(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】制御性T細胞表面抗原のエピトープおよびこれに特異的に結合する抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20221223BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20221223BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221223BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221223BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221223BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221223BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221223BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221223BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221223BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221223BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/705 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525129
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 KR2020015656
(87)【国際公開番号】W WO2021091359
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0142251
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518426066
【氏名又は名称】グッド ティー セルズ、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ソク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA45
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、制御性T細胞の表面に存在する抗原であるLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープおよびこれに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープであって、
配列番号7~配列番号70で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープ。
【請求項2】
Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープであって、
配列番号71または配列番号72で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むエピトープ。
【請求項3】
配列番号7~配列番号70で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号71または配列番号72で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1または2に記載のエピトープをコーディングする核酸分子。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸分子が挿入された発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターが形質感染した宿主細胞株。
【請求項8】
請求項3または4に記載の抗体または抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記癌は、胃癌、肝臓癌、膠細胞腫、卵巣癌、大膓癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫または肺癌である、請求項8に記載の薬学組成物。
【請求項10】
請求項3または4に記載の抗体または抗原結合断片;および薬物を含む抗体-薬物結合体。
【請求項11】
配列番号7~配列番号70で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片を薬学的有効量で個体に投与するステップを含む癌の予防または治療方法。
【請求項12】
配列番号71または配列番号72で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片を薬学的有効量で個体に投与するステップを含む癌の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御性T細胞の表面に存在する抗原であるLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープおよびこれに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての正常個体において最も重要な特性は、自己(self)を構成している抗原物質に対しては有害に反応しないのに対し、非自己(non-self)抗原に対してはこれを認識し除去できる能力を有することである。このように自己抗原に対する生体の無反応を免疫学的無反応性(immunologic unresponsiveness)または寛容(tolerance)という。自己寛容は、自己抗原の特異的な受容体を持っているかもしれないリンパ球を除去することにより、または自己抗原に接した後、自ら反応する機能が不活性化することにより発生する。自己寛容を誘導したり維持し続ける上で問題が生じると、自己抗原に対して免疫反応が起こり、これによってもたらされる疾患を自己免疫疾患(autoimmune disease)という。
【0003】
前記自己免疫疾患の治療のために、1970年代初めにGershonによって従来のT細胞(conventional T cells)の効果機能(effector function)を制御および抑制できるT細胞の存在の可能性がある抑制T細胞という概念を導入して、最初に提示されて以来(R.K.Gershon and K.Kondo,Immunology,1970,18:723-37)、免疫学の多くの分野で制御性T細胞の生物学的特性および機能を究明するための研究が行われてきている。
【0004】
これによって、前記制御性T細胞(Treg)は、過剰な炎症と免疫反応の発生を自然的に防止する重要な役割を果たすが、自己免疫疾患と慢性炎症疾患が発生する場合、制御性T細胞の機能と数字が著しく減少することが報告された。したがって、免疫疾患と炎症疾患がある患者の場合、制御性T細胞が正常な水準に生成されることが重要であり、これは前記疾患の治療法の一つになり得る。
【0005】
現在まで制御性T細胞に特異的に存在する遺伝子およびタンパク質に関する研究が行われ、CD25、CTLA4、CD62L、CD38、CD103、GITRおよびCD45RBなどの物質が標識物質に相当できるとされてきたものの、まだ制御性T細胞のみを単独で標的化できる遺伝子およびタンパク質は存在しない。
【0006】
一方、相補性決定領域(complementarity determining region、以下、「CDR」という)と呼ばれる3個の多変可能な領域および4個の構造領域(framework region)を含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(epitope)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN-末端からはじまって、順次に、CDR1、CDR2およびCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの目的は、制御性T細胞(regulatory T cell、Treg cell)の表面に存在するLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記エピトープに特異的に結合できる抗体または抗原結合断片を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記エピトープに特異的に結合できる抗体または抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体と薬物として、例えば、抗癌剤が結合した抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、抗体-薬物結合体を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記エピトープに特異的に結合できる抗体または抗原結合断片;および抗体-薬物結合体を用いて癌の予防または治療する方法を提供することである。
