IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社メニコンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】摩擦制御構造を有する眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525154
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 SG2020050629
(87)【国際公開番号】W WO2021086268
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/929,012
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000138082
【氏名又は名称】株式会社メニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン, スティーヴン ディー.
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB08
2H006BB10
2H006BC01
2H006BC02
2H006BC03
2H006BC07
(57)【要約】
眼用レンズは、第1の表面を含むレンズ本体を含むことができる。第1の表面は、まばたきの間のユーザーの上眼瞼の動きに整合して配置された複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーンを含むことができる。第1の表面は、まばたきの間のユーザーの下眼瞼の動きに整合して配置された複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーンも含むことができる。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面を含むレンズ本体を含む眼用レンズであって、該第1の表面が、
第1の配向を有する第1の複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーンと、
第2の配向を有する第2の複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーンと、
を含む、眼用レンズ。
【請求項2】
該摩擦低減構造は、少なくとも1つのパターン化された特徴構造を含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
該パターン化された特徴構造は、ナノ構造化された特徴構造を含む、請求項2に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
該パターン化された特徴構造は、マイクロ構造化された特徴構造を含む、請求項2に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
該パターン化された特徴構造は波構造を含む、請求項2に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
該第1の表面は、該レンズの外側表面を含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
該第1の表面は、該レンズの内側表面を含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
該第1の配向は、まばたきの間の上眼瞼の動きと整合している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項9】
該第2の配向は、まばたきの間の下眼瞼の動きと整合している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項10】
該複数の摩擦低減構造が、該レンズ本体の該第1の表面の濡れ性を向上させる、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項11】
該複数の摩擦低減構造が、瞼の自然なまばたきの動きを促進させる、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項12】
該第1の複数の摩擦低減構造が、該第1のゾーンの幅全体にわたって延在している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項13】
該第2の複数の摩擦低減構造が、該第2のゾーンの幅全体にわたって延在している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項14】
該第1のゾーン及び第2のゾーンのうちの1つ又は複数の該複数の摩擦低減構造が互いに実質的に平行である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項15】
該第1のゾーン及び第2のゾーンのうちの1つ又は複数の該複数の摩擦低減構造の各々が円弧によって規定され、該複数の摩擦低減構造が実質的に同心円状に配置されている、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項16】
該第1の配向は、該第2の配向に対して実質的に垂直である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項17】
該摩擦低減構造が、チャネルとリッジの組合せを含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項18】
該摩擦低減構造が、くぼみと突起の組合せを含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項19】
該くぼみ又は該突起が、実質的に丸みを帯びたプロファイル、実質的に矩形のプロファイル、実質的に三角形のプロファイル、及び不規則な形状のプロファイルの組合せを有する、請求項18に記載の眼用レンズ。
【請求項20】
光学ゾーンをさらに含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項21】
該第1のゾーンは、該光学ゾーンの外側に配置され、該光学ゾーンの少なくとも一部を囲んでいる、請求項20に記載の眼用レンズ。
【請求項22】
該第2のゾーンは、該光学ゾーン及び該第1のゾーンの外側に配置されている、請求項21に記載の眼用レンズ。
【請求項23】
該第1のゾーンは、該レンズ本体の縁から、該第1の表面の半径よりも該レンズ本体の該縁から大きく離れた該第1の表面上の位置にまで延在している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項24】
該第1のゾーンは、該レンズ本体の縁から、該第1の表面の直径の約2/3だけ該レンズ本体の該縁から離れた該第1の表面上の位置にまで延在している、請求項23に記載の眼用レンズ。
【請求項25】
該第2のゾーンは、該レンズ本体の縁から、該第1の表面の半径よりも小さい距離だけ該レンズ本体の該縁から離れた該第1の表面上の位置にまで延在している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項26】
該第2のゾーンは、該レンズ本体の縁から、該第1の表面の直径の約1/3だけ該レンズ本体の該縁から離れた該第1の表面上の位置にまで延在している、請求項25に記載の眼用レンズ。
【請求項27】
該第2のゾーンは、該第1のゾーンに実質的に隣接している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項28】
該第1のゾーン及び該第2のゾーンが該第1の表面の実質的に全てを覆っている、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項29】
該第1のゾーン及び該第2のゾーンが、該光学ゾーンの外側の該第1の表面の実質的に全てを覆っている、請求項20に記載の眼用レンズ。
【請求項30】
該光学ゾーンは、トーリック、球面、又は多焦点幾何学的形状を有する、請求項20に記載の眼用レンズ。
【請求項31】
まばたきをしている瞼に係合して該眼用レンズを方向付けるように構成された少なくとも1つの安定化構造をさらに含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項32】
該眼用レンズの周辺部に配置された複数の安定化構造をさらに含む、請求項31に記載の眼用レンズ。
【請求項33】
該複数の安定化構造は、該第1のゾーンと該第2のゾーンとの間の境界部分に配置された複数の突起を含む、請求項32に記載の眼用レンズ。
【請求項34】
該少なくとも1つの安定化構造は、波又は筋を含む、請求項31に記載の眼用レンズ。
【請求項35】
該レンズ本体の外縁に沿って形成され、眼の上の所望の位置に該レンズ本体を実質的に方向付ける1つ又は複数のプリズムを更に含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項36】
化学的表面改質剤をさらに含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項37】
該化学的表面改質剤が、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、N-ビニルピロリドン(NVP)、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)のうちの1つ又は複数を含む、請求項36の眼用レンズ。
【請求項38】
眼用レンズであって、
第1の表面を有するレンズ本体であって、該第1の表面が、
光学ゾーン、
まばたきの間の上眼瞼の動きと整合する第1の配向を有する第1の複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーン、及び
該第1のゾーンに実質的に隣接し、まばたきの間の下眼瞼の動きと整合する第2の配向を有する第2の複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーン、
を含むレンズ本体と、
まばたきをしている瞼に係合し、該眼用レンズを方向付けるように構成された少なくとも1つの安定化構造と、
を含む、眼用レンズ。
【請求項39】
該摩擦低減構造は、少なくとも1つのパターン化された特徴構造を含む、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項40】
該パターン化された特徴構造がナノ構造化された特徴構造を含む、請求項39に記載の眼用レンズ。
【請求項41】
該パターン化された特徴構造がマイクロ構造化された特徴構造を含む、請求項39に記載の眼用レンズ。
【請求項42】
該パターン化された特徴構造が波構造を含む、請求項39に記載の眼用レンズ。
【請求項43】
該複数の摩擦低減構造が該レンズ本体の該第1の表面の濡れ性を向上させる、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項44】
