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特表2023-500677超小型ナノ粒子、並びに、その製造、使用、及び分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(54)【発明の名称】超小型ナノ粒子、並びに、その製造、使用、及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/56 20060101AFI20221227BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20221227BHJP
   C01B 33/141 20060101ALI20221227BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20221227BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K9/56
A61K49/00 ZNM
C01B33/141
B82Y5/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525674
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 US2020058949
(87)【国際公開番号】W WO2021092065
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/930,539
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510243539
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タカー,マリク,ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】ガーディナー,ザ セカンド,トーマス,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒンクリー,ジョシュア,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーズナー,ウルリッチ,ビー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4G072
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA32
4C076CC50
4C076DD09H
4C076EE23H
4C076FF21
4C076FF53
4C085HH11
4C085HH13
4C085KA27
4C085KB01
4G072AA25
4G072AA28
4G072AA38
4G072AA41
4G072BB05
4G072CC01
4G072DD07
4G072EE01
4G072EE07
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH29
4G072HH30
4G072JJ23
4G072KK03
4G072LL06
4G072LL15
4G072MM01
4G072PP01
4G072PP11
4G072RR05
4G072RR12
4G072UU30
(57)【要約】
本開示は、1つ以上の色素基で機能化されていてもよい無機ナノ粒子を分析及び/又は精製する方法を提供する。無機ナノ粒子の分析及び/又は精製には、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの液体クロマトグラフィーの利用が含まれる。本開示の方法は、無機ナノ粒子上及び/又は無機ナノ粒子内の1つ以上の色素基の位置を決定するために使用され得る。本開示はまた、無機ナノ粒子を製造する方法及び無機ナノ粒子組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の色素を含んでおり、ポリエチレングリコール(PEG)基で表面機能化されている無機ナノ粒子を合成する方法であって、
a)室温で、水、TMOS、塩基、及び色素前駆物質を含む反応混合物を形成すること;
b)i)前記反応混合物を、ある時間(t1)及び温度(T1)で保持することにより、2~15nmの平均径を有する無機ナノ粒子を形成すること、又は
ii)前記反応混合物を、必要に応じて室温まで冷却し、及び、a)で得られた反応混合物に、シェル形成モノマーを添加することによって、コアサイズが2~15nm及び/又は平均径が2~50nmの無機ナノ粒子を形成すること;
c)必要に応じて、b)i)又はb)ii)で得られた無機ナノ粒子を含む反応混合物のpHを、pH6~10に調節すること;
d)b)i)又はb)ii)で得られた無機ナノ粒子を含む反応混合物に室温で、PEG-シラン・コンジュゲートを添加し、及び、得られた反応混合物をある時間(t2)及び温度(T2)で保持すること;
e)d)で得られた混合物をある時間(t3)及び温度(T3)で加熱することによって、PEG基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成すること;及び
f)前記反応混合物を液体クロマトグラフィーにより精製すること;
を含み、
ここで、
色素前駆物質、TMOS、塩基、及びPEG-シランのモル比は、0.0090~0.032:11~46:0.5~1.5:5~20であり、及び
前記方法は、1つ以上の色素を含んでおり、ポリエチレングリコール(PEG)基で表面機能化されている無機ナノ粒子を産生するものである、方法。
【請求項2】
前記塩基が、水酸化アンモニウム、エタノール中のアンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基が濃度を有し、その濃度が0.001mM~60mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記精製が、複数の無機ナノ粒子の選択された部分を、前記反応混合物から単離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、複数の無機ナノ粒子の選択された部分を分析することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって複数の無機ナノ粒子の選択された部分を分析することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記精製が、
クロマトグラフィーカラムに複数の無機ナノ粒子を注入すること;前記カラムは、固定相と流体連通しているインプットを含んでおり、前記固定相はアウトプットと流体連通しており、前記アウトプットは検出器と流体連通している、
移動相をクロマトグラフィーカラムに通過させて、前記複数の無機ナノ粒子をカラムから溶出させること;及び
前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分を含む溶離液を採取すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分を、HPLCカラムに注入すること;前記カラムは、固定相と流体連通しているインプットを含んでおり、前記固定相はアウトプットと流体連通しており、前記アウトプットは検出器と流体連通している、
