(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】抗酸化性質を有する併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20221223BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20221223BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20221223BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20221223BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221223BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221223BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221223BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221223BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221223BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221223BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221223BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221223BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20221223BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221223BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221223BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20221223BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20221223BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221223BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221223BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20221223BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/426
A61P25/00
A61P3/00
A61P9/00
A61P27/12
A61P9/10
A61P17/00
A61P29/00
A61P1/04
A61P19/02
A61P11/00
A61P37/02
A61P1/16
A61P13/12
A61P31/00
A61P35/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/12
A61K9/20
A61K9/10
A61P39/06
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525406
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2020080205
(87)【国際公開番号】W WO2021083912
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・スタンコヴィック-ヴァレンティン
(72)【発明者】
【氏名】ペギー・パロシュ
(72)【発明者】
【氏名】コリンヌ・フカール
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ヴァルチャク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC31
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC82
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZC21
4C086ZC35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA30
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA06
4C206ZA16
4C206ZA33
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA45
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA70
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA96
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB31
4C206ZC21
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ニタゾキサニド(Nitazoxanide)、又はその類似体の新規使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)エラフィブラノール、エラフィブラノールの代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
Rは、O-R1基、又はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、若しくは以下の式(A)で表される部分:
【化2】
(式中、R’は、(C1-C6)アルキル基、(C2-C6)アルケニル基、(C2-C6)アルキニル基、(C3-C14)シクロアルキル基、(C3-C14)シクロアルキル(C1-C6)アルキル基、(C3-C14)シクロアルキル(C1-C6)アルケニル基、(C3-C14)シクロアルケニル基、(C3-C14)シクロアルケニル(C1-C6)アルキル基、(C3-C14)シクロアルケニル(C2-C6)アルケニル基、(C3-C14)シクロアルケニル(C2-C6)アルキニル基を表し、R’’及びR’’’は、独立して、水素原子、 (C1-C6)アルキル基、又は窒素保護基、若しくはその薬学的に許容される塩を表す)
