(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(54)【発明の名称】導電性コーティングと印刷層とを有するグレージング、これを製造する方法およびこれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20221226BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20221226BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20221226BHJP
B60J 1/20 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
C03C17/36
B60J1/00 H
B60J1/20 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525537
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 GB2020052767
(87)【国際公開番号】W WO2021084279
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ジェレミー ブート
(72)【発明者】
【氏名】グラハム シドンズ
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB05
4G059AB11
4G059AC06
4G059AC08
4G059AC11
4G059AC12
4G059DA01
4G059DA08
4G059DA09
4G059DB02
4G059EA01
4G059EA04
4G059EA05
4G059EA07
4G059EB02
(57)【要約】
本発明は、ガラスシート2の表面の一部に印刷層3を備える第1のガラスシート2および第1のガラスシート2の表面に導電性コーティング6を備える、グレージング1を提供する。導電性コーティング6は、印刷層3の少なくとも一部に延在して、コーティングされた印刷部分7を形成し、ガラスシート2の表面の一部に延在して、コーティングされたガラス部分8を形成する。コーティングされた印刷部分7は、27.45%未満の界面の展開面積比Sdrを有する。当該グレージングを製造するための方法、および当該グレージングを車両に使用するための方法をも開示する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレージング1であって、
第1のガラスシート2であって、前記ガラスシート2の表面の一部に印刷層3を備える前記第1のガラスシート2と、
前記第1のガラスシート2の前記表面の導電性コーティング6であって、前記導電性コーティング6は、前記印刷層3の少なくとも一部に延在して、コーティングされた印刷部分7を形成し、前記ガラスシート2の前記表面の一部に延在して、コーティングされたガラス部分8を形成する、前記第1のガラスシート2の前記表面の導電性コーティング6と、を備え、
ここで、前記コーティングされた印刷部分7は、27.45%未満の界面の展開面積比Sdrを有する、
グレージング1。
【請求項2】
前記導電性コーティング6に電力を供給するための少なくとも2つの印刷されたバスバー4、5を備え、前記印刷されたバスバー4、5は、各々前記導電性コーティング6と電気的に接触する、請求項1に記載のグレージング。
【請求項3】
前記印刷層3の前記表面は、0.5μmを超える、好ましくは0.6μmを超える、より好ましくは0.7μmを超える平均粗さRaを有する、請求項1または2に記載のグレージング。
【請求項4】
前記印刷層3の前記表面は、5~25%の範囲の界面の展開面積比Sdrを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項5】
前記コーティングされたガラス部分8のシート抵抗は、前記コーティングされた印刷部分7のシート抵抗よりも小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項6】
前記コーティングされた印刷部分7の前記シート抵抗は、前記コーティングされたガラス部分8の前記シート抵抗の少なくとも20%超または未満であり、好ましくは、前記コーティングされたガラス部分8の前記シート抵抗よりも少なくとも50%超、より好ましくは、前記コーティングされたガラス部分8の前記シート抵抗よりも少なくとも100%超である、請求項1から5のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項7】
前記印刷層3は、不明瞭化バンドであり、好ましくは前記グレージングの周囲に向かって配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項8】
前記印刷層3は、無機顔料およびフリットを備えるエナメルインクで形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項9】
前記エナメルインクは、平均粒子サイズが5.2μmを超える粒子を有する顔料を備える、請求項8に記載のグレージング。
【請求項10】
前記導電性コーティング6は、少なくとも1つの赤外線反射層を備え、好ましくは銀を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項11】
前記導電性コーティング6は、複数の誘電体層を備え、各赤外線反射層が少なくとも2つの誘電体層の間に配置される、請求項10に記載のグレージング。
