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特表2023-500313抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法
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  • 特表-抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法 図1
  • 特表-抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/08 20060101AFI20221223BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20221223BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20221223BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20221223BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
C01D15/08
C22B26/12
C22B3/26
C22B3/44
C22B3/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525618
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2020124747
(87)【国際公開番号】W WO2021083263
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201911061643.6
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509031567
【氏名又は名称】中国科学院過程工程研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF PROCESS ENGINEERING,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】NO.1 Zhongguancun North Second Street,Haidian District Beijing 100190,P.R.China
(71)【出願人】
【識別番号】522172841
【氏名又は名称】上海意定新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】斉 濤
(72)【発明者】
【氏名】朱 兆武
(72)【発明者】
【氏名】張 健
(72)【発明者】
【氏名】林 道勇
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA34
4K001BA19
4K001DB16
4K001DB22
4K001DB27
4K001DB31
4K001DB34
4K001JA01
4K001JA10
(57)【要約】
本発明は抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法に関し、前記方法は以下のステップを含む:(1)複合抽出剤を含む抽出システムを使用して、pH=10~13の条件下でリチウム含有溶液に対して抽出及び分離して、リチウム担持有機相を得て;(2)ステップ(1)で得られたリチウム担持有機相を気-液-液三相逆抽出し、リチウム担持した逆抽出液を得て;(3)ステップ(2)で得られた逆抽出液を熱処理して分離し、リチウム製品と分離された母液を得る。本発明によって提供される抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法は、複合抽出剤を使用することで、リチウムとNa、K、Bなどの不純物イオンの効率的な分離を実現し、また、気-液-液三相連続逆抽出により、リチウムの逆抽出率が90%以上であり、総収率は83%以上であり、得られたリチウム製品の純度は96%以上であり;前記方法は処理能力が大きく、プロセスと設備が簡単で、投資が少なく、工業用排気の有効利用、省エネ、環境保護、連続生産という利点がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出-逆抽出分離精製によるリチウムを抽出する方法であって、
複合抽出剤を含む抽出システムを使用して、pH=10~13の条件下でリチウム含有溶液を抽出及び分離して、リチウム担持有機相を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたリチウム担持有機相を気-液-液三相逆抽出し、リチウムを担持している逆抽出液を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた逆抽出液を熱処理して分離し、リチウム製品と分離された母液を得るステップ(3)を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(1)における前記複合抽出剤は、中性抽出剤及びキレート抽出剤を含み、前記抽出システムは、前記複合抽出剤及び希釈剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中性抽出剤は、リン酸トリブチルTBP、ジメチルヘプチルメチルホスフェートP350、トリオクチルホスフィンオキシドTOPO、トリオクチル/ヘキシルホスフィンオキシドCyanex923及びN,N-ジ(1-メチルヘプチル)アセトアミドN503のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記キレート抽出剤は、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX84)、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトン(LIX54)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシム(LIX860)および2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX84)、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトン(LIX54)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシム(LIX860)の同じ官能基を持つ抽出剤の任意の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記中性抽出剤とキレート抽出剤との体積比は0.2:1~2:1であることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出システムには、フェーズ調整剤も含まれていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出システムは、複合抽出剤、フェーズ調整剤及び希釈剤を含み;前記抽出システムにおける複合抽出剤の体積分率は5~30%であり、フェーズ調整剤の体積分率は0~10%であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