移動相をHPLCカラムに通過させて、前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分をカラムから溶出させて、検出器に入るようにし、前記検出器にシグナルを生成させること;ここで、前記シグナルは、前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分の個々の無機ナノ粒子上及び/又は個々の無機ナノ粒子内の1つ以上の色素の位置を示す、
前記シグナルを分析して、前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分の個々の無機ナノ粒子上及び/又は個々の無機ナノ粒子内の1つ以上の色素の位置を決定すること;及び
任意で、溶離液の1つ以上の画分を採取すること
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、アルミナ又はアルミノシリケートコアモノマーをさらに含み、
前記反応混合物のpHが、前記アルミナ又はアルミノシリケートコア形成モノマーの添加前に、1~2のpHに調整され、及び
任意で、PEGが前記反応混合物に添加され、その後pHが、pH7~9に調整され、
前記コアがアルミノシリケートコアである、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記色素前駆物質が、正に帯電した色素前駆物質、負に帯電した色素前駆物質、又は正味中性色素前駆物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
正に帯電した色素前駆物質が、Cy5.5、Cy5、Cy3、ATTO647N、メチレンブルー、ATTO663、ATTO620、ATTO665、ATTO465、ATTO495、ATTO520、ATTORho6G、ATTORho3B、ATTORho11、ATTORho12、ATTOThio12、ATTO580Q、ATTORho101、ATTORho13、ATTO610、ATTO612Q、ATTO647N、ATTORho14、ATTOOxa12、ATTO725、ATTO740、ATTOMB2、及びそれらの組み合わせから選択される正に帯電した色素から形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
負に帯電した色素前駆物質が、スルホ-Cy5.5、スルホ-Cy5、スルホ-Cy3、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 430、ATTO430LS、ATTO488、ATTO490LS、ATTO532、ATTO594、及びそれらの組み合わせから選択される負に帯電した色素から形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
正味中性色素前駆物質が、テトラメチルローダミン(TMR)、ATTO390、ATTO425、ATTO565、ATTO590、ATTO647、ATTO650、ATTO655、ATTO680、ATTO700、及びそれらの組み合わせから選択される正味中性色素から形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の色素が、前記無機ナノ粒子中に完全に封入されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
複数の無機ナノ粒子を含む組成物であって、前記複数の無機ナノ粒子の個々の無機ナノ粒子は、1~7個の色素基を含み、ここで、
i)前記色素基のいずれも、前記無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されていない;又は
ii)前記無機ナノ粒子の50%より多くが、前記無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置された、少なくとも1つの色素基を有し;又は
iii)すべての色素基が、前記無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されており、
ここで、前記色素基は正に帯電しているか、負に帯電しているか、又は正味の中性電荷を有している、
複数の無機ナノ粒子を含む組成物。
【請求項16】
前記複数の無機ナノ粒子が、本質的に、前記無機ナノ粒子中に完全に封入された0、1、2、3、4、5、6、又は7個の色素基を有する個々の無機ナノ粒子からなる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記1つ以上の色素基が正に帯電しているか、又は正味の中性電荷を有しており、前記複数の無機ナノ粒子が、サイズ依存的な表面不均一性を示さない、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
サイズ依存的な表面不均一性が、HPLCによって決定される、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2019年11月4日に出願された米国仮出願62/930,539に基づく優先権を主張し、その開示は参照により本願に包含される。
【0002】
連邦支援研究又は開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって付与された認可番号CA199081及びGM122575の下で、政府支援を受けて発明された。政府は、本発明に所定の権利を有する。
【開示の背景】
【0003】
シリカナノ粒子(SNP)は、その大きな表面積、不活性及び高い生体適合性のため、潜在的な治療/診断用途について関心を集めている。しかしながら、たいていのSNPは10nmを超える大きさである。
【0004】
ナノ粒子合成は、エネルギーからヘルスケアまで、多くの研究分野でおなじみであり、量子ドット又はポリマー、金属、及び酸化物ナノ粒子などの多様な材料へのアクセスを提供する。成功したと言えるナノ粒子調製方法の主要な特徴は、バッチ間の再現性と、サイズ、輝度、表面化学などの特性の制御である。ここ5~10年の間に、超小型(直径<10nm)ナノ粒子の合成に対する関心が高まっている。このスケールで出現するユニークな特性に加えて、その小さなサイズは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して粒子表面の化学的特性を定量的に分析することを可能にする。HPLCは、正確に定義された分子材料(小分子、デンドリマーなどの高分子構造体、及びタンパク質など)の分野では幅広く使用されているが、無機コア-有機シェル(コアシェル)ナノ粒子へのHPLCの適用の成功は、最近の動向である。合成生成物の品質管理のために十分に確立されたHPLCの多用途性の結果として、これは、ナノ粒子の分析に新規で興味深い側面を追加する(例えば、生物学的応用のためにそれらの表面化学特性をさらに調整するため)。単一の合成バッチ内で、HPLCは、ナノ粒子の表面化学のバリエーションを、クロマトグラムの異なるピークにマッピングすることを可能にする。粒子表面の化学的性質における不均一性の程度に関するこのような定量的評価は、平均化された粒子表面特性(典型的には、例えば、ゼータ電位又は分光測定によって明らかにされる)とは大きく異なる。さらに、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの他の分析技術と組み合わせて、HPLCは多次元相関分析を可能にする。連結GPC-HPLCを実行する場合、例えば、これは、表面化学的不均一性を粒径分散度にマッピングすることを可能にする。これは、次に、粒子バッチの不均一性が、生物学的応答をどのように調節するかという質問に答える扉を開くものであり、これは、適切な定量的特性評価技術がないため、これまではほとんど明らかになっていない領域であった。
