IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

特表2023-500468燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー
<>
  • 特表-燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー 図1
  • 特表-燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー 図2
  • 特表-燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー 図3
  • 特表-燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー 図4
  • 特表-燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー 図5
  • 特表-燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー 図6
  • 特表-燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー 図7
  • 特表-燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(54)【発明の名称】燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/92 20060101AFI20221226BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20221226BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20221226BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20221226BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221226BHJP
【FI】
H01M4/92
H01M4/90 B
H01M4/86 M
H01M4/88 K
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525056
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 KR2021004190
(87)【国際公開番号】W WO2021241874
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0064513
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ソン カヨン
(72)【発明者】
【氏名】コン ナコン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュソン
(72)【発明者】
【氏名】ナム キョンシク
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンミ
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS02
5H018AS03
5H018BB08
5H018EE03
5H018EE10
5H018EE17
5H018HH00
5H018HH02
5H126BB06
(57)【要約】
所望の性能及び耐久性を有する電極及び膜電極アセンブリーの製造に適した所定範囲内の物理的特性を均一に有する混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリーが開示される。前記混合触媒は、第1担体及び前記第1担体上に分布されている第1触媒金属粒子を含み、第1BET表面積(BET surface area)及び第1全細孔容積(total pore volume)を有する第1触媒と、第2担体及び前記第2担体上に分布されている第2触媒金属粒子を含み、前記第1BET表面積と異なる第2BET表面積及び前記第1全細孔容積と異なる第2全細孔容積を有する第2触媒とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用混合触媒であって、
第1担体及び前記第1担体上に分布されている第1触媒金属粒子を含み、第1BET表面積(BET surface area)及び第1全細孔容積(total pore volume)を有する第1触媒と、
第2担体及び前記第2担体上に分布されている第2触媒金属粒子を含み、前記第1BET表面積と異なる第2BET表面積及び前記第1全細孔容積と異なる第2全細孔容積を有する第2触媒と、
を含み、
前記第1及び第2触媒のそれぞれは、互いに独立的に、(i)150m/g以上のBET表面積及び0.50cm/g以上の全細孔容積を有する第1タイプの触媒、または(ii)150m/g未満のBET表面積及び0.50cm/g未満の全細孔容積を有する第2タイプの触媒であり、
(a)前記第1及び第2触媒が同じタイプの触媒の場合、前記混合触媒から取られるどのサンプルも下記の式1~式6を満たすように前記第1及び第2触媒が混合されており、
(b)前記第1及び第2触媒が相異なるタイプの触媒の場合、前記混合触媒から取られるどのサンプルも下記の式7~式12を満たすように前記第1及び第2触媒が混合されている、
混合触媒。
[式1]
BET_C1・RC1+SBET_C2・RC2≦SBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式2]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦SMICRO_HC≦SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2
[式3]
EX_C1・RC1+SEX_C2・RC2≦SEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式4]
T_C1・RC1+VT_C2・RC2≦VT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式5]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦VMICRO_HC≦VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2
[式6]
MESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2≦VMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
[式7]
(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・0.75≦SBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式8]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦SMICRO_HC≦(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・1.25
[式9]
(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・0.75≦SEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式10]
(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・0.85≦VT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式11]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦VMICRO_HC≦(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・1.15
[式12]
(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・0.85≦VMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
ここで、
BET_HCは前記混合触媒のBET表面積であり、
BET_C1は前記第1BET表面積であり、
BET_C2は前記第2BET表面積であり、
C1は前記混合触媒の重量に対する前記第1触媒の重量の比であり、
C2は前記混合触媒の重量に対する前記第2触媒の重量の比(すなわち、RC2=1-RC1)であり、
MICRO_HCは前記混合触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔表面積であり、
EX_HCは前記混合触媒の外表面積であり、
EX_C1は前記第1触媒の外表面積であり、
EX_C2は前記第2触媒の外表面積であり、
T_HCは前記混合触媒の全細孔容積であり、
T_C1は前記第1全細孔容積であり、
T_C2は前記第2全細孔容積であり、
MICRO_HCは前記混合触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔容積であり、
MESO_HCは前記混合触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C1は前記第1触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C2は前記第2触媒のメソ細孔容積である。
【請求項2】
前記混合触媒から取られる5個以上のサンプルのそれぞれに対して、BET表面積(SBET_HC)、マイクロ細孔表面積(SMICRO_HC)、外表面積(SEX_HC)、全細孔容積(VT_HC)、マイクロ細孔容積(VMICRO_HC)、及びメソ細孔容積(VMESO_HC)からなる群から選択されるどの物性を測定しても、前記物性の標準偏差が前記物性の算術平均の5%以下である、
請求項1に記載の混合触媒。
【請求項3】
前記第1及び第2担体は、球形(sphere shape)、多面形(polyhedral shape)、線形(linear shape)、チューブ形(tubular shape)、及び平面形(planar shape)からなる群から選択されるいずれか一形態を有し、
前記第1担体の形態は前記第2担体の形態と同一である、
請求項1に記載の混合触媒。
【請求項4】
前記第1及び第2触媒金属粒子のそれぞれは白金または白金系合金を含む、
請求項1に記載の混合触媒。
【請求項5】
前記第1及び第2触媒金属粒子は同じ物質である、
請求項4に記載の混合触媒。