【0013】
しかし、本発明がなそうとする技術的課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープまたは前記エピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【0015】
本発明において、前記「Lrig-1タンパク質」は、制御性T細胞の表面に存在する膜貫通タンパク質であって、細胞外あるいはルーメン側のロイシン反復配列(leucine-rich repeat(LRR))と3つの免疫グロブリン様ドメイン(immunoglobulin-like domains)、細胞膜貫通配列および細胞質尾部から構成されている。LRIG遺伝子ファミリーはLRIG1、LRIG2とLRIG3が存在し、それぞれのファミリーを構成するアミノ酸は非常に保全的に構成されている。前記LRIG1遺伝子は正常皮膚で高く発現しており、基底と毛包細胞に発現して上皮幹細胞の増殖を調節することができる。したがって、表皮の恒常性の維持に重要な役割をし、不存在の場合、乾癬や皮膚癌に発展しうる。LRIG1が位置した染色体3p14.3部分が切断される場合には癌細胞に発展する可能性があると報告されており、実際に腎臓癌(renal cell carcinoma)と扁平上皮癌(cutaneous squamous cell carcinoma)ではLRIG1の発現が非常に減少していることが確認された。ところが、最近は、前記Lrig-1タンパク質を発現する癌は20~30%程度に過ぎないことが究明されている。一方、本発明の目的上、前記Lrig-1タンパク質は、ヒトまたはマウスに存在するタンパク質であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の一例において、前記Lrig-1タンパク質は、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類などを含む哺乳類に由来するLrig-1タンパク質であってもよい。
【0017】
本発明の一例において、前記Lrig-1タンパク質は、配列番号1で表されるヒト由来Lrig-1タンパク質であってもよく、これは配列番号2で表される核酸配列によってコーディングされてもよいが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の他の例において、前記Lrig-1タンパク質は、配列番号3で表されるマウス由来Lrig-1タンパク質であってもよく、これは、配列番号4で表される核酸配列によってコーディングされてもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明のさらに他の例において、前記Lrig-1タンパク質は、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明の前記Lrig-1細胞外ドメインは、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類などを含む哺乳類に由来するLrig-1タンパク質の細胞外ドメインであってもよい。本発明の目的上、前記Lrig-1タンパク質の細胞外タンパク質は、ヒトまたはマウスに由来するLrig-1タンパク質の細胞外ドメインであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の一例において、前記Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインは、ヒト由来Lrig-1タンパク質の35番目~794番目のアミノ酸配列に相当する配列番号5で表されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明の他の例において、前記Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインは、マウス由来Lrig-1タンパク質の35番目~794番目のアミノ酸配列に相当する配列番号6で表されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0024】
1.Lrig-1タンパク質のエピトープ
本発明の一実施形態によれば、前記Lrig-1タンパク質のエピトープであって、前記配列番号1、3、5および5で表されるLrig-1タンパク質の一部のアミノ酸、例えば、2個~50個;6個~45個;または10個~44個などのアミノ酸からなるものであってもよいが、これに限定されるものではない。本発明の他の実施形態によれば、前記Lrig-1タンパク質のエピトープであって、配列番号7~70で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むエピトープを提供する。
【0025】
本発明の一例として、前記Lirg-1タンパク質のエピトープは、配列番号71または配列番号72で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むエピトープであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明の前記エピトープは、立体構造エピトープ(conformational epitope)であってもよい。
【0027】
本発明の前記「立体構造エピトープ」は、連続的な配列からなる1次元的な線状エピトープとは異なり、不連続的なアミノ酸配列から構成される。このような立体構造エピトープは、抗体抗原結合部位の3次元的な構造と反応する。
【0028】
2.Lrig-1タンパク質のエピトープをコーディングする核酸分子
本発明の他の実施形態によれば、本発明で提供する前記エピトープをコーディングする核酸分子を提供する。
【0029】
本発明の核酸分子は、本発明で提供するポリペプチドのアミノ酸配列を、当業者に知られているように、ポリヌクレオチド配列に翻訳された核酸分子のすべてを含む。そのため、ORF(open reading frame)による多様なポリヌクレオチド配列が製造可能であり、これもすべて本発明の核酸分子に含まれる。
【0030】
3.Lrig-1タンパク質のエピトープをコーディングする核酸分子が挿入された発現ベクター
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記単離された核酸分子が挿入された発現ベクターを提供する。
【0031】
本発明において、前記「ベクター」は、ある核酸分子が連結された他の核酸を輸送できる前記核酸分子である。ベクターの一類型は、追加的なDNAセグメントが結紮できる円形二重鎖DNAを指す「プラスミド」である。また、他の類型のベクターはファージベクターである。さらに他の類型のベクターはウイルス性ベクターで、追加的なDNAセグメントがウイルスゲノムに結紮できる。あるベクターは、それらが流入した宿主細胞で自律的な複製が可能である(例えば、バクテリア性ベクターはバクテリア性複製起源を有するエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非-エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に流入しながら宿主細胞のゲノムに統合され、これにより、宿主ゲノムとともに複製される。それだけでなく、あるベクターは、これらが作動レベルで連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本願において、「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と名付けられる。一般的に、組換えDNA手法で有用な発現ベクターは、たびたびプラスミドの形態で存在する。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は、ベクターの中でプラスミドが最も通常使用される形態であるため、相互交換して使用可能である。
【0032】
本発明において、前記発現ベクターの具体例としては、商業的に広く使用されるpCDNAベクター、F、R1、RP1、Col、pBR322、ToL、Tiベクター;コスミド;ラムダ、ラムダ状(lambdoid)、M13、Mu、p1 P22、Qμμ、T-even、T2、T3、T7などのファージ;植物ウイルスからなる群より選択できるが、これに限定されるものではなく、当業者に発現ベクターとして知られたすべての発現ベクターは本発明に使用可能であり、発現ベクターを選択する時には目的とする宿主細胞の性質による。宿主細胞へのベクターの導入時、リン酸カルシウムトランスフェクション、ウイルス感染、DEAE-デキストラン調節トランスフェクション、リポフェクタミントランスフェクションまたは電気穿孔法によって行われるが、これに限定されるものではなく、当業者は使用する発現ベクターおよび宿主細胞に適した導入方法を選択して用いることができる。好ましくは、ベクターは、1つ以上の選別マーカーを含むが、これに限定されず、選別マーカーを含まないベクターを用いて生産物の生産の有無によって選別可能である。選別マーカーの選択は、目的とする宿主細胞によって選別され、これはすでに当業者に知られた方法を利用するので、本発明はこれに制限を設けない。
【0033】