【0005】
この種の分析技術を用いた詳細な研究のために特に関心のあるシステムは、コーネルプライムドット(C'ドット)であり、これは、超小型(直径<10nm)蛍光コアシェルシリカナノ粒子の1種であり、診断的及び治療的臨床可能性の両方について試験するために、現在複数の臨床試験が行われている[転移性黒色腫(NCT01266096, NCT03465618)及び悪性脳腫瘍(NCT02106598)の標的PET及び/又は光学的検出のため]。C'ドットは、ゾルゲル化学を介して成長したシリカコア(その中に蛍光色素が共有結合的に封入されている)、及び、ブラシ様のポリ(エチレングリコール)-(PEG-)シランで共有結合的にコーティングされたシェルからなる。封入される蛍光色素は、用途に基づいて変化し得るが、典型的には、Cy5及びCy5.5などの色素が、生物学的用途に有利なそれらの近赤外(NIR)吸収及び放出プロファイルのため、使用されている。これらの色素の基本的な化学構造は極めて疎水性である。したがって、それらの親水性を高め、水性媒体中でのそれらの使用を容易にするために、しばしばスルホネート基が色素周辺に導入される。
【0006】
初期に反復された水ベースのC'ドット合成では、典型的には、Cy5及びCy5.5色素のスルホン化類似体が、マレイミド-チオールカップリング反応を介してシラン部分に結合された。得られた色素-シラン・コンジュゲートは、次いで、ゾル-ゲルプロセスを介してシリカマトリクス内に共有結合的に封入され、続いてPEG化が行われ、これにより、得られたコアシェルドットの有意に増加した親水性(水中の遊離色素と比べて)とともに、強化された光物理的特性が提供される。しかしながら、このようなC'ドットの表面化学を解明するためにHPLCを用いた最近の研究は、負に荷電したスルホン化Cy5の使用が、顕著な表面化学的不均一性の原因であることを明らかにした。このような粒子のHPLCクロマトグラムは複数のピークを示した(下記の図2a参照)。最短の溶出時間における第1のピークは、望ましい純粋にペグ化されたナノ粒子表面(Cy5色素が完全に封入されているか、又は完全に存在しない)を有するC'ドットに対応していた。その後のピークは、シリカナノ粒子表面上の1つ、2つ、又は3つのCy5色素にそれぞれ割り当てられ、これはPEG鎖間に疎水性パッチをもたらし、HPLCクロマトグラムにおいて観察されたより長い溶出時間へのシフトの原因となった。これらの結果は、アフターパルス補正蛍光相関分光法(FCS)、単粒子フォトブリーチング、分子動力学シミュレーションなどの追加技術を使用して裏付けられた。色素電荷は、特定の色素のシリカマトリクスへの成功的な封入(シリカナノ粒子コア表面上への共有結合ではなく)に重要な役割を果たすことが見出された。
【0007】
望ましい特徴を有する無機ナノ粒子を製造する方法に対する継続的かつ満たされていない需要が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、無機ナノ粒子(例えば、コアナノ粒子又はコアシェルナノ粒子)を分析及び/又は精製する方法を提供する。無機ナノ粒子は、本明細書では超小型ナノ粒子とも称される。本開示はまた、無機ナノ粒子、及び、無機ナノ粒子を含む組成物を製造する方法を提供する。
【0009】
様々な実施例において、本開示は、以下のことを提供する:
(1)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法の応用により、無機ナノ粒子(例えば、蛍光コアシェル型シリカナノ粒子)のこれまで知られていなかった表面化学的不均一性の発見が可能となった。
(2)観察される内因的ナノ粒子不均一性を克服するための設計基準の特定。
(3)蛍光色素の電荷が、表面化学の不均一性の制御において重要なパラメータであるという発見。
(4)複数の実施形態において、ATTO647N、MB2、すべてのシアニン基色素(例えば、Cy5、Cy5.5、Cy7等)などの正に帯電した色素の使用は、高度に均質な表面化学的特性を有するC'ドットを合成し、これはHPLC分析において単一のピークのみを示す。
(5)これらの均質なC'ドットは、化学的分解に対して非常に高い安定性を示す。
(6)これらの均質なC'ドットは、以前に報告された材料と比較して、非常に高い光安定性を示す。
【0010】
特定の例において、本開示は、以下のことを提供する:
(1)完全に均質な表面化学を有する超小型(10nm未満)のナノ粒子の創造。
(2)溶媒環境に対する色素感受性を低下させる(通常、ATTO647Nのような疎水性色素は、水ベースの用途では確実には使用できない)。
(3)臨床的に関連する画像診断のための用途。
(4)ナノ粒子診断法・治療法における生体内分布改善への利用。
(5)臨床への橋渡しの過程における他のナノ粒子のための使用。
(6)これまで単純ではなかったPEG化材料の表面化学エンジニアリングを解析するのに有用。
【0011】
ある態様において、本開示は、液体クロマトグラフィーを介した無機ナノ粒子の分析及び/又は精製を提供する。合成、分析、及び/又は精製は、HPLC及び/又はGPCを用いて行ってもよい。また、色素をナノ粒子に完全に封入するための合成経路も提供される。
【0012】
種々の色素基を含む無機ナノ粒子が、分析及び/又は精製に適し得る。色素基は、無機ナノ粒子上及び/又は中の様々な位置に存在してもよい(無機ナノ粒子によって被包される(完全に被包される)又は部分的に被包される、又は、無機ナノ粒子中に封入される(完全に封入される)、又は部分的に封入される)。色素基は、無機ナノ粒子の表面に配置されるか、又は部分的に配置されてもよく、無機ナノ粒子によって被包(完全に被包)又は部分的に被包されてもよく、又は無機ナノ粒子中に封入(完全に封入)又は部分的に封入されてもよく、又はそれらの組み合わせであってもよい。無機ナノ粒子の表面に配置された又は部分的に配置された色素基は、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されたPEG基の一部である色素基を指してもよい。
【0013】
無機ナノ粒子は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析されてもよい。HPLCは、無機ナノ粒子上及び/又は無機ナノ粒子中の(例えば、被包された)1つ以上の色素基の位置を決定するために使用されてもよい。このような方法は、複数の無機ナノ粒子をHPLC分析に供することを含んでもよい。
【0014】
