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特表2023-500616接着接合用のプライマー組成物及びそれの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(54)【発明の名称】接着接合用のプライマー組成物及びそれの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20221227BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20221227BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221227BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20221227BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/00 D
C09D7/63
C09J5/00
C09J201/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524188
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 US2020058177
(87)【国際公開番号】W WO2021087238
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/929,536
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, イーチアン
(72)【発明者】
【氏名】コーリ, ダリップ ケー.
【テーマコード(参考)】
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J038CA002
4J038DB001
4J038JB04
4J038JB05
4J038JB18
4J038JC30
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038PC02
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB05
4J040PA00
4J040PA08
(57)【要約】
1種以上の有機溶剤と、1種以上のエポキシ樹脂と、1種以上の硬化剤と、シラン化合物と、ナノメートルサイズ、サブミクロン又はミクロンサイズの少量のコア-シェルゴム粒子とを含有する溶剤系接合プライマー組成物が本明細書に開示される。硬化性接着剤によって金属表面を第2基材に接合する前に第1基材の金属表面上へ溶剤系接合プライマー組成物を塗布する方法がまた開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着接合前に金属表面を処理するための表面処理であって、
プライマー組成物を金属表面上へ塗布して連続表面を有する硬化性プライマーフィルムを形成する工程を含み、前記プライマー組成物が、
(i)1種以上のエポキシ樹脂;
(ii)少なくとも1種のアミン含有硬化剤;
(iii)少なくとも1つの加水分解性基を有するシラン化合物;
(iv)コア-シェルゴム(CSR)粒子;及び
(v)有機溶剤の混合物
を含み、
前記プライマー組成物は5%~30%の固形分を有し、CSR粒子の量は、前記組成物の総重量を基準として2重量%(重量パーセント)未満、好ましくは0.2重量%~0.8重量%の範囲内であり、
水は、前記プライマー組成物に添加されず、
前記プライマー組成物中の成分(i)~(v)は均一溶液を形成する
表面処理。
【請求項2】
前記少なくとも1種のアミン含有硬化剤は、芳香族ジアミン、ジシアンジアミド(DICY)、及びヒドラジドから選択される、請求項1に記載の表面処理。
【請求項3】
前記少なくとも1種のアミン含有硬化剤は、2,2-ビス-4-(4-アミノフェノキシ)フェニルプロパン(BAPP)であり、前記プライマー組成物は、触媒としてのビスウレアを更に含む、請求項1又は2に記載の表面処理。
【請求項4】
溶剤の前記混合物は、ジアセトンアルコール(DAA)、アセトン、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコール、キシレン、トルエン、及び酢酸エチルから選択される少なくとも1種の溶剤と組み合わせてメチルエチルケトン(MEK)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の表面処理。
【請求項5】
前記溶剤は、メチルエチルケトン(MEK)とジアセトンアルコール(DAA)との混合物である、請求項4に記載の表面処理。
【請求項6】
MEK対DAAの重量比は、60:40~95:05、好ましくは、70:30~90:10である、請求項5に記載の表面処理。
【請求項7】
前記CSR粒子は、10nm~3000nm、好ましくは、10nm~500nmの範囲の粒径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の表面処理。
【請求項8】
前記プライマー組成物は、噴霧又ははけ塗りによって塗布される、請求項1~7のいずれか1項に記載の表面処理。
【請求項9】
前記プライマー組成物は、腐食防止化合物を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の表面処理。
【請求項10】
前記金属表面は、アルミニウム及びアルミニウム合金、鋼、チタン及びチタン合金から選択される金属基材の表面である、請求項1~9のいずれか一項に記載の表面処理。
