(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(54)【発明の名称】毛細管透析器の完全性を試験するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B01D 65/10 20060101AFI20221227BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20221227BHJP
A61M 1/18 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B01D65/10
B01D63/02
A61M1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524201
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2020080843
(87)【国際公開番号】W WO2021089565
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】102019129664.1
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ピッチュ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム マヌエル
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077HH07
4C077HH15
4C077LL05
4D006GA13
4D006HA02
4D006KC23
4D006LA03
4D006LA06
4D006MA01
4D006PC47
(57)【要約】
膜で囲まれた複数の中空糸(15)を備える中空糸流体フィルター、詳細には中空糸透析器(1)の完全性を検査するための方法が提示され、本方法は、中空糸(15)の内側又は外側を流体で灌流するステップと、中空糸(15)の外側又は内側にガスを供給するステップと、を含み、ガスは流体よりも高い圧力を有し、本方法は、膜の穴を通って流体に浸透するガス量を決定するステップをさらに含む。本方法では、中空糸流体フィルター(1)を通過した後、流体は気泡トラップ(30)に流通し、予め設定された又は予め設定することができる基準期間中に気泡トラップ(30)に集まるガス容積(41)が決定される。さらに、中空糸流体フィルター(1)の完全性を検査するための装置が提示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜で囲まれた複数の中空糸(15)を備える中空糸流体フィルター(1)、詳細には中空糸透析器の完全性を検査するする方法であって、
-前記中空糸(15)の内側を流体で灌流するステップと、
-前記中空糸(15)の外側にガスを供給するステップと、
又は、
-前記中空糸(15)の外側を液体で灌流するステップと、
-前記中空糸(15)の内側にガスを供給するステップと、
を含む方法であって、それぞれの場合にも前記ガスは前記流体よりも高い圧力を有しており、
前記方法は、
-前記膜の穴を通って前記流体に浸透する前記ガスの量を決定するステップをさらに含み、
-前記中空糸流体フィルター(1)を通過した後、前記流体は気泡トラップ(30)に流通され、
-予め設定された又は予め設定することができる基準期間中に前記気泡トラップ(30)に集まるガス容積(41)が決定される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
-前記ガス容積の(41)の初期値は、前記基準期間の開始時に決定され、
-前記ガス容積(41)の最終値は、前記基準期間の終了時に決定され、
-前記初期値と前記最終値との差から、前記基準期間に前記流体中に浸透した前記ガス量が決定させる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流体として水を用いる、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記気泡トラップ(30)及び前記中空糸流体フィルタ(1)を備える配管システムには、前記検査の開始前に蒸気が供給される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記気泡トラップ(30)内に集められた前記ガス容積の決定は、視覚的に行われる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記気泡トラップ(30)は透明セクション(40)を有し、前記気泡トラップ(30)内に集められたガス容積(41)を決定するために、前記透明セクション(40)の流体表面(42)の位置が評価される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
