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特表2023-500269フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/90 20060101AFI20221223BHJP
   C12N 15/61 20060101ALI20221223BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20221223BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20221223BHJP
   C12P 19/02 20060101ALI20221223BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20221223BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20221223BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20221223BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20221223BHJP
   C12R 1/145 20060101ALN20221223BHJP
【FI】
C12N9/90 ZNA
C12N15/61
C12N15/55
C12N15/54
C12P19/02
C12N1/21
C12N1/20 A
C12N9/16 B
C12N9/12
C12R1:145
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525218
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2020014808
(87)【国際公開番号】W WO2021086010
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0134730
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0141069
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジンソル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,インソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウンス
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD02
4B050EE10
4B050FF14E
4B050LL05
4B064AF02
4B064CA21
4B064CB28
4B064CD30
4B064DA10
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD01
4B065BD16
4B065CA27
4B065CA46
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、フルクトース-6-リン酸のエピマー化酵素タンパク質、前記酵素タンパク質をコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクターおよび形質転換微生物、およびこれらを利用したアルロース生産用組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列と70%以上のアミノ酸配列相同性(identity)を有し、フルクトース-6-リン酸(Fructose-6-phosphate)をアルロース-6-リン酸(allulose-6-phosphate)に転換させるフルクトース-6-リン酸(fructose6-phosphate)エピマー化酵素タンパク質。
【請求項2】
前記酵素は、配列番号2のヌクレオチド配列と80%以上のヌクレオチド配列同一性(identity)を有するヌクレオチド配列によりコードされるものである、請求項1に記載の酵素タンパク質。
【請求項3】
前記酵素は、Clostridium lundenseに由来し、40~70℃の酵素反応温度およびpH6~8の酵素反応pHを有するものである、請求項1に記載の酵素タンパク質。
【請求項4】
前記酵素は、マンガンイオン、コバルトイオンまたはニッケルイオンにより活性が増加するものである、請求項1に記載の酵素タンパク質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフルクトース-6-リン酸エピマー化酵素、前記酵素タンパク質を発現する微生物、前記酵素タンパク質を発現する形質転換微生物、前記微生物の菌体、前記微生物の菌体破砕物、前記微生物の培養物、前記微生物の培養上清液、前記微生物の培養上清液の濃縮物およびこれらの粉末からなる群より選択された1種以上を含む、アルロース生産用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、アルロース6-リン酸の脱リン酸化酵素、これを発現する微生物または前記微生物の培養物を追加的に含む、請求項5に記載のアルロース生産用組成物。
【請求項7】
前記組成物は、マンガンイオン、コバルトイオンおよびニッケルイオンからなる群より選択された1種以上の金属イオンを追加的に含むものである、請求項5に記載のアルロース生産用組成物。
【請求項8】
前記組成物は、ブドウ糖6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に転換する異性化酵素、これを発現する微生物または前記微生物の培養物を追加的に含む、請求項5に記載のアルロース生産用組成物。
【請求項9】
前記組成物は、(a)(i)デンプン、マルトデキストリン、スクロースまたはその組み合わせ;(ii)リン酸(phosphate);(iii)アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素;(iv)ブドウ糖-6-リン酸-異性化酵素;(v)ホスホグルコムターゼまたはブドウ糖リン酸化酵素;および(vi)α-グルカノホスホリラーゼ、デンプンホスホリラーゼ、マルトデキストリンホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、α-アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼまたはスクラーゼ;または
