(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(54)【発明の名称】脳特異的血管新生抑制因子1(BAI1)抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221226BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221226BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221226BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221226BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221226BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221226BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221226BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221226BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221226BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221226BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61P17/02
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P27/02
A61K39/395 N
A61K39/395 D
G01N33/53 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526013
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 US2020058711
(87)【国際公開番号】W WO2021091899
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522006144
【氏名又は名称】コード バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522175901
【氏名又は名称】ミンディ・エレン・ジョージ-ウェインステイン
(71)【出願人】
【識別番号】522175912
【氏名又は名称】ジャクリーン・ガーハート
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ボワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ミンディ・エレン・ジョージ-ウェインステイン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリーン・ガーハート
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA25
4B065BD14
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、ヒト接着Gタンパク質共役型受容体B1(BAI1)タンパク質に結合する抗体、その抗体を含む組成物、ならびにそれらを検出方法、診断方法及び治療方法で使用することを提供する。さらに、その可変重鎖(VH)及び可変掲載(VL)の配列における相補性決定領域(CDR)の配列、ならびにVH及びVLのアミノ酸配列を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト接着Gタンパク質共役型受容体B1(BAI1)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む、可変重(V
H)鎖における第1の相補性決定領域(CDR)(V
H-CDR1)と、
配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む、V
H鎖における第2のCDR(V
H-CDR2)と、
配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む、V
H鎖における第3のCDR(V
H-CDR3)と、
配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む、可変軽(V
L)鎖における第1のCDR(V
L-CDR1)と、
配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む、V
L鎖における第2のCDR(V
L-CDR2)と、
配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む、V
L鎖における第3のCDR(V
L-CDR3)と、
を含む前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むV
H鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV
L鎖を含む、請求項1または請求項2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が、IgM抗体またはIgG抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
ヒト化されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
配列番号13に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項5に記載のヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項5または請求項6に記載のヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
エフェクター部分にコンジュゲートされている、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記エフェクター部分が、検出可能な標識、細胞傷害剤、化学療法剤または核酸分子である、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合断片1個あたりにメイタンシノイド分子を3~5個含む、請求項9に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記核酸分子が、1層の核酸キャリア、1.5層の核酸キャリア、2層の核酸キャリア、2.5層の核酸キャリアまたは3層の核酸キャリアである、請求項9に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗原結合断片が、Fab断片、F(ab’)
2断片、Fv断片、scFv断片、scFv-Fc断片、ダイアボディ断片またはミニボディ断片である、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片のV
H鎖をコードする単離核酸分子であって、配列番号2または配列番号3に記載のヌクレオチド配列を含む前記核酸分子。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片のV
L鎖をコードする単離核酸分子であって、配列番号5または配列番号6に記載のヌクレオチド配列を含む前記核酸分子。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターでトランスフォーメーションした宿主細胞。
【請求項18】
BAI1発現細胞の検出方法であって、前記細胞と、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を接触させることと、前記抗体またはその抗原結合断片を検出することを含む前記方法。
【請求項19】
BAI1を発現しているがんを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む前記方法。
【請求項20】
後嚢混濁(PCO)を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む前記方法。
【請求項21】
線維症を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む前記方法。
【請求項22】
創傷治癒を促す方法であって、それを必要とするヒト患者に、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む前記方法。
【請求項23】
創傷治癒を促す方法であって、それを必要とするヒト患者に、BAI1発現細胞を投与することを含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本願には、2020年11月2日作成した25キロバイトのサイズの18909900502SEQという名称のテキストファイルとして電子的に提出した配列表が含まれる。その配列表は、参照により、本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、ヒト脳特異的血管新生抑制因子1(BAI1)(接着Gタンパク質共役型受容体B1(ADGRB1)としても知られる)タンパク質と結合する抗体及びその断片、その抗体及びその断片を含む組成物、ならびに検出方法、細胞単離方法、枯渇方法、診断方法及び治療方法において、その抗体及びその断片を使用することに対するものである。
【背景技術】
【0003】
BAI1は、単球系統、アストロサイト、ニューロン、ならびに骨格筋特異的転写因子MyoD及び骨形成阻害剤ノギンを発現するMyo/Nog細胞の細胞内で発現する。BAI1+細胞は、自然免疫、創傷治癒、胚発生及び神経保護に関与する。BAI1+細胞の創傷治癒特性には、その分子がホスファチジルセリンに結合することを介して、アポトーシス細胞及びグラム陰性菌を貪食する際におけるその分子の役割が部分的に反映されている。創傷治癒における、BAI1+細胞のサブ集団の別の機能は、筋線維芽細胞に分化することである。筋線維芽細胞の収縮は、創傷閉鎖を促進し得る一方で、組織形態、ひいては機能を乱すこともある。例えば、後発白内障または後嚢混濁(PCO)は、視覚に障害を与える水晶体疾患であって、白内障手術後に、一部の成人及び大半の小児で発現する水晶体疾患である。水晶体内のBAI1+細胞は、筋線維芽細胞となり、嚢内にひだを作り、水晶体周囲に厚い基底膜を形成する。水晶体嚢における変形は、視力に影響を及ぼす。
【0004】
BAI1は、食作用における役割に加えて、代謝されて、血管新生(既存の血管から血管が形成されるプロセス)の抑制因子が作られる。網膜では、血管新生は、糖尿病性網膜症及び滲出型黄斑変性において、視力を脅かす要素である。血管新生は、腫瘍の成長にも不可欠であり、腫瘍は、追加の血管新生が行われなければ、数ミリメートルよりも大きくは成長できない。BAI1+細胞は、網膜及び腫瘍に存在する。いくつかのがんでは、BAI1は、疾患の進行に伴いダウンレギュレーションし、それによって、血管新生に有利に働く。しかしながら、血管新生は、化学療法薬、例えば、ウイルスに結合された化学療法薬の分布にも重要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ヒトBAI1タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、可変重(VH)鎖における第1の相補性決定領域(CDR)(VH-CDR1)と、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VH鎖における第2のCDR(VH-CDR2)と、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VH鎖における第3のCDR(VH-CDR3)と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、可変軽(VL)鎖における第1のCDR(VL-CDR1)と、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VL鎖における第2のCDR(VL-CDR2)と、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VL鎖における第3のCDR(VL-CDR3)を含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0006】
本開示は、その抗体またはその抗原結合断片の重鎖をコードする単離核酸分子であって、配列番号2または配列番号3に記載のヌクレオチド配列を含むか、またはそのヌクレオチド配列からなる核酸分子も提供する。
【0007】
本開示は、その抗体またはその抗原結合断片の軽鎖をコードする単離核酸分子であって、配列番号5または配列番号6に記載のヌクレオチド配列を含むか、またはそのヌクレオチド配列からなる核酸分子も提供する。
【0008】
本開示は、BAI1発現細胞の検出方法であって、その細胞と、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を接触させることと、その抗体またはその抗原結合断片を検出することを含む方法も提供する。その検出は、細胞トラッキング及びバイオイメージング用の固定組織、細胞培養液及び生きた動物で行うことができる。
【0009】
本開示は、BAI1の精製方法であって、その分子と、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を接触させることを含む方法も提供する。これらの方法としては、例えば、免疫沈降及びカラム精製が挙げられる。
【0010】
本開示は、BAI1を発現している生細胞の単離方法であって、その細胞と、本発明の抗体またはその抗原結合断片を接触させることと、本明細書に記載されている抗体または抗原結合断片の結合した細胞を非結合細胞から分離することを含む方法も提供する。これらの方法としては、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)及び磁気細胞選別が挙げられる。
【0011】
本開示は、BAI1の機能の解析方法であって、in vitro及びin vivoで、分子及び生細胞と、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を接触させることを含む方法も提供する。これらの方法には、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、ウエスタンブロッティング及び生細胞アッセイにおいて、受容体及びその断片をブロッキングすることが含まれる。
【0012】
本開示は、in vitro、細胞機能を判断するための動物、及びその方法が必要なヒト患者において、BAI1発現細胞を殺傷する方法であって、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法も提供する。
【0013】
本開示は、細胞培養液、腫瘍を有する動物、及び腫瘍を有するヒトにおいて、BAI1を発現しているがんを治療する方法であって、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法も提供する。
【0014】
本開示は、後嚢混濁(PCO)を治療する方法であって、その方法が必要な組織培養液、動物及びヒト患者に、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法も提供する。
【0015】
本開示は、線維症を治療する方法であって、その方法が必要な培養細胞、動物及びヒト患者に、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法も提供する。
【0016】
本開示は、創傷治癒を促す方法であって、その方法が必要なヒト患者に、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片のいずれかを投与するか、またはBAI1+細胞をその創傷に投与することを含む方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】メンブレンプロテオームアレイ(MPA)プラットフォームを用いた抗原特定ワークフローを示している。
【
図2】Aは、HEK-293T細胞におけるG8ロット3/21/13の免疫検出の最適化を示している。各点は、4反復の平均を表している。シグナル対バックグラウンド(S/B)の算出値と生シグナル値に基づく、各抗体のスクリーニング用の推奨作業濃度は、赤色で強調表示されている。Bは、HEK-293T細胞におけるG8ロットPS30170160の免疫検出の最適化を示している。各点は、4反復の平均を表している。シグナル対バックグラウンド(S/B)の算出値と生シグナル値に基づく、各抗体のスクリーニング用の推奨作業濃度は、赤色で強調表示されている。
【
図3A】G8ロット3/21/13における膜タンパク質結合標的の特定結果を示している。非特異的な蛍光は、ノイズ(破線)を3標準偏差超えないあらゆる値と判断した。抗体結合の増大を示した標的は、破線よりも上に表示されているとともに、赤色で示されている。
【
図3B】G8ロットPS30170160における膜タンパク質結合標的の特定結果を示している。非特異的な蛍光は、ノイズ(破線)を3標準偏差超えないあらゆる値と判断した。抗体結合の増大を示した標的は、破線よりも上に表示されているとともに、赤色で示されている。
【
図4】Aは、G8ロット3/21/13の結合の検証結果を示している。各点は、4反復の平均を表している。Bは、G8ロットPS30170160の結合の検証結果を示している。各点は、4反復の平均を表している。
【
図5】RACEによる、マウスG8 IgMの重鎖及び軽鎖の特定の結果を示している。
【
図6】G8 IgM(ボックス)及び抗BAI1 IgG(丸。本明細書では「G8 IgG」とも称する)のELISAアッセイの結果を示している。
【0018】
上記の一般的な説明及び下記の詳細な説明のいずれも、例示及び説明のためのものに過ぎず、本明細書で特許請求されているような実施形態を制限するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定するようには意図されていない。本明細書及び請求項の全体にわたって、本開示の態様に関連する様々な用語が使われている。このような用語は、別段に示されていない限り、当該技術分野における通常の意味であるものとする。具体的に定義されているその他の用語は、本明細書に示されている定義に沿った形で解釈するものとする。
【0020】
別段に明示的に記載されていない限りは、いかなる場合も、本明細書に定められているいずれの方法または態様も、その工程を、いずれかの所定の順序で行う必要があると解釈するようには意図されていない。請求項または説明において、その工程が、所定の順序に限定されると方法クレームで具体的に記載されていない場合には、いかなる場合も、いかなる点でも、順序を指定するようには意図されていない。工程もしくは作業フローの順序立てに関する論理の問題、文法的構成もしくは句読点から導かれる平易な意味、または本明細書に記載されている態様の数もしくは種類を含め、いずれの考え得る非明示的な解釈基準においても、これは当てはまる。
【0021】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」及び「the」の付された単数形には、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、複数の言及物が含まれる。
【0022】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、列挙されている数値が近似値であり、小さな変動があっても、開示されている実施形態の実施には有意な影響が及ばないことを意味する。数値が用いられている場合、文脈上別段に示されていない限りは、「約」とは、その数値が、±10%変動し得るとともに、開示されている実施形態の範囲内に収まることを意味する。
【0023】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、特定の抗原に特異的に結合するか、または特定の抗原との免疫反応性を有する免疫グロブリン分子を指し、その用語には、そのポリクローナル形態、モノクローナル形態、遺伝子操作形態及び別段の改変形態が含まれ、その改変形態としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディ)が挙げられるが、これらに限らない。
【0024】
本明細書で使用する場合、「その抗原結合断片」という語句は、抗原に結合できる抗体断片を意味する。抗原結合断片としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、scFv-Fc断片、ダイアボディ断片、二重特異性ダイアボディ断片、三重特異性トリアボディ断片、ミニボディ断片、単特異性Fab2断片、二重特異性Fab2断片、三重特異性Fab3断片、ナノボディ断片、IgNAR断片、V-NAR断片、hcIgG断片及びVhH断片が挙げられるが、これらに限らない。
