸、および前記有機酸の金属塩を含む緩衝水溶液を提供することができる。一実施形態では、レディミックス(ready mix:混合済みの原料)がより高いpH値を有するように、特定の緩衝液が作られる。緩衝液の好ましいpH範囲は、例えば4~6または5~7または6~8または7~9または8~10または9~11である。
【0050】
第1の表面処理組成物の総固形分は、10重量%を超え、好ましくは15重量%を超える。
【0051】
典型的には、第1の表面処理組成物は、少なくとも2%、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも10重量%の水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール;ポリアクリラート;多糖類、例えば、デンプン、セルロースもしくはグアーガム;または、それらの混合物もしくはコポリマーから選択され、好ましくはポリビニルアルコールである。一つの例は、ポリビニルアルコールおよび多糖の混合物であってよい。
【0052】
「ポリビニルアルコール」という用語は、部分的または完全に加水分解され、エチル化され、カチオン化され、またはカルボキシル化されたポリビニルアルコールを含む。「デンプン」という用語は、アニオン性、カチオン性、非イオン性または疎水性で加工(修飾/変性)されたデンプンなどの加工デンプンを含む。「セルロース」という用語は、ヘミセルロース、適切にはナトリウムカルボキシメチルセルロース(NaCMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)を含むセルロース誘導体を包含する。
【0053】
特に、水溶性ポリマー(例えばポリビニルアルコール)の溶液は、それ自体が水または水分(湿分)に溶解しやすいため、通常、水分バリアのために使用されない。
【0054】
一実施形態では、セルロース基材および1つの第1のバリア層は、60gsm未満、またはより好ましくは50gsm未満、最も好ましくは40gsm未満の坪量を有するように与えられてよい。
【0055】
本方法のステップbおよびcは、2つ以上、例えば2、3、4、5または10の第1のバリア層が適用されるように繰り返されてよい。従って、バリア材料は、2つ以上、例えば2、3、4、5または10の第1のバリア層を含んでよい。
【0056】
特にフィルム形成ポリマーがスキン形成を引き起こし、従って水ぶくれ(blistering)を起こしやすいことが非常に一般的であるため、第1の表面処理組成物を適用するときに水ぶくれが発生しなかったことは驚くべきことであった。
【0057】
更なる表面処理組成物
一態様では、第1の表面処理組成物の硬化後にて、第2の表面処理組成物を第1のバリア層に適用することができる。第2の表面処理組成物は、第2の水溶性ポリマー、および任意選択で架橋剤を含む。前記第2の表面処理組成物を乾燥および/または硬化させることによって、第2のバリア層が形成される。
【0058】
第2の表面処理組成物および/またはプライマー表面処理組成物は、通常、金属塩を追加的に含む。
【0059】
1つの代替形態では、第2の表面処理組成物は、架橋剤を含まない。このような場合、水溶性ポリマーは、架橋/硬化せず、単に乾燥してフィルムまたはコーティングを形成する。
【0060】
典型的には、第1および第2の表面処理組成物は、水溶性ポリマーの水溶液であり、該当する場合は、水溶性ポリマーおよび前記架橋剤の水溶液である。
【0061】
1つの好ましい態様では、第1の表面処理組成物および第2の表面処理組成物は、同じ水溶性ポリマーを含む。これによって、形成されたバリア層間の適合性(親和性)が向上する。水溶性ポリマーに適用される場合の「同じ」という用語は、分子量などの他の特性が異なることがあるとしても、2つのそのようなポリマーが同じモノマーから形成されることを意味する。
【0062】
同様に、第1の表面処理組成物および第2の表面処理組成物は、同じ架橋剤を含んでよい。これによって、同じバリア層中で内部の架橋だけでなく、バリア層間の架橋も起こり得る。
【0063】
表面処理組成物(単数または複数)、特に第1の表面処理組成物は、典型的には3~7の間のpHを有する。これは、上述のように、組成物に緩衝液を含めることによって達成することができる。
【0064】