【請求項11】
前記金属表面は、前記プライマー組成物を塗布する前に金属酸化物コーティングを形成するために陽極酸化又はゾル-ゲルプロセスにかけられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の表面処理。
【請求項12】
請求項1に記載の表面処理に従った第1基材の金属表面上に硬化性プライマーフィルムを形成する工程と;
それの上に前記プライマーフィルムがある前記第1基材を第2基材に接着接合し、それによって硬化性の、ポリマー接着剤が、前記プライマーフィルムと前記第2基材との間に配置される工程と;
前記接着剤を硬化させて接合構造体を形成する工程と
を含む接着方法。
【請求項13】
(i)1種以上のエポキシ樹脂を含む5~15重量%のエポキシ成分と;
(ii)エポキシ成分の100部当たり10~20部の硬化性成分であって、少なくとも1種のアミン含有硬化剤、及び任意選択的に、1種以上の触媒又は促進剤を含む、硬化性成分と;
(iii)0.1~2重量%のオルガノシランと;
(iv)0.2~0.8重量%のCSR粒子と;
(v)5%~30%固形分を提供するための有機溶剤の混合物と
を含む溶剤系プライマー組成物であって、
重量%が、前記プライマー組成物の総重量を基準としており、
有機溶剤の前記混合物が水を含まない
溶剤系プライマー組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種のアミン含有硬化剤は、芳香族ジアミン、ジシアンジアミド(DICY)、及びヒドラジドから選択される、請求項13に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項15】
前記硬化性成分は、2,2-ビス-4-(4-アミノフェノキシ)フェニルプロパン(BAPP)と触媒としてのビスウレアとの組合せを含む、請求項14に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項16】
溶剤の前記混合物は、ジアセトンアルコール(DAA)、アセトン、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコール、キシレン、トルエン、及び酢酸エチルから選択される少なくとも1種の溶剤と組み合わせてメチルエチルケトン(MEK)を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項17】
前記溶剤は、メチルエチルケトン(MEK)とジアセトンアルコール(DAA)との混合物である、請求項16に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項18】
MEK対DAAの重量比は、60:40~95:05、好ましくは、70:30~90:10である、請求項17に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項19】
前記CSR粒子は、10nm~3000nm、好ましくは、10nm~500nmの範囲の粒径を有する、請求項13~18のいずれか一項に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項20】
好ましくは、前記組成物の総重量を基準として3重量%以下の量で、腐食防止化合物を更に含む、請求項13~19のいずれか一項に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項21】
好ましくは、前記組成物の総重量を基準として0.3重量%以下の量で、微粒子形態の無機充填材及び/又は顔料/染料を更に含む、請求項13~20のいずれか一項に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項22】
接着接合前に金属表面を処理するための表面処理であって、
請求項13~21のいずれか一項に記載の溶剤系プライマー組成物を金属表面上へ塗布して連続表面を有する硬化性プライマーフィルムを形成する工程
を含む表面処理。
【請求項23】
(a)請求項13~21のいずれか一項に記載の溶剤系プライマー組成物を、第1基材の金属表面上に塗布して硬化性プライマーフィルムを形成する工程と;
(b)それの上に前記プライマーフィルムがある前記第1基材を第2基材に接着接合し、それによって硬化性の、ポリマー接着剤が、前記プライマーフィルムと前記第2基材との間に配置される工程と;
(c)前記プライマーフィルム及び前記接着剤を硬化させて接合構造体を形成する工程と
を含む接着方法。
【請求項24】
前記第1基材は、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼、チタン及びチタン合金から選択される金属で形成される、請求項23に記載の接着方法。
【請求項25】
前記第2基材は、(i)未硬化樹脂マトリックス又は硬化ポリマーマトリックス及び(ii)強化繊維を含む複合基材である、請求項23又は24に記載の接着方法。
【請求項26】
前記第2基材は金属基材である、請求項23又は24に記載の接着方法。
【請求項27】
