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特表2023-500382ロボット用の3つの自由度を有する関節体及び対応する制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】ロボット用の3つの自由度を有する関節体及び対応する制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
B25J17/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526454
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2020080666
(87)【国際公開番号】W WO2021089474
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】1912398
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179138
【氏名又は名称】ポレン・ロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マテュー・ラペイル
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ルアネ
(72)【発明者】
【氏名】オーギュスタン・クランペット
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS24
3C707CX01
3C707CX03
3C707HS27
3C707HT21
(57)【要約】
ロボット用の3つの自由度を有する関節体であって、プラットフォーム(2)と、各々がピニオン(5a、5b、5c)を介してリングギア(4、4a、4b、4c)に接続された3つのモータ(3a、3b、3c)とを備え、各リングギア(4、4a、4b、4c)は、各ディスク(6、6a、6b、6c)がリングギア(4、4a、4b、4c)と1つになるように、ベース上に積み重ねられた中空ディスク(6a、6b、6c)の内部に配置され、各ディスク(6、6a、6b、6c)はさらに、それ自体ベース及びディスク(6、6a、6b、6c)の積重体と同じ方向に延在するディスクヘッド(7、7a、7b、7c)と1つになり、ディスクヘッド(7、7a、7b、7c)ごとに、アーム(8、8a、8b、8c)は、一方ではディスクヘッド(7、7a、7b、7c)に、他方ではプラットフォーム(2)に回転式に接続され、各モータ(3a、3b、3c)は、少なくとも1つのディスク(6、6a、6b、6c)の内部に少なくとも部分的に収容される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット用の3つの自由度を有する関節体であって、
プラットフォーム(2)と、
各々がピニオン(5a、5b、5c)を介してリングギア(4、4a、4b、4c)に接続された3つのモータ(3a、3b、3c)と、
を備え、
前記リングギア(4、4a、4b、4c)それぞれが、ベース上に積み重ねられた中空ディスク(6a、6b、6c)の内部に配置され、それにより、前記ディスク(6、6a、6b、6c)それぞれが、リングギア(4、4a、4b、4c)と1つになり、
前記ディスク(6、6a、6b、6c)それぞれがさらに、それ自体前記ベース及び前記ディスク(6、6a、6b、6c)の積重体と同じ方向に延在するディスクヘッド(7、7a、7b、7c)と1つになり、
前記ディスクヘッド(7、7a、7b、7c)ごとに、アーム(8、8a、8b、8c)が、一方では前記ディスクヘッド(7、7a、7b、7c)に、他方では前記プラットフォーム(2)に回転式に接続され、
前記モータ(3a、3b、3c)それぞれが、少なくとも1つの前記ディスク(6、6a、6b、6c)の内部に少なくとも部分的に収容される、関節体。
【請求項2】
前記モータ(3a、3b、3c)それぞれが、前記ディスク(6、6a、6b、6c)の回転軸に対してオフセットされ、異なる角度セクタに配置されており、それにより、前記ベース及び積み重ねられた前記ディスク(6、6a、6b、6c)によって区切られたキャビティ内に3つの前記モータ(3a、3b、3c)を収容する、請求項1に記載の関節体。
【請求項3】
前記ディスクヘッド(7、7a、7b、7c)それぞれの静止位置が、前記モータ間のオフセット角度に対応する前記オフセット角度を有する、請求項1に記載の関節体。
【請求項4】
前記モータ(3a、3b、3c)それぞれがさらに、基準位置に対して前記モータの出力シャフトの角度位置を決定するための手段、特に磁気エンコーダが備えられる、請求項1に記載の関節体。