【請求項12】
前記バスバー4、5は、前記コーティングされた印刷部分7と接触するかまたは前記コーティングされたガラス8を加熱するための追加のバスバー9をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項13】
前記コーティングされた印刷部分7を有する前記印刷されたバスバー4、5は、前記コーティングされた印刷部分7が前記ガラスシート2の所望のゾーンを加熱するように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項14】
前記印刷層3は、パターン化された部分を有し、必要に応じてドット、ライン、フェードアウトまたはフェザーエッジを備える、請求項1から13のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項15】
前記印刷層3は、導電性プリント、必要に応じて銀含有導電性プリント、を備えるオーバープリント層をさらに備え、前記コーティングされた印刷部分7の前記シート抵抗を調整する、請求項1から14のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項16】
前記グレージングは、ワイパー静止領域またはカメラ領域を備え、前記コーティングされた印刷部分7は、配置され、前記ワイパー静止領域またはカメラ領域を加熱するように適合される、請求項1から15のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項17】
前記ガラスシート2上に配置された中間層材料のプライと積層グレージングを形成するための前記中間層材料のプライ上に配置された第2のガラスシートとをさらに備える、請求項1から16のいずれか一項に記載のグレージング。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のグレージングを備える車両窓。
【請求項19】
グレージング1を製造するための方法であって、前記方法は、
第1のガラスシート2を準備することと、
前記ガラスシート2の表面の一部にインクを提供して印刷層3を印刷することと、
前記印刷層3の前記インクを、80~180秒の範囲の焼成時間および500℃~695℃の範囲の温度において焼成することと、
前記第1のガラスシート2の前記表面に導電性コーティング6を堆積させ、前記導電性コーティング6は、前記印刷層3の少なくとも一部に延在して、コーティングされた印刷部分7を形成し、前記ガラスシート2の前記表面の一部に延在して、コーティングされたガラス部分8を形成することと、
を含み、
ここで、前記インク、前記焼成時間および前記焼成温度は、前記印刷層3の前記表面が27.45%未満の界面の展開面積比Sdrを有するように選択される、
グレージング1を製造するための方法。
【請求項20】
前記印刷層3のインクの焼成は、500~680℃、より好ましくは620~670℃の範囲の焼成温度である、請求項19に記載のグレージング1を製造するための方法。
【請求項21】
前記導電性コーティング6に電力を供給するために2つのバスバー4、5を印刷するステップをさらに含み、前記2つのバスバーは、各々前記導電性コーティング6と電気的に接触する、請求項19または請求項20に記載のグレージング1を製造する方法。
【請求項22】
車両、建物、電子ディスプレイまたは白物家電における、請求項1から17のいずれか一項に記載のグレージング1の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性コーティングおよび印刷層を備えるグレージング、これを製造する方法およびこれの使用(例えば、積層車両グレージングとして)に関する。
【背景技術】
【0002】
単一シートまたは積層グレージングは、車両グレージングとして役立つ。結合ポリマーを使用して共に結合された2つ以上のグレージング材料(通常はガラス)を備える、積層グレージングは、フロントガラスまたはリアグレージングとして特に有用である。
【0003】
そのようなグレージングは、電気加熱によって提供されるミスト除去および/または除氷機能を有し得る。グレージングの一部は、例えば、ワイパー静止領域またはカメラが配置されているグレージングの一部(先進運転支援システム、ADASの一部として)をより急速に加熱することによって、可変加熱を必要とし得る。
【0004】
導電性領域を有する車両グレージングを製造するために、導電性コーティングは、ガラスシートの表面または積層のプライの少なくとも1つに提供され得る。導電性コーティングはまた、グレージングに太陽光制御特性を有利に提供する。
【0005】
グレージング加熱用途で使用するための導電性コーティングは、通常、誘電体層間に配置された少なくとも1つの銀層を備える。そのような層は、真空コーティングプロセス、例えば、スパッタリングによって、少なくとも1つのプライの表面に堆積され得る。コーティングは、グレージングの成形前または成形後に堆積され得る。
【0006】
加熱用途で使用するための導電性コーティングは、導電性コーティングと電気的に接触し、導電性コーティングを電源に(通常は車両の電源に)接続するように作用する、通常は導電性コーティングの縁に沿って位置する、バスバーを有する。
【0007】
米国特許第2710900号明細書(Linder)は、車両グレージングを開示している。ガラスシート上の離間したバスバーは、導電性フィルムで覆われる。バスバーの中間物は、バスバー間の抵抗を制御するためのフィルムよりも高い電気伝導率を有する導電性補助具である。