前記第2基材は、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼、チタン及びチタン合金から選択される金属で形成される、請求項26に記載の接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複合構造体、特に航空宇宙産業及び自動車産業における複合構造体の製造において、構造用接着剤を利用して二次加工金属構造体を金属若しくは複合被着体に接合するか、樹脂含浸繊維質強化材の1つ以上のプリプレグプライを二次加工金属構造体に積層することが一般に行われている。接合は、典型的には、構造体が接合された後に構造用接着剤を硬化させることを必要とする。一般に、最大レベルの接着強度を確保するために、金属表面は、接合の直前に、ほこり、土、グリース、及び金属酸化生成物を丁寧に取り除かれる。残念なことに、この手順は、洗浄及び接合作業が長時間の休止期間によって分離されることが多いので、一般にほとんど使用できない。そのような期間中に、金属表面は加水分解され、接合の接着強度が低下する場合がある。この困難を克服するための解決策は、接着接合の前に洗浄された金属表面上にプライマーを塗布することである。そのようなプライマーは、接合プライマーと言われることが多い。
【0002】
金属構造体を別の表面に接合することを必要とする航空宇宙構造体の製造において、課題は、接合強度及び長期防食要件の両方を満たす全体的にバランスのとれた接合性能を維持できるプライマーを金属表面に提供することであった。生産フロア上で、大きい金属セクション、例えば、1.5m超の寸法(幅及び/又は長さ)を有する航空機のアルミニウム合金セクションの表面上へ噴霧ノズルを用いる噴霧によってプライマー層が塗布される場合、プライマー層のターゲット厚さは、典型的には0.2ミル(つまり5.1μm)である。一度で単一噴霧ノズルによって覆うことができる表面積の限定及び噴霧ノズルと金属表面との距離の変化のために、プライマー層の厚さは、噴霧中の大きい表面積にわたって一様ではないことが分かっている。頻繁に、0.1ミル(2.5μm)ほどに薄い又は0.3ミル(7.6μm)以上ほどに厚い厚さを有するプライマー層の部分又はセクションがある。接合強度、特に剥離強度の観点から接合プライマーが独特の厚さ感受性を示すことは接合技術の当業者に周知である。現在販売されているほとんどの接合プライマー製品は、プライマー厚さが約0.25ミル(6.4μm)を超える場合に顕著な剥離強度低下を示す傾向があることが分かっている。特に、-67°F(-55℃)などの低温での剥離強度は、0.25ミル(6.4μm)超の厚さを有するプライマー層に関して更により顕著に低下する。そのような低温での剥離強度測定は、典型的には、航空宇宙用途向けに必要とされる。これ故に、重ね剪断強度及びハンドリング特性などの全体性能に悪影響を及ぼすことなく、低温剥離試験に対して厚さ許容度を示す接合プライマーを製造することが大きな課題であった。用語「厚さ許容度」は、本明細書に関連して、厚さの変化に耐える能力を言う。プライマー配合化学の観点から、プライマー厚さ許容度の改善は、硬化プライマー層のポリマーネットワークにおける更なる強化効率を必要とする。更に、そのような強化効率を高めるためにプライマー組成物に添加される任意の強化材料は、プライマーの全体性能に悪影響を及ぼすことなく、プライマー化学と相溶性であるべきであるか又はプライマー化学と相乗的に働くべきである。低温、特に、0℃未満、例えば-55℃での剥離強度の観点から高い靱性を提供することができる、且つ、0.3ミル(7.6μm)以上のプライマー厚さで塗布することができるプライマー配合物を使用する金属構造体の接着方法が依然として必要とされているままである。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1-2】0.2ミル厚さのプライマーフィルムを使用する試験クーポンに関して行われたフローティングローラー剥離試験の破壊モードを示す。
図3-4】0.3ミルプライマー厚さのプライマーフィルムを使用する試験クーポンに関して行われたフローティングローラー剥離試験の破壊モードを示す。
図5-6】0.3ミル厚さのプライマーフィルムを使用する試験クーポンに関して行われたフローティングローラー剥離試験の破壊モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
硬化性接着剤によって金属表面を第2基材に接合する前に、第1基材の金属表面上へ塗布するための溶剤系接合プライマー組成物が本明細書に開示される。
【0005】
接合プライマー組成物は、組成物の総重量を基準として5重量%~30重量%の固形分(ここで、固形分は、プライマー組成物中の液体溶剤を除いて全ての成分を意味する)を有し、1種以上のエポキシ樹脂と、硬化剤と、シラン化合物と、少量のコア-シェルゴム(CSR)と、有機溶剤の混合物とを含有する溶剤系分散液である。CSR粒子は、ナノメートルサイズ(100nm未満)、サブミクロンサイズ(100nm~1000nm)又はミクロンサイズ(1ミクロン~100ミクロン)にあってもよい。好ましくは、CSR粒子は、約100nm以下の粒径のナノ-サイズ粒子である。CSR粒子の量は、組成物の総重量を基準として2重量%(重量パーセント)未満、好ましくは、0.2重量%~0.8重量%の範囲内である。
【0006】
一実施形態によれば、溶剤系プライマー組成物は、
(i)5~15重量%の1種以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ成分と;
(ii)エポキシ成分の100部当たり10~20部の硬化性成分(硬化性成分は、1種以上の硬化剤、及び任意選択的に、1種以上の触媒を含む)と;
(iii)0.1~2重量%のオルガノシランと;
(iv)0.2~0.8重量%のCSR粒子と;
(v)5重量%~30重量%の固形分を提供するための2種以上の有機溶剤の混合物と
を含有する分散液である。
【0007】
上に開示された重量%は、組成物の総重量を基準とする。
【0008】
