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特表2023-500288自己治癒性ポリウレタン重合体を含む温度変化感知型基材
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  • 特表-自己治癒性ポリウレタン重合体を含む温度変化感知型基材 図1
  • 特表-自己治癒性ポリウレタン重合体を含む温度変化感知型基材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】自己治癒性ポリウレタン重合体を含む温度変化感知型基材
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/26 20060101AFI20221223BHJP
   D01F 6/70 20060101ALI20221223BHJP
   C08G 18/87 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
G01K7/26
D01F6/70
C08G18/87
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525425
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2020015772
(87)【国際公開番号】W WO2021096215
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0143606
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0149363
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514266091
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】パク ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】オ ドンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】チェ セジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンミ
【テーマコード(参考)】
4J034
4L035
【Fターム(参考)】
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC12
4J034CD08
4J034DB04
4J034DF02
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA14
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034LA05
4J034QC08
4J034RA06
4L035DD13
(57)【要約】
本発明は、自己治癒性ポリウレタン重合体を含む温度変化感知型基材に関する。より具体的に、自己治癒性ポリウレタン重合体マトリックス、および前記マトリックスに分散した複数の気孔を有する温度変化感知型基材に関する。
本発明に係る温度変化感知型基材は、冷蔵または冷凍専用の食品および医療用品の腐敗防止のための温度変化感知センサとして応用することができる。例えば、-60℃、-50℃、-30℃、-20℃、-10℃などで保管する際に不透明であった基材が、0℃、10℃、20℃、30℃などに温度が上がる場合に透明に変わることにより、光透過率の変化により保管状態を確認できる温度変化感知センサを提供可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己治癒性ポリウレタン重合体マトリックス、および前記マトリックスに分散した気孔を有する温度変化感知型基材であって、
温度の変化により前記マトリックスを形成する自己治癒性ポリウレタン重合体が拡散して前記気孔の大きさが変わることで、光透過率の変化が発生して温度の変化が感知される、光透過率による温度変化感知型基材。
【請求項2】
前記気孔は、貫通孔および凹凸から選択される、請求項1に記載の温度変化感知型基材。
【請求項3】
前記温度変化感知型基材は、温度が上昇するにつれて、前記気孔の大きさが減少するか消滅することで光透過率の変化が発生する、請求項1に記載の温度変化感知型基材。
【請求項4】
前記温度変化感知型基材は、前記自己治癒性ポリウレタン重合体が自己融着し始めるオンセットポイント温度を有し、
前記オンセットポイント温度で不可逆的に自己融着して透明性が増加する、請求項1に記載の温度変化感知型基材。
【請求項5】
前記温度変化感知型基材は、-20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率をTTとし、20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率をTTとする際に、|TT-TT|≧5%である、請求項4に記載の温度変化感知型基材。
【請求項6】
前記温度変化感知型基材は、20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率が15%以上である、請求項5に記載の温度変化感知型基材。
【請求項7】
前記温度変化感知型基材は、
a)自己治癒性ポリウレタン重合体からなる微細繊維が網状構造を形成し、前記網状構造の間に貫通孔が形成されているウェブフィルムである、または
b)自己治癒性ポリウレタン重合体からなるシートまたはフィルムであり、複数の貫通孔または凹凸を有する、請求項1に記載の温度変化感知型基材。
【請求項8】
前記微細繊維は、平均直径が0.01μm~200μmである、請求項7に記載の温度変化感知型基材。
【請求項9】
