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特表2023-500516イソソルビドエポキシドを含むエポキシド樹脂組成物、及び繊維質又は多孔質材料の安定化におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(54)【発明の名称】イソソルビドエポキシドを含むエポキシド樹脂組成物、及び繊維質又は多孔質材料の安定化におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/02 20060101AFI20221226BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221226BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20221226BHJP
   B27K 5/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C08G59/02
C08L63/00 A
C08G59/20
B27K5/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525828
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 FR2020052012
(87)【国際公開番号】W WO2021089954
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】1912571
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】サン-ルー、レネ
(72)【発明者】
【氏名】サユ、オードリー
(72)【発明者】
【氏名】カスタニエール、マリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】フェスケ、フランソワ
【テーマコード(参考)】
2B230
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
2B230CC14
2B230EA30
4J002CD00W
4J002CD01X
4J002EL026
4J002EN037
4J002EN047
4J002EN077
4J002EN087
4J002ER027
4J036AA05
4J036AB01
4J036AB02
4J036AB03
4J036AB11
4J036BA02
4J036BA09
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC05
4J036DC06
4J036DC09
4J036DC10
4J036DC14
4J036DC41
4J036FA11
4J036GA19
4J036JA01
4J036JA15
(57)【要約】
本発明は、(A)式(I):
【化1】
(式中、nは0~300の整数である)のイソソルビドエポキシドと、
- (B)少なくとも3つのエポキシ官能基を有するエポキシドと、を含むエポキシプレポリマー組成物、
当該組成物とポリアミンから選択される硬化剤(D)とを含む硬化性組成物、及び当該架橋性混合物を架橋することによって形成されるエポキシ樹脂に関する。本発明はまた、該硬化性組成物を用いた材料の真空含浸を含む繊維質又は多孔質材料の安定化方法、及び繊維質又は多孔質材料を安定化するための硬化性組成物におけるイソソルビドエポキシド(A)の使用に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシプレポリマー組成物であって、
- (A)式(I):
【化1】
(式中、nが0~300の整数である)のイソソルビドエポキシドを含み、
- (B)少なくとも2つのエポキシ官能基を有するエポキシドを含む、組成物。
【請求項2】
前記イソソルビドエポキシド(A)中のエポキシド官能基の当量が、120~1500g/eq、好ましくは150~300g/eq、更により好ましくは160~250g/eqであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシド樹脂組成物中のエポキシド(A)の割合が、前記組成物の総重量に対して15重量%~75重量%、特に15重量%~60重量%、より具体的には15重量%~55重量%、より具体的には15重量%~50重量%、より具体的には20重量%~50重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エポキシド(A)が、ブルックフィールド型粘度計で25℃で測定される500mPa.s~10000mPa.s、特に1000mPa.s~8000mPa.s、より具体的には2000mPa.s~6000mPa.s、より具体的には3000mPa.s~5000mPa.sの粘度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記エポキシド(B)が、ポリグリシジルエーテル、特にジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、又はテトラグリシジルエーテルから選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記エポキシド(B)中のエポキシド官能基の当量が、120~500g/eq、好ましくは130~350g/eq、更により好ましくは140~250g/eqであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記エポキシド樹脂組成物中のエポキシド(B)の割合が、前記組成物の総重量に対して20重量%~85重量%、より具体的には25重量%~80重量%、より具体的には30重量%~75重量%、より具体的には35重量%~70重量%、より具体的には40重量%~60重量%であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