(b)前記項目(a)の酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物を追加的に含む、アルロース6-リン酸の脱リン酸化酵素を追加的に含む、請求項5に記載のアルロース生産用組成物。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフルクトース-6-リン酸エピマー化酵素を利用して、フルクトース-6-リン酸をアルロース-6-リン酸に転換させる工程を含む、アルロースを製造する方法。
【請求項11】
前記アルロース-6-リン酸にフィターゼ(phytase)、これを発現する微生物、または前記微生物の培養物を接触させることで、前記アルロース-6-リン酸をアルロースに転換する工程を追加的に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フルクトース-6-リン酸をアルロース-6-リン酸に転換させる工程は、40~70℃の反応温度およびpH6~8の反応pHで行われるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ヘキソキナーゼ(hexokinase)を利用して、果糖または果糖含有物質からフルクトース-6-リン酸を製造する工程を追加的に行うものである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸化糖エピマー化酵素タンパク質、より詳しくは、フルクトース-6-リン酸(fructose-6-phophate)の3-エピマー化酵素タンパク質、前記酵素タンパク質をコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクターおよび形質転換菌株、前記菌株を利用したアルロース生産用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸化糖のエピマー化酵素は、多様なリン酸化糖にある炭素に結合されたエピマー化酵素であって、ケトヘキソース-6-リン酸エピマー化酵素は、C3またはC4をエピマー化することができる。前記ケトヘキソースは、果糖(fructose)、アルロース、ソルボース(sorbose)、およびタガトース(tagatose)からなる群より選択された1種以上のケトヘキソースであり得る。
【0003】
フルクトース-6-リン酸のエピマー化酵素は、3-エピマー化酵素と4-エピマー化酵素を含む。具体的に、アルロース-3-エピマー化酵素(D-アルロース-3-epimerase、EC5.1.3.30)は果糖(D-fructose)を3-エピマー化(3-epimerization、3番炭素エピマー化)してアルロース-6-リン酸を生産する。
【0004】
前記酵素を使用して果糖からアルロースを生産する場合、基質として使用する果糖と産物であるアルロースとの間の一定水準の反応平衡が存在して、効率が非常に低い。したがって、前記酵素を利用した単一反応を通じて高純度アルロースを製造しようとする場合、最終反応液から果糖を分離して除去する追加工程が必要である。
【0005】
産業的に果糖を原料にしてアルロースを製造しようとする場合に、使用される酵素は産業的生産条件、特に熱安定性が高く、最大限高い転換率を有さなければならず、また糖を基質として使用することから、糖の褐変化がアルカリ条件で簡単に起こるため、できる限り糖の褐変が防止される転換反応条件を満たす必要がある。
【0006】
したがって、産業的に使用するためには、適した基質転換率、酵素の熱安定性、および酵素反応条件を少なくとも一つ以上満たし、果糖を原料にしてリン酸化果糖を製造する酵素およびこれを利用したリン酸化果糖の生産方法が切実に必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一例は、フルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質、前記酵素タンパク質をコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクターおよび形質転換微生物に関する。
【0008】
本発明の他の一例は、フルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質、前記酵素を発現する微生物の菌体、前記菌体の破砕物、前記微生物の培養物、前記微生物の培養物上清液またはこれらの抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、フルクトース-6-リン酸を利用してアルロース-6-リン酸を製造する方法、およびアルロース-6-リン酸の製造用組成物に関する。
【0009】
本発明の追加の一例は、フルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質、前記酵素を発現する微生物の菌体、前記菌体の破砕物、前記微生物の培養物、前記微生物の培養物上清液またはこれらの抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、フルクトース-6-リン酸を利用してケトヘキソース、例えばアルロースを生産する組成物およびアルロース生産方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するために、本発明の一例は、配列番号1のアミノ酸配列と配列相同性が70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上であるアミノ酸配列を含むフルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質に関する。例えば、このような相同性を有し、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と相応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有しても本発明の範囲内に含まれることは自明である。
【0011】
本発明の具体的な一例は、配列番号1のアミノ酸配列と配列相同性が70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上であるアミノ酸配列を含むフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素を提供する。前記フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素は、配列番号2のヌクレオチド配列または配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも80%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上の相同性を有するヌクレオチド配列によりコードされるものであり得る。
【0012】