-前記基準期間の開始時に前記透明セクション(40)の少なくとも1つの第1のカメラ画像が取り込まれ、前記流体表面(42)の初期位置が画像評価手段によって決定され、
-前記基準期間の終了時に前記透明セクション(40)の少なくとも1つの第2のカメラ画像が取り込まれ、前記流体表面(42)の最終位置が画像評価手段によって決定され、
-前記流体表面(42)の前記初期位置及び前記流体表面(42)の前記最終位置とから、集められたガス容積(41)が決定させる、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のカメラ画像及び前記第2のカメラ画像は、透過光方式で取り込まれる、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記照明は、蛍光フィルム(55)によってもたらされ、前記蛍光フィルム(55)は、第1の波長の励起光で照明され、励起光による照明に応答して第2の波長の蛍光光を放射し、前記第2の波長は、前記第1の波長よりも大きく、前記カメラ画像は、前記第1の波長の光に対して透明ではないフィルタ(56)を介して取り込まれる、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記気泡トラップ(30)及び前記中空糸流体フィルタ(1)を備える流れシステムは、前記基準期間中に少なくとも1つの搬送位置で移動する、間欠動作するコンベア(60)上に配置される、
請求項2から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
膜で囲まれた複数の中空糸(15)を備える中空糸流体フィルター(1)、詳細には中空糸透析器の完全性を検査するための装置であって、
-検査される前記中空糸流体フィルター(1)の前記中空糸(15)の内側に流体を流すように構成された洗浄システムと、
-検査される前記中空糸流体フィルター(1)の前記中空糸(15)の外側にガスを供給するように構成されたガス圧システムと、
又は、
-検査される前記中空糸流体フィルター(1)の前記中空糸(15)の外側に流体を流すように構成された洗浄システムと、
-検査される前記中空糸流体フィルタ(1)の前記中空糸(15)の内側にガスを供給するように構成されたガス圧システムと、
を備え、それぞれの場合にも前記ガスは前記流体よりも高い圧力を有しており、
前記装置は、
-予め設定された又は予め設定することができる基準期間中に、前記膜の穴を通って前記流体に浸透するガス量(41)を決定するための測定装置をさらに備え、
-前記洗浄システムは、前記中空糸流体フィルター(1)の下流に配置された気泡トラップ(30)を備え、
-前記測定装置は、予め設定された又は予め設定することができる基準期間中に前記気泡トラップ(30)に集まるガス容積(41)を決定するように構成されていることを特徴とする、
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
前記測定装置は、
-前記基準期間の開始時に前記ガス容積(41)の初期値を決定し、
-前記基準期間の終了時に前記ガス容積(41)の最終値を決定し、
-前記初期値と前記最終値との差から、前記基準期間に前記中空糸(15)に浸透した前記ガス量を決定する、ように構成されている、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記測定装置は、前記気泡トラップ(30)に集まるガス容積(41)を視覚的に決定するように構成されている、