【0008】
米国特許出願公開第2006/0186105号明細書(Voeltzel)は、積層車両グレージングを開示している。バスバーアセンブリは、外側のガラスプライの内面上にある。導電性コーティングは、バスバーアセンブリとガラスの一部との上方に堆積される。装飾バンドは、内側ガラスプライの内面上にある。装飾バンドは、グレージングの周囲に不透明な境界線を形成して、バスバーアセンブリの一部を隠す。
【0009】
米国特許出願公開第2017/0135160号明細書(Masschelein)は、導電性コーティング、マスキングストリップおよび銅箔バスバーを有する積層車両窓ガラスを開示している。スクリーン印刷によって従来の方法で形成されたマスキングストリップ上に堆積された導電性コーティングは、4Ω/□のシート抵抗を有する。液滴を噴霧するインクジェット法によって形成されたマスキングストリップ上に堆積されたコーティングは、2Ω/□のシート抵抗を有する。
【0010】
要約すると、通常、バスバーが見えないように、暗い色の不明瞭化バンド(装飾バンドまたはマスキングストリップ)をグレージングの縁に向かって印刷層の形で車両グレージングに提供する。不明瞭化バンドは、ガラスプライの表面に印刷されるエナメルインクから形成され得、400~680°Cで事前に焼成され得、次いで曲げられて成形され得る。ガラスプライの成形と同時に焼成が起こり得、上記のように、導電性コーティングは、ガラスプライの表面および印刷層の表面に堆積され得る。積層グレージングでは、導電性コーティング、バスバーおよび不明瞭化バンドは、ポリマー中間層および外側のガラスプライと接触する積層の内面である、表面2に堆積され得る。
【0011】
導電性コーティングの導電率の変動は、問題となり得、ホットスポットおよび電力の非効率的な使用につながり得る。加熱されたグレージング全体に効率的な熱分布を確保し、必要に応じてグレージングの一部をより迅速にまたは異なる温度に加熱できるようにするために、導電性コーティングを設計することが有利である(例えば、加熱ワイパー静止領域、HWRA)。したがって、所定の熱分布を有する改良されたグレージングを提供する必要がある。本発明の目的は、その必要性に取り組むことである。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、第1の態様において、
第1のガラスシートであって、ガラスシートの表面の一部に印刷層を備える第1のガラスシートと、
第1のガラスシートの表面の導電性コーティングであって、導電性コーティングは、印刷層の少なくとも一部に延在して、コーティングされた印刷部分を形成し、ガラスシートの表面の一部に延在して、コーティングされたガラス部分を形成する、第1のガラスシートの表面の導電性コーティングと、を備え、
ここで、コーティングされた印刷部分は、27.45%未満の界面の展開面積比Sdrを有する、グレージングを提供する。
【0013】
本発明者は、コーティングされたプリントの粗さの面積測定を制御することによって、所望のシート抵抗が得られ、最適なプロセス条件が見出されることを発見した。
【0014】
これは、コーティングされた印刷部分の粗さの所定の面積測定を選択することによって、グレージング内の加熱分布を容易に変更する能力を提供するため、非常に有利である。
【0015】
コーティングされた印刷部分は、バスバーおよび外部回路と組み合わせて、さらに有利な実施形態を提供し得る。本発明は、インク、焼成時間および焼成温度の選択について製造プロセスに最適な条件をいかに選択するかを教示する。
【0016】
バスバーを用いて選択された面積の粗さ測定を有するコーティングされた印刷部分を構成することにより、コーティングされた印刷部分は、ガラスシートの所望のゾーンに対して所定の電力のヒーターになる。
【0017】
本発明者は、コーティングされた印刷部分のシート抵抗が、印刷層の粗さRaの線形測定によって制御されるという従来技術の技術的偏見(例えば、米国特許出願公開第2017/0135160号明細書)を克服した。本発明者は、コーティングされた印刷部分の粗さ、Sa、SdqまたはSdrの面積測定が、表面の微細構造のより良い測定によると考えられる、シート抵抗とのより良い相関を有することを発見した。
【0018】
好ましくは、導電性コーティングに電力を供給するために少なくとも2つの印刷されたバスバーが提供され、各バスバーは、導電性コーティングと電気的に接触する。
【0019】
バスバーとコーティングされた印刷部分との間の接触が改善されるため、バスバーを印刷することは非常に有利である。
【0020】
好ましくは、コーティングされた印刷部分のシート抵抗は、2~200Ω/□の範囲であり、より好ましくは、2.5~120Ω/□の範囲であり、最も好ましくは、3~8Ω/□の範囲である。
【0021】
コーティングされた印刷部分は、0.15μm~0.30μmの範囲の面積粗さSaを有し得る。好ましくは、コーティングされた印刷部分は、5~25%の範囲の界面の展開面積比Sdrを有する。印刷層3の表面は、好ましくは4°~30°の範囲、好ましくは5°~25°の範囲の二乗平均平方根傾斜Sdqを有する。
【0022】
コーティングされた印刷部分は、0.5μmを超える、好ましくは0.6μmを超える、より好ましくは0.7μmを超える、より好ましくは0.8μmを超える、最も好ましくは0.9μmを超える、平均粗さRaを有し得る。
【0023】