任意選択的に、プライマー組成物は、3重量%以下の少なくとも1種のクロム酸塩若しくは非クロム酸塩腐食防止剤、並びに/又は0.3重量%以下の微粒子形態の無機充填材及び/若しくは顔料/染料を含有する。用語「以下の」は、ゼロ(0)超を意味する。
【0009】
溶剤混合物は、メチルエチルケトン(MEK)、ジアセトンアルコール(DAA)、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロピルアルコール、アセトン、エチレングリコール、キシレン、トルエン、及び酢酸エチルなどの揮発性有機溶剤を含む。溶剤は、これに関連して水を含まない。水は、上に開示された固形分を形成するために添加されない。一実施形態では、溶剤混合物は、ジアセトンアルコール(DAA)、アセトン、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコール、キシレン、トルエン、及び酢酸エチルから選択される少なくとも1種の溶剤と組み合わせてMEKを含む。好ましい実施形態では、溶剤混合物は、メチルエチルケトン(MEK)とジアセトンアルコール(DAA)とを含む。好ましくは、MEK対DAAの重量比は、60:40~95:05、好ましくは、70:30~90:10である。別の実施形態では、溶剤混合物は、MEK、DAA及びTHFからなり、ここで、MEKの量は、混合物の総重量を基準として50重量%超である。
【0010】
溶剤は、任意の腐食防止剤の添加前に相の分離がない均一溶液を生成するように選択される。CSR粒子は、この均一溶液の全体にわたって一様に分散させられる。「均一溶液」は、単一相中の多数の物質の均一混合物を意味し、ここで、溶剤又は溶剤混合物は最大量で存在する。上述の成分(i)~(v)は、単一相を形成する。均一溶液は、非常に長い期間、例えば1年超、この一相安定性にとどまることができる。溶剤系プライマー組成物は、室温(23℃~25℃)で少なくとも180日の及び4℃~8℃以下の冷蔵温度ではるかにより長い、長い貯蔵寿命を有し、ここで、CSR粒子は、容器の底部に沈殿しない又は凝集しない。そのようなCSR粒子沈殿又は凝集は、プライマーフィルム品質及び接合性能に悪影響を及ぼすであろう。腐食防止剤粒子の不在下の、CSR粒子が一様に分散した均一溶液は、CSR粒子の実質的な沈殿又は凝集なしに1年超の間、影響を受けないで、室温でこの状態にとどまることができることが分かった。
【0011】
一般に、接着接合の前に金属表面を処理するための表面処理は、
本明細書に開示される溶剤系プライマー組成物を金属表面上へ塗布して連続表面を有する硬化性プライマーフィルムを形成することを含む。
【0012】
一般に、本開示のプライマー組成物は、
(a)溶剤系プライマー組成物を第1基材の金属表面上に塗布して硬化性プライマーフィルムを形成する工程と;
(b)それの上にプライマーフィルムがある第1基材を第2基材に接着接合し、それによって硬化性の、ポリマー接着剤が、プライマーフィルムと第2基材との間に配置される工程と;
(c)プライマーフィルム及び接着剤を硬化させて接合構造体を形成する工程と
を含む接着方法に組み込まれる。
【0013】
処理される金属表面は、アルミニウム及びアルミニウム合金、鋼、チタン及びチタン合金から選択される金属の表面であってもよい。
【0014】
別の基材(金属又は複合基材)への金属基材の接着接合のために、本開示の溶剤系プライマー組成物は、噴霧ノズル又は手動はけ塗りによって金属表面上へ塗布されて硬化性プライマーフィルムを形成し得る。プライマー組成物は、所望のフィルム厚が達成されるまで、複数のコートで金属表面に、例えば噴霧又ははけ塗りによって塗布され得る。次いで、プライマー処理された表面は、硬化及び接合の前に、例えば、15~40分間、空気中で乾燥させられる。
【0015】
金属表面は、その後に塗布されるプライマーフィルムへの金属表面の接着性を高めるために、プライマー組成物を塗布する前に好ましくは前処理される。プライマーフィルムは、組立体を接合する前に1時間、高温、例えば250°F~350°F(121℃~177℃)においてオーブン中で硬化させられる。次いで、金属基材のプライマー処理された表面は、プライマー処理された表面と第2基材との間に、硬化性の、ポリマー接着剤を提供することによって第2基材に接着させられる。第2基材は、別の金属基材(例えば、アルミニウム若しくはアルミニウム合金、鋼、チタン若しくはチタン合金)又はマトリックス樹脂に埋め込まれた若しくはマトリックス樹脂を含浸した強化繊維からなる複合基材であってもよい。接着剤は、第2基材の表面上へ塗布されてもよく、又は或いは、接着剤は、第1基材のプライマー処理された表面上へ塗布されてもよい。次いで、結果として生じた組立体は、接着剤を硬化させ、その結果として、接合構造体を製造するために高温での硬化にかけられる。硬化は、組立体に熱及び圧力を加えることによって実施され得る。プライマー組成物は、250°F~350°F(121℃~177℃)の範囲内の温度で硬化可能である従来の硬化性の、ポリマー接着剤(特に、エポキシ系接着剤)と相溶性であることができるように配合される。
【0016】
本明細書で用いられるような用語「基材」には、任意の形状及び構成の層及び構造体が含まれる。
【0017】
本明細書で用いられるような用語「硬化する(cure)」及び「硬化(curing)」は、化学添加剤、紫外線又は熱によって引き起こされる、ポリマー鎖の架橋によるポリマー材料の硬化を言う。「硬化性」である材料は、硬化することができる、すなわち硬くなることができるものである。
【0018】
