(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(54)【発明の名称】高分子電解質膜、それを含む膜-電極アセンブリ及び燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1058 20160101AFI20221227BHJP
H01M 8/1018 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/1044 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/103 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/1032 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/1025 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/1034 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/1027 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/1053 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20221227BHJP
B32B 5/22 20060101ALI20221227BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01M8/1058
H01M8/1018
H01M8/1044
H01M8/103
H01M8/1032
H01M8/1025
H01M8/1034
H01M8/1027
H01M8/1053
H01M8/10 101
H01M8/1004
B32B5/22
B32B5/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523254
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 KR2021012834
(87)【国際公開番号】W WO2022071684
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0127266
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124025
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】イ ウンス
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンファ
(72)【発明者】
【氏名】イ ヘソン
【テーマコード(参考)】
4F100
5H126
【Fターム(参考)】
4F100AK12B
4F100AK17A
4F100AK17B
4F100AK49B
4F100AK54B
4F100AK55B
4F100AK56B
4F100AK57B
4F100AK80A
4F100AK80B
4F100AK80C
4F100AK80D
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100DJ00A
4F100EJ91E
4F100GB41
4F100JG01E
4F100JL00A
4F100JL00B
5H126AA05
5H126BB06
5H126GG19
5H126JJ00
5H126JJ02
(57)【要約】
化学的又は機械的耐久性が改善された高分子電解質膜が提供される。本発明に係る高分子電解質膜は、多孔性支持体及び前記多孔性支持体に充填された第1アイオノマーを含む複合層(composite layer)を含む高分子電解質膜であって、前記電解質膜は、第1耐久性を有する第1セグメント及び第2耐久性を有する第2セグメントを含み、前記第1耐久性は前記第2耐久性より高い高分子電解質膜に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性支持体;及び
前記多孔性支持体に充填された第1アイオノマーを含む複合層(composite layer)を含む高分子電解質膜であって、
前記電解質膜は、第1耐久性を有する第1セグメント及び第2耐久性を有する第2セグメントを含み、
前記第1耐久性は前記第2耐久性より高い高分子電解質膜。
【請求項2】
前記第1セグメントは、前記第1サブ層及び前記第1サブ層上に配置された第2サブ層を含み、
前記第2セグメントは、単一層構造を有し、
前記第1サブ層及び前記第2セグメントは、第1アイオノマーを含み、
前記第2サブ層は、第2アイオノマーを含み、
前記第2アイオノマーの耐久性は、前記第1アイオノマーの耐久性より高い、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項3】
前記第1サブ層及び前記第2セグメントは並べて配列された、請求項2に記載の高分子電解質膜。
【請求項4】
前記第1アイオノマーは、第1フッ素系アイオノマーを含み、
前記第2アイオノマーは、第2フッ素系アイオノマーを含み、
前記第2フッ素系アイオノマーのEW(Equivalent Weight)は、前記第1フッ素系アイオノマーのEWより大きい、請求項2に記載の高分子電解質膜。
【請求項5】
前記第1フッ素系アイオノマーは、600~800g/eqのEWを有するパーフルオロスルホン酸系(PFSA-based)アイオノマーを含み、
前記第2フッ素系アイオノマーは、900~1100g/eqのEWを有するパーフルオロスルホン酸系アイオノマーを含む、請求項4に記載の高分子電解質膜。
【請求項6】
前記第2フッ素系アイオノマーと前記第1フッ素系アイオノマーとのEWの差は、100~500g/eqである、請求項4に記載の高分子電解質膜。
【請求項7】
前記第1アイオノマーは、第3フッ素系アイオノマーを含み、
前記第2アイオノマーは、第4フッ素系アイオノマー及び炭化水素系アイオノマーのブレンドを含む、請求項2に記載の高分子電解質膜。
【請求項8】
前記第2アイオノマーのイオン交換容量(Ion Exchange Capacity、IEC)は、0.8~1.9meq/gである、請求項7に記載の高分子電解質膜。
【請求項9】
前記第3及び第4フッ素系アイオノマーは、それぞれ独立的に、500~1100g/eqのEWを有するパーフルオロスルホン酸系アイオノマーを含む、請求項7に記載の高分子電解質膜。
【請求項10】
前記第3フッ素系アイオノマーは、600~800g/eqのEWを有し、