【請求項6】
目標BET表面積、目標マイクロ細孔表面積、目標外表面積、目標全細孔容積、目標マイクロ細孔容積、及び目標メソ細孔容積を有する燃料電池用混合触媒を製造するための方法であって、
第1担体及び前記第1担体上に分布されている第1触媒金属粒子を含み、第1BET表面積及び第1全細孔容積を有する第1触媒を決定する第1段階と、
第2担体及び前記第2担体上に分布されている第2触媒金属粒子を含み、前記第1BET表面積と異なる第2BET表面積及び前記第1全細孔容積と異なる第2全細孔容積を有する第2触媒を決定する第2段階と、
前記第1及び第2触媒の混合比を決定する第3段階と、
共振音響混合器(resonant acoustic mixer)を用いて前記第1及び第2触媒を前記混合比で混合する第4段階と、
を含み、
前記第1及び第2触媒のそれぞれは、互いに独立的に、(i)150m/g以上のBET表面積及び0.50cm/g以上の全細孔容積を有する第1タイプの触媒、または(ii)150m/g未満のBET表面積及び0.50cm/g未満の全細孔容積を有する第2タイプの触媒であり、
前記第1、第2、及び第3段階は、(a)前記第1及び第2触媒が同じタイプの触媒の場合、下記の式13~式18を満たすことができるように遂行し、(b)前記第1及び第2触媒が相異なるタイプの触媒の場合、下記の式19~式24を満たすことができるように遂行する、
混合触媒の製造方法。
[式13]
BET_C1・RC1+SBET_C2・RC2≦TSBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式14]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦TSMICRO_HC≦SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2
[式15]
EX_C1・RC1+SEX_C2・RC2≦TSEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式16]
T_C1・RC1+VT_C2・RC2≦TVT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式17]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦TVMICRO_HC≦VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2
[式18]
MESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2≦TVMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・C2)・1.15
[式19]
(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・0.75≦TSBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式20]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦TSMICRO_HC≦(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・1.25
[式21]
(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・0.75≦TSEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式22]
(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・0.85≦TVT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式23]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦TVMICRO_HC≦(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・1.15
[式24]
(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・0.85≦TVMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
TSBET_HCは前記目標BET表面積であり、
BET_C1は前記第1BET表面積であり、
BET_C2は前記第2BET表面積であり、
C1は前記混合触媒の重量に対する前記第1触媒の重量の比であり、
C2は前記混合触媒の重量に対する前記第2触媒の重量の比(すなわち、RC2=1-RC1)であり、
TSMICRO_HCは前記目標マイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔表面積であり、
SEX_HCは前記目標外表面積であり、
EX_C1は前記第1触媒の外表面積であり、
EX_C2は前記第2触媒の外表面積であり、
TVT_HCは前記目標全細孔容積であり、
T_C1は前記第1全細孔容積であり、
T_C2は前記第2全細孔容積であり、
TVMICRO_HCは前記目標マイクロ細孔容積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔容積であり、
TVMESO_HCは前記目標メソ細孔容積であり、
MESO_C1は前記第1触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C2は前記第2触媒のメソ細孔容積である。
【請求項7】
前記第4段階は55~65Hzの周波数及び30~90Gの加速度で1~20分間遂行する、
請求項6に記載の混合触媒の製造方法。
【請求項8】
前記第4段階で得られる混合物は固相(solid phase)である、
請求項6に記載の混合触媒の製造方法。
【請求項9】
前記第1及び第2担体は、球形、多面形、線形、チューブ形、及び平面形からなる群から選択されるいずれか一形態を有し、
前記第1担体の形態は前記第2担体の形態と同一である、
請求項6に記載の混合触媒の製造方法。
【請求項10】
前記第1及び第2触媒金属粒子のそれぞれは白金または白金系合金を含む、
請求項6に記載の混合触媒の製造方法。
【請求項11】
前記第1及び第2触媒金属粒子は同じ物質である、
請求項10に記載の混合触媒の製造方法。
【請求項12】
高分子電解質膜上に電極を形成する方法であって、
請求項6に記載の方法によって製造された前記混合触媒をアイオノマーとともに分散媒に分散させて電極スラリーを準備する段階と、
前記電極スラリーを基材(substrate)上にコートする段階と、
前記コーティングされた電極スラリーを乾燥させる段階と、
を含む、
電極形成方法。
【請求項13】
前記基材は離型フィルムであり、
前記電極形成方法は、
前記乾燥段階で前記離型フィルム上に形成された電極を前記高分子電解質膜上に転写(transfer)する段階と、
前記離型フィルムを除去する段階と、
をさらに含む、
請求項12に記載の電極形成方法。
【請求項14】
前記基材は前記高分子電解質膜である、
請求項12に記載の電極形成方法。
【請求項15】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間の高分子電解質膜と、
を含み、
前記アノード及び前記カソードの少なくとも一つは請求項1に記載の混合触媒を含む、
膜電極アセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリーに関し、より詳しくは、所望の性能及び耐久性を有する電極及び膜電極アセンブリーの製造に適した所定範囲内の物理的特性を均一に有する混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリーに関する。
【背景技術】
【0002】
膜電極アセンブリー(Membrane-Electrode Assembly:MEA)とセパレーター(separator)[‘バイポーラプレート(bipolar plate)’とも言う]とからなる単位セル(unit cell)の積層構造を用いて電気を発生させる高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)は高いエネルギー効率性及び環境に優しい特徴によって化石エネルギーを代替することができる次世代エネルギー源として注目されている。
【0003】
前記膜電極アセンブリーは、一般的にアノード(anode)(‘燃料極’ともいう)、カソード(cathode)(‘空気極’ともいう)、及びこれらの間の高分子電解質膜(polymer electrolyte membrane)を含む。
水素ガスのような燃料がアノードに供給されれば、アノードでは水素の酸化反応によって水素イオン(H+)と電子(e-)とが生成される。生成された水素イオンは高分子電解質膜を介してカソードに伝達され、生成された電子は外部回路を介してカソードに伝達される。カソードに供給される酸素が前記水素イオン及び前記電子と結合して還元することにより水が生成される。
【0004】
膜電極アセンブリーの電極形成のための触媒の活性表面積を増加させるための努力の一環として、電気伝導性を有する担体(support)(例えば、炭素、金属酸化物、Cなど)の表面上に触媒金属粒子を分散させた触媒が開発された。
燃料電池が適用される技術分野別にまたは最終製品別に多様な要求事項を満たすことができる燃料電池及び/または膜電極アセンブリーを効果的に製造するためには、前記要求事項を満たすのに適した物理的特性(例えば、BET表面積、マイクロ細孔表面積、外表面積、全細孔容積、マイクロ細孔容積、メソ細孔容積などのような物質的特性)を有する触媒が電極製造に使われなければならない。
【0005】
しかし、不幸にも、必要な物理的特性[以下、“目標物理的特性(target physical features)”]を有する触媒がいつも商業的に入手可能なものではない。そうだとして現実的に目標物理的特性を有する触媒を直接製造することも非現実的である。すなわち、目標物理的特性を均一に有する触媒を繰り返して再現することは、現在まで知られている技術水準に照らして見るとき、非常に難しいだけでなく、このような特別注文の触媒を大量生産することもできないものなので、経済的側面でも好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明はこのような関連技術の制限及び欠点に起因した問題点を防止することができる混合触媒、その製造方法、それを用いた電極形成方法、及びそれを含む膜電極アセンブリーに関する。
本発明の一観点は、所望の性能及び耐久性を有する電極及び膜電極アセンブリーの製造に適した所定範囲内の物理的特性を均一に有する混合触媒を提供することである。
