(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】心臓弁尖を改変するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526405
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 US2020059719
(87)【国際公開番号】W WO2021092576
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178625
【氏名又は名称】エーエムエックス テクノロジーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AMX TECHNOLOGIES,LLC
【住所又は居所原語表記】14405 21st Avenue North,Suite 120,Plymouth,Minnesota 55447(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ソラッジャ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】コイル,ダニエル,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ファレル,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】スウォイヤー,ジョン マシュー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC14
4C097MM09
4C097SB09
(57)【要約】
心臓内の弁尖を経皮的に改変し、それによってさらなる修復や交換を容易にするシステム、装置、及び方法。実施形態の一部においては、弁尖は切断される。他の実施形態においては、弁尖は一部又は全部が除去される。弁尖の改変は、人工弁と一緒に行うことも、単独で行うことも可能である。
【選択図】
図5G
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁尖改変装置であって、
操縦可能なガイドカテーテルと、
前記操縦可能なガイドカテーテルの遠位端から伸長可能であり、組織係合機構を有する穿孔要素と、
前記操縦可能なガイドカテーテルの前記遠位端から伸長可能であり、第1の構成から第2の構成に拡張可能な切断要素と、を備え、
前記切断要素と前記穿孔要素とは、前記切断要素と前記穿孔要素との間に弁尖を挟み込み、前記切断要素が前記弁尖を改変することを可能にするように、互いに相対的に並進可能である、弁尖改変装置。
【請求項2】
前記切断要素が電気的切断ユニットを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記切断要素が機械的切断ユニットを備える、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記組織係合機構は返しを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記切断要素は、前記第1の構成から前記第2の構成へ自己拡張する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記切断要素がワイヤを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記切断要素は、切断ユニットと、押し棒と、前記切断ユニットを前記押し棒に連結する連結要素と、を備える請求項1に記載の装置。
【請求項8】
生来の弁尖の改変を行うためのシステムであって、
操縦可能なガイドカテーテルと、
前記操縦可能なガイドカテーテルの遠位端から伸長可能な送達カテーテルと、
前記操縦可能なガイドカテーテルの前記遠位端から伸長可能であり、第1の構成から第2の構成に拡張可能な切断要素であって、前記切断要素は、
遠位交差部を有する切断ユニットと、
押し棒と、
前記切断ユニットを前記押し棒に接続する接続部材と、を含むシステム。
【請求項9】
前記システムの近位端から前記送達カテーテルを通って延び、前記遠位交差部に接続され、前記切断要素を前記第2の構成に拡張するために使用可能なテザーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記切断要素が電気的切断ユニットを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記切断要素が機械的切断ユニットを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記組織係合機構は返しを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記切断要素は、前記第1の構成から前記第2の構成へ自己拡張する、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記切断要素がワイヤを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
弁尖を処置する方法であって、
カテーテルを通して切断要素を標的の弁尖に前進させることと、
前記切断要素を第1の構成から第2の構成に拡張することと、
前記弁尖を前記切断要素に係合させることと、
前記切断要素で前記弁尖を改変することと、を含む方法。
【請求項16】
