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特表2023-500257マイクロ波信号から高レベルの電磁障害を分離するための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】マイクロ波信号から高レベルの電磁障害を分離するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
H01Q1/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525172
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020012914
(87)【国際公開番号】W WO2021086425
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】16/671,883
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511186952
【氏名又は名称】アドバンスト フュージョン システムズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーンバック,カーティス エー.
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046UA07
(57)【要約】
有害な電磁干渉(EMI)の破壊的影響からRFシステムを保護する方法は、周波数に応じて、有害な電磁干渉を含む入射電磁放射線を、選択可能なカットオフ周波数よりも低い低周波スペクトル成分と、選択可能なカットオフ周波数よりも高い高周波スペクトル成分とに分離することと、有害な電磁干渉に含まれるエネルギーの大部分を含むスペクトル成分の低周波数部分を、低インピーダンスの導体を介してグランドに送ることと、を含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害な電磁干渉(EMI)の破壊的影響からRFシステムを保護する方法であって、
周波数に応じて、有害な電磁干渉を含む入射電磁放射線を、選択可能なカットオフ周波数よりも低い低周波スペクトル成分と、前記選択可能なカットオフ周波数よりも高い高周波スペクトル成分とに分離することと、
前記有害な電磁干渉に含まれるエネルギーの大部分を含む前記スペクトル成分の低周波部分を、低インピーダンスの導体を介してグランドに送ることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記有害なEMIの前記高周波スペクトル成分を、イオン化可能ガスを含む筐体内に送ることをさらに含み、前記有害なEMIの高エネルギー成分が前記イオン化ガスのイオン化を誘発することによって、前記高周波スペクトル成分の残留エネルギーを破壊レベル未満に低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離することが、前記カットオフ周波数よりも高い前記高周波スペクトル成分が通過する導波路を使用して実行され、前記導波路が前記イオン化可能ガスで充填され、前記選択可能なカットオフ周波数が、前記導波路の横方向の寸法によって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記低周波スペクトル成分が、幅および厚さを有するストラップ状の低インピーダンスの導体を介してグランドに送られ、前記幅が前記厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記分離することが、前記カットオフ周波数よりも高い前記有害なEMIの前記高周波スペクトル成分に適合されたローパスフィルタと、前記カットオフ周波数よりも低い前記有害なEMIの前記低周波スペクトル成分を遮断するように適合されたハイパスフィルタと、を使用して実行され、前記ローパスフィルタが外部グランドに結合された出力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ローパスフィルタの出力が、幅および厚さを有するストラップ状の低インピーダンスの導体を介して外部グランドに結合され、前記幅が前記厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有害な電磁干渉(EMI)の破壊的影響からRFシステムを保護するための装置であって、
入力ポートおよび出力ポートを有する導波路であって、前記入力ポートおよび前記出力ポートの各々がRF透明窓を有し、前記導波路が固有のカットオフ周波数を有し、かつ、イオン化可能ガスで充填されている、導波路と、
前記導波路に結合された第1の端部と、外部グランドに結合された第2の端部と、を有する低インピーダンスの導体と、を備え、
前記導波路が、前記カットオフ周波数よりも低い、有害な入射EMIのスペクトル成分を遮断するように構築され、前記カットオフ周波数よりも低い前記スペクトル成分が、前記低インピーダンスの導体を介してグランドに送られ、
高いエネルギーを有する、前記カットオフ周波数よりも高いスペクトル成分が、前記導波路内の前記イオン化可能ガスのイオン化を誘発する、装置。
【請求項8】
前記低インピーダンスの導体が、長手方向の幅および厚さを有する銅ストラップを含み、前記長手方向の幅が、前記厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記導波路に結合されたプラズマプローブと、
前記導波路内のイオン化のレベルを測定するように構成された、前記プラズマプローブに結合された検出器と、をさらに備える、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記導波路の前記カットオフ周波数が約500MHzである、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記イオン化可能ガスが水素もしくはアルゴン、またはそれらの混合物である、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記イオン化可能ガスが水素またはアルゴン以外の気体である、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記有害なEMIが、i)核爆発によって生成される電磁パルス(NEMP)、ii)雷、および、iii)コロナ質量放出のうちの1つである、請求項7に記載の装置。
【請求項14】
密封可能な気体入口ポートをさらに備え、そこを通してイオン化可能ガスが前記導波路に供給される、請求項7に記載の装置。
【請求項15】
前記導波路内に配置された放射性同位元素源をさらに含み、前記放射性同位元素源が、前記導波路内の前記イオン化可能ガスを予備イオン化するのに十分な束強度を有することによって、指定された閾値を超える入力信号に対するイオン化応答時間を短縮する、請求項7に記載の装置。
【請求項16】
有害な電磁干渉(EMI)の破壊的影響からRFシステムを保護するためのクロスオーバー装置であって、
有害な入射EMIの受信にさらされる第1のRF信号導体に結合された入力ポートと、
前記入力ポートに結合され、かつ、前記入力ポートで受信された前記有害な入射EMIの総エネルギーの大部分を含む前記カットオフ周波数よりも低い入力信号のスペクトル成分を遮断し、前記カットオフ周波数よりも高い入力信号のスペクトル成分を通過させるように構成された、設定されたカットオフ周波数を有するハイパスフィルタと、
前記入力ポートおよびグランドに結合されたローパスフィルタであって、前記ローパスフィルタが、前記カットオフ周波数よりも低いスペクトル成分を通過させ、前記有害な入射EMIの前記大部分を含む前記スペクトル成分をグランドに送るように構成されている、ローパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタおよび第2のRF信号導体に結合された出力ポートであって、前記出力が、前記ハイパスフィルタから受信した前記カットオフ周波数よりも高い、通信されたRF信号のスペクトル成分を第2のRF信号導体に通過させる、出力ポートと、を備える、クロスオーバー装置。