本発明の他の観点は、所望の性能及び耐久性を有する電極及び膜電極アセンブリーの製造に適した所定範囲内の物理的特性を均一に有する混合触媒を製造する方法を提供することである。
本発明のさらに他の観点は、所定範囲内の物理的特性を均一に有する混合触媒を用いて所望の性能及び耐久性を有する電極を形成する方法を提供することである。
本発明のさらに他の観点は、所定範囲内の物理的特性を均一に有する混合触媒を含むことにより所望の性能及び耐久性を有する膜電極アセンブリーを提供することである。
以上で言及した本発明の観点の他にも、本発明の他の特徴及び利点が以下で説明され、そのような説明から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような本発明の一観点によれば、燃料電池用混合触媒であって、第1担体及び前記第1担体上に分布されている第1触媒金属粒子を含み、第1BET表面積(BET surface area)及び第1全細孔容積(total pore volume)を有する第1触媒と、第2担体及び前記第2担体上に分布されている第2触媒金属粒子を含み、前記第1BET表面積と異なる第2BET表面積及び前記第1全細孔容積と異なる第2全細孔容積を有する第2触媒と、を含み、前記第1及び第2触媒のそれぞれは、互いに独立的に、(i)150m/g以上のBET表面積及び0.50cm/g以上の全細孔容積を有する第1タイプの触媒、または(ii)150m/g未満のBET表面積及び0.50cm/g未満の全細孔容積を有する第2タイプの触媒であり、(a)前記第1及び第2触媒が同じタイプの触媒の場合、前記混合触媒から取られるどのサンプルも下記の式1~式6を満たすように前記第1及び第2触媒が混合されており、(b)前記第1及び第2触媒が相異なるタイプの触媒の場合、前記混合触媒から取られるどのサンプルも下記の式7~式12を満たすように前記第1及び第2触媒が混合されている混合触媒が提供される。
【0008】
[式1]
BET_C1・RC1+SBET_C2・RC2≦SBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式2]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦SMICRO_HC≦SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2
[式3]
EX_C1・RC1+SEX_C2・RC2≦SEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式4]
T_C1・RC1+VT_C2・RC2≦VT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式5]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦VMICRO_HC≦VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2
[式6]
MESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2≦VMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
[式7]
(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・0.75≦SBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式8]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦SMICRO_HC≦(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・1.25
[式9]
(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・0.75≦SEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式10]
(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・0.85≦VT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式11]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦VMICRO_HC≦(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・1.15
[式12]
(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・0.85≦VMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
【0009】
ここで、
BET_HCは前記混合触媒のBET表面積であり、
BET_C1は前記第1BET表面積であり、
BET_C2は前記第2BET表面積であり、
C1は前記混合触媒の重量に対する前記第1触媒の重量の比であり、
C2は前記混合触媒の重量に対する前記第2触媒の重量の比(すなわち、RC2=1-RC1)であり、
MICRO_HCは前記混合触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔表面積であり、
EX_HCは前記混合触媒の外表面積であり、
EX_C1は前記第1触媒の外表面積であり、
EX_C2は前記第2触媒の外表面積であり、
T_HCは前記混合触媒の全細孔容積であり、
T_C1は前記第1全細孔容積であり、
T_C2は前記第2全細孔容積であり、
MICRO_HCは前記混合触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔容積であり、
MESO_HCは前記混合触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C1は前記第1触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C2は前記第2触媒のメソ細孔容積である。
【0010】
前記混合触媒から取られる5個以上のサンプルのそれぞれに対して、BET表面積(SBET_HC)、マイクロ細孔表面積(SMICRO_HC)、外表面積(SEX_HC)、全細孔容積(VT_HC)、マイクロ細孔容積(VMICRO_HC)、及びメソ細孔容積(VMESO_HC)からなる群から選択されるどの物性を測定しても、前記物性の標準偏差が前記物性の算術平均の5%以下であることができる。
前記第1及び第2担体は、球形(sphere shape)、多面形(polyhedral shape)、線形(linear shape)、チューブ形(tubular shape)、及び平面形(planar shape)からなる群から選択されるいずれか一形態を有することができ、前記第1担体の形態は前記第2担体の形態と同一であることができる。
前記第1及び第2触媒金属粒子のそれぞれは白金または白金系合金を含むことができる。
前記第1及び第2触媒金属粒子は同じ物質であってもよい。
【0011】
本発明の他の観点によれば、目標BET表面積、目標マイクロ細孔表面積、目標外表面積、目標全細孔容積、目標マイクロ細孔容積、及び目標メソ細孔容積を有する燃料電池用混合触媒を製造するための方法であって、第1担体及び前記第1担体上に分布されている第1触媒金属粒子を含み、第1BET表面積及び第1全細孔容積を有する第1触媒を決定する第1段階と、第2担体及び前記第2担体上に分布されている第2触媒金属粒子を含み、前記第1BET表面積と異なる第2BET表面積及び前記第1全細孔容積と異なる第2全細孔容積を有する第2触媒を決定する第2段階と、前記第1及び第2触媒の混合比を決定する第3段階と、共振音響混合器(resonant acoustic mixer)を用いて前記第1及び第2触媒を前記混合比で混合する第4段階と、を含み、前記第1及び第2触媒のそれぞれは、互いに独立的に、(i)150m/g以上のBET表面積及び0.50cm/g以上の全細孔容積を有する第1タイプの触媒、または(ii)150m/g未満のBET表面積及び0.50cm/g未満の全細孔容積を有する第2タイプの触媒であり、前記第1、第2、及び第3段階は、(a)前記第1及び第2触媒が同じタイプの触媒の場合、下記の式13~式18を満たすことができるように遂行し、(b)前記第1及び第2触媒が相異なるタイプの触媒の場合、下記の式19~式24を満たすことができるように遂行する混合触媒の製造方法が提供される。
【0012】
[式13]
BET_C1・RC1+SBET_C2・RC2≦TSBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式14]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦TSMICRO_HC≦SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2
[式15]
EX_C1・RC1+SEX_C2・RC2≦TSEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式16]
T_C1・RC1+VT_C2・RC2≦TVT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式17]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦TVMICRO_HC≦VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2
[式18]
MESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2≦TVMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・C2)・1.15
[式19]
(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・0.75≦TSBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式20]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦TSMICRO_HC≦(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・1.25
[式21]
(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・0.75≦TSEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式22]