からなる群から選択されるアミノ酸を表し、
R1は、水素原子、又は(C1-C6)アルキルカルボニル基を表し、及び
R2は、ハロゲン、又はNO2基を表す]
又はその薬学的な塩
を含み、酸化ストレスが関連する疾患の治療方法において使用するための組み合わせ物。
【請求項2】
疾患が、神経学的障害、例えば中枢神経系疾患、代謝条件、心血管疾患、白内障、アテローム性動脈硬化、虚血、例えば心筋虚血、虚血性脳障害、肺虚血再灌流傷害、強皮症、脳卒中、炎症、例えば炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、呼吸器疾患、自己免疫性疾患、肝疾患、腎疾患、皮膚症状、感染症及び癌からなる群において選択される、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、遅発性ジスキネジア、癲癇、中枢神経系の急性疾患、例えば脊椎損傷及び/又は脳損傷、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常、耐糖能障害、高血圧、動脈硬化、並びに糖尿病、例えば一型又は二型糖尿病、メタボリックシンドローム、ヒト免疫不全ウイルス誘導性の酸化ストレス、インフルエンザウイルス誘導性の酸化ストレス、HBV誘導性の酸化ストレス、C型肝炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、脳心筋炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、呼吸器合胞体ウイルス誘導性の酸化ストレス、デングウイルス誘導性の酸化ストレス、NAFLDに関連する酸化ストレス、肝線維症と合併したNAFLDに関連する酸化ストレス、NASHに関連する酸化ストレス、肝線維症と合併したNASHに関連する酸化ストレス、肝硬変と合併したNASHに関連する酸化ストレス、心筋虚血、虚血性脳障害、肺虚血再灌流傷害、強皮症、脳卒中、炎症性腸疾患、並びにリウマチ性関節炎からなる群において選択される、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
成分(i)が、エラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
成分(ii)が、ニタゾキサニド(NTZ)、チゾキサニド(TZ)、NTZの薬学的に許容される塩、及びTZの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
成分(i)が、エラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩であり、成分(ii)が、NTZ又はその薬学的に許容される塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記組み合わせ物が、成分(i)及び成分(ii)を含む薬学的組成物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記組み合わせ物が、成分(i)を含む第一薬学的組成物及び成分(ii)を含む第二薬学的組成物を含むキットである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
成分(i)及び成分(ii)が、経口投与のために処方される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項10】
成分(i)及び成分(ii)が、経口摂取のための丸薬、錠剤又は懸濁物の形態で処方される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化効果を提供する組み合わせ物に関する。
【背景技術】
【0002】
エラフィブラノール(Elafibranor)(ELA; 1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン)は、消化器病学及び肝臓病のいくつかの治療に用いられる有利な性質を持つ化合物である。それは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療の第III相の臨床試験及び原発性胆汁性胆管炎(PMS)の治療の第II相の臨床試験において現在評価されている。
【0003】
ニタゾキサニド(Nitazoxanide)(NTZ; [2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]エタノエート)は、寄生性原虫であるCrystosporidium parvum及びGiardia intestinalisにより引き起こされる下痢の治療を目的として、アメリカで認可されている医薬である。いくつかの研究は、NTZが抗ウイルス性及び抗腫瘍性を有することもまた示している。NTZは、本願出願人により抗線維化の特性を有することもまた最近示され(国際公開第17/178172号)、NASHに起因するステージ2又は3の線維症を持つ集団においてその安全性及び効能が現在評価されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、本明細書において、エラフィブラノール及びNYZの組み合わせが抗酸化性質を有することを示す。その抗酸化性質は、それぞれの化合物が単独で使用されることで得られる抗酸化性質と比較して高い。特にこの観察は、関連する酸化マーカー、例えば4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)により得られている。この発見は、新しい治療の機会を提供する。
【0006】
特に、NYZと組み合わせたエラフィブラノールは、酸化ストレスに対する防御機構の異なる段階に関与する広範囲の遺伝子を活性化することを、発明者は発見した。特に、エラフィブラノールと組み合わせたNTZは、酸化ストレスに対する防御の最前線に関与する遺伝子の発現を活性化するだけでなく、抗酸化機構のより下流の段階に関与する異なるグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子の発現もまた活性化することを、発明者は示した。実際にGSTは、還元型グルタチオン、例えば過酸化産物と、数多くの疎水性及び求電子性の化合物とのコンジュゲーションを触媒することにより、解毒において重要な役割を果たす酵素ファミリーである。それらの活性化は、酸化ストレスから細胞、組織、及び器官を防御するためにこのように有利に実行されることができる。
