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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】放射性標識された標的化リガンド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20221223BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20221223BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221223BHJP
   A61K 38/12 20060101ALN20221223BHJP
   C07D 487/08 20060101ALN20221223BHJP
【FI】
C07K7/64
A61K51/08 100
A61K51/08 200
A61P35/00
A61K38/12
C07D487/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526432
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 AU2020051209
(87)【国際公開番号】W WO2021087568
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】2019904218
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519121740
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF QUEENSLAND
(71)【出願人】
【識別番号】522178991
【氏名又は名称】クラリティ・ファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Clarity Pharmaceuticals Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】トゥレヒト,クリストファー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ソ イン イー,バネッサ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイキー,イドリス
(72)【発明者】
【氏名】ムスタカーメド,ムニア アハメド サイエド
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダム,エレン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C050AA03
4C050BB10
4C050CC12
4C050EE06
4C050FF02
4C050GG04
4C050HH04
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA12
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA16
4C084BA24
4C084BA32
4C084BA37
4C084CA59
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085HH03
4C085JJ02
4C085KA09
4C085KA29
4C085KB07
4C085KB56
4C085KB74
4C085KB82
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA35
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、放射線造影剤および放射性医薬品として有用な化合物に関する。本化合物は、放射性核種が配位することができ、画像診断や放射線療法に有用であり得る。また、本発明は、本発明の非配位性化合物および放射性標識化合物を利用する予後診断および治療方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
は、H、OH、ハロゲン、シアノ、NO、置換されていてもよいC-C12アルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアミドおよび置換されていてもよいアリールからなる群から選択され;
Xは、
【化2】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーは、不在であるか、または、以下から選択される
【化3】
(式中、mは独立して1~10の整数である)]
で表される化合物またはその塩、錯体、異性体、溶媒和物若しくはプロドラッグ。
【請求項2】
式(II):
【化4】
[式中、
Xは、
【化5】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーは、不在であるか、または、以下から選択される
【化6】
(式中、mは、独立して、1~10の整数である)]
で表される請求項1に記載の化合物またはその塩、錯体、異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項3】
式(III):
【化7】
[式中、
は、H、OH、ハロゲン、シアノ、NO、置換されていてもよいC-C12アルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアミドおよび置換されていてもよいアリールからなる群から選択され;
Xは、
【化8】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーは、以下から選択される
【化9】
(式中、mは、独立して、1~10の整数である)]
で表される化合物またはその塩、錯体、異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項4】
式(IV):
【化10】
[式中、
は、H、OH、ハロゲン、シアノ、NO、置換されていてもよいC-C12アルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアミドおよび置換されていてもよいアリールからなる群から選択され;
Xは、
【化11】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーは、以下から選択される
【化12】
(式中、mは、独立して、1~10の整数である)]
で表される化合物またはその塩、錯体、異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項5】
リンカーが、
【化13】
[式中、mは上記と同意義である]
である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
mが1、2または3から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
mが0である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
mが3である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
がCHである、請求項1および3~8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の化合物を含む組成物。
【請求項11】
化合物が金属と錯体を形成する、請求項1~10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
金属が銅である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
対象を放射線イメージングする方法であって、請求項11または12に記載の化合物を対象に投与することを含む方法。
【請求項14】
対象における疾患を処置または予防するための方法であって、請求項11または12に記載の化合物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項15】
疾患が癌または腫瘍である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
疾患の処置または予防のための医薬の製造における、請求項1~12のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項17】
疾患が、癌または腫瘍である、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、放射線造影剤および放射性医薬品として有用な化合物に関する。本化合物は、放射性核種が配位することができ、画像診断や放射線療法に有用であり得る。また、本発明は、本発明の非配位性化合物および放射性標識化合物を利用する予後診断および治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
放射性標識化合物は、放射線造影剤または放射性医薬品として使用することができる。このような化合物を放射線イメージングや放射性医薬品として使用するためには、化合物が放射性核種を含むことが可能であり、且つ、必要な安定性、適合性、その他物理的特性を有している必要がある。
【0003】
放射性標識化合物は、腫瘍や関連する癌のイメージングまたは処置によく使用されている。このような使用に適した化合物は、特定の腫瘍または癌に特徴的な所定の受容体または標的部位に結合することが可能なフラグメントを含んでいる。本化合物はまた、その崩壊生成物によって腫瘍または癌の画像化および処置を可能する、必要な崩壊特性を有する放射性核種を含んでいる。放射性標識化合物の詳細な性質は、標的とする部位に依存する。
【0004】
化合物は、放射性核種の解離が最小限になるよう、放射性核種を配位することができなければならない。放射性核種の解離は、特に投与後の生体内では、遊離した放射性核種の循環により、他の組織に望ましくない損傷を与え、また放射性画像処理または治療に対する放射性標識化合物の有効性を低下させるので、望ましくない。放射性核種は自然に放射性崩壊を起こすので、その崩壊生成物が、放射性核種が配位している化合物の分解をもたらし得る。放射線分解と呼ばれるこの現象は、放射性核種の望ましくない解離をもたらし、それによって投与された化合物の全体的な効果に影響を及ぼし、望ましくない効果をもたらし得る。
【0005】
放射性標識化合物は、少なくとも標的部位への結合を企図するフラグメントと、放射性核種を配位またはキレート化することができるフラグメントを含むので、これらのマルチコンポーネント化合物は、必要なフラグメントを構築可能な合成経路に依存する。特定のフラグメントは1つまたは複数の反応性官能基を含むため、合成経路は、所望の官能基に対して選択的で、不要な副反応の発生を最小限に抑えなければならない。標的部位への結合を企図するフラグメントの性質は、標的部位そのものに強く依存するため、化合物を入手する合成経路は、既存のあらゆる官能基に適合するものでなければならない。放射性核種を含む配位化合物は、通常、遊離化合物を放射性核種に暴露することによって得られるが、これらの反応では放射性標識化合物の収率が低いことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線イメージングや放射線療法に使用できる新しい放射性標識化合物のニーズは依然として存在する。本化合物は十分に安定で、必要な結合選択性を有し、十分な収率で入手可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、ケモカイン受容体4(CXCR4)に結合する新規化合物に関する。本発明者らは、特定のリンカーを介して特定の環状ポリペプチドに結合している特定の大環状リガンド(サルコファジン)を用いることによって、CXCR4受容体に効果的に結合する化合物が提供されることを見出した。放射性同位元素と複合体化したとき、リガンド-放射性同位元素複合体は、有益な放射線イメージングおよび放射線療法特性をもたらす。