【0025】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」という語句は、ラット抗体またはマウス抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来する可変配列と、ヒト免疫グロブリン定常領域、典型的には、ヒト免疫グロブリンの鋳型から選択した定常領域を有する抗体を指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、「Fv」断片という用語は、標的を認識して結合する完全な部位を含む最小抗体断片である。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが非共有結合した二量体(VH-VL二量体)からなる。この構成では、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、そのVH-VL二量体の表面で標的結合部位を形成する。
【0027】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という語句は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を指し、この語句には、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つ以上のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックであるとともに、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離した抗体が含まれる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」という語句は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体またはその抗原結合断片を含む。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになり、そのCDR領域のすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、そのフレームワーク(FR)領域のすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の部分も含むことができる。
【0029】
本明細書で使用する場合、「~が必要な」という語句は、その「対象」または「患者」において、特定の方法、予防または治療の必要性が特定されていることを意味する。いくつかの実施形態では、その特定は、いずれかの診断手段によることができる。本明細書に記載されている方法、予防及び治療のいずれにおいても、その「対象」または「患者」は、それが必要であることができる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「核酸分子」とは、いずれかの長さのヌクレオチドポリマー形態であり、DNA及び/またはRNAを含んでよく、一本鎖、二本鎖または多重鎖であることができる。核酸の一方の鎖は、その相補体ということもできる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「霊長類化抗体」という語句は、サル可変領域とヒト定常領域を含む抗体を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「調節配列」という語句は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及びその他の発現制御エレメント(ポリアデニル化シグナなど)を含むように意図されている。
【0033】
本明細書で使用する場合、「一本鎖Fv」または「scFv」という用語は、従来型の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(VHドメイン及びVLドメイン)をつなぎ合わせて、一本鎖を形成させた一本鎖Fv抗体を指す。概して、そのscFvが、標的への結合の際に、所望の構造を形成できるように、Fvポリペプチドはさらに、ポリペプチドリンカーをそのVHドメインとVLドメインの間に含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、「対象」及び「患者」という用語は、同義的に用いられている。対象には、哺乳動物を含むいずれの動物も含まれる。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ)、及びヒト以外の霊長類動物(例えばサル)が挙げられるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、対象または患者は、ヒトである。
【0035】
本明細書で使用する場合、「VH」という用語は、例えば、Fv断片、scFv断片またはFab断片の重鎖を含め、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。
【0036】
本明細書で使用する場合、「VL」という用語は、例えば、Fv断片、scFv断片、dsFv断片またはFab断片の軽鎖を含め、抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0037】
本開示は、BAI1タンパク質(G8抗原としても知られる)に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、そのBAI1タンパク質は、MRGQAAAPGPVWILAPLLLLLLLLGRRARAAAGADAGPGPEPCATLVQGKFFGYFSAAAVFPANASRCSWTLRNPDPRRYTLYMKVAKAPVPCSGPGRVRTYQFDSFLESTRTYLGVESFDEVLRLCDPSAPLAFLQASKQFLQMRRQQPPQHDGLRPRAGPPGPTDDFSVEYLVVGNRNPSRAACQMLCRWLDACLAGSRSSHPCGIMQTPCACLGGEAGGPAAGPLAPRGDVCLRDAVAGGPENCLTSLTQDRGGHGATGGWKLWSLWGECTRDCGGGLQTRTRTCLPAPGVEGGGCEGVLEEGRQCNREACGPAGRTSSRSQSLRSTDARRREELGDELQQFGFPAPQTGDPAAEEWSPWSVCSSTCGEGWQTRTRFCVSSSYSTQCSGPLREQRLCNNSAVCPVHGAWDEWSPWSLCSSTCGRGFRDRTRTCRPPQFGGNPCEGPEKQTKFCNIALCPGRAVDGNWNEWSSWSACSASCSQGRQQRTRECNGPSYGGAECQGHWVETRDCFLQQCPVDGKWQAWASWGSCSVTCGAGSQRRERVCSGPFFGGAACQGPQDEYRQCGTQRCPEPHEICDEDNFGAVIWKETPAGEVAAVRCPRNATGLILRRCELDEEGIAYWEPPTYIRCVSIDYRNIQMMTREHLAKAQRGLPGEGVSEVIQTLVEISQDGTSYSGDLLSTIDVLRNMTEIFRRAYYSPTPGDVQNFVQILSNLLAEENRDKWEEAQLAGPNAKELFRLVEDFVDVIGFRMKDLRDAYQVTDNLVLSIHKLPASGATDISFPMKGWRATGDWAKVPEDRVTVSKSVFSTGLTEADEASVFVVGTVLYRNLGSFLALQRNTTVLNSKVISVTVKPPPRSLRTPLEIEFAHMYNGTTNQTCILWDETDVPSSSAPPQLGPWSWRGCRTVPLDALRTRCLCDRLSTFAILAQLSADANMEKATLPSVTLIVGCGVSSLTLLMLVIIYVSVWRYIRSERSVILINFCLSIISSNALILIGQTQTRNKVVCTLVAAFLHFFFLSSFCWVLTEAWQSYMAVTGHLRNRLIRKRFLCLGWGLPALVVAISVGFTKAKGYSTMNYCWLSLEGGLLYAFVGPAAAVVLVNMVIGILVFNKLVSKDGITDKKLKERAGASLWSSCVVLPLLALTWMSAVLAVTDRRSALFQILFAVFDSLEGFVIVMVHCILRREVQDAVKCRVVDRQEEGNGDSGGSFQNGHAQLMTDFEKDVDLACRSVLNKDIAACRTATITGTLKRPSLPEEEKLKLAHAKGPPTNFNSLPANVSKLHLHGSPRYPGGPLPDFPNHSLTLKRDKAPKSSFVGDGDIFKKLDSELSRAQEKALDTSYVILPTATATLRPKPKEEPKYSIHIDQMPQTRLIHLSTAPEASLPARSPPSRQPPSGGPPEAPPAQPPPPPPPPPPPPQQPLPPPPNLEPAPPSLGDPGEPAAHPGPSTGPSTKNENVATLSVSSLERRKSRYAELDFEKIMHTRKRHQDMFQDLNRKLQHAAEKDKEVLGPDSKPEKQQTPNKRPWESLRKAHGTPTWVKKELEPLQPSPLELRSVEWERSGATIPLVGQDIIDLQTEV(配列番号15)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、ヒトBAI1タンパク質におけるエピトープであって、Y83、F135、W415、W418、L420、T424、R432、R434、I458、W473、W476、R545、Y639及びL776というアミノ酸を含むか、またはそれらのアミノ酸からなるエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、ヒトBAI1タンパク質におけるエピトープであって、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片が結合するエピトープは、上記のアミノ酸の少なくとも4~14個、少なくとも4~13個、少なくとも4~12個、少なくとも4~11個、少なくとも4~10個、少なくとも4~9個、少なくとも4~8個、少なくとも4~7個または少なくとも4~6個を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、ヒトBAI1タンパク質におけるエピトープであって、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片が結合するエピトープは、上記のアミノ酸の少なくとも6~14個、少なくとも6~13個、少なくとも6~12個、少なくとも6~11個、少なくとも6~10個、少なくとも6~9個または少なくとも6~8個を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、ヒトBAI1タンパク質におけるエピトープであって、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片が結合するエピトープは、上記のアミノ酸の少なくとも7~14個、少なくとも7~13個、少なくとも7~12個、少なくとも7~11個、少なくとも7~10個または少なくとも7~9個を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、ヒトBAI1タンパク質におけるエピトープであって、F135、W415、W418、L420、T424、R432、R434及びI458というアミノ酸を含むか、またはそれらのアミノ酸からなるエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、ヒトBAI1タンパク質におけるエピトープであって、W415、W418、L420、T424、R432、R434及びI458というアミノ酸を含むか、またはこれらのアミノ酸からなるエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、ヒトBAI1タンパク質におけるエピトープであって、T424、R432、R434及びI458というアミノ酸を含むか、これらのアミノ酸からなるエピトープに結合する。
【0039】
本開示は、ヒトBAI1タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片も提供する。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、3つのVH CDRと3つのVL CDRを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、GYSITSDY(配列番号7)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VH鎖における第1のCDR(VH-CDR1)を含む。いくつかの実施形態では、このVH-CDR1は、1つ、2つもしくは3つの保存的アミノ酸置換を含むか、または1つ、2つもしくは3つの保存的アミノ酸置換からなることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、SYSGS(配列番号8)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VH鎖における第2のCDR(VH-CDR2)を含む。いくつかの実施形態では、このVH-CDR2は、1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換を含むか、または1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換からなることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、AQGYAMDY(配列番号9)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VH鎖における第3のCDR(VH-CDR3)を含む。いくつかの実施形態では、このVH-CDR3は、1つ、2つもしくは3つの保存的アミノ酸置換を含むか、または1つ、2つもしくは3つの保存的アミノ酸置換からなることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、RASQSISDYLH(配列番号10)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VL鎖における第1のCDR(VL-CDR1)を含む。いくつかの実施形態では、このVL-CDR1は、1つ、2つ、3つもしくは4つの保存的アミノ酸置換を含むか、または1つ、2つ、3つもしくは4つの保存的アミノ酸置換からなることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、YASQSIS(配列番号11)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VL鎖における第2のCDR(VL-CDR2)を含む。いくつかの実施形態では、このVL-CDR2は、1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換を含むか、または1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換からなることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、QNGHSFPFT(配列番号12)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VL鎖における第3のCDR(VL-CDR3)を含む。いくつかの実施形態では、このVL-CDR3は、1つ、2つもしくは3つの保存的アミノ酸置換を含むか、または1つ、2つもしくは3つの保存的アミノ酸置換からなることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、GYSITSDY(配列番号7)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VH鎖における第1のCDR(VH-CDR1)と、SYSGS(配列番号8)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VH鎖における第2のCDR(VH-CDR2)と、AQGYAMDY(配列番号9)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VH鎖における第3のCDR(VH-CDR3)と、RASQSISDYLH(配列番号10)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VL鎖における第1のCDR(VL-CDR1)と、YASQSIS(配列番号11)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VL鎖における第2のCDR(VL-CDR2)と、QNGHSFPFT(配列番号12)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる、VL鎖における第3のCDR(VL-CDR3)を含む。いくつかの実施形態では、そのCDRは、本明細書に記載されている保存的アミノ酸置換を有することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、SDVQLQESGPGLVKPSQSLSLTCTVTGYSITSDYAWNWIRQFPGNKLEWMGYISYSGSTSYNPSLKSRISITRDTSKNQFFLQLNSVTTEDTATYYCANAQGYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号1)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%または少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約90%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約92%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約94%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約96%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのVH鎖は、本明細書に記載されているVH CDRのうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、そのVH CDRは、配列番号7、配列番号8及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのVH鎖は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の保存的アミノ酸置換を含むか、また1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の保存的アミノ酸置換からなる。いくつかの実施形態では、そのVH鎖は、CDR以外に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の保存的アミノ酸置換を含むか、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の保存的アミノ酸置換からなる。