エポキシド(A)とエポキシド(B)の重量比が、0.3~1.0、特に0.3~0.8、より具体的には0.4~0.7、更により具体的には0.5~0.6であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、モノエポキシドから選択される反応性希釈剤(C)を更に含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記反応性希釈剤(C)が、モノグリシジルエーテル、特にアルキルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、又はカルボン酸グリシジルエーテルから選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記エポキシド樹脂組成物中の反応性希釈剤(C)の割合が、前記組成物の総重量に対して0重量%~10重量%、特には2重量%~8重量%、より具体的には3重量%~7重量%であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、染料、特に顔料又は可溶性染料、又はルイス酸、三級アミン、若しくはイミダゾール型の触媒などの触媒から選択される1つ以上の添加剤更に含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のエポキシプレポリマー組成物と、ポリアミンから選択される硬化剤(D)と、を含む硬化性組成物。
【請求項14】
前記硬化剤(D)が、
- 1,2-ジアミノメタン、1,3-ジアミノプロパン、ブタン-1,4-ジアミン、ペンタン-1,5-ジアミン、1,6-ジアミノヘキサン、又は1,12-ジアミノドデカンなどの直鎖脂肪族ジアミン類、
- イソホロンジアミン(IPDA)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)、メンタンジアミン、又は1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3BAC)などの環状脂肪族ジアミン類、
- 4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)(MDEA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)(MOEA)、m-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン又は4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミン類、
- ジエチレントリアミン(DTA)などのトリアミン類、
- トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類、
- テトラエチレンペンタミンなどのペンタミン類、
- Croda製のPriamine(登録商標)1074などの二量体脂肪酸ジアミン類、
- ポリ(オキシプロピレン)ジアミン(Huntsman Petrochemical LLC製のJeffamine(登録商標)D-230)、ポリ(オキシプロピレン)トリアミン(Huntsman Petrochemical LLC製のJeffamine(登録商標)T-403)などのポリエーテルアミン類、又は
- ポリエチレンイミン(例えば、BASFのLupasol(登録商標)FG)、ジプロペンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、又はジシアンジアミド(Dicy)などの任意の他のポリアミン、
- 又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記硬化剤(D)の-NH基の数と前記エポキシプレポリマー組成物のエポキシ基の数との比が、1:2~2:1、特に2:3~3:2、より具体的には1:1に等しいことを特徴とする、請求項13又は14に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか一項に記載の硬化性組成物の重合によって得られる、エポキシ樹脂。
【請求項17】
請求項13~15のいずれか一項に記載の硬化性組成物を用いた材料の真空含浸を含む、繊維質又は多孔質材料の安定化方法。
【請求項18】
前記含浸が、前記材料を前記硬化性組成物の浴中に沈めて行なわれることを特徴とする、請求項17に記載の安定化方法。
【請求項19】
前記材料が、1回以上のサイクルで処理され、各サイクルでは真空相と加圧相が交互に行なわれることを特徴とする、請求項17又は18に記載の安定化方法。
【請求項20】
真空下での前記含浸が、20℃~80℃の範囲の温度で行なわれることを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項21】