該複数の摩擦低減構造が瞼の自然なまばたきの動きを促進させる、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項45】
該摩擦低減構造が、チャネルとリッジの組合せを含む、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項46】
該摩擦低減構造が、くぼみと突起の組合せを含む、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項47】
該くぼみ又は該突起が、実質的に丸みを帯びたプロファイル、実質的に矩形のプロファイル、実質的に三角形のプロファイル、及び不規則な形状のプロファイルの組合せを有する、請求項46に記載の眼用レンズ。
【請求項48】
該眼用レンズの周辺部に配置された複数の安定化構造をさらに含む、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項49】
該複数の安定化構造は、該第1のゾーンと該第2のゾーンの間の境界部分に配置された複数の突起を含む、請求項48に記載の眼用レンズ。
【請求項50】
該少なくとも1つの安定化構造は、波又は筋を含む、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項51】
該レンズ本体の外縁に沿って形成され、眼の上の所望の位置に該レンズ本体を実質的に方向付ける1つ又は複数のプリズムを更に含む、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項52】
化学的表面改質剤をさらに含む、請求項38に記載の眼用レンズ。
【請求項53】
該化学的表面改質剤が、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、N-ビニルピロリドン(NVP)、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)のうちの1つを含む、請求項52の眼用レンズ。
【請求項54】
第1の表面を有するレンズ本体を含む眼用レンズであって、
該第1の表面が、
第1の配向を有する第1の複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーンであって、該摩擦低減構造が、互いに実質的に平行に配置された1つ又は複数のパターン化されたナノ又はマイクロ特徴構造を含む、第1のゾーンと、
該第1の配向に対して実質的に垂直な第2の配向を有する第2の複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーンであって、該摩擦低減構造が、互いに実質的に平行に配置された1つ又は複数のパターン化されたナノまたはマイクロ構造を含む、第2のゾーンと、
を含む、眼用レンズ。
【請求項55】
該パターン化された特徴構造は波構造を含む、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項56】
該第1の表面が該レンズの外側表面を含む、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項57】
該第1の表面が該レンズの内側表面を含む、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項58】
該第1の複数の摩擦低減構造が、該第1のゾーンの幅全体にわたって延在している、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項59】
該第2の複数の摩擦低減構造が、該第2のゾーンの幅全体にわたって延在している、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項60】
該摩擦低減構造が、チャネルとリッジの組合せを含む、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項61】
該摩擦低減構造が、くぼみと突起の組合せを含む、請求項54記載の眼用レンズ。
【請求項62】
該くぼみ又は該突起が、実質的に丸みを帯びたプロファイル、実質的に矩形のプロファイル、実質的に三角形のプロファイル、及び不規則な形状のプロファイルの組合せを有する、請求項61に記載の眼用レンズ。
【請求項63】
光学ゾーンをさらに含む、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項64】
まばたきをしている瞼に係合して、該眼用レンズを方向付けるように構成された少なくとも1つの安定化構造をさらに含む、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項65】
化学的表面改質剤をさらに含む、請求項54に記載の眼用レンズ。
【請求項66】
第1の表面を含むレンズ本体であって、該第1の表面が、
光学ゾーン、
まばたきの間の上眼瞼の動きと整合した第1の配向を有する第1の複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーンであって、該摩擦低減構造が少なくとも1つのパターン化された特徴構造を含む第1のゾーン、及び
まばたきの間の下眼瞼の動きと整合した第2の配向を有する第2の複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーンであって、該摩擦低減構造が少なくとも1つのパターン化された特徴構造を含む第2のゾーン、
を有し、該摩擦低減構造が、瞼の自然なまばたきの動きを促進させるように構成されている、レンズ本体と、
まばたきをしている瞼に係合し、眼の上の所望の位置に該レンズ本体を方向付けるように構成された、少なくとも1つの安定化構造と、
を含む、眼用レンズ。
【請求項67】
該複数の摩擦低減構造が該レンズ本体の該第1の表面の濡れ性を向上させる、請求項66に記載の眼用レンズ。
【請求項68】
該第2のゾーンが、該第1のゾーンに実質的に隣接している、請求項66に記載の眼用レンズ。
【請求項69】
該第1のゾーン及び該第2のゾーンが、該第1の表面の実質的に全てを覆っている、請求項66に記載の眼用レンズ。
【請求項70】
該第1のゾーン及び該第2のゾーンが、該光学ゾーンの外側の該第1の表面の実質的に全てを覆っている、請求項66に記載の眼用レンズ。
【請求項71】
該光学ゾーンは、トーリック、球面、又は多焦点幾何学的形状を有する、請求項66に記載の眼用レンズ。
【請求項72】
該眼用レンズの周辺部に配置された複数の安定化構造をさらに含む、請求項66に記載の眼用レンズ。
【請求項73】
該複数の安定化構造は、該第1のゾーンと該第2のゾーンとの間の境界部分に配置された複数の突起を含む、請求項72に記載の眼用レンズ。
【請求項74】
該少なくとも1つの安定化構造は、波又は筋を含む、請求項66に記載の眼用レンズ。
【請求項75】
化学的表面改質剤をさらに含む、請求項66に記載の眼用レンズ。
【請求項76】
該化学的表面改質剤が、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、N-ビニルピロリドン(NVP)、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)のうちの1つを含む、請求項75に記載の眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼用レンズの分野に関し、特に、摩擦を制御するための表面構造を有する眼用レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
瞼は、眼を洗浄するとともに涙に含まれる潤滑成分を広げる解剖学的構造である。瞼は、涙又は涙液を眼球表面上に均一に分配する物理的作用をもたらし、ひいては快適で微生物学的に無傷な環境を維持する。コンタクトレンズなどの眼用レンズが眼に装着されると、レンズのバルクポリマーの特性、ポリマー自体の種類や性質、またはこの2つのメカニズムの組合せによって、涙液膜の完全性が損なわれることがある。この現象は、レンズポリマーと周囲環境との相互作用と関連して、眼用レンズの使用者にとって望ましくない装用状態を作り出す可能性がある。これらの望ましくない状態は、通常、使用者の眼における快適性の低下および乾燥に関連する。これらの状態は、使用者に対して、より短く、最適ではないレンズ装着時間及び体験をもたらし得る。
【0003】
レンズと眼の解剖学的構造との間の摩擦は、コンタクトレンズ装着の快適性を改善する鍵であると考えられる。当該技術分野においては眼用レンズの摩擦を制御する多くのアプローチがあり、そのうちのいくつかは化学的特性の改質を伴い、いくつかは物理的特性の改質を伴う。レンズ表面を化学的又は物理的に改質することは当該技術分野において広く知られているが、一般に、眼用レンズに対して全体的にのみ行われてきた。すなわち、レンズ上の瞼の方向性を持った動きを考慮せずにレンズ表面全体にそのような表面改質が施されていた。上眼瞼と下眼瞼のそれぞれはまばたきのときに異なる動きをするので、この全体的な表面改質はレンズと瞼との間の摩擦を適切に制御しない可能性がある。
【0004】
上眼瞼は、主に上眼瞼挙筋によって制御され、まばたきの際には主に垂直方向の動き又は移動方向を有する。上眼瞼は、瞼板と呼ばれる内部構造によって物理的に硬くなっており、そのため、眼または眼用レンズに対して下眼瞼よりも高い表面力を示すことになる。下眼瞼は主に眼輪筋によって制御され、まばたきの際には上眼瞼と協調して主に鼻の方向に動く。下眼瞼は、上下動を実質的に全く示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、眼の上での眼用レンズと瞼との間の摩擦の方向及び大きさは、レンズの上をどちらの瞼が通るかに応じて、レンズの部分により異なり得る。レンズの上部は、上眼瞼のより強い、主に垂直方向の動きの影響を受け、一方でレンズの下部領域は、下眼瞼のより弱い、主に鼻方向に向かう動きの影響を受ける可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、眼用レンズは、第1の表面を含むレンズ本体を含み、第1の表面が、第1の配向を有する第1の複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーンと、第2の配向を有する第2の複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーンとを含むものとすることができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、摩擦低減構造は、少なくとも1つのパターン化された特徴構造を含む。いくつかの実施形態では、パターン化された特徴構造は、ナノ特徴構造を含む。いくつかの実施形態では、パターン化された特徴構造は、マイクロ特徴構造を含む。いくつかの実施形態では、パターン化された特徴構造は、波構造を含む。いくつかの実施形態では、第1の表面は、レンズの外側表面を含む。いくつかの実施形態では、第1の表面は、レンズの内側表面を含む。