【0049】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、DIVMTQSPATLSVTPGDRVSLSCRASQSISDYLHWYQQKSHESPRLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGSDFTLSINSVEPEDVGVYYCQNGHSFPFTFGSGTKLEIK(配列番号4)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4との配列同一性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%または少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4との配列同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4との配列同一性が少なくとも約90%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4との配列同一性が少なくとも約92%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4との配列同一性が少なくとも約94%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4との配列同一性が少なくとも約96%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4との配列同一性が少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのVL鎖は、本明細書に記載されているVL CDRのうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、そのVL CDRは、配列番号10、配列番号11及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのVL鎖は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、そのVL鎖は、CDR以外に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の保存的アミノ酸置換を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVH鎖と、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるVH鎖と、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%または少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖と、配列番号との配列同一性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%または少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖と、配列番号4との配列同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約90%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖と、配列番号4との配列同一性が少なくとも約90%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約92%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖と、配列番号4との配列同一性が少なくとも約92%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約94%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖と、配列番号4との配列同一性が少なくとも約94%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約96%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖と、配列番号4との配列同一性が少なくとも約96%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1との配列同一性が少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVH鎖と、配列番号4との配列同一性が少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるVL鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのVH鎖及びVL鎖は、本明細書に記載されているVH CDR及びVL CDRのうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、そのVH CDRは、配列番号7、配列番号8及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのVL CDRは、配列番号10、配列番号11及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、そのVH鎖及びVL鎖はそれぞれ、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の保存的アミノ酸置換を含むか、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の保存的アミノ酸置換からなることができる。いくつかの実施形態では、そのVH鎖及びVL鎖はそれぞれ、CDR以外に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の保存的アミノ酸置換を含むか、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の保存的アミノ酸置換からなることができる。
【0053】
その抗体またはその抗原結合断片は、いずれかのアイソタイプであることができる。いくつかの実施形態では、その抗体は、IgM抗体またはIgG抗体である。いくつかの実施形態では、その抗体は、IgM抗体である。いくつかの実施形態では、その抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、その抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、そのIgG1抗体は、IgG1 Glm1、IgG1 Glm2、IgG1 Glm3、IgG1 Glm17、IgG1 nGlmI、IgG1 nGlm2またはIgG1 nGlm17というアロタイプ抗体である。いくつかの実施形態では、その抗体は、IgG1 Glm17というアロタイプ抗体である。
【0054】
いくつかの実施形態では、そのバリアントIgG1重鎖は、アロタイプKm1、Km2またはKm3のκ軽鎖と対形成する。いくつかの実施形態では、そのバリアントIgG1重鎖は、λ軽鎖と対形成する。
【0055】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化されており、IgGである。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化されており、IgG1である。
【0056】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、キメラ抗体またはその抗原結合断片である。キメラ抗体を作製する方法は、当該技術分野において知られている(Morrison,Science,1985,229,1202-1207、Oi et al.,BioTechniques,1986,4,214-221、Gillies et al.,J.Immunol.Methods,1985,125,191-202、ならびに米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号及び同第4,816,397号を参照されたい)。
【0057】
いくつかの実施形態では、そのキメラ抗体またはその抗原結合断片は、霊長類化キメラ抗体またはその抗原結合断片である。霊長類化抗体を作製する方法は、当該技術分野において知られている(米国特許第5,658,570号、同第5,681,722号及び同第5,693,780号を参照されたい)。
【0058】
いくつかの実施形態では、そのキメラ抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化抗体またはその抗原結合断片である。ヒト化抗体を作製する方法は、当該技術分野において知られている(Riechmann et al.,Nature,1988,332,323-327、Padlan,Mol.Immunol.,1991,28,489-498、Studnicka et al.,Prot.Eng.,1994,7,805-814、Roguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,1994,91,969-973、欧州特許第239400号、同第592106号及び同第519596号、国際公開第91/09967号、ならびに米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、同第6,180,370号及び同第5,565,332号を参照されたい)。
【0059】
いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、VQLQESGPGLVKPSQSLSLTCTVTGYSITSDYAWNWIRQFPGNKLEWMGYISYSGSTSYNPSLKSRISITRDTSKNQFFLQLNSVTTEDTATYYCANAQGYAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号13)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる重鎖を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%または少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約90%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約92%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約94%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約96%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖を含む。いくつかの実施形態では、その重鎖は、本明細書に記載されているVH CDRのうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、その重鎖CDRは、配列番号7、配列番号8及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、その重鎖は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、その重鎖は、CDR以外に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の保存的アミノ酸置換を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、DIVMTQSPATLSVTPGDRVSLSCRASQSISDYLHWYQQKSHESPRLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGSDFTLSINSVEPEDVGVYYCQNGHSFPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号14)というアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14との配列同一性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%または少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14との配列同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14との配列同一性が少なくとも約90%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14との配列同一性が少なくとも約92%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14との配列同一性が少なくとも約94%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14との配列同一性が少なくとも約96%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14との配列同一性が少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、その軽鎖は、本明細書に記載されているVL CDRのうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、その軽鎖CDRは、配列番号10、配列番号11及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、その軽鎖は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の保存的アミノ酸置換を含むか、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の保存的アミノ酸置換からなる。いくつかの実施形態では、その軽鎖は、CDR以外に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の保存的アミノ酸置換を含むか、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の保存的アミノ酸置換からなる。
【0063】
いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%または少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号14との配列同一性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%または少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号14との配列同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約90%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号14との配列同一性が少なくとも約90%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約92%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号14との配列同一性が少なくとも約92%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約94%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号14との配列同一性が少なくとも約94%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約96%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号14との配列同一性が少なくとも約96%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、そのヒト化抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13との配列同一性が少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号14との配列同一性が少なくとも約98%であるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、その重鎖及び軽鎖は、本明細書に記載されているVH CDR及びVL CDRのうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、そのVH CDRは、配列番号7、配列番号8及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのVL CDRは、配列番号10、配列番号11及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、その重鎖及び軽鎖はそれぞれ、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の保存的アミノ酸置換を含むか、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の保存的アミノ酸置換からなることができる。いくつかの実施形態では、その重鎖及び軽鎖はそれぞれ、CDR以外に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の保存的アミノ酸置換を含むか、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の保存的アミノ酸置換からなることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、完全にヒト化されている。完全な「ヒト」抗体は、ヒト患者の治療処置に望ましいことがある。完全ヒト抗体を作製する方法は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法を含め、当該技術分野において知られている(米国特許第4,444,887号及び同第4,716,111号、ならびに国際公開第98/46645号、同第98/50433号、同第98/24893号、同第98/16654号、同第96/34096号、同第96/33735号及び同第91/10741号を参照されたい)。ヒト抗体は、機能的な内因性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて作製することもできる(国際公開第98/24893号、同第92/01047号、同第96/34096号及び同第96/33735号、ならびに米国特許第5,413,923号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、同第5,885,793号、同第5,916,771号及び同第5,939,598号を参照されたい)。所定のエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイドセレクション」という技法を用いて作製することもできる(Jespers et al.,Biotechnology,1988,12,899-903を参照されたい)。
【0065】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する(すなわち、その結合特異性の一方は、BAI1に対するものであり、もう一方の結合特異性は、細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来のタンパク質、ウイルスによってコードされるエンベロープタンパク質、細菌由来のタンパク質または細菌表面タンパク質などのようないずれかの他の抗原に対するものである)。
【0066】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、誘導体化抗体である。例えば、その誘導体化抗体は、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンドまたはその他のタンパク質への連結などによって改変した抗体であることができる。既知の技法によって、数多くの化学的改変のうちのいずれかを行うことができ、その技法としては、特異的な化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などが挙げられるが、これらに限らない。加えて、その誘導体は、Ambrxの技術を用いるなど、非天然のアミノ酸を1つ以上含むことができる(Wolfson,Chem.Biol.,2006,13,1011-1012を参照されたい)。
【0067】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、グリコシル化を通じて誘導体化されている。適切な2分岐型複合体は、2つのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基、3つのマンノース残基、ならびに2本のアンテナを形成するように、α-6マンノース及びα-3マンノースにβ-1,2結合している2つのGlcNAc残基を有するコア構造で構成されていることができる。1つ以上のフコース(Fuc)残基、ガラクトース(Gal)残基、高マンノースグリカンMan-5またはMan-9残基、バイセクティングGlcNAc残基、及びシアル酸(N-アセチルノイラミン酸(NANA)またはN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)を含む)残基がそのコアに結合していてもよい。N結合型グリコフォームとしては、G0(2分岐型グリコシル化構造のコアを有するタンパク質)、G0F(フコシル化G0)、G0F GlcNAc、G1(ガラクトース残基を1つ有するグリコシル化構造のコアを有するタンパク質)、G1F(フコシル化G1)、G2(ガラクトース残基を2つ有するグリコシル化構造のコアを有するタンパク質)及び/またはG2F(フコシル化G2)を挙げてよい。いくつかの実施形態では、抗BAI1抗体は、G0Fグリカンを有する。