前記第4フッ素系アイオノマーは、500~1100g/eqのEWを有する、請求項9に記載の高分子電解質膜。
【請求項11】
前記第4フッ素系アイオノマーは、700~900g/eqのEWを有する、請求項10に記載の高分子電解質膜。
【請求項12】
前記炭化水素系アイオノマーは、スルホン化ポリイミド(sulfonated polyimide:S-PI)、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone:S-PAES)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone:SPEEK)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole:SPBI)、スルホン化ポリスルホン(sulfonated polysulfone:S-PSU)、スルホン化ポリスチレン(sulfonated polystyrene:S-PS)、スルホン化ポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化ポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化ポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化ポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化ポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化ポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルファイド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化ポリフェニレンスルファイドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルファイドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化ポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項7に記載の高分子電解質膜。
【請求項13】
前記第3フッ素系アイオノマー及び前記第4フッ素系アイオノマーは、互いに同一である、請求項7に記載の高分子電解質膜。
【請求項14】
前記第1セグメントは、前記高分子電解質膜の一面を基準として、全活性面積の50%以下を占める、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項15】
前記複合層は、第1面及び前記第1面と反対の第2面を含み、
前記高分子電解質膜は、
前記第1面上に配置されている第1樹脂層;及び
前記第2面上に配置されている第2樹脂層;
をさらに含み、
前記第1及び第2樹脂層は前記第1アイオノマーを含む、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項16】
第1電極;
第2電極;及び
前記第1及び第2電極の間に介在する、請求項1に記載の高分子電解質膜;
を含む、膜-電極アセンブリ。
【請求項17】
前記第1電極は、酸素の還元反応が起こる還元極(cathode)であり、
前記第2電極は、水素の酸化反応が起こる酸化極(anode)である、請求項16に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項18】
第1セパレータ;
第2セパレータ;及び
前記第1及び第2セパレータの間に介在する、請求項16に記載の膜-電極アセンブリ;
を含むが、但し、
前記第1電極は、前記第1セパレータと前記高分子電解質膜との間に配置され、
前記第1セパレータは、
前記第1電極に供給される第1ガスのための第1流入口(inlet)、前記第1ガスのための第1排出口(outlet)、及び前記第1流入口と前記第1排出口との間の第1流動チャンネル(flow channel)を含み、
前記第1セグメントは、
前記第1流入口又は前記第1排出口に対応するセグメントである、
燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質膜、それを含む膜-電極アセンブリ及び燃料電池に関し、具体的には、相対的にEW(Equivalent Weight)の高いアイオノマーを第1セグメントに使用することにより、化学的又は機械的耐久性が改善された高分子電解質膜、それを含む膜-電極アセンブリ及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の酸化によって生じる化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電池であって、高いエネルギー効率性を有し、汚染物質の排出が少ない、環境に優しいという特徴があることから、次世代エネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
燃料電池は、一般的に電解質膜を隔ててその両側に酸化極(Anode)と還元極(Cathode)がそれぞれ形成された構造を成し、このような構造を膜-電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly:MEA)と称する。
【0004】
燃料電池は、電解質膜の種類によって、アルカリ電解質燃料電池、高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)などに分類することができるが、その中で高分子電解質膜燃料電池は、100℃未満の低い作動温度、速い始動と応答特性、及び優れた耐久性などの利点から、携帯用、車両用及び家庭用の電源装置として脚光を浴びている。
【0005】
このような高分子電解質膜燃料電池の代表例としては、水素ガスを燃料として使用する水素イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell:PEMFC)などが挙げられる。
【0006】
高分子電解質膜燃料電池で起こる反応を要約すると、まず、水素ガスといった燃料が酸化極に供給されると、酸化極では水素の酸化反応によって水素イオンと電子が生成される。生成された水素イオンは高分子電解質膜を介して還元極に伝達され、生成された電子は外部回路を介して還元極に伝達される。還元極では酸素が供給され、酸素が水素イオン及び電子と結合して酸素の還元反応によって水が生成される。
【0007】