(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・0.85≦TVT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式23]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦TVMICRO_HC≦(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・1.15
[式24]
(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・0.85≦TVMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
【0013】
TSBET_HCは前記目標BET表面積であり、
BET_C1は前記第1BET表面積であり、
BET_C2は前記第2BET表面積であり、
C1は前記混合触媒の重量に対する前記第1触媒の重量の比であり、
C2は前記混合触媒の重量に対する前記第2触媒の重量の比(すなわち、RC2=1-RC1)であり、
TSMICRO_HCは前記目標マイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔表面積であり、
SEX_HCは前記目標外表面積であり、
EX_C1は前記第1触媒の外表面積であり、
EX_C2は前記第2触媒の外表面積であり、
TVT_HCは前記目標全細孔容積であり、
T_C1は前記第1全細孔容積であり、
T_C2は前記第2全細孔容積であり、
TVMICRO_HCは前記目標マイクロ細孔容積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔容積であり、
TVMESO_HCは前記目標メソ細孔容積であり、
MESO_C1は前記第1触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C2は前記第2触媒のメソ細孔容積である。
【0014】
前記第4段階は55~65Hzの周波数及び30~90Gの加速度で1~20分間遂行することができる。
前記第4段階で得られる混合物は固相(solid phase)であることができる。
前記第1及び第2担体は、球形、多面形、線形、チューブ形、及び平面形からなる群から選択されるいずれか一形態を有することができ、前記第1担体の形態は前記第2担体の形態と同一であることができる。
前記第1及び第2触媒金属粒子のそれぞれは白金または白金系合金を含むことができる。
前記第1及び第2触媒金属粒子は同じ物質であってもよい。
【0015】
本発明のさらに他の観点によれば、高分子電解質膜上に電極を形成する方法であって、請求項6に記載の方法によって製造された前記混合触媒をアイオノマーとともに分散媒に分散させて電極スラリーを準備する段階と、前記電極スラリーを基材(substrate)上にコートする段階と、前記コーティングされた電極スラリーを乾燥させる段階と、を含む電極形成方法が提供される。
前記基材は離型フィルムであることができ、前記電極形成方法は、前記乾燥段階で前記離型フィルム上に形成された電極を前記高分子電解質膜上に転写(transfer)する段階と、前記離型フィルムを除去する段階と、をさらに含むことができる。
前記基材は前記高分子電解質膜であることができる。
本発明のさらに他の観点によれば、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間の高分子電解質膜と、を含み、前記アノード及び前記カソードの少なくとも一つ前記混合触媒を含む膜電極アセンブリーが提供される。
このような本発明についての一般的敍述は本発明を例示するか説明するためのものであるだけで、本発明の権利範囲を制限しない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、商業的に入手可能な単一触媒のみでは具現できない性能及び耐久性の電極及びそれを含む膜電極アセンブリーの製造が可能である。
具体的に、本発明によれば、商業的に販売される2種以上の触媒を別途の前処理なしに均質に混合することにより、その結果として生成される混合触媒全体が所定範囲内の物理的特性を均一に有することができ、その結果、所望の性能及び耐久性を有する電極及び膜電極アセンブリーを繰り返して再現することができる。
また、商業的に販売される2種以上の固体状態の触媒を別途の処理なしに混合するので、前記第1及び第2触媒自体の変化や損失を最小化することができる。
また、目標物理的特性によってソース触媒の種類及びその混合比が決定されるので(すなわち、本発明によって製造される混合触媒の物理的特性が予測可能であるので)、状況及び要求に合う多様な電極設計が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付図面は本発明の理解を助けてこの明細書の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明とともに本発明の原理を説明する。
図1】A1触媒、B1触媒、及び実施例1aの混合触媒のBET等温曲線(BET isotherm curves)を示すグラフである。
図2】A1触媒、B1触媒、及び比較例1aの混合触媒のBET等温曲線を示すグラフである。
図3】A1触媒、B1触媒、及び比較例2aの混合触媒のBET等温曲線を示すグラフである。
図4】A1触媒、A2触媒、及び実施例2の混合触媒のBET等温曲線を示すグラフである。
図5】B1触媒、B2触媒、及び実施例3の混合触媒のBET等温曲線を示すグラフである。
図6】A1触媒、B1触媒、及び実施例1aの混合触媒のXRDパターンを示すグラフである。
図7】A1触媒、A2触媒、及び実施例2の混合触媒のXRDパターンを示すグラフである。
図8】B1触媒、B2触媒、及び実施例3の混合触媒のXRDパターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。ただ、以下で説明する実施例は本発明の明確な理解を助けるための例示的目的で提示するものであるだけで、本発明の範囲を制限しない。
本発明の燃料電池用混合触媒は、基本的に商業的に入手可能な第1及び第2触媒を含む。
前記第1触媒は、第1担体及び前記第1担体上に分布されている第1触媒金属粒子を含み、前記第2触媒は、第2担体及び前記第2担体上に分布されている第2触媒金属粒子を含む。
【0019】
前記第1及び第2担体のそれぞれは、互いに独立的に、(i)炭素系担体、(ii)ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、及びセリアのような多孔性無機酸化物担体、または(iii)ゼオライト担体であることができる。前記炭素系担体は、黒鉛、スーパーピー(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、カーボンブラック(carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、デンカブラック(Denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube、CNT)、炭素球体体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素(active carbon)、カーボンナノファイバー(carbon nanofiber)、カーボンナノワイヤ(carbon nanowire)、カーボンナノボール(carbon nanoball)、カーボンナノホーン(carbon nanohorn)、カーボンナノケージ(carbon nanocage)、カーボンナノリング(carbon nanoring)、規則性ナノメソ多孔性炭素(ordered nano-/meso-porous carbon)、カーボンエーロゲル(carbon aerogel)、メソ多孔性カーボン(mesoporous carbon)、グラフェン(graphene)、安定化カーボン(stabilized carbon)、活性化カーボン(activated carbon)、またはこれらの中で2種以上の組合せであることができる。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記第1及び第2担体は、球形(sphere shape)、多面体形(polyhedral shape)、線形(linear shape)、チューブ形(tubular shape)、及び平面形(planar shape)からなる群から選択されるいずれか一形態を有することができ、前記第1担体の形態は前記第2担体の形態と同一であってもよい。
前記第1及び第2担体の形態が同一または類似であれば、同じバッチ(batch)で生産される混合触媒内での物理的特性の均一性はもちろんのこと、相異なるバッチで生産される混合触媒間の物理的特性の均一性もより向上することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
前記第1及び第2触媒金属粒子のそれぞれは、互いに独立的に、白金または白金系合金を含むことができる。
【0021】
前記白金系合金は、(i)Pt-Co、Pt-Pd、Pt-Mn、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-Cr、Pt-W、Pt-Ir、Pt-Ru、Pt-Ni、Pt-Feなどの2元合金(binary alloy)、(ii)Pt-Ru-W、Pt-Ru-Ni、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Ir、Pt-Co-Mn、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr-Irなどの3元合金(ternary alloy)、または(iii)Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、Pt-Ru-Ir-Niなどの4元合金(quaternary alloy)であることができるが、これらに限定されるものではない。
オプションで(optionally)、前記第1及び第2触媒金属粒子は同じ物質であることができる。
【0022】
前記第1及び第2触媒は、BET表面積(BET surface area)及び全細孔容積(total pore volume)の面で相異なる。すなわち、前記第1触媒は第1BET表面積及び第1全細孔容積を有し、前記第2触媒は前記第1BET表面積とは異なる第2BET表面積及び前記第1全細孔容積とは異なる第2全細孔容積を有する。
相異なる第1及び2触媒の混合物である本発明の混合触媒の物理的特性は前記第1触媒の物理的特性と異なるだけでなく、前記第2触媒の物理的特性とも異なる。よって、本発明の混合触媒は商業的に入手可能な単一触媒のみでは具現できない性能及び耐久性の電極及びそれを含む膜電極アセンブリーの製造ができるようにする。