いくつかの実施形態では、第1の配向は、まばたきの間の上眼瞼の動きと整合している。いくつかの実施形態において、第2の配向は、まばたきの間の下眼瞼の動きと整合している。いくつかの実施形態では、複数の摩擦低減構造は、レンズ本体の第1の表面の濡れ性を向上させる。いくつかの実施形態では、複数の摩擦低減構造は、瞼の自然なまばたきの動きを促進させる。いくつかの実施形態では、第1の複数の摩擦低減構造は、第1のゾーンの幅全体にわたって延在している。いくつかの実施形態では、第2の複数の摩擦低減構造は、第2のゾーンの幅全体にわたって延在している。いくつかの実施形態では、第1のゾーン及び第2のゾーンのうちの1つ又は複数の複数の摩擦低減構造は、互いに実質的に平行である。いくつかの実施形態では、第1のゾーン及び第2のゾーンの1つ又は複数の複数の摩擦低減構造の各々は、円弧によって既定され、複数の摩擦低減構造は実質的に同心円状に配置されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の配向は、第2の配向に対して実質的に垂直である。いくつかの実施形態では、摩擦低減構造は、チャネルとリッジの組合せを含む。いくつかの実施形態では、摩擦低減構造は、くぼみと突起の組合せを含む。いくつかの実施形態では、くぼみ又は突起は、実質的に丸みを帯びたプロファイル、実質的に矩形のプロファイル、実質的に三角形のプロファイル、及び不規則な形状のプロファイルの組合せを有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、眼用レンズは、光学ゾーンをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のゾーンは、光学ゾーンの外側に配置され、光学ゾーンの少なくとも一部を囲んでいる。いくつかの実施形態では、第2のゾーンは、光学ゾーン及び第1のゾーンの外側に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のゾーンは、レンズ本体の縁から、第1の表面の半径よりも大きい距離だけレンズ本体の縁から離れた第1の表面上の位置にまで延在している。いくつかの実施形態では、第1のゾーンは、レンズ本体の縁から、第1の表面の直径の約2/3だけレンズ本体の縁から離れた第1の表面上の位置にまで延在している。いくつかの実施形態において、第2のゾーンは、レンズ本体の縁から、第1の表面の半径よりも小さい距離だけレンズ本体の縁から離れた第1の表面上の位置にまで延在している。いくつかの実施形態では、第2のゾーンは、レンズ本体の縁から、第1の表面の直径の約1/3だけレンズ本体の縁から離れた位置にまで延在している。いくつかの実施形態において、第2のゾーンは、第1のゾーンに実質的に隣接している。いくつかの実施形態において、第1のゾーン及び第2のゾーンは、第1の表面の実質的に全てを覆っている。いくつかの実施形態では、第1のゾーン及び第2のゾーンは、光学ゾーンの外側の第1の表面の実質的に全てを覆っている。
【0010】
いくつかの実施形態では、光学ゾーンは、トーリック、球面、又は多焦点幾何学的形状を有する。いくつかの実施形態では、眼用レンズは、まばたきをしている瞼に係合して眼用レンズを方向付けるように構成された少なくとも1つの安定化構造を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、眼用レンズは、眼用レンズの周辺部に配置された複数の安定化構造をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の安定化構造は、第1のゾーンと第2のゾーンとの間の境界部分に配置された複数の突起を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの安定化構造は、波又は筋を含む。いくつかの実施形態では、眼用レンズは、眼の上の所望の位置にレンズ本体を実質的に方向付けるために、レンズ本体の外縁に沿って形成された1つ又は複数のプリズムを更に含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、眼用レンズは、化学的表面改質剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、化学的表面改質剤は、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、N-ビニルピロリドン(NVP)及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)の1つ又は複数を含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、眼用レンズは、第1の表面を有するレンズ本体を含み、第1の表面が、光学ゾーンと、まばたきの間の上眼瞼の動きと整合する第1の配向を有する第1の複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーンと、第1のゾーンに実質的に隣接し、まばたきの間の下眼瞼の動きと整合する第2の配向を有する第2の複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーンと、まばたきをしている瞼と係合して眼用レンズを方向付けるよう構成されている少なくとも一つの安定化構造と、を含むようにすることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、摩擦低減構造は、少なくとも1つのパターン化された特徴構造を含む。いくつかの実施形態では、パターン化された特徴構造は、ナノ特徴構造を含む。いくつかの実施形態では、パターン化された特徴構造は、マイクロ特徴構造を含む。いくつかの実施形態では、パターン化された特徴構造は波構造を含む。いくつかの実施形態では、複数の摩擦低減構造は、レンズ本体の第1の表面の濡れ性を向上させる。いくつかの実施形態では、複数の摩擦低減構造は、瞼の自然なまばたきの動きを促進させる。いくつかの実施形態では、摩擦低減構造は、チャネルとリッジの組合せを含む。いくつかの実施形態では、摩擦低減構造は、くぼみと突起の組合せを含む。いくつかの実施形態では、くぼみ又は突起は、実質的に丸みを帯びたプロファイル、実質的に矩形のプロファイル、実質的に三角形のプロファイル、及び不規則な形のプロファイルの組合せを有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、眼用レンズは、眼用レンズの周辺部に配置された複数の安定化構造を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の安定化構造は、第1のゾーンと第2のゾーンの間の境界部分に配置された複数の突起を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの安定化構造は、波又は筋を含む。いくつかの実施形態において、眼用レンズは、眼の上の所望の位置にレンズ本体を実質的に方向付けるために、レンズ本体の外縁に沿って形成された1つ又は複数のプリズムを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、眼用レンズは、化学的表面改質剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、化学的表面改質剤は、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、N-ビニルピロリドン(NVP)、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)の1つを含む。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、眼用レンズは、第1の表面を含むレンズ本体を含み、第1の表面が、第1の配向を有する第1の複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーンであって、その摩擦低減構造が、互いに実質的に平行に配置された1つ又は複数のパターン化されたナノ又はマイクロ特徴構造を含む、第1のゾーンと、第1の配向に対して実質的に垂直な第2の配向を有する第2の複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーンであって、その摩擦低減構造が、互いに実質的に平行に配置された1つ又は複数のパターン化されたナノ又はマイクロ構造構造を含む、第2のゾーンと、含むようにすることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、パターン化された特徴構造は、波構造を含む。いくつかの実施形態では、第1の表面は、レンズの外側表面を含む。いくつかの実施形態では、第1の表面は、レンズの内側表面を含む。いくつかの実施形態では、第1の複数の摩擦低減構造は、第1のゾーンの全幅にわたって延びている。いくつかの実施形態では、第2の複数の摩擦低減構造は、第2のゾーンの幅全体にわたって延在している。いくつかの実施形態では、摩擦低減構造は、チャネルとリッジの組合せを含む。いくつかの実施形態では、摩擦低減構造は、くぼみと突起の組合せを含む。いくつかの実施形態では、くぼみ又は突起は、実質的に丸みを帯びたプロファイル、実質的に矩形のプロファイル、実質的に三角形のプロファイル、及び不規則な形状のプロファイルの組合せを有する。いくつかの実施形態において、眼用レンズは、光学ゾーンをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、眼用レンズは、まばたきをしている瞼に係合して眼用レンズを方向付けるように構成された少なくとも1つの安定化構造をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、眼用レンズは、化学的表面改質剤をさらに含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、眼用レンズは、第1の表面を含むレンズ本体を含み、第1の表面が、光学ゾーンと、まばたきの間の上眼瞼の動きに整合した第1の配向を有する第1の複数の摩擦低減構造を含む第1のゾーンであって、その摩擦低減構造が少なくとも1つのパターン化された特徴構造を含む、第1のゾーンと、まばたきの間の下眼瞼の動きと整列する第2の配向を有する第2の複数の摩擦低減構造を含む第2のゾーンであって、その摩擦低減構造が少なくとも1つのパターン化された特徴構造を含む、第2のゾーン、とを有し、これら摩擦低減構造が瞼の自然なまばたきの動きを促進させるようにされており、また、まばたきをしている瞼と係合してレンズ本体を眼の上の所望の位置に方向付けるように構成された少なくとも一つの安定化構造を有するようにすることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の摩擦低減構造は、レンズ本体の第1の表面の濡れ性を向上させる。いくつかの実施形態では、第2のゾーンは、第1のゾーンに実質的に隣接している。いくつかの実施形態では、第1のゾーン及び第2のゾーンは、第1の表面の実質的に全てを覆っている。いくつかの実施形態では、第1のゾーン及び第2のゾーンは、光学ゾーンの外側の第1の表面の実質的に全てを覆っている。いくつかの実施形態では、光学ゾーンは、トーリック、球面、又は多焦点幾何学的形状を有する。いくつかの実施形態では、眼用レンズは、眼用レンズの周辺部に配置された複数の安定化構造を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の安定化構造は、第1のゾーンと第2のゾーンの間の境界部分に配置された複数の突起を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの安定化構造は、波又は筋を含む。いくつかの実施形態では、眼用レンズは、化学的表面改質剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、化学的表面改質剤は、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、N-ビニルピロリドン(NVP)、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)のうちの1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面は、本発明の様々な実施形態を示すものであり、本明細書の一部を構成するものである。図示された実施形態は、単に本発明の例であり、その範囲を限定するものではない。