【請求項17】

前記入力ポートが同軸ケーブルから導波路への変換経路を含む、請求項16に記載のクロスオーバー装置。
【請求項18】
前記ローパスフィルタが、低インピーダンスを有する導電性ストラップを介してグランドに結合されている、請求項16に記載のクロスオーバー装置。
【請求項19】
前記ストラップが幅および厚さを有し、前記幅が前記厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する、請求項18に記載のクロスオーバー装置。
【請求項20】
前記ローパスフィルタがバターワースフィルタを含む、請求項16に記載のクロスオーバー装置。
【請求項21】
連続する等電位グランド平面を有する回路基板をさらに備え、前記ローパスフィルタおよび前記ハイパスフィルタが前記回路基板に結合されている、請求項16に記載のクロスオーバー装置。
【請求項22】
前記有害なEMIが、i)核爆発によって生成される電磁パルス(NEMP)、雷、およびコロナ質量放出のうちの1つである、請求項16に記載のクロスオーバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁干渉(EMI)の、特に、核爆発、コロナ質量放出、雷、または他のソースによって生み出された電磁パルス(EMP)を含む(ただし、これに限定されない)有害なEMIの低周波成分をRF伝送システムから分離するための方法および装置に関する。
【0002】
定義
電磁干渉(EMI):伝送される信号または電気システムに結合された機器に干渉し得るため、電気システムにおいて受信が望まれない電磁放射線。本明細書では、EMIは以下で定義されている多数のサブタイプを包含する上位概念として定義される。
【0003】
無線周波数(RF):数キロヘルツから数テラヘルツまでの範囲のスペクトルの無線部分における電磁放射線および信号。
【0004】
有害なEMI:電気システムで受信すると、発電装置、電子回路基板、変圧器などの(ただし、それらに限定されない)そのようなシステムに結合された電気機器を損傷または動作不能にする可能性が高い電磁干渉。この干渉は、パルスまたは連続する放出であってよい。
【0005】
意図的な電磁干渉(IEMI):対象の電気システムに悪影響を与えるために意図的に(人工的に)作成された電磁干渉。この干渉は、パルスまたは連続放出であってよい。
【0006】
電磁攻撃:有害なEMI信号が、当該システムの損傷、分断、または混乱を引き起こすことを目的として一部の電気または電子機器またはシステムに与えられるシナリオ。
【0007】
電磁的脅威:有害で、かつ意図的な電磁信号が、電気または電子機器またはシステムに対して、当該システムの損傷、分断、または混乱を引き起こすことを目的として使用され得る状況。
【0008】
核電磁干渉(NEMI):核装置の爆発によって作成され、初期立ち上がり時間が3ナノ秒未満の電気干渉。NEMIは、立ち上がり時間の速い電磁パルス(以下に定義する)と、立ち上がり時間が遅く、持続時間が長い放射線とを含む。
【0009】
電磁パルス(EMP):通常5ナノ秒未満の高速な立ち上がり時間を有し、有害であり、かつ損傷を与える可能性のある電流および電圧サージを生み出し得る(したがって、有害なEMIのサブセットと見なすことができる)電磁放射線の一時的なバースト。典型的なEMP強度は、およそ数万V/mである。EMPは、核爆発(NEMP、立ち上がり時間は通常5ナノ秒未満)、または雷およびコロナ質量放出などの突然変動する電磁場を発生する非核源(NNEMP、立ち上がり時間は通常5ナノ秒未満)によって生み出され得る。
【0010】
異常な電磁パルス:本明細書で説明する様々な電磁的な脅威をすべて網羅するEMPのクラス。異常なEMPは、核爆発から生じる過渡パルス(NEMP)、電力システムの構成部品に到達して動作不能にするのに十分な強度の非核電磁パルス(NNEMP)、または、太陽嵐によるコロナ質量放出の結果としての地磁気誘導電流(GIC)を含む。
【0011】
ソース領域電磁パルス(SREMP):核電磁パルス(NEMP)のサブセット。SREMPは、低い高度(大気圏内)での核バーストによって生み出される。有効な正味の垂直電子電流は、大気および地面に電子が非対称に堆積することによって形成され、この電流の形成および崩壊により、電流に垂直な方向に電磁放射線のパルスが放出される。低い高度での爆発による非対称性は、下方に放出された一部の電子が地表の上部数ミリメートルに捕捉される一方で、上方および外側に移動した他の電子が大気中を長距離移動し、電離と電荷分離を生み出すために発生する。大気の密度勾配のために、より高い高度の爆発に対してより弱い非対称性が存在する可能性がある。
【0012】
高空電磁パルス(HEMP):NEMPのサブセットでもある。HEMPは、核兵器が地球の表面(大気圏外)の上方で爆発し、ガンマ線を作り出し、ガンマ線は大気と相互作用して強力な電磁エネルギー場を作り出し、この強力な電磁エネルギー場は、外部に放射するときは人間には無害であるが、落雷と似ているが、落雷よりもはるかに迅速に損害を与える作用で回路に過負荷をかける可能性がある。
【0013】
システム生成EMP(SGEMP):SGEMPは、機器の筐体内でエネルギーが反射する結果として発生する特別なクラスのEMP信号である。これは通常、ミサイルに関連し、ミサイル内で検出されるが、他の場所で発生する可能性がある。これは、EMP放出の二次的な形態であるという点で独特である。
【0014】
NEMP、HEMP、SREMP、SGEMP、およびその他のすべては、核装置の爆発(核分裂、核融合、熱核融合)に由来する電磁パルスであることに留意されたい。これらはすべて、通常5ナノ秒未満の非常に速い立ち上がり時間に代表され、サブナノ秒の範囲の立ち上がり時間を有し得る。これらすべてのEMPタイプ、および非核EMPクラス(NNEMP)は、通常は数キロヘルツから数ギガヘルツの範囲の非常に広いRF帯域幅に代表されるパルスを生み出す。さらに、スペクトルのこの部分に渡る任意の個々の周波数での信号レベルは均一ではないが、エネルギーの大部分は約200メガヘルツよりも低いところに位置していることに留意されたい。これらの境界は一定ではなく、当該パルスの作成の瞬間に存在するいくつかのパラメータによって決定される。
【背景技術】
【0015】
特定の事象が電気インフラストラクチャを大規模に破壊する可能性がある電磁放射線を生み出し得ることは周知である。この広範なカテゴリの電磁放射線に対して本明細書で使用される用語は、「有害な電磁干渉(EMI)」である。核兵器の拡散および同様に破壊的な技術に関する懸念に照らして、核爆発(NEMI)によって放出される有害なEMIの強力なバーストの影響を研究するための調査が行われてきた。調査によると、核爆発は非常に速い立ち上がり時間(およそ5ナノ秒未満)で電磁パルス(EMP)のバーストを生成し、信号のより遅く、かつ、より長く持続する部分が続く[1}{2]。典型的なEMP強度は、およそ数万V/mである。これは、近接するレーダーの場合のおよそ200V/m、通信機器の場合の10V/m、一般的な大都市圏の周囲の場合の0.01V/mと比較される。また、連邦通信委員会(FCC)のガイドラインが、この種の放出量に対して0.5V/mの制限を義務付けていることにも留意されたい。電気機器に脅威をもたらすEMPの特性のいくつかは、非常に速い立ち上がり時間、非常に短いパルス幅、および広い周波数スペクトルの信号を引き起こすフィールド振幅である。導電性構造へのEM結合には、線形導体の基本的なメカニズムである電気誘導、導電性構造が閉ループを形成するときの主要なメカニズムである磁気誘導、および地球を介した信号伝送、の3つの基本的なメカニズムが存在する。電気的過渡現象による機能的損傷の影響を受けやすい装置は、能動電子装置、受動電子構成部品、半導体装置、点火および発火装置、メーター、電源システム、ケーブル、スイッチング、および配電素子を含む。デジタル処理システム、メモリユニット、誘導システム、および配電システムにおいては、運用上の混乱および損傷が予想され得る。損傷メカニズムは、絶縁破壊、熱の影響、ならびに相互接続、スイッチング、変圧器、および発電機の故障を含む。
