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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(54)【発明の名称】医薬組合せ物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20221223BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221223BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221223BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221223BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526767
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2020128083
(87)【国際公開番号】W WO2021093764
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/117155
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519091720
【氏名又は名称】シーストーン・ファーマシューティカルズ・(スージョウ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CStone Pharmaceuticals (Suzhou) Co., Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】518417363
【氏名又は名称】シーストーン ファーマシューティカルズ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518417374
【氏名又は名称】シーストーン ファーマシューティカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジュアン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、新規医薬組合せ物およびその使用に関する。本発明の医薬組合せ物は癌、例えば結腸癌の処置に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質Aおよび物質Bを含む医薬組合せ物であって、
ここで、物質Aは、化合物F:
【化1】
、その結晶形、その薬学的に許容できる塩またはその溶媒和物であり;
物質Bは、配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21および23からなる群から選択される重鎖CDRアミノ酸配列を含む抗体M、またはその抗原結合性断片である、医薬組合せ物。
【請求項2】
抗体Mが、
(a)配列番号:1のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:3のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:5のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:2のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:4のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:6のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:7のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:9のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:11のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:8のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:10のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:12のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:13のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:15のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:17のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:14のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:16のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:18のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(d)配列番号:19のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:21のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:23のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:8のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:10のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:12のLCDR3アミノ酸配列の含む軽鎖可変領域、を含み;
場合により、抗体Mが、配列番号:7のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:9のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:11のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:8のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:10のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:12のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の医薬組合せ物。
【請求項3】
抗体Mが、
(a)配列番号:20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:25のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(d)配列番号:28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:25のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含み;
場合により、抗体Mが、配列番号:24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:25のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1または2に記載の医薬組合せ物。
【請求項4】
抗体MがヒトIgG4の重鎖定常領域、およびヒトλ軽鎖またはκ軽鎖の軽鎖定常領域を含み;
および/または、物質Bが抗体Mであり;
および/または、物質Aが化合物Fのメシル酸塩であり;
および/または、医薬組合せ物が医薬賦形剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組合せ物。
【請求項5】
医薬組合せ物が、固定されている組合せ物または固定されていない組合せ物の形態であり、場合により、固定されていない組合せ物の形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組合せ物。
【請求項6】
物質Aおよび物質Bを含む医薬組成物であって、物質Aおよび物質Bが請求項1~4のいずれか一項に記載されている、医薬組成物。
【請求項7】
物質Aを含む第一の医薬組成物を含む第一の容器;および
物質Bを含む第二の医薬組成物を含む第二の容器、を含むキットであって、
物質Aおよび物質Bが請求項1~4のいずれか一項に記載されている、キット。
【請求項8】
癌を処置する方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組合せ物または請求項6に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項9】
癌が、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌、白血病、リンパ腫または骨髄腫であり;場合により、癌が結腸癌であり;
および/または、物質Aおよび物質Bが同時にまたは別々に投与され、場合により、別々に投与され;
および/または、物質Aが経口投与され;
および/または、物質Bが注射によって投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
物質Aおよび物質Cを含む医薬組合せ物であって、物質Aは、化合物F:
【化2】
、その結晶形、その薬学的に許容できる塩またはその溶媒和物であり;
物質Cは、配列番号:38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50および51からなる群から選択されるCDRアミノ酸配列を含む抗体N、またはその抗原結合性断片である、医薬組合せ物。
【請求項11】
抗体Nが、
(a)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、ならびに配列番号:40および41からなる群から選択されるHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号:42、43、44、45および46からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、ならびに配列番号:48、49、50および51からなる群から選択されるLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項10に記載の医薬組合せ物。
【請求項12】
抗体Nが、
(a)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:42のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:48のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:42からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:43からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(d)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:44からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(e)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:45からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(f)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:44からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(g)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:45からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(h)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:45からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:50のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(i)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:46からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:51のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(j)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:46からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:48のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含み;
場合により、抗体Nが、配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:42からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項10または11に記載の医薬組合せ物。
【請求項13】
抗体Nが、
(a)配列番号:29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(d)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:33のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(e)配列番号:29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(f)配列番号:29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:33のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(g)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(h)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:35のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(i)配列番号:29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(j)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:37のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含み;
場合により、抗体Nが、配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の医薬組合せ物。
【請求項14】
抗体NがヒトIgG4の重鎖定常領域、およびヒトλ軽鎖またはκ軽鎖の軽鎖定常領域をさらに含み;