複数の無機ナノ粒子を含む組成物が、液体クロマトグラフィーを用いて精製されてもよい。一例では、液体クロマトグラフィーは、GPC又は分取スケールHPLC(例えば、分取スケールRP-HPLC)である。
【0015】
精製及び/又は分析の方法は、無機ナノ粒子の、精製された、分析された、及び/又は選択された部分を含む溶離液を生成し得る。無機ナノ粒子の精製された、分析された、及び/又は選択された部分は、画分と呼ばれることがある。画分は、無機ナノ粒子の望ましい組み合わせを含む種々の組成物を生成するために、組み合わされてもよい。例えば、複数の無機ナノ粒子を含む画分(ここで、個々の無機ナノ粒子は、1つ以上のアニオン性色素基を封入する)と、複数の無機ナノ粒子を含む画分(ここで、個々の無機ナノ粒子は、個々の無機ナノ粒子の外表面に配置又は部分的に配置されている1つのアニオン性色素基を有する)とを組み合わせてもよい。
【0016】
ある態様において、本開示は、無機ナノ粒子(例えば、超小型ナノ粒子)を製造する方法を提供する。本方法は、水性反応媒体(例えば水)の使用に基づく。ナノ粒子は、ポリエチレングリコール基及び/又は種々の色素基で表面機能化されることができる(例えば、PEG化)。無機ナノ粒子の表面に配置された又は部分的に配置された色素基は、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されたPEG基の一部である色素基を指し得る。
【0017】
ある態様において、本開示は、本開示の無機ナノ粒子を含む組成物を提供する。組成物は、1種又は複数種を含むことができる(例えば、異なる平均サイズ及び/又は1つ以上の異なる組成的特徴を有する)。
【0018】
ある態様において、本開示は、本開示の無機ナノ粒子及び組成物の使用を提供する。例えば、無機ナノ粒子又は無機ナノ粒子含有組成物は、送達及び/又は画像化方法において使用される。
【0019】
本開示は、細胞、細胞外成分、又は組織などの生体材料のイメージング方法を提供し、前記方法は、前記生体材料を、1つ以上の正に帯電した色素を含む無機ナノ粒子又は該ナノ粒子を含む組成物と接触させること;光などの励起電磁(e/m)放射線を組織又は細胞に向け、それによって正に帯電した色素分子を励起すること;励起された正に帯電した色素分子から放出されるe/m放射線を検出すること;検出されたe/m放射線を捕捉して処理し、生体材料の1つ以上の画像を提供することを含む。これらの工程の1つ以上は、インビトロ又はインビボで行うことができる。例えば、細胞又は組織は、個体中に存在することができ、又は培養物中に存在することができる。e/m放射線への細胞又は組織の曝露は、インビトロで(例えば、培養条件下で)実施することができ、又はインビボで実施することができる。e/m放射を、個体内の細胞、細胞外物質、組織、臓器など、又は容易にアクセスできない個体の体の任意の部分に向けるために、光ファイバー機器を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の性質及び目的をより完全に理解するために、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明が参照される。
【0021】
図1:スルホン化及び非スルホン化Cy5及びCy5.5マレイミド誘導体の構造を示す。スルホン化Cy5は、水溶液中で-1の正味電荷を有し、一方、Cy5-マレイミド及びCy5.5-マレイミドのどちらの非スルホン化誘導体も、水溶液中で+1の正味電荷を有する。Cy5.5-マレイミドのスルホン化形態は、-3の正味電荷を有し、この色素構造の著しい疎水性を打ち消す。
【0022】
図2:(a)PEG-スルホ-Cy5-C'ドット及びPEG-Cy5(+)-C'ドットのHPLCクロマトグラムを、各ピークで溶出するナノ粒子の種類の模式的表現とともに示し、PEG-Cy5(+)-C'ドットのピークが、PEG-スルホ-Cy5-C'ドットサンプル中の純粋ペグ化粒子に対応するピークと完全に重なっていることを強調する。(b)PEG-スルホ-Cy5.5-C'ドット及びPEG-Cy5.5(+)-C'ドットのHPLCクロマトグラムであり、PEG-Cy5.5-C'ドットと、PEG-スルホ-Cy5.5-C'ドットサンプル中の純粋PEG化粒子との完全な重複を再び強調する。(c)PEG-スルホ-Cy5-C'ドット及びPEG-スルホ-Cy5.5-C'ドットのHPLCクロマトグラムは、後者の実質的により疎水性の挙動を強調する。(d)PEG-Cy5(+)-C'ドット及びPEG-Cy5.5(+)-C'ドットのHPLCクロマトグラム。
【0023】
図3:(a-c)開始アンモニア濃度6mMで作製した PEG-Cy5(+)-C'ドットのGPC(左)、HPLC(中央)、及びFCS(右)。(d-f)開始アンモニア濃度5mMで作製したPEG-Cy5(+)-C'ドットのGPC、HPLC、及びFCS。(g-i)開始アンモニア濃度2mMで作製したPEG-Cy5(+)-C'ドットのGPC、HPLC、及びFCS。(j-l)開始アンモニア濃度1mMで作製したPEG-Cy5(+)-C'ドットのGPC、HPLC、及びFCS。
【0024】
図4:正に帯電した色素の周りの一次シリカクラスターの凝集を介したシリカナノ粒子成長の概略を示す。シリカクラスターの周りのハロー(暈)は、高pH条件下で増加する正味の負のクラスター電荷を象徴する。
【0025】
図5:(a-c)は、開始アンモニア濃度5mMで作製されたPEG-Cy5.5(+)-C'ドットのGPC(左)、HPLC(中央)、及びFCS(右)を示す。(d-f)は、開始アンモニア濃度2mMで作製されたPEG-Cy5.5(+)-C'ドットのGPC、HPLC、及びFCSを示す。(g-i)は、開始アンモニア濃度1.5mMで作製されたPEG-Cy5.5(+)-C'ドットのGPC、HPLC、及びFCSを示す。(j-l)は、開始アンモニア濃度1mMで作製されたPEG-Cy5.5(+)-C'ドットのGPC、HPLC、及びFCSを示す。
【0026】
図6:(a)は、開始アンモニア濃度1mMで合成したPEG-Cy5.5-C'ドットのHPLCクロマトグラムを示す。(b)開始アンモニア濃度1mMで合成したPEG-Cy5.5-C'ドットのGPCを示す。陰影付きの領域は、c~eに示す試料のGPC-HPLCのために分画・併合された曲線下面積を強調する。(c-e)GPC分画PEG-Cy5.5-C'ドットのHPLCクロマトグラム。GPC分画からの、(c)は最大ナノ粒子、(d)は平均サイズのナノ粒子、(e)は最小ナノ粒子。
【0027】
図7:(a)は、完全培地(三角)及びアミノ酸(AA)欠乏培地(四角)の両方における、硝酸鉄(III)を用いたMDA-MB-468細胞に対する細胞死実験を示す。(b)は、AA欠乏培地中でのMDA-MB-468細胞に対する細胞死実験を示し、非毒性量の鉄(1μM)の存在下における、PEG-Cy5(+)-C'ドット及びPEG-スルホCy5-C'ドットの有効性を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
請求される主題が、特定の例を参照して説明されるが、本明細書に記載される利益及び特徴のすべてを提供しない例を含む他の例も、本開示の範囲内である。様々な構造的、論理的、及びプロセスステップの変更が、本開示の範囲を逸脱することなくなされ得る。
【0029】