第2基材が、強化繊維及びマトリックス樹脂からなる複合基材である場合、マトリックス樹脂は、部分若しくは完全硬化であっても、未硬化であってもよい。2つの基材の接着接合の前に、マトリックス樹脂が未硬化であるか又は部分的にのみ硬化している場合、マトリックス樹脂の完全な硬化は、接合段階中の接着剤の硬化と同時に起こる。
【0019】
その後に塗布されるポリマープライマーフィルムへの金属表面の接着性を高めるために、金属表面は、プライマー組成物をそれの上に塗布する前に前処理されてもよい。好適な表面処理としては、ウェットエッチング、リン酸陽極酸化(PAA)、及びリン酸/硫酸陽極酸化(PSA)などの陽極酸化、及び当業者に公知であるゾル-ゲルプロセスが挙げられる。好適な表面処理のより具体的な例は、石鹸溶液での洗浄、引き続くウェットエッチング、次いで酸溶液での陽極酸化を含む、ASTM D2651である。本明細書に開示される溶剤系プライマー組成物は、これらの様々な表面処理に適合するように配合される。
【0020】
PAAは、典型的には、リン酸(例えばASTM D3933)を使用して金属酸化物表面を形成することを含み、PSAは、典型的には、リン酸-硫酸を使用して金属酸化物表面を形成することを含む。陽極酸化は、プライマー組成物がその中へ浸透することができる多孔質の、粗い表面を生成する。接着は、主に、粗い表面とプライマーフィルムとの間の機械的連結から生じる。
【0021】
ゾル-ゲルプロセスは、典型的には、金属表面上に無機ポリマーネットワークを形成するための、有機官能性シラン及びジルコニウムアルコキシド前駆体の水溶液の加水分解及び縮合反応による金属-オキソポリマーの成長を含む。ゾル-ゲルコーティングは、共有化学結合を介して金属表面とその後に塗布されるプライマーフィルムとの間に良好な接着を提供することができる。
【0022】
エポキシ樹脂
好適なエポキシ樹脂としては、少なくとも約1.8の官能価、又は少なくとも約2の官能価を有する多官能性エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、レゾルシノール及びビスフェノール、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等などの、フェノール類の、任意選択的に鎖延長された、固体グリシジルエーテルである。N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどの、芳香族アミン及びアミノフェノールの固体グリシジル誘導体も好適である。更に、エポキシ樹脂は、約100~8000のエポキシ当量(EEW)を有してもよい。
【0023】
エポキシ樹脂は、固体形態、溶剤又は他の連続相媒体中の分散液又は溶液にあってもよい。分散相中のエポキシ樹脂は、異なる粒子の混合物の形態の2種以上のエポキシ樹脂の分散液であってもよいし、又は2種以上のエポキシ樹脂を含有する1つのタイプの粒子のみからなってもよい。したがって、より高分子量ビスフェノールA又はビスフェノールFエポキシなどの柔軟化エポキシが、テトラグリシジルメチレンジアニリン(TGMDA)などの高温耐性エポキシとブレンドされてもよく、次いで混合物は、溶剤又は他の連続相媒体へ溶解させられる又は分散させられる。これらの同じエポキシ樹脂は、有利には、ブレンドせずに別個に分散させられ得る。
【0024】
異なるエポキシ樹脂の混合物が使用され得る。一実施形態では、エポキシ樹脂の混合物は、ノボラックエポキシ樹脂とビスフェノールAのジグリシジルエーテル(「DGEBA」)樹脂とを含む。例としては、Hexionから入手可能なEPON SU-8などのノボラックエポキシ樹脂、並びにDow Chemical Co.から入手可能なD.E.R.669及びD.E.R.664などのビスフェノールAエポキシ樹脂が挙げられる。別の実施形態では、樹脂混合物は、約4以下の官能価を有するエポキシ樹脂と、約5以上の官能価を有するエポキシ樹脂とを含有する。より高い官能価のエポキシ樹脂、すなわち、5以上の官能価を有するエポキシ樹脂の使用は、少量で、例えば組成物中の全エポキシ樹脂の重量の合計を基準として40重量%未満で好適である。そのようなより高い官能価のエポキシ樹脂のそのようなより少量での使用は、接着特性を実質的に低下させることなく、硬化したプライマー組成物の耐溶剤性を増加させることが分かった。
【0025】
一実施形態では、プライマー組成物は、以下のエポキシ樹脂:
1)30~80重量%の約1.8~約4の官能価及び約400~約1000のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂;
2)5~35重量%の約1.8~約4の官能価及び約2000~約8000のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂;並びに
3)5~25重量%の約5以上の官能価を有する及び約100~約400のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂
の混合物を含み、
ここで、重量百分率は、エポキシ混合物の総重量を基準として合計100%である。
【0026】
エポキシ樹脂の総量は、プライマー組成物の総重量を基準として約5~15重量%であってもよい。
【0027】
コアシェルゴム粒子