および/または、物質Cが抗体Nであり;
および/または、物質Aが化合物Fのメシル酸塩であり;
および/または、医薬組合せ物が医薬賦形剤をさらに含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の医薬組合せ物。
【請求項15】
医薬組合せ物が、固定されている組合せ物または固定されていない組合せ物の形態であり、場合により、固定されていない組合せ物の形態である、請求項10~14のいずれか一項に記載の医薬組合せ物。
【請求項16】
物質Aおよび物質Cを含む医薬組成物であって、物質Aおよび物質Cは請求項10~14のいずれか一項に記載されている、医薬組成物。
【請求項17】
物質Aを含む第一の医薬組成物を含む第一の容器;および
物質Cを含む第二の医薬組成物を含む第二の容器、を含むキットであって、物質Aおよび物質Cは請求項10~14のいずれか一項に記載されている、キット。
【請求項18】
癌を処置する方法であって、請求項10~15のいずれか一項に記載の医薬組合せ物または請求項16に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項19】
癌が、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌、白血病、リンパ腫または骨髄腫である;場合により、癌が結腸癌であり;
および/または、物質Aおよび物質Cが同時にまたは別々に投与され、場合により、別々に投与され;
および/または、物質Aが経口投与され;
および/または、物質Cが注射によって投与される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年11月11日出願のPCT/CN2019/117155の優先権を主張し、これら各々の全内容は引用により本明細書に包含される。
【背景技術】
【0002】
(発明の分野)
本開示は、医薬組合せ物およびその使用に関する。
【0003】
結腸癌は、世界的に見ても悪性疾患の中で最も死亡率の高い疾患の一つである。1975年から2002年までの米国における年次の年齢調整された癌の発生率と死亡率によると、結腸癌は最も頻繁に診断されている上位3つのタイプの癌の一つであった。結腸癌を処置するための継続的な必要性がある。
【0004】
レンバチニブ(CAS番号417716-92-8)は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRα)、KIT、およびRET癌原遺伝子受容体などの複数の受容体チロシンキナーゼ(例えば、血管新生や腫瘍増殖に関与する受容体チロシンキナーゼ)の活性な阻害物質である。レンバチニブは、2005年に米国FDAよりメシル酸塩(CAS番号857890-39-2)の形態で、甲状腺癌の処置に対して承認されている。
【化1】
【発明の概要】
【0005】
本開示は、新規医薬組合せ物およびその使用に関する。
【0006】
一態様において、本開示は、物質Aおよび物質Bを含む医薬組合せ物であって、
ここで、物質Aは、
【化2】
で示される化合物F、その結晶形、その薬学的に許容できる塩またはその溶媒和物であり;
物質Bは、配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21および23から選択される重鎖CDRアミノ酸配列を含む抗体M、またはその抗原結合性断片である、医薬組合せ物を提供する。
【0007】
上記に定義されている医薬組合せ物は、医薬賦形剤をさらに含み得る。
【0008】
上記に定義されている医薬組合せ物は、固定されている組合せ物または固定されていない組合せ物の形態であり得る。いくつかの実施態様において、該医薬組合せ物は、固定されていない組合せ物の形態である。
【0009】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、
(a)配列番号:1のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:3のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:5のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:2のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:4のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:6のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:7のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:9のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:11のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:8のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:10のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:12のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:13のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:15のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:17のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:14のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:16のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:18のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(d)配列番号:19のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:21のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:23のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:8のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:10のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:12のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含み得る。
【0010】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、
(a)配列番号:7のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:9のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:11のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号:8のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:10のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:12のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0011】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、
(a)配列番号:20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:25のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(d)配列番号:28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:25のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0012】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、
(a)配列番号:24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号:25のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0013】
完全ヒトモノクローナル抗体1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11である例示的な抗体MのCDRアミノ酸配列を表1に示す。
【表1】
【0014】
完全ヒトモノクローナル抗体1.4.1、1.14.4、1.20.15、および1.46.11である例示的な抗体Mは、以下の表2に示される重鎖可変領域および軽鎖可変領域、ならびにヒトIgG4アイソタイプの定常領域を有する。
【表2】
【0015】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、ラクダ化(camelized)単一ドメイン抗体、二重特異性抗体、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)2、dsFv-dsFv'、Fv断片、Fab、Fab'、F(ab')2、ds二重特異性抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体であり得る。
【0016】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、標識抗体、二価抗体、または抗イディオタイプ抗体であり得る。
【0017】
いくつかの実施態様において、抗体Mは完全ヒト抗体であり得る。いくつかの実施態様において、完全ヒト抗体は、組換え方法を用いて調製される。例えば、マウスなどのトランスジェニック動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の導入遺伝子またはトランス染色体を保有するように作製することができ、したがって、ヒトPD-L1などの適切な抗原で免疫後に完全ヒト抗体を産生することができる。完全ヒト抗体は、このようなトランスジェニック動物から単離することができるか、あるいは、ハイブリドーマ技術によりトランスジェニック動物の脾臓細胞と不死細胞株を融合して、完全ヒト抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を産生することによって製造することができる。例示的なトランスジェニック動物としては、ラット免疫グロブリン遺伝子の内因性発現を不活性化し、同時に機能的な組換えヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたオムニラット(OmniRat);マウス免疫グロブリン遺伝子の内因性発現を不活性化し、同時にJ座欠失およびC-カッパ変異を有する組換えヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたオムニマウス(OmniMouse);ラット免疫グロブリン遺伝子の内因性発現を不活性化し、同時に単一の共通の、再配列されたVkJk軽鎖および機能的重鎖を有する組換えヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニックラットであるOmniFlicがあるが、これらに限定されない。さらなる詳細は以下に見出すことができる:Osborn M. et al, Journal of Immunology, 2013, 190: 1481-90; Ma B. et al, Journal of Immunological Methods 400-401 (2013) 78-86; Geurts A. et al, Science, 2009, 325:433; U.S. Pat. 8,907,157; EP patent 2152880B1; EP patent 2336329B1(これら全ての全内容は引用により本明細書に包含される)。他の適当なトランスジェニック動物、例えば、HuMab mice(詳細は、N. et al. Nature 368(6474): 856 859 (1994)を参照のこと)、Xeno- Mouse (Mendez et al. Nat Genet., 1997, 15:146-156)、TransChromo Mouse (Ishida et al. Cloning Stem Cells, 2002, 4:91-102)およびVelocImmune Mouse (Murphy et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2014, 111:5153-5158)、Kymouse (Lee et al. Nat Biotechnol, 2014, 32:356-363)、およびtransgenic rabbit (Flisikowska et al. PLoS One, 2011, 6:e21045)も使用できる。いくつかの実施態様において、抗体Mは、完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0018】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、免疫グロブリン(例えば、ヒトIgG4)定常領域をさらに含み得る。いくつかの実施態様において、抗体Mは、ヒトIgG4(例えば、IgG4アイソタイプ)の重鎖定常領域、およびヒトλ軽鎖またはκ軽鎖の軽鎖定常領域をさらに含み得る。いくつかの実施態様において、定常領域は、望ましい性質を付与するための一つまたはそれ以上の修飾をさらに含み得る。例えば、定常領域は、一つまたはそれ以上のエフェクター機能を低減または枯渇させるように、FcRn受容体結合を改善するように、または一つまたはそれ以上のシステイン残基を導入するように修飾され得る。