本発明の核酸分子がコーディングするタンパク質の精製を容易にするために、タグ(Tag)配列を前記発現ベクター上に挿入して融合させることができる。前記タグとしては、ヘキサ-ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、mycタグまたはflagタグを含むが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた精製を容易にするタグはすべて本発明で利用可能である。
【0034】
4.Lrig-1タンパク質のエピトープをコーディングする核酸分子が挿入された発現ベクターが形質転換された宿主細胞株
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記発現ベクターが形質転換された宿主細胞株を提供する。
【0035】
本発明において、前記「宿主細胞」には、ポリペプチド挿入物の組込みのためのベクターのレシピエント(recipient)であり得るか、またはレシピエントであった個別的な細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、前記子孫は自然的な、偶発的なまたは故意の突然変異のために必ずしも元の親細胞と完全に同一(形態学上またはゲノムDNA補完体において)でなくてもよい。宿主細胞には本願のポリペプチドで体内で形質転換された細胞が含まれる。
【0036】
本発明において、前記宿主細胞としては、哺乳動物、植物、昆虫、菌類または細胞性起源の細胞を含むことができ、例えば、大膓菌、ストレプトミセス、サルモネラティフィムリウムなどのバクテリア細胞;酵母細胞、ピキアパストリスなどの菌類細胞;ドロソフィラ、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞、Chinese hamster ovary cells)、SP2/0(マウス骨髄腫)、ヒトリンパ芽球(Human lymphoblastoid)、COS、NSO(マウス骨髄腫)、293T、ボウズメラノーマ細胞、HT-1080、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞、Baby Hamster Kidney cells)、HEK(ヒト胚腎臓細胞、Human Embryonic Kidney cells)またはPERC.6(ヒト網膜細胞)の動物細胞;または植物細胞であってもよいが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた宿主細胞株として使用可能な細胞はすべて利用可能である。
【0037】
本発明の前記形質転換方法は、前記宿主細胞に目的とするベクターを注入させる任意の方法であって、宿主細胞にベクターを注入させることができる公知の方法であればすべて含まれてもよく、例えば、CaCl2を用いた方法、電気穿孔法、微細注入法、カルシウムホスフェート沈殿法、電気穿孔法、リポソーム-媒介形質感染法、DEAE-デキストラン処理法、遺伝子打ち込みおよびウイルスを用いた形質転換方法などを利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
5.抗体または抗原結合断片
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片を提供する。
【0039】
本発明において、前記抗体は、全長抗体(full-length antibody)または抗体の一部分であって、Lrig-1タンパク質に結合する能力を有し、本発明の結合分子と競争的にLrig-1抗原決定部位に結合する抗体断片のすべてを含む。
【0040】
本発明において、前記「抗体」は、免疫学的に特定抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体の役割を果たすタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、前記抗原は、制御性T細胞(regulatory T cell)の表面に存在するLrig-1タンパク質であってもよい。好ましくは、前記Lrig-1タンパク質のロイシンリッチ部位(Leucine Rich Region)または免疫グロブリン様ドメインを特異的に認識するものであってもよいが、これに限定されない。
【0041】
本発明において、前記「免疫グロブリン」は、重鎖および軽鎖を有し、それぞれの重鎖および軽鎖は、不変領域および可変領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、相補性決定領域(complementarity determining region、以下、「CDR」という)と呼ばれる3個の多変可能な領域および4個の構造領域(Framework region)を含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(Epitope)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN-末端からはじまって、順次に、CDR1、CDR2およびCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別される。
【0042】
本発明において、前記「全長抗体」は、2個の全長の軽鎖および2個の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド(Disulfide)結合で連結されており、IgA、IgD、IgE、IgM、およびIgGを含む。前記IgGはその亜型(subtype)で、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。
【0043】
また、本発明において、前記「抗原結合断片」は、抗原結合機能を保有している断片を意味し、抗原結合断片の例は、(1)軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(VH)と軽鎖の不変領域(CL)および重鎖の1番目の不変領域(CH1)からなるFab断片;(2)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(3)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(4)VHドメインからなるdAb断片;(5)分離されたCDR領域;(6)2個の連結されたFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片;(7)VHドメインおよびVLドメインが抗原結合部位を形成するように結合させるペプチドリンカーによって結合した単鎖Fv分子(scFv);(8)二特異的な単鎖Fv二量体および(9)遺伝子の融合によって作製された多価または多特異的な断片であるダイアボディ(diabody)などを含む。前記抗原結合断片は、タンパク質加水分解酵素、例えば、パパインまたはペプシンを用いる場合、FabまたはF(ab’)2の断片を得ることができ、遺伝子組換え技術により作製することができる。
【0044】
また、本発明において、前記抗体は、単クローン抗体(monoclonal antibody)、多クローン抗体(polyclonal antibody)、キメラ抗体(chimeric antibody)、ヒト化抗体(humanized antibody)、ヒト抗体(human antibody)、二価(bivalent)、両特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異的抗体(bispecific antibody)、抗体模倣体、ユニボディ(unibody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)またはその断片であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
また、本発明において、前記「単クローン抗体」は、実質的に同一の抗体集団で得た単一分子組成の抗体分子を称するもので、特定の抗原決定基(Epitope)に対して単一結合特異性および親和度を示す。
【0046】
本発明において、前記「キメラ抗体」は、マウス抗体の可変領域およびヒト抗体の不変領域を組換えた抗体であって、マウス抗体に比べて免疫反応が大きく改善された抗体である。
【0047】
また、本発明において、前記「ヒト化抗体」は、ヒトでない種に由来する抗体のタンパク質配列をヒトで自然的に生産された抗体変異体と類似するように変形させた抗体を意味する。その例として、前記ヒト化抗体は、マウス由来のCDRをヒト抗体由来のFRと組換えてヒト化可変領域を製造し、これを好ましいヒト抗体の不変領域と組換えてヒト化抗体を製造することができる。
【0048】
本発明において、前記「結合」または「特異的結合」は、本願の抗体または抗体組成物の抗原に対する親和度を示すものである。抗原抗体結合における「特異的結合」は、典型的に解離定数(dissociation constant、Kd)が1×10-5M未満または1×10-6M未満または1×10-7M未満の場合、非特異的な背景結合と区分される。特異的結合は、当業界における公知の方法、例えば、ELISA、SPR(Surface plasmon resonance)、免疫沈殿(immunoprecipitation)、共沈殿(coprecipitation)などの方法で検出可能であり、非特異的結合と特異的結合を区分できる適切な対照群を含む。
【0049】