請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記気泡トラップ(30)は透明セクション(40)を有し、前記気泡トラップ(30)内に集められたガス容積(41)を決定するために、前記測定装置は、前記透明セクション(40)の流体表面(42)の位置を評価するように構成されている、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記測定装置は、少なくとも1つのカメラ(50)及び画像評価システム(51)を備える、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記測定装置は、少なくとも1つの蛍光フィルム(55)及び少なくとも1つの励起光源(53)を備える、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、複数の搬送要素(61、62)を備える、間欠駆動される搬送システム(60)の構成要素であり、前記搬送要素(61、62)の各々は、少なくとも1つの中空糸流体フィルター(1)を受け入れるために設けられ、前記搬送要素(61、62)の各々は、受け入れる前記中空糸流体フィルタ(1)の各々のための、前記中空糸流体フィルタ(1)と共に前記搬送システム(60)に沿って移動可能な気泡トラップ(31)を備える、
請求項11から17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記測定装置は、前記搬送システム(60)の搬送経路に隣接して固定して配置される第1のカメラ(50’)を備える、
請求項15又は16に記載の装置。
【請求項19】
前記測定装置は、前記搬送システム(60)の搬送経路に隣接して固定して配置される第2のカメラ(50’’)を備える、
請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1及び/又は第2のカメラ(50’、50’’)は、前記搬送システム(60)の停止位置に隣接して配置される、
請求項18又は19に記載の装置。
【請求項21】
前記搬送システムは、円形コンベア(60)である、
請求項17から20のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜で囲まれた複数の中空糸で構成される中空糸流体フィルター、詳細には中空糸透析器の完全性を検査する方法に関し、中空糸の内側又は外側に流体を灌流するステップと、中空糸のそれぞれ対応する外側又は内側に、液体よりも高い圧力を有するガスを供給するステップと、膜の穴を通って流体中に浸透するガスの量を決定するステップとを含む。
【0002】
さらに、本発明は、膜で囲まれた複数の中空糸で構成される中空糸流体フィルター、詳細には中空糸透析器の完全性を検査するための装置に関し、装置は、検査される中空糸透析器の中空糸の内側又は外側に流体を流すように構成された灌流システムと、検査される中空糸流体フィルター、特に中空糸透析器の中空糸のそれぞれ対応する外側又は内側に、圧力が流体の圧力よりも高いガスを供給するように構成されたガス圧システムと、予め設定された又は予め設定することができる基準期間に膜の穴を通って流体中に浸透するガスの量を決定する測定デバイスと、を備える。
【背景技術】
【0003】
中空糸透析器は、腎臓機能が低下した患者の血液から有害物質をろ過するために医療分野で使用されている。このため、有害物質で汚染された血液は、半透膜を介して透析液に接触状態にされる。透析液は、尿素などの除去すべき有害物質の濃度が極めて低く、有害物質は濃度勾配により膜を通して透析液中に拡散するか又は対流作用により透析液中に入る。同時に、膜は、血漿又は粒子成分などの他の血液成分に対して少なくとも部分的に不透過性である。この手法は透析と呼ばれる。
【0004】
他の中空糸膜の流体フィルターは、同様に、医療技術において、例えば、透析用の未処理水を調製するために頻繁に使用される。このようなフィルターは、水処理にも使用することができる。
【0005】
詳細には、血液を効果的に浄化するためには、大きな膜表面が必要である。このため、公知の中空糸透析器は、複数の中空糸、例えば約10,000本の中空糸を有する。中空糸の壁は半透膜で形成されている。中空糸は、ゆるい束としてチューブ状の容積内に配置される。
【0006】
透析中、患者の血液は中空糸を流通し、透析液はチューブ状の容積を流れる。血液及び透析液は、好ましくは逆方向に流れ、透析器は対向流の原理に従って作動する。
【0007】
原則として、中空糸透析器は無菌の使い捨て製品として提供され、このため製造後に滅菌処理が施される。この場合、蒸気滅菌が頻繁に使用される。また、他の中空糸液体フィルターも蒸気を用いて頻繁に滅菌される。
【0008】
中空糸は非常に小さな壁厚を有するので、中空糸流体フィルター又は中空糸透析器の製造中に、個別の中空糸に穴が現れる場合がある。加えて、他にも様々な損傷によって穴が形成される可能性がある。このような穴の結果として、透析中に、一方では血液が中空糸から透析液中に入り、他方では透析液が血液中に浸透する可能性がある。どちらも好ましくなく、特に、透析液が患者の血液に大量に浸透することは、生理学的に問題がある可能性がある。