表面処理組成物(単数または複数)を適用するための適切な方法には、フレキソグラビア、ロトグラビア、回転式もしくはフラットベッドスクリーン、逆グラビア、インクジェットもしくはオフセット印刷機、アニロックス(Anilox)タイプのアプリケーターもしくはそれらの改良版などの印刷機の手段によるもの;または、フィルムプレス、表面サイジング、ブレードもしくはロッドコーティング、スプレーコーティングもしくはカーテンコーティングが包含される。コーティングは、オフラインまたはオンラインのいずれかで行うことができる。
【0065】
好ましくは、コーティングは、1~10gsm、好ましくは1~4gsmの乾燥コーティング重量を有する少なくとも1つの層に適用される。
【0066】
コーティングは、好ましくは、少なくとも片面上に、そして少なくとも1つのステップで適用される。例えば印刷機を使用して表面処理液を適用する場合、適用量は、印刷ステーションあたり、湿潤時の量で2~80gsmであり、好ましくは湿潤時の量で3~40gsmである(Aniloxセル容量および100%の転送効率に基づく)。液体の乾燥含有量は、好ましくは1重量%超、より好ましくは5重量%超、最も好ましくは10重量%超である。
【0067】
適用を容易にする観点から、表面処理組成物(単数または複数)は、100~10000mPas、より好ましくは300~8000mPas、最も好ましくは500~3000mPasのブルックフィールド粘度(100rpmおよび23℃で測定)を有し得る。
【0068】
基材のカレンダー処理は、例えば、スーパーカレンダーのように、ニップの負荷と温度が高い1つまたは複数のカレンダリングニップを用いてオンラインまたはオフラインで実行され得る。また、例えばヤンキーシリンダーによる平滑化を利用することができる。また、硬化および改善された架橋を確実にするために、より高い温度でカレンダー処理を行うことができる。例えば、120℃超、好ましくは140℃超、最も好ましくは160℃超であるが、240℃未満の温度(シリンダー温度)を用いることができる。この点で、カレンダー処理は、余分な熱および圧力を加えることによって架橋を改善する後処理を指す。実施例は、すなわち表面処理に先立って、カレンダー処理されていない基材およびスーパーカレンダー処理された基材の両方の結果を示している。
【0069】
材料の特性
セルロース基材を製造するために使用されるMFC懸濁液は、コーティングされる前において、50超、好ましくは60超、より好ましくは70超のISO 5267-1に従って測定されたSchopper-Riegler(SR)値を有する。SR値は、セルロース繊維の精製度の尺度であり、懸濁液の排水(drainage)に対する抵抗性の尺度である。SR値は、より粗いMFCグレードおよび特定の微細なミクロフィブリル化セルロース繊維混合物に対してのみ正確に測定できることを理解する必要がある。というのは、非常に微細なフィブリルの含有量がより高いとワイヤを通過するおそれがあり、したがって脱水に対する抵抗性を与える残留懸濁液の実際の固形分が減少するからである。
【0070】
表面処理組成物を適用する前に、一実施形態のセルロース基材は、25000秒/100ml未満、好ましくは20000秒/100ml未満、より好ましくは15000秒/100ml未満であるISO 5636-5に従って測定された空気抵抗値を有する。本発明の技術は、この空気抵抗値の増大を可能にする。したがって、前記第1の表面処理組成物の硬化後において、一実施形態のセルロース基材は、25000秒/100mlを超える、好ましくは30000秒/100mlを超える、より好ましくは40000秒/100mlを超える、ISO 5636-5に従って測定された空気抵抗値を有する。別の実施形態では、空気抵抗は測定不可能である、すなわち、ISO法5636-5を使用して測定するには高すぎる。
【0071】
本発明の技術はまた、WVTRとして測定される改善された水蒸気バリア特性を与えることを可能にする。したがって、第1の表面処理組成物を適用する前において、セルロース基材は、典型的には、100g/m/日より大きい、好ましくは200g/m/日より大きい、より好ましくは500g/m/日より大きいWVTR(23℃および50%RHにて)を有する。
【0072】
第1の表面処理組成物の硬化後において、セルロース基材は、典型的には、100g/m/日未満、好ましくは75g/m/日未満、より好ましくは50g/m/日未満のWVTR(23℃および50%RHにて)を有する。
【0073】