【0008】
第1の態様において、本発明は、式(I):
【化1】
[式中、
は、H、OH、ハロゲン、シアノ、NO、置換されていてもよいC-C12アルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアミドおよび置換されていてもよいアリールからなる群から選択され;
Xは、
【化2】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーは、不在であるか、または、以下から選択される
【化3】
(式中、mは独立して1~10の整数である)]
で表される化合物またはその塩、錯体、異性体、溶媒和物若しくはプロドラッグを提供する。
【0009】
一実施形態では、リンカーは存在せず、式(I)の化合物は、以下の構造を有する。
【化4】
(ここで、RおよびXは、上記と同意義である)。
【0010】
一実施形態では、式(I)の化合物は、以下の構造
【化5】
(式中、
リンカーは、
【化6】
から選択され;
、Xおよびmは、上記と同意義である)
を有する。
【0011】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、以下の構造
【化7】
(式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である)
を有する。
【0012】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、以下の構造
【化8】
(式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である)
を有する。
【0013】
第2の態様において、本発明は、式(II):
【化9】
[式中、
Xは、
【化10】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーは、不在であるか、または、以下から選択される
【化11】
(式中、mは、独立して、1~10の整数である)]
で表される化合物またはその塩、錯体、異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0014】
一実施形態では、リンカーは存在せず、式(II)の化合物は、以下の構造
【化12】
(式中、Xは上記と同意義である)を有する。
【0015】
一実施形態では、式(II)の化合物は、以下の構造
【化13】
(式中、
リンカーは、
【化14】
から選択され;
は、上記と同意義である)
を有する。
【0016】
別の実施形態では、式(II)の化合物は、以下の構造
【化15】
(式中、Xおよびmは、上記と同意義である)
を有する。
【0017】
別の実施形態では、式(II)の化合物は、以下の構造
【化16】
(式中、Xおよびmは、上記と同意義である)
を有する。
【0018】
第3の態様において、本発明は、式(III):
【化17】
[式中、
は、H、OH、ハロゲン、シアノ、NO、置換されていてもよいC-C12アルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアミドおよび置換されていてもよいアリールからなる群から選択され;
Xは、
【化18】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーは、以下から選択される
【化19】
(式中、mは、独立して、1~10の整数である)]
で表される化合物またはその塩、錯体、異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0019】
一実施形態では、式(III)の化合物は、以下の構造
【化20】
(式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である)
を有する。
【0020】
一実施形態では、式(III)の化合物は、以下の構造
【化21】
(式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である)
を有する。
【0021】
第4の態様において、本発明は、式(IV):
【化22】
[式中、
は、H、OH、ハロゲン、シアノ、NO、置換されていてもよいC-C12アルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアミドおよび置換されていてもよいアリールからなる群から選択され;
Xは、
【化23】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーは、以下から選択される
【化24】
(式中、mは、独立して、1~10の整数である)]
で表される化合物またはその塩、錯体、異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0022】
一実施形態において、式(IV)の化合物は、以下の構造
【化25】
(式中、R、Xは、上記と同意義である)
を有する。
【0023】
別の実施形態では、式(IV)の化合物は、以下の構造
【化26】
(式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である)
を有する。
【0024】
一実施形態では、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、金属と錯体化される。別の実施形態では、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、放射性同位体である金属と錯体化される。別の実施形態では、放射性同位体は、銅(Cu)の放射性同位体である。
【0025】
第5の態様において、本発明は、第1~第4の態様の化合物またはその塩と、1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む組成物を提供する。
【0026】
第6の態様において、本発明は、対象の放射線イメージングのための方法を提供し、該方法は、第1~第4の態様の化合物若しくはその塩、または第5の態様の組成物を、対象に投与することを含んでなる。
【0027】
第7の態様では、本発明は、対象の疾患を処置または予防するための方法を提供し、該方法は、第1~第4の態様の化合物もしくはその塩、または第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0028】
一実施形態では、疾患は癌または腫瘍である。
【0029】
第8の態様では、本発明は、疾患を処置または予防するための医薬の製造における、第1~第4の態様の化合物またはその塩の使用を提供する。
【0030】
一実施形態では、疾患は癌または腫瘍である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】化合物8の1H NMRスペクトル。
図2】化合物8の13C NMRスペクトル。
図3】化合物8の19F NMRスペクトル。
図4】化合物8のESI-MSスペクトル。
図5】化合物9の1H NMRスペクトル。
図6】化合物9の13C NMRスペクトル。
図7】化合物9のMALDI-TOFスペクトル。
図8】化合物11のESI-MSスペクトル。
図9】化合物12のESI-MSスペクトル。
図10】化合物13のESI-MSスペクトル。
図11】化合物14のESI-MSスペクトル。
図12】化合物15の分析用HPLCクロマトグラム。
図13】化合物15のESI-MSスペクトル。
図14】化合物16の分析用HPLCクロマトグラム。
図15】化合物16のESI-MSスペクトル。
図16】化合物17の分析用HPLCクロマトグラム。
図17】化合物17のESI-MSスペクトル。
図18】化合物18のHPLCクロマトグラム。
図19】化合物18のESI-MSスペクトル。
図20】化合物19のHPLCクロマトグラム。
図21】化合物19のESI-MSスペクトル。
図22】化合物20のHPLCクロマトグラム。
図23】化合物20のESI-MSスペクトル。
図24】実施例7の動物実験の放射性同位体ペプチドの集計結果。
図25】実施例7のラット投与試験の経時的な画像(22時間)。
図26】実施例7の投与試験のグラフ。
図27】実施例7の投与試験の投与後22時間における両トレーサー間の生体分布を比較したグラフ(臓器を秤量し、放射能をガンマカウンターで計測し、%ID/gを計算した)。
図28】実施例7の細胞取り込み試験を経時的に示すグラフ。
図29】実施例8の(t-BOC)4-5 BisCOSar-ペプチドのHPLCトレース。
図30】実施例10の分岐PEGペプチドアナログのLCMSトレース。
図31】実施例8の(t-BOC)4-5 BisCOSar-ペプチドのESI-MS。
図32】実施例11の分岐PEGペプチドのHPLCトレース。
図33】実施例11の分岐PEGペプチドのEIS-MSトレース。
図34】実施例11の粗製二官能性化合物のLCMSトレース。
図35】実施例13の化合物の放射化学的収率および純度の経時変化を示す表。
図36a】実施例13に開示された化合物についての特異的結合を、投与量に対する割合(%)で経時的に示したグラフ。
図36b】実施例13に開示された化合物についての特異的内在化を、投与量に対する割合(%)で経時的に示したグラフ。
図37a】実施例14の[64Cu]SAR-PEG3-pentixatherの放射性標識安定性を示すグラフ。
図37b】実施例14の[64Cu]SAR-ビス-pentixatherの放射性標識安定性を示すグラフ。
図38】実施例16の化合物のLogD値を示す表。
図39】実施例17のHAS三量体安定性のHPLCトレース。
図40a】実施例17の三量体の結合を経時的に示したグラフ。
図40b】実施例17の三量体の内在化を経時的に示したグラフ。
図41a】モノ及びビスpentixatherに対する三量体の細胞結合の比較を経時的に示したグラフ(実施例18)。
図41b】モノ及びビスpentixatherに対する三量体の内部化の比較を経時的に示したグラフ(実施例18)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本明細書において、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的対象のうちの1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(“an element”)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0033】