(1)における前記リチウム含有溶液は、リチウム鉱石浸出液、沈殿リチウム母液、リチウム電池廃棄物の浸出液及び塩湖ブラインのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウム含有溶液中のリチウムの濃度は0.25~5g/Lであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リチウム含有溶液における主要な不純物元素であるナトリウム、カリウム及びホウ素の濃度は、独立して、それぞれが10~150g/L、0~50g/L、および0~10g/Lであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウム含有溶液には、ルビジウム、アルミニウム、マグネシウム、セシウム及びカルシウムなどの金属イオンをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記リチウム含有溶液と抽出システムの有機相との体積比は0.2:1~5:1であることを特徴とする請求項1又は8に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(1)では、前記リチウム担持有機相におけるリチウムの濃度は0.5~3g/Lであることを特徴とする請求項1又は8に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(1)には、前記リチウム担持有機相に対して洗浄を行うことも更に含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記洗浄用の洗浄液が水および/またはリチウム含有溶液であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(2)における前記気-液-液三相逆抽出システムは、第1液相、第2液相及び気相を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記気相は酸性ガスであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記気相のガスはSO、SO、CO又はClのうちの任意の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記気相のガスはSOおよび/またはCOであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1液相には水が含まれることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第2液相には、リチウムに担持有機相が含まれることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記気-液-液三相逆抽出システムのpH=6~9であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記第1液相と第2液相との体積比は0.05:1~2:1であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(2)における前記気-液-液三相逆抽出は、多段階の連続向流操作を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記気-液-液三相逆抽出の装置は、連続混合沈殿タンク、抽出塔、または遠心抽出器のいずれか一つを含み;前記気-液-液三相逆抽出の段階数は1~10の間で調整可能であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(2)における逆抽出溶液中のリチウムの濃度>5g/Lであることを特徴とする請求項1又は24に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(3)における前記熱処理の方式は、酸化、蒸発結晶化または熱分解のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記熱処理の温度は60~90℃であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記熱処理時間は0.5~2時間であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記酸化に使用される酸化剤は、空気、酸素、及びオゾンガスであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記蒸発結晶化は、MVRまたは多重効用蒸発を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記熱分解は、密閉または半密閉の容器を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(3)における前記分離する方法は、濾過、吸引濾過または遠心分離のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記リチウム製品は、硫酸リチウム、塩化リチウム、または炭酸リチウムであり、製品の純度>96%であることを特徴とする請求項17又は18に記載の方法。
【請求項35】
前ステップ(3)での分離後の母液は、ステップ(1)および/またはステップ(2)の第1液相に戻されることを特徴とする請求項1~9又は16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月01日に中国特許庁に出願された出願番号が201911061643.6であり、発明名称が「抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は本出願に引用によって組み込まれている。
【0002】
本発明は、化学工業における分離の技術分野に関し、詳しくは抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムは密度が最も小さい金属であり、電子機器、化学、新エネルギー及び製薬等で広く適用されており、リチウム資源は主に塩湖、鉱物、海水から供給され、近年の廃棄物資源の再利用の進展に伴い、廃リチウム電池も重要な供給源となっている。これらの原料からリチウムを抽出するプロセスには、複数の精製ステップが必要であり、典型的なプロセスでは、よく蒸発濃縮、不純物の分離と除去、およびカルシウムイオンとマグネシウムイオンの深度的除去により高純度のリチウム含有溶液を得て、次にリチウム含有溶液を沈殿処理して炭酸リチウム製品を得る。
【0004】
CN108423696Aは、リチウム含有溶液から高純度リチウム塩を抽出する方法を開示し、リチウム含有溶液にpH値調整剤を加えて、溶液のpH値を4より大きくなるように調整し;リチウム含有溶液を、リチウム濃度が2g/Lを超えるリチウムに富む溶液に濃縮し;超音波装置をリチウムに富む溶液に入れ、沈殿剤を加えて、超音波振動させ;超音波処理後、濾過を行い、得られた固相を洗浄及び乾燥してリチウム塩を得るステップを含む。当該方法はリチウム含有溶液を濃縮する必要があり、処理能力が小さい;同時に、リチウムを沈殿させる過程で、リチウムに富む溶液にはナトリウム、カリウム等のイオンが大量に含まれるため、リチウム塩へのエントレインメント量が多く、その純度に影響を及ぼし、より純度の高いリチウム塩を製造するには、大量の淡水洗浄が必要であり、水の消費量が多くなる。また、リチウム塩は一定の水相への溶解度があるため、沈殿後の母液には依然として大量のリチウムが含まれているため、リチウムの収量が低下する。