高分子電解質膜は、酸化極で生成された水素イオンが還元極に伝達される通路であるため、基本的に水素イオンの伝導度に優れていなければならない。また、高分子電解質膜は、酸化極に供給される水素ガスと還元極に供給される酸素とを分離する分離能に優れていなければならず、その他にも、機械的強度、寸法安定性、耐化学性などに優れていなければならず、高電流密度において抵抗損失(Ohmic Loss)が小さくなければならない、などの特性が求められる。
【0008】
現在使用されている高分子電解質膜には、フッ素系樹脂としてパーフルオロスルホン酸樹脂(以下、「フッ素系イオン伝導体」という。)がある。しかし、フッ素系イオン伝導体は、機械的強度が弱いため、長時間使用するとピンホール(Pinhole)が生じ、それにより、エネルギー転換効率が低下するという問題がある。機械的強度を補強するために、フッ素系イオン伝導体の膜厚を増加させて使用するという試みがあるが、この場合、抵抗損失が増加する上、高価な材料の使用が増えてしまうため、経済性が低下するという問題がある。
【0009】
これらの問題を解決するために、フッ素系樹脂である多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂(商品名:テフロン)(以下、「テフロン樹脂」という。)に液体状態のフッ素系イオン伝導体を含浸させることにより、機械的強度を向上させた高分子電解質膜(又は、強化複合膜)が提案されている。この場合、フッ素系イオン伝導体単独からなる高分子電解質膜に比べて、水素イオン伝導度はやや劣る可能性があるものの、機械的強度が相対的に優れているため、電解質膜の厚さを減らすことができて抵抗損失が減少するなどの利点がある。
【0010】
一方、燃料電池を駆動させる際に、ガス流入口及び/又はガス排出口に対応する強化複合膜は、ガス圧力を受けて強化複合膜の劣化及び脱離が発生することで、化学的耐久性が低下する問題が生じる可能性がある。これを解決するために、高分子電解質膜の高いイオン伝導度を確保しながら化学的耐久性を向上させることに関する研究が継続的に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、第1アイオノマーを含む高分子電解質膜より相対的にEWの高い第2アイオノマーを、ガス流入口及び/又はガス排出口と対応する部分に用いることにより、燃料電池を駆動させる際における高分子電解質膜の劣化及び脱離を防止して、化学的又は機械的耐久性を向上させる高分子電解質膜、それを含む膜-電極アセンブリ及び燃料電池を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、EWが相対的に低い第1アイオノマーで高分子電解質膜を構成し、劣化及び脱離に弱い部位に、化学的耐久性に優れた第2アイオノマーを含むセグメントを備えることにより、水素イオン伝導性が低くなることを防ぐことにある。
【0013】
本発明のまた別の目的は、既存の工程設備をそのまま利用しながらも化学的又は機械的耐久性が向上した高分子電解質膜を製造することができる高分子電解質膜の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、上記に触れた目的に限定されず、触れていない本発明の別の目的及び利点は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明確に理解することができるはずである。また、本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示された手段及びその組み合わせによって実現することができるということが容易にわかるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための本発明の一実施例に係る高分子電解質膜は、多孔性支持体及び前記多孔性支持体に充填された第1アイオノマーを含む複合層(composite layer)を含む高分子電解質膜であって、前記電解質膜は、第1耐久性を有する第1セグメント及び第2耐久性を有する第2セグメントを含み、前記第1耐久性は前記第2耐久性より高いものに該当する。
【0015】
前記目的を達成するための本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリは、第1電極、第2電極及び前記第1及び第2電極の間に介在する、多孔性支持体及び前記多孔性支持体に充填された第1アイオノマーを含む複合層(composite layer)を含む高分子電解質膜であって、前記高分子電解質膜は、第1耐久性を有する第1セグメント及び第2耐久性を有する第2セグメントを含み、前記第1耐久性は前記第2耐久性より高いものに該当する。
【0016】
前記目的を達成するための本発明の一実施例に係る燃料電池は、第1セパレータ、第2セパレータ及び前記第1及び第2セパレータの間に介在する前記膜-電極アセンブリを含むが、但し、前記第1電極は、前記第1セパレータと前記電解質膜との間に配置され、前記第1セパレータは、前記第1電極に供給される第1ガスのための第1流入口(inlet)、前記第1ガスのための第1排出口(outlet)、及び前記第1流入口と前記第1排出口との間の第1流動チャンネル(flow channel)を含み、前記第1セグメントは、前記第1流入口又は前記第1排出口に対応するセグメントであるものに該当する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料電池を駆動させる際における高分子電解質膜の劣化及び脱離を防止して、化学的又は機械的耐久性を向上させる高分子電解質膜を提供することができる。本発明によれば、既存の工程設備をそのまま利用しながらも化学的又は機械的耐久性が向上した高分子電解質膜の製造方法を提供することができる。
【0018】
前述の効果に加えて、本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための具体的な内容を説明しながら共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例に係る高分子電解質膜の平面図を示すものである。
【
図2】本発明の一実施例に係る高分子電解質膜の側面図を示すものである。
【
図3】本発明の一実施例に係る燃料電池を示すものである。
【
図4】実施例1及び比較例1に係る高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリそれぞれのOCV hold testを示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施例によれば、多孔性支持体及び前記多孔性支持体に充填された第1アイオノマーを含む複合層(composite layer)を含む高分子電解質膜であって、前記電解質膜は、第1耐久性を有する第1セグメント及び第2耐久性を有する第2セグメントを含み、前記第1耐久性は前記第2耐久性より高い高分子電解質膜を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の各構成をより詳細に説明するが、これは一つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容によって限定されるものではない。