【0007】
更に発明者は、ELAと組み合わせた、NTZの活性代謝物であるチゾキサニド(Tizoxanide)(TZ)は、細胞の抗酸化防御において重要な役割を果たすNrf2-抗酸化経路を誘導することができることを示した。予測できなかったことに、TZ/ELAの組み合わせを用いたこのNrf2-ARE-媒介転写の誘導は、それぞれの薬剤単独で得られるものと比較して著しく高く、当該事項は、組み合わせ物により得られた有利な治療効果を反映している。
【0008】
本明細書においては、
(i)エラフィブラノール、エラフィブラノールの代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)以下で定義される式(I)の化合物、又はその薬学的な塩
を含む、組み合わせ物が記載されている。
【0009】
発明者によって示された通り、当該組み合わせ物は抗酸化剤として使用されることができる。
【0010】
本出願の文脈において、「成分(i)」は、「エラフィブラノール、エラフィブラノールの代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩」、又は以下に記載されるその特定の実施形態を参照する。
【0011】
本出願の文脈において、「成分(ii)」は、式(I)の化合物、又は以下に記載されるその特定の実施形態を参照する。
【0012】
式(I)はNTZ及びその誘導体を含む化合物のファミリーを定義する。特に、式(I)は、NTZの活性代謝物である、TZのプロドラッグのファミリーを定義する。
【0013】
特定の実施形態において、本発明の組み合わせ物は、その肝臓抗酸化性質のために使用される。
【0014】
更に特定の実施形態において、本発明の組み合わせ物は、酸化ストレスが関連する疾患の治療方法において使用される。酸化ストレスが関連する疾患は、多くの他の情報源の中でde Araujoら(de Araujo、 Martins et al. 2016)を参照することができる当業者に一般に知られている。
【0015】
例えば、本発明から利益を得ることのできる対象は、以下に制限するわけではなく、神経学的障害、例えば中枢神経系疾患、代謝条件、心血管疾患、白内障、アテローム性動脈硬化、虚血、例えば心筋虚血、虚血性脳障害、肺虚血再灌流傷害、強皮症及び脳卒中、炎症、例えば炎症性腸疾患、リュウマチ性関節炎、呼吸器疾患、自己免疫性疾患、腎疾患及び皮膚症状に罹患している対象を含む。
【0016】
「治療(treatment)」及び「治療すること(treating)」という用語は、それを必要としている対象における疾患の治癒的な又は予防的な治療を参照する。治療は、疾患の進行を予防、治癒、猶予、転換、又は減速するために、宣告された疾患を有する対象への本発明の化合物の投与、それによって対象の状態を向上させることを含む。本発明の化合物は健康である又は疾患が進行する恐れのある対象にもまた投与することができる。治療されるべき対象は、哺乳類、好ましくはヒトである。本発明により治療される対象は、その治療が求められる特定の疾患に関連するいくつかの基準(例えば過去の薬物治療、関連する病理学、遺伝子型、リスク因子への暴露、ウイルス感染)に基づき、及び、病気に関連するバイオマーカーの検出に基づいて、選択されることができる。
【0017】
加えて、本発明は、疾患、特には、神経学的障害、例えば中枢神経系疾患、代謝条件、心血管疾患、白内障、アテローム性動脈硬化、虚血、例えば心筋虚血、虚血性脳障害、肺虚血再灌流傷害、強皮症及び脳卒中、炎症、例えば炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、呼吸器疾患、自己免疫性疾患、肝疾患、腎疾患、皮膚症状、感染症及び癌からなる群において選択される疾患に関連する酸化ストレスを処置する方法において使用するための、本明細書に記載される組み合わせ物に関する。
【0018】
神経学的障害は、以下に制限するわけではなく、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、遅発性ジスキネジア、癲癇及び中枢神経系の急性疾患、例えば脊椎損傷及び/又は脳損傷を含む。
【0019】
代謝条件は、以下に制限するわけではなく、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常、対糖能障害、高血圧、動脈硬化及び糖尿病、例えば一型、又は二型糖尿病を含む。代謝条件はメタボリックシンドロームもまた含む。
【0020】
特定の実施形態において、本明細書に記載される組み合わせ物は、感染誘導性の酸化ストレス、例えばウイルス誘導性の酸化ストレス、特にヒト免疫不全ウイルス誘導性の酸化ストレス、インフルエンザウイルス誘導性の酸化ストレス、B型肝炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、C型肝炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、脳心筋炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、呼吸器合胞体ウイルス誘導性の酸化ストレス、及びデングウイルス誘導性の酸化ストレスの治療方法において使用される。
【0021】
本発明は、更に、肝疾患に関連する酸化ストレスの治療方法において使用するための、記載される組み合わせ物に関する。特に、治療される対象は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、肝線維症と合併したNAFLD、NASH、肝線維症と合併したNASH、又はNASHに関連する肝硬変を患っていてもよい。本発明は、従って、NAFLDに関連する酸化ストレス、肝線維症と合併したNAFLDに関連する酸化ストレス、NASHに関連する酸化ストレス、肝線維症と合併したNASHに関連する酸化ストレス、又はNASHに関連する肝硬変に関連する酸化ストレスの治療方法において使用するための、本明細書で定義される組み合わせ物に関する。
【0022】
加えて、本発明は酸化ストレスの治療方法であって、治療的に効果的な量の
(i)エラフィブラノール、エラフィブラノールの代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩
をその必要とする対象へ投与することを含む、方法に関する。
【0023】
更に、本発明は酸化ストレスが関与する疾患の治療方法であって、治療的に効果的な量の
(i)エラフィブラノール、エラフィブラノールの代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩
をその必要とする対象へ投与することを含む、方法に関する。
【0024】
本発明は、更に疾患に関連する酸化ストレスの治療方法であって、治療的に効果的な量の
(i)エラフィブラノール、エラフィブラノールの代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩
をその必要とする対象へ投与することを含む、方法に関する。
【0025】
特定の実施形態において、以上で定義したように、酸化ストレスは、神経学的障害、例えば中枢神経系疾患、代謝条件、心血管疾患、白内障、アテローム性動脈硬化、虚血、例えば心筋虚血、虚血性脳障害、肺虚血再灌流傷害、強皮症及び脳卒中、炎症、例えば炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、呼吸器疾患、自己免疫性疾患、肝疾患、腎疾患、皮膚症状、感染症、及び癌からなる群において選択される、疾患に関連する。
【0026】
加えて、本発明は、感染誘導性の酸化ストレス、例えばウイルス誘導性の酸化ストレス、特にヒト免疫不全ウイルス誘導性の酸化ストレス、インフルエンザウイルス誘導性の酸化ストレス、B型肝炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、C型肝炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、脳心筋炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、呼吸器合胞体ウイルス誘導性の酸化ストレス、及びデングウイルス誘導性の酸化ストレスの治療方法に関し、当該方法は、治療的に効果的な量の
(i)エラフィブラノール、エラフィブラノールの代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩
をその必要とする対象へ投与することを含む。
【0027】
本発明は、更に肝疾患に関連する酸化ストレスの治療方法であって、治療的に効果的な量の
(i)エラフィブラノール、エラフィブラノールの代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩
をその必要とする対象へ投与することを含む、方法に関する。
【0028】
特定の実施形態において、治療される酸化ストレスはNAFLD、肝線維症と合併したNAFLD、NASH、肝線維症と合併したNASH、又はNASHに関連した肝硬変に関連する。
【0029】
本発明によると、式(I)の化合物は、以下のように定義される。
【0030】
【0031】
[式中、
Rは、O-R1基、又はアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、若しくは以下の式(A)で表される部分からなる群から選択されるアミノ酸を表し、
【0032】
【0033】
(式中、R’は、(C1-C6)アルキル基、(C2-C6)アルケニル基、(C2-C6)アルキニル基、(C3-C14)シクロアルキル基、(C3-C14)シクロアルキル(C1-C6)アルキル基、(C3-C14)シクロアルキル(C1-C6)アルケニル基、(C3-C14)シクロアルケニル基、(C3-C14)シクロアルケニル(C1-C6)アルキル基、(C3-C14)シクロアルケニル(C2-C6)アルケニル基、(C3-C14)シクロアルケニル(C2-C6)アルキニル基を表し、R’’及びR’’’は、独立して、水素原子、 (C1-C6)アルキル基、又は窒素保護基、若しくはその薬学的に許容される塩を表す)
R1は、水素原子、又は(C1-C6)アルキルカルボニル基を表し、及び
R2は、ハロゲン、好ましくは塩素原子、又はNO2基を表す]
【0034】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、以下から選択される。
-NTZ、又はその薬学的に許容される塩
【0035】
【0036】
-TZ、又はその薬学的に許容される塩
【0037】
【0038】
-チゾキサニドグルクロニド(tizoxanide glucuronide)(TZG)、又はその薬学的に許容される塩
【0039】
【0040】
-2-[(5-クロロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]エタノエート(RM5038)、又はその薬学的に許容される塩
【0041】
【0042】
-N-(5-クロロチアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシベンズアミド(RM4848)、又はその薬学的に許容される塩
【0043】
【0044】
- RM4848-グルクロニド、又はその薬学的に許容される塩
【0045】
【0046】
-[2-[(5-ニトロチアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]-2-アミノ-3,3-ジメチルブタノアート、特に式(I-g)で表される(S)-[2-[(5-ニトロチアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]-2-アミノ-3,3-ジメチルブタノアート、又はその薬学的に許容される塩、例えば式(I-h)で表されるその塩酸塩(RM5061)
【0047】
【0048】
【0049】
-[2-[(5-ニトロチアゾール-2-イル)カルバモイル] フェニル]-2-アミノ-3-メチルペンタノアート、特に式(I-i)で表される(2S,3S)-[2-[(5-ニトロチアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]-2-アミノ-3-メチルペンタノアート、又はその薬学的に許容される塩、例えば以下の式の塩酸塩(RM5066)
【0050】
【0051】
-[2-[(5-クロロチアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]-2-アミノ-3,3-ジメチルブタノアート、特に式(I-j)で表される(S)-[2-[(5-クロロチアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]-2-アミノ-3,3-ジメチルブタノアート、又はその薬学的に許容される塩、例えば式(I-k)で表されるその塩酸塩(RM5064)
【0052】
【0053】
【0054】
-[2-[(5-クロロチアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]-2-アミノ-3-メチルペンタノアート、特に式(I-l)で表される(2S,3S)-[2-[(5-クロロチアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]-2-アミノ-3-メチルペンタノアート、又はその薬学的に許容される塩、例えば式(I-m)で表されるその塩酸塩(RM5065)
【0055】
【0056】
【0057】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、NTZ、TZ、NTZの薬学的に許容される塩、及びTZの薬学的に許容される塩から選択される。
【0058】
更に特定の実施形態において、式(I)の化合物は、NTZ及びTZから選択される。
【0059】
その上、更に特定の実施形態において、式(I)の化合物は、NTZ、又はその薬学的に許容される塩である。ある実施形態において、式(I)の化合物は、NTZである。
【0060】
エラフィブラノールは、以下の式(II)を有する。
【0061】
【0062】
本発明の特定の実施形態において、エラフィブラノールの代謝物、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩が使用される。より特には、エラフィブラノールの代謝物は、2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチルプロパン酸である。
【0063】
更なる特定の実施形態において、エラフィブラノール、又はその薬学的に許容される塩が使用される。より特定の実施形態において、エラフィブラノールが使用される。
【0064】
特定の実施形態において、本発明は、肝疾患に関連する酸化ストレスの治療に用いるための、以上に定義した組み合わせ物、又は対応する治療方法に関する。
【0065】
より特定の実施形態において、本発明は、肝線維症に関連する酸化ストレスの治療であって、治療的に効果的な量の
(i)エラフィブラノール、その代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)NTZ、TZ、NTZの薬学的に許容される塩、又はTZの薬学的に許容される塩
を投与することを含む、治療に関する。
【0066】
更に特定の実施形態において、本発明は、NASHに関連する酸化ストレスの治療であって、治療的に効果的な量の
(i)エラフィブラノール、その代謝物、エラフィブラノールの薬学的に許容される塩、又はエラフィブラノールの代謝物の薬学的に許容される塩、及び
(ii)NTZ、TZ、NTZの薬学的に許容される塩、又はTZの薬学的に許容される塩
を投与することを含む、治療に関する。
【0067】
NTZ、又は類似体の合成は、例えば、Rossignolら(Rossignol and Cavier 1975)により説明されるように、又は当業者により知られる任意の他の合成方法により実行されることができる。
【0068】
エラフィブラノールの合成は、例えば、国際公開第04/005233号における化合物29について説明されるように実行されることができる。
【0069】
本明細書に記載される化合物は、一つ又は複数の薬学的組成物に含まれることができ、それは、更に薬学的に許容されるキャリアを含むことができる。薬学的組成物は、薬学的な文脈において許容される、一つ又は複数の賦形剤、又はビヒクルを含むこともまたできる(例えば、薬学的な用途と適合し、及び当業者によく知られている、生理食塩水、生理溶液、等張液等)。薬学的組成物は、分散剤、溶解剤、安定剤、防腐剤等から選択される、一つ又は複数の作用剤、又はビヒクルを含むこともまたできる。液体の、注射用の、及び/又は固体の薬学的組成物に有用な、例示的な作用剤、又はビヒクルは、以下に制限するわけではなく、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、乳糖、植物油、アカシア、及びリポソームを含む。薬学的組成物は、経腸の、又は非経口の投与用とすることができる。例えば、本明細書に記載される化合物は、経口の、血管内の(例えば、静脈内の、又は動脈内の)、筋肉内の、腹腔内の、皮下の、経皮の、又は経鼻の投与のために処方されることができる。組成物は、固体、又は液体の剤形とすることができる。実例となる処方は、以下に制限するわけではなく、注射用の懸濁液、経口摂取用の懸濁液、ゲル、油、軟膏、丸薬、錠剤、坐薬、粉末、ジェルキャップ、カプセル、エアロゾル、軟膏、クリーム、膏薬、又はガレヌス製剤の手段、又は持続放出、及び/若しくは徐放放出を確実にする装置を含む。この種類の処方のために、作用剤、例えば、セルロース、カーボネート、又はでんぷんは、有利には、利用されることができる。
【0070】
前記のように、本明細書に記載される一つ又はそれ以上の化合物は、薬学的に許容される塩、特に薬学的な用途と適合する酸、又は塩基の塩として処方されることができる。塩は、薬学的に許容される酸付加塩、薬学的に許容される塩基付加塩、薬学的に許容される金属塩、アンモニウム、及びアルキル化されたアンモニウム塩を含むことができる。これらの塩は、化合物の最終の精製段階に、又は前もって精製された化合物に塩を合体させることにより、得られる可能性がある。
【0071】
特定の実施形態において、本発明の組み合わせ物は、前記組み合わせ物の、成分(i)及び成分(ii)の両方を含む薬学的組成物の形態にある。当該薬学的組成物は、一つ又はそれ以上の許容される賦形剤を更に含むことができる。特定の実施形態において、本発明の組み合わせ物は、薬学的組成物であって、
(i)エラフィブラノール、及び
(ii)NTZ、又はTZ、特にNTZ
を含む、薬学的組成物である。
【0072】
更にある特定の実施形態において、本発明の組み合わせ物は、NTZ、TZ、及びエラフィブラノールを含む薬学的組成物である。
【0073】
ある実施形態において、本発明の組み合わせ物は、連続した、独立した、又は同時の利用のために、前記成分(i)及び成分(ii)を含むパーツキット(kit of parts)である。この実施形態において、それぞれの化合物は、異なる薬学的組成物において処方されることができる。
【0074】
投与に関連する頻度、及び/又は用量は、当業者によって、治療される対象、病理学、治療される疾患、疾患の段階、投与の形態等に応じて、改変することができる。典型的には、組み合わせ物の成分(ii)、特にNTZ又はその薬学的に許容される塩は、0.01 mg/日から4000 mg/日の間、例えば50 mg/日から2000 mg/日まで、及び特に100 mg/日から1000 mg/日まで、より特定すると500 mg/日から1000 mg/日まで、に含まれる用量で投与されることができる。