商業的に入手可能な触媒は、大別して2種タイプに分類することができる。第1タイプの触媒は150m/g以上のBET表面積及び0.50cm/g以上の全細孔容積を有する触媒であり、第2タイプの触媒は150m/g未満のBET表面積及び0.50cm/g未満の全細孔容積を有する触媒である。
【0023】
前記第1タイプの触媒は、BET表面積が大きく細孔容積が大きい、多孔性炭素、中空炭素、高耐久/非耐久メソ多孔性炭素などのような多孔型担体に担持された触媒であることができる。
前記第2タイプの触媒は、BET表面積が小さく細孔容積が小さい、アセチレンブラック及び高耐久炭素などのようなソリッド(solid)形態の担体に担持された触媒であることができる。
【0024】
本発明の混合触媒に含まれている前記第1及び第2触媒のそれぞれは、互いに独立的に、前記第1タイプの触媒または前記第2タイプの触媒であることができる。
本発明によれば、前記第1及び第2触媒が同じタイプの触媒の場合(すなわち、前記第1及び第2触媒が共に第1タイプの触媒であるか、前記第1及び第2触媒が共に第2タイプの触媒である場合)、前記混合触媒から取られるどのサンプルも下記の式1~式6を満たすように前記第1及び第2触媒が混合されている。
【0025】
[式1]
BET_C1・RC1+SBET_C2・RC2≦SBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式2]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦SMICRO_HC≦SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2
[式3]
EX_C1・RC1+SEX_C2・RC2≦SEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式4]
T_C1・RC1+VT_C2・RC2≦VT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式5]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦VMICRO_HC≦VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2
[式6]
MESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2≦VMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
【0026】
ここで、
BET_HCは前記混合触媒のBET表面積であり、
BET_C1は前記第1BET表面積であり、
BET_C2は前記第2BET表面積であり、
C1は前記混合触媒の重量に対する前記第1触媒の重量の比であり、
C2は前記混合触媒の重量に対する前記第2触媒の重量の比(すなわち、RC2=1-RC1)であり、
MICRO_HCは前記混合触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔表面積であり、
EX_HCは前記混合触媒の外表面積であり、
EX_C1は前記第1触媒の外表面積であり、
EX_C2は前記第2触媒の外表面積であり、
T_HCは前記混合触媒の全細孔容積であり、
T_C1は前記第1全細孔容積であり、
T_C2は前記第2全細孔容積であり、
MICRO_HCは前記混合触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔容積であり、
MESO_HCは前記混合触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C1は前記第1触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C2は前記第2触媒のメソ細孔容積である。
【0027】
一方、前記第1及び第2触媒が相異なるタイプの触媒の場合(すなわち、前記第1及び第2触媒の中で一方が前記第1タイプの触媒であり、他方が前記第2タイプの触媒の場合)、前記混合触媒から取られるどのサンプルも下記の式7~式12を満たすように前記第1及び第2触媒が混合されている。
[式7]
(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・0.75≦SBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式8]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦SMICRO_HC≦(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・1.25
[式9]
(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・0.75≦SEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式10]
(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・0.85≦VT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式11]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦VMICRO_HC≦(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・1.15
[式12]
(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・0.85≦VMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
【0028】
前記BET表面積、外表面積、マイクロ細孔表面積、全細孔容積、メソ細孔容積、及びマイクロ細孔容積はBET分析器(Micromeritics、ASAP-2020)を用いて測定される触媒の物理的特性である。本発明で、それぞれの前記物理的特性は前記触媒から無作為に取られた5個のサンプルのそれぞれに対してその物理的特性を測定した後、その測定値の算術平均を計算することによって求められる。
【0029】
前記BET分析によれば、サンプルにガス(一般的に、窒素)を吸着させた後、BET(Brunauer-Emmett-Teller)理論に基づいて前記サンプルの前記物理的特性を測定する。前記メソ細孔は2~50nmの孔径を有する細孔を意味し、前記マイクロ細孔は2nm未満の孔径を有する細孔を意味する。
商業的に販売される2種以上の触媒を別途の前処理なしに均質に混合することにより製造される固相(solid phase)の本発明の混合触媒は、それから取られる5個以上のサンプルのそれぞれに対して、BET表面積(SBET_HC)、マイクロ細孔表面積(SMICRO_HC)、外表面積(SEX_HC)、全細孔容積(VT_HC)、マイクロ細孔容積(VMICRO_HC)、及びメソ細孔容積(VMESO_HC)からなる群から選択されるどの物性を測定しても前記物性の標準偏差が前記物性の算術平均の5%以下の程度に均一な物理的特性を有するので、所望の性能及び耐久性を有する電極及び膜電極アセンブリーを繰り返して再現することができるようにする。
【0030】
以下では、本発明の混合触媒の製造方法について具体的に説明する。
前述したように、燃料電池が適用される技術分野別または最終製品別に多様な要求事項を満たすことができる燃料電池及び/または膜電極アセンブリーを製造するためには、前記要求事項を満たすのに適した物理的特性(すなわち、BET表面積、マイクロ細孔表面積、外表面積、全細孔容積、マイクロ細孔容積、メソ細孔容積などのような物質的特性)を有する触媒を電極製造に使わなければならない。
特定の要求事項を満たすために必要な目標物理的特性(すなわち、目標BET表面積、目標マイクロ細孔表面積、目標外表面積、目標全細孔容積、目標マイクロ細孔容積、及び目標メソ細孔容積)を有する触媒が商業的に入手できれば、それを購買して電極及び膜電極アセンブリーの製造に使うことができる。しかし、多くの場合に、商業的に入手可能な触媒の物理的特性が前記目標物理的特性とマッチしないという問題がある。
【0031】
本発明は、商業的に入手可能な触媒を用いて前記目標物理的特性を均一に有する特別注文型混合触媒を容易にかつ経済的に製造することができる方法を提供する。
目標BET表面積、目標マイクロ細孔表面積、目標外表面積、目標全細孔容積、目標マイクロ細孔容積、及び目標メソ細孔容積を有する燃料電池用混合触媒を製造するための本発明の方法は、(i)第1触媒を決定する第1段階、(ii)第2触媒を決定する第2段階、(iii)前記第1及び第2触媒の混合比を決定する第3段階、及び(iv)前記第1及び第2触媒を前記混合比で混合する第4段階を含む。
前記第1及び第2触媒は商業的に入手可能な触媒であり、前記第1触媒は第1担体及び前記第1担体上に分布されている第1触媒金属粒子を含み、前記第2触媒は第2担体及び前記第2担体上に分布されている第2触媒金属粒子を含む。
前記第1及び第2担体と前記第1及び第2触媒金属粒子は前述したので、これらについての反復説明は省略する。
前記第1及び第2触媒はBET表面積及び全細孔容積の面で相異なる。すなわち、前記第1触媒は第1BET表面積及び第1全細孔容積を有し、前記第2触媒は前記第1BET表面積と異なる第2BET表面積及び前記第1全細孔容積と異なる第2全細孔容積を有する。
【0032】
本発明の方法によれば、BET表面積及び全細孔容積の面で相異なる前記第1及び第2触媒を所定の混合比で混合することにより、目標物理的特性に合う第3の物理的特性を均一に有する混合触媒を反復的に均一に再現することができ、その結果、商業的に入手可能な単一触媒のみでは具現できない性能及び耐久性の電極及びそれを含む膜電極アセンブリーを製造することができる。
前述したように、商業的に入手可能な前記第1及び第2触媒のそれぞれは、互いに独立的に、(i)150m/g以上のBET表面積及び0.50cm/g以上の全細孔容積を有する第1タイプの触媒、または(ii)150m/g未満のBET表面積及び0.50cm/g未満の全細孔容積を有する触媒である。
【0033】
本発明によれば、前記第1及び第2段階(すなわち、前記第1及び第2触媒を決定する段階)で前記第1及び第2触媒が同じタイプの触媒と決定される場合(すなわち、前記第1及び第2触媒が共に第1タイプの触媒と決定されるか、前記第1及び第2触媒が共に第2タイプの触媒と決定される場合)、前記第1、第2、及び第3段階(すなわち、前記第1触媒、前記第2触媒、及び前記混合比を決定する段階)は下記の式13~式18を満たすことができるように遂行する。
[式13]
BET_C1・RC1+SBET_C2・RC2≦TSBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式14]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦TSMICRO_HC≦SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2