【請求項5】
前記プラットフォーム(2)にリンクされたベクトルの所要位置及び前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記ベクトルを中心とする所要回転角に従って前記プラットフォーム(2)を方向付けることを可能にする、請求項1から4のいずれか一項に記載の3つの自由度を有する関節体を制御するための方法であって、
前記方法が、
-初期位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた3軸基準フレームの座標を決定し、前記所要位置及び所要回転角に対応する前記プラットフォーム(2)に垂直な前記ベクトルを受け取るステップと、
-前記初期位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレーム内の前記プラットフォーム(2)の前記初期位置から前記プラットフォーム(2)の中間位置まで通過することを可能にする回転ベクトルの前記座標を決定するステップであって、前記中間位置が、前記プラットフォーム(2)の前記中間位置から前記所要位置への前記通過が所要回転角に従う前記プラットフォーム(2)自体の回転を含むようなものである、ステップと、
-前記プラットフォーム(2)の前記初期位置から前記プラットフォーム(2)の中間位置まで通過することを可能にする初期回転角を決定するステップと、
-前記初期位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレーム内の前記所要位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレームの前記座標を決定するステップと、
-前記所要回転角、前記初期回転角及び前記関節体の構造物にリンクされたパラメータの前記初期位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレーム内の前記所要位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレームの前記座標に従って、第1の前記アームの回転角を決定するステップと、
-角度オフセット値に加算された前記所要回転角、前記初期回転角及び前記関節体の前記構造物にリンクされたパラメータの前記初期位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレーム内の前記所要位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレームの前記座標に従って、第2の前記アームの前記回転角を決定するステップと、
-前記角度オフセット値を減算された前記所要回転角、前記初期回転角及び前記関節体の前記構造物にリンクされたパラメータの前記初期位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレーム内の前記所要位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレームの前記座標に従って、第3の前記アームの前記回転角を決定するステップと、
を含み、
前記ディスクごとに、前記ディスクの回転角が、前記対応するアームの前記回転角及び前記初期位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレーム内の前記所要位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレームの座標に従って決定され、
前記モータそれぞれが、前記モータに対応する前記ディスクの前記回転角で制御される、方法。
【請求項6】
前記回転ベクトルが、前記初期位置にある前記プラットフォーム(2)に垂直な前記ベクトルと前記所要位置にある前記プラットフォーム(2)に垂直な前記ベクトルとの間のベクトル積として決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記関節体の前記構造物にリンクされた前記パラメータが、遠位円の直径、近位円の直径及び前記近位円の中心である、請求項5または6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回転角が、前記所要位置の前記プラットフォームに垂直なベクトルによる前記初期位置の前記プラットフォームに垂直なベクトルのスカラー積のアークコサインとして定義される、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記初期位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレーム内の前記所要位置に対する前記関節体の前記プラットフォーム(2)にリンクされた前記3軸基準フレームの前記座標を決定するために、前記初期位置から前記中間位置への通過を可能にする第1の四元数及び前記プラットフォーム自体の回転によって前記中間位置から前記所要位置への通過を可能にする第2の四元数が決定され、