本明細書において、「約」という用語は、同じ機能または結果を達成するという文脈において、当業者が、引用された値と同等とみなす数値の範囲を指すと理解される。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖または分岐していてもよく、好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する1価のアルキル基を意味する。このような基の例としては、メチル、エチル、n-イソプロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、n-ヘキシル等が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される場合、基または基の一部としての用語「アルケニル」は、直鎖または分岐していてもよく、直鎖中に、2~12の炭素原子、より好ましくは2~10の炭素原子、最も好ましくは2~6の炭素原子を有する、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む脂肪族炭化水素基を示す。この基は、直鎖中に複数の二重結合を含んでいてもよく、それぞれに関する配向は独立してEまたはZである。例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルおよびノネニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本明細書で使用される場合、基または基の一部としての用語「アルキニル」は、直鎖または分岐していてもよく、直鎖中に、好ましくは2~12の炭素原子、より好ましくは2~10の炭素原子、より好ましくは2~6の炭素原子を有する、炭素-炭素三重結合を含む脂肪族炭化水素基を意味する。例示的な構造としては、エチニルおよびプロピニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、好ましくは3~8個の炭素原子を組み込んだ単一の環または複数の縮合環を有する環状アルキル基を指す。このようなシクロアルキル基としては、一例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの単環構造、またはアダマンタニルなどの多環構造が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「アルコキシ」は、基「-O-アルキル」を指し、ここで、アルキル基は上に記載したとおりである。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」は、好ましくは1~12の炭素原子、より好ましくは1~6の炭素原子、さらに好ましくは1~3の炭素原子を有する二価のアルキル基を意味する。このようなアルキレン基の例としては、メチレン(-CH-)、エチレン(-CHCH-)、及びプロピレンの異性体(例えば、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-)等が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「アシル」は、H-C(O)-、アルキル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-およびアリール-C(O)-などの基を指し、アルキル、シクロアルキルおよびアリールは本明細書に記載されるとおりである。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ」は、-NH基を指す。アミノ基は置換されていてもよく、ここで、基の1つ以上の水素原子は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基のような基で置換されていてもよい。用語「置換されていてもよいアミノ」は、さらなる置換を有するアミノ基を意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「アミド」は、窒素原子に結合したカルボニル基からなる官能基を意味する。用語「置換されていてもよいアミド」は、さらなる置換基を有するアミド官能基を意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード基を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、単環(例えばフェニル)または複数の縮合環(例えばナフチル、アントラセニル)を有する一価の不飽和芳香族炭素環基を指し、好ましくは6~14個の炭素原子を有する。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどが含まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、特定の基との関連における「置換されていてもよい」という用語は、その基が、ヒドロキシル、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、アルキニルオキシ、アミノ、アミノアシル、アルキルアリール、アリール、アリールオキシ、カルボキシル、アシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、硫酸、リン酸、ホスフィン、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、オキシアシル、オキシアシルアミノ、アミノアシルオキシ、トリハロメチル等から選ばれる1つ以上の基でさらに置換されていてもいなくてもよいことを意味すると解される。
【0046】
特に好適な任意の置換基の例としては、F、Cl、Br、I、CH、CHCH、OH、OCH、CF、OCF、NO、NH、COCHおよびCNが挙げられる。
【0047】
式(I)~(IV)の化合物は、「サルコファジン」としても知られている大環状窒素含有配位子を含んでなる。式(I)のサルコファジンは、5-(8-メチル-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザ-ビシクロ[6.6.6]アイコサン-1-イルアミノ)-5-オキソペンタン酸であり、MeCOSarとしても知られている。この配位子は、6個の窒素原子を含み、金属イオンが配位することができる。特定の実施形態において、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、金属イオンが配位する。ある実施形態において、金属イオンは、Cu、Tc、Gd、Ga、In、Co、Re、Fe、Au、Mg、Ca、Ag、Rh、Pt、Bi、Cr、W、Ni、V、Ir、Zn、Cd、Mn、Ru、Pd、Hg、Ti、LuまたはYのイオンである。
【0048】
実施形態において、式(I)~(IV)の化合物は、放射性核種が配位している。いくつかの実施形態では、放射性核種は、Cu、Tc、Ga、Co、In、Fe及びTiからなる群から選択される金属の金属イオンである。本発明者らは、本明細書に開示される化合物が、Cuイオンの結合に特に有用であることを見出した。ある実施形態において、式(I)の化合物は、Cuイオンが配位している。別の実施形態では、式(I)の化合物は、放射性核種であるCuイオンが配位している。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、60Cu、62Cu、64Cuおよび67Cuからなる群から選択される放射性核種が配位している。一実施形態では、式(I)~(IV)の化合物は、60Cuが配位している。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物は、62Cuが配位している。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物は、64Cuが配位している。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物は、67Cuが配位している。式(I)~(IV)の化合物に放射性核種が配位して標的受容体に結合する場合、放射性標識化合物は、受容体が位置する部位に近接する。放射性核種は崩壊を受けて、放射性崩壊の生成物は、その後、放射性標識化合物が結合している部位に接触することができる。
【0049】
式(I)~(IV)の化合物は、リンカー基を介してサルコファジンに結合した環状ポリペプチド基を含んでなる。化合物中の各構成部分は互いに連結しており、連結の様式および順序は、化合物中で各構成部分が提供する意図された活性が保持されるものでなければならない。すなわち、これらの各構成部分からなる化合物は、サルコファジンに配位した放射性核種の活性が維持され、かつ環状ポリペプチドが目的の受容体に十分に結合するように、互いに連結していなければならない。
【0050】
環状ポリペプチド基は、下記構造
【化27】
[式中、XはHまたはIである]
を有するペンタペプチド残基である。環状ペンタペプチドは、シクロ(D-Tyr-N-Me-D-Orn-L-Arg-L-2-Nal-Gly)の配列を有し、オルニチン(Orn)残基の側鎖を介してリンカー基に結合している。このペンタペプチドは、HまたはIであってもよい可変のXを有する。このような性質のペプチドおよび残基は、既知の方法論に従って調製することができる。例えば、ペプチドおよびその残基は、当技術分野で公知の固相または溶液相の手順で調製することができる。本発明に関しては、示されたペプチド残基は、いくつかの癌細胞の表面に過剰発現しているCXCR4受容体に結合することができる基である。
【0051】
式(I)~(IV)の化合物におけるリンカー基は、ポリペプチドとサルコファジンの間のスペーサーとして働き、ポリペプチドが結合する部位と式(I)~(IV)の化合物に配位した放射性核種との間の距離を維持する。リンカー基の長さは、リンカー基の構造が影響する。ポリペプチドが結合する部位と放射性核種との間の距離は、放射性核種がもたらす放射能が結合部位に局在するように、最適化されることが望ましい。適切な距離は、ポリペプチドが結合する受容体の性質、ポリペプチド自体の性質、さらに化合物自体に錯体化される放射性核種に依存し得る。連結基は、放射性核種、化合物または生体内に存在する他の官能基との副反応に関与しないようなものとすべきである。
【0052】
理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、本発明の化合物の全長は、リンカー基の性質と、化合物のポリペプチドおよびサルコファジン部分のサイズと形状により影響を受けることを見いだした。リンカーは、ポリペプチドとサルコファジンの間の距離が、ポリペプチドが結合する部位への放射性核種の送達に適しているように、ポリペプチドとサルコファジン間の分離の程度を維持する。リンカー基によってもたらされる分離の程度は、ポリペプチドの活性、すなわち標的部位への結合、および放射性核種と結合したサルコファジンが互いに干渉しない程度であることが望ましい。本発明者らは、ポリペプチド、リンカーおよび放射性核種を含むサルコファジンの組み合わせによって、ポリペプチドが結合し得る受容体を発現する癌細胞の表面に、放射性核種および関連する放射能を送達することが可能になると考えている。化合物が適切な細胞の表面に結合すると、サルコファジン内に配位した放射性核種が細胞から離れた距離に維持され、その距離は化合物のリンカー基の性質によって決まる。放射性核種と表面の細胞との間の距離は、放射性核種によって供給される放射能が細胞表面に到達するのに十分であるような距離である。
【0053】
本発明の化合物において、サルコファギンの末端位置にプロピルアミド基を含む。このプロピルアミド基もリンカーとみなすことができ、細胞表面に結合した際、放射性核種を含むサルコファジンとポリペプチドの分離に寄与する。化合物中のポリペプチドはオルニチン残基の側鎖、すなわちプロピルアミン基を介して結合しているので、この側鎖もサルコファジンとポリペプチド間の全体的な距離に寄与している。このことは、ひいては、本発明の化合物におけるリンカー基が、サルコファギンに隣接するプロピルアミド基およびポリペプチドのプロピルアミン基によってもたらされる長さを考慮して、化合物の所望の長さに基づいて選択し得ることを意味する。本発明者らは、リンカーとポリペプチドとを異なるアミノ酸を介して、すなわちアルギニン(Arg)またはチロシン(Tyr)残基を介して連結すると、異なるサイズおよび長さの化合物になることを見出した。化合物のサイズ、形状および長さが異なることに加えて、ポリペプチドとリンカーとの連結が異なる場合、側鎖の性質がポリペプチドの結合能力に影響を及ぼすため、ポリペプチドの標的受容体への結合特性が異なる可能性がある。さらに、ポリペプチド上の特定の官能基が結合に関与しているか、あるいは結合せずにフリーであるかは、化合物全体の安定性に影響を与える。例えば、ポリペプチドがプロピルアミン側鎖を介して結合していない場合、化合物は、側鎖のアミン基によって、反応性の一級アミン基が露出することになる。一級アミン基は反応性が高いことが知られているため、化合物全体が実際に不安定になる可能性がある。したがって、ポリペプチドがサルコファジンおよび/またはリンカーと正しい方法で結合していることが重要である。