前記数値の相同性を示すアミノ酸配列として、実質的に前記酵素と同一であるか相応するフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素タンパク質であれば制限なしに含むことができる。またこのような相同性を有する配列として、実質的にフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素機能を示すアミノ酸配列であれば、一部配列が欠失、変形、置換または付加されたタンパク質変異体も本発明の範囲内に含まれる。
【0013】
前記で用語「相同性」または「一致性」は、与えられたアミノ酸配列または塩基配列と一致する程度を意味し、百分率で表示され得る。本明細書で、与えられたアミノ酸配列または塩基配列と同一または類似の活性を有するその相同性配列が「%相同性」で表示される。
【0014】
本発明によるフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素は、フルクトース-6-リン酸(fructose 6-phosphate)の3-エピマー化反応を触媒し、具体的にフルクトース-6-リン酸の3-エピマー化反応を行ってアルロース-6-リン酸に転換することができる。
【0015】
本発明によるフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素タンパク質は、Clostridium lundense由来の酵素、具体的にClostridium lundense DSM 17049由来の酵素であり得る。
【0016】
前記Clostridium lundense由来フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素の反応温度範囲は、40~70℃、45~75℃、45~77℃、50~70℃または50~75℃であり得る。前記最適温度は、例えば、pH7.0条件で5分間反応進行時の結果であり得るが、これに制限されない。フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素の最適温度条件は60℃であり、40~70℃条件にわたる広い温度条件範囲で酵素最大活性の50%以上の活性を有する。
【0017】
前記Clostridium lundense由来フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素の反応pH範囲は、pH6~8、pH6~7.5、pH6.5~8、pH6.5~7.5、pH7~8、またはpH7~7.5であり得、pH7.0~7.5条件で最大活性を有し、pH6.0~8.0範囲で酵素最大活性の80%以上の活性を有する。
【0018】
前記Clostridium lundense由来フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素の最大のアルロース生成量は、16重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、27重量%以上、30重量%以上または32重量%以上であり得る。具体的に、前記酵素の最大アルロース生成量は、酵素0.1mg/mlを20g/Lフルクトース-6-リン酸を溶解した溶解液に添加して反応を行ったものであり得、より詳しくは、前記酵素0.1mg/mlを20g/Lフルクトース-6-リン酸を溶解した溶解液に添加してpH7.0および50℃条件で酵素反応を行って測定したものであり得る。
【0019】
前記アルロース最大転換率は、下記数式1により計算され得る。前記アルロース最大転換率を求めるための酵素反応の時間は、8時間以上、10時間以上、12時間以上、14時間以上または16時間以上であり得、前記反応時間の上限は18時間以下、または20時間以下であり得、具体的な反応時間は前記下限と上限を組み合わせた範囲であり得、例えば16時間~20時間であり得る。
[数式1]
アルロース最大転換率(%)=(アルロース生成量(g/L)/フルクトース-6-リン酸投与量g/L)*(アルロース分子量/フルクトース-6-リン酸分子量)*100
【0020】
前記酵素反応の生成物の糖類中でのアルロース生成比率(重量%)は、下記数式により計算され得る。前記アルロース生成比率を求めるための酵素反応時間は、2時間~6時間、3時間~6時間、または4時間~6時間であり得、例えば4時間~6時間であり得る。
[数式2]
前記アルロース生成比率(重量%)=アルロース生成量/(果糖生成量+アルロース生成量)*100
【0021】
本発明によるフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素タンパク質は、金属イオンにより酵素活性が増加または減少することができる。具体的に、フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素タンパク質は、Mn、CoおよびNiイオンにより酵素活性が増加し、例えば金属イオンがない条件の酵素活性に比べて1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、または1.5倍以上の活性を示し、特にMnとCoイオンは2倍以上、または3倍以上の活性、具体的に金属イオンがない条件に比べて2倍~5倍以下、2倍~4倍以下、3倍~5倍以下、または3倍~5倍以下の活性を示す。フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素タンパク質は、Ca、Cu、Fe、またはZeイオンにより活性が減少する特性を有する。したがって、フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素タンパク質を利用してアルロースを生産する条件は、Ca、Cu、Fe、およびZeイオンからなる群より選択された少なくとも1種以上の金属イオンを含まないことが好ましい。
【0022】
本発明の一例によるフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素が配列番号1のアミノ酸配列と配列相同性が70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上であるアミノ酸配列を含み、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と相応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有しても本発明の範囲内に含まれることは自明である。
【0023】
前記Clostridium lundense由来フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素タンパク質は、Ruminococcus sp. AF14-10由来ribulose-phosphate 3-epimerase(RuFP3E:アミノ酸配列-配列番号5)、Clostridium sp. DL-VIII由来ribulose-phosphate 3-epimerase(CDFP3E:アミノ酸配列-配列番号7)、Paenibacillus kribbensis由来ribulose-phosphate 3-epimerase(PkFP3E:アミノ酸配列-配列番号9)とアミノ酸配列同一性を分析した結果、RuFP3Eと59.05%であり、CDFP3Eと63%であり、PkFP3Eとアミノ酸配列同一性は60.96%であって、配列番号1のアミノ酸配列と配列相同性が70%未満であった。