【0016】
何れのタイプの核EMPのスペクトルおよびエネルギー分布も、爆発が発生する大気中の高さに依存する。爆発は地表から40km以内で発生し、それは大気圏内爆発と呼ばれ、ソース領域電磁パルス(SREMP)を生み出し、その一方で、地表から40km以上で発生する爆発は、大気圏外爆発と呼ばれ、高空電磁パルス(HEMP)を生み出す。SREMPは、ガンマ線からの光子と大気の分子との衝突によって生成される。これらの非常にエネルギーの高い光子は、周囲の空気分子から電子を放出させ、それにより、イオン化された空気分子を生み出す。この巨大な電荷の分離が、数十万V/mに達する可能性のある強力な電界を作成し、5000Aターン/mに達する可能性のある大きな関連するH電界を有する。図1Aは、例示的な100キロトンの大気圏内爆発によって生成された例示的なEMP波形の経時的なグラフである。図1Aでは、SREMPの波形(E1)の開始は非常に強力なパルスであり、最大値は約1ナノ秒で250KV/mに達し得、10ナノ秒以内に約10KV/mまで低下する。上述したシナリオでは、電場は、波形の2番目の部分(E2)で10KV/mでほぼ一定のままであり、E2は爆発後10ナノ秒のマークから約100μsまで持続する。爆発後約100μsで始まる波形の3番目の部分(E3)では、電界は10KV/mから1ミリ秒のマークで約ゼロまで低下する。図1Bは、周波数に対するSREMP波形の相対エネルギーのグラフである。上述のように、SREMP波形の周波数成分は1MHz未満の周波数範囲にあり、スペクトル成分の大部分は10kHz未満にある。正確な電界強度、パルス立ち上がり時間、および持続時間は、装置の形状、装置の歩留まり、爆発の高さ、および爆発時の大気条件を含む複数の要因の組み合わせに依存することに留意されたい。
【0017】
対照的に、HEMPは、20~40キロメートルの高度で大気分子によって吸収されるガンマ光子によって生成される。この吸収により、電子は地球の磁場によって磁力線の周りのらせん状の経路に偏向され、それにより電磁エネルギーを放射する。図2Aは、例示的な大気圏外爆発によって生成されたEMI波形の経時的なグラフである。[1}上述のように、HEMPの波形はSREMPの対応するものとは大幅に異なる。5キロトン~1メガトンの範囲の装置に対して、この電子放射エネルギーは、数十キロV/mの大規模かつ多様な電界と、10~300Aターン/mの範囲の関連するH電界とを作成する。HEMP波形の一部は、SREMPよりも長い持続時間、場合によっては数秒間持続する可能性がある。上記のように、波形の特定の部分の持続時間は、装置の形状、装置の歩留まり、爆発の高さ、および爆発時の大気条件を含む多くの要因に依存する。図2Bは、HEMP波形の相対エネルギー対周波数の概略グラフである。示されるように、エネルギーの約90パーセントは100KHz~10MHzの範囲に含まれている。
【0018】
電磁攻撃のシナリオの大部分は、当該攻撃で使用される2つ以上のパルスを伴うことに留意されたい。この結果、保護スキームを実行可能とするためには、そのような保護スキームが実行可能な保護手段と見なされるために、可能であれば近接して続く、複数の連続した電磁攻撃に耐えることができなければならない。一部の保護スキームはシングルショットまたは潜在的にシングルショットであるため、現在広範に使用されているにも関わらず保護サービスには実際には適していない。
【0019】
{1]上記のように、核の寄与(SREMPおよびHEMP)によって生成される有害なEMIに加えて、電気および電子機器は、非核電磁パルス、意図的な電磁バースト、コロナ質量放出(太陽嵐)、雷雨などの他の事象によって損傷を受ける可能性がある。電気システムを有害なEMIから保護するための特定の対策が考案されている。例えば、EMPおよび雷などの有害なEMIを抑制するための従来のシステムおよび装置は、電子管保護装置、金属酸化物バリスタ固体装置、スパークギャップ、およびインダクタを含むが、これらに限定はされない。
【0020】
電子管保護装置:本出願の発明者は、前述の電磁的脅威の何れかによる損傷から電気および電子機器を保護するための好ましい手段として、高速高出力冷陰極電界放出電子管を利用する保護手段を以前に開発した。そのような保護冷陰極電界放出電子管は、Birnbachによる米国特許第8,300,378号「Method and apparatus for protecting power systems from extraordinary electromagnetic pulses」に記載されており、これは、参照によりその全体が任意の目的で本明細書に援用される。このクラスの電子管装置のテストは、500キロヘルツを超えるパルス繰り返し率の繰り返しパルス用途での保護サービスに適していることを示す。ただし、電子管装置は大きくなる傾向があり、既存のマイクロ波インフラストラクチャへの利便性の高い結合に必ずしも適していない。
【0021】
金属酸化物バリスタ(MOV):MOVは固体装置であり、静止状態では、通常10~100MΩの非常に高いインピーダンスを示す。ある所定の閾値を超える電圧がMOVの両端に印加されると、MOVはその内部インピーダンスを非常に低いインピーダンス状態に変化させる。これにより、MOVを使用してクリティカルな回路構成部品の周囲の過電圧を分流させことができる。このインピーダンスの変化が発生する速度は、当該MOVの特定の設計と材料含有量との関数となる。MOV装置の重要な制限は、それらが半導体であるため、基板の結晶構造に障害が発生するとMOVを修理または自己修復できないことである。前述のタイプの障害は、MOVの主な障害モードである。その結果、MOVは、2つ以上の過電圧事象に対する保護を確実に提供することができない。この制限にも関わらず、MOVは公益事業者が使用する現行の主要なサージ抑制手段である。
【0022】
さらに、ほとんどのMOVには、核爆発(NEMP)からのEMP、特にSREMPのE1部分およびHEMPの速い立ち上がり時間部分の抑制い有用な十分に速い立ち上がり時間(通常は約20ナノ秒)を有していないため、MOVの指定には注意が必要である。速い立ち上がり時間(約2~5ナノ秒の立ち上がり時間)に適合した速い反応時間を有するMOVでさえ、通常はサブナノ秒の立ち上がり時間を有するすべてのE1パルスに対して効果的であるにはまだ遅すぎる。この速度差により、保護動作が発生する前に壊滅的な大量のエネルギーが通過することが可能になるため、保護される装置が故障し、保護装置(MOV)も頻繁に故障することになる。したがって、MOVは一般的にNEMPに対して効果的ではない。
【0023】
市場には、接続ワイヤの直径が0.125インチ(1/8インチ)未満であるが、5,000アンペアを超えるパルスから保護する使用に適していると主張されるいくつかのMOVが存在する。パルスが十分に短く、持続時間が1ナノ秒未満の場合、接続ワイヤは蒸発しないことがあるが、現実の世界の電磁攻撃シナリオでは、ワイヤが蒸発して装置が使用できなくなるであろう。そのような装置の使用は、現実の世界の電磁的脅威に対する保護を提供するには不十分であることは、当業者には明らかなはずである。
【0024】
スパークギャップ:スパークギャップは、有害なEMIからの保護に使用されることがある高速スイッチの一種である。スパークギャップは、高感度の構成部品の周りの過電圧を分流させるために配線されている。スパークギャップの問題は、ある所定の電圧で確実に作動することである。さらなる問題は、一度発火すると、スパークギャップの接触面が劣化し、その後の発火事象は通常、スパークギャップが新しいときと同じ電圧ではないということである。スパークギャップは非常に高度なメンテナンスを必要とし、それらの使用は一般に実験室のパルス電力実験に制限されている。配電および送電業界でのみ使用される別の形式のスパークギャップは、「ホーン」と呼ばれることが多い一連の湾曲したロッドである。立ち上がり時間が速いEMPから保護するには遅すぎるが、ホーンは雷保護の簡単なアプローチであることが示され、広範に使用されている。それらの主な欠点は、損傷しやすく、頻繁に交換する必要があることである。