【0054】
本発明は、pentixaforまたはpentixatherポリペプチドと、リンカーによって結合したサルコファギンとを含む式(I)~(IV)の化合物を提供する。
【0055】
式(I)の化合物は、単一のポリペプチドと単一のサルコファジンユニットを含む。
【化28】
【0056】
式(I)の化合物の特定の実施形態において、リンカーは、不在であるか、または
【化29】
[式中、mは1~10の整数である]
から選択される。
【0057】
実施形態において、リンカーは存在せず、式(I)の化合物は、以下の構造
【化30】
[式中、RおよびXは上記と同意義である]
を有する。
【0058】
で表される基は、サルコファジンケージの末端の位置に存在する。基Rが反応性の官能基、例えばアミノ基である場合、適切なカップリングパートナーとの反応により、化合物はさらに官能化されてもよい。ある実施形態において、Rは、置換されていてもよいアミノである。ある実施形態において、Rは、置換されていてもよいC-C12アルキルである。別の実施形態では、Rは、置換されていてもよいCアルキルである。好ましい実施形態において、Rは、非置換のCアルキルである。好ましい実施形態において、Rはメチルである。
【0059】
当業者であれば、式(I)の化合物のリンカーは、化合物の他の構成部分といずれかの末端で連結し得ることを理解するであろう。ある実施形態では、*で示されるリンカーの末端は、サルコファジンのプロピルアミド基に結合している。
【化31】
【0060】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、以下の構造
【化32】
[式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である]
を有する。式(I)のこの実施形態は、リンカー中に1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)ユニットを含む。化合物中のPEGユニットの数は、式(I)の化合物の全体の長さに影響を与える。いくつかの実施形態では、mは1~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選択される整数である。ある実施形態では、XはHである。別の実施形態では、XはIである。
【0061】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、以下の構造
【化33】
[式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である]
を有する。式(I)のこの実施形態は、リンカー中にシクロオクテン-トリアゾールユニットと、1つまたは複数のPEGユニットとを含む。いくつかの実施形態では、mは1~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選択される整数である。ある実施形態では、XはHである。別の実施形態では、XはIである。
【0062】
本発明はまた、単一のサルコファジンユニット、2つのリンカーおよびポリペプチドユニットを含む式(II)の化合物を提供する。リンカーおよびポリペプチドユニットは、サルコファジンの末端の位置に結合しており、化合物は以下の構造
【化34】
[式中、Xは上記と同意義である]
を有する。
【0063】
化合物は、細胞表面のCXCR4受容体に結合することができる2つのポリペプチドユニットを含むので、式(II)の化合物は、増大した結合親和性を示し得る。ある場合には、式(II)の化合物中の1つのポリペプチドユニットが細胞表面に結合し得る。他の場合では、式(II)の化合物中の両方のポリペプチドユニットが結合し得る。
【0064】
式(I)の化合物と同様に、式(II)の化合物のためのリンカーは、化合物の他の構成部分といずれかの末端で連結していてもよい。ある実施形態では、*で示されるリンカーの末端は、サルコファジンのプロピルアミド基と結合している。
【化35】
【0065】
ある実施形態において、式(II)の化合物は、以下の構造
【化36】
[式中、Xおよびmは上記と同意義である]
を有する。式(II)のこの実施形態は、各リンカーに1つ以上のPEGユニットを含む。化合物中のPEGユニットの数は、式(II)の化合物の全体の長さに影響を与える。いくつかの実施形態では、mは、独立して、1~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選択される整数である。いくつかの実施形態では、各mは同じである。いくつかの実施形態では、各mはそれぞれ異なる。ある実施形態では、XはHである。別の実施形態では、XはIである。
【0066】
別の実施形態では、式(II)の化合物は、以下の構造
【化37】
[式中、Xおよびmは上記と同意義である]
を有する。式(II)のこの実施形態は、リンカー内に2つのシクロオクテン-トリアゾールユニットと2つのPEGユニットを含む。いくつかの実施形態において、mは、独立して、1~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選択される整数である。いくつかの実施形態では、各mは同じである。いくつかの実施形態では、各mは異なる。ある実施形態では、XはHである。別の実施形態では、XはIである。
【0067】
本発明はまた、サルコファギンに結合した単一のリンカーユニットを含み、このリンカーユニットに2つのポリペプチドユニットがさらに結合している、式(III)の化合物を提供する。リンカーはサルコファギンの末端の位置で結合し、さらに2つの異なるポリペプチドユニットが結合している。これは、式(III)の化合物が、単一のポリペプチドユニットを含む化合物よりも優れた全体的な結合親和性を有し得ることを意味する。
【0068】
式(III)の化合物は、以下の構造
【化38】
[式中、
は、H、OH、ハロゲン、シアノ、NO、置換されていてもよいC-C12アルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアミドおよび置換されていてもよいアリールからなる群から選択され;
Xは、
【化39】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)
であり;
リンカーは、
【化40】
(式中、mは独立して1~10の整数である)
から選択される]
を有する。
【0069】
式(I)の化合物と同様に、式(III)の化合物のRで表される基は、サルコファジンケージの末端位置にある。Rが反応性の官能基、例えばアミノ基である場合、化合物は、適切なカップリングパートナーとの反応を通じてさらに官能化されてもよい。ある実施形態において、Rは、置換されていてもよいアミノである。ある実施形態において、Rは、置換されていてもよいC-C12アルキルである。別の実施形態では、Rは、置換されていてもよいCアルキルである。好ましい実施形態において、Rは、非置換のCアルキルである。好ましい実施形態において、Rはメチルである。
【0070】
式(I)および(II)の化合物と同様に、式(III)のリンカーは、化合物の他の構成部分といずれかの末端で結合していてもよい。ある実施形態では、*で示されるリンカーの末端は、サルコファジンのプロピルアミド基に結合している。
【化41】
【0071】
ある実施形態において、式(III)の化合物は、以下の構造
【化42】
[式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である]
を有する。式(III)のこの実施形態では、化合物は、エチルアミド型の基が複数存在する1つまたは複数のPEG基を含む単一のリンカーを含む。エチルアミド基に加えて、リンカーは、サルコファジンに直接結合したプロピルアミド基を含む。本実施形態におけるリンカー基は、3級炭素中心を含むため、式(III)の化合物は、ほぼ2アーム構造を有することになる。これは、ポリペプチドユニットの各々が空間の異なる領域を占めることを意味し、結合においてより大きな柔軟性を可能にし得る。いくつかの実施形態において、mは、独立して、1~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選択される整数である。いくつかの実施形態では、各mは同じである。いくつかの実施形態では、各mは異なる。
【0072】
一実施形態において、式(III)の化合物は、以下の構造
【化43】
[式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である]
を有する。式(III)のこの実施形態では、化合物はさらに、1つ以上のPEG基を含む単一のリンカーを含む。PEG基は、3級窒素中心の周りに位置し、式(III)の化合物にほぼ2アーム構造を提供する。リンカーはまた、サルコファジンに直接結合したプロピルアミド基を含む。いくつかの実施形態において、mは、独立して、1~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選択される整数である。いくつかの実施形態では、各mは同じである。いくつかの実施形態では、各mは異なる。ある実施形態では、XはHである。別の実施形態では、XはIである。
【0073】
本発明はまた、サルコファジンに結合した単一のリンカーユニットを含み、リンカーはさらに3つのポリペプチドユニットと結合している、式(IV)の化合物を提供する。式(IV)の化合物は、受容体に結合することができるポリペプチドの3つのユニットを有するので、式(IV)の化合物は、ポリペプチドユニットの数が少ない他の化合物と比較すると、より大きな全体的結合親和性を示し得る。
【0074】
式(IV)の化合物は、以下の構造
【化44】
[式中、
は、H、OH、ハロゲン、シアノ、NO、置換されていてもよいC-C12アルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアミドおよび置換されていてもよいアリールからなる群から選択され;
Xは、
【化45】
(式中、Xは、Hまたはヨウ素である)であり;
リンカーが
【化46】
(式中、mは1~10の整数である)
から選択される]
を有する。
【0075】
式(I)~(III)の化合物と同様に、式(IV)のリンカーは、化合物の他の構成部分と複数の箇所で連結していてもよい。ある実施形態では、*で示されるリンカーの末端は、サルコファジンのプロピルアミド基と結合している。
【化47】
【0076】
一実施形態において、式(IV)の化合物は、以下の構造
【化48】
[式中、RおよびXは上記と同意義である]
を有する。式(IV)のこの実施形態では、リンカーは、3つのアルキレンエーテル基が結合している炭素原子を含む。3つのポリペプチドユニットは各々、リンカーのアームに結合しており、ほぼ3アーム構造を形成している。各ポリペプチドユニットは、受容体に結合することが可能である。いくつかの実施形態では、式(IV)の化合物の1つのポリペプチドユニットのみが受容体に結合する。他の実施形態では、式(IV)の化合物の2以上のポリペプチドユニットが受容体に結合する。2以上のポリペプチドユニットが受容体に結合する場合、結合部位への化合物の全体的な結合は、単一のポリペプチドユニットを有する化合物または単一のポリペプチドユニットのみが結合可能である化合物よりも強い可能性がある。ある実施形態において、XはHである。別の実施形態において、XはIである。
【0077】
別の実施形態では、式(IV)の化合物は、以下の構造
【化49】
[式中、R、Xおよびmは、上記と同意義である]
を有する。これらの実施形態において、リンカーは、アミド基、アルキレン基およびPEG基を含む3つの直鎖が結合している炭素原子を含む。本発明のこれらの化合物は、ほぼ3つのアーム構造を有し、リンカーの各直鎖に結合した3つのポリペプチドユニットを含む。いくつかの実施形態において、mは、独立して、1~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選択される整数である。いくつかの実施形態では、各mは同じである。いくつかの実施形態では、各mは異なる。ある実施形態において、XはHである。別の実施形態では、XはIである。