前記プラットフォームの前記初期位置に2つの前記四元数を連続して適用して、前記初期位置にある前記プラットフォームにおける前記基準フレーム内の前記プラットフォームの前記所要位置を決定するステップ
をさらに含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、ロボット用のアクチュエータであり、より詳細には、3つの自由軸を有するアクチュエータである。
【0002】
本発明の技術分野はまた、3つの自由軸を有するアクチュエータの制御である。
【背景技術】
【0003】
特にロボットの娯楽用途のために、公共及び家庭の空間内で人間との自然な相互作用をもつことができるソーシャルロボットの開発。
【0004】
そのようなロボットは、特に以下の特徴をもたなければならない。
-相互作用、特に人間によって実行される接触または操作中の物理的な相互作用において安全であり、
-予想外の事象に対応するだけでなく、より楽しめる相互作用を作り出し、生きている錯覚を大事にするために、動的な動きを実行することを可能にし、
-ロボットの意思を人間が直感的に理解することに都合がよい高品質のアニメーションが実行され、オブジェクトを操作することによって現実の物理的な世界で動作することを可能にする。
【0005】
動作の安全性は、特に、制御における慣性を制限し、公衆を傷つける危険性を制限するために、ロボットの質量またはその部材に起因する。
【0006】
ロボットでは、3つの軸に従って移動することが可能な関節体を作成することが必要なとき、最も頻繁に使用される技術的解決策は、直列の3つのアクチュエータを連鎖させることである。これは、ほとんどの産業用ロボットで見られ、人型ロボットでも肩及び腰において見られるものである。
【0007】
これらの直列関節体の問題は、機構及び動態にある。
【0008】
機構の観点から、任意の方向にいつでも回転することができるようになるボールヘッドの回転特性は、初期ゾーンの周りでのみ実行される。このゾーンから遠く離れるほど、ボールヘッドの特性が保持されなくなる。さらに遠くまで移動すると、自由度の1つが失われるジンバルロックと呼ばれる位置に達する。
【0009】
動態な観点から、直列の1番目のアクチュエータは、有用な荷重に加えて、2番目及び3番目のアクチュエータの質量を支持する。3番目のアクチュエータの質量を支持しなければならない2番目のアクチュエータについても同様である。したがって、関節体がよく反応し動的であり得ることを保証するために、システム全体に負担をかけ、その慣性及びそのコストを等しく増加させる1番目のアクチュエータを特大にすることが必要になる。
【0010】
直列アクチュエータを有する関節体の代替は、並列アクチュエータを有する関節体である。これらの機構は、実行及び制御がはるかに複雑であるが、すべてのアクチュエータがロボットのフレームに固定されるという利点を有する。これにより、可動部分にはるかに軽量な構造を有することと、構造を移動させるためにアクチュエータの各々の動力を加えることからの恩恵を受けることの両方が可能になる。最終的に、これにより、迅速かつ正確に移動することが可能な非常に動的なシステムを設計することが可能になる。
【0011】
従来技術から、並列アクチュエータを有する関節体の以下の例が知られている。
【0012】
Bulgarelliらの非特許文献1は、手話の遠隔通信のための人工手首を開発する目的で、並列アクチュエータを有する関節体を開示している。
【0013】
非特許文献1は、オイラー角表現を介した関節体の制御を開示している。そのような表現は、従来、そのような複雑なシステムに使用されているが、不安定である。したがって、ジンバルロックにつながる可能性がある。
【0014】
加えて、関節体の初期位置から離れると、オイラー表現を使用することによってそのような状況では複雑になる、異なる軸を中心とする回転をどのように組み合わせるかを知る必要があるので、与えられるように求められる方向を特徴付けることがますます困難になる。
【0015】
Sudkiらの非特許文献2は、海洋動物、特にペンギンの肩部を複製するように、海洋推進器向けの3つの自由度を有するアクチュエータを開示している。
【0016】