【0075】
組み合わせ物の成分(i)、特にエラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩は、0.01 mg/日から4000 mg/日まで、例えば1 mg/日から2000 mg/日まで、特に25から1000 mg/日まで、より特定すると、50から200 mg/日まで、及び更により特定すると、80 mg/日から120 mg/日まで、に含まれる用量で投与されることができる。特定の実施形態において、成分(i)及び成分(ii)は、例えば丸薬、又は錠剤の形態で、これらの用量で経口的に投与されることができる。更に特定の実施形態において、成分(i)及び成分(ii)は、同じ組成物、例えば経口の組成物(例えば、丸薬又は錠剤)中に存在し、これらの用量で投与される。ある実施形態において、成分(i)及び成分(ii)は異なる組成物、例えば異なる経口の組成物(例えば、異なる丸薬、異なる錠剤、又は丸薬及び錠剤)中に存在し、上記の用量で投与される。ある実施形態において、成分(i)及び成分(ii)は異なる組成物中に存在し、成分(i)は経口摂取用の液体懸濁物の形態であり、成分(ii)は錠剤の形態である。
【0076】
投与は、もし必要性があれば、毎日又は一日に数回までも行うことができる。治療の存続は、治療される特定の疾患に依存するであろう。例えば、投与は一日間又は数日間、例えば少なくとも一日間、少なくとも二日間、少なくとも三日間、少なくとも四日間、少なくとも五日間、少なくとも六日間、又は少なくとも七日間、行うことができる。あるいは投与は少なくとも一週間、少なくとも二週間、少なくとも四週間、行うことができる。慢性的な疾患については、投与は四週間以上、例えば少なくとも一ヶ月間、二ヶ月間、三ヶ月間、四ヶ月間、五ヶ月間、六ヶ月間、又は六ヶ月間以上、例えば少なくとも一年間又は数年間、検討されることができる。いくつかの場合において、本発明の組み合わせ物は、対象の存続期間に渡って投与されることができる。
【0077】
ある好まれる実施形態において、成分(ii)、好ましくはNTZ又はその薬学的に許容される塩は、経口摂取を目的として丸薬又は錠剤の形態で投与される。ある特定の実施形態において、成分(ii)、好ましくはNTZ又はその薬学的に許容される塩は、経口摂取のために懸濁物の形態で投与される。
【0078】
ある好まれる実施形態において、成分(i)、好ましくはエラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩は、経口摂取を目的として丸薬又は錠剤の形態で投与される。ある特定の実施形態において、成分(i)、好ましくはエラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩は、経口摂取のために懸濁物の形態で投与される。
【0079】
更なる態様では、本発明は、疾患の治療方法に関し、NTZ又はその薬学的な塩(NTZは500 mg/日から1000 mg/日の間に含まれる用量で投与される)、及びエラフィブラノール又はその薬学的な塩(エラフィブラノールは80 mg/日から120 mg/日の間に含まれる用量で投与される)の組成物の投与を含み、疾患はアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、遅発性ジスキネジア、癲癇、中枢神経系の急性疾患、例えば脊椎損傷及び/又は脳損傷、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常、耐糖能障害、高血圧、動脈硬化、並びに糖尿病、例えば一型又は二型糖尿病、メタボリックシンドローム、ヒト免疫不全ウイルス誘導性の酸化ストレス、インフルエンザウイルス誘導性の酸化ストレス、HBV誘導性の酸化ストレス、C型肝炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、脳心筋炎ウイルス誘導性の酸化ストレス、呼吸器合胞体ウイルス誘導性の酸化ストレス、デングウイルス誘導性の酸化ストレス、NAFLDに関連する酸化ストレス、肝線維症と合併したNAFLDに関連する酸化ストレス、NASHに関連する酸化ストレス、肝線維症と合併したNASHに関連する酸化ストレス、肝硬変と合併したNASHに関連する酸化ストレス、心筋虚血、虚血性脳障害、肺虚血再灌流傷害、強皮症、脳卒中、炎症性腸疾患、並びにリウマチ性関節炎からなる群において選択される、方法に関する。
【0080】
本発明を、以下に記載の非限定的な実施例を参照して、更に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】
図1は、コントロール(CSAA)食、CDAA + 1% CHOL (CDAA/c)食、又はNTZ 100 mg/kg/日のみ、ELA 1 mg/kg/日のみ、若しくは組み合わせたNTZ 100 mg/kg/日 /ELA 1 mg/kg/日を添加したCDAA/c食を12週間与えた6週齢のC57BL/6マウスから得られた肝臓サンプルについて、免疫化学により定量された4-HNEのレベルを示すグラフである。
【
図2】
図2は、
図1の凡例に記載された各マウス集団の4-HNE染色の代表的な画像を示す(倍率 x300)。
【
図3】
図3は、TZ、ELA、又はその組み合わせにより誘導されたNrf2-ARE関連転写活性を示す。DL-スルフォラファン(DL-Sulforaphane)(DLS)は誘導のポジティブコントロールとして使用された。データは平均値として表される(###: p<0.001, ***: p<0.001)。
【実施例】
【0082】
[線維化NASHの慢性CDAA+1%コレステロールモデルにおけるエラフィブラノール、ニタゾキサニド及びエラフィブラノール+ニタゾキサニドの組み合わせの評価(12週間)]
材料及び方法
[実験デザイン]
NASH発病における酸化ストレスの主要な役割を考慮して、我々は、CDAA/c食誘導性のNASHモデルにおける、酸化還元恒常性調節不全を防ぐNTZの能力を評価した。
コリン欠乏、及びL-アミノ酸置換(CDAA: choline-deficient and L-amino acid-defined)食は、肝臓のβ酸化及び超低密度リポタンパク質産生に非常に重要であるコリンを欠乏し、肝細胞脂肪症を誘導すると考えられる。その後、脂質過酸化反応と酸化ストレスが小葉の炎症をもたらし、包括的に線維症をもたらす。
【0083】