【0078】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物の所望の生物活性を保持する塩を指し、薬学的に許容される酸付加塩及び塩基付加塩が含まれる。式(I)の化合物の好適な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製することができる。無機酸の例としては、塩酸、硫酸およびリン酸が含まれる。有機酸の例としては、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、複素環式カルボン酸およびスルホン酸の有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルロン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸が挙げられる。式(I)の化合物が固体である場合、その化合物および塩は、1つまたは複数の異なる結晶形または結晶多形の形態で存在してもよく、これらはすべて式(I)の範囲内であると意図される。
【0079】
一実施形態において、本発明は、1つ以上の薬学的に許容される添加剤とともに、上記の化合物を含む組成物を提供する。
【0080】
非経口注射用の本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される滅菌の水性または非水性の、溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、ならびに使用直前に滅菌注射用溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含む。適当な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合は必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用などによって維持することができる。
【0081】
また、これらの組成物には、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等の助剤が含まれていてもよい。微生物の作用は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの各種抗菌剤、抗真菌剤を含有させることにより、防止することができる。また、糖類、塩化ナトリウム等の等張化剤を含有することが好ましい場合もある。注射用医薬形態の吸収は、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の含有によって、遅延させることができる。
【0082】
所望により、また、より効果的な分配のために、化合物をポリマーマトリックス、リポソーム、ミクロスフェアなどの徐放性または標的送達のシステムに組み込むことができる。
【0083】
注射用製剤は、例えば、保菌フィルターによる濾過、または使用直前に滅菌水または他の滅菌注射媒体に溶解または分散できる滅菌した固体組成物の形態として滅菌剤を組み込むことにより、滅菌することができる。
【0084】
本発明は、対象の放射線イメージングのための方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の化合物または本明細書に記載の組成物の治療的有効量を投与することを含む。
【0085】
本発明の化合物は、自然崩壊を受ける放射性核種または放射性同位元素で放射性標識されていてもよい。これらの崩壊副産物をポジトロン断層法(PET)や単光子放射断層法(SPECT)などの手段で検出すると、放射性標識化合物の局在を示す画像を得ることができる。そして、その画像は様々な疾患の診断に使用することができ、放射性標識化合物の位置が画像に反映される。本発明による放射性標識化合物は、化合物の環状ペプチド断片が、特定の部位に発現または過剰発現している可能性のある受容体に対し親和性を示すため、特定の部位に局在する。特定の受容体の発現または過剰発現が特定の疾患に特徴的である場合、生成された画像におけるこれらの局在化した領域の同定は、疾患の診断に寄与する。
【0086】
ある実施形態において、対象の放射線イメージングのための方法は、式(I)~(IV)の化合物またはその塩の有効量の投与を含み、該化合物は放射性核種を含む。ある実施形態において、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、Cuイオンである放射性核種が配位する。ある実施形態では、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、60Cu、62Cu、64Cuおよび67Cuからなる群から選択される放射性核種が配位する。一実施形態において、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、60Cuが配位する。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、62Cuが配位する。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、64Cuが配位する。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、67Cuが配位する。
【0087】
本発明はまた、対象の疾患を処置または予防する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の化合物または本明細書に記載の組成物の治療的有効量を投与することを含む。
【0088】
本発明の放射性標識化合物は、対象の疾患の処置または予防のために使用することもできる。本発明の放射性標識化合物が放射性崩壊を受けることが可能な放射性核種を含む場合、放射性標識化合物が局在化により、その近傍のエリアが崩壊生成物に曝露される。ペプチドが親和性を有する受容体の発現または過剰発現により、放射性標識化合物が癌または腫瘍部位に結合する場合、該化合物は、放射線療法による腫瘍または癌の治療に有用であり得る。
【0089】
ある実施形態では、対象における疾患を処置または予防するための方法は、治療有効量の式(I)~(IV)の化合物またはその塩の投与を含んでなり、ここで、該化合物は放射性核種を含む。ある実施形態において、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、Cuイオンである放射性核種が配位する。ある実施形態では、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、60Cu、62Cu、64Cuおよび67Cuからなる群から選択される放射性核種が配位する。一実施形態において、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、60Cuが配位する。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、62Cuが配位する。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、64Cuが配位する。別の実施形態では、式(I)~(IV)の化合物またはその塩には、67Cuが配位する。
【0090】
治療上有効な量は、慣用の技術を用い、類似の状況下で得られた結果を観察することにより、担当の臨床医が容易に決定することができる。治療上有効な量を決定する際には、動物の種、その大きさ、年齢および一般的な健康状態、関与する特定の疾患、疾患の重症度、治療に対する対象の応答、投与される特定の放射性標識化合物、投与様式、投与される製剤のバイオアベイラビリティ、選択した投与レジメ、他の薬物の使用およびその他関連する状況が挙げられるが、これらに限定されない、多くの因子が考慮される。
【0091】
また、治療レジメは、一般に、放射線療法を何サイクルか行い、疾患が改善されるまでそのサイクルを継続することになる。最適な治療サイクル数および各治療サイクルの間隔は、繰り返しになるが、治療される疾患の重症度、治療される対象の健康状態(またはその欠如)、放射線療法に対する応答など、多くの要因に依存する。一般に、最適な投与量および最適な治療レジメは、よく知られている技術を用いて、当業者が容易に決定することができる。
【0092】
本発明の化合物は、所望の用途(画像化または放射線療法)に化合物が利用できるようにする任意の形態または様式で投与することができる。この種の製剤を調製する技術に精通した者は、選択した化合物の具体的な特性、治療される疾患、治療される疾患のステージやその他関連する状況に応じて、適切な形態および投与様式を容易に選択することが可能である。さらなる情報については、Remington's Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Co.(1995年)を参照されたい。
【0093】
本発明の化合物は、単独で、または薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは添加剤と組み合わせて医薬組成物の形態で投与することができる。本発明の化合物は、それ自体有効であるが、典型的には、より安定で、より容易に結晶化し、溶解度が増加する、薬学的に許容される塩の形態で製剤化され、投与される。
【0094】
但し、本化合物は、典型的には、所望の投与様式に依存して処方される医薬組成物の形態で使用される。組成物は、当技術分野でよく知られた方法で調製される。
【0095】
他の実施形態において本発明は、本発明の医薬組成物の成分の1つまたは複数が充填された1つまたは複数の容器を含む医薬品のパッケージまたはキットを提供する。このようなパッケージまたはキットには、薬剤(複数可)の単位投与量を有する少なくとも1つの容器があり得る。便利なように、キットにおいて、臨床医がバイアルを直接使えるよう単一投与量を無菌バイアルに入れて提供することができ、バイアルは、使用前に混和することができる所望の量および濃度の化合物と放射性ヌクレオチドを有する。このような容器には、使用説明書などの各種文書、または医薬品、画像化剤または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって定められた形式の表示(この表示は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売についての政府機関による承認を反映している)を添付することができる。
【0096】
本発明の化合物は、言及された障害/疾患の治療のために、抗癌剤である1つまたは複数のさらなる薬剤および/または処置(例えば、手術、放射線療法)と組み合わせて、使用または投与することができる。これら成分を同じ製剤で投与することも、別々の製剤で投与することも可能である。別々の製剤で投与される場合、本発明の化合物は、他の薬剤と順次または同時に投与され得る。
【0097】
抗癌剤を含む1つまたは複数のさらなる薬剤と組み合わせて投与することができることに加えて、本発明の化合物は併用療法に使用することができる。これが行われる場合、化合物は、典型的には、互いに組み合わせて投与される。したがって、1つまたは複数の本発明の化合物は、所望の効果を達成するために、同時に(合剤として)または逐次的に投与され得る。これは、各化合物の治療プロファイルが異なり、2つの薬物の複合効果によって改善された治療結果が得られる場合に特に好ましい。
【0098】