従来技術の並列アクチュエータを有する関節体は、モータが固定されるフレームがかなりのサイズになるという欠点を有する。これらの関節体は、移動式ロボットに統合することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【非特許文献1】A Low-Cost Open Source 3D Printable Dexterous Anthropomorphic Robotic Hand with a Parallel Spherical Joint Wrist for Sign Languages Reproduction、Bulgarelliら、International Journal of Advanced Robotic Systems、第13巻、第3版、2016年1月1日
【非特許文献2】Marine Propulsor based on a Three-Degree-of-Freedom Actuated Spherical Joint、Sudkiら、Third International Symposium on Marine Propulsors、smp'13、2013年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
解決されるべき技術的課題は、小型化することによって並列アクチュエータの利点からどのように恩恵を受けるかである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の1つの目的は、ロボット用の3つの自由度を有する関節体であり、プラットフォームと、各々がピニオンを介してリングギアに接続された3つのモータと、を備え、各リングギアは、各ディスクがリングギアと1つになるように、ベース上に積み重ねられた中空ディスクの内部に配置され、
各ディスクはさらに、それ自体ベース及びディスクの積重体と同じ方向に延在するディスクヘッドと1つになり、
ディスクヘッドごとに、アームは、一方ではディスクヘッドに、他方ではプラットフォームに回転式に接続され、
各モータは、少なくとも1つのディスクの内部に少なくとも部分的に収容される。
【0020】
各モータは、ディスクの回転軸に対してオフセットされ、ベース及び積み重ねられたディスクによって区切られたキャビティ内に3つのモータを収容するために、異なる角度セクタに配置することができる。
【0021】
各ディスクヘッドの静止位置は、モータ間のオフセット角度に対応するオフセット角度を有することができる。
【0022】
各モータはさらに、基準位置に対してモータの出力シャフトを決定するための手段、特に磁気エンコーダを備えることができる。
【0023】
本発明の別の目的は、プラットフォームにリンクされたベクトルの所要位置及びプラットフォームにリンクされたベクトルを中心とする所要回転角に従ってプラットフォームを方向付けることを可能にする、3つの自由軸を有する関節体を制御するための方法であって、方法は、
初期位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレームの座標を決定し、所要位置及び所要回転角に対応するプラットフォームに垂直なベクトルを受け取るステップと、
初期位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレーム内のプラットフォームの初期位置からプラットフォームの中間位置まで通過することを可能にする回転ベクトルの座標を決定するステップであって、中間位置が、プラットフォームの中間位置から所要位置への通過が所要回転角に従うプラットフォーム自体の回転を含むようなものである、ステップと、
プラットフォームの初期位置からプラットフォームの中間位置まで通過することを可能にする初期回転角を決定するステップと、
初期位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレームの座標を決定するステップと、
所要回転角、初期回転角及び関節体の構造物にリンクされたパラメータの初期位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレームの座標に従って、第1のアームの回転角を決定するステップと、
角度オフセット値に加算された所要回転角、初期回転角及び関節体の構造物にリンクされたパラメータの初期位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレームの座標に従って、第2のアームの回転角を決定するステップと、
角度オフセット値を減算された所要回転角、初期回転角及び関節体の構造物にリンクされたパラメータの初期位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレームの座標に従って、第3のアームの回転角を決定するステップと
を含み、