【0019】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、コンジュゲートをさらに含み得る。さまざまなコンジュゲートが抗体または抗原結合性断片に結合され得ることが考慮されている(例えば、“Conjugate Vaccines”, Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr. (eds.), Carger Press, New York, (1989)を参照のこと)。これらのコンジュゲートは、他の方法の中でも、共有結合、親和性結合、挿入、配位結合、複合体化、対合(association)、ブレンディング、または付加によって抗体または抗原結合性断片に結合され得る。いくつかの実施態様において、抗体Mは、エピトープ結合部分の外側に、一つまたはそれ以上のコンジュゲートとの結合に利用され得る特定の部位を含むように操作され得る。例えば、そのような部位は、コンジュゲートへの共有結合を促進するための、一つまたはそれ以上の反応性アミノ酸残基、例えばシステインまたはヒスチジン残基を含み得る。いくつかの実施態様において、抗体はコンジュゲートに、間接的にまたは別のコンジュゲートを介して結合され得る。例えば、抗体またはその抗原結合性断片は、ビオチンにコンジュゲートされることで、アビジンにコンジュゲートされる第二のコンジュゲートに間接的にコンジュゲートされ得る。コンジュゲートは、検出可能な標識、薬物動態学的修飾部分、精製部分、または細胞毒性部分であり得る。検出可能な標識の例としては、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリスリン、またはテキサス・レッド)、酵素-基質標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ(luceriferase)、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼまたはβ-D-ガラクトシダーゼ)、ラジオ同位体(例えは、123I、124I、125I、131I、35S、3H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Bi、および32P、その他のランタニド、発光ラベル)、発色部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、DNA分子、または検出用金があり得る。特定の実施態様において、コンジュゲートは、抗体の半減期を増加させるのに役立つPEGのような薬物動態学的修飾部分であり得る。他の適当なポリマーには、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマーなどが含まれる。いくつかの実施態様において、コンジュゲートは、磁気ビーズなどの精製部分であり得る。「細胞毒性部分」は、細胞に有害であるか、または細胞を損傷もしくは死滅させることができる任意の薬剤であり得る。細胞毒性部分の例として、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン(colchicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびその類似体、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂剤 (例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)があるが、これらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施態様において、抗体Mは抗PD-L1抗体であり得る。
【0021】
いくつかの実施態様において、抗体Mは、ヒトPD-L1に特異的に結合できるものであってもよい。いくつかの実施態様において、抗体MはヒトPD-L1に、プラズモン共鳴結合アッセイによって測定される≦10-6M(例えば、≦5x10-7M、≦2x10-7M、≦10-7M、≦5x10-8M、≦2x10-8M、≦10-8M、≦5x10-9M、≦2x10-9M、≦10-9M、約10-10M、10-10M~10-8.5M、または10-10M~10-8M)の結合親和性(Kd)で特異的に結合できる。結合親和性は、抗原と抗原-結合分子との間の結合が平衡に達するときの解離速度対対合速度の比(koff/kon)として計算されるKD値によって示すことができる。抗原-結合親和性(例えば、KD)は、例えば、Biacoreなどの機器を用いたプラズモン共鳴結合アッセイなどの当業者に知られている適当な方法を用いて適切に決定することができる(例えば、Murphy, M. et al, Current protocols in protein science, Chapter 19, unit 19.14, 2006を参照のこと)。
【0022】
特定の実施態様において、抗体MはヒトPD-L1に、0.1nM~100nM(例えば、0.1nM~50nM、0.1nM~30nM、0.1nM~20nM、0.1nM~10nM、または0.1nM~1nM)のEC50(すなわち、50%結合濃度)で特異的に結合でき得る。抗体のヒトPD-L1への結合は、当技術分野で知られている方法、例えば、ELISAなどのsandwichアッセイ、ウェスタンブロット、FACSまたは他の結合アッセイによって測定することができる。例示的な例において、試験抗体(すなわち、第一抗体)を、固定化ヒトPD-L1、またはヒトPD-L1を発現する細胞に結合させ、結合しなかった抗体を洗浄した後、結合された第一抗体に結合できる標識第二抗体を導入し、それによって結合された第一抗体の検出を可能にする。検出は、固定化PD-L1が使用される場合はマイクロプレートリーダーで、あるいはヒトPD-L1を発現する細胞が使用される場合はFACS分析を用いて行うことができる。いくつかの実施態様において、抗PD-L1はヒトPD-L1に、FACS分析によって測定される1nM~10nM、または1nM~5nMのEC50(すなわち、50%の有効濃度)で特異的に結合することができる。
【0023】
いくつかの実施態様において、物質Aは、化合物Fのメシル酸塩であり得る。
【0024】
いくつかの実施態様において、物質Bは抗体Mであり得る。
【0025】
医薬組成物、キットおよび物質Aおよび物質Bの組み合わせ使用
【0026】
別の態様において、本開示はまた、物質Aおよび物質Bを含む医薬組成物であって、物質Aおよび物質Bは上記に定義されている通りである医薬組成物を提供する。
【0027】
本開示の医薬組成物は、医薬賦形剤をさらに含み得る。
【0028】
別の態様において、本開示はまた、
物質Aを含む第一の医薬組成物を含む第一の容器;および
物質Bを含む第二の医薬組成物を含む第二の容器、を含むキットであって、
物質Aおよび物質Bは、上記に定義されている通りであるキットを提供する。
【0029】
第一医薬組成物は、医薬賦形剤をさらに含み得る。
【0030】
第二医薬組成物は、医薬賦形剤をさらに含み得る。
【0031】
別の態様において、本開示はまた、癌を処置するための医薬における、上記に定義されている医薬組合せ物または医薬組成物の使用を提供する。
【0032】
別の態様において、本開示はまた、癌を処置する方法であって、(例えば、治療有効量の)上記に定義されている医薬組合せ物または医薬組成物を(例えば、それを必要とする対象(例えば、ヒトまたはマウス)に)投与することを含む。
【0033】
いくつかの実施態様において、癌は、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌、白血病、リンパ腫または骨髄腫であり得る。
【0034】
いくつかの実施態様において、癌は結腸癌であり得る。
【0035】
物質Aおよび物質Bの組み合わせの投与レジメン
【0036】
物質Aおよび物質Bは、同時にまたは別々に投与され得る。
【0037】
いくつかの実施態様において、物質Aおよび物質Bは、別々に投与され得る。
【0038】
用語「同時に投与される」とは、同じ時点における投与を意味する。物質Aおおび物質Bは、同じ時点で投与される単一の医薬組成物中(例えば、単一剤形、例えば、一つのカプセル中)に存在することができ;あるいは、物質Aおよび物質Bはまた、同じ時点で投与される異なる医薬組成物中に別々に存在することができる。
【0039】
用語「別々に投与される」は、異なる時点における投与を意味する。例えば、物質Aおよび物質Bは、異なる時点で投与される異なる医薬組成物中に別々に存在することができる。別々の投与は、時間的に近くても遠くてもよいが、物質Aおよび物質Bが、所望の治療効果を提供するように協調して作用することができることを確認し得る。例えば、物質Aは、物質Bの投与の(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間)前に、それを必要とする対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、物質Aおよび物質Bは、1分間隔、10分間隔、30分間隔、1時間未満間隔、1時間間隔、1時間~2時間間隔、2時間~3時間間隔、3時間~4時間間隔、4時間~5時間間隔、5時間~6時間間隔、6時間~7時間間隔、7時間~8時間間隔、8時間~9時間間隔、9時間~10時間間隔、10時間~11時間間隔、11時間~12時間間隔、24時間以下間隔または48時間以下間隔で投与され得る。いくつかの実施態様において、物質Aおよび物質Bは、30分~1時間間隔で投与され得る。
【0040】
物質Aおよび物質Bを同時に投与されても別々に投与されても、物質Aおよび物質Bの投与レジメン(例えば、投与経路、投与量および投与間隔)は同じでも異なっていてもよく、当業者によって必要される最適な治療効果を与えることができるように適宜調整され得る。
【0041】
物質Aおよび物質Bの適当な投与経路には、消化器投与(例えば、経口投与)および非経腸投与(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射または筋肉内注射)が含まれる。
【0042】
経口投与は、物質が消化管に入るように飲み込むこと、および/または物質が口から直接血流に入ることによる頬側、舌側、または舌下投与を含み得る。経口投与に適した製剤には、固体、半固体および液体系、例えば錠剤;多粒子またはナノ粒子、液体、または粉末を含有する軟カプセルまたは硬カプセル;トローチ(lozenge)(液体充填を含む);チュウ;ゲル;高速分散剤形;フィルム;卵形剤(ovule);スプレー;および頬側/粘膜付着性パッチが含まれる。さらに、物質は、噴霧乾燥分散液として投与され得る。経口投与のための固体製剤は、即時放出および/または調節放出(modified release)となるように製剤化され得る。調節放出(modified release)製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出が含まれる。液体製剤には、懸濁液、溶液、シロップおよびエリキシルが含まれる。このような製剤は、軟カプセルまたは硬カプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから製造される)中の充填剤として採用され得て、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロースまたは適当な油、および一つまたはそれ以上の乳化剤および/または懸濁剤を含む。液体製剤はまた、例えば、小袋からの固体の再構成によって調製され得る。
【0043】
非経腸投与のための適当な手段には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、脳室内投与、尿道内投与、胸骨内投与、頭蓋内投与、筋肉内投与、滑液嚢内投与および皮下投与が含まれる。非経腸投与に適したデバイスには、ニードル(マイクロニードルを含む)注射器、ニードルなし注射器および注入技術が含まれる。非経腸投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出(modified release)となるように製剤化され得る。調節放出(modified release)製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出が含まれる。
【0044】
いくつかの実施態様において、物質A、例えば、化合物Fのメシル酸塩は、経口投与される。
【0045】
いくつかの実施態様において、物質Bは、例えば、抗体Mが、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射によって投与される。
【0046】
物質Aは、対象の体重を基準にする用量で(例えば、経口)投与され得て、その用量の非限定的な例は、0.01~50mg/kgの範囲、例えば、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.35mg/kg、0.4mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kgまたは50mg/kg(例えば、化合物Fのメシル酸塩を基準に)であり得る。いくつかの実施態様において、物質A(例えば、化合物Fのメシル酸塩)は、1~10mg/kg、例えば、1mg/kgの用量で投与される。物質Aの上記の用量は、QD(1日に1回)、BID(1日に2回)、TID(1日に3回)、Q2D(2日に1回)、Q3D(3日に1回)、Q4D(4日に1回)、QW(週に1回)、BIW(週に2回)またはQ2W(2週に1回)の頻度で対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、上記用量の物質A(例えば、化合物Fのメシル酸塩)は、QDの頻度で投与される。
【0047】
いくつかの実施態様において、物質A、例えば、化合物Fのメシル酸塩は、対象(例えば、ヒトまたはマウス)に1mg/kg、QDの用量で(例えば、経口)投与される。
【0048】
また、物質Aは、一定(例えば、所定の)用量で対象に(例えば、経口)投与され得る。その一定用量の非限定的な例は、0.1~1000mgの範囲、例えば、0.1mg、0.5mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、5.5mg、6.0mg、6.5mg、7.0mg、7.5mg、8.0mg、8.5mg、9.0mg、9.5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mgまたは500mg(例えば、化合物Fのメシル酸塩を基準に)であり得る。いくつかの実施態様において、物質A(例えば、化合物Fのメシル酸塩)は、10~30mg、例えば、20mgの用量で投与される。物質Aの上記の一定用量は、QD、BID、TID、Q2D、Q3D、Q4D、QW、BIWまたはQ2Wの頻度で対象に投与される。いくつかの実施態様において、物質A(例えば、化合物Fのメシル酸塩)の上記の一定用量は、QDの頻度で投与される。
【0049】
いくつかの実施態様において、物質A、例えば、化合物Fのメシル酸塩は、対象(例えば、ヒトまたはマウス)に10~30mg、QDの用量で(例えば、経口)投与される。
【0050】
物質Bは、対象の体重を基準に投与され得て(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射により)、その用量の非限定的な例は、0.01~50mg/kg、例えば、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.35mg/kg、0.4mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kgまたは50mg/kg(例えば、化合物Fのメシル酸塩を基準に)であり得る。いくつかの実施態様において、物質Bは、1~10mg/kg、例えば、3mg/kgの用量で投与される。物質Bの上記の用量は、QD、BID、TID、Q2D、Q3D、Q4D、QW、BIWまたはQ2Wの頻度で対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、物質Bの上記の用量はQ2Dの頻度で投与される。
【0051】
いくつかの実施態様において、物質Bは、対象(例えば、ヒトまたはマウス)に3mg/kg、Q2Dの用量で投与される(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射によって)。
【0052】
物質Bはまた、一定(例えば、所定の)用量で対象に投与され得る(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射によって)。その一定用量の非限定的な例は、0.1~1000mgの範囲、例えば、0.1mg、0.5mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、5.5mg、6.0mg、6.5mg、7.0mg、7.5mg、8.0mg、8.5mg、9.0mg、9.5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mgまたは500mgであり得る。いくつかの実施態様において、物質Bは、10~80mgの用量で投与される。物質Bの上記の一定用量は、QD、BID、TID、Q2D、Q3D、Q4D、QW、BIWまたはQ2Wの頻度で対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、物質Bの上記の一定用量は、Q2Dの頻度で投与される。
