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特表2023-500455難燃性抗菌剤、その調製方法およびその使用、ならびに難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(54)【発明の名称】難燃性抗菌剤、その調製方法およびその使用、ならびに難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 267/04 20060101AFI20221226BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221226BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20221226BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20221226BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20221226BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C08F267/04
C08L101/00
C08L51/00
C08K5/51
C08K5/36
C09K21/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524696
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 CN2020124805
(87)【国際公開番号】W WO2021083272
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201911042238.X
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王宇韜
(72)【発明者】
【氏名】初立秋
(72)【発明者】
【氏名】李杰
(72)【発明者】
【氏名】張師軍
(72)【発明者】
【氏名】高達利
(72)【発明者】
【氏名】尹華
(72)【発明者】
【氏名】郭鵬
(72)【発明者】
【氏名】邵静波
(72)【発明者】
【氏名】李長金
(72)【発明者】
【氏名】胡晨曦
(72)【発明者】
【氏名】白奕青
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4H028AA44
4J002BC031
4J002BC061
4J002BD041
4J002BG061
4J002BN032
4J002BN151
4J002CB001
4J002CF061
4J002CF071
4J002CG001
4J002CH071
4J002CL011
4J002CL031
4J002CN011
4J002EJ028
4J002EJ057
4J002EU047
4J002EU186
4J002EV177
4J002EV307
4J002EW136
4J002FD132
4J002FD136
4J002FD138
4J002FD202
4J002FD207
4J002GK00
4J002GL00
4J002GQ00
4J026AA11
4J026AA14
4J026AA18
4J026AA45
4J026AA54
4J026BA39
4J026BB03
4J026DA02
4J026DA08
4J026DA12
4J026DB03
4J026DB08
4J026FA03
(57)【要約】
難燃性抗菌剤、その調製方法およびその使用、ならびに難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物を開示する。難燃性抗菌剤はグアニジン塩をグラフトした表面を有するポリマーミクロスフェアであり、当該ポリマーミクロスフェアは、無水マレイン酸に由来する構造単位A、単量体Mに由来する構造単位B、および架橋剤に由来する構造単位Cから構成される架橋構造を含む。単量体MはC-C脂肪族オレフィンまたはその混合物から選択され、グアニジン塩は難燃性を有する少なくとも1種のグアニジン塩を含む。前記難燃性抗菌剤は良好な抗菌効果および良好な難燃効果の両方を有し、有効な単成分多機能補助剤であり、非常に良好な難燃性および抗菌性の効率を有し、また良好な分散、良好な流動性、および低い吸湿性を有する。前記難燃性抗菌剤を含む難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物はまた、良好な難燃および抗菌性能ならびに良好な全体的性能を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面にグアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアである、難燃性抗菌剤であって、
前記ポリマーミクロスフェアは、無水マレイン酸に由来する構造単位Aと、単量体Mに由来する構造単位Bと、架橋剤に由来する構造単位Cとによって構成される架橋構造を含み、前記単量体Mは、C-C脂肪族オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記グアニジン塩は、少なくとも1種の難燃性グアニジン塩を含む、難燃性抗菌剤。
【請求項2】
前記グアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアが200~2000nmの範囲の平均粒子径を有し、好ましくは、前記ポリマーミクロスフェアが単分散ポリマーミクロスフェアであることを特徴とする、請求項1に記載の難燃性抗菌剤。
【請求項3】
グラフト基材としての前記ポリマーミクロスフェアが、無水マレイン酸と、単量体Mと、架橋剤とから形成される架橋交互共重合体構造を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の難燃性抗菌剤。
【請求項4】
前記グアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアはシェル架橋構造を有し、かつ/または、
前記グアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアの架橋度が、溶媒抽出法で測定して、≧50%、好ましくは≧92%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤。
【請求項5】
構造単位Aと構造単位Bとのモル比が(0.5:1)~(1:0.5)、好ましくは(0.75:1)~(1:0.75)の範囲であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の難燃性抗菌剤。
【請求項6】
単量体Mが、Cおよび/またはC脂肪族モノオレフィンもしくはジオレフィン、もしくはそれらの異性体の混合物、またはモノオレフィンおよびジオレフィンの混合物、好ましくはCおよび/またはC留分、より好ましくはエチレンクラッキングプロセスから得られるCおよび/またはC留分であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤。
【請求項7】
前記架橋剤はフリーラジカル重合が可能な二官能性または多官能性のビニル含有単量体から選択され、好ましくは、前記架橋剤はジビニルベンゼンおよび少なくとも2つのアクリレート系基を含むアクリレート系架橋剤からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記アクリレート系基は、好ましくは構造式-O-C(O)-C(R’)=CHを有し、式中R’はHまたはC-Cアルキル基であり、より好ましくは前記架橋剤がジビニルベンゼン、プロピレングリコール系ビス(メタ)アクリレート、エチレングリコール系ビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールビス(メタ)アクリレート、フタレートエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびエトキシ化多官能性アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤。
【請求項8】
前記グアニジン塩が小分子グアニジン塩およびグアニジン塩ポリマーからなる群から選択される1種以上であり、好ましくは前記グアニジン塩が少なくとも1種の小分子グアニジン塩および少なくとも1種のグアニジン塩ポリマーを含み;より好ましくは前記小分子グアニジン塩および前記グアニジン塩ポリマーの両方が難燃性グアニジン塩であり;
ここで、好ましくは、前記小分子グアニジン塩は、リン酸グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、臭化水素酸グアニジン、シュウ酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、およびアミノグアニジン塩、例えば、モノアミノグアニジン、ジアミノグアニジンおよびトリアミノグアニジンの無機酸塩および有機酸塩、例えば、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であり;より好ましくは、リン酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、ならびにモノアミノグアニジン、ジアミノグアニジンおよびトリアミノグアニジンの硝酸塩、リン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であり;
前記グアニジン塩ポリマーは、好ましくはポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンの無機酸塩および有機酸塩、例えばポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン酢酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンシュウ酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンステアリン酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンラウリン酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン安息香酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンスルホン酸塩、およびポリオキシエチレングアニジン塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤。
【請求項9】
前記難燃性グアニジン塩が難燃性元素を含み、好ましくはリン原子、ハロゲン原子および/またはグアニジン基の窒素原子以外の窒素原子を含み、好ましくは、前記難燃性グアニジン塩は、リン酸グアニジン、塩酸グアニジン、臭化水素酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、アミノグアニジンのリン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、スルホン酸塩、および上記グアニジン塩ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種であり;より好ましくはリン酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、アミノグアニジンのリン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン塩酸塩およびポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤。
【請求項10】
前記難燃性グアニジン塩が、グアニジン塩の総重量の30~100重量%;好ましくは50~100重量%;より好ましくは80~100重量%を構成することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤の調製方法であって、
無水マレイン酸、単量体Mおよび架橋剤を開始剤の存在下で架橋共重合反応させてポリマーミクロスフェアを調製すること、および、
前記ポリマーミクロスフェアをグアニジン塩と接触させてグアニジン塩をポリマーミクロスフェア上にグラフトすることにより、前記難燃性抗菌剤を得ることを含む、方法。
【請求項12】
グラフト基材としての前記ポリマーミクロスフェアが、自己安定化沈殿重合法によって調製されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、以下の工程を含むことを特徴とする、請求項11または12に記載の方法:
(1)有機溶媒中で、かつ開始剤の第1の部分の存在下で、無水マレイン酸と単量体Mの第1の部分とを接触させて部分反応を行い、次いで、架橋剤を含む供給物を導入して後続の反応を行い、その間、反応系は無水マレイン酸、単量体Mおよび架橋剤を含み;前記架橋剤を含む供給物は架橋剤、任意に単量体Mの第2の部分、および任意に開始剤の第2の部分、ならびに任意に溶媒を含む工程;
(2)工程(1)で得られた生成物にグアニジン塩を添加して反応を継続することにより、工程(1)で得られた生成物の表面にグアニジン塩がグラフトされる工程。
【請求項14】
前記有機溶媒が有機酸アルキルエステル、または有機酸アルキルエステルとアルカンもしくは芳香族炭化水素との混合物から選択され;前記有機酸アルキルエステルが好ましくはギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸イソアミル、イソ吉草酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、フェニル酢酸メチル、およびフェニル酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(1)において、無水マレイン酸100モルに対して、前記単量体Mの第1の部分と前記単量体Mの第2の部分との末端オレフィン換算の総量は50~150モルであり;好ましくは前記単量体Mの第2の部分と前記単量体Mの第1の部分とのモル比が(0~100):100であり;かつ/または、
無水マレイン酸100モルに対して、前記架橋剤の量は1~40モルであり;かつ/または、
無水マレイン酸100モルに対して、前記開始剤の第1の部分および前記開始剤の第2の部分の総量は0.05~10モルであり;好ましくは前記開始剤の第2の部分と前記開始剤の第1の部分とのモル比が(0~100):100であることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記開始剤が、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ドデカノイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾアート、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソヘプタンニトリルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(1)において、無水マレイン酸を単量体Mの第1の部分と接触させることによる反応は、不活性雰囲気下、50~90℃の温度および0.3~1MPaの圧力で行われる;かつ/または、
前記工程(1)において、架橋剤を含む供給物を導入することによる後続の反応は、50~90℃の温度および0.3~1MPaの圧力で行われることを特徴とする、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
工程(2)において、前記反応が0~100℃、好ましくは2.5~90℃の温度で行われる;かつ/または、
工程(2)において、無水マレイン酸1000gに対して、前記グアニジン塩が5g~5000g、好ましくは20g~3000g、より好ましくは100g~2000gの量で使用され;好ましくは前記グアニジン塩が溶液、好ましくは水溶液の形態で添加される;かつ/または、
工程(2)において、工程(1)で得られた生成物が懸濁液の形態で直接または乾燥後にグアニジン塩の溶液と反応することを特徴とする、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
難燃性抗菌樹脂組成物および物品(特に繊維、膜および布、例えば不織布)、例えば難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物および物品、特に学校用品、病院用品、ホテル用品、スマート家電用品および新エネルギー車用品における添加剤としての、請求項1~10のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤または請求項11~18のいずれか1項に記載の方法により調製された難燃性抗菌剤の使用。
【請求項20】
マトリクスとしての熱可塑性樹脂と、請求項1~10のいずれか1項に記載の難燃性抗菌剤または請求項11~18のいずれか1項に記載の方法により調製された難燃性抗菌剤とを含み、好ましくは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、前記難燃性抗菌剤が0.05~4.0重量部、好ましくは0.1~2.8重量部の量で用いられる、難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物。
【請求項21】
前記組成物が次亜リン酸アルミニウム系難燃剤および/またはハロゲン含有難燃剤をさらに含み、前記次亜リン酸アルミニウム系難燃剤が好ましくは無機次亜リン酸アルミニウムおよびアルミニウムアルキルホスフィナート(例えば、アルミニウムジエチルホスフィナート、アルミニウムジプロピルホスフィナート、およびアルミニウムフェニルホスフィナートのうちの少なくとも1種)ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され;好ましくは無機次亜リン酸アルミニウムおよびアルミニウムジエチルホスフィナートならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され;好ましくは熱可塑性樹脂100重量部に対して、次亜リン酸アルミニウム系難燃剤の量が0~2.0重量部、好ましくは0.1~1.2重量部であり;ハロゲン含有難燃剤が好ましくはメラミンハロゲン化水素酸塩、より好ましくはメラミン臭化水素酸塩であり;好ましくは熱可塑性樹脂100重量部に対して、ハロゲン含有難燃剤の量は0~2.0重量部、好ましくは0.1~1.2重量部であることを特徴とする、請求項20に記載の難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物。
【請求項22】
前記組成物は難燃性相乗剤および/または防カビ剤をさらに含み、前記難燃性相乗剤は好ましくは2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、パラクメンポリマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され;好ましくは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、前記難燃性相乗剤の量が0~1.0重量部、好ましくは0.05~1重量部であり;前記防カビ剤が好ましくは以下からなる群から選択される少なくとも1種であり:ピリチオン、例えば、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオンおよびビスピリチオンからなる群から選択される少なくとも1種;イソチアゾリノン、例えば、2-メチル-1-イソチアゾリン-3-オン(MIT)、5-クロロ-2-メチル-1-イソチアゾリン-3-オン(CMIT)、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-3-イソチアゾリノン(DCOIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、4-メチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(MBIT)、および4-n-ブチル-1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン(BBIT)からなる群から選択される少なくとも1種;10,10’-オキシビスフェノキサルシン(OBPA);3-ヨード-2-プロピニル-ブチル-カルバマート(IPBC);2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル;および2-(チアゾール-4-イル)ベンゾイミダゾール;好ましくは熱可塑性樹脂100重量部に対して、防カビ剤が0~5.0重量部、好ましくは0.05~4.0重量部の量で使用されることを特徴とする、請求項20または21に記載の難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物。
【請求項23】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン(例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、ならびにそれらの共重合体のうちの少なくとも1種)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ならびに前記熱可塑性樹脂のうちの1種以上によって形成されるポリマー合金またはポリマー混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項20~22のいずれか1項に記載の難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物。
【請求項24】
前記組成物が、酸化防止剤、光安定剤、強化剤、相溶化剤、顔料、および分散剤からなる群から選択される少なくとも1種の機能性添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項20~23のいずれか1項に記載の難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物。
【請求項25】
請求項20~24のいずれか1項に記載の難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物から調製され、特に繊維、膜および布の形態、例えば、不織布であり、特に学校、病院、ホテル、スマート家電および新エネルギー車のために用いられる、物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明はポリマー加工および添加剤の分野に関し、さらに難燃性抗菌剤、その調製方法およびその使用、ならびに難燃性抗菌剤を含む難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物および物品に関する。
【0002】
〔背景技術〕
近年、知的・電気革命の台頭等の科学技術の発展に伴い、人々の質の高い健康な生活の追求も向上し続けている。また、スマート家電(電動トイレ、スマート冷蔵庫、エアコン、洗濯機等)および新エネルギー車も徐々に人々の生活に入り込み、ますます重要な役割を果たしている。このような技術製品は安全および健康に対する要件および基準が高まっており、中でも火災安全性および衛生面が人々の関心の最優先事項となっており、広く研究および報告されている。このような製品には、使用する材料の難燃性(UL-94垂直燃焼試験、グローワイヤ燃焼性試験)および衛生面の両方に一定の要件がある。
【0003】
現在、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂は、最も広く使用され、最も成長の速い種類の汎用プラスチックの1つである。熱可塑性樹脂は、高剛性、高強度、良好な耐熱性、容易な加工性などの優れた特性を有し、上記の新興製品に広く使用されているマトリクス材料の1つである。しかし、PP自体は可燃性があり、燃焼中に大量の溶融液滴を発生し、炎が急速に広がるため火災安全性に劣る。さらに、PPはまた、材料の衛生面を改善するために抗菌的に改変される必要がある。PPの難燃性改質には、主に固有の難燃性改質法と添加剤改質法との2種類が挙げられる。中でも、PPに高効率難燃性を加える添加改質法は操作が簡単で、コストが制御でき、促進が容易で、工業化が容易であるなどの利点があるため、広く用いられている。PPに使用される難燃剤としては、主にハロゲン系難燃剤、無機難燃剤、膨張性難燃剤(IFR)等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤はPPに対して比較的高い難燃効率を有するが、その使用における深刻な安全面および環境面の危険性のために、大量のハロゲン系難燃剤を別々に添加するような使用はますます制限されている。水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機難燃剤は環境に無害であるが、難燃効率が低く、ある程度の難燃効果を得るためには、より多くの添加量が必要である。加えて、それらはPP中での分散性に劣り、マトリクスの機械的性質に大きな影響を有し、従ってそれらは別個の使用にも適していない。IFR難燃剤は、難燃効率が高く、煙が少なく、毒性が低いという利点を有する。少量のハロゲン系およびリン系および窒素系難燃剤の複合は相乗的に改善された難燃効率をもたらし、難燃剤の低ハロゲン化または非ハロゲン化を達成するための有効なルートの1つとして広く認識されている。難燃剤は一般に、マトリクスへの添加量が多く、分散性に劣るなどの問題があるため、難燃効率の改善のために難燃性相乗剤が導入され、これにより多量の難燃剤の添加による材料の加工性および機械的性質への影響もある程度低減される。
【0004】
抗菌性プラスチックの調製は主に、マトリクス樹脂、抗菌剤および加工助剤を一定の割合で均質に混合し;次いでそれらを直接的に溶融ブレンドして抗菌機能を有する改質樹脂を調製し;最後に、種々のプラスチック成形加工方法(例えば、押し出し、射出成形、キャスティング、ブロー成形、ブリスター成形など)によって種々の抗菌性物品が製造される工程を含む。現在、市販されている抗菌剤としては、主に無機抗菌剤および有機抗菌剤の2種類が挙げられる。中でも、無機抗菌剤は主に、抗菌性金属イオン(例えば銀イオン、亜鉛イオン、銅イオン等の1種以上)を担持する無機物であり、ゼオライト(天然または合成ゼオライト)、リン酸ジルコニウム、可溶性ガラス、リン酸カルシウム、シリカゲル等をはじめ、担持に用いることができる多種の担体がある。有機抗菌剤は、それらの構造に従って分類され、グアニジン塩、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、イミダゾール、ピリジン、有機金属等が挙げられる。無機抗菌剤は、安全性が高く、耐熱性に優れ、長期にわたる滅菌が可能であるという特性を有している。しかしながら、それらの滅菌は即時ではなく、貴金属の使用はそれらの高い価格につながる。有機抗菌剤は、迅速な滅菌速度、良好な抗菌効果および防カビ効果、ならびに広い適用範囲の利点を有するが、薬物耐性が発生しやすく、耐熱性に劣る等の問題もある。
【0005】
現在、研究者は、主に難燃剤と抗菌剤とを別々に添加することにより、材料の難燃性および抗菌性の改善を達成している(例えば中国特許出願公開番号CN107151430A、CN106149091A、およびCN106835328Aを参照されたい)。マトリクス中の難燃剤および抗菌剤の両方の不十分な分散性のために、それら2つを別々に添加することは、材料の全体的な性能に一定の影響を及ぼし得る。特に、ポリマー材料の多機能を実現するためには、多成分の添加剤を別々に大量に添加することがしばしば必要であるが、様々な添加剤が互いに影響を及ぼし、それによって材料の総合的な性能に影響を及ぼし得ることが指摘されるべきである。例えば市販の抗菌剤(Ag系、Zn系)を導入すると、材料の難燃性が低下するであろう。
【0006】
それゆえ、高分子材料の多機能化を効果的に実現するためには、より効率の高い単成分多機能添加剤を開発する必要がある。
【0007】
〔発明の開示〕
先行技術に存在する上記の問題に鑑みて、本発明の1つの目的は、良好な抗菌効果と良好な難燃効果とを併せ持つことができ、材料の多機能化を効果的に実現するための単成分多機能添加剤として使用することができる難燃性抗菌剤を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、容易に実施することができ、特に容易に入手可能な原料を使用することができる難燃性抗菌剤の調製方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の別の目的は、良好な抗菌効果と良好な難燃性との両方を有し、学校、病院、ホテルなどの混雑した場所、ならびにスマート家電および新エネルギー車などの新興分野で使用するための樹脂組成物および物品の製造に特に適している上記難燃性抗菌剤を含む難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
予想外にも、無水マレイン酸、C-C脂肪族オレフィンまたはこれらの混合物と架橋剤との架橋共重合により形成された架橋ポリマーミクロスフェアの表面に、少なくとも1種の難燃性グアニジン塩を含むグアニジン塩をグラフトすることによって、良好な難燃効果と抗菌効果とを同時に有する単成分多機能添加剤が得られることが見出された。このようなグアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアは、ポリマーマトリクス中で良好な分散性および相溶性を有し、ポリマーマトリクスに良好な難燃効果および抗菌効果を効果的に付与することができ、それによって上記目的を達成することができる。
【0011】
したがって、第1の態様において、本発明は、その表面にグアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアである難燃性抗菌剤であって、
前記ポリマーミクロスフェアは、無水マレイン酸に由来する構造単位Aと、単量体Mに由来する構造単位Bと、架橋剤に由来する構造単位Cとによって構成される架橋構造を含み、前記単量体MはC-C脂肪族オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記グアニジン塩は、少なくとも1種の難燃性グアニジン塩を含む難燃性抗菌剤を提供する。
【0012】
本明細書で使用される用語「ポリマーミクロスフェア」は、ナノスケールからマイクロスケールまでの範囲の直径を有し、球形または回転楕円形を有するポリマー粒子を指す。
【0013】
前記グアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアは、好ましくは200~2000nmの範囲、例えば200nm、250nm、350nm、450nm、550nm、650nm、750nm、850nm、950nm、1050nm、1150nm、1250nm、1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、1850nm、2000nmまたは上記の数値の間の任意の値の平均粒子径を有する。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で測定した数平均粒子径によって特徴付けられる。
【0014】
前記ポリマーミクロスフェアは好ましくは単分散であり、すなわち、均一な粒子径のポリマーミクロスフェアである。粒子径の分散係数は、1.05~1.0001であり得る。狭い粒度分布を有するこのようなポリマーミクロスフェアは、有利にマトリクス樹脂中の本発明の難燃性抗菌剤の均一な分散を促進し、それによって樹脂マトリクスおよび最終生成物中のグラフトされたグアニジン塩の均一な分布を容易にし、したがって、より良好な難燃効果および抗菌効果を提供することができる。
【0015】
好ましくは、グラフト基材としての前記ポリマーミクロスフェアが、無水マレイン酸と、単量体Mと、架橋剤とから形成される架橋交互共重合体構造を含む。このようなミクロスフェアの使用はグアニジン塩のグラフト効率を有利に改善し、樹脂マトリクスおよび最終生成物中のグラフトされたグアニジン塩の均一な分布を容易にすることができる;無水マレイン酸単量体単位の増加した含有量および均一な分布はまた、樹脂マトリクスおよび最終生成物中の難燃性抗菌剤ミクロスフェアの均一な分布および分散に有益であり、または追加の相溶化剤さえ使用しなくてもよい。
【0016】
ここで、無水マレイン酸の重合後に形成される構造単位を構造単位Aと称し、単量体Mの重合後に形成される構造単位を構造単位Bと称し、架橋剤(または架橋性単量体)の重合後に形成される構造単位を構造単位Cと称する。
【0017】
ここで、前記単量体Mは、C-C脂肪族オレフィンおよびそれらの混合物、好ましくはCおよび/またはC脂肪族モノオレフィンもしくはジオレフィン、またはそれらの異性体の混合物、またはモノオレフィンとジオレフィンとの混合物、例えば、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、n-ブテン、イソブテンもしくはそれらの混合物、またはイソプレン、シクロペンタジエン、1,4-ペンタジエン、ピペリレン、1-ペンテン、2-ペンテン、シクロペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテンまたはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
前記単量体Mとしては、油精製またはエチレン産業からのCおよび/またはC留分、好ましくは石油化学産業におけるエチレンクラッキングからのCおよび/またはC留分を使用することができる。エチレンクラッキングからのC留分は、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、n-ブタン、n-ブテン、イソブテンおよび他の物質を含み得る。エチレンクラッキングからのC留分は、ジオレフィン(イソプレン、シクロペンタジエン、1,4-ペンタジエン、ピペリレン)、モノオレフィン(1-ペンテン、2-ペンテン、シクロペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン)、アルカン(n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、2-メチルブタン)、アルキン(ブタ-2-イン、3-ペンテン-1-イン)および他の物質を含み得る。エチレンクラッキング生成物として、CおよびC留分は容易に入手可能であり、ポリマーミクロスフェアを調製するためのこのように混合された単量体の使用は、CおよびC留分の付加価値を増大させ、本発明の方法のコストを低減するのに役立ち得る。
【0019】
本発明のポリマーミクロスフェアにおいて、構造単位Aと構造単位Bとのモル比は、(0.5:1)~(1:0.5)、好ましくは(0.75:1)~(1:0.75)の範囲であってもよい。
【0020】
前記グアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアの架橋度は≧50%、例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または上記の数値の間の任意の値、好ましくは≧70%、より好ましくは≧90%であり得る。ポリマーミクロスフェアの架橋度は、溶媒抽出法によって測定され、ゲル含有量によって特徴付けられる。ポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中での50℃で30分後のポリマーミクロスフェアからの溶出物質の重量パーセントは、好ましくは≦8重量%、例えば1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5.5重量%、6.5重量%、7.5重量%、8重量%または上記数値の間の任意の値であり、対応して、架橋度は好ましくは≧92%である。
【0021】
前記グアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェアは、好ましくはシェル架橋構造を有し、したがって、より良好な耐溶剤性および熱安定性を有する。
【0022】
架橋性単量体とも称することができる架橋剤としては、任意の適切な架橋性単量体、好ましくはフリーラジカル重合が可能な二官能性または多官能性ビニル含有単量体を使用することができる。より好ましくは、前記架橋剤はジビニルベンゼンおよび少なくとも2つのアクリレート様基を含有するアクリレート系架橋剤からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0023】
前記アクリレート様基は、好ましくは構造式:-O-C(O)-C(R’)=CHを有し、ここで、R’は、HまたはC-Cのアルキル基であり、より好ましくはアクリレート様基がアクリレート基および/またはメタクリレート基である。
【0024】
好ましくは、前記架橋剤がジビニルベンゼン、プロピレングリコール系ビス(メタ)アクリレート、エチレングリコール系ビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールビス(メタ)アクリレート、フタレートエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびエトキシ化多官能性アクリレートからなる群から選択される1種以上である。
【0025】
プロピレングリコール系ビス(メタ)アクリレートは、1,3-プロピレングリコールジメタクリレート、1,2-プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-プロピレングリコールジアクリレートおよび1,2-プロピレングリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上であり得る。エチレングリコール系ビス(メタ)アクリレートは、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびテトラエチレングリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0026】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」という表現は、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの混合物を含む。
【0027】
本発明におけるグアニジン塩は、小分子グアニジン塩およびグアニジン塩ポリマーからなる群から選択される1種以上であり得る。好ましくは、前記グアニジン塩が少なくとも1種の小分子グアニジン塩および少なくとも1種のグアニジン塩ポリマーを含み、より好ましくは小分子グアニジン塩およびグアニジン塩ポリマーの両方が難燃性グアニジン塩である。
【0028】
前記小分子グアニジン塩は、好ましくは以下の物質から選択される少なくとも1種である:リン酸グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、臭化水素酸グアニジン、シュウ酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、およびアミノグアニジン塩、例えば、モノアミノグアニジン、ジアミノグアニジンおよびトリアミノグアニジンの無機酸塩および有機酸塩、例えば、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩およびスルホン酸塩。より好ましくは、小分子グアニジン塩がリン酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、ならびにモノアミノグアニジン、ジアミノグアニジンおよびトリアミノグアニジンの硝酸塩、リン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上であり;さらに好ましくは、リン酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、臭化水素酸グアニジン、トリアミノグアニジン硝酸塩、モノアミノグアニジン硝酸塩、トリアミノグアニジンリン酸塩、トリアミノグアニジン塩酸塩、トリアミノグアニジン臭化水素酸塩およびトリアミノグアニジンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上である。
【0029】
前記グアニジン塩ポリマーは、好ましくは以下の物質から選択される少なくとも1種である:ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンの無機酸塩および有機酸塩、例えばポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン酢酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンシュウ酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンステアリン酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンラウリン酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン安息香酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンスルホン酸塩、およびポリオキシエチレングアニジン塩。より好ましくは、グアニジン塩ポリマーがポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンリン酸塩、ヘキサメチレン(ビ)グアニジンスルホン酸塩およびポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンシュウ酸塩からなる群から選択される1種以上である。
【0030】
本発明に係るポリマーミクロスフェア上にグラフトされたグアニジン塩は少なくとも1種の難燃性グアニジン塩を含み、それによって、抗菌性および難燃性の両方を有するポリマーミクロスフェアを実現する。前記難燃性グアニジン塩は難燃性元素を含み、好ましくは、リン原子、ハロゲン原子および/またはグアニジン基の窒素原子以外の窒素原子を含む。好ましくは、前記難燃性グアニジン塩がリン酸グアニジン、塩酸グアニジン、臭化水素酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、アミノグアニジンのリン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、スルホン酸塩、および上記グアニジン塩ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種であり;より好ましくはリン酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸二水素グアニジン、リン酸水素ジグアニジン、アミノグアニジンのリン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン塩酸塩およびポリヘキサメチレン(ビ)グアニジンリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である。アミノグアニジンは、モノアミノグアニジン、ジアミノグアニジンおよびトリアミノグアニジンからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0031】
本明細書における「ポリヘキサメチレン(ビ)グアニジン」という表現は、ポリヘキサメチレングアニジンおよび/またはポリヘキサメチレンビグアニドを指す。
【0032】
前記難燃性グアニジン塩は、グアニジン塩の総重量の30~100重量%;好ましくは50~100重量%;より好ましくは80~100重量%;例えば、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、100%(重量)を構成し得る。
【0033】
本発明の第2の態様において、本発明は、無水マレイン酸、単量体Mおよび架橋剤を開始剤の存在下で架橋共重合反応させてポリマーミクロスフェアを調製すること、および、前記ポリマーミクロスフェアをグアニジン塩と接触させてグアニジン塩をポリマーミクロスフェア上にグラフトすることにより、前記難燃性抗菌剤を得ることを含む、本発明に係る難燃性抗菌剤の調製方法を提供する。
【0034】
前記ポリマーミクロスフェアは、好ましくは自己安定化沈殿重合法によって調製される。自己安定化沈殿重合は、安定剤または分散剤および他の添加剤を添加することなく、単分散ポリマーミクロスフェアを調製するための反応方法である。ポリマーミクロスフェアは、1つの工程で製造することができる。得られたポリマーミクロスフェアは形態およびサイズが均一であり、規則的であり、構造が制御可能であり、粒子径が調節可能である。より低い毒性を有するエステル溶媒を使用することができる。得られたポリマー系は自己安定化特性を有する。前記ポリマーミクロスフェアを用いて得られる難燃性抗菌剤はマトリクス樹脂への分散性が良好であり、グラフトされたグアニジン塩のより良好かつ均一な分布を達成することができ、これにより、難燃性抗菌剤の難燃効果および抗菌効果の改善を容易にする。
【0035】
具体的には、本発明に係る難燃性抗菌剤の調製方法は以下の工程を含んでいてもよい:
(1)有機溶媒中で、かつ開始剤の第1の部分の存在下で、無水マレイン酸と単量体Mの第1の部分とを接触させて部分反応を行い、次いで、架橋剤を含む供給物、好ましくは架橋剤を含む溶液を導入して後続の反応を行い、その後続の反応の間、反応系は無水マレイン酸、単量体Mおよび架橋剤を含み;前記架橋剤を含む供給物は架橋剤、任意に単量体Mの第2の部分、および任意に開始剤の第2の部分、ならびに任意に溶媒を含む工程;
(2)工程(1)で得られた生成物にグアニジン塩、例えばグアニジン塩の溶液を添加して反応を継続することにより、工程(1)で得られた生成物の表面にグアニジン塩がグラフトされる工程。
【0036】
工程(1)において、単量体Mは1つの部分で供給され得るか(すなわち、単量体Mの第2の部分の量は0であり得る)、または2つの部分で供給され得る(すなわち、単量体Mの第2の部分の量は0より大きい)。単量体Mの第2の部分と単量体Mの第1の部分とのモル比は(0~100):100、例えば、0、1:100、5:100、15:100、25:100、30:100、45:100、50:100、60:100、70:100、80:100、90:100、100:100、または上記数値の間の任意の値であり得る。
【0037】
無水マレイン酸と単量体Mとの量の比は従来通り選択することができるが、好ましい実施形態において、無水マレイン酸100モルに対して、単量体Mの総量(単量体Mの第1の部分と単量体Mの第2部分との末端オレフィン換算の総量)を50~150モルとすることができ、75~100モルとすることがより好ましい。
【0038】
工程(1)において、有機溶媒は、溶液重合反応、特に自己安定化沈殿重合反応に一般的に使用されている溶媒とすることができ、好ましくは、有機酸アルキルエステル、または有機酸アルキルエステルとアルカンもしくは芳香族炭化水素との混合物から選択することができる。有機酸アルキルエステルとしては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸イソアミル、イソ吉草酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、フェニル酢酸メチルおよびフェニル酢酸エチルのうちの少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。アルカンとしてはn-ヘキサンおよび/またはn-ヘプタンが挙げられるが、これらに限定されない。芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエンおよびキシレンのうちの少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
有機溶媒の量は、工程(1)の反応のための適切な媒体を提供する限り、従来通り選択することができる。好ましくは、有機溶媒の量は、無水マレイン酸100モルに対して50~150Lであり得る。
【0040】
工程(1)において、開始剤は1つの部分で供給され得るか(すなわち、開始剤の第2の部分の量は0であり得る)、または2つの部分で供給され得る(すなわち、開始剤の第2の部分の量は、0よりも大きい)。開始剤の第2の部分と開始剤の第1の部分とのモル比は(0~100):100、例えば、0、1:100、5:100、15:100、25:100、30:100、45:100、50:100、60:100、70:100、80:100、90:100、100:100、または上記数値間の任意の値であり得る。
【0041】
本発明の方法において、開始剤の総量は特に限定されない。好ましくは100モルの無水マレイン酸に対して、開始剤の総量(開始剤の第1の部分および開始剤の第2の部分の総量)は0.05~10モル、好ましくは0.5~5モル、より好ましくは0.8~1.5モルであり得る。
【0042】
開始剤は、無水マレイン酸とオレフィンとの重合反応を開始させるために当該技術分野で一般的に使用されている試薬、例えば熱分解型開始剤であり得る。好ましくは、前記開始剤は、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ドデカノイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾアート、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソヘプタンニトリルからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0043】
本発明の方法に用いる架橋剤の量は、所望の架橋度を達成できる限り、特に限定されない。好ましくは、無水マレイン酸100モルに対して、架橋剤の使用量は1~40モル、好ましくは6~20モルであり得る。
【0044】
架橋剤の種類は上記の通りである。
【0045】
架橋剤の供給物は、架橋剤、任意に単量体Mの残りの第2の部分、および任意に開始剤の残りの第2の部分、および任意に溶媒、好ましくは溶媒を含む溶液の形態で含んでもよい。架橋剤含有溶液中の溶媒の種類および含有量は、その中の架橋剤、単量体、開始剤および他の物質が十分に溶解している限り、特に限定されない。典型的には、架橋剤含有溶液中の溶媒の種類を、重合反応に使用される有機溶媒と同じとすることができ、すなわち、例えば、上記のように有機酸アルキルエステルを含み得る。架橋剤含有溶液中の架橋剤の濃度は、0.2~3mol/Lであり得る。
【0046】
工程(1)では、無水マレイン酸を最初に単量体Mと接触させて部分反応を行う、すなわち、無水マレイン酸および単量体Mは、完全には反応せず、開始剤の存在下で重合反応に部分的にのみ関与し、その結果、未反応の無水マレイン酸および単量体Mは、続いて架橋剤と反応する。無水マレイン酸を単量体Mと接触させて反応を行う条件は、無水マレイン酸および単量体Mが重合反応に部分的にのみ関与するように制御される限り、従来の条件とすることができる。好ましくは、無水マレイン酸を単量体Mの第1の部分と接触させて反応を行う条件としては、不活性雰囲気(例えば、窒素);温度50~90℃(さらに好ましくは60~70℃);圧力(ゲージ圧または相対圧)0.3~1MPa(さらに好ましくは0.4~0.5MPa);および期間0.5~4時間(さらに好ましくは0.5~2時間)が挙げられる。
【0047】
工程(1)では、無水マレイン酸を単量体Mと接触させて部分反応を行った後、架橋剤を含む供給物(好ましくは溶液)を導入して後続の反応を行うが、これはシェル架橋構造の形成に特に有益である。後続の反応のための条件は、種々の反応体ができるだけ反応に関与することが可能である限り、従来の条件であり得る。好ましくは、後続の反応のための条件としては、50~90℃の温度;0.3~1MPaの圧力;および2~15時間の期間が挙げられる。後続の反応のための温度および圧力は、無水マレイン酸を単量体Mと接触させて反応を行う上記の温度および圧力と同じであっても異なっていてもよい。好ましい実施形態によれば、後続の反応のために架橋剤含有溶液を導入する様式は以下の通りであり得る:1~3時間以内に、50~90℃(さらに好ましくは60~70℃)で、工程(1)で得られた生成物に架橋剤含有溶液を滴下し、温度を維持しながらさらに1~4時間反応を継続する。
【0048】
工程(2)では、工程(1)で得られた生成物(懸濁液)に、グアニジン塩、好ましくはグアニジン塩の溶液、より好ましくは水溶液を添加した後、急速に撹拌して反応させる。使用されるグアニジン塩の量は従来通り選択することができ、好ましくは1000gの無水マレイン酸に対して、グアニジン塩の量は5g~5000g、好ましくは20g~3000g、より好ましくは100g~2000gであり得る。グアニジン塩の水溶液の濃度は0.5~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは1~20重量%であり得る。無水マレイン酸1000gに対して、グアニジン塩の水溶液の量は500~10000g、好ましくは1000~8000g、より好ましくは1000~6000gであり得る。
【0049】
工程(2)におけるグラフト反応は従来の条件下で行うことができ、例えば、グラフト反応の条件としては、0~100℃、好ましくは2.5~90℃、より好ましくは5~80℃、さらに好ましくは30~80℃の温度;0.5~10時間、好ましくは0.5~8時間、より好ましくは0.5~6時間の反応期間;50~1000rpm、好ましくは50~500rpm、より好ましくは100~500rpmの撹拌速度を挙げることができる。
【0050】
工程(2)では、工程(1)で得られた生成物(懸濁液)について、グラフト反応前に後処理(分離、洗浄、乾燥)を行うこともできる。乾燥後に得られた生成物は、反応のために、グアニジン塩の溶液、好ましくは水溶液に添加され得る。洗浄は従来の洗浄溶媒、例えば、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。グアニジン塩の水溶液の濃度は、0.5~50重量%、好ましくは1~30重量%であり得る。
【0051】
工程(2)で得られた最終生成物をさらに分離処理して、グアニジン塩をグラフトした難燃性抗菌ミクロスフェア製品を得ることができる。例えば、以下の様式で分離処理を行うことができる:遠心分離、水洗、有機溶剤洗浄(前述の洗浄溶剤を用いることができる、すなわち、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種)、遠心分離、および乾燥(例えば、減圧乾燥)。予想外にも、工程(2)において、工程(1)で得られた懸濁液は、有機溶剤を除去する工程を行うことなく、グアニジン塩の溶液(好ましくは水溶液)とのグラフト反応に直接的に関与させることができ、本発明のグアニジン塩難燃性抗菌ミクロスフェア製品、すなわち難燃性抗菌剤を効果的に調製することもできることが見出された。したがって、好ましい実施形態によれば、工程(2)において、工程(1)で得られた生成物(懸濁液)を、グアニジン塩の溶液と直接反応させることができ(ワンポット法)、このようにして、グアニジン塩難燃性抗菌ミクロスフェアを含む混合系を得ることができ;前記混合系をさらに分離処理した後に、グアニジン塩難燃性抗菌ミクロスフェア製品を得ることができる。例えば、分離処理は、以下の様式で行うことができる:静置して層状化し、ここで、有機相はリサイクルのために使用され、重い相は遠心分離、水洗-遠心分離、および乾燥(例えば、減圧乾燥)され、グアニジン塩難燃性抗菌ミクロスフェアが得られる。このワンポット法の製品後処理は、1回の液液分離、固液分離、洗浄および乾燥のみを必要とし、単一バッチの時間消費を効果的に短縮し、プロセスフローを単純化し、ユニット設備を削減し、エネルギー消費を効果的に削減することができる。当該方法は、反応媒体として1種の有機溶媒のみを必要とし;層状化および乾燥操作のみによって溶媒をリサイクルすることができ;特殊な水分離装置を用いずに反応器内で層状化を達成することができ;蒸留精製せずに溶媒をリサイクルすることができ、これにより、エネルギーを節約するとともに消費を削減し、有機溶媒の使用による環境汚染を効果的に低減することができる。
【0052】
第3の態様において、本発明は、難燃性抗菌樹脂組成物および物品(特に、繊維、膜および布、例えば不織布)、例えば、難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物および物品、特に学校、病院、ホテル、スマート家電、新エネルギー車などのための物品における添加剤としての、本発明に係る難燃性抗菌剤の使用を提供する。
【0053】
第4の態様において、本発明は、マトリクスとしての熱可塑性樹脂と、本発明に記載の難燃性抗菌剤とを含む難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物を提供する。熱可塑性樹脂100重量部に対して、難燃性抗菌剤は、0.05~4.0重量部、好ましくは0.1~2.8重量部、より好ましくは0.5~2重量部の量で使用され得る。
【0054】
マトリクスとしての熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィドからなる群から選択される少なくとも1種および/または熱可塑性樹脂の合金および混合物からなる群から選択される少なくとも1種、好ましくはポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリプロピレンおよびそれらの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0055】
難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、次亜リン酸アルミニウム系難燃剤および/またはハロゲン含有難燃剤をさらに含む。このように、本発明の難燃性抗菌ミクロスフェアと次亜リン酸アルミニウム系難燃剤および/またはハロゲン含有難燃剤との間には、ハイブリッドカーボン層構造の構築を通して相乗効果を生じさせることができ、その結果、組成物の難燃性抗菌特性は、同じ添加量の本発明の難燃性抗菌ミクロスフェア、次亜リン酸アルミニウム系難燃剤またはハロゲン含有難燃剤を別々に添加した組成物の特性よりも著しく良好である。より好ましくは、樹脂組成物が次亜リン酸アルミニウム系難燃剤とハロゲン含有難燃剤とを同時に含む。相乗効果に起因して、難燃剤の総添加量を、同じ難燃効果を達成する状況下で有意に低減することができる。
【0056】
前記次亜リン酸アルミニウム系難燃剤は、無機次亜リン酸アルミニウムおよびアルミニウムアルキルホスフィナート(例えば、アルミニウムジエチルホスフィナート、アルミニウムジプロピルホスフィナート、およびアルミニウムフェニルホスフィナートのうちの少なくとも1種)ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することができ、好ましくは無機次亜リン酸アルミニウムおよびアルミニウムジエチルホスフィナートならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。熱可塑性樹脂100重量部に対して、次亜リン酸アルミニウム系難燃剤の量は、0~2.0重量部、好ましくは0.1~1.2重量部、より好ましくは0.1~0.6重量部であり得る。ハロゲン含有難燃剤は、好ましくはメラミンハロゲン化水素酸塩であり、より好ましくメラミン臭化水素酸塩(MHB)である。熱可塑性樹脂100重量部に対して、ハロゲン含有難燃剤の量は、0~2.0重量部、好ましくは0.1~1.2重量部、より好ましくは0.1~0.8重量部であり得る。
【0057】
上記難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは難燃性相乗剤および/または防カビ剤をさらに含む。難燃性相乗剤の添加は難燃効率をさらに改善することができ、防カビ剤の添加は、抗菌効率をさらに改善することができ、その結果、同じ難燃効果または抗菌効果を達成する状況下で、難燃剤または抗菌剤の総添加量を低減することができる。
【0058】
前記難燃性相乗剤は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(DMDPB、略して「ビクミル」)、パラクメンポリマー(ポリビクミル)およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。熱可塑性樹脂100重量部に対して、難燃性相乗剤の量は、0~1.0重量部、好ましくは0.05~1重量部、より好ましくは0.05~0.6重量部であり得る。
【0059】
前記防カビ剤は、良好な防カビ効果を有する、ピリチオン、イソチアゾリノン、10,10’-オキシビスフェノキサルシン(OBPA)、3-ヨード-2-プロピニル-ブチル-カルバマート(IPBC)、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、2-(チアゾール-4-イル)ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)などからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。ピリチオンは、例えば亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、ビスピリチオン等からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。イソチアゾリノンは、例えば、2-メチル-1-イソチアゾリン-3-オン(MIT)、5-クロロ-2-メチル-1-イソチアゾリン-3-オン(CMIT)、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-3-イソチアゾリノン(DCOIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、4-メチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(MBIT)、4-n-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BBIT)等からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0060】
熱可塑性樹脂100重量部に対して、防カビ剤は、0~5.0重量部、好ましくは0.05~4.0重量部、より好ましくは0.1~3.6重量部の量で使用され得る。
【0061】
例えば、難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、以下の成分を含んでいてもよい:
0.05~4.0重量部、好ましくは0.1~2.8重量部、より好ましくは0.5~2重量部の本発明に記載の難燃性抗菌剤;
0~2.0重量部、好ましくは0.1~1.2重量部、より好ましくは0.1~0.6重量部の次亜リン酸アルミニウム系難燃剤;
0~2.0重量部、好ましくは0.1~1.2重量部、より好ましくは0.1~0.8重量部のメラミン臭化水素酸塩;
0~1.0重量部、好ましくは0.05~1重量部、より好ましくは0.05~0.6重量部の難燃性相乗剤;および、
0~5.0重量部、好ましくは0.05~4.0重量部、より好ましくは0.1~3.6重量部の防カビ剤。
【0062】
さらに、本発明の難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物は必要に応じて他の機能性添加剤をさらに含んでいてもよいが、これらに限定されない:酸化防止剤、光安定剤、強化剤、相溶化剤、顔料、分散剤等の少なくとも1種。熱可塑性樹脂100重量部に対して、他の機能性添加剤の量は0.1~100重量部とすることができ、具体的な量は必要に応じて調整され得る。
【0063】
本発明はさらに、熱可塑性樹脂および抗菌性難燃剤を含む成分を溶融ブレンドする工程を含む、難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物の調製方法であって、具体的には、以下の工程を含んでもよい調製方法を提供する:
a. 熱可塑性樹脂および本発明に係る抗菌性難燃剤を含む成分と、任意に次亜リン酸アルミニウム系難燃剤、ハロゲン含有難燃剤(好ましくはメラミン臭化水素酸塩)、難燃性相乗剤および防カビ剤を含む成分とを、例えば高速混合機を用いて均一に混合する工程;
b. 工程aにおいて、例えば二軸押出ペレタイザー等の当該技術分野において一般的に使用されている器具および装置を使用することにより、混合された予備混合物を押し出し、ペレット化し、更に乾燥させた後に、難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物のペレットを得ることができる工程。
【0064】
本発明の第5の態様では、本発明はまた、本発明に係る難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物から調製された物品を、特に繊維、膜および布の形態、例えば、不織布として提供する。これらの物品は、学校、病院、ホテル、スマート家電、および新エネルギー車および他の分野に特に有用である。
【0065】
本発明に係る難燃性抗菌剤(すなわち、グアニジン塩難燃性抗菌ミクロスフェア)は良好な難燃効果および抗菌効果の両方を有し、効果的な単一成分難燃性抗菌多機能添加剤である。難燃剤と抗菌剤とを別々に添加する現在の方法と比較して、前記グアニジン塩ミクロスフェアは、熱可塑性樹脂マトリクス中に分散しやすく、それによって、難燃効率および抗菌効率を効果的に改善することができる。
【0066】
同時に、グアニジン塩難燃性抗菌ミクロスフェアは良好な流動性および低い吸湿性を有し、難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物の調製中に壁に付着せず、取り出しが容易であり、製造操作が簡単であり、製造条件の過剰な制御を必要としない。
【0067】
ミクロスフェアは無水マレイン酸構造単位を含むので、特にミクロスフェアが無水マレイン酸、C-C脂肪族オレフィンおよび架橋剤によって形成される架橋交互共重合体構造を含む場合、ミクロスフェアのマトリクス樹脂との相溶性を著しく改善することができ、マトリクス樹脂中のミクロスフェアの分散を改善することができ、したがって抗菌性および難燃性の効果および効率をさらに改善することができ、または相溶化剤の不使用さえも達成することができ、それによって相溶化剤によってもたらされる難燃効果および抗菌効果に対する悪影響を回避することができる。
【0068】
自己安定化沈殿重合法によってミクロスフェアが調製される場合、得られるミクロスフェアは形態およびサイズが均一であり、規則的であり、マトリクス樹脂中により良好な分散を示し、マトリクス樹脂中のグラフトされたグアニジン塩のより良好かつより均一な分布を達成することができ、それによって、より良好な難燃性および抗菌性の効果および効率が得られ、さらに、得られるミクロスフェアは制御可能な構造および調整可能な粒子径を有し、製造プロセスをより単純かつより制御可能にする。
【0069】
ミクロスフェアは単量体として、油精製またはエチレン産業からのCおよびC留分、特に石油化学産業におけるエチレンクラッキング製品としてのCおよびC留分を使用することによって調製することができ、これは、石油化学産業における混合オレフィン資源の利用のための新しい手法を提供し、その製品の付加価値の向上に貢献する。
【0070】
本発明の難燃性抗菌剤はまた、火災安全性および抗菌性の要件を満たすための技術的な蓄えを拡大する。
【0071】
また、本発明の難特性抗菌剤を含む難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物は、良好な難燃性および抗菌性を同時に有し、良好な防カビ効果をさらに有し、また、特にシェル架橋構造を有するミクロスフェアを用いた場合に良好な耐水性を有し得る。
【0072】
本発明の難燃性抗菌剤は、効率的な多機能単成分難燃性抗菌ミクロスフェアであるため、低添加量で難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物を調製することができる。添加剤の難燃効率および抗菌効率の両方が改善されるので、添加剤の添加量が減少する。同時に、分散性能が改善される。したがって、調製された熱可塑性樹脂組成物は、優れた総合的な性能を有する。
【0073】
〔実施例〕
以下では本実施例と組合せて本発明をさらに説明するが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0074】
1)出発物質源
ポリエチレン(PE):ブランド7042、Maoming Petrochemical、中国
ポリプロピレン(PP):GD-H-230、Cangzhou Refining&Chemical、中国
ナイロン6:ブランドB3S、BASF
PC:ポリカーボネート、ブランド3103、Bayer
ABS:アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、ブランド3504、Shanghai Gaoqiao、中国
ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩:Foshan Lanfeng Additives、中国
リン酸二水素グアニジン:Beshine(Beijing)Chemical Technology Co.,Ltd.、中国
臭化水素酸グアニジン:SHANGHAI ZZBIO CO., LTD、中国
アミノグアニジン硝酸塩:Guangdong Wengjiang Chemical、中国
ビクミル:Guangzhou Xijia Chemical、中国
メラミン臭化水素酸塩:Guangzhou Xijia Chemical、中国
次亜リン酸アルミニウム:Guangzhou Xijia Chemical、中国
亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン:Zhufeng Fine Chemical Co.,Ltd.、中国
複合酸化防止剤:酸化防止剤1010(BASF)、酸化防止剤168(BASF)、ステアリン酸カルシウム(Shandong Hao Na、中国)を2/2/1の質量比で均一に混合して得られたもの
銀担持ゼオライト抗菌剤:Xi’an Conval Antibacterial Technology Co.,Ltd.、中国
2)試験方法および装置
ミクロスフェアの平均粒径:日立製作所(日本)のS-4800走査型電子顕微鏡によって測定した数平均粒径で特徴づけた。
【0075】
引張強度:標準GB/T1040-2006に従って測定した。
【0076】
曲げ弾性率:標準GB/T9341-2008に従って測定した。
【0077】
抗菌性試験:標準GB/T31402-2015に従って試験した。具体的には、当該抗菌性試験はフィルム貼付方法を採用し、操作工程は以下の通りであった:滅菌後、被検試料の表面に細菌懸濁液を接種し、ポリエチレンフィルムで覆って、試料とフィルムとの間に均一な液膜を形成した。特定の条件下で培養した後、溶出を行い、その後、適当な濃度勾配に希釈し、特定の量を採取して培地中に広げて再培養し、生菌数を測定して抗菌率を算出した。
【0078】
垂直燃焼試験(UL-94):標準GN/T2408-2008に従って試験した。試験片の燃焼性は、CZF-2垂直燃焼性試験機(Shangyuan Instruments,南京、中国)によって試験した。試験片は、120mm×10mm×10mmの棒状試料とした。UL-94試験の具体的な評価基準を以下に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
HBレベル:UL-94規格における最低難燃性レベル。必要条件は、3~13mmの厚さの試験片については40mm/分未満の燃焼速度;3mm未満の厚さの試験片については70mm/分未満の燃焼速度;または100mmの基準マークに到達する前に燃焼が止まることを含む。
【0081】
試験片がHBレベルに達しない場合、それは評価なし(NR)として報告される。
【0082】
限界酸素指数(LOI値)実験:標準GB/T2406.1-2008に従って試験した。
【0083】
グローワイヤ燃焼性指数実験:標準GB/T5961.11-2006に従って試験した。
【0084】
架橋度:ミクロスフェアの架橋度は溶媒抽出法によって測定され、ゲル含有量によって特徴付けられた。具体的な方法は以下の通りである:被検試料を秤量した(W)後、被検試料を自重の5倍のアセトン中に入れ、50℃で30分間抽出し、抽出終了後、前記試料を乾燥させ、秤量した(W)。架橋度はW/W×100%で計算される。溶出物質の含有量は、(1-W/W)×100%で計算される。
【0085】
1.グアニジン塩難燃性抗菌ミクロスフェア(難燃性抗菌剤)の調製
実施例1
(1)Sinopec Zhenhai Refining&Chemical(中国)のエチレンクラッキングプロセスから得られるC留分を使用した。C留分は、以下の組成を有する混合ブテンガスであった:トランス-2-ブテン40.83重量%、シス-2-ブテン18.18重量%、n-ブタン24.29重量%、n-ブテン9.52重量%、イソブテン2.78重量%、およびその他4.4重量%。オートクレーブ中で、100gの無水マレイン酸および2gのアゾビスイソブチロニトリルを800mLの酢酸イソアミルに溶解して溶液1を形成し、適切に計量した混合ブテン(ここで、無水マレイン酸と混合オレフィン中の有効成分(末端オレフィン)とのモル比は1:1であった)をそこに通した。反応は、窒素雰囲気下、70℃、0.5MPaで1時間行った。
【0086】
(2)ジビニルベンゼン25gを酢酸イソアミル200mLに溶解して、溶液2を調製した。プランジャーポンプによって、溶液2を(1)で得られた反応系に2時間滴下した。滴下完了後、温度を維持しながら反応系を3時間反応させ続けた。
【0087】
(3)上記反応後、オートクレーブを減圧し、リン酸二水素グアニジン水溶液(15重量%)200gと、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩水溶液(15重量%)200gとを加え、80℃で3時間反応させた。反応後の系を層状にするために静置し、ここで、重い相を5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄し、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;再度、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄して、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;得られた固体を真空下で乾燥させて、難燃性抗菌剤、すなわち、表面にグアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェア#1を得た。得られたポリマーミクロスフェアの平均粒径は、1280nmであった。得られたポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中で50℃で30分間、前記ポリマーミクロスフェアから溶出した物質の重量パーセントは5.5%であり、これに対応した架橋度は94.5%であった。
【0088】
実施例2
工程(2)における反応後の系を5000rad/minで遠心分離機によって30分間遠心分離し、架橋混合ブテン/無水マレイン酸ポリマーミクロスフェアを得、これをn-ヘキサンで洗浄して精製し、真空下で乾燥させたこと以外は、実施例1と同様に難燃性抗菌剤を調製した。次いで、乾燥させた架橋混合ブテン/無水マレイン酸ポリマーミクロスフェアを、リン酸二水素グアニジン(20重量%)とポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩(20重量%)との混合水溶液400gに添加し、80℃で3時間反応させた。反応後の系を5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄し、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;再度、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄して、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;得られた固体を真空下で乾燥させて、難燃性抗菌剤、すなわち、表面にグアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェア#2を得た。得られたポリマーミクロスフェアの平均粒径は、1310nmであった。得られたポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中で50℃で30分間、前記ポリマーミクロスフェアから溶出した物質の重量パーセントは5.6%であり、これに対応した架橋度は94.4%であった。
【0089】
実施例3
(1)オートクレーブ中で、無水マレイン酸100gおよびアゾビスイソブチロニトリル2gを800mLの酢酸イソアミルに溶解して溶液1を形成し、適切に計量した混合ブテン(組成は実施例1と同じであり、無水マレイン酸と混合オレフィン中の有効成分(末端オレフィン)とのモル比は1:1であった)をそこに通した。反応は、窒素雰囲気下、70℃、0.4MPaで2時間行った。
【0090】
(2)ジビニルベンゼン15gを酢酸イソアミル200mLに溶解して、溶液2を調製した。プランジャーポンプによって、溶液2を反応系に2時間滴下した。滴下完了後、温度を維持しながら反応系を3時間反応させ続けた。
【0091】