ディスクごとに、ディスクの回転角は、対応するアームの回転角及び初期位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレームの座標に従って決定され、
各モータは、モータに対応するディスクの回転角で制御される。
【0024】
回転ベクトルは、初期位置にあるプラットフォームに垂直なベクトルと所要位置にあるプラットフォームに垂直なベクトルとの間のベクトル積として決定することができる。
【0025】
関節体の構造物にリンクされたパラメータは、遠位円の直径、近位円の直径及び近位円の中心であり得る。遠位円は、プラットフォームの周りのアームによってトレースされる円である。近位円は、ディスクによってトレースされる円である。
【0026】
回転角は、所要位置にあるプラットフォームに垂直なベクトルによる初期位置にあるプラットフォームに垂直なベクトルのスカラー積のアークコサインとして定義することができる。
【0027】
初期位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォームにリンクされた3軸基準フレームの座標を決定するために、初期位置から中間位置への通過を可能にする第1の四元数及びプラットフォーム自体の回転によって中間位置から所要位置への通過を可能にする第2の四元数が決定され、
初期位置にあるプラットフォームの基準フレーム内のプラットフォームの所要位置は、プラットフォームの初期位置に2つの四元数を連続して適用することによって決定することができる。
【0028】
本発明によるシステムは、可逆的である、すなわち関節体がトランスデューサとして動作することができるという利点を有する。言い換えれば、関節体に対する作用は、モータによって電流に変換される。
【0029】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ与えられる以下の説明を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による関節体の三次元図である。
図2】本発明によるアームの側面図である。
図3】本発明によるディスクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明による関節体は、アクチュエータを制御する3つの同心軸のシステムを備える。同心軸を動作させるモータは、関節体の内部に一体化される。
【0032】
関節体1は、3つのモータを回転制御することにより、ベースに対して3つの自由軸に従ってプラットフォーム2を変位させることを可能にする。
【0033】
関節体1は、各々がピニオン5a、5b、5cを介してリングギア4a、4b、4cに接続された3つのモータ3a、3b、3cが配置されたベースを備える。図1では、モータ3cは、リングギア4a、4b、4cの内側に示されている。モータ3a及び3bは、明確性のため図示されていない。しかしながら、モータ3bはリングギア4a、4bの内側に配置され、モータ3aはリングギア4aの内側に配置される。各リングギア4a、4b、4cは、各ディスク6a、6b、6cがリングギア4a、4b、4cと1つになるように、ベース上に積み重ねられた中空ディスク6a、6b、6cの内側に配置される。さらに、各ディスク6a、6b、6cは、それ自体ベース及びディスク6a、6b、6cの積重体と同じ方向に延在するディスクヘッド7a、7b、7cと1つになる。各モータ3a、3b、3cはさらに、基準位置に対してモータの出力シャフトの角度位置を決定するための手段が備えられる。そのような決定するための手段は、角度位置センサまたは磁気エンコーダであり得る。
【0034】
図2は、各アーム8a、8b、8cに対して転置することができる一般的な場合のプラットフォーム及びディスクとのアームの接続を示す。
【0035】
各ディスクヘッド7、7a、7b、7cに対して、円弧形状のアーム8、8a、8b、8cは、一方ではディスクヘッド7、7a、7b、7cに、他方ではプラットフォーム2に回転式に接続される。ディスクヘッド7、7a、7b、7cとアーム8、8a、8b、8cとの間の回転軸及びアーム8、8a、8b、8cとプラットフォーム2との間の回転軸は、対応するアーム8、8a、8b、8cを備えるものと同じ平面内に含まれる。有利なことに、円弧形状は円の4分の1を表す。
【0036】
ディスク6、6a、6b、6cはケーシングを形成し、ディスク6、6a、6b、6cの移動を容易にし、摩擦及び摩耗を低減し、ディスク6、6a、6b、6cのベースに対する位置合わせ及びディスク6、6a、6b、6cの間の位置合わせを維持することを可能にするベアリングが備えられる。
【0037】
言い換えれば、第1のディスク6aは、ディスクヘッド7aを介して第1のアーム8aに接続され、第1のディスク6aは、第1のリングギア4a及び第1のピニオン5aを介して第1のモータ3aによって駆動される。