本発明者は、スタイラス先端半径が2~10μmであるプロフィロメータを使用して平均粗さRaを測定し、シート抵抗との相関が不十分であることを発見した。本発明者は、先端半径が2~20nmのAFMを使用して界面の展開面積比Sdrを測定し、シート抵抗との良好な相関関係を見出した。印刷層上の導電性コーティングのシート抵抗は、コーティング表面の微細構造によって制御されると考えられ、これは、AFMによって測定され得るが、プロフィロメータによっては測定され得ない。
【0024】
本発明者は、通常、コーティングされたガラス部分のシート抵抗が、コーティングされた印刷部分のシート抵抗よりも小さいことを発見した。コーティングされたガラス部分のシート抵抗は、0.5~4.5Ω/□の範囲、より好ましくは1.0~4.0Ω/□の範囲であり得る。コーティングされた印刷部分のシート抵抗は、コーティングされたガラス部分のシート抵抗より少なくとも20%超または未満であり得、好ましくはコーティングされたガラス部分のシート抵抗より少なくとも50%大きく、より好ましくはコーティングされたガラス部分のシート抵抗よりも少なくとも100%で大きい。
【0025】
グレージングのバスバーおよび縁をマスクするために(使用時)、印刷層は通常、グレージングの周囲に向かって配置された不明瞭化バンドとなる。好ましくは、印刷層は、グレージングの周辺領域を覆い隠すように作用し、したがって、好ましくは、印刷層は、0.1%以下、より好ましくは0.05%以下の可視光透過率(ISO 9050 Vis)を有する。
【0026】
印刷層は、無機顔料とフリットとを備えるエナメルインクで形成され得る。通常、エナメルインクは、平均粒子サイズが5.2μmを超える粒子を有する顔料(通常は黒色)を備える。通常、エナメル質は、10wt%~50wt%の無機顔料および20wt%~80wt%のフリットを備える。酸化物フリットは、シリカ、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、フッ化物イオンを有する化合物(例えば、フルオライト、フルオロアパタイト、クリオライトなど)、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化物カリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化リチウム、酸化リン、酸化モリブデン、酸化ストロンチウムおよび酸化マグネシウムから選択される少なくとも1つの化合物の粒子を含み得る。適切な無機顔料は、Fe/Cr顔料、Co/Al顔料、Co/Al/Cr顔料、Co/Ti顔料、Co/Cr顔料、Ni/Fe/Cr顔料、Ti/Cr/Sb顔料、Fe顔料、Cr顔料および/またはこれらの顔料の2つ以上の混合物を備え得る。
【0027】
(エナメルインクの例)
赤外線乾燥ガラスエナメルインク1L5350-WF803#は、溶媒と樹脂との有機媒体中におけるフリットと無機顔料との懸濁液である。溶媒は、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノールである。樹脂は、ポリアミンアミド塩である。固形分は、86.5%である。Johnson Matthey Advanced Glass Technologies B.V.(Fregatweg 38、6222 NZ Maastricht、オランダ)から入手可能である。
【0028】
赤外線乾燥ガラスエナメルインク1EPB2020-WF733Pは、溶媒と樹脂との有機媒体中におけるフリットと無機顔料との懸濁液である。溶媒は、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノールである。樹脂は、アジリジンを有する1,2-エタンジアミンポリマーである。固形分は、84.6%である。Johnson Matthey Advanced Glass Technologies B.V.(Fregatweg 38、6222 NZ Maastricht、オランダ)から入手可能である。
【0029】
Johnson Mattheyの他の適切なインクタイプは、RD1379、RD100、IT3015を含む。
【0030】
セラミックコーティングインク1401936(14 316 IR-9876-C)は、有機溶媒であるグリコールエーテル/アセテートおよびアルコール中におけるフリットと無機顔料との懸濁液である。Ferro GmbH(Gutleutstraβe215、60327 Frankfurt am Main、ドイツ)から入手可能である。
【0031】
ガラスエナメルインクYD-WA607は、溶媒と樹脂との有機媒体中におけるフリットと無機顔料との懸濁液である。フリットは、Bi2O3-B2O3-SiO2、35-60%である。無機顔料は、Cr2O3、CuO、MnO2、Co2O3、ZnO、20~35%である。溶媒は、テルピネオール、15~20%である。樹脂は、セルロース樹脂1~10%である。Shenzhen Octopus Technology Co., Ltd(No.9 Octopus Building、Yuanling Industrial Park、Tianxin Blvd,,Baoan District、Shenzhen、中国)から入手可能である。
【0032】
コバルトは、好ましくは、酸化物として、顔料であるだけでなく、粘着防止機能を提供する。粘着防止機能は、AdvancedPressBend(商標)形成プロセスに特に役立つ。粒子サイズは、粘着防止機能のためにも選択され得る。
【0033】
有利には、導電性コーティングは、複数のコーティング層を備える、太陽光制御コーティングであり、好ましくは、スパッタされた太陽光制御コーティング(すなわち、スパッタリング、通常はマグネトロンスパッタリングによって形成される)である。
【0034】