前記切断要素を第1の構成から第2の構成に拡張することが、前記切断要素が前記第2の構成に自己拡張するように、前記切断要素をカテーテルから放出することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記弁尖を前記切断要素に係合させることが、前記弁尖を穿孔要素で近位に後退させながら前記切断要素を遠位に前進させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記弁尖を前記切断要素に係合させることが、前記第1の構成において前記弁尖を通して遠位に前記切断要素を前進させ、前記第2の構成において前記弁尖を通して近位に前記切断要素を後退させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記切断要素で前記弁尖を改変することは、前記弁尖に少なくとも1つのスリットを形成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記弁尖に少なくとも1つのスリットを形成することが、縁から間隔を空けて前記弁尖の中央にスリットを形成することを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年11月8日に出願された「Heart Valve Leaflet Modification(心臓弁尖の改変)」と題する米国仮特許出願第62/933,007号の優先権を主張する。なお優先権の基礎とした出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、新規かつ有利な経カテーテル送達型弁修復デバイスに関するものである。より具体的には、本開示におけるデバイスは、僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁、及び三尖弁などの心臓弁が関与する病理の治療に関連する問題に対処するものである。
【背景技術】
【0003】
本開示において提供される背景の説明は、一般的に本開示の文脈を提示することを目的とするものである。この背景技術の項に記載されている範囲での本願の発明者(ら)の業績、及び出願時に他の先行技術として認定されない可能性のある記述の態様は、明示的にも黙示的にも本開示に対する先行技術とは認めない。
【0004】
心臓弁膜症は、患者の心臓弁に影響を及ぼす狭小化(すなわち狭窄)、機能不全(すなわち不全症若しくは逆流)、又はこれら2つの疾患の組み合わせで構成されることがある、一般的な心血管疾患の1つである。心臓弁膜症が発症すると、心臓の各室は有害なリモデリングを起こし、心不全、重症化、生存率の低下を招く。
【0005】
一般的には開腹手術が行われるが、手術のリスクから手術の候補にならない患者も多くいる。多くの場合、周術期や術後の回復を最小限にするために、治療には低侵襲なアプローチが好まれる。
【0006】
心臓弁膜症に対する経カテーテル治療には、弁を修復する方法と、患者の弁の内側に人工弁を埋め込む完全置換術とがある。また、機能不全や脱落した既設のプロテーゼの中にプロテーゼを移植する場合もある(例えばバルブ・イン・バルブ)。
【0007】
心臓弁膜症に対する経カテーテル治療では、一般的に生来の弁尖や人工の補綴物を温存する。しかし、残念なことに、その場に残された生来の弁尖や人工の補綴物は、その後の修復や置換の成功を妨げる場合がある。場合によっては、妨害のリスクが高すぎるために経カテーテル治療を成功させることができないこともある。また、弁を埋め込むまで妨害に気づかない場合もある。
【0008】
具体的な例としては、経カテーテル僧帽弁置換術がある。これは、患者さんの生来の僧帽弁装置、又は過去に設置した人工弁のいずれかの中に弁補綴物を移植するものである。僧帽弁輪が左室流出路に近いため、経カテーテル僧帽弁置換術では、生来の又は人工の弁尖が収縮期の流れの方向に位置することがある。生来の弁尖又は人工の補綴物が前方に位置することにより、重度の左室流出路閉塞が発生し、生命を脅かす可能性がある。
【発明の概要および目的】
【0009】
以下では、本開示の1つ又は複数の実施形態の簡略化された概要を示すことにより、そのような実施形態の基本的な理解を提供することを目的とする。この概要は、全ての想定される実施形態の広範な概要ではなく、全ての実施形態の重要な又は決定的な要素を特定することも、任意の又は全ての実施形態の範囲を画定することも意図していない。
【0010】
本開示は、心臓内の弁尖を経皮的に改変し、それによって置換の更なる修復を促進するためのシステム及び方法に関するものである。実施形態の一部においては、弁尖は切断される。他の実施形態においては、弁尖は一部又は全部が除去される。本開示は、心室内に配置される操縦可能なガイドカテーテル(SGC)、送達カテーテル(DC)、切断要素(CU)、返し(barb)又は保持要素(B)を有する穿孔部材(P)から構成されている。本開示は、僧帽弁の弁尖を改変するための方法を説明するが、これらの同じ方法及びツールは、後続の弁治療(すなわち、修復又は置換)の前に、又は単独の治療として、心臓内の任意の弁尖に使用することが可能である。
【0011】
複数の実施形態が開示されているが、本開示のさらに他の実施形態は、本発明の例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかとなるであろう。十分に理解されるように、本開示の様々な実施形態は、全て本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な明白な態様において改変が可能である。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的なものとみなされ、制限的なものではない。