【0020】
図1A】本開示に従った摩擦制御構造を含む眼用レンズの上面図である。
【0021】
図1B】本開示に従った摩擦制御構造を含む眼用レンズの側面図である。
【0022】
図2A】本開示に従った眼用レンズ上の摩擦制御構造のプロファイル図である。
図2B】本開示に従った眼用レンズ上の摩擦制御構造のプロファイル図である。
図2C】本開示に従った眼用レンズ上の摩擦制御構造のプロファイル図である。
図2D】本開示に従った眼用レンズ上の摩擦制御構造のプロファイル図である。
【0023】
図3A】本開示に従った摩擦制御構造を含む眼用レンズの上面図である。
【0024】
図3B図3Aの眼用レンズの側面図である。
【0025】
図4A】摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。
図4B】摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。
【0026】
図5A】摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。
図5B】摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。
図5C】摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。
図5D】摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。
図5E】摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。
図5F】摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。
【0027】
図面を通して、同一の参照番号は、類似するが必ずしも同一ではない要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載される原理は、眼用レンズがユーザーの眼に装着されたときに、眼用レンズの1つ又は複数の表面と瞼などのユーザーの1つ又は複数の部分との間の摩擦の大きさを制御し得る1つ又は複数の表面特徴構造を有する眼用レンズを含む。これらの摩擦制御表面特徴構造は、例えばまばたきの間、ユーザーの瞼と眼用レンズの表面との間の摩擦の大きさを減少させることができる。場合によっては、本明細書に記載の表面特徴構造は、それらが配置される眼用レンズの表面の濡れ性を向上させることができる。眼用レンズの表面とユーザーの瞼との間の摩擦の低減、及び/又は表面特徴構造によって付与される濡れ性又は潤滑性の向上は、レンズがユーザーの眼に装着されたときに、ユーザーにとっての快適性の向上をもたらし、また瞼の自然なまばたき動作を促進させることができる。すなわち、瞼と眼用レンズとの間の摩擦の減少により、摩擦制御特徴構造を含まない眼用レンズと比較して、瞼がレンズからより少ない摩擦抵抗を受けながらまばたき動作をすることができるようにすることが可能である。この向上された快適さは、レンズのより長い装着時間、レンズによって引き起こされる炎症又は刺激の大きさの減少、及び多数の他の利点を可能にし得る。さらに、この表面特徴構造は、ユーザーの眼の上での眼用レンズの向きの制御を補助し、それによって、眼用レンズが二焦点(遠近両用)光学特徴構造、トーリック光学特徴構造、及び/又は他の向きに依存する特徴構造を含むことを可能にし得る。
【0029】
いくつかの例では、表面特徴構造は、ナノスケール又はマイクロスケールの構造などの表面構造である。ある場合には、表面構造は、チャネル、リッジ、くぼみ、ウェル、及び突起などの、1つ又は複数のパターン化された物理的特徴構造を含むようにすることができる。ある場合には、表面構造は、波構造のようなマクロスケール構造を有するようにできる。ある場合には、表面構造は、ナノスケール、マイクロスケール、及びマクロスケールの構造の組合せを含んでもよい。いくつかの実施形態において、表面特徴構造は、眼用レンズの表面の化学的に改質された部分を含むようにすることができる。例えば、ある場合には、表面特徴構造は、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、N-ビニルピロリドン(NVP)、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、又はそれらの組合せのような化学的表面改質剤を含む眼用レンズの表面のマイクロスケール又はナノスケール部分とすることができる。いくつかの実施形態では、表面特徴構造は、ナノスケール又はマイクロスケール構造などの物理的構造とともに、このナノスケール又はマイクロスケール構造上に、又はそれに隣接して、又はそれに対する任意の所望の位置に配置することができる化学的表面改質剤を含むことができる。
【0030】
いくつかの例では、摩擦制御表面特徴構造は、眼用レンズの内側の眼に面する表面上に配置されるようにすることができる。いくつかの例では、摩擦制御表面特徴構造は、眼用レンズの外側表面上に配置することができる。いくつかの例では、表面特徴構造は、眼用レンズの内側表面及び外側表面に配置されるようにすることができる。
【0031】
眼用レンズと例えばユーザーの瞼との間の摩擦の大きさを制御するために、表面特徴構造は、実質的に特定の方向に整列されるようにすることができる。いくつかの例では、1つ又は複数の表面特徴構造の各々は、特定の配向で眼用レンズ上に配置されるようにすることができる。表面特徴構造がパターン化された特徴構造を含むそれらの実施形態では、特徴構造自体が特定の配向で位置決めされ、及び/又はパターンが特定の配向を有するようにすることができる。
【0032】
いくつかの例では、眼用レンズの表面は、1つ又は複数のゾーンを含み、各ゾーンに配置された表面特徴構造が、互いに対して異なる配向を有するようにすることができる。例えば、眼用レンズの表面は、第1の配向を有する第1の複数の表面特徴構造を有する第1のゾーンと、第2の異なる配向を有する第2の複数の表面特徴構造を有する第2のゾーンとを有することができる。いくつかの例では、1つ又は複数のゾーンにおける表面特徴構造の配向は、レンズが所望の向きで眼に装着されたときにそのゾーン上のユーザーの瞼の動きの方向と実質的に整合するようにできる。例えば、眼用レンズの表面は、第1の上部ゾーン及び第2の下部ゾーンを含むことができる。第1の上部ゾーンの表面特徴構造は、ユーザーの上眼瞼の主な動きの方向と整列した又はそれに対応する配向を有するようにし、第2の下部ゾーンの表面特徴構造は、ユーザーの下眼瞼の主な動きの方向と整列した又はそれに対応する配向を有するようにすることができる。
【0033】
眼用レンズの表面特徴構造は、いくつかの例において、ユーザーの眼の上の眼用レンズの向きを制御又は安定化するのに役立つ。いくつかの例では、表面特徴構造は、本明細書に記載されるように摩擦を制御することに加えて、ユーザーの眼の上の眼用レンズの向きを制御又は安定化させるようにすることができる。いくつかの例では、眼用レンズは、ユーザーの眼上の所望の位置にレンズを実質的に方向付ける1つ又は複数の突起、筋、波、又はプリズムなどの1つ又は複数の追加の安定化特徴構造も含むことができる。本明細書に記載されるように、眼用レンズがレンズ安定化特徴構造を含む場合、ユーザーの眼の上でのレンズの安定した配向は、摩擦制御表面特徴構造の配向を瞼の主な動きの方向と実質的に整合させることを可能にし得る。摩擦制御表面特徴構造の配向を瞼の主な動きの方向と整合させることにより、瞼と眼用レンズの表面との間の摩擦の程度を低減させることを可能にし得る。
【0034】
図1A及び図1Bは、レンズ材料で形成され、瞼対向面、環境対向面、又は非眼対向面などとも呼ばれる第1の表面を含む眼用レンズ100の一例を示している。第1の表面が、第1のゾーン111及び第2のゾーン112を含むようにすることができる。ある場合には、眼用レンズ100の第1の表面が、光学ゾーン113を含むようにすることができる。
【0035】
レンズ材料は、眼用レンズ又はコンタクトレンズとして使用するのに適した任意の材料で構成することができる。すなわち、いくつかの例では、レンズ材料は、典型的なヒドロゲルコンタクトレンズから構成することができる。例えば、レンズ材料は、ヒドロゲルのような透明なポリマー材料から構成することができる。いくつかの例では、レンズ材料は、シリコーンヒドロゲル材料から構成することもできる。
【0036】
いくつかの例によれば、第1の表面の第1のゾーン111が、複数の摩擦制御構造121を含むようにすることができる。いくつかの例では、摩擦制御構造121は、摩擦低減構造とすることができる。本実施例によれば、第1のゾーン111は複数の摩擦制御構造121を含み、摩擦制御構造121は1つ又は複数のパターン化された特徴構造を含む。いくつかの例では、摩擦制御構造121のパターン化された特徴構造は、本明細書でさらに説明するように、ナノスケール特徴構造及び/又はマイクロスケール特徴構造とすることができる。いくつかの例では、パターン化された特徴構造は、起伏構造又は波構造を有することができる。例えば、パターン化された特徴構造は、ピークと谷との間にナノスケール又はマイクロスケールの高さの差を有する第1の表面上の起伏又は波を含むことができる。ある場合には、波構造は、約1から約10、100、1000、又は10,000以上の間の任意の数のピークと谷を含むことができる。少なくとも図1A及び図1Bを含む図に描かれた特徴構造は、縮尺通りに示されていない場合があり、例示的な目的のために拡大されている場合があることを留意されたい。
【0037】