現在の研究において、NTZ 100 mg/kg/日、ELA 1 mg/kg/日、及び両方の組み合わせの予防効果は、マウスのモデルにおいて評価された。6週齢のオスのC57Bl/6Jマウスは、コントロール(CSAA)食(n=8)、CDAA + 1%コレステロール食(n=12)、又はNTZ 100 mg/kg/日 (n=8)、ELA 1 mg/kg/日(n=8)、若しくは組み合わされた薬剤(ELA 1 mg/kg/日と共に投与されたNTZ 100 mg/kg/日(n=8))が添加されたCDAA + 1%コレステロール食を12週間与えられた。食事はSsniff(登録商標) company (Soest, Germany)から購入された。ニタゾキサニド(Interchim, Ref #RQ550)、エラフィブラノール(Genfit)、又は両方の化合物は、Ssniff(登録商標)により必要用量で粉末の形態でCDAA + 1% chol 食へと組み合わされた。
体重と食事摂取を、一週間に2回モニターした。処置の最終日に、マウスは6時間の絶食期間の後に屠殺した。肝臓はトランスクリプトーム、及び組織学的研究のために素早く切除された。
【0084】
全ての動物実験は、標準的なプロトコールに従って、並びに実験動物の適切な処置及び使用のための標準的な勧告に従って行われた。
【0085】
[トランスクリプトームの研究]
[RNA抽出]
肝臓の全RNAは、製造業者の指示に従ってNucleospin(登録商標) 96 Kit (Macherey Nagel)を使用して単離された。150 ngの全RNAを、RT buffer 1x (Invitrogen cat#P/NY02321)、1 mM DTT (Invitrogen cat#P/NY00147)、0.5 mM dNTPs (Promega)、200 ng pdN6 (Roche cat#11034731001)、及び40 U of Ribonuclease inhibitor (Promega cat#N2515)の存在下で、M-MLV-RT (Moloney Murine Leukemia Virus Reverse Transcriptase) (Invitrogen cat# 28025)を用いてcDNAへと逆転写させた。
【0086】
[RNAシーケンシング]
ナノドロップ(nanodrop)によりRNAサンプル濃度の測定をする際に、品質がバイオアナライザ(bioanalyser)を用いて評価された。ライブラリはIllumina TruSeq stranded mRNA LT kitを使用して準備され、mRNAは、High Output flow cellを用いてNextSeq 500 device (paired-end sequence, 2x75 bp)を使用してシーケンスされた。
【0087】
[RNA-seqデータ解析]
結果は、以下のパラメーター(SLIDINGWINDOW:5:20 LEADING:30 TRAILING:30 MINLEN:60)でTrimmomatic v.0.36を使用して整えられた。続いて結果は、既定のパラメーターでアライナとしてhisat2 v.2.1.0を使用して、rnacocktailを使用してゲノムリファレンス(genome reference)(Mus musculus GRCm38.90)上に並べられた。
カウントテーブル(a count table)は、既定のパラメーターでfeatureCounts v1.5.3を使用して作られた。
差次的に発現した遺伝子(DE genes)を同定するために、我々はR (version 3.4.3)とDESEq2 library (v. 1.18.1)を使用した。遺伝子のアノテーションは、AnnotationDbi library (v. 1.40.0)を使用して取得された。簡潔には、FeatureCountsにより作られたカウントマトリックス(the count matrix)は、DESeqDataSetFromMatrix()関数に続き、DESeq2 library由来のDEseq()関数により解析された。各状態(すなわちNTZ+CDAA/c 対 CDAA/cの比較)のために、倍率変化(the fold change)及びpバリュー(p-value)がDESeq2由来のresults()関数を使用して取得された。差次的な表(the different tables)はキーとしてthe Ensembl IDを使用してマージ(marge)された。
【0088】
[組織学]
屠殺において、肝臓サンプルは組織学的解析のために加工され、以下の通り調べられた。
【0089】
[細胞埋め込み(embedding)と区分(sectioning)]
肝臓の断片は、まずホルマリン4%溶液において40時間固定され、続いてエタノール(70、80、95及び100%エタノールの連続槽)におけるいくつかの脱水段階が続いた。肝臓の断片は、続いて3つのキシレンの槽で培養され、続いて液体のパラフィン(58℃)内の2つの槽で培養された。肝臓の断片は、続いて、組織を完全に覆うためにHistowax(登録商標)で緩やかに満たされた小型ラック内に置かれた。それから、組織サンプルは3 μm断片の厚さにされた。断片は、免疫組織化学(IHC)のために準備された。
【0090】
[免疫組織化学アッセイ: 4-HNE(4-Hydroxynonenal)]
免疫組織化学アッセイは免疫ペルオキシダーゼプロトコールを使用して行われた。断片は、58℃で脱ろうされ、キシレン槽(2×3分)中に入れられた。標本は、エタノール(100%、100%、95%、及び70%の連続槽) (各3分間)で水和され、並びに1x PBS(2×5分)中に入れられた。続いて、内因性ペルオキシダーゼがH2O2溶液(0.3% H2O2、蒸留水内)中で30分間ブロックされ、続いて1x PBS中で5分間の3回の洗浄を行った。更に、熱媒介抗原回復が、95°C、40分間、pH6.0、クエン酸緩衝液で行われた。非特異的結合を防ぐために、3%ヤギ正常血清及び0.1% Tritonを含む1x PBS溶液が60分間加えられた。続いて、組織は、4℃、一晩、一次4-HNE抗体で培養され、1x PBS(3×5分)でリンスされた。組織は室温、1時間、HRP二次抗体で培養され、及びそれから1x PBSでリンスされた(3×5分)。断片はそれからペルオキシダーゼ基質3,3′-ジアミノベンジジン(3,3′-diaminobenzidine)(DAB)に15分間曝され、そして水道水でリンスされた。最後に、3分間マイヤーヘマトキシリン溶液で対比染色され、水道水でリンスされ(2分間)、組織はエタノール及びキシレンで脱水された。
【0091】
[4-HNE IHC解析]
組織学の試験と採点が盲目的に行われた。画像は、Pannoramic 250 Flash II digital slide scanner (3DHistech)を使用して得られた。スコア:それぞれの区画から無作為に選択された7つのフィールドが調査され、QuantCenterソフトウェアで解析された。4-HNEの蓄積は、4-HNEポジティブ区域/全選択フィールド区域として計算された。
