(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(54)【発明の名称】積層造形のための組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20221226BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20221226BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20221226BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20221226BHJP
【FI】
B29C64/314
C08L53/02
C08K7/00
B29C64/118
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022519735
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 US2020058721
(87)【国際公開番号】W WO2021091907
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073570
【氏名又は名称】ジャビル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フライ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ,レヴィ
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA11
4F213AA13
4F213AA46
4F213AB11
4F213AB16
4F213AB24
4F213AC02
4F213AR12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL27
4F213WL96
4J002BP01W
4J002BP02X
4J002DJ046
4J002FA076
4J002FD016
(57)【要約】
積層造形物品を製造するのに有用な組成物は、スチレン熱可塑性エラストマーであって、ビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび共役ジエン単量体の少なくとも1つのブロックから作られたブロック共重合体と、その中に分散された、0.05m2/gから120m2/gの表面積を有する固体微粒子充填剤とから作られたスチレン熱可塑性エラストマーから作られている。この組成物は、溶融フィラメント製造積層造形に使用するためのフィラメントに形成されることがある。そのフィラメントは、乾燥または乾燥条件下での貯蔵を必要とせずに、良好な印刷適性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形用組成物において、
スチレン熱可塑性エラストマーであって、ビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび共役ジエン単量体の少なくとも1つのブロックから作られたブロック共重合体と、その中に分散された、0.05m
2/gから120m
2/gの表面積を有する固体微粒子充填剤とから作られたスチレン熱可塑性エラストマー、
を含む積層造形用組成物。
【請求項2】
前記共役ジエン単量体が、式:
R
2C=CR-CR=CR
2
のものであり、式中、各Rは、各存在毎に独立して、水素または1から4の炭素のアルキルであり、任意の2つのR基が環を形成することがあり、前記ビニル芳香族単量体は、多くとも20の炭素を有し、該ビニル芳香族単量体は、式:
Ar-C(R
1)-C(R
1)
2
のものであり、式中、各R
1は、各存在毎に独立して、水素またはアルキルであり、もしくは別のR
1と環を形成し、Arは、フェニル、ハロフェニル、アルキルフェニル、アルキルハロフェニル、ナフチル、ピリジニル、またはアントラセニルであり、任意のアルキル基は、必要に応じて、官能基で一または多置換されることがある1から6の炭素原子を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記共役ジエン単量体のブロックが、残っている炭素-炭素二重結合の少なくとも一部をなくすために水素化されている、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体が、A-B-AまたはA-B-A-B-Aのいずれかの形態を有し、Aはビニル芳香族重合体ブロックであり、Bは共役ジエンブロックである、請求項1から3いずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)熱可塑性エラストマーである、請求項1から4いずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記充填剤が、D50が約0.5マイクロメートルから約5マイクロメートルであり、D90が約20マイクロメートルから約40マイクロメートルであり、D10が約0.1マイクロメートルから約2マイクロメートルである粒径を有する、請求項1から5いずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記充填剤が、約5から約25のアスペクト比を有する針状充填剤からなる、請求項1から6いずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記充填剤が、粘土、珪灰石、黒鉛炭素、窒化ホウ素、炭化ケイ素またはタルクである、請求項1から7いずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、
約60~80のショアA硬度値、
約5~6MPaの引張強度-垂直、
約3.5~4.5MPaの引張強度@100%-垂直、
約400~500%の破断点伸び-垂直、
約34~42kN/mの引裂強度-垂直、および
約0.8~1.0の比重(相対密度)、
を有する、請求項1から8いずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物がフィラメントである、請求項1から9いずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
前記フィラメントが、約1マイクロメートルから約3マイクロメートルの直径を有する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
ポリオレフィンをさらに含む、請求項1から11いずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリオレフィンが、プロピレンの単独重合体またはプロピレンとエチレンの共重合体である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリオレフィンが、230℃/2.16kgで、1から50g/10分のメルトフローレートを有する、請求項12または13記載の組成物。
【請求項15】
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、210℃/2.16kgで、50から150g/10分のメルトフローレートを有する、請求項12から14いずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