【0022】
本発明に係る高分子電解質膜は、多孔性支持体及び前記多孔性支持体に充填された第1アイオノマーを含む複合層(composite layer)を含むことができる。具体的には、高い分散安全性を有する第1アイオノマー分散液は、含浸性に優れるだけでなく、粒子のサイズが小さく均一であるため、多孔性支持体に含浸及びコーティングされて強化複合膜タイプの高分子電解質膜を形成する際、水素イオンの移動経路を提供するウォーターチャンネル(Water Channel)が面方向はもちろん、厚さ方向にもスムーズに形成されるようにすることにより、前記高分子電解質膜の面方向及び厚さ方向のイオン伝導度を共に向上させることができる。本明細書における複合層は、強化複合膜に該当すると言える。
【0023】
以下では、本発明の構成をより詳細に説明する。
【0024】
本発明に係る多孔性支持体は、三次元的に不規則かつ不連続に連結されたナノ繊維の集合体からなり、これにより、均一に分布した多数の気孔を含む。均一に分布した多数の気孔からなる前記多孔性支持体は、優れた多孔度とイオン伝導体の物性を補えるという特性(寸法安定性など)を有することになる。
【0025】
前記多孔性支持体に形成される気孔の直径である孔径は、0.05~30μm(マイクロメートル)の範囲内に形成することができるが、孔径が前記数値範囲の未満である場合、高分子電解質のイオン伝導度が低下する可能性があり、前記数値範囲を超える場合、高分子電解質の機械的強度が低下する可能性がある。
【0026】
前記多孔性支持体の気孔の形成程度を示す多孔度は、50~98%の範囲内に形成することができる。前記多孔性支持体の多孔度が前記範囲の未満である場合、高分子電解質のイオン伝導度が減少する可能性があり、前記範囲を超える場合、高分子電解質の機械的強度及び形態安全性が低下する可能性がある。
【0027】
前記多孔度(%)は、下記の数式1のように、前記多孔性支持体の全体積に対する空気の体積の割合によって計算することができる。
【0028】
[数1]
多孔度(%)=(空気の体積/全体積)×100
【0029】
このとき、前記多孔性支持体の全体積は、長方形状の多孔性支持体のサンプルを製造して、横、縦及び厚さを測定して計算し、前記多孔性支持体のサンプルの質量を測定した後、密度から逆算した高分子の体積を、前記多孔性支持体の全体積から差し引くことによって求めることができる。
【0030】
前記多孔性支持体は、三次元的に不規則かつ不連続に連結されたナノ繊維の集合体からなるが、前記ナノ繊維の平均直径は0.005~5μm(マイクロメートル)の範囲であってもよい。前記ナノ線維の平均直径が前記数値範囲の未満である場合、多孔性支持体の機械的強度が低下する可能性があり、前記ナノ繊維の平均直径が前記数値範囲を超える場合、多孔性支持体の多孔度の調整が容易でない可能性がある。
【0031】
前記ナノ繊維は、ナイロン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、これらの共重合体及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであってもよいが、本発明の技術的思想がこれに限定されるものではない。
【0032】
前記多孔性支持体は、5~30μm(マイクロメートル)の厚さで形成することができる。前記多孔性支持体の厚さが前記厚さ範囲の未満である場合、高分子電解質の機械的強度及び形態安定性が低下する可能性があり、前記厚さ範囲を超える場合、高分子電解質の抵抗損失が増加する可能性がある。
【0033】
前記多孔性支持体は、熱的及び化学的分解に対する抵抗性の高い過フッ素化重合体[例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はテトラフルオロエチレンと、CF2=CFCnF2n+1(nは1~5の実数)又はCF2=CFO-(CF2CF(CF3)O)mCnF2n+1(mは0~15の実数、nは1~15の実数)との共重合体]を含むことができる。また別の例として、市販されている延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルム(e-PTFE film)を前記多孔性支持体として使用することができる。
【0034】
本発明に係る多孔性支持体は、不織布ウェブ形成用高分子で形成された不織布ウェブ(Nonwoven Web)に該当すると言える。例えば、前記多孔性支持体は、40~5000nmの平均直径を有するナノ繊維がランダムに配列されているナノウェブ(Nanoweb)であってもよい。
【0035】
前記不織布ウェブ形成用高分子は、優れた耐化学性を有し、高湿の環境において水分によって形態変形する恐れのない高分子に該当すると言える。
【0036】
例えば、前記不織布ウェブ形成用高分子は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルブチレン、ポリウレタン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの中で二つ以上の共重合体、又はこれらの中で二つ以上の混合物であってもよい。
【0037】
特に、ポリイミドは、優れた耐熱性、耐化学性及び形態安定性を有するという点で、前記多孔性支持体を形成するための好ましい候補物質の一つである。
【0038】
本発明に係る複合層(Composite Layer)は、前記多孔性支持体に充填された第1アイオノマーを含むことができる。具体的には、前記複合層は、第1面及び前記第1面と反対の第2面を含むことができる。すなわち、第1面と第2面は、例えば、互いに対向する面を意味し、それぞれ前記複合層の上面、下面を意味すると言える。
【0039】
本発明のまた別の実施例に係る高分子電解質膜は、前記第1面上に配置されている第1樹脂層及び前記第2面上に配置されている第2樹脂層を含むことができる。前記第1及び第2樹脂層は前記第1アイオノマーを含むことができる。
【0040】
前記樹脂層は、本発明に係る第1セグメント、第2セグメントとは別途に、前記複合層の両面にさらに付加されたアイオノマー層である。
【0041】
図1は、本発明の一実施例に係る高分子電解質膜の平面図を示すものである。
【0042】
図2は、本発明の一実施例に係る高分子電解質膜の側面図を示すものである。
【0043】
以下、説明の便宜上、
図1及び
図2を参照して本発明の構成を詳細に説明する。
【0044】
図1及び
図2を参照すると、本発明に係る高分子電解質膜34は、第1耐久性を有する第1セグメント(SEG1)及び、第2耐久性を有する第2セグメント(SEG2)を含むことができる。前記第1耐久性は前記第2耐久性より高いことを特徴とする。本明細書における耐久性は、化学的又は機械的耐久性を意味すると言える。
【0045】
具体的には、前記第1セグメント(SEG1)は、第1サブ層(sub1)及び、前記第1サブ層(sub1)上に配置された第2サブ層(sub2)を含むことができる。すなわち、前記第1セグメント(SEG1)は、少なくとも二つ以上のサブ層を含むことができる。
【0046】
例えば、前記第1セグメント(SEG1)は、第1サブ層(sub1)及び第2サブ層(sub2)を含む二重層(Double layers)構造を有することができ、前記第2セグメントは単一層(Single layer)構造を有することができる。このとき、前記第1サブ層(sub1)及び前記第2セグメント(SEG2)は第1アイオノマーを含むことができ、前記第2サブ層(sub2)は第2アイオノマーを含むことができる。前記第2アイオノマーの耐久性は、前記第1アイオノマーの耐久性より高い可能性がある。
【0047】
本発明の一実施例によれば、前記第1サブ層(sub1)及び前記第2セグメント(SEG2)は並べて配列することができる。
【0048】
前記第2サブ層(sub2)は、第1サブ層(sub1)の真上(directly on)に配置することができ、前記第1サブ層(sub1)及び前記第2サブ層(sub2)の間にいかなる部材も介在しないのが好ましい。
【0049】
第1アイオノマーは、フッ素系アイオノマーであってもよく、より好ましくは、PFSA(Perfluorosulfonic acid)系アイオノマーであってもよい。第2アイオノマーは、フッ素系アイオノマー、又は炭化水素系アイオノマー及びフッ素系アイオノマーのブレンド(Blend)を含むことができる。
【0050】
前記炭化水素系アイオノマー及びフッ素系アイオノマーのブレンド(Blend)は、例えば、PFSA(Perfluorosulfonic acid)と炭化水素系アイオノマーのブレンドに該当すると言える。
【0051】
前記炭化水素系アイオノマーは、例えば、スルホン化ポリイミド(Sulfonated polyimide:S-PI)、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン(Sulfonated polyarylethersulfone:S-PAES)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(Sulfonated polyetheretherketone:SPEEK)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール(Sulfonated polybenzimidazole:SPBI)、スルホン化ポリスルホン(Sulfonated polysulfone:S-PSU)、スルホン化ポリスチレン(Sulfonated polystyrene:S-PS)、スルホン化ポリホスファゼン(Sulfonated polyphosphazene)、スルホン化ポリキノキサリン(Sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化ポリケトン(Sulfonated polyketone)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(Sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化ポリエーテルスルホン(Sulfonated polyether sulfone)、スルホン化ポリエーテルケトン(Sulfonated polyether ketone)、スルホン化ポリフェニレンスルホン(Sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルファイド(Sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化ポリフェニレンスルファイドスルホン(Sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルファイドスルホンニトリル(Sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテル(Sulfonated polyarylene ether)、スルホン化ポリアリーレンエーテルニトリル(Sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(Sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(Sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0052】
前記第1アイオノマーは、第1フッ素系アイオノマーを含むことができ、前記第2アイオノマーは、第2フッ素系アイオノマーを含むことができる。前記第1及び第2フッ素系アイオノマーは、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、スルホン酸フルオリド基及びこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの陽イオン交換基を含むフッ素系高分子であってもよい。
【0053】
例えば、前記フッ素系高分子は、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化硫化ポリエーテルケトン、又はこれらの中で二つ以上の混合物であってもよい。
【0054】
前記フッ素系高分子は、陰イオン交換基を有する陰イオン伝導体であってもよい。具体的には、前記陰イオン伝導体は、ヒドロキシイオン、カーボネート、又はバイカーボネートなどの陰イオンを輸送することができる高分子である。前記陰イオン伝導体としては、一般的に金属水酸化物がドーピングされた高分子を用いることができ、具体的には、金属水酸化物がドーピングされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンゾイミダゾール)又はポリ(エチレングリコール)などを用いることができる。
【0055】
前記第2フッ素系アイオノマーのEW(Equivalent Weight)は、前記第1フッ素系アイオノマーのEWより大きい可能性がある。具体的には、前記第2フッ素系アイオノマーと前記第1フッ素系アイオノマーとのEWの差は、100~500g/eqに該当すると言える。