前記微細繊維は、電界紡糸、溶液紡糸または溶融紡糸して製造される、請求項7に記載の温度変化感知型基材。
【請求項10】
前記貫通孔の大きさは、0.01μm~200μmである、請求項7に記載の温度変化感知型基材。
【請求項11】
前記自己治癒性ポリウレタン重合体は、ジスルフィド構造を含む、請求項1に記載の温度変化感知型基材。
【請求項12】
前記温度変化感知型基材の厚さは、1μm~500μmである、請求項1に記載の温度変化感知型基材。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の温度変化感知型基材を含む温度センサ。
【請求項14】
請求項13に記載の温度センサを含む包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己治癒性(self-healing)ポリウレタン重合体を含む温度変化感知型基材に関する。より具体的に、自己治癒性ポリウレタン重合体マトリックス、および前記マトリックスに分散した気孔を有する温度変化感知型基材に関する。
【背景技術】
【0002】
腐敗しやすい食品または変形(変質)可能性のある医薬品は、生産から消費者に伝達されるまで、規格に合った冷凍または冷蔵保管に対する確実な保証が必要である。
【0003】
一般的に、食品または医薬品が腐敗しやすい温度範囲は10℃~60℃であり、この温度範囲では腐敗微生物(大腸菌、サルモネラ、ノロウイルスなど)の成長を刺激する。完全に腐敗した食べ物は、触覚、視覚、嗅覚および風味を含む全ての感覚の変化により容易に識別することができるが、腐敗進行中の食べ物は、各個人が直観的に感知し難いため危険である。
【0004】
したがって、消費者が食品または医薬品の供給過程で発生する腐敗または変形の有無を容易に認知できるTTI(Time Temperature Indicator)が開発されている。
【0005】
このような技術には代表的に2つの類型がある。
第1に、拡散型(Diffusion-based)TTIがあり、温度により相変化が起こる染料(温度感知部分)が多孔性物質を通過する間の温度および時間を測定する原理で作動する。しかし、拡散型TTIは、温度感度が低く、温度感知部分とディスプレイ部分とを合わせてモジュール化することで、体積が大きくなり、構造的な制限を有する。これにより、多少複雑な製造工程によって生産費用が高くなる。また、外部衝撃に脆弱であり、柔軟性もまた低いという短所がある。
【0006】
第2に、化学反応型(Chemical Reaction-Activation)TTIがあり、特定の温度以上で酵素や触媒、化学反応などにより色が変わる現象を用いた原理で作動する。しかし、化学反応型TTIは、温度の変化だけでなく、湿度や食べ物により影響を受ける可能性があり、単分子系化合物が用いられるため消費者の拒否感を誘発し得るという短所がある。
【0007】
したがって、上述した従来のTTIの短所を補完できる画期的なTTI候補物質に対する需要が高く、自ら(self-responsive)温度の変化を感知することができ、不可逆的(irreversible)に視覚的変化効果を示し、且つ、消費者を安心させるとともに柔軟であり、単分子化合物を用いないため、外部因子である湿度や化合物などに影響を受けない、新しい温度感応性素材に対する開発が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一課題は、冷蔵または冷凍専用の食品および医療用品の腐敗防止のための温度変化感知センサとして応用できる温度変化感知型基材を提供することに目的がある。
【0009】
具体的に、低温では自己治癒効果が制御されて不透明な基材をなすが、温度が上昇するにつれ、例えば、常温以上の温度で保管時に、自己治癒により重合体が拡散して自己融着(self-fuse)することで、光透過率の変化が発生して温度の変化を感知できる温度変化感知型基材を提供することに目的がある。
【0010】
具体的に、-60℃、-50℃、-30℃、-20℃、-10℃などで保管する際に不透明であった基材が、0℃、10℃、20℃、30℃などに温度が上がる場合に透明に変わることにより、光透過率の変化により保管状態を確認できる温度変化感知型基材を提供することに目的がある。
【0011】
すなわち、保管温度に応じて光透過率が変わって肉眼でまたは機械的に観察可能であることで、正常温度で保管されたかまたは誤った温度で保管されたかなどの保管状態を確認できる温度変化感知型基材を提供することに目的がある。
【0012】
本発明の一課題は、自己治癒性ポリウレタン重合体を含み、前記自己治癒性ポリウレタン重合体が自己融着し始めるオンセットポイント温度を有し、前記オンセットポイントにおいて不可逆的に互いに自己融着して透明性が増加する温度変化感知型基材を提供することに目的がある。
【0013】
また、本発明の一課題は、前記温度変化感知型基材を用いた温度センサを提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために研究した結果、自己治癒性ポリウレタン重合体マトリックス、および前記マトリックスに分散した気孔、より具体的には光散乱性気孔構造を含む場合、光散乱性気孔構造により不透明であった基材が温度が変化するにつれて自己融着することで、光透過率の変化が発生することになり、このような光透過率の変化から温度の変化を感知できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明の一態様は、自己治癒性ポリウレタン重合体マトリックス、および前記マトリックスに分散した気孔を有する温度変化感知型基材であって、
温度の変化により前記マトリックスを形成する自己治癒性ポリウレタン重合体が拡散して前記気孔の大きさが変わることで、光透過率の変化が発生して温度の変化が感知される、光透過率による温度変化感知型基材を提供する。
【0016】