本発明の抗体または抗原結合断片は、単量体の抗原結合能の少なくとも一部を含む二量体、三量体、四量体、五量体などの多量体で存在できる。このような多量体はまた、同種多量体、または異種多量体を含むものである。抗体多量体は、多数の抗原結合部位を含むため、単量体と比較して抗原に対する結合能に優れている。抗体の多量体はさらに、多機能性(bifunctional、trifunctional、tetrafunctional)抗体の作製にも容易である。
【0050】
本発明において、前記「多機能性」とは、2つ以上の活性または機能(例えば、抗原結合能、酵素活性、リガンドまたは受容体結合能)を有する抗体または抗原結合断片を称するもので、例えば、本発明の抗体は、酵素活性を有するポリペプチド、例えば、ルシフェラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼなどと結合できる。多機能性抗体はさらに、多価性(multivalent)または多特異性(bispecific、trispecificなど)形態の抗体を含む。
【0051】
6.抗体または抗原結合断片を有効成分として含む薬学組成物
また、本発明による抗体は、制御性T細胞上に存在する配列番号7~72のいずれか1つのアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を活性化または維持させるか;または抑制して、エフェクターT細胞の活性を調節することにより、癌を予防または治療することができる。
【0052】
本発明において、前記「癌」は、哺乳類において典型的に調節されない細胞成長で特徴づけられた生理的状態を示すか、指す。本発明において、予防、改善または治療の対象になる癌は、固形臓器(solid organ)で異常に細胞が成長して発生した塊からなる固形癌(solid tumor)であってもよく、固形臓器の部位によって、胃癌、肝臓癌、膠細胞腫、卵巣癌、大膓癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫または肺癌などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0053】
7.抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗体または抗原結合断片;および薬物を含む抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を提供する。
【0054】
本発明において、前記「抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)」とは、抗体と薬物の生物学的活性を低下させることなく薬物と抗体を化学的に連結した形態を指す。本発明において、前記抗体-薬物結合体は、抗体の重鎖および/または軽鎖のN-末端のアミノ酸残基に薬物が結合した形態、具体的には、抗体の重鎖および/または軽鎖のN-末端、α-アミン基に薬物が結合した形態をいう。
【0055】
本発明において、前記「薬物」は、細胞に特定の生物学的活性を有する任意の物質を意味することができ、これはDNA、RNAまたはペプチド(Peptide)を含む概念である。前記薬物は、α-アミン基と反応して架橋できる反応基を含む形態であってもよいし、α-アミン基と反応して架橋できる反応基を含むリンカーが連結されている形態も含む。
【0056】
本発明において、前記α-アミン基と反応して架橋できる反応基の例としては、抗体の重鎖または軽鎖のN-末端のα-アミン基と反応して架橋できれば、その種類は特に限定されず、当業界で公知のアミン基と反応する種類をすべて含む。その例として、イソチオシアネート(Isothiocyanate)、イソシアネート(Isocyanates)、アシルアジド(Acyl azide)、NHSエステル(NHS ester)、スルホニルクロライド(Sulfonyl chloride)、アルデヒド(Aldehyde)、グリオキサール(Glyoxal)、エポキシド(Epoxide)、オキシラン(Oxirane)、カーボネート(Carbonate)、アリールハライド(Aryl halide)、イミドエステル(Imidoester)、カルボジイミド(Carbodiimide)、アンハイドライド(Anhydride)およびフルオロフェニルエステル(Fluorophenyl ester)のいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
本発明において、抗体-薬物結合体は、前記抗体または抗原結合断片として、本発明のエピトープ、すなわち、Lrig-1タンパク質;またはLrig-1タンパク質の細胞外ドメインの一部のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むエピトープ;前記式1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むエピトープ;または配列番号48~113のいずれか1つのアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片を含み、この時、前記薬物は、Lrig-1抗体が標的とする疾患を治療できる薬物であればすべて含まれてもよく、例えば、癌を治療可能な抗癌剤を治療できる薬物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
本発明の一例として、前記抗癌剤は、癌の予防、改善または治療のために使用される薬物であれば制限なく含まれるが、例えば、ナイトロジェンマスタード、イマチニブ、オキサリプラチン、リツキシマブ、エルロチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、ニロチニブ、セマサニブ、ボスチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、レスタウルチニブ、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、スニチニブ、カルボプラチン、ソラフェニブ、ベバシズマブ、シスプラチン、セツキシマブ、ヴィスクム・アルブム、アスパラギナーゼ、トレチノイン、ヒドロキシカルバミド、ダサチニブ、エストラムスチン、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、イブリツモマブ・チウキセタン、ヘプタプラチン、メチルアミノレブリン酸、アムサクリン、アレムツズマブ、プロカルバジン、アルプロスタジル、硝酸ホルミウムキトサン、ゲムシタビン、ドキシフルリジン、ペメトレキセド、テガフール、カペシタビン、ギメラシン、オテラシル、アザシチジン、メトトレキサート、ウラシル、シタラビン、フルオロウラシル、フルダラビン、エノシタビン、フルタミド、カペシタビン、デシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、カルモフール、ラルチトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ベロテカン、トポテカン、ビノレルビン、エトポシド、ビンブラスチン、イダルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ピラルビシン、アクラルビシン、ペプロマイシン、テムシロリムス、テモゾロミド、ブスルファン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、アルトレタミン、ダカルバジン、チオテパ、ニムスチン、クロラムブシル、ミトラクトール、レウコボリン、トレトニン、エキセメスタン、アミノグルテチミド、アナグレリド、オラパリブ、ナベルビン、ファドロゾール、タモキシフェン、トレミフェン、テストラクトン、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール、ビカルタミド、ロムスチン、5FU、ボリノスタット、エンチノスタットおよびカルムスチンからなる群より選択可能であり、これに限定されるものではない。
【0059】
8.抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を有効成分として含む薬学組成物
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗体または抗原結合断片;または抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0060】
本発明において、前記薬学組成物において有効成分として含む抗体または抗原結合断片;またはこれに薬物が結合した抗体-薬物結合体は、配列番号7~72のいずれか1つのアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を抑制し、エフェクターT細胞の活性は維持あるいは上昇させて、癌を非常に効果的に治療することができる。
【0061】
本発明において、前記癌は、固形臓器(solid organ)で異常に細胞が成長して発生した塊からなる固形癌(solid tumor)であってもよく、具体例として、固形臓器の部位によって、胃癌、肝臓癌、膠細胞腫、卵巣癌、大膓癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫または肺癌などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0062】