【0056】
第1フッ素系アイオノマーは、600~800g/eqのEWを有するパーフルオロスルホン酸系(PFSA-based)アイオノマーを含むことができ、第2フッ素系アイオノマーは、900~1100g/eqのEWを有するパーフルオロスルホン酸系アイオノマーを含むことができる。
【0057】
一方、本発明の一実施例において、前記第2セグメント(SEG2)を構成する第1アイオノマーは、第3フッ素系アイオノマーを含むことができ、前記第2アイオノマーは、第4フッ素系アイオノマー及び炭化水素系アイオノマーのブレンドを含むことができる。前記第2アイオノマーのイオン交換容量(Ion Exchange Capacity、IEC)は、0.8~1.9meq/gであってもよい。
【0058】
前記第4フッ素系アイオノマー及び炭化水素系アイオノマーのブレンドのイオン交換容量(Ion Exchange Capacity、IEC)は、0.8~1.9meq/gに該当し、前記数値範囲から外れた場合、高分子電解質膜のイオン伝導度が低くなる可能性がある。
【0059】
前記第3及び第4フッ素系アイオノマーは、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、スルホン酸フルオリド基及びこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの陽イオン交換基を含むフッ素系高分子であってもよい。
【0060】
本発明の一実施例において、第3及び第4フッ素系アイオノマーは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。具体的には、前記第3及び第4フッ素系アイオノマーが互いに異なる場合、前記第3及び第4フッ素系アイオノマーは、それぞれ独立的に、500~1100g/eqのEWを有するパーフルオロスルホン酸系アイオノマーを含むことができる。
【0061】
具体的には、前記第3フッ素系アイオノマーは、600~800g/eqのEWを有することが好ましい。前記第4フッ素系アイオノマーは、強度を高める前記炭化水素系アイオノマーとブレンドされるため、600g/eq以下のEW値を有することができる。すなわち、前記第4フッ素系アイオノマーは、500~1100g/eqのEWを有することが好ましく、より好ましくは、700~900g/eqのEWを有することが好ましい。
【0062】
第1アイオノマーは、燃料電池システムの物理的耐久性を向上させるために用いられ、高分子電解質膜のまた別の形態である強化複合膜(Reinforced Composite Membrane)を形成することができる。具体的には、前記強化複合膜は、単一膜形態の高分子電解質膜の機械的耐久性を向上させるための一環として、多孔性支持体に第1アイオノマー分散液を含浸させて製造することができる。
【0063】
強化複合膜は、電解質物質であるイオン伝導体とともに、電解質単一膜の欠点である寸法安定性、耐久性、機械的強度などを向上させるための多孔性支持体で構成することができる。具体的には、第1アイオノマーは、高分子電解質の高いイオン伝導度を確保するため、EW(Equivalent Weight)の値が低い可能性がある。
【0064】
一方、強化複合膜は、燃料電池を駆動させる際に、陽極板のガス流入口及び/又はガス排出口と対応する第1セグメントで圧力を受けることにより、第1アイオノマーを含む強化複合膜が劣化及び脱離するという問題が発生した。これにより、強化複合膜の化学的耐久性が低下して、燃料電池の性能が落ちるようになった。
【0065】
具体的には、第1アイオノマーを含む強化複合膜は、強力なC-F結合と電気的に陰性を帯びるフッ素原子のシールディング効果(Shielding Effect)により、150℃までは熱的に安定しており、150℃以上の温度で劣化し始めて、280℃以上の高温でサイドチェーン(side chain)であるスルホン酸基が離れていく可能性がある。高分子電解質膜の電気化学的劣化は、膜を通過した水素と酸素が触媒上で結合して形成された過酸化水素とラジカル(Radical)によって発生する。すなわち、前記過酸化水素とラジカルが第1アイオノマーを成す高分子間の結合を断ち切って、セルの性能と寿命を減少させるのである。
【0066】
本発明は、上記のような劣化反応を抑制して、化学的又は機械的耐久性を向上させることを目的とする。
【0067】
これを解決するために、本発明に係る高分子電解質膜は、前記陽極板のガス流入口(Inlet)及び/又はガス排出口(Outlet)と対応するセグメントに、第2アイオノマーがコーティングされた第1セグメントをさらに含むことにより、化学的又は機械的耐久性が改善されるものに該当すると言える。
【0068】
具体的には、本発明に係る高分子電解質膜の化学的劣化が改善されるという点は、水素透過度、OCVの加速耐久評価及び付随するFER(Fluoride Ion Emission Rate)テストで確認することができる。
【0069】
前記水素透過度を測定してみると、本発明に係る高分子電解質膜は、第2フッ素系アイオノマーを適用せず、第1フッ素系アイオノマーのみが適用された高分子電解質膜と比較したとき、より低い値の水素透過度を示すと推測することができる。
【0070】
例えば、OCV(Open Circuit Voltage)耐久性を測定してみると、本発明に係る高分子電解質膜は、第2フッ素系アイオノマーを適用せず、第1フッ素系アイオノマーのみが適用された高分子電解質膜と比較したとき、より高いOCV耐久性を示すことができる。前記OCV耐久性は、時間(hr)に応じたOCV(V)の変化によって把握することができる。
【0071】
前記FER(Fluoride Ion Emission Rate)は、高分子電解質膜のOCVの加速試験を行い、フッ素の流出速度を測定する実験である。セルの寿命は、本発明に係る高分子電解質膜が、第1フッ素系アイオノマーのみが適用された高分子電解質膜より高い値を示し、化学的耐久性が改善されると推測することができる。
【0072】
具体的には、第2アイオノマーは、第1アイオノマーより相対的にEW値が高いことを特徴とする。EW値が高いほどイオン伝導性はやや低下するものの、第2アイオノマーを含む、ガス流入口及び/又はガス排出口と対応する高分子電解質膜部分の、化学的又は機械的耐久性を改善させることができる。
【0073】
前記第1セグメントは、前記高分子電解質膜の一面を基準として、全活性面積の50%以下を占めることができ、より好ましくは、第1セグメントは、前記高分子電解質膜の全活性面積の5~40%であることが好ましい。さらに好ましくは、10~30%であることが適切である。前記第1セグメントが前記数値範囲の面積より小さい場合、高分子電解質膜の化学的又は機械的耐久性が改善される効果が現れない可能性があり、前記数値範囲の面積より大きい場合、高分子電解質膜の水素イオン伝導度が低下する可能性がある。