[式15]
EX_C1・RC1+SEX_C2・RC2≦TSEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式16]
T_C1・RC1+VT_C2・RC2≦TVT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式17]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦TVMICRO_HC≦VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2
[式18]
MESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2≦TVMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・C2)・1.15
【0034】
ここで、
TSBET_HCは前記目標BET表面積であり、
BET_C1は前記第1BET表面積であり、
BET_C2は前記第2BET表面積であり、
C1は前記混合触媒の重量に対する前記第1触媒の重量の比であり、
C2は前記混合触媒の重量に対する前記第2触媒の重量の比(すなわち、RC2=1-RC1)であり、
TSMICRO_HCは前記目標マイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔表面積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔表面積であり、
SEX_HCは前記目標外表面積であり、
EX_C1は前記第1触媒の外表面積であり、
EX_C2は前記第2触媒の外表面積であり、
TVT_HCは前記目標全細孔容積であり、
T_C1は前記第1全細孔容積であり、
T_C2は前記第2全細孔容積であり、
TVMICRO_HCは前記目標マイクロ細孔容積であり、
MICRO_C1は前記第1触媒のマイクロ細孔容積であり、
MICRO_C2は前記第2触媒のマイクロ細孔容積であり、
TVMESO_HCは前記目標メソ細孔容積であり、
MESO_C1は前記第1触媒のメソ細孔容積であり、
MESO_C2は前記第2触媒のメソ細孔容積である。
【0035】
一方、前記第1及び第2段階(すなわち、前記第1及び第2触媒を決定する段階)で前記第1及び第2触媒が相異なるタイプの触媒と決定される場合(すなわち、前記第1及び第2触媒の中で一方が前記第1タイプの触媒と決定され、他方が前記第2タイプの触媒と決定される場合)、前記第1、第2、及び第3段階(すなわち、前記第1触媒、前記第2触媒、及び前記混合比を決定する段階)は下記の式19~式24を満たすことができるように遂行する。
[式19]
(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・0.75≦TSBET_HC≦(SBET_C1・RC1+SBET_C2・RC2)・1.25
[式20]
(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・0.75≦TSMICRO_HC≦(SMICRO_C1・RC1+SMICRO_C2・RC2)・1.25
[式21]
(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・0.75≦TSEX_HC≦(SEX_C1・RC1+SEX_C2・RC2)・1.25
[式22]
(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・0.85≦TVT_HC≦(VT_C1・RC1+VT_C2・RC2)・1.15
[式23]
(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・0.85≦TVMICRO_HC≦(VMICRO_C1・RC1+VMICRO_C2・RC2)・1.15
[式24]
(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・0.85≦TVMESO_HC≦(VMESO_C1・RC1+VMESO_C2・RC2)・1.15
【0036】
本発明によれば、目標物理的特性によって前記第1及び第2触媒の種類及びその混合比(すなわち、RC1:RC2)が決定されるので(すなわち、本発明によって製造される混合触媒の物理的特性が予測可能であるので)、状況及び要求に合う多様な電極設計が可能である。
本発明の方法によって製造される混合触媒(すなわち、前記第4段階で得られる混合物)は固相(solid phase)の触媒であり、商業的に入手可能な固相の前記第1及び第2触媒を別途の処理なしに前記混合比で混合することのみでよいので、前記第1及び第2触媒自体の変化や損失を最小化しながら前記混合触媒の物理的特性を目標物理的特性に応じて適切に、正確に、手軽く、かつ経済的に制御することができる。
本発明によれば、前記第1及び第2触媒を前記混合比によって混合する第4段階は共振音響混合器(resonant acoustic mixer)を用いて遂行する。
本発明の一実施例によれば、前記第4段階は55~65Hzの周波数及び30~90Gの加速度で1~20分間遂行することができる。
【0037】
55Hz未満の周波数の音響エネルギーが使われるか、30G未満の加速度が加わるか、または前記共振音響混合が1分未満の間のみ遂行される場合には、均質に混合された混合触媒を製造することができない。一方、65Hz超過の周波数の音響エネルギーが使われるか、90G超過の加速度が加わるか、または前記共振音響混合が20分を超えて遂行される場合には触媒の変形が引き起こされる。
本発明の共振音響混合が行われる混合容器の高さは底面の長さ(‘直径’または‘任意の2点間の最大距離’)の1~3倍であることができる。前記長さが前記高さの1倍未満であれば前記第1及び第2触媒が全体的に均一に混合されることができなく、前記長さが前記高さの3倍を超えれば混合中に容器の破損及び/または離脱が引き起こされることができる。
【0038】
単純混合、ボルテックス(vortex)混合、ボールミル(ball-mill)混合などのような一般的混合は均質な混合物(homogeneous mixture)を得るのに限界があるので、単一バッチ(batch)で得られる混合物から取られるサンプルの間に、かつ相異なるバッチ(batches)でそれぞれ生産される混合物から取られるサンプルの間に相当な物性偏差が引き起こされる。これは、所望の目標物理的特性を有する混合触媒を繰り返して再現することができないことを意味する。特に、前記ボールミル混合によれば、混合過程でソース触媒が壊されて混合触媒の全種類の表面積及び細孔容積がソース触媒のそれらより大きくなる傾向が現れ、このようなソース触媒の物理的損傷による混合触媒の耐久性低下が観測される。
これに対し、本発明によれば、商業的に販売される2種以上の触媒を前記共振音響混合器で均質に混合することにより、単一バッチで得られる混合触媒全体が均一な物理的特性を有することができるだけでなく、相異なるバッチでそれぞれ生産される混合触媒間の物理的特性の均一性も向上することができる。
【0039】
例えば、本発明によれば、単一バッチで得られる混合触媒から取られるサンプル及び相異なるバッチでそれぞれ生産される混合触媒から取られるサンプルのそれぞれに対して、BET表面積(SBET_HC)、マイクロ細孔表面積(SMICRO_HC)、外表面積(SEX_HC)、全細孔容積(VT_HC)、マイクロ細孔容積(VMICRO_HC)、及びメソ細孔容積(VMESO_HC)からなる群から選択されるどの物性を測定しても前記物性の標準偏差が前記物性の算術平均の5%以下の程度に均一な物理的特性を有する。
また、本発明の共振音響混合は前記第1及び第2触媒の物理的損傷を引き起こさないので、前記第1及び第2触媒の共振音響混合によって得られる本発明の混合触媒は向上した耐久性を示すことができる。
結果的に、本発明の方法によれば、目標物理的特性を均一に有する混合触媒を繰り返して再現することができ、その結果、このような混合触媒を用いて所望の性能及び耐久性を有する電極及び膜電極アセンブリーを繰り返して再現することができる。
【0040】
以下では、本発明の混合触媒を用いて電極を形成する方法を具体的に説明する。
まず、本発明によって製造された前記混合触媒をアイオノマーとともに分散媒に分散させて電極スラリーを準備する。
本発明の混合触媒とともに分散媒に分散されるアイオノマーは水素イオン伝達のためのものであり、電極と高分子電解質膜との間の接着力向上のためのバインダーとしての機能も果たす。前記アイオノマーは、フッ素系アイオノマーまたは炭化水素系アイオノマーであることができ、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、及びスルホン酸フルオライド基からなる群から選択される1種以上のイオン伝導性基を有することができる。
例えば、前記アイオノマーは、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)などのようなフッ素系アイオノマーであることができる。
【0041】
代案として、前記アイオノマーは、スルホン化ポリイミド(sulfonated polyimide:S-PI)、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone:S-PAES)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone:SPEEK)、スルホン化ポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole:SPBI)、スルホン化ポリスルホン(sulfonated polysulfone:S-PSU)、スルホン化ポリスチレン(sulfonated polystyrene:S-PS)、スルホン化ポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化ポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化ポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化ポリフェニレンオキサイド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化ポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化ポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化ポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化ポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)などのような炭化水素系アイオノマーであることができる。