前記真空相が、tの時間の間0.01~0.9バールの範囲の圧力に曝して行なわれ、前記加圧相が、tの時間の間2~30バールの範囲の圧力をかけて行なわれることを特徴とする、請求項17~20のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項22】
前記時間t及びtが、互いに独立して、5秒~1時間、特には1分~30分、特には5分~20分の範囲であることを特徴とする、請求項17~21のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項23】
前記サイクルを行なう温度を連続するサイクルが進むにつれて上昇させることを特徴とする、請求項17~22のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項24】
第1サイクルを約30℃で行ない、第2サイクルを45℃で行ない、第3サイクルを60℃で行なうことを特徴とする、請求項17~23のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項25】
前記繊維質材料が、
- カバノキ、ポプラ、ブナ、ニレ、タモ、カエデ、月桂樹、マロニエ、ヤシ、ラフィア、又はオークなどの木材、
- ヒツジ、ブレスボック、バッファロー、インパラ、クーズー、スプリグボック、コブウシ又はヌーの角などの動物の角、
- 動物の骨、特にダチョウ、ラクダ、キリン、クーズー、シマウマ、コブウシ、又はマンモスの骨、
- 鹿の枝角、特にアカシカ又はサンバー、あるいはノロジカの枝角などの鹿類の枝角、
- 動物の歯又は牙、特に象牙、特にマンモスの象牙又は歯から選択されることを特徴とする、請求項17~24のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項26】
前記多孔質材料が、無機質材料、特に真珠質あるいは珊瑚などの天然無機質材料、又は複合材料から選択されることを特徴とする、請求項17~25のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項27】
前記繊維質又は多孔質材料が、以下の対象、すなわち楽器又はナイフの柄の全部又は一部から選択されることを特徴とする、請求項17~26のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項28】
式(I):
【化2】
(式中、nが0~300の整数である)のイソソルビドエポキシドの真空下での含浸によって繊維質又は多孔質材料を安定化するための硬化性組成物における、使用。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂の分野、より具体的には含浸によって繊維質又は多孔質材料を安定化あるいは強化するために使用されるエポキシ樹脂に関する。
【0002】
中実木材の部材の使用には一般に木材の劣化への対処が含まれる。実際、時間の経過に伴う温度や湿度の変化は、それが使用できなくなるまでに部材の変形、変色、又は更には断片化を生じる可能性がある。
【0003】
したがって、時間が経過してもその外観及び形状を保持するためには、この中実木材を安定化できるようにすることが必要と思われる。
【0004】
安定化は、完全であり、着色可能であり、また経済的に妥当でなければならない。
【0005】
審美的な問題がないように中実部材を含浸させるために、既存の方法ではクレオソートなどの有害な、又は更には禁止されている製品が使用されているが(例えば、電柱、線路の枕木)、それらにはまだ経済的な同等物が見出されていないか、あるいは木材への浸透がわずか数ミリメートルのみである表面含浸である。
【0006】
熱処理(トレファクション)によって床材又は建材に使用される木材を安定化させることができる。
【0007】
工芸品(カトラリー、宝飾品、贅沢品、アーチェリー、楽器、武具など)では、安定化は不飽和ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂を用いてオートクレーブで処理して行われるが、前者では揮発性有機化合物(VOC)の放出、また後者では作業性の面から問題を提起する。更に、この種の方法に適したエポキシドは毒性のために排除することが望ましいビスフェノールA(BPA)をベースとしている。
【0008】
フルフリル化法もまた使用されるが、これは特定の種類及び特定の色(茶色)に限定される。
【0009】
したがって、有毒な製品又はVOCを放出する傾向がある製品を含まず、繊維質又は多孔質材料、特に中実木材を完全に、その芯まで安定化させることができる組成物を提供できるようにすることが必要とされている。
【0010】
膨大な作業を伴う研究を続けて、本出願人はイソソルビドエポキシドをベースとしたエポキシ樹脂組成物によってこの目的を達成できることを見出した。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点を以下の詳細な説明によって明らかにする。
発明の概要
【0012】
本発明の第1の目的は、エポキシプレポリマー組成物に関し、組成物は、
- (A)式(I):
【化1】
(式中、nは0~300の整数である)、
のイソソルビドエポキシドを含み、
- (B)少なくとも2つのエポキシ官能基を有するエポキシドを含む。
【0013】
本発明の第2の目的は、本発明のエポキシプレポリマー組成物と、ポリアミンから選択される硬化剤(D)とを含む硬化性組成物に関する。