【0068】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、免疫グロブリンの軽鎖遺伝子及び重鎖遺伝子を宿主細胞で組み換え発現させることによって調製できる。抗体を組み換え発現させるには、その抗体の免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片を有する組み換え発現ベクターを1つ以上、宿主細胞にトランスフェクションして、その軽鎖及び重鎖をその宿主細胞で発現させるようにし、任意に、その宿主細胞が培養されている培地に分泌させ、その培地から、その抗体を回収できる。標準的な組み換えDNA法を用いて、抗体の重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子を得て、これらの遺伝子を組み換え発現ベクターに組み込み、そのベクターを宿主細胞に導入することができる(Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Edition,Sambrook,Fritsch and Maniatis(eds.),Cold Spring Harbor,N.Y.,1989、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,Greene Publishing Associates,1989及び米国特許第4,816,397号を参照されたい)。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸分子を生成するには、まず、軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするDNA断片を得る。これらのDNAは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、軽鎖及び重鎖の可変配列をコードする生殖細胞系DNAまたはcDNAを増幅及び改変することによって得ることができる。ヒトの重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、当該技術分野において知られている(“VBASE” human germline sequence database、Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、Tomlinson et al.,J.Mol.Biol.,1992,22T,116-198及びCox et al.,Eur.J.Immunol.,1994,24,827-836を参照されたい)。重鎖または軽鎖の可変領域をコードするDNA断片を合成するとともに、変異誘発の鋳型として使用して、常法の変異誘発法を用いて、本明細書に記載されているようなバリアントを作製することができ、あるいは、そのバリアントをコードするDNA断片を直接合成することができる。
【0070】
本開示は、本開示の抗体またはその抗原結合断片のVH鎖をコードする単離核酸分子であって、TCTGATGTGCAGCTTCAGGAGTCGGGACCTGGCCTGGTGAAACCTTCTCAGTCTCTGTCCCTCACCTGCACTGTCACTGGCTACTCAATCACCAGTGATTATGCCTGGAACTGGATCCGGCAGTTTCCAGGAAACAAACTGGAGTGGATGGGCTACATAAGCTACAGTGGTAGCACTAGCTACAACCCATCTCTCAAAAGTCGAATCTCTATCACTCGAGACACATCCAAGAACCAGTTCTTCCTGCAGTTGAATTCTGTGACTACTGAGGACACAGCCACATATTACTGTGCCAATGCCCAGGGGTATGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA(配列番号2、DNA)またはUCUGAUGUGCAGCUUCAGGAGUCGGGACCUGGCCUGGUGAAACCUUCUCAGUCUCUGUCCCUCACCUGCACUGUCACUGGCUACUCAAUCACCAGUGAUUAUGCCUGGAACUGGAUCCGGCAGUUUCCAGGAAACAAACUGGAGUGGAUGGGCUACAUAAGCUACAGUGGUAGCACUAGCUACAACCCAUCUCUCAAAAGUCGAAUCUCUAUCACUCGAGACACAUCCAAGAACCAGUUCUUCCUGCAGUUGAAUUCUGUGACUACUGAGGACACAGCCACAUAUUACUGUGCCAAUGCCCAGGGGUAUGCUAUGGACUACUGGGGUCAAGGAACCUCAGUCACCGUCUCCUCA(配列番号3、RNA)というヌクレオチド配列を含むか、またはそのヌクレオチド配列からなる核酸分子を提供する。
【0071】
本開示は、本開示の抗体またはその抗原結合断片のVL鎖をコードする単離核酸分子であって、GACATTGTGATGACTCAGTCTCCAGCCACCCTGTCTGTGACTCCAGGAGATAGAGTCTCTCTTTCCTGCAGGGCCAGCCAGAGTATTAGCGACTACTTACACTGGTATCAACAAAAATCACATGAGTCTCCAAGGCTTCTCATCAAATATGCTTCCCAATCCATCTCTGGGATCCCCTCCAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGGTCAGATTTCACTCTCAGTATCAACAGTGTGGAACCTGAAGATGTTGGAGTGTATTACTGTCAAAATGGTCACAGCTTTCCATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAAA(配列番号5、DNA)またはGACAUUGUGAUGACUCAGUCUCCAGCCACCCUGUCUGUGACUCCAGGAGAUAGAGUCUCUCUUUCCUGCAGGGCCAGCCAGAGUAUUAGCGACUACUUACACUGGUAUCAACAAAAAUCACAUGAGUCUCCAAGGCUUCUCAUCAAAUAUGCUUCCCAAUCCAUCUCUGGGAUCCCCUCCAGGUUCAGUGGCAGUGGAUCAGGGUCAGAUUUCACUCUCAGUAUCAACAGUGUGGAACCUGAAGAUGUUGGAGUGUAUUACUGUCAAAAUGGUCACAGCUUUCCAUUCACGUUCGGCUCGGGGACAAAGUUGGAAAUAAAA(配列番号6、RNA)というヌクレオチド配列を含むか、またはそのヌクレオチド配列からなる核酸分子も提供する。
【0072】
これらのDNA断片は、標準的な組み換えDNA技法によってさらに操作して、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子またはscFv遺伝子に変換できる。これらの操作では、別のタンパク質(抗体定常領域またはフレキシブルリンカーなど)をコードする別のDNA断片に、VHまたはVLをコードするDNA断片を機能可能に連結する。「機能可能に連結する」という語句は、この文脈で使用する場合、その2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままとなるように、その2つのDNA断片を連結することを意味するように意図されている。
【0073】
そのVH領域をコードする単離DNA分子は、重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3及び任意にCH4)をコードする別のDNA分子に、そのVHをコードするDNAを機能可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換できる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において知られており(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)、これらの領域を含むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。その重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域であることができる。いくつかの実施形態では、その重鎖定常領域は、IgG1またはIgG4の定常領域である。Fab断片の重鎖遺伝子では、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に、そのVHをコードするDNAを機能可能に連結できる。
【0074】
VL領域をコードする単離DNAは、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に、そのVLをコードするDNAを機能可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)に変換できる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において知られており(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition(U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)を参照されたい)、これらの領域を含むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。その軽鎖定常領域は、κ定常領域またはλ定常領域であることができる。いくつかの実施形態では、その軽鎖定常領域は、κ定常領域である。scFv遺伝子を作製するには、フレキシブルリンカーをコードする別の断片、例えば(Gly4Ser)3というアミノ酸配列をコードする別の断片に、VH及びVLをコードするDNA断片を機能可能に連結して、VL領域及びVH領域がフレキシブルリンカーによって連結された連続的な一本鎖タンパク質として、そのVH配列及びVL配列を発現できるようにする(Bird et al.,Science,1988,242,423-426、Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1988,85,5879-5883及びMcCafferty et al.,Nature,1990,348,552-554を参照されたい)。
【0075】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を発現させるには、部分的または完全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNA分子(本明細書に記載されているようにして入手する)を発現ベクターに挿入して、その遺伝子が、転写制御配列及び翻訳制御配列に機能可能に連結されるようにできる。この文脈においては、「機能可能に連結される」という語句は、そのベクター内の転写制御配列及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するという想定機能を果たすように、その抗体遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味するように意図されている。その発現ベクター及び発現制御配列は、使用する発現宿主細胞と適合するように選択できる。その抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、別々のベクターに挿入でき、より典型的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入する。
【0076】
その抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片上の相補的な制限部位とベクターとのライゲーション、または制限部位が存在しない場合には、平滑末端ライゲーションなど)によって、発現ベクターに挿入できる。軽鎖配列または重鎖配列の挿入前に、その発現ベクターはすでに、抗体定常領域配列を有することができる。例えば、VH配列及びVL配列を完全長抗体遺伝子に変換するアプローチの1つは、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をすでにコードする発現ベクターに、それらを挿入して、そのVHセグメントが、そのベクター内のCHセグメント(複数可)に機能可能に連結され、そのVLセグメントが、そのベクター内のCLセグメントに機能可能に連結されるようにすることである。これに加えてまたはこの代わりに、その組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促すシグナルペプチドをコードできる。その抗体鎖遺伝子は、そのベクターにクローニングして、そのシグナルペプチドが、その抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるようにできる。そのシグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種のシグナルペプチド(非免疫グロブリンタンパク質に由来するシグナルペプチドなど)であることができる。
【0077】
その組み換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子に加えて、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有することができる。このような調節配列は、例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185(Academic Press,San Diego,Calif.,1990)に記載されている。調節配列の選択を含め、発現ベクターの設計が、トランスフォーメーションする宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどのような要因に左右されることがあるのは、当業者には明らかであろう。哺乳動物宿主細胞での発現に適する調節配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーター及び/またはエンハンサー(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)に由来するプロモーター及び/またはエンハンサー(SV40プロモーター/SV40エンハンサーなど)、アデノウイルスに由来するプロモーター及び/またはエンハンサー(アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)など)、ならびにポリオーマに由来するプロモーター及び/またはエンハンサーのように、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメントが挙げられる。ウイルス調節エレメント及びその配列は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第5,168,062号、同第4,510,245号及び同第4,968,615号を参照されたい)。
【0078】
本開示の組み換え発現ベクターは、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(複製起点など)及び選択可能なマーカー遺伝子のような追加の配列も有することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、そのベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号及び同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、そのベクターが導入された宿主細胞に、G418、ピューロマイシン、ブラストサイジン、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートのような薬物に対する耐性を付与する。適切な選択可能なマーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(DHFR-宿主細胞において、メトトレキサート選択/増幅で使用する場合)及びneo遺伝子(G418選択の場合)が挙げられる。軽鎖及び重鎖の発現のために、その重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクター(複数可)を宿主細胞に、標準的な技法によってトランスフェクションする。「トランスフェクション」という用語の各種形態には、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどのように、外因性DNAを原核宿主細胞または真核宿主細胞に導入するのに一般的に用いられている広範な技法が含まれるように意図されている。
【0079】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、原核宿主細胞または真核宿主細胞のいずれかで発現させることができる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片の発現は、正しく折り畳まれ、かつ免疫学的に活性な抗体が分泌されるように、哺乳動物宿主細胞のような真核細胞で行うことができる。本開示の組み換え抗体またはその抗原結合断片を発現させるための例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(DHFR選択可能なマーカー(Kaufman,Mol.Biol.,1982,159,601-621を参照されたい)とともに用いるDHFR CHO細胞(Urlaub,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1980,77,4216-4220を参照されたい)を含む)、NS0ミエローマ細胞、COS細胞、293細胞及びSP2/0細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するときには、その抗体は、その抗体を宿主細胞で発現させるか、またはその宿主細胞を成長させる培養培地に、その抗体を分泌させるのに十分な期間、その宿主細胞を培養することによって産生させる。抗体またはその抗原結合断片は、標準的なタンパク質精製法を用いて、培養培地から回収できる。宿主細胞を用いて、インタクト抗体の一部(Fab断片またはscFv分子など)を産生させることもできる。上記手順の変形形態も本開示の範囲内であることは理解される。例えば、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片の軽鎖または重鎖のいずれか(ただし、両方ではない)をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクションするのが望ましいことがある。
【0080】
組み換えDNA技術を用いて、BAI1に結合するためには必要ではない軽鎖及び重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAの一部または全部を除去することもできる。このようなトランケート型DNA分子から発現する分子も、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片に含まれる。
【0081】
加えて、標準的な化学的架橋法によって、本開示の抗体を第2の抗体に架橋することによって、一方の重鎖及び軽鎖が、本開示の抗体であり、もう一方の重鎖及び軽鎖が、BAI1以外の抗原に特異的である2官能性抗体またはその抗原結合断片を作製できる。2官能性抗体は、2官能性抗体をコードするように操作した核酸を発現させることによっても作製できる。
【0082】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を組み換え発現させる際には、宿主細胞に、本開示の2つの発現ベクター、すなわち、重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクター、及び軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクターをコトランスフェクションできる。典型的には、その2つのベクターはそれぞれ、別々の選択可能なマーカーを含む。あるいは、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターを使用できる。
【0083】
その抗体またはその抗原結合断片の部分のうち、所望のCDR配列を有する部分を1つ以上コードする核酸を作製したら、さらなる改変をそのコード配列に導入して、例えば、異なるCDR配列を有する抗体、Fc受容体に対する親和性が低減された抗体、または異なるサブクラスの抗体をコードする核酸を作製できる。
【0084】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、化学合成(Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,1984 The Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.に記載されている方法など)によっても作製できる。無細胞プラットフォームを用いて、バリアント抗体またはその抗原結合断片も作製できる(Chu et al.,Biochemia,2001,2を参照されたい)。
【0085】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を組み換え発現によって産生させたら、それらは、免疫グロブリン分子の精製用として当該技術分野において知られているいずれかの方法によって、例えば、クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、特に、プロテインA、プロテインGもしくはプロテインL選択に対する親和性によるクロマトグラフィー、及びサイジングカラムクロマトグラフィーなど)、遠心分離、溶解度差によって、またはタンパク質を精製するためのいずれかの他の標準的な技法によって精製できる。さらに、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載されているか、または別段に当該技術分野において知られている異種のポリペプチド配列に融合して、精製を促進できる。