より具体的に、温度の変化により前記マトリックスを形成する自己治癒性ポリウレタン重合体が拡散して自己融着することで、前記気孔の大きさが減少するか消滅して均質フィルム(homogeneous film)に変わってもよく、これにより、光透過率の変化が発生して温度の変化が感知されてもよい。
【0017】
本発明の一態様において、前記温度変化感知型基材は、温度が上昇するにつれて、前記気孔の大きさが減少するか消滅することで光透過率の変化が発生してもよい。
本発明の一態様において、前記気孔は、貫通孔および凹凸から選択されてもよい。
【0018】
本発明の一態様において、前記温度変化感知型基材は、前記自己治癒性ポリウレタン重合体が自己融着し始めるオンセットポイント温度を有し、前記オンセットポイント温度で不可逆的に自己融着して透明性が増加してもよい。
【0019】
本発明の一態様において、前記温度変化感知型基材は、-20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率をTTとし、20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率をTTとする際に、|TT-TT|≧5%であってもよい。
【0020】
本発明の一態様において、前記温度変化感知型基材は、20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率が15%以上であってもよい。
【0021】
本発明の一態様において、前記温度変化感知型基材は、
a)自己治癒性ポリウレタン重合体からなる微細繊維が網状構造を形成し、前記網状構造の間に貫通孔が形成されているウェブフィルムであるか、または
b)自己治癒性ポリウレタン重合体からなるシートまたはフィルムであり、複数の貫通孔または凹凸を有してもよい。
【0022】
一態様として、前記微細繊維は、平均直径が0.01μm~200μmであってもよい。また、一態様として、前記微細繊維は、電界紡糸、溶液紡糸または溶融紡糸して製造されてもよい。
一態様として、前記貫通孔の大きさは、0.01μm~200μmであってもよい。
【0023】
本発明の一態様において、前記自己治癒性ポリウレタン重合体は、ジスルフィド構造を含んでもよい。
本発明の一態様において、前記温度変化感知型基材の厚さは、1μm~500μmであってもよい。
【0024】
本発明の他の態様は、前記一態様に係る温度変化感知型基材からなる温度センサを提供する。制限されるものではないが、冷蔵食品、冷凍食品、医療用品および医薬品などの保管温度を確認するための温度変化感知センサであってもよい。すなわち、温度に応じて不可逆的に光透過率が変わって保管状態を確認できる温度センサを提供可能である。
【0025】
本発明のまた他の態様は、前記一態様に係る温度センサを含む包装材を提供する。この際、制限されるものではないが、前記包装材は、食品、医薬品などの包装に用いられてもよい。特に保管温度に応じて腐敗または変形が発生し得る食品および医薬品の包装材として有用に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る温度変化感知型基材は、温度に応じて不可逆的に光透過率が変わって保管状態を確認することができ、これにより、保管温度に応じて腐敗または変形が発生し得る農畜産物、魚介類、医薬品などの保管状態を把握できる温度センサとして適用可能である。
【0027】
本発明に係る温度変化感知型基材は、冷蔵または冷凍状態である時と常温またはそれ以上の温度の時とでは光透過率が異なるため、保管状態を肉眼で確認できるという効果がある。具体的に例を挙げると、-60℃、-50℃、-30℃、-20℃、-10℃などの温度では光散乱性気孔構造により不透明であり、0℃、10℃、20℃、30℃などに温度が上がるにつれて、自己治癒性ポリウレタン重合体が自己融着し始めるオンセットポイント温度で不可逆的に自己融着して透明性が増加する。具体的に、-20℃で、透過率が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下の特性を有する。また、20℃で、透過率が15%以上、好ましくは17%以上、より好ましくは20%以上の特性を有してもよい。
【0028】
本発明に係る温度変化感知型基材は、フィルム、シート、繊維ウェブ、織物、編物または不織布などの多様な形態に製造することができる。より具体的に、電界紡糸、溶液紡糸または溶融紡糸などの方法で微細繊維を製造し、前記微細繊維が網状構造を形成して複数の気孔が形成されるようにすることで、さらに簡単な方法で製造することができる。
【0029】
本発明に係る温度センサは、-60℃~30℃範囲の温度で作動可能な温度センサを提供することができ、温度の変化に応じて、重合体の自己治癒により、光透過率が5%以上、10%以上、好ましくは20%以上変化する温度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一態様に係る電界紡糸工程模式図および電界紡糸されたウェブフィルムを用いて温度センサを製造した一態様を示したものである。
図2】本発明に係る実施例3の微細繊維ベースのウェブフィルム(冷凍専用の温度変化感知センサ)を20℃に露出させた場合の時間に応じた肉眼写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明についてより詳しく説明する。ただし、下記の具体例または実施例は、本発明を詳しく説明するための1つの参照にすぎず、本発明は、これに限定されず、種々の形態で実現されてもよい。
【0032】
また、特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者の1人により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明において、説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。
【0033】