9.その他
一方、本発明において、「予防」は、本発明の薬学組成物を用いて疾患の症状を遮断するか、その症状を抑制または遅延させるすべての行為であれば制限なく含むことができる。
【0063】
また、本発明において、「治療」は、本発明の薬学組成物を用いて疾患の症状が好転するか、有利になるすべての行為であれば制限なく含むことができる。
【0064】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末または飲料形態であることを特徴とし、前記薬学組成物は、ヒトを対象にすることを特徴とすることができる。
【0065】
本発明において、前記薬学組成物はこれらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用できる。本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0066】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含むことができる。
【0067】
本発明において、前記薬学組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。
【0068】
本発明において、前記「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与可能である。
【0069】
本発明の前記薬学組成物は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、定式、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾患の重症を含んだ様々な要因によって多様に変化可能であり、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択可能であり、1日0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kg投与することができる。投与は、1日に1回投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明による医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化可能である。
【0070】
10.治療方法
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明による抗体または抗原結合断片;または抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を個体に投与するステップを含む癌の予防または治療方法に関する。
【0071】
本発明の前記「癌」は、哺乳類で典型的に調節されない細胞成長で特徴づけられた生理的状態を示すか、指す。本発明において、予防、改善または治療の対象になる癌は、固形臓器(solid organ)で異常に細胞が成長して発生した塊からなる固形癌(solid tumor)であってもよく、固形臓器の部位によって、胃癌、肝臓癌、膠細胞腫、卵巣癌、大膓癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫または肺癌などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0072】
本発明の抗体または抗原結合断片;および抗体-薬物結合体は、配列番号7~72のいずれか1つのアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を抑制し、エフェクターT細胞の活性は維持あるいは上昇させて、癌を非常に効果的に治療することができる。
【0073】
本発明において、前記「個体」は、癌の発病が疑われる個体であって、前記癌発病の疑われる個体は、当該疾患が発病したか発病しうるヒトを含むネズミ、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明の抗体または抗体-薬物結合体で治療可能な個体は制限なく含まれる。
【0074】
本発明の方法は、抗体または抗体-薬物結合体を薬学的有効量で投与することを含むことができる。好適な1日の総使用量は正しい医学的判断範囲内で処置医師によって決定可能であり、1回または数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては、他の製剤が使用されるか否かをはじめとする具体的組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物とともに使用されるか同時使用される薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野でよく知られた類似因子によって異なって適用することが好ましい。
【0075】
一方、これに限定されないが、前記癌の予防または治療方法は、1つ以上の癌疾患に対する治療的活性を有する化合物または物質を投与することをさらに含む併用療法であってもよい。
【0076】
本発明において、前記「併用」は、同時、個別または順次投与を示すと理解されなければならない。前記投与が順次または個別的な場合、2次成分投与の間隔は、前記併用の有利な効果を失わないようにするものでなければならない。
【0077】
本発明において、前記抗体または抗体-薬物結合体の投与用量は、患者の体重1kgあたり約0.0001μg~500mgであってもよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0078】
本発明によるLrig-1タンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、制御性T細胞上に存在する本発明のエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を抑制し、エフェクターT細胞の活性は維持あるいは上昇させて、癌の予防、改善または治療に非常に効率的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の構造を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の構造を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例によるLrig-1、Lrig-2およびLrig-3 mRNAの発現程度を示す図である。
【
図7】本発明の一実施例による制御性T細胞と非制御性T細胞内のLrig-1タンパク質の発現量の比較結果を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例による制御性T細胞の表面にLrig-1タンパク質の発現を示す図である。
【
図9】本発明の一実施例において抗体(GTC210-01、GTC210-02、GTC210-03、GTC210-04、GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)とLrig-1タンパク質に対する結合力を分析した結果を示す図である。
【
図10】本発明の一実施例においてLrig-1タンパク質に特異的な単クローン抗体(GTC210-01、GTC210-02、GTC210-03、GTC210-04、GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)と制御性T細胞内でLrig-1タンパク質誘導Stat3リン酸化調節機序を分析した結果を示す図である。
【
図11】本発明の一実施例においてLrig-1タンパク質に特異的な単クローン抗体を用いた癌治療の実験設計図を示す図である。
【
図12】本発明の一実施例においてLrig-1タンパク質に特異的な単クローン抗体(GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)を用いた癌治療効果を示す図である。
【
図13】本発明の一実施例による質量分析の条件を示す図である。
【
図14】本発明の一実施例による質量分析の条件を示す図である。
【
図15】本発明の一実施例による質量分析の条件を示す図である。
【
図16】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてキモトリプシンを用いた共有結合ラベリングMSの結果を示す図である。
【
図17】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてキモトリプシンを用いた共有結合ラベリングMSの結果を示す図である。
【
図18】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてトリプシンを用いた共有結合ラベリングMSの結果を示す図である。
【
図19】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてトリプシンを用いた共有結合ラベリングMSの結果を示す図である。
【
図20】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてAsp-N+Lys-Cを用いた共有結合ラベリングMSの結果を示す図である。
【