上述したように、本発明の化合物は、癌のような疾患を治療および/または検出するために有用である。本発明の化合物は、乳癌、結腸癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、頭頸部癌、または腎臓癌、胃癌、膵臓癌、脳腫瘍などの悪性腫瘍や、リンパ腫、白血病などの血液の悪性腫瘍を治療および/または検出するために特に有用である。さらに、本発明の化合物は、他の抗癌剤による治療及び/または検出に不応性の癌の治療及び/または検出;並びに白血病、乾癬及び再狭窄などの過剰増殖性疾患の治療及び/または検出に有用である。他の実施形態では、本発明の化合物は、前癌状態、または家族性腺腫性ポリポーシス、大腸腺腫性ポリープ、骨髄異形成症、子宮内膜異形成症、異型を伴う子宮内膜増殖症、子宮頸部異形成症、膣上皮内新生物、前立腺肥大症、喉頭乳頭腫、光線性及び日光性角化症、脂漏性角化症、ケラトアカントーマなどを含む、過形成を治療および/または検出するために用いることができる。ある実施形態において、癌は乳癌である。ある実施形態において、癌は腫瘍を伴うものであり得る。
【0099】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈上他の必要がない限り、「comprise」という用語、および「comprises」または「comprising」などの変形は、記載された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むことを意味し、他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を排除しないものと理解される。
【実施例
【0100】
本発明化合物の合成
様々な実施形態の薬剤は、容易に入手可能な出発物質を使用し、以下に記載するような反応経路および合成スキームを用いて、当技術分野で利用可能な技術を採用して調製することができる。ある実施形態の特定の化合物の調製について、以下の実施例で詳細に説明するが、当業者は、記載された化学反応は、様々な実施形態の他の多数の薬剤を調製するために容易に適応させることができることを認識するであろう。例えば、例示していない化合物の合成は、当業者には明らかな修飾、例えば干渉する基を適切に保護することによって、当技術分野で知られている他の適切な試薬に変更することによって、または反応条件の常套的な変更によって、うまく実施することができる。有機合成における適切な保護基のリストは、T.W. Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, 1991に見出すことができる。あるいは、本明細書に開示された、または当技術分野で既知の他の反応は、様々な実施形態の他の化合物を調製するために適用できると認識されるであろう。
【0101】
全体的な実験の詳細
試薬および溶媒はすべて市販のものを入手し、そのまま使用した。5-(8-メチル-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザ-ビシクロ[6.6.6]アイコサン-1-イルアミノ)-5-オキソペンタン酸(MeCOSar)は、Clarity Pharmaceuticals (Sydney, Australia) から提供されたものであった。化合物(t-Boc)4-5MeCOSarは、既報の手順で合成した。ペプチド(シクロ(D-3-ヨード-TyR-[NMe]-D-Orn-Arg-2-Nal-Gly)はWuXi Apptec(中国、上海)より入手した。ペプチドのコンジュゲーションと非放射性の参照化合物の合成は、既報の手順で実施した。
【0102】
NMR スペクトルは Bruker Avance 500 spectrometer で記録した。化学シフトは、テトラメチルシラン(H、13C)またはCFCOH(19F)に対する残留溶媒シグナルを内部基準とした。高分解能ESI-MS質量スペクトルは、Bruker Micro TOF Q II spectrometerを使用して取得した。MALDI-TOFスペクトルは、Bruker Daltonics Autoflex Speed装置を用いて取得した。
【0103】
ペプチドの精製は、Agilent Eclipse XDB-C18 5u (9.4 × 250 mm)カラムを用い、流速4mL/分にて、17分間で5-95%(B)のグラジエントを適用した、セミ分取HPLCにより行った((A)水中の0.1%TFA;(B)アセトニトリル)。紫外線検出は、λ=225 nmにてAgilent 35900E Series II 検出器を使用して行った。ペプチドの品質管理は、Agilent Eclipse Plus C18 (150 × 4.6 mm)カラムを用い、流速1mL/分にて、先に述べたのと同じ勾配を使用する分析HPLCにより行った。
【0104】
実施例1 ヘテロ二官能性PEGリンカーの合成
【化50】

((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-2,1-ジイル)ジメタンスルホネート(1)
テトラエチレングリコール(10g,0.0515mol)を乾燥DCM(50mL)に溶解し、トリエチルアミン(15mL,0.107mol)を窒素下、0℃にて混合した。メタンスルホニルクロリド(12.6g,0.109mol)を乾燥DCM(10mL)に溶解し、30分かけて反応混合物に滴加した。この反応物を窒素気流下で24時間室温にて撹拌した。得られた反応混合物を3%HCl水溶液で洗浄した後、ブラインで洗浄した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。懸濁液を濾過し、溶媒を真空留去して、生成物を黄色の油状物として得た(14.7g,収率82%)。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ3.07 (s, 6H), 3.62 - 3.67 (m, 8H), 3.76 (t, 4H, J=5.0 Hz), 4.37 (t, 4H, J=5.0 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ38.3 (CH3), 69.7, 69.9, 71.2, 71.3 (CH2).
【0105】
1-アジド-2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタン(2)
化合物1(14.7g,0.0420mol)を乾燥DMF(50mL)中、窒素下でアジ化ナトリウム(5.46g,0.0420mol)と混合した。反応物を65℃にて一晩撹拌した。反応混合物をジエチルエーテル(50mL)で希釈し、水(3×50mL)およびブライン(2×50mL)で洗浄した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を真空留去して、生成物を無色の油状物として得た(8.31g,収率66%)。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ3.31 (t, 4H, J=5.0 Hz), 3.59 - 3.61 (m, 12H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ51.1 (CH2), 70.4 (NCH2), 71.1 (OCH2).
【0106】
1-アジド-2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタン-1-アミン(3)
化合物2(3.43g,0.0140mol)を5%HCl(40mL)に溶解した。トリフェニルホスフィン(3.67g,0.0140mol)をジエチルエーテルに溶解し、自動シリンジポンプセットを使用し反応混合物に滴下(10mL/h)して加えた。反応混合物を窒素気流下で24時間室温にて攪拌した。得られた混合物を酢酸エチル(3×50mL)で洗浄した。水層を合わせ、NaOH(2M,80mL)を用いてpHを12に調整した。水層をDCMで抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空留去して、生成物をわずかに黄色がかった油状物として得た(1.45g、収率47%)。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ1.06 (t, 2H, J=5.0 Hz), 1.96 (br, 2H), 2.71 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.25 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.37 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.49 - 3.55 (m, 10H). 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ18.7, 42.0, 51.0, 57.8, 70.4, 70.6, 70.95, 71.01, 73.6 (CH2).
【0107】
tert-ブチル(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチル)カルバメート(4)
化合物3(3.58g,0.0164mol)を乾燥THF(20mL)中、0℃にてジ-tert-ブチルジカーボネート(3.94g,0.0180mol)と混合した。トリエチルアミン(3mL,0.0213mol)を反応混合物に加え、室温に戻し、窒素気流下で一晩撹拌した。得られた混合物をDCMで希釈し、炭酸水素ナトリウムおよびブラインで洗浄した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空留去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ニートDCM~DCM中3%v/vメタノール)で精製し、生成物を無色の油状物として得た(3.71g、収率71%)。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ1.42 (s, 9H), 3.30 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.37 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.52 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.60 - 3.68 (m, 10H), 5.02 (br, 1H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ29.1, 41.0, 51.3, 70.7, 70.9, 71.26, 71.28, 71.4, 79.8, 156.6.
【0108】
tert-ブチル(2-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル)カルバメート(5)
化合物4(3.71g,0.0117mol)をトリフェニルホスフィン(3.07g,0.0117mol)と混合し、THF(20mL)および水(15mL)に溶解した。反応物を室温にて一晩攪拌した。溶媒を真空留去し、残留物をトルエンと水に溶解した。水層をトルエン(3×50mL)で洗浄し、溶媒を真空留去した。生成物を無色の油状物として得た(3.31g,収率97%)。
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) δ1.37 (s, 9H), 2.66 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.06 (q, 2H, J=5.0 Hz), 3.37 (t, 4H, J=5.0 Hz), 3.50 - 3.52 (m, 8H); 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz) δ28.2, 41.1, 69.2, 69.5, 69.6, 72.5, 77.6, 155.6.
【0109】
2,2-ジメチル-4,18-ジオキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-5,7-ジアザヘンアイコサン-21-オン酸(6)
化合物5(3.31g,0.0113mol)を乾燥DCM中、無水コハク酸(2.26g,0.226mol)と混合し、室温にて一晩攪拌した。反応混合物を水(3×50mL)およびブライン(2×30mL)で洗浄した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ニートDCM~0.5%v/v氷酢酸を含むDCM中3%v/vメタノール)により精製し、化合物6を無色の油状物として得た(1.69g、収率38%)。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ1.44 (s, 9H), 2.52 (t, 2H, J=5.0 Hz), 2.67 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.31 (bs, 2H), 3.43 - 3.46 (m, 2H), 3.55 (t, 4H, J=5.0 Hz), 3.54 - 3.65 (m, 8H), 5.15 (bs, 1H), 6.67 (bs, 1H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ28.5(CH3), 30.4, 31.2, 39.6, 40.4, 41.7, 69.8, 70.2, 70.4, 70.5, 70.7, 79.5(CH2), 156.3, 172.6, 175.1(C=O). ESI-MS: C17H32N2O8についての計算値: 392.2; 実測値: 391.1 [M-H]-.
【0110】
メチル 2,2-ジメチル-4,18-ジオキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-5,17-ジアザヘンアイコサン-21-オエート(7)
化合物6(0.086g,0.219mmol)をメタノール(2mL)中で撹拌した後、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.043g,0.224mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.00133g,0.01089mmol)を反応液に添加した。反応混合物を室温にて一晩攪拌した。溶媒を真空留去した。混合物をDCMで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(2×50mL)およびブライン(2×50mL)で洗浄した。有機層を集め、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を真空留去して、生成物を無色の油状物として得た(0.062g、収率70%)。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ1.41 (s, 9H), 2.47 (t, 2H, J=5.0 Hz), 2.64 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.29 (s, 2H), 3.43 (q, 2H, J=5.0 Hz), 3.53 (q, 2H, J=5.0 Hz), 3.58 - 3.61 (m, 8H), 3.65 (s, 3H), 5.14 (s, 1H), 6.46 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ28.2, 28.5(CH3), 29.4, 29.8, 30.9, 39.4, 40.4(CH2), 51.9(CH3), 67.2, 70.0, 70.2, 70.3, 70.5, 70.53(CH2), 156.2, 171.6, 173.6(C=O). ESI-MS: C18H34N2O8についての計算値: 406.2; 実測値: 307.1 [M-COO(CH3)3+H]+
【0111】
メチル 1-アミノ-13-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザヘキサデカン-16-オエート(8)
化合物7(0.062g,0.153mmol)をDCM(3mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.5mL)を反応混合物に滴下して加えた。反応混合物を室温にて一晩攪拌した。溶媒を真空留去し、生成物を無色の油状物として得た(0.054g,84%収率)。本化合物は、さらに精製することなく使用した。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ2.50 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.19 (s, 2H), 3.43 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.59 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.61 - 3.71 (m, 13H), 3.82 (t, 2H, J=5.0 Hz), 4.15 (bs, 2H), 7.63 (bs, 1H), 8.04 (bs, 3H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ28.2, 29.0, 30.1, 39.5, 39.8 (CH2), 52.1 (CH3), 66.8, 69.5, 69.6, 70.0, 70.1, 70.3 (CH2), 172.7, 175.2 (C=O); 19F NMR (CDCl3, 470 MHz) δ-75.76(CF3). ESI-MS: C13H27N2O6 +についての計算値: 307.2; 実測値: 307.2 [M]+; CF3COO-についての計算値: 112.5; 実測値: 113.0 [M]-.
【化51】
1-アジド-13-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザヘキサデカン-16-オン酸(9)
化合物3(1.45g,0.00664mol)を乾燥DCM中、無水コハク酸(1.33g,0.0133mol)と混合し、室温にて一晩攪拌した。反応混合物を水(2×50mL)で洗浄し、水層をDCMで逆抽出して残留する有機溶媒を除去した。水層を合わせ、水を真空留去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ニートDCM~0.5%v/v氷酢酸を含むDCM中の3%v/vメタノール)により精製し、化合物9を白色の固体として得た(2.08g、収率98%)。
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) δ2.31 (t, 2H, J=10.0 Hz), 2.40 (t, 2H, J=10.0 Hz), 3.175 (q, 2H, J=5.0 Hz), 3.39 (t, 2H, J=5.0 Hz), 3.52 - 3.57 (m, 8H), 3.59 - 3.61 (m, 2H); 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz) δ28.8, 29.1, 29.9, 38.6, 50.0, 69.1, 69.2, 69.6, 69.7, 69.75, 69.78(CH2), 173.6, 173.8(C=O). MALDI-TOF: C12H22N4O6についての計算値: 318.15; 実測値: 319.14 [M+H]+, 341.12 [M+Na]+
【0112】
実施例2 MeCOSAR修飾
【化52】

(t-Boc)4-5MeCOSar-PEG-メチルエステル(11)
(t-Boc)4-5MeCOSar(3.6mg,4.35μmol)、HATU(1.9mg,0.00481mmol)およびDIPEA(0.732mg,5.66μmol)を乾燥DMF(0.3mL)中に溶解し、化合物8(1.9mg,4.35μmol)を添加した。この溶液に窒素を穏やかに流してパージし、室温にて一晩撹拌した。残留物をDCMで希釈し、塩化アンモニウム水溶液(2×5mL)、水(1×5mL)およびブライン(2×5mL)で洗浄した。有機層を集め、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空留去して、生成物を白色の固体として得た(4.0mg,82%収率)。
ESI-MS: C53H97N9O16についての計算値: 1115.71; 実測値 1116.73 [M+H]+, 1138.71 [M+Na]+, C58H105N9O18についての計算値: 1215.76; 実測値: 1216.77 [M+H]+, 1238.76 [M+Na]+.
【0113】
(t-Boc)4-5MeCOSar-PEG3(12)
化合物11をメタノール(0.45mL)に溶解し、NaOH水溶液(0.01M,0.3mL)を反応混合物に添加した。反応物を室温にて一晩撹拌した。得られた混合物をDCMで希釈し、塩化アンモニウム水溶液(2×5mL)、水(2×5mL)およびブライン(2×5mL)で洗浄した。有機層を集め、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。生成物を白色粉末として得た(3.0mg,収率76%)。
ESI-MS: C52H95N9O16についての計算値: 1101.69; 実測値: 1102.73 [M+H]+, 1124.77 [M+Na]+, C57H103N9O18についての計算値: 1201.74; 実測値: 1224.77 [M+Na]+.
【0114】
(t-Boc)4-5MeCOSar-DBCO(13)
ジベンゾシクロオクチン-アミン(1.67mg,0.00604mmol)をDCM(0.4mL)に溶解した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.16mg,6.04μmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.185mg,1.51μmol)および(t-Boc)4-5MeCOSar(5mg,6.04μmol)を反応混合物に添加した。反応混合物を穏やかな窒素気流でパージし、室温にて一晩攪拌した。得られた混合物を塩化アンモニウム水溶液(2×5mL)、水(1×5mL)およびブライン(1×5mL)で洗浄した。有機層を集め、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。生成物を白色の固体として得た(3.0mg,46%収率)。
ESI-MS: C58H87N9O11についての計算値: 1085.65; 実測値: 1086.66 [M+H]+, C63H95N9O13についての計算値: 1186.70; 実測値: 1186.70 [M+H]+.
【0115】
(t-Boc)4-5MeCOSar-DBCO-トリアゾール-PEG(14)
SPAAC反応は、化合物9(1.5mg,4.72μmol)および13(6.0mg,5.53μmol)を水とアセトニトリルの混合液(1:1,0.5mL)に溶解することにより行った。反応混合物を室温にて一晩攪拌した。粗製の混合物を凍結乾燥し、生成物を白色の粉末として得た(3.9mg,59%収率)。
ESI-MS: C70H109N13O17についての計算値: 1403.81; 実測値: 1386.80 [M+H-H2O]+, 1404.81 [M+H]+
【0116】
実施例4 ペプチドのコンジュゲーション
【化53】
(t-Boc)4-5MeCOSar-(シクロ(D-3-ヨード-Tyr-[NMe]-D-Orn-Arg-2-Nal-Gly)(15)
ペプチド、(シクロ(D-3-ヨード-Tyr-[NMe]-D-Orn-Arg-2-Nal-Gly)(3.2mg,3.87μmol)をアセトニトリルおよびTHF(1:1,200μL)に溶解し、(t-Boc)4-5MeCOSar(3.2mg,3.87μmol)とHATU(2.94mg,7.74μmol)の混合物に添加した。反応混合物にDIPEA(2μL)を加え、室温にて一晩攪拌した。溶媒を穏やかな窒素気流下で除去した。粗製の混合物をセミ分取HPLCで精製した。画分を集め、凍結乾燥して、化合物15を白色の固体として得た(1.5mg,収率24%)。
HPLC: tR=11.2分 ESI-MS: C76H117IN16O16についての計算値: 1636.79; 実測値: 819.41 [M+2H]2+, 1637.80 [M+H]+.
