(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ポリアリールエーテルケトンコポリマーのブレンド
(51)【国際特許分類】
C08L 71/10 20060101AFI20221226BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20221226BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221226BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C08L71/10
C08L79/08 B
C08K3/013
C08J5/04 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525835
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2020081215
(87)【国際公開番号】W WO2021089747
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リッチ, ジェーソン
(72)【発明者】
【氏名】エル-ヒブリ, モハマド ジャマール
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB22
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
4F072AD42
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4F072AG03
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4F072AL01
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4J002FA067
4J002FD016
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4J002FD079
4J002FD098
4J002FD109
4J002FD119
4J002FD139
4J002FD179
4J002GB01
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ05
(57)【要約】
本発明は、改善された耐熱性及び機械的特性を有する、ポリアリールエーテルケトンコポリマーとポリエーテルイミドとの新規な組成物、それを製造する方法及び様々な分野におけるその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物[組成物(C)]であって、
- 少なくとも1種のポリアリールエーテルケトンコポリマー[コポリマー(PEDEK-PEEK)]であって、
- 式(I):
【化1】
の繰り返し単位(R
PEEK)、及び
- 式(II):
【化2】
の繰り返し単位(R
PEDEK)
(上記の式(I)及び(II)において、R’及びR’’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC
1~C
12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;j’及びk’’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、0及び1~4の整数から独立して選択される)
であって、55:45~99:1のモル比(R
PEDEK):(R
PEEK)で含まれる、式(I)の繰り返し単位(R
PEEK)及び式(II)の繰り返し単位(R
PEDEK)
を含む少なくとも1種のポリアリールエーテルケトンコポリマー[コポリマー(PEDEK-PEEK)]と;
- 少なくとも1種のポリ(エーテルイミド)ポリマー[ポリマー(PEI)]であって、前記ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、(i)少なくとも1つの芳香族環と、(ii)少なくとも1つのイミド基であって、そのイミド及び/又はそのアミド酸形態の少なくとも1つのイミド基と、(iii)少なくとも1つのエーテル基とを含む繰り返し単位(R
PEI)を含む少なくとも1種のポリ(エーテルイミド)ポリマー[ポリマー(PEI)]と
を含む組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記コポリマー(PEDEK-PEEK)は、55:45~99:1、好ましくは60:40~95:5、より好ましくは65:35~90:10、更により好ましくは68:32~80:20、一層より好ましくは70:30~80:20のモル比(R
PEDEK):(R
PEEK)において、上記で詳述された繰り返し単位(R
PEDEK)及び(R
PEEK)を含み、及び/又はコポリマー(PEDEK-PEEK)は、繰り返し単位(R
PEEK)及び(R
PEDEK)と異なる繰り返し単位(R
PAEK)を追加的に含み、繰り返し単位(R
PAEK)の量は、好ましくは、コポリマー(PEDEK-PEEK)の繰り返し単位の総モル数に対して0~5モル%に含まれ、及び/又は前記繰り返し単位(R
PAEK)は、好ましくは、以下の式(K-A)~(K-M):
【化3】
【化4】
(上記の式(K-A)~(K-M)のそれぞれにおいて、R’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC
1~C
12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;及びj’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、0及び1~4の整数から独立して選択され、好ましくは、j’は、ゼロに等しい)
のいずれかに従う、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コポリマー(PEDEK-PEEK)において、式(I)の繰り返し単位(R
PEEK)中で、フェニル基間の結合は、概して、フェニル環のそれぞれのパラ位にあり、及び/又はj’のそれぞれは、ゼロであり、好ましくは、繰り返し単位(R
PEEK)は、式(Ia):
【化5】
に従い、式(II)の繰り返し単位(R
PEDEK)中で、フェニル基間の結合は、概して、フェニル環のそれぞれのパラ位にあり、及び/又はk’のそれぞれは、ゼロであり、好ましくは、繰り返し単位(R
PEDEK)は、式(IIb):
【化6】
に従う、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
ポリマー(PEI)の前記繰り返し単位(R
PEI)は、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及びその混合物:
【化7】
(式中、
- Arは、四価の芳香族部分であり、且つ5~50個の炭素原子を有する置換又は無置換の、飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択され;
- Ar’は、三価の芳香族部分であり、且つ5~50個のC原子を有する置換、無置換、飽和、不飽和、芳香族の単環式及び芳香族多環式の基からなる群から選択され;及び
- Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;及び
(d)式(VI):
【化8】
(式中、
- Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択され、及び
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、及び
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の二価ラジカル
からなる群から選択される置換及び無置換の二価有機ラジカルからなる群から選択され、
ただし、Ar、Ar’及びRの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含むことと、前記エーテル基は、ポリマー鎖骨格中に存在することとを条件とする)
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(A)ポリマー(PEI)の前記繰り返し単位(R
PEI)は、式(I)、(II)、(III)及びその混合物からなる群から選択され、前記式において、Arは、式:
【化9】
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’又は4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、且つ1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択されるか;又は
Xは、式-O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換又は無置換の、飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分である)の基である)
からなる群から選択されるか;又は
(B)ポリマー(PEI)の前記繰り返し単位(R