個々のコアシェルゴム(CSR)粒子は、一般に、非ゴム弾性ポリマー材料(すなわち、周囲温度超、例えば、約50℃超のガラス転移温度を有する熱可塑性又は熱硬化性/架橋ポリマー)からなるシェルによって取り囲まれるゴム弾性又はゴム状特性(すなわち、約0℃未満、例えば、約-30℃未満のガラス転移温度)を有するポリマー材料からなるコアを有する。例えば、コアは、ジエンホモポリマー又はコポリマー(例えば、ブタジエン又はイソプレンのホモポリマー、ブタジエン又はイソプレンと、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート等などの1種以上のエチレン性不飽和モノマーとのコポリマー)から構成されてもよく、一方、シェルは、好適には高いガラス転移温度を有する(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート)、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)、シアン化ビニル(例えば、アクリロニトリル)、不飽和酸及び無水物(例えば、アクリル酸)、(メタ)アクリルアミド等などの1種以上のモノマーのポリマー又はコポリマーで構成されてもよい。シェルのために使用されるポリマー又はコポリマーは、金属カルボキシレート形成によって(例えば、二価金属カチオンの塩を形成することによって)イオン的に架橋される酸基を有してもよい。シェルポリマー又はコポリマーはまた、1分子当たり2個以上の二重結合を有するモノマーの使用によって共有結合的に架橋され得る。ポリブチルアクリレート又はポリシロキサンエラストマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、特に架橋ポリジメチルシロキサン)などの、他のゴム弾性ポリマーがまた、コアのために好適に使用され得る。粒子は、3つ以上の層からなってもよい(例えば、1つのエラストマー材料の中心コアが、異なるエラストマー材料の第2コアによって取り囲まれてもよく、又はコアが、異なる組成物の2つのシェルによって取り囲まれてもよく、又は粒子が、構造ソフトコア、ハードシェル、ソフトシェル、ハードシェルを有してもよい)。コアかシェルかコア及びシェルの両方かのどれかが、例えば、米国特許第5,686,509号明細書に記載されているように、架橋されてもよい(例えば、イオン的に又は共有結合的に)。シェルは、コア上へグラフトされてもよい。シェルを構成するポリマーは、プライマー組成物の他の成分と相互作用することができる1つ以上の異なるタイプの官能基(例えば、エポキシ基、カルボン酸基)を有してもよい。粒子は、3つ以上の層を有してもよい(例えば、1つのエラストマー材料の中心コアが、異なるエラストマー材料の第2コアによって取り囲まれてもよく、又はコアが、異なる組成物の2つのシェルによって取り囲まれてもよい)。コアは、粒子の約50重量%~約95重量%を構成し、一方、シェルは、粒子の約5重量%~約50重量%を構成する。
【0028】
好ましい実施形態では、CSR粒子は、ポリブタジエンゴムコア、スチレン-ブタジエンゴムコア、又はシリコーンゴムコアとポリアクリレート又はブタジエン-アクリルコポリマー又はブタジエン-スチレンコポリマーシェルとを有する。
【0029】
CSR粒子は、プライマー配合物への添加前及び後に元の粒径を維持するために溶剤又は樹脂中に前分散させられることが好ましい。例えば、それは、10重量%~60重量%の濃度で前述のエポキシ樹脂のいずれか中に前分散させることができる。前分散CSR粒子は、例えば、MX 120(約25重量%のCSR入りの液体ビスフェノールAエポキシ)、MX 125(約25重量%のCSR入りの液体ビスフェノールAエポキシ)、Kane Ace MX-156(約25重量%のCSR入りの液体ビスフェノールAエポキシ)、MX 215(約25重量%のCSR入りのエポキシ化フェノールノボラック)、MX-217(約25重量%の CSR入りのフェノールノボラックエポキシ)、MX-135(約25重量%のCSR入りの液体ビスフェノールFエポキシ)などの、商標Kane AceTM MXでカネカから商業的に入手可能である。或いはまた、微細な粉末状形態のCSRをまた使用することができる。CSR粒子は、ナノメートルサイズ(100nm未満)、サブミクロンサイズ(100nm~1000nm)又はミクロンサイズ(1ミクロン~100ミクロン)を有してもよい。特定の実施形態では、CSR粒径は、10nm~3000nm、好ましくは、10nm~500nmの範囲にある。粒径測定は、1ミクロン未満のサイズについては走査電子顕微鏡法(SEM)又は走査透過電子顕微鏡法(STEM)又はサブミクロン以上の粒径については光学顕微鏡法によって実施することができる。
【0030】
CSR粒子は、高度に安定した分散液を形成すること、すなわち、長期間、好ましくは、1ヶ月超、プライマー組成物中で、凝集せず、それらがプライマー組成物中へ添加された後に元の粒径を維持することが望ましい。
【0031】
硬化剤及び触媒
溶剤系プライマー組成物は、1種以上のアミン含有硬化剤、好ましくは、室温(23℃~25℃)で反応性が高くない潜在的なアミンを含有する。好適な硬化剤としては、芳香族ジアミン、ジシアンジアミド(DICY)、及びヒドラジドが挙げられる。芳香族ジアミンの具体的な例としては、2,2-ビス-4-(4-アミノフェノキシ)フェニルプロパン(BAPP)(BASFから入手可能な)、4、4’-ジアミノ-ジフェニルスルホン(4,4’DDS)、及び3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDS)が挙げられる。ヒドラジドには、ジヒドラジド、トリヒドラジド及びテトラヒドラジドが含まれる。ジヒドラジドは、例えば、活性基[HNHNC(=O)-R-C(=O)NHNH](式中、Rは、任意の多価有機基である)、例えばカルボジヒドラジド(R=CH)で表される。具体的な例としては、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジド(SDH)、バリンジヒドラジド(VDH)、イソフタル酸ジヒドラジド(IDH)、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド及びナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドが挙げられる。他のヒドラジド硬化剤としては、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、トリメシン酸トリヒドラジド、芳香族モノヒドラジド、脂肪族モノヒドラジド、脂肪族モノヒドラジド、脂肪族ジヒドラジド、脂肪族トリヒドラジド、脂肪族テトラヒドラジド、芳香族モノヒドラジド、芳香族ジヒドラジド、芳香族トリヒドラジド、芳香族テトラヒドラジド及びナフトエ酸ヒドラジドが挙げられる。