導電性コーティングは、少なくとも1つの赤外線反射層を備え得、好ましくは銀を備える。より高い導電率または改善された太陽光制御が望まれる場合、導電性コーティングは、2つまたは3つの赤外線反射層(通常は銀)を備え得る。
【0035】
導電性コーティングは通常、複数の誘電体層を備え、各赤外線反射層は、少なくとも2つの誘電体層の間に配置される。各誘電体層は、酸化スズ、酸化亜鉛、スズ酸亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素またはこれらの材料の2つ以上の混合物から選択される材料を備え得る。
【0036】
より耐久性のあるコーティングを提供するために、導電性コーティングは、少なくとも1つの保護層を備え得、必要に応じて、チタン、ニオブまたはチタンとニオブとの混合物を備え得る。
【0037】
印刷されたバスバーは、コーティングされた印刷部分と接触し得、またはコーティングされたガラスを加熱するための追加のバスバーをさらに備え得る。
【0038】
本発明の利点は、所定のシート抵抗を有するコーティングされた印刷部分の使用が、グレージングの一部の加熱を制御するための大きな設計の自由を可能にすることである。したがって、好ましくは、印刷されたバスバーおよびコーティングされた印刷部分は、コーティングされた印刷部分がガラスシートの所望のゾーンを加熱するように構成される。したがって、グレージングは、ワイパー静止領域またはカメラ領域を備え得、コーティングされた印刷部分は、ワイパーレスト静止領域またはカメラ領域を加熱するように配置および適合され得る。
【0039】
コーティングされた印刷部分およびコーティングされたガラスは、直列回路または並列回路の構成要素として構成され得る。
【0040】
印刷層の性質は、コーティングされた印刷部分の所定のシート抵抗に影響を与えるように変更され得る。したがって、印刷層は、印刷層がパターン化された部分を有するように形成され得、必要に応じて、ドット、線、フェードアウトまたはフェザーエッジまたは他のパターンを備える。
【0041】
加えてまたは代わりに、印刷層は、導電性コーティングが適用される前または後のいずれかにおいてコーティングされた印刷部分のシート抵抗を調整するために、導電性プリント、必要に応じて銀含有導電性プリントを備えるオーバープリント層をさらに備え得る。オーバープリントはまた、オーバープリントがパターン化された部分を有するように形成され得、必要に応じてドット、ライン、フェードアウトまたはフェザーエッジまたは他のパターンを備える。好ましくは、オーバープリントは、シルバープリントのドットを備える。一実施形態では、印刷層上の導電性コーティングは、15Ω/□のシート抵抗を有した。同一の印刷層上に、銀のドットのパターンが印刷によって適用され、次に同一のコーティングがスパッタリングによって適用され、得られた製品は3Ω/□のシート抵抗を有した。
【0042】
グレージングでは、ガラスシートが強化ガラスシートである場合、有用であり得る。
【0043】
グレージングは、積層グレージングであり得る。この場合、グレージングは、ガラスシート上に配置された中間層材料のプライと、中間層材料のプライ上に配置された第2のガラスシートと、をさらに備え、積層グレージングを形成し得る。中間層材料のプライは、ポリビニルブチラール(PVB)を備え得る。
【0044】
本発明は、第1の態様によるグレージングを備える車両窓を提供し得る。
【0045】
本発明は、第2の態様において、グレージングを製造するための方法を提供し、この方法は、
第1のガラスシートを準備することと、
ガラスシートの表面の一部にインクを提供して印刷層を印刷することと、
印刷層のインクを、80~180秒の範囲の焼成時間および500℃~695℃の範囲の温度において焼成することと、
第1のガラスシートの表面に導電性コーティングを堆積させ、導電性コーティングは、印刷層の少なくとも一部に延在して、コーティングされた印刷部分を形成し、ガラスシートの表面の一部に延在して、コーティングされたガラス部分を形成することと、
を含み、
ここで、インク、焼成時間および焼成温度は、コーティングされた印刷部分が27.45%未満の界面の展開面積比Sdrを有するように選択される。
【0046】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態は、概して、適切な修正を加えた第1の態様に関連して論じられた通りである。
【0047】
印刷層のインクの焼成は、好ましくは、500~680℃、より好ましくは620~670℃、最も好ましくは620~640℃または640~660℃の範囲の焼成温度で行われる。
【0048】
好ましくは、この方法は、導電性コーティングに電力を供給するために少なくとも2つのバスバーを印刷するステップを含み、2つのバスバーはそれぞれ導電性コーティングと電気的に接触する。バスバーの印刷は、導電性コーティングの堆積前または堆積後のいずれかである。
【0049】
本発明者は、表面の微細構造は、製造プロセス中に多孔度試験によって示されると考える。多孔度試験では、水を適用し、表面による吸水率を視覚的に評価する。多孔度試験および光沢測定から、本発明者は、多孔度が、焼成時間よりも焼成温度に依存することを発見した。
【0050】
低温では、印刷されたインクの粒子が正しく融合しないため、多孔度が高くなる。高温では、印刷されたインク層にひび割れおよび亀裂が生じるため、多孔度が高くなる。中間温度では、印刷されたインクが最適に硬化するため、多孔度が低くなる。本発明者は、低い多孔度は、滑らかな表面の微細構造に関連し、したがってシート抵抗が低いことを見出した。
【0051】