PEI)は、式(IV)及び(V)並びにその混合物からなる群から選択され、前記式において、Ar’は、式:
【化10】
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’又は4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、且つ1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択されるか;又は
Xは、式-O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換又は無置換の、飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分である)の基である)
からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー(PEI)は、前記ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、式(VII):
【化11】
(式中、
- Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;及び
(d)式(VI):
【化12】
(式中、
- Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択され、及び
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、及び
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の二価ラジカル
からなる群から選択される置換及び無置換の二価有機ラジカルからなる群から選択され、
ただし、Ar、Ar’及びRの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含むことと、前記エーテル基は、ポリマー鎖骨格中に存在することとを条件とし;
- Tは、-O-又は-O-Ar’’-O-であり、
ここで、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換又は無置換の、飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分、例えば置換若しくは無置換のフェニレン、置換若しくは無置換のシクロヘキシル基、置換若しくは無置換のビフェニル基、置換若しくは無置換のナフタレン基又は2つの置換若しくは無置換のフェニレンを含む部分である)
の繰り返し単位(R
PEI)を含むポリマーである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマー(PEI)は、前記ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、式(XXIII)又は(XXIV):
【化13】
の繰り返し単位(R
PEI)を、イミド形態又はその対応するアミド酸形態及びそれらの混合物の形態で含むポリマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
- 上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)であって、前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として50%超、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%の重量の量並びに/又は前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として最大95%、好ましくは最大90%の重量の量のコポリマー(PEDEK-PEEK);
- 上記で詳述されたポリマー(PEI)であって、前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として50%未満、好ましくは最大40%、より好ましくは最大35%の重量の量並びに/又は前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%の重量の量のポリマー(PEI)
を含み、及び/又は
前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として60~90%の量のコポリマー(PEDEK-PEEK)及び10~40%の量のポリマー(PEI)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
上記で詳述された前記コポリマー(PEDEK/PEEK)及びポリマー(PEI)を、前記組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも95%ではないとしても、少なくとも90%の合計重量の量で含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
繊維状及び粒子状のフィラーから選択される少なくとも1種の補強フィラーであって、無機フィラー(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素など)、ガラス繊維、炭素繊維、合成高分子繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、ホウ素カーバイド繊維、ロックウール繊維、鋼繊維、ウォラストナイト、ナノ材料(単層又は多層のカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、ナノクレイ、例えばモンモリロナイトなど)から好ましくは選択される少なくとも1種の補強フィラーと、任意選択的に、(i)特に染料などの着色剤、(ii)特に二酸化チタン、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの顔料、(iii)光安定剤、例えばUV安定剤、(iv)熱安定剤、(v)特に有機亜リン酸エステル及び亜ホスホン酸エステルなどの酸化防止剤、(vi)酸捕捉剤、(vii)加工助剤、(viii)結晶化核剤、(ix)内部潤滑剤及び/又は外部潤滑剤、(x)難燃剤、(xi)煙抑制剤、(x)帯電防止剤、(xi)ブロッキング防止剤、(xii)特にカーボンブラック及びカーボンナノファイバーなどの導電性添加剤、(xiii)可塑剤、(xiv)流動調整剤、(xv)増量剤、(xvi)金属不活性化剤並びに前述の前記添加剤の1つ以上を含む組み合わせからなる群から概して選択される、前記補強フィラー、及び前記コポリマー(PEDEK-PEEK)、及び前記ポリマー(PEI)と異なる1つ以上の追加の成分(I)とを含み;
- 前記補強フィラーの重量は、前記組成物(C)の総重量を基準として有利には60重量%未満、より好ましくは50重量%未満、更により好ましくは45重量%未満、最も好ましくは35重量%未満であり;及び/又は
- 前記補強フィラーは、前記組成物(C)の総重量を基準として10~60重量%、好ましくは20~50重量%、好ましくは25~45重量%、最も好ましくは25~35重量%の範囲の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)を製造する方法であって、前記少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(PEI)の混合を伴い、且つ好ましくは乾式混合、懸濁混合、スラリー混合、溶液混合、溶融混合及びこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つ、特に乾式混合と溶融混合との組み合わせを含む方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)のマトリックスを含む複合材料であって、
- マットなどの不織布、多軸織物、織布又は編組布を含むが、これらに限定されない、含浸された布の1つ以上のプライを含む複合材料;及び
- 好ましくは繊維が整列されている、一方向(連続又は不連続)繊維強化テープ又はプリプレグ;及び
- 繊維強化テープ又はプリプレグの複数の層を含む多方向繊維強化テープ又はプリプレグ
からなる群から選択される複合材料。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む成形物品。
【請求項14】
好ましくはロッド、スラブ、チューブ、パイプ又はプロファイルからなる群から選択される押出形状である、請求項13に記載の成形物品。
【請求項15】
射出成形物品である、請求項13に記載の成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月8日に出願された先の米国仮特許出願第62/932767号及び2020年1月21日に出願された先行する欧州特許出願公開第20153006.0号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の内容全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、改善された耐熱性及び機械的特性を有する、ポリアリールエーテルケトンコポリマーとポリエーテルイミドとの新規な組成物、それを製造する方法及び特に連続繊維複合材料のための熱可塑性マトリックスとしてなど、様々な分野でのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアリールエーテルケトン材料は、極限条件に対する耐性が必要とされる多数の工業的用途のために使用される、高耐熱性を備える高性能プラスチックとして公知である。
【0004】
例えば、油及びガスの探査(O&G)では、高温及び高圧に耐性を有することができ、且つ特に塩水、炭化水素、CO2、H2Sなどを含むダウンホール環境内に存在する刺激性化学物質に前記極度の圧力及び温度条件で長期間曝露される場合に必要とされる性能を維持できる材料が求められる。
【0005】
更に、O&G、航空宇宙、自動車など、熱可塑性複合材料が使用される分野では、高温条件に耐えるためにマトリックスが同様に必要とされるが、これに加えて、熱可塑性複合材料の加工の特異性のために結晶化の速い速度が求められる。
【0006】
したがって、この分野では、式-O-Ph-O-Ph-CO-Ph-の特徴的な繰り返し単位を有し、Ph=パラ-フェニレンであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が、許容できる加工を可能にする約340℃のその結晶融点のため、広い有用性を見出しているものの、約150℃のそのガラス転移温度は、150℃以上の温度での連続作業に耐える能力をやや制限することになる。
【0007】
そのため、許容できる加工特性を示しながら、PEEKよりもTgが高い材料を提供する試みとして、単位-O-Ph-O-Ph-CO-Ph-(PEEK)と-O-Ph-Ph-O-Ph-CO-Ph-(PEDEK)との混合物を含むコポリマーが提案されてきた。
【0008】
この分野では、国際公開2018/086873号パンフレットは、耐高温性、優れた耐薬品性及び機械的特性を備えたPEDEKを多く含むPEDEK-PEEKコポリマーを開示している。しかしながら、高温用途でのこれらの使用は、約170℃のガラス転移温度(Tg)によって制限される。PEDEK-PEEKの結晶化度のため、170℃超で使用可能であるものの、これらの高温では強度及び弾性率が大幅に低下する。現在、一部の用途では、PEDEK-PEEKコポリマーの耐薬品性及び他の特性が必要とされているが、PEDEK-PEEKコポリマーによって提供され得るものよりも更に大きい機械的剛性及び強度が、170℃を超える温度で必要とされる。
【0009】
したがって、これらのPEDEK-PEEKコポリマーの制約のため、PEDEK-PEEKコポリマーで実現できるよりも高い温度性能及び改善された機械的特性を提供することができるポリアリールエーテルケトン系材料に対する満たされていない要求が存在する。
【0010】
化学修飾なしで熱的特性、機械的特性及び衝撃特性が変化する、新規な材料を作り出すことを目的とした異なるポリマーのブレンドは、ポリアリールエーテルケトンの領域ですでに追求されてきた手法である。加えて、物理的特性は、1つ以上のブレンド成分の結晶化挙動を変更することにより、ブレンドすることによって変更することができる。
【0011】
例えば、特定の温度範囲におけるPEEKの機械的特性を少なくともある程度改善するために、ポリエーテルイミド(PEI)をPEEKポリマーにブレンドすることは、数十年にわたって知られている。それにもかかわらず、このブレンドの有用性は、PEIとPEEKとの完全な混和性のために制限される。この混和性は、PEEKの結晶化度及び結晶化速度を著しく低下させ、射出成形加工でこのようなブレンドを実行不可能にし、また結晶化度の不均衡な低下により、Tgより上での機械的特性も損わせる。PEEK/PEIブレンドは、数十年にもわたって広く知られ、研究されてきたにもかかわらず、これらの理由のため、現在、重要な商業的用途が見出されていない。
【0012】
したがって、特に熱可塑性連続繊維複合材料のマトリックスとしてなど、非常に要求の厳しい用途で使用するのに適した材料を提供するために、非常に優れた機械的性能を維持しながら、熱定格/熱性能及び耐薬品性の有利な組み合わせを有するポリアリールエーテルケトンポリマーが当技術分野で継続的に求められている。
【0013】
本発明による、PEDEKを多く含むPEDEK-PEEKコポリマーとPEIとのポリマーブレンドは、この満たされていない要求に対処する。
【0014】
概して、選択的レーザー焼結(SLS)法において、(i)式-O-Ph-O-Ph-CO-Ph-の単位(PEEK単位)を少なくとも50モル%有するPEEK型の材料と、(ii)ポリ(エーテルイミド)(PEI)との粉末ブレンドを使用することに関する、国際公開第2019/053238号パンフレットは、前記PEEK型の材料が、場合により式-O-Ph-Ph-O-Ph-CO-Ph-の単位(すなわちPEDEK単位)を少量ながらも更に含むPEEKコポリマーであり得ることを更に教示している。これらの教示によれば、PEIをPEEKポリマー中にブレンドすると、その粉末ブレンドのSLS加工条件におけるリサイクル性及び熱安定性が改善される。ここで、本出願人は、そのようなPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーにPEIを配合することが、目的とする挙動を得るのに効果的でないことを見出した。特に、実施形態及び非実施形態によって示されるように、比較のPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーにPEIを添加すると、結晶化速度が遅くなり、これは、本発明の組成物に関連するものとはかなり反対の知見である。
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明の第1の目的は、組成物[組成物(C)]であって、
- 少なくとも1種のポリアリールエーテルケトンコポリマー[コポリマー(PEDEK-PEEK)]であって、
- 式(I):
【化1】
の繰り返し単位(R
PEEK)、及び
- 式(II):
【化2】
の繰り返し単位(R
PEDEK)
(上記の式(I)及び(II)において、R’及びR’’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC
1~C
12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;j’及びk’’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、0及び1~4の整数から独立して選択され;
前記繰り返し単位は、55:45~99:1のモル比(R
PEDEK):(R
PEEK)に含まれる)
を含む少なくとも1種のポリアリールエーテルケトンコポリマー[コポリマー(PEDEK-PEEK)]と;
- 少なくとも1種のポリ(エーテルイミド)ポリマー[ポリマー(PEI)]であって、ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、(i)少なくとも1つの芳香族環と、(ii)少なくとも1つのイミド基であって、そのイミド及び/又はそのアミド酸形態の少なくとも1つのイミド基と、(iii)少なくとも1つのエーテル基とを含む繰り返し単位(R
PEI)を含む少なくとも1種のポリ(エーテルイミド)ポリマー[ポリマー(PEI)]と
を含む組成物[組成物(C)]である。
【0016】
本発明は、溶融状態で前記コポリマー(PEDEK-PEEK)と前記ポリマー(PEI)とをブレンドすることを含む、前記組成物(C)を製造する方法に更に関する。
【0017】
本発明は、特に、上記で詳述された本発明の組成物(C)からそれらのパーツを成形することを含む、熱可塑性複合材料を製造する方法及び/又は様々な分野において有用なデバイスに含まれるパーツを製造する方法に更に関する。
【0018】
本出願人は、上記で詳述された本発明の組成物(C)が、コポリマー(PEDEK-PEEK)中でのPEDEK型単位が優勢であることに起因して且つポリマー(PEI)とのブレンドに起因して、高温における優れた強度及び剛性を得るのに有効であることを見出した。
【0019】
この理論に拘束されるものではないが、本出願人は、コポリマー(PEDEK-PEEK)へのポリマー(PEI)の添加が、驚くべきことに、部分的に混和性のブレンド又は換言すると非常に相溶性のあるブレンドをもたらし、その結果、純粋なPEDEK-PEEKコポリマー及びPEEK/PEIブレンドと比較して、高温での強度及び剛性が改善されると考えている。PEDEK-PEEKコポリマーブレンドとPEIとの部分的に混和性の挙動は、動的機械分析(DMA)測定から得られたガラス転移温度(Tg)の測定によって特に証明されており、これは、予想外且つ有利であり、高温(ブレンドのTgより高温を含む)での機械的特性の改善を促進する。これは、特に特定の範囲の組成範囲(例えば、最大35重量%のPEI)でブレンドを1つの均質なブレンドとして溶融加工することも可能にする。これにより、ブレンドの物理的及び機械的特性の変動につながることが多い、不安定で変わりやすい相のドメインのサイズ及び形態を示す可能性のある多くの不均一な2相ブレンドに関連する潜在的な複雑な要因が排除される。最後に、PEEKにPEIを添加すると(2つのポリマーが完全に混和するため)、PEEKの結晶化が遅くなることは、よく知られているが、PEDEK-PEEKコポリマーをPEIとブレンドすると、結晶化の速度が増加し、これは、熱可塑性連続繊維複合材料及びパーツの製造及び加工を含む射出成形及び他の作業における効率的な加工に有益である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