本開示は、無機ナノ粒子(例えば、コア又はコアシェルナノ粒子)を分析及び/又は精製する方法を提供する。無機ナノ粒子は、本明細書において超小型ナノ粒子とも称される。本開示はまた、無機ナノ粒子及び無機ナノ粒子を含む組成物を製造する方法を提供する。
【0030】
本明細書で提供されるすべての範囲は、特に断らない限り、小数点以下第10位までの範囲内にあるすべての値を含む。
【0031】
様々な実施例において、本開示は、以下のことを提供する:
(1)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法の応用により、無機ナノ粒子(例えば、蛍光コアシェル型シリカナノ粒子)のこれまで知られていなかった表面化学的不均一性の発見が可能となった。
(2)観察される内因的ナノ粒子不均一性を克服するための設計基準の特定。
(3)蛍光色素の電荷が、表面化学の不均一性の制御において重要なパラメータであるという発見。
(4)複数の実施形態において、ATTO647N及びMB2などの正に帯電した色素の使用は、高度に均質な表面化学的特性を有するC'ドットを合成し、これはHPLC分析において単一のピークのみを示す。
(5)これらの均質なC'ドットは、化学的分解に対して非常に高い安定性を示す。
(6)これらの均質なC'ドットは、以前に報告された材料と比較して、非常に高い光安定性を示す。
【0032】
特定の例において、本開示は、以下のことを提供する:
(1)完全に均質な表面化学を有する超小型(10nm未満)のナノ粒子の創造。
(2)溶媒環境に対する色素感受性を低下させる(通常、ATTO647Nのような疎水性色素は、水ベースの用途では確実には使用できない)。
(3)臨床的に関連する画像診断のための用途。
(4)ナノ粒子診断法・治療法における生体内分布改善への利用。
(5)臨床への橋渡しの過程における他のナノ粒子のための使用。
(6)これまで単純ではなかったPEG化材料の表面化学エンジニアリングを解析するのに有用。
【0033】
ある態様において、本開示は、液体クロマトグラフィーを介した無機ナノ粒子の分析及び/又は精製を提供する。分析及び/又は精製は、HPLC及び/又はGPCを用いて行うことができる。
【0034】
種々の色素基を含む無機ナノ粒子は、分析及び/又は精製に適し得る。色素基は、無機ナノ粒子上及び/又は無機ナノ粒子内(無機ナノ粒子に封入される又は部分的に封入される)の様々な場所に位置し得る。色素基は、無機ナノ粒子の表面に配置されるか又は部分的に配置されてもよく、無機ナノ粒子に封入されるか又は部分的に封入されてもよく、又はそれらの組み合わせであってもよい。無機ナノ粒子の表面に配置された又は部分的に配置された色素基は、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されたPEG基の一部である色素基であってもよい。
【0035】
無機ナノ粒子は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析され得る。HPLCは、無機ナノ粒子上及び/又は無機ナノ粒子内の(例えば、無機ナノ粒子に封入されている)1つ以上の色素基の位置を決定するために使用され得る。このような方法は、複数の無機ナノ粒子をHPLC分析に供することを含んでもよい。
【0036】
無機ナノ粒子の分析方法は、以下のことを含んでもよい:
(i)HPLCカラムに無機ナノ粒子を注入すること;前記HPLCカラムは、固定相と流体連通しているインプットを含んでおり、前記固定相はアウトプットと流体連通しており、前記アウトプットは検出器と流体連通している、
(ii)移動相をHPLCカラムに通過させること;それにより、無機ナノ粒子はカラムから溶出して検出器に入り、検出器はシグナルを生成する(ここで、前記シグナルは、ナノ粒子及び/又はコアシェルナノ粒子上の及び/又は内の1つ以上の色素基の位置を示す)、及び
(iii)前記シグナルを分析して、無機ナノ粒子上及び/又は無機ナノ粒子内の1つ以上の色素基の位置を決定すること。前記シグナルは、無機ナノ粒子上及び/又は無機ナノ粒子内の(例えば、無機ナノ粒子に封入又は部分的に封入されている)1つ以上の色素基の位置に相関する保持時間を含む。特定の保持時間におけるピークは、無機粒子の外表面に配置された及び/又は部分的に配置された色素基の数に、又は、色素基が無機ナノ粒子の中にあるかどうか(例えば、無機ナノ粒子に封入されているか、又は部分的に封入されているか)にも相関し得る。本開示のHPLC分析の方法は、再現性を有し得る。
【0037】
一例では、無機ナノ粒子を含む溶離液が、検出器を通過するとき常に、検出器はベースラインより大きい強度を有するシグナルを生成する。複数の無機ナノ粒子を含む試料をカラムに注入した後にシグナルが発生する相対時間によって、複数の無機ナノ粒子の一部の溶出時間が決まる。溶出時間は、カラムから溶出する無機ナノ粒子の一部と相関し、より疎水性の粒子が後で溶出する。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、無機ナノ粒子の表面に配置される疎水性色素基の数の増加は、無機ナノ粒子の溶出時間を増加させると予想される。例示的な例として、表面に2つの疎水性色素基が配置又は部分的に配置された無機ナノ粒子は、表面に1つの色素のみが配置又は部分的に配置された無機ナノ粒子よりも後に溶出する。
【0038】
種々の検出器が、HPLCを介して無機ナノ粒子を分析する方法において使用するのに適している。適切な検出器の例として、UV検出器(例えば、調節可能なUV検出器)、蒸発光散乱検出器、帯電エアロゾル検出器、蛍光ベースの検出器(例えば、蛍光光度計)、フォトダイオードアレイ検出器など、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
種々のHPLCカラムが、HPLCを介して無機ナノ粒子を分析する方法に適している。HPLCカラムは、逆相HPLCカラム(RP-HPLCカラム)であってもよい。RP-HPLCカラムは、C4固定相~C8固定相、又は他の適切な、適度に親水性の固定相(例えば、C4、C5、C6、C7、又はC8固定相)を含み得る。RP-HPLCカラムは、様々な長さを有し得る。例えば、適切なRP-HPLCカラムは、長さ100~300mmであり、前記範囲は、その間のすべての整数のmm値及びその間のすべての範囲(例えば、長さ150~250mm、例えば長さ150mmなど)を含む。RP-HPLCカラムは、様々な孔径を有し得る。例えば、適切なRP-HPLCカラムは、200~400Åの孔径を有し、前記範囲は、その間のすべての整数Å値及びその間のすべての範囲(例えば、250~350Å、例えば300Åなど)を含む。RP-HPLCカラムは、様々な粒径を有し得る。例えば、適切なRP-HPLCカラムは、2~6μmの粒径を有し、前記範囲は、その間のすべての0.1μm値及びその間のすべての範囲(例えば、3.5~5μm)を含む。RP-HPLCカラムは、様々な内径を有し得る。例えば、RP-HPLCは、4.6mmの内径を有し得る。様々な速度にて、RP-HPLCカラムに移動相を通過させることができる。例えば、移動相は、0.1~2.0mL/分の流速でカラムを通過し、前記範囲は、その間のすべての0.1mL/分値及びその間のすべての範囲(例えば、0.5~1mL/分)を含む。RP-HPLCカラムは、様々な温度に維持され得る。例えば、適切なRP-HPLCカラムは、15~30℃に維持され、前記範囲は、その間のすべての0.1℃値及びその間のすべての範囲(例えば、18~25℃)を含む。一例では、RP-HPLCカラムは、C18 RP-HPLCカラムではない。