前記分散媒は、水、親水性溶媒、有機溶媒、またはこれらの中で2種以上の混合物であることができる。
【0042】
前記親水性溶媒は、炭素数1~12の線形または分岐形の飽和または不飽和炭化水素を主鎖として含み、アルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル及びアミドからなる群から選択される1種以上の官能基を有する化合物であることができる。
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)またはこれらの中で2種以上の混合物であることができるが、これらに制限されない。
次いで、前記電極スラリーを基材(substrate)上にコーティングし、前記コーティングされた電極スラリーを乾燥させる。
本発明の一実施例によれば、前記電極は、デカール転写法(decal transfer method)によって高分子電解質膜上に形成することができる。
【0043】
デカール転写法によれば、前記電極スラリーがコーティングされる前記基材は離型フィルム(release film)であり、本発明の電極形成方法は、前記乾燥段階で前記離型フィルム上に形成された電極を前記高分子電解質膜上に転写する段階、及び前記離型フィルムを除去する段階をさらに含む。
具体的に、マスクフィルムを用いて前記離型フィルム上に前記電極スラリーを所定の形態及び大きさにコーティングした後、後続の乾燥工程によって前記電極スラリーから前記分散媒を除去する。次いで、前記乾燥工程で形成された電極が高分子電解質膜に接触するように前記離型フィルムと前記電極を前記高分子電解質膜上に積層した後、加熱プレス(hot pressing)工程を遂行することにより、前記電極を前記高分子電解質膜上に転写し、次いで前記離型フィルムを除去する。
デカール転写法を用いて膜電極アセンブリーを製造する場合、アノードとカソードのそれぞれを前記のような方法で離型フィルム上にそれぞれ形成した後、高分子電解質膜の一面及び他面に前記アノードと前記カソードを同時に転写することが一般的である。
【0044】
前記高分子電解質膜は、アイオノマーから形成された単一膜タイプ(single membrane type)またはアイオノマーで含浸された多孔性支持体を含む強化複合膜タイプ(reinforced composite membrane type)であることができる。前記高分子電解質膜のアイオノマーと前記電極スラリーのアイオノマーは同種のアイオノマーであることが好ましいが、本発明がこれに制限されるものではなく、異種のアイオノマーを前記高分子電解質膜及び前記電極の製造にそれぞれ使うこともできる。
本発明の他の実施例によれば、前記電極は直接コーティング法(direct coating method)で高分子電解質膜上に形成することができる。
直接コーティング法によれば、前記電極スラリーがコーティングされる前記基材は高分子電解質膜である。例えば、マスクフィルムを用いて前記高分子電解質膜上に前記電極スラリーを所定の形態及び大きさにコーティングした後、前記電極スラリーから前記分散媒を除去するための乾燥工程を遂行する。次いで、前記乾燥工程によって電極が一旦形成されれば、前記マスクフィルムを除去する。
【0045】
直接コーティング法を用いて膜電極アセンブリーを製造する場合、アノードとカソードを高分子電解質膜の一面及び他面に順次形成することができる。
上述したように、前記電極スラリーを用いてデカール転写法または直接コーティング法によって高分子電解質膜の一面及び他面にアノード及びカソードをそれぞれ形成することにより、本発明の膜電極アセンブリー(MEA)を製造することができる。
例えば、本発明の膜電極アセンブリー(MEA)は、アノード、カソード、及びこれらの間の高分子電解質膜を含み、前記アノードはそれに要求される性能及び耐久性を満たすことができる目標物理的特性を有する本発明の第1混合触媒を含み、前記カソードはそれに要求される性能及び耐久性を満たすことができる目標物理的特性を有する本発明の第2混合触媒を含むことができる。
代案として、前記アノード及び前記カソードの中でいずれか一方のみが本発明によって製造される混合触媒を含み、他方は商業的に入手可能な触媒を含むこともできる。
以下、具体的な実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。ただ、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものであるだけで、これによって本発明の権利範囲が制限されてはいけない。
【0046】
実施例1a(相異なるタイプの触媒の共振音響混合)
それぞれ商業的に入手可能なAタイプの触媒(SBET=294m/g、SMICRO=40m/g、SEX=254m/g、V=0.81cm/g、VMICRO=0.02cm/g、VMESO=0.79cm/g)(以下、“A1触媒”)とBタイプの触媒(SBET=73m/g、SMICRO=1m/g、SEX=72m/g、V=0.35cm/g、VMICRO=0cm/g、VMESO=0.35cm/g)(以下、“B1触媒”)をそれぞれ準備した。ここで、Aタイプの触媒は150m/g以上のBET比表面積及び0.50cm/g以上の全細孔容積を有する触媒をいい、Bタイプの触媒は150m/g未満のBET比表面積及び0.50cm/g未満の全細孔容積を有する触媒をいう。
次いで、前記A1触媒5gと前記B1触媒5gを混合容器に入れ(すなわち、混合比=1:1)、この混合容器を共振音響混合器に装着した。そして、60Hzの周波数及び70Gの加速度の下で8分間共振音響混合を遂行することによって混合触媒を得た。
実施例1b
他のバッチ(batch)で前記実施例1aと同様な方法で混合触媒を得た。
実施例1c
前記A1触媒と前記B1触媒の混合比(A1:B1)が3:7であったことを除き、前記実施例1aと同様な方法で混合触媒を得た。
実施例2(Aタイプの触媒同士の共振音響混合)
前記B1触媒の代わりに、さらに他のAタイプの触媒(SBET=305m/g、SMICRO=52m/g、SEX=253m/g、V=0.63cm/g、VMICRO=0.02cm/g、VMESO=0.61cm/g)(以下、“A2触媒”)を使ったことを除き、前記実施例1aと同様な方法で混合触媒を得た。
実施例3(Bタイプの触媒同士の共振音響混合)
前記A1触媒の代わりに、さらに他のBタイプの触媒(SBET=64m/g、SMICRO=10m/g、SEX=52m/g、V=0.32cm/g、VMICRO=0.01cm/g、VMESO=0.31cm/g)(以下、“B2触媒”)を使ったことを除き、前記実施例1aと同様な方法で混合触媒を得た。
【0047】
比較例1a(相異なるタイプの触媒のボルテックス混合)
前記A1触媒及び前記B1触媒が入れられた混合容器をボルテックス混合器に装着した後、15分間ボルテックス混合を遂行したことを除き、前記実施例1aと同様な方法で混合触媒を得た。
比較例1b
他のバッチ(batch)で前記比較例1aと同様な方法で混合触媒を得た。
比較例1c
前記A1触媒と前記B1触媒の混合比(A1:B1)が3:7であったことを除き、前記比較例1aと同様な方法で混合触媒を得た。
比較例2a(相異なるタイプの触媒のボールミル混合)
前記A1触媒及び前記B1触媒が入れられた混合容器にビードを入れ、この混合容器をボールミル混合器に装着した後、10分間ボールミル混合を遂行したことを除き、前記実施例1aと同様な方法で混合触媒を得た。
比較例2b
他のバッチ(batch)で前記比較例2aと同様な方法で混合触媒を得た。
比較例2c
前記A1触媒と前記B1触媒の混合比(A1:B1)が3:7であったことを除き、前記比較例2aと同様な方法で混合触媒を得た。
比較例3(Aタイプの触媒同士のボルテックス混合)
前記A1触媒及び前記A2触媒が入れられた混合容器をボルテックス混合器に装着した後、15分間ボルテックス混合を遂行したことを除き、前記実施例2と同様な方法で混合触媒を得た。
比較例4(Aタイプの触媒同士のボールミル混合)
前記A1触媒及び前記A2触媒が入れられた混合容器にビードを入れ、この混合容器をボールミル混合器に装着した後、10分間ボールミル混合を遂行したことを除き、前記実施例2と同様な方法で混合触媒を得た。
比較例5(Bタイプの触媒同士のボルテックス混合)
前記B1触媒及び前記B2触媒が入れられた混合容器をボルテックス混合器に装着した後、15分間ボルテックス混合を遂行したことを除き、前記実施例3と同様な方法で混合触媒を得た。
比較例6(Bタイプの触媒同士のボールミル混合)
前記B1触媒及び前記B2触媒が入れられた混合容器にビードを入れ、この混合容器をボールミル混合器に装着した後、10分間ボールミル混合を遂行したことを除き、前記実施例3と同様な方法で混合触媒を得た。
【0048】
[BET等温曲線(BET Isotherm Curve)]
BET分析器(Micromeritics、ASAP-2020)を用いて実施例1a、比較例1a、比較例2a、実施例2、及び実施例3の混合触媒のBET等温曲線をそれぞれ得、これを図1図5に示した。
A1触媒、B1触媒、及び実施例1aの混合触媒のBET等温曲線を示す図1から、A1触媒とB1触媒を1:1の重量混合比で共振音響混合することによって得られた実施例1aの混合触媒はそのBET等温曲線がA1触媒のBET等温曲線とB1触媒のBET等温曲線とのほぼ中間に位置するように物理的特性が制御されたことが分かる。
一方、A1触媒、B1触媒、及び比較例1aの混合触媒のBET等温曲線を示す図2から、A1触媒とB1触媒を1:1の重量混合比でボルテックス(vortex)混合することによって得られた比較例1aの混合触媒にはA1触媒とB1触媒の物理的特性が混在していることを確認することができる。
【0049】
一方、A1触媒、B1触媒、及び比較例2aの混合触媒のBET等温曲線を示す図3から、A1触媒とB1触媒を1:1の重量混合比でボールミル(ball-mill)混合することによって得られた比較例2aの混合触媒は、実施例1a及び比較例1aと違い、その表面積及び細孔容積が増加する傾向を示したことが分かる。これは、ボールミル混合過程で触媒の物理的損傷が引き起こされたからであると思われる。
A1触媒、A2触媒、及び実施例2の混合触媒のBET等温曲線を示す図4及びB1触媒、B2触媒、及び実施例3の混合触媒のBET等温曲線を示す図5から、同じタイプの触媒を1:1の重量混合比で共振音響混合することによって得られる混合触媒のそれぞれはそのソース触媒と有意な差なしに類似した形態のBET等温曲線を示すことを確認することができる。
【0050】
[XRD分析]
実施例1a、2及び3の混合触媒のXRD分析結果を図6図8にそれぞれ示した。
A1触媒、B1触媒、及び実施例1aの混合触媒のXRDパターンを示すグラフである図6から分かるように、実施例1aの混合触媒のXRDピーク強度は、前記BET等温曲線結果と同様に、A1触媒のピーク強度とB1触媒のピーク強度との間の中間程度の値を有することがわかる。