【0014】
本発明の第3の目的は、本発明の硬化性組成物の重合によって得られるエポキシ樹脂に関する。
【0015】
本発明の第4の目的は、本発明の硬化性組成物を用いた当該材料の真空含浸を含む繊維質又は多孔質材料の安定化方法に関する。
【0016】
本発明の第5の目的は、真空含浸によって繊維質又は多孔質材料を安定化するための硬化性組成物における式(I):
【化2】
(式中、nは前述のように0~300の整数である)
のイソソルビドエポキシドの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本特許出願において、「...~...」という表現は、境界値を含むと理解されるべきである。
【0018】
本発明のエポキシプレポリマー組成物は、
- (A)式(I):
【化3】
(式中、nは0~300の整数である)、
のイソソルビドエポキシドを含み、
- (B)少なくとも2つのエポキシ官能基、特には少なくとも3つのエポキシ官能基を有するエポキシドを含む。
【0019】
本発明において、エポキシプレポリマー組成物は以下の式(I):
【化4】
(式中、nは0~300、特には0~10、より具体的には0~5の整数である)を有するイソソルビドエポキシド(A)のモノマー又はポリマーを含む。
【0020】
エポキシド(A)は、出願WO2015/110758A1号に記載されている方法に従って製造することができる。
【0021】
それはビスフェノールAとは異なりバイオ由来であるという利点を有し、内分泌撹乱物質ではない。
【0022】
「イソソルビドエポキシド(A)」とは、式(I)の単一のイソソルビドエポキシド、あるいはR置換基及び/又は下付き文字nが互いに異なる異なったイソソルビドエポキシドの混合物を意味することを意図している。異なる種類のイソソルビドエポキシドの混合物である場合、Rは式(I)で指定されるように変化し、及び/又はnが0~300、好ましくは0~10、更により優先的には0~5で変化する。
【0023】
下付き文字nは0~300の範囲であり、具体的には290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1に等しくてもよい。
【0024】
一実施形態では、下付き文字nは0~290、0~280、0~270、0~260、0~250、0~240、0~230、0~220、0~210、0~200、0~190、0~180、0~170、0~160、0~150、0~140、0~130、0~120、0~110、0~100、0~90、0~80、0~70、0~60、0~50、0~40、0~30、0~20、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5である。
【0025】
一実施形態では、下付き文字nは1~290、1~280、1~270、1~260、1~250、1~240、1~230、1~220、1~210、1~200、1~190、1~180、1~170、1~160、1~150、1~140、1~130、1~120、1~110、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5である。
【0026】
一実施形態では、下付き文字nは2~290、2~280、2~270、2~260、2~250、2~240、2~230、2~220、2~210、2~200、2~190、2~180、2~170、2~160、2~150、2~140、2~130、2~120、2~110、2~100、2~90、2~80、2~70、2~60、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5である。
【0027】
一実施形態では、下付き文字nは3~290、3~280、3~270、3~260、3~250、3~240、3~230、3~220、3~210、3~200、3~190、3~180、3~170、3~160、3~150、3~140、3~130、3~120、3~110、3~100、3~90、3~80、3~70、3~60、3~50、3~40、3~30、3~20、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5である。
【0028】
一実施形態では、下付き文字nは4~290、4~280、4~270、4~260、4~250、4~240、4~230、4~220、4~210、4~200、4~190、4~180、4~170、4~160、4~150、4~140、4~130、4~120、4~110、4~100、4~90、4~80、4~70、4~60、4~50、4~40、4~30、4~20、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5である。
【0029】
一実施形態では、下付き文字nは5~290、5~280、5~270、5~260、5~250、5~240、5~230、5~220、5~210、5~200、5~190、5~180、5~170、5~160、5~150、5~140、5~130、5~120、5~110、5~100、5~90、5~80、5~70、5~60、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6である。
【0030】