【0040】
種々の移動相が、HPLCを介して無機ナノ粒子を分析する方法に適している。移動相は、例えば、水-アセトニトリル混合物、又は、水-イソプロパノール及び/又はメタノール混合物などの水性移動相である。移動相はさらに、酸、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)又はギ酸などを0.01~1体積%の濃度で含んでもよい。他の適切な移動相は、当技術分野において公知である。
【0041】
階段状の勾配でカラムに移動相を通過させてもよい。例えば、極性ポーションと非極性ポーションとを含む移動相(極性ポーションが非極性ポーションを超える(例えば、水:アセトニトリル=90:10)を、例えば1mL/分の流速でHPLCカラムに通過させてもよい。これらの条件は、一定の時間(例えば、20分間)維持されてもよく、固定相と分析物(例えば、無機ナノ粒子)の平衡化を可能にする。一定期間(例えば、20分)の後、流速を減少させてもよく(例えば、0.5mL/分に減少させる)、HPLCカラムを平衡化させてもよい。次いで、移動相組成物を、非極性ポーションが極性ポーションをわずかに超えるように(例えば、水:アセトニトリル=45:55)、階段状の様式で変化させてもよく、ベースラインを再び平衡化させてもよい。最後に、非極性ポーションがさらに増加する組成勾配(例えば、水:アセトニトリル=45:55~5:95)を一定期間(例えば、20分間)使用してもよく、その間の時点で分析物(例えば、無機ナノ粒子の選択された部分)がカラムから溶出する。
【0042】
複数の無機ナノ粒子を含む組成物が、液体クロマトグラフィーを用いて精製されてもよい。一例では、液体クロマトグラフィーは、GPC又は分取スケールHPLC(例えば、分取スケールRP-HPLC)である。
【0043】
無機ナノ粒子は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて精製されてもよい。GPCは、サイズに基づいて、無機ナノ粒子を精製するため及び/又は無機ナノ粒子の別々のバッチを測定するために使用され得る。
【0044】
無機ナノ粒子を精製する方法は、以下の工程を含む:
(i)クロマトグラフィーカラムに複数の無機ナノ粒子を注入すること;前記カラムは、固定相と流体連通しているインプットを含んでおり、前記固定相はアウトプットと流体連通しており、前記アウトプットは検出器と流体連通している、
(ii)移動相をクロマトグラフィーカラムに通過させること;それにより、複数の無機ナノ粒子がカラムから溶出する、及び
(iii)複数の無機ナノ粒子の選択された部分を含む溶離液を採取する。
【0045】
クロマトグラフィーカラムは、多孔質ゲル固定相を有するGPCカラムであってもよい。他の適切な固定相は、当技術分野において公知である。一例において、移動相は、水性移動相、例えば、水、NaClの水溶液(例えば、0.9重量%NaCl水溶液)などであってもよい。他の適切な移動相は、当技術分野において公知である。
【0046】
無機ナノ粒子は、他の方法(例えば、UV/VIS光学分光法及び単一粒子色素ブリーチング実験などを含む)と組み合わせた蛍光相関分光法(FCS)によってさらに分析され得る。FCSによる分析は、ナノ粒子の流体力学的サイズ及び/又は溶液体積当たりの無機ナノ粒子の数(すなわち、無機ナノ粒子濃度)を決定するために使用されてもよい。FCSは、レーザを用いて行われてもよい。分析対象の色素基(単数又は複数)に基づいて様々なレーザーを使用することができる。適切なレーザーとしては、488nm固体レーザー(RhG蛍光色素分子に適していると考えられる)、543HeNeレーザー(TMR蛍光色素分子に適していると考えられる)、633nm固体レーザー(Cy5及びCy5.5蛍光色素に適していると考えられる)、785nm固体レーザー(CW800及びCy7.5などの色素に適していると考えられる)が挙げられるが、これらに限定されない。FCSは、粒子あたりの色素数を決定するために、UV/VIS光学分光法及び単一粒子フォトブリーチング実験と組み合わせて使用されてもよい。
【0047】
精製及び/又は分析の様々な方法を組み合わせて、任意の順序で実行してもよい。例えば、複数の無機ナノ粒子は、まずGPCによって精製され、FCSによって分析され、次いでHPLCによって分析されてもよい。様々な例において、精製及び分析は、分取スケールHPLC、分析スケールHPLC、GPC等、及びこれらの組み合わせを用いて行うことができる。
【0048】
精製及び/又は分析の方法は、無機ナノ粒子の精製された、分析された、及び/又は選択された部分を含む溶離液を生成し得る。無機ナノ粒子の精製された、分析された、及び/又は選択された部分は、画分と呼ばれることがある。画分は、無機ナノ粒子の望ましい組み合わせを含む種々の組成物を生成するために組み合わせることができる。例えば、複数の無機ナノ粒子を含む画分(この画分において、個々の無機ナノ粒子は、1つ以上のカチオン性色素基及び/又はアニオン性色素基を封入している)を、複数の無機ナノ粒子を含む画分(この画分において、個々の無機ナノ粒子は、個々の無機ナノ粒子の外表面に配置又は部分的に配置されている1つのアニオン性色素基を有している)と組み合わせることができる。
【0049】
ある態様において、本開示は、無機ナノ粒子(例えば、超小型ナノ粒子)を製造する方法を提供する。本方法は、水性反応媒体(例えば水)の使用に基づく。ナノ粒子は、ポリエチレングリコール基及び/又は種々の色素基で表面機能化することができる(例えば、PEG化)。無機ナノ粒子の表面に配置された又は部分的に配置された1つ以上の色素基は、PEG基(単数又は複数)上に配置されている1つ以上の色素基であってもよく、及び/又は、無機ナノ粒子上に配置されたPEG基(単数又は複数)の一部であってもよい。
【0050】
本明細書に記載の方法は、製品の品質に実質的な変化を伴わずに、直線的にスケールアップされ得る(例えば、10mL反応から1000mL又はそれ以上へ)。このスケーラビリティは、ナノ粒子の大規模製造にとって重要であり得る。
【0051】
本方法は、水性反応媒体(例えば、水)中で行われてもよい。例えば、水性媒体は水を含む。ある種の反応物を、極性非プロトン性溶媒(例えば、DMSO又はDMF)による溶液として、種々の反応混合物に添加してもよい。様々な例において、水性媒体は、極性非プロトン性溶媒以外の有機溶媒(例えば、C1~C6アルコールなどのアルコール)を、10%以上、20%以上、又は30%以上含まない。一例では、水性媒体は、アルコールを1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、又は5%以上含まない。一例では、水性媒体は、いかなる検出可能なアルコールも含まない。例えば、本明細書に開示される任意の方法のいずれかの工程における反応媒体は、本質的に、水、及び、任意で極性非プロトン性溶媒のみからなる。
【0052】