【0025】
インダクタ:回路と直列に配線されたときに、高速過渡信号を抑制することができる。直列接続されたインダクタを保護装置として使用する場合の問題は、電気絶縁の要求と、過熱せずに一定量の電流を処理する能力に関係するインダクタの導体径の許容範囲とが非常に厳しく、一般に直列インダクタだけでは有害なEMI信号を十分に抑制することができないことである。複数の繰り返しパルスに耐えるインダクタの能力は、その設計、特に絶縁と熱定格との関数である。インダクタはエネルギーを消費し、通常、余剰エネルギーがすぐに利用できる変電所でのみで使用される。
【0026】
したがって、前述の欠陥を確実かつ効率的に克服し、電子機器、特に1.5GHz以上の周波数で動作するマイクロ波機器(電気構成部品)を有害なEMIから保護できる方法と装置の必要性が残存する。
【発明の概要】
【0027】
本開示は、有害な電磁干渉(EMI)の破壊的影響からRFシステムを保護する方法をさらに提供し、その方法は、周波数に応じて、有害な電磁干渉を含む入射電磁放射線を、選択可能なカットオフ周波数よりも低い低周波スペクトル成分と、選択可能なカットオフ周波数よりも高い高周波スペクトル成分とに分離することと、有害な電磁干渉に含まれるエネルギーの大部分を含むスペクトル成分の低周波数部分を、低インピーダンスの導体を介してグランドに送ることと、を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、方法が、有害なEMIの高周波スペクトル成分を、イオン化可能ガスを含む筐体内に送ることをさらに含み、ここで、有害なEMIの高エネルギー成分がイオン化ガスのイオン化を誘発することによって、高周波スペクトル成分の残留エネルギーを破壊レベル未満に低減する。
【0029】
いくつかの実施形態では、分離することが、カットオフ周波数よりも高い高周波スペクトル成分が通過する導波路を使用して実行され、導波路はイオン化可能ガスで充填される。選択可能なカットオフ周波数は、導波路の横方向の寸法によって決定される。
【0030】
いくつかの実施形態では、低周波スペクトル成分が、幅および厚さを有するストラップ状の低インピーダンスの導体を介してグランドに送られ、幅が厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する。
【0031】
代替の実施形態では、分離することが、カットオフ周波数よりも高い有害なEMIの高周波スペクトル成分を通過させるローパスフィルタと、カットオフ周波数よりも低い有害なEMIの低周波スペクトル成分を通過させるハイパスフィルタと、を使用して実行され、ローパスフィルタが外部グランドに結合された出力を有する。
【0032】
特定の実装では、ローパスフィルタの出力が、幅および厚さを有するストラップ状の低インピーダンスの導体を介して外部グランドに結合され、幅が厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する。
【0033】
本開示はさらに、好ましい実施形態において、有害な電磁干渉(EMI)の破壊的影響からRFシステムを保護するための装置を提供する。その装置は、入力ポートおよび出力ポートを有する導波路を備え、入力ポートおよび出力ポートの各々がRF透明窓を有する。導波路は、イオン化可能ガスで充填され、その寸法によって決定される固有のカットオフ周波数を有する。また、装置は、導波路に結合された第1の端部と、外部グランドに結合された第2の端部と、を有する低インピーダンスの導体を連結させるための手段を備える。導波路は、カットオフ周波数よりも低い、有害な入射EMIのスペクトル成分を遮断するように構築され、カットオフ周波数よりも低い当該スペクトル成分は、低インピーダンスの導体を介してグランドに送られる。高いエネルギーを有する、カットオフ周波数よりも高いスペクトル成分が、導波路内に存在するイオン化可能ガスのイオン化を誘発する。
【0034】
いくつかの実施形態では、低インピーダンスの接地導体が、好ましくは長手方向の幅および厚さを有する銅ストラップを含み、長手方向の幅が、厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する。接地導体は、低インピーダンスのグランドに接続され、有害なEMIパルスからの不要なエネルギーをグランドに放散する。
【0035】
いくつかの実施形態では、装置は、導波路に結合されたプラズマプローブと、導波路内のイオン化のレベルを測定するように構成された、プラズマプローブに結合された検出器と、をさらに備える。
【0036】
特定の実装では、導波路のカットオフ周波数は約500MHzであるが、遮断すべき有害なEMI信号のスペクトル分布の調査に基づいて、当業者には明らかなように、カットオフ周波数を別の周波数に設定してよく、ここで、信号のそのような知識が利用可能である。
【0037】
特定の実装では、イオン化可能ガスは水素またはアルゴンであるが、多くの異なる気体および気体の混合物を正常に使用することができ、それぞれが当業者に明らかであるような性能特性を呈する。
【0038】
場合によっては、有害なEMIは、i)核爆発によって生成される電磁パルス(NEMP)、ii)雷、およびiii)またはコロナ質量放出である。
【0039】
いくつかの実施形態では、装置は、導波路ハウジングの本体に結合された密封可能な気体入口ポートをさらに含み、それを通してイオン化可能ガスが導波路に供給される。内部イオン化ガス圧力を測定するための手段が提供される。
【0040】
代替の実施形態では、本開示は、有害な電磁干渉(EMI)の破壊的影響からRFシステムを保護するためのクロスオーバー装置を提供する。そのクロスオーバー装置は、有害な入射EMIの受信にさらされる第1のRF信号導体に結合された入力ポートと、入力ポートに結合され、かつ、入力ポートで受信された有害な入射EMIの総エネルギーの大部分を含むカットオフ周波数よりも低い入力信号のスペクトル成分を遮断し、カットオフ周波数よりも高い入力信号のスペクトル成分を通過させるように構成された、設定されたカットオフ周波数を有するハイパスフィルタと、入力ポートに結合されたローパスフィルタであって、ローパスフィルタが、カットオフ周波数よりも低いスペクトル成分を通過させ、有害な入射EMIの大部分を含む当該スペクトル成分をグランドに送るように構成された、ローパスフィルタと、ハイパスフィルタおよび第2のRF信号導体に結合された出力ポートであって、出力が、ハイパスフィルタから受信したカットオフ周波数よりも高い、通信されたRF信号のスペクトル成分を第2のRF信号導体に通過させる、出力ポートと、を備える。
【0041】
特定の実装では、入力ポートが、同軸ケーブルから導波路への変換経路を含む。
【0042】
すべての実施形態では、ローパスフィルタ出力が、低インピーダンスを有する導電性ストラップを介してグランドに結合されている。いくつかの実装では、ストラップの幅が、その厚さよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する。
【0043】
特定の実装では、ローパスフィルタがバターワースフィルタを含むが、他のフィルタトポロジが機能し、かつ、望ましい場合がある。
【0044】
クロスオーバー装置は、好ましくは、連続する等電位グランド平面を有する回路基板をさらに備え、ローパスフィルタおよびハイパスフィルタが回路基板に結合されている。回路全体がシールドされた筐体に取り付けられている。
【0045】
本開示はさらに、有害な電磁干渉(EMI)の破壊的影響からRFシステムを保護する方法をさらに提供し、その方法は、周波数に応じて、有害な電磁干渉を含む入射電磁放射線を、選択可能なカットオフ周波数よりも低い低周波スペクトル成分と、選択可能なカットオフ周波数よりも高い高周波スペクトル成分とに分離することと、有害な電磁干渉に含まれるエネルギーの大部分を含むスペクトル成分の低周波数部分を、低インピーダンスの導体を介してグランドに送ることと、を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、方法が、有害なEMIの高周波スペクトル成分を、イオン化可能ガスを含む筐体内に送ることをさらに含み、ここで、有害なEMIの高エネルギー成分がイオン化ガスのイオン化を誘発することによって、エネルギーのほとんどを導波路の壁を介してグランドに分流し、それにより、高周波スペクトル成分の残留エネルギーを破壊レベル未満に低減する。
【0047】
いくつかの実施形態では、分離することが、カットオフ周波数よりも高い高周波スペクトル成分が通過する導波路を使用して実行される。導波路がイオン化可能ガスで充填され、選択可能なカットオフ周波数が導波路の横方向の寸法によって決定される。
【0048】
いくつかの実施形態では、低周波スペクトル成分が、幅および厚さを有するストラップ状の低インピーダンスの導体を介してグランドに送られ、幅が厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する。
【0049】
代替の実施形態では、分離することが、カットオフ周波数よりも高い有害なEMIの高周波スペクトル成分を遮断するように適合されたローパスフィルタと、カットオフ周波数よりも低い有害なEMIの低周波スペクトル成分を遮断するように適合されたハイパスフィルタと、を使用して実行され、ローパスフィルタが外部グランドに結合された出力を有する。
【0050】
特定の実装では、ローパスフィルタの出力が、幅および厚さを有するストラップ状の低インピーダンスの導体を介して外部グランドに結合され、幅が厚さの大きさよりも少なくとも2倍大きい大きさを有する。
【0051】
これらおよび他の態様、特徴、および利点は、本発明のある特定の実施形態の以下の説明、ならびに添付の図面および特許請求の範囲から理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A】例示的な大気圏内爆発(SREMP)によって生成されたEMI波形の経時的なグラフである(サンディア国立研究所、以下「サンディア」から)。
図1B】SREMP波形の相対エネルギー対周波数のグラフである(サンディアから)。
図2A】例示的な大気圏外(HEMP)爆発によって生成されたEMI波形の経時的なグラフである(サンディアから)。
図2B】HEMP波形の相対エネルギー対周波数のグラフ(サンディアから)。
図3A】本開示による有害なEMIの影響からRFシステムを保護するための装置の第1の実施形態を示す。
図3B】同軸ケーブルから導波路への入出力変換経路装置を組み込んだ、本開示による有害なEMIの影響からRFシステムを保護するための導波路装置の別の実施形態を示す。
図3C】放射性同位元素源を有する、本開示による導波路装置の実施形態の斜視図を示す。
図4】保護装置のいくつかの実施形態での使用に適した例示的なタイプN同軸コネクタから導波路への変換経路を示す。
図5】本開示によるクロスオーバー装置の第2の実施形態を示す。
図6A】本開示のクロスオーバー装置の第2の実施形態で実装され得るローパスフィルタの実施形態を示す。
図6B】同上。
図7A】本開示のクロスオーバー装置の第2の実施形態で実装され得るハイパスフィルタの実施形態を示す。
図7B】同上。
図8】本開示による導波路装置に使用され得る放射性同位元素源の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書に開示されるのは、導波路および/または同軸クロスオーバー装置を利用して、核爆発によって生み出される電磁パルス(その変化した形態のEMP)、雷、コロナ質量放出などの有害なEMIを抑制する方法および装置である。1.5GHz以上の周波数での使用を意図しているが、装置パラメータを適切に調整すれば、約500MHzなどの低周波数で動作するように本明細書に記載のシステムを構築して動作させることが可能であり、必要の発生により高い周波数で動作させることも可能である。第1の実施形態では、装置が導波路に固有のカットオフ周波数よりも低い周波数で高エネルギー電磁パルスエネルギーをグランドに分離するように特別に適合された導波路を含み、それによってインフラストラクチャ機器を潜在的な損傷から保護する。導波路内では、イオン化可能ガスが維持され、SREMP、HEMP、コロナ質量放出などの有害な入射EHIの電界レベルが特定の所定のレベルを超えると、その気体がイオン化され、上記の当該高エネルギーイオンが導波路の壁および低インピーダンスの経路を介してグランドへ送られる。このようにして、導波路の固有のハイパスフィルタの性質によって遮断されない、受信した有害なEMIの潜在的に破壊的なエネルギーの任意の部分が、安全にグランドに送られることによってインフラストラクチャに損傷を与えることが防止される。
【0054】
別の実施形態では、装置は、入力と、低周波数出力と、高周波出力とを有する装置を含む。入力と接地された低周波出力の間にはローパスフィルタが存在し、入力と高周波出力の間には高周波フィルタが存在する。ローパスフィルタおよびハイパスフィルタは、RFスペクトルの領域を示すクロスオーバー周波数(通常約500MHz)に調整されている。それ領域未満に不要なエネルギーの大部分が含まれている。例えば、クロスオーバー周波数の例として500MHzを使用すると、500MHzよりも低い入力信号のスペクトル成分は低周波数出力に振り向けられ、500MHzよりも高いスペクトル成分は高周波数出力に振り向けられる。装置は、(図5に示されているように)例示的な周波数で動作するための電子システムに通常関連付けられている設計規則に従って構築されている。クロスオーバー周波数は、特定の用途に必要であると判断された場合は、より高い値に設定できることに留意されたい。500MHzのカットオフ周波数は例示であり、他のカットオフ周波数(および対応する導波路寸法)は特定の用途に適したものとして使用され得ることが強調される。
【0055】
図3Aは、導波路を使用して実装される好ましい実施形態を示す装置100の第1の実施形態を示す。この実施形態は、高出力および高周波で動作する衛星、携帯電話、およびマイクロ波の用途に特に適している。装置は、示される実施形態では長方形の形状である導波路ハウジング110を含む。これは例示的なものであり、導波路ハウジング110は、クロスオーバー装置が利用されるシステムの必要性に応じて、例えば、円形または楕円形の断面を有する、あるいは、曲げおよび回転を有する他の方法でも実装され得る。導波路は、様々な形状で多くのメーカーから入手可能な周知の構造である。導波路ハウジング110は、正確に寸法が定められたパイプのような構造であり、それが設計された周波数帯域に対して正確な寸法に製造されている。導波路ハウジングは、本体112と、本体の第1の端部に配置された入力ポート114と、第1のRF透明圧力シール窓115と、第2のRF透明圧力シール窓(図3Aには示されていない)を備えた導波路本体の第2の端部に配置された出力ポート116と、を含む。
【0056】
(導波路の本体112によって囲まれた)内部導波路118は、入力ポート114から出力ポート116まで伸張している。入力ポートおよび出力ポートは、(図4に示す)標準の変換経路コネクタを使用して、他の導波路または同軸ケーブルに結合され得る。導波路は、パイプ内の条件によって制約される電磁界をサポートするためのマクスウェルの方程式で説明されているように、自然なカットオフ周波数を有することが知られている。導波路カットオフ方程式f=c/2a(cは光速、aはメートル単位の導波路の最大横方向内部寸法)は、所与の導波路が基本波TE10伝送モードでサポートする最低周波数を呈する。したがって、導波路118は、固有のハイパスフィルタとして機能し、カットオフ周波数よりも低い放射線が導波路を通って伝播することを防止する。このような不要なエネルギーは、外部導波路構造によってグランドに分流される。いくつかの実装では、導波路118は、約500MHzのカットオフ周波数を有するように構築され得る。これは、導波路本体112が約5cmの幅を有することが必要であろう。