いくつかの例では、摩擦制御構造121は、光を回折させないようにすることができ、また眼によって検出される眼用レンズ100の透明度を阻害しないようにすることができる。いくつかの例では、摩擦制御構造121は、眼用レンズ100の第1のゾーン111の濡れ性又は潤滑性を向上させるようにすることができる。このようにして、摩擦制御構造121は、眼用レンズ100と瞼との間に摩擦制御構造121によって所望の量の液体又は潤滑流体を保持することにより、眼と瞼との間の摩擦の程度を低減させることができる。いくつかの例では、摩擦制御構造121は、レンズ100上の任意の涙膜を減少、離散、又は分散させるようにできる。いくつかの例では、摩擦制御構造121は、レンズ100上の涙液などの流体の動きをよくし、それによって、第1のゾーン111における潤滑性涙液のより均一かつ均等な分布をもたらすようことができる。
【0038】
第1のゾーン111の摩擦制御構造121は、第1の配向を有するように、配置、位置付け、又は形成されるようにすることができる。本明細書で使用されるように、1つ又は複数の摩擦制御構造121の配向とは、摩擦制御構造121の1つ又は複数のパターン化された特徴構造の、単一の方向又はある範囲の方向との実質的な整列を説明するものとして理解される。いくつかの例では、摩擦制御構造121の配向は、各摩擦制御構造121上で動く瞼に対しての最小抵抗又は最小摩擦の経路との整列を指すことができる。いくつかの例では、摩擦制御構造121の配向は、所望の方向に対する摩擦制御構造121の最大又は最小の横方向寸法の整列を指すことができる。
【0039】
いくつかの例では、第1のゾーン111の摩擦制御構造121の配向は、眼用レンズ100がユーザーの眼に装着されたときにほぼ垂直に位置合わせされるようにできる。いくつかの例では、摩擦制御構造121の配向は、眼用レンズ100がユーザーの眼に装着されたときに、ユーザーの上眼瞼の主な動きの方向と実質的に整合されるようにできる。第1のゾーン111の摩擦制御構造121がユーザーの上眼瞼の主な動きの方向と整合して配向された場合には、摩擦制御構造121は、摩擦制御構造121の他の配置状態と比較して、ユーザーの上眼瞼と第1のゾーン111との間の摩擦の大きさを減少させることができる。ユーザーの瞼と第1のゾーン111との間のこの摩擦の低減は、ユーザーの自然なまばたきを促進又は容易にすることができる。
【0040】
さらに、摩擦制御構造121が、瞼の主な動きの方向における第1のゾーン111と上眼瞼との間の摩擦の大きさを減少させるように配向されているそれらの例では、摩擦制御構造121は、ユーザーの眼の上の眼用レンズ100の位置を安定させる役割を果たすことができる。摩擦制御構造121の配向は、第1の表面上を動く瞼に対する最小抵抗又は最小摩擦の経路を提供することができる。眼用レンズ100が回転するか又はユーザーの眼上の位置から外れた場合、この最小抵抗の経路は、瞼の主な動きの方向と実質的に整列しなくなる。そこでユーザーがまばたきをしたときに、上眼瞼がレンズ100を眼の上で再位置決めさせる力を第1の表面に及ぼし、最小抵抗の経路が再び上眼瞼の垂直動作と整列するようにすることができる。このようにして、第1のゾーン111の摩擦制御構造121は、ユーザーの眼の上での眼用レンズ100の位置又は配向を安定させる役割を果たすことができる。
【0041】
図1Aに示すように、いくつかの例では、摩擦制御構造121の1つ又は複数が、第1のゾーン111の高さ又は幅の全体にわたって実質的に延在するようにできる。いくつかの例では、摩擦制御構造121の1つ又は複数が、第1のゾーン111を少なくとも部分的に横切って延在するようにしてもよい。いくつかの例では、摩擦制御構造121の1つ又は複数が、第1のゾーン111の少なくとも一部を横切って直線的に、又は実質的に直線的に延在するようにしてもよい。しかしながら、いくつかの例では、摩擦制御構造121の1つ又は複数が、弧状または湾曲した形状を有していてもよい。例えば、摩擦制御構造121の1つ又は複数が、第1のゾーン111の表面上の円弧によって既定される形状を有していてもよい。
【0042】
いくつかの例では、また図1Aに示すように、摩擦制御構造121の各々は、第1のゾーン111上で互いに実質的に平行に配置されるようにできる。すなわち、摩擦制御構造121が第1の配向を有する場合、摩擦制御構造121の各々は、第1の配向において互いに平行に配置されるようにできる。1つ又は複数の摩擦制御構造121が湾曲又は弧状の形状を有するいくつかの例では、摩擦制御構造121は実質的に同心円状に配置されるようにしてもよい。
【0043】
図1A及び図1Bに描かれた眼用レンズ100はまた、第1の表面の第2のゾーン112を含む。この第2のゾーン112は、第2の複数の摩擦制御構造122を含むようにすることができる。いくつかの例では、摩擦制御構造122は、摩擦低減構造とすることができる。いくつかの例によれば、第2のゾーン112は複数の摩擦制御構造122を含み、摩擦制御構造122は1つまたは複数のパターン化された特徴構造を含む。いくつかの例では、摩擦制御構造122のパターン化された特徴構造は、本明細書でさらに説明するように、ナノスケール特徴構造及び/又はマイクロスケール特徴構造とすることができる。いくつかの例では、パターン化された特徴構造は、起伏構造または波構造を有するものとすることができる。いくつかの例では、第2のゾーン112の摩擦制御構造122は、摩擦制御構造122が異なる方向又はサイズを有していてもよいが、ここで説明されるように第1のゾーン111の摩擦制御構造121と実質的に類似したものとすることができる。
【0044】
いくつかの例では、摩擦制御構造122は、光を回折させないようにすることができ、また眼によって検出される眼用レンズ100の透明度を阻害しないようにすることができる。いくつかの例では、摩擦制御構造122は、眼用レンズ100の第2のゾーン112の濡れ性又は潤滑性を向上させるようにすることができる。いくつかの例では、摩擦制御構造122は、レンズ100上の任意の涙液膜の離散又は分散を低減させるようにできる。いくつかの例では、摩擦制御構造122は、レンズ100の所望の領域への涙液などの流体の動きをよくするようにすることができる。
【0045】
第2のゾーン112の摩擦制御構造122は、第2の配向を有するように、配置、位置付け、又は形成されるようにすることができる。いくつかの例では、摩擦制御構造122の配向は、各摩擦制御構造122上で動く瞼に対しての最小抵抗又は最小摩擦の経路との整列を指すことができる。いくつかの例では、摩擦制御構造122の配向は、所望の方向に対する摩擦制御構造122の最大横方向寸法又は最小横方向寸法の整列を指すことができる。
【0046】
いくつかの例では、第2のゾーン112の摩擦制御構造122の配向は、眼用レンズ100がユーザーの眼に装着されたときに、ほぼ水平に位置合わせされるようにできる。いくつかの例では、摩擦制御構造122の配向は、眼用レンズ100がユーザーの眼に装着されたときに、ユーザーの下眼瞼の主な動きの方向と実質的に整合されるようにしてもよい。第2のゾーン112の摩擦制御構造122がユーザーの下眼瞼の主な動きの方向と整合して配向された場合、摩擦制御構造122はユーザーの下眼瞼と第2のゾーン112の間の摩擦の大きさを減少させることができる。ユーザーの瞼と第2のゾーン112との間のこの摩擦の低減は、ユーザーの自然なまばたきを促進又は容易にすることができる。
【0047】
いくつかの例では、この第2のゾーン112の摩擦制御構造122は、眼の上の眼用レンズ100の位置を安定させること、及び第2のゾーン112とユーザーの下眼瞼との間の摩擦を低減させることに関して、第1のゾーン111の摩擦制御構造121と同様に機能するようにできる。
【0048】
図1Aに示すように、いくつかの例では、摩擦制御構造122の1つ又は複数が、第2のゾーン112の高さ又は幅の全体にわたって実質的に延在するようにできる。いくつかの例では、摩擦制御構造122の1つ又は複数が、第2のゾーン112を少なくとも部分的に横切って延在するようにしてもよい。いくつかの例では、摩擦制御構造122の1つ又は複数が、第2のゾーン111の少なくとも一部を横切って直線的に、または実質的に直線的に延在するようにしてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、摩擦制御構造122の1つ又は複数が、第2のゾーン112上で弧状又は曲線状の形状を有するようにしてもよい。例えば、摩擦制御構造122の1つ又は複数が円弧によって既定される形状を有するようにしてもよい。
【0049】
いくつかの例では、また図1Aに示すように、摩擦制御構造122の各々は、第2のゾーン112上で互いに実質的に平行に配置されるようにできる。すなわち、摩擦制御構造122が第2の配向を有する場合、摩擦制御構造122の各々は、第2の配向において互いに平行に配置されるようにできる。1つ又は複数の摩擦制御構造122が湾曲又は弧状の形状を有するいくつかの例では、摩擦制御構造122は実質的に同心円状に配置されるようにしてもよい。
【0050】
図1Aで分かるように、第1のゾーン111の摩擦制御構造121は、第2のゾーン112の摩擦制御構造122に対して実質的に垂直に配向されるようにできる。すなわち、いくつかの例では、摩擦制御構造121は、摩擦制御構造122の第2の配向に対して垂直である第1の配向を有する。しかしながら、いくつかの他の例では、第1の配向は、第2の配向に対して実質的に平行であるか、又は何らかの他の空間的関係を有するようにしてもよい。
【0051】
図1A及び1Bに描かれた眼用レンズ100は、第1の表面の眼用レンズ100の縁から、眼用レンズ100の直径の約2/3だけ第1の表面上の縁から離れた位置にまで延在している第1のゾーン111を含んでいる。いくつかの例では、第1のゾーン111は、眼用レンズ100の縁から、第1の表面又は眼用レンズ100の半径よりも眼用レンズの縁から大きく離れた第1の表面上の位置にまで延在しているようにしてもよい。
【0052】
図示の例では、第2のゾーン112は、第1のゾーン111及び光学ゾーン113の外側の第1の表面の残り部分を覆っている。すなわち、いくつかの実施例では、第2のゾーン112は、眼用レンズ100の縁から、眼用レンズの直径の約1/3だけ第1の表面の縁から離れた位置にまで延在するようにすることができる。いくつかの例では、第2のゾーン112は、眼用レンズ100の縁から、おおよその半径よりも小さい距離だけ眼用レンズの縁から離れた第1の表面上の位置にまで延在しているようにしてもよい。いくつかの例では、第1のゾーン111及び第2のゾーン112は、このように、光学ゾーン113の外側の第1の表面の実質的に全てを覆うようにすることができる。
【0053】
第1のゾーン111は、図1A及び図1Bに示す例では、第1の表面上で第2のゾーン112に実質的に隣接している。しかしながら、いくつかの例では、第1及び第2のゾーン111、112は、実質的に隣接していない、すなわち互いに当接していないようにしてもよい。さらに、いくつかの例では、第1及び第2のゾーン111、112は、第1の表面の全体を覆っていないようにしてもよく、その一部のみを覆うようにしてもよい。いくつかの例では、レンズ100上に光学ゾーン113が存在する場合、第1のゾーン111及び第2のゾーン112の一方又は両方が、光学ゾーン113の中に部分的又は全体的に延在するようにしてもよい。