本開示の方法は、水、色素前駆物質、TMOS、塩基、及びPEG-シランを含む反応混合物を形成することを含む。色素前駆物質、TMOS、塩基、及びPEG-シランの種々のモル比が使用され得る。様々な例において、色素前駆物質、TMOS、塩基、及びPEG-シランのモル比(色素前駆物質:TMOS:塩基:PEG-シラン)は、0.0090~0.032:11~46:0.5~1.5:5~20であり、これには、それらの間のすべての整数のモル比の値及びそれらの間のすべての範囲が含まれる。例えば、Cy5が色素前駆物質として使用される場合、Cy5:TMOS:塩基:PEG-シランのモル比の範囲は、0.0091~0.028:11.4~34:0.5~1.5:5~15であり、これには、それらの間のすべてのモル比の値及びそれらの間のすべての範囲が含まれる(例えば、0.01835:10:1:10、又は、0.009175:11.425:0.5:5、又は、0.02725:34.275:1.5)。例えば、Cy5.5が色素前駆物質として使用される場合、Cy5.5:TMOS:塩基:PEG-シランのモル比の範囲は、0.01058~0.03176:15.2~45.7:0.5~1.5:6.6~20であり、これには、それらの間のすべてのモル比の値及びそれらの間のすべての範囲が含まれる(例えば、0.021173:30.46:1:13.3、又は、0.01058:15.23:0.5:6.66、又は、0.03176:45.7:1.5:20)。
【0053】
本開示の方法の様々な時点で、pHは、所望の値に又は所望の範囲内に調整され得る。反応混合物のpHは、塩基の添加によって増加させることができる。適切な塩基の例として、エタノール溶液中の水酸化アンモニウム及びアンモニアが挙げられる。塩基のさらなる非限定的な例として、第四級アミンを形成し得る塩基(例えば、トリエチルアミンなど)、一価カチオンの水酸化物塩(例えば、NaOH、KOHなど)、及び塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リジンなど)が挙げられる。いかなる特定の理論にも拘束されることを意図しないが、二価カチオンの水酸化物塩は、本開示の方法に好適な塩基ではないと考えられる。
【0054】
反応混合物中の塩基(例えば、水酸化アンモニウム又はアンモニア)の濃度は、0.001mM~60mMであってもよく、この範囲には、その間のすべての0.001mMの値及びその間のすべての範囲が含まれる(例えば、0.01mM~10mM、0.01mM~20mM、0.01mM~30mM、0.01mM~40mM、0.01mM~50mM、0.01mM~60mM、0.001mM~10mM、0.001mM~20mM、0.001mM~30mM、0.001mM~40mM、0.001mM~50mM、0.001mM~60mM)。様々な例において、塩基は水酸化アンモニウムであり、0.001mM~60mMの濃度を有し、この範囲には、その間のすべての0.001mMの値及びその間のすべての範囲が含まれる(例えば、0.01mM~60mM)。様々な例において、水酸化アンモニウムの濃度は、0.001mM~1mM、0.001mM~2mM、0.001mM~2.5mM、0.001mM~3mM、0.001mM~4mM、0.001mM~5mM、0.001~10mM、0.01mM~1mM、0.01mM~2mM、0.01mM~2.5mM、0.01mM~3mM、0.01mM~4mM、0.01mM~5mM、0.01~10mM、0.1mM~1mM、0.1mM~2mM、0.1mM~2.5mM、0.1mM~3mM、0.1mM~4mM、0.1mM~5mM、0.1~10mMである。様々な例において、塩基はエタノール中のアンモニアであり、0.01mM~60mMの濃度を有し、この範囲には、その間のすべての0.001mMの値及びその間のすべての範囲が含まれる。様々な例において、エタノール中のアンモニアの濃度は、0.01mM~1mM、0.01mM~2mM、0.01mM~2.5mM、0.01mM~3mM、0.01mM~4mM、0.01mM~5mM、0.01~10mM、0.1mM~1mM、0.1mM~2mM、0.1mM~2.5mM、0.1mM~3mM、0.1mM~4mM、0.1mM~5mM、0.1~10mMである。
【0055】
様々な例において、色素前駆物質としてCy5を使用する場合、反応混合物は、0.367μmolのCy5、457μmolのTMOS、200μmolのPEG-シラン、及び20μmolの塩基(例えば、水酸化アンモニウム)及び10mLの水を含む。様々な例において、Cy5.5を色素前駆物質として使用する場合、反応混合物は、0.3176μmol、457μmolのTMOS、200μmolのPEG-シラン、及び15μmolの塩基及び10mLの水を含む。
【0056】
いかなる特定の理論にも拘束されることを意図しないが、塩基濃度(例えば、水酸化アンモニウム濃度)は、表面化学不均一性を制御するパラメータであると考えられる。塩基(例えば、水酸化アンモニウム)が、形成されるシリカクラスターの加水分解速度、凝集、及び表面電荷を制御すると考えられる。例えば、水酸化アンモニウム濃度が低すぎると、一次シリカクラスターが凝集しやすくなり、シリカクラスターの制御されない凝集のためにサイズが増加する。例えば、水酸化アンモニウム濃度が高すぎると、1つの色素又は複数の色素が完全に封入されない。
【0057】
様々な実施例において、塩基(例えば、水酸化アンモニウム)の濃度は、使用される特定の色素に対して最適化される。
【0058】
例えば、無機ナノ粒子であって、ポリエチレングリコール基で機能化された(すなわち、PEG化無機ナノ粒子)及び色素分子で機能化された無機ナノ粒子を製造する方法は、以下の工程を含む:
a)室温(例えば、地域に応じて15℃~25℃)で、水、シリカコア形成モノマー(例えば、TMOS)(例えば、11mM~270mMの濃度)、及び1つ以上の色素基前駆物質を含む反応混合物を形成すること、ここで、当該反応混合物のpH(例えば、水酸化アンモニウムなどの塩基を使用して調整できる)は6~11である(これが、平均径[例えば、最長寸法]が、例えば1nm~2nmであるコア前駆体ナノ粒子の形成をもたらす)(例えば、pHは6~9);
b)i)前記反応混合物を、ある時間(t1)及び温度(T1)で保持(例えば、室温~95℃[T1]で0.5時間~7日(例えば、0.5日~7日)[t1]保持)することにより(様々な例において、t1は0.5時間~2時間)、平均径(例えば、最長寸法)が2~15nmであるナノ粒子(コアナノ粒子)を形成するか、又は
ii)前記反応混合物を、必要に応じて室温まで冷却し、及び、a)で得られた反応混合物に、シェル形成モノマー(例えば、オルトケイ酸テトラエチル、TMOS以外の、例えば、TEOS又はTPOSなど)を添加する(前記添加は、シェル形成モノマー濃度が二次核形成の閾値未満となるように行われる)ことによって、平均径(例えば、最長寸法)が2~50nm(例えば、2~15nm)の無機ナノ粒子を形成すること;
c)必要に応じて、b)i)で又はb)ii)で得られた無機ナノ粒子を含む反応混合物のpHを、pH6~10に調節すること;及び