【0053】
いくつかの実施態様において、物質Bは、対象(例えば、ヒトまたはマウス)に10~80mg、Q2Dの用量で投与される(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射によって)。
【0054】
物質Aおよび物質Bの投与レジメン(例えば、用量、例えば、体重を基準にする用量または一定用量、投与の頻度)はまた、例えば、処置経過中に対象の反応に応じて変動してもよい。例えば、いくつかの実施態様において、特定の物質のその後の用量は、最初の用量よりも低くてもよい。
【0055】
物質Aおよび物質Cの組み合わせ
【0056】
別の態様において、本開示は、物質Aおよび物質Cを含む医薬組合せ物であって、
物質Aは、化合物F:
【化3】
、その結晶形、その薬学的に許容できる塩またはその溶媒和物であり;
物質Cは、配列番号:38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50および51からなる群から選択されるCDRアミノ酸配列を含む抗体N、またはその抗原結合性断片である、医薬組合せ物を提供する。
【0057】
上記に定義される医薬組合せ物は、医薬賦形剤をさらに含むことができる。
【0058】
上記に定義される医薬組合せ物は、固定されている組合せ物または固定されていない組合せ物の形態であり得る。いくつかの実施態様において、医薬組合せ物は、固定されていない組合せ物の形態である。
【0059】
いくつかの実施態様において、抗体Nは、
(a)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:42のLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:48のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:42からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:43からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(d)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:44からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(e)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:45からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(f)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:44からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(g)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:45からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(h)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:45からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:50のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(i)配列番号: 配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:46からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:51のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(j)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:40のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:46からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:48のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含み得る。
【0060】
いくつかの実施態様において、抗体Nは、
(a)配列番号:38のHCDR1アミノ酸配列、配列番号:39のHCDR2アミノ酸配列、および配列番号:41のHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号:42からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号:47のLCDR2アミノ酸配列、および配列番号:49のLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含み得る。
【0061】
いくつかの実施態様において、抗体Nは、
(a)配列番号:29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(d)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:33のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(e)配列番号:29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(f)配列番号:29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:33のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(g)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(h)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:35アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(i)配列番号:29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(j)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:37のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含み得る。
【0062】
いくつかの実施態様において、抗体Nは、
(a)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号:31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含み得る。
【0063】
例示的な抗体N、1H6、2E5、2G4、2C2、A6W、1G10、2B1、L1I、5C4および8C10のCDRアミノ酸配列は、以下の表3に示す。
【表3】
【0064】
例示的な抗体N、1H6、2E5、2G4、2C2、A6W、1G10、2B1、L1I、5C4および8C10は、以下の表4に示される重鎖可変領域および軽鎖可変領域ならびヒトIgG4アイソタイプの定常領域を有する。
【表4-1】

【表4-2】
【0065】
いくつかの実施態様において、抗体Nは抗PD-1抗体であり得る。
【0066】
いくつかの実施態様において、抗体Nは、ヒトPD-1に特異的に結合できる。
【0067】
いくつかの実施態様において、抗体Nは、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、標識抗体、二価抗体、または抗イディオタイプ抗体であり得る。いくつかの実施態様において、抗体Nはヒト化抗体であり得る。
【0068】
いくつかの実施態様において、抗体Nは、ラクダ化(camelized)単一ドメイン抗体、二重特異性抗体、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)2、dsFv-dsFv'、Fv断片、Fab、Fab'、F(ab')2、ds二重特異性抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体であり得る。
【0069】
いくつかの実施態様において、抗体Nは、免疫グロブリン(例えば、ヒトIgG4)定常領域をさらに含み得る。いくつかの実施態様において、抗体Nは、ヒトIgG4(例えば、IgG4アイソタイプ)の重鎖定常領域、およびヒトλ軽鎖またはκ軽鎖の軽鎖定常領域をさらに含み得る。
【0070】
物質Aおよび物質Cの組み合わせの医薬組成物、キットおよび使用
【0071】
別の態様において、本開示はまた、物質Aおよび物質Cを含む医薬組成物であって、物質Aおよび物質Cは上記に定義されている通りである医薬組成物を提供する。
【0072】
医薬組成物は、医薬賦形剤をさらに含み得る。
【0073】
別の態様において、本開示はまた、
物質Aを含む第一の医薬組成物を含む第一の容器;および
物質Cを含む第二の医薬組成物を含む第二の容器を含むキットであって、
物質Aおよび物質Cは上記に定義されている通りである、キットを提供する。
【0074】
第一医薬組成物は、医薬賦形剤をさらに含み得る。
【0075】
第二医薬組成物は、医薬賦形剤をさらに含み得る。
【0076】
別の態様において、本開示はまた、癌を処置するための医薬の製造における、上記に定義される医薬組合せ物または医薬組成物の使用を提供する。
【0077】
別の態様において、本開示はまた、癌を処置する方法であって、
上記に定義される(例えば、治療有効量の)医薬組合せ物または医薬組成物を(例えば、それを必要とする対象(例えば、ヒトまたはマウス)に)投与することを含む方法を提供する。
【0078】
いくつかの実施態様において、癌は、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌、白血病、リンパ腫または骨髄腫であり得る。
【0079】
いくつかの実施態様において、癌は結腸癌であり得る。
【0080】
物質Aおよび物質Cの組み合わせの投与レジメン
【0081】
物質Aおよび物質Cは、同時にまたは別々に投与され得る。
【0082】
いくつかの実施態様において、物質Aおよび物質Cは別々に投与され得る。
【0083】
用語「同時に投与される」は、同じ時点における投与を意味する。物質Aおよび物質Cは、同じ時点で投与される単一医薬組成物中(例えば、単一剤形、例えば、一つのカプセル中)に存在することができ;または、物質Aおよび物質Cは、同じ時点で投与される異なる医薬組成物中に別々に存在することができる。
【0084】
用語「別々に投与される」は、異なる時点における投与を意味する。例えば、物質Aおよび物質Cは、異なる時点で投与される異なる医薬組成物中に別々に存在することができる。この別々の投与は、時間的に近くても遠くてもよいが、所望の治療効果が得られるように物質Aおよび物質Cが協調して作用することを確認し得る。例えば、物質Aは、物質Cの投与前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、または物質Cの投与後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に、それを必要とする対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、物質Aおよび物質Cは、1分間隔、10分間隔、30分間隔、1時間未満間隔、1時間間隔、1時間~2時間間隔、2時間~3時間間隔、3時間~4時間間隔、4時間~5時間間隔、5時間~6時間間隔、6時間~7時間間隔、7時間~8時間間隔、8時間~9時間間隔、9時間~10時間間隔、10時間~11時間間隔、11時間~12時間間隔、24時間以下間隔または48時間以下間隔で投与され得る。いくつかの実施態様において、物質Aおよび物質Cは、30分~1時間間隔で投与される。
【0085】
物質Aおよび物質Cが同時に投与されるか別々に投与されるかに関わらず、物質Aおよび物質Cの投与レジメン(例えば、投与経路、投与量および投与頻度)は同じでも異なっていてもよく、必要に応じて最適な治療効果が得られるように当業者により調整できる。
【0086】
物質Aおよび物質Cを投与するための適当な経路には、消化器投与(例えば、経口投与)および非経腸投与(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射)が含まれる。
【0087】
経口投与は、物質が消化管に入るように飲み込むこと、および/または、物質が口から直接血流に入るように頬側、舌側、または舌下投与することを含み得る。経口投与に適した製剤には、固体、半固体および液体系、例えば、錠剤;多粒子またはナノ粒子、液体、または粉末を含有する軟または硬カプセル;トローチ(lozenge)(液体充填を含む);チュウ;ゲル;高速分散剤形;フィルム;卵剤(ovule);スプレー;および頬側/粘膜付着性パッチが含まれる。さらに、物質は、噴霧乾燥分散液として投与され得る。経口投与用の固体製剤は、即時放出および/または調節放出(modified release)になるように製剤化され得る。調節放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出が含まれる。液体製剤には、懸濁液、溶液、シロップおよびエリキシルが含まれる。このような製剤は、軟カプセルまたは硬カプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから製造される)中の充填剤として採用され、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適当なオイル、および一つまたはそれ以上の乳化剤および/または懸濁剤を含む。液体製剤はまた、例えば、小袋からの固体の再構成によって調製されれ得る。
【0088】
非経腸投与のための適当な手段には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、脳室内投与、尿道内投与、胸骨内投与、頭蓋内投与、筋肉内投与、滑液嚢内投与および皮下投与が含まれる。非経腸投与のための適当な装置には、ニードル(マイクロニードルを含む)注射器、ニードルなし注射器、注入技術が含まれる。非経腸投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出(modified release)となるように製剤化され得る。調節放出(modified release)製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出が含まれる。
【0089】
いくつかの実施態様において、物質A、例えば、化合物Fのメシル酸塩は経口投与され得る。
【0090】
いくつかの実施態様において、物質B、例えば、抗体Nは、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射により投与され得る。
【0091】
物質Aは、対象の体重を基準にする用量で(例えば、経口)投与され得て、その用量の非限定的な例は、0.01~50mg/kgの範囲、例えば、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.35mg/kg、0.4mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kgまたは50mg/kg(例えば、化合物Fのメシル酸塩を基準に)であり得る。いくつかの実施態様において、物質A(例えば、化合物Fのメシル酸塩)は、1~10mg/kg、例えば、1mg/kgの用量で投与される。物質Aの上記の用量は、QD(1日に1回)、BID(1日に2回)、TID(1日に3回)、Q2D(2日に1回)、QW(週に1回)、BIW(週に2回)またはQ2W(2週に1回)の頻度で対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、物質A(例えば、化合物Fのメシル酸塩)の上記の用量はQDの頻度で投与される。
【0092】
いくつかの実施態様において、物質A、例えば、化合物のFメシル酸塩は、対象(例えば、ヒトまたはマウス)に1mg/kg、QDの用量で(例えば、投与)投与される。
【0093】
また、物質Aは、一定(例えば、所定の)用量で対象に(例えば、経口)投与され得る。その一定用量の非限定的な例は、0.1~1000mgの範囲、例えば、0.1mg、0.5mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、5.5mg、6.0mg、6.5mg、7.0mg、7.5mg、8.0mg、8.5mg、9.0mg、9.5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mgまたは500mg(例えば、化合物Fのメシル酸塩を基準に)であり得る。いくつかの実施態様において、物質A(例えば、化合物Fのメシル酸塩)は、10~30mg、例えば、20mgの用量で投与される。
【0094】
物質Aの上記の一定用量は、QD(1日に1回)、BID(1日に2回)、TID(1日に3回)、Q2D(2日に1回)、Q3D(3日に1回)、Q4D(4日に1回)、QW(週に1回)、BIW(週に2回)またはQ2W(2週に1回)の頻度で対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、物質A(例えば、化合物Fのメシル酸塩)の上記の一定用量は、QDの頻度で投与される。
【0095】
いくつかの実施態様において、物質A、例えば、化合物Fのメシル酸塩は、対象(例えば、ヒトまたはマウス)に10~30mg、QDの用量で(例えば、経口)投与される。
【0096】
物質Cは、対象の体重を基準に投与され得て(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射により)、その用量の非限定的な例は、0.01~50mg/kgの範囲、例えば、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.35mg/kg、0.4mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kgまたは50mg/kg(例えば、化合物Fのメシル酸塩を基準に)であり得る。いくつかの実施態様において、物質Cは、1~10mg/kg、例えば、1~2mg/kgの用量で投与される。物質Cの上記の用量は、QD(1日に1回)、BID(1日に2回)、TID(1日に3回)、Q2D(2日に1回)、Q3D(3日に1回)、Q4D(4日に1回)、QW(週に1回)、BIW(週に2回)またはQ2W(2週に1回)の頻度で対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、物質Cの上記の用量は、Q2D、Q3DまたはQ4Dの頻度で投与される。
【0097】
いくつかの実施態様において、物質Cは、対象(例えば、ヒトまたはマウス)に、1~2mg/kg、Q2D、Q3DまたはQ4Dの用量で投与され得る(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射により)。
【0098】
物質Cは、一定(例えば、所定の)用量で対象に投与され得る(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射により)。その一定用量の非限定的な例は、0.1~1000mgの範囲、例えば、0.1mg、0.5mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、5.5mg、6.0mg、6.5mg、7.0mg、7.5mg、8.0mg、8.5mg、9.0mg、9.5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mgまたは500mgであり得る。いくつかの実施態様において、物質Cは、10~80mgの用量で投与される。物質Cの上記の一定用量は、QD(1日に1回)、BID(1日に2回)、TID(1日に3回)、Q2D(2日に1回)、Q3D(3日に1回)、Q4D(4日に1回)、QW(週に1回)、BIW(週に2回)またはQ2W(2週に1回)の頻度で対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、物質Cの上記の一定用量は、Q2D、Q3DまたはQ4Dの頻度で投与される。
【0099】
いくつかの実施態様において、物質Cは、対象(例えば、ヒトまたはマウス)に、10~80mg、Q2D、Q3DまたはQ4Dの用量で投与され得る(例えば、注射、例えば、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射、例えば、腹腔内注射により)。
【0100】
物質Aおよび物質Cの投与レジメン(例えば、用量、例えば、体重を基準にする用量または一定用量、投与の頻度)はまた、例えば、処置経過中に対象の反応に応じて変動してもよい。例えば、いくつかの実施態様において、特定の物質のその後の用量は、最初の用量よりも低くてもよい。
【0101】
本開示の以下の説明は、単に本開示のさまざまな実施態様を例示することを意図したものである。そのため、議論された特定の修正は、本発明の範囲に対する制限として解釈されるべきものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな等価物、変更、および修正がなされ得ることは当業者には明らかであり、そのような等価な実施態様は、本発明によって含まれるものと理解される。刊行物、特許および特許出願を含む、本明細書で引用される全ての文献は、引用によりその全体が本明細書に包含される。
【0102】
定義
本明細書に記載の抗体M(例えば、抗体1.4.1、1.14.4、1.20.15、または1.46.11)またはその抗原結合性断片は、WO2017020858A1およびCN106432501A(これらの全体の内容は、引用により本明細書に包含される)に見出すことができると知られている。
【0103】
本明細書に記載の抗体N(例えば、抗体1H6、2E5、2G4、2C2、A6W、1G10、2B1、L1I、5C4および8C10)またはその抗原結合性断片は、WO2018053709A1およびCN107840887A(これらの全体の内容は、引用により本明細書に包含される)に見出すことができる
【0104】
化合物Fは、レンバチニブ(CAS番号:417716-92-8)として知られている。化合物Fおよびその誘導体、例えば、塩、結晶形、溶媒和物は、全て本開示の範囲内にあり、これは、例えば、WO02/32872、WO2005/063713、WO2011/021597、WO2016/140717の文献(これらの全体の内容は、引用により本明細書に包含される)に見出すことができる。
【0105】
用語「医薬組合せ物」は、本開示よる活性成分(例えば、抗体M、抗体N、化合物F)を含む製品を意味するために本明細書で使用される。医薬組合せ物によって含まれる活性成分は、単一の実体(例えば、単一の剤形、例えば、一つの注射剤中、一つの錠剤中または一つのカプセル中)に存在することができ、したがって、対象に同時に投与され得る。医薬組合せ物によって含まれる活性成分は、別々の実体に存在することもでき(例えば、一方の活性成分は錠剤中に存在し、他方の完成成分はカプセル中に存在する)、したがって、互いに独立して、同時にまたは別々に、特定の時間制限なしに対象に投与され得る。医薬組合せ物によって含まれる活性成分が別々の実体に存在する場合、それらは互いに独立して販売することができ、それらの組み合わせ使用の可能性の単なる指示は、例えばリーフレットなどのパッケージ装置、または他の情報、例えば、医師および医療スタッフへの提供(例えば口頭でのコミュニケーション)において提供される。
【0106】
用語「固定されている組合せ物」とは、組み合わせの相手方がともに単一の実体の形態(例えば、単一の剤形、例えば一つの注射剤、一つの錠剤または一つのカプセルの形態)で存在し、それらが対象に同時に投与され得ることを意味する。
【0107】
用語「固定されていない組合せ物」とは、組み合わせの相手方が別々の実体として存在し、互いに独立して、同時に、または特定の時間制限なしに別々に対象に投与され得ることを意味する。組み合わせの相手方はともに、全く別々の医薬剤形または医薬製剤として使用することができ、また、互いに独立して販売することができ、そして、それらの組み合わせ使用の可能性の適正な指示は、例えば、リーフレットなどのパッケージ装置、または、例えば、医師および医療スタッフへの提供(例えば、口頭でのコミュニケーション)などの他の情報において提供される。
【0108】
本明細書で使用される用語「抗体」とは、特定の抗原に結合する免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、または二重特異性(二価)抗体を含む。ネイティブなインタクトな抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む。各重鎖は可変領域ならびに第一、第二、第三の定常領域からなり、各軽鎖は可変領域および定常領域からなる。哺乳類の重鎖はα、δ、ε、γ、およびμに分類され、哺乳類の軽鎖はλまたはκに分類される。抗体は「Y」形状をしており、Yの本幹は、ジスルフィド結合を介して結合した2本の重鎖の第二および第三の定常領域からなる。Yの各アームは、1本の軽鎖可変領域および定常領域に結合した1本の重鎖可変領域および第一定常領域が含まれる。軽鎖および重鎖可変領域は、抗原結合を担う。両鎖の可変領域は、一般的に相補性決定領域(CDR)(LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽(L)鎖CDR、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重(H)鎖CDR)と称される3つの高度に可変なループを含む。本明細書に開示される抗体および抗原結合性断片のCDR境界は、Kabat、Chothia、またはAl-Lazikaniの規約(Al-Lazikani, B., Chothia, C., Lesk, A. M., J. Mol. Biol., 273(4), 927 (1997); Chothia, C. et al., J Mol Biol. Dec 5;186(3):651-63 (1985); Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol., 196,901 (1987); Chothia, C. et al., Nature. Dec 21-28; 342 (6252): 877-83 (1989); Kabat E.A. et al., National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))によって定義されるか同定され得る。3つのCDRは、フレームワーク領域(FR)として知られる隣接区間の間に挟まれており、これはCDRよりも高度に保存され、超可変ループを支持する足場を形成する。重鎖および軽鎖定常領域は、抗原結合には関与しないが、さまざまなエフェクター機能を示す。抗体は、その重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスが割り当てられている。抗体の5つの主要なクラスまたはアイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、それぞれα、δ、ε、γ、およびμ重鎖の存在を特徴とする。主要な抗体クラスのいくつかは、IgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖)またはIgA2(α2重鎖)などのサブクラスに分類される。
【0109】
本明細書で使用される用語「抗原結合性断片」とは、一つまたはそれ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される抗体断片、または抗原に結合するがインタクトなネイティブ抗体構造を含まない他のいずれかの抗体断片を意味する。抗原結合性断片の例としては、二重特異性抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv')、ジスルフィド安定化二重特異性抗体(ds二重特異性抗体)、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価の二重特異性抗体)、多重特異性抗体、ラクダ化(camelized)単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、および二価ドメイン抗体があるが、これらに限定されない。抗原結合性断片は、親抗体が結合するのと同じ抗原に結合することができる。いくつかの実施態様において、抗原結合性断片は、一つまたはそれ以上の異なるヒト抗体からのフレームワーク領域にグラフトされた特定のヒト抗体からの一つまたはそれ以上のCDRを含み得る。
【0110】
抗体に関する「Fab」とは、1本の軽鎖(可変領域および定常領域の両方)と1本の重鎖可変領域および第一定常領域とがジスルフィド結合で結合してなる、抗体の一部を意味する。
【0111】
「Fab'」とは、ヒンジ領域の一部を含むFab断片を意味する。
【0112】
「F(ab')2」とは、Fab'の二量体を意味する。
【0113】
抗体に関する「Fc」とは、第一重鎖の第二および第三の定常領域と第二の重鎖の第二および第三の定常領域とがジスルフィド結合を介して結合してなる、抗体の一部を意味する。抗体のFc部分は、ADCC、CDCなどのさまざまなエフェクター機能を担っているが、抗原結合には機能していない。
【0114】
抗体に関する「Fv」とは、抗原結合部位を完全に有する抗体の最小の断片を意味する。Fv断片は、1本の軽鎖可変領域と1本の重鎖可変領域とが結合してなる。
【0115】
「一本鎖Fv抗体」または「scFv」とは、軽鎖可変領域および重鎖可変領域が直接またはペプチドリンカー配列を介して互いに結合させた操作された抗体を意味する(Huston JS et al. Proc Natl Acad Sci USA, 85:5879(1988))。
【0116】
「一本鎖Fv-Fc抗体」または「scFv-Fc」とは、抗体のFc領域にscFvを結合させた操作された抗体を意味する。
【0117】