コポリマー(PEDEK/PEEK)
コポリマー(PEDEK-PEEK)は、55:45~99:1、好ましくは60:40~95:5、より好ましくは65:35~90:10、更により好ましくは68:32~80:20のモル比(RPEDEK):(RPEEK)において、上記で詳述された繰り返し単位RPEDEK)及び(RPEEK)を含む。特に有利であることが見出されたコポリマー(PEDEK-PEEK)は、70:30~80:20の(RPEDEK):(RPEEK)のモル比において、上記で詳述された繰り返し単位(RPEDEK)及び(RPEEK)を含むものである。
【0021】
コポリマー(PEDEK-PEEK)において、繰り返し単位(RPEDEK)及び(RPEEK)の量の合計は、繰り返し単位の総モル数に対して通常少なくとも70%モル、好ましくは少なくとも80モル%、更により好ましくは少なくとも90モル、最も好ましくは少なくとも95モル%である。
【0022】
コポリマー(PEDEK-PEEK)は、上記で詳述された繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)と異なる繰り返し単位(RPAEK)を更に含み得る。そのような場合、繰り返し単位(RPAEK)の量は、通常、コポリマー(PEDEK-PEEK)の繰り返し単位の総モル数に対して0~5モル%に含まれ、繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)の繰り返し単位の総モル数に対して少なくとも95モル%の量で存在する。
【0023】
コポリマー(PEDEK-PEEK)中に繰り返し単位(R
PEEK)及び(R
PEDEK)と異なる繰り返し単位(R
PAEK)が存在する場合、これらの繰り返し単位(R
PAEK)は、通常、以下の式(K-A)~(K-M):
【化3】
【化4】
【化5】
(上記の式(K-A)~(K-M)のそれぞれにおいて、R’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC
1~C
12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;j’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、0及び1~4の整数から独立して選択され、好ましくは、j’は、ゼロに等しい)
のいずれかに従う。
【0024】
それにもかかわらず、コポリマー(PEDEK-PEEK)は、上記で詳述された繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)から本質的に構成されることが通常好ましい。コポリマー(PEDEK-PEEK)に関連した「~から本質的に構成される」という表現は、欠陥、末端基及びモノマーの不純物が、有利には本発明のブレンド中の同じものの性能に悪影響を及ぼさないように、コポリマー(PEDEK-PEEK)中にごく少量組み込まれ得ることを示すことを意図されている。
【0025】
式(I)の繰り返し単位(R
PEEK)中で、フェニル基間の連結は、通常、フェニル環のそれぞれのパラ位にある。更に、j’のそれぞれについて、一般に、ゼロであることが好ましいか、又は換言すると、フェニル環のそれぞれについて、カテナリーエーテル性基若しくはケトン架橋基に加えて任意のまた別の置換基を有しないことが好ましい。これらの好ましい実施形態によれば、繰り返し単位(R
PEEK)は、式(Ia)に従う。
【化6】
【0026】
同様に、式(II)の繰り返し単位(R
PEDEK)中で、フェニル基間の連結は、通常、フェニル環のそれぞれのパラ位にある。更に、k’’のそれぞれについて、一般に、ゼロであることが好ましいか、又は換言すると、フェニル環のそれぞれについて、カテナリーエーテル性基若しくはケトン架橋基に加えて任意のまた別の置換基を有しないことが好ましい。これらの好ましい実施形態によれば、繰り返し単位(R
PEDEK)は、式(IIb)に従う。
【化7】
【0027】
ポリ(エーテルイミド)[ポリマー(PEI)]
前述したように、ポリマー(PEI)は、ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、少なくとも1つの芳香環、少なくとも1つのイミド基(それ自体及び/又はそのアミド酸形態)並びに少なくとも1つのエーテル基を含む繰り返し単位(RPEI)を含むポリマーである。繰り返し単位(RPEI)は、イミド基のアミド酸の形態に含まれない少なくとも1つのアミド基を任意選択的に更に含み得る。
【0028】
通常、繰り返し単位(R
PEI)は、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及びそれらの混合物:
【化8】
(式中、
- Arは、四価の芳香族部分であり、且つ5~50個の炭素原子を有する置換又は無置換の、飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択され;
- Ar’は、三価の芳香族部分であり、且つ5~50個のC原子を有する置換、無置換、飽和、不飽和の芳香族単環式及び芳香族多環式の基からなる群から選択され;及び
- Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;及び
(d)式(VI):
【化9】
(式中、
- Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択され、及び
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート(alkali earth metal sulfonate)、アルカリ土類金属スルホネート(alkaline earth metal sulfonate)、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート(alkali earth metal phosphonate)、アルカリ土類金属ホスホネート(alkaline earth metal phosphonate)、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、及び
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の二価ラジカル
からなる群から選択される置換及び無置換の二価有機ラジカルからなる群から選択され、
ただし、Ar、Ar’及びRの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含むことと、そのエーテル基は、ポリマー鎖骨格中に存在することとを条件とする)
からなる群から選択される。
【0029】
上記の式において、Arは、典型的には、式:
【化10】
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’又は4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、且つ1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択されるか;又は
Xは、式-O-Ar’’-O-の基であり、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換又は無置換の、飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分である)
からなる群から選択される。
【0030】
上記の式において、Ar’は、典型的には、式:
【化11】
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’又は4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、且つ1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択されるか;又は
Xは、式-O-Ar’’-O-の基であり、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換又は無置換の、飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分である)
からなる群から選択される。
【0031】
通常、ポリマー(PEI)中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ては、上記で定義された式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又はそれらの混合物の繰り返し単位(RPEI)である。
【0032】
特定の実施形態によれば、ポリマー(PEI)は、ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、式(VII):
【化12】
(式中、
- Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;及び
(d)式(VI):
【化13】
