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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(54)【発明の名称】カソード材料及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20221227BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221227BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221227BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525563
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 GB2020052800
(87)【国際公開番号】W WO2021090006
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】1916198.3
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522306561
【氏名又は名称】イーブイ・メタルズ・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EV Metals UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、サム
(72)【発明者】
【氏名】ブリューニッヒ、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クンツ、ホルガー
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、電池材料の分野に属し、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物を調製するためのプロセス、及びそのプロセスによって生成される材料に関する。本発明のプロセスは、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を使用し、これらの前駆体は、焼成中にNOxガスを実質的に形成しない。プロセスの微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物生成物は、リチウムイオン電池で利用され得る。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(a) Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を含む組成物を調製することであって、単一の化合物が、任意選択的に、Mn、Ni、及びMのうちの2つ以上を含有し得る、調製することと、
(b) 前記組成物を粉砕することと、
(c) 工程(b)の生成物を焼成することと、を含み、
Mが、Al、Mg、Ti、Co、Cu及びCrから選択される1つ以上の元素であり、
前記Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的なM含有前駆体は、工程(c)における前記焼成中にNOガスが実質的に形成されないように選択される、プロセス。
【請求項2】
前記焼成中に生成されるNOの量は、前記焼成からの排気ガス中のNOの濃度が50ppm未満であるような量である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的なM含有前駆体の各々が、実質的に硝酸塩を含有しない、例えば、前記前駆体中の金属元素の重量に対して、5重量%未満の硝酸塩を含有する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記Mn含有前駆体のD90粒径が、4μm未満、例えば3μm未満又は2.5μm未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記Mn含有前駆体のD50粒径が、2μm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記Mn含有前駆体のD10粒径が、1μm未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記Mn含有前駆体が、約2.0μm~約4.0μmのD90粒径、約1.0μm~約1.5μmのD50粒径、及び約0.5μm~約1.0μmのD10粒径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物が、約1.0μm~約3.0μmのD10粒径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物が、約8.0μm~約15.0μmのD90粒径を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記Mn含有前駆体が、MnCOを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記Ni含有前駆体が、Ni(OH)又はその水和形態を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記Li含有前駆体が、LiOH又はその水和形態を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記組成物が、溶媒、前記Mn含有前駆体、前記Ni含有前駆体、前記Li含有前駆体、及び任意選択的に前記M含有前駆体を含むスラリーである、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記粉砕工程(b)の後及び前記焼成工程(c)の前に前記スラリーを乾燥させる工程を更に含み、前記乾燥させることが、好ましくは噴霧乾燥を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
工程(a)が、溶媒、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及びM含有前駆体を含むスラリーを調製することを含む、請求項13又は14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記M含有前駆体が、Al含有前駆体、好ましくはAl(OH)を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
工程(b)が、パールミルで行われる、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記Mn含有前駆体が、少なくとも10μmのD90粒径を有し、工程(b)における前記粉砕が、少なくとも2時間の期間にわたって実施される、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
工程(c)において、焼成が、350~950℃の温度で実施される、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物が、式Iによる組成物を有し、
LiMnNi 式I
式中、Mは、Al、Mg、Ti、Co、Cu及びCrから選択される1つ以上の元素であり、
0.8≦x≦1.2であり、
y=2-z-aであり、
0.2<z<1.2であり、
0≦a≦0.06であり、
3.5≦b≦4.5である、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
0.9≦x≦1.1であり、
0.3<z<0.5であり、
0.04≦a≦0.06であり、
3.9≦b≦4.1であり、
式中、MはAlである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のプロセスによって得られた、又は得ることができる、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物。
【請求項23】
請求項22に記載の化合物を含む、正極活性材料。
【請求項24】
請求項23に記載の材料を含む、電極。
【請求項25】
請求項24に記載の電極を備える、リチウム二次セル又は電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムマンガンニッケル酸化物スピネル材料を調製するためのプロセス、それらのプロセスから生じるリチウムマンガンニッケル酸化物スピネル材料、及びこれらの材料を含む電極及びセルに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムマンガン酸化物は、リチウムイオン電池における有用なカソード材料として特定されている。リチウムマンガン酸化物のうち、LiMn(化学量論スピネル)、LiMn(酸素富化スピネル)及びLiMn12(リチウム富化スピネル)などのスピネル構造を有する化合物は、カソード材料として特に有望であることが示されている。
【0003】
かかるスピネル化合物は、金属塩前駆体化合物、通常、硝酸マンガンなどの金属硝酸塩を組み合わせることによって作製される。硝酸塩前駆体は高価であるだけでなく、有毒なNOガスを除去するためのプロセス排気ガスの処理を必要とする。しかしながら、好適に高容量のスピネルを調製するための代替的な方式は、これまで当該技術分野において提案されていない。
【0004】
したがって、高い電位対Li/Li比でリチウムを挿入し、高容量を提供し、良好なサイクル性(容量保持率)を有する生成物を提供することができる、リチウム電池用途、例えばリチウムイオン電池用途に使用するためのスピネル化合物を調製するための改善されたプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、リチウムマンガンニッケル酸化物(lithium manganese nickel oxide、LMNO)スピネル化合物を調製するための特定のプロセスが、高容量及び改善されたサイクル性を有する化合物を提供するだけでなく、有毒なNO排気ガスの生成を排除し、それによって、費用がかかり、困難で潜在的に危険な排気ガス処理の必要性を除去することを見出した。
【0006】
したがって、本発明の第1の態様は、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物を調製するためのプロセスであり、本プロセスは、
(a) Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を含む組成物を調製することであって、単一の化合物が、任意選択的に、Mn、Ni、及びMのうちの2つ以上を含み得る、調製することと、
(b) この組成物を粉砕することと、
(c) 工程(b)の生成物を焼成することと、を含み、
Mは、Al、Mg、Ti、Co、Cu及びCrから選択される1つ以上の元素であり、
Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的なM含有前駆体は、工程(c)における焼成中にNOガスが実質的に形成されないように選択される。
【0007】
いくつかの実施形態は、式Iの微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物を調製するためのプロセスを提供し、
LiMnNi 式I
本プロセスは、
(a) Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を含む組成物を調製することであって、単一の化合物が、任意選択的に、Mn、Ni、及びMのうちの2つ以上を含み得る、調製することと、
(b) この組成物を粉砕することと、
(c) 工程(b)の生成物を焼成することと、を含み、
式中、Mは、Al、Mg、Ti、Co、Cu及びCrから選択される1つ以上の元素であり、
0.8≦x≦1.2であり、
y=2-z-aであり、
0.2<z<1.2であり、
0≦a≦0.06であり、
3.5≦b≦4.5であり、
Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的なM含有前駆体は、工程(c)における焼成中にNOガスが実質的に形成されないように選択される。
【0008】
本発明の製造方法は、焼成されるときにNOガスを発生させない出発材料を選択し、それによって、NOガス(すなわち、NO、NO又はそれらの混合物)を除去するための、費用がかかり、困難で潜在的に危険な排気ガス処理の必要性を除去する。更に、生成物スピネルは、非常に良好な特性を有する。少なくとも120mAh/gの高容量を達成し得、場合によっては、134mAh/gもの高容量を達成し得る。生成物は、6mg/cmの電極負荷で23℃、C/2の放電レートで200サイクル後に初期容量の少なくとも93%を保持し得、場合によっては、96%もの高い保持率を保持し得る。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様によるプロセスによって得られた、又は得ることができるリチウムマンガンニッケルスピネル化合物である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第2の態様による化合物を含む正極活性材料を提供する。
【0011】
本発明の第4の態様は、第3の態様による材料を含む電極を提供する。
【0012】
本発明の第5の態様は、第4の態様による電極を含むリチウム二次セル又は電池を提供する。
【0013】
本発明の第6の態様は、リチウム二次セル又は電池における第2の態様による化合物の使用である。
【0014】
本発明の第7の態様は、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物の製造中に行われる焼成プロセスからのNOガス生成物の放出を低減又は排除する方法であり、本方法は、焼成中にNOガスが実質的に形成されないように、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を選択することを含み、Mは、Al、Mg、Co、Cu、Cr、及びTiから選択される1つ以上の元素である。
【0015】
本発明の第8の態様は、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物の初期容量及び/又はサイクル性を改善する方法であり、本方法は、リチウムマンガンスピネル化合物の製造中に、4μm未満、例えば、3μm未満のD90粒径を有するMn含有前駆体を使用することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】様々な放電レート(「Cレート」)での3つの比較材料(試料C、D及びE)の比容量のプロットである。
図2】放電サイクルの数に対してプロットされた3つの比較材料(試料C、D及びE)の比容量を示す。
図3】3つの比較材料(試料C、D、及びE)の放電電位曲線のプロットである。
図4】本発明のプロセスに従って作製された材料(試料A)及び比較材料(試料C)の放電電位曲線のプロットである。
図5】様々な放電レート(「Cレート」)における、本発明のプロセスに従って作製された材料(試料A)及び比較材料(試料C)の比容量のプロットである。
図6】放電サイクルの数に対してプロットされた、本発明のプロセスに従って作製された材料(試料A)及び比較材料(試料C)の比容量を示す。
図7】本発明のプロセスに従って作製された2つの異なる材料(試料A及びB)についての放電電位曲線のプロットである。
図8】(a)前駆体として使用された第1のMnCO粉末の粒径分布、及び(b)前駆体として使用された第2のMnCO粉末の粒径分布を示す。
図9】(a)本発明のプロセスによって調製されたリチウムマンガンニッケルスピネル材料(試料A)の粒径分布、及び(b)本発明のプロセスによって調製されたリチウムマンガンニッケルスピネル材料(試料A)のSEM画像を示す。
図10】本発明のプロセスによって調製されたリチウムマンガンニッケルスピネル材料(試料A)のXRDスキャンを示す。
図11】様々な放電レートにおける、リチウムマンガンニッケルスピネル材料(試料F)の放電曲線を示す。
図12】比較例4の前駆体として使用されたMnCO粉末の粒径分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これより、本発明の好ましいかつ/又は任意選択的な特徴が、記載される。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の好ましい及び/又は任意選択的な特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせのいずれかで、組み合わせることができる。
【0018】
本発明のプロセスにおける最終生成物リチウムマンガンスニッケルピネルの厳密な組成は、特に限定されない。本発明は、ある範囲のリチウムマンガンニッケルスピネル材料の調製に適用可能な改善されたプロセスに関し、当業者は、所望の最終生成物に応じて、出発材料の種類及び量を適宜調整することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物は、式Iによる組成を有し、
LiMnNi 式I
式中、Mは、Al、Mg、Ti、Co、Cu及びCrから選択される1つ以上の元素であり、
0.8≦x≦1.2であり、
y=2-z-aであり、
0.2<z<1.2であり、
0≦a≦0.06であり、
3.5≦b≦4.5である。
【0020】
式Iでは、0.8≦x≦1.2である。いくつかの実施形態では、xは、0.9以上又は0.95である。いくつかの実施形態では、xは、1.1以下、又は1.05以下である。いくつかの実施形態では、0.90≦x≦1.10、例えば0.95≦x≦1.05である。いくつかの実施形態では、xは、約1.0である、例えば、1.0に等しい。
【0021】
式Iにおいて、0.2<z<1.2である。いくつかの実施形態では、0.2<z<1.15、例えば、0.2<z<1.1、0.2<z<1.05、0.2<z<1.0、0.2<z<0.95、0.2<z<0.9、0.2<z<0.85、0.2<z<0.8、0.25<z<0.8、0.3<z<0.8、0.3<z<0.75、0.3<z<0.7、0.3<z<0.65、又は0.3<z<0.6である。いくつかの実施形態では、0.3<z<0.5である。いくつかの実施形態では、zは、約0.4である、例えば、0.4に等しい。
【0022】
式Iにおいて、0≦a≦0.06である。いくつかの実施形態では、0≦a≦0.06、例えば、0≦a≦0.059、0≦a≦0.058、0≦a≦0.057、0≦a≦0.056、0≦a≦0.055、0≦a≦0.054、0≦a≦0.053、0≦a≦0.052、0≦a≦0.051、0≦a≦0.05、0.01≦a≦0.06、0.02≦a≦0.06、0.03≦a≦0.06、0.03≦a≦0.055、0.03≦a≦0.05、0.035≦a≦0.06、又は0.04≦a≦0.06である。いくつかの実施形態では、a=0である。いくつかの実施形態では、aは、約0.05である、例えば、0.05に等しい。
【0023】
式Iにおいて、3.5≦b≦4.5である。いくつかの実施形態では、3.55≦b≦4.45、例えば3.6≦b≦4.4、3.65≦b≦4.35、3.7≦b≦4.3、3.75≦b≦4.25、3.8≦b≦4.2、3.85≦b≦4.15、3.9≦b≦4.1、又は3.95≦b≦4.05である。いくつかの実施形態では、bは、約4である、例えば、4に等しい。
【0024】
式Iにおいて、Mは、Al、Mg、Co、Cu及びCrから選択される1つ以上の元素である。いくつかの実施形態では、Mは、Alである。いくつかの実施形態では、Mは、Alであり、0<a≦0.06、例えば、0<a≦0.059、0<a≦0.058、0<a≦0.057、0<a≦0.056、0<a≦0.055、0.01<a≦0.06、0.02<a≦0.06、0.03<a≦0.06であるか、又はaは約0.05である、例えば0.05に等しい。
【0025】
式Iにおいて、yは(2-z-a)である。いくつかの実施形態では、0.74<y<1.8、例えば、0.75<y<1.8、0.8<y<1.8、0.85<y<1.8、0.9<y<1.8、0.95<y<1.8、1.0<y<1.8、1.05<y<1.8、1.1<y<1.8、1.15<y<1.8、1.2<y<1.8、1.25<y<1.8、1.3<y<1.8、1.3<y<1.75、1.3<y<1.7、1.4<y<1.7、又は1.5<y<1.7である。いくつかの実施形態では、yは、約1.55である、例えば、1.55に等しい。
【0026】
いくつかの実施形態では、
0.8≦x≦1.2であり、
0.2<z<1.2であり、
0≦a≦0.06であり、
3.5≦b≦4.5であり、
式中、MはAlである。
【0027】
いくつかの実施形態では、
0.8≦x≦1.2であり、
0.2<z<0.6であり、
0≦a≦0.06であり、
3.5≦b≦4.5である。
【0028】
いくつかの実施形態では、
0.9≦x≦1.1であり、
0.2<z<0.6であり、
0≦a≦0.06であり、
3.5≦b≦4.5である。
【0029】
いくつかの実施形態では、
0.9≦x≦1.1であり、
0.2<z<0.6であり、
0≦a≦0.06であり、
3.9≦b≦4.1である。
【0030】
いくつかの実施形態では、
0.9≦x≦1.1であり、
0.3<z<0.5であり、
0≦a≦0.06であり、
3.9≦b≦4.1である。
【0031】
いくつかの実施形態では、
0.9≦x≦1.1であり、
0.3<z<0.5であり、
a=0であり、
3.9≦b≦4.1である。
【0032】
いくつかの実施形態では、
0.9≦x≦1.1であり、
0.3<z<0.5であり、
0.04≦a≦0.06であり、
3.9≦b≦4.1であり、
式中、MはAlである。
【0033】
いくつかの実施形態では、式Iのリチウムマンガンニッケルスピネル化合物は、
LiMn1.6Ni0.4 式IA
LiMn1.55Ni0.4Al0.05 式IB
LiMn1.55Ni0.4Ti0.05 式IC
LiMn1.55Ni0.4Co0.05 式ID
LiMn1.50Ni0.45Al0.05 式IE
LiMn1.45Ni0.5Al0.05 式IF
【0034】
から選択され、式中、3.5≦b≦4.5である。いくつかの実施形態では、式Iのリチウムマンガンニッケルスピネル化合物は、式IA~式IFのうちの1つから選択され、b=4である。いくつかの実施形態では、リチウムマンガンニッケルスピネル化合物は、式IBによる化合物であり、b=4である。
【0035】
いくつかの実施形態では、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物は、結晶質(又は、実質的に結晶質)材料である。いくつかの実施形態では、化合物は、空間群Fd-3mで結晶化する。いくつかの実施形態では、格子パラメータは、8.170~8.180Å、例えば、8.170~8.175Å、例えば、8.170~8.174Å、例えば、8.171~8.174Åである。
【0036】
リチウムマンガンニッケルスピネルの粒子は、典型的には、少なくとも4.0μm、例えば、少なくとも4.1μm、少なくとも4.2μm、少なくとも4.3μm、少なくとも4.4μm、少なくとも4.5μm、少なくとも4.6μm、又は少なくとも4.7μmのD50粒径を有する。いくつかの実施形態では、リチウムマンガンニッケルスピネルの粒子は、少なくとも7.0μm、例えば、少なくとも7.1μm、少なくとも7.2μm、少なくとも7.3μm、又は少なくとも7.4μmのD50粒径を有する。リチウムマンガンニッケルスピネルの粒子は、典型的には、10.0μm以下、例えば、10.0μm以下、9.5μm以下、9.0μm以下、8.5μm以下、8.0μm以下、7.9μm以下、7.8μm以下、7.7μm以下、7.6μm以下、又は7.5μm以下のD50粒径を有する。いくつかの実施形態では、D50粒径は、約4.0μm~約10.0μm、例えば、約5.0μm~約9.0μmである。本明細書で別段の指定がない限り、D50粒径は、Dv50(体積メジアン径)を指し、(例えば、Malvern Mastersizer 2000を使用する)動的光散乱法によって、例えば、Mie散乱理論下で2017のASTM B822に従って判定され得る。
【0037】
リチウムマンガンニッケルスピネルの粒子は、典型的には、少なくとも1.5μm、例えば、少なくとも1.6μm、少なくとも1.7μm、少なくとも1.8μm、少なくとも1.9μm、少なくとも2.0μm、少なくとも2.2μm、又は少なくとも2.5μmのD10粒径を有する。リチウムマンガンニッケルスピネルの粒子は、典型的には、4.0μm以下、例えば、3.9μm以下、3.8μm以下、3.7μm以下、3.6μm以下、又は3.5μm以下のD10粒径を有する。いくつかの実施形態では、D10粒径は、約1.5μm~約4.0μm、例えば、約1.6μm~約3.9μm、約1.7μm~約3.8μm、約1.8μm~約3.7μm、約1.9μm~約3.6μm、又は約2.5μm~約3.6μmである。いくつかの実施形態では、D10粒径は、約1.0μm~約2.7μm、例えば、約1.05μm~約3.7μm、約1.1μm~約3.7μmである。本明細書で別段の指定がない限り、D10粒径は、Dv10(累積体積分布における10%の切片)を指し、(例えば、Malvern Mastersizer 2000を使用する)動的光散乱法によって、例えば、Mie散乱理論下で2017のASTM B822に従って判定され得る。
【0038】
リチウムマンガンスピネルの粒子は、典型的には、少なくとも12.0μm、例えば、少なくとも12.5μm、少なくとも13.0μm、少なくとも13.5μm、少なくとも14.0μm、少なくとも14.5μm、又は少なくとも15.0μmのD90粒径を有する。リチウムマンガンニッケルスピネルの粒子は、典型的には、18.0μm以下、例えば、17.9μm以下、17.8μm以下、17.5μm以下、17.0μm以下、又は16.5μm以下のD90粒径を有する。いくつかの実施形態では、D90粒径は、約12.0μm~約18.0μm、例えば、約12.5μm~約18.0μm、約13.0μm~約18.0μm、約13.0μm~約17.0μm、約13.5μm~約17.0μm、約14.0μm~約18.0μm、約15.0μm~約17.0μm、約15.5μm~約17.0μm、約16.0μm~約16.5μm、約14.0μm~約16.0μm、約14.0μm~約15.5μm、約14.0μm~約15.0μm、約14.0μm~約14.5μm、又は約14.5μm~約15μmである。本明細書で別段の指定がない限り、D90粒径は、Dv90(累積体積分布における90%の切片)を指し、(例えば、Malvern Mastersizer 2000を使用して)動的光散乱法によって、例えば、Mie散乱理論下で2017のASTM B822に従って判定され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル結晶子は、SEM画像の分析から判定される、形状が実質的に八面体である。
【0040】
いくつかの実施形態では、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物は、バイモーダル粒径分布を有する。いくつかの実施形態では、バイモーダル粒子径分布の第1のピークは、約4.0~7.0μmで生じ、第2のピークは、約10.0~13.0μmで生じる。
【0041】
いくつかの実施形態では、リチウムマンガンニッケルスピネルのタップ密度は、約1.9g/cm~約2,4g/cmである。
【0042】
材料のタップ密度は、ASTM B527に従って好適に測定することができる。
いくつかの実施形態では、リチウムマンガンニッケルスピネルのBET表面積は、約0.5cm/g~約2.5cm/g、例えば、約0.6cm/g~約2.0cm/g、約0.6cm/g~約1.5cm/g、約0.7cm/g~約1.4cm/g、又は約1.0cm/gである。
【0043】
材料のBET表面積は、ガス吸着、すなわち、DIN66131(多点判定)準拠のBrunauer,Emmett and Teller(Emmett and Teller、BET)方法、例えば、Gemini2360(Micromeritics)装置によって好適に測定され得る。
【0044】
本発明によるプロセスにおいて、第1の工程(a)では、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を含む組成物を調製することになる。
【0045】
いくつかの実施形態では、工程(a)は、溶媒、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を含むスラリーを調製することを含む。このように、本発明のいくつかの実施形態により、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物を調製するためのプロセスが提供され、本プロセスは、
(a) 溶媒、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を含むスラリーを調製することであって、単一の化合物が任意選択的にMn、Ni、及びMのうちの2つ以上を含み得る、調製することと、
(b) スラリーを粉砕することと、
(c) 工程(b)の生成物を焼成することと、を含み、
式中、Mは、Al、Mg、Ti、Co、Cu及びCrから選択される1つ以上の元素であり、
Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的なM含有前駆体は、工程(c)における焼成中にNOガスが実質的に形成されないように選択される。
【0046】
乾燥前駆体組成物ではなくスラリーを粉砕することは、前駆体成分のより均質な混合物を提供するのに役立ち得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、プロセスは、粉砕工程(b)の後及び焼成工程(c)の前にスラリーを乾燥させることを更に含む。乾燥させることは、噴霧乾燥を含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、溶媒は、水である。いくつかの実施形態では、溶媒は、アルコールであり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の工程(a)は、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及びM含有前駆体を含む組成物を調製することを含む。いくつかの実施形態では、第1の工程(a)は、溶媒、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及びM含有前駆体を含むスラリーを調製することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び(存在する場合)M含有前駆体のうちの1つ以上は、溶媒に可溶性である。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び(存在する場合)M含有前駆体のうちの1つ以上は、溶媒に不溶性である。
【0051】
本明細書において、「可溶性」は、25℃で、少なくとも5g/100mL、例えば、少なくとも10g/100mLの溶解度を示す。本明細書において、「不溶性」は、25℃で、0.10g/100mL未満、例えば、0.05g/100mL未満、例えば、0.02g/100mL未満の溶解度を示す。
【0052】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び(存在する場合)M含有前駆体のうちの1つは、溶媒に可溶性である。いくつかの実施形態では、Li含有前駆体は、溶媒に可溶性であり、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、及び(存在する場合)M含有前駆体の各々は、溶媒に不溶性である。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の工程(a)は、Li含有前駆体の溶液を提供することと、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を溶液に添加して、スラリーを調製することと、を含む。いくつかの実施形態では、溶液は、水溶液である。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、及び(存在する場合)M含有前駆体の各々は、溶媒に不溶性である。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1の工程(a)は、Li含有前駆体を溶媒中に溶解することと、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を溶液に添加して、スラリーを調製することと、を含む。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、及び(存在する場合)M含有前駆体の各々は、溶媒に不溶性である。
【0055】
いくつかの実施形態では、第1の工程(a)は、前駆体の添加中及び/又は添加後に溶液/スラリーをかき混ぜる又は撹拌することを更に含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、スラリー又は溶液のかき混ぜる又は撹拌することは、例えば、少なくとも10分、少なくとも20分、又は少なくとも30分の期間にわたって行われ得る。その期間は、5時間未満、例えば2時間未満であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1の工程(a)は、Li含有前駆体を溶媒中に溶解することと、Ni含有前駆体及び(存在する場合)M含有前駆体を溶液に添加することと、スラリーをかき混ぜる又は撹拌することと、次いで、Mn含有前駆体を添加することと、スラリーを再びかき混ぜる又は撹拌することと、を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、工程(a)において調製された組成物は、HBOを更に含む。理論に拘束されることを望むものではないが、HBOは、合成中の結晶化を支持すると考えられ、結果として、より低い温度が使用され得る。
【0059】
Mn含有前駆体は、焼成時のNO生成物を実質的に発生させないMnの任意の化合物であり得る。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体は、25℃で水に不溶性である。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体は、MnCO、MnO及びMnのうちの1つ以上を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体は、MnCOを含むか、又はそれからなる。
【0060】
Ni含有前駆体は、焼成時のNO生成物を実質的に発生させないNiの任意の化合物であり得る。いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体は、25℃で水に不溶性である。いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体は、Ni(OH)、NiO、NiO(OH)、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、及びそれらの水和形態から選択される1つ以上の化合物を含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体は、Ni(OH)又はその水和形態を含むか、又はそれからなる。
【0061】
Li含有前駆体は、焼成時にNO生成物を実質的に発生させないLiの任意の化合物であり得る。いくつかの実施形態では、Li含有前駆体は、25℃で水に可溶性である。いくつかの実施形態では、Li含有前駆体は、LiOH、LiCO及びその水和形態から選択される1つ以上の化合物を含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、Li含有前駆体は、LiOH又はその水和形態を含むか、又はそれからなる。
【0062】
M含有前駆体は、焼成時にNO生成物を実質的に発生させない元素Mの任意の化合物であり得る。いくつかの実施形態では、M含有前駆体は、25℃で水に不溶性である。いくつかの実施形態では、M含有前駆体は、M個の水酸化物、M酸化物、M硫酸塩、M炭酸塩、M酢酸塩、及びそれらの水和形態から選択される1つ以上の化合物を含む。いくつかの実施形態では、M含有前駆体は、Al含有前駆体を含む。いくつかの実施形態では、Al含有前駆体は、Al(OH)及びAl(SOのうちの1つ以上を含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、Al含有前駆体は、Al(OH)を含むか、又はそれからなる。
【0063】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、及び(存在する場合)M含有前駆体のうちの2つ以上は、単一の化合物、例えば混合ニッケルマンガン水酸化物などの混合金属水酸化物として提供され得る。
【0064】
NOは、窒素二酸化窒素(NO)及び一酸化窒素(NO)の2つのガスのうちの一方又は両方を指す。「NOガスを実質的に発生させない」という用語は、焼成がNOガス生成物を全く生成しないか、又はNOを除去するための排気ガスの処理を必要とされないほど十分に無視できる量のNOガス生成物を生成することを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、焼成中に生成されるNOの量は、焼成からの排気ガス中のNOの濃度が50ppm未満、例えば、45ppm未満、40ppm未満、35ppm未満、30ppm未満、25ppm未満、20ppm未満、15ppm未満、10ppm未満、5ppm未満、又は1ppm未満であるような量である。いくつかの実施形態では、焼成中に生成されるNOの量は、焼成からの排気ガス中のNOの濃度が0.9ppm未満、例えば、0.8ppm未満、0.7ppm未満、0.6ppm未満、0.5ppm未満、0.2ppm未満、又は0.1ppm未満であり、いくつかの実施形態では約0ppmであるような量である。
【0065】
化学プロセスからの排気ガス中のNOを検出し、NOのレベルを監視するための好適な方法は、当業者に既知であり、気相FTIR技術及び質量分析を含む。例えば、Thermo Scientific(RTM)製のAntaris(RTM)IGS FTIR Analyzerを使用して、排気ベース中のNO及びNOのレベルを監視し得る。
【0066】
当業者は、焼成時にNO生成物を実質的に発生させない好適な前駆体化合物を選択することができる。例えば、このプロセスで使用される前駆体化合物は、硝酸塩の存在がNO排気ガスを発生させるため、実質的にN含有アニオンを含有しない。
【0067】
特に、このプロセスで使用される前駆体化合物は、硝酸塩の存在がNO排気ガスを発生させるため、実質的に硝酸塩を含有しない。「実質的に硝酸塩を含まない」という用語は、硝酸塩の欠如を指す一方で、例えば、不可避の硝酸塩が、不純物として、又は相当な量のNOを発生させず、したがって排気ガス処理を必要としない極微量が存在するを許容することを意図する。いくつかの実施形態では、各前駆体は、前駆体中の金属元素の重量に対して10重量%未満の硝酸塩を含有する。例えば、いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体は、前駆体中のMnの量に対して10重量%未満の硝酸塩(NO)を含有する。比較のために、化合物Mn(NOは、化合物中のMnの量に対して225.7重量%の硝酸塩を含有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、各前駆体は、前駆体中の金属元素の重量に対して5重量%未満、例えば、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.5重量%未満、又は0.1重量%未満の硝酸塩を含有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、各前駆体は、前駆体中の金属元素の重量に対して5重量%未満、例えば、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.5重量%未満、又は0.1重量%未満の窒素原子を含有する。これには、硝酸塩、亜硝酸塩、窒化物、及び任意の有機窒素含有種などの化合物中に存在する窒素が含まれる。
【0070】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD90粒径は、少なくとも2.0μm、例えば、少なくとも2.1μm、少なくとも2.2μm、少なくとも2.3μm、少なくとも2.4μm、又は少なくとも2.5μmである。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD90粒径は、120μm以下、例えば119μm以下、118μm以下、117μm以下、116μm以下、115μm以下、又は114μm以下である。
【0071】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD90粒径は、4μm未満である。本発明者らは、4μm未満のD90粒径を有する初期スラリー中のMn含有前駆体の使用が、改善された容量及び改善されたサイクル性を有する優れた生成物を提供することを見出した。本発明者らは、驚くべきことに、これがまた、特に高い相純度を有する生成物を提供することを見出しており、これは、材料のXRDパターンの分析から明らかである。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD90粒径は3μm未満であり、これは特に良好な結果を提供する。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD90粒径は、2.9μm未満、例えば、2.8μm未満、2.7μm未満、2.6μm未満、2.5μm未満、2.4μm未満、2.3μm未満、2.2μm未満、2.1μm未満、又は2.2μm未満である。
【0072】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD90粒径は、約2.0μm~約120μm、例えば、約2.0μm~約115μm、約2.0μm~約100μm、約2.0μm~約50μm、約2.0μm~約20μm、約2.0μm~約15μm、又は約2.0μm~約10μmである。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD90粒径は、約2.0μm~約4.0μm、例えば、約2.0μm~約3.0μm、2.1μm~約3.0μm、約2.2μm~約3.0μm、約2.3μm~約3.0μm、約2.3μm~約2.9μm、約2.3μm~約2.8μm、約2.3μm~約2.7μm、約2.4μm~約2.6μm、又は約2.5μmである。
【0073】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD50粒径は、2μm未満、例えば、1.9μm未満、1.8μm未満、1.7μm未満、1.6μm未満、又は1.5μm未満である。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD50粒径は、少なくとも1.0μm、例えば、少なくとも1.05μm、少なくとも1.1μm、少なくとも1.15μm、又は少なくとも1.2μmである。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD50粒径は、約1.0μm~約80μm、例えば、約1.2μm~約75μm、約1.2μm~約70μm、約1.2μm~約65μm、約1.0μm~約50μm、約1.0μm~約20μm、又は約1.0μm~約5μmである。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD50粒径は、約1.0μm~約2.0μm、例えば、約1.0μm~約1.5μmである。
【0074】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD10粒径は、15μm未満、例えば、12μm未満、10μm未満、9μm未満、又は8μm未満である。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD10粒径は、2μm未満、例えば、1.5μm未満、1.4μm未満、1.3μm未満、1.2μm未満、1.1μm未満、又は1μm未満である。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD10粒径は、少なくとも0.4μm、例えば、少なくとも0.45μm、少なくとも0.5μm、少なくとも0.55μm、又は少なくとも0.6μmである。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD10粒径は、約0.4μm~約15μm、例えば、約0.4μm~約12μm、約0.4μm~約10μm、約0.4μm~約9μm、約0.4μm~約8μm、約0.45μm~約8μm、約0.5μm~約8μm、約0.55μm~約8μm、又は約0.6μm~約8μmである。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体のD10粒径は、約0.4μm~約2.0μm、例えば、約0.5μm~約2.0μm、又は約0.5μm~約1.0μmである。
【0075】
いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体は、約2.0μm~約4.0μmのD90粒径、約1.0μm~約1.5μmのD50粒径、及び約0.5μm~約1.0μmのD10粒径を有する。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体は約2.0μm~約3.0μmのD90粒径、約1.0μm~約1.5μmのD50粒径、及び約0.5μm~約1.0μmのD10粒径を有する。
【0076】
好ましい粒径分布を有するMn含有前駆体は、例えば、Tropaq社から市販されている。代替的に、Mn含有前駆体の所望のD90は、より大きな粒径の前駆体を、正しい粒径に達するまで、例えば、粉砕機器を使用して粉砕することによって得られ得る。粉砕機器の性質は、特に限定されない。例えば、ボールミル、遊星ボールミル、ローリングベッドミル、又はパールミルであり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体のD90粒径は、25μm未満、例えば、20μm未満、又は15μm未満である。いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体のD90粒径は、10μm~25μm、例えば、10μm~20μm、10μm~15μm、又は12μm~14μmである。いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体のD50粒径は、15μm未満、例えば、10μm未満、又は8μm未満である。いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体のD50粒径は、5μm~15μm、例えば、5μm~12μm、5μm~10μm、又は5μm~8μmである。いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体のD10粒径は、5μm未満、例えば、3μm未満、2μm未満、1μm未満、又は0.8μm未満である。いくつかの実施形態では、Ni含有前駆体のD10粒径は、0.1μm~5μm、例えば、0.2μm~5μm、0.5μm~2μm、又は0.5μm~1μmである。
【0078】
いくつかの実施形態では、M含有前駆体(例えば、Al含有前駆体)のD90粒径は、200μm未満、例えば、190μm未満、180μm未満、170μm未満、又は160μm未満である。いくつかの実施形態では、M含有前駆体のD90粒径は、120μm~200μm、例えば、130μm~170μm、140μm~160μm、又は145μm~155μmである。いくつかの実施形態では、M含有前駆体のD50粒径は、120μm未満、例えば、115μm未満、110μm未満、105μm未満、100μm未満、95μm未満、又は90μm未満である。いくつかの実施形態では、M含有前駆体のD50粒径は、50μm~120μm、例えば、60μm~100μm、60μm~90μm、又は80μm~90μmである。いくつかの実施形態では、M含有前駆体のD10粒径は、60μm未満、例えば、55μm未満、50μm未満、又は45μm未満である。いくつかの実施形態では、M含有前駆体のD10粒径は、30μm~55μm、例えば、35μm~55μm、35μm~50μm、又は40μm~45μmである。
【0079】
プロセスの工程(b)において、工程(a)で調製された組成物は、粉砕に供される。当業者に既知の任意の好適な粉砕機器が使用され得る。粉砕機器の性質は、特に限定されない。例えば、ボールミル、遊星ボールミル、ローリングベッドミル、又はパールミルであり得る。粉砕は、粒子が所望のサイズに達するまで行われ得る。例えば、組成物は、典型的には、粒子が50μm未満、例えば、40μm未満、30μm未満、又は20μm未満のD50粒径を有するまで粉砕される。
【0080】
かかる粉砕工程を使用することは、生成物の構造又は特性にほとんど又は全く負の影響を及ぼすことなく、より大きな粒径の前駆体がプロセスで使用され得ることを意味する。これにより、前駆体の粒径大きいほど安価であるため、プロセスが、より経済的かつより容易に拡張可能になる。
【0081】
こうして、いくつかの実施形態では、プロセスは、
(a) Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的にM含有前駆体を含む組成物を調製することであって、単一の化合物が、任意選択的に、Mn、Ni、及びMのうちの2つ以上を含み得る、調製することと、
(b) この組成物を粉砕することと、
(c) 工程(b)の生成物を焼成することと、を含み、
式中、Mは、Al、Mg、Ti、Co、Cu及びCrから選択される1つ以上の元素であり、
Mn含有前駆体、Ni含有前駆体、Li含有前駆体、及び任意選択的なM含有前駆体は、工程(c)における焼成中にNOガスが実質的に形成されないように選択され、
Mn含有前駆体は、少なくとも10μm、例えば少なくとも20μm、少なくとも30μm、少なくとも40μm、少なくとも50μm、少なくとも60μm、少なくとも70μm、少なくとも80μm、少なくとも90μm、少なくとも100μm、又は少なくとも110μmのD90粒径を有する。いくつかの実施形態では、Mn含有前駆体は、少なくとも2μm(例えば、少なくとも5μm)のD10粒径、少なくとも10μm(例えば、少なくとも50μm)のD50粒径、及び少なくとも10μm(例えば、少なくとも80μm)のD90粒径を有する。このようにして、高品質の生成物を調製するより経済的なプロセスが提供される。
【0082】
いくつかの実施形態では、組成物は、スラリーであり、スラリーは工程(b)において粉砕に供される。
【0083】
いくつかの実施形態では、組成物は、パールミルで粉砕される。これは、組成物が循環流にあり、そのため、数回粉砕されるという利点を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、粉砕は、不活性粉砕媒体、例えば研磨ビーズの存在下での粉砕を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、粉砕で使用される研磨ビーズは、酸化ジルコニウム(zirconium oxide、ZrO)を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、研磨ビーズは、1mm未満、例えば、0.9mm未満、0.8mm未満、又は0.7mm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、0.6mmのZrO研磨ビーズが使用される。
【0087】
いくつかの実施形態では、粉砕は、少なくとも30分間、例えば少なくとも45分間、少なくとも60分間、少なくとも75分間、少なくとも90分間、又は少なくとも105分間行われる。いくつかの実施形態では、粉砕は、最大5時間、例えば最大4.5時間、最大4時間、最大3.5時間、最大3時間、又は最大2.5時間行われる。
【0088】
いくつかの実施形態では、粉砕は、少なくとも2時間行わる。かかる粉砕時間を長くすることにより、生成物の構造又は特性を損なうことなく、より大きな粒径の前駆体を使用することが可能になり、これにより、上記で説明されたように、より経済的なプロセスが提供される。
【0089】
いくつかの実施形態では、スラリーは、ミルに添加されるとき、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%の固形分を有する。いくつかの実施形態では、スラリーは、ミルに添加されるとき、最大80重量%、例えば、最大75重量%、最大70重量%、最大65重量%、最大60重量%、最大55重量%、又は最大50重量%の固形分を有する。いくつかの実施形態では、スラリーは、ミルに添加されるとき、10~80重量%、例えば、10~70重量%、20~70重量%、30~70重量%、30~60重量%、40~60重量%、又は40~50重量%の固形分を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、工程(b)中の粉砕速度は、少なくとも1000rpm、例えば、少なくとも1500rpm、少なくとも2000rpm、又は少なくとも2500rpmである。いくつかの実施形態では、粉砕速度は、約3000rpmである。
【0091】
粉砕に供される組成物が溶媒を含む場合(すなわち、組成物がスラリーである場合)、工程(b)において粉砕した後、粉砕されたスラリーは乾燥される。
【0092】
当業者に既知の任意の好適な乾燥方法が使用され得るが、好ましくは、スラリーは噴霧乾燥される。これにより、乾燥工程がスケールアップしやすくなる。
【0093】
他の可能な乾燥方法には、加熱真空オーブン内でスラリーを乾燥させることが含まれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、スラリーは、少なくとも150℃、例えば、少なくとも160℃、少なくとも170℃、少なくとも180℃、少なくとも190℃、少なくとも200℃、又は少なくとも210℃の温度で噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、スラリーは、最大280℃、例えば、最大270℃、最大260℃、最大250℃、最大240℃、又は最大230℃の温度で噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、スラリーは、150~280℃、例えば、160~270℃、170~270℃、180~270℃、180~260℃、180~250℃、190~250℃、190~240℃、200~240℃、200~230℃、又は210~230℃の温度で噴霧乾燥される。
【0095】
当業者には、温度選択が噴霧乾燥プロセスのスケールに依存し、より大きなスケールのプロセスに対してより高い温度が可能であること(例えば、最大約400℃)が理解されよう。
【0096】
いくつかの実施形態では、噴霧乾燥法中のノズルの出口温度は、80~130℃、例えば80~120℃、90~120℃、又は100~120℃の温度に維持される。当業者には理解されるように、出口温度は、ポンプ速度の調整によって調整することができる。
【0097】
乾燥工程の生成物は、乾燥材料であり、これは、工程(c)において焼成される。
【0098】
組成物の焼成は、工程(c)において行われる。
【0099】
いくつかの実施形態では、焼成中、材料は、少なくとも350℃、例えば、少なくとも360℃、少なくとも370℃、少なくとも380℃、少なくとも390℃、少なくとも400℃、少なくとも410℃、少なくとも420℃、少なくとも430℃、又は少なくとも440℃の温度に曝露される。いくつかの実施形態では、焼成の少なくとも一部分は、少なくとも750℃、例えば、少なくとも760℃、少なくとも770℃、少なくとも780℃、少なくとも790℃、少なくとも800℃、少なくとも810℃、少なくとも820℃、少なくとも830℃、又は少なくとも840℃の温度で行われる。
【0100】
いくつかの実施形態では、焼成の少なくとも一部分の間、材料は、350~950℃、例えば、400~900℃、440~860℃、750~950℃、760~940℃、770~930℃、780~920℃、790~910℃、800~900℃、810~890℃、820~880℃、830~870℃、又は840~860℃の温度に曝露される。いくつかの実施形態では、焼成の少なくとも一部分の間、材料は、約850℃の温度に曝露される。いくつかの実施形態では、焼成の少なくとも一部分の間、材料は、約450℃の温度に曝露される。
【0101】
いくつかの実施形態では、焼成は、材料を周囲温度T温度Tまで(立ち上がり時間t0-1の期間にわたって)加熱し、材料をTで時間tの期間保持することによって実施される。いくつかの実施形態では、Tは、350950℃、例えば、400~900℃、440~860℃、750~950℃、760~940℃、770~930℃、780~920℃、790~910℃、800~900℃、810~890℃、820~880℃、830~870℃、又は840~860℃の温度である。いくつかの実施形態では、Tは、約850℃の温度である。Tは、ほぼ室温であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、tは、少なくとも10分、例えば、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも40分、又は少なくとも50分である。いくつかの実施形態では、tは、最大15時間、例えば、最大14.5時間、最大14時間、最大13.5時間、最大13時間、最大12.5時間、又は最大12時間である。いくつかの実施形態では、tは、20分~15時間、例えば、1時間~15時間、5時間~15時間、又は8分~13時間である。いくつかの実施形態では、tは、約12時間である。
【0103】
いくつかの実施形態では、t0-1は、約1~10時間、例えば、約2~8時間、約2~6時間、約3~6時間、又は約5時間である。
【0104】
焼成は、任意の好適な焼成炉で実施され得、非限定的な例には、バッチ炉などの炉が含まれる。
【0105】
焼成の後、材料は、周囲温度で放冷され得る。
【0106】
加熱工程は、空気中で行われ得る。他の実施形態では、焼成工程は、CO不含雰囲気下で行われ得る。例えば、CO不含空気は、焼成中及び任意選択的に冷却中に焼成される材料の上方を流れ得る。CO不含空気は、例えば、酸素と窒素との混合物であり得る。CO不含雰囲気は、酸素(例えば、純粋な酸素)であり得る。好ましくは、雰囲気は、酸化雰囲気である。本明細書で使用される場合、「CO不含」という用語は、100ppm未満のCO、例えば、50ppm未満のCO、20ppm未満のCO、又は10ppm未満のCOを含む雰囲気を含むことが意図される。これらのCOレベルは、COスクラバを使用してCOを除去することによって達成され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、本方法は、焼成された材料を脱凝集させる、焼成後の工程(d)を更に含む。いくつかの実施形態では、これは低エネルギー粉砕を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、本方法は、材料をふるいにかける工程を更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、脱凝集とそれに続くふるいがけを更に含む。いくつかの実施形態では、60μm未満、例えば、55μm未満又は50μm未満の開口サイズを有するふるいが、使用される。
【0109】
本発明のプロセスは、リチウムマンガンニッケルスピネル化合物を含む電極(典型的にはカソード)を形成する工程を更に含み得る。典型的には、これは、微粒子状リチウムマンガンニッケルスピネル化合物のスラリーを形成し、このスラリーを集電体(例えば、アルミニウム集電体)の表面に塗布し、任意選択的に処理(例えば、カレンダー加工)して電極の密度を増加させることによって行われる。スラリーは、溶媒、結合剤、炭素材料、及び更なる添加物のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0110】
典型的には、本発明の電極は、少なくとも2.5g/cm、少なくとも2.8g/cm、又は少なくとも3g/cmの電極密度を有する。これは、4.5g/cm以下、又は4g/cm以下の電極密度を有し得る。電極密度は、電極が形成される集電体を含まない、電極の電極密度(質量/体積)である。したがって、活性材料、あらゆる添加剤、あらゆる追加の炭素材料、及びあらゆる残りの結合剤が関係する。
【0111】
本発明のプロセスは、リチウムニッケル酸化物を含む電極を含む電池又は電気化学セルを構築することを更に含み得る。電池又はセルは、典型的には、アノード及び電解質を更に含む。電池又はセルは、典型的には、二次(再充電式)リチウム(例えば、リチウムイオン)イオン電池であってもよい。
【0112】
本発明の第2の態様は、第1の態様によるプロセスによるプロセスによって得られた、又は得ることができるリチウムマンガンニッケルスピネル化合物である。
【0113】
リチウムマンガンスピネル化合物は、高い初期容量及び高容量保持率によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物は、23℃、放電レートC/2、及び電極負荷6mg/cmで200サイクル後に少なくとも92%、例えば、少なくとも92.5%、少なくとも93%、少なくとも93.5%、少なくとも94%、少なくとも94.5%、少なくとも95%、又は少なくとも95.5%の容量を保持する。
【0114】
いくつかの実施形態では、化合物は、少なくとも125mAh/g、例えば、少なくとも126mAh/g、少なくとも127mAh/g、少なくとも128mAh/g、少なくとも129mAh/g、少なくとも130mAh/g、少なくとも131mAh/g、少なくとも132mAh/g、少なくとも133mAh/g、少なくとも134mAh/g、又は少なくとも135mAh/gの初期容量を提供する。
【0115】
本発明の第3の態様は、第2の態様による化合物を含む正極活性材料を提供する。
【0116】
本発明の第4の態様は、第3の態様による材料を含む電極を提供する。
【0117】
本発明の第5の態様は、第4の態様による電極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0118】
本発明の別の態様は、リチウム二次セル又は電池における第2の態様による化合物の使用である。
【0119】
ここで、本発明の理解を助けるために提供され、その範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照し、本発明を説明する。
【実施例
【0120】
実施例1-水酸化物及び炭酸塩前駆体からのLiMn1.55Ni0.4Al0.05の調製
58.4gのLiOH.HO(SQM)を250mLのHOに溶解した。Ni(OH)(Todini GmbH、D50=5.9μm)及びAl(OH)(Clariant、D90=152.77μm、D50=87.63μm、D10=43.29μm)を追加の50mLのHOとともに添加し、スラリーをUltra Turrax分散機を使用して3000rpmで30分間混合した。
【0121】
2.5μmのD90粒径、1.23μmのD50粒径、及び0.62μmのD10粒径(Tropaq UF、Clariant)を有するMnCOを添加し、スラリーを6000rpmで更に20分間混合した。MnCO粉末の粒径分布を図8(a)に示す。
【0122】
次いで、1.14gのHBO及び2.3gのLiOHを乳棒及び乳鉢で完全に混合し、更に300mLのHOとともにスラリーに添加した。
【0123】
次いで、スラリーをパールミルで2時間粉砕した。チャンバは、0.6mmのZrOボールで80%充填され、スラリーは、42重量%の固形分を有していた。ミル速度は3000rpmであり、ポンプ速度は2500rpmであった。
【0124】
粉砕後、ポンプ速度を調整して出口温度を110℃に維持しながら、スラリーをBuchi lab噴霧乾燥機を使用して220℃で噴霧乾燥した。続いて、収集した粉末を、Nabertherm社のバッチ炉を使用して、5時間かけて850℃まで加熱し、次いで、850℃で12時間保持することによって空気中で焼成した。焼成後、粉末を炉から取り出し、周囲温度で冷却した。次いで、粉末をFritschミルで軽く粉砕して脱凝集させ、45μmのふるいに通した。
【0125】
生成物は、本明細書において「試料A」と表記されるは、5.68μmのD50粒径を有することが見出された。典型的な粒径分布を、図9(a)に示す。
【0126】
図9(b)は、実施例1において調製されたリチウムマンガンニッケルスピネル材料のSEM画像を示している。図10は、材料のXRDプロットを示している。
【0127】
実施例2-水酸化物及び炭酸塩前駆体からのLiMn1.55Ni0.4Al0.05の調製
使用したMnCO前駆体が113.6μmのD90粒径、60.61μmのD50粒径、及び7.84μmのD10粒径(Tropaq HP、Clariant)を有していたことを除いて、実施例1の方法を行った。MnCO粉末の粒径分布を、図8(b)に示す。生成物は、本明細書において「試料B」と表記される。
【0128】
比較例1-硝酸塩及び炭酸塩前駆体からのLiMn1.55Ni0.4Al0.05の調製
Mn(NO.4HO、Ni(NO.6HO及びAl(NO.9HOを、Ultra Turraxミキサを使用して、30分間脱イオン水に溶解した。これとは別に、LiOH.HOを、HBOとともに脱イオン水に溶解した。続いて、LiOH/HBO溶液を混合金属硝酸塩溶液に滴下した。懸濁液をUltra Turraxミキサで10分間混合し、次いでPendraulikミキサで60分間混合した。
【0129】
2.5μmのD90粒径、1.23μmのD50粒径、及び0.62μmのD10粒径(TropaqUF)を有するMnCOを添加し、次いで懸濁液を更に1時間混合した。次いで、懸濁液をビーズミルで1時間粉砕した。研磨チャンバを1.3mmZrOボールで75%充填し、懸濁液の固形分は50%であった。粉砕を3×20分期間にわたって行い、各粉砕期間の間に20分間の休息を設けた。
【0130】
粉砕した懸濁液を220℃で噴霧乾燥し、ポンプレートを維持して出口温度を約110℃に保持した。続いて、収集した粉末を、空気中450℃で1時間、次いで850℃で12時間焼成した。焼成後、粉末を軽く粉砕して脱凝集させ、45μmのふるいに通した。
【0131】
生成物は、本明細書において「試料C」と表記されるが、11.01μmのD90粒径、4.79μmのD50粒径、及び1.68μmのD10粒径を有することが見出された。
【0132】
比較例2-硝酸塩及び炭酸塩前駆体からのLiMn1.55Ni0.4Al0.05の調製
使用したMnCO前駆体が113.6μmのD90粒径、60.61μmのD50粒径、及び7.84μmのD10粒径(Tropaq HP)を有していたことを除いて、比較例1の方法を行った。
【0133】
生成物は、本明細書において「試料D」と表記されるが、13.50μmのD90粒径、5.65μmのD50粒径、及び2.13μmのD10粒径を有することが見出された。
【0134】
比較例3-硝酸塩及び炭酸塩前駆体からのLiMn1.55Ni0.4Al0.05の調製
使用したMnCO前駆体が113.6μmのD90粒径、60.61μmのD50粒径、及び7.84μmのD10粒径(Tropaq HP)を有していたことを除いて、比較例1の方法を行った。更に、MnCOの添加後、ビーズミル中での粉砕を、1時間ではなく4時間行った。
【0135】
生成物は、本明細書において「試料E」と表記されるが、12.73μmのD90粒径、5.98μmのD50粒径、及び2.47μmのD10粒径を有することが見出された。
【0136】
比較例4 硝酸塩及び炭酸塩前駆体からのLiMn1.55Ni0.4Al0.05の調製
Mn(NO.4HO、Ni(NO.6HO及びAl(NO.9HOを、Ultra Turraxミキサを使用して、30分間脱イオン水に溶解した。これとは別に、LiOH.HOを、HBOとともに脱イオン水に溶解した。続いて、LiOH/HBO溶液を混合金属硝酸塩溶液に滴下した。懸濁液をUltra Turraxミキサで10分間混合し、次いでPendraulikミキサで60分間混合した。
【0137】
54.17μmのD90粒径、31.74μmのD50粒径、及び18.07μmのD10粒径(TropaqタイプN)を有するMnCOを添加し、次いで、懸濁液を更に1時間混合した。懸濁液は、いかなる粉砕又は研磨にも供されなかった。TropaqタイプN MnCOのPSDを図12に提供する。
【0138】
懸濁液を220℃で噴霧乾燥し、ポンプレートを維持して出口温度を約110℃に保持した。続いて、収集した粉末を空気中450℃で1時間、次いで850℃で12時間焼成した。焼成後、粉末を軽く粉砕して脱凝集させ、45μmのふるいに通した。生成物は、本明細書において「試料F」と表記される。
【0139】
電気化学試験
電極は、40%固形分のインクを用いて、90:5:5の活性材料:炭素:結合剤の配合物を作製した。N-メチルピロリドン(NMP、ex Aldrich)中のポリフッ化ビニリデン(PVdF;Solvay Solexis Solef 5130)の10重量%溶液を調製した。この溶液の抽出液2gを採取し、3.5gのNMPを添加した。0.2gのカーボンブラック(Timcal、Super P Li)を添加し、組成物をチューブドライブを用いて4000rpmで1時間混合した。上記の実施例及び比較例で調製した3.6gの活性材料を添加し、チューブドライブを用いて4000rpmで1時間更に混合した。
【0140】
得られたインクを、固定ブレード塗装機を使用してアルミニウム箔上に落として、湿潤厚さ170μmで両側がコーティングされた箔を提供した。箔を加熱プレート上で50℃で予備乾燥させ、次いで真空下120℃で120分間乾燥した。乾燥後、電極シートを直径13mm(面積が1.33cm)の電極に切断し、更に160℃で一晩真空乾燥させた。次いで、電極を10t/cmの静圧で1分間2回の間、圧密した。乾燥及び圧密された電極の厚さは45μmであり、活性材料の典型的な負荷は5~10mg/cmであった。
【0141】
試験は、対極として15mmリチウム箔ディスク、PSIガラス繊維セパレータ、及びフッ素化エチレン炭酸塩(fluorinated ethylene carbonate、FEC):DMCが1:4の容積比で構成された0.4mLの電解液を有する半セルで実施した。定電流サイクル試験を、3.0V~5.1Vの間のC/2対Li/Li比でセルをサイクルさせることによって実施した。
【0142】
3つの異なる材料の比容量を、図1において、放電レートに対してプロットする。プロットは、比較例1、2、及び3で調製された材料(それぞれ試料C、D及びE)の比容量を示している。プロットは、(より小さい粒径のMn前駆体から調製された)比較例1の材料の容量及びレート性能と一致させるために、より大きいMn前駆体粒径が使用される場合、粉砕時間を1時間~4時間増加させる必要があることを示している。言い換えれば、より大きな粒径のMn前駆体から調製された材料において同程度の均一性を達成するために、4時間の粉砕が必要であった。
【0143】
図2は、比較例1、2及び3の材料(それぞれ試料C、D及びE)のサイクル寿命のプロットである。結果は、(より小さい粒径のMn前駆体から調製された)比較例1の材料のサイクル寿命と一致させるために、より大きなMn前駆体粒径が使用される場合、粉砕時間を1時間~4時間増加させる必要があることを示している。
【0144】
図3は、比較例1、2及び3の材料(それぞれ試料C、D及びE)の放電曲線を示している。結果は、比較例1及び3の材料が同等の比エネルギーを有する一方で、比較例2の材料の比エネルギーがより低いことを示し、これは図1及び図2に示される結果と一致する。図3はまた、4.0VのMn(III)プラトーが比較例1よりも比較例2及び3でより長いことを示しており、比較例2及び3におけるMn前駆体が製造プロセス中に部分的に酸化されたことを示している。
【0145】
図4は、実施例1及び比較例1の材料(それぞれ試料A及びC)の比容量をプロットしている。結果は、実施例1の材料の容量が比較例1の材料よりも高いことを示している。
【0146】
図5は、実施例1及び比較例1の材料(それぞれ試料A及びC)のレート能力が同等であったことを示している。図6に示される結果から、試験期間(25サイクル)にわたってライフサイクル性能の差がないことは明らかである。
【0147】
したがって、硝酸塩前駆体を使用する既存のプロセスと比較して、本発明のプロセスを用いて、同様の粒径、より高い容量、並びに同等のレート能力及びサイクル寿命を有する純粋相の材料を得ることが可能である。これに加えて、NOガスは生成されず、したがって排気ガス処理は必要としない。
【0148】
図7は、実施例1及び実施例2の材料(それぞれ試料A及びB)の比容量を示している。
【0149】
XRDは、同等の格子パラメータを有する実施例1及び2の両方において、単一相が形成されたことを示した。これは、前駆体の変化にもかかわらず、同じ量のNi及びAlが格子に組み込まれたことを示唆している。しかしながら、図7の結果は、より大きなMnCO前駆体を使用して作製された実施例2の材料は、実施例1のもの(134mAh/g)よりも低い容量(128mAh/g)を有することを示している。これは、実施例2の生成物の製造中にMn(II)のMn(III)へのいくらかの酸化によるものであり得る。
【0150】
図11は、5つの異なる放電レート、D/5(5時間)、1D(1時間)、3D(20分)、5D(12分)、及び10D(6分)での比較例4の材料の放電曲線を示している。本発明の材料と比較して、図11の放電曲線は、低い放電レートであっても比較的低い比容量、及びより低い比エネルギーを示す短い高ボルトプラトーを示している。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】