「ラクダ化(camelized)単一ドメイン抗体」、「重鎖抗体」または「HCAb」は、2つのVHドメインを含み、かつ軽鎖を含まない抗体を意味する(Riechmann L. and Muyldermans S., J Immunol Methods. Dec 10; 231 (1-2): 25-38 (1999); Muyldermans S., J Biotechnol. Jun; 74(4): 277-302 (2001); WO94/04678; WO94/25591; U.S. Patent No. 6,005,079)。重鎖抗体はもともとラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、およびラマ)に由来するものである。ラクダ化(camelized)抗体は、軽鎖が欠けている、真正の抗原結合レパートリーを有している((Hamers-Casterman C. et al., Nature. Jun 3; 363 (6428): 446-8 (1993); Nguyen VK. et al. “Heavy-chain antibodies in Camelidae; a case of evolutionary innovation,” Immunogenetics. Apr; 54(1): 39-47 (2002); Nguyen VK. et al. Immunology. May; 109(1): 93-101 (2003))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応免疫応答によって産生される最も小さな既知の抗原結合単位を示す(Koch-Nolte F. et al., FASEB J. Nov; 21(13):3490-8. Epub 2007 Jun 15 (2007))。
【0118】
「ナノボディ」とは、重鎖抗体からのVHHドメイン、およびCH2およびCH3の2つの定常ドメインからなる抗体断片を意味する。
【0119】
「二重特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であり、同じポリペプチド鎖においてVLドメインとVHドメインが結合したもの(VH-VLまたはVH-VL)を含む(例えば、Holliger P. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. Jul 15; 90(14): 6444-8 (1993); EP404097; WO93/11161を参照のこと)。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補性ドメインと対合することを強いられ、それによって2つの抗原結合部位が作製される。抗原結合部位は、同じまたは異なる抗原(またはエピトープ)を標的とし得る。
【0120】
「ドメイン抗体」とは、重鎖可変領域または軽鎖可変領域のみを含む抗体断片を意味する。特定の例において、2つまたはそれ以上のVHドメインがペプチドリンカーで共有結合され、二価または多価ドメイン抗体が作製される。二価ドメイン抗体の2つのVHドメインは、同じ抗原を標的とするか、または異なる抗原を標的とし得る。
【0121】
いくつかの実施態様において、「(dsFv)2」は、3本のペプチド鎖:2つのVH部分がペプチドリンカーによって結合し、2つのVL部分にジスルフィド架橋によってに結合したものを含む。
【0122】
いくつかの実施態様において、「二重特異性ds二重特異性抗体」は、VH1とVL1との間のジスルフィド架橋を介してVL1-VH2(同じくペプチドリンカーによって結合している)とVH1-VL2(ペプチドリンカーによって結合している)とが結合したものである。
【0123】
いくつかの実施態様において、「二重特異性dsFv」またはdsFv-dsFv'は、3本のペプチド鎖:VH1-VH2部分(ここで、重鎖はペプチドリンカー(例えば、長い可動性リンカー)によって結合している)がVL1およびVL2部分にジスルフィド架橋を介してそれぞれ結合したもの(ここで、各ジスルフィド対合の重鎖および軽鎖は異なる抗原特異性を有している)を含む。
【0124】
特定の実施態様において、「scFv二量体」は、一方の部分のVHが他方の部位のVLとコーディネートして、同じ抗原(またはエピトープ(eptipoes))または異なる抗原(またはエピトープ(eptipoes))を標的とすることができる二つの結合部位を形成するように、別のVH-VL部位と二量化したVH-VL(ペプチドリンカーにより結合)を含む二価二重特異性抗体または二価ScFv(BsFv)である。他の実施態様において、「scFv二量体」は、VH1およびVL1がコーディネートし、VH2およびVL2がコーディネートするようにVL1-VH2(同じくペプチドリンカーにより結合)と関連付けられたVH1-VL2(ペプチドリンカーより結合)含む二重特異性の二重特異性抗体あり、各コーディネートした対は異なる抗原特異性を有している。
【0125】
本明細書において、抗体または抗原結合性断片に関連して使用される用語「完全ヒト」は、抗体または抗原結合性断片が、ヒトまたはヒト免疫細胞によって産生される抗体のものに対応するアミノ酸配列を有するかもしくはそれらからなること、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用するトランスジェニック非ヒト動物などの非ヒト源に由来することを意味する。特定の実施態様において、完全ヒト抗体は、非ヒト抗体由来のアミノ酸残基(特に、抗原結合残基)を含まない。
【0126】
本明細書において、抗体または抗原結合性断片に関連して使用される用語「ヒト化」とは、抗体または抗原結合性断片が、非ヒト動物由来のCDR、ヒト由来のFR領域、および該当する場合、ヒト由来の定常領域を含むことを意味する。ヒト化抗体または抗原結合性断片は、ヒトにおける免疫原性が低下しているため、特定の実施態様においてヒト治療薬として有用である。いくつかの実施態様において、非ヒト動物は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、またはハムスターである。いくつかの実施態様において、ヒト化抗体は、非ヒトであるCDR配列を除く実質的に全てのヒト配列からなる。いくつかの実施態様において、ヒト由来のFR領域は、それが由来するヒト抗体と同じアミノ酸配列を含んでいてもよく、いくつかのアミノ酸の変化、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸の変化を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、アミノ酸におけるそのような変化は、重鎖FR領域のみに、軽鎖FR領域のみに、または両鎖に存在し得る。いくつかの好ましい実施態様において、ヒト化抗体は、ヒトFR1-3ならびにヒトJHおよびJκを含む。
【0127】
本明細書で使用される用語「キメラ」とは、1つの種に由来する重鎖および/または軽鎖の一部と、異なる種に由来する残りの重鎖および/または軽鎖を有する抗体または抗原結合性断片を意味する。実例において、キメラ抗体は、ヒト由来の定常領域とマウスなど非ヒト種由来の可変領域を含み得る。
【0128】
本明細書で使用される「PD-L1」とは、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、例えば、Freeman et al. (2000) J. Exp. Med. 192: 1027を参照のこと)を意味する。ヒトPD-L1の代表的なアミノ酸配列は、NCBI受入番号:NP_054862.1の下に開示されており、ヒトPD-L1をコードする代表的な核酸配列は、NCBI受入番号:NM_014143.3に示されている。PD-L1は、胎盤、脾臓、リンパ節、胸腺、心臓、胎児肝臓に発現しており、また多くの腫瘍細胞または癌細胞に見出す。PD-L1は、活性化T細胞、B細胞および骨髄細胞に発現するその受容体PD-1またはB7-1に結合する。PD-L1とその受容体の結合は、サイトカイン産生およびT細胞増殖のTCR介在活性化を抑制するシグナル伝達を誘導する。したがって、PD-L1は、妊娠、自己免疫性疾患、組織同種移植などの特定のイベント時に免疫系の抑制に大きな役割を果たし、腫瘍または癌細胞が免疫チェックポイントを回避して免疫応答を避けることを可能にすると考えられている。
【0129】
本明細書で使用される「抗PD-L1抗体」とは、PD-L1(例えば、ヒトまたはサルのPD-L1)に、診断および/または治療用途を提供するのに十分な親和性で特異的に結合することができる抗体を意味する。
【0130】
本明細書で使用される「抗PD-1抗体」とは、PD-1(例えば、ヒトまたはサルのPD-1)に、診断および/または治療用途を提供するのに十分な親和性で特異的に結合することができる抗体を意味する。
【0131】
本明細書で使用される用語「特異的結合」または「特異的に結合する」とは、例えば抗体と抗原との間のような2つの分子間の非ランダム結合反応を意味する。本明細書で使用されるKDとは、解離速度対会合速度の比(koff/kon)を意味し、例えばビアコア(Biacore)のような装置を用いて表面プラズモン共鳴法を用いて決定され得る。
【0132】
本明細書で使用される用語「エピトープ」とは、抗体が結合する抗原上の原子またはアミノ酸の特定の群を意味する。2つの抗体は、抗原に対して競合的結合を示す場合、抗原内の同じエピトープに結合することがある。例えば、本明細書に開示される抗体または抗原結合性断片が、1.4.1、1.14.4、1.20.15、および1.46.11などの例示的抗体のヒトPD-L1への結合をブロックする場合、該抗体または抗原結合性断片は、これらの例示的な抗体と同じエピトープに結合すると考えられ得る。
【0133】
エピトープ内の特定のアミノ酸残基は、例えばアラニンスキャニング変異誘発によって変異され得て、タンパク質結合を減少または阻止する変異が同定される。「アラニンスキャニング突然変異誘発」は、エピトープとそれに結合する別の化合物またはタンパク質との相互作用に影響を与えるタンパク質の特定の残基または領域を同定するために実施することができる方法である。タンパク質内の残基または標的残基群は、中性または負に帯電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン、または保存的アミノ酸置換)で置き換えている。タンパク質の結合を閾値を超えて低下させるか、またはタンパク質の結合を他の変異よりも最大限に低下させる、アミノ酸残基またはそれをコードするコドンのいずれかの変異は、該タンパク質によって結合されるエピトープ内にある可能性が高い。本開示のいくつかの実施態様において、PD-L1抗体にとって重要であるエピトープは、E58、E60、D61、K62、N63およびR113のアミノ酸残基の少なくとも一つを含む。
【0134】
アミノ酸配列に関する「保存的置換」とは、アミノ酸残基を、同様の物理化学的特性を有する側鎖を有する別のアミノ酸残基に置き換えることを意味する。例えば、保存的置換は、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、Met、Ala、Val、Leu、およびIle)間、中性親水性側鎖を有する残基(例えば、Cys、Ser、Thr、AsnおよびGln)間、酸性側鎖を有する残基(例えばAsp、Glu)間、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばHis、LysおよびArg)、または芳香族側鎖を有する残基(例えばTrp、TyrおよびPhe)間で行われ得る。当技術分野で知られているように、保存的置換は通常、タンパク質の立体構造に大きな変化を与えないので、タンパク質の生物学的活性を保持し得る。
【0135】
アミノ酸配列(または核酸配列)に関する「配列相同性パーセント(%)」とは、同一アミノ酸(または核酸)の最大数を達成するように配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、参照配列のアミノ酸(または核酸)残基と同一である候補配列中のアミノ酸(または核酸)残基の割合と定義される。アミノ酸残基の保存的置換は、同一の残基と見なされることがあるか、または見なされないことがある。アミノ酸(または核酸)配列相同性パーセントを決定する目的の整列化は、例えば、BLASTN、BLASTp(U.S. National Center for Biotechnology Information (NCBI)のウェブサイト上で入手可能、また、Altschul S.F. et al, J. Mol. Biol., 215:403-410 (1990); Stephen F. et al, Nucleic Acids Res., 25:3389-3402 (1997)を参照のこと)、ClustalW2(European Bioinformatics Instituteのウェブサイトで入手可能、また、Higgins D.G. et al, Methods in Enzymology, 266:383-402 (1996);Larkin M.A. et al, Bioinformatics (Oxford, England), 23(21): 2947-8 (2007)を参照のこと)、およびALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア、など公に利用可能なツールを使用して達成することができる。当業者は、該ツールによって提供されるデフォルトパラメータを使用し得て、例えば、適当なアルゴリズムを選択するなど、整列化に適したパラメータをカスタマイズし得る。
【0136】
本明細書で使用される「T細胞」は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、Tヘルパー17型T細胞および阻害性T細胞を含む。
【0137】
本明細書で使用される「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域とそのエフェクター (例えばC1複合体やFc受容体)との結合に起因する生物学的活性を意味する。例示的なエフェクター機能には、抗体とC1複合体上のC1qとの相互作用によって誘導される補体依存性細胞傷害(CDC);抗体のFc領域とエフェクター細胞上のFc受容体との結合によって誘導される抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);および食作用が含まれる。
【0138】
本明細書で使用される「癌」とは、新生物または悪性細胞の成長、増殖、または転移が介在するあらゆる医学的状態を意味し、固形癌、および白血病などの非固形癌の両方を含む。本明細書で使用される「腫瘍」とは、新生物および/または悪性細胞の固形塊を意味する。
【0139】
本明細書で使用される、状態の「処置(Treating)」または「処置(treatment)」は、状態の予防または軽減、状態の発症または進展速度の緩慢化、状態の進展の危険性の低減、状態に関連する症状の進展の予防または遅延、状態に関連する症状の軽減または終了、状態の完全または部分的退縮の生成、状態の治癒、またはそれらのいくつかの組合せを含む。癌に関して、「処置(Treating)」または「処置(treatment)」とは、新生物または悪性細胞の成長、増殖、または転移を阻害または緩慢化、新生物または悪性細胞の成長、増殖、または転移の進展の予防または遅延、またはそれらのいくつかの組合せを意味することがある。腫瘍に関して、「処置(Treating)」または「処置(treatment)」は、腫瘍の全てまたは一部の根絶、腫瘍の成長および転移の阻害または緩慢化、腫瘍の進展の予防または遅延、またはそれらのいくつかの組合せを含む。
【0140】
「単離された」物質は、自然の状態から人の手によって変化されたものである。「単離された」組成物または物質が自然界に存在する場合、それは元の環境から変化されたか、取り除かれたか、あるいはその両方である。例えば、生きている動物に自然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離」されていないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、実質的に純粋な状態で存在するように、その自然の状態の共存物質から十分に分離されていれば「単離された」といえる。いくつかの実施態様において、抗体および抗原結合性断片は単離され、電気泳動法(SDS-PAGE、等電点電気泳動法、キャピラリー電気泳動法など)、またはクロマトグラフィー法(イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相HPLCなど)などの従来の方法によって決定される、少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%の純度を有し得る。