【0086】
その抗体またはその抗原結合断片は、単離したら、所望の場合、高速液体クロマトグラフィー(Fisher,Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology(Work and Burdon,eds.,Elsevier,1980)を参照されたい)またはSuperdex(商標)75カラム(Pharmacia Biotech AB,Uppsala,Sweden)でのゲルろ過クロマトグラフィーによるなどして、さらに精製できる。
【0087】
本開示は、本明細書に記載されている核酸分子のいずれかを含むベクターを提供する。本開示は、そのベクターでトランスフォーメーションした原核宿主細胞も提供する。本開示は、そのベクターでトランスフォーメーションした真核宿主細胞も提供する。いくつかの実施形態では、その真核宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。
【0088】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、エフェクター部分にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、いずれかの種類の分子をその抗体またはその抗原結合断片に共有結合させることによって改変されており、その共有結合により、BAI1への結合が妨げられないようになっている。いくつかの実施形態では、そのエフェクター部分は、検出可能な標識、細胞傷害剤、化学療法剤または核酸分子である。そのエフェクター部分は、抗腫瘍剤、薬物、毒素、生物活性タンパク質(酵素など)、別の抗体または抗体断片、合成ポリマー、天然ポリマー、核酸分子、放射性核種(放射性ヨウ素など)、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子、あるいはレポーター基(蛍光化合物またはNMR分光法もしくはESR分光法によって検出できる化合物など)であることもできる。
【0089】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、特定の生体応答を改変するために、細胞傷害剤、放射性核種または薬物部分にコンジュゲートされていることができる。そのエフェクター部分は、例えば、毒素(アブリン、リシンA、サポリン、シュードモナスエキソトキシン、ジフテリア毒素、エチジウムブロマイド、PE40、PE38、ゲロニン、RNAse、ペプチド核酸(PNA)、1型もしくは2型のリボソーム不活性化タンパク質(RIP)、ポークウイード抗ウィルスタンパク質(PAP)、ブリオジン、モモルジン、化学療法剤及びブーガニンなど)、シグナル伝達分子(α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子もしくは組織プラスミノーゲンアクチベーターなど)、血栓剤もしくは血管新生阻害剤(アンギオスタチンもしくはエンドスタチンなど)、またはサイトカインもしくは成長因子(インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)もしくは神経成長因子(NGF)など)といった生物応答修飾剤のようなタンパク質またはポリペプチドであることができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、その細胞傷害剤は、小分子、プロドラッグ、メイタンシノイドまたは毒素である。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、抗体またはその抗原結合断片1個あたりに3~5個のメイタンシノイド分子を含む。いくつかの実施形態では、そのメイタンシノイドは、その抗体またはその抗原結合断片に、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)及びスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートから選択した化学リンカーによってコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、その細胞傷害剤は、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールまたはピューロマイシンである。
【0091】
いくつかの実施形態では、その検出可能な標識は、放射性化合物、蛍光化合物、発色団、酵素、イメージング剤、金属イオンまたは基質である。いくつかの実施形態では、蛍光部分としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリンなどが挙げられるが、これらに限らない。有用な酵素標識としては、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0092】
いくつかの実施形態では、そのエフェクター部分は、代謝拮抗剤(メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン及び5-フルオロウラシル、デカルバジンなど)、アルキル化剤(メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC5、ならびにcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチンなど)、アントラサイクリン(ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)及びドキソルビシンなど)、抗生剤(ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシンもしくはデュオカルマイシンなど)、または抗有糸分裂剤(ビンクリスチン及びビンブラスチンなど)である。
【0093】
いくつかの実施形態では、その放射性核種は、13N、18F、32P、64Cu、66Ga、67Ga、68Ga、67Cu、77Br、80mBr、82Rb、86Y、90Y、95Ru、97Ru、99mTc、103Ru、105Ru、111In、113mIn、113Sn、121mTe、122mTe、125mTe、123I、124I、125I、126I、131I、133I、165Tm、167Tm、168Tm、177Lu、186Re、188Re、195mHg、211At、212Bi、213Bi及び225Acであるが、これらに限らない。
【0094】
いくつかの実施形態では、その化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ツニカマイシン、オリゴマイシン、ボルテゾミブ、MG132、5-フルオロウラシル、ソラフェニブ、フラボピリドール、ゲムシタビン、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、マイトマイシン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、ダカルバジン、プロカルバジン、エトポシド、カンパテシン、ブレオマイシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ジスタマイシンA、エチジウム、ネトロプシン、オーリスタチン、アムサクリン、プロジギオシン、ボルテゾミブ、ピベンジモール、トマイマイシン、デュオカルマイシンSA、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、CPT-11、グリーベック、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、ラパチニブ、ナビトクラックスまたはレゴラフェニブである。
【0095】
いくつかの実施形態では、その核酸分子は、1層の核酸キャリア、1.5層の核酸キャリア、2層の核酸キャリア、2.5層の核酸キャリアまたは3層の核酸キャリア(例えば、国際公開第17/143156号及び同第17/143171号に開示されているものなど)である。
【0096】
このようなエフェクター部分を抗体にコンジュゲートする技法は、当該技術分野において周知である(Hellstrom et al.,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.のページ623~53(Robinson et al.,eds.,1987))、Thorpe et al.,Immunol.Rev.,1982,62,119-58及びDubowchik et al.,Pharmacology and Therapeutics,1999,83,67-123を参照されたい)。
【0097】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、共有結合(ペプチド結合)によって、その抗体のN末端、C末端または内部で、別のタンパク質のアミノ酸配列(またはその一部、例えば、そのタンパク質の部分のうち、少なくとも10アミノ酸、20アミノ酸または50アミノ酸の部分)に融合できる。その抗体またはその抗原結合断片は、その抗体の定常ドメインのN末端で、他のタンパク質に連結できる。例えば、国際公開第86/01533号及び欧州特許第0392745号に記載されているように、組み換えDNA手順を用いて、このような融合を行うことができる。いくつかの実施形態では、そのエフェクター部分は、in vivo半減期を延長し、及び/または抗体を上皮バリアに通過させて免疫システムに送達するのを増強することができる。このタイプの適切なエフェクター部分の例としては、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質またはアルブミン結合化合物(国際公開第2005/117984号に記載されているものなど)が挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、小分子毒素にコンジュゲートされていることができる。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、ドラスタチン、またはオーリスタチンのようなドラスタチンペプチドアナログまたは誘導体(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号を参照されたい)にコンジュゲートされていることができる。そのドラスタチンまたはオーリスタチンという薬物部分は、その抗体に、そのN末端、C末端または内部を通じて結合されていてもよい(国際公開第02/088172号を参照されたい)。例示的なオーリスタチンの実施形態としては、米国特許第7,498,298号(リンカー、ならびにリンカーにコンジュゲートされたモノメチルバリン化合物(MMAE及びMMAFなど)の調製方法を開示している)に開示されているように、N末端に連結されたモノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDFが挙げられる。
【0099】
抗体またはその抗原結合断片は、標的化送達用のリポソームにもコンジュゲートされていることができる(Park et al.,Adv.Pharmacol.,1997,40,399-435及びMarty et al.,Methods Molec.Med.,2004,109,389-401を参照されたい)。
【0100】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合されていることができる。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片及びPEG部分は、その抗体またはその抗原結合断片に位置するいずれかの利用可能なアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基、例えば、いずれかの遊離なアミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を通じて結合されていることができる。このようなアミノ酸は、その抗体またはその抗原結合断片に、天然の状態で存在することもできるし、または組み換えDNA方法を用いて操作して、断片にすることもできる(米国特許第5,219,996号を参照されたい)。複数の部位を用いて、2つ以上のPEG部分を結合できる。PEG部分は、その抗体またはその抗原結合断片に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を通じて、共有結合できる。チオール基を結合位置として用いる場合、適切に活性化されたエフェクター部分、例えば、マレイミド及びシステイン誘導体のようなチオール選択的な誘導体を使用できる。
【0101】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、PEG化されている修飾Fab’断片を含むことができる。そのPEG部分は、そのヒンジ領域内のシステインに結合されていることができる。いくつかの実施形態では、そのPEG修飾Fab’断片は、修飾ヒンジ領域における1つのチオール基に共有結合されたマレイミド基を有する。リシン残基が、そのマレイミド基に共有結合されていることができ、そのリシン残基上のアミン基のそれぞれは、分子量がおよそ20,000Daであるメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーに結合されていることができる。したがって、そのFab’断片に結合されたPEGの総分子量は、およそ40,000Daであることができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、scFv-Fc断片、ダイアボディ断片またはミニボディ断片であることができる。いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、Fab断片であることができる。いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、F(ab’)2断片であることができる。いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、Fv断片であることができる。いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、scFv断片であることができる。いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、scFv-Fc断片であることができる。いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、ダイアボディ断片であることができる。いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、ミニボディ断片であることができる。
【0103】
本開示は、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、等張化剤、界面活性剤、保存剤及び/またはpHが約4.0~約8.0の緩衝系をさらに含む。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、本明細書に記載されている併用治療剤のような追加の治療剤を1つ以上さらに含む。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、液体医薬組成物である。
【0104】
いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を1回あたりの所定量含む単位用量形態で提供できる。その医薬組成物で用いる薬学的に許容される担体は、治療する状態または投与経路に応じて、広範な形態を取ることができる。
【0105】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物は、所望の純度であるその抗体またはその抗原結合断片と、例えば、緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張化剤、非イオン性洗浄剤、抗酸化剤及びその他の種々の添加剤といった、当該技術分野において典型的に用いられる任意の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(本明細書では、これらのすべてを「担体」という)とを混合することによって、保存用に、凍結乾燥製剤または水溶液として調製できる。
【0106】
緩衝剤は、pHを生理的条件に近づける範囲に保つのを助ける。緩衝剤は、約2mM~約50mMの範囲の濃度で存在できる。本明細書に記載されている医薬組成物で用いるのに適する緩衝剤としては、有機酸及び無機酸の両方、ならびにそれらの塩、例えば、クエン酸緩衝剤(クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝剤(コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝剤(酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝剤(フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝剤(グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸緩衝剤(シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸緩衝剤(乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、及び酢酸緩衝剤(酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)を挙げることができる。加えて、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤及びトリメチルアミン塩(トリスなど)を使用できる。
【0107】
保存剤は、微生物の成長を低減するために、その医薬組成物に加えることができ、約0.2%~約1%(w/v)の範囲の量で加えることができる。本明細書に記載されている医薬組成物とともに用いるのに適する保存剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム(塩化物、臭化物及びヨウ化物など)、塩化ヘキサメトニウム、アルキルパラベン(メチルパラベンまたはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール及び3-ペンタノールが挙げられるが、これらに限らない。
【0108】
等張化剤(「安定剤」として知られることもある)は、液体組成物の等張性を確保するために加えることができ、等張化剤としては、多価糖アルコール、例えば、三価以上の糖アルコール(グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールなど)が挙げられる。安定剤とは、機能が、増量剤から、治療剤を可溶化するか、または変性もしくは容器壁への付着を防ぐのを助ける添加剤までに及ぶことができる広範なカテゴリーの賦形剤を指す。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上に列挙したもの)、アミノ酸(アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなど)、有機糖または糖アルコール(イノシトールのようなシクリトールを含め、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロールなど)、ポリエチレングリコール、アミノ酸ポリマー、含硫還元剤(尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウムなど)、低分子量ポリペプチド(10残基以下のペプチドなど)、タンパク質(ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、単糖(キシロース、マンノース、フルクトース、グルコースなど)、二糖(ラクトース、マルトース、スクロースなど)、三糖(ラフィノースなど)、ならびに多糖(デキストランなど)であることができる。安定剤は、1重量部の活性タンパク質あたり約0.1~約10,000重量部の範囲で存在できる。
【0109】
非イオン性の界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても知られる)も、本発明の抗体またはその抗原結合断片を可溶化するのを助けるとともに、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を攪拌誘発性の凝集から保護し、また、タンパク質を変性させずに、その製剤をせん断面応力に暴露させるために、医薬組成物に加えることができる。適切な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、80など)、ポロキサマー(184、188など)、プルロニックポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(商標)-20、TWEEN(商標)-80など)が挙げられる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mL~約1.0mg/mL、例えば、約0.07mg/mL~約0.2mg/mLの範囲で存在できる。
【0110】