【0012】
本発明の一態様は、弁尖改変装置であって、操縦可能なガイドカテーテルと、操縦可能なガイドカテーテルの遠位端から伸長可能であり、組織係合機構を有する穿孔要素と、操縦可能なガイドカテーテルの遠位端から伸長可能であり、第1の構成から第2の構成に拡張可能な切断要素と、を備え、切断要素と穿孔要素とは、切断要素と穿孔要素との間に弁尖を挟み込み、切断要素が弁尖を改変することを可能にするように、互いに相対的に並進可能である、弁尖改変装置である。
【0013】
本発明の別の態様は、生来の弁尖の改変を行うためのシステムであって、操縦可能なガイドカテーテルと、操縦可能なガイドカテーテルの遠位端から伸長可能な送達カテーテルと、操縦可能なガイドカテーテルの遠位端から伸長可能であり、第1の構成から第2の構成に拡張可能な切断要素であって、切断要素は、遠位交差部を有する切断ユニットと、押し棒(プッシュロッド)と、切断ユニットを押し棒に接続する接続部材と、を含むシステムである。
【0014】
本発明の別の態様は、弁尖を処置する方法であって、カテーテルを通して切断要素を標的の弁尖に前進させることと、切断要素を第1の構成から第2の構成に拡張することと、弁尖を切断要素に係合させることと、切断要素で弁尖を改変することと、を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施形態が可能であるこれら及び他の態様、特徴及び利点は、添付の図面を参照しつつ行われる本発明の実施形態の以下の説明から明らかになり、解明されるであろう。
【0016】
【
図1】参考として提供される人間の心臓の図である。
【0017】
【
図2】本発明が対象とする課題を示すために提供された、人工僧帽弁が装着されたヒトの心臓の図である。
【0018】
【
図3A】参考として提供される未修復の僧帽弁の透視図である。
【0019】
【
図3B】本発明の実施形態に従って改変された僧帽弁の透視図である。
【0020】
【
図4A】本発明の一実施形態に従って改変された僧帽弁の平面図である。
【0021】
【
図4B】本発明の一実施形態に従って改変された僧帽弁の平面図である。
【0022】
【
図5A】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0023】
【
図5B】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0024】
【
図5C】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0025】
【
図5D】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0026】
【
図5E】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0027】
【
図5F】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0028】
【
図5G】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0029】
【
図6A】本発明の実施形態に従って改変された僧帽弁の透視図である。
【0030】
【
図6B】本発明の実施形態に従って改変された僧帽弁の透視図である。
【0031】
【
図6C】本発明の実施形態に従って改変された僧帽弁の透視図である。
【0032】
【
図6D】本発明の実施形態に従って改変された僧帽弁の透視図である。
【0033】
【
図6E】本発明の実施形態に従って改変された僧帽弁の透視図である。
【0034】
【
図6F】本発明の実施形態に従って改変された僧帽弁の透視図である。
【0035】
【
図7A】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0036】
【
図7B】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0037】
【
図7C】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0038】
【
図7D】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0039】
【
図7E】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0040】
【
図7F】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0041】
【
図7G】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0042】
【
図7H】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0043】
【
図8】本発明の弁尖改変方法の一実施形態によって改変された改変大動脈弁の平面図である。
【0044】
【
図9A】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0045】
【
図9B】本発明の弁尖改変方法の一実施形態のステップを示す図である。
【0046】
【
図10A】本発明の弁尖改変方法の一実施形態によって改変された改変大動脈弁の平面図である。
【0047】
【
図10B】本発明の弁尖改変方法の一実施形態によって改変された改変大動脈弁の平面図である。
【0048】
【
図10C】本発明の弁尖改変方法の一実施形態によって改変された改変大動脈弁の平面図である。
【0049】
【
図10D】本発明の弁尖改変方法の一実施形態によって改変された改変大動脈弁の平面図である。
【0050】
【
図10E】本発明の弁尖改変方法の一実施形態によって改変された改変大動脈弁の平面図である。
【0051】
【
図11】本発明の弁尖改変装置の一実施形態を示す側面図である。
【0052】
【
図12】本発明の弁尖改変装置の一実施形態を示す側面図である。
【0053】
【
図13】本発明の弁尖改変装置の一実施形態を示す側面図である。
【0054】
【
図14】本発明の弁尖改変装置の一実施形態を示す側面図である。
【0055】
【
図15】本発明の弁尖改変装置の一実施形態を示す側面図である。
【0056】
【
図16】本発明の弁尖改変装置の一実施形態を示す側面図である。
【0057】
【
図17】本発明の弁尖改変装置の一実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
次に、本発明の具体的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具現化してもよく、本開示に記載された実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、かつ当業者に本発明の範囲が完全に伝わるように提供されている。添付の図面に示された実施形態の詳細な説明で使用される用語は、本発明を限定することを意図していない。図面において、同一の番号は同一の要素を示す。
【0059】
本発明は、カテーテルを介して展開されるデバイスを用いた大動脈根及び上行大動脈の病変の処置に関するものである。本開示は、患者の大動脈根及び上行大動脈について本開示の実施形態を論じるが、実施形態は、患者の心臓の任意の弁に適用可能であり、本開示は、この適用に限定されると解釈されてはならない。本開示に記載された実施形態は、ヒトの心臓の他の弁及び室の修復に適用され得る。
【0060】
患者に使用される場合、本発明の装置は、左心室流出路(「LVOT」)閉塞のリスクを低減し、その後の弁の修復又は交換を容易にするために、弁尖を改変する。この装置は、任意の弁尖の任意の部分に誘導可能で、標的とした部分の一部又は全部を切断したり除去したりすることができる。手術者の観点からは、心エコーや透視でリアルタイムに評価しながら、デバイスの埋め込みを誘導することができる。切断要素は、患者の生体構造、及びその後の弁膜症治療を容易にするための要望に合うように選択された様々な形状であり得る。
【0061】
心臓は通常、僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁の4つの弁で構成されている。説明のために、本開示は、心臓の弁尖を改変するための本発明の装置及び方法の使用に焦点を当てている。
【0062】
図1は、参考のために提供され、本開示で使用される略語のいくつかを確立するために、人間の心臓の様々な部分を示している。僧帽弁前尖AMLは、心臓骨格の一部で、大動脈弁AVの近く、左室流出路LVOTの近くにある。収縮圧力により僧帽弁閉鎖が起こる場合、AMLとLVOTの近接性は拡張期には増加し、収縮期には減少する。したがって、LVOTを通る収縮期の流れは、通常、AMLによって妨げられることはない。
【0063】
図2に示すように、僧帽弁を人工僧帽弁PMVに置き換える僧帽弁置換術が行われる場合、AMLは典型的には人工弁のフレームに外嵌固定された状態になる。このようにAMLが固定されると、LVOTを通る収縮期の流れが阻害され、このような閉塞は生命を脅かす可能性がある。多くの場合、僧帽弁置換術、特に経カテーテル手段を用いる僧帽弁置換術は、AML固定によるLVOT閉塞があるため実施されない。
【0064】
患者に開腹手術を行う場合、僧帽弁治療を容易にするために、外科医はAMLを切除することがある。本発明は、AMLを改変し、それによってLVOT閉塞のリスクを低減するために使用可能な装置及び方法を対象とする。この改変は、AMLをそのベースライン状態(
図3A)から、前方部分及びその自由端が、その後に配置される人工弁のセルを血流が通過できるようにする改変部10の実施形態を有する構成(
図3B)へと変更するものである。
図3Bに示す実施形態の非限定的な一例では、改変部10は、僧帽弁の収縮期閉鎖の間に弁尖接合(コアプテーション)を維持するカットのみである。
図4Aは、僧帽弁前尖AMLと僧帽弁後尖PMLとの接合時の改変部10の位置の一例を示すMVの平面図である。別の実施形態では、改変は弁尖の部分的又は完全な除去であり(
図4B)、この場合は人工僧帽弁の移植を優先して、生来の僧帽弁の使用を終了させるであろう。
【0065】
図5A~5Gを参照して、本発明の装置及び方法の一実施形態を説明する。まず
図5Aでは、操縦可能なガイドカテーテル20は、左心房に案内され、カテーテル20の遠位端22が僧帽弁前尖AMLに向くように方向付けられる。当業者であれば、この方法は他の解剖学的弁を改変するために使用することができ、この方法は非限定的な例として提供されていることを理解するであろう。
【0066】
次に、