d)任意で(無機ナノ粒子をPEG化する場合)、b)i)で又はb)ii)で得られた無機ナノ粒子を含む反応混合物に室温で、PEG-シラン・コンジュゲート(シラン成分に共有結合したPEG成分を有する)(例えば、10mM~60mMの濃度で)(例えば、DMSO又はDMFなどの極性非プロトン性溶媒中に溶解されたPEG-シラン・コンジュゲート)を添加し、及び、得られた反応混合物をある時間(t2)及び温度(T2)で保持(例えば、室温[T2]で0.5分~24時間[t2]保持)すること(これによって、PEG-シラン・コンジュゲート分子の少なくとも一部が、b)で得られたコアナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子の表面の少なくとも一部に吸着される);
e)d)で得られた混合物を、ある時間(t3)及び温度(T3)で加熱(例えば、40℃~100℃[T3]で1時間~24時間[t3]加熱)することによって、1つ以上の色素基で機能化された、及びポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成すること;及び、
f)1つ以上の色素基で機能化され、ポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を含む反応混合物を、液体クロマトグラフィーによって精製すること、ここで、色素前駆物質、TMOS、塩基、及びPEG-シランのモル比(色素前駆物質:TMOS:塩基:PEG-シラン)は、0.0090~0.032:11~46:0.5~1.5:5~20である(それらの間のすべての整数のモル比の値及びそれらの間のすべての範囲を含む)。様々な例において、コアは約1時間(例えば、1時間)で形成される。
【0059】
前記無機ナノ粒子は、合成後の処理工程にかけられてもよい。例えば、合成後(例えば上記例のe)の後)、溶液を室温まで冷まし、その後透析膜チューブ(例えば、分子量カットオフが10,000であり、市場で入手可能な(例えば、Pierceから)透析膜チューブ)に移す。透析チューブに入れた溶液を、DI-水(水の容積は、反応容積より200倍以上大きい、例えば、10mLの反応に対して2000mLの水)で透析し、水を1~6日間毎日交換し、残存試薬、例えば水酸化アンモニウムと遊離シラン分子を洗い流す。前記粒子を、その後200nmのシリンジフィルター(fisher brand)を通してろ過し、凝集物又はダストを除去する。必要であれば、さらに高純度の合成粒子(例えば、未反応試薬又は凝集塊が1%以下)を保証するために、さらなる精製プロセス(ゲル浸透クロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーを含む)を、前記ナノ粒子に適用してもよい。任意の精製プロセス後、もし他の溶媒を追加のプロセスで使用するのであれば、精製されたナノ粒子を脱イオン水に戻してもよい。
【0060】
前記コアはシリカコアであってもよい。シリカコア形成で使用される反応混合物は、唯一のシリカコア形成モノマーとして、TMOSを含んでもよい。
【0061】
前記コアはアルミノシリケートコアであってもよい。アルミノシリケートコア形成で使用される反応混合物は、唯一のシリカコア形成モノマーとしてTMOSを、及び1つ以上のアルミナコア形成モノマー(例えば、アルミニウムアルコキシド、例えば、アルミニウム-tri-sec-ブトキシド、又は、複数のアルミニウムアルコキシドの組み合わせなど)を含むことができる。
【0062】
アルミノシリケートコア合成の場合、反応混合物のpHは、アルミナコア形成モノマーを添加する前に、pH1~2に調節される。アルミノシリケートコア形成後、溶液のpHは、pH7~9に調節され、そして任意で、100~1,000g/moLの分子量(その間のすべての整数値及びその間のすべての範囲を含む)のPEGを、10mM~75mMの濃度(その間のすべての整数のmM値及びその間のすべての範囲を含む)で、前記反応混合物のpHをpH7~9に調節する前に前記反応混合物に添加する。
【0063】
無機ナノ粒子を形成するために使用される反応混合物はまた、色素前駆物質(例えば、正に帯電した色素前駆物質)を含んでもよい。この場合、得られたコア又はコア-シェルナノ粒子は、その中に封入(被包)された又は取り込まれた1つ以上の色素分子(例えば、正に帯電した色素分子)を有する。例えば、コアナノ粒子は、その中に封入された、1,2,3,4,5,6,又は7個の正に帯電した色素分子を有する。色素前駆物質の混合物を使用してもよい。前記色素前駆物質(例えば、正に帯電した色素前駆物質)は、シランにコンジュゲートした色素(例えば、正に帯電した色素)であってもよい。例えば、マレイミド官能基を有する正に帯電した色素が、チオール官能基を有するシランにコンジュゲートされる。別の例では、NHSエステル官能基を有する正に帯電した色素が、アミン官能基を有するシランにコンジュゲートされる。適切なシランとコンジュゲーション化学の例は、当該分野において既知である。前記色素は、波長400nm(青)~900nm(近赤外)の発光(例えば、蛍光)を有してもよい。例えば、前記色素は近赤外(NIR)色素である。適切な色素の例として、ローダミングリーン(RHG)、テトラメチルローダミン(TMR)、シアニン5(Cy5)、シアニン5.5(Cy5.5)、シアニン7(Cy7)、ATTO425、ATTO647N、ATTO647、ATTO680、Dyomics DY800、Dyomics DY782、及び、IRDye 800CWが挙げられるがこれらに限定されず、及び、ポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子は、その中に封入された1つ以上の正に帯電した蛍光色素分子を有してもよい。色素の例には以下のものが含まれる:負に帯電した色素、例えば、スルホ-Cy5.5、スルホ-Cy5、スルホ-Cy3、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 430、ATTO430LS、ATTO488、ATTO490LS、ATTO532、ATTO594など、及びそれらの組み合わせなど;正味中性色素、例えば、テトラメチルローダミン(TMR)、ATTO390、ATTO425、ATTO565、ATTO590、ATTO647、ATTO650、ATTO655、ATTO680、ATTO700など、及びそれらの組み合わせ等;及び、正に帯電した色素、例えば、Cy5.5、Cy5、Cy3、ATTO647N、メチレンブルー、ATTO663、ATTO620、ATTO665、ATTO465、ATTO495、ATTO520、ATTORho6G、ATTORho3B、ATTORho11、ATTORho12、ATTOThio12、ATTO580Q、ATTORho101、ATTORho13、ATTO610、ATTO612Q、ATTO647N、ATTORho14、ATTOOxa12、ATTO725、ATTO740、ATTOMB2など、及びそれらの組み合わせ等。色素は、コンジュゲーション化学に適した官能基を有していてもよく、例えば、カルボン酸、NHS-エステルなどが挙げられ、及び、そのように称されてもよい。例示的な例では、Cy5-NHS-エステルは、Cy5のNHSエステルである。色素基は、無機ナノ粒子のシリカマトリクス又はアルミノシリケートマトリクスに共有結合してもよく、及び/又は、無機ナノ粒子の外表面に共有結合してもよく、及び/又は、PEG基の一部であってもよい。
【0064】
シリカシェルを、コアナノ粒子上に形成してもよい。シリカシェルは、例えