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特表2023-500463安定化正方晶チタン酸バリウムの形成のための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(54)【発明の名称】安定化正方晶チタン酸バリウムの形成のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/05 20060101AFI20221226BHJP
   G02F 1/035 20060101ALN20221226BHJP
【FI】
G02F1/05 505
G02F1/035
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525014
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-25
(86)【国際出願番号】 US2020057731
(87)【国際公開番号】W WO2021086961
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/927,373
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521552936
【氏名又は名称】プサイクォンタム,コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ヤング
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,マーク ジー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チア-ミン
(72)【発明者】
【氏名】カミネリ,ヴィマル クマール
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA01
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD03
2K102DA05
2K102DB04
2K102DD04
2K102EA02
(57)【要約】
電気光学デバイスは、基板と、基板上の導波路とを含む。導波路は、複数の中間層と交互配置される複数の電気光学材料層を含む積層体と、積層体に隣り合う導波路コアと、導波路クラッド層と、複数の電気光学材料層と電気的に接触する一対の電極とを含む。複数の中間層は、室温及び極低温で第1の格子構造を維持する。複数の電気光学材料層は、室温及び極低温で第2の格子構造及び結晶相を維持する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の積層体と、
を備え、
前記積層体は、
複数の電気光学材料層と、
前記複数の電気光学材料層と交互配置される複数の中間層と、
を含み、
前記複数の中間層は、室温および極低温で第1の格子構造を維持し、
前記複数の電気光学材料層は、前記室温および前記極低温で第2の格子構造および結晶相を維持する、
ウエハ。
【請求項2】
前記基板と前記積層体との間にエピタキシャルシード層を更に備える、請求項1に記載のウエハ。
【請求項3】
前記エピタキシャルシード層は、SrTiO3、LaAlO、または、MgOのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のウエハ。
【請求項4】
前記エピタキシャルシード層と前記基板との間に前記基板の酸化層を更に備える、請求項2に記載のウエハ。
【請求項5】
前記複数の電気光学材料層は、前記極低温で正方格子構造によって特徴付けられる、請求項1に記載のウエハ。
【請求項6】
前記複数の電気光学材料層は、BaTiO、(Ba,Sr)TiO、Pb(Zr,Ti)O、または、(Pb、La)(Zr,Ti)Oのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のウエハ。
【請求項7】
前記複数の中間層は、MgO、(Ba、Sr)TiO、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrZrO、または、SrNbOのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のウエハ。
【請求項8】
前記複数の電気光学材料層のそれぞれの厚さと前記複数の中間層のそれぞれの厚さとの間の比が20:1以下である、請求項1に記載のウエハ。
【請求項9】
基板上にシード層を堆積させるステップと、
前記シード層上に第1の電気光学材料層をエピタキシャル堆積させるステップと、
前記基板、前記シード層、および、前記第1の電気光学材料層を酸素環境下でアニールすることにより、前記基板と前記シード層との間に酸化物バッファ層を形成するステップと、
前記第1の電気光学材料層上に第1の中間層を堆積させるステップであって、前記第1の中間層が、室温および極低温で第1の格子構造を維持する材料を含む、ステップと、
前記第1の中間層上に第2の電気光学材料層を堆積させるステップと、
前記第2の電気光学材料層および前記第1の中間層をアニールするステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記第1の電気光学材料層および前記第2の電気光学材料層は、前記室温の第3の格子構造とは異なる前記極低温の第2の格子構造によって特徴付けられる電気光学材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の格子構造が前記第1の格子構造と同じ結晶構造である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板、前記シード層、および、前記第1の電気光学材料層をアニールする前記ステップは、前記酸化物バッファ層の軟化温度より高い温度でアニールするステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の電気光学材料層上に第2の中間層を堆積させるステップであって、前記第2の中間層が、前記室温および前記極低温で前記第1の格子構造を維持する前記材料を含む、ステップと、
前記第2の中間層上に第3の電気光学材料層を堆積させるステップと、
前記第3の電気光学材料層および前記第2の中間層をアニールするステップと、
を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
導波路コアを形成するために前記第3の電気光学材料層をパターニングするステップと、
前記導波路コア上に誘電体クラッド層を堆積させるステップと、
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第3の電気光学材料層をパターニングする前記ステップは、前記第2の中間層をエッチング停止層として使用して前記第3の電気光学材料層をエッチングするステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の電気光学材料層上に導波路を形成するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第3の電気光学材料層上に前記導波路を形成する前記ステップは、
前記第3の電気光学材料層上に導波路コアを形成するステップと、
前記導波路コア上に誘電体クラッド層を堆積させるステップと、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の電気光学材料層上に前記導波路を形成する前記ステップは、前記導波路を含むウエハを前記第3の電気光学材料層に結合するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1、第2、および、第3の電気光学材料層並びに前記第1の中間層および第2の中間層にトレンチをエッチングするステップと、
前記トレンチに導電性材料を充填するステップと、
を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の電気光学材料層の厚さと前記第1の中間層の厚さとの間の比が20:1以下である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
この出願は、参照によりその全体が本願に組み入れられる2019年10月29日に出願された「安定化正方晶チタン酸バリウムの形成のための方法及びシステム」に関する米国仮特許出願第62/927,373号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]EO変調器及びスイッチなどの電気光学(EO)デバイスは、光通信及び光コンピューティングシステムなどの様々な光学システムで使用されてきた。例えば、光位相変調器は、集積光学システム、光通信送信機又はトランシーバなどで使用され得る。EO変調器又はスイッチは、自由キャリア電気屈折、自由キャリア電気吸収、ポッケルス効果、カー効果などの様々なEO効果を利用して、EO変調器内又はスイッチ内の特定の経路を通じて伝搬する光の位相又は振幅を変更するなど、動作中の光特性を変更することができる。より高いEO効果を伴う材料を使用するEOデバイスは、より低い制御電圧、より低い電力消費量で、しばしばより高速で動作することができる。
【発明の概要】
【0003】
[0003]本明細書中に開示される技術は、一般に、電気光学(EO)デバイスに関する。より具体的には、本明細書中に開示される実施形態は、極低温などの低い温度でEOデバイス(例えば、光スイッチ又は光変調器)において高いEO効果を達成するための技術に関する。1つの特定の実施形態では、低温(例えば、極低温)で高い電気光学係数を特徴とするEO材料積層体を含むEOデバイスが、低温でEOデバイスの変調及び/又はスイッチング性能を改善するために利用される。EO材料積層体は、交互配置されてかみ合わされる薄いEO材料層及び中間層を含むことができる。EO材料層中のEO材料は、バルクで使用される場合、異なる動作温度でその結晶構造を変化させ得るが、中間層は、動作温度で変化しない格子構造を有し得る。したがって、中間層にかみ合わされる薄いEO材料層は、動作温度が変化するときにそれらの格子構造、したがってEO係数を維持することができる。本明細書中に開示される技術は、低温で動作する多種多様なフォトニック及び光電子デバイスで使用され得る。
【0004】
[0004]特定の実施形態によれば、電気光学デバイスは、基板と、基板上の導波路とを含むことができる。導波路は、複数の中間層と交互配置される複数の電気光学材料層を含む積層体を含むことができる。また、導波路は、積層体と隣り合う導波路コア、導波路クラッド層、及び、複数の電気光学材料層と電気的に接触している一対の電極も含むことができる。複数の中間層は、室温及び極低温で第1の格子構造を維持するように構成され得る。複数の電気光学材料層は、室温及び極低温で第2の格子構造及び結晶相を維持することができる。幾つかの実施形態において、複数の中間層及び複数の電気光学材料層は、極低温における正方格子構造を特徴とすることができる。幾つかの実施形態において、複数の電気光学材料層は、極低温における面内分極を特徴とすることができる。
【0005】
[0005]電気光学デバイスの幾つかの実施形態において、複数の電気光学材料層は、強誘電結晶又は強誘電薄膜を含むことができる。強誘電結晶は、BaTiO、(Ba,Sr)TiO、Pb(Zr,Ti)O、又は、(Pb、La)(Zr,Ti)Oのうちの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態において、複数の電気光学材料層は、極低温で300pm/Vよりも大きいポッケルス係数を特徴とすることができる。複数の中間層は、MgO、LaAlO、(Ba,Sr)TiO、BaHfO、BaMoO、BaNbO、BaZrO、SrHfO、SrTiO、SrMoO、SrNbO、又は、SrZrOのうちの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態において、複数の電気光学材料層のそれぞれの厚さと複数の中間層のそれぞれの厚さとの間の比は20:1以下であってもよい。
【0006】
[0006]電気光学デバイスの幾つかの実施形態において、導波路コアは、複数の電気光学材料層内に1つ以上の電気光学材料層を含むことができる。導波路クラッド層は、複数の電気光学材料層内の電気光学材料層と物理的に接触していてもよく、また、電気光学材料層の熱膨張係数及び光屈折率とは異なる熱膨張係数及び光屈折率によって特徴付けられてもよい。導波路クラッド層は、例えば、Si、SiO、Al、MgO、SiCN、SiON、SiCO、SiOCN、及び、HfOのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0007】
[0007]幾つかの実施形態において、EOデバイスは、基板と導波路との間にエピタキシャルシード層を更に含んでもよい。エピタキシャルシード層は、例えば、MgO、LaAlO、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrTiO、SrMoO及びSrZrOのうちの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態において、EOデバイスは、エピタキシャルシード層と基板との間にバッファ層を更に含んでもよい。一対の電極のそれぞれは、複数の電気光学材料層のそれぞれと物理的に接触していてもよい。幾つかの実施形態では、導波路クラッド層が基板と積層体との間にあってもよい。導波路は、マッハツェンダ干渉計、共振器、光スイッチ、電気光学変調器などのセクションであってもよい。
【0008】
[0008]特定の実施形態によれば、ウエハは、基板と、基板上の積層体とを含むことができる。積層体は、複数の電気光学材料層と、複数の電気光学材料層と交互配置される複数の中間層とを含むことができる。複数の中間層は、室温及び極低温で第1の格子構造を維持することができ、また、複数の電気光学材料層は、室温及び極低温で第2の格子構造及び結晶相を維持することができる。幾つかの実施形態において、第1の格子構造及び第2の格子構造は、正方格子構造などの同じ格子構造であってもよい。幾つかの実施形態において、ウエハは、基板と積層体との間にエピタキシャルシード層を含むこともでき、この場合、エピタキシャルシード層は、例えば、MgO、LaAlO、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrTiO、又は、SrZrOのうちの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態において、ウエハは、エピタキシャルシード層と基板との間に基板の酸化層を含むこともできる。
【0009】
[0009]ウエハの幾つかの実施形態において、複数の電気光学材料層は、BaTiO、(Ba、Sr)TiO、Pb(Zr、Ti)O、又は(Pb、La)(Zr、Ti)Oのうちの少なくとも1つを含んでもよい。複数の中間層は、MgO、LaAlO、(Ba,Sr)TiO、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrZrO、又は、SrNbOのうちの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態において、複数の電気光学材料層のそれぞれの厚さと複数の中間層のそれぞれの厚さとの間の比は20:1以下であってもよい。
【0010】
[0010]特定の実施形態によれば、方法は、基板上にシード層を堆積させるステップと、シード層上に第1の電気光学材料層をエピタキシャル堆積させるステップと、基板、シード層、及び、第1の電気光学材料層を酸素環境下でアニールして、基板とシード層との間に酸化物バッファ層を形成するステップと、室温及び極低温で第1の格子構造を維持することができる材料を含む第1の中間層を第1の電気光学材料層上に堆積させるステップと、第1の中間層上に第2の電気光学材料層を堆積させるステップと、第2の電気光学材料層及び第1の中間層をアニールするステップとを含むことができる。第1の電気光学材料層及び第2の電気光学材料層は、室温の第3の格子構造とは異なる極低温の第2の格子構造によって特徴付けられる電気光学材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、第3の格子構造及び第1の格子構造は、正方格子構造などの同じ格子構造であってもよい。幾つかの実施形態において、第1の電気光学材料層の厚さと第1の中間層の厚さとの間の比が20:1以下であってもよい。
【0011】
[0011]幾つかの実施形態において、基板、シード層、及び、第1の電気光学材料層をアニールするステップは、酸化物バッファ層の軟化温度より高い温度でアニールするステップを含んでもよい。また、方法は、室温及び極低温で第1の格子構造を維持する材料を含む第2の中間層を第2の電気光学材料層上に堆積させるステップと、第2の中間層上に第3の電気光学材料層を堆積させるステップと、第3の電気光学材料層及び第2の中間層をアニールするステップとを含んでもよい。
【0012】
[0012]幾つかの実施形態において、方法は、導波路コアを形成するために第3の電気光学材料層をパターニングするステップと、導波路コア上に誘電体クラッド層を堆積させるステップとを含んでもよい。第3の電気光学材料層をパターニングするステップは、第2の中間層をエッチング停止層として使用して第3の電気光学材料層をエッチングするステップを含んでもよい。幾つかの実施形態において、方法は、第1、第2、及び、第3の電気光学材料層並びに第1及び第2の中間層にトレンチをエッチングするステップと、トレンチに導電性材料を充填するステップとを含んでもよい。トレンチをエッチングするステップは、酸化物バッファ層をエッチング停止層として使用して第1、第2、及び、第3の電気光学材料層をエッチングするステップを含んでもよい。
【0013】
[0013]幾つかの実施形態において、方法は、第3の電気光学材料層上に導波路を形成するステップを含んでもよい。幾つかの実施形態において、第3の電気光学材料層上に導波路を形成するステップは、第3の電気光学材料層上に導波路コアを形成するステップと、導波路コア上に誘電体クラッド層を堆積させるステップとを含んでもよい。幾つかの実施形態において、第3の電気光学材料層上に導波路コアを形成するステップは、第3の電気光学材料層上に高屈折率材料の層を堆積するステップと、高屈折率材料の層をパターニングするステップとを含んでもよい。幾つかの実施形態において、第3の電気光学材料層上に導波路コアを形成するステップは、第3の電気光学材料層上に誘電体層を堆積するステップと、誘電体層上に高屈折率材料の層を堆積するステップと、高屈折率材料の層をパターニングするステップとを含んでもよい。幾つかの実施形態において、第3の電気光学材料層上に導波路を形成するステップは、導波路を含むウエハを第3の電気光学材料層に結合するステップを含んでもよい。
【0014】
[0014]本開示により、従来技術に優る多くの利点が達成される。例えば、本明細書中に開示される方法、デバイス、及び、システムの例は、極低温などの低い温度で強誘電材料の格子構造、したがってEO係数(例えば、BaTiOの正方晶相及びポッケルス係数)を維持することができ、それにより、極低温でEOスイッチ又はEO変調器などのEOデバイスの性能を改善する。このように、低減された電界又はバイアス信号を使用して、光変調又は光スイッチングにとって望ましい屈折率変調及び/又は位相変調を達成することができ、それにより、電力消費量が低減され、デバイスの効率及び/又は速度が向上する。更に、本明細書中に開示される実施形態は、従来技術を使用するよりも低温で有効屈折率のより大きな変化を可能にする。結果として、デバイス長を短くすることができ、これにより、EOデバイスの光損失及び物理的寸法が減少する。これら及び他の実施形態は、その利点及び特徴の多くと共に、以下の本文及び添付図面と併せてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】特定の実施形態に係るマッハツェンダ干渉計を含む光スイッチの一例を示す簡略図である。
図1B】特定の実施形態に係る図1Aに示される光スイッチの一実施における位相調整セクションの一例の断面図である。
図2】特定の実施形態に係る約4K~約340Kの温度での異なる結晶格子配向を伴うABOペロブスカイト結晶(例えば、BaTiO結晶)における有効ポッケルス係数を示す。
図3A】特定の実施形態に係る異なる温度でのBaTiOの相転移を示す。
図3B】特定の実施形態に係る異なる温度でのBaTiOの相転移を示す。
図3C】特定の実施形態に係る異なる温度でのBaTiOの相転移を示す。
図3D】特定の実施形態に係る異なる温度でのBaTiOの相転移を示す。
図4】特定の実施形態に係る、室温から極低温に至るまで実質的に一定のEO係数を特徴とするEO材料層を含むEOデバイスを製造するための方法の一例を示す簡略フローチャートである。
図5A】特定の実施形態に係る、その上にシード層が成長した基板の一例を示す。
図5B】特定の実施形態に係る、シード層上にエピタキシャル堆積された強誘電材料の層の内部応力及び結晶格子配向を示す。
図5C】特定の実施形態に係る、高温酸化アニーリング後のシード層上にエピタキシャル堆積された強誘電材料の層の内部応力及び結晶格子配向を示す。
図5D】特定の実施形態に係る、加工ウエハ内の中間層と交互配置された強誘電材料の層の内部応力及び結晶格子配向を示す。
図5E】特定の実施形態に係る、導波路構造内の中間層と交互配置された強誘電材料の層の内部応力及び結晶格子配向を示す。
図6】特定の実施形態に係る、アニーリング前後のエピタキシャル層の一例におけるイオンチャネリングによって示されるアニーリング後の結晶品質改善を示す。
図7】特定の実施形態に係る、高温でのエピタキシャル層の一例における異相格子定数緩和を示すX線回折データの例を示す。
図8】特定の実施形態に係る、極低温で正方晶相を維持するEO材料層を含む導波路構造の一例の簡略断面図である。
図9】特定の実施形態に係る、極低温で正方晶相を維持するEO材料層を含む導波路構造の他の例の簡略断面図である。
図10】特定の実施形態に係る、極低温で正方晶相を維持するEO材料層を含む導波路構造の更に他の例の簡略断面図である。
図11】特定の実施形態に係る、室温から極低温に至るまで実質的に一定のEO係数を特徴とするEO材料層を含む加工ウエハ及び/又はEOデバイスを製造するための方法の一例を示す簡略フローチャートである。
図12】特定の実施形態に係る、電気光学デバイスを含むハイブリッド量子コンピューティングシステムの一例の簡略化されたシステムブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0031]本明細書中に開示される技術は、一般に、電気光学(EO)デバイスに関する。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、極低温などの低い温度でEO材料(例えば、強誘電材料)における高いEO効果を達成するとともに、光変調器及びスイッチなどのEOデバイスにおけるEO材料の高いEO効果を利用して、消費電力を低減し、低温でのEOデバイスの動作中の効率及び速度を改善するための技術に関する。単なる例として、実施形態は、能動光学デバイスを含む集積光学系との関連で提供されるが、本明細書中に開示される技術は、この例に限定されず、様々な光学系及び光電子システムに広く適用可能である。方法、プロセス、材料、ウエハ、システム、デバイスなどを含む様々な本発明の実施形態が本明細書中に記載される。
【0017】
[0032]より高いEO効果を伴う材料を使用するEOデバイスは、比較的低いEO係数を伴う材料を使用するデバイスと比較して、より低い制御電圧、より低い消費電力、及び、より高速で動作することができる。線形光量子コンピューティング用途などの幾つかの用途において、EOデバイスは、極低温(例えば、約4K)などの非常に低い温度で動作することができる。幾つかのEO材料のポッケルス係数などのEO効果は、低温で著しく劣化する場合がある。例えば、BaTiO3(BTO)は、その高いポッケルス係数(例えば、室温で約900ピコメートル/Vよりも大きい)及びシリコンCMOSプロセスとの適合性に起因して、EOスイッチにおいて使用され得る。しかしながら、約4KでのBTOのポッケルス係数は、室温でのポッケルス係数の約1/3未満に低下する場合がある。したがって、EOスイッチの効率は、極低温で著しく低下し得る。本明細書で規定されるように、室温は、約20℃の温度であり、より詳細には18℃~22℃の温度として規定される。本明細書で規定されるように、極低温は、-150℃未満の温度であり、より詳細には-150℃~-273℃の温度として規定される。
【0018】
[0033]特定の実施形態によれば、低温での幾つかのEO材料のEO効果(例えば、ポッケルス係数)の低下が、異なる温度でのEO材料結晶格子の結晶相転移によって引き起こされ得ると断定される。例えば、BTOは、室温での正方晶相から室温未満での斜方晶相へ、その後、極低温に向かって菱面体晶相へと結晶相転移を受け得る。正方晶相から菱面体晶相への結晶相転移は、室温から極低温へのポッケルス効果の低下に寄与し得る。したがって、特定の実施形態によれば、EO材料のEO効果は、低温でEO材料の正方格子構造を維持することによって、低温で高レベル(例えば、室温でのレベルに近いレベル)に維持され得る。幾つかの実施形態において、これは、例えば、EO材料の薄層を、動作温度が室温から極低温に低下するときに格子構造(又は結晶相)変化及び分極変化を受けない又はEO材料の温度とは異なる温度で結晶相転移を受ける、したがってEO材料の結晶相転移を妨げる中間層とかみ合わせることによって達成され得る。中間層は、EO材料内の応力を維持し、動作温度が低下するときにEO材料層が格子構造及び分極を変化させるのを防ぐのに役立ち得る。結果として、EO材料のEO係数を室温でのEO係数に近いレベルに維持することができる。したがって、交互配置構造を含むEOデバイスは、極低温で高い効率及び速度を維持することができる。
【0019】
[0034]特定の実施形態によれば、本明細書中に記載される能動フォトニックデバイスは、ポッケルス効果などの高い電気光学効果を利用して、低温で光信号を効率的に変調及び/又は切り換えることができる。例えば、本明細書中に開示される技術は、透過光の強度が例えば正弦関数又は二乗関数にしたがって変調され得る光変調器、並びに、光を1つ以上の入力ポート内の1つの入力ポート(例えば、導波路)から選択して1つ以上の出力ポート内の1つの出力ポート(例えば、導波路)に出力できる光スイッチに適用可能である。
【0020】
[0035]特定の実施形態によれば、EO材料は、異なる導波路構造及び/又は異なるプロセスによって製造された導波路構造を伴うデバイスで使用することができる。例えば、EO材料は、導波路構造内の導波路コア、下部クラッド層、及び/又は、上部クラッド層として使用されてもよい。様々な実施形態において、導波路コアは、EO材料層上に堆積されてもよく又はEO材料層にエッチングされてもよく、或いは、半導体基板上に形成された後にEO材料層を含むウエハ又はデバイスに結合されてもよい。
【0021】
[0036]ここで、本明細書の一部を形成する添付図面に関して幾つかの例示的な実施形態を説明する。以下の説明は、単ある実施形態を提供するにすぎず、本開示の範囲、適用性、又は、構成を限定しようとするものではない。むしろ、実施形態の以下の説明は、1つ以上の実施形態を実施するための可能な説明を当業者に提供する。この開示の思想及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び配置に様々な変更を加えることができることが理解される。以下の説明では、説明の目的のために、特定の本発明の実施形態の完全な理解を与えるべく特定の詳細が記載される。しかしながら、これらの特定の詳細を伴うことなく様々な実施形態が実施されてもよいことは明らかである。図及び説明は、限定を意図するものではない。「例」又は「典型的」という単語は、本明細書では「例、事例、又は、例示としての役割を果たす」を意味するために使用される。本明細書中に記載される「典型的」又は「例」として説明される任意の実施形態又は設計形態は、必ずしも他の実施形態又は設計形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0022】
[0037]シリコンフォトニック集積回路(PIC)は、電気集積回路(EIC)よりも優れた性能(例えば、より低い損失、より高速、より高い帯域幅、及び、断熱)を与えることができるとともに、量子通信又は量子コンピューティングに使用することができ、この場合、光子は量子的性質に起因して量子ビットとして使用することができ、光相互接続を使用して極低温プロセッサと室温環境との間のデジタルデータ転送のためのより高い帯域幅を提供することができる。しかしながら、低温での光スイッチング及び/又は光変調のための効率的なEO変調がないことに部分的に起因して、極低温でのPICの性能を改善する必要があり得る。例えば、極低温で動作する幾つかの集積光スイッチは、熱光学位相シフタ又はプラズマ分散スイッチを使用することができ、これは幾つかの固有の制限を被る可能性がある。材料の屈折率を変化させるために熱を使用する熱光学スイッチは、かなりの冷却力を必要とする場合があり、低い帯域幅及び低いスイッチング速度を有する場合がある。プラズマ分散スイッチは、低温でフリーズアウトした電荷キャリアを補償するために高ドーピングレベルを使用することができ、したがって、高抵抗、高挿入損失、及び低帯域幅を有し得る小型共振器をプラズマ分散スイッチに使用することができる。
【0023】
[0038]幾つかのEO材料は、材料の屈折率が材料に印加される電界の強度に比例して変化し得る線形電気光学効果を示し得る。そのような線形電気光学効果は、ポッケルス効果と呼ばれ、非中心対称性材料、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、リン酸二重水素カリウム(KDP)、βホウ酸バリウム(BBO)、酸化チタンリン酸カリウム(KTP)、及びガリウムヒ素(GaAs)及びリン化インジウム(InP)などの幾つかの化合物半導体の結晶材料で生じ得る。ポッケルス効果に基づくEOスイッチは、室温で低い伝搬損失、高い帯域幅、及び低い静的電力消費を有し得る。更に、EOポッケルス効果に基づくEOスイッチは、極低温で熱光学効果及びプラズマ分散効果の固有の制限を被らない場合がある。
【0024】
[0039]図1Aは、特定の実施形態に係るマッハツェンダ干渉計120を含む光スイッチ100の一例を示す簡略図である。図1に示される例において、光スイッチ100は、2つの入力ポート(入力ポート1及び入力ポート2)と、2つの出力ポート(出力ポート1及び出力ポート2)とを含む。光スイッチ100の入力ポート及び出力ポートは、例えば、シングルモード又はマルチモード光ビームをサポートするように動作可能な光導波路を使用して実装することができる。光スイッチ100は、第1の50/50ビームスプリッタ105及び第2の50/50ビームスプリッタ107などの50/50ビームスプリッタのセット(又は方向性結合器)と一体化されたマッハツェンダ干渉計120を使用して実装することができる。図1に示されるように、入力ポート1及び入力ポート2は、入力ポート1又は入力ポート2から光を受信し得る第1の50/50ビームスプリッタ105に光学的に結合され得る。第1の50/50ビームスプリッタ105は、エバネッセント結合を介して、入力ポート1からの入力光の約50%を第1の導波路110に導き、入力ポート1からの入力光の約50%を第2の導波路112に導くことができる。同様に、第1の50/50ビームスプリッタ105は、入力ポート2からの入力光の約50%を第1の導波路110に導き、入力ポート2からの入力光の約50%を第2の導波路112に導くことができる。したがって、入力ポートからの入力光は、ほぼ均等に分割され、第1の導波路110及び第2の導波路112に方向付けられ得る。
【0025】
[0040]マッハツェンダ干渉計120は、導波路124及び電極126を含む位相調整セクション122を含むことができる。電圧信号Vは、導波路124の屈折率、したがって位相調整セクション122を通過した後の光の位相遅延を調整するために、位相調整セクション122内の電極126を介して導波路124の両端間に印加され得る。第1の導波路110及び第2の導波路112における光は、第1の50/50ビームスプリッタ105を伝搬した後に同相であるため、位相調整セクション122における位相調整は、導波路130及び132を伝搬する光の間に所定の位相差を導入することができる。当業者に明らかなように、導波路130及び132内を伝搬する光の間の位相関係の結果、出力光が出力ポート1(例えば、光ビームが同相である場合、)又は出力ポート2(例えば、光ビームの位相がずれている場合)に存在し、それにより、位相調整セクション122において印加される電圧信号Vに基づいて光が出力ポート1又は出力ポート2に向けられるときにスイッチ機能がもたらされる。単一の能動アームが図1に示されるが、幾つかの他の実施形態では、マッハツェンダ干渉計120の両方のアームが位相調整セクションを含むことができる。
【0026】
[0041]図1に示されるように、電気光学スイッチ技術は、全光スイッチ技術と比較して、スイッチの活性領域にわたって電気バイアス(例えば、図1の電圧信号V)を印加して光学的変動を生み出す。バイアス電圧の印加によってもたらされる電界又は電流は、屈折率又は光吸収などの活性領域の1つ以上の光学特性の変化を引き起こす可能性がある。電流の流れによって散逸される電力(電流がバイアス電圧の印加によってもたらされる場合)に加えて、Eκ/8π(cgs単位)のエネルギー密度を有し得るエネルギーが電界の生成によって散逸される場合もあり、ここでEは電界であり、κは誘電率である。
【0027】
[0042]マッハツェンダ干渉計の実装の1つの例が図1に示されるが、リング共振器設計、ディスク共振器設計、マッハツェンダ変調器、一般化マッハツェンダ変調器などを含む他のスイッチアーキテクチャ及び/又は他の位相調整デバイスを様々な実施形態で使用することができる。当業者は、多くの変形、修正、及び、代替手段を認識できる。
【0028】
[0043]前述の位相調整は、ポッケルス効果及び/又はカー効果などのEO効果を使用して達成することができる。ポッケルス効果は、電界を受ける光学媒体において複屈折を変化させ又はもたらし、複屈折は印加された電界に比例する。ポッケルス効果は、ペロブスカイト結晶、強誘電性結晶、又は、電界分極ポリマーもしくはガラスなどの他の非中心対称媒体などの反転対称性を欠く結晶で発生し得る。カー効果では、屈折率変化(又は複屈折)が、印加された電界のパワー(例えば、二乗)に比例する。全ての材料はカー効果を有することができるが、幾つかの材料は他の材料よりも高いカー効果を有することができる。一般に、ポッケルス効果は、カー効果よりもはるかに高いEO効果となり得る。
【0029】
[0044]強誘電結晶は、一般に、電界又は応力によって再配向され得る自発分極を有する。自発分極は、特定の温度範囲にわたって安定であり得る非中心対称結晶構造によってもたらされ得る。ポッケルス効果を有する強誘電結晶としては、BaTiO3(BTO)、(Ba,Sr)TiO3(BST)、(Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、(Pb、La)(Zr,Ti)O3(PLZT)、(Sr,Ba)Nb6(SBN)などが挙げられる。例えば、チタン酸バリウム(BTO)は、室温においてポッケルス係数が比較的大きい。更に、BTOは、大きなSi基板上に成長させることができ、シリコンCMOSプロセスを使用してSiフォトニックプラットフォームに集積することができる。したがって、BTOは、その優れた強誘電特性、高い誘電率、低い誘電損失、化学的及び機械的安定性、並びにCMOSプロセス適合性に起因して、様々な電子用途に使用することができる。
【0030】
[0045]図1Bは、特定の実施形態に係る図1Aに示される光スイッチ100の一実施における位相調整セクション150(例えば、位相調整セクション122)の一例の断面図である。位相調整セクション150は、前述したポッケルス効果などのEO効果を用いてもよい。位相調整セクション150は、基板152と、任意選択的なバッファ層154と、シード層156と、EO材料層158と、導波路コア162と、導波路クラッド層160と、電極164とを含んでもよい。EO材料層158は、高いポッケルス係数を有することができ、例えば、ペロブスカイト強誘電体又は本明細書に記載されるチタン酸バリウム(BaTiO又はBTO)などの他の強誘電結晶を含むことができる。
【0031】
[0046]基板152は、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、ゲルマニウムオンシリコンウエハ、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウエハなどの半導体基板を含むことができる。シード層156は、EO材料層158と同様の格子構造を有していてもよく、例えば、MgO、BaHfO、BaZrO、LaAlO、SrHfO、SrTiO、SrMoO、又はSrZrOを含んでもよい。シード層156は、基板152上に堆積(例えば、エピタキシャル成長)され得る。幾つかの実施形態では、バッファ層154がシード層156と基板152との間に位置されてもよい。バッファ層154は、例えば、SiO層などの基板の酸化層を含むことができる。一例において、バッファ層154(例えば、SiO)は、酸素環境でシード層156(例えば、SrTiO)及び基板152(例えば、Si)の高温酸化アニーリングによって形成され得る。
【0032】
[0047]EO材料層158はシード層156上にエピタキシャル堆積されてもよい。導波路コア162は、例えば堆積及びフォトリソグラフィによってEO材料層158の上に直接に形成されてもよく、又は、EO材料層158と導波路コア162との間にバッファ層を伴ってEO材料層158上に間接的に形成されてもよい。このバッファ層は、EO材料層158と導波路コア162との間の相互作用を防止するために使用することができ、及び/又は、導波路コア162を形成するためのエッチング停止層として機能する。導波路コア162は、例えば、Si、SiN、SiGe、EO材料(例えば、BTO)などを含むことができる。導波路クラッド層160は、酸化物、窒化物、又は酸窒化物、酸炭化物など(例えば、SiO、Si、SiON、SiCOなど)の導波路コア162の屈折率よりも低い屈折率を有する誘電体材料を含むことができ、導波路コア162上に堆積することができる。トレンチが導波路クラッド層160にエッチングされ、該トレンチに金属などの導電性材料が充填されて、電極164が形成されてもよい。電極164を使用して、EO材料層158にわたってバイアス電圧、したがって電界を印加し、位相調整のためにEO材料層の屈折率を変調することができる。
【0033】
[0048]前述のように、チタン酸バリウムなどの幾つかのペロブスカイト強誘電体は、室温で大きなポッケルス係数を有し得る。ペロブスカイト強誘電材料のポッケルス係数は、異なる結晶格子配向に関して異なっていてもよい。更に、ペロブスカイト強誘電材料のポッケルス係数は、異なる動作温度で異なってもよい。例えば、低温では、強誘電材料のポッケルス係数が大幅に低下し得る。
【0034】
[0049]図2は、例えばFelix Eltesらの,「An integrated Cryogenic Optical Modulator,」J.App.Phys(2019)で報告されるように、約4K~約340Kの温度における異なる結晶格子配向を有するBaTiOにおける有効ポッケルス係数を示す。図2において、x軸は4K~340Kの動作温度に対応し、y軸はポッケルス係数(pm/V)に対応する。曲線210は、45°の格子配向を有するBTO層に関する異なる温度における対応するポッケルス係数を示す。曲線220は、22.5°の格子配向を有するBTO層に関する異なる温度における対応するポッケルス係数を示す。曲線230は、67.5°の格子配向を有するBTO層に関する異なる温度における対応するポッケルス係数を示す。曲線240は、90°の格子配向を有するBTO層に関する異なる温度における対応するポッケルス係数を示す。曲線210~240は、BTOのポッケルス効果が異方性であり、したがって、EO効果がEOデバイスのBTO層における結晶格子の配向の関数となり得ることを示している。
【0035】
[0050]曲線210~240は、ポッケルス係数の温度依存性も示す。例えば、図2は、BTO層における結晶格子の配向が約45°であるときに、ポッケルス係数が約240Kなど、約200K~約260Kの間で最も高くなり得ることを示しており、この場合、ポッケルス係数は700pm/Vよりも大きくなり得る。約240K未満では、ポッケルス係数の大きさが4Kで約200pm/Vまで徐々に減少することができ、これは室温でのポッケルス係数の1/3未満である。更に、約140K~約100Kでポッケルス係数の急激な減少があり得る。
【0036】
[0051]BaTiO3のポッケルス係数は、室温でのポッケルス係数と比較して4Kでかなり減少し得るが、値(例えば、約200pm/V)は、室温で他の幾つかの材料よりも依然として大きくなり得る。EOスイッチングのエネルギー効率に対するポッケルス係数の減少の影響は、低温でのBaTiOの誘電率の減少によって部分的に補償され得る。更に、BaTiOの導電率は低温で低下する場合があり、これは、極低温環境におけるBaTiOデバイスの静的電力消費を低減するのに役立ち得る。
【0037】
[0052]極低温でポッケルス効果ベースのEOデバイスの性能を改善するために、極低温でEO材料の高い室温ポッケルス係数を維持することが望ましい場合がある。特定の実施形態によれば、ポッケルス効果の減少が、温度の変化に伴う結晶の歪み及び分極の変化、並びに、特定の温度での結晶の結晶相及び分極転移によって少なくとも部分的に引き起こされ得ると判断され、これは、前述のように、ポッケルス効果が反転対称性(例えば、非中心対称)を欠く結晶で起こり得るとともに、ポッケルステンソルの非ゼロ要素が結晶対称性に依存し得るからである。したがって、EO材料が極低温でその室温結晶構造を維持できる場合、極低温でのEO材料のポッケルス係数を改善することができる。
【0038】
[0053]図3A図3Dは、異なる温度におけるABOペロブスカイト結晶(例えば、BaTiO)の結晶相転移を示す。チタン酸バリウム(BaTiO3)は、一般に、キュリー温度(例えば、約120℃で)を超えると正味の分極がない常誘電相となり得る。図3Aは、キュリー温度を超えるBaTiO3中の立方晶結晶構造310を示す。サイズが大きいバリウムイオン(Aイオン)は一般的に角部を占める。サイズが小さいチタン酸イオン(Bイオン)は一般に立方体の中心に位置する。酸素アニオンは一般に面中心にある。多くの他の酸化物結晶とは異なり、ペロブスカイト結晶中の酸素アニオンは密集構造を形成しない場合がある。そのため、温度変化やペロブスカイト結晶内の応力によって、ペロブスカイト結晶の結晶構造(例えば、BaTiO)が変化することがある。ほぼキュリー温度で、結晶は、相転移(変位相転移とも呼ばれる)を受ける場合があり、約5℃~約120℃の温度範囲内で極性正方晶相をとり得る。
【0039】
[0054]図3Bは、約5℃~約120℃の温度範囲内のBaTiO中の極性正方晶結晶構造320を示す。キュリー温度から冷却すると、極性正方晶結晶構造320が形成され得る。正方晶構造の形成は、単位格子を永続的に分極させる場合があり、これは、立方晶結晶構造310における6つの等価な<100>軸のいずれかと平行であり得るc軸に沿った自発分極をもたらし得る。したがって、極性正方晶相は、単位格子の縁部と平行な6つの安定な偏光方向を有することができ、それにより、6つの異なる結晶変種をもたらす。
【0040】
[0055]図3Cは、約-90℃~約5℃の温度範囲内のBaTiOにおける斜方晶型の結晶構造330を示す。図3Cに示されるように、約5℃未満に更に冷却すると、BaTiOの単位格子は面対角線(<110>)方向332に沿って伸びることにより更に歪むことがあり、正方晶の結晶構造320が斜方晶の結晶構造330に変化することがある。立方晶結晶構造310には12個の等価な<110>方向が存在する場合があり、これにより、斜方晶相に12個の想定し得る極性方向がもたらされ得る。斜方晶相は、約5℃から約-90℃に至るまで安定し得る。
【0041】
[0056]図3Dは、約-90℃未満の温度でのBaTiOにおける菱面体晶結晶構造340を示す。図3Dに示されるように、約-90℃未満に更に冷却すると、BaTiOの単位格子は、体心対角線(<111>)方向342に沿って別の歪みを受け、それにより、菱面体対称構造をもたらす可能性がある。立方晶結晶構造310における<111>方向に沿った菱面体晶相には、8つの等価な極性方向が存在し得る。
【0042】
[0057]したがって、バルクBaTiO3結晶は、室温における正方晶相から約270K以下で斜方晶相に転移し、その後、約180K以下で菱面体晶相に転移し得る。そのような結晶構造及び相転移は、多くのペロブスカイト強誘電体に見られ得る。相転移は、ポッケルステンソルの要素を変化させ、有効ポッケルス係数の大きさを変え得る。
【0043】
[0058]前述したように、結晶構造及び相転移は、利用可能な偏光方向にも影響を及ぼし得る。微細構造レベルでは、均一な電気分極を伴う領域がドメインを形成することができ、各ドメインは単結晶変異体を含む領域である。ドメイン間の界面は、ドメイン壁と呼ばれ得る。強誘電結晶は、ドメイン及びドメイン壁の安定した最小エネルギー配置をとることができる。多くの場合、大域的最小値は達成されない場合があり、また、安定状態が局所的エネルギー最小値となる場合があり、エネルギー最小化は、歪み及び壁全体にわたる分極の適合性を維持することによってエネルギーを最小化するように配向されるドメイン壁によって分離される、複数のドメインを伴う結晶をもたらし得る。
【0044】
[0059]したがって、極低温で室温結晶構造及び分極方向を維持することによって、極低温でのEO材料のポッケルス係数を改善することができる。例えば、特定の実施形態によれば、EO材料層は、交互配置されてかみ合わされた薄いEO材料層及び中間層を含むことができる。中間層は、動作温度で変化しない格子構造を有してもよい。したがって、中間層にかみ合わされた薄いEO材料層は、図3A図3Dに関して前述したように動作温度が変化するときに相転移を受けることなく、それらの格子構造及び分極方向、したがってEO係数を維持することができる。
【0045】
[0060]図4は、特定の実施形態に係る、室温から極低温に至るまで実質的に一定のEO係数を特徴とするEO材料層を含むEOデバイスを製造するための方法の一例を示す簡略フローチャート400である。なお、図4では、シーケンシャルフローでの動作を説明しているが、一部の動作が並行して又は同時に行なわれてもよい。幾つかの動作が異なる順序で実行されてもよい。プロセスは、図に含まれない更なるステップを有してもよい。幾つかの動作は、任意選択的であってもよく、したがって、様々な実施形態で省かれてもよい。また、幾つかの動作が他の動作と共に実行されてもよい。
【0046】
[0061]ブロック410では、シード層(例えば、シード層156)が基板(例えば、基板152)上に堆積され得る。前述したように、基板は、単結晶シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、ゲルマニウムオンシリコンウエハ、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウエハなどの半導体ウエハであってもよい。基板は、4インチ、6インチ、8インチ、10インチ、12インチ、又はそれ以上などの様々なサイズの半導体ウエハを含むことができる。一般に、生産性を向上させるためには、大きなウエハを用いることが望ましい。例えば、12インチシリコンウエハを基板として用いてもよい。