【0009】
中空糸膜フィルター、特に中空糸透析器の穴を識別するために、対応する穴が検査される。穴は滅菌中に生じる可能性がある、検査は、原則として滅菌直後に行われる。
【0010】
中空糸透析器の公知の検査方法では、試験流体(多くの場合水)を、中空糸に流通させ、同時に中空糸の周囲にガスを導入する。このとき、ガスは液体よりも高い圧力にあるので、中空糸のどの穴からも中空糸に浸透することができる。
【0011】
ガスは流体中に小さな気泡を形成し、この気泡は流体流れによって中空糸から流出する。この気泡を検出するために、流体を点検窓に通してカメラで観察する。
【0012】
しかしながら、この方法では、流れ去る個別の気泡を評価する必要があり、気泡の形状を完全に記録できないため、浸透したガスの量を定量的に決定することは難しい。加えて、十分な感度を得るためには、比較的長い時間、点検窓を監視する必要がある。加えて、検査が間欠コンベア上でいくつかの停止位置にわたって行われる場合、観察を中断する必要があり、個別の気泡が見落とされ易い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、中空糸流体フィルター、特に中空糸透析器の完全性を検査するための改良された方法及び改良された装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本発明の第1の態様による、膜で囲まれた複数の中空糸を備える中空糸流体フィルター、詳細には中空糸透析器の完全性を検査する方法で達成され、本方法は、中空糸の内側に流体を灌流うるステップ及び中空糸の外側にガスを供給するステップ、又は中空糸の外側に流体を灌流するステップ及び中空糸の内側にガスを供給するステップを含み、いずれの場合にも、ガスは流体よりも高い圧力を有し、本方法は、膜の穴を通って流体に浸透するガスの量を決定するステップをさらに含み、本方法では、中空糸を通過した後、流体は気泡トラップに流通され、予め設定された又は予め設定することができ基準期間中に気泡トラップに集まるガス容積が決定される。
【0015】
ここでは、中空糸に入る又は中空糸から出る個別の気泡は、気泡トラップ内に集められ、その結果、その大部分は、好ましくは均一なガス容積を形成する。このガス容積は容易に決定することができ、その結果、長期間にわたって観察することなく、ガスの浸透量の正確な定量的な決定が可能になる。
【0016】
従って、中空糸の外側又は内側にガスを供給し、それぞれ相補的な側に流体を供給することが可能である。
【0017】
中空糸流体フィルターは、中空糸透析器であることが好ましい。これらの透析器の膜は、10から50μm、好ましくは15から35μmの特に小さな壁厚を有し、その結果、特に漏れに対する感受性がある。さらに、患者の安全性の要求から、漏れの無い透析器への要求は特に高い。同時に、排出される気泡は特に微細であるため、個別の気泡として検出することは視覚的に非常に困難であることが分かっている。従って、本発明による方法は、中空糸透析器に特に好都合に使用することができる。
【0018】
特に、膜の内腔に選択面を有する膜を備える中空糸透析器の場合、外側にガスを供給し、内側に液体を供給することが好ましい。これにより、漏れ試験中に膜の内腔を特に優しく処置することが保証される。
【0019】
本発明による方法の好都合な進展では、ガス容積の初期値は、基準期間の開始時に決定することができ、ガス容積の最終値は基準期間の終了時に決定することができ、初期値と最終値の差から基準期間中に中空糸に浸透したガス量を決定することができる。
【0020】
流体として、好ましくは水を用いることができる。試験流体として水を使用することで、本方法から廃棄物として蓄積される何らかの溶媒混合液を防止することができる。加えて、水の残量は、試験実施後に、患者の健康を損なうことなく、フィルター、詳細には透析器内に留まることができる。
【0021】
本発明による方法の特に好都合な変形では、気泡トラップ及び中空糸流体フィルター、詳細には中空糸透析器で構成される配管システムに、検査開始前に蒸気を供給することができる。
【0022】
配管システムに蒸気を供給することは、中空糸流体フィルター、詳細には中空糸透析器、並びにそれに一時的に接続された配管セクションを滅菌するために行うことができる。蒸気は、気泡トラップを満たし、前の検査手順からの内部に包含されたガスに置き換わる。蒸気が冷却され凝縮するとすぐに、気泡トラップ内の蒸気容積は崩壊し、その結果、この目的で必要なバルブ無しで、気泡トラップはほぼ完全に水で満たされる。
【0023】
気泡トラップ内に集められたガス容積の決定は、本発明による方法の好ましい変形において、視覚的に行うことができる。このために、気泡トラップは、透明セクションを有することができ、気泡トラップに集められたガス容積の決定のために、透明セクションの流体表面の位置を評価することができる。視覚的方法は、特に堅牢であること、すなわち、間違いを起こし難く単純であることが分かっている。
【0024】
視覚的な検出の後、透明セクションの流体表面の位置は、画像処理によって単純な方法で決定することができる。
【0025】
本発明による方法の好都合な実施形態では、基準期間の開始時に透明部の少なくとも1つの第1のカメラ画像を取り込み、画像評価手段によって流体表面の初期位置を決定し、基準期間の終了時に透明部の少なくとも1つの第2のカメラ画像を取り込み、画像評価手段によって流体表面の最終位置を決定し、集められたガス容積を流体表面の初期位置と最終位置から決定することができる。
【0026】
第1のカメラ画像及び第2のカメラ画像は、好ましくは、透過光方式で取り込むことができる。透過光方式は、コンパクトな製造システムにおいて、小さな空間要求に付随して起こる安い装置コストで実施することができる。
【0027】
好ましい実施形態によれば、照明は、蛍光フィルムによって実現されることができ、蛍光フィルムは、第1の波長の励起光で照明され、励起光による照明に応答して、第2の波長の蛍光光を放射し、第2の波長は第1の波長よりも大きく、カメラ画像は、第1の波長の光に対して透明ではないフィルターを介して取り込むことができる。
【0028】
対応する照明の場合、一例を挙げると、透明セクションの表面での乱反射が最小限に抑えられ、同時に、カメラ及び光源を透明セクションの同じ側に配置することが可能である。これにより、測定装置の空間要求は、さらに低減される。
【0029】
気泡トラップ及び中空糸透析器を備える流れシステムは、基準期間中に少なくとも1つの搬送位置で移動する間欠的に動作するコンベア上に配置することができる。
【0030】
この目的は、本発明のさらなる態様による、膜で囲まれた複数の中空糸を備える中空糸流体フィルター、詳細には中空糸透析器の完全性を検査するための装置によって達成され、装置は、検査される中空糸流体フィルターの中空糸の内側に流体を流すように構成された洗浄システムと、検査される中空糸流体フィルターの中空糸の外側にガスを供給するように構成されたガス圧システム、又は、検査されるフィルターの中空糸の外側に流体を流すように構成された洗浄システムと、検査されるフィルターの中空糸の内側にガスを供給するように構成されたガス圧システムと、を備え、それぞれの場合にもガスは流体よりも高い圧力を有しており、装置は、予め設定された又は予め設定することができる基準期間中に膜の穴を通って流体に浸透するガス量を決定するための測定装置をさらに備える。この装置は、洗浄システムが、中空糸流体フィルターの下流に配置された気泡トラップを備え、測定装置が、予め設定された又は予め設定することができる基準期間中に気泡トラップに集まるガス容積を決定するように構成されている点で進展している。
【0031】
従って、中空糸の外側又は内側にガスを供給することが可能であり、その場合、それぞれ相補的な側に流体が供給される。
【0032】
中空糸流体フィルターは、好ましくは、中空糸透析器である。これらの透析器の膜は、10から50μm、好ましくは15から35μmの特に小さな壁厚を有し、その結果、特に漏れに対する感受性がある。また、漏れの無い透析器への要求は特に高い。
【0033】
特に、膜の内腔に選択面を備える中空糸透析器の場合、外側にガスを供給し、内側に液体で供給することが好ましい。これにより、漏れ試験中に膜の内腔を特に優しく処置することが保証される。
【0034】
本発明による装置の好都合な実施形態では、測定装置は、基準期間の開始時にガス容積の初期値を決定し、基準期間の終了時にガス容積の最終値を決定し、初期値と最終値との差から基準期間に中空糸に浸透したガス量を決定するように構成することが可能である。
【0035】