【0141】
本開示は、本開示の全ての薬学的に許容される同位体標識物質、例えば、一つまたはそれ以上の原子が、同じ原子番号を有するが、自然界に通常見出す原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換されている、化合物F、抗体M、抗体Nを含む。本開示の物質に包含させるのに適した同位体の例には、水素の同位体、例えば2Hおよび3H;炭素、例えば11C、13Cおよび14C;窒素、例えば13Nおよび15N;酸素、例えば15O、17Oおよび18Oが含まれる。
【0142】
体内に投与されたときに本開示の物質(例えば、化合物F)に変換され得る特定の誘導体も本開示の範囲内である。そのような誘導体は、「プロドラッグ」と称される。プロドラッグの使用に関するさらなる情報は、‘Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14, ACS Symposium Series (T Higuchi and W Stella)および‘Bioreversible Carriers in Drug Design’, Pergamon Press, 1987 (ed. E B Roche, American Pharmaceutical Association)に見出し得る。
【0143】
本明細書で使用される用語「溶媒和物」とは、化合物と化学量論的または非化学量論的溶媒との組み合わせによって形成される複合物を意味する。溶媒和物中の溶媒分子(複数可)は、秩序がる配列または秩序がない配列で存在することができる。溶媒の例には、水、メタノール、エタノールなどが含まれるが、これらに限定されるない。
【0144】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」とは、化合物と比較的無毒で薬学的に許容される酸または塩基によって形成される塩を意味する。化合物が相対的に酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、純粋な溶液または適当な不活性溶媒中で、化合物の中性形態を十分な量の薬学的に許容される塩基に接触させることにより得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、ビスマス塩、アンモニウム塩およびジエタノールアミン塩が含まれるが、これらに限定されない。化合物が比較的に塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、純粋な溶液または適当な不活性溶媒中で、化合物の中性形態を十分な量の薬学的に許容される酸に接触させることにより得ることができる。薬学的に許容される酸の例には無機酸が含まれ、ここで、無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、重炭酸、リン酸、リン酸、硫酸などが含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される酸の例には有機酸が含まれ、ここで、有機酸には、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、イソニコチン酸、酸性クエン酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、アスコルビン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、ギ酸、エタンスルホン酸、パモ酸(すなわち、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸))、アミノ酸(グルタミン酸、アルギニンなど)などが含まれるが、これらに限定されない。化合物が比較的に塩基性の官能基および比較的に酸性の官能基の両方を含む場合、塩基付加塩または酸付加塩に変換することができる。薬学的に許容される塩については、Berge et al., "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977) or Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth, ed., Wiley-VCH, 2002)を参照することができる。
【0145】
本明細書で使用される用語「医薬賦形剤」とは、医薬品を製造する際に、または製剤を製剤化する際に使用される賦形剤および/または添加剤を意味し、活性成分以外の医薬調製物に含まれる全ての物質を含む。医薬賦形剤の例については、Pharmacopoeia of the People's Republic of China (Volume IV, 2015 edition), or the Handbook of Pharmaceutical Excipients (Raymond C Rowe, 2009 Sixth Edition)を参照することができる。
【0146】
物質、医薬組成物、または医薬組合せ物の「治療有効量」とは、所定の疾患または障害およびその合併症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に阻止するのに十分な量を意味する。特定の治療目的に有効な量は、疾患または傷害の重症度、ならびに対象の体重および一般状態に依存する。適切な投与量の決定は、日常的な実験を用いて、値の行列を構築し、行列内の異なる点を試験することにより達成され得ること、これら全ては、訓練を受けた医師または臨床科学者の通常の技能の範囲内であると理解されるであろう。必要な有効量は、複数の投与単位の投与によって達することができるため、各剤形の個々の用量に含まれる各活性剤の単位含有量は、それ自体で有効量を構成する必要はないことが理解されるであろう。
【0147】
本明細書で使用される用語「対象」とは、本開示の実施態様に従って化合物または組成物を投与される、または投与されたいずれかの動物を意味し、これは好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。本明細書で使用される用語「哺乳動物」とは、いずれかの哺乳動物を含む。哺乳動物の例には、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サルおよびヒトが含まれるが、これらに限定されない。好ましい対象は、ヒトである。
【0148】
用語「それを必要とする」は、疾患を有するか疾患の進展の危険性があることが知られているか、またはその疑いがある対象であり得る。
【0149】
本明細書で使用される用語「容器」とは、医薬品の保管、輸送、流通、および/または廃棄に適したあらゆる容器を意味する。
【0150】
略語「p.o」(すなわち、経口)、「i.p.」(例えば、腹腔内注射)、「q.d」または「QD」(すなわち、毎日)、「q2d」または「Q2D」(すなわち、2日に1回)などを用いて、その一般的な意味での投与レジメンを説明する。
【0151】
用語「第一」、「第二」などは、ただ異なる実体を区別するためにのみ用いられ、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。例えば、物質Xおよび物質Yがそれぞれ第一医薬組成物および第二医薬組成物に含まれる場合、物質Xおよび物質Yが異なる医薬組成物中に別々に存在することを意味する。
【0152】
本開示を説明する文脈における用語「a」、「an」、「the」、および同様の参照語の使用は、特に断らない限り、単数および複数の両方を網羅するように解釈されるものとする。本明細書で提供される任意のおよび全ての例、または例示的な言語(「e.g」、「など(such as)」および「例えば」を含む)の使用は、本開示をより良く説明するためのものであり、特に主張しない限り本開示の範囲を制限するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、請求されていない要素を本開示の実施に必須であると示すものと解釈されるべきではない。
【0153】
当業者の常識に反しない範囲で、上記の好ましい条件を任意に組み合わせれば、本発明の好ましい実施態様が得られる。
【0154】
本明細書で使用される試薬は市販のものである。
【0155】
驚いたことに、レンバチニブメシル酸塩および抗体1.14.4の組み合わせでは、レンバチニブメシル酸塩と抗体1.14.4単独よりも結腸癌動物モデルで高い治療効果を達成することに見出した。また、レンバチニブメシル酸塩および抗体2E5の組み合わせでは、レンバチニブメシル酸塩と抗体2E5単独よりも結腸癌動物モデルにおいて高い治療効果を達成する。
【0156】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
【0157】
以下の実施例により、本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0158】
実施態様1:B-hPD-1ヒト化マウスMC38-hPD-L1結腸癌動物モデルに対する抗体1.14.4単剤療法またはレンバチニブメシル酸塩との組み合わせの薬力学的試験
【0159】
1. 試験の目的
本試験の目的は、MC38-hPD-L1皮下移植腫瘍に対する抗体1.14.4単剤療法またはレンバチニブメシル酸塩との組み合わせの治療効果を評価することである。
【0160】
2. 試薬および装備
【表5】
【0161】
3. 試験サンプル
WO2017020858A1(実施例1~3)に従い、抗体1.14.4を調製した。
【0162】
4. 製剤
4.1. hIgG4の製剤
【0163】
5.1mg/mLのhIgG4の生理食塩水溶液を生理食塩水で0.3mg/mLの濃度に希釈し、使用した。調製した溶液は、使用しないときは2~8℃で保管し、使用前に室温に戻した。
【0164】
4.2. レンバチニブメシル酸塩のさまざまな濃度の製剤
【0165】
レンバチニブメシル酸塩粉末を3mmol/LのHCl溶液に溶解して、レンバチニブメシル酸塩の3mg/mL原液を調製した。原液を使用しないときは4℃で保管した。
【0166】
3mg/mLの原液2.24mLを3mmol/Lの塩酸溶液4.48mLで希釈することによって、1mg/mLのレンバチニブメシル酸塩溶液を調製した。調製した溶液は、使用しないときは2~8℃で保管し、使用前に室温に戻した。
【0167】
1mg/mLのレンバチニブメシル酸塩溶液1.92mLを3mmol/LのHCl溶液4.48mLで希釈することによって、0.3mg/mLのレンバチニブメシル酸塩溶液を調製した。調製した溶液は、使用しないときは2~℃で保管し、使用前に室温に戻した。
【0168】
0.3mg/mLのレンバチニブメシル酸塩溶液1.6mLを3mmol/LのHCl溶液3.2mLで希釈することによって0.1mg/mLのレンバチニブメシル酸塩溶液を調製した。調製した溶液は、使用しないときは2~8℃で保管し、使用前に室温に戻した。
【0169】
4.3. 抗体1.14.4の製剤
抗体1.14.4を生理食塩水で希釈して、0.3mg/mLの抗体1.14.4溶液を調製し、使用した。 調製した溶液は、使用しないときは2~8℃で保管し、使用前に室温に戻した。
【0170】
5. 動物
種:ハツカネズミ;
系統:C57BL/6;
名称:B-hPD-1マウス;
性別:雄;
体重:17~21g
週齢:7週齢;
動物の数:85匹(56匹+29匹の予備)のマウス;
動物供給元:Biocytogen Jiangsu Co., Ltd;
ライセンス番号:SCXK (Jiangsu) 2016-0004;
動物証明書番号:201727553。
【0171】
6. 動物の飼育・ケア
動物は、Biocytogen Beijing Co., Ltd実験動物センターのSPF動物実験室で、個別換気式ケージ(IVC)を用いて飼育した。動物は試験開始前に3日間環境に馴化させた。
【0172】
温度:20~26℃。
湿度:40%~70%。
光:12時間点灯、12時間消灯;
ケージ:ケージはPPSU製で、体積は320mm×200mm×135mmとした。動物の寝床にはトウモロコシの穂軸を使用し、使用前にオートクレーブで殺菌した。寝床は週に1回交換した。各ケージはケージカードにより識別し、動物数、性別、系統、受入日、群番号および実験開始日が記載されていた。
【0173】
食餌および水:逆浸透(RO)水は、使用前にオートクレーブ処理した。動物にはSPFマウス用飼料および無菌の飲料水を自由に摂取させた。
【0174】
動物の識別:各マウスは耳のタグにより識別した。
【0175】
7. 実験操作
7.1. 細胞培養
マウス結腸癌細胞MC38は、Shun Ran (Shanghai) Biotechnology Co., Ltd.から購入し、10%不活性化ウシ胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地を添加した37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。MC38細胞は、ヒトPD-L1を過剰発現し、マウスPD-L1をノックアウトするように遺伝子を修飾させ、修飾細胞は、MC38-hPD-L1細胞と名付けた。
【0176】
7.2.腫瘍の接種、群および投与レジメン
MC38-hPD-L1腫瘍細胞を1xPBSに再懸濁して5×106細胞/mLの濃度にした。B-hPD-1ヒト化マウスのそれぞれに、右側胸部に細胞懸濁液0.1mLを皮下接種し、合計85匹のマウスに接種した。接種後7日目に平均腫瘍体積が約103mm3に達した時点で、中程度の腫瘍体積のマウスを選択し、腫瘍体積に応じて無作為に8群に分け、各群7匹ずつとし、同日より処置を開始した。投与レジメンは表6に示した。
【表6】
【0177】
7.3. 用量調節または中断
定期的なモニタリングの際には、動物を毎日チェックした。以下の状態の一つまたはそれ以上が発生した場合は、動物が正常に戻るまで投与を中断すべきである。
【0178】
1)動物の体重減少が処置開始時の初期体重の20%を超える(体重減少が処置開始時の初期体重の10%以内である場合は投与を継続する)。
【0179】
2)投与後、動物の体温が低下し、回復することができない。
【0180】
3)投与後、動物の運動性が鈍いか異常である。
【0181】
実験中、体重減少のために投与を中断したマウスはなかった。
【0182】
7.4. 実験の終了
レンバチニブメシル酸塩群の最終投与の1日後に実験を終了した。
【0183】
7.5. 実験動物の人道的なエンドポイント
実験過程中、以下の状態が一つまたはそれ以上発生した場合、動物を安楽死させるべきである。
【0184】
1)動物の腫瘍体積が3000mm3を超える場合、または群全体の平均腫瘍体積が2000mm3を超える場合。
【0185】
2)腫瘍が表在性潰瘍形成物質(anabrotic)、壊死性または感染性になり、1週間以内に回復していない。
【0186】
3)動物が、運動性が鈍い、または麻痺に苦しんでいる。
【0187】
4)動物の体重減少が処置開始時の初期体重の20%を超える。
【0188】
実験中、G1群のNo.52136およびNo.52158マウスは腫瘍体積が3000mm3を超えたため、事前に安楽死させた。2匹のマウスの安楽死当日の体重および腫瘍体積データを追跡して実験を終了した。
【0189】
7.6. 安楽死
動物は実験の終了時または人道的なエンドポイントに過剰なCO2で安楽死させた。
【0190】
7.7. 実験用指標
7.7.1. 腫瘍体積
腫瘍体積はノギスを用いて週に3回2次元で測定し、体積は、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径と短径である)を用いてmm3で示した。
【0191】
7.7.2. 体重