【0047】
[0062]シード層は、EOデバイスに用いられるEO材料の格子構造と同様の格子構造を有してもよく、例えば、SrTiO3(STO)、MgO、LaAlOなどを含んでいてもよい。シード層は、例えば、分子線エピタキシ(MBE)を使用して基板上にエピタキシャル堆積又は成長されてもよい。一実施形態では、Sr及びTiを酸素環境下でシリコンウエハの表面に堆積させて非晶質SrTiO層を形成することができ、また、非晶質SrTiO層は、より高温で結晶化してエピタキシャル結晶性SrTiO層を形成することができる。SiとSTOとの間の格子不整合は約2%であってもよく、また、STO層の厚さが例えば約5nm未満である場合、高品質STOはシリコンに対して殆どコヒーレントであり得る。
【0048】
[0063]図5Aは、特定の実施形態に係るエピタキシャルシード層520を有する基板510(例えば、半導体ウエハ)の一例を示す。図5に示される例では、基板510がシリコン又はSOIウエハを含むことができる。エピタキシャルシード層520は、例えば数ナノメートル又は数十ナノメートル、例えば約8nm未満又は約5nm未満の厚さを有することができるコヒーレントなエピタキシャルSTO層を含むことができる。
【0049】
[0064]図4に戻って参照すると、ブロック420において、第1の薄いEO材料層が、例えばエピタキシャル堆積によってシード層上に堆積されてもよい。第1の薄いEO材料層は、例えば、BaTiO3(BTO)、(Ba,Sr)TiO3(BST)、(Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、(Pb、La)(Zr,Ti)O3(PLZT)などの強誘電材料又はペロブスカイト強誘電材料を含むことができる。第1の薄いEO材料層は、例えば100nm未満の厚さを有することができる。BTOとシリコンとの間の格子不整合は約4%であってもよく、BTO層の厚さが約100nm未満である場合、BTO層はSi/STOに対して部分的にコヒーレントであってもよく、これにより、BTO層内に圧縮応力がもたらされ得る。したがって、シード層上に堆積された第1の薄いEO材料層(例えば、BTO)は、圧縮応力に起因する面外分極を有し得る。
【0050】
[0065]図5Bは、特定の実施形態に係るシード層520上にエピタキシャル堆積されたEO材料の層530の内部応力及び結晶格子配向を示す。EO材料は、前述したように、例えば、BaTiO3(BTO)、(Ba,Sr)TiO3(BST)、(Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、(Pb、La)(Zr,Ti)O3(PLZT)などを含んでもよい。堆積されると、EO材料の層530(例えば、STO/Si上のBTO)は、図5Bに示されるように、圧縮応力に起因して、正方晶構造525を有するドメインを主に含むことができ、この場合、正方晶構造525のc方向は層530に対して垂直である(すなわち、面外偏向)。層530は、層530内の強誘電材料が低温で正方晶構造を有する中間層に固着するために、100nm未満又はそれより薄いなどの薄層であってもよい。
【0051】
[0066]図4のブロック430において、基板、シード層、及び、第1の薄いEO材料層は、SiOの融点を超えるようなより高い温度の酸素環境においてアニールされてもよい。例えば、アニーリング温度は、600℃超、例えば750℃以上であってもよい。高温アニーリングは、応力を解放し、基板(例えば、Si)とシード層(例えば、STO)との間の界面にバッファ層を形成するのに役立ち得る。バッファ層は、SiO層などの酸化物層を含むことができる。例えば、基板とシード(例えば、STO)層との間の界面のシリコンは、高いアニーリング温度及び酸素環境で酸化されてSiO層を形成することができる。アニーリング温度がバッファ層の融点(例えば、約600℃)を超えると、バッファ層(例えば、SiO)が軟化する可能性があり、したがって、シード層及び第1の薄いEO材料層は、基板から分離することができ、シード層及び第1の薄いEO材料層における応力を解放できるようにされる。したがって、高温アニーリング中のSiOの軟化により、EO材料(例えば、BTO)における応力が圧縮応力から自然応力に変化する可能性があり、シード層及び第1の薄いEO材料層の品質を改善することができる。
【0052】
[0067]高温では、BTO(例えば、約3.5E-6/℃)とケイ素(例えば、約2.6E-6/℃)との間の熱膨張係数(CTE)に大きな差があり得る。したがって、バッファ層(例えば、SiO)が冷却中に550℃未満で硬化すると、ケイ素とBTOとの間の大きなCTE差により、BTOの応力が自然から引張への応力遷移を受ける可能性がある。したがって、室温では、BTOの正味又は支配的な応力は、圧縮応力から引張応力に変化している可能性があり、これにより、面外分極から面内配向へ分極が変化する可能性がある。したがって、BTOが引張応力下にあり且つBTOとシリコンとの間のCTEの大きな差によって引き起こされる応力に起因して冷却後に面内分極を有するように、アニーリング温度を選択することができる。
【0053】
[0068]図5Cは、特定の実施形態に係る高温酸化アニーリング後のシード層520上にエピタキシャル堆積されたEO材料の層530の内部応力及び結晶格子配向を示す。図示のように、前述のようなアニーリング後の層530における引張応力に起因して、強誘電材料の層530(例えば、STO/Si上のBTO)は、正方晶構造535のc方向が層530と平行である(すなわち、面内偏向)正方晶構造535を有するドメインを主に含み得る。また、図5Cは、高温酸化アニーリング中の基板の酸化によって形成された酸化物層(例えば、SiO)などのバッファ層540も示す。
【0054】
[0069]図6は、特定の実施形態に係るアニーリング前後のエピタキシャル層(例えば、SrTiOエピタキシャル層)の一例についてラザフォード後方散乱分光法(RBS)/チャネリングを使用して測定されたイオンチャネリングによって示されるアニーリング後の結晶品質改善を示す。RBS/チャネリングでは、格子サイトから変位した原子がチャネリングされたビームと相互作用でき、それにより、散乱収率の増大がもたらされる。図6の曲線610は、アニーリング前のSrTiOエピタキシャル層によって後方散乱された異なるチャネル(後方散乱粒子のエネルギー)において検出された後方散乱粒子(例えば、イオン)の総数を示す。図示するように、アニーリング前において、SrTiOエピタキシャル層は、置換されたSr及びTi原子を多く含む。図6の曲線620は、アニーリング後のSrTiOエピタキシャル層によって後方散乱された異なるチャネルにおいて検出された後方散乱粒子の総数を示す。曲線620は、置換されたSr及びTi原子の数又は割合が著しく減少し、したがって結晶性SrTiOエピタキシャル層の品質が著しく改善されることを示している。図6には示されないが、BTOエピタキシャル層の品質は、アニーリングプロセスによって同様に改善され得る。
【0055】
[0070]図7は、エピタキシャル層の一例(例えば、SrTiOエピタキシャル層)の高温での異相格子定数緩和を示すX線回折データの例を示す。SrTiOエピタキシャル層は、例えば、MBEを用いてシリコンウエハ上に堆積させることができる。図7は、約600℃未満の温度では異相熱格子膨張が温度の一次関数であり得ることを示す。異相格子定数は約600℃で緩和し始める可能性があり、これはSTOが約600℃未満の圧縮応力下にあり且つ圧縮応力が600℃を超える温度で解放される可能性があることを示す。
【0056】
[0071]図4に戻って参照すると、ブロック440において、薄い中間層を第1のEO材料層(例えば、BTO層)上に堆積させることができ、薄いEO材料層(例えば、別のBTO層)を中間層上に堆積させることができる。また、中間層及びEO材料層は、BTOを緩和し、結晶品質を改善して、薄いBTO層における面内分極を確保するべく、上記のような高温酸化アニーリングを使用してアニールされてもよい。薄い中間層及び薄いEO材料層は、EO材料層の合計厚さが目標厚さに達するまで、交互配置されてかみ合わされた中間層及びEO材料層の積層体を形成するべく、複数のプロセスサイクルのそれぞれにおいて交互に堆積及びアニーリングされ得る。
【0057】
[0072]様々な実施形態において、中間層は、EO材料の結晶構造と同様の結晶構造を含んでもよく、低温で相転移を受けなくてもよい。したがって、極低温では、中間層は、EO材料の室温結晶構造と同様の結晶構造を有し得る。中間層は、例えば、MgO、BST、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrNbO、SrZrO、又はBTOの正方晶結晶構造の格子定数に近い格子定数を有する他の酸化物などの特定の酸化物を含むことができる。中間層は、室温でのその正方晶相からより低い温度での他の相へのBTOの転移を制限することができる。
【0058】
[0073]図5Dは、特定の実施形態に係る加工ウエハ500の一例における中間層と交互配置されたEO材料の層の内部応力及び結晶格子配向を示す。図5Dに示される例において、加工ウエハ500は、基板510(例えば、シリコンウエハ)、バッファ層540(例えば、SiOバッファ層)、シード層520(例えば、約8nm未満の厚さを有するSTO層)、及び、それぞれが約100nm未満の厚さを有する薄いBTO層などの複数の薄いEO材料層530,532,534などを含むことができる。複数の薄いEO材料層530,532、534の間には、MgO、BST、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrZrO、SrNbO、又は他の酸化物の層などの複数の中間層550,552などがある。各中間層550又は552は、例えば約10nm未満の厚さを有することができ、薄いBTO層を互いに分離し、薄いBTO層に引張応力を加えるために使用することができる。幾つかの実施形態において、各EO材料層の厚さと各中間層の厚さとの間の比は、約20:1、10:1、8:1、5:1又はそれ未満であり得る。EO材料の層における正味の又は支配的な応力は、引張応力となり得る。前述したように、交互配置された中間層及び薄いEO材料層を含む層の積層体は、正方晶構造535によって示されるように、EO材料を緩和し、材料品質を改善し、EO材料層(例えば、結晶構造のc軸はEO材料層と平行である)における面内分極を確保するために、高温アニーリングにおいてアニールされてもよい。
【0059】
[0074]また、前述したように、交互配置されてかみ合わされた薄いEO材料層及び中間層(例えば、BTO/MgO積層体)の積層体は、低温でEO材料内の引張応力を維持することができ、したがって、引張応力に起因して低温(例えば、極低温)でEO材料の正方晶構造535を維持することができる。したがって、極低温でのEO材料のポッケルス効果などのEO効果は、室温でのEO材料のポッケルス効果に近い場合がある。
【0060】
[0075]ブロック450において、導波路は、交互配置された薄いEO材料層及び中間層の積層体上に形成され又は該積層体に結合されてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、シリコン、SiGe、又はSi層などの導波路層を積層体上に直接に堆積することができ、シリコン、SiGe、又はSi層をフォトリソグラフィを使用してパターニングして導波路コアを形成することができ、その後、クラッド層(キャッピング層とも呼ばれる)を導波路コア上に堆積して導波路を形成することができる。シリコン、SiGe、又はSi層は、バッファ層を間に挟んで積層体上に間接的に堆積されてもよい。バッファ層は、導波路コアとEO材料との間の相互作用を防止することができ、及び/又は、導波路層をパターニングするためのエッチング停止層として機能する。幾つかの実施形態において、導波路コア並びに上部クラッド層及び/又は下部クラッド層は、第2の基板上に形成されてもよく、その後、交互配置された薄いEO材料層及び中間層(例えば、加工ウエハ500)の積層体に結合されてもよく、この場合、加工ウエハ500の基板は、例えば、水平ウェットエッチング(例えば、犠牲層を用いて)又はレーザリフトオフ技術などの他のリフトオフ技術によって後で除去されてもよい。幾つかの実施形態では、薄いEO材料層の幾つかを使用して導波路コアを形成することができる。
【0061】
[0076]導波路のクラッド層は、導波路コアの屈折率よりも低い屈折率を有する誘電体材料又はEO材料を含んでもよい。クラッド層は、例えば、Si、酸化物(例えば、SiO、Al、及びMgO)、又は、高κ材料(例えば、酸化ハフニウム(HfO)などを含んでもよい。幾つかの実施形態において、圧縮応力(例えば、Si、SiO、Alなど)を有する非晶質誘電体クラッド層は、約550℃未満の温度で交互配置された薄いEO材料層及び中間層の積層体上に堆積されてもよい。クラッド層は、EO材料の正方晶相を更に維持するために、交互配置された薄いEO材料層及び中間層の積層体に引張応力を加えることができる。また、クラッド層は、ウエハ・トゥ・ウエハボンディング又はダイ・トゥ・ウエハボンディングのための誘電体層として使用されてもよい。幾つかの実施形態では、クラッド層は、特定のエッチングプロセスのためのエッチング停止層として使用することができる。交互配置された薄いEO材料層及び中間層の積層体を使用する導波路構造及びEOデバイス構成の幾つかの例を以下に詳細に説明する。
【0062】
[0077]図5Eは、特定の実施形態に係る導波路構造505内の中間層と交互配置されたEO材料の層の内部応力及び結晶格子配向を示す。図示のように、導波路コア560は、加工ウエハ500と隣り合ってもよく、導波路クラッド層570によって覆われてもよい。導波路クラッド層570は、非晶質誘電体クラッド層(例えば、Si、SiO、Alなど)を含むことができ、薄いEO材料層の積層体に引張応力を加えて、EO材料の正方晶相を低温で維持することができる。例えば、SiO及びBTOは、低温(例えば、極低温)で非常に異なるCTE特性を有することができ、SiOのCTEは、低温で負(すなわち、温度が低下するにつれて膨張する)になり得る。したがって、極低温に冷却されると、SiOクラッド層は、BTO層とSiOクラッド層との間のCTEの大きな差に起因して、BTO層に引張応力を加え得る。したがって、EO材料の層における支配的な応力は、室温から極低温までの温度において引張応力となり得る。したがって、EO材料の層は、正方晶結晶構造及び面内分極を維持することができ、結晶構造のc軸はEO材料層と平行であり得る。
【0063】
[0078]ブロック460において、電圧信号をEO材料層に印加するために、積層体内のEO材料層に電気的接続を行なうことができる。例えば、トレンチをクラッド層中に及び積層体内のEO材料層を貫通してエッチングすることができ、TiN又はTi及びTiNなどの薄い導電性ライナ材料の層を最初にトレンチ側壁でコーティングして、接着を促進するとともに拡散を防止することができ、その後、導電性電極材料(例えば、W又はCo)がトレンチを充填してEOデバイス用の電極を形成することができる。或いは、導電性バリア材料(例えば、TaN)及びライナ(例えば、Ta、Co、又はRu)を最初にトレンチ側壁にコーティングして、Cu導電性電極を堆積させる。このようにすると、EO材料層のそれぞれは、電極と接触することができ、また、電圧信号を受信して、電圧信号によってもたらされる電界に起因してその屈折率を変化させることができる。
【0064】
[0079]図8は、特定の実施形態に係る極低温で正方晶相を維持することができるEO材料層を含む導波路構造800の一例の簡略断面図である。導波路構造800は、例えば、ウエハ間融着によって互いに結合される第1の部分802及び第2の部分804を含んでもよい。第1の部分802は、薄い中間層840,842、844と交互配置された薄いEO材料層830,832,834、836の積層体を含んでもよい。図4及び図5B図5Dに関して前述したように、EO材料層830,832,834、836は、BaTiO3(BTO)、(Ba、Sr)TiO3(BST)、(Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、(Pb、La)(Zr、Ti)O3(PLZT)などの強誘電結晶を含むことができる。中間層840,842、844は、例えば、MgO、BST、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrNbO、SrTiO、SrZrO、又は他の酸化物を含むことができる。
【0065】
[0080]EO材料層及び中間層は、EO材料層及び中間層が互いに交互配置されてかみ合わされることにより交互配置層の積層体を形成することができるように交互に形成されてもよい。EO材料層及び中間層は薄層であってもよく、各EO材料層の厚さと各中間層の厚さとの比は、約20:1、10:1、8:1、5:1又はそれ未満であってもよい。一例では、各EO材料層の厚さが約100nm以下であってもよく、各中間層の厚さが約10nm以下であってもよい。積層体における複数のEO材料層の合計厚さは、約300nm超などの特定の値より大きくてもよい。交互配置層の積層体がシード層820上に形成されてもよく、シード層は、前述のように、例えば半導体基板(例えば、シリコン基板)(図8には示されない)上に堆積されてもよい。例えば、前述した高温酸化アニーリングプロセスを用いて、シード層820と半導体基板との間にバッファ層810を形成してもよい。
【0066】
[0081]第2の部分804は、半導体基板(例えば、シリコンハンドルウエハ)又はガラス、石英、セラミック、もしくは金属基板であってもよい基板860上に形成された導波路を含み得る。導波路は、導波路コア870及び導波路クラッド層880を含むことができる。導波路コア870は、シリコン、SiN、SiGeなどの高屈折率を有する材料を含むことができる。導波路クラッド層880は、導波路コア870の屈折率よりも低い屈折率を有することができる誘電体材料を含むことができる。導波路クラッド層880は、例えば、Si、SiO、Al、MgO、SiON、SiCN、SiCON、SiCOなどの非晶質誘電体クラッド層を含むことができる。導波路クラッド層880は、ウエハ間結合及びダイ転写のための誘電体層として使用することができる。導波路クラッド層880は、第1の部分802に結合されると、交互配置された薄いEO材料層及び中間層の積層体に引張応力を加えて、上記のように低温でEO材料の正方晶相を維持することができる。また、導波路構造800の第2の部分804は、基板860の上に形成された他の受動又は能動デバイスを含んでもよい。
【0067】
[0082]第1の部分802と第2の部分804とが互いに結合された後、薄いEO材料層830,832,834、836と薄い中間層840,842、844との積層がその上に形成される半導体基板は、例えば、バックラッピング、バックグラインド、水平ウェットエッチング、リフトオフ技術(例えば、レーザリフトオフ技術)などによって、薄くされてもよく又は除去されてもよい。その後、バッファ層810側から第1の部分802と第2の部分804との間の界面に至るまでトレンチを第1の部分802にエッチングすることができ、この場合、導波路クラッド層880をエッチングプロセスのためのエッチング停止層として使用することができる。Ti、TiN、及びTaNなどの導電性材料が、電極金属(例えば、Cu、W、Coなど)と共に、堆積され或いはさもなければトレンチを充填し、電極850を形成することができる。
【0068】
[0083]電極850を使用して、表面接点ではなくエッジ接点を介して電圧信号を薄いEO材料層830,832,834、836に印加することができる。エッジ接点は、EO材料の誘電率とは異なる誘電率を有し得る中間層を介さずにEO材料層に直接電圧信号を印加することができる。例えば、MgOはBTOよりも誘電率が低くてもよい。したがって、エッジ接点は、誘電率の差に起因する中間層によって引き起こされる電界干渉を排除するのに役立ち得る。幾つかの実施形態では、中間層(例えば、BST層)は、EO材料(例えば、BTO)の誘電率と同様の誘電率を有することができ、表面接点を使用して電圧信号をEO材料層に印加することができる。
【0069】
[0084]図9は、特定の実施形態に係る極低温で正方晶相を維持することができるEO材料層を含む導波路構造900の別の例の簡略断面図である。導波路構造900は、前述の基板152又は510と同様であってもよい基板910を含むことができる。一例では、基板910が大きな(例えば、12インチ)シリコンウエハを含む。また、導波路構造900は、基板910上にバッファ層922及びシード層920を含むこともできる。バッファ層922は、前述のバッファ層154,540又は810と同様であってもよい。バッファ層922の一例は、SiO層である。シード層920は、前述のシード層156,520又は820と同様であってもよい。シード層920の一例は、STO層である。前述したように、バッファ層922は、基板910上に堆積されたシード層920の高温酸化アニーリング(例えば、シリコンウエハ)によって形成することができ、この場合、基板910は、シード層920と基板910との間の界面で酸化されて、シード層920と基板910との間にバッファ層922を形成することができる。
【0070】
[0085]導波路構造900は、複数のEO材料層930,932,934など、及び、複数の中間層940,942などを含むことができる。前述したように、EO材料層930,932,934は、BaTiO3(BTO)、(Ba,Sr)TiO3(BST)、(Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、(Pb、La)(Zr,Ti)O3(PLZT)などの強誘電結晶を含むことができる。中間層940及び942は、例えば、MgO、BST、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrNbO、SrTiO、SrZrO、又は他の酸化物を含むことができる。EO材料層及び中間層は、シード層920の上に交互に堆積されてもよく、それにより、EO材料層及び中間層は、互いに交互配置されてかみ合わされ、交互配置層の積層体を形成してもよい。EO材料層及び中間層は薄層であってもよく、各EO材料層の厚さと各中間層の厚さとの比は、約20:1、10:1、8:1、5:1又はそれ未満であってもよい。一例では、各EO材料層の厚さが約100nm以下であってもよく、各中間層の厚さが約10nm以下であってもよい。積層体における複数のEO材料層の合計厚さは、約300nm超などの特定の値より大きくてもよい。
【0071】
[0086]導波路コア950及びクラッド層960を含む導波路は、例えば図4のブロック450及び図5Eに関して前述したように、交互配置層の積層体上に形成されてもよい。導波路コア950は、例えば、Si、SiGe、又はSiNを含むことができ、クラッド層960は、例えば、Si、SiO、Al、MgO、SiCN、SiON、SiCO、HfOなどを含むことができる。
【0072】
[0087]その後、トレンチを、クラッド層960及び交互配置層の積層体において、クラッド層960から、エッチングプロセスのためのエッチング停止層として使用されてもよい、シード層920又はバッファ層922に至るまで、エッチングすることができる。金属(例えば、Cu、W、Coなど)などの導電性材料が、堆積され或いはそうでなければトレンチを充填して、電極970を形成することができる。図8に関して前述したように、電極970は、EO材料層930,932、934の誘電率とは異なる誘電率を有し得る中間層940及び942によって引き起こされる電界干渉を回避するために、表面接点ではなくエッジ接点を介して電圧信号をEO材料層930,932、934に印加するために使用され得る。
【0073】
[0088]図10は、特定の実施形態に係る低温で正方晶相を維持することができるEO材料層を含む導波路構造1000の更に別の例の簡略断面図である。導波路構造1000は、前述の基板152,510又は910と同様であってもよい基板1010を含むことができる。また、導波路構造1000は、基板1010上にバッファ層1022及びシード層1020を含むこともできる。バッファ層1022は、前述のバッファ層154,540,810又は922と同様であってもよい。バッファ層1022の一例は、SiO層である。シード層1020は、前述のシード層156,520,820又は920と同様であってもよい。シード層1020の一例は、STO層である。前述したように、バッファ層1022は、基板1010上に堆積されたシード層1020の高温酸化アニーリング(例えば、シリコンウエハ)によって形成することができ、この場合、基板1010は、シード層1020と基板1010との間の界面で酸化されて、シード層1020と基板1010との間にバッファ層1022を形成することができる。
【0074】
[0089]導波路構造1000は、複数のEO材料層1030、1032、1034、1036など、及び、複数の中間層1040、1042、1044などを含むことができる。前述したように、EO材料層1030,1032,1034,1036は、BaTiO3(BTO)、(Ba,Sr)TiO3(BST)、(Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、(Pb、La)(Zr,Ti)O3(PLZT)などの強誘電結晶を含んでいてもよい。中間層1040、1042、及び1044は、例えば、MgO、BST、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrNbO、SrTiO、SrZrO、又は他の酸化物を含むことができる。EO材料層及び中間層は、シード層1020の上に交互に堆積されてもよく、それにより、EO材料層及び中間層は、互いに交互配置されてかみ合わされ、交互配置層の積層体を形成してもよい。EO材料層及び中間層は薄層であってもよく、各EO材料層の厚さと各中間層の厚さとの比は、約20:1、10:1、8:1、5:1又はそれ未満であってもよい。一例では、各EO材料層の厚さが約100nm以下であってもよく、各中間層の厚さが約10nm以下であってもよい。積層体における複数のEO材料層の合計厚さは、約300nm超などの特定の値より大きくてもよい。
【0075】
[0090]導波路構造1000は、クラッド層1050と、交互配置層の幾つかの層を含む導波路コアとを含む導波路を更に含むことができる。図10に示される例において、導波路コアは、例えばフォトリソグラフィによってパターニングされ得るEO材料層1034及び1036並びに中間層1042及び1044を含んでもよい。幾つかの実施形態において、中間層1044及び1042は、EO材料層1034及び1036をエッチングするためのエッチング停止層として使用されてもよい。例えば、中間層1044は、第1のレシピを使用してEO材料層1036をエッチングするためのエッチング停止層として使用されてもよく、その後、中間層1044は、第2のレシピを使用してエッチングされてもよく、また、中間層1042は、第1のレシピを使用してEO材料層1034をエッチングするためのエッチング停止層として使用されてもよい。このようにして、導波路コアは、幾つかのEO材料層及び中間層を含むメサ構造として形成されてもよい。
【0076】
[0091]クラッド層1050は、例えば、図4のブロック450及び図5Eに関して前述したように導波路コア上に形成することができる。クラッド層1050は、例えば、Si、SiO、Al、MgO、SiCN、SiON、SiCO、SiOCN、HfOなどを含んでいてもよい。トレンチを、クラッド層1050及び交互配置層の積層体内の幾つかの層において、クラッド層1050から、トレンチをエッチングするためのエッチング停止層として使用されてもよい、シード層1020又はバッファ層1022に至るまで、エッチングすることができる。金属(例えば、Cu、W、Coなど)などの導電性材料が、堆積され或いはそうでなければトレンチを充填して、電極1060を形成することができる。前述したように、電極1060は、エッジ接点を介してEO材料層1030及び1032に電圧信号を印加するために、及び/又は、EO材料層1034及び1036に電圧信号を印加するために使用することができる。
【0077】
[0092]前述の導波路構造800,900及び1000はそれぞれ、交互のEO材料層及び中間層を含む交互配置層の積層体を含むことができる。EO材料層及び中間層は、薄くてもよく、室温で同様の格子構造を有してもよく、したがって製造プロセス後にかみ合わされてもよい。中間層は、動作温度が変化するときに相転移を受けない材料を含むことができる。したがって、薄いEO材料層と中間層との間のかみ合わせは、動作温度が例えば極低温に変化するときにEO材料層が相転移するのを防ぐことができる。したがって、EO材料層は、その室温格子構造(例えば、正方晶相)及び分極(例えば、同相分極)、したがってEO効果(例えば、ポッケルス係数)を極低温で実質的に維持することができる。導波路構造800,900及び1000は、前述したマッハツェンダ干渉計120又は光スイッチ100などの、位相調整又は屈折率変調を使用して低温で動作する光スイッチ、EO変調器、又は他のアクティブフォトニックデバイスで使用することができる。
【0078】
[0093]本明細書に開示される導波路構造及びEOデバイスの様々な実施形態では、単一横モード導波路(例えば、導波路コアの幅はサブミクロンからミクロンの範囲である)又はマルチモード導波路(2つ以上の横モードをサポートするより広い導波路コアを有する)を利用することができる。様々な材料、層、及び構造は、例えば、エピタキシャル成長、堆積、層転写などを使用して形成され、EOデバイスを製造することができる。極低温でポッケルス効果を改善するための技術が幾つかの実施形態に記載されているが、本明細書に開示される技術は、異なる温度で他のEO効果を改善するために使用することができる。当業者は、多くの変形、修正、及び、代替手段を認識できる。
【0079】
[0094]図11は、特定の実施形態に係る室温から極低温に至るまで実質的に一定のEO係数を特徴とするEO材料層を含む加工ウエハ及び/又はEOデバイスを製造するための方法の一例を示す簡略フローチャート1100である。なお、図11では、シーケンシャルフローでの動作を説明しているが、一部の動作が並行して又は同時に行なわれてもよい。幾つかの動作が異なる順序で実行されてもよい。プロセスは、図に含まれない更なるステップを有してもよい。幾つかの動作は、任意選択的であってもよく、したがって、様々な実施形態で省かれてもよい。また、幾つかの動作が他の動作と共に実行されてもよい。
【0080】
[0095]ブロック1110において、動作は、基板上にシード層を堆積させることを含むことができる。基板としては、例えば、前述したように、半導体基板(例えば、シリコンウエハ)、ガラス基板、石英基板、セラミック基板等が挙げられる。シード層は、例えば、MBE技術を用いて基板上にエピタキシャル成長させることができ、例えば、SrTiO3(STO)、MgO、又はLaAlOを含むことができる。
【0081】
[0096]ブロック1120において、動作は、例えばMBE技術を使用してシード層上に第1の電気光学材料層をエピタキシャル堆積させることを含むことができる。シード層は、第1のEO材料層の格子構造及び/又は基板の格子構造と同様の格子構造を有してもよく、例えば、BTO、BST、PZT、PLZTなどの強誘電材料又はペロブスカイト強誘電材料を含んでもよい。第1のEO材料層中の材料は、室温で正方格子構造を有してもよく、バルクで使用される場合、より低温でその格子構造及び結晶相を変化させてもよい。第1のEO材料層は、例えば100nm未満の厚さを有してもよい。
【0082】
[0097]ブロック1130において、動作は、基板とシード層との間に酸化物バッファ層を形成するために酸素環境において基板、シード層、及び第1の電気光学材料層をアニールすることを含むことができる。アニーリングは、例えば、酸化物バッファ層の軟化温度より高い温度、例えば600℃より高い温度(例えば、750℃以上)で行ってもよい。高温アニーリングは、基板(例えば、Si)とシード層(例えば、STO)との間の界面に酸化物バッファ層(例えば、SiO)を形成するのに役立ち得る。アニーリング温度が酸化物バッファ層の軟化温度より高い場合、酸化物バッファ層は軟化する可能性があり、したがって、シード層及び第1のEO材料層は、基板から分離されてもよく、シード層及び第1のEO材料層内の応力を解放できるようにされる。
【0083】
[0098]ブロック1140において、動作は、第1の電気光学材料層上に第1の中間層を堆積させることを含むことができる。第1の中間層は、第1のEO材料層の結晶構造と同様の結晶構造を含み、低温で相転移しなくてもよい。したがって、第1の中間層は、第1の格子構造を室温及び極低温(例えば、約4Kで)で維持できる材料を含んでいてもよい。第1の中間層は、例えば、MgO、(Ba,Sr)TiO、BaHfO、BaZrO、SrHfO、SrNbO、SrTiO及びSrZrOなどのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0084】
[0099]ブロック1150において、動作は、第1の中間層上に第2の電気光学材料層を堆積させることを含んでもよい。第2の電気光学材料層は、第1の電気光学材料層と同様であってもよい。ブロック1160において、動作は、高温アニーリングにおいて第2の電気光学材料層及び第1の中間層をアニールして、第2のEO材料層を緩和し、材料品質を改善し、第2のEO材料層における面内分極を確保することを含むことができる。
【0085】
[0100]幾つかの実施形態では、EO材料層の総厚が所望の値よりも大きくなるまで、更なる中間層及びEO材料層を交互に堆積させることができる。幾つかの実施形態において、交互配置された中間層及びEO材料層を含む更なる層は、高温アニーリングでアニールされてもよい。第1の中間層、第2の中間層、及び、更なる中間層は、例えば約10nm未満の厚さを有することができるとともに、EO材料層を互いに分離し、EO材料層に引張応力を加えてEO材料層の相転移を制限するために使用することができる。幾つかの実施形態において、各EO材料層の厚さと各中間層の厚さとの間の比は、約20:1、10:1、8:1、5:1又はそれ未満であり得る。中間層は、より低い温度(例えば、極低温)では格子構造及び結晶相を変化させ得ないため、中間層は、EO材料層がより低い温度でその室温格子構造及び結晶相を変化させることを制限し得る。したがって、EO材料層は、より低い温度で高いEO効果(例えばポッケルス効果)を有し得る。例えば、EO材料層は、BTOを含むことができ、極低温で300pm/Vよりも大きいポッケルス係数を有することができる。
【0086】
[0101]任意選択的に、ブロック1170において、交互配置された中間層とEO材料層との積層体上に導波路が形成されてもよい。導波路は、マッハツェンダ干渉計、共振器、光スイッチ、電気光学変調器などのセクションであってもよい。幾つかの実施形態において、導波路は、誘電体材料もしくは半導体材料、又は電気光学材料層内の1つ以上の電気光学材料層を含む導波路コアを含んでもよい。幾つかの実施形態において、導波路は、複数の電気光学材料層内の電気光学材料層と物理的に接触している導波路クラッド層を含むことができ、電気光学材料層の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数によって特徴付けることができる。導波路クラッド層は、例えば、Si、SiO、Al、MgO、SiCN、SiON、SiCO、SiOCN、及び、HfOのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0087】