図21】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてAsp-N+Lys-Cを用いた共有結合ラベリングMSの結果を示す図である。
【
図22】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてキモトリプシンを用いたクロス結合MSの結果を示す図である。
【
図23】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてトリプシンを用いたクロス結合MSの結果を示す図である。
【
図24】本発明の一実施例によるLirg-1タンパク質の細胞外ドメインにおいてAsp-N+Lys-Cを用いたクロス結合MSの結果を示す図である。
【
図25】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の細胞外ドメインの中でGTC110-04抗体が特異的に結合するエピトープ部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明は、Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープまたは前記エピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【0081】
本発明の一例において、前記Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインは、ヒト由来Lrig-1タンパク質の35番目~794番目のアミノ酸配列に相当する配列番号5で表されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0082】
本発明の他の例において、前記Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインは、マウス由来Lrig-1タンパク質の35番目~794番目のアミノ酸配列に相当する配列番号6で表されてもよいが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0084】
実施例
[準備例1]T細胞の亜型細胞の培養
制御性T細胞(Treg)でのみLrig-1タンパク質が発現するかを確認するために、T細胞の亜型(subset)であるTh0、Th1、Th2、Th17およびiTregを用意した。前記iTregは、自然的に分離したnTregとは異なり、下記の組成を含む培地で分化を人工的に誘導した細胞を意味する。
【0085】
T細胞の亜型はまず、マウスの脾臓から得たナイーブ(naive)T細胞を分離した後、ウシ胎児血清(FBS;hyclone、logan、UT)10%を含むRPMI1640(Invitrogen Gibco、Grand Island、NY)栄養培地に下記表1の成分をそれぞれさらに含ませて、37℃、5%CO2培養器内で72時間培養によりそれぞれの細胞に分化誘導した。
【0086】
【0087】
[実施例1]Lrig-1構造の分析
制御性T細胞の表面タンパク質であるLrig-1タンパク質に特異的な抗体を作製するために、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインの3次元立体構造を予測した。
【0088】
まず、抗原決定基(Epitope)の塩基配列予測のためにLrig-1タンパク質の細胞外ドメイン(Extracellular domain;ECD)の構造を確認するために、Uniprot(http://www.uniprot.org)とRCSB Protein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb)ツールを用いて3次元立体構造を予測した後、その結果を
図1および2に示した。
【0089】
図1に示すように、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインのうち、Lrig-LRRドメイン(アミノ酸配列41~494番)内にはLRR1~LRR15の計15個のロイシンリッチ部位(Leucine rich region)が存在した。前記LRRドメインそれぞれは23~27個のアミノ酸から構成され、ロイシンは3~5個存在した。
【0090】
また、
図2に示すように、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインのうち、Lrig-1タンパク質のアミノ酸配列494~781番には免疫グロブリン様ドメイン(Immunoglobulin-like domain)が3個存在した。
【0091】
[実施例2]Lrig-1 mRNAの制御性T細胞での特異的発現の確認
Lrig-1タンパク質が制御性T細胞に特異的なバイオマーカー(biomarker)として作用できるかを検証した。
【0092】
前記検証のために、マウスの脾臓からCD4ビーズを通して磁石活性細胞分類機(magnet-activated cell sorting;MACS)を用いてCD4+T細胞を分離した。以後、CD25抗体を用いて、蛍光活性細胞分類機(FACS)を用いて制御性T(CD4+CD25+T)細胞および非制御性T(CD4+CD25-T)細胞を分離した。それぞれの細胞および前記準備例1で分化された細胞はトリゾール(Trizol)を用いてmRNAを抽出した後、ゲノミックRNAは、gDNA抽出キット(Qiagen)を用いて、会社で提供したプロトコルによって、gDNAを除去した。gDNAの除去されたmRNAは、BDsprint cDNA合成キット(Clonetech)によりcDNAに合成した。
【0093】
前記cDNAでLrig-1 mRNAの発現量を定量的に確認するためにリアルタイム重合酵素連鎖反応(real time PCR)を行った。
【0094】
前記リアルタイム重合酵素連鎖反応は、SYBR Green(Molecular Probes)を用いて、会社で提供したプロトコルによって、95℃で3分、61℃で15秒、72℃で30秒ずつ、40サイクルの条件で、下記表2のプライマーを用いて行い、相対的な遺伝子発現量は△CT方法を用いて計算し、HPRTを用いて一般化(normalization)して、その結果を
図3~6に示した。
【0095】
【0096】
図3に示すように、非制御性T(CD4
+CD25
-T)細胞に比べて、制御性T(CD4
+CD25
+T)細胞でLrig-1の発現が18.1倍高いことが分かる。これは、従来知られている制御性T細胞のマーカーであるLag3およびIkzf4と比較した時、約10倍程度発現量が高い水準であった。また、
図4および5に示すように、他の種類の免疫細胞に比べて、制御性T細胞、特に誘導された制御性T細胞(iTreg)に比べて、自然的に分離した制御性T細胞(nTreg)でLrig-1 mRNAの発現が著しく高かった。
【0097】
また、
図6に示すように、Lrigファミリーに相当するLrig-1、Lrig-2およびLrig-3の中でLrig-1の発現が最も高かった。
【0098】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞、特に自然的に存在する制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0099】
[実施例3]Lrig-1タンパク質の制御性T細胞での特異的発現の確認
Lrig-1 mRNAから発現したLrig-1タンパク質が制御性T細胞でのみ特異的に発現するかを確認した。
【0100】
制御性T細胞特異的な転写因子であるFOXP3プロモーターにRFP(Red fluorescence protein)が結合したFOXP3-RFP注入(Knock-in)マウスを用いて、前記マウスの脾臓から、CD4ビーズで磁石活性細胞分類機(magnet-activated cell sorting;MACS)を用いてCD4
+T細胞を分離した。以後、RFPタンパク質を用いて、蛍光活性細胞分類機(FACS)により制御性T(CD4
+RFP
+T)細胞および非制御性T(CD4
+RFP
-T)細胞を分離して得た。それぞれの前記細胞は、購入したLrig-1抗体および陰性対照群はアイソタイプ(isotype)により染色して蛍光活性細胞分類機でLrig-1の発現量を測定して、その結果を
図7に示した。
【0101】
図7に示すように、点線で表示される非制御性T細胞の場合、陰性対照群とほぼ同じLrig-1の発現レベルを見せたが、制御性T細胞の場合、Lrig-1の発現レベルの高い細胞が多数存在した。
【0102】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0103】
[実施例4]制御性T細胞の表面でのLrig-1タンパク質特異的発現の確認
Lrig-1タンパク質が細胞治療のターゲットになるためには、制御性T細胞の表面で発現してこそさらに効果的にターゲット治療が可能なため、Lrig-1タンパク質が表面で発現するか否かを確認した。
【0104】
前記準備例1のそれぞれの分化されたT細胞亜型を抗-CD4-APCおよび抗Lrig-1-PE抗体で染色し、蛍光活性細胞分類機(Fluorescence-Activated Cell Sorter;FACS)を用いてそれぞれの細胞表面でLrig-1の発現量を測定して、その結果を
図8に示した。
【0105】
図8に示すように、活性化されたT細胞(activated T cell)、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびナイーブ(Naive)T細胞ではLrig-1の発現が0.77~15.3の量で発現するのに対し、分化が誘導されたT細胞(iTreg)では83.9と高く発現した。
【0106】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞(Treg)で特異的に発現するだけでなく、特に制御性T細胞の表面でさらに高く発現することが分かる。
【0107】
[製造例1~8]Lrig-1タンパク質に特異的な単クローン抗体の作製
本発明によるLrig-1タンパク質に特異的な抗体を作製した。本抗体は特定の抗原決定基を決めて生産するのではなく、Lrig-1タンパク質にどの部位でも結合できる抗体を生産した。
【0108】
前記抗体を作製するために、Lrig-1タンパク質が発現する細胞を作製した。より詳しくは、配列番号2に相当するDNA断片およびpcDNA(hygro)を切断酵素で切断した後、37℃で培養してライゲーション(Ligation)して、Lrig-1タンパク質のDNA配列が挿入(insert)されているpcDNAを作製した。前記作製された配列番号2が挿入されたpcDNAは、L細胞に形質注入(transfection)により導入されてL細胞の表面にLrig-1タンパク質が発現できるようにした。
【0109】
前記細胞表面に発現するLrig-1に結合できる軽鎖(Lright chain)および重鎖(heavy chain)アミノ酸の配列をHuman scFv libraryから選別して、計8個の重鎖および軽鎖を選別した。
【0110】
前記選別された重鎖および軽鎖アミノ酸配列をmlgG2a Fc領域またはヒトIgG1 Fc領域と融合して単クローン抗体(monoclonal antibody)を作製した。前記単クローン抗体の配列は下記表3の通りである。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
[実施例5]本発明による抗体のLrig-1タンパク質に対する結合能評価
前記製造例1~8で作製された本発明による単クローン抗体がLrig-1をよく認識するかを確認するために、Lrig-1を安定して発現するL細胞に前記製造例1~8の抗体それぞれを結合させた後、マウス抗体を認識できかつ、eFlour670がコンジュゲーション(conjugation)された二次抗体(secondary antibody)を入れた後、FACSを用いて前記単クローン抗体のLrig-1タンパク質に対する結合力を分析して、その結果を
図9に示した。
【0121】
図9に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体ともL細胞の表面に存在するLrig-1タンパク質を効果的に認識して結合したことを確認することができた。
【0122】
[実施例6]本発明による抗体の制御性T細胞内の信号伝達経路の調節
前記製造例1~8で作製された本発明による単クローン抗体がLrig-1タンパク質を通して制御性T細胞内の信号伝達経路にどのような影響を与えるかを分析するために、前記製造例1~8の抗体を制御性T細胞に処理して前記制御性T細胞の表面に存在するLrig-1を刺激した後、ホスホチロシン免疫ブロット(phosphotyrosine immunoblot)により刺激された制御性T細胞内に存在するStat3タンパク質のチロシンリン酸化(tyrosine phosphorylation)の程度を分析し、その結果を
図10に示した。
【0123】
図10に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体(GTC210-01、GTC210-02、GTC210-03およびGTC210-04)は、Stat3のリン酸化(phosphorylation)をTh17細胞と同じ水準に増加させることを確認することができた。一方、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体(GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)は、Stat3のリン酸化(phosphorylation)をiTreg細胞と同じ水準に引き続き維持および減少させることを確認することができた。
【0124】
[実施例7]GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04抗体の癌治療効果
前記製造例5~8で作製された本発明による単クローン抗体(GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)の固形癌に対する治療効果を確認するために、
図11に示すように、B16F10黒色腫細胞(melanoma cell)をマウスの背中に3×105細胞の量で皮下注射(subcutaneous injection)した後、4日、8日、12日目に前記製造例5~8の抗体を200ugの量で腹腔内注射した。前記メラノーマ細胞の移植後に時間の経過による腫瘍の体積変化を測定して、その結果を
図12に示した。
【0125】
図12に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体(GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)を処理した場合、抗体を処理しなかった陰性対照群に比べて腫瘍の大きさが著しく減少したことを確認することができた。
【0126】
これにより、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体は、多様な固形癌細胞の成長を抑制して、これを効果的に予防、改善または治療できることが分かる。
【0127】
[実施例8]本発明によるLrig-1タンパク質のエピトープの確認
Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて前記製造例8のGTC110-04抗体が結合できる部位である構造のエピトープを発掘するために、下記の実験を行った。
【0128】
[8-1]共有結合ラベリングMS(Covalent Labeling MS;CL-MS)
[8-1-1]キモトリプシンによるエピトープの確認
前記製造例8のGTTC110-04抗体と、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメイン(抗原)とを2:1の比率で混合して十分に反応させた抗原-抗体結合体と、抗体が結合しないLrig-1タンパク質の細胞外ドメイン(抗原)をそれぞれ用意した。その後、前記それぞれのサンプルに1%を超えないようにDEPC(Diethyl pyrocarbonate)を添加した後、37℃で1分間十分に反応させ、イミダゾールを添加して反応を終結させた。反応が終結した前記それぞれのサンプルにメタノールを添加し、遠心分離して上澄液を除去した。以後、8Mのウレアおよび0.1MのNaClが含まれた溶液を追加して、再懸濁させた後に、キモトリプシンを入れてペプチド結合が切れるようにした。
【0129】
このようにペプチド結合が切れた前記それぞれのサンプルを用いて、ハイパーシル(Hypersil)GOLDTM(1.9μm、1×100mm)カラムを用いて、30℃の条件で、下記表4に記載のように、流体クロマトグラフィー(VanquishTM Flex Quaternary UHPLC(Thermo SCIENTIFIC))を行った。
【0130】
【0131】
以後、
図13~
図15に記載の条件によって質量分析(Q Exactive
TM Plus Mass Spectrometer(Thermo SCIENTIFIC))を行い、測定された抗原-抗体結合体と抗原の質量分析値を比較して、その結果を
図16と、表5に示した。さらに、測定された質量分析値を抗原-抗体結合体/抗原で計算して、
図17に示した。
【0132】
【0133】
【0134】
図16および17と表5に示すように、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて、36-64番目;105-134番目;252-254番目;329-347番目;529-535番目;599-612番目;599-614番目;599-615番目;599-624番目;624-636番目;700-735番目;715-727番目;および728-735番目のアミノ酸からなるポリペプチドは、抗原と比較して抗原-抗体結合体間の比率が1.2以上現れるので、Lrig-1タンパク質のエピトープとして選定される可能性があることが確認された。さらに、配列番号7~13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、その実際の差値がさらに有意に現れてエピトープとして選定される可能性がさらに高いことが確認された。
【0135】
[8-1-2]トリプシンによるエピトープの確認
前記[8-1-1]に記載の方法と同様にエピトープ確認のための実験を行うが、ただし酵素をキモトリプシンの代わりにトリプシンを用いて、その結果を
図18および19と、下記表6に示した。
【0136】
【0137】