一実施形態では、下付き文字nは10~290、10~280、10~270、10~260、10~250、10~240、10~230、10~220、10~210、10~200、10~190、10~180、10~170、10~160、10~150、10~140、10~130、10~120、10~110、10~100、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、10~40、10~30、10~20である。
【0031】
エポキシド(A)は一般的に、ブルックフィールド型粘度計で25℃で測定される500mPa.s~10000mPa.s、特に1000mPa.s~8000mPa.s、より具体的には2000mPa.s~6000mPa.s、より具体的には3000mPa.s~5000mPa.sの粘度を有する。
【0032】
組成物中に異なるイソソルビドエポキシドの混合物を使用することによって、特に組成物の機械的特性を調整することができる。
【0033】
イソソルビドエポキシド(A)中のエポキシド官能基の当量は120~1500g/eq、特に150~300g/eq、より具体的には160~250g/eqである。より具体的には、イソソルビドエポキシド(A)中のエポキシド官能基の当量は約180g/eqである。
【0034】
エポキシプレポリマー組成物中のエポキシド(A)の割合は、組成物の総重量に対して15重量%~75重量%、特に15重量%~60重量%、より具体的には15重量%~55重量%、より具体的には15重量%~50重量%、より具体的には20重量%~50重量%である。
【0035】
本発明において、エポキシプレポリマー組成物は、少なくとも2つのエポキシ官能基、特に少なくとも3つのエポキシ官能基を有する第2のエポキシド(B)を含む。
【0036】
エポキシド(B)は、硬化剤を用いた重合によって硬化したエポキシ樹脂の水の取り込みを低減するという利点を有する。
【0037】
それは、ポリグリシジルエーテルから選択され、特にジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、又はテトラグリシジルエーテル、より具体的にはトリグリシジルエーテル又はテトラグリシジルエーテル、より具体的にはトリグリシジルエーテルから選択される。
【0038】
エポキシド(B)は有利には、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、p-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、m-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、又はソルビトールポリグリシジルエーテルから選択される。好ましくは、エポキシド(B)はトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルである。
【0039】
エポキシド(B)中のエポキシド官能基の当量は、120~500g/eq、特に130~350g/eq、より具体的には140~250g/eqである。更により具体的には、エポキシド(B)中のエポキシド官能基の当量は約160g/当量である。
【0040】
エポキシプレポリマー組成物中のエポキシド(B)の割合は、組成物の総重量に対して20重量%~85重量%、より具体的には25重量%~80重量%、より具体的には30重量%~75重量%、より具体的には35重量%~70重量%、より具体的には40重量%~60重量%である。
【0041】
エポキシド(A)とエポキシド(B)の重量比は、0.3~1.0、特に0.3~0.8、より具体的には0.4~0.7、更により具体的には0.5~0.6である。
【0042】
特定の実施形態において、本発明のエポキシプレポリマー組成物は更に、モノエポキシドから選択される反応性希釈剤(C)を含む。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物への反応性希釈剤(C)の添加によって、エポキシプレポリマー組成物の粘度を調整することができる。
【0044】
好ましい実施形態において、エポキシプレポリマー組成物の粘度は、木材の含浸温度において500mPa.s未満、優先的には400mPa.s未満、より具体的には350mPa.s未満である。
【0045】
粘度は、CP25コーンプレートを備えたAnton PaarのMCR501装置を使用して0~200秒-1の速度勾配で行なって測定することができる。
【0046】
本発明の希釈剤として好適なモノエポキシドの例はモノグリシジルエーテルである。特に、反応性希釈剤(C)は単独で、又は混合物として、アルキルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、又はカルボン酸グリシジルエーテルから選択される。
【0047】
アルキルグリシジルエーテルとしては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、あるいはまた2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0048】
アリールグリシジルエーテルとしては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、あるいはまた4-(tert-ブチル)フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0049】
カルボン酸グリシジルエーテルとしては、例えば、ネオデカン酸グリシジルエーテルが挙げられる。
【0050】
特定の実施形態において、反応性希釈剤(C)は、ドデシルグリシジルエーテルとテトラデシルグリシジルエーテルとの混合物(C12-C14)、オクチルグリシジルエーテルとデシルグリシジルエーテルとの混合物(C8-C10)、トリデシルグリシジルエーテルとペンタデシルグリシジルエーテルとの混合物(C13-C15)、又はオクチルグリシジルエーテルとテトラデシルグリシジルエーテルとの混合物(C8-C14)から選択される。更により具体的には、反応性希釈剤(D)は、ドデシルグリシジルエーテルとテトラデシルグリシジルエーテルとの混合物(C12-C14)である。
【0051】
エポキシド樹脂組成物中の反応性希釈剤(C)の割合は、組成物の総重量に対して0重量%~10重量%、特に2重量%~8重量%、より具体的には3重量%~7重量%である。より具体的には、エポキシ樹脂組成物中の反応性希釈剤(C)の割合は、組成物の総重量に対して5重量%である。
【0052】
本発明のエポキシプレポリマー組成物は更に、染料、特に顔料又は可溶性染料、又はルイス酸、三級アミン、若しくはイミダゾール型の触媒などの1つ以上の添加剤を含んでもよい。
【0053】
実際、下に記載するように、本発明のエポキシプレポリマー組成物は、硬化剤(D)と接触させて架橋(硬化)させ、エポキシ樹脂を形成することができる。エポキシプレポリマーの混合物に応じて、触媒を添加して重合反応を開始又は加速させる必要がある。
【0054】
本発明のエポキシプレポリマー組成物は、それを構成する成分を単に混合して調製することができる。
【0055】
本発明の第2の目的は、本発明のエポキシプレポリマー組成物と、ポリアミンから選択される硬化剤(D)とを含む硬化性組成物に関する。
【0056】
「硬化性組成物」とは、重合して架橋した(硬化した)樹脂を形成することができる液体混合物を意味することを意図している。
【0057】
したがって、硬化剤(D)の機能は、本発明のエポキシプレポリマー組成物のエポキシド(A)と(B)及び任意でエポキシド(C)と反応して、重合によって硬化したエポキシ樹脂を形成することである。
【0058】
本発明の目的において、「ポリアミン」とは、少なくとも2つのアミン官能基を有するアミン、アミドアミン、ポリアミド、及びポリエーテルアミンなどの化合物を意味することを意図している。
【0059】
したがって、硬化剤(D)は、
- 1,2-ジアミノメタン、1,3-ジアミノプロパン、ブタン-1,4-ジアミン、ペンタン-1,5-ジアミン、1,6-ジアミノヘキサン、又は1,12-ジアミノドデカンなどの直鎖脂肪族ジアミン類、
- イソホロンジアミン(IPDA)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)、メンタンジアミン、又は1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3BAC)などの環状脂肪族ジアミン類、
- 4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)(MDEA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)(MOEA)、m-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン又は4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミン類、
- ジエチレントリアミン(DTA)などのトリアミン類、
- トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類、
- テトラエチレンペンタミンなどのペンタミン類、
- Croda製のPriamine(登録商標)1074などの二量体脂肪酸ジアミン類、
- ポリ(オキシプロピレン)ジアミン(Huntsman Petrochemical LLC製のJeffamine(登録商標)D-230)、又はポリ(オキシプロピレン)トリアミン(Huntsman Petrochemical LLC製のJeffamine(登録商標)T-403)などのポリエーテルアミン類、又は
- ポリエチレンイミン(例えば、BASF製のLupasol(登録商標)FG)、ジプロペンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジシアンジアミド(Dicy)などの任意の他のポリアミン、
- 又はそれらの混合物から選択される。
【0060】
特定の実施形態では、硬化剤(D)は、Huntsman製のJeffamine(登録商標)、例えばJeffamineD-230又はJeffamineT-403、又はそれらの混合物などのポリ(ジ-若しくはトリ-)エーテルアミンから選択される。
【0061】
本発明の硬化性組成物によって形成されるエポキシ/アミン系は、化学量論的であってもよく、又は過剰のアミン官能基若しくは過剰のエポキシ官能基を含有してもよい。
【0062】
したがって、硬化剤(D)の-NH基の数とエポキシプレポリマー組成物のエポキシ基の数との比は、1:2~2:1、特には2:3~3:2、より具体的には1:1に等しい(化学量論的混合物)。
【0063】
本発明の別の目的は、本発明の硬化性組成物の重合によって得られるエポキシ樹脂である。
【0064】
重合は、自然に開始されてもよく、又は実際には加熱、あるいは硬化性組成物中の触媒の存在を必要としてもよい。
【0065】