【0038】
同じ配置が第2のディスク6b及び第3のディスク6cに対して設けられる。
【0039】
より正確には、第2のディスク6bは、ディスクヘッド7bを介して第2のアーム8bに接続され、第2のディスク6bは、第1のリングギア4b及び第2のピニオン5bを介して第2のモータ3bによって駆動される。同様に、第3のディスク6cは、ディスクヘッド7cを介して第3のアーム8cに接続され、第3のディスク6cは、第1のリングギア4c及び第3のピニオン5cを介して第3のモータ3cによって駆動される。
【0040】
第1のディスク6aは、それ自体が第3のディスク6c上に積み重ねられた第2のディスク6b上に積み重ねられる。第3のディスク6cはベース上に配置される。第1のアーム6a、第2のアーム6b及び第3のアーム6cは、プラットフォームに接続される。
【0041】
図1を参照すると、各ピニオン5a、5b、5cは、対応するリングギア4a、4b、4cを機械的に駆動するようにベースから異なる高さに配置されていることが分かる。加えて、ベース及び積み重ねられたディスク6a、6b、6cによって区切られたキャビティ内に3つのモータ3a、3b、3cを収容するために、各モータ3a、3b、3cは、ディスク6a、6b、6cの回転軸に対してオフセットされ、異なる角度セクタに配置される。この配置が図3に示されている。したがって、3つのモータ3a、3b、3cでは、各モータ3a、3b、3cは異なる120°セクタに配置される。
【0042】
この120°のオフセット角は、各ディスクヘッド7、7a、7b、7cの静止位置にも見られ、各ディスクヘッド7、7a、7b、7cは、他の2つから120°に配置されている。
【0043】
モータ3a、3b、3cは、プラットフォーム2の向きを制御するように制御され、プラットフォーム2は、近位円と呼ばれる円上の各ディスク6a、6b、6cの回転を駆動する。各ディスク6a、6b、6cの回転は、遠位円と呼ばれる別の円上で機械的に接続されたアーム8a、8b、8cの回転を駆動する。
【0044】
図1を参照すると、プラットフォーム2にリンクされた基準フレームRがそこに示されていることが分かる。指向正規直交三次元基準フレームRは、プラットフォーム2の重心に位置する原点O(0,0,0)と、プラットフォーム2に垂直なベクトルZ(0,0,1)と、プラットフォーム2の表面に平行に延在し、プラットフォーム2との第3のアーム8cの接続を通過するベクトルY(0,1,0)と、ベクトルX及びYに直交し、指向正規直交基準フレームを形成するベクトルX(1,0,0)とを含むものとして定義される。3次元指向基準フレームは基準フレームであり、ベクトルXとベクトルYとの間の角度は指向角であり、ベクトルYとベクトルZとの間の角度は指向角であり、ベクトルZとベクトルXとの間の角度は指向角であることを想起されたい。
【0045】
ここで、プラットフォーム2を所定の位置に位置決めすることを可能にするシステムの制御に注目する。
【0046】
ジンバルロックを防止するために、四元数の形式の表現が使用される。四元数は、このベクトルの周りの角度θだけの回転と組み合わされた三次元空間の正規化されたベクトルである。
【0047】
以下の大きさが定義される。
R0=(X0,Y0,Z0):プラットフォーム2の初期位置を定義する指向直交基準フレーム
Rreq=(Xreq,Yreq,Zreq):プラットフォーム2の所要位置を定義する指向直交基準フレーム
V=(a,b,c):ベクトルR0及びRreqによって定義される平面に直交する回転ベクトル
θ:プラットフォーム2のための所要位置を定義するベクトルVの周りの回転角
β:初期位置と所要位置との間のプラットフォーム2自体の回転角
【0048】
プラットフォーム2は、基準フレームR0によって定義された初期位置から基準フレームRreqによって定義された所要位置まで通過するように制御されることが求められる。
【0049】
次いで、運動は2つの回転に分解される。第1の回転は、基準フレームR0及びRreqによって定義された平面に垂直なベクトルVの周りの角度θだけの回転である。
【0050】
第2の回転は、プラットフォーム2のベクトル法線の周りのβだけの回転である。プラットフォーム2の法線ベクトルは、ベクトルZ0、Zreq、または任意の他の中間ベクトルであり得ることに留意されたい。
【0051】
回転の順序は無関係である。したがって、第2の回転は第1の回転の前に実行することができる。
【0052】
次いで、ベクトルVは、以下の方法でベクトルZ0及びZreqのベクトル積として定義される。
[数式1]
【数1】
【0053】
回転角θは、プラットフォーム2に垂直なR0及びRreqの成分に従って定義される。
[数式2]
【数2】
【0054】
次いで、ベクトルVは、四元数とともに使用できるように正規化される。
【0055】
ベクトルVの周りの角度θだけの第1の回転に関連付けられた第1の四元数q1は、以下のように記述される。
[数式3]
【数3】
ここで、
[数式4]
【数4】
[数式5]
【数5】
[数式6]
【数6】
[数式7]
【数7】
【0056】
次いで、プラットフォーム2に垂直なベクトルの周りで角度βだけ第2の回転を実行することを可能にする第2の四元数q2が定義される。第1の四元数q1について提示されたものと同じ形式を使用することによって、以下が得られる。
[数式8]
【数8】
ここで、
[数式9]
【数9】
[数式10]
【数10】
[数式11]
【数11】
[数式12]
【数12】
【0057】
プラットフォーム2に垂直なベクトルは、形式(0,0,Z)のベクトルである。この場合、四元数の項x2及びy2は0である。
【0058】
したがって、初期位置にリンクされた基準フレームR0から所要位置にリンクされた基準フレームRreqへの通過を可能にする2つの回転に関連付けられた2つの四元数が存在する。
【0059】
しかしながら、アームがプラットフォーム2を初期位置R0から所要位置Rreqに移動させるようにこれらの四元数によって定義された回転を実行するために、θ11、θ12、θ13と注記される3つのモータの回転角を決定することが依然として必要である。
【0060】
これらの回転角を決定するために、以下の要素が定義される。
Rd:遠位円とも呼ばれる、プラットフォーム2の周りのアームによってトレースされる円の半径
Rp:近位円とも呼ばれる、ディスクによってトレースされる円の半径
Cp=(0,0,Cz):近位円とも呼ばれる、ディスクによってトレースされる円の中心の座標
Pc=(0,0,0):遠位円の中心の座標
θ3i プラットフォーム2に対するアームiの角度
θ1i その基準位置に対するディスクiの角度
【0061】
遠位円Xi及び近位円Xiの式は、以下の式によって表現される。
[数式13]
【数13】
[数式14]
【数14】
【0062】
したがって、第1の四元数q1を適用することにより、基準フレームR0によって定義された初期位置から基準フレームRinterによって定義された中間位置への通過を可能にする第1の変位が定義される。
[数式15]
【数15】
【0063】
したがって、第2の四元数q2を適用することにより、基準フレームRinterによって定義された中間位置から基準フレームRreqによって定義された所要位置への通過を可能にする第2の変位が定義される。
[数式16]
【数16】
座標Z上の四元数がこのように適用されると、以下が得られる。
[数式17]
【数17】
[数式18]
【数18】
【0064】
しかしながら、第2の四元数q2によって定義された回転は、方向Zの周りで実行される。したがって、方向Zは不変であり、したがって、そこからZinter=Zreqが導出される。
【0065】
回転ベクトルが正規化されている場合、四元数q1の共役
【数19】
が四元数q1の逆数に等しいことに留意されたい。したがって、
【数20】
及び
【数21】
が得られる。
【0066】
第2の四元数q2の適用中に軸X及びYを中心とする回転がないので、座標Xreq及びYreqの計算は、2つの四元数q1及びq2を含む単一のステップで実行することができる。
[数式19]
【数22】
[数式20]
【数23】
【0067】
基準フレーム内の変化を伴って、座標X0、Y0、Z0及び座標Xreq、Yreq、Zreqは、プラットフォームの初期位置にリンクされた基準フレームR0内で定義される。
【0068】
したがって、基準フレームR0では、以下の式を有する。
X0=(X0,0,0)
Y0=(0,Y0,0)
Z0=(0,0,Z0)
Xreq=(Xx,Yx,Zx)
Yreq=(Xy,Yy,Zy)
Zreq=(Xz,Yz,Zz)
【0069】
座標Xreq、Yreq、Zreqを知ることにより、ディスクの角度θ11、θ12、θ13を決定することが可能である。
式1及び式2から生じる式Xi=Xpを解くことによって、以下の連立方程式が得られる。
[数式21]
【数24】
[数式22]
【数25】
[数式23]
【数26】
【0070】
この連立方程式[数式21]、[数式22]、[数式23]を解くことにより、それぞれ、角度θ3i及びθ1iの以下の式が得られる。
[数式24]
【数27】
[数式25]
【数28】
【0071】
式[数式24]の適用により、システムの各アームiの角度θ3iが最初に決定される。式[数式25]の適用により、システムの各ディスクiの角度θ1iが次に決定される。
【0072】
上述されたように、ベクトルZreqは、第2の回転角βによる回転によって修正されない。一方、ベクトルXreq及びYreqは、確かにこの回転によって修正される。