(式中、
- Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択され、及び
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、及び
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の二価ラジカル
からなる群から選択される置換及び無置換の二価有機ラジカルからなる群から選択され、
ただし、Ar、Ar’及びRの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含むことと、そのエーテル基は、ポリマー鎖骨格中に存在することとを条件とし、
- Tは、-O-又は-O-Ar’’-O-のいずれかであり得、
ここで、-O-又は-O-Ar’’-O-基の二価の結合は、3,3’、3,4’、4,3’又は4,4’の位置であり得、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換又は無置換の、飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分、例えば置換若しくは無置換のフェニレン、置換若しくは無置換のシクロヘキシル基、置換若しくは無置換のビフェニル基、置換若しくは無置換のナフタレン基又は2つの置換若しくは無置換のフェニレンを含む部分である)
の繰り返し単位(R
PEI)を含むポリマーである。
【0033】
本開示のある実施形態によれば、Ar’’は、上記で詳述された一般式(VI)のものであり、例えば、Ar’’は、式(XIX):
【化14】
のものである。
【0034】
この好ましい実施形態によるポリマー(PEI)は、式H
2N-R-NH
2(XX)(式中、Rは、前に定義された通りである)のジアミノ化合物と、式(XXI):
【化15】
(式中、Tは、前に定義された通りである)
の任意の芳香族ビス(エーテル酸無水物)との反応を含む、当業者に周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0035】
一般に、この調製は、20℃~250℃の範囲の温度において、溶媒、例えばo-ジクロロベンゼン、m-クレゾール/トルエン、N,N-ジメチルアセトアミド中で実施することができる。
【0036】
代わりに、これらのポリマー(PEI)は、式(XXI)の任意の二無水物と式(XX)の任意のジアミノ化合物とを、同時混合でこれらの成分の混合物を高温において加熱しながら溶融重合させることによって調製することができる。
【0037】
式(XXI)の芳香族ビス(エーテル酸無水物)としては、例えば、
2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;
2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物;及び
そのような二無水物の混合物
が挙げられる。
【0038】
式(XX)の有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニル-メタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン及びそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、式(XX)の有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン及びp-フェニレンジアミン並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
特定の好ましい実施形態によれば、ポリマー(PEI)は、ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、式(XXIII)又は(XXIV):
【化16】
の繰り返し単位(RPEI)をイミド形態又はその対応するアミド酸形態及びそれらの混合物で含むポリマーである。
【0040】
好ましい実施形態では、PEI中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ては、イミドの形態又はその対応するアミド酸形態及びそれらの混合物における式(XXIII)又は(XXIV)の繰り返し単位(RPEI)である。
【0041】
このような芳香族ポリイミドは、とりわけ、ULTEM(登録商標)ポリエーテルイミドとしてSabic Innovative Plasticsから市販されている。
【0042】
コポリマー(PEDEK-PEEK)とポリマー(PEI)とを含有する組成物
組成物(C)は、少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)を含む:これは、1種以上のコポリマー(PEDEK-PEEK)、例えばそれぞれの分子量(RV、MV・・・)のため、又はそれらの繰り返し単位の性質のため、又は何らかの他のパラメータのため、又はこれらの組み合わせを含む理由のために異なり得る、多数のコポリマー(PEDEK-PEEK)を含み得る。
【0043】
同様に、組成物(C)は、少なくとも1種のコポリマー(PEI)を含む:これは、1種以上のポリマー(PEI)、例えばそれぞれの分子量(RV、MV・・・)のため、又はそれらの繰り返し単位の性質のため、又は何らかの他のパラメータのため、又はこれらの組み合わせを含む理由のために異なり得る、多数のポリマー(PEI)を含み得る。
【0044】
組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、更に少なくとも65%の重量の量並びに/又はコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として最大95%、好ましくは最大90%の重量の量において、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)を含み得る。
【0045】
逆に、組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として60%未満、50%未満、40%未満若しくは35%未満の重量の量並びに/又はコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として少なくとも5%、好ましくは10%の重量の量において、上記で詳述されたポリマー(PEI)を含み得る。
【0046】
特に好ましいものは、コポリマー(PEDEK-PEEK)とポリマー(PEI)とのブレンドに対してコポリマー(PEDEK-PEEK)が大量に存在する組成物(C)であり、これらの好ましい実施形態によれば、組成物(C)は、
- 上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)であって、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として50%超、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%の重量の量並びに/又はコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として最大95%、好ましくは最大90%の重量の量のコポリマー(PEDEK-PEEK);
- 上記で詳述されたポリマー(PEI)であって、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として50%未満、好ましくは最大40%、より好ましくは最大35%の重量の量並びに/又はコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%の重量の量のポリマー(PEI)
を含む。
【0047】
コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量を基準として60~90%のコポリマー(PEDEK-PEEK)及び10~40%のポリマー(PEI)を含む組成物(C)で良好な結果が得られた。
【0048】
特定の実施形態によれば、組成物(C)は、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)を、前記組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも95%ではないとしても、少なくとも90%の合計重量の量で含む。更に、組成物(C)が、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)から本質的になる実施形態が提供される。本発明の目的のために、「~から本質的になる」という表現は、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)と異なる任意の追加の成分が、組成物の有利な特性を実質的に変えないように、組成物(C)の総重量を基準として最大1重量%の量で存在することを意味すると理解すべきである。
【0049】
それにもかかわらず、組成物(C)には、多くの場合、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の他に追加的な成分が配合される。したがって、特定の別の実施形態によれば、組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)に加えて、組成物(C)の合計重量を基準として有利には少なくとも10重量%且つ最大60重量%の量で少なくとも1種の追加の成分を含む。