図18および19と、表6に示すように、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて、24-37番目;38-45番目;46-94番目;141-154番目;179-186番目;216-226番目;532-540番目;559-569番目;614-629番目;690-694番目;727-739番目;および740-754番目のアミノ酸からなるポリペプチドは、抗原と比較して抗原-抗体結合体間の比率が1.2以上現れるので、Lrig-1タンパク質のエピトープとして選定される可能性があることが確認された。さらに、配列番号14~22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、その実際の差値がさらに有意に現れてエピトープとして選定される可能性がさらに高いことが確認された。
【0138】
[8-1-3]Asp-N+Lys-Cによるエピトープの確認
前記[8-1-1]に記載の方法と同様にエピトープ確認のための実験を行うが、ただし酵素をキモトリプシンの代わりにAsp-N+Lys-Cを用いて、その結果を
図20および21と、下記表7に示した。
【0139】
【0140】
【0141】
図20および21と、表7に示すように、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて、1-15番目;16-18番目;31-45番目;31-55番目;289-318番目;360-361番目;498-506番目;507-517番目;573-600番目;585-600番目;601-620番目;601-626番目;605-620番目;611-618番目;611-620番目;667-681番目;695-722番目;696-709番目;および696-722番目のアミノ酸からなるポリペプチドは、抗原と比較して抗原-抗体結合体間の比率が1.2以上現れるので、Lrig-1タンパク質のエピトープとして選定される可能性があることが確認された。さらに、配列番号23~28で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、その実際の差値がさらに有意に現れてエピトープとして選定される可能性がさらに高いことが確認された。
【0142】
前記[8-1-1]~[8-1-3]で確認されたエピトープの結果をオーバーラップさせる方式の追加分析を行った結果、前記結果で挙げられたポリペプチドがエピトープの可能性があり、特に配列番号29~32で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドがさらにLrig-1タンパク質のGTC110-04抗体に対するエピトープである可能性があることが分かる。
【0143】
[8-2]クロス-結合MS(Cross-linking MS;XL)
[8-2-1]キモトリプシンによるエピトープの確認
【0144】
前記製造例8のGTC110-04抗体と、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメイン(抗原)とを2:1の比率で混合して十分に反応させた抗原-抗体結合体サンプルを2個用意した。以後、DMSO(dimethyl sulfoxide)に十分に溶かしたDSG(disuccinimidyl glutarate、20593、Thermo)を前記1つのサンプルに1:50(サンプル:DSG)の比率で添加し(T%)、他の1つのサンプルにはDMSOのみを添加(C%)した後に、25℃で1時間十分に反応させた。その後、前記[8-1-1]と同様の方法でキモトリプシンを処理し、LC-MS分析を行って、質量分析値を導出した。
【0145】
以後、DSGが添加されたサンプル(T%)とDMSOのみが添加されたサンプル(C%)間の質量分析値間の差を確認し、差のあるエピトープの中からエピトープではない結合補助サイト(モードタイプおよびループタイプ)を除いて、最終的にその値が10%以下である部位を導出する分析を行って、その結果を
図22と、下記表8に示した。
【0146】
【0147】
図22と、表8に示すように、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて、472-494番目(配列番号32);配列番号495-511番目(配列番号33);525-530番目(配列番号34);560-567番目(配列番号35);568-579番目(配列番号36);680-693番目(配列番号37);および745-762番目(配列番号38)アミノ酸からなるポリペプチドは、クロス結合比率が5%または10%以下に相当する非常に低い水準と確認されることから、Lrig-1タンパク質のエピトープとして選定される可能性があることが確認された。
【0148】
[8-2-2]トリプシンによるエピトープの確認
前記[8-2-1]に記載の方法と同様にエピトープ確認のための実験を行うが、ただし酵素をキモトリプシンの代わりにトリプシンを用いて、その結果を
図23と、下記表9に示した。
【0149】
【0150】
図23と、表9に示すように、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて、1-4番目(配列番号80);46-92番目(配列番号40);164-172番目(配列番号41);264-274番目(配列番号42);267-274番目(配列番号43);268-274番目(配列番号44);275-287番目(配列番号45);275-303番目(配列番号46);386-394番目(配列番号47);395-424番目(配列番号48);425-441番目(配列番号49);442-479番目(配列番号50);480-498番目(配列番号51);498-531番目(配列番号52);532-540番目(配列番号53);541-556番目(配列番号54);および615-629番目(配列番号55)アミノ酸からなるポリペプチドは、クロス結合比率が5%または10%以下に相当する非常に低い水準と確認されることから、Lrig-1タンパク質のエピトープとして選定される可能性があることが確認された。
【0151】
[8-2-3]Asp-N+Lys-Cによるエピトープの確認
前記[8-2-1]に記載の方法と同様にエピトープ確認のための実験を行うが、ただし酵素をキモトリプシンの代わりにAsp-N+Lys-Cを用いて、その結果を
図24と、下記表10に示した。
【0152】
【0153】
図24と、表10に示すように、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて、46-102番目(配列番号56);93-102番目(配列番号57);150-163番目(配列番号58);164-182番目(配列番号59);216-226番目(配列番号60);227-267番目(配列番号61);268-274番目(配列番号62);319-361番目(配列番号63);411-415番目(配列番号64);456-476番目(配列番号65);477-498番目(配列番号66);498-506番目(配列番号67);538-556番目(配列番号68);557-572番目(配列番号69);および557-600番目(配列番号70)アミノ酸からなるポリペプチドは、クロス結合比率が5%または10%以下に相当する非常に低い水準と確認されることから、Lrig-1タンパク質のエピトープとして選定される可能性があることが確認された。
【0154】
前記[8-2-1]~[8-2-3]で確認されたエピトープの結果をオーバーラップすることにより追加分析を行った結果、前記結果で挙げられたポリペプチドがエピトープの可能性があり、特に配列番号32~36、配列番号40~42、64および68のいずれか1つで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドがさらにLrig-1タンパク質のGTC110-04抗体に対するエピトープである可能性があることが分かる。
【0155】
[8-3]エピトープの予測
前記[8-1]および[8-2]で導出されたエピトープの結果をオーバーラップする過程により得られた特定エピトープの配列に基づいて、前記[8-1]と同様の方法でエピトープ確認のための実験を行って、その結果を下記表11および12に示した。
【0156】
【0157】
【0158】
前記表11および12に示すように、配列番号4で表されるLrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて、46-87番目;または46-64番目のアミノ酸からなるポリペプチドが多様な酵素を用いて測定した結果で高い比率で差が生じることを確認した。
【0159】
前記結果を通して、GTC110-04抗体は、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインの中で、46-87番目;または46-64番目のアミノ酸からなるポリペプチドに特異的に結合できることが分かる(
図25の丸表示部分)。
【0160】
以上、本発明について詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明であろう。
【0161】
産業上の利用可能性
本発明によるLrig-1タンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、制御性T細胞上に存在する本発明のエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を抑制し、エフェクターT細胞の活性は維持あるいは上昇させて、癌の予防、改善または治療に非常に効率的に使用することができる。
【配列表】
【国際調査報告】