【0054】
いくつかの例では、第1のゾーン111は、任意の所望の形状及び面積を有する第1の表面の一部を覆うようにすることができる。図1A及び図1Bの第1のゾーン111は、ほぼ半円の形状を含むが、他の例では、第1のゾーン111は、円形状、矩形状、三角形状、又は他の任意の所望の形状を有していてもよい。第2のゾーン112は、同様に、第1の表面上の任意の所望の形状及び面積を有するようにできる。
【0055】
図1A及び図1Bに描かれた例は第1のゾーン111及び第2のゾーン112を含むが、いかなる数のゾーンが眼用レンズ100の第1の表面上に存在してもよい。更に、これらのゾーンの各々は、1つ又は複数の摩擦制御構造を含むことができ、あるゾーンの摩擦制御構造の全てが1つの配向を有し、例えば他のゾーンの摩擦制御構造の配向とは異なる配向を有していてもよい。
【0056】
レンズ材料は、眼用レンズ100の中心に配置された光学領域又は光学ゾーン113を含むことができる。光学ゾーン113は、典型的には、低照度条件における眼の瞳孔とほぼ同じサイズであり、例えば、約10ミリメートルの直径を有するようにできる。光学ゾーン113は、もしあるのであれば、眼用レンズ100の視力矯正力を有するようにできる。いくつかの例によれば、光学ゾーン113は、いかなる摩擦制御構造や機能も含まなくようにしてもよい。いくつかの他の例では、本明細書に記載されるような1つ又は複数の摩擦制御構造が光学ゾーンに存在するようにできる。いくつかの例では、第1のゾーン111又は第2のゾーン112の摩擦制御構造121、122は、光学ゾーン113の全て又は一部に延在し、又はその上に配置されるようにしてもよい。光学ゾーン113が視力矯正力を含み得るいくつかの例では、光学ゾーン113は、トーリック、球状、又は多焦点幾何学的形状を有していてもよい。いくつかの例では、光学ゾーン113は、当該技術分野において存在する、又は将来開発されるであろう、任意の形態の矯正又は光学幾何学的形状を有していてもよい。
【0057】
図2Aは、眼用レンズ200の第1又は第2のゾーン上の、摩擦低減構造としての例示的な摩擦制御構造221のプロファイル図、すなわち断面図を示している。摩擦制御構造221及びレンズ200は、摩擦制御構造121及びレンズ100のような本明細書に記載された構造及びレンズと実質的に同様とするか、又はそれらの特徴構造のいずれか又は全てを含むようにすることができる。いくつかの例では、摩擦制御構造221は、複数の繰り返される物理的構造を含むパターン化された特徴構造を有するものとすることができる。図2Aに見られるように、いくつかの例では、繰り返しの物理的構造は、くぼみ231及び突起232の組合せを有するものとすることができる。この特定の例では、くぼみ231及び突起232は、実質的に矩形のプロファイルを有することができる。図2Bに例示されるようないくつかの例では、くぼみ231及び突起232は、実質的に丸みを帯びたプロファイルを有することができる。いくつかの例では、くぼみ231又は突起232は、実質的に矩形のプロファイル、実質的に丸みを帯びたプロファイル、実質的に三角形のプロファイル、不規則な形状のプロファイル、またはそれらの組合せを有していてもよい。例えば、くぼみ231が実質的に矩形のプロファイルを有する一方で、突起232は実質的に丸みを帯びたプロファイルを有するようにしてもよい。
【0058】
いくつかの例では、図2Cに描かれているように、摩擦制御構造221は、突起232を含むがくぼみは含まないものとすることもできる。いくつかの例では、図2Dに描かれているように、摩擦制御構造221は、くぼみ231は含むが突起は含まないものとすることもできる。いくつかの例では、摩擦制御構造221は、任意の配列で配置された任意の数のくぼみ231および/または突起232、またはそれらの組合せを含むものとすることができる。
【0059】
いくつかの例では、摩擦制御構造は、1つ又は複数のチャネル及び/又はリッジを含んでいてもよい。いくつかの例では、摩擦制御構造の各チャネル又はリッジは、摩擦制御構造の全長に延在していてもよく、又は摩擦制御構造の長さの一部にのみ延在していてもよい。チャネル又はリッジが摩擦制御構造の全長を延在しないいくつかの例では、摩擦制御構造は、複数のチャネル及び/又はリッジを含んでいてもよい。いくつかの例では、摩擦制御構造のチャネル及び/又はリッジは、摩擦制御構造の配向に沿ってそれと平行に配置されるようにしてもよい。しかしながら、いくつかの他の例では、摩擦制御構造のチャネル又はリッジは、摩擦制御構造の配向に対して、垂直に配置されたり、又は何らかの他の空間的関係を有したりしてもよい。
【0060】
いくつかの例では、図2A図2Dに示されたくぼみ231及びリッジ232は、リッジ及び/又はチャネルを画定するように所望の距離を延在することができる。すなわち、図2A図2Dに図示されたくぼみ231及びリッジ232は、紙面の奥側又は手前側に所望の距離を延びて、1つ又は複数のリッジ及び/又はチャネルを画定してもよい。いくつかの例では、図2A図2Dに示されたくぼみ231及び/又はリッジ232は、ナノスケール構造又はマイクロスケール構造のウェルとしても、又はそれを画定してもよい。すなわち、図示されたように横方向に繰り返すことに加えて、摩擦制御構造221は、レンズ100の第1の表面を横切って紙面の奥側及び/又は手前側に延在して、レンズ材料の部分によって分離された繰り返しのくぼみ231及び/又はリッジ232を含むことができる。したがって、いくつかの例では、くぼみ231及び/又はリッジ232によって画定されるウェルは、レンズ100の表面の濡れ性及び流体の動きを向上させる超濡れ面を提供することができる。
【0061】
いくつかの例では、1つ又は複数のウェルを含む摩擦制御構造221は、眼用レンズ100がユーザーに装着されたときに、涙液又は別の潤滑液などの液体を含むことができる。したがって、摩擦制御構造221は、ウェルの中に液体を保持して流体の動きを低下させることによって潤滑性を向上させる一方で、例えばまばたきの間に瞼によってレンズ100に圧力が加えられたときには流体の動きを大きくすることもできる。これらの流体の動きの選択的な大きさは、まばたきの間に瞼によって及ぼされる圧力が、くぼみ231、突起232、及び/又はそれによって画定されるウェルを変形させ、それによって流体が逃げるのを可能にすることができるために達成され得る。しかしながら、レンズ100に圧力がかかっていないときは、くぼみ231、突起232、及び/又はウェルは、その構造を維持し、そこに所望の量の液体を保持して、増加した濡れ性を提供することができる。
【0062】
摩擦制御構造221の繰り返しの物理的特徴構造及び/又はチャネル及び/又はリッジを含む摩擦制御構造などのような摩擦制御構造を含み得る物理的特徴構造は、ナノスケール、マイクロスケール、又はその組合せであってもよい。いくつかの例では、摩擦制御構造の物理的特徴構造は、約10nmから約100nm、約250nm、約500nm、または最大約1mm、2mm、3mm、5mm、もしくは10mm以上までの主要寸法を有していてもよい。いくつかの例では、摩擦制御構造を含む物理的特徴構造は、すべて実質的に同様の主要寸法を有していてもよい。いくつかの例では、摩擦制御構造は、様々な主要寸法を有する複数の物理的特徴を含んでいてもよい。例えば、摩擦制御構造は、ナノスケールの主要寸法を有する1つ又は複数の物理的特徴構造、及びマイクロスケールの主要寸法を有する1つ又は複数の物理的特徴構造を含んでいてもよい。いくつかの例では、リッジ232の主要寸法は、幅及び/又は長さだけでなく、レンズ100の表面上の高さ又は距離としてもよい。同様に、いくつかの例では、くぼみ231の主要寸法は、幅及び/又は長さと同様に、レンズ100表面の下の深さ又は距離としてもよい。
【0063】
本明細書で説明するように、いくつかの例では、摩擦制御構造は、波構造のようなマクロスケールの物理的特徴構造を含んでいてもよい。いくつかの例では、摩擦制御構造は、例えば図2A図2Dに関して本明細書で説明されているナノスケール及び/又はマイクロスケールの物理的特徴構造、並びに波構造のようなマクロスケールの構造の組合せを含んでいてもよい。
【0064】
いくつかの例では、本明細書に記載の摩擦制御構造の物理的特徴構造は、シリコーン及び/又はヒドロゲル材料などの、レンズ材料と同じ又は類似の材料で形成することができる。いくつかの例では、物理的特徴構造は、1つ又は複数の他のポリマー材料から構成されてもよい。いくつかの例では、1つ又は複数の物理的特徴は、アディティブプロセスによって形成されてもよい。例えば、物理的特徴構造は、キャスティングプロセス、成形プロセス、印刷プロセス、スタンピングプロセス、液体若しくは気相成長プロセス、又はそれらの組合せによって形成されてもよい。いくつかの例では、物理的特徴構造は、眼用レンズ本体と同時に形成されてもよい。いくつかの例では、物理的特徴構造は、レンズ本体とは別に形成され、その後にそれに取り付け又は付着されてもよい。いくつかの例では、物理的特徴構造は、レンズ本体の形成又は硬化に続いて形成されてもよい。いくつかの例では、物理的特徴構造は、サブトラクティブプロセスによって形成されてもよい。例えば、物理的特徴構造は、プラズマエッチングなどのエッチング、リソグラフィ、機械加工、穴あけ、旋盤加工、又は他のサブトラクティブプロセス、又はそれらの組合せによって形成されてもよい。いくつかの例では、1つ又は複数の物理的特徴構造がアディティブプロセスで形成される一方で、1つ又は複数の他の物理的特徴構造がサブトラクティブプロセスから形成されてもよい。いくつかの例では、1つ又は複数の物理的特徴構造は、アディティブプロセスとサブトラクティブプロセスの組合せによって形成されてもよい。
【0065】
いくつかの例では、摩擦低減構造などの摩擦制御構造は、化学的表面改質剤を含むことができる。例えば、摩擦制御構造は、1つ又は複数の化学的表面改質剤を含む眼用レンズの表面の部分を含んでいてもよい。いくつかの例では、化学的表面改質剤は、ヒアルロン酸(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、N-ビニルピロリドン(NVP)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、及び他の同様の有機化合物の1つ又は複数を含むことができる。
【0066】
いくつかの例では、摩擦制御構造は、化学的表面改質剤を含む眼用レンズの表面の1つ又は複数の部分を含むことができ、この部分は、あるパターンで配置することができ、また配向を有するようにすることができる。例えば、摩擦制御構造は、レンズがユーザーの眼に装着されたときに、実質的に垂直、水平、又は他の配向で配置された眼用レンズの表面の複数の繰り返し部分を含んでいてもよい。いくつかの例では、化学的表面改質剤を含む摩擦制御構造は、上眼瞼又は下眼瞼などの瞼の主な動きの方向に沿って配向されたレンズの表面の複数の部分を含んでいてもよい。
【0067】