増量剤(デンプンなど)、キレート剤(EDTAなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸、メチオニン及びビタミンEなど)、ならびに共溶媒のような追加の賦形剤も、その医薬組成物に加えることができる。
【0111】
本開示は、本明細書に記載されている抗体コンジュゲートを含め、本発明の抗体またはその抗原結合断片を含む医薬キットも提供する。その医薬キットは、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片(凍結乾燥形態または水溶液のいずれかなど)と、下記の併用治療剤のうちの1つ以上と、その抗体またはその抗原結合断片を投与するための器具(ペン、ニードル及び/またはシリンジなど)と、その抗体が凍結乾燥形態である場合には、その抗体またはその抗原結合断片を再懸濁させるための、医薬品グレードの水または緩衝液とを含むパッケージであることができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片の各単位用量は、別々に包装されており、キットは、1回分以上の単位用量(2回分の単位用量、3回分の単位用量、4回分の単位用量、5回分の単位用量、8回分の単位用量、10回分以上の単位用量など)を含むことができる。いくつかの実施形態では、その1回分以上の単位用量はそれぞれ、シリンジまたはペンに収容されている。
【0113】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片(抗体コンジュゲートを含む)を含む診断キットも、本明細書に含まれる。その診断キットは、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片(凍結乾燥形態または水溶液のいずれかなど)と、診断アッセイを行うのに有用な1つ以上の試薬を含むパッケージであることができる。その抗体またはその抗原結合断片が酵素で標識されている場合には、そのキットは、その酵素が必要とする基質及び補因子(検出可能な発色団またはフルオロフォアをもたらす基質前駆物質など)を含むことができる。加えて、安定剤、緩衝液(ブロック緩衝液または溶解緩衝液など)などのような他の添加剤を含めることができる。いくつかの実施形態では、診断キットに含まれる抗体またはその抗原結合断片は、固体表面に固定化されていることもできるし、または抗体もしくはその抗原結合断片を固定化できる固体表面(スライドもしくはプレートなど)が、そのキットに含まれている。その各種試薬の相対量を変更して、そのアッセイの感度を実質的に最適化する、試薬溶液中の濃度をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片及び1つ以上の試薬は、溶解させたときに、濃度が適切である試薬溶液をもたらす賦形剤を含む乾燥粉末として、通常、凍結乾燥粉末として(個別にまたは組み合わせて)供給できる。
【0114】
本開示は、BAI1発現細胞の検出方法であって、その細胞と、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を接触させることと、その抗体またはその抗原結合断片を検出することを含む方法も提供する。いくつかの実施形態では、その細胞は、ヒトから得た生体試料に存在し、その細胞と、その抗体またはその抗原結合断片をin vitroで接触させる。いくつかの実施形態では、その細胞は、ヒトに存在し、その細胞と、その抗体またはその抗原結合断片をin vivoで接触させる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、BAI1に対する結合親和性が高い。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、会合速度定数(kon値もしくはkA値)、解離速度定数(koff値もしくはkD値)、親和性定数(KA値)、解離定数(KD値)及び/またはIC50値が特定の値である。
【0116】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも約1010M-1、少なくとも約4×1011M-1、少なくとも約1011M-1、少なくとも約4×1012M-1、少なくとも約1012M-1、少なくとも約4×1013M-1、少なくとも約1013M-1、少なくとも約4×1014M-1、少なくとも約1014M-1、少なくとも約4×1015M-1もしくは少なくとも約1015M-1のKA(kon/koff)、または上記値のいずれかの組み合わせを限界値とするいずれかの範囲(約4×1011M-1~約4×1013M-1もしくは約4×1012M-1~約4×1015M-1など)のKAで、BAI1に結合する。
【0117】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、約10-10M以下、約4×10-11M以下、約10-11M以下、約4×10-12M以下、約10-12M以下、約4×1013M以下、約10-13M以下、約4×1014M以下、約10-14M以下、約4×10-15M以下もしくは約10-15M以下のKD(koff/kon)、または上記値のいずれかの組み合わせを限界値とするいずれかの範囲(約4×10-11M~約4×10-13Mもしくは約4×10-12M~約4×10-15Mなど)のKDで、BAI1に結合する。
【0118】
いくつかの実施形態では、そのKD(koff/kon)値は、ELISA、等温滴定熱測定(ITC)、蛍光偏光アッセイまたはいずれかの他のバイオセンサー(BIAcoreなど)のような、当該技術分野において周知のアッセイによって求める。
【0119】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、BAI1に結合し、約0.02nM未満、約0.01nM未満、約0.005nM未満、約0.002nM未満、約0.001nM未満、約5×10-4nM未満、約2×10-4nM未満、約1×10-4nM未満、約5×10-5nM未満、約2×10-5nM未満、約1×10-4nM未満、約5×10-6nM未満、約2×10-6nM未満、約1×10-6nM未満、約5×10-7nM未満、約2×10-7nM未満もしくは約1×10-7nM未満のIC50、または上記値のいずれかの組み合わせを限界値とするいずれかの範囲(約0.02nM~約2×10-5nMもしくは約5×10-5nM~約1×10-7nMなど)のIC50で、BAI1とそのリガンドとの結合を阻害する。そのIC50は、ELISAなど、当該技術分野において周知の方法に従って測定できる。
【0120】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、ビオチン化、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはいずれかの他の検出可能な部分(上記のようなものを含む)によるなどして修飾した抗体も含め、診断目的で使用することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片を用いて、in vitro及びin vivoの両方での診断方法を含め、BAI1を精製または検出できる。例えば、その抗体またはその抗原結合断片は、生体試料中のBAI1のレベルを定性的及び定量的に測定するために、または動物におけるBAI1の位置、量、挙動及び/または類似のものを特定するために、イムノアッセイで用いることができる。例えば、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を使用した、BAI1レベルの測定を用いて、例えば、1)患者において、がんを発現するリスクの上昇を診断もしくは判定し、2)腫瘍のステージ及びグレードを含む、患者の予後(特に、そのがんが転移性であるか、転移性の可能性が高いか)及び/またBAI1療法に対するその潜在的な感受性を判定し、3)腫瘍の起源を判定し、及び/または4)患者の治療の有効性を判断することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は例えば、医薬剤がBAI1遺伝子産物の発現及び/または活性に及ぼす作用の評価のために、化合物スクリーニングアッセイと併せて使用できる。加えて、その抗体またはその抗原結合断片は、例えば、通常のBAI1及び/または操作したBAI1の発現のトランスフェクションの成功を評価するために、遺伝子療法の技法と併せて使用できる。
【0123】
本開示は、神経疾患の診断方法であって、神経組織または肺、肝臓、腎臓、脾臓などのような、CNS以外の標的器官と関連するいずれかの組織で発現したBAI1の量または活性を検出することを含む方法も提供する。その診断方法では、診断剤にコンジュゲートした抗体またはその抗原結合断片を用いることができる。その抗体またはその抗原結合断片を診断的に使用して、例えば、特定の細胞、組織または血清におけるBAI1の発現を検出するか、または例えば、特定の治療レジメンの有効性を求めるために、臨床試験手順の一部として、免疫応答の発現もしくは進行をモニタリングすることができる。検出は、その抗体またはその抗原結合断片を検出可能な物質に結合することによって容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、各種酵素、補欠分子族、蛍光物質(フルオレセイン及びローダミン、ならびにそれらの誘導体など)、発光物質、生物発光物質、光学剤(ポルフィリン、アントラキノン、アントラピラゾール、ペリレンキノン、キサンテン、シアニン、アクリジン、フェノキサジン及びフェノチアジンの誘導体など)、放射性物質、各種ポジトロン断層撮影法を用いる陽電子放出金属、非放射性の常磁性金属イオン(Gd(III)、Eu(III)、Dy(III)、Pr(III)、Pa(IV)、Mn(II)、Cr(III)、Co(III)、Fe(III)、Cu(II)、Ni(II)、Ti(III)及びV(IV)など)が挙げられるが、これらに限らない。その検出可能な物質は、当該技術分野において知られている技法を用いて、その抗体またはその抗原結合断片に直接、または中間体(例えば、当該技術分野において知られているリンカーなど)を通じて間接的に結合またはコンジュゲートできる。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼなど。米国特許第4,737,456号を参照されたい)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)のようなペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、単糖オキシダーゼ(グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなど)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。適切な補欠分子族の複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられるが、これらに限らない。適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられるが、これらに限らない。発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられるが、これらに限らない。適切な放射性物質の例としては、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられるが、これらに限らない。
【0124】
本開示は、細胞上でのBAI1の発現を検出する方法であって、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片(任意に、検出可能な部分にコンジュゲートされている)の1つ以上を用いて、患者に由来する生体試料を接触させることと、その試料が、BAI1発現に関して陽性であるか否か、またはその試料において、コントロール試料と比べて、発現が変化しているか(減少もしくは増加するか)を検出することを含む方法も提供する。その生体試料としては、様々な組織の生検標本を挙げてよく、その組織としては、皮膚、筋肉、乳房、前立腺、子宮頸、卵巣、脳、精巣及び肺が挙げられる。生体試料の細胞の例としては、腫瘍細胞、皮膚細胞、筋肉細胞、血液細胞、卵巣細胞、脳細胞、前立腺細胞、乳房細胞、精巣細胞、子宮頸細胞及び肺細胞が挙げられる。その生体試料は、生体液であってもよい。
【0125】
生体試料にBAI1発現細胞が存在するのは、がんが存在することを示し、特に、正常な健常対象の量よりも多い量で存在するときには、転移を示す場合がある。患者、特に、治療を受けている患者において、時間の経過とともに、BAI1発現細胞が失われていることは、寛解(すなわち、治療の成功)を示す一方で、治療を受けている患者において、BAI1発現細胞レベルに変化がないことは、療法に対する耐性があることを示すとともに、異なる治療策を採用し得ることを示す。同様に、患者において、時間の経過とともにBAI1発現細胞が増加することは、再発を示す場合がある。加えて、本明細書に記載されているイメージング技法を用いて、腫瘍のサイズをモニタリングして、治療の有効性を判断してよい。いくつかの実施形態では、他のがん診断アッセイを行って、本明細書に記載されている方法によって得られた結果を確認することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、生体試料(腫瘍試料など)を対象から得て、BAI1発現細胞の存在を求めることができる。BAI1発現細胞の数は、腫瘍グレードと相関し得る。いくつかの実施形態では、生体試料中のBAI1発現細胞の数を、健常な個体から得た対応する生体試料中のBAI1発現細胞の数と比較して、その腫瘍内のBAI1発現細胞の調節を判断する。腫瘍を含む対象を医薬剤で治療して、BAI1発現細胞の活性を調節して、正常な健常レベルにすることができる。
【0127】
本発明の方法を用いて診断できる疾患としては、グリオーマ(グリオブラストーマ)、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、血管腫、類表皮腫、肉腫を含む原発性脳腫瘍のような神経癌、及び他の腫瘍源からの頭蓋内転移が挙げられるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を用いて、多形性グリオブラストーマ(GBM)を診断できる。
【0128】
本開示は、BAI1を発現しているがんを治療する方法であって、その方法が必要なヒト患者に、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法も提供する。いくつかの実施形態では、その方法は、固形腫瘍のあるヒト患者に、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片をある量で投与して、治療効果をもたらすことを伴う。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、患者に、経口経路、経皮経路、皮下経路、鼻腔内経路、静脈内経路、動脈内経路、筋肉内経路、眼内経路、局所経路、局部経路、髄腔内経路、脳室内経路、脊髄内経路及び頭蓋内経路のような様々な経路によって投与できる。いずれかの所定のケースでは、最も適切な投与経路は、特定の抗体、対象、疾患の性質及び重症度、ならびに対象の身体状態によって決まることになる。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、水溶液として調合できる。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、静脈内投与または頭蓋内投与する。
【0130】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を用いて、BAI1を発現する様々な新生物を治療できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を用いて、骨格筋腫瘍及び皮膚腫瘍の特性を有する肉腫など、BAI1を発現しているがんを治療できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を用いて、患者において、脳腫瘍または小さな脳病変(微小転移巣など)といった、BAI1を発現する神経癌を治療できる。いくつかの実施形態では、BAI1を発現しているがんは、神経癌である。いくつかの実施形態では、その神経癌は、原発性脳腫瘍、グリオブラストーマ、グリオーマ、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、血管腫、類表皮腫、肉腫、または他の腫瘍源からの頭蓋内転移である。いくつかの実施形態では、その神経癌は、グリオブラストーマである。いくつかの実施形態では、そのグリオブラストーマは、多形性グリオブラストーマ(GBM)である。
【0131】
いくつかの実施形態では、BAI1を発現する脳腫瘍は、GBM腫瘍開始細胞を含むGBM腫瘍である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片で治療することにより、GBM腫瘍開始細胞の増殖が阻害される。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片はさらに、GBM腫瘍開始細胞の自己複製を阻害する。細胞の増殖及び/または自己複製の阻害により、疾患の徴候または症状が改善されることがある。例えば、このような療法により、生存率(全生存率及び/または無増悪生存率)が改善されることがあり、及び/または客観的臨床奏効(部分奏効もしくは完全奏効)に至ることがある。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、GBM腫瘍細胞によって取り込まれ、その結果、その抗体またはその抗原結合断片が結合するGBM腫瘍細胞の殺傷における、その抗体またはその抗原結合断片の治療効力が向上する。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、BAI1の生物学的活性のアンタゴニストとして機能し、加えて、異常なBAI1活性の阻害方法として使用できる。
【0132】
いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片は、がん及び良性腫瘍を含め、BAI1を発現する非神経腫瘍の治療に有用である。本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片による治療に応答しやすいがんとしては、BAI1を過剰発現するがんが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片による治療に応答しやすいがんとしては、上皮細胞がんが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片による治療に応答しやすいがんとしては、乳癌、卵巣癌、肺癌、結腸直腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頸部癌、卵巣癌、膵臓癌、皮膚癌、口腔癌、食道癌、膣癌、子宮頸癌、脾臓癌、精巣癌、胸腺癌、頭頸部癌及び結腸直腸癌が挙げられるが、これらに限らない。そのがんは、新たに診断されたものでも、未治療のものであってもよく、再発がん、難治性がんもしくは再発した難治性がん、または固形腫瘍の転移性形態であってもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、BAI1を発現する血液悪性腫瘍の治療で用いることができ、その悪性腫瘍としては、骨髄腫(多発性骨髄腫など)、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症及びマントル細胞リンパ腫など)、白血病(慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病など)、ならびに骨髄異形成症候群が挙げられるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、その方法は、治療効果をもたらすために、血液悪性腫瘍であるヒト患者に、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片の投与を1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、1カ月後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、2カ月後または3カ月後に反復する。その反復投与は、同じ用量または異なる用量での投与であることができる。その投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回以上反復できる。例えば、ある特定の投与レジメンに従って、患者は、6カ月または1年以上のような長期間にわたって抗BAI1療法を受けることができる。本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片の、患者への投与量は、治療有効量である。本明細書で使用する場合、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片の「治療有効」量は、1回用量として、または治療レジメンにわたって(1週間、2週間、3週間、1カ月、3カ月、6カ月、1年以上にわたってなど)投与できる。例示的な治療レジメンは、本明細書にさらに説明されている。疾患の治療には、いずれかの臨床病期もしくは臨床症状の疾患のいずれかの形態であるとすでに診断された患者を治療すること、その疾患の症状もしくは徴候の発現、進展、憎悪もしくは悪化を遅延させること、及び/またはその疾患を予防し及び/またはその疾患の重症度を低下させることが含まれる。
【0135】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を用いて、患者におけるがんを治療すると、未治療(適切な場合)または既知の標準ケアと比べて、いずれかの臨床効果が示されることがある。臨床効果は、当業者に知られているいずれかの方法によって評価できる。いくつかの実施形態では、臨床効果は、客観的奏効率(ORR)(RECIST第1.1版を用いて求める)、奏効持続期間(DOR)、無増悪生存率(PFS)及び/または全生存率(OS)に基づいて評価する。いくつかの実施形態では、完全奏効によって、治療効果が示される。いくつかの実施形態では、部分奏効によって、治療効果が示される。いくつかの実施形態では、疾患の安定によって、治療効果が示される。いくつかの実施形態では、全生存率の上昇によって、治療効果が示される。いくつかの実施形態では、治療効果は、疾患進行までの期間の改善、及び/または症状もしくはクオリティオブライフの改善とみなしてよい。いくつかの実施形態では、治療効果は、疾患制御期間の延長につながるのもではなく、むしろ、症状による負担を大きく軽減して、その結果、クオリティオブライフを改善させる場合もある。当業者には明らかであるように、治療効果は、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を単独で用いるか(単独療法)、あるいは他の抗がん療法及び/または標的抗がん剤もしくは非標的抗がん剤の補助として、またはそれらとともに用いて観察し得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、治療効果は、新たながん治療に対する奏効を測定するように設計された標準的な臨床検査を用いて評価できる。本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片の治療効果を評価するには、1)Response Evaluation Criteria In Solid Tumors(RECIST)第1.1版、2)免疫関連RECIST(irRECIST)、3)Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Status、4)免疫関連奏効基準(irRC)、5)腫瘍抗原の評価によって評価可能な疾患、6)検証済みの患者報告アウトカム尺度、及び/または7)全生存率及び無増悪生存率に関するカプラン・マイヤー推定量という検査のうちの1つまたはそれらを組み合わせたものを使用できる。
【0137】
本開示は、少なくとも2つの薬剤を患者に投与することを含む、併用療法の方法であって、その第1の薬剤が、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片であり、第2の薬剤が、併用治療剤である方法も提供する。本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片及び併用治療剤は、同時、逐次または別々に投与できる。その併用療法の方法により、添加剤の作用が上昇し得る。
【0138】
本発明の方法では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片及び併用治療剤は、同時または連続的のいずれかで、時間的に重複させて投与できる。本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片及び併用治療剤は、患者に、同じ日、例えば、同じ患者来院日に投与する場合には、連続的に投与する。連続投与は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間または8時間あけて行うことができる。これに対して、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片及び併用治療剤は、患者に、異なる日に投与する場合には、別々に投与し、例えば、その抗体またはその抗原結合断片及び併用治療剤は、1日、2日、3日、1週間、2週間または1カ月の間隔で投与できる。本開示の方法では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片の投与は、併用治療剤の投与の前または後であることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片及び併用治療剤は、ある期間にわたって、時間的に重複させて投与した後、第2の期間では、その抗体またはその抗原結合断片及び併用治療剤の投与を交互に行う。
【0139】
いくつかの実施形態では、その併用治療剤は、化学療法剤、血管新生阻害剤、抗リウマチ薬、抗炎症剤、放射線治療剤、免疫抑制剤または細胞傷害薬である。本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、従来のがん療法(手術、放射線療法、化学療法またはこれらを組みわせた療法など)と組み合わせて使用できる。いくつかの実施形態では、その方法は、腫瘍細胞を手術により切除すること、及び/または放射線療法を行うことの一方または両方をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片との併用腫瘍療法に有用な他の治療剤としては、腫瘍の成長に関与する他の因子(HER2、HER3、HER4、VEGFまたはTNF-αなど)のアンタゴニスト(抗体など)が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんの治療には、1つ以上のサイトカインを患者に投与することも有益であることがある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、増殖阻害剤と併用投与する。
【0140】
がんの治療には、抗炎症剤を、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて使用するのが適切であることがある。抗炎症剤としては、アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミン、メペリジン、デキサメタゾン、ペンタサ、メサラジン、アサコール、リン酸コデイン、ベノリレート、フェンブフェン、ナプロシン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、アスピリン及びイブプロフェンが挙げられるが、これらに限らない。
【0141】
がんの治療には、化学療法剤は、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて使用できる。化学療法剤としては、放射性分子、細胞の生存能にとって有害であるいずれかの薬剤を含む毒素(細胞毒素または細胞傷害剤など)、ならびに化学療法化合物を含む薬剤、及びリポソームまたはその他のベシクルが挙げられるが、これらに限らない。適切な化学療法剤の例としては、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシルデカルバジン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、抗α5β1インテグリン抗体、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アントラマイシン(AMC)、抗有糸分裂剤、cis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生剤、代謝拮抗剤、アスパラギナーゼ、生BCG(膀胱内)、リン酸ベタメタゾンナトリウム及び酢酸ベタメタゾン、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウムロイコボリン、カリケアマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、コンジュゲートエストロゲン、シクロホスファミド、シタラビン、サイトカラシンB、シトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ダウノルビシン、クエン酸ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドセタキセル、ドラセトロンメシレート、ドキソルビシン、ドロナビノール、E.coli L-アスパラギナーゼ、ボロシキシマブ、エメチン、エポエチン-α、Erwinia L-アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、リン酸エストラムスチンナトリウム、エチジウムブロマイド、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシドシトロボラム因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾール、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリン酢酸塩、グラミシジンD、グラニセトロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα-2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミゾール、リドカイン、ロムスチン、メイタンシノイド、メクロレタミン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、酢酸オクトレオチド、オンダンセトロン、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペントスタチン、ピロカルピン、プリカマイシン、ポリフェプロザン20カルムスチンインプラント、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、プロカルバジン、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テストラクトン、テトラカイン、チオテパクロラムブシル、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、クエン酸トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ならびに酒石酸ビノレルビン、またはそれらのいずれかの塩が挙げられるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、その方法は、少なくとも1つの化学療法剤を患者に投与することを含む。
【0142】
いずれかの血管新生阻害剤を本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片と併せて使用できる。いくつかの実施形態では、その血管新生阻害剤は、VEGFアンタゴニストまたは別のVEGF受容体アンタゴニスト(VEGFバリアント、可溶性VEGF受容体断片、VEGFまたはVEGFRをブロックできるアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの低分子量阻害剤、及びこれらを組み合わせたものなど)である。この代わりにまたはこれに加えて、抗VEGF抗体を患者に併用投与してもよい。
【0143】
患者に投与する治療レジメンは、患者の年齢、体重及び疾患の状態に応じて変動し得る。その治療レジメンは、2週間から無期限まで継続できる。いくつかの実施形態では、その治療レジメンは、約2週間~約6カ月、約3カ月~約5年、約6カ月~約1年または約2年、約8カ月~約18カ月などの間、継続する。その治療レジメンは、用量が変化しないレジメン、または用量が複数回変化するレジメンであることができる。
【0144】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片の投与量は、様々な要因によって決まることがあり、その要因としては、治療する固形腫瘍の特定の種類、治療している固形腫瘍のステージ、投与方法、投与頻度、所望の治療効果、ならびにその他のパラメーター(患者の年齢、体重及びその他の特徴など)が挙げられるが、これらに限らない。所定の投与方法及び投与頻度において、治療効果をもたらすのに有効な投与量の判定は、当業者の能力の範囲内である。治療効果をもたらすのに有効な投与量は、最初は、in vivo動物モデルまたは臨床試験から推定してよい。広範な疾患に適する動物モデルは、当該技術分野において知られている。本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、治療する状態に適するいずれかの経路によって投与してよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、バイアル内に凍結乾燥粉末として供給する。そのバイアルは、その抗体またはその抗原結合断片を約100mg、約125mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mgまたは約400mg収容できる。投与前に、その凍結乾燥粉末を注射用滅菌水(SWFI)またはその他の適切な媒体で再構成して、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を含む溶液をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、得られた再構成溶液を生理食塩水またはその他の適切な注入用媒体でさらに希釈し、例えばIV注入を介して、7日に2回、7日に1回、14日に1回、21日に1回、28日に1回、35日に1回、42日に1回、49日に1回または56日に1回投与する。いくつかの実施形態では、1回目のサイクルに、その注入を90分にわたって行う。いくつかの実施形態では、2回目以降の注入は、60分にわたるものである。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、IV注入として、7日に1回、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約2.0mg/kg、約3.0mg/kg、約4.0mg/kg、約5.0mg/kg、約6.0mg/kg、約8.0mg/kgまたは約10.0mg/kgで投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、IV注入として、14日に1回、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約2.0mg/kg、約3.0mg/kg、約4.0mg/kg、約5.0mg/kg、約6.0mg/kg、約8.0mg/kgまたは約10.0mg/kgで投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、IV注入として、21日に1回、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約2.0mg/kg、約3.0mg/kg、約4.0mg/kg、約5.0mg/kg、約6.0mg/kg、約8.0mg/kgまたは約10.0mg/kgで投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、IV注入として、28日に1回、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約2.0mg/kg、約3.0mg/kg、約4.0mg/kg、約5.0mg/kg、約6.0mg/kg、約8.0mg/kgまたは約10.0mg/kgで投与する。
【0147】
本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、他の化学療法剤のような他の薬剤の補助として、または他の薬剤とともに投与するときには、他の薬剤(複数可)と同じスケジュールまたは異なるスケジュールで投与できる。本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、同じスケジュールで投与するときには、他の薬剤の前、他の薬剤の後、または他の薬剤と時間的に重複させて投与できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を標準ケアの補助として、または標準ケアとともに投与する場合には、その抗体またはその抗原結合断片は、その標準療法の開始前に、例えば、標準ケア療法を開始する1日前、数日前、1週間前、数週間前、1カ月前またはさらには数カ月前に開始できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を標準ケアの補助として、または標準ケアとともに投与する場合には、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、標準療法の開始後に、例えば、標準ケア療法を開始した1日後、数日後、1週間後、数週間後、1カ月後またはさらには数カ月後に開始できる。
【0148】
2回目以降の投与の投与スケジュールは、疾患の種類、疾患の重症度、及び本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片に対する患者の感受性を含む相当数の臨床的因子に応じて、6カ月に1回から毎日まで、様々であることができる。
【0149】
本開示は、後嚢混濁(PCO)を治療する方法であって、その方法が必要なヒト患者に、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法も提供する。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片を眼に投与する。
【0150】
本開示は、線維症を治療する方法であって、その方法が必要なヒト患者に、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法も提供する。いくつかの実施形態では、その抗体またはその抗原結合断片を器官に投与する。いくつかの実施形態では、その器官は、腎臓または肺である。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、その抗体またはその抗原結合断片に結合する細胞を選別することによって、例えば筋線維芽細胞前駆体のような細胞を単離及び/または精製する方法で使用できる。そのような細胞は、皮膚、水晶体、網膜及び脳の創傷に迅速に移動でき、それによって、創傷治癒を助ける。このような細胞には、収縮性の筋線維芽細胞へと発展する潜在能力がある。ヒト脂肪組織は、このような細胞(すなわちBAI1+細胞)の供給源の1つである(未発表の結果)。単離BAI1+細胞は、ヒトに投与するか、または治癒が遅いかもしくは治癒しない創傷(糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍及び重篤な外科的切除部など)に移植して、創傷閉鎖を促すことができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合断片は、その抗体またはその抗原結合断片に結合する細胞を選別することによって、神経保護細胞を単離する方法で使用できる。BAI1を発現する細胞は、網膜及び脳の損傷に応答して、数が増加する。このような細胞を網膜及び脳に投与して、ニューロンの死滅を低減できる。BAI1+細胞及び/またはそれらが産生する分子(複数可)を眼の硝子体または損傷後の脳の血管系に注射できる。
【0153】
下記の代表的な実施形態を示す。
【0154】
実施形態1.ヒト接着Gタンパク質共役型受容体B1(BAI1)タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む、可変重(VH)鎖における第1の相補性決定領域(CDR)(VH-CDR1)と、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む、VH鎖における第2のCDR(VH-CDR2)と、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む、VH鎖における第3のCDR(VH-CDR3)と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む、可変軽(VL)鎖における第1のCDR(VL-CDR1)と、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む、VL鎖における第2のCDR(VL-CDR2)と、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む、VL鎖における第3のCDR(VL-CDR3)を含む抗体またはその抗原結合断片。
【0155】
実施形態2.配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVH鎖を含む、実施形態1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0156】
実施形態3.配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVL鎖を含む、実施形態1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0157】