第1の表面処理組成物の硬化後において、セルロース基材は、典型的には、5時間超、好ましくは15時間超、より好ましくは20時間超の、ASTM FI19-82修正法(Modified ASTM F119-82 method)に従って測定されたグリースに対する抵抗性(耐グリース性:23℃および50%RHにて)を有する。
【実施例
【0074】
100%ミクロフィブリル化シートを含むウェブを、フォードリニエ(fourdrinier)のコンセプトを用いるウェットレイド法(湿式法)を使用して調製し、続いてこれをプレスセクションおよび乾燥セクションにて処理した。基材を、32gsmの坪量に調製し、10重量%未満の水分含有量まで乾燥させた。ミクロフィブリル化セルロースは、92のショッパー-リーグラー値を有していた。前記の基材は、カレンダー処理されていない形態、およびスーパーカレンダーを使用してカレンダー処理された後の形態の両方を用いた。
【0075】
ポリビニルアルコール(Poval 15-99、クラレ)を、高温で1時間撹拌しながら溶解することにより調製した。架橋剤(クエン酸)と混合する前に、この溶液を室温まで冷却させた。PVOHおよびクエン酸の混合物を50/50の比率で作成し、pHを4.4に調整した。混合物の乾燥含有量は17重量%であった。
【0076】
1つおよび2つの印刷ステーションを使用して、それぞれフレキソグラビアユニットでポリマー溶液を適用した。アニロックス(Anilox)のセル容積は15cm/mであった。IR乾燥機で中間の後乾燥を行った。速度は13m/分であった。見積コーティング重量は約0.3~1g/mであった。基材の片面のみを処理し、処理面を分析した。
【0077】
使用した試験方法は次のとおりであった。
ショッパー・リーグラー(Schopper-Riegler(SR))(ISO 5267-1)
酸素透過率(OTR)(ASTM F-1927)
水蒸気透過率(WVTR)(ASTM F-1249)
耐グリース性、鶏脂(Chicken fat)、60℃(ASTM F119-82修正法)
【0078】
例1-比較例
2003(秒/100ml)の空気抵抗値(Gurley-Hill値)を有する32gsmの基材を用意した。このサンプルは、ガスバリア性を有していなかったが、これはG-H値が低いことによっても示されている。
【0079】
例2-比較例
基材をスーパーカレンダー処理した以外は、例1と同様のサンプルを用意した。特に光沢度(グロス)が少し改善されたが、バリア性は改善されなかった。
【0080】
例3-比較例
サンプル2をポリエチレンフィルムと共に(押出コーティングによって)ラミネートした。このフィルムは、良好な水蒸気バリア性、および良好な酸素バリア性も備えている。
【0081】
例4
1つの印刷ステーションを使用し、架橋剤を含まないPVOH溶液で、例1にて用いたウェブを表面処理した。Gurley-Hill値は644秒/100ml(3回の測定の平均)であったが、これは劣ったバリア性を示している。
【0082】
例5
上記の説明に従って1つの印刷ニップにより、例2にて用いたウェブを表面処理した。PVOHをクエン酸と混合し、pHを4に調整した。G-Hは42300秒/100mlであった。バリア性の試験を下の表に示すように実行した。全てのバリア性の結果は良好であった。
【0083】
例6
第1のニップにおいてPVOHおよびクエン酸の混合物と共に、第2のニップにおいてPVOHと共に、例2にて用いたウェブを2つの印刷ニップに通した。この組み合わせにより、下の表に示すように非常に優れたバリア性が得られた。
【0084】
【表1】

空のセルと「データ無し」は、サンプルに欠陥があったか、Gurley Hill試験に適合しなかったため、つまりG-H値が低かったため、試験が行われなかったことを意味する。
【0085】
本発明は、様々な実施形態および実施例の説明によって例証されており、これらの実施形態および実施例はかなり詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限または何らかの方法で限定することは出願人の意図ではない。追加の利点および修正は、当業者には容易に想起されるであろう。したがって、そのより広い態様における本発明は、ここに示され説明されている特定の詳細、代表的な方法、および例示的な実施例に限定されない。したがって、出願人の一般的な発明概念の本質または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から離れてもよい。
【国際調査報告】