(3)上記反応後、オートクレーブを減圧し、臭化水素酸グアニジン水溶液(20重量%)200gと、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩水溶液(20重量%)200gとを別々に加え、60℃で7時間反応させた。反応後の系を層状にするために静置し、ここで、重い相を5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄し、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;再度、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄して、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;得られた固体を真空下で乾燥させて、難燃性抗菌剤、すなわち、表面にグアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェア#3を得た。得られたポリマーミクロスフェアの平均粒径は、1210nmであった。得られたポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中で50℃で30分間、前記ポリマーミクロスフェアから溶出した物質の重量パーセントは6.5%であり、これに対応した架橋度は93.5%であった。
【0092】
実施例4
(1)オートクレーブ中で、100gの無水マレイン酸および1.5gのアゾビスイソブチロニトリルを800mLの酢酸イソアミルに溶解して溶液1を形成し、適切に計量した混合ブテン(組成は実施例1と同じであり、無水マレイン酸と混合オレフィン中の有効成分(末端オレフィン)とのモル比は1:0.75であった)をそこに通した。反応は、窒素雰囲気下、70℃、0.5MPaで1時間行った。
【0093】
(2)アゾビスイソブチロニトリル0.5gおよびジビニルベンゼン18gを酢酸イソアミル200mLに溶解して、溶液2を調製した。プランジャーポンプによって、溶液2を反応系に2時間滴下した。滴下完了後、温度を維持しながら反応系を3時間反応させ続けた。
【0094】
(3)上記反応後、オートクレーブを減圧し、リン酸二水素グアニジン水溶液(20重量%)200gと、臭化水素酸グアニジン水溶液(20重量%)200gと、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩水溶液(20重量%)200gとを別々に加え、60℃で10時間反応させた。反応後の系を層状にするために静置し、ここで、重い相を5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄し、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;再度、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄して、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;得られた固体を真空下で乾燥させて、難燃性抗菌剤、すなわち、表面にグアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェア#4を得た。得られたポリマーミクロスフェアの平均粒径は、1510nmであった。得られたポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中で50℃で30分間、前記ポリマーミクロスフェアから溶出した物質の重量パーセントは5.8%であり、これに対応した架橋度は94.2%であった。
【0095】
実施例5
(1)Sinopec Zhenhai Refining&Chemical(中国)のエチレンクラッキングプロセスから得られるC留分を使用した。C留分の混合ガスは、以下の組成を有していた:ジオレフィン(イソプレン、シクロペンタジエン、1,4-ペンタジエン、ピペリレン)47.83重量%、モノオレフィン(1-ペンテン、2-ペンテン、シクロペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン)13.18重量%、アルカン(n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、2-メチルブタン)21.29重量%、アルキン(ブタ-2-イン、3-ペンテン-1-イン)0.92重量%、およびその他16.78重量%。オートクレーブ中で、100gの無水マレイン酸および2gのアゾビスイソブチロニトリルを800mLの酢酸イソアミルに溶解して溶液1を形成し、適切に計量した混合C(ここで、無水マレイン酸と混合オレフィン中の有効成分(末端オレフィン)とのモル比は1:0.5であった)をそこに通した。反応は、窒素雰囲気下、70℃、0.5MPaで1時間行った。
【0096】
(2)適切に計量した混合C留分(ここで、無水マレイン酸と前記混合オレフィンの一部における有効成分(ジオレフィンを含む、末端オレフィン)とのモル比は1:0.5であった)およびジビニルベンゼン15gを酢酸イソアミル200mLに溶解して、溶液2を調製し、プランジャーポンプによって、溶液2を反応系に2時間滴下した。滴下完了後、温度を維持しながら反応系を3時間反応させ続けた。
【0097】
(3)上記反応後、オートクレーブを減圧し、前記系を層状にするために静置し、ここで、重い相を5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し、得られた固体を攪拌しながら400mLの水で洗浄し、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;再度、得られた固体を攪拌しながら400mLの水で洗浄して、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;得られた固体を真空下で乾燥させて、架橋混合ペンテン/無水マレイン酸ポリマーミクロスフェアを得た。
【0098】
(4)架橋混合ペンテン/無水マレイン酸ポリマーミクロスフェア100gを、アミノグアニジン硝酸塩(15重量%)とポリヘキサメチレンビグアニドリン酸塩(15重量%)との混合溶液400gに加え、50℃で6時間反応させた。反応後の系を5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄し、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;再度、得られた固体を攪拌しながら4Lの水で洗浄して、5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し;得られた固体を真空下で乾燥させて、難燃性抗菌剤、すなわち、表面にグアニジン塩をグラフトしたポリマーミクロスフェア#5を得た。得られたポリマーミクロスフェアの平均粒径は、1458nmであった。得られたポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中で50℃で30分間、前記ポリマーミクロスフェアから溶出した物質の重量パーセントは5.6%であり、これに対応した架橋度は94.4%であった。
【0099】
実施例6
工程(2)におけるジビニルベンゼンの量を10gに変更したこと以外は、実施例5と同様に難燃性抗菌剤を調製し、最終的にポリマーミクロスフェア#6を得た。得られたポリマーミクロスフェアの平均粒径は、1200nmであった。得られたポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中で50℃で30分間、前記ポリマーミクロスフェアから溶出した物質の重量パーセントは7.0%であり、これに対応した架橋度は93.0%であった。
【0100】
実施例7
工程(1)におけるジビニルベンゼンをペンタエリスリトールテトラアクリレート36.0gに置き換えたこと以外は、実施例1と同様に難燃性抗菌剤を調製し、最終的にポリマーミクロスフェア#7を得た。得られたポリマーミクロスフェアの平均粒径は、1320nmであった。得られたポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中で50℃で30分間、前記ポリマーミクロスフェアから溶出した物質の重量パーセントは5.2%であり、これに対応した架橋度は94.8%であった。
【0101】
2.難燃性抗菌熱可塑性樹脂組成物および比較樹脂組成物の調製および特性比較
実施例および比較例において使用された樹脂組成物の配合を表1に示し、表1中の量は全て重量部である。実施例および比較例において調製した樹脂組成物の特性を表2に示す。
【0102】
実施例8
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#1を1.0重量部、次亜リン酸アルミニウム0.2重量部、MHB(メラミン臭化水素酸塩)0.35重量部、難燃性相乗剤DMDPB(ビクミル)0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部、複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に撹拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0103】
比較例1
ポリプロピレン100重量部と、複合酸化防止剤0.25重量部とを高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に撹拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0104】
比較例2
ポリプロピレン100重量部、銀担持ゼオライト抗菌剤1.0重量部、次亜リン酸アルミニウム0.2重量部、MHB0.35重量部、難燃性相乗剤DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0105】
実施例9
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#2を1.0重量部、次亜リン酸アルミニウム0.2重量部、MHB0.35重量部、難燃性相乗剤DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0106】
実施例10
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#3を0.9重量部、次亜リン酸アルミニウム0.25重量部、MHB0.2重量部、DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0107】
実施例11
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1.6重量部、DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0108】
比較例3
ポリプロピレン100重量部、銀担持ゼオライト抗菌剤1.6重量部、DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0109】
実施例12
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#5を1.0重量部、次亜リン酸アルミニウム0.25重量部、MHB0.3重量部、DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0110】
実施例13
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#6を1.0重量部、次亜リン酸アルミニウム0.25重量部、MHB0.3重量部、DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために標準スプラインに射出成形した。
【0111】
実施例14
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#7を1.2重量部、次亜リン酸アルミニウム0.2重量部、MHB0.3重量部、DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために標準スプラインに射出成形した。
【0112】
実施例15
ポリエチレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#1を2重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度175℃~205℃(175℃、190℃、205℃、205℃、200℃、および195℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、190~200℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のためにサンプルに射出成形した。
【0113】
比較例4
ポリエチレン100重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度175℃~205℃(175℃、190℃、205℃、205℃、200℃、および195℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、190~200℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のためにサンプルに射出成形した。
【0114】
実施例16
ナイロン6を100重量部、ポリマーミクロスフェア#2を2.5重量部、亜鉛ピリチオン0.3重量部、複合酸化防止剤0.3重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度220℃~240℃(220℃、230℃、240℃、240℃、240℃、および240℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、230~240℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のためにサンプルに射出成形した。
【0115】
比較例5
ナイロン6を100重量部および複合酸化防止剤0.3重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度220℃~240℃(種々のゾーンの温度:220℃、230℃、240℃、240℃、240℃、および240℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。押出されたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、230~240℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のためにサンプルに射出成形した。
【0116】
実施例17
PC80重量部、ABS20重量部、ポリマーミクロスフェア#4を4重量部、亜鉛ピリチオン0.3重量部および複合酸化防止剤0.3重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度230℃~260℃(種々のゾーンの温度:230℃、240℃、255℃、260℃、255℃、および240℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、230~240℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のためにサンプルに射出成形した。
【0117】
比較例6
PC80重量部、ABS20重量部および複合酸化防止剤0.3重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度230℃~260℃(種々のゾーンの温度:230℃、240℃、255℃、260℃、255℃、および240℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、230~240℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のためにサンプルに射出成形した。
【0118】
実施例18
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1.6重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0119】
実施例19
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を5重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のためにサンプルに射出成形した。
【0120】
比較例7
1.(1)Sinopec Zhenhai Refining&Chemical(中国)のエチレンクラッキングプロセスから得られるC留分を使用した。C留分は、以下の組成を有する混合ブテンガスであった:トランス-2-ブテン40.83重量%;シス-2-ブテン18.18重量%;n-ブタン24.29重量%;n-ブテン9.52重量%;イソブテン2.78重量%;およびその他4.4重量%。オートクレーブ中で、100gの無水マレイン酸および2gのアゾビスイソブチロニトリルを800mLの酢酸イソアミルに溶解して溶液1を形成し、適切に計量した混合ブテン(ここで、無水マレイン酸と混合オレフィン中の有効成分(末端オレフィン)とのモル比は1:1であった)をそこに通し、窒素雰囲気下、70℃、0.5MPaで1時間、反応を行った。
【0121】
(2)ジビニルベンゼン25gを酢酸イソアミル200mLに溶解して、溶液2を調製した。プランジャーポンプによって、溶液2を(1)で得られた反応系に2時間滴下した。滴下完了後、温度を維持しながら反応系を3時間反応させ続けた。
【0122】
(3)上記反応後、オートクレーブを減圧し、前記系を層状にするために静置し、重い相を5000rad/minで遠心分離機によって20分間遠心分離し、得られた固体を真空下で乾燥させて、表面にグアニジン塩をグラフトしていないポリマーミクロスフェア#8を得た。得られたポリマーミクロスフェアの平均粒径は、1200nmであった。得られたポリマーミクロスフェアの重量の5倍のアセトン中で50℃で30分間、前記ポリマーミクロスフェアから溶出した物質の重量パーセントは5.5%であり、これに対応した架橋度は94.5%であった。
【0123】
2.ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#8を5重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0124】
実施例20
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1重量部、次亜リン酸アルミニウム0.2重量部、DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0125】
実施例21
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1重量部、次亜リン酸アルミニウム0.2重量部、DMDPB0.1重量部、亜鉛ピリチオン0.2重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0126】
実施例22
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1重量部、MHB0.2重量部、DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0127】
実施例23
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1.6重量部、次亜リン酸アルミニウム0.2重量部、DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0128】
実施例24
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1.8重量部、DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0129】
比較例8
ポリプロピレン100重量部、次亜リン酸アルミニウム1.8重量部、DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0130】
実施例25
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1重量部、次亜リン酸アルミニウム0.1重量部、MHB0.1重量部、DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0131】
比較例9
ポリプロピレン100重量部、MHB1.8重量部、DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0132】
実施例26
ポリプロピレン100重量部、ポリマーミクロスフェア#4を1.6重量部、MHB0.2重量部、DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機の種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃、かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性および抗菌性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0133】
比較例10
ポリプロピレン100重量部、次亜リン酸アルミニウム0.2重量部、MHB0.35重量部、難燃性相乗剤DMDPB0.1重量部および複合酸化防止剤0.25重量部を高速ミキサーに投入し、十分かつ均一に攪拌した後、押出機温度190℃~220℃(種々のゾーンの温度:190℃、210℃、220℃、220℃、215℃、および210℃)かつ回転速度350r.p.m.で、混合した塊を二軸押出機に通して溶融ブレンドし、押出およびペレット化した。得られたペレットを、サーモスタットオーブン中で90℃で3時間乾燥させ、次いで、200~220℃の射出成形温度で、難燃性、抗菌性および機械的特性試験のために、指定サイズの標準スプラインに射出成形した。
【0134】
【表2】
【0135】
【0136】
【0137】
【表3】
【0138】
【0139】
表1および表2の試験結果から、PP樹脂自体は非常に燃えやすく、抗菌特性を有していないことがわかる。
【0140】
実施例8~14および18~26は、本発明の難燃性抗菌ミクロスフェアを使用した本発明に係る難燃性抗菌PP組成物である。表2より、本発明に係るPP組成物は優れた抗菌特性を有するだけではなく、少ない添加量の難燃剤でHBレベル、さらにはUL-94試験のV-2レベルまで到達することができ、良好な自己消火特性を示すことが分かる。実施例8~14において、組成物は試験され、750℃でグローワイヤ燃焼性指数試験に合格した。
【0141】
また、実施例8~14の試験結果から、本発明に係るPP組成物は難燃特性および抗菌特性を有するだけではなく、PP単独(比較例1)と比較して改善された引張強度および/または曲げ弾性率を有し、マトリクス中の難燃剤および抗菌剤の不十分な分散性が要因となり、物質の包括的性能の低下に関する先行技術の技術的な難点を克服したことが分かる。
【0142】
実施例11と比較例3との比較、実施例24と比較例8および9との比較、実施例8と比較例2との比較から、同じ添加量の難燃剤および抗菌添加剤では、本発明の難燃性抗菌ミクロスフェアを使用した組成物は、先行技術の抗菌剤単独、難燃剤単独、または難燃剤と抗菌剤との組合せを使用した組成物よりも優れた難燃性および抗菌性の総合的な性能を有することが分かる。
【0143】
実施例23と、実施例24と、比較例8との比較、または実施例24と、実施例26と、比較例9との比較から、本発明に係る難燃性抗菌ミクロスフェアを次亜リン酸アルミニウム系難燃剤またはハロゲン含有難燃剤との組み合わせにおいて使用した場合、ハイブリッドカーボン層構造を構築することにより、相乗効果が生じ、得られる難燃特性および抗菌特性は、単独の成分を同じ添加量で使用する場合よりも著しく良好であることが分かる。
【0144】
実施例20と、22と、25との比較から、次亜リン酸アルミニウム系難燃剤およびハロゲン含有難燃剤を同時に添加する場合、次亜リン酸アルミニウム系難燃剤またはハロゲン含有難燃剤を分けて添加する場合と比較して、より相乗的な難燃効果が得られることが分かる。
【0145】
実施例18、19、および11の結果の比較から、難燃性相乗剤および防カビ剤を添加する場合、本発明の難燃性抗菌ミクロスフェアの難燃性および抗菌性の効率を高めることができ、その結果、より少ない添加量で高い難燃性レベルに到達できることが分かる。
【0146】
実施例15~17と比較例4~6との比較から、本発明の難燃性抗菌ミクロスフェアはまた、PE、PAおよびPC/ABSのような他のマトリクス樹脂中の材料の難燃性および抗菌性を改善することが分かる。
【0147】
比較例2と比較例10との比較から、現存する銀系抗菌剤を添加すると、難燃剤を添加した樹脂組成物の難燃性と引張強度の両方が低下することが分かる。
【0148】
要約すると、本発明の単成分難燃性抗菌ミクロスフェアは、高い難燃性および抗菌性の効率を有するだけではなく、先行技術における難燃剤との相乗効果も達成することができ、さらに、マトリクスにおける良好な分散性を有し、それによって、マトリクスにおける難燃剤および抗菌剤の不十分な分散性に起因する材料の総合的な性能の低下に関する先行技術の技術的な難点を克服する。
【0149】
実施例によって本発明を詳細に記載し、説明してきたが、本発明の趣旨および範囲内での他の修正および変更が当業者には明らかであろう。さらに、本発明において列挙された種々の態様、異なる実施形態の種々の部分、および種々の特徴は、全体または部分的に組み合わされるか、あるいは置き換えられることが理解されるべきである。さらに、当業者は上記の記載が単なる例示であり、本発明を限定することを意図しないことを理解するであろう。
【国際調査報告】