また、明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
また、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0034】
本発明において、基材は、フィルム、シート、繊維ウェブ(ウェブフィルム)、織物、編物または不織布などの形態を含む。
本発明において、「気孔」は、「光散乱性気孔構造」と同一の意味であり、繊維ウェブを形成する際に、複数の微細繊維間の網状構造により形成される貫通孔であってもよく、またはフィルムまたはシート状の基材である場合は、基材上に貫通孔が形成されることで気孔が形成されてもよい。
【0035】
本発明において、「オンセットポイント」は、自己治癒性ポリウレタンが、自己治癒が開始できる「臨界温度」を意味し、オンセットポイント未満では自己治癒が発生せず、オンセットポイント以上でのみ自己治癒が触発(trigger)される。これにより、「オンセットポイント」と「臨界温度」は、互いに置換可能な用語として本明細書で用いられる。
【0036】
本発明の一態様において、自己治癒性ポリウレタン重合体は、常温で優れた自己治癒および高い光透過率を同時に満たすことで、温度に応じて変質し得る冷蔵または冷凍専用の食品、医薬品などの腐敗防止のための温度変化感知センサとして優れた応用性を有する。
【0037】
温度変化感知センサの応用のために、自己治癒性ポリウレタン重合体を用いた温度変化感知型基材は、複数の気孔を有することにより、低い温度では不透明であるが、臨界温度以上の高い温度では自己治癒性ポリウレタン重合体の自己治癒により透明度が増加し、一定レベル以上の透明性を有する特性を有することが好ましい。
【0038】
具体的な例を挙げると、自己治癒性ポリウレタン重合体がフィルムに製膜され、密度化されたフィルム(dense film)を形成する場合、重合体物質が有する高い透明度により、温度の変化に応じて光透過率の変化が微々たるものとなることがある。光透過率の変化を極大化するためには、フィルム内で入射光の光散乱が発生して低い温度では不透明であるが、臨界温度以上の高い温度では光散乱が減少して一定レベル以上の透明性を有する特性を有することが好ましい。
【0039】
上記のような透明性の変化特性を実現するために、自己治癒性ポリウレタン重合体を含む温度変化感知型基材は密度化されず、基材の内部または表面に気孔または凹凸を含む不均一性の自己治癒性ポリウレタン基材または多孔性の自己治癒性ポリウレタン基材が好ましい温度変化感知センサとして活用されることができる。
【0040】
気孔または凹凸の形状および大きさは、可視光領域(380-780nm)において基材に入射する光の光散乱が発生可能であれば充分であり、特定の形状や特定の範囲の大きさに制限されない。例示的に、気孔または凹凸の平均直径は、10nm~500μmであってもよく、0.01μm~200μm、0.1μm~100μmであってもよい。前記気孔は、貫通孔を含む意味である。すなわち、温度変化感知型基材がフィルムまたはシート状である場合、貫通孔を有するように気孔が形成されてもよい。
【0041】
基材の内部に気孔を含む場合、基材の気孔率は、10~95%であってもよく、具体的には20~85%、より具体的には40~80%であってもよい。
前記基材の形状は、特定の形状に限定されず、具体的に例を挙げると、フィルム、シート、繊維ウェブ(ウェブフィルム)、織物、編物または不織布などの形態を含む。
【0042】
より具体的に、本発明の一態様において、温度変化感知型基材は、自己治癒性ポリウレタン重合体からなる微細繊維が網状構造を形成し、前記網状構造の間に貫通孔が形成された繊維ウェブ(または、ウェブフィルムという)であってもよい。前記微細繊維は、平均直径が0.01μm~200μmであってもよく、これに制限されない。具体的に例を挙げると、前記微細繊維は、電界紡糸、溶液紡糸または溶融紡糸して製造されてもよい。前記貫通孔の大きさは、0.01μm~200μmであってもよく、これに制限されない。
【0043】
他の態様は、複数の貫通孔を有する自己治癒性ポリウレタン重合体シートまたはフィルムであってもよい。前記貫通孔の大きさは、0.01μm~200μmであってもよく、これに制限されない。
【0044】
本発明の一態様として、自己治癒性ウェブフィルムを提供し、前記自己治癒性ウェブフィルムは、自己治癒性ポリウレタン重合体を含む。具体的に、前記自己治癒性ポリウレタン重合体は、微細繊維に成形されてもよく、前記自己治癒性ポリウレタン重合体からなる複数の微細繊維が網状構造を形成する自己治癒性ウェブフィルムに製造されてもよい。自己治癒性ウェブフィルムは、微細繊維が網状構造を形成し、網状構造内に多数の貫通孔状の気孔を含んでもよく、またはウェブフィルムの表面に凹凸を含んでもよい。
【0045】
より具体的に、前記自己治癒性ウェブフィルムは、前記自己治癒性ポリウレタン重合体が微細繊維化し凝集した不織布に製造されたものであって、ウェブ状態では不透明な性質を有する。しかし、臨界温度以上の高い温度以上では、前記微細繊維が繊維的形状を失い、自己治癒性ポリウレタン重合体が周辺の気孔に拡散(Migration)して、前記ウェブの空いた空間(または、気孔という)が埋められることで、均一(Homogeneous)且つ密度化された(dense)フィルムに変化する挙動を有する。
【0046】
自己治癒性ポリウレタン重合体の微細繊維化は、溶液紡糸または溶融紡糸することで行われてもよい。
前記溶液紡糸の場合、乾式紡糸、湿式紡糸および電界紡糸などの種々の紡糸方式があるが、前記電界紡糸の場合、繊維の直径がナノメートルレベル(~10nm)からマイクロメートルレベル(~10μm)に至るまで容易に調節することができるため好ましい。
【0047】
これにより、本発明は、電界紡糸法による自己治癒性ウェブフィルムの製造方法を提供する。具体的に、自己治癒性ウェブフィルムの製造方法は、S1)前記自己治癒性ポリウレタン重合体を有機溶媒に溶解させて自己治癒性ポリウレタン溶液に製造するステップと、S2)前記自己治癒性ポリウレタン溶液を電界紡糸して微細繊維を形成するステップと、S3)前記微細繊維からなるウェブフィルムを得るステップと、を含む。