本発明によるグレージングは、車両グレージングとしての用途を含む多くの用途で使用される。したがって、第3の態様では、本発明は、車両、建物、電子ディスプレイまたは白物家電(例えば、冷蔵庫または冷凍庫)におけるものであり得る、第1の態様によるグレージングの使用を提供する。
【0052】
ここで、本発明は、単なる例として、添付の図面を参照して説明され、ここで、同様の参照番号は、全体を通して同様の部品を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】1つのヒーターを有する本発明によるグレージングまたは窓の平面図である。
【
図2】
図1のグレージングの線A-A上の断面図である。
【
図3】バスバーがプリント上にある、
図1のグレージングの代替断面図である。
【
図4】2つのヒーターが直列に接続された本発明による別のグレージングの平面図である。
【
図5】3つのバスバーを有する本発明による別の窓の平面図である。
【
図10】最大8Ω/□の界面の展開面積比(Sdr)の関数としてのコーティングされた印刷部分のシート抵抗のグラフである。
【
図11】最大120Ω/□の界面の展開面積比(Sdr)の関数としてのコーティングされた印刷部分のシート抵抗のグラフである。
【
図12】印刷層の695℃での焼成時間の関数としての、コーティングされた印刷部分の光沢(60°の視野角で)のグラフである。光沢は、コーティングの粗さの面積測定によって変化する。高光沢は、概して、滑らかな表面の微細構造を示し、低多孔度および低シート抵抗に関連する。
【
図13】焼成温度620~680℃の関数としてのコーティングされた印刷部分のシート抵抗のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1を参照すると、グレージング1は、ガラスシート2を備える。ガラスシート2は、フロート法によって形成されたソーダ石灰シリカガラスであり得、0.5mm~25mmの厚さを有し得る。ガラスシート2は、強化または半強化され得、モノリシックであり得る。必要に応じて、中間層材料のプライは、ガラスシート2に適用され得、第2のガラスシートを中間層材料のプライに適用して合わせガラスを形成する。
【0055】
印刷層3は、ガラスシート2に印刷される。印刷層は、米国特許出願公開第2017/0135160号明細書に開示されているようにエナメルであり得、任意の既知の方法、例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷によって適用され得る。
【0056】
導電性コーティング6は、印刷層3の少なくとも一部に堆積され、コーティングされた印刷部分7を形成する。導電性コーティング6は、導電性、赤外線反射(IRR)、低放射率、可視スペクトルにおける透過および反射(Tvis、Rvis)ならびに太陽光制御のための複数の機能層を有し得る。機能層は、スパッタリング(物理蒸着)によって堆積された、酸化亜鉛または酸化亜鉛上の亜鉛スズのベース誘電体を含み得る。
【0057】
積層グレージングは、概して次のように作製され得る。平坦ガラス基板(例えば、厚さ2.1mmのソーダ石灰フロートガラス)は、シルクスクリーンとエナメルインクを使用したドクターブレードとによって、印刷、例えば、スクリーン印刷(例えば、50~120スレッド/cmのポリエステルスクリーン、例えば、77または100スレッド/cmのポリエステルスクリーンを有し得るスクリーンを使用する)に供され、300°C未満の温度でこの基板を赤外線ヒーターからの赤外線放射にさらすことによって必要に応じて乾燥される不明瞭化バンドとして機能するスクリーン印刷層を形成する。次に、外側ガラスプライ12および内側ガラスプライ14を形成するための2つの印刷されたガラス基板は、積み重ねられ、積み重ねられた基板が曲げを受ける。この段階では、熱源が提供され、曲げは、例えば、570℃の温度に8分超加熱することによって影響を受け、この温度で1分間の焼成時間に保持され得、次にこの温度で、曲げ型またはフレームにおいてプレスまたはサグ曲げによって曲げられ得る。基板は、分離され、冷却後、スパッタ導電性コーティングでコーティングされ、PVB中間層(厚さ約0.76mm)を使用して積層される。
【0058】
グレージングは、例えば、最初にニップローラーを伴うまたはガラスの第1および第2のプライの縁に適用される真空リングを使用してPVB層を脱気する方法によって積層され得る。第1および第2のガラスプライとPVB層とは、6バール~14バールの圧力範囲および110~150°Cの温度範囲でオートクレーブ内において共に積層される。
【0059】
導電性コーティングは、概して次のように堆積され得る。コーティングプロセスは、熱処理中のコーティングされたガラス板の光透過率および色の高い安定性を達成するために、コーティングの任意の酸化物層の任意の酸素不足が低く保たれるように適切なコーティング条件を設定することによって実行されることが好ましい。
【0060】