特定の実施形態では、気泡トラップは、試験流体の流路内にトラッピングセクションを有し、その結果、試験流体の流量が少なくとも短時間、例えば100ミリ秒から10秒間だけ減少する。これにより、気泡を試験流体から特に効率的に放出して容積検出システムに供給することができる。気泡は、好ましくは、トラッピングセクションの上壁を通って点検窓に流通される。上壁は、好ましくは、テーパー状に形成される。
【0036】
本発明による装置のさらなる設計によれば、測定装置は、気泡トラップ内に集まるガス容積を視覚的に決定するように構成することができる。このために、気泡トラップは、透明セクションを有することができ、測定装置は、気泡トラップ内に集められたガス容積を決定するために、透明セクションの流体表面の位置を評価するように構成することができる。
【0037】
本発明による装置の好ましい実施形態では、測定装置は、少なくとも1つのカメラ及び1つの画像評価システムを備えることができる。測定装置は、少なくとも1つの蛍光フィルム及び少なくとも1つの励起光源を備えることができる。
【0038】
視覚検出システムの代替例として、例えば超音波充填レベルセンサを使用する、代替的な充填レベル検出システムを設けることもできる。
【0039】
本発明のさらなる実施形態では、装置は、複数の搬送要素を備える、間欠駆動される搬送システムの構成要素であり、搬送要素の各々は、少なくとも1つの中空糸流体フィルターを受け入れるために設けられ、搬送要素の各々は、受け入れる中空糸流体フィルターの各々のための、中空糸流体フィルターと共に搬送システムに沿って移動可能な気泡トラップを備える。
【0040】
測定装置は、搬送システムの搬送経路に隣接して固定して配置される第1のカメラを備える。測定装置は、搬送システムの搬送経路に隣接して固定して配置される第2のカメラを備える。第1及び/又は第2のカメラは、搬送システムの停止位置に隣接して配置される。
【0041】
搬送システムは、円形コンベアである。
【0042】
本発明は、いくつかの例示的な図面を参照して以下にさらに詳細に説明されるが、図示された実施形態は、本発明を限定することなく、本発明のより良い理解のために役立つことのみが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】中空糸流体フィルターの一例としての中空糸透析器の簡略化された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1には、中空糸透析器1が簡略化された断面図で描かれている。中空糸透析器1は、ほぼ円筒形のハウジング2を備え、このハウジング2は、シール挿入体3、4によって3つのチャンバ5、6、7に分割されている。この実施形態から逸脱して、中空糸透析器の代わりに中空糸流体フィルターを設けることも可能である。
【0045】
端部チャンバ5、7の各々は、1つの接続要素10、11を有する。中間チャンバ6は、2つの接続要素12、13を有し、これらは各々、シール挿入体3、4に近接して配置されている。接続要素10、11、12、13は、例えば、「ルアーロック」接続部とすることができる。
【0046】
中空糸15は、チャンバ5から、シール挿入体3、4及び中間チャンバ6を経て、チャンバ7に至る。
図1における中空糸15の描写は、非常に簡略化されている。
図1に表された4本の中空糸の代わりに、中空糸透析器は通常18000本までの中空糸を有し、これらは一般に完全に直線化されてはいない。中空糸15の肉厚は、約10から50μm、具体的には15から35μmとすることができ、中空糸15の内径は、約180から300μmとすることができる。中空糸15の壁は、生体適合性の半透膜で構成される。この膜は、好ましくは、ポリビニルピロリドン(PVP)で変性されたポリスルホン材料からなる。
【0047】
フィルターが未処理水の処理に使用される場合、この膜は、好ましくは親水性でもあり、その結果、特に水との良好な濡れ性がある。
【0048】
透析中、血液は接続要素10を通って矢印16、17に沿ってチャンバ5に送給され、次に、中空糸15の内側を通ってチャンバ7に流入する。そこから、血液は再び接続要素11を通って放出され、患者に送り戻される。
【0049】
並行して、透析液は、矢印18、19に沿って、接続要素13を通って中間チャンバ6に流され、ここでは、透析液は中空糸15と並行に血液の流れ方向とは反対方向に流れ、接続要素12を通って再び放出される。その過程で、例えば尿素のような毒素は、中空糸15の膜の外皮を通って血液から透析液中に拡散する。それによって、血液が浄化される。
【0050】