【0048】
電界紡糸は、電界紡糸用ポリウレタン重合体溶液または溶融物を吐出するノズル部、高電圧発生装置および集電板を含む紡糸装備を用いて行われてもよい。また、吐出物に印加される電場強さによりランダム構造の微細繊維集合体が実現される方法であってもよい。
【0049】
前記電界紡糸高分子溶液の濃度は、電界紡糸が可能な範囲であれば、特に限定されない。また、高分子溶液を構成するにおいて、溶媒は、高分子の溶解が可能であり、且つ、電界紡糸が可能な溶媒であれば、制限されずに用いられてもよい。
【0050】
本発明の一態様により、前記電界紡糸は、凝固浴上に電界紡糸してもよい。
前記凝固浴は水を含み、前記凝固浴内に集電板が含まれ、水面上に電界紡糸してもよい。凝固浴が水を含むことにより、前記高分子溶液に含まれる溶媒は、水との混和性を有する溶媒が好ましく、水は、前記高分子に対して貧溶媒(poor solvent)であってもよい。
【0051】
また、電界紡糸時に集電板を前記凝固浴内に含むことで、前記自己治癒性ポリウレタン重合体からなる微細繊維が凝固浴の水面上に紡糸され、これにより、不純物および溶媒が残留しない純粋な不織布状の自己治癒性ウェブフィルムを容易に得ることができる。
【0052】
前記電界紡糸により製造された自己治癒性ウェブフィルムは、ナノメートルレベル(~10nm)からマイクロメートルレベル(~10μm)の直径を有する微細繊維が結合され、非常に緻密な不織布構造を有することができる。具体的に、前記微細繊維の平均直径は、0.01μm~200μmであってもよく、好ましくは、0.05μm~100μmであってもよく、より好ましくは、0.1μm~50μmであってもよい。
【0053】
また、前記電界紡糸により製造された自己治癒性ウェブフィルムの厚さは、0.1μm~500μm、0.1μm~200μmであってもよく、好ましくは、0.5μm~150μmであってもよく、より好ましくは、1μm~100μmであってもよい。
【0054】
前記電界紡糸は、電界紡糸用ポリウレタン重合体溶液または溶融物を吐出するノズル部、高電圧発生装置、集電板で構成された紡糸装備を用いて、吐出物に印加される電場強さに起因したランダム構造の微細繊維集合体を実現する方法であってもよい。前記電界紡糸高分子溶液の濃度は、電界紡糸が可能な範囲であれば、特に限定されない。また、高分子溶液を構成するに際して、溶媒としては、複合溶媒を用いてもよいが、これに制限されない。
【0055】
前記自己治癒性ウェブフィルムが前記平均直径の微細繊維を含んで網状構造を形成することにより、可視光領域において温度の変化に応じた光透過率の変化の差を肉眼で明らかに観察することができ、前記自己治癒性ウェブフィルムの耐久性が高くなることができる。
【0056】
このような不織布構造を有することで、ウェブ状態では微細繊維が形成する網状構造を介して入射光が光散乱して不透明な性質を有する。しかし、臨界温度以上の高い温度以上では、前記微細繊維が繊維的形状を失い、自己治癒性ポリウレタン重合体が周辺の気孔に拡散(Migration)して、前記ウェブの空いた空間が埋められることで、均一(Homogeneous)且つ密度化された(dense)フィルムに変化する挙動を有する。このような挙動により、自己治癒性ウェブフィルムは、臨界温度以上の高い温度以上では高い光透過率を有することができる。
【0057】
前記自己治癒性ウェブフィルムは、オンセットポイント以下の温度で、380~780nmの波長で光透過率が25%以下であってもよく、好ましくは、光透過率が15%以下であってもよく、より好ましくは、10%以下であってもよい。
【0058】
前記自己治癒性ウェブフィルムは、10℃以上の温度でオンセットポイントを有することができる。前記オンセットポイント以上の温度で不可逆的に前記微細繊維が互いに自己融着し、透明性が増加することができる。これは、前記自己治癒性ウェブフィルムが、オンセットポイント以下の温度では不織布状を維持し、温度が10℃以上では不織布状からフィルム状に変換することで透明性が増加することを意味する。
【0059】
具体的に、前記オンセットポイントは、15℃以上、具体的に20℃以上であってもよく、非限定的に30℃以下であってもよいが、これは、応用例に応じて異にすることができる設計変数に該当するため、特定の数値範囲に制限されない。
【0060】
一態様として、20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率が15%以上であってもよい。また、-20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率をTTとし、20℃に24時間維持した後、380~780nmの波長で測定された光透過率をTTとする際に、|TT-TT|≧5%であってもよい。より具体的に、|TT-TT|が5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上であってもよく、これに制限されないが、前記範囲にて、肉眼で区分するのにさらに好適である。
【0061】
例えば、温度に敏感な肉類および魚類などを保管並びに流通する際に、温度の上昇により新鮮度を失って変質し得る危険性が存在する。これにより、オンセットポイントが10℃である自己治癒性ウェブフィルムを温度センサとして活用する場合、不透明性を維持するウェブフィルムであれば、保管および流通過程で新鮮度が一定に維持されたことを信頼することができる。これに対し、透明性を有するフィルムであれば、保管および流通過程で10℃以上の温度に一定時間維持されたことを意味するため、消費者が製品の透明度を肉眼で確認するだけで容易に製品の新鮮度を判断できるようにするという有用性を提供することができる。これにより、本発明に係る自己治癒性ウェブフィルムを含む温度センサは、不可逆的温度センサとなり得る。