層は、従来のACおよび/またはDCマグネトロンスパッタリング装置を使用してガラスシート上に堆積され得、適切な場合には中周波スパッタリングが適用される。ZnとSnとの酸化物のすべての誘電体層(ZnSnOx、重量比Zn:Snは、約50:50)は、Ar/O2スパッタ雰囲気で亜鉛-スズターゲットから反応的にスパッタされた。下部反射防止層のZnO成長促進上層は、Ar/O2スパッタ雰囲気でZnターゲットからスパッタされた。純銀(Ag)からなる機能は、任意の酸素を添加せず、残留酸素分圧が10mbar未満のArスパッタ雰囲気で、銀ターゲットからスパッタされた。(わずかに準化学量論的で低光吸収性の)Alドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)のバリア層は、酸素を添加せずに純粋なArスパッタ雰囲気で導電性ZnOx:Alターゲットからスパッタされた。TiOxバリア層の場合、堆積プロセスは、層の酸素含有量が銀層から外側に向かって増加するように制御されることが好ましいであろう。窒化アルミニウム(AlNx)の下部反射防止層のベース層と外側反射防止層とは、各々、残留酸素のみを含有するAr/N2スパッタ雰囲気中でAlターゲットから反応的にスパッタされた。窒化ケイ素(SiNx)の層は、残留酸素のみを含有する20Ar/N2スパッタ雰囲気中でAlドープSiターゲットから反応的にスパッタされた。
【0061】
コーティングスタック(二重銀)は、厚さ(nm単位で示される)の次の層を有する。
ガラス/ZnOx 25nm-38nm Ag 8-10nm/TiOxブロッカー 1nm-3nm/ZnOx 77nm-89nm/Ag 10nm-12nm/TiOxブロッカー 1nm-3nm/ZnOx 31nm-38nm/SiO2:Al 4nm-6nm
【0062】
代替のコーティングスタック(これもまた二重銀である)は、導電性が向上する。つまり、シート抵抗がより低くなっている。
ガラス/ZnSnOx 22nm-32nm/ZnO:AlまたはZnO 4nm-6nm/Ag 8-10nm/TiOxブロッカー 1nm-3nm/ZnSnOx 73nm-83nm/ZnO:AlまたはZnO 4nm-6nm/Ag 10nm-12nm/TiOxブロッカー 1nm-3nm/ZnSnOxおよび/またはZnO:Al(またはZnO)31nm-38nm/SiO2:Al 4nm-6nm
【0063】
本発明によるグレージングは、加熱可能なグレージングの一部のシート抵抗を変更して所定の熱分布を提供することが可能であり、グレージングの一部がより急速にまたは異なる温度に加熱されるため、有利である。
【0064】
印刷層のコーティングのシート抵抗領域が高くなると、回路全体の抵抗が増加し得、所定の電圧に対する全体的な加熱電力が低下し得る。次の例に示すように、バスバーの位置を選択し、バスバーを追加し、スイッチを配置することによって、この問題を解決し得る。
【0065】
図6は、
図1の回路図であり、第1および第2のバスバー4、5から電圧Vが供給されるコーティングされた印刷部分7を示す。
【0066】
図7は、
図4の回路図であり、第1および第2のバスバー4、5から直列に同じ電流が各領域を流れるように電圧Vが供給されるコーティングされた印刷部分7およびコーティングされたガラス部分8を示す。コーティングされた印刷部分7の電力密度は、シート抵抗が高いため、コーティングされたガラス部分8よりも高く、したがって温度が高くなる。この動作は、例えば、加熱ワイパー静止領域またはカメラが配置されるグレージング10の一部で利用され得る。
【0067】
対照的に、コーティングされたガラス部分8の左側および右側のコーティングされた印刷部分7の部分の電力密度は、シート抵抗が高いため、コーティングされたガラス部分8よりも低く、したがって温度が低くなる。
【0068】
図8および
図9は、
図5の回路図である。導電性コーティング6の全幅に延在するコーティングされた印刷部分7は、第1および第2のバスバー4、5から供給される。コーティングされたガラス部分8とコーティングされたガラス部分8の左側および右側ならびに上部におけるコーティングされた印刷部分7の残りの部分とは、第2のバスバー5および追加のバスバー9から供給される。コーティングされた印刷部分7の電力密度および温度は、コーティングされたガラス部分8よりも高い。この動作は、例えば、加熱ワイパー静止領域またはカメラが配置される部分で利用され得る。
【0069】
図8では、コーティングされた印刷部分7とコーティングされたガラス部分8とは、直列に接続されるため、電圧(V)は、第1のスイッチを介して印加され、それらの間で共有される。必要に応じて、第2のスイッチは、コーティングされたガラス部分8を横切って接続され、加熱ワイパー静止領域として使用されるコーティングされた印刷部分7の急速な加熱のために閉じられる。
【0070】
図9では、コーティングされた印刷部分7とコーティングされたガラス部分8とは、並列に接続されるため、電圧(V)は、第1および第2のスイッチを介してそれらの各々に独立して印加される。
【0071】
コーティングされた印刷部分7の形状を変えることによって、加熱電流は、誘導され得、グレージングの不均一な加熱を達成し得る。例えば、センサーファームと呼ばれるセンサーの大きな印刷領域は、センサーファームの周囲に電流を迂回させ、センサーファームの加熱電力を減らし、その両側の温度を有利に上げ得る。
【実施例】
【0072】
表1は、本発明によるシート抵抗および粗さの面積測定の例を示す。試料620-680は、JohnsonMattheyインクタイプ1EPB2020を使用する。試料F18~F20は、Ferroインクタイプ14 316を使用する。試料O1~O10は、OctopusインクタイプWA607を使用する。
【0073】
【0074】
図10および
図11は、粗さSdrの面積測定値の関数としてのシート抵抗のグラフであり、粗さの面積測定値とシート抵抗との間に相関関係があることを示す。適切なエナメルインクおよび適切な焼成条件(例えば焼成時間および温度など)を選択して表面の微細構造を変更することによって、印刷層の表面の微細構造を制御し、コーティングされた印刷部分のシート抵抗を制御することが可能になる。
【0075】