【0005】
CN104884648Aは、リチウム含有溶液からリチウムを抽出する方法を提供し、具体的には、炭酸イオンを含むリチウム含有溶液を調製し;前記リチウム含有溶液を2.481g/L以下のリチウム濃度に濃縮して、第1沈殿物を得て;濃縮した前記リチウム含有溶液と前記第1沈殿物に対して固液分離を行い;濃縮した前記リチウム含有溶液にリン供給物質を加えて、溶解したリチウムをリン酸リチウムとして沈殿させ;沈殿した前記リン酸リチウムの濾過液を再度濃縮して2.481g/L以下のリチウム濃度にし、第2沈殿物を得て;再濃縮された前記濾過溶液と前記第2沈殿物に対して固液分離を行い;そして、再濃縮された前記濾過溶液にコア粒子を加えて、溶解したリチウムをリン酸リチウムとして沈殿させるステップを含む。当該方法は、濃縮と固液分離を複数回行うため、リチウムの収率が低く、プロセスフローも長く、投資額も大きいため、工業的な応用には不利である。
【0006】
上記文献から、リチウム収率が高く、リチウム製品の純度が高く、大きな処理能力、短いプロセス、投資が少なく、工業的に生産しやすいプロセスは現在、解決すべき緊急の問題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に存在する問題を考慮して、本発明は、抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法を提供し、前記方法は、複合抽出剤を含む抽出システムを使用して、高pH条件下でリチウム含有溶液に対して抽出を行い、リチウムの効率的な抽出と、Na、K、Bなど多くの不純物元素との分離を実現し;また、工業の排気ガスを利用して、多段階の連続向流プロセスにより気-液-液三相逆抽出を行い、リチウムの高効率逆抽出を実現した。本発明によって提供される方法は、本発明によって提供される方法は、処理能力が大きく、液相がリサイクルされ、リチウムの総収率が高い;気相リサイクルの使用により、ゼロエミッション達成されて利用率が高く;三相逆抽出のガス源として工業の排気ガスを使用でき、コストが大幅に削減され、環境を保護し;同時に、プロセスフローが短く、設備がシンプルで、投資額が少なく、工業的に生産に適用しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を使用する。
本発明は抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法を提供し、前記抽出方法は
複合抽出剤を含む抽出システムを使用して、pH=10~13の条件下でリチウム含有溶液を抽出及び分離して、リチウム担持有機相を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたリチウム担持有機相を気-液-液三相逆抽出し、リチウム担持した逆抽出液を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた逆抽出液を熱処理して分離し、リチウム製品と分離された母液を得るステップ(3)を含む。
【0009】
好ましくは、ステップ(1)における前記複合抽出剤は、中性抽出剤及びキレート抽出剤を含み、前記抽出システムは、前記複合抽出剤及び希釈剤を含む。
【0010】
好ましくは、前記中性抽出剤は、リン酸トリブチルTBP、ジメチルヘプチルメチルホスフェートP350、トリオクチルホスフィンオキシドTOPO、トリオクチル/ヘキシルホスフィンオキシドCyanex923及びN,N-ジ(1-メチルヘプチル)アセトアミドN503のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0011】
好ましくは、前記キレート抽出剤は、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシムLIX84、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトンLIX54、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシムLIX860および2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシムLIX84、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトンLIX54、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシムLIX860の同じ官能基を持つ抽出剤の任意の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0012】
好ましくは、前記中性抽出剤とキレート抽出剤との体積比は0.2:1~2:1である。
【0013】
好ましくは、前記抽出システムは、フェーズ調整剤をさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記抽出システムは、複合抽出剤、フェーズ調整剤及び希釈剤を含み;前記抽出システムにおける複合抽出剤の体積分率は5~30%であり、フェーズ調整剤の体積分率は0~10%である。
【0015】
好ましくは、ステップ(1)における前記リチウム含有溶液は、リチウム鉱石浸出液、リチウム沈殿母液、リチウム電池廃棄物の浸出液及び塩湖ブラインのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0016】
好ましくは、前記リチウム含有溶液におけるリチウムの濃度は0.25~5g/Lである。
【0017】
好ましくは、前記リチウム含有溶液における主要な不純物元素であるナトリウム、カリウム及びホウ素の濃度は、独立して、それぞれが10~150g/L、0~50g/L、および0~10g/Lである。
【0018】
好ましくは、前記リチウム含有溶液には、ルビジウム、アルミニウム、マグネシウム、セシウム及びカルシウムなどの金属イオンをさらに含む。
【0019】
好ましくは、前記リチウム含有溶液と抽出システムの有機相との体積比は0.2:1~5:1である。
【0020】
好ましくは、ステップ(1)では、前記リチウム担持有機相におけるリチウムの濃度は、0.5~3g/Lである。
【0021】
好ましくは、ステップ(1)には、前記リチウム担持有機相に対して洗浄を行うことも更に含まれる。
【0022】
好ましくは、前記洗浄液は、水及び/又はリチウム含有溶液である。
【0023】
好ましくは、ステップ(2)における前記気-液-液三相逆抽出システムは、第1液相、第2液相及び気相を含む。
【0024】
好ましくは、前記気相のガスはSO、SO、CO又はClのうちの任意の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0025】
好ましくは、気相のガスはSOおよび/またはCOである。
【0026】
好ましくは、前記第1液相には水が含まれる。
【0027】
好ましくは、前記第2液相には、リチウム担持有機相が含まれる。
【0028】
好ましくは、前記気-液-液三相逆抽出はpH=6~9に制御すされる。
【0029】
好ましくは、前記第1液相と第2液相との体積比は0.05:1~2:1である。
【0030】
好ましくは、ステップ(2)における前記気-液-液三相逆抽出は、多段階の連続向流操作を使用する。