いくつかの例では、摩擦制御構造は、1つ又は複数の物理的構造、例えば本明細書に記載のパターン化されたナノスケール又はマイクロスケール構造を含むことができ、物理的構造の少なくとも一部は、化学的に修飾された表面を含む。いくつかの例では、摩擦制御構造は、1つ又は複数の物理的構造、及び化学的に改質された眼用レンズの表面の1つ又は複数の部分を含んでいてもよい。更に、いくつかの例では、摩擦制御構造は、本明細書に記載されるような物理的構造又は特徴構造の任意の組合せを含んでいてもよく、ここで、物理的構造の1つ又は複数の部分、及び/又は眼用レンズの表面の1つ又は複数の部分は、化学的に改質された表面を含んでいてもよい。
【0068】
図3Aは、レンズ材料で形成され、第1の表面、すなわち上面又は瞼に対向する表面を含む眼用レンズ300の上面図であり、図3Bはそのプロファイル図である。第1の表面は、第1のゾーン311及び第2のゾーン312を含むことができる。いくつかの態様においては、眼用レンズ300の第1の表面は、光学ゾーン313を含むことができる。第1のゾーン311及び第2のゾーン312は、複数の摩擦制御構造321、322を含むことができる。摩擦制御構造321、322及びレンズ300は、摩擦制御構造121及びレンズ100など、本明細書に記載された構造及びレンズの特徴のいずれか又は全てと実質的に類似したものとしてもよく、またそれらを含んでもよい。眼用レンズ300は、1つ又は複数の安定化構造340も含むことができる。
【0069】
摩擦制御構造321、322は、ユーザーの眼の上の眼用レンズ300の位置を安定させることを補助し得るが、眼用レンズ300は、眼の上の眼用レンズ300の位置を安定させる役割を果たす追加の安定化構造340を含むことができる。いくつかの例において、図3A及び図3Bに示されるように、安定化構造340は、眼用レンズ300の他の部分の厚さよりも大きな厚さを有する1つ又は複数の楔状部又はプリズムを含むことができる。これらの安定化構造340は、眼用レンズ300の外縁の近くに、例えば、レンズがユーザーの眼に装着されたときに強膜の上に配置される眼用レンズ300の部分に配置することができる。
【0070】
いくつかの例では、安定化構造340は、レンズ300の外周部に配置することができ、レンズ300の頂部から下方への距離の約60%~70%、例えば約65%、に配置することができる。安定化構造340は、図3Bに示されるように、レンズ300の最も厚い部分であり得るピーク341を含むことができる。このピーク341は、周辺部の一定な縁の厚さにまで薄くなっていくようにできる。安定化構造340は、このように、レンズ300の中心部と中間周辺部を通るほぼ平行な厚さの広い通路を可能にしながら、瞼からのできる限り広範な安定化作用を生じさせる。いくつかの実施形態では、これらの安定化構造340は、レンズ300の位置を安定させるために、瞼の圧力勾配を下と外の両方に向け直すことによって上眼瞼の安定化効果を最大化する。
【0071】
いくつかの例では、安定化構造340は、眼用レンズ300の前面、背面すなわち眼に面する面、又は前面及び背面に配置された1つ又は複数の溝、パターン、及び/又は孔を含んでもよい。安定化構造340が溝及び/又はパターンを含み得るいくつかの実施形態では、その溝又はパターンは、レンズ300の隆起部分であってもよく、又は第1の表面などのレンズ300の表面の中にへこんでいてもよい。いくつかの例では、レンズ300がユーザーの眼の上にある状態でユーザーがまばたきをすると、スポンジ状の眼瞼及び/又は瞼板の眼球結膜がレンズ表面上の安定化構造340を掴み、レンズ300のパターン、溝又は穴の傾斜又は配向に従ってレンズ300を方向付けするようにできる。眼と瞼の相互関係の生理機能が、レンズ300の安定化を補助し得る。いくつかの例では、瞼の圧力が、レンズ300を方向付け又は安定化させるための摩擦力をもたらすために利用されてもよい。
【0072】
いくつかの例では、安定化構造340は、眼用レンズ300の第1の表面などの表面上に配置された波又は筋を含んでもよい。いくつかの例では、これらの波又は筋は、レンズ300がユーザーの眼に装着されたときに垂直の配向を有してもよい。いくつかの例では、上眼瞼などのユーザーの瞼と安定化構造340との間の摩擦力は、レンズ300を方向付け又は安定化させる役割を果たし得る。安定化構造340の配向は、第1の表面上で動く瞼に対し最小抵抗又は最小摩擦となる経路を提供してもよい。眼用レンズ300が回転するか、又は他の方法でユーザーの眼上の位置から外れる場合、この最小抵抗の経路は、もはや瞼の主な動きの方向と実質的に整合しないであろう。そこでユーザーがまばたきをすると、上眼瞼は、レンズ300を眼の上で再位置決めさせる第1の表面の安定化構造340へ力を及ぼし、最小抵抗の経路が再び上眼瞼の垂直運動と整列するようにすることができる。このようにして、眼用レンズ300の安定化構造340は、ユーザーの眼の上で眼用レンズ300の位置又は向きを安定化させる又はその補助をする役割を果たすことができる。
【0073】
いくつかの例では、眼用レンズ300は、当技術分野で知られている又は将来開発される任意の形態の安定化構造340を代替的に又は追加的に含んでいてもよい。いくつかの例では、安定化構造340は、アディティブプロセスもしくはサブトラクティブプロセス、又はそれらの組合せによって形成されてもよい。例えば、安定化構造340は、キャスティングプロセス、成形プロセス、印刷プロセス、スタンピングプロセス、又は液体若しくは気相成長プロセス、又はそれらの組合せによって形成されてもよい。いくつかの例では、安定化構造340は、エッチング、機械加工、穴あけ、旋盤加工、または他の何らかのアディティブプロセス、またはそれらの組合せによって形成されてもよい。
【0074】
図4A図4Bは、本明細書に記載された摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す概略図である。図4Aは、本明細書に記載されるような眼用レンズ400をキャスト成型するためのキャストモールディングシステムの一例の断面図である。レンズ400は、レンズ100、200、300などの本明細書に記載される構造及びレンズの特徴構造のいずれか又は全てに実質的に類似したものとしてもよく、またそれらを含んでいてもよい。図示されているように、キャストモールディングシステムは、そこにモールドされる眼用レンズの後面、瞼対向面、又は第1の表面の幾何学的形状及び仕上げ面を画定し、もしあれば摩擦制御構造を含む、凸状の後側形成面42を有する雄型部材40を含む。同様に、キャストモールディングシステムは、そこにモールドされる眼用レンズの前面、眼対向面、又は第2の表面の幾何学的形状及び仕上げ面を画定し、もしあれば摩擦制御構造を含む、凹状の前側形成面46を有する雌型部材44を含む。図4Aに示されるように、液体レンズ材料は、雌型部材44の凹面内に配置され得る。
【0075】
いくつかの例では、雄型部材40及び雌型部材44の後側形成面42及び/又は前側形成面46は、本明細書に記載するように、眼用レンズ400の前面又は後面に1つ又は複数の摩擦制御構造を形成するように、リッジ又はくぼみのような特徴構造を含むことができる。いくつかの例では、特徴構造は、形成されるべき摩擦制御構造の「逆の」形状を含むことができる。例えば、眼用レンズ400が後面又は第1の表面上に複数の突起からなる摩擦制御構造を含む場合、雄型部材44の後側形成面42は、形成される突起の形状に対応する複数のくぼみ又は凹部43を含んでいてもよい。
【0076】
図4Bは、後側形成面42及び前側形成面46に適合するように雄型部材40と雌型部材44との間に配置された液体レンズ材料48を有する組み合わされたキャストモールディングシステムの断面図である。この例では、液体レンズ材料48は、雌型部材44のプロファイル凹面内に置かれ、組み立て中に後側形成面42によって係合される。液体レンズ材料48は、眼用レンズに使用するのに適した任意の材料から作ることができる。例えば、液体レンズ材料48は、キュア、重合、または硬化したときに剛性でガス又は酸素透過性である任意の材料から作ることができる。いくつかの例では、液体レンズ材料48は、ポリマー材料を含んでもよい。いくつかの例では、液体レンズ材料48は、シロキサン材料を含んでもよい。いくつかの例では、液体レンズ材料48は、アクリレート材料を含んでもよい。いくつかの例では、液体レンズ材料48は、セルロースアセテートブチレート、シロキサンアクリレート、t-ブチルスチレン、フルオロキサンアクリレート、ペルフロエーテル、他の種類のポリマー、又はそれらの組合せを含んでもよい。これらの材料は、最終的なポリマーを形成するために、モノマー、ポリマー、および他の材料の様々な組合せを含んでもよい。例えば、これらの材料の一般的な成分は、HEMA、HEMA-GMA、および他のモノマーを含んでもよい。
【0077】
いくつかの例では、液体レンズ材料48は、任意のシリコーン材料及び/又はヒドロゲル材料で作ることができる。そのような材料は、ポリマー、例えば、テフィルコン(tefilcon)、テトラフィルコンA(tetrafilcon A)、クロフィルコン(crofilcon)、ヘルフィルコンA及びB(helfilcon A&B)、マフィルコン(mafilcon)、ポリマコン(polymacon)、ヒオキシフィルコンB(hioxifilcon B)、ロトラフィルコンA(lotrafilcon A)、ロトラフィルコンB(lotrafilcon B)、ギャルフィルコンA(galyfilcon A)、セノフィルコンA(senofilcon A)、シフィルコンA(sifilcon A)、コムフィルコンA(comfilcon A)、エンフィルコンA(enfilcon A)、リドフィルコンB(lidofilcon B)、サーフィルコンA(surfilcon A)、リドフィルコンA(lidofilcon A)、アルファフィルコンA(alfafilcon A)、オマフィルコンA(omafilcon A)、ヴァスールフィルコンA(vasurfilcon A)、ハイオキシフィルコンA(hioxifilcon A)、ハイオキシフィルコンD(hioxifilcon D)、ネルフィルコンA(nelfilcon A)、ヒラフィルコンA(hilafilcon A)、アコフィルコンA(acofilcon A)、ブフィルコンA(bufilcon A)、デルタフィルコンA(deltafilcon A)、ペムフィルコンA(phemfilcon A)、ブフィルコンA(bufilcon A)、パーフィルコン(perfilcon)、エタフィルコンA(etafilcon A)、フォコフィルコンA(ocofilcon A)、オキュフィルコンB(ocufilcon B)、オキュフィルコンC(ocufilcon C)、オキュフィルコンD(ocufilcon D)、オキュフィルコンE(ocufilcon E)、オキュフィルコンF(ocufilcon F)、ペムフィルコンA(phemfilcon A)、メタフィルコンA(methafilcon A)、メタフィルコンB(methafilcon B)、ビルフルコンA(vilfilcon A)、他の種類のポリマー、モノマー、またはそれらの組合せなどで作ることができる。これらの材料は、液体レンズ材料を形成するために、モノマー、ポリマー、および他の材料の様々な組合せを含んでもよい。
【0078】