本発明の別の目的は、前述のように本発明のエポキシプレポリマー組成物と、前述のように硬化剤(D)とを含む硬化性組成物を用いた当該材料の真空含浸を含む繊維質又は多孔質材料の安定化方法である。
【0066】
いくつかの硬化剤(D)は、環境温度で直接反応することができる。この場合、好適には真空圧サイクル下で含浸を行なう直前に硬化性組成物を生成させる。
【0067】
本発明の方法によって、材料にその外観を保持させ、経時的な変形を抑制することができる。
【0068】
また本発明の方法によって、材料を高密度化し、それによってその機械的強度を高めることができる。
【0069】
材料を完全に、すなわちその物質全体のすみからすみまで含浸させるために、好ましくは、材料を前記硬化性組成物の浴に沈めて材料を含浸させる。
【0070】
本発明の方法では、材料を1回以上のサイクルで処理し、各サイクルでは真空相と加圧相を交互に行なう。
【0071】
サイクルは、有利にはオートクレーブ中で行なわれる。
【0072】
真空相の間、媒体は、tの時間の間、大気圧未満の圧力、特に0.01バール~0.9バールの範囲の圧力に曝される。このようにして生じた負圧によって、材料中に存在する空間に含まれる空気又は水の全て若しくは一部を除去することができ(脱ガス)、材料が硬化性組成物をその内部に吸引できるようにする。
【0073】
真空相の後にtの時間の間、2バール~30バールの範囲の圧力の加圧相を続ける。加えられた圧力によって、組成物を材料内の空間、その内部の最も深い部分までに入れることができ、したがって、木材の芯までの組成物の良好な拡散を確実にすることができる。
【0074】
サイクルは、20℃~80℃の範囲の温度で行なわれる。
【0075】
材料の特性に応じて時間t及びtは変化する。一般的には、それらは互いに独立して、5秒~1時間、特には1分~30分、特には5分~20分の範囲である。
【0076】
加える圧力もまた、処理する材料の特性に応じて変化する。
【0077】
一実施形態では、サイクルを行なう温度を、連続するサイクルが進むにつれて上昇させる。
【0078】
例えば、第1サイクルを約30℃で行い、続いて第2サイクルを45℃で行い、続いて第3サイクルを60℃で行なってもよい。
【0079】
硬化性組成物の重合に必要な時間は、繊維質又は多孔質材料の真空下での含浸を行なうために必要な時間よりも長くなければならない。
【0080】
実際には、本発明の硬化性組成物の重合時間は3時間~6時間、特には4時間~5時間である。
【0081】
本発明の硬化性組成物によって安定化させることができる繊維質又は多孔質材料は、特には限定されない。それは特に、
- カバノキ、ポプラ、ブナ、ニレ、タモ、カエデ、月桂樹、マロニエ、ヤシ、ラフィア、又はオークなどの木材、
- ヒツジ、ブレスボック、バッファロー、インパラ、クーズー、スプリングボック、コブウシ又はヌーの角などの動物の角、
- 動物の骨、特にダチョウ、ラクダ、キリン、クーズー、シマウマ、コブウシ、又はマンモスの骨、
- 鹿の枝角、特にアカシカ又はサンバー、あるいはノロジカの枝角などの鹿類の枝角、
- 動物の歯又は牙、特に象牙、特にマンモスの象牙又は歯から選択される。
【0082】
多孔質材料は、無機質材料、特に真珠質あるいは珊瑚などの天然無機質材料、又は複合材料から選択される。
【0083】
本発明の方法は、繊維質又は多孔質材料から製造される、例えば、楽器又はナイフの柄の全部若しくは一部のような様々な物質を安定化させるために使用することができる。
【0084】
本発明の別の目的は、繊維質又は多孔質材料を真空含浸によって安定化させるための硬化性組成物における
式(I):
【化5】
(式中、nは前述のように0~300の整数である)のイソソルビドエポキシドの使用である。
【0085】
安定化によって、特に材料にその外観を保持させて経時的な材料の変形を抑制することができる。
【0086】
安定化はまた、材料を高密度化させ、それによってその機械的強度を高める効果も有する。
【実施例
【0087】
ブナ材の安定化:
【0088】
5Kgのブナを、以下の組成、すなわち重量で
- 40%のブルックフィールド型粘度計で25℃で4500mPa.sに等しい粘度を有するエポキシ化イソソルビド、
- 55%のトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTE)、及び
- 5%のC12-C14脂肪鎖のエポキシ希釈剤を有する本発明の硬化性組成物8Lを含有する容器中に沈めて、
硬化剤の種類に応じて異なる量でJeffamine(登録商標)硬化剤をそれに添加した:
- Jeffamine(登録商標)D-230の場合、34phr/エポキシ樹脂、
- Jeffamine(登録商標)T-403の場合、47phr/エポキシ樹脂、
「phr」とは、「樹脂100部あたり」を意味する)。
【0089】
樹脂と木材を含有する容器をオートクレーブ中で30℃にする。
【0090】
温度に達した後、0.2バールの負圧を15分間かけ、次いで12バールの圧力を5分間かける。
【0091】
この加圧-負圧サイクルを45℃、次いで60℃で更に2回続けて行なう。
【0092】
この方法で処理した木材の密度は、エポキシド樹脂DER332を用いた処理と比較して平均で8%増加し、ねじり弾性率(繊維マトリックスの連結)は、エポキシド樹脂を用いた処理と比較して平均で9.2%増加し、イソフタルポリエステル配合物のPolynt1133(Cray Valley)を用いた処理と比較して16.4%増加した。

【国際調査報告】