動物の体重は、腫瘍接種前、動物群分け中、処置中、および安楽死前に週に2~3回測定した。
【0192】
7.7.3. 一般臨床観察
定期的なモニタリングの際に、動物を、腫瘍の成長、潰瘍形成、精神状態および運動性などの行動、餌と水の消費の目視による推定、体重の増/減、目/毛のつや消しおよびその他の異常の影響がないか毎日チェックした。
【0193】
7.7.4. 腫瘍の重量および写真撮影
実験終了時、動物を写真撮影して、安楽死後の腫瘍保有状態を記録し、マウスの腫瘍の重量を測定し、写真撮影した。
【0194】
7.8. 薬効評価指標
7.8.1. 腫瘍成長抑制(TGITV):
TGITV(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100%。
Ti:処置後i日目における処置群の腫瘍体積;T0:処置後0日目における処置群の腫瘍体積、Vi:処置後i日目における対照群の腫瘍体積、V0:処置後0日目における対照群の腫瘍体積。
【0195】
7.8.2. 腫瘍重量抑制(TGITW):
実験終了時、動物を安楽死させ、腫瘍を分離して重量を測定し、各群間の腫瘍重量の差を計算した。腫瘍重量抑制(TGITW)は、以下の式で計算した:
TGITW(%)=(WC-WT)/WT×100%(式中、Wcは対照群の腫瘍重量を意味し、WTは処置群の腫瘍重量を意味する。)
【0196】
7.9. 統計解析
測定・観測された元データを記録すべきである。元データを分析し、その結果を平均値および標準誤差(平均±SEM)で表した。体重、腫瘍体積および腫瘍重量のデータは、独立標本t検定(independent-samples t-test)を用いて統計的に分析した。全てのデータはSPSSを用いて分析し、P<0.05は統計的に有意であるとみなされる。分析結果は、統計学的有意性および生物学的有意性の両方があるとみなした。
【0197】
8. 成果
8.1. 体重の変化
実験動物は全て運動性、食餌など良好な状態であった。処置期間中、マウスの体重はある程度増加した。異なる処理群とhIgG4対照群との間に体重の有意差はなかった(P>0.05)。G1群のNo.52158マウスは、処置開始後14日目に腫瘍体積が3000mm3を超えたため、安楽死させた。このマウスの安楽死当日の体重データを追跡し、実験終了し、統計分析に含めた。全ての動物の体重変化を表7に示した。
【0198】
【表7-1】

【表7-2】
【0199】
処置開始後16日目の体重を、独立標本t検定を用いて統計分析し、その結果を表8に示した。
【表8】
【0200】
8.2. 腫瘍体積の結果
実験の全期間中、全ての動物の腫瘍の成長を注意深くモニターした。全ての動物の腫瘍体積を1週間に3回測定し、その結果を記録した。腫瘍体積データを表9に示した。G1群のNo.52158マウスは、処置開始後14日目に腫瘍体積が3000mm3を超えたため、安楽死させた。このマウスの安楽死当日の腫瘍成長データを追跡し、実験終了し、統計分析に含めた。
【0201】
【表9-1】

【表9-2】
【0202】
処置開始後16日目に、治療開始後16日目の腫瘍体積を、独立標本t検定を用いて統計的に分析し、その結果を表10に示した。レンバチニブメシル酸塩(1mg/kg)および抗体1.14.4(3mg/kg)の組み合わせでは、単剤療法群よりも有意な抗腫瘍活性を示すと見ることができる。
【0203】
【表10】
【0204】
8.3. 相乗作用の分析
相乗作用のスコアは、Clarke R. Issues in experimental design and endpoint analysis in the study of experimental cytotoxic agents in vivo in breast cancer and other models[J]. Breast Cancer Research & Treatment, 1997, 46(2-3):255-278(全体が引用により包含される)に記載の以下の式により計算した:
相乗作用のスコア=((A/C) × (B/C)) / (AB/C);
[式中、Aは薬物AのRTV値であり;Bは薬物BのRTV値であり;Cはビヒクル対照のRTV値であり;ABはそれぞれAおよびBでの組み合わせ処置のRTV値である。]
相乗作用のスコア>1は相乗作用を有することを表し;
相乗作用のスコア=1は相加作用(additive)を有することを表し;
相乗作用のスコア<1は拮抗することを表す。
【0205】
相対的腫瘍体積(RTV)は、以下の式を用いて計算した:
RTV=Vt /V0
[式中、V0およびVtは、処置開始時(0日目)の平均腫瘍体積、およびある時点(t日目)の平均腫瘍体積である。]
【0206】
20日目の平均腫瘍体積および相乗作用のスコアの結果を表11に示した。
【表11】
【0207】
レンバチニブメシル酸塩と抗体1.14.4との間の相乗効果は、組み合わせ群G4において相乗作用のスコアが1より高かったことで実証された。
【0208】
8.4. 腫瘍重量の結果
本実験では、処置開始後20日目に全ての動物を安楽死させ、腫瘍を分離し、重量測定し、そして写真撮影した。個々の腫瘍重量のデータは表12に示した。
【0209】
【表12-1】

【表12-2】
【0210】
腫瘍重量を、独立標本t検定を用いて統計分析し、その結果を表13に示した。レンバチニブメシル酸塩(1mg/kg)と抗体1.14.4(3mg/kg)との組み合わせでは、単剤療法群よりも有意な抗腫瘍活性を示すと見ることができる。
【0211】
【表13】
【0212】
実施対象2:B-hPD-1ヒト化マウスMC38-hPD-L1結腸癌動物モデルにおける抗体2E5単剤療法またはレンバチニブメシル酸塩との組み合わせの薬力学的試験
【0213】
1. 本試験の目的
本試験の目的は、MC38-hPD-L1皮下移植腫瘍の処置における単剤としての抗体2E5またはレンバチニブメシル酸塩との組み合わせの治療効果を評価することである。
【0214】
2. 試薬および装備
【表14】
【0215】
3. 試験サンプル
抗体2E5は、WO2018053709A1(実施例1~3)に従って調製した。
【0216】
4. 製剤
4.1. hIgG4の製剤
【0217】
5.1mg/mLのhIgG4生理食塩水溶液を0.9%塩化ナトリウム注射液で0.2 mg/mLの濃度に希釈し、使用した。調製した溶液は、使用しないときは2~8℃で保管し、使用前に室温に温めるように放置した。
【0218】
4.2. レンバチニブメシル酸塩の異なる濃度の製剤
レンバチニブメシル酸塩粉末を3mmol/LのHCl溶液に溶解し、レンバチニブメシル酸塩の3mg/mL原液を調製した。原液を使用しないときは4℃で保管した。
【0219】
3mg/mLの原液0.12mLを3mmol/Lの塩酸0.24mLで希釈することによって、1mg/mLのレンバチニブメシル酸塩溶液を調製した。1mg/mLのレンバチニブメシル酸塩溶液0.36mLを3mmol/LのHCl溶液3.24mLでさらに希釈して、0.1mg/mLのレンバチニブメシル酸塩溶液を調製し、使用した。調製した溶液は、使用しないときは2~8℃で保管し、使用前に室温に温めるように放置した。
【0220】
4.3. 抗体2E5の製剤
抗体2E5を0.9%塩化ナトリウム注射液で希釈して、0.1mg/mLおよび0.2mg/mLの抗体2E5溶液を調製し、使用した。調製した溶液は、使用しないときは2~8℃で保管し、使用前に室温に温めるように放置した。
【0221】
5. 動物
種:ハツカネズミ;
系統:C57BL/6;
名称:B-hPD-1ヒト化マウス。
性別:雄;
体重:20~28g
週齢:7週齢
動物数:100匹(60匹+40匹の予備)マウス;
動物の供給元:Biocytogen Jiangsu Co;
ライセンス番号:SCXK (Jiangsu) 2016-0004;
動物証明書番号:201803133。
【0222】
6. 動物の飼育・ケア
動物は、Biocytogen Beijing Co., Ltd実験動物センターのSPF動物実験室で、個別換気式ケージ(IVC)を用いて飼育した。動物は試験開始前に3~7日間環境に馴化させた。
【0223】
温度: 20~26oC;
湿度: 40%~70%;
ケージ:ケージはPEI製で、体積は320mm×200mm×135mmとした。動物の寝床にはトウモロコシの穂軸を使用し、使用前にオートクレーブで滅菌した。寝床は週に1回交換した。各ケージはケージカードにより識別され、動物数、性別、系統、受入日、群番号および実験開始日が記載されていた。
【0224】
食餌および水:逆浸透(RO)水は、使用前にオートクレーブ処理した。動物にはSPFマウス用飼料および無菌の飲料水を自由に摂取させた。
【0225】
動物の識別:各マウスは耳のタグにより識別した。
【0226】
7. 実験操作
7.1. 細胞培養
マウス結腸癌細胞MC38は、Shun Ran (Shanghai) Biotechnology Co., Ltd.から購入し、10%不活性化ウシ胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地を添加した37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。MC38細胞は、ヒトPD-L1を過剰発現し、マウスPD-L1をノックアウトするように遺伝子修飾させ、修飾細胞は、MC38-hPD-L1細胞と名付けた。
【0227】
7.2. 腫瘍の接種、群および投与レジメン
MC38-hPD-L1腫瘍細胞を1xPBSに再懸濁して、0.1mL当たり5×105個細胞の濃度にした。B-hPD-1ヒト化マウスのそれぞれに、右側胸部に細胞懸濁液0.1mLを皮下接種した。平均腫瘍体積が約77mm3に達した時点で、中程度の腫瘍体積のマウスを選択し、腫瘍体積に応じて無作為に6群に分け、各群10匹ずつとし、同日より処置を開始した。投与レジメンは、表15に示した。
【0228】
【表15】
【0229】
7.3. 用量調節または中断
定期的なモニタリングの際には、動物を毎日チェックした。以下の状態の一つまたはそれ以上が発生した場合は、動物が正常に戻るまで投与を中断すべきである:
1)動物の体重減少が処置開始時の初期体重の20%を超える(体重減少が処置開始時の初期体重の10%以内である場合は投与を継続する)。
2)投与後、動物の体温が低下し、回復することができない。
3)投与後、動物の運動性が鈍いか異常である。
実験中、上記の理由のために投与を中断したマウスはなかった。
【0230】
7.4. 実験の終了
処置開始後17日目にレンバチニブメシル酸塩を最終投与してから2時間後に実験を終了した。
【0231】
7.5. 実験動物の人道的なエンドポイント
実験過程中、以下の状態が一つまたはそれ以上発生した場合、動物を安楽死させるべきである:
1)動物の腫瘍体積が3000mm3を超える場合、または群全体の平均腫瘍体積が2000mm3を超える場合。
2)腫瘍が表在性潰瘍形成物質(anabrotic)、壊死性または感染性になり、1週間以内に回復していない。
3)動物が、運動性が鈍い、または麻痺に苦しんでいる。
4)動物の体重減少が処置開始時の初期体重の20%を超える。
【0232】
実験中、G1群のNo.55191マウスは、処置開始後16日目に腫瘍体積が3000mm3を超えたため、事前に安楽死させた。その他の臨床症状により事前に安楽死させたマウスはなかった。
【0233】
7.6. 安楽死
動物は実験の終了時または人道的なエンドポイントに過剰なCO2で安楽死させた。
【0234】
7.7. 実験用指標
7.7.1. 腫瘍体積
腫瘍体積はノギスを用いて週に2~3回2次元で測定し、体積は、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径と短径である)を用いてmm3で示した。
【0235】
7.7.2. 体重
動物の体重は、腫瘍接種前、動物群分け中、処置中、および安楽死前に週に2~3回測定した。
【0236】
7.7.3. 一般臨床観察
定期的なモニタリングの際に、動物を、腫瘍の成長、潰瘍形成、精神状態および運動性などの行動、餌と水の消費の目視による推定、体重の増/減、目/毛のつや消しおよびその他の異常の影響がないか毎日チェックした。
【0237】
7.7.4. 腫瘍の重量および写真撮影
実験終了時、動物を写真撮影して、安楽死後の腫瘍保有状態を記録し、マウスの腫瘍の重量を測定し、写真撮影した。
【0238】
7.8. 薬効評価指標
7.8.1. 腫瘍成長抑制(TGITV):
TGITV(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100%。
Ti:処置後第i日における処置群の腫瘍体積;T0:投与後0日目における処置群の腫瘍体積、Vi:投与後i日目における対照群の腫瘍体積、V0:投与後0日目における対照群の腫瘍体積。
【0239】
7.8.2. 腫瘍重量抑制(TGITW):
実験終了時、動物を安楽死させ、腫瘍を分離して重量を測定し、各群間の腫瘍重量の差を計算した。腫瘍重量抑制(TGITW)は、以下の式で計算した:
TGITW(%)=(WC-WT)/WT×100%[式中、Wcは対照群の腫瘍重量を意味し、WTは処置群の腫瘍重量を意味する。]
【0240】
7.9. 統計分析
測定・観測された元データを記録すべきである。元データを分析し、その結果を平均値および標準誤差(平均±SEM)で表した。体重、腫瘍体積および腫瘍重量のデータは、独立標本t検定(independent-samples t-test)を用いて統計的に分析した。全てのデータはSPSSを用いて分析し、P<0.05は統計的に有意であるとみなされる。
【0241】
8. 成果
8.1. 体重の変化
実験動物は全て運動性、食餌など良好な状態であった。処置期間中、マウスの体重はある程度増加した。G1群のNo.55191マウスは、処置開始後16日目に腫瘍体積が3000mm3を超えたため、安楽死させた。このマウスの安楽死当日の体重データを追跡し、実験終了し、統計分析に含めた。全ての動物の体重変化を表16に示した。
【0242】
【表16-1】

【表16-2】

【表16-3】

【0243】
処置開始後17日目の体重を表17に示した。
【表17】
【0244】
8.2. 腫瘍体積の結果
実験の全期間中、全ての動物の腫瘍の成長を注意深くモニターした。G1群のNo.55191マウスは、処置開始後16日目に腫瘍体積が3000mm3を超えたため、事前に安楽死させた。このマウスの安楽死当日の重量データを追跡し、実験終了し、統計分析に含めた。全ての動物の腫瘍重量の変化は表18に示した。
【0245】
【表18-1】

【表18-2】

【表18-3】
【0246】
処置開始後17日目の腫瘍体積を、独立標本t検定を用いて統計的に分析し、その結果を表19に示した。各処置群と対照群との間で腫瘍体積に有意差があった(P<0.05)。組み合わせ群と単剤療法群との間で腫瘍体積に有意差があった(P<0.05)。G2とG3との間で腫瘍体積に有意差はなかった(P>0.05)。
【0247】
【表19】
【0248】
レンバチニブメシル酸塩と抗体2E5との間の相乗効果は、G5およびG6の組み合わせ群において相乗作用スコアが1を超えたことが実証された。
【0249】
8.3. 腫瘍重量の結果
本実験では、処置開始後17日目に全ての動物を安楽死させ、腫瘍を分離し、重量測定し、そして写真撮影した。個々の腫瘍重量のデータは表20に示した。
【0250】
【表20-1】

【表20-2】

【表20-3】
【0251】
腫瘍重量を、独立標本t検定を用いて統計的に分析し、その結果を表21に示した。組み合わせ群と単剤療法群との間で、腫瘍重量に有意差があった(p<0.05)。
【0252】
【表21】
【0253】
好ましい実施態様の前述の説明は、それを網羅するのではなく、本開示の原理を純粋に例示することを意図しており、変更および変形は当業者には明らかであり、本開示は、以下の特許請求の範囲に明示的に規定される以外に限定されることを意図しないことが理解されるであろう。
【配列表】
2023500385000001.app
【国際調査報告】