【0117】
MeCOSar-(シクロ(D-3-ヨード-Tyr-[NMe]-D-Orn-Arg-2-Nal-Gly)(16)
トリイソプロピルシラン(10%)、水(10%)およびトリフルオロ酢酸(80%)を含む溶液(100μL)を化合物15(1.5mg,0.916μmol)に加えることによりt-Boc基開裂を実施した。反応混合物を室温にて一晩攪拌した。粗製の混合物をセミ分取HPLCで精製した。画分を集め、凍結乾燥して、化合物16を白色の固体として得た(0.453mg,収率40%)。
HPLC: tR=5.33分 ESI-MS: C56H85IN16O8についての計算値: 1236.58; 実測値: 619.30 [M+2H]2+, 413.20 [M+3H]3+.
【0118】
natCu]MeCOSar-(シクロ(D-3-ヨード-TyR-[NMe]-D-Orn-Arg-2-Nal-Gly)(17)
非放射性参照化合物は、CuCl.2HO(0.3M,1.5μL)の水溶液を、酢酸アンモニウム緩衝液(0.5M,pH5.5,150μL)中の化合物16(0.5mg,0.385μmol)の溶液と混合することにより調製した。室温にて30分間反応させた。粗製の混合物をセミ分取HPLCで精製し、画分を集めて凍結乾燥し、錯体17を白色の固体として得た(0.2mg、収率40%)。
HPLC: tR=5.59分 ESI-MS: C56H85CuIN16O8についての計算値: 1299.51; 実測値: 649.75 [M]2+, 433.50 [M]3+.
【化54】

(t-Boc)4-5MeCOSar-PEG-(シクロ(D-3-ヨード-TyR-[NMe]-D-Orn-Arg-2-Nal-Gly)(18)
化合物12(0.7mg,0.635μmol)をDMF(100μL)に溶解し、アセトニトリルおよびTHF(1:1,100μL)の混合溶液中のペプチド(0.526mg,0.635μmol)およびHATU(0.483mg,1.27μmol)を含む溶液に添加した。反応混合物にDIPEAを加え、室温にて一晩攪拌した。粗製の反応混合物をセミ分取HPLCで精製し、化合物18を白色の固体として得た(0.5mg、収率41%)。
HPLC: tR=7.99分 ESI-MS: C88H139IN18O21についての計算値: 1910.94; 実測値: 956.98 [M+2H]2+
【0119】
MeCOSar-PEG-(シクロ(D-3-ヨード-TyR-[NMe]-D-Orn-Arg-2-Nal-Gly)(19)
トリイソプロピルシラン(10%)、水(10%)およびトリフルオロ酢酸(80%)を含む100μLの溶液を化合物18に加えることにより、t-Boc基の開裂を実施した。反応混合物を室温にて一晩攪拌した。粗製の混合物を水で希釈し、セミ分取HPLCで精製した。画分を集め、凍結乾燥して、化合物19を白色の固体として得た(0.3mg,収率76%)。
HPLC: tR=5.33分 ESI-MS: C68H107IN18O13についての計算値: 1510.73; 実測値: 756.38 [M+2H]2+, 504.59 [M+3H]3+.
【0120】
natCu]MeCOSar-PEG-(シクロ(D-3-ヨード-Tyr-[NMe]-D-Orn-Arg-2-Nal-Gly)(20)
CuCl.2HO(0.3M,1.3μL)の水溶液を、酢酸アンモニウム緩衝液(0.5M,pH5.5,100μL)中の化合物19(0.5mg,0.331μmol)の溶液と混合することにより、非放射性参照化合物を調製した。室温にて30分間反応させた。粗製の混合物をセミ分取HPLCで精製し、画分を集めて凍結乾燥し、錯体17を白色の固体として得た(0.2mg,収率38%)。
HPLC: tR=5.55分 ESI-MS: C68H107CuIN18O13についての計算値: 1573.66; 実測値: 786.83 [M]2+, 524.88 [M]3+.
【0121】
実施例5 (t-Boc)4-5BisCOSarのNHS-エステルの合成
【化55】
【0122】
実施例6 銅64による放射性標識
【化56】

【化57】
【0123】
実施例7 動物実験のための放射性標識ペプチド
Exp 3 - MeCOSar-ペプチド; Conjugated excess 5000; Prepared dose (MBq) 50; Moles Conjugate 2.74E-08; Moles Cu 5.48E-12; RCP% by iTLC 99%; RCY (%) 96%.
Exp 4 - MeCOSar-PEG3-ペプチド; Conjugated excess 1000; Prepared dose (MBq) 20; Moles Conjugate 2.19E-08; Moles Cu 2.19E-12; RCP% by iTLC 99.8%; RCY (%) 96%.
【0124】
実施例8 ciscosar-ペプチドコンジュゲートのワンポット合成
【化58】

【化59】

特性データ:(t-Boc)4-5BisCOSar-ペプチド
HPLCトレースを図29に示す。
HPLC法:Agilent Eclipse Plus C18 5μm(4.6×150mm)カラム;(A)0.1%TFA(HO中),(B)MeCN;グラジェント法=22分間で5-95%(B);流速=1mL/分;λ=225分 t=18.2分
図31にESI-MSスペクトルを示す。
ESI-MS: C121H174I2N26O26についての計算値: 2661.12; 実測値: 1332.09 [M+2H]2+.
【0125】
実施例10 分岐型PEGペプチドアナログの合成
【化60】
図30にLCMSのトレースを示す。
LCMS法: Phenomenex Kinetex Agilent Eclipse Plus C18 2.6μm(50×2.10mm)カラム;(A)0.2%FA(HO中),(B)0.2%FA(80%MeCN中);グラジェント法=16.5分で5-100%(B);流速=0.2mL/分;λ=225nm.
【0126】
実施例11 分岐型PEGペプチド
【化61】
HPLCトレースを図32に示す。
分析HPLC法: Agilent Eclipse Plus C18 5μm(4.6×150mm)カラム;(A)0.1%TFA(HO中),(B)MeCN;グラジェント法=25分間で15-50%(B);流速=1mL/分;λ=225分 tR=18.6分
ESI-MSを図33に示す。
ESI-MS: C108H148I2N20O25についての計算値: 2318.90; 実測値 1160.98 [M+2H]2+, 774.32 [M+3H]3+
【化62】

粗製の二官能性生成物のLCMSを図34に示す。
【0127】
実施例12 分岐型PEGアナログの合成(別法)
【化63】
【化64】
【0128】
実施例13 化合物の標識化
【化65】
【化66】
【化67】

Cu-64標識
【化68】
【0129】
実施例13 細胞への結合および内在化
結果を示すグラフを図36aおよび36bに示す。
【0130】
実施例14 放射性標識の安定性
結果を示すグラフを、図37aおよび37bに示す。
【0131】
実施例15 三量体の合成
【化69】
【化70】
【0132】
実施例16 LogD-親油性
図38に結果の一覧を示す。
【0133】
実施例17 HSA三量体の安定性
プロトコル:
1.10MBqの放射性トレーサーと、PBS(PBS中50%HAS)中のHSA 250μLをインキュベートする。
2.特定のタイミングでHSA 50μLを分取し、冷MeCNに添加する。
3.遠心分離(5分、4000rpm)し、HPLC分析に供するため上清を除去する。

HPLCトレースを図39に示す。
分析用HPLC法:Agilent Eclipse Plus C18 5μm(4.6×150mm)カラム;(A)0.1%TFA(HO中),(B)MeCN;グラジェント法=15分間で5-95%(B);流速=1mL/分
24時間,RCP 96%
【0134】
実施例17 三量体についての結合および内在化試験
結合および内在化を示すグラフを図40aおよび40bに示す。
【0135】
実施例18 結合および内在化の比較試験
細胞への結合および内在化を示すグラフを図41aおよび41bに示す。
図1
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図36a
図36b
図37a
図37b
図38
図39
図40a
図40b
図41a
図41b
【国際調査報告】