【0024】
また、フルクトース6-リン酸からアルロース6-リン酸への転換活性を分析したHPLCの結果、配列番号1のアミノ酸配列を有するClFP3E酵素ではアルロースピークが確認されたが、前記RuFP3E、CDFP3EおよびPkFP3Eではアルロースピークが確認されなかった。そこで、ClFP3E酵素以外の他の候補群酵素はF6Pに対する活性がなかったため、脱リン酸化酵素(phosphatase)を処理した時、反応工程の最初基質であるF6Pからリン酸(phosphate)が除去された形態の果糖のみが生成されたことを確認することができる(図7a、7b)。
【0025】
本発明の追加の例として、本発明のフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素をコードする核酸分子を提供する。本発明によるフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素をコードする核酸の具体的な一例は、前記フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素は、配列番号2のヌクレオチド配列、または配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも80%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上の相同性を有するヌクレオチド配列を含むことができる。
【0026】
本発明はまた他の一様態として、本発明のフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素をコードする核酸を含むベクターまたは形質転換体を提供する。
【0027】
本明細書で用語「形質転換」は、標的タンパク質をコードする核酸を含むベクターを宿主細胞内に導入して宿主細胞内で前記核酸がコードするタンパク質が発現することができるようにすることを意味する。形質転換された核酸は宿主細胞内で発現さえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか染色体以外に位置するか関係なしにこれら全てを含むことができる。また、前記核酸は、標的タンパク質をコードするDNAおよびRNAを含む。前記核酸は、宿主細胞内に導入されて発現され得るものであれば、いかなる形態で導入されるものでも関係ない。例えば、前記核酸は、自己発現するのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入され得る。前記発現カセットは、通常、前記核酸に作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位および翻訳終結信号を含むことができる。前記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクター形態であり得る。また、前記核酸は、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであり得るが、これに限定されない。
【0028】
また、前記で用語「作動可能に連結」されたとは、本発明の目的タンパク質をコードする核酸の転写を開始および媒介するようにするプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0029】
本発明のベクターを形質転換させる方法は、核酸を細胞内に導入するいかなる方法も含まれ、宿主細胞により当該分野で公知されているとおり、適した標準技術を選択して行うことができる。例えば、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO4)沈澱、塩化カルシウム(CaCl2)沈澱、微細注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE-デキストラン法、陽イオンリポゾーム法、および酢酸リチウム-DMSO法などがあるが、これに制限されない。
【0030】
前記宿主細胞としては、DNAの導入効率が高く、導入されたDNAの発現効率が高い宿主を使用することが良く、例えば大腸菌であり得るが、これに制限されるのではない。
【0031】
本発明はまた他の一様態として、本発明によるフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素タンパク質、前記酵素タンパク質を発現する微生物、前記酵素タンパク質を発現する形質転換微生物、前記微生物の菌体、前記微生物の菌体破砕物、前記微生物の培養物、前記微生物の培養上清液、前記微生物の培養上清液の濃縮物およびこれらの粉末からなる群より選択された1種以上を含むケトヘキソース、例えばアルロース生産用組成物を提供する。
【0032】
前記培養物は、フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素を生産する微生物から生産された酵素を含むものであって、前記菌株を含むか菌株を含まないcell-free形態であり得る。前記破砕物は、フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素を生産する微生物の菌体を破砕した破砕物または前記破砕物を遠心分離して得られた上清液を意味するものであって、前記ポリホスフェート依存型ブドウ糖リン酸化酵素を生産する微生物から生産された酵素を含むものである。
【0033】
前記菌株の培養物は、前記フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素を生産する微生物から生産された酵素を含むものであって、前記微生物菌体を含むか含まないcell-free形態であり得る。本明細書において、別途の言及がない限り、使用されるフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素を生産する微生物は、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌体の破砕物、前記破砕物の上清液、およびこれらの抽出物からなる群より選択された1種以上を含むものを意味する。
【0034】
本発明によるケトヘキソース、例えばアルロース生産方法は、微生物から得られた酵素を利用するため、環境にやさしく、簡単な酵素反応により果糖からアルロース生産を以前になかった方法で転換させ、生産経費を大幅に低減する一方で、生産効果を極大化することができる。