一方、A1触媒、A2触媒、及び実施例2の混合触媒のXRDパターンを示すグラフである図7及びB1触媒、B2触媒、及び実施例3の混合触媒のXRDパターンを示すグラフである図8から、同じタイプの触媒を1:1の重量混合比で共振音響混合することによって得られる混合触媒のそれぞれはそのソース触媒と有意な差なしに類似した形態のXRDピーク強度を示すことを確認することができる。Bタイプの触媒(すなわち、B1触媒及びB2触媒)同士共振音響混合させることによって得られた実施例3の混合触媒のXRDパターンで少しの炭素結晶性低下を示すはするが、大きな差があるものではない。
[物理的特性(SBET、SMICRO、SEX、V、VMICRO、VMESO)の測定]
BET分析器(Micromeritics、ASAP-2020)を用いて実施例及び比較例の混合触媒の物理的特性(SBET、SMICRO、SEX、V、VMICRO、VMESO)をそれぞれ測定した。具体的に、混合触媒から無作為に5個のサンプルを取って前記物理的特性をそれぞれ測定し、それぞれの物理的特性別にその測定値の平均(算術平均)(Avg.)及び標準偏差(SD)を計算した。
以下の表1は相異なるタイプの触媒(すなわち、A1触媒とB1触媒)を1:1の混合比で混合して得られた実施例1a、比較例1a、及び比較例2aの混合触媒の物理的特性を示す。
【0051】
【表1】
表1に示すように、相異なるタイプの触媒(すなわち、A1触媒とB1触媒)を1:1の混合比で共振音響混合することによって得られた実施例1aの混合触媒の表面積特性(すなわち、SBET、SMICRO、及びSEX)のそれぞれは“(S_A1・RA1+S_B1・RB1)・0.75~(S_A1・RA1+S_B2・RB2)・1.25”の範囲内に制御されることを確認することができる(ここで、S_A1はA1触媒の該当表面積特性であり、S_B1はB1触媒の該当表面積特性であり、RA1は混合触媒の重量に対するA1触媒の重量の比で、実施例1aでは0.5であり、RB1は混合触媒の重量に対するB1触媒の重量の比で、実施例1aでは0.5である)。
また、実施例1aの混合触媒の細孔容積特性(すなわち、V、VMICRO、及びVMESO)のそれぞれは“(V_A1・RA1+V_B1・RB1)・0.85~(V_A1・RA1+V_B2・RB2)・1.15”の範囲内に制御されることを確認することができる(ここで、V_A1はA1触媒の該当細孔容積特性であり、S_B1はB1触媒の該当細孔容積特性である)。
【0052】
一方、A1触媒とB1触媒をボルテックス混合またはボールミル混合することによって得られた比較例1a及び2aの混合触媒の場合にはその物理的特性が本発明で制御しようとする範囲から部分的にまたは全体的に離脱した。
以下の表2は相異なるタイプの触媒(すなわち、A1触媒とB1触媒)を1:1の混合比で混合して得られた実施例1a、比較例1a、及び比較例2aの混合触媒、及びこれらと異なるバッチ(batch)でこれらとそれぞれ同じ方式で製造された実施例1b、比較例1b、及び比較例2bの混合触媒の物理的特性のそれぞれの平均(Avg.)及び標準偏差(SD)を示す。
【表2】
【0053】
表2から、実施例1a及び1bの混合触媒はその物理的特性(SBET、SMICRO、SEX、V、VMICRO、VMESO)のそれぞれの標準偏差がその平均の5%以下の程度に均一な物理的特性を有することを確認することができる。また、相異なるバッチ(batches)で同じ方法でそれぞれ製造された実施例1a及び1bの混合触媒の間に物理的特性の差がほとんど存在しないことがわかる。
すなわち、同じバッチで生産される混合触媒の物質的特性の均一性はもちろんのこと、相異なるバッチでそれぞれ生産される混合触媒の物理的特性の均一性も非常に優れることが確認された。結果的に、本発明によれば、目標物理的特性を均一に有する混合触媒を繰り返して再現することができる。
一方、本発明の共振音響混合の代わりに、ボルテックス混合またはボールミル混合によってそれぞれ製造された比較例1a、1b、2a、及び2bの混合触媒は、その物理的特性(SBET、SMICRO、SEX、V、VMICRO、VMESO)の少なくとも一部は標準偏差がその平均の5%を超えることが現れた。また、相異なるバッチで同じ方法でそれぞれ製造された混合触媒の間(すなわち、比較例1aと1bとの間及び比較例2aと2bとの間)で相当な物理的特性差が現れた。すなわち、前記比較例の製造方法によってはソース触媒(すなわち、A1触媒及びB1触媒)が均質に混合されないので、均一な物理的特性を有する混合触媒を繰り返して再現することができないことを確認することができる。
【0054】
以下の表3はAタイプの触媒(すなわち、A1触媒とA2触媒)を1:1の混合比で混合して得られた実施例2、比較例3、及び比較例4の混合触媒の物理的特性を示し、以下の表4はBタイプの触媒(すなわち、B1触媒とB2触媒)を1:1で混合して得られた実施例3、比較例5、及び比較例6の混合触媒の物理的特性を示す。
【表3】
【表4】
【0055】
表3及び4に示すように、同じタイプの触媒(すなわち、A1触媒とA2触媒、またはB1触媒とB2触媒)を1:1の混合比で共振音響混合することによって得られた実施例2及び3の混合触媒のBET表面積(SBET)及び外表面積(SEX)のそれぞれは“(S_A1・RA1+S_A2・RA2)~(S_A1・RA1+S_A2・RA2)・1.25”の範囲及び“(S_B1・RB1+S_B2・RB2)~(S_B1・RB1+S_B2・RB2)・1.25”の範囲内にそれぞれ制御されることを確認することができる(ここで、S_A1はA1触媒の該当表面積特性、S_A2はA2触媒の該当表面積特性、S_B1はB1触媒の該当表面積特性、S_B2はB2触媒の該当表面積特性、RA1は実施例2の混合触媒の重量に対するA1触媒の重量の比で、0.5であり、RA2は実施例2の混合触媒の重量に対するA2触媒の重量の比で、0.5であり、RB1は実施例3の混合触媒の重量に対するB1触媒の重量の比で、0.5であり、RB2は実施例3の混合触媒の重量に対するB2触媒の重量の比で、0.5である)。また、実施例2及び3の混合触媒のマイクロ細孔表面積(SMICRO)は“(SMICRO_A1・RA1+SMICRO_A2・RA2)・0.75~(SMICRO_A1・RA1+SMICRO_A2・RA2)”の範囲及び“(SMICRO_B1・RB1+SMICRO_B2・RB2)・0.75~(SMICRO_B1・RB1+SMICRO_B2・RB2)”の範囲内にそれぞれ制御されることを確認することができる(ここで、SMICRO_A1はA1触媒のマイクロ細孔表面積、SMICRO_A2はA2触媒のマイクロ細孔表面積、SMICRO_B1はB1触媒のマイクロ細孔表面積高、SMICRO_B2はB2触媒のマイクロ細孔表面積である)。
【0056】
実施例2の混合触媒の全細孔容積(V)及びメソ細孔容積(VMESO)と実施例3の混合触媒の全細孔容積(V)及びメソ細孔容積(VMESO)は“(V_A1・RA1+V_A2・RA2)~(V_A1・RA1+V_A2・RA2)・1.15”の範囲及び“(V_B1・RB1+V_B2・RB2)~(V_B1・RB1+V_B2・RB2)・1.15”の範囲内にそれぞれ制御されることを確認することができる(ここで、V_A1はA1触媒の該当細孔容積特性、V_A2はA2触媒の該当細孔容積特性、V_B1はB1触媒の該当細孔容積特性、V_B2はB2触媒の該当細孔容積特性である)。また、実施例2及び3の混合触媒のマイクロ細孔表面積(VMICRO)は“(VMICRO_A1・RA1+VMICRO_A2・RA2)・0.85~(VMICRO_A1・RA1+VMICRO_A2・RA2)”の範囲及び“(VMICRO_B1・RB1+VMICRO_B2・RB2)・0.85~(VMICRO_B1・RB1+VMICRO_B2・RB2)”の範囲内にそれぞれ制御されることを確認することができる(ここで、VMICRO_A1はA1触媒のマイクロ細孔容積、VMICRO_A2はA2触媒のマイクロ細孔容積、VMICRO_B1はB1触媒のマイクロ細孔容積、VMICRO_B2はB2触媒のマイクロ細孔容積である)。
【0057】
以上のような結果は、同じタイプの触媒の共振音響混合が遂行されるのに伴い、マイクロ細孔は減少する反面、その他の細孔は増加することを示す。また、同じタイプの触媒を混合する場合(実施例2及び3)が生産可能な混合触媒の多様性の側面で相異なるタイプの触媒を混合する場合(実施例1a)に比べて多少落ちるはするが、混合触媒の物理的特性が本発明によって所定範囲内でよく制御されることができることが分かる。
一方、同じタイプの触媒(すなわち、A1触媒とA2触媒、またはB1触媒とB2触媒)をボルテックス混合またはボールミル混合することによって得られた比較例3~6の混合触媒の場合には、物理的特性が本発明で制御しようとする範囲を部分的にまたは全体的に外れた。
以下の表5は相異なるタイプの触媒(すなわち、A1触媒とB1触媒)を3:7の混合比で混合して得られた実施例1c、比較例1c、及び比較例2cの混合触媒の物理的特性を示す。
【0058】
【表5】
表5に示すように、1:1ではない他の混合比(すなわち、3:7)でA1触媒とB1触媒を混合する場合にも、本発明によって製造された混合触媒のみが所定範囲の目標物理的特性を示すことを確認することができる。
一定した傾向なしにランダムな物理的特性を示す比較例の混合触媒から、本発明の共振音響混合とは違い、ボルテックス混合及びボールミル混合は生産される混合触媒の物性をほとんど調節することができないことが分かる(すなわち、ボルテックス混合またはボールミル混合によって生産される混合触媒は物理的特性が予測できない)。
【0059】
[混合触媒の耐久性評価]
実施例1a、比較例1a、及び比較例2aの混合触媒のそれぞれに対して次のような方法でこれらの耐久性を評価した。
混合触媒1gを水で濡らした後、イソプロピルアルコールと水が7:3の容積比で混合した混合溶媒に分散させて得られた溶液を10%のアイオノマー溶液40gと混合した。次いで、均質混合器を用いた分散工程を遂行することによって電極スラリーを得た。次いで、前記電極スラリーを用いて通常の方法で膜電極アセンブリーを製造した。前記膜電極アセンブリーに対して1.0Vと1.5Vとの間で500回のtriangle sweep cycles(温度:80℃、相対湿度(アノード/カソード):100%/100%、スキャン速度:500mV/s)を実施した後、1.5A/cmで電圧損失(voltage loss)を測定し、その結果を以下の表6に示した。
【表6】
【0060】
表6は本発明の実施例の場合のみに触媒耐久性改善効果が現れたことを示す。これに対し、ボルテックス混合またはボールミル混合によって得られた比較例の場合には耐久性低下が観測され、特に比較例2aでは、ボールミル混合過程で引き起こされたソース触媒の物理的損傷によって混合触媒の耐久性低下が深刻であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】