【0032】
触媒又は促進剤は、熱硬化性樹脂の硬化/架橋を加速するために又はより低い温度での硬化を可能にするために、任意選択の成分として添加されてもよい。そのような触媒/促進剤は、特定の硬化剤がプライマー組成物の加熱温度でプライマー組成物の硬化を達成するのに十分に活性ではない場合に添加されてもよい。例えば、硬化剤が350°Fで活性である場合、約250°Fでの硬化を可能にするために触媒が添加される。触媒/促進剤は、本質的に100%の粒子が約30μm未満の平均径を有するような粒径を有する微粒子形態にあってもよい。好ましい触媒/促進剤としては、ビスウレア、及びイミダゾール類が挙げられるが、それらに限定されない。好ましいビスウレアは、トルエン-2,4-ビス(N,N’-ジメチルウレア)である。いくつかの実施形態では、BAPPとビスウレアとの組合せが使用される。
【0033】
硬化剤は、単独で又は1種以上の触媒/促進剤と組み合わせて、合計(すなわちエポキシ又はエポキシ類の総量)でエポキシ樹脂の100部当たり約2~30部の量で存在してもよい。
【0034】
シラン化合物
溶剤系プライマー組成物中のシラン化合物は、金属表面に接合される材料と反応又は結合することができるシラン官能基を有する。好適なシラン化合物としてはオルガノシランが挙げられる。加水分解性基を有するオルガノシランが好ましい。特定の実施形態では、オルガノシランは、以下の一般式;
【化1】
[式中、nは0以上であり;各Xは、OH、OCH、及びOCHであり、Rは、CH=CH
【化2】
又はCH-CH-CH-Y(ここで、Yは、NH、SH、OH、NCO、NH-CO-NH、NH-(CHNH、NH-アリール、
【化3】
である)であり、各Rは、アルキル、アルコキシ、アリール、置換アリール、又はRである]
を有する。
【0035】
好適な、商業的に入手可能なオルガノシラン化合物の例は、SilquestTM A-186、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;SilquestTM A-187、ガンマ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン;SilquestTM A-189、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;SilquestTM A-1100、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン;SilquestTM A-1170、ビス-(ガンマ-トリメトキシ-シリルプロピル)アミン;及びY-9669、N-フェニル-ガンマ-アミノプロピル-トリメトキシシランを含むが、それらに限定されない、Momentive Performance Materials Inc.から入手可能なものである。他の好適な商業的に入手可能なオルガノシランとしては、Dow Chemical Company製のDOWSILTM Z-6040 Silane、ガンマ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシランが挙げられるが、それらに限定されない。
【0036】
一般に、オルガノシランは、組成物の総重量を基準として約0.1~2重量%の範囲の量で溶剤系プライマー組成物中に存在する。
【0037】
腐食防止剤
本明細書に開示される溶剤系プライマー組成物は、長期の、防錆性能を更に改善するために腐食防止剤を含んでもよい。
【0038】
クロム酸塩又は非クロム酸塩腐食防止剤が、溶剤系プライマー組成物に使用され得るが、環境、衛生及び安全規制を遵守するために、非クロム酸塩化合物が好ましい。好適なクロム酸塩腐食防止剤の例としては、クロム酸ストロンチウム、クロム酸バリウム、クロム酸亜鉛、及びクロム酸カルシウムが挙げられる。非クロム酸塩腐食防止剤としては、NaVO、VO、V7、リン酸塩、ホスホン酸塩、モリブデン酸塩、セリウム、及びホウ酸塩からなる群から選択される1種以上のイオンを含有する無機化合物が挙げられる。無機の、非クロム酸塩腐食防止剤の例としては、メタバナジン酸ナトリウムなどの、メタバナジン酸塩アニオン、モリブデン酸塩とメタバナジン酸塩との組合せ、又はモリブデン酸塩、メタバナジン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、セリウム若しくはホウ酸塩の任意の組合せが挙げられるが、それらに限定されない。グラフェンなどの炭素系材料も好適である。粒子の表面に化学的に固定されている又は封入されている及び腐食の場合に放出可能であるものなどの、有機腐食防止剤も好適である。そのような放出可能な有機腐食防止剤の例は、2010年9月30日に公開された、米国特許出願公開第2010/0247922号明細書に記載されている。異なる腐食防止剤の組合せが使用され得る。
【0039】