【0057】
いくつかの実装では、本体112に結合されているのは、水素、アルゴン、または他の気体、あるいは気体の混合物などのイオン化可能ガスを制御可能な気体供給装置125から導波路に供給することが可能な気体供給ポート120である。供給された気体は、導波路118に入って充満する。導波路が充填されると、気体供給ポートは密閉され得る。導波路内のイオン化可能ガスは、気体の流動に対して完全に密閉されているため、供給される気体の初期圧力に維持され、内部電界強度が所定の値を超えたときにイオン化できるように気体の圧力が設定される。イオン化可能ガスを導波路に供給する目的は、受信した有害なEMIの過剰な電力を導波路および電気システムから除去できる手段を提供することである。圧力監視手段は、ガス圧力が正しいことを確認して、所定の電界強度でイオン化できるようにするために提供される。このような監視は、直読式ゲージを用いた局所的なものであっても、離れた読み取り装置やコントローラに電子的に接続することによる遠隔的なものであってもよい。
【0058】
例えば、内部ガス圧は、導波路に到達する有害なEMIからのEMPパルスの非常に高い電界強度(およそ100KV/m以上であり得る)が導波路内の気体を急速(10ナノ秒未満の時間)にイオン化するのに十分なレベルに設定され、それにより荷電粒子および電子のプラズマを作成する。カットオフ周波数fよりも低いスペクトルコンテンツのかなりの部分が導波路自体によって遮断されるが、fよりも高いスペクトルコンテンツの十分な量と部分が導波路に入り、それは望ましくない。臨界圧力のイオン化可能ガスは、この閾値を超えると、確実にイオン化して、導波路の壁を介して過剰なエネルギーをグランドに分流させる。プラズマは、外部の低インピーダンス接地接続140を介して、不要なエネルギーをグランドに分流させる。
【0059】
導波路内の過剰なエネルギーに対して可能な限り最速の応答時間を確保するために、鉛210、ストロンチウム90、ポロニウム210、またはタリウム204、あるいは他の放射性物質の小片などの小さな放射性同位元素源が提供される。導波路装置に適合された放射性同位元素源180の実施形態が図8に示されている。上述のように、放射性同位元素源180は、導波路内に少量だけ突出する小さなピン181に取り付けられている。ピンは、溶接または他の非常に安全な方法でプラグ182に結合され得る。放射性物質の量は十分に少ないので、導波路の壁は健康上の問題の発生を防ぐために必要なシールドを提供する。放射性物質は、改変を防止するために導波路構造の内側に密封されている。半減期が装置の必要な動作寿命を満たすのに十分である限り、他の同位体源を使用してよい。
【0060】
導波路118内で生成されたプラズマを監視するために、プラズマプローブ130が本体112に結合され、導波路内を伸長する。{1]プラズマプローブ130は、導波路内のプラズマ濃度を検出するように構成された検出器135に結合されている。ラングミュア設計のプラズマプローブは周知であるが、他のタイプのプラズマプローブまたはプローブ監視回路が使用され得る。
【0061】
検出されたプラズマ濃度に応じて、導波路に供給される気体の圧力が増加または減少され、かつ/または不活性ガスを導入してプラズマ形成を減少または制限し得る。気体供給装置125は、気体供給装置125に結合された電子制御装置を介して手動または自動で制御され得る。検出器135または本発明は、製造時に充填され、漏れに対して密封され得る。
【0062】
上述のように形状が平面であり得る幅広の導電性ストラップ140は、導波路118内で生成されたプラズマに含まれるエネルギーを放散するために、グランドへの低インダクタンスおよび低インピーダンスの経路を提供する。導電性ストラップ140は導波路の本体112に結合され得る。代替的に、導電性ストラップは入力ポート114または出力ポート116に結合され得る。導電性ストラップ140は、1つの可能な例として銅リボンを使用して実装され得る。長さ、幅、厚さに関する導電性ストラップの相対的な寸法がストラップのインダクタンスを決定し、インダクタのインピーダンス(またはリアクタンス)がそのインダクタンスに比例するため、プラズマの流動に対するストラップのインピーダンスが決定される。インダクタンスの高い導体は、導波路内の荷電粒子を十分な速さで除去できず、電磁反射の影響も受けるであろう。ストラップ140の幅(導波路に沿って長手方向に測定される)とその厚さとの間の比率は、ストラップのインダクタンスおよびインピーダンスを決定する際の重要な要素である。一般に、ストラップ140は、その幅(導波路に沿って長手方向に測定される)がその厚さの値の2倍より大きくなるように構成されて、それにより低いインダクタンスおよびインピーダンスを保証する。Kenneth Kaiserによる「Electromagnetic Compatibility Handbook」、CRC Press2005、15.9を参照されたい。いくつかの実施形態では、ストラップ140の幅は、その厚さの2倍よりも大きい。[1}特定の実施形態では、ストラップの幅は、その厚さの5倍から10倍の間であり、さらなる実施形態では、ストラップの幅は、その厚さの10倍よりも大きい。接地接続性能の効率は低下するが、丸線接地接続が使用され得ることに留意されたい。
【0063】
動作中、有害な入射EMIを受信した場合、カットオフ周波数よりも低い周波数は導波路を伝搬できない。上述したように、核爆発(SREMP、HEMP、およびSGEMP)または非核源(NNEMP、IEMIなど)から発生するEMPなどの最も有害なタイプのEMIの多くは、エネルギーの大部分が500MHzよりも低い低周波スペクトル領域に位置する。ここでの大多数は、少なくとも80パーセントを意味すると解釈されるべきである。したがって、結合手段を介して導波路に入力すると、有害なEMIの大部分は遮断され、導波路を通って伝播しない。導電性ストラップ140は、この有害なEMIがグランドに到達するための経路を提供する。ストラップのインピーダンスが低いため、高インピーダンスの接地接続の場合と同様に、エネルギーは迅速かつ効率的に、最小限の反射でグランドに送られる。プラズマは、有害なEMIが受信されたときにプラズマの生成を示すために、プローブ130および検出器135を介して監視され得る。
【0064】
導波路から導波路への変換経路、または同軸ケーブルから導波路への変換経路は、導波路の入力ポート114、出力ポート116、または両方のポートの何れかで使用され得る。多くの携帯電話、マイクロ波、および衛星電子システムに導波路から同軸への変換経路を組み込むことは一般的なプラクティスであるため、本発明の入力ポート114にそのような変換経路を組み込むことは経済的であり、それ故よりコンパクトな全システムを可能にする。図4は、保護装置のいくつかの実施形態での使用に適した、例示的なタイプNから導波路への変換経路の断面図である。ただし、他のRF変換経路が使用され得る。図4に示されるように、変換経路300の前端は、RF放射線が導波路に入る窓304を取り囲むフランジ302を含む。同軸コネクタ310は、変換経路の上面312に結合され、e平面プローブ306と位置合わせされる。同軸コネクタ310は、導体間に誘電体材料が充填された同心導体を含む。e平面プローブ306は、変換経路の上面312から下向きに伸張し、変換経路の後端(「バックショート」)314から選択された距離(D)だけ水平に離れて配置される。調整ねじ(図示せず)は、底面316から挿入され得る。同軸コネクタ310の位置は、e平面プローブ306の所望の位置によって決定され、変換経路のエンドプレートを含む他の位置に配置され得る。その場合は、同軸コネクタのリード線が導波路に沿うように出ている。タイプ「N」の同軸コネクタが本明細書で参照されているが、他のコネクタタイプが本発明で使用され得ることに留意されたい。
【0065】
図3Bは、導波路を使用して有害なEMIの影響からRFシステムを保護するための装置の別の実施形態の側面図である。装置200は、本体の何れかの長手方向端部にフランジ204および206を備えた細長い本体202を備える。本体202は、装置を通って長手方向に伸長する導波路(図示せず)を密閉している。いくつかの実装では、導波路の長手方向の長さ(z)を長くすると、有害なEMIの高周波スペクトル成分のエネルギーを放散するためのイオン化可能ガスの量をより多く提供するため有益である。フランジには気体流動に対して密封されたRF透明窓が取り付けられており、それによりフランジ204および206の間の導波路が気密となり、導波路がイオン化可能ガスで充填されることが可能となる。装置200の第1の長手方向端部(入力)には第1のN型変換経路212が位置しており、それを介して同軸ケーブル上で送信されたRF信号が導波路装置200に入力される。装置の第2の端部(出力)には第2のN型変換経路214が位置しており、それを介して導波路を通って送信されたRF信号が別の同軸ケーブルに出力される。第1および第2の同軸ケーブルから導波路への変換経路はオプションであり、設置の要件に合わせて含まれる。
【0066】
装置の応答時間を短縮するために、導波路の内部空間に配置された小さな放射性同位元素源を含めて、気体充填を予備イオン化することが望ましい。放射性同位元素源などは非常に小さく、気体を予備イオン化するのに十分な最小限の量の放射線しか生み出さない。いくつかの放射性同位元素の何れかを使用され得るが、当該ソースによって生み出される放射線の影響の程度を考慮する必要がある。鉛210、ストロンチウム90、ポロニウム210、またはタリウム204の小片などの放射性同位元素、またはその他の放射性物質は、このタイプの機能に一般的に使用され、少量で安全であると見なされる。図3Cは、図3Bに示される実施形態と同様の導波路の実施形態の斜視図であり、これは、放射性同位元素源が安全なプラグ182を介して挿入される追加のポート232を含む(図8参照)。
【0067】
シュレーダー弁(または他のタイプの弁またはシール)を使用して実装され得る気体入口ポート220は、導波路本体202に結合されている。気体入口ポート220は、導波路をイオン化可能ガスで充填するために気体供給タンクに結合され得る。これは、導波路装置200をRFシステムに設置する前の初期段階で行われ得る。気体入口ポートは後で密閉され得る。圧力計またはセンサ225も導波路部204に結合されている。装置200の導波路は、密閉されて気密になるように設計されているが、気体の一部は時間の経過とともに装置の様々な結合(例えば、212、214、220)を介して漏れ出る可能性がある。導波路内の気体の圧力を測定する圧力計225は、圧力が本明細書に記載の目的のために十分なイオン化を提供するために必要なレベルよりも低い下限閾値に達するかどうかを示すことができる。圧力が下限閾値に達した場合、装置200はオフラインになり得る。そして、気体入口ポートからシールを取り除くか、または新しい装置と交換することによって、追加のイオン化可能ガスが装置に供給され得る。
【0068】
有害なEMIによって導波路118内で生成されたプラズマを監視するために、プラズマプローブ230も導波路本体202に結合されている。使用可能なプラズマプローブの複数の構成が存在し、かつ、結果として得られるデータを読み取るために使用可能な複数の回路トポロジーが存在する。通常、プローブは単一または二重電極構成構成である。電極は通常、先端が鋭利なタングステンのロッドであるが、ボールエンドプローブを含む他の構成が正常に使用され得る。読み出し回路は、適切な電圧と静電容量定格のコンデンサを単一のプローブに直列に接続しただけの簡単なものから、2つのプローブ構成で使用される複雑な差動回路まであり得る。プローブと回路構成の選択は、エンドユーザーが出力で何をしようとしているのかによって異なる。最も単純な構成では、分圧器として直列コンデンサを備えた単一のプローブが使用される。その出力は、プローブの出力電圧がある所定のレベルよりも高いか、あるいは、低いかを判断する閾値検出器に送信される。この場合、これは有害なEMI事象に相当する。この出力は、このような事象が発生したことをシステムオペレータに通知するために使用され、手動または自動で開始される他の予防策が適用され得る。
【0069】
図示のように平面形状であり得る導電性ストラップ240は、導波路ガイド部206に結合されている。導電性ストラップ240は、導波路で生成されたプラズマに含まれるエネルギー、または現行の発明のローパス態様によって遮断されるエネルギーの両方を放散するためのグランドへの低インダクタンスおよび低インピーダンスの経路を提供する。導電性ストラップ240は、導波路の部分の1つの本体に示されるように結合され得る。代替的に、導電性ストラップが導波路の端部に結合され得る。1つの可能な例として、導電性ストラップ240が銅リボンを使用して実装され得る。長さ、幅、厚さに関する導電性ストラップの相対的な寸法がストラップのインダクタンスを決定し、導体のインピーダンス(またはリアクタンス)がそのインダクタンスに比例するため、プラズマフローに対するストラップのインピーダンスが決定される。一般に、ストラップ240は、その幅(導波路に沿って長手方向に測定される)がその厚さの値の2倍より大きくなるように構成されて、低いインダクタンスおよびインピーダンスを保証する。いくつかの実施形態では、ストラップ240の幅は、その厚さの2倍よりも大きい。特定の実施形態では、ストラップの幅は、その厚さの5倍から10倍の間であり、さらなる実施形態では、ストラップの幅は、その厚さの10倍よりも大きい。丸線接地導体が使用され得るが、性能が低下することに留意されたい。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、導波路ではなく回路構成部品を使用して、入射EMIの低周波数成分を除去する保護装置を提供する。図5は、本明細書に開示された教示による、一般的な3ポート無線周波数(RF)遮断「クロスオーバー装置」の概略図であり、有害なEMI事象に関連する非常に大きな瞬間ピーク電力パルスを処理するのに十分なワット数の容量を有する。クロスオーバー装置500は、例えば、RFアンテナから直接RF信号入力を受信するように構成され得る入力ポート502を含む。入力ポート502は、第1のRFシールドハウジング515に密閉されたローパスフィルタ510の入力に結合されている。ローパスフィルタは、輪郭が描かれている、ハウジング515内の回路基板518上に配置されている。ローパスフィルタ510の出力は、接地接続パッド504に送られ、次いで、例えば、上記のような低インピーダンス導電性ストラップ540を介してRFグランドに接続され、接地接続のインピーダンスを最小化する。また、入力ポート502は第1のシールドハウジングとは別個の第2のRFシールドハウジング525に密閉されたハイパスフィルタ520の入力に接続されている。別個のシールドされたハウジング515および525を有することにより、フィルタ間のクロストークが防止される。ハイパスフィルタ520は、輪郭が描かれている、ハウジング525内の回路基板522上に配置されている。ハイパスフィルタの出力は、出力ポート506に結合されている。ローおよびハイパスフィルタ510および520は、RFスペクトル内の領域を表すクロスオーバー周波数に調整され、それよりも低いと、不要なエネルギーの大部分が熱として放散されずにグランドに送られる。例えば、クロスオーバー周波数の例として500MHzを使用すると、入力信号の500MHzよりも低いスペクトル成分は低周波数出力504(接地接続パッド)に振り向けられ、500MHzよりも高いスペクトル成分は高周波出力506に振り向けられる。装置は、例示的な周波数で動作するための電子システムに通常関連付けられている設計規則に従って構築されている。
【0071】