【0062】
前記ウェブフィルムは、一例として、-20℃で、透過率が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下の特性を有する。また、20℃で、透過率が15%以上、好ましくは17%以上、より好ましくは20%以上の特性を有してもよい。上限は、特に制限されないが、15%~40%であってもよい。
【0063】
[自己治癒性ポリウレタン重合体]
本発明の一態様において、前記温度変化感知型基材を製造するための自己治癒性ポリウレタン重合体は、ジスルフィド構造を含んでもよい。より具体的に、芳香族ジスルフィドを含んで重合されたポリウレタン系重合体であってもよい。化学構造中に芳香族ジスルフィド基(-Ar-S-S-Ar-)を導入することで、追加の熱処理または光照射を行うことなく常温で自己修復(self-recovery)が可能となるようにしたものである。この際、常温とは、10~45℃、より具体的には20~30℃を意味し得る。
【0064】
より具体的に、前記自己治癒性ポリウレタン重合体は、芳香族ジスルフィドジオール、脂環族ポリイソシアネートおよびポリオールを含む組成物から重合されてもよい。前記脂環族ポリイソシアネートの他にも、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートから選択されるいずれか1つまたは2つ以上をさらに含んでもよい。
【0065】
前記芳香族ジスルフィドジオールは、下記化学式1で表されてもよい。
[化学式1]
HO-Ar-S-S-Ar-OH
(前記化学式1中、前記ArおよびArは、互いに独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。)
【0066】
前記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオールにおいて、ArおよびArは、互いに独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~18のアリーレン基であってもよく、より具体的に、置換もしくは非置換の、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、テルフェニレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、フェナレニレン基、テトラフェニレン基およびピレニレン基などから選択されるいずれか1つであってもよい。ここで、「置換」ないし「置換の」とは、本明細書において特に言及しない限り、Arおよび/またはArの官能基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子(-F、-Cl、-Brまたは-I)、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミン基、カルボン酸基およびアルデヒド基などからなる群から選択される1種以上の置換基で置換されていることを意味し、ただし、前記化学式1に記載されたアリーレン基の炭素数6~30は、置換基の炭素数を含まない。
【0067】
このように、末端基がOHである芳香族ジスルフィドジオールを用いてポリウレタン系重合体を製造することで、向上した自己治癒率を確保できるだけでなく、高い透明度を有する重合体を製造することができ、これにより、さらに鮮明な視野を確保することができる。
【0068】
また、前記末端基が-OHである芳香族ジスルフィドジオールの他にも、末端基が-SHであり、且つ、芳香族チオール基を含むか芳香族ジスルフィド基を含むS基含有化合物を単量体として用いてもよい。
【0069】
具体的に例を挙げると、4-メルカプトフェノール(4-mercaptophenol)、4-アミノベンゼンチオール(4-aminobenzenethiol)、ベンゼン-1,4-チオール(benzene-1,4-dithiol)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド(Bis(4-hydroxyphenyl)disulfide)、4,4’-ジチオジアニリン(4,4’-Dithiodianiline)などの化合物を含んでもよいが、特にこれらに制限されない。
【0070】
前記脂環族ポリイソシアネートは、2つ以上のイソシアネート基を有する脂環族化合物であれば、特に限定されずに用いてもよく、具体的に例を挙げると、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネートおよび2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよく、これらに制限されない。
【0071】
前記脂環族ポリイソシアネートの他にも、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートから選択されるいずれか1つまたは2つ以上をさらに含んでもよい。前記脂肪族ポリイソシアネートは、当業界で通常用いられるものであれば、特に限定されずに用いてもよく、具体的に例を挙げると、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネートおよび2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートなどから選択されるいずれか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0072】
前記芳香族ポリイソシアネートも、また当業界で通常用いられるものであれば、特に限定されずに用いてもよく、具体的に例を挙げると、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートおよびp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどから選択されるいずれか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0073】