210℃/2.16kgでの前記スチレン熱可塑性エラストマーのメルトフローレートおよび230℃/2.16kgでの前記ポリオレフィンのメルトフローレートが、10から3の比を有する、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
互いに融合された、請求項1から16いずれか1項記載の組成物の少なくとも2つの層を備えた積層造形物品。
【請求項18】
溶融フィラメント製造により形成された、請求項17記載の積層造形物品。
【請求項19】
物体を印刷する方法であって、
請求項1から16いずれか1項記載の組成物をフィラメントに形成する工程、
前記フィラメントを延伸し、加熱し、プリントヘッドに通して押し出して、押出物を形成する工程、および
多数の層が制御可能に堆積され、融合されて、積層造形物品を形成するように前記押出物を土台上に堆積させる工程、
を有してなる方法。
【請求項20】
前記押出する工程が、Bowden管を有するBowden押出機による、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記フィラメントが、約0.5マイクロメートルから約3マイクロメートルの直径を有する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
互いに融合または接着した複数の層を備えた積層造形物品を含む物品であって、少なくとも2つの層が、ビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび共役ジエン単量体の少なくとも1つのブロックから作られたブロック共重合体と、その中に分散された、0.05m
2/gから120m
2/gの表面積を有する固体微粒子充填剤とから作られたスチレン熱可塑性エラストマーから作られている、物品。
【請求項23】
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、前記共役ジエン単量体ブロック中に残っている二重結合の少なくとも一部を除去するために水素化されている、請求項22記載の物品。
【請求項24】
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)熱可塑性エラストマーである、請求項23記載の物品。
【請求項25】
前記層が、ポリプロピレンの単独重合体またはエチレンとプロピレンの共重合体であるポリオレフィンからさらに作られている、請求項22から24いずれか1項記載の物品。
【請求項26】
前記スチレン熱可塑性エラストマーのメルトフローレート対前記ポリオレフィンのメルトフローレートの比が10から3の比を有するように、該スチレン熱可塑性エラストマーが210℃/2.16kgでのメルトフローレートを有し、該ポリオレフィンが230℃/2.16kgでのメルトフローレートを有する、請求項25記載の物品。
【請求項27】
前記層が、約10~80質量%の前記スチレン熱可塑性エラストマー、約10~70質量%の前記ポリオレフィン、および約10~30質量%の前記充填剤からなる、請求項26記載の物品。
【請求項28】
前記物品が溶融フィラメント製造により形成される、請求項22から27いずれか1項記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、積層造形に有用な熱可塑性組成物に関する。詳しくは、その組成物は、溶融フィラメント製造(FFF)に有用である。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)印刷過程としても知られている、様々な積層造形過程を使用して、特定の材料を、特定の位置で、および/または層状に、溶融または接着することにより三次元物体を形成することができる。材料は、コンピュータ制御下、例えば、コンピュータ支援設計(CAD)モデルの操作で、接合または固化して、三次元物体を作製することができる。液体分子、高分子を含む押出材料、または粉粒などの材料は、層毎の手法およびプリントヘッド堆積手法を含む様々な様式で融合および/または付加することができる。様々なタイプの積層造形過程として、結合剤噴射、指向性エネルギー堆積、材料押出、材料噴射、粉末床融合、シート積層、バット光重合、および溶融フィラメント製造が挙げられる。
【0003】
溶融フィラメント製造(FFF)は、1種類以上の熱可塑性材料を含むことがある連続フィラメントを利用する積層造形過程である。そのフィラメントは、コイルから、動く加熱された押出機プリントヘッドを通じて分配され、そのプリントヘッドから三次元で堆積されて、印刷物体を形成する。このプリントヘッドは二次元(例えば、XY平面)で動いて、一度に、印刷されている物体の1つの水平面、すなわち層を堆積する。そのプリントヘッドおよび/または印刷されている物体は、第3の次元(例えば、XY平面に対するZ軸)に動いて、先に堆積された層に付着する次の層を作り始める。この過程が、特許文献1および2にさらに記載されている。この技術は、フィラメントの溶融および押出しを必要とするので、材料は、熱可塑性高分子に限定されていた。一般に、FFF方法により最もうまく印刷されてきた熱可塑性物質は、脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン6,6)である。熱可塑性ポリウレタンなどの熱可塑性エラストマー、、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)が、FFFによって積層造形されてきたと報告されているが、水分吸収および撓みのない物品を印刷する難しさなどの問題、並びにプリンタのプリントヘッドおよび案内管内の供給装置への粘着を生じることのために、実質的な商業的成功を収めていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5121329号明細書
【特許文献2】米国特許第5503785号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上述したものなどの材料を3D印刷する問題点の1つ以上を回避する熱可塑性エラストマー組成物を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
充填剤を含有する特定のスチレン熱可塑性エラストマーブロック共重合体(STPE)は、粘着や、望ましくない水分吸収がなく、反りのない、表面仕上げが良好で、調節可能な性質(例えば、ショア硬度A)を有する積層造形されたエラストマー物品の印刷を可能にすることが見いだされた。
【0007】
本発明の第1の態様は、スチレン熱可塑性エラストマーであって、ビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび共役ジエン単量体の少なくとも1つのブロックから作られたブロック共重合体と、その中に分散された、0.05m2/gから120m2/gの表面積を有する固体微粒子充填剤とから作られたスチレン熱可塑性エラストマー(STPE)を含む積層造形用組成物である。
【0008】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の組成物の層を少なくとも1つ2つ含む積層造形物品である。
【0009】
本発明の第3の態様は、物体を印刷する方法であって、第1の態様の組成物をフィラメントに形成する工程、そのフィラメントを延伸し、加熱し、プリントヘッドに通して押し出して、押出物を形成する工程、および多数の層が制御可能に堆積され、融合されて、積層造形物品を形成するように押出物を土台上に堆積させる工程を有してなる方法である。
【0010】
第3の態様の方法を実施するときに、フィラメントは、乾燥させたり、乾燥雰囲気中で貯蔵したり、乾燥剤と共に貯蔵したりする必要がないことが見いだされた。そのようなフィラメントを形成するために使用される組成物では、STPE、随意的なポリオレフィン、および/またはショア硬度などの印刷物品の1つ以上の特徴を調製するための充填剤の比率が変えられることがある。充填剤の量は、STPEの溶融強度を増加させることによってSTPEの加工性を向上させ、どのような印刷後の反りも阻止するように最適化されることがある。
【0011】
適用の可能性があるさらなる分野が、ここに与えられた記載から明白になるであろう。この概要における記載および具体例は、説明目的のためだけであり、本開示の範囲を限定する意図はない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の技術の記載は、1つ以上の発明の主題、製造および使用の性質上で例示に過ぎず、本出願または本出願に優先権を主張して出願されるような他の出願、もしくはそこから発行された特許において請求される任意の特定の発明の範囲、適用、または使用を限定する意図はない。特に明記のない限り、技術の最も広い範囲を記載する上で、本記載における全ての数量は、「約」という単語により修飾されると理解されるべきであり、全ての幾何学的および空間的記述語は、「実質的に」という単語により修飾されると理解されるべきである。「約」は、数値に適用される場合、計算または測定により、その値におけるある程度のわずかな不正確さを持たせられる(値における正確さへのある取組み;その値にほぼまたは合理的に近い;ほとんど)ことを示す。何らかの理由で、「約」および/または「実質的に」により与えられる不正確さが、当該技術分野でこの通常の意味により理解されない場合、ひいては、ここに使用されているような「約」および/または「実質的に」は、少なくとも、そのようなパラメータを測定または使用する通常の方法から生じるかもしれない変動を示す。
【0013】
溶融フィラメント製造に使用される極性基を含有する他のフィラメント(例えば、ナイロン6,6などのポリアミド)とは異なり、本組成物から形成されるフィラメントは、吸湿が少なく、特定用途の特定物体を印刷するために最適化された所望のショア硬度を提供するように調整することができる。本技術によるフィラメントは、乾燥または1種類以上の乾燥剤を用いた貯蔵を必要とせずに、印刷することができる。
【0014】
その組成物はSTPEからなる。STPEは、重合ビニル芳香族単量体の少なくとも2つの別個のブロックおよび重合共役アルケン単量体の少なくとも1つのブロックからなるブロック共重合体であり、各ブロック共重合体は、20までの炭素原子を有するビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび式:
R2C=CR-CR=CR2
の共役アルケン単量体を有し、式中、各Rは、各存在毎に独立して、水素または1から4の炭素のアルキルであり、任意の2つのR基が環を形成することがある。この共役ジエン単量体は、少なくとも4の炭素であって、約20以下の炭素を有する。共役アルケン単量体は、2以上の共役二重結合を有するどの単量体であっても差し支えない。そのような単量体の例としては、ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2-メチル-1,3-ペンタジエン、および類似の化合物、並びにその混合物が挙げられる。このブロック共重合体は、複数の特定の重合共役アルケン単量体を含有し得る。言い換えると、ブロック共重合体は、例えば、ポリメチルペンタジエンブロックおよびポリイソプレンブロックまたは混合ブロックを含有し得る。一般に、ブロック共重合体は、互いに連結した2つ以上の単量体単位の長鎖を含有する。適切なブロック共重合体は、典型的に、共役アルケン単量体単位およびビニル芳香族単量体単位のブロックの総質量に基づいて、約30:70から約95:5、約40:60から約90:10または約50:50から約65:35の共役アルケン単量体単位のブロック対ビニル芳香族単量体単位のブロックの量を有する。
【0015】
ビニル単量体は、典型的に、式:
Ar-C(R1)-C(R1)2
の単量体であり、式中、各R1は、各存在毎に独立して、水素またはアルキルであり、もしくは別のR1と環を形成し、Arは、フェニル、ハロフェニル、アルキルフェニル、アルキルハロフェニル、ナフチル、ピリジニル、またはアントラセニルであり、任意のアルキル基は、必要に応じて、ハロ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボニルおよびカルボキシルなどの官能基で一または多置換されることがある1から6の炭素原子を含有する。典型的に、ビニル芳香族単量体は、20以下の炭素原子および1つのビニル基を有する。1つの実施の形態において、Arは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、典型的に、フェニルである。典型的なフェニル芳香族単量体としては、スチレン(それによって、シンジオタクチックポリスチレンブロックが生成される条件を含む)、アルファ-メチルスチレン、ビニルトルエンの全ての異性体、特に、パラ-ビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンの全ての異性体、およびその混合物が挙げられる。ブロック共重合体は、複数の重合ビニル芳香族単量体を含有し得る。言い換えると、ブロック共重合体は、純粋なポリスチレンブロックおよび純粋なポリ-アルファ-メチルスチレンブロックを含有しても、もしくは任意のブロックが、そのような単量体の混合物から作られてもよい。望ましくは、Aブロックがスチレンからなり、Bブロックがブタジエン、イソプレンまたはその混合物からなる。ある実施の形態において、共役ジエン単量体から残っている二重結合は、水素化されている。
【0016】
本発明のSTPEブロック共重合体は、トリブロック、ペンタブロック、マルチブロック、テーパードブロック、およびA(B’A’)xByと称される星形ブロック((AB)n)ポリマーを含み、式中、各全ての存在毎に、Aはビニル芳香族ブロックまたは混合ブロックであり、Bは不飽和アルケニルブロックまたは混合ブロックであり、A’は、各存在毎に、Aと同じであっても、異なる成分またはMwのものであってもよく、B’は、各存在毎に、Bと同じであっても、異なる成分またはMwのものであってもよく、nは星に付いたアームの数であり、2から10、1つの実施の形態において、3から8、そして別の実施の形態において、4から6に及び、xは1以上であり、yは0または1である。1つの実施の形態において、ブロック共重合体は、例えば、各端部に、等しいMwのビニル芳香族ポリマーブロックを有するトリブロックのように、対称である。典型的に、STPEブロック共重合体は、A-B-AまたはA-B-A-B-Aタイプのブロック共重合体になる。望ましくは、Bブロックは水素化されており、ここで、二重結合のかなりの割合(約50%、70%、またさらには90%)が水素化されているか、二重結合の実質的に全て(99%または99.9%)が水素化されている。
【0017】
ブロック共重合体は、約6,000から、特に約8,000からの個々の重量平均分子量Mwの重み付けしたブロックから、約15,000から約45,000の総計加重芳香族ブロックを有するビニル芳香族単量体単位のブロックを有し得る。共役アルケン単量体単位のブロックの総計重量平均分子量は、約20,000から、特に約30,000から、さらに約40,000から約150,000、特に約130,000までであり得る。
【0018】
望ましくは、STPEは、スチレン-(ブタジエン)-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-イソプレン-ブチレン-スチレン(SIBS)、および/またはスチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)である。典型的に、スチレンブロックは熱可塑性特性を与え、ブタジエンブロックはゴム状弾性を与え、以下のように表されることがある:
【0019】
【0020】
式中、x、y、およびzは、上述したブロックのMwを実現するための整数である。ブタジエン成分中のC=C結合がなくなると、エチレンおよびブチレン中間ブロックが生成されるので、SBSの選択的な水素化により、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)が生じる。SEBSは、改善された耐熱性、機械的性質および耐薬品性により特徴付けられることがある。SEBSの例示の構造は:
【0021】
【0022】
により表されることがあり、式中、x、y、z、m、およびnは、上述したブロックのMwを実現するための任意の整数である。望ましくは、STPEは、スチレン-(ブタジエン)-スチレン、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレンまたはその組合せからなる。ある実施の形態において、STPEは、SEBSからなり、ここで、元のSBSの不飽和結合の実質的に全てが水素化されている。
【0023】
有用なSTPEは、典型的に、約50~90または60から80のショアA硬度値(ASTM D 2240/ISO 868/ISO 7619)、約3~8、4~7または5~6MPaの引張強度-垂直(ASTM D412/ISO 37)、約2から6、3~5.5、または3.5~4.5MPaの引張強度@100%-垂直(ASTM D412/ISO 37)、約200%~700%、300%~600%または400%~500%の破断点伸び-垂直(ASTM D412/ISO 37)、約15kN/m~60kN/m、20kN/m~50kN/m、25kN/m~45kN/mまたは34kN/m~42kN/mの引裂強度-垂直(ASTM D624/ISO 34)、および約0.8~1.0の比重(相対密度)(ASTM D792/ISO 1183)を有する。STPEの210℃でのメルトフローレート(MFR)は、どの有用なMFRであってもよいが、典型的に、2.16Kgで、210℃で、約50、60、70、80、90g/分から、150、140、130、120、または110g/分までである(ASTM D1238)。
【0024】
特別な実施の形態において、STPEは、約68から約72のショアA硬度値、約5.3から約5.7MPaの引張強度-垂直、約3.8から約4.2MPaの引張強度@100%-垂直、約440から約460%の破断点伸び-垂直、約36から約40kN/mの引裂強度-垂直、230℃で約95g/分から105g/分のMFR、および約0.90から約0.94の比重(相対密度)を有する。
【0025】
STPEは、FFFにより物品を形成するときに、STPEが、印刷され、以前の層とそれに続く層に融合または接着するように十分に流動するような印刷条件で特定のレオロジー挙動を示すことが望ましい。例えば、STPEの粘度は、積層造形堆積温度(約180℃、190℃、200℃または210℃から約250℃、240℃、または230℃までなどの押出温度)で、ずり減粘挙動を示すことが望ましい。特に、低剪断(1s-1)での見掛け粘度は、高剪断(5000s-1)での粘度と比べて、約200、150、100、50または25倍大きく、ここで、低剪断(1s-1)での粘度は、約1000から5000Pa・sである。粘度は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切なレオメータで決定されてもよい。例えば、適切なレオメータは、Instron CEAST 20毛管レオメータ(マサチューセッツ州、ノーウッド所在のInstron)である。
【0026】
適切なSTPEとしては、Kuraray(テキサス州、ヒューストン)からのSEPTONおよびHYBRARなどの商標名で市販されているものが挙げられる。適切であろうSTPEは、商標名TPEでAudia Elastomers(ペンシルベニア州、ワシントン)からも入手できる。他の適切なSTPEとしては、商標名CALPRENEでDynasolから入手できるもの、KRATON FおよびGの商標名でKraton Corporation(テキサス州、ヒューストン)から、Mexpolimeros(メキシコ国)から、および商標名ASAPRENEおよびTUFPRENEで旭化成(日本国)からのSTPEが挙げられるであろう。
【0027】
所望の低吸湿、印刷物品の仕上げおよび許容差(例えば、反りのないこと)を維持しつつ、プリントヘッドに至るフィラメント供給管への高温での粘着などの問題を避けるように、所望の3D印刷適性を実現するためには、特定の充填剤が必要であることが見いだされた。その充填剤は、約0.05m2/gから約120m2/gの比表面積を有するが、0.1、0.5、1、2m2/gから約50、25、20、または10m2/gまでの比表面積を有することが望ましい。充填剤粒子は、個々の粒子またはヒュームドシリカやカーボンブラックに一般に見られるような硬い凝集体であってもよい。充填剤が個々の粒子であることが望ましい。充填剤の量は、所望の印刷適性を実現するために十分な量がある限り、STPEおよびそれとブレンドされる任意の共重合体に対して広範囲で変動してよい。典型的に、充填剤の量は、組成物の約1%、2%、5%、10%から70%、60%、50%、40%または30%までである。充填剤の特定量は、結果として得られる組成物、フィラメントまたはそれから形成される物品の剛性、引張強度、靱性、耐熱性、色、および透明度などの1つ以上の所望の性質を実現するためにも調節されることがある。
【0028】
一般に、充填剤は、どのような形状(例えば、板状、塊状、針状(acicular)、ひげ状回転楕円体またはその組合せ)であってもよい。望ましくは、充填剤は、アスペクト比が少なくとも2から50である針状形態を有し、針状性(acicularity)は、ここでは、形態が針状(needlelike)または板状であってよいが、好ましくは板状であることを意味する。針状(needlelike)は、2つのより小さい等寸法(典型的に、高さと幅と称される)および1つのより大きい寸法(典型的に、長さ)があることを意味する。板状は、2つのより大きいいくぶん等しい寸法(典型的に、幅と長さ)および1つのより小さい寸法(典型的に、高さ)があることを意味する。より好ましくは、アスペクト比は、少なくとも3、4または5から25、20または15までである。平均アスペクト比は、粒子の無作為代表サンプル(例えば、100から200粒子)の最長と最短の寸法を測定する顕微鏡技術により決定することができる。
【0029】