【0035】
本発明によるアルロース生産用組成物は、Mn、CoおよびNiイオンからなる群より選択された1種以上の金属イオンを追加的に含むことができる。前記金属イオンの濃度は、0.5mM~20mMであり得、例えば、0.5mM~10mM、1.0mM~10mM、1.5mM~8.0mM、2.0mM~8.0mM、3.0mM~7.0mM、4.0mM~6.0mM、または0.2mM~10mMであり得る。
【0036】
前記アルロース生産用組成物を利用してアルロースを生産する場合、酵素または酵素を生産する微生物を利用した反応温度および反応pH条件は、前記酵素の反応温度および反応pH条件で前述したとおりである。
【0037】
前記アルロース生産用組成物は、果糖をフルクトース-6-リン酸に転換するヘキソキナーゼ酵素、前記酵素タンパク質を発現する形質転換微生物、前記微生物の菌体、前記微生物の菌体破砕物、前記微生物の培養物、前記微生物の培養上清液、前記微生物の培養上清液の濃縮物およびこれらの粉末からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0038】
前記フルクトース-6-リン酸は、果糖または果糖含有物質をヘキソキナーゼ処理して得たものが好ましいが、他の化学的合成方法などにより提供される場合にも本発明の保護範囲に含まれる。
【0039】
前記フルクトース-6-リン酸は、ブドウ糖-6-リン酸から製造され得、前記アルロース生産用組成物は、ブドウ糖-6-リン酸を異性化してフルクトース-6-リン酸に転換するブドウ糖-6-リン酸異性化酵素を追加的に含むことができる。
【0040】
前記ブドウ糖-6-リン酸は、ブドウ糖を直接リン酸化して製造されたり、ブドウ糖-1-リン酸から転換され得る。ブドウ糖は、デンプンまたはデンプン加水分解物、例えばデキストリンなどをブドウ糖生成アミラーゼで処理して得られたブドウ糖であり得、ブドウ糖-1-リン酸は、前記ブドウ糖にリン酸化酵素を処理して得られるものであり得る。前記ケトヘキソース生産用組成物は、ブドウ糖-6-リン酸を製造するための酵素システムを追加的に含むことができる。
【0041】
具体的に、本発明のアルロース生産用組成物に含まれる酵素およびアルロース生産に利用される基質は制限されない。本発明のアルロース生産用組成物は、(a)(i)デンプン、マルトデキストリン、スクロースまたはその組み合わせ、ブドウ糖、ブドウ糖-1-リン酸、ブドウ糖-6-リン酸、またはフルクトース-6-リン酸;(ii)リン酸(phosphate);(iii)アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素;(iv)ブドウ糖-6-リン酸-異性化酵素;(v)ホスホグルコムターゼまたはブドウ糖リン酸化酵素;および/または(vi)α-グルカンホスホリラーゼ、デンプンホスホリラーゼ、マルトデキストリンホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、α-アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼまたはスクラーゼ;または(b)前記項目(a)の酵素を発現する微生物または前記項目(a)の酵素を発現する微生物の培養物を追加的に含むことができるが、これに制限されない。
【0042】
具体的に、本発明のデンプン/マルトデキストリンホスホリラーゼ(starch/maltodextrin phosphorylase、EC2.4.1.1)およびα-グルカンホスホリラーゼは、リン酸(phosphate)をブドウ糖に転移させてデンプンまたはマルトデキストリンからブドウ糖-1-リン酸を生産する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質も含むことができる。
【0043】
本発明のスクロースホスホリラーゼ(sucrose phosphorylase、EC2.4.1.7)は、リン酸をブドウ糖に転移させてスクロースからブドウ糖-1-リン酸を生産する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質も含むことができる。
【0044】
本発明のデンプン液化糖化酵素であるα-アミラーゼ(α-amylase、EC3.2.1.1)、プルラナーゼ(pullulanse、EC3.2.1.41)、グルコアミラーゼ(glucoamylase、EC3.2.1.3)およびイソアミラーゼ(isoamylase)は、デンプンまたはマルトデキストリンをブドウ糖に転換させる活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質も含むことができる。
【0045】
本発明のスクラーゼ(sucrase、EC3.2.1.26)は、スクロースをブドウ糖に転換させる活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質も含むことができる。本発明に適用可能なホスホグルコムターゼ(phosphoglucomutase、EC5.4.2.2)は、ブドウ糖-1-リン酸をブドウ糖-6-リン酸に転換させる活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質も含むことができる。ブドウ糖リン酸化酵素(glucokinase)は、ブドウ糖にリン酸を転移させてブドウ糖-6-リン酸に転換する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質も含むことができる。具体的に、前記ブドウ糖リン酸化酵素は、ポリホスフェート依存型ブドウ糖リン酸化酵素であり得る。
【0046】
本発明のブドウ糖-6-リン酸異性化酵素は、ブドウ糖-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に転換させる活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質も含むことができる。
【0047】
本発明のアルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素は、アルロース-6-リン酸をアルロースに転換させる活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質も含むことができる。より具体的に、前記アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素は、非可逆的にアルロース-6-リン酸をアルロースに転換させる活性を有するタンパク質であり得る。前記アルロース生産用組成物は、アルロース-6-リン酸で脱リン酸化反応を行うフィターゼ(phytase)、例えばアルロース6-リン酸の脱リン酸化酵素(allulose-6-phosphate phosphatase)を追加的に含むことができるが、これに限定されない。前記ケトヘキソース生産用組成物は、アルロース-6-リン酸の脱リン酸化酵素(allulose-6-phosphate phosphatase)、前記アルロース-6-リン酸の脱リン酸化酵素を発現する微生物または前記アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素を発現する微生物の培養物を追加的に含むことができる。