中空糸透析器1が効果的かつ安全に機能するためには、血液及び透析液の流路が互いに対して十分に密閉されていることが必要である。穴があると、透析液が血液中に自由に移動する、及び、逆に血液が透析液中に失われる可能性があり、これは生理学的に好ましくない。
【0051】
穴の可能性のある原因は、中空糸15の押し出し中に形成される可能性がある膜の外皮の機械的欠陥、シール挿入体3、4と中空糸15又はハウジング2との間の不十分なシール、又は中空糸15の破断である。対応する欠陥は、中空糸膜の製造時、中空糸透析器1の製造時、又はその後の滅菌時に生じる可能性がある。
【0052】
中空糸透析器1は、透析中に患者の血液と接触するため、滅菌する必要がある。一般的な滅菌方法は、中空糸透析器1を通って高温の蒸気を流す蒸気滅菌である。この過程で、蒸気は血液の流路及び透析液の流路の両方を流れ、その結果、中空糸透析器の全表面は、例えば124℃以上に加熱され、存在する何らかの病菌体は死滅する。
【0053】
穴の開いた中空糸透析器の使用を排除するために、中空糸透析器は滅菌後に気密試験を受ける。
図2はその試験原理を示す。
【0054】
このために、通常は水である試験流体を矢印20の方向に中空糸15を流通させ、同時に試験ガス、例えば空気をチャンバ6に導入する。実施形態から逸脱して、試験流体をチャンバ6に導入し、一方で、試験ガスを中空糸15に流通させることも可能である。この過程で、いずれの場合も試験ガスは試験流体よりも高い圧力となり、これは矢印21で示される。今、中空糸透析器1が穴22を有する場合、試験ガスはこの孔22を通って試験液中に浸透し、そこに気泡25を形成する可能性がある。この気泡は、中空糸15から試験流体とともに流出し、その後、検出することができる。
【0055】
この気泡25を定性的及び定量的に検出するために、検査流体は、中空糸透析器1を通過した後に気泡トラップ30を流通する。これは
図3に示されている。
【0056】
気泡トラップ30は、流れチャンバ31で構成され、この中に入口32を通って試験流体が流入する。入口32に隣接して、流れチャンバは、セパレータ34によって区切られた上昇セクション33を有する。セパレータ34の上方で、上昇セクション33はトラッピングセクション35に合流する。トラッピングセクション35に続いて、出口37に合流する降下セクション36がある。
【0057】
トラッピングセクション35は、試験流体の流量がここ一時的に減少するように設計されている。気泡25は、試験流体の流れから放出され、トラッピングセクション35のテーパー状の上壁によって点検窓40に流通する。
【0058】
点検窓40では、気泡25が集合して凝集ガス容積41を形成する。ガス容積41の目測に使用される境界面42は、ガス容積41と試験流体との間に形成される。
【0059】
試験流体及び気泡25の流路は、図中、矢印44,45で示されている。
【0060】
ガス容積41の測定のために、点検窓40はカメラ50によって観察され、境界面42の位置は、カメラの1又は2以上の連続した取り込み画像に基づいて、画像処理ユニット51によって決定される。
【0061】
反射を抑えるために、ガス容積41の視覚的測定は透過光方式で行われる。しかしながら、構造上の理由から、
図3において左側に表される点検窓40の裏側にはほとんどスペースがないため、カメラ50及び光源53は、点検窓40の同じ側に配置する必要がある。光源53は、カメラ50の点検窓40上の視界を遮らないように配置される。このために、光源40は、垂直方向又は水平方向にわずかにオフセットして配置することができる、又は、光源40は、カメラ40の視線の周囲に配置されたリングライトとして実現することができる。
【0062】
透過光と関係なく動作できるように、蛍光膜55が点検窓40の後方に配置されている。光源53は、例えば青色のスペクトル領域の第1の波長の励起光を放射し、その一部は点検窓40でカメラ50の方向に反射される。しかしながら、励起光の大部分は蛍光膜55に入射し、そこで第2の波長、例えばオレンジ色のスペクトル領域の蛍光光に変換される。この蛍光光は、点検窓40の方向及びカメラ50の方向に放射される。
【0063】
カメラ50の対物レンズの前に配置されたカラーフィルタ56は、短波長の励起光に対しては非透明であり、蛍光光に対しては透明である。その結果、点検窓40で反射した励起光はカメラ50に到達せず、取り込んだ画像は乱反射(disruptive reflection)がない。これに対応して取り込んだ画像上で、境界面42を検出し、その位置を決定することは、周知の画像評価方法によって、低コストで行うことができる。境界面42の位置から、結果的にガス容積41を容易に決定することができる。