実施形態4.配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVH鎖と、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVL鎖を含む、実施形態1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0158】
実施形態5.その抗体が、IgM抗体またはIgG抗体である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0159】
実施形態6.その抗体が、IgM抗体である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0160】
実施形態7.その抗体が、IgG抗体である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0161】
実施形態8.その抗体が、IgG1抗体である、実施形態7に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0162】
実施形態9.その抗体が、IgG1 G1m17アロタイプ抗体である、実施形態7に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0163】
実施形態10.ヒト化されている、実施形態1~9のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0164】
実施形態11.配列番号13に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、実施形態10に記載のヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【0165】
実施形態12.配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態10に記載のヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【0166】
実施形態13.配列番号13に記載のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態10に記載のヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【0167】
実施形態14.エフェクター部分にコンジュゲートされている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0168】
実施形態15.そのエフェクター部分が、検出可能な標識、細胞傷害剤、化学療法剤または核酸分子である、実施形態14に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0169】
実施形態16.その検出可能な標識が、放射性化合物、蛍光化合物、発色団、酵素、イメージング剤、金属イオンまたは基質である、実施形態15に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0170】
実施形態17.その細胞傷害剤が、小分子、プロドラッグ、メイタンシノイドまたは毒素である、実施形態15に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0171】
実施形態18.その抗体またはその抗原結合断片1個あたりにメイタンシノイド分子を3~5個含む、実施形態15に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0172】
実施形態19.そのメイタンシノイドが、その抗体またはその抗原結合断片に、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)及びスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートから選択した化学リンカーによってコンジュゲートされている、実施形態18に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0173】
実施形態20.その細胞傷害剤が、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールまたはピューロマイシンである、実施形態15に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0174】
実施形態21.その化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ツニカマイシン、オリゴマイシン、ボルテゾミブ、MG132、5-フルオロウラシル、ソラフェニブ、フラボピリドール、ゲムシタビン、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、マイトマイシン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、ダカルバジン、プロカルバジン、エトポシド、カンパテシン、ブレオマイシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ジスタマイシンA、エチジウム、ネトロプシン、オーリスタチン、アムサクリン、プロジギオシン、ボルテゾミブ、ピベンジモール、トマイマイシン、デュオカルマイシンSA、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、CPT-11、グリーベック、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、ラパチニブ、ナビトクラックスまたはレゴラフェニブである、実施形態15に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0175】
実施形態22.その核酸分子が、1層の核酸キャリア、1.5層の核酸キャリア、2層の核酸キャリア、2.5層の核酸キャリアまたは3層の核酸キャリアである、実施形態15に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0176】
実施形態23.その抗原結合断片が、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、scFv-Fc断片、ダイアボディ断片またはミニボディ断片である、実施形態1~22のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0177】
実施形態24.実施形態1~23のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【0178】
実施形態25.液体医薬組成物である、実施形態24に記載の医薬組成物。
【0179】
実施形態26.等張化剤、界面活性剤、保存剤及び/またはpHが約4.0~約8.0の緩衝系をさらに含む、実施形態24または実施形態25に記載の医薬組成物。
【0180】
実施形態27.実施形態1~9のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片のVH鎖をコードする単離核酸分子であって、配列番号2または配列番号3に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【0181】
実施形態28.実施形態1~9のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片のVL鎖をコードする単離核酸分子であって、配列番号5または配列番号6に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【0182】
実施形態29.実施形態27または実施形態28に記載の核酸分子を含むベクター。
【0183】
実施形態30.実施形態29に記載のベクターでトランスフォーメーションした原核宿主細胞。
【0184】
実施形態31.実施形態29に記載のベクターでトランスフォーメーションした真核宿主細胞。
【0185】
実施形態32.哺乳動物宿主細胞である、実施形態31に記載の真核宿主細胞。
【0186】
実施形態33.BAI1発現細胞の検出方法であって、その細胞と、実施形態1~23のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を接触させることと、その抗体またはその抗原結合断片を検出することを含む方法。
【0187】
実施形態34.その細胞が、ヒトから得た生体試料に存在し、その細胞と、その抗体またはその抗原結合断片をin vitroで接触させる、実施形態33に記載の方法。
【0188】
実施形態35.その細胞が、ヒトに存在し、その細胞と、その抗体またはその抗原結合断片をin vivoで接触させる、実施形態33に記載の方法。
【0189】
実施形態36.BAI1を発現しているがんを治療する方法であって、その方法が必要なヒト患者に、実施形態1~23のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法。
【0190】
実施形態37.そのBAI1を発現しているがんが、神経癌である、実施形態36に記載の方法。
【0191】
実施形態38.その神経癌が、原発性脳腫瘍、グリオブラストーマ、グリオーマ、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、血管腫、類表皮腫、肉腫、または他の腫瘍源からの頭蓋内転移である、実施形態37に記載の方法。
【0192】
実施形態39.その神経癌が、グリオブラストーマである、実施形態38に記載の方法。
【0193】
実施形態40.その抗体またはその抗原結合断片を静脈内投与または頭蓋内投与する、実施形態36~39のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態41.少なくとも1つの化学療法剤をその患者に投与することをさらに含む、実施形態36~40のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施形態42.腫瘍細胞を手術により切除すること、及び/または放射線療法を行うことの一方または両方をさらに含む、実施形態36~41のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
実施形態43.後嚢混濁(PCO)を治療する方法であって、その方法が必要なヒト患者に、実施形態1~23のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法。
【0197】
実施形態44.その抗体またはその抗原結合断片を眼に投与する、実施形態43に記載の方法。
【0198】
実施形態45.線維症を治療する方法であって、その方法が必要なヒト患者に、実施形態1~23のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法。
【0199】
実施形態46.その抗体またはその抗原結合断片を器官に投与する、実施形態45に記載の方法。
【0200】
実施形態47.その器官が、腎臓または肺である、実施形態46に記載の方法。
【0201】
実施形態48.創傷治癒を促す方法であって、その方法が必要なヒト患者に、実施形態1~23のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法。
【0202】
実施形態49.その創傷が、皮膚、眼の水晶体、網膜または脳に存在する、実施形態48に記載の方法。
【0203】
実施形態50.その創傷が、糖尿病性潰瘍または褥瘡性潰瘍である、実施形態48に記載の方法。
【0204】
実施形態51.創傷治癒を促す方法であって、その方法が必要なヒト患者に、BAI1発現細胞を投与することを含む方法。
【0205】
本明細書に開示されている主題をさらに効率的に理解できるように、以下に実施例を示す。これらの実施例は、例示のためのものに過ぎず、いかなる形でも、特許請求されている主題を限定するようには解釈すべきでないことを理解されたい。別段に示されている場合を除き、これらの実施例全体を通じて、Maniatis et al.,Molecular Cloning-A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Press(1989)に記載されている方法に従って、市販の試薬を用いて、分子クローニング反応及びその他の標準的な組み換えDNA技法を行った。本明細書で使用する場合、免疫グロブリンのアミノ酸残基のナンバリングは、別段に示されていない限り、Kabatらの、免疫グロブリンのアミノ酸残基のナンバリングシステムに従って行われている。
【実施例】
【0206】
実施例1:G8(BAI1)抗原の特定
メンブレンプロテオームアレイ(MPA)は、ヒト膜タンパク質を標的とする抗体及びその他のリガンドの特異性をプロファイリングするためのプラットフォームである。MPAを用いて、抗体と標的との特異性を求め、オーファン抗体の標的をデコンボリューションし、バイオ後続品候補の標的プロファイルを特徴付けることができる。フローサイトメトリーを用いて、ヒトHEK-293細胞のような真核細胞で発現する膜タンパク質への抗体の結合を直接検出する。その結果、すべてのMPA標的は、未変性コンホメーション及び適切な翻訳後修飾を有するように設計される。そのプロセスのワークフローは、
図1に示されている。G8抗体において、GPCR、イオンチャネル及びトランスポーターを含む4,500個超のヒト膜タンパク質からなるMPAライブラリーに対する反応性について試験した。特定された標的を二次スクリーニングにおいて検証して、反応性を確認した。
【0207】
最適な抗体濃度を求め、バックグラウンド反応を最小限に抑えるために、プロテインA及びプロテインGコンストラクトまたはベクターのみのいずれかを発現するHEK-293T(ヒト)細胞を用いて、様々な濃度のG8ロット3/21/13及びG8ロットPS30170160を調べた。これらの実験は、単回希釈の二次抗体を用いて、384ウェルのフォーマットで行った(
図2A及び2B、表1)。そのアッセイセットアップの実験から得たデータを用いて、ハイスループットな免疫検出に最適なスクリーニング条件を求めた(表2)。簡潔に述べると、抗体検出のための条件を最適化するために、細胞に、プロテインA及びプロテインG発現コンストラクト(MAb結合に関するポジティブコントロール)またはベクターのみ(ネガティブコントロール)を384ウェルのフォーマットでトランスフェクションしてから、ハイスループットな免疫蛍光フローサイトメトリーアッセイを用いて、細胞での発現を検出した。それぞれの試験MAb及びコントロールMAbの段階希釈液(4μg/mlから開始)において、プロテインA及びプロテインG、またはベクターのみを発現する細胞に対する免疫反応性を調べた。IgMは、ポジティブコントロールのコンストラクトとは強くは反応しないことが明らかになった。その結果、これらの実験を用いて、バックグラウンド反応の低い条件を求めた。バックグラウンド反応が低いことにより、潜在的ヒットを遮断せずに、高濃度での検出が可能であることが示される。
【表1】
【表2】
【0208】
抗体結合標的の判定
抗体結合標的を特定するために、5,300個の異なる膜タンパク質をそれぞれ、384ウェルプレートでアレイ化した個々のウェルのHEK-293T細胞で発現させた。続いて、各384ウェルプレートの個々の列と行をプールすることによって、それらの細胞をマトリックス化した。得られたMPAマトリックスを、濃度30μg/mlのG8ロット3/21/13及びG8ロットPS30170160によってプローブしてから、蛍光標識した二次抗体を用いて検出した。ポジティブコントロール(既知の標的を発現するコンストラクト)及びネガティブコントロール(空ベクター)を用いて、各実験プレートから得られた蛍光読み取り値を検証した。個々の膜タンパク質標的のそれぞれに、その固有の行プール及び列のプールの結合値に対応する値を割り当てた。得られた結合値(行及び列の成分を含む)を正規化し、変換して、各標的タンパク質に対する抗体の結合に関して、単一の数値を得た(正規化標的結合値)。続いて、同じプレートから得られた列プール及び行プールのうち、重複している列プール及び行プールへの抗体結合を検出することによって、標的を特定し、それによって、特異的なデコンボリューションを可能にした(
図3A及び
図3B、表3)。抗体の結合は、蛍光二次抗体を用いて、フローサイトメトリーによって検出した。
【表3】
【0209】
そのスクリーニングによって、抗体の段階希釈を用いた2回目のフローサイトメトリーアッセイで確認された結合標的が得られた(
図4A及び
図4B)。これを受けて、HEK-293T細胞に、標的を発現するプラスミドコンストラクトまたはベクターのみをトランスフェクションした。各MAbの段階希釈液において、標的タンパク質を発現する細胞またはベクターのみに対する免疫反応性を試験した。最後に、すべての標的の同一性をシーケンシングによって再確認した。
【0210】
実施例2:RACEによる、G8の重鎖及び軽鎖の特定
G8抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸分子を特定するために、cDNA末端迅速増幅(RACE)反応を行った。RACE PCR反応試料をアガロースゲル上で解析して、増幅されたDNA断片を可視化した。サイズが500~700塩基対である適格な抗体可変領域DNA断片を増幅した(
図5)。
【0211】
24個のクローンからPCRで増幅したDNA断片をアガロースゲルから回収し、シーケンシングした。VBASE2のツールを用いて、CDRを特定した。
【0212】
実施例3:ヒト化抗BAI1 IgGの構築、産生及び特徴付け
G8 IgGの発現コンストラクトを高発現哺乳動物ベクターにクローニングした。G8 IgGの各DNAコンストラクトをトランスフェクション用にスケールアップし、配列を確認した。0.03リットルの一過性産生をHEK293細胞(Tuna293(商標)プロセス)で完了した。その一過性産生作業に由来する馴化培地を回収し、遠心分離及びろ過によって清澄化した。その上清を、結合緩衝液で予め平衡化したプロテインAカラムに入れた。OD
280値(NanoDrop,Thermo Scientific)を測定したときに0になるまで、洗浄緩衝液をカラムに通した。その標的タンパク質を低pH緩衝液で溶出させ、画分を回収し、各画分のOD
280値を記録した。標的タンパク質を含む画分をプールし、0.2μmのメンブレンフィルターでろ過した。そのタンパク質濃度をOD
280値及び吸光係数計算値から計算し、2.92mgのG8 IgGを得た。そのデータは、表4にまとめられている。最終的なタンパク質の収量、アリコート及び解析である。
【表4】
【表5】
【0213】
その後、LabChip GXII(Perkin Elmer)を用いて、CE-SDS解析を行った。発色リムルス変形細胞溶解物法(Endosafe-MCS,Charles River)を用いて、精製産物の試料でエンドトキシン測定を行った。その試料は、duplicateで行った。その実験によって、すべての試料が、1EU/mg未満という要件を満たすことが確認された(表4)。SE-UPLC解析を行い、その際には、SEC標準物質(MEDNA、カタログ番号Y3101)をタンパク質サイズの参照物質として流した。いずれのタンパク質も、観察したところ、モノマーを99%超含んでいた。質量分析によるインタクト質量QCを行ったところ、そのIgGにおいて観察された分子量は、予想範囲内であった。
【0214】
G8 IgM及び抗BAI1 IgG(本明細書では「G8 IgG」とも称する)の相対的親和性を測定するために、ELISAアッセイをG8 IgG及びG8 IgMの両方で行った。簡潔に述べると、プレートを2μg/mlのヒトBAI1で一晩、4℃でコーティングし、PBS中の1%BSAで1時間、室温でブロックした。最初のインキュベートを1時間、室温で、G8 IgMの1:2段階希釈液(20μg/mlから開始)、またはG8 IgG(抗BAI1 IgG)の1:2段階希釈液(100μg/mlから開始)のいずれかとともに行った。2回目のインキュベートを1時間、室温で、HRPコンジュゲート抗マウスIgM Fc(G8 IgM)またはHRPコンジュゲート抗ヒトFc(G8 IgG)のいずれかとともに行った。そのアッセイ系を、15分のインキュベートによって、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)で発色させ、1M HClで停止した。いずれのアッセイもduplicateで行った。その結果は、
図6に示されている。G8 IgG及びG8 IgMのコントロール試料のいずれでも、ELISAで陽性シグナルが示されている。
【0215】
当業者には、本明細書に記載されている形態に加えて、記載されている主題の様々な修正形態が、上記の説明から明らかになるであろう。このような修正形態は、添付の請求項の範囲内にも含まれるように意図されている。本願で引用した各参照文献(学術論文、米国特許、米国以外の特許、特許出願公開、国際特許出願公開、遺伝子バンクアクセッション番号などが挙げられるが、これらに限らない)は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【配列表】
【国際調査報告】