【0074】
本発明に係る高分子電解質膜の製造方法は、多孔性支持体を第1アイオノマー分散液に浸漬した後、乾燥させて電解質膜を製造するステップと、前記乾燥された電解質膜の表面で燃料電池の陽極板のガス流入口及び/又はガス排出口と対応する部分に第2アイオノマーをコーティングして第1セグメントを形成するステップとを含むが、但し、前記第2アイオノマーは前記第1アイオノマーより相対的にEW値が高いものであってもよい。
【0075】
一般的な高分子電解質膜の製造方法は、アイオノマーを含む分散液をキャスティング(casting)するステップと、前記分散液上に乾燥状態(dry state)の前記多孔性支持体を載置することにより、前記多孔性支持体を全体的に湿潤状態(Wet state)にするステップと、湿潤状態の多孔性支持体を乾燥するステップとを含むことができる。
【0076】
既存の製造方法に加えて、第2アイオノマーをコーティングするステップを経ることにより、本発明に係る高分子電解質膜を製造することができる。
【0077】
具体的には、上述したように、第1アイオノマーを含む分散液をキャスティング(casting)するステップと、前記分散液上に乾燥状態(dry state)の前記多孔性支持体を載置することにより、前記多孔性支持体を全体的に湿潤状態(Wet state)にするステップとを行う。その次に、第1セグメントを形成しようとする領域に第2アイオノマーをコーティングするステップを行うことにより、第1セグメントを形成することができる。
【0078】
より詳しくは、前記第1セグメントを形成するステップは、前記第2アイオノマーをスプレー(Spray)及びラミネート(Laminating)方式の中で選択されたいずれか一つでコーティングしたことを含むことができる。
【0079】
前記第1セグメント(SEG1)の厚さは、5~100μm(マイクロメートル)であってもよく、好ましくは、7~60μm(マイクロメートル)であってもよい。第2サブ層(sub2)の厚さは、1~10μm(マイクロメートル)であることが好ましい。
【0080】
一方、第2セグメント(SEG2)と第1セグメント(SEG1)との間には段差が存在する可能性があり、その差は1~10μm(マイクロメートル)であってもよい。より好ましくは、前記段差は1~5μm(マイクロメートル)であってもよく、前記段差範囲から外れた場合、膜-電極アセンブリの電極転写の均一性及び、セルを締結する際における締結圧の偏差の問題が生じる可能性がある。
【0081】
前記スプレー方式は、噴霧器を用いて第2アイオノマーを前記第1セグメントにコーティングすることを意味し、前記ラミネート方式は、前記第1セグメントに第2アイオノマーを薄く重ねて表面を保護し、強度と安定性を高める技術を意味する。第2サブ層(sub2)は、例えば、単一層又は多重層であってもよく、本発明の技術的思想は層の数に限定されない。
【0082】
具体的には、スプレー方式は、例えば、処理された多孔性支持体を一定の形状に作製された枠に平らに固定し、超音波スプレーガン(Spray gun)を用いて、一定距離を置いて、第2アイオノマー分散液を噴射することで行うことができる。第2アイオノマー分散液は、約20~130frequencyの下で約1~1000ml/secの流量で噴射することができる。前記第2アイオノマーを多孔性支持体に向けて噴射する際には、実質的に重力方向に噴射することが好ましい。この場合、前記第2アイオノマー分散液が噴射される方向と重力方向が実質的に同一であるため、前記スプレー方式を行う際に含浸力を最大化することができる
【0083】
前記ラミネート(Laminating)方式は、ラミネーターマシン(Laminator machine)を用いて前記マシンを構成するラミネーターロール(Laminator roll)で前記第1セグメントに第2アイオノマーを熱転写する製造方法を意味する。
【0084】
前記ラミネーターロールを用いて前記第2アイオノマーを前記第1セグメントに熱転写する際の温度は、80~160℃であることが好ましく、さらに好ましくは、90~130℃であることが好ましい。前記数値範囲の温度を超える場合、熱によってフッ素系アイオノマーが分解されるという問題が生じる可能性がある。
【0085】
また、前記第1セグメントを形成するステップは、強化複合膜の製造工程の一つであるR2R(Roll to Roll)工程で、追加の工程なしにインラインで導入が可能であるため、製造コストを節約できるという利点がある。
【0086】
前記多孔性支持体は、前駆体(Precursor)を紡糸溶媒に溶かして紡糸溶液を製造し、前記製造された紡糸溶液を紡糸して平均直径が0.005~5μm(マイクロメートル)のナノ繊維からなる多孔性ナノウェブ(Nanoweb)を製造した後、製造されたナノウェブを後処理する工程によって形成することができる。
【0087】
前記多孔性支持体は、高い多孔度と微細な孔隙及び薄膜を得るために、電気紡糸工程によって製造することが好ましいが、本発明の技術的思想がこれに限定されるものではない。
【0088】
前記多孔性支持体は、ナイロン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、これらの共重合体及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つを紡糸して製造することができる。
【0089】
以下、
図1~
図3を参照して本発明の構成を説明する。
【0090】
図3は、本発明の一実施例に係る燃料電池を示すものである。
【0091】
図1~
図3を参照すると、本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリ35は、第1電極32、第2電極33及び前記第1及び第2電極32、33の間に介在する、いくつかの実施例に係る高分子電解質膜34を含むことができる。具体的には、前記第1電極32は、酸素の還元反応が起こる還元極(cathode)であり、前記第2電極33は、水素の酸化反応が起こる酸化極(anode)であってもよい。前記高分子電解質膜は、前述した本発明の一実施例に係る高分子電解質膜と同一であるため、繰り返しの説明は省略する。
【0092】
本発明の別の実施例に係る燃料電池39は、第1セパレータ31、第2セパレータ37及び前記第1及び第2セパレータ31、37の間に介在する前記膜-電極アセンブリ35を含むが、但し、前記第1電極32は、前記第1セパレータ31と前記高分子電解質膜34との間に配置され、前記第1セパレータ31は、前記第1電極32に供給される第1ガスのための第1流入口(inlet)、前記第1ガスのための第1排出口(outlet)、及び前記第1流入口と前記第1排出口との間の第1流動チャンネル(flow channel)を含み、前記第1セグメント(SEG1)は、前記第1流入口又は前記第1排出口に対応するセグメントであることを特徴とすることができる。