【0050】
組成物(C)は、例えば、少なくとも1種の補強フィラーを更に含み得る。補強フィラーは、当業者に周知である。それらは、好ましくは、繊維状及び粒子状のフィラーから選択される。繊維状フィラーは、チョップド繊維として又は布地の形態を含む連続繊維として組成物(C)に添加することができる。
【0051】
より好ましくは、補強フィラーは、無機フィラー(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素など)、ガラス繊維、炭素繊維、合成高分子繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、ホウ素カーバイド繊維、ロックウール繊維、鋼繊維、ウォラストナイト、ナノ材料(単層又は多層のカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、ナノクレイ、例えばモンモリロナイトなど)などから選択される。一層より好ましくは、これは、マイカ、カオリン、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、炭素繊維及びウォラストナイトなどから選択される。
【0052】
好ましくは、フィラーは、繊維状フィラーから選択される。特定の分類の繊維状フィラーは、ウィスカー、すなわちAl2O3、SiC、BC、Fe及びNiなどの様々な原材料から製造される単結晶繊維からなる。
【0053】
本発明の1つの実施形態では、補強フィラーは、ウォラストナイト及びガラス繊維から選択される。繊維状フィラーの中でも、ガラス繊維が好ましい。それらとしては、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのチャプター5.2.3,p.43-48に記載されているようなチョップドストランドA-、E-、C-、D-、S-、T-及びR-ガラス繊維が挙げられる。
【0054】
ポリマー組成物(C)中に任意選択的に含まれ得るガラス繊維は、円形断面又は非円形断面(楕円形又は長方形の断面など)を有し得る。
【0055】
使用されるガラス繊維が円形断面を有する場合、それらは、好ましくは、3~30μm、特に好ましくは5~12μmの平均ガラス繊維直径を有する。円形の断面を有する様々な種類のガラス繊維は、それらを製造するためのガラスの種類に応じて市場で入手可能である。特に、E-ガラス又はS-ガラスから製造されたガラス繊維を挙げることができる。
【0056】
本発明の別の実施形態では、補強フィラーは、炭素繊維である。
【0057】
本明細書で使用される「炭素繊維」という用語は、黒鉛化された、部分的に黒鉛化された及び黒鉛化されていない炭素強化繊維又はそれらの混合物を含むことが意図されている。本発明に有用な炭素繊維は、例えば、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、芳香族ポリアミド又はフェノール樹脂などの異なるポリマー前駆体の熱処理及び熱分解によって有利に得ることができる。本発明に有用な炭素繊維は、ピッチ系材料から得ることもできる。用語「グラファイト繊維」は、炭素繊維の高温熱分解(2000℃超)によって得られる炭素繊維を意味することを意図し、ここで、炭素原子は、グラファイト構造と類似した様式で位置している。本発明に有用な炭素繊維は、好ましくは、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイト繊維及びこれらの混合物から構成される群から選択される。
【0058】
前記補強フィラーの重量は、組成物(C)の総重量を基準として有利には60重量%未満、より好ましくは50重量%未満、更により好ましくは45重量%未満、最も好ましくは35重量%未満である。
【0059】
好ましくは、補強フィラーは、組成物(C)の総重量を基準として10~60重量%、好ましくは20~50重量%、好ましくは25~45重量%、最も好ましくは25~35重量%の範囲の量で存在する。
【0060】
補強フィラーは、単層又は多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、モンモリロナイトなどのナノクレイ又は当技術分野で公知の他の任意のナノフィラーなどのナノ材料であり得る。
【0061】
組成物(C)は、任意選択的に、(i)特に染料などの着色剤、(ii)特に二酸化チタン、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの顔料、(iii)光安定剤、例えばUV安定剤、(iv)熱安定剤、(v)特に有機亜リン酸エステル及び亜ホスホン酸エステルなどの酸化防止剤、(vi)酸捕捉剤、(vii)加工助剤、(viii)結晶化核剤、(ix)内部潤滑剤及び/又は外部潤滑剤、(x)難燃剤、(xi)煙抑制剤、(x)帯電防止剤、(xi)ブロッキング防止剤、(xii)特にカーボンブラック及びカーボンナノファイバーなどの導電性添加剤、(xiii)可塑剤、(xiv)流動調整剤、(xv)増量剤、(xvi)金属不活性化剤並びに前述の添加剤の1つ以上を含む組み合わせからなる群から通常選択される、上記で詳述された補強フィラー並びにコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)と異なる1つ以上の追加の成分(I)を更に含み得る。
【0062】
1つ以上の追加の成分(I)が存在する場合、ポリマー組成物(C)の総重量を基準としたそれらの総重量は、通常、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、更により好ましくは2%未満である。
【0063】
特定の実施形態によれば、組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)と異なるポリアリールエーテルポリマー(例えばPEEK、PEK、PEKK、PEKEKKなど);ポリアミドイミドなどのポリマー(PEI)と異なるポリイミドポリマー;スルホンポリマー、ポリアリールスルフィドなどの1種以上の追加のポリマー成分との組み合わせにおいて、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)を含み得る。
【0064】
それにもかかわらず、組成物(C)は、典型的には、コポリマー(PEDEK-PEEK)とポリマー(PEI)とに基づく組成物であることが理解される。一般的に言えば、これは、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)の合計重量が、その中に含まれる可能性がある他のあらゆるポリマー成分の重量の量を超えていることを意味する。
【0065】
別の実施形態によれば、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)のみが組成物(C)中ポリマー成分である。
【0066】
「ポリマー成分」という表現は、その通常の意味に従って理解されるべきである。すなわち、典型的には2000以上の分子量を有する、繰り返される連結単位によって特徴付けられる化合物が包含される。
【0067】
組成物(C)は、例えば、乾式混合、懸濁混合、スラリー混合、溶液混合、溶融混合及びこれらの任意の組み合わせ、特に乾式混合と溶融混合との組み合わせにより、上記で詳述された少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(PEI)、任意選択的に補強フィラー及びポリマー系材料に望まれる任意選択的に追加の成分(I)を均質に混合することを伴う様々な方法によって調製することができる。
【0068】
典型的には、好ましくは粉末状態の上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)並びに任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の乾式混合は、物理的混合物、特に少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)及び少なくとも1種のポリマー(PEI)並びに任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の粉末混合物を得るために、特にヘンシェル型ミキサー及びリボンミキサーなどの高強度ミキサーを使用することによって行われる。
【0069】
代わりに、組成物(C)で望まれる少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(PEI)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の均質な混合は、物理的混合物を得るための単軸又は多軸の回転機構に基づくタンブルブレンドによって行われる。
【0070】