眼用レンズ400は、ユーザーの眼の形状及びサイズ、眼用レンズ400によって達成されるべき様々な光学特性又は表面操作力、摩擦制御構造の設計、及び所望の他の要因の組合せを含む様々な要因に基づいた形状及び大きさとすることができる。眼用レンズ400の総厚は、約0.1mm~約0.14mmとすることができる。眼用レンズ400の厚さは、眼用レンズ400上の場所ごとに異なるようにすることができる。例えば、眼用レンズ400は、光学ゾーンよりも眼用レンズ400の外縁付近で厚くすることができ、またその逆にすることもできる。更に、摩擦制御構造の一部又は全部が、レンズ400の他の部分又は摩擦制御構造の他の部分よりも厚いようにしてもよい。
【0079】
液体レンズ材料48が雌型部材44に塗布されて、雄型部材40が係合されると、液体レンズ材料48は次に、硬化するまで硬化手段(温度、光線照射、1以上の化学化合物、又は別のタイプの硬化手段、又はそれらの組合せなど)に曝されてもよい。その結果、液体レンズ材料48は、雌型部材44の前側形成面46の形状に対応する前側表面と、雄型部材40の後側形成面42の形状に対応する後側表面とを有する眼用レンズ400を形成する。眼用レンズ400を硬化させたら、それを取り外すことができる。
【0080】
図5A図5Eは、本明細書に記載された摩擦制御構造を含む眼用レンズの製造方法のステップを示す模式図である。眼用レンズは、レンズ100、200、300、400などの本明細書に記載されたレンズの特徴と実質的に類似したものとすることができ、またその一部又は全部を含むことができる。図5A図5Eは、本明細書に記載されているような眼用レンズ500を製造するために使用することができる様々な構成要素を示している。液体レンズ材料51は、レンズ500の摩擦制御構造520に対応する1つ又は複数の逆構造52を含む型50のプロファイル54に塗布することができる。液体レンズ材料51を有する型50は、型50を回転するように構成されている回転構造58に装填されて、液体レンズ材料51が遠心力でプロファイル54にわたって眼用レンズ500の前面の所望の形状に広がり、摩擦制御構造520に対応するプロファイル上の特徴構造52の中に拡がるようにされる。型50が回転している間、硬化手段(例えば、温度、光線照射、又は別のタイプの硬化手段、又はそれらの組合せ)に液体レンズ材料51が曝されるようにできる。いくつかの例では、硬化手段は使用されない。硬化手段の結果として、又は単に時間の経過によって、液体レンズ材料51は、眼用レンズ500の所望のプロファイルを有するゲル状態になり得る。
【0081】
図5Aは、本開示の原理によるコンタクトレンズ用の型の一実施形態の断面図である。この例では、型50は、後の製造段階で回転構造の内面とかみ合うように間隔をあけて形成された複数のカットアウト60、62、64を有するベース56を備えている。型50のプロファイル54は、摩擦制御構造を含む眼用レンズ500の前面を形成するように形状付けられている。いくつかの例では、型50のプロファイル54は、形成される摩擦制御構造の形状又はプロファイルに対応する「逆の」形状を有する特徴構造を含んでもよい。
【0082】
図5Bは、本開示の原理による液体レンズ材料51を有する型50の一実施形態の断面図である。この例では、液体レンズ材料51は、型のプロファイル54の中に置かれている。
【0083】
液体レンズ材料51は、コンタクトレンズに使用するのに適した任意の材料から作ることができる。例えば、液体レンズ材料51は、任意のシリコーン材料及び/又はヒドロゲル材料から作ることができる。そのような材料は、ポリマー、例えば、テフィルコン(tefilcon)、テトラフィルコンA(tetrafilcon A)、クロフィルコン(crofilcon)、ヘルフィルコンA及びB(helfilcon A&B)、マフィルコン(mafilcon)、ポリマコン(polymacon)、ヒオキシフィルコンB(hioxifilcon B)、ロトラフィルコンA(lotrafilcon A)、ロトラフィルコンB(lotrafilcon B)、ギャルフィルコンA(galyfilcon A)、セノフィルコンA(senofilcon A)、シフィルコンA(sifilcon A)、コムフィルコンA(comfilcon A)、エンフィルコンA(enfilcon A)、リドフィルコンB(lidofilcon B)、サーフィルコンA(surfilcon A)、リドフィルコンA(lidofilcon A)、アルファフィルコンA(alfafilcon A)、オマフィルコンA(omafilcon A)、ヴァスールフィルコンA(vasurfilcon A)、ハイオキシフィルコンA(hioxifilcon A)、ハイオキシフィルコンD(hioxifilcon D)、ネルフィルコンA(nelfilcon A)、ヒラフィルコンA(hilafilcon A)、アコフィルコンA(acofilcon A)、ブフィルコンA(bufilcon A)、デルタフィルコンA(deltafilcon A)、ペムフィルコンA(phemfilcon A)、ブフィルコンA(bufilcon A)、パーフィルコン(perfilcon)、エタフィルコンA(etafilcon A)、フォコフィルコンA(ocofilcon A)、オキュフィルコンB(ocufilcon B)、オキュフィルコンC(ocufilcon C)、オキュフィルコンD(ocufilcon D)、オキュフィルコンE(ocufilcon E)、オキュフィルコンF(ocufilcon F)、ペムフィルコンA(phemfilcon A)、メタフィルコンA(methafilcon A)、メタフィルコンB(methafilcon B)、ビルフルコンA(vilfilcon A)、他の種類のポリマー、モノマー、またはそれらの組合せから形成することができる。これらの材料は、液体レンズ材料を形成するために、モノマー、ポリマー、及び他の材料の様々な組合せを含んでもよい。
【0084】
いくつかの例では、液体レンズ材料51は、シリコーンを含まないヒドロゲルポリマーで作られている。これは、コンタクトレンズの濡れ性を向上させるために望ましい場合がある。いくつかの例では、液体レンズ材料51はシリコーンヒドロゲル材料で作られている。
【0085】
図5B及び図5Cは、液体レンズ材料51が型50のプロファイル54にわたって遠心力で拡がっている状態の型50の断面図である。この例では、型50は、回転構造(58、図5E)内で中心軸66を中心に回転される。回転構造58は、ゲル状態で液体レンズ材料51の所望の後面を形成するような速度及び態様で回転される。
【0086】
回転構造58は、液体レンズ材料51を含む型50を収容できる中央装填領域を含む。中央装填領域は、ガラス管、金属管、又は型50を積層方向に保持できる他のタイプの構造によって形成することができる。アクチン化学線が硬化手段として使用されるいくつかの例では、回転構造58は、中央装填領域にアクチン化学線が入るのに十分な開口部を含む不透明材料、半透明材料、又は透明材料を有していてもよい。図5Eの例では、回転構造58は、型50を積層方向に保持する複数のガイドポスト74を含む。回転構造58はまた、モーターなどの回転動力伝達部に取り付けるために使用できる領域76を含む。
【0087】
回転構造58は、1つ又は複数の摩擦制御構造を含むゲル状態の液体レンズ材料51の所望の後面を形成するために、正確に回転するようにプログラムされるようにできる。回転構造58を回転させるプログラムは、各ユーザーの個々の処方に基づいて、所望のプロファイルを作成するように変更することができる。回転構造58が型50を回転させている間に、硬化手段を液体レンズ材料51に適用してもよい。その結果、回転構造が回転している間にゲル状態の液体レンズ材料51が形成される。いくつかの例では、ゲル状態の液体レンズ材料51は、回転構造内で完全に硬化される。いくつかの他の例では、ゲル状態の液体レンズ材料51は、複数の硬化段階の過程にわたって完全に硬化されてもよい。例えば、ゲル状態の液体レンズ材料51は、液体レンズ材料がその形状を保持するが完全には硬化されていない状態にまで回転構造58内で硬化されてもよい。
【0088】
図5Dは、液体レンズ材料51から形成された、摩擦制御構造520を含む硬化された眼用レンズ500を示している。いくつかの例では、レンズ500は、図1A及び図1Bに関連して本明細書で説明したレンズ100と実質的に同様であってもよい。この段階で、型50は、別の環境で硬化を完了させるために、眼用レンズ500とともに回転構造から取り外されてもよい。本明細書に記載される原理に適合する回転構造は、スティーブン・D・ニューマンに発行された米国特許第9,193,119号に記載されている。米国特許第9,193,119号は、開示されている全ての内容について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
コンタクトレンズ又は眼用レンズに関して本明細書で使用する場合、用語「上」又は「上部」は、概して使用者によって装着したときのコンタクトレンズの外側表面を方向的に指し、用語「下」又は「下部」は、概してレンズの内側表面又は眼に対向する面を方向的に指す。このような用語は、参考のために及び本開示の理解を助けるために使用され、本開示の範囲をいかなる形でも制限することを意図していない。例えば、本明細書で使用されるように、例示的なレンズの一実施形態は、可変静電容量センサがコンタクトレンズの外側上面に形成されることを説明している。しかしながら、可変静電容量センサは、レンズの上面、底面、又は内層に形成することができる。
【0090】
本明細書で使用されるように、用語「組合せ」は、列挙された項目のうちの1つ、なし、又は任意の数を指すことができる。例えば、項目A及びBの組合せは、項目A及びB、項目Aのみ、項目Bのみ、又は項目Aも項目Bもないものを含み得る。
【0091】
特に指示しない限り、本明細書(特許請求の範囲を除く)で使用される寸法、物理的特性などを表すようなすべての数値または表現は、すべての場合において“約”という用語によって修飾されたものとして理解される。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みではないが、明細書または特許請求の範囲に記載された各数値パラメータで“約”という用語によって修飾されているものは、少なくとも記載された有効桁数に照らして、通常の丸めを適用して解釈されるべきである。
【0092】
さらに、本明細書に開示されたすべての範囲は、任意の及びすべての部分範囲またはそこに包含される任意の及びすべての個々の値を記載する請求項を包含し、その支持を提供すると理解されるものとする。例えば、1~10の記載範囲は、最小値1と最大値10との間及び/又はそれを包含する任意の及び全ての部分範囲又は個々の値;すなわち、1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わる全ての部分範囲(例えば、5.5~10、2.34~3.56等)又は1-10の任意の値(例えば、3、5.8、9.9994等)等を含む、請求項を含む及びそれらの支持を与えるものと見なされるべきであると考えられる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
【国際調査報告】