図5Bに見られるように、操縦可能なガイドカテーテル20の遠位端22から穿孔要素30を前進させる。穿孔要素30は、返し(barb)又は同様の保持要素等の組織係合機構32を含み、AML及びPMLが接合される収縮期(
図5C)、及びPMLが左心房LAから左心室LVへの血液の流れによってAMLから離れるように向けられる拡張期(
図5D)の両方においてAMLを固定するように導く。穿孔要素30は、AMLを通るガイドワイヤの配置のためのハイポチューブ(図示せず)を含んでもよい。
【0067】
図5E及び
図5Fを参照すると、AMLが固定されると、切断要素40が、操縦可能なガイドカテーテル20内に並進可能に収容されている送達カテーテル50を通って前進し、改変のためにAMLに係合される。使用できる穿孔の方法としては、例えばRFエネルギー、弁尖が閉じて針先を当てる機械的な力などがある。切断要素40の様々な実施形態は、以下でより詳細に説明される。
【0068】
図6A~6Fは、本発明によるAML(又は他の弁尖)になされ得る改変の非限定的な様々な例を示している。
図6Aにおいて、改変部10は、単一のスリット12として具現化されている。
図6Bは、ダブルスリット13を示す図である。
図6Cは、細長いスリット14を示す図である。
図6Dは、王冠状のスリット15を示す図である。
図6Eは、十字型スリット16を示す図である。
図6Fは、組織切除を伴うワイドスリット17を示す。
【0069】
次に
図7A~7Hを参照して、本発明の装置が大動脈弁AVに改変を加えるために使用される、本発明の方法の一実施形態を説明する。参照のために、
図7Aは、左心室LVと上行大動脈Aoをつなぐ大動脈弁AVが拡張期に閉鎖している状態を示している。
図7Bは、同じく参照のために、収縮期の大動脈弁AVの開弁状態を示している。
【0070】
まず
図7Cにおいて、本発明の方法の実施形態は、操縦可能なガイドカテーテル20を上行大動脈を通して大動脈の後方の位置に案内し、それを標的の弁尖に向け、ガイドカテーテル20の遠位端22を通して送達カテーテルを前進させることから開始する。
図7Cは、拡張期の間に送達カテーテル50が左大動脈尖に前進している様子を示し、
図7Dは、収縮期の間に送達カテーテル50がその位置を維持している様子を示している。本発明のシステムは、送達カテーテル50を冠状動脈尖のいずれか1つ(すなわち、左冠状動脈、右冠状動脈、又は非冠状動脈)に配置するために使用されてもよい。
【0071】
図7Eにおいて、切断要素40は、鋭利な遠位交差部42が弁尖を突き破って通過するように送達カテーテルから前進させる。切断要素40の座屈を防止し、より正確な配置を容易にするために、弁尖に接するまで送達カテーテル50を前進させることが有利な場合がある。少なくともいくつかの実施形態において、切断要素40は融除(アブレーション)電気要素であり、弁尖を通過させるために通電されてもよい。切断の他の様式は、機械的切断、冷凍アブレーション切断、レーザー切断、RF切断、超音波切断、電気外科切断などの当業者に公知のものであるがこれらに限定されない。他の実施形態では、追加の穿孔ワイヤは、切断要素40を弁尖に通すために、切断要素40のすぐ遠位で、切断要素40と一体的に進められてもよい。
図7Fは、切断要素40が弁尖を通過し、所望の形状の改変を作るための展開された構成へと拡がった状態を示している。
【0072】
図7Gにおいて、切断要素40は、適用可能であれば通電されながら、改変部の形成を開始するように、展開された構成の弁尖を通って後退する。
図7Hでは、切断要素40が弁尖を通過し、改変箇所が形成された状態である。
【0073】
図8は、
図7A~7Hの方法を用いて大動脈弁尖に施された改変部10の完成図である。改変部10は、弁尖の中間部に形成され、被覆縁から離間した単一のスリット18からなる。
【0074】
次に
図9A~9Bを参照すると、方法の追加のステップが示されており、これは、所望により、同じ切断要素40を使用して、追加の改変形状を作成するために使用することができる。
図9Aにおいて、操縦可能なガイドカテーテル20及び送達カテーテル50は、切断要素40が弁尖から後退した状態で弁尖上の異なる位置まで回転、屈曲、又は伸展によって再配置され、次に上述したように弁尖を越えて進められ、又は既に形成されたスリットを使用して進められる。その後、切断要素40は、弁尖を通して後退し、追加の改変を形成する。
【0075】
図10A~10Fを参照すると、前述の方法を用いて大動脈弁に施された変更例10の非限定的な例が示されている。
図10Aは、無改変の大動脈弁AVの参考図である。
図10Bは、弁尖の中心から弁尖の中間部まで放射状に延びるスリット100の形態の改変部10を示す。
図10Cは、弁尖の中央に形成されたスリット101を、エッジから離れた位置で、大動脈弁周縁とほぼ並行に配向させたものである。
図10Dは、弁尖の縁から形成され、弁尖内の点まで大動脈弁周縁とほぼ並行に走るスリット102を示す。
図10Eは、大動脈弁弁尖組織部分Xを除去する能力を効果的に導く、1つの自由縁から別の自由縁に延びるスリット103を示す。
【0076】
本発明の切断要素40の様々な実施形態に関して、切断要素40が、一般に、遠位交差部42を有する切断ユニット44と、切断要素40を送達カテーテル50を通して進めるために用いられる押し棒46と、切断ユニット44を押し棒46に連結する連結要素48とを備えることを示す
図11にまず注意が向けられる。
【0077】
切断ユニット44は、概して、第1の構成と、第2の展開された構成とを有するループ状のワイヤである。第2の構成は、少なくとも1つの実施形態において、送達カテーテルからの放出時に第2の構成となるように、ワイヤに熱セットされる。少なくとも1つの実施形態では、ワイヤは、ニチノールなどの記憶金属から形成されている。一実施形態では、切断ユニット44は、弁の片側又は両側からの弁尖の係合を可能にする形状を有する自己拡張型である。別の実施形態では、切断ユニット44は、弁尖の帯電及び切断のための露出した要素を有する。さらに別の実施形態では、切断ユニット44は、弁尖を機械的に切断するための鋭い先端を有する。さらに別の実施形態では、切断ユニット44は、弁尖を通過させ、その後、拡張又は帯電させることで改変を容易にする。
【0078】
切断ユニット44は、心臓弁の解剖学的構造及び計画されたその後の治療に合わせて、様々な形状に変更することができる。
図12~
図15は、切断ユニット44の形状のみが異なる切断要素40の実施形態である。
図12は、長楕円形の翼60、61が形成される第2の拡大された構成の切断ユニット44を示す。
図13は、長楕円形の翼62、63が形成された第2の拡大された構成における切断ユニット44を示す。
図14は、後退翼64、65が形成された第2の拡大された構成における切断ユニット44を示す。
図15は、細長い後退翼66、67が形成された第2の拡大された構成における切断ユニット44を示す。
【0079】
図16及び
図17は、切断ユニット44の構成を第1の構成から第2の構成に手動で変更するために、テザー72を利用する切断要素70の実施形態を示す図である。切断要素70は、他の実施形態と同様に、遠位交差部42を有する切断ユニット44と、切断要素40を送達カテーテル50を通して進めるために用いられる押し棒46と、切断ユニット44を押し棒46に連結する連結要素48と、を含む。テザー72は、カテーテルの近位端から続いており、そこには、ユーザがテザーを引っ張ることができる機構が取り付けられている。テザー72の遠位端74は、切断ユニット44の遠位交差部42に取り付けられている。テザー72を引っ張ると、遠位交差部42が引っ込み、
図17に見られるように、切断ユニット44が第2の構成を取るようになる。
【0080】
本開示で使用する上で、「実質的に」又は「概ね」という用語は、作用、特性、性質、状態、構造、項目、又は結果の完全又はほぼ完全な範囲又は程度を意味する。例えば、「実質的に」又は「概ね」密閉されているオブジェクトは、そのオブジェクトが完全に密閉されているか、ほぼ完全に密閉されているかのいずれかを意味する。絶対的な完全性から逸脱することが正確にはどの程度許容されるかは、場合によっては特定の文脈に依存することがある。しかしながら、概して、完全性への近さは、絶対的且つ完全な完成が得られたのと同じような全体的な結果が得られる程度の完成度であろう。ある行為、特性、性質、状態、構造、項目、結果などが完全にあるいはほぼ完全に欠如していることを意味する否定的な意味合いで使われる場合にも同様に、「実質的に」又は「概ね」という表現が適用可能である。例えば、ある成分又は要素を「実質的に含まない」又は「概ね含まない」要素、組み合わせ、実施形態、又は組成物は、一般的にその測定可能な効果がない限りにおいて、その項目を実際にまだ含むことができる。
【0081】
本開示にて使用される「一実施形態」又は「ある実施形態」への任意の言及は、実施形態に関連して説明される特定の要素、特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の各所で「一実施形態において」という表現が登場するが、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「comprise(含む・備える)」、「comprising(含む・備える)」、「includes(含む)」、「has(有する)」、「having(有する)」又はその他の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素のリストから構成されるプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていない他の要素や、そのプロセス、方法、物品、又は装置に固有の要素を含んでいてもよい。また、明示的に別段の定めがない限り、「又は」は包括的な「又は」を意味し、排他的な「又は」を意味するものではない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれかの場合に満たされる。Aが真(又は存在する)でBが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)でBが真(又は存在する)、AとBの両方が真(又は存在する)。
【0083】
また、本開示の実施形態の要素及び構成要素を説明するために、「a」又は「an」の使用が採用される。これは、単に便宜上、説明の一般的な意味を持たせるために行っている。この明細書は、そうでないことが明らかでない限り、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は複数形も含む。
【0084】
本発明は、特定の実施形態及び用途の観点から説明されてきたが、当業者であれば、この教示に照らして、請求の範囲に記載された発明の趣旨から逸脱することなく、又は請求の範囲に記載された発明の範囲を超えて、追加の実施形態及び改変を生み出すことが可能である。したがって、本開示における図面及び明細書は、本発明の理解を容易にするために例示として提示されたものであり、その範囲を限定するものと解釈してはならないことが理解される。
【国際調査報告】