添加される場合、腐食防止剤の総量は、プライマー組成物の総重量を基準として3重量%以下であってもよい。
【0040】
任意選択の添加剤
溶剤系プライマー組成物は、従来の染料、顔料、及び無機充填材を任意選択的に含有していてもよい。そのような任意選択の添加剤の総量は、3重量%未満、例えば、0.1重量%~2重量%である。染料又は顔料を含有する組成物の利益は、表面被覆率を視覚的方法によってより容易に評価できることである。塗布プロセス及び安定性のためにレオロジーを制御するために、微粒子形態の、無機充填材がまた添加されてもよい。好適な無機充填材としては、ヒュームドシリカ、粘土粒子等が挙げられる。
【実施例
【0041】
以下の実施例は、少量のCSR粒子入りの溶剤系接合プライマー配合物を使用して得られる性能結果を、そのようなCSR粒子を含有しない他のプライマー配合物と比べて示す。
【0042】
実施例1
プライマー配合物1及び2を、表1に開示される処方に従って調製した。
【0043】
【表1】
【0044】
プライマー配合物のそれぞれを、スプレーガンを使用して表面処理アルミニウム合金シート上へ噴霧して0.2ミル厚さを有するプライマーフィルムを形成した。このプライマー処理工程を別のアルミニウム合金シート上で繰り返して0.3ミル厚さを有するプライマーフィルムを形成した。表面処理は、洗浄、FPLエッチング及びPAA陽極酸化を含む、ASTM D 2651に従った。結果として生じた未硬化フィルムを周囲温度で空気乾燥させた。フローティングローラー剥離試験(ASTM D3167)を、プライマーフィルムの接合性能を測定するために実施した。これらの試験は、硬化性の、エポキシ系接着剤(Cytec Industries Inc.製のFM 73M及びFM 94M)を使用してプライマー処理された表面を別のアルミニウム合金シートに接合し、引き続き硬化させた後に行った。
【0045】
CSRナノ粒子なしのプライマー配合物1に関するフローティングローラー剥離試験結果を表2に報告する。
【0046】
【表2】
【0047】
全固形分を基準として3.5%のローディングでコア-シェルゴムナノ粒子ありのプライマー配合物2に関するフローティングローラー剥離試験結果を表3に報告する。
【0048】
【表3】
【0049】
図1及び2は、それぞれ、0.2ミルのプライマー厚さ及びFM 73M接着剤で、配合物1及び2を使用するフローティングローラー剥離試験クーポンの破壊モードを示す。
【0050】
図3及び4は、それぞれ、0.3ミルのプライマー厚さ及びFM 73M接着剤で、配合物1及び2を使用するフローティングローラー剥離試験クーポンの破壊モードを示す。
【0051】
図5及び6は、それぞれ、0.3ミルのプライマー厚さ及びFM 94M接着剤で、配合物1及び2を使用するフローティングローラー剥離試験クーポンの破壊モードを示す。
【0052】
表1の配合物1及び2は、それぞれ、CSR粒子なし及びありのプライマー組成物である。両配合物と2種の接着剤(FM 73及びFM 94接合接着剤)とに基づいて0.2ミル及び0.3ミル厚さでの剥離試験結果を、表2及び3、並びに図1~6において比較する。CSR粒子の低いローディングの配合物2に基づく-55℃(-67°F)での低温剥離強度は、特に0.3ミル厚さについて、配合物1に関してのものよりも実質的に高い。配合物2に関して試験されたクーポンの破壊モードはまた、図2~4に示されるように、配合物1よりもはるかに凝集的である。実際に、配合物2は、室温及び低い試験温度で0.2ミル及び0.3ミル厚さの両方についてほとんど同一の強度を示す。これらの注目すべき結果は、プリマー層の靱性向上のためにCSR粒子を利用する効果を証明している。更に、低いCSRローディングの配合物2は、配合物1のそれらと同一の噴霧及びフィルム形成性能を示す。配合物1及び2の両方に関しての3000時間耐食性能は、全て性能要件に容易に合格した。
【0053】
実施例2
表4に開示される処方に従って、プライマー配合物3及び4を調製した。
【0054】
【表4】
【0055】
プライマー配合物のそれぞれを、スプレーガンを使用して表面処理アルミニウム合金シート上へ噴霧して0.3ミル厚さを有するプライマーフィルムを形成した。FM 94 M接着剤を使用して実施例1において記載されたようにフローティングローラー剥離試験を実施した。0.3ミル厚さでの粉末状CSRを使用するプライマー配合物3及び4に関しての結果を表5に報告する。
【0056】
【表5】
【0057】
表4の配合物3及び4は、乾燥固形分を基準として同じCSRローディング約3.5%で、それぞれ2種の粉末状CSR製品(DOW製のParaloid EXL-2691A及びアイカ工業株式会社製のZEFIAC F351)を含むプライマー組成物である。両配合物は、FM 94接合接着剤について0.3ミル厚さで非常に良好な周囲温度及び冷温剥離強度を示すことができる(表5において)。しかしながら、Paraloid EXL-2691Aを使用する硬化プライマーフィルムは、余りにも粗く、フィルム外観要件に合格しない。比較して、ZEFIAC F351のものは、滑らかな硬化フィルムを示し、バランスのとれた全体性能を達成する。一見したところ、Paraloid EXL-2691Aは、ZEFIAC F351よりもプライマー配合物において多くの凝集を示す。これらの結果は、他の性能の犠牲を全く払わずにはるかに改善された低温剥離強度を達成するために、粉末状CSR粒子がプライマーネットワークマトリックス中に十分に分散していることが重要であることを明らかに実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】