【0031】
好ましくは、前記気-液-液三相逆抽出の装置は、連続混合沈殿タンク、抽出塔、または遠心抽出器のいずれか一つを含み;前記気-液-液三相逆抽出の段階数は1~10の間で調整可能である。
【0032】
好ましくは、ステップ(2)における前記逆抽出液におけるリチウムの濃度>5g/Lである。
【0033】
好ましくは、ステップ(3)における前記熱処理の方式は、酸化、蒸発結晶化または熱分解のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせが含まれる。
【0034】
好ましくは、前記熱処理の温度は60~90℃である。
【0035】
好ましくは、前記熱処理時間は0.5~2時間である。
【0036】
好ましくは、前記酸化に使用される酸化剤は、空気、酸素、およびオゾンガスである。
【0037】
好ましくは、前記蒸発結晶化は、MVRまたは多重効用蒸発を使用する。
【0038】
好ましくは、前記熱分解は、密閉または半密閉容器を使用する。
【0039】
好ましくは、ステップ(3)における前記分離する方法は、濾過、吸引濾過または遠心分離のいずれか1つ、または少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0040】
好ましくは、前記リチウム製品は、硫酸リチウム、塩化リチウム、または炭酸リチウムであり、製品の純度>96%である。
【0041】
好ましくは、ステップ(3)での分離後の母液は、ステップ(1)および/またはステップ(2)の第1液相に戻される。
【発明の効果】
【0042】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は:
(1)本発明によって提供される抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法は、複合抽出剤を使用することで、リチウムとNa、K、Bなどの不純物イオンの効率的な分離を実現し、また、気-液-液三相の連続逆抽出により、リチウムの逆抽出率が90%以上になるため、液相と気相のリサイクルを実現し、リチウムの総収率は83%以上であり、得られたリチウム製品の純度は96%以上であり;
(2)本発明によって提供される方法は、処理能力が大きく、プロセスと設備がシンプルで、投資が少なく、エネルギー消費量が少なく、連続生産が実現できて、比較的高い応用価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明によって提供される抽出-逆抽出分離精製によるリチウム抽出のプロセスフロー図である。
図2】本発明によって提供される気-液-液三相抽出装置の概略図である。図2において、1は電気攪拌機、2はガス出口、3はライトフェーズ出口、4は攪拌塔プレート、5は抽出塔の塔本体、6はガス分配器、7はガス入口、8はヘビーフェーズ出口、9はヘビーフェーズ入口、10はライトフェーズ入口、11はパルスシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法を提供する。該以下抽出方法は
複合抽出剤を含む抽出システムを使用して、pH=10~13の条件下でリチウム含有溶液に対して抽出及び分離して、リチウム担持有機相を得るステップ(1)と;
ステップ(1)で得られたリチウム担持有機相を気-液-液三相逆抽出し、リチウムを担持した逆抽出液を得るステップ(2);
ステップ(2)で得られた逆抽出液を熱処理して分離し、リチウム製品と分離された母液を得るステップ(3)を含む。
【0045】
本発明によって提供される方法では、複合抽出剤を含む抽出システムが使用され、比較的高いpH値の条件下で、リチウムは複合抽出剤によって効果的に抽出され、担持有機相に入り;次に、リチウム担持有機相は気-液-液三相逆抽出にかけられ、気相として酸性ガスを使用し、前記ガスは液相に溶解して少量のHを提供し、Hはリチウムを担持した有機相と接触し、Liと交換してLiは水溶液の中に逆抽出され、消費されたHは連続的なガス反応によって補充され、水相に逆抽出されたLiは、気-液反応によって生成された陰イオンと結合して、リチウムの担持水溶液を形成し;次に熱処理により、より純度の高いリチウム製品が得られる。
【0046】
好ましくは、ステップ(1)では、前記複合抽出剤は、中性抽出剤及びキレート抽出剤を含み、前記抽出システムは、前記複合抽出剤及び希釈剤を含む。pH=10~13の条件下で、リチウムと中性抽出剤による夾雑物はキレート抽出剤によって抽出され、リチウムの効率的な抽出を実現した。抽出反応は下記式(1)に示される。
【0047】
LiL+nE+nHECh+nOH=nLi・ECh+Ln-+nHO(1)
【0048】
式(1)において、LはClまたはSO 2-であり、Eは中性抽出剤であり、HEChはキレート抽出剤である。
【0049】
Na、K及びBプラズマはEと夾雑物を形成しないので、複合抽出剤によって抽出されず、LiはNa、K及びBなどの不純物元素とよく分離されている。
【0050】
本発明において、抽出プロセスは、強アルカリ性条件下で実施され、pH=10~13であり、例えば、10、11、12または13等であってもよい。pH<10である場合、抽出プロセスでは、リチウムによって形成された夾雑物とHEChによって生成されたHは効果的に中和できず、リチウムは効果的に抽出できない。pH>13である場合、大量のNaとKなどもHEChとNaEChまたはKEChを形成し、リチウムは効率的に抽出されず、そして、NaとKから十分に分離されていない。
【0051】
好ましくは、前記中性抽出剤は、リン酸トリブチル(TBP)、ジメチルヘプチルメチルホスフェート(P350)、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリオクチル/ヘキシルホスフィンオキシド(Cyanex923)、およびN,N-ジ-(1-メチルヘプチル)アセトアミド(N503)のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み、それらの中には、典型的であるが非限定的な組み合わせはP350とN503、TBPとTOPO、TBP、P350とCyanex923、P350、Cyanex923とN503である。
【0052】
好ましくは、前記キレート抽出剤は、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX84)、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトン(LIX54)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシム(LIX860)および2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX84)、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトン(LIX54)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシム(LIX860)の同じ官能基を持つ抽出剤の任意の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み、それらの中には、典型的であるが非限定的な組み合わせはLIX54とLIX84I、LIX54とLIX860、LIX54、LIX84IとLIX860である。
【0053】