前記ポリオールは、当業界で通常用いられるものであれば、特に限定されずに用いてもよく、具体的に例を挙げると、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールなどからなる群から選択される1つ以上の高分子量ポリオールであってもよい。
【0074】
前記高分子量ポリオールは、500~20,000g/molの数平均分子量を有してもよく、より好ましくは、高分子量ポリオールは、800~10,000g/molの数平均分子量を有する化合物であってもよく、さらに好ましくは、900~5,000g/molの数平均分子量を有する化合物であってもよい。
【0075】
自己治癒性ポリウレタン系重合体が常温で自己修復を可能にするためには、ヒドロキシ基含有化合物とイソシアネート基含有化合物との割合を適宜調節することが好ましく、具体的に例を挙げると、ヒドロキシ基含有化合物のヒドロキシ基:イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基のモル比は、1:0.8~1.2であってもよく、より好ましくは、1:0.9~1.1であってもよい。前記範囲にて、自己治癒性ポリウレタン系重合体が効果的に重合されることができ、重合体の損傷時に常温で自己修復が可能である。
【0076】
本発明に係る自己治癒性ポリウレタン系重合体は、芳香族ジスルフィド基を含むことで、ジスルフィド基の複分解反応(disulfide metathesis)により、追加の熱処理または光照射を行うことなく常温で自己修復を可能にすることができる。
【0077】
前記自己治癒性ポリウレタン重合体の重量平均分子量は、5,000~1,000,000g/molであってもよく、好ましくは、10,000~500,000g/molであってもよく、より好ましくは、20,000~300,000g/molであってもよいが、これに制限されない。
【0078】
[温度センサ]
本発明の一態様に係る温度センサは、オンセットポイント温度で不可逆的に光透過率の変化が発生して温度の変化が感知されてもよい。これにより、冷凍または冷蔵状態で保管されなければならない物品が常温に誤って保管されるか露出された場合にそれを感知することができる。
【0079】
一態様として、前述した一態様に係る温度変化感知型基材自体からなるか、または透明な基材上に前記一態様に係る温度変化感知型基材が積層されてもよい。
【0080】
具体的に例を挙げると、透明な高分子フィルムなどの透明な基材上に、前記一態様に係る温度変化感知型基材が積層されてもよい。
前記透明な高分子フィルムは、透明なものであればその種類が制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムなどを用いてもよい。
【0081】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳しく説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳しく説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記の実施例および比較例により制限されるものではない。
【0082】
[物性の測定方法]
1.光透過率の測定
UV-VIS分光光度計(UV-2600、Shimadzu Co.)を用いて、光透過率(transmittance、T%)を緑色光(λ=560nm)の光源(slit size=2mm)において3時間間隔で測定した。
【0083】
冷凍専用は、冷凍(-20℃)、冷蔵(5℃)および常温(20℃)にそれぞれ24時間維持した後に透過率を測定した。
冷蔵専用は、冷蔵(0℃)および常温(20℃)にそれぞれ24時間維持した後に透過率を測定した。
【0084】
また、微細繊維ベースのウェブフィルムの実使用者の肉眼認知を再現するために、製造された微細繊維ベースのウェブフィルムの後面に警告標識(感嘆符、「!」)を付着した後、透明化過程により現れる標識を、CMOSデジタルカメラ(RX100M4、SONY Co.)を用いて、同一のシャッタースピード(shutter speed、1/60sec)および絞り値(F6.3)下で、3時間間隔で撮影した。
【0085】
2.ガラス転移温度(動的機械分析器、Dynamic mechanical analysis、DMA)の測定
長さ20mm、幅5mm、厚さ0.1mmのウェブフィルムを、クランプ(clamp)およびドライブシャフト(driveshaft)を用いて固定した後、温度範囲-60~60℃、上昇速度2℃/分の条件下で、正弦波振動(sinusoidal oscillation)形態の変形を加え、素材の弾性率(modulus)、貯蔵(E’、storage modulus)および損失(E’’、loss modulus)弾性率の位相遅延(tan d)値を得た。
【0086】
[製造例1]
機械式撹拌器付きの二口セパラブルフラスコに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(Polytetramethylene Ether Glycol、PTMEG、20.0mmol、数平均分子量1,000g/mol、Aldrich社)を投入した後、真空乾燥して水分を除去した。その後、70℃で、イソホロンジイソシアネート(Isophorone diisocyanate、42.0mmol)、ジブチルスズジラウレート(Dibutyltin dilaurate)70mgを溶かしたジメチルアセトアミド(DMAc)8mlを徐々に滴加し、窒素雰囲気下で2時間撹拌した。
【0087】