代わりに、上記で詳述された粉末形態の前記コポリマー(PEDEK-PEEK)、前記ポリマー(PEI)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)を、例えばメタノールなどの適切な液体中で撹拌機を使用して最初にスラリー化し、続いて液体を濾過により除去して、少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(PEI)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の粉末混合物を得ることにより、コポリマー(PEDEK-PEEK)、前記ポリマー(PEI)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)のスラリー混合が行われる。
【0071】
別の実施形態では、例えばジフェニルスルホンなどの適切な溶媒又は溶媒ブレンド中で撹拌機を使用して、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)、ポリマー(PEI)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)を溶液混合することが行われる。
【0072】
前述した手法の1つによる物理的混合工程に続いて、少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(PEI)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の物理的混合物、特に得られる粉末混合物は、典型的には、圧縮成形、射出成形、押出成形などの特に溶融製造プロセスを含む当技術分野で公知の方法によって溶融製造され、特に様々な分野での使用に有用なパーツなどの成形物品が提供される。
【0073】
そのようにして得られた物理的混合物、特に得られた粉末混合物は、上記で詳述された重量比において、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)、ポリマー(PEI)、補強フィラー及び任意選択的に他の成分(I)を含むことができるか、又はマスターバッチとして使用されてから、後続の処理工程において、追加の量の上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)、上記で詳述された補強フィラー並びに任意選択的に他の成分(I)で希釈される濃縮混合物であり得る。例えば、得られる物理的混合物は、スラブ又はロッドのようなストック形状に押し出すことができ、これらから最終パーツを機械加工することができる。代わりに、物理的混合物は、完成パーツ又はストック形状に圧縮成形又は射出成形することができ、これらから完成パーツを機械加工することができる。
【0074】
溶融混錬により本発明の組成物を製造することも可能である。組成物(C)は、上述した粉末混合物を更に溶融混錬することによって製造することができる。代替形態として、溶融混錬は、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)、上記で詳述された補強フィラー及び任意選択的に他の成分(I)に直接影響を与え得る。そのような場合、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PEI)は、溶融混錬装置に供給されるペレットの形態又は粉末の形態で供給することができ、確実に安定供給するためにペレットが好ましい形態である。同方向回転及び逆回転押出機、単軸押出機、コニーダ、ディスクパックプロセッサー及び他の様々なタイプの押出装置などの従来の溶融混錬装置を使用することができる。好ましくは、押出機、より好ましくは二軸押出機を使用することができる。
【0075】
必要に応じて、混錬スクリューの設計、例えばフライトピッチ及び幅、クリアランス、長さ並びに運転条件は、混合物(例えば、予め形成された粉末混合物)又は上記で詳述された成分を有利に完全に溶融し、様々な成分の均一な分布を有利に得るのに十分な熱及び機械的エネルギーが供給されるように有利に選択される。バルクポリマー成分とフィラー成分との間で最適な混合が達成されると、本発明の組成物(C)のストランド押出物を得ることが有利に可能である。組成物(C)のストランド押出物は、水噴霧を備えたコンベア上での冷却時間後に例えば回転カッティングナイフなどにより、細かく切断することができる。その結果、組成物(C)は、ペレット又はビーズの形態で提供することができ、これらは、その後、異なる加工技術により、特に異なる形状及びサイズの成形物品の製造のために更に使用することができる。
【0076】
組成物(C)は、付加製造における使用、例えば選択的レーザー焼結又は溶融フィラメント製造による加工のための粉末(例えば、粉砕、製粉及び/又は分級による)又はフィラメント(例えば、押出により製造)の形態で更に提供することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、組成物(C)から製造されたポリマーマトリックスと、その中に埋め込まれた複数の繊維とを含む複合材料を製造するために使用することができる。通常、繊維は、連続繊維であり、これは、一方向繊維のストランドの形態において又は織布若しくは不織布のマット若しくは布地として提供され得る。組成物(C)のマトリックスを含む複合材料は、実質的に二次元の材料の形態、例えばシート及びテープなど、他の2つの次元(幅及び長さ)よりも大幅に小さい1つの次元(厚さ又は高さ)を有する材料の形態で提供され得る。特定の好ましい実施形態では、組成物(C)のマトリックスを含む複合材料は、
- マットなどの不織布、多軸織物、織布又は編組布を含むが、これらに限定されない、含浸された布の1つ以上のプライを含む複合材料;及び
- 好ましくは繊維が整列されている、一方向(連続又は不連続)繊維強化テープ又はプリプレグ;及び
- 繊維強化テープ又はプリプレグの複数の層を含む多方向繊維強化テープ又はプリプレグ
からなる群から選択される。
【0078】
上述した複合材料において使用される布及び繊維は、任意のタイプのものであり得る。ただし、特に連続炭素繊維の一方向テープ又は強化された多方向繊維を提供するために、炭素布地及び繊維を使用することが好ましい。
【0079】
成形物品
本発明の別の主題は、上記で詳述された組成物(C)を含む成形物品である。
【0080】
上記で詳述された組成物(C)は、成形物品を提供するために、特に押出成形、射出成形及び圧縮成形を含む通常の溶融加工技術によって加工することができる。
【0081】
したがって、本発明の成形物品は、押出形状、好ましくはロッド、スラブ、チューブ、パイプ若しくはプロファイルからなる群から選択される押出形状であり得るか、又は射出成形物品であり得る。
【0082】
特定の実施形態によれば、成形物品は、例えば、特にフィルム、シース及びシートなど、1つの寸法(厚さ又は高さ)が他の2つの特徴的な寸法(幅及び長さ)よりも大幅に小さいパーツなど、実質的に二次元の物品の形態である。
【0083】
別の実施形態によれば、成形物品は、例えば、場合によりアンダーカット及びインサートなどを含む凹面又は凸面の部分を有する複雑な形状のパーツの形態など、例えば同様の形で空間の三次元に実質的に広がっている三次元パーツとして提供される。
【0084】
潜在的な用途としては、半導体及びICチップ製造のための静電気放電(ESD)構成要素、電気電子機器、ワイヤ及びケーブル絶縁、高性能フィルム、医療用及び医薬品構成要素など、自動車、航空宇宙、半導体製造における様々な産業のための及び耐久性のある構成要素が挙げられる。
【0085】
本発明の組成物を相分離又は分離なしに薄膜に加工する能力は、例えば、25μm未満の厚さを有する超薄膜の製造のための組成物(C)の使用も可能にし、これは、特にスピーカーのダイヤフラム膜として有用である。
【0086】
特定の実施形態によれば、上記で詳述された組成物(C)から製造された成形物品は、静電気放電(ESD)保護デバイスのパーツとして提供され、これは、例えば、チップ製造を目的とした半導体ウェハに接続されるように設計され得る。
【0087】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0088】
以下では、本発明について以下の実施例に関連してより説明するが、その目的は、単に例証的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0089】
使用材料
これらの実施例で使用されるコポリマー(PEDEK-PEEK)は、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(DFBP)と、4,4’-ジヒドロキシジフェニル(別名ビフェノール)と、ヒドロキノンとの重縮合から誘導されたコポリマーであった。このコポリマーは、重合におけるビフェノールの総化学量論量内のヒドロキノン部分と比較して、ビフェノール残基部分を多く含む。PEDEKは、ビフェノールと4,4’-ジフルオロベンゾフェノンとの重縮合からのポリマー繰り返し単位を表す。本発明の実施に使用することができるコポリマー(PEDEK-PEEK)は、ポリマー骨格内のPEDEK繰り返し単位とPEEK繰り返し単位のモル比を変えることができるが、実施例では、PEDEK-PEEKのモル比が75-25であるコポリマー(以降PEDEK-PEEKコポリマー)を使用した。前記PEDEK-PEEKコポリマーは、ASTM D3835に準拠してキャピラリーレオメーターを使用して測定したときに、420℃且つ1000s-1で310Pa・sの溶融粘度を有する。
【0090】