好ましくは、前記中性抽出剤とキレート抽出剤の体積比は0.2:1~2:1であり、例えば、0.2:1、0.3:1、0.5:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.5:1、1.8:1または2:1などであってもよい。
【0054】
好ましくは、前記抽出システムは、フェーズ調整剤をさらに含む。
【0055】
好ましくは、前記抽出システムは、複合抽出剤、フェーズ調整剤及び希釈剤を含み、ここで、前記複合抽出剤及びフェーズ調整剤の体積分率は独立してそれぞれ5~30%及び0~10%である。たとえば、複合抽出剤の体積分率は、5%、10%、15%、20%、25%、または30%などにすることができ;フェーズ調整剤の体積分率は、0%、0.5%、1%、3%、5%、8%、9%、または10%などなどにすることができ、フェーズ調整剤は、抽出システムで「乳化」問題が発生するかどうかに応じて、追加するかどうか、および追加の体積比を決定する。
【0056】
本発明において、特定の種類の希釈剤およびフェーズ調整剤は特に限定されず、当業者によって一般的に使用される任意のタイプは本発明に適用可能である。本発明の特定の実施形態として、前記希釈剤は、n-ドデカンまたはスルホン化灯油であり、フェーズ調整剤は、ドデカノールである。
【0057】
好ましくは、ステップ(1)における前記リチウム含有溶液は、リチウム鉱石浸出液、沈殿リチウム母液、リチウム電池廃棄物の浸出液及び塩湖ブラインのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み、ここで、典型的であるが非限定的な組み合わせは:リチウム鉱石浸出液とリチウム沈殿母液、塩湖ブライン、塩湖ブラインとリチウム沈殿母液、リチウム電池廃棄物の浸出液、リチウム電池廃棄物の浸出液とリチウム沈殿母液など。
【0058】
好ましくは、前記リチウム含有溶液中のリチウムの濃度は、0.25~5g/Lであり、例えば、0.25g/L、0.3g/L、0.5g/L、0.8g/L、1g/L、1.5g/L、2g/L、2.5g/L、3g/L、3.5g/L、4g/L、4.5g/L、4.8g/L、5g/であってもよいできる。
【0059】
好ましくは、前記リチウム含有溶液中の主要な不純物元素であるナトリウム、カリウムおよびホウ素の濃度は、独立してそれぞれ10~150g/L、0~50g/Lおよび0~10g/Lであり、例えば、ナトリウムの濃度は10g/L、15g/L、20g/L、30g/L、50g/L、80g/L、90g/L、95g/L、100g/L、120g/L、140g/Lまたは150g/Lなどとすることができ;カリウムの濃度は0g/L、1g/L、5g/L、10g/L、15g/L、20g/L、30g/L、40g/L、45g/Lまたは50g/Lなどとすることができ;ホウ素の濃度は、0g/L、1g/L、2g/L、3g/L、5g/L、7g/L、9g/L、または10g/L/Lなどであってもよい。
【0060】
好ましくは、前記リチウム含有溶液には、ルビジウム、アルミニウム、マグネシウム、セシウム及びカルシウムなどの金属イオンをさらに含む。
【0061】
好ましくは、前記有機相に対するリチウム含有溶液の体積比は0.2:1~5:1であり、例えば0.2:1、0.3:1、0.5:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.5:1、1.8:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1又は5:1などであってもよい。もし前記体積比が0.2:1未満の場合、リチウムを効果的に抽出できず、LiをNaおよびKから十分に分離できず;体積比が5:1を超えると、リチウムの単段抽出効果が低くなり、リチウムの抽出収率が低くなる。
【0062】
好ましくは、ステップ(1)に記載のリチウム担持有機相中のリチウム濃度は、0.5~3g/L、例えば、0.5g/L、0.8g/L、1g/L、1.2g/L、1.5g/L、1.8g/L、2g/L、2.2g/L、2.6g/L、2.8g/L又は3g/Lなどであってもよい。
【0063】
好ましくは、前記リチウム担持有機相を洗浄する。Na、K及びBなどは有機抽出システムでは抽出されないが、抽出プロセスでは相のエントレインメントが発生し、Na、K及びBなどの少量の不純物は、エントレインメントである水とともに担持有機相に入るため、不純物が水相に洗い流され、リチウムがさらに精製されるように洗浄する必要がある。
【0064】
好ましくは、前記洗浄液は、水及び/又はリチウム含有溶液である。
【0065】
好ましくは、ステップ(2)における前記気-液-液三相逆抽出システムは、第1液相、第2液相及び気相を含む。
【0066】
好ましくは、前記気相のガスはSO、SO、CO又はClのうちのいずれか1つ、または少なくとも2つの組み合わせを含み、好ましくはSOおよび/またはCOである。
【0067】
本発明において、逆抽出に使用されるガスにおいて、SO及びSOは主に冶金プロセスで硫化鉱を高温処理することによって生成される排気であり、工業では副産物の硫酸を調製するために使用され、触媒を使用してSOを酸化してSOに変換し、吸収して硫酸を調製するため、プロセスが複雑で、調製コストが高い。COは主に発電所や高温ボイラーの排気であり、石灰燃焼ステップでも大量のCO排気が発生するが、現在は浄化処理後に排出され、温室効果ガスが発生している。Clは、塩素アルカリ産業の副産物であり、現在、塩酸や消毒剤及び塩素系プラスチック産業の製造に使用されているが、中国では副産物のClが非常に過剰になっている。本発明は、工業に生産された排気または排出された温室効果ガスを使用して、リチウムの高効率逆抽出を実現して、実行コストを大幅に削減し、同時に環境汚染を低減した。
【0068】
好ましくは、前記第1液相は水を含む。
【0069】
好ましくは、前記第2液相は、リチウム担持有機相を含む。
【0070】
本発明では逆抽出に使用される前記ガスは第1液相に溶解して少量のHを提供し、Hはリチウム担持有機相と接触し、Liと交換してLiは水溶液の中に逆抽出され、消費されたHは連続的なガス反応によって補充され、水相に逆抽出されたLiは、気-液反応によって生成された陰イオンと結合して、リチウムの担持水溶液を形成する。リチウムの逆抽出を下記式(2)に示される。
【0071】
nLi・ECh+G+1/2nHO=LiG(O)1/2n+nE+nHECh(2)
【0072】
式(2)において、Gは逆抽出に使用されるガスである。
【0073】
好ましくは、前記気-液-液三相逆抽出はpH=6~9に制御し、例えば6、7、8または9などであってもよい。リチウム逆抽出は、気-液-液連続三相反応により実現され、プロセス中にLiG(O)1/2nが生成され、中性またはアルカリ性に近く、逆抽出プロセスシステムは自動的に中性またはアルカリ性に近いpH=6~9の間に維持され、pH調整のための他の試薬を加える必要はない。
【0074】
好ましくは、前記第1液相と第2液相との体積比は、0.05:1~2:1であり、例えば0.05:1、0.1:1、0.5:1、1:1、1.5:1または2:1等であってもよく、前記体積比が0.05:1より小さい場合、リチウム逆抽出効果は低く;体積比が2:1より大きい場合、逆抽出水溶液中のリチウム濃度が低くなり、リチウム回収率が低い。
【0075】
好ましくは、ステップ(2)における前記気-液-液三相逆抽出は、多段階の連続向流操作を使用する。
【0076】