【0093】
本発明のまた別の実施例に係る燃料電池は、上述したセパレータ及び電池の間にガス拡散層をさらに含むことができる。ガス拡散層に関する詳細な説明は、当該技術分野において通常の技術者にとっては自明のことであるため省略する。
【0094】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施例について詳しく説明するが、これは一つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容によって限定されるものではない。
【0095】
[製造例1:高分子電解質膜の製造]
【0096】
下記の比較例1及び実施例1~3に係る高分子電解質膜を製造した。
【0097】
<比較例1>
【0098】
当量(EW)が600g/eqのフッ素系高分子(perfluorosulfonic acid;PFSA)を20重量%で含むアイオノマー分散液を製造して、多孔性支持体(e-PTFE、気孔サイズ:0.10μm~0.15μm、厚さ:6μm 、引張伸び率(MD/TD):1.1)に浸した後、60℃で1時間乾燥して複合層を製造した。その後、同一のアイオノマー分散液を前記複合層の両面にさらに塗布した後、60℃で1時間一次乾燥及び150℃で30分間二次乾燥して高分子電解質膜を製造した。
【0099】
<実施例1>
【0100】
当量(EW)が600g/eqのフッ素系高分子(perfluorosulfonic acid;PFSA)を20重量%で含むアイオノマー分散液を製造して、多孔性支持体(e-PTFE、気孔サイズ:0.10μm~0.15μm、厚さ:6μm 、引張伸び率(MD/TD):1.1)に浸した後、60℃で1時間乾燥して複合層を製造した。その後、同一のアイオノマー分散液を前記複合層の両面にさらに塗布した後、60℃で1時間一次乾燥、150℃で30分間二次乾燥して高分子電解質膜を製造した。以後、スプレー噴射法(装備:スプレーガン/離隔距離:10cm、噴射量1ml/min)を用いて、ガス流入口(Gas inlet)及びガス排出口(Gas outlet)に対応する第1セグメントに該当する高分子電解質膜の両面の縁(edge)の部分に、当量(EW)が900g/eqのフッ素系高分子(perfluorosulfonic acid;PFSA)をさらに塗布した。その結果、前記高分子電解質膜の両面の縁の部分に厚さが5μmの第2サブ層をそれぞれ形成した。
【0101】
<実施例2>
【0102】
実施例1と同一の方法で高分子電解質膜を製造するが、但し、前記スプレー噴射法の代わりに、熱ローラーの温度が150℃の熱ラミネート方式を用いて前記高分子電解質膜の両面の縁の部分に厚さが2~3μmの第2サブ層を形成した。
【0103】
<実施例3>
【0104】
実施例1と同一の方法で高分子電解質膜を製造するが、但し、前記当量(EW)が900g/eqのフッ素系高分子の代わりに、PFSA(Perfluorosulfonic acid)とスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(Sulfonated polyetheretherketone:SPEEK)が1:1の重量比で混合されたブレンド(イオン交換容量:1.0meq/g)を使用した。
【0105】
[製造例2:膜-電極アセンブリの製造]
【0106】
前記製造例1に係る高分子電解質膜の両面に電極スラリーを直接コーティングして膜-電極アセンブリを製造した。前記電極スラリーは、3:2の重量比で混合されたPt/Cとバインダー(PFSA)とを含む。
【0107】
[実験例1:膜-電極アセンブリのOCV hold test]
【0108】
前記製造例2に係る膜-電極アセンブリの化学的耐久性を評価した。具体的には、プロトコル(90℃、30RH、50kPa、An=H2/Ca=Air)下で100時間毎に水素透過度(LSV法)を評価した後、初期比10倍以上増加した場合と、OCV lossが20%以上である場合、評価を終了した。 。
【0109】
図4は、実施例1及び比較例1に係る高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリそれぞれのOCV hold testを示すものである。
【0110】
図4を参照すると、時間が経過するにつれ、比較例1に係る高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリのOCV lossは、実施例1に係る高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリのOCV lossに比べて、速い時間内に20%に達することがわかる。これを通じて、ガス流入口及びガス排出口に対応する第1セグメントの導入によって化学的耐久性が改善されることを確認することができる。
【0111】
実施例2及び3に係る高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリの場合、前記
図4と同様に、同一のプロトコル下でOCV hold testを実施して、下記の表1のような結果を得た。
【0112】
【0113】
前記表1を参照すると、実施例1~3に係る高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリは、比較例1に係る高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリと対照的に、劣化時のOCV lossが20%に達するのに必要な時間(hour)が長くかかることを確認することができる。これを通じて、実施例1~3に係る高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリの化学的耐久性が、比較例1に比べて著しく改善されたことを確認することができる。特に、実施例1及び3を比較すると、炭化水素系アイオノマーとフッ素系アイオノマーのブレンドで第2サブ層を構成したとき、当量が相対的に大きいフッ素系アイオノマーで第2サブ層を構成したときよりも、化学的耐久性の効果がさらに大きいことを推測することができる。
【0114】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、後述する特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【国際調査報告】