【0064】
対応する蛍光フィルムは、例えば、株式会社キーエンスから「CA-DWC30」の商品名で入手することができる。
【0065】
中空糸透析器の滅菌及び検査は、間欠的に動作するコンベア、例えば円形コンベア上で実施される。このような円形コンベア60は、
図4に概略的に示されている。円形コンベア60は、1又は2以上の中空糸透析器1のために、いずれの場合にも、複数の個別のレシーバ61、62を備える。受け入れることになる各中空繊維透析器1に関して、レシーバ61、62の各々は、気泡トラップ30、点検窓40、及び蛍光フィルム55を備え、これらは、いずれの場合にも、視認可能である。
【0066】
中空糸透析器は、装填ステーション63において、レシーバ61、62に挿入される。円形コンベア60は、いずれの場合にも、設定された間隔で1つの位置で移動し、その結果、次のレシーバ61、62は、装填ステーション63で中空糸透析器を装填することができる。
【0067】
レシーバ61,62は、円形コンベア60に沿って増分的に移動し、とりわけ、準備セクションI、及び滅菌セクションIIを通過するが、減菌セクションにおいて、滅菌のために高温蒸気が中空糸透析器及びレシーバ61、62の配管システムを流通する。蒸気は点検窓40に進入し、点検窓40も完全に蒸気で満たされ滅菌される。
【0068】
検査セクションIIIでは、中空糸透析器の血液の流路を形成するセクションは、滅菌濾過水で洗浄される。蒸気は点検窓40内で崩壊し、その結果、点検窓40は完全に水で満たされる。並行して、中空糸透析器の透析液の流路を形成するセクションは、蒸気を排出するために無菌濾過空気で洗浄される。随意的に、無菌濾過空気による洗浄の前に、無菌濾過水による洗浄を行うこともできる。
【0069】
洗浄セクションを通過する間に、レシーバ61、62は、第1の測定位置に到達し、その位置には第1のカメラ50’及び第1の光源53’が配置されている。第1のカメラ50’は、第1の測定位置で点検窓40の1又は2以上の画像を取り込み、画像評価ユニット51に転送する。第1の測定位置における境界面42の位置は、画像評価ユニット51によって決定され、個別のレシーバ61、62の識別子とともに記録される。
【0070】
洗浄セクションの終盤で、レシーバ61、62は第2の測定位置に到達し、この位置には第2のカメラ50’’及び第2の光源53’’が設けられている。第2のカメラ50’’は、第2の測定位置で点検窓40の1又は2以上の画像を取り込み、同様に画像評価ユニット51に転送する。第2の測定位置における境界面42の位置は、画像評価ユニット51によって決定される。
【0071】
第1の測定位置及び第2の測定位置の境界面42の位置の変化から、画像評価ユニット51又は下流の制御装置は、第1の測定位置から第2の測定位置への搬送中に中空糸透析器1の中空糸15に浸透した空気量を決定する。円形コンベア60の間欠率が既知で一定であれば、この空気量は、中空糸透析器1の気密の尺度として直接利用することができる。間欠率が既知でない場合、第1のタイムスタンプは第1の測定位置での測定結果と一緒に保存し、第2のタイムスタンプは第2の測定位置での測定結果と一緒に保存することができる。次に、中空糸透析器のスループットタイムは、2つのタイムスタンプの差から決定し、評価で考慮に入れることができる。
【0072】
浸透した空気の量又は漏れ率が所定の閾値を超える場合、対応する中空糸透析器は、気密性がないと評価され、さらなる使用から除外する必要がある。
【0073】
浄化セクションを通過した後、水は中空糸透析器から排除され、この透析器は、装填解除ステーション65において円形コンベアから取り出され、その結果、さらなる中空糸透析器を対応するレシーバ61、62に挿入することができる。
図4に示されるように、装填ステーション63及び装填解除ステーション65は、組み合わせて1つのステーションを形成することができる。
【0074】
図4における回転式コンベア60の描写は、同様に非常に簡略化されている。回転式コンベア60は、中空糸透析器1の十分なスループットを提供するために、実質的により多くのレシーバ61、62を有することができる。図示されていないが、検査セクションIIIと装填解除ステーション65との間に、乾燥セクションを設けることができる。個別のセクションの相対的な長さは、
図4において必ずしも縮尺通りに描かれていない。回転式コンベア自体の既知の機能に必要な配管及びバルブは、明瞭化のために示されていない。
【国際調査報告】