図12は、Johnson Mattheyの高耐久性粘着防止低融点エナメル(1T3015-WF789)を使用してスクリーン印刷された印刷層を有する厚さ3.1mmのガラスシート2について、印刷層3の焼成時間(695℃における)の関数としてのコーティングされた印刷部分7の光沢(60℃における)のグラフである。光沢(例えば、鏡面光沢の標準テスト方法、ASTM D523による)は、表面の微細構造に部分的に起因する、表面の鏡面反射である。
図12は、エナメルの焼成時間を変更することによって、少なくとも部分的には表面の滑らかな微細構造によって、光沢を制御可能であることを示す。最適な焼成時間は、印刷層3の光沢が高い場合、145秒であり、これは、完成品のコーティングされた印刷部分7のシート抵抗が低いことに関連する。この定量的データは、多孔度試験の定性的発見を裏付ける。
【0076】
図13は、印刷層3の焼成温度620~680℃の関数としてのコーティングされた印刷部分7のシート抵抗のグラフを示す。インクの種類は、上記のようにJohnsonMatthey1EPB2020-WF733Pである。焼成温度が高くなると、シート抵抗が小さくなる。
【0077】
表1のすべての試料について、導電性コーティング6は、ガラスシート2上に堆積され、コーティングされたガラス部分8を形成し、そのシート抵抗は、3.0Ω/□であった。シート抵抗は、Bridge Technology(PO Box 9275、Chandler Heights AZ、85127、米国)から入手可能なGuardian ModelSRM232などの4点法を使用して測定した。
【0078】
表1の試料は各々、印刷層3のコーティングされていない領域を有し、その平均粗さRaは0.7μmを超えた。Raは、スタイラス半径2μmのプロフィロメータを使用して測定した。例えば、Talysurf(商標)は、Taylor Hobson(PO Box 36,2 New Star Road, Leicester, LE4 9JQ, イギリス)から入手可能である。
【0079】
原子間力顕微鏡(AFM)の測定を、先端半径2~20nmのAFMを使用して行った。例えば、Tapping(商標)モードとNanoScope(商標)ソフトウェアを備えたAFMは、Bruker UK Ltd(Banner Lane、Coventry、CV4 9GH、イギリス)から入手可能である。試料のAFM分析を、各試料の1つの領域で5μm×5μmの領域にわたって提供した。
【比較例】
【0080】
表2は、本発明に従わない粗さのシート抵抗および面積測定の比較例を示す。試料610は、試料620~680と同様に、JohnsonMattheyインクタイプ1EPB2020を使用する。
【0081】
試料610を、印刷層3を焼成温度610℃に焼成することによって作製した。コーティングされた印刷部分7のSdrは27.45%で、シート抵抗は9.44Ω/□である。
【0082】
【技術的効果】
【0083】
実施例620~680は、
図10に示すように、Sdrとシート抵抗の間に驚くべき相関関係があるため、ガラスシート2のゾーンを加熱するコーティングされた印刷部分7として構成され得る。しかし、比較例610は、より高いシート抵抗への望ましくないステップ変化を有するため、ゾーンを加熱するように容易に構成されない。比較例620~680の決定係数R2乗は、0.86である。比較例を含むR2乗は、0.82未満になる。
【0084】
比較例は、最適に硬化されていないため、所望のシート抵抗を得るのに望ましくないSdrの閾値を定義する。この教示は、先行技術では知られていない。
【0085】
本発明者は、Sdrの閾値は、印刷された基板の多孔度の変化を表すと考える。本発明者は、光沢測定もまた多孔度を示すが、Sdrは、シート抵抗に対する多孔度の影響に関してより信頼できることを発見した。
【0086】
Sdrは、100オングストロームのオーダーの微細構造の先端半径2~20nmのAFMによって測定される。対照的に、従来のRaは、10,000オングストロームのオーダーの粗い構造のスタイラス半径2μmのプロフィロメータで測定される。
【0087】
驚くべきことに、Sdrの同じ閾値未満を有するように選択された他のインク組成物もまた、Sdrとシート抵抗との相関関係を有する。したがって、本発明は、インク組成とは無関係に可能になる。
【0088】
本発明によるグレージングを製造するための方法は、Sdrが閾値よりも低くなるように、焼成時間および焼成温度を選択する。本発明による方法は、迅速なフィードバックのための多孔度試験および光沢測定を使用することにより、実験の過度の負担なしに可能になる。焼成時間と焼成温度との有望な組み合わせを有するグレージングは、AFMを使用してSdrの閾値未満であることが確認される。
【定義】
【0089】
Saパラメータは面積粗さであり、面積の算術平均高さとしてnmで表される。これは、線の算術平均高さであるRaの拡張である。
【0090】
Sdrパラメータは、界面の展開面積比であり、平面の定義領域と比較した、粗さによってもたらされる定義領域の追加の表面積のパーセンテージとして表される。完全に滑らかな表面のSdrは、0である。
【0091】
Sdqパラメータは二乗平均平方根傾斜であり、定義領域内のすべての点での傾斜の二乗平均平方根として計算される。 完全に滑らかな表面のSdqは、0である。
【符号の説明】
【0092】
1 グレージング
2 ガラスシート
3 印刷層
4 第1のバスバー
5 第2のバスバー
6 導電性コーティング
7 コーティングされた印刷部分
8 コーティングされたガラス部分
9 追加のバスバー
V 電圧
【国際調査報告】