この充填剤の粒子サイズは、大きすぎず(例えば、フィラメントの最小寸法に亘るほど、またはフィラメントを、積層造形において通常遭遇する条件下で曲げられたときに壊れやすくするほど)、加工性および機械的性質に対する所望の効果を実現できないほど小さすぎない有用なサイズである必要がある。有用なサイズを定義する上で、粒径およびサイズ分布は、中央サイズ(D50)、D10、D90および最大サイズ制限により与えられる。サイズは、低い固体装填量での液体中の固体の分散体を使用するレーザ光散乱法(レイリーまたはミー、ミー散乱が好ましい)によって測定される、体積による相当球径である。体積で、D10は、粒子の10%がそれより小さいサイズを有するサイズであり、D50(中央値)は、粒子の50%がそれより小さいサイズを有するサイズであり、D90は、粒子の90%がそれより小さいサイズを有するサイズである。一般に、充填剤は、0.1マイクロメートルから25マイクロメートルの相当球径の中央(D50)粒径を有し、D10は0.05から5マイクロメートルであり、D90は20から60マイクロメートルであり、約100マイクロメートルまたさらには50マイクロメートルより大きい粒子は実質的になく、約0.01マイクロメートルより小さい粒子はない。中央値が0.5から5または10マイクロメートルであり、D10が0.2から2マイクロメートルであり、D90が5、10または20から40マイクロメートルであることが望ましい。
【0030】
充填剤は、当該技術分野で公知のものなど、どの有用な充填剤であってもよい。充填剤の例としては、セラミック、金属、炭素(例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン)、印刷温度で溶融または分解しない高分子微粒子(例えば、架橋した高分子微粒子、加硫ゴム微粒子など)、植物系充填剤(例えば、木材、堅果の殻、穀物と米の外皮の粉または粒子)が挙げられる。例示の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土、硫酸カルシウム、マイカ、無機ガラス(例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ「石英」、およびカルシア)、炭化物(例えば、炭化ホウ素および炭化ケイ素)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、酸窒化物、酸炭化物の組合せ、またはそれらの組合せが挙げられる。特定の実施の形態において、充填剤は、タルク、粘土鉱物、刻まれた無機ガラス、金属、炭素繊維、ムライト、マイカ、珪灰石またはその組合せなどの針状充填剤を含む。特別な実施の形態において、充填剤はタルクからなる。
【0031】
反りなどが生じずに3D印刷するのが難しいポリオレフィンを、反ることがなく、ポリオレフィンの所望の特徴を示す印刷部品を実現する相当量で、本発明の組成物に加えてもよいことも分かった。ポリオレフィンの例としては、ポリエチレンおよびポリプロピレン、並びにポリプロピレン/ポリエチレン共重合体が挙げられる。ポリオレフィンは、様々な程度の結晶化度を有し得、その程度は、0%(例えば、液体に似た)から60%以上(例えば、剛性プラスチック)に及び得る。結晶化度は、重合中に形成される高分子の結晶化可能な配列の長さに相関付けることができる。特定の実施の形態において、ポリオレフィンは、ポリプロピレン単独重合体または耐衝撃性共重合体のポリプロピレンとポリエチレンと称されるもの(例えば、チーグラー・ナッタ触媒を使用して製造されるもの)およびプロピレンとエチレンのランダム共重合体などのプロピレンとエチレンの共重合体から作られる。典型的に、ポリオレフィン、および特にポリプロピレンまたはエチレンとプロピレンの共重合体は、ASTM D1238による、約1から50g/10分(230℃/2.16kg)のメルトフローレートを有する。MFRが、約0.1、0.5、1、2または5から20または15g/10分までであることが望ましい。
【0032】
所望の機械的性質および良好な挙動を実現するために、ポリオレフィン、および特にポリプロピレン単独重合体またはプロピレンとエチレンの共重合体を含ませる場合、意外なことに、STPEのMFR(210℃/2.16kg)/ポリオレフィンのMFR(230℃/2.16kg)のメルトフローレート比(MFR比)が、望ましくは、少なくとも約6、8または10から200、100、50、20または15までであることが分かった。すなわち、より高い温度でさえ、STPEよりも相当低いMFRを有する場合、ポリオレフィンのメルトフローレートは、印刷を改善する。
【0033】
適切なポリオレフィンとしては、ExxonMobil、The Dow Chemical CompanyおよびLyondellBasellなどの会社から市販されているものが挙げられる。
【0034】
ポリオレフィンが存在する場合、前記組成物は、約10~80質量%のSTPE、約10~70質量%のポリオレフィン、および約10~50質量%の充填剤からなることがある。他の実施の形態において、その組成物は、約20~70質量%のSTPE、約10~60質量%のポリオレフィン、および約10から40質量%または30質量%の充填剤からなることがある。さらなる実施の形態において、その組成物は、約20~50質量%のSTPE、約30~60質量%のポリオレフィン、および約15質量%から25質量%の充填剤からなることがある。
【0035】
前記組成物は、溶融フィラメント製造法などの様々な3D印刷法に有用な様々な形態に形成されることがある。例えば、その組成物は、物体を印刷するために溶融フィラメント製造法に供給できるペレット、1つ以上のロッドに形成されることがある。そのようなペレット、ロッドは、押出機に供給されることがあり、そこで、組成物はフィラメントにさらに形成される。このフィラメントは、様々なプリントヘッドを使用して様々な物体を印刷するために様々な溶融フィラメント製造法に使用するための断面形状、直径、および長さの寸法にすることができる。フィラメントは、印刷過程に使用されている間に形成することができる、またはフィラメントは、予備成形し、印刷過程に後で使用するために貯蔵することができる。フィラメントは、貯蔵および分配に役立つようにスプールに巻き付けられることがある。フィラメントは、熱間押出法および冷間押出法など、様々なダイを使用する様々な押出法を含む、様々な様式で形成することができる。
【0036】
特定の実施の形態において、溶融フィラメント製造法は、品物を印刷するために組成物の材料押出を使用することができ、ここで、組成物の原材料が押出機から押し出される。フィラメントは、スプールに巻き付けられたフィラメントの形態で、三次元印刷装置またはシステム内で利用することができる。この三次元印刷装置またはシステムは、低温端部および高温端部を含み得る。低温端部は、ステッピング・モータによりフィラメントを取り扱い、供給速度を制御するために、ギヤまたはローラを使用した供給装置を使用して、スプールからフィラメントを引き出すことができる。低温端部は、フィラメント原材料を高温端部にさらに進めることができる。この高温端部は、加熱室およびノズルを備えることができ、そこで、加熱室は液化機を備え、この液化機がフィラメントを溶融して、粘度の低い液体に転換させる。これにより、溶融した組成物がノズルから出て、それが堆積される表面に接着できる粘度が低い粘着性ビーズを形成する。そのノズルは、どの有用な直径を有してもよく、典型的に、所望の解像度に応じて、0.1または0.2mmから3mmまたは2mmまでの直径を有する。組成物、印刷される物体、および印刷過程の所望の解像度に応じて、異なるタイプのノズルおよび加熱方法が使用される。