【0048】
前記ケトヘキソース生産用組成物を利用してケトヘキソース、例えばアルロース-6-リン酸を生産する酵素または酵素を生産する微生物を利用した反応温度および反応pH条件は、前記酵素の反応温度および反応pH条件で前述したとおりである。
【0049】
前記方法は、ヘキソキナーゼ(hexokinase)を利用して、果糖または果糖含有物質からフルクトース-6-リン酸を製造する工程を追加的に含むことができるか、および/または脱リン酸化酵素をこれを発現する微生物、または前記微生物の培養物を接触させてリン酸を除去する工程を追加的に含むことができる。
【0050】
前記リン酸基を除去する工程は、アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素(allulose-6-phosphate phosphatase)、前記アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素を発現する微生物または前記アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素を発現する微生物の培養物を利用して行ってアルロースを製造することができる。前記アルロース6-リン酸は、他の酵素または化学的な方法などによりリン酸基が除去されることもできる。
【0051】
本発明の一例は、フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素、前記フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素を発現する微生物または前記フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素を発現する微生物の培養物を接触させてフルクトース-6-リン酸をアルロース-6-リン酸に転換する工程を含むアルロース製造方法を提供する。
【0052】
本発明の製造方法は、前記フルクトース-6-リン酸をアルロース-6-リン酸に転換する工程の後に、アルロース-6-リン酸にアルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素、前記アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素を発現する微生物または前記アルロース-6-リン酸脱リン酸化酵素を発現する微生物の培養物を接触させることで、前記アルロース-6-リン酸をアルロースに転換する工程を追加的に含むことができる。
【0053】
また、本発明の製造方法は、前記フルクトース-6-リン酸をアルロース-6-リン酸に転換する工程の前に、ブドウ糖-6-リン酸にブドウ糖-6-リン酸-異性化酵素、前記ブドウ糖-6-リン酸-異性化酵素を発現する微生物または前記ブドウ糖-6-リン酸-異性化酵素を発現する微生物の培養物を接触させることで、前記ブドウ糖-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に転換する工程を追加的に含むことができる。
【0054】
また、本発明の製造方法は、前記ブドウ糖-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に転換する工程の前に、ブドウ糖-1-リン酸(Glucose-1-phosphate)にホスホグルコムターゼ、前記ホスホグルコムターゼを発現する微生物または前記ホスホグルコムターゼを発現する微生物の培養物を接触させることで、前記ブドウ糖-1-リン酸をブドウ糖-6-リン酸に転換する工程を追加的に含むことができる。
【0055】
本発明の製造方法は、前記ブドウ糖-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に転換する工程の前に、ブドウ糖(Glucose)にブドウ糖リン酸化酵素、前記ブドウ糖リン酸化酵素を発現する微生物または前記ブドウ糖リン酸化酵素を発現する微生物の培養物、およびリン酸を接触させることで、前記ブドウ糖をブドウ糖-6-リン酸に転換する工程を追加的に含むことができる。
【0056】
本発明の製造方法は、ブドウ糖-1-リン酸をブドウ糖-6-リン酸に転換する工程の前に、デンプン、マルトデキストリン、スクロースまたはその組み合わせにα-グルカンホスホリラーゼ、デンプンホスホリラーゼ、マルトデキストリンホスホリラーゼまたはスクロースホスホリラーゼ;前記ホスホリラーゼを発現する微生物;または前記ホスホリラーゼを発現する微生物の培養物、およびリン酸を接触させることで、前記デンプン、マルトデキストリン、スクロースまたはその組み合わせをブドウ糖-1-リン酸に転換する工程を追加的に含むことができる。
【0057】
本発明の製造方法は、前記ブドウ糖をブドウ糖-6-リン酸に転換する工程の前に、デンプン、マルトデキストリン、スクロースまたはその組み合わせにα-アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼ、スクラーゼまたはイソアミラーゼ;前記アミラーゼ、プルラナーゼまたはスクラーゼを発現する微生物;または前記アミラーゼ、プルラナーゼまたはスクラーゼを微生物の培養物を接触させることで、前記デンプン、マルトデキストリン、スクロースまたはその組み合わせをブドウ糖に転換する工程を追加的に含むことができる。
【0058】
本発明の製造方法は、ブドウ糖に4-α-グルカノトラスファラーゼ、前記4-α-グルカノトラスファラーゼを発現する微生物または前記4-α-グルカノトラスファラーゼを発現する微生物の培養物を接触させることで、前記ブドウ糖をデンプン、マルトデキストリンまたはスクロースに転換する工程を追加的に含むことができる。
【0059】
このような方法で生産されたアルロースは、機能性食品および医薬品に添加されて有用に使用することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明によるフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素は、高い酵素転換率、酸性または中性の反応pH条件および高い熱安定性の特性のうちの少なくとも一つ以上を満たすため、産業的規模でフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素を利用したケトヘキソースの生産に有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明の一例によるフルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質の発現および精製を確認した電気泳動写真である。
図2】本発明の一例によるフルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質のBIO-LCで分析した結果を示す。
図3】本発明の一例によりアルロース-6-リン酸フォスファターゼの酵素反応を通じて反応液のリン酸化糖を脱リン酸化させた後、LCで分析した結果である。
図4】本発明の一例によりフルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質の温度特性を分析した結果を示すグラフである。
図5】本発明の一例によりフルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質のpH特性を分析した結果を示すグラフである。
図6】本発明の一例によりフルクトース-6-リン酸の3-エピマー化酵素タンパク質の金属イオン影響を示す結果を示すグラフである。
図7a】公知の3種類のribulose-phosphate 3-epimeraseを利用したアルロース生産を行った後に得られた反応物のHPLC分析結果である。
図7b】公知の3種類のribulose-phosphate 3-epimeraseを利用したアルロース生産を行った後に得られた反応物のHPLC分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0062】
本発明は、下記の実施例を挙げてより詳しく説明するが、下記の実施例に権利範囲が限定される意図ではない。
【0063】
実施例1: フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素の生産
フルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素として機能すると予想される候補酵素をスクリーニングして、最も優れた効果を示すと予想される酵素としてClostridium lundense DSM 17049菌株に由来する酵素(ClFP3E)のアミノ酸配列(配列番号1)をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)をIDT gene合成を通じて遺伝子合成依頼して確保した。合成された配列番号2のClFP3E DNA塩基配列を基本にしてプライマー(primer)を考案し、PCRを実施して当該遺伝子の塩基配列を増幅した。PCR増幅に使用された順方向配列と逆方向プライマー配列は下記のとおりである。
【0064】
【表1】
【0065】
大量で得たClFP3E遺伝子は、制限酵素NdeIとXhoIを使用してpET21a vectorに導入してpET21_ClFP3Eを製造し、これを大腸菌ER2566菌株に形質転換した。酵素のタンパク質発現のための組換えE.coliは50μg/mlのアンピシリン(ampicillin)を含有するLB培地で作製されたアガープレートでコロニーで確保した。
4mlのLB培地で種培養後、100mlのLB培地で本培養を行い、培養条件は37℃で200rpm条件で600nmで吸光度値0.6になる時まで培養後、IPTG 0.1mMを添加して目的タンパク質の発現を誘導した。誘導(induction)後、25℃で約16時間程度菌株培養後、遠心分離して菌体を回収した。前記回収された菌体はライシスバッファー(lysis buffer)(50mMリン酸ナトリウムバッファー(sodium phosphate buffer)(pH7.0)、300mM NaCl、10mMイミダゾール(imidazole))に懸濁して、ビードビーター(beadbeater)を利用して細胞破砕し、細胞破砕溶液から目的タンパク質ClFP3Eの過発現をSDS-PAGE gel分析を通じて確認した。前記目的タンパク質ClFP3Eの過発現分析結果を図1に示す。SDS-PAGE gel分析を通じて確認したClFP3Eの分子量は約28KDaであった。
また、細胞ペレット(pellet)を除去した後、細胞上清液のみを得てNi-NTAカラム(Ni-NTA superflow、Qiagen)に結合(binding)させた後、洗浄バッファー(washing buffer)(50mMリン酸ナトリウムバッファー(sodium phosphate buffer)(pH7.0)、300mM NaCl、20mMイミダゾール(imidazole))でカラムに結合(binding)されないタンパク質を除去し、最後の過程で溶出バッファー(elution buffer)(50mMリン酸ナトリウムバッファー(sodium phosphate buffer)(pH7.0)、300mM NaCl、200mMイミダゾール(imidazole))で目的タンパク質を溶出した。最終的に確保したタンパク質は、50mMリン酸ナトリウムバッファー(sodium phosphate buffer)(pH7.0)で転換して以降の使用のために保管した。
【0066】
実施例2: 酵素の転換活性の評価
実施例1で得られた精製されたClFP3E酵素0.1mg/mlを、50mMリン酸ナトリウムバッファー(sodium phosphate buffer)(pH7.0)に20g/Lのフルクトース-6-リン酸を溶解した溶解液に添加して50℃で酵素反応を行った。
酵素反応液の分析は、Bio-LC分析を通じて基質と比較して新規に生成された物質を確認したが、アルロース-6-リン酸標準物質が存在せず、正確な確認が不可であり、追加的にアルロース-6-リン酸(A6PP)の脱リン酸化酵素を処理した後、生成されたアルロースを最終的に確認した。Bio-LC分析を通じてはClFP3E酵素反応時、F6Pの減少とA6Pと考えられる新たなピーク(peak)が生成されることを確認した。前記Bio-LC分析結果を下記図2に示す。
A6PP酵素反応を通じて反応液のリン酸化糖を脱リン酸化させた後、LCで分析した結果は次のとおりである。Aminex HPX-87C columnを使用して80℃温度で0.6ml/minの流速条件で分析し、その結果を図3に示す。前記分析結果、果糖とアルロースを確認することができた。
アルロース-6-リン酸フォスファターゼ(A6PP)酵素反応を通じて脱リン酸化させた反応液の最終産物であるアルロースの生成量を定量して計算したClFP3Eの最終転換率は34.3%と計算された。本実施例の反応生成物は、酵素反応を16時間行って得たClFP3Eの最終転換率であり、アルロース最大転換率は、下記数式により計算される。
[数式1]
アルロース最大転換率(%)=(アルロース生成量(g/L)/フルクトース-6-リン酸投与量(g/L))*(アルロース分子量/フルクトース-6-リン酸分子量)*100
【0067】
実施例3: 酵素の温度特性の分析