好ましくは、前記気-液-液三相逆抽出に使用される装置は、連続混合沈殿タンク、抽出塔、または遠心抽出器を含み、前記気-液-液三相逆抽出の段階数は1~10の間で調整できる。前記気-液-液三相逆抽出装置はさらに好ましくは抽出塔であり、前記抽出塔の大きさおよび段数は実際の製造プロセスの必要に応じて調整できる。
【0077】
本発明において、前記気-液-液三相逆抽出装置は、装置の数および/またはプロセスパラメータを調整することにより、いずれも90%を超えるリチウム逆抽出率を達成できる。
【0078】
好ましくは、ステップ(2)に記載の逆抽出液中のリチウム濃度は>5g/Lであり、例えば、5.1g/L、5.2g/L、5.5g/L、5.8g/L、6.0g/L、6.5g/L、7.0g/L、9.0g/Lまたは10g/Lなどであってもよい。
【0079】
好ましくは、ステップ(3)における前記熱処理の方式には、酸化、蒸発結晶化及び熱分解のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせが含まれ、その中で、典型的であるが非限定的な組み合わせは、熱分解と蒸発結晶化、酸化と蒸発結晶化である。
【0080】
好ましくは、ステップ(3)に記載の熱処理温度は、60~90℃であり、例えば60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃または90℃などであってもよく、前記温度が60℃より低い場合、リチウム製品の収率は低くなり、温度が90℃より高い場合、熱処理セクションのエネルギー消費量が増加する。
【0081】
好ましくは、前記熱処理時間は0.5~2hであり、例えば0.5h、1h、1.5h又は2hなどであってもよい。
【0082】
本発明では、前記逆抽出に使用されるガスの種類に応じて熱処理を調整し、SOガスを使用して逆抽出する場合、LiSO溶液が得られ、加熱および酸化後にLiSOが形成され、次に加熱により蒸発させて結晶化した後LiSO製品が得られる;SOを使用して逆抽出する場合、LiSOが得られ、直接蒸発させて結晶化してLiSO製品が得られる;COガスを使用して逆抽出する場合、加熱してLiCO製品が得られる;Clを使用して逆抽出する場合、LiCl製品が得られる。
【0083】
好ましくは、前記酸化に使用される酸化剤は、空気、酸素、およびオゾンガスである。
【0084】
好ましくは、前記蒸発結晶化には、MVRまたは多重効用蒸発が使用される。
【0085】
好ましくは、前記熱分解には、密閉または半密閉容器が使用される。
【0086】
好ましくは、前記分離する方法は、濾過、吸引濾過及び遠心分離のいずれか1つ、またはそれらのうちの少なくとも2つの組み合わせを含み、その中で、典型的であるが非限定的な組み合わせは遠心分離および濾過、遠心分離および吸引濾過である。
【0087】
好ましくは、前記リチウム製品は、硫酸リチウム、塩化リチウム、または炭酸リチウムであり、製品の純度>96%であり、例えば、96.5%、97%、98%又は99%などであってもよい。
【0088】
好ましくは、ステップ(3)での分離後の母液は、ステップ(1)のリチウム含有溶液に戻され、および/またはステップ(2)の第1液相に戻されて、リチウムの総収量を改善し、廃水のゼロ排出を達成する。
【0089】
好ましくは、本発明によって提供される方法は、以下のステップを含む。
【0090】
(1)中性抽出剤とキレート抽出剤を混合して複合抽出剤を形成し、中性抽出剤とキレート抽出剤の体積比を0.2:1~2:1に制御し、次に、希釈剤とフェーズ調整剤を加えて混合し、抽出システムを形成し、複合抽出剤とフェーズ調整剤の体積分率がそれぞれ独立して5~30%、0~10%になるように制御する。pH=10~13の条件下で、リチウム濃度が0.25~5g/Lの溶液で抽出し、リチウム含有溶液と有機相の体積比を0.2:1~5:1に制御し、次に分離して、リチウム濃度が0.5~3g/Lであるリチウム担持有機相が得られ;
前記中性抽出剤は、リン酸トリブチル(TBP)、ジメチルヘプチルメチルホスフェート(P350)、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリオクチル/ヘキシルホスフィンオキシド(Cyanex923)及びN,N-ジ(1-メチルヘプチル)アセトアミド(N503)いずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み;
前記キレート抽出剤は、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX84)、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトン(LIX54)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシム(LIX860)および2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX84)、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトン(LIX54)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシム(LIX860)の同じ官能基を持つ抽出剤の任意の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み;
(2)ステップ(1)で得られたリチウム担持有機相を洗浄し、次に連続向流抽出塔で気-液-液三相逆抽出し、逆抽出システムをpH=6~9に制御して、リチウム濃度>5g/Lの逆抽出液が得られ;
前記気-液-液三相逆抽出システム中のガスには、SO、SO、CO又はClのうちのいずれか1つ、または少なくとも2つの組み合わせを含み;
(3)ステップ(2)で得られた逆抽出液を60~90℃で0.5~2h熱処理して分離し、リチウム製品と分離された母液を得る。
【0091】
本発明の技術案は、図面を参照して、特定の実施例を通じて、以下でさらに説明される。実施例は、本発明の理解を助けるためだけのものであり、本発明の特定の制限と見なされるべきではないことを当業者は理解すべきである。
【0092】
本発明によって提供される抽出-逆抽出分離精製によるリチウム抽出のプロセスフローは図1の示すとおりである。これは、リチウム含有溶液はpH=10~13の条件下でリチウムの抽出が発生し、次に抽出液を洗浄してNa、K及びBなどの不純物を除去し、抽出液を気-液-液三相によって連続逆抽出してリチウム逆抽出液が得られ、次に熱処理と分離を経てリチウム製品を得た。分離された母液は、サイクル方法1に従ってLi抽出ステップに戻され、および/またはサイクル2に従ってLi逆抽出ステップに戻されてリサイクルされる。
【0093】
本発明により提供される気-液-液三相逆抽出装置の概略図は図2に示すとおりである。これは前記装置が抽出塔であり、気相が塔の底部にあるガス入口7を通って抽出塔に入り、ガス分配器6を通って抽出塔の塔本体5に入り、液体と接触して反応し、未反応ガスは塔の頂部ガス出口2から排出され;第1液相は、塔底部のライトフェーズ入口10から抽出塔に入り、塔本体によって逆抽出され、リチウムを含む逆抽出液は、ライトフェーズ出口3から排出され;第2液相は、塔の頂部にあるヘビーフェーズ入口9を通って塔内に入り、逆抽出が起こり、反応した溶液は、ヘビーフェーズ出口8を通って排出される。実際の生産ニーズに合わせて、タワー本体のプレートを調整して、段数の調整を実現する。電気攪拌機1と攪拌塔プレート4は、気-液-液の三相を充分に接触させ、パルスシステム11は、第1液相の向流に電力を供給する。