回路基板518および522は、(同等の周波数で動作するデジタル回路とは対照的に)RF回路に固有の設計規則に従って設計されている。RF設計規則は、基板下面の連続する等電位グランド平面、マイクロストリップ、サスペンデッドマイクロストリップ、コプレーナなどの周知のマイクロ波伝送線路構造で伝送線路を形成するように配置された関連グランド構造と適切な形状の導体経路などの詳細を含む。オーディオクロスオーバーネットワークの物理的トポロジーはマイクロ波回路設計技術を使用せず、それ自体は本発明に従って機能しないことに留意されたい。
【0072】
いくつかの実施形態では、クロスオーバー装置500の前述の構成部品のすべては、追加の重厚な高周波シールドハウジング550に取り付けられている。ハウジング550に取り付けられているのは、入力ポート502につながる第1のRFコネクタ532と、第2の出力ポート506につながる第2のRFコネクタ536である。さらに、低インピーダンス導電性ストラップ540を介してローパスフィルタ510および回路アセンブリ518の出力をRFグランドに接続するために、大型の低インピーダンスの接地接続パッド534がハウジングに取り付けられている。ローパスフィルタ510は、選択された周波数項「カットオフ」周波数(F)よりも高い入力信号のスペクトル成分の大部分を遮断し、カットオフ周波数よりも低いスペクトル成分の大部分を通過させるように設計されている。逆に、ハイパスフィルタ520は、Fよりも低い入力信号のスペクトル成分の大部分を遮断し、Fよりも高いスペクトル成分の大部分を通過させるように設計されている。このようにして、クロスオーバー装置は、Fよりも低い入力信号のスペクトル成分を第1の出力ポート504に振り向け、Fよりも高い入力信号のスペクトル成分を第2の出力506に振り向ける。図5に示される実施形態では、成分>FはRFコネクタ534を介して出力され、その一方では、成分<FはRFグランドに迂回される。
【0073】
上記のように、対象となる有害なEMIのエネルギーの大部分は、図1A、1B、2A、および2Bに示すように、低周波数領域に存在する。したがって、カットオフ周波数(F)よりも低いエネルギーは、ハイパスフィルタ520によって遮断され、ローパスフィルタ510および低インピーダンスのグランドストラップ結合を介してグランドに送られる。
【0074】
ローパスフィルタ510は、異なる構成で具体化され得る。ローパスフィルタ560の一例の実施形態が図6Aに示されている。示されているように、入力電圧(Vi)が導電線562および564の間に印加される。直列インダクタ565が導電線562に沿って配置され、コンデンサ567が並列構成で導電線562および564に渡って配置される。インダクタおよびコンデンサの値は、カットオフ周波数(例えば500MHz)よりも高いスペクトル成分の大部分を遮断するように選択される。インダクタのリアクタンスは入力信号の周波数(X=2πfL)に比例し、コンデンサのインピーダンスは入力信号の周波数(Xc=1/2πfC)に反比例するため、低周波数ではほとんどの電圧降下はコンデンサ上で発生し、出力電圧は入力信号の大きさの大部分を含む。このように、図6Aの構成は、低周波成分を通過させ、ローパスフィルタとして機能すると言うことができる。高周波はインダクタ565によって吸収されるため、出力で大幅に減衰する。図6Bに示す2極バターワースフィルタは、ローパスフィルタとしても使用され得る。バターワースフィルタ570は、2つの直列インダクタ575および576と、導電線572および574に渡って配置されたコンデンサ577および抵抗579とで形成されている。当業者であれば、直列にインダクタ(および/または抵抗器)を有し、並列でコンデンサ(および抵抗器)を有する他の有用なローパスフィルタ構成を認識することを理解されたい。どちらの構成を使用する場合でも、クロスオーバー装置のローパスフィルタは、受信された有害なEMIのFよりも低いエネルギーの大部分をグランドに送るように設計されている。
【0075】
ハイパスフィルタ580は、ローパスフィルタと同様の構成部品で構成されているが、その構成が逆である。図7Aに示されるように、導電線582および584に渡るハイパスフィルタ580の実施形態は、導電線584に沿って配置された直列コンデンサ585と、並列構成で導電線582および584に渡って並列に配置された2つのインダクタ586および587とを含む。インダクタおよびコンデンサの値は、スペクトル成分の大部分が所望のカットオフ周波数(例えば、500MHz)未満で遮断されるように選択される。図7Bは、導電線592に沿って直列に2つのコンデンサ595および596と、導電線592および594の間に並列で構成されたインダクタ598とを有するハイパスフィルタ590の別の実施形態を示す。ハイパスフィルタでは、導電線に沿ったコンデンサは高周波成分に対してほとんど抵抗を呈さない。代わりに、高周波で、導電線に渡って並列のインダクタ間で電圧が降下する。したがって、出力信号は、入力信号の高周波成分の大部分を含み、これは、一般に、カットオフ周波数Fよりも高いRF通信信号を含む。当業者は、直列の導体(または抵抗器)を有し、並列のインダクタを有する他の有用なハイパスフィルタ構成を認識することを理解されたい。
【0076】
本開示の実施形態は、有害なEMIに関して熟練および知識があり、自然または人工を問わず、有害なEMIに対する従来のRFシステムの脆弱性を認識している人々によって長い間感じられてきた必要性を満足させる。現在、RF機器およびシステムを有害なEMIから保護するのに適した一般的に展開されている装置は存在しない。特定の種類の有害なEMIを受信したときにそれ自体が損傷を受けやすい。国の電気および電気通信インフラストラクチャのセキュリティを改善するという現在の使命を考えると、本開示の実施形態は、好都合に展開することができる必要な解決策を提供する。
【0077】
本明細書において開示される何れの構造および機能の詳細も、システムおよび方法を限定するものとして解釈されるべきではなく、当業者に、方法を実施するための1つ以上の手法を教示する代表的な実施形態および/または構成として提供されるものであることを理解されたい。
【0078】
図面中の同様の数字は、いくつかの図を通して同様の要素を表し、図を参照して説明および図示されたすべての構成部品またはステップが、すべての実施形態または配置に必要なわけではないことが、さらに理解されるであろう。
【0079】
本明細書で使用する用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別のことを示している場合を除き、複数形も含むものと意図する。「comprises(備える)」および/または「comprising(備える)」という用語は、本明細書で使用する際、述べた特徴、完全体、ステップ、動作、要素、および/または構成部品の存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。
【0080】
向きの用語は、本明細書においては、単に慣例および参照の目的で使用され、限定として解釈されるべきではない。しかしながら、これらの用語が、見る人を基準にして使用される可能性があることが認識される。したがって、限定が含意されることもなく、推測されることもない。
【0081】
また、本明細書で使用する表現および用語は、説明の目的のためであり、限定するものとみなすべきではない。本明細書内の「含む」、「備える」、または「有する」、「包含する」、「伴う」、およびこれらの変形の使用は、それ以降に列挙された項目およびその等価物、ならびに追加項目を包含することを意味する。
【0082】
上述の主題は、単に例示として提供されており、限定されるものと解釈されるべきではない。例示的な実施形態ならびに説明および記載された用途に従うことなく、かつ、以降の特許請求の範囲に記載されている本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更が、本明細書に記載された主題に対して行われ得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】