【0073】
静止時には、各ディスクは互いに対して120°だけオフセットされる。第1のディスクの角度位置を基準とすると、第2の回転角βに対して+120°のオフセットを適用することによって第2のディスクの角度位置を、第2の回転角βに対して-120°のオフセットを適用することによって第3のディスクの角度位置を得ることが可能である。
【0074】
式[数式24]及び[数式25]の値Xx、Yx及びZxがこのオフセットに起因して修正されることがこれから生じる。
【0075】
上述された実施形態は、プラットフォームにリンクされた基準フレームの軸Zに沿った第2の回転を含む。他の実施形態では、第2の回転は、軸Xもしくは軸Yに沿って、またはプラットフォームにリンクされたベクトルに沿って実行することができる。当業者であれば、考慮された軸に従って上術された数学的形式を適合させるであろう。
【0076】
同様に、本発明の範囲を逸脱することなく、第1の回転及び第2の回転を反転させて入れ替えることができる。
【0077】
プラットフォーム2の所要位置及び所要回転角に従ってプラットフォーム2を方向付けることを可能にする3つの自由軸を有する関節体を制御するための方法は、以下のステップを含む。
【0078】
第1のステップの間に、初期位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた指向正規直交3軸基準フレームの座標が決定され、所要位置及び所要回転角に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた指向正規直交3軸基準フレームの座標が決定される。
【0079】
第2のステップの間に、プラットフォーム2の初期位置にリンクされた基準フレームから、初期位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレーム内のプラットフォーム2の中間位置にリンクされた基準フレームへの通過を可能にする回転ベクトルVの座標が決定され、中間位置は、プラットフォーム2の中間位置から所要位置への通過が、所要回転角に従ってプラットフォーム2自体の回転を含むようなものである。
【0080】
第3のステップの間に、プラットフォーム2の初期位置からプラットフォーム2の中間位置への通過を可能にする初期回転角が決定される。
【0081】
第4のステップの間に、初期位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレームの座標が決定される。
【0082】
第5のステップの間に、所要回転角、初期回転角及び関節体の構造物にリンクされたパラメータの初期位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレームの座標に従って、第1のアームの回転角θ31が決定される。
【0083】
第6のステップの間に、角度オフセット値に加算された所要回転角、初期回転角及び関節体の構造物にリンクされたパラメータの初期位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレームの座標に従って、第2のアームの回転角θ32が決定される。
【0084】
第7のステップの間に、角度オフセット値を減算された所要回転角、初期回転角及び関節体の構造物にリンクされたパラメータの初期位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレームの座標に従って、第3のアームの回転角θ33が決定される。
【0085】
第8のステップの間に、ディスクごとに、対応するアームの回転角及び初期位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレーム内の所要位置に対する関節体のプラットフォーム2にリンクされた3軸基準フレームの座標に従って、ディスクの回転角が決定される。
【0086】
各モータは、モータに対応するディスクの回転角で制御される。
【符号の説明】
【0087】
1 関節体、2 プラットフォーム、3a 第1のモータ、3b 第2のモータ、3c 第3のモータ、4a 第1のリングギア、4b 第2のリングギア、4c 第3のリングギア、5a 第1のピニオン、5b 第2のピニオン、5c 第3のピニオン、6 ディスク、6a 第1のディスク,中空ディスク、6b 第2のディスク,中空ディスク、6c 第3のディスク,中空ディスク、7 ディスクヘッド、7a 第1のディスクヘッド、7b 第2のディスクヘッド、7c 第3のディスクヘッド、8 アーム、8a 第1のアーム、8b 第2のアーム、8c 第3のアーム
図1
図2
図3
【国際調査報告】