【0094】
実施例1
本実施例は抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法を提供し、以下のステップを含む:
(1)TBPとLIX84を混合して複合抽出剤を形成し、TBPとLIX84の体積比を0.2:1に制御し、スルホン化灯油を希釈剤とし、複合抽出剤の体積分率は20%であり、また、体積分率が5%のドデカノールをフェーズ調整剤として添加し、pH=10の条件下で、リチウム濃度0.5g/Lおよびナトリウム濃度10g/Lのリチウム電池廃棄物の浸出液から高原子価金属イオンを浄化して得られた溶液を抽出し、リチウム電池廃棄物の浸出液から高原子価金属イオンを浄化して得られた溶液と有機相の体積比を2.2:1に制御し、次に分離して、リチウム濃度が1g/Lの担持有機相を取得し;
(2)ステップ(1)で得られた担持有機相を水で3回洗浄した後、連続向流抽出塔で気-液-液三相逆抽出を行い、前記抽出塔の段数は3段であり、気相としてCOを使用し、水を逆抽出の第1液相とし、水と担持有機相の体積比を0.15:1に、逆抽出システムのpH=8に制御し、リチウム濃度が6.5g/Lの逆抽出液が得られ;
(3)ステップ(2)で得られた逆抽出液を60℃で2時間熱処理し、吸引濾過して炭酸リチウム製品を得て、炭酸リチウムの沈殿後の母液は、ステップ(2)の逆抽出セグメントに戻される。
【0095】
実施例2
本実施例は抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法を提供し、以下のステップを含む:
(1)TOPOとLIX860を混合して複合抽出剤を形成し、TOPOとLIX860の体積比を1:1に制御し、n-ドデカンを希釈剤とし、複合抽出剤の体積分率は25%であり、pH=12の条件下で、リチウム濃度が2g/L、ナトリウム濃度が50g/L、カリウム濃度が25g/L、ホウ素濃度が10g/Lの沈殿したリチウム母液を抽出し、沈殿したリチウム母液と有機相の体積比を1:1に制御し、次に分離して、リチウム濃度が2g/Lの担持有機相を取得し;
(2)ステップ(1)で得られた担持有機相を水で3回洗浄した後、連続向流抽出塔で気-液-液三相逆抽出を行い、前記抽出塔の段数は3段であり、気相としてSOを使用し、水を逆抽出液相とし、且つ水と担持有機相の体積比を0.1:1に、逆抽出システムのpH=6に制御し、リチウム濃度が19.5g/Lの逆抽出液が得られ;
(3)ステップ(2)で得られた逆抽出液を80℃で1時間空気酸化させた後、MVRを蒸発させて硫酸リチウム製品を得る。
【0096】
実施例3
本実施例は抽出-逆抽出分離精製によるリチウムの抽出方法を提供し、以下のステップを含む:
(1)Cyanex923とLIX54を混合して複合抽出剤を形成し、Cyanex923とLIX54の体積比を2:1に制御し、スルホン化灯油を希釈剤とし、複合抽出剤の体積分率は15%であり、pH=13の条件下で、リチウム濃度が5g/L、ナトリウム濃度が100g/L、カリウム濃度が50g/L及びホウ素濃度が5g/Lの塩湖ブライン濃縮液を抽出し、塩湖ブライン濃縮液と有機相の体積比を0.2:1に制御し、次に分離して、リチウム濃度が2.4g/Lの担持有機相を取得し;
(2)ステップ(1)で得られた担持有機相を水で4回洗浄した後、連続向流抽出塔で気-液-液三相逆抽出を行い、前記抽出塔の段数は3段であり、COを使用して気相とし、水を逆抽出の第1液相とし、水と担持有機相の体積比を0.25:1に、逆抽出システムのpH=9に制御し、リチウム濃度が9.3g/Lの逆抽出液が得られ;
(3)ステップ(2)で得られた逆抽出液を80℃で0.5h熱処理し、濾過して炭酸リチウム製品が得られ、母液は、ステップ(1)抽出セグメントに戻される。
【0097】
実施例4
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(1)のリチウム電池廃棄物の浸出液から高原子価金属イオンを浄化して得られた溶液が、リチウム鉱石浸出液と沈殿リチウム母液の混合溶液に代替され、その中でLiの濃度は1.0g/L、Naの濃度は20g/Lであり、他の不純物も少量含まれて、有機相とリチウム含有溶液の体積比は1:1に増加され、担持有機相のリチウムは0.99g/Lであることにある。
【0098】
実施例5
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(1)のリチウム電池廃棄物の浸出液から高原子価金属イオンを浄化して得られた溶液の濃度が0.25g/Lに変化されて、抽出されたリチウム電池廃棄物の浸出液から高原子価金属イオンを浄化して得られた溶液と有機相の体積比が5:1に変化され、担持有機相の中のリチウム濃度は1.18g/Lであることにある。
【0099】
実施例6
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(1)のリチウム電池廃棄物の浸出液から高原子価金属イオンを浄化して得られた溶液と有機相体積比を5:1に変化され、pHを13に上げ、担持有機相の中のリチウム濃度は2.48g/Lであることにある。
【0100】
実施例7
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(2)の水と担持有機相の体積比が0.05:1に変化されることにある。
【0101】
実施例8
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(1)のTBPとLIX84の体積比が2:1に変化されることにある。
【0102】
実施例9
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(1)のリチウム電池廃棄物の浸出液から高原子価金属イオンを浄化して得られた溶液と有機相の体積比が5:1に変化されることにある。
【0103】
実施例10
実施例2と比較すると、唯一の違いは、ステップ(2)の水と担持有機相の体積比が2:1に変化されることにある。
【0104】
比較例1
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(1)のTBPとLIX84によって形成された複合抽出剤が単独のTBPまたはLIX84に代替されることにあり、Liの抽出率はいずれも10%より小さくなった。
【0105】
比較例2
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(2)の気-液-液三相逆抽出のガスが空気に代替されることにあり、逆抽出後のpHが11.2、Liの逆抽出率<20%である。
【0106】
比較例3
例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(1)のpH=10がpH=9に変化されることにあり、Li抽出率が35.3%であるため、工業への実装の経済性がなくなった。
【0107】
比較例4
実施例1と比較すると、唯一の違いは、ステップ(1)のpH=10がpH=14に変化されることにあり、Li抽出率が75.5%である。これは不純物元素NaまたはKの競合抽出により、Liの抽出率が低下になることが考えられ、同時にpH値を上げ、アルカリ消費量が増えるため、実用化に向けた経済性が悪くなった。
【0108】
抽出-逆抽出分離精製してリチウムを抽出する方法の評価:
実施例1~8及び比較例1~4の方法におけるリチウムの抽出、逆抽出及びリチウムの総収量を計算して評価し、評価結果は表1に示すとおりである。