[0102]幾つかの実施形態において、導波路を形成することは、導波路コアを形成するために1つ以上の電気光学材料層をパターニングすることと、導波路コア上に誘電体クラッド層を堆積することとを含むことができる。1つ以上の電気光学材料層をパターニングすることは、中間層をエッチング停止層として使用して1つ以上の電気光学材料層をエッチングすることを含むことができる。幾つかの実施形態において、導波路を形成することは、中間層及びEO材料層を含む層の積層体上に高屈折率材料の層を堆積することと、導波路コアを形成するために高屈折率材料の層をパターニングすることと、導波路コア上に誘電体クラッド層を堆積することとを含むことができる。幾つかの実施形態において、導波路を形成することは、導波路を含むウエハを、中間層及びEO材料層を含む層の積層体に結合することを含むことができる。幾つかの実施形態において、方法は、中間層及びEO材料層を含む層の積層体内のトレンチをエッチングすることと、トレンチを導電性材料で充填することとを含むこともできる。幾つかの実施形態において、層の積層体内のトレンチをエッチングすることは、酸化物バッファ層をエッチング停止層として使用することを含むことができる。
【0088】
[0103]図12は、特定の実施形態に係る電気光学デバイス(例えば、スイッチ)を含むハイブリッド量子コンピューティングシステム1200の一例の簡略化されたシステムブロック図である。低温、例えば液体ヘリウム温度で動作するために、本発明の実施形態は、本明細書で説明する電気光学スイッチを冷却システムを含むシステムに組み込む。したがって、本発明の実施形態は、例えば、図12に示すようなハイブリッドコンピューティングシステムを提供する。ハイブリッド量子コンピューティング(QC)システム1200は、ハイブリッド量子コンピューティングサブシステム1206に通信可能に結合されるユーザインタフェースデバイス1204を含む。ユーザインタフェースデバイス1204は、任意のタイプのユーザインタフェースデバイス、例えば、ディスプレイ、キーボード、マウス、タッチスクリーンなどを含む端末となり得る。更に、ユーザインタフェースデバイス自体は、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップ、タブレットコンピュータなどのコンピュータとなり得る。
【0089】
[0104]幾つかの実施形態において、ユーザインタフェースデバイス1204は、ユーザがハイブリッドQCサブシステム1206と相互作用できるインタフェースを備える。例えば、ユーザインタフェースデバイス1204は、テキストエディタ、対話型開発環境(IDE)、コマンドプロンプト、グラフィカルユーザインタフェースなどのソフトウェアを実行することができ、それにより、ユーザは、1つ以上の量子アルゴリズムを実行するためにQCサブシステムをプログラムする或いはさもなければQCサブシステムと相互作用できる。他の実施形態では、ハイブリッドQCサブシステム1206が事前にプログラムされてもよく、また、ユーザインタフェースデバイス1204は、単に、ユーザが量子計算を開始し、進捗を監視し、ハイブリッドQCサブシステム1206から結果を受信することができるインタフェースであってもよい。ハイブリッドQCサブシステム1206は、1つ以上の量子コンピューティングチップ1210に結合される古典的なコンピューティングシステム1208を更に含む。幾つかの例において、古典的なコンピューティングシステム1208及び量子コンピューティングチップ1210は、他の電子部品1212、例えば、パルスポンプレーザ、マイクロ波発振器、電源、ネットワークハードウェアなどに結合され得る。
【0090】
[0105]極低温動作を利用する幾つかの実施形態において、量子コンピューティングシステム1209は、クライオスタット、例えばクライオスタット1214内に収容され得る。幾つかの実施形態において、量子コンピューティングチップ1210は、本明細書に開示される様々な導波路構造及び/又はEOデバイスを含むことができる、例えばハイブリッド電子チップ1216及び集積フォトニクスチップ1218などの1つ以上の構成チップを含むことができる。信号は、例えば、光相互接続1220及び他の電子相互接続1222を介して、任意の数の方法でオンチップ及びオフチップにルーティングされ得る。更に、ハイブリッド量子コンピューティングシステム1200は、量子計算プロセス、例えば、量子ビットの一つ以上のクラスタ状態を用いる測定ベースの量子計算(MBQC)を用いてもよい。
【0091】
[0106]当業者に明らかなように、特定の実施態様にしたがって実質的な変形がなされてもよい。例えば、カスタマイズされたハードウェアが使用されてもよく、及び/又は特定の要素がハードウェア、ソフトウェア(アプレットなどのポータブルソフトウェアを含む)、又はその両方で実装されてもよい。更に、ネットワーク入出力デバイスなどの他のコンピューティングデバイスへの接続を採用することができる。
【0092】
[0107]添付の図に関連して、メモリを含むことができる構成要素は、持続性機械可読媒体を含むことができる。本明細書で使用される「機械可読媒体」及び「コンピュータ可読媒体」という用語は、機械を特定の態様で動作させるデータの提供に関与する任意の記憶媒体を指す。上記で提供された実施形態では、様々な機械可読媒体が、実行のためにプロセッサ及び/又は他のデバイスに命令/コードを提供することに関与し得る。これに加えて又は代えて、機械可読媒体は、そのような命令/コードを記憶及び/又は搬送するために使用され得る。多くの実施において、コンピュータ可読媒体は、物理的及び/又は有形の記憶媒体である。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、磁気及び/又は光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、後述するような搬送波、又はコンピュータが命令及び/又はコードを読み取ることができる任意の他の媒体を含む。
【0093】
[0108]本明細書で説明される方法、システム、及びデバイスは例である。様々な実施形態は、必要に応じて様々な手順又は構成要素を省略、置換、又は追加することができる。例えば、特定の実施形態に関して説明した特徴は、様々な他の実施形態において組み合わせることができる。実施形態の異なる態様及び要素は、同様の方法で組み合わせることができる。本明細書で提供される図の様々な構成要素は、ハードウェア及び/又はソフトウェアで実施することができる。また、技術は進化しており、したがって、要素の多くは、本開示の範囲をそれらの特定の例に限定しない例である。
【0094】
[0109]ビット、情報、値、要素、記号、文字、変数、用語、数、数字などのような信号を参照することは、主に一般的な使用の理由から、時には便利であることが判明している。しかしながら、これら又は類似の用語の全ては、適切な物理量に関連付けられるべきであり、単に便利なラベルであることが理解されるべきである。特に明記しない限り、上記の説明から明らかなように、本明細書全体を通して、「処理する」、「コンピューティングする」、「計算する」、「決定する」、「確認する」、「識別する」、「関連付ける」、「測定する」、「実行する」などの用語を利用する説明は、専用コンピュータ又は同様の専用電子コンピューティングデバイスなどの特定の装置の動作又はプロセスを指すことが理解される。したがって、本明細書の文脈では、専用コンピュータ又は同様の専用電子コンピューティングデバイスは、通常、専用コンピュータ又は同様の専用電子コンピューティングデバイスのメモリ、レジスタ、又は他の情報記憶デバイス、送信デバイス、又は表示デバイス内の物理的な電子量、電気量、又は磁気量として表される信号を操作又は変換することができる。
【0095】
[0110]当業者であれば分かるように、本明細書に記載されたメッセージを通信するために使用される情報及び信号は、様々な異なる技術及び技術のいずれかを使用して表され得る。例えば、上記の説明を通して参照され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、及びチップは、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは粒子、光場もしくは粒子、又はそれらの任意の組み合わせによって表され得る。
【0096】
[0111]本明細書で使用される「及び」、「又は」、及び、「及び/又は」という用語は、そのような用語が使用される文脈に少なくとも部分的に依存することも予想される様々な意味を含み得る。一般に、A、B、又はCなどのリストを関連付けるために使用される場合の「又は」は、ここでは包括的な意味で使用されるA、B、及びC、並びにここでは排他的な意味で使用されるA、B、又はCを意味することを意図している。更に、本明細書で使用される「1つ以上」という用語は、単数形の任意の特徴、構造、又は特性を説明するために使用されてもよく、又は特徴、構造、又は特性の幾つかの組み合わせを説明するために使用されてもよい。しかしながら、これは単なる例示であり、特許請求される主題はこの例に限定されないことに留意すべきである。更に、「~のうちの少なくとも1つ」という用語は、A、B、又はCなどのリストを関連付けるために使用される場合、A、B、C、AB、AC、BC、AA、AAB、ABC、AABBCCCなどのA、B、及び/又はCの任意の組み合わせを意味すると解釈することができる。
【0097】
[0112]本明細書を通して、「1つの例」、「一例」、「特定の例」、又は「典型的な実施」への言及は、特徴及び/又は例に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、特許請求される主題の少なくとも1つの特徴及び/又は例に含まれ得ることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「1つの例では」、「一例では」、「特定の例では」、「特定の実施では」という語句、又は他の同様の語句の出現は、必ずしも全てが同じ特徴、例、及び/又は限定を指すとは限らない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の例及び/又は特徴において組み合わされてもよい。
【0098】
[0113]幾つかの実装形態では、動作又は処理は、物理量の物理的操作を含み得る。一般に、必ずしもそうとは限らないが、そのような量は、記憶、転送、結合、比較、又は他の方法で操作することができる電気信号又は磁気信号の形態をとることができる。ビット、データ、値、要素、シンボル、文字、用語、数字、数字などの信号を参照することは、主に一般的な使用の理由から、時には便利であることが判明している。しかしながら、これら又は類似の用語の全ては、適切な物理量に関連付けられるべきであり、単に便利なラベルであることが理解されるべきである。特に明記しない限り、本明細書の説明から明らかなように、本明細書全体を通して、「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「決定」などの用語を利用する説明は、専用コンピュータ、専用コンピューティング装置、又は同様の専用電子コンピューティングデバイスなどの特定の装置の動作又はプロセスを指すことが理解される。したがって、本明細書の文脈では、専用コンピュータ又は同様の専用電子コンピューティングデバイスは、専用コンピュータ又は同様の専用電子コンピューティングデバイスのメモリ、レジスタ、又は他の情報記憶デバイス、送信デバイス、又は表示デバイス内の物理的な電子量又は磁気量として通常表される信号を操作又は変換することができる。
【0099】
[0114]先の詳細な説明では、特許請求の範囲に記載される主題の完全な理解を与えるために、多数の特定の詳細について記載してきた。しかしながら、当業者であれば分かるように、特許請求の範囲に記載される主題がこれらの特定の詳細を伴うことなく実施されてもよい。他の例において、当業者に知られている方法及び装置は、特許請求の範囲に記載される主題を不明瞭にしないように詳細には説明されていない。したがって、特許請求の範囲に記載される主題が開示された特定の例に限定されず、そのような特許請求の範囲に記載される主題が添付の特許請求の範囲内に入る全ての態様及びその均等物も含み得ることが意図される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】