比較例のために、PEDEK繰り返し単位と比較してPEEK繰り返し単位を多く含む、類似のPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーも使用した。下の比較例で使用される前記PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマー(以降PEEK-PEDEKコポリマー)は、70-30及び80-20のPEEK-PEDEKモル比を有しており、ASTM D3835に準拠してキャピラリーレオメーターを使用して測定したときに、370℃且つ1000s-1でそれぞれ200Pa・s及び190Pa・sの溶融粘度を有する。
【0091】
使用したポリマー(PEI)は、SABICのULTEM(登録商標)1000 PEIであった。これは、汎用の押出成形及び射出成形用途向けのPEIの標準グレードである。このグレードは、6.6kgの重りを使用して377℃でASTM D1238に準拠してメルトインデックス装置を使用して測定される、約9g/10分のメルトフローレートを有するとメーカーによって報告されている。
【0092】
使用したPEEKグレードは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.のKetaSpire(登録商標)KT-820NT天然樹脂であった。これは、汎用の押出成形及び射出成形用途向けのPEEKの標準グレードである。これは、ASTM D3835に準拠してキャピラリーレオメーターを使用して測定したときに、400℃且つ1000s-1で380~500Pa・sの範囲の溶融粘度を有する。
【0093】
配合物の調製
本発明によるポリマーブレンドは、48:1のL/D比を有する26mmのCoperion(登録商標)同方向回転部分噛合型二軸押出機を使用して溶融混錬することによって調製した。押出機は12個のバレルセクションを有しており、バレルセクション2~12は390℃(PEDEK-PEEKとPEIとのブレンドについて)、380℃(PEEKとPEIとのブレンドについて)又は335℃(PEEK-PEDEKとPEIとのブレンドについて)の温度設定で加熱した。ダイ温度も390℃(PEDEK-PEEKとPEIとのブレンドについて)、380℃(PEEKとPEIとのブレンドについて)又は345℃(PEEK-PEDEKとPEIとのブレンドについて)に設定した。異なる溶融温度及び処理条件の異なる目標範囲のため、各ポリケトン樹脂の溶融混錬のために異なる温度設定を使用した。押出機は、30lb/時(13.6kg/時)のスループット速度及び200rpmのスクリュー速度で運転し、押出機のトルクの読み取り値は、全ての組成物の混錬中、約60~85%の範囲に維持した。コンパウンドから水分及び存在し得る残留揮発性物質を除去するために、混錬中にバレルセクション10に25inHgを超える真空レベルで真空ベントを適用した。それぞれの実行からの押出物をストランドにし、ウォータートラフ中で冷却し、その後直径約2.7mm、長さ3.0mmのペレットにペレット化した。
【0094】
配合物の試験
機械的特性は、1)タイプI引張棒及び2)5インチ×0.5インチ×0.125インチの曲げ棒からなる、射出成形された0.125インチ(3.2mm)の厚さのASTM試験片を使用して全ての配合物について試験した。30%以上のPEIから構成されるPEEK/PEI配合物を除いて、射出成形された試験片は、試験前に230℃のオーブンで2時間アニール処理した。30%以上のPEIを含むPEEK/PEI配合物の射出成形した試験片は、230℃でアニール処理したときに大きい反りを示したため、これらの試験片は、試験前に200℃で2時間アニール処理した。アニール処理中の反りを抑えるために、パーツは、2つの平らな0.5インチの厚さのガラス板間でアニール処理した。
【0095】
以下のASTM試験方法を組成物の評価に用いた。
D638:引張特性(試験速度=2.0インチ/分)
D790:曲げ特性
D256:ノッチ付きIzod衝撃特性
【0096】
射出成形した試験片(ASTMタイプI引張棒の中心から切り取った)に対して、ねじりモードで動的機械分析(DMA)を行った。50℃~300℃の動的温度スイープは、10.0rad/秒の周波数及び0.05%のひずみ振幅で行った。
【0097】
示差走査熱量測定(DSC)は、PEIをPEEKに及びPEDEK-PEEK及びPEEK-PEDEKコポリマーに添加することの結晶化時間への影響を評価するために、様々な冷却速度で配合物に対して行った。DSC試験は、ASTM法D3418に準拠して行った。結晶化時間は、以下の式に従って計算した。
【数1】
【0098】
【0099】
【0100】
表1の引張及び曲げ特性のデータは、本発明によるポリマーブレンド組成物(E1~E6)が、純粋なPEDEK-PEEKコポリマー対照(C1)と比較して、175℃で優れた強度及び剛性を示すことを示している。更に、表1のノッチ付きIzod衝撃データは、本発明によるポリマーブレンド組成物(E1~E6)が、純粋なPEDEK-PEEKコポリマー対照(C1)と比較して優れたノッチ付きIzod衝撃強さを示すことを示している。
【0101】
【0102】
PEEK/PEIブレンドの比較例についての表2の引張及び曲げデータを考慮すると、本発明によるポリマーブレンド組成物は、類似のPEEK/PEIポリマーブレンドよりも175℃でより高い強度及び剛性を示すことが示される。
【0103】
PEEK/PEIブレンドの比較例について表2のノッチ付きIzod衝撃データを考慮すると、10重量%を超えるPEI濃度では、本発明によるポリマーブレンド組成物は、類似のPEEK/PEIポリマーブレンドよりも高いノッチ付きIzod衝撃強さを示すことも観察される。更に、表2のデータは、PEEKにPEIを添加すると、ノッチ付きIzod衝撃強さが低下する一方、PEDEK-PEEKコポリマーにPEIを添加すると、ノッチ付きIzod衝撃強さが増加することを示している。
【0104】
DMAから抜き出した表1及び2に報告されているガラス転移温度(Tg)のデータは、PEEK/PEIポリマーブレンドが、2つのポリマーの完全な混和を示唆する単一のTgを、調査した全ての濃度で示す一方、PEDEK-PEEKコポリマーとPEIとの一部のブレンドが、純粋なPEI又は純粋なPEDEK-PEEKコポリマーのTgとわずかに異なるものの、2つのTgを示すことを示している。この観察結果は、PEIとPEDEK-PEEKコポリマーの部分的な混和性を示しており、これは驚くべき有益な結果である。完全に混和性のブレンドと異なり、部分的に混和性のブレンドは、PEIを多く含む相のより高いTgを保持し、高温性能を向上させる。PEDEK-PEEKコポリマーを多く含む相に対応する、部分的に混和性のブレンドの低い方のTgは、35重量%以上のPEI濃度についてのDMA損失正接対温度曲線の最大値の近く且つ前に発生する非対称のショルダーの変曲点であると推定した。
【0105】
【0106】
表3は、PEIとPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーとのブレンドからなる比較例についての機械的特性データを示す。実証のために、2つの異なるモル比のPEEK部分とPEDEK部分とを有するコポリマーからなるブレンドを配合した。所定PEI濃度について、本発明によるポリマーブレンド組成物は、表3の比較のブレンド配合物よりも175℃でより高い強度及び剛性を示すことが示された。更に、表3の比較例は、破断点引張伸びの低下から明らかなように、本発明によるブレンドよりも周囲温度でより低い延性を示す。
【0107】
【0108】
【0109】
表4は、180℃~200℃の温度におけるねじりモードのDMA試験による貯蔵弾性率の測定値を示す。結果は、本発明による代表的なポリマーブレンドの高温での剛性が、純粋なPEDEK-PEEKコポリマー対照のみならず、類似のPEEK/PEIブレンド及び類似のPEIとPEEK-PEDEKコポリマーとのブレンドの比較例よりも上回っていることを示している。より具体的には、PEIをPEEK又はPEEK-PEDEKに添加すると、剛性がわずかに向上するか又は更に低下する(低い貯蔵弾性率)一方、PEIをPEDEK-PEEKコポリマーに添加すると、同等の条件で剛性を大幅に向上させることができる。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
表5は、本発明による例示的な配合物並びに関連する対照及び比較例についてのDSCからの結晶化データを示している。PEEKにPEIを添加すると、結晶化温度が大幅に低下し、射出成形によるブレンドの加工がより難しく時間がかかるようになる一方、表5は、驚くべきことに且つ有利には、PEIとPEDEK-PEEKコポリマーとをブレンドすると、純粋なPEDEK-PEEKコポリマーの結晶化温度がわずかに低下するのみであることを示している。更に、表5は、PEIをPEEK又はPEEK-PEDEKとブレンドすると、純粋なPEEK又はPEEK-PEDEK対照と比較して、結晶化時間が増加する悪影響が生じ、更に特定の条件下で結晶化の証拠が完全になくなることを示している。対照的に、PEIをPEDEK-PEEKコポリマーに添加すると、驚くべきことに且つ有利には、結晶化時間が短縮される。この結果は、PEDEK-PEEKコポリマーとPEIとのブレンドが、純粋なPEDEK-PEEKコポリマーよりも速く結晶化することを示唆している。結晶化時間が速いほど、効率的な射出成形加工に有利である。
【国際調査報告】