【0109】
実施例1~8及び比較例1~4におけるリチウムの抽出率、逆抽出率及びリチウムの総収量
【表1】
【0110】
本発明において、リチウム単回収率の計算方法は以下のとおりである。
【0111】
=R×R
【0112】
ここで、R-リチウム単回収率、%; R-リチウム単回抽出率、%; R-リチウム単回逆抽出率、%。
【0113】
実施例および比較例の分析により、本発明によって提供される方法は、複合抽出剤を使用することにより、リチウムの効率的な抽出および精製を実現し、リチウムの抽出率は92%以上であり、気-液-液三相連続逆抽出により、リチウムの逆抽出率は90%以上であり、総収率は83%以上であり、得られたリチウム製品の純度は96%以上である。当該方法は、高効率で強力な産業実用性を備えている。
【0114】
出願人は、本発明が上述の実施形態によって例示されているが、本発明が上述の特徴に限定されないこと、すなわち、本発明が実施されるために上述の特徴に依存しなければならないことを意味するものではないことを宣言している。本発明の改良、本発明のために選択された方法の等価置換、ならびに補助方法の追加、特定の方法の選択などは、本発明の保護および開示の範囲に入ることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出-逆抽出分離精製によるリチウムを抽出する方法であって、
複合抽出剤を含む抽出システムを使用して、pH=10~13の条件下でリチウム含有溶液を抽出及び分離して、リチウム担持有機相を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたリチウム担持有機相を気-液-液三相逆抽出し、リチウムを担持している逆抽出液を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた逆抽出液を熱処理して分離し、リチウム製品と分離された母液を得るステップ(3)を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(1)における前記複合抽出剤は、中性抽出剤及びキレート抽出剤を含み、前記抽出システムは、前記複合抽出剤及び希釈剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中性抽出剤は、リン酸トリブチルTBP、ジメチルヘプチルメチルホスフェートP350、トリオクチルホスフィンオキシドTOPO、トリオクチル/ヘキシルホスフィンオキシドCyanex923及びN,N-ジ(1-メチルヘプチル)アセトアミドN503のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み;
前記キレート抽出剤は、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX84)、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトン(LIX54)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシム(LIX860)および2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX84)、ドデシルフェニル-メチル-β-ジケトン(LIX54)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンズアルデヒドオキシム(LIX860)の同じ官能基を持つ抽出剤の任意の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み;
前記中性抽出剤とキレート抽出剤との体積比は0.2:1~2:1であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出システムには、フェーズ調整剤も含まれ
前記抽出システムは、複合抽出剤、フェーズ調整剤及び希釈剤を含み;前記抽出システムにおける複合抽出剤の体積分率は5~30%であり、フェーズ調整剤の体積分率は0~10%であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(1)における前記リチウム含有溶液は、リチウム鉱石浸出液、沈殿リチウム母液、リチウム電池廃棄物の浸出液及び塩湖ブラインのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み;
前記リチウム含有溶液中のリチウムの濃度は0.25~5g/Lであり;
前記リチウム含有溶液における主要な不純物元素であるナトリウム、カリウム及びホウ素の濃度は、独立して、それぞれが10~150g/L、0~50g/L、および0~10g/Lであり;
前記リチウム含有溶液には、ルビジウム、アルミニウム、マグネシウム、セシウム及びカルシウムなどの金属イオンをさらに含み;
前記リチウム含有溶液と抽出システムの有機相との体積比は0.2:1~5:1であり;
ステップ(1)では、前記リチウム担持有機相におけるリチウムの濃度は0.5~3g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(1)には、前記リチウム担持有機相に対して洗浄を行うことも更に含まれ
前記洗浄用の洗浄液が水および/またはリチウム含有溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(2)における前記気-液-液三相逆抽出システムは、第1液相、第2液相及び気相を含み;
前記気相は酸性ガスであり;
前記気相のガスはSO 、SO 、CO 又はCl のうちの任意の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み;前記リチウム製品は、硫酸リチウム、塩化リチウム、または炭酸リチウムであり、製品の純度>96%であり;
前記第1液相には水が含まれ;
前記第2液相には、リチウムに担持有機相が含まれ;
前記気-液-液三相逆抽出システムのpH=6~9であり;
前記第1液相と第2液相との体積比は0.05:1~2:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(2)における前記気-液-液三相逆抽出は、多段階の連続向流操作を使用し;
前記気-液-液三相逆抽出の装置は、連続混合沈殿タンク、抽出塔、または遠心抽出器のいずれか一つを含み;前記気-液-液三相逆抽出の段階数は1~10の間で調整可能であり;
ステップ(2)における逆抽出溶液中のリチウムの濃度>5g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(3)における前記熱処理の方式は、酸化、蒸発結晶化または熱分解のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み;
前記熱処理の温度は60~90℃であり;
前記熱処理時間は0.5~2時間であり;
前記酸化に使用される酸化剤は、空気、酸素、及びオゾンガスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記蒸発結晶化は、MVRまたは多重効用蒸発を使用し;
前記熱分解は、密閉または半密閉の容器を使用し;
ステップ(3)における前記分離する方法は、濾過、吸引濾過または遠心分離のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】