【0092】
[AREレポーター-HepG2細胞系列]
AREレポーター-Hep G2細胞系列は、Nrf2抗酸化反応経路をモニターするために設計された。細胞は、Hep G2細胞に安定的に組み込まれたARE(抗酸化反応要素)の制御下のホタルルシフェラーゼ遺伝子を含む。
AREレポーター-HepG2細胞(BPS Bioscience, Inc., San Diego, cat# 60513)は、製造業者の指示に従い培養された。解凍後に(BPS thaw medium 1K, cat# 60187)、細胞は成長培地(BPS growth medium 1K, cat# 79533)で培養され、続いてアッセイ培地(BPS thaw medium)45 μLにおいて96穴マイクロプレートで1ウェル当たり40000細胞の密度でプレートに塗布された。TZ、ELA及びDL-スルフォラファン(DL-Sulforaphane) (Sigma cat#S4441)がDMSOに溶解され、アッセイ培地で希釈された。希釈液5 μlが終濃度1 μM TZ、及び3 μM ELAになるように細胞に添加された。DL-スルフォラファンが3 μMの用量でポジティブコントロールとして使用された。18時間の曝露の後、ルシフェラーゼ活性が決定された。1ウェル当たり50 μLのOne-Step Luciferase assay system (BPS cat# 60690)が添加され、その後室温で約15分固定され、発光はルミノメーターを使用して測定された。
DMSOに対する2を超えるフォールドインダクション(fold induction)、及びp-value< 0.05が、有意であると考えられた。
【0093】
[統計解析]
統計解析は、以下のPrism Version 7を使用して行われた。
【0094】
In vivo 研究
CSAA 対 CDAA/c 個体群がStudent t検定(#: p<0.05; ##: p<0.01; ###: p<0.001)、又はMann-Whitney検定($: p<0.05; $$: p<0.01; $$$: p<0.001)により比較された。
NTZ、ELA、又はELA/NTZが処置された個体群は、One-way ANOVA及びuncorrected Fisher’s LSD事後検定 (* p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001)、又はKruskal-Wallis検定及びuncorrected Dunn’s 事後検定( § p<0.05, §§p<0.01, §§§p<0.001)を使用してCDAA/c + 1 % chol 食と比較された。
【0095】
In vitro 研究
AREレポーターアッセイ:
DMSO及びDL-スルフォラファン(DLS)個体群がStudent t検定 (#: p<0.05; ##: p<0.01; ###: p<0.001)により比較された。処置された個体群を、One-way ANOVAとuncorrected Fisher’s LSD事後検定(* p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001)を用いて、DMSO個体群とだけでなく、これら群間でも比較した。
【0096】
結果
6週齢のC57BL/6マウスは、コントロール(CSAA)食、CDAA + 1% CHOL (CDAA/c)食、又はNTZ 100 mg/kg/日のみ、ELA 1 mg/kg/日のみ、若しくは組み合わされたNTZ 100 mg/kg/日 /ELA 1 mg/kg/日が添加されたCDAA/c食を12週間与えられた。
屠殺の後、SOD1;SOD2、GPX、CAT、GSTA1、GTA2、GSTA4の転写物の肝臓レベルは、RNAseqにより解析され、カウントレベルが決定され、データがCDAA/c値に対して正規化された。結果は、ELA及びNTZがそれぞれ肝臓の抗酸化遺伝子の異なるサブセットを誘導し、驚くべきことに両方の薬剤が組み合わされた際に補足的な特徴をもたらしたことを示す。
【0097】
不飽和脂肪酸の過酸化アルデヒド産物である4-HNEは、酸化ストレスの関連指標であると考えられる(Takeuchi-Yorimoto, Noto et al. 2013)。我々の結果は、
図1及び
図2に示したように、CSAA個体群と比較してCDAA/c個体群において肝臓内の4-HNEレベルの上昇が観察されることを示している。驚くべきことに、ELA/NTZの組み合わせにさらされた個体群における4-HNEのレベルは、CDAA/c個体群と比較して予期しない程度(-79%)まで減少した。更に、組み合わせのこの治癒的効果は、単独で投与されたそれぞれの薬剤で得られる効果よりも高く、このことは、NTZ及びELAの組み合わせの予期せぬ抗酸化ストレス効果を示している。
【0098】
この組み合わせの抗酸化ストレス効果を更に調べるために、肝臓サンプルについてトランスクリプトーム解析が行われた。
【0099】
ELA (1 mg/kg/日)は、最前線防御抗酸化物として考えられる抗酸化遺伝子のサブセット(SOD、Cat、GPX1)の発現を著しく誘導し、一方で、NTZ (100 mg/kg/日)は抗酸化シグナリング経路の下流の段階である、過酸化物の解毒に関連するGST酵素の発現を著しく誘導した。興味深いことに、結果は、ELA/NTZの組み合わせが酸化ストレスに対する防御の異なる段階に関連する遺伝子のいくつかのサブセットの発現を著しく誘導したことを示し、このことは、ELA及びNTZが共投与される時に、ELA又はNTZ単独で得られる結果と比較して、より完全な抗酸化防御機構がもたらされることを示唆している。
【0100】
Nrf2は細胞内の酸化還元恒常性の転写主要制御因子である(Hayes and Dinkova-Kostova 2014)ので、我々はヒト肝細胞におけるNrf2-ARE媒介転写に対する、TZ(NTZの活性代謝物)、ELA及びその組み合わせの影響を評価した(
図3)。予測できなかったことに、ELAではなくTZは、無処理条件と比較してNrf2抗酸化経路の著しい活性化を誘導し、この誘導は、それぞれの薬剤単独と比較して、組み合わせを用いた場合に著しくより高く、このことは、組み合わせを用いれば、より高い有益な効果が得られることを実証している。
【0101】
全体的に見て、これらのデータは、ELA/NTZ又はELA/TZが共に組み合わせられる際に、酸化ストレスに対するより強く完全な治癒的反応がもたらされることを示している。
【0102】
【国際調査報告】