次に、温度を30℃に下げて冷ました後、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド(bis(4-hydroxylphenyl)disulfide、20.0mmol)を溶かしたDMAc 15mlを滴加して40℃で1.5時間撹拌し、DMAc 29mlをさらに滴加して固形分が40wt%である溶液を得た。合成した高分子は、DMAで測定されたガラス転移温度が-8℃を示した。
【0088】
[製造例2]
前記製造例1において、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG、20.0mmol、数平均分子量1,000g/mol)の代わりに、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(Poly(hexamethylene carbonate)diol、20.0mmol、数平均分子量1,000g/mol、Dongsung corporation社)を投入したことを除いては、製造例1と同様に行った。合成した高分子は、DMAで測定されたガラス転移温度が7℃を示した。
【0089】
[実施例1]
製造例1で得られたポリウレタン樹脂を、DMAcおよびテトラヒドロフラン(THF)で構成された複合溶媒に20wt%の濃度で溶解させる。DMAc:THF=3:7に製造した。
【0090】
製造された溶液をシリンダーに充填した後、高電圧発生装置を用いて、6.5kVの電圧を高分子溶液に印加して2分30秒間紡糸する。この際、紡糸ノズルは24ゲージ(0.31mm)、溶液の吐出速度は毎時1ml、ノズルから金属 集電板(collector)までの距離は15cmである。図1に示されたように、紡糸ノズル下に蒸留水または水道水を充填した凝固浴(coagulation bath)を位置させ、残留溶媒、ホコリなどの不純物が除去された微細繊維ベースのウェブフィルムを捕集する(平均繊維直径:0.5μm~20μm)。
【0091】
凝固浴の上部に捕集された微細繊維ベースのウェブフィルムを外部と内部の辺の長さがそれぞれ5および3cmである正方形フレームに取り、常温(20℃)で約30分間乾燥させ、下記表1に示したように、6.4μm厚さのウェブフィルムを製造し、それに微細繊維ベースのウェブフィルム保護用のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(SKC社製)を上部、および下部に付着してUV-VIS分光光度計(UV-2600、Shimadzu Co.)で光透過率(%)を測定し、その結果を表1に示した。
【0092】
[実施例2]
紡糸時間が5分であることを除いては実施例1と同様に行い、その結果を表1に示した。
【0093】
[実施例3]
紡糸時間が10分であることを除いては実施例1と同様に行い、その結果を表1に示した。
【0094】
[実施例4]
紡糸時間が20分であることを除いては実施例1と同様に行い、その結果を表1に示した。
【0095】
[実施例5]
製造例2で得られたポリウレタン樹脂をDMAcおよびTHFで構成された複合溶媒に32wt%の濃度で溶解させ、6.8kVの印加電圧で2分30秒間紡糸したことを除いては実施例1と同様に行い(平均繊維直径:0.05μm~10μm)、その結果を表2に示した。
【0096】
[実施例6]
紡糸時間が5分であることを除いては実施例5と同様に行い、その結果を表2に示した。
【0097】
[実施例7]
紡糸時間が10分であることを除いては実施例5と同様に行い、その結果を表2に示した。
【0098】
[実施例8]
紡糸時間が20分であることを除いては実施例5と同様に行い、その結果を表2に示した。
【0099】
[実施例9]
製造例1で得られたポリウレタン樹脂をホッパーに充填した後、ポリウレタン溶融物をメルトブローン(melt-blown)紡糸ノズルを介して紡糸する。この際、熱風温度は250℃、熱風圧力は24psi、ノズル温度は170℃、ノズルからメッシュ(mesh)集電板が付着されたコンベヤーベルトまでの距離は25cmである。コンベヤーベルト速力を60cm/minに維持しつつ、微細繊維ベースのウェブフィルムを捕集する(平均繊維直径:10μm~200μm)。
【0100】
メッシュ集電板に捕集された微細繊維ベースのウェブフィルムを、外部と内部の辺の長さがそれぞれ5および3cmである正方形フレームに取り、微細繊維ベースのウェブフィルム保護用のPETフィルム(SKC社製)を上部、および下部に付着してUV-VIS分光光度計(UV-2600、Shimadzu Co.)で光透過率(%)を測定し、その結果を表3に示した。
【0101】
[実施例10]
製造例2で得られたポリウレタン樹脂を用いたことを除いては実施例9と同様に行い、その結果を表4に示した(平均繊維直径:10μm~100μm)。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
前記表1および表2に示されたように、本発明に係る微細繊維から製造されたウェブフィルムは、特定の温度範囲条件で微細繊維が融着して均一なフィルムへの変化が進行することで透過率が高くなり、紡糸時間が長いほど透過率の変化幅が大きくなることを確認することができる。
【0107】
前記表3および表4に示されたように、溶融紡糸工程により製造された微細繊維ウェブフィルムも、また特定の温度条件で透過率の変化が有効になることを確認することができる。
【0108】
図2に示されたように、本発明の実施例により製作された微細繊維ベースのウェブフィルムは、肉眼で見える透過率の変化が有効になることを確認し、冷蔵または冷凍専用の食品および医療用品の腐敗防止のための温度変化感知センサとして応用できることを示唆する。
【0109】
以上、特定の事項と限定された実施例および図面により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0110】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。
図1
図2
【国際調査報告】