【0037】
特定の実施の形態において、溶融フィラメント製造装置またはシステムは、ステッピング・モータおよび高温端部と共に、フィラメントを溶融し、そこから押し出す押出機を利用することができる。ステッピング・モータは、フィラメントを把持し、そのフィラメントを高温端部に供給することができ、その高温端部は、次に、フィラメント組成物を溶融し、印刷面上に堆積させる。溶融フィラメント製造装置またはシステムは、直接駆動押出機またはBowden押出機を利用することができる。直接駆動押出機は、プリントヘッド自体の上にステッピング・モータを有し得、そこで、フィラメントを高温端部に直接押し込むことができる。この構成は、X軸に沿って動くときに、ステッピング・モータの力を伝えるプリントヘッドを有する。Bowden押出機は、プリントヘッドから離れたフレーム上にモータを有し得、Bowden管を利用する。そのモータは、フィラメントを、Bowden管(例えば、PTFE管)を通じて、プリントヘッドに供給することができる。その管は、固定モータから動く高温端部にフィラメントを誘導して、フィラメントが印刷過程中に高温端部の動きによって折れたり、引き伸ばされたりするのを防ぐ。
【0038】
ここに記載された組成物を使用する工程を含む、物体を印刷する方法が提供される。例えば、組成物から形成されたフィラメントを提供することができ、そのフィラメントを溶融フィラメント製造過程に使用して、物体を印刷することができる。フィラメントを提供する工程は、組成物を押し出して、フィラメントを形成する工程を含み得る。特定の実施の形態において、組成物を押し出す工程は、直接駆動押出機およびBowden押出機の内の一方を使用して、フィラメントを形成する工程を含み得る。
【0039】
ここに与えられた溶融フィラメント製造過程によって、物品が製造されることがある。そのような物品は、記載されたような組成物から形成されたフィラメントを提供し、そのフィラメントを溶融フィラメント製造過程に使用することにより、物体を印刷して、本発明の組成物の少なくとも2つの層からなる積層造形物品を形成することによって、調製されることがある。フィラメントは、その組成物を、加熱の有無にかかわらないが、一般に加熱を伴うダイから押し出すことによって、形成されることがある。そのような溶融フィラメント製造過程を使用した三次元印刷により製造される物体は、機械加工、研削、研磨、被覆、印刷、メッキ、堆積などによって、さらに加工しても差し支えない。
【実施例】
【0040】
以下の非限定的実施例は、本発明の技術のさらなる態様を実証する。
【0041】
実施例1から6および比較例1
99g/10分のメルトフローレート(210℃/2.16kg)を有するトリブロックA-B-A重合体である、Audia ElastomersからのSEBS STPE(実施例および比較例においてSEBSと称される)のTPE-70IN350を、様々な添加量のCIMBAR 610Dタルクと、二軸スクリュー押出機を使用して約210℃で溶融ブレンドすることによって、直径約2.85mmのフィラメントを形成する。このSEBS STPEは、表1に示されるように、210℃、220℃および230℃でずり減粘挙動を示す。粘度は、20:1のダイ比を持つInstron CEAST 20毛管レオメータ(マサチューセッツ州、ノーウッド所在のInstron)を使用して決定される。タルクは、1マイクロメートルの報告D50および5.5マイクロメートルのD98を持つ板状形態を有する。このタルクは、STPEとタルクの重量で10%間隔で、10パーセントから60パーセントで添加される(実施例1から6)。
【0042】
フィラメントは、純粋なSEBS(比較例1)およびタルク添加組成物から製造される。約185℃から205℃の間で一軸スクリュー押出機内において実施例1から6および比較例の組成物を溶融押出しすることによって、直径2.85ミリメートルのフィラメントを製造する。これらのフィラメントは、冷却浴を通過させた後、スプールに巻き付けられる。7層を有するタイプIVの引張試験片を、15~20mm/秒の印刷速度、約0.15mmの層高さ、270℃の温度、および70℃の構築板温度を有するUltimaker S5溶融フィラメント製造プリンタを使用して、3D印刷する。
【0043】
比較例1は、プリンタ装置への粘着のために、印刷されず、フィラメントを製造するために使用した冷却浴中の折れのためにフィラメント形成中に折れた。
【0044】
実施例1から6の組成物の各々は、印刷された。添加量がより多い(40%から60%)の実施例(4~6)は、典型的なフィラメント製造プリンタ条件下で印刷した場合、一貫性のないフィラメント供給を示す。10%から30%の装填量の実施例1~3は、良好な印刷特徴を示し、フィラメントは、反りのない良好な外観を有し、層の接着性を示す印刷部品を実現するための十分な溶融強度剛性を示す。実施例2(20質量%のタルク)の機械的性質が、表2に示されている。
【0045】
実施例7から15
チーグラー・ナッタ触媒を使用して製造されたプロピレンとエチレンのプロピレン耐衝撃性共重合体(LyondellBasell、SEETEC M1400、比重 0.9g/cc、MFR 8g/10分(230℃/2.16kg))を、表3に示された質量百分率でSTPEおよびタルクとブレンドすることを除いて、同じ様式で、実施例7から13を製造した。実施例10の詳細な機械的性質が、表2に示されている。実施例7は、実施例2の配合物を繰り返した。これらの実施例の各々は、うまく印刷された。表3から、所望の性質は、より多くが添加されるときのポリプロピレンの量に近づいてポリプロピレンの量を変えることによって実現され、それでも良好な印刷適性が達成されることがあるのが明白である。意外なことに、STPEのより少ない添加量でさえ、より低い脆性およびより大きい耐衝撃性を示しつつ、プロピレンの性質に近づくことがある。
【0046】
ポリプロピレンが耐衝撃性プロピレン・エチレン共重合体(Pro-fax SG702、LyondellBasell、0.9g/cc、MFR 18g/10分(230℃/2.16kg))であることを除いて、実施例10と同じ様式で実施例15を製造した。ポリプロピレンがプロピレン・エチレン共重合体(Chase Plastics Services Inc.、PPC100RC-35M、0.9g/cc、MFR 35g/10分(230℃/2.16kg))であることを除いて、実施例10と同じ様式で実施例16を製造した。実施例15および16を同じ条件で印刷したが、割れが生じ、層の間に良好な接着がなかった。
【0047】
実施例1から15の組成物のフィラメントは、他のエラストマー、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)と比べて、ほとんど水分を吸収しない。詳しくは、TPUから形成されるフィラメントは、一般に、溶融フィラメント製造を使用して良好な三次元印刷品質を得るために、オーブン内で乾燥させるか、または乾燥剤と共に貯蔵する必要がある。これは、TPUが周囲の空気から水分を吸収する傾向のためであり得る。過剰な量の水を含有するフィラメントは、不十分な機械的性質および粗い表面に至る、高温のプリントヘッド中の重合体の分解のために品質の低い物品を印刷する傾向にある。本発明のフィラメントは、環境水分の吸収に関連する問題を示さない。詳しくは、本発明のフィラメントは、どのような印刷問題も生じずに、乾燥剤なく長期間に亘り室温で貯蔵してもよいが、例えば、TPU(熱可塑性ポリウレタン)は、周囲条件下で貯蔵する場合、印刷前に乾燥させなければならないことが観察された。
【0048】
また、本組成物中にポリプロピレンを添加すると、これまで知られていなかった利点が得られることも観察された。例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)をほとんどまたは全く含まない組成物は、軟質な傾向があり、これにより、溶融フィラメント製造3Dプリンタの駆動装置中で曲げがもたらされることがある。詳しくは、ポリオレフィンをほとんどまたは全く含まない組成物は、Bowden管プリンタで印刷するのが難しいことがあるが、そのような組成物は、直接駆動プリンタでより効果的に機能することがある。Bowdenプリンタにおいて、フィラメント駆動装置はプリンタの裏側に位置しており、フィラメントは、プリントヘッドまで長い管に押し通される。駆動装置がプリントヘッドから離れて配置されているプリンタにおいて、フィラメントを引っ張り、曲げる、摩擦面がより大きく、印刷過程を失敗させる傾向にある。この問題は、実施例7から15により例示されるように、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)をさらに含ませることによって、低下するか、またはなくなる。
【0049】
【0050】
【0051】
【手続補正書】
【提出日】2022-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
また、本組成物中にポリプロピレンを添加すると、これまで知られていなかった利点が得られることも観察された。例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)をほとんどまたは全く含まない組成物は、軟質な傾向があり、これにより、溶融フィラメント製造3Dプリンタの駆動装置中で曲げがもたらされることがある。詳しくは、ポリオレフィンをほとんどまたは全く含まない組成物は、Bowden管プリンタで印刷するのが難しいことがあるが、そのような組成物は、直接駆動プリンタでより効果的に機能することがある。Bowdenプリンタにおいて、フィラメント駆動装置はプリンタの裏側に位置しており、フィラメントは、プリントヘッドまで長い管に押し通される。駆動装置がプリントヘッドから離れて配置されているプリンタにおいて、フィラメントを引っ張り、曲げる、摩擦面がより大きく、印刷過程を失敗させる傾向にある。この問題は、実施例7から15により例示されるように、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)をさらに含ませることによって、低下するか、またはなくなる。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
積層造形用組成物において、
スチレン熱可塑性エラストマーであって、ビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび共役ジエン単量体の少なくとも1つのブロックから作られたブロック共重合体と、その中に分散された、0.05m
2
/gから120m
2
/gの表面積を有する固体微粒子充填剤とから作られたスチレン熱可塑性エラストマー、
を含む積層造形用組成物。
実施形態2
前記共役ジエン単量体が、式:
R
2
C=CR-CR=CR
2
のものであり、式中、各Rは、各存在毎に独立して、水素または1から4の炭素のアルキルであり、任意の2つのR基が環を形成することがあり、前記ビニル芳香族単量体は、多くとも20の炭素を有し、該ビニル芳香族単量体は、式:
Ar-C(R
1
)-C(R
1
)
2
のものであり、式中、各R
1
は、各存在毎に独立して、水素またはアルキルであり、もしくは別のR
1
と環を形成し、Arは、フェニル、ハロフェニル、アルキルフェニル、アルキルハロフェニル、ナフチル、ピリジニル、またはアントラセニルであり、任意のアルキル基は、必要に応じて、官能基で一または多置換されることがある1から6の炭素原子を含有する、実施形態1に記載の組成物。
実施形態3
前記共役ジエン単量体のブロックが、残っている炭素-炭素二重結合の少なくとも一部をなくすために水素化されている、実施形態1または2に記載の組成物。
実施形態4
前記ブロック共重合体が、A-B-AまたはA-B-A-B-Aのいずれかの形態を有し、Aはビニル芳香族重合体ブロックであり、Bは共役ジエンブロックである、実施形態1から3いずれか1つに記載の組成物。
実施形態5
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)熱可塑性エラストマーである、実施形態1から4いずれか1つに記載の組成物。
実施形態6
前記充填剤が、D50が約0.5マイクロメートルから約5マイクロメートルであり、D90が約20マイクロメートルから約40マイクロメートルであり、D10が約0.1マイクロメートルから約2マイクロメートルである粒径を有する、実施形態1から5いずれか1つに記載の組成物。
実施形態7
前記充填剤が、約5から約25のアスペクト比を有する針状充填剤からなる、実施形態1から6いずれか1つに記載の組成物。
実施形態8
前記充填剤が、粘土、珪灰石、黒鉛炭素、窒化ホウ素、炭化ケイ素またはタルクである、実施形態1から7いずれか1つに記載の組成物。
実施形態9
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、
約60~80のショアA硬度値、
約5~6MPaの引張強度-垂直、
約3.5~4.5MPaの引張強度@100%-垂直、
約400~500%の破断点伸び-垂直、
約34~42kN/mの引裂強度-垂直、および
約0.8~1.0の比重(相対密度)、
を有する、実施形態1から8いずれか1つに記載の組成物。
実施形態10
前記組成物がフィラメントである、実施形態1から9いずれか1つに記載の組成物。
実施形態1
前記フィラメントが、約1マイクロメートルから約3マイクロメートルの直径を有する、実施形態10に記載の組成物。
実施形態12
ポリオレフィンをさらに含む、実施形態1から11いずれか1つに記載の組成物。
実施形態13
前記ポリオレフィンが、プロピレンの単独重合体またはプロピレンとエチレンの共重合体である、実施形態12に記載の組成物。
実施形態14
前記ポリオレフィンが、230℃/2.16kgで、1から50g/10分のメルトフローレートを有する、実施形態12または13に記載の組成物。
実施形態15
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、210℃/2.16kgで、50から150g/10分のメルトフローレートを有する、実施形態12から14いずれか1つに記載の組成物。
実施形態16
210℃/2.16kgでの前記スチレン熱可塑性エラストマーのメルトフローレートおよび230℃/2.16kgでの前記ポリオレフィンのメルトフローレートが、10から3の比を有する、実施形態15に記載の組成物。
実施形態17
互いに融合された、実施形態1から16いずれか1つに記載の組成物の少なくとも2つの層を備えた積層造形物品。
実施形態18
溶融フィラメント製造により形成された、実施形態17に記載の積層造形物品。
実施形態19
物体を印刷する方法であって、
実施形態1から16いずれか1項記載の組成物をフィラメントに形成する工程、
前記フィラメントを延伸し、加熱し、プリントヘッドに通して押し出して、押出物を形成する工程、および
多数の層が制御可能に堆積され、融合されて、積層造形物品を形成するように前記押出物を土台上に堆積させる工程、
を有してなる方法。
実施形態20
前記押出する工程が、Bowden管を有するBowden押出機による、実施形態19に記載の方法。
実施形態21
前記フィラメントが、約0.5マイクロメートルから約3マイクロメートルの直径を有する、実施形態19に記載の方法。
実施形態22
互いに融合または接着した複数の層を備えた積層造形物品を含む物品であって、少なくとも2つの層が、ビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび共役ジエン単量体の少なくとも1つのブロックから作られたブロック共重合体と、その中に分散された、0.05m
2
/gから120m
2
/gの表面積を有する固体微粒子充填剤とから作られたスチレン熱可塑性エラストマーから作られている、物品。
実施形態23
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、前記共役ジエン単量体ブロック中に残っている二重結合の少なくとも一部を除去するために水素化されている、実施形態22に記載の物品。
実施形態24
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)熱可塑性エラストマーである、実施形態23に記載の物品。
実施形態25
前記層が、ポリプロピレンの単独重合体またはエチレンとプロピレンの共重合体であるポリオレフィンからさらに作られている、実施形態22から24いずれか1つに記載の物品。
実施形態26
前記スチレン熱可塑性エラストマーのメルトフローレート対前記ポリオレフィンのメルトフローレートの比が10から3の比を有するように、該スチレン熱可塑性エラストマーが210℃/2.16kgでのメルトフローレートを有し、該ポリオレフィンが230℃/2.16kgでのメルトフローレートを有する、実施形態25に記載の物品。
実施形態27
前記層が、約10~80質量%の前記スチレン熱可塑性エラストマー、約10~70質量%の前記ポリオレフィン、および約10~30質量%の前記充填剤からなる、実施形態26に記載の物品。
実施形態28
前記物品が溶融フィラメント製造により形成される、実施形態22から27いずれか1つに記載の物品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形されたエラストマー物品を製造するための積層造形用組成物において、
熱可塑性エラストマーであって、ビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび共役ジエン単量体の少なくとも1つのブロックから作られたブロック共重合体と、その中に分散された、0.05m
2/gから120m
2/gの表面積を有
し、5から25のアスペクト比を有して針状である固体微粒子充填剤とから作られたスチレン熱可塑性エラストマー
からなる熱可塑性エラストマー、
を含む積層造形用組成物。
【請求項2】
前記共役ジエン単量体が、式:
R
2C=CR-CR=CR
2
のものであり、式中、各Rは、各存在毎に独立して、水素または1から4の炭素のアルキルであり、任意の2つのR基が環を形成することがあり、前記ビニル芳香族単量体は、多くとも20の炭素を有し、該ビニル芳香族単量体は、式:
Ar-C(R
1)-C(R
1)
2
のものであり、式中、各R
1は、各存在毎に独立して、水素またはアルキルであり、もしくは別のR
1と環を形成し、Arは、フェニル、ハロフェニル、アルキルフェニル、アルキルハロフェニル、ナフチル、ピリジニル、またはアントラセニルであり、任意のアルキル基は、必要に応じて、官能基で一または多置換されることがある1から6の炭素原子を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)熱可塑性エラストマーである、
請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記充填剤が、D50が約0.5マイクロメートルから約5マイクロメートルであり、D90が約20マイクロメートルから約40マイクロメートルであり、D10が約0.1マイクロメートルから約2マイクロメートルである粒径を有する、
請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記充填剤が、約5から約
20のアスペクト比を有する針状充填剤からなる、
請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記充填剤が、粘土、珪灰石、黒鉛炭素、窒化ホウ素、炭化ケイ素またはタルクである、
請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記スチレン熱可塑性エラストマーが、
約60~80のショアA硬度値、
約5~6MPaの引張強度-垂直、
約3.5~4.5MPaの引張強度@100%-垂直、
約400~500%の破断点伸び-垂直、
約34~42kN/mの引裂強度-垂直、および
約0.8~1.0の比重(相対密度)、
を有する、
請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記充填剤が前記組成物の10質量%から30質量%の量で存在し、残りが前記スチレン熱可塑性エラストマーである、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
ポリオレフィンをさらに含む、
請求項5記載の組成物。
【請求項10】
物体を印刷する方法であって、
請求項1から9いずれか1項記載の組成物をフィラメントに形成する工程、
前記フィラメントを延伸し、加熱し、プリントヘッドに通して押し出して、押出物を形成する工程、および
多数の層が制御可能に堆積され、融合されて、積層造形物品を形成するように前記押出物を土台上に堆積させる工程、
を有してなる方法。
【請求項11】
前記押出する工程が、Bowden管を有するBowden押出機による、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
互いに融合または接着した複数の層を備えた積層造形
されたエラストマー物品を含む物品であって、少なくとも2つの層が、ビニル芳香族単量体の少なくとも2つのブロックおよび共役ジエン単量体の少なくとも1つのブロックから作られたブロック共重合体と、その中に分散された、0.05m
2/gから120m
2/gの表面積を有
し、5から25のアスペクト比を有して針状である固体微粒子充填剤とから作られたスチレン熱可塑性エラストマー
からなる熱可塑性エラストマーを含む積層造形用組成物から作られている、物品。
【請求項13】
前記層が、ポリプロピレンの単独重合体またはエチレンとプロピレンの共重合体であるポリオレフィンからさらに作られている、
請求項12記載の物品。
【請求項14】
前記スチレン熱可塑性エラストマーのメルトフローレート対前記ポリオレフィンのメルトフローレートの比が10から3の比を有するように、該スチレン熱可塑性エラストマーが210℃/2.16kgでのメルトフローレートを有し、該ポリオレフィンが230℃/2.16kgでのメルトフローレートを有する、
請求項13記載の物品。
【請求項15】
前記層が、約10~80質量%の前記スチレン熱可塑性エラストマー、約10~70質量%の前記ポリオレフィン、および約10~30質量%の前記充填剤からなる、
請求項13または14記載の物品。
【国際調査報告】