ClFP3E酵素活性に温度が及ぼす影響を確認するために、50mMリン酸ナトリウムバッファー(sodium phosphate buffer)(pH7.0)に10g/Lのフルクトース-6-リン酸を溶解した後、0.01mg/mlのClFP3E精製タンパク質を添加して40~80℃の間の多様な温度条件で5分間反応を進行した。
その後、A6PP酵素を添加して全ての反応組成物を脱リン酸化させた後、HPLC分析を通じてアルロース生成量を定量分析した。前記反応温度による酵素の相対活性を最も活性が高く測定された60℃の活性を基準にして図4に示した。
【0068】
実験の結果、ClFP3Eの最適温度条件は60℃と確認され、40~70℃条件にわたる広い温度条件範囲で酵素最大活性の50%以上の活性を有していることを確認することができた。
【0069】
実施例4: 酵素のpH特性の分析
ClFP3E酵素活性にpHが及ぼす影響を確認するために、pH5.0~8.5の間の緩衝溶液(pH5.0~6.5、クエン酸ナトリウム/pH6.5~8.5、Tris-HCl)に10g/Lのフルクトース-6-リン酸を溶解した後、0.01mg/mlのClFP3E精製タンパク質を添加して60℃温度で5分の条件で酵素反応を進行した。その後、A6PP酵素を添加して全ての反応組成物を脱リン酸化させた後、HPLC分析を通じてアルロース生成量を定量分析した。前記反応pHによる酵素活性の結果は最も活性が良かったpH7.5を基準にして相対活性で図5に示す。
【0070】
実験の結果、pH7.0~7.5条件で最大活性を確認することができ、pH6.0~8.0範囲で酵素最大活性の80%以上の活性を有することを確認することができた。
【0071】
実施例5: 酵素の金属イオン影響の分析
反応時に添加する金属イオンの種類によるClFP3Eの活性を確認するために、50mMリン酸ナトリウムバッファー(sodium phosphate buffer)(pH7.0)に10g/Lのフルクトース-6-リン酸を溶解した後、それぞれの金属イオン(MgCl2、MnCl2、CaCl2、CoCl2、CuCl2、NiSO4、FeSO4、ZeSO4)5mMを添加した。各金属イオンを含む反応バッファーに0.01mg/mlのClFP3E生成たんぱく質を添加して60℃温度で5分間反応を進行した。
その後、A6PP酵素を添加して全ての反応組成物を脱リン酸化させた後、HPLC分析を通じてアルロース生成量を定量分析した。前記金属イオンの種類による酵素の相対活性を金属イオンを入れない実験群を基準にして図6に示す。
【0072】
実験の結果、MnCl2とCoCl2を添加した時、金属イオンを入れない条件よりも3倍以上の活性を確認することができた。ClFP3E酵素は、マンガンとコバルトを補因子(cofactor)で使用する酵素であることが分かった。またニッケルによっても活性が増加した。酵素活性を減少させるものはCaCl2、CuCl2、FeSO4、ZeSO4であった。
【0073】
比較例1: ribulose-phosphate 3-epimeraseを利用したアルロース生産分析
Ruminococcus sp. AF14-10由来ribulose-phosphate 3-epimerase(RuFP3E:アミノ酸配列-配列番号5および核酸配列-配列番号6)、Clostridium sp. DL-VIII由来ribulose-phosphate 3-epimerase(CDFP3E:アミノ酸配列-配列番号7および核酸配列-配列番号8)、Paenibacillus kribbensis由来ribulose-phosphate 3-epimerase(PkFP3E:アミノ酸配列-配列番号9および核酸配列-配列番号10)のポリヌクレオチドを遺伝子合成依頼して確保した。
前記Clostridium lundense DSM 17049菌株に由来するフルクトース-6-リン酸3-エピマー化酵素(ClFP3E)のアミノ酸配列(配列番号1)とアミノ酸配列相同性を分析した結果、配列番号5のアミノ酸配列を有するRuFP3Eとアミノ酸配列同一性は59.05%であり、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDFP3Eとアミノ酸配列同一性は63%であり、配列番号9のアミノ酸配列を有するPkFP3Eとアミノ酸配列同一性は60.96%であった。
合成された配列番号2のClFP3EのDNA塩基配列を基本にして、前記実施例1と実質的に同様な方法で大量で遺伝子を得た。実施例1と実質的に同様な方法で、前記得られた遺伝子をE.coliに導入して発現させた後に目的タンパク質を溶出した。最終的に確保したタンパク質は50mMリン酸ナトリウムバッファー(sodium phosphate buffer)(pH7.0)で転換して以降の使用のために保管した。
フルクトース6-リン酸からアルロース6-リン酸への転換活性を分析するために、実施例2と同様な方法で、前記得られた酵素を利用してフルクトース-6-リン酸を基質で使用した酵素反応を行った。前記酵素反応後に、アルロース-6-リン酸フォスファターゼ(A6PP)酵素を利用した脱リン酸化反応を行った後、前記反応産物液を高性能液体クロマトグラフィー(High-Performance Liquid Chromatography、HPLC)を使用してアルロース生成量で測定した。
HPLC分析条件は、Aminex HPX-87Cカラム(BIO-RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)のRID(Refractive Index Detector Agilent 1260 RID)を利用した。移動相溶媒は水を使用し、温度は80℃、流速は0.6ml/minにして行った。前記HPLC分析結果を図7aおよび7bに示す。本実施例の反応生成物は、酵素反応を4時間行って得られた酵素のアルロース転換率を得たものであり、FP3E候補群酵素に対してスクリーニング(screening)をするための実験で、アルロース生成の中間工程で反応を停止した反応液を分析した結果である。図7aおよび7bでClFP3Eのアルロース転換率は16%と確認され、実施例2で得られた最大転換率と比較して約50%水準に反応進行された。本実施例のClFP3Eの全体生成物のうち、アルロース生成比率は75重量%であり、アルロース生成比率は下記数式により計算される。
[数式2]
前記アルロース生成比率(重量%)=アルロース生成量/(果糖生成量+アルロース生成量)×100
【0074】
図7aおよび7bに示したように、実施例1のClFP3E酵素を除いた他の候補群酵素ではアルロースピークが確認されなかった。そこで、ClFP3E酵素以外に他の候補群酵素はF6Pに対する活性がなかったため、脱リン酸化酵素(phosphatase)を処理した時、反応工程の最初基質であるF6Pでリン酸(phosphate)が除去された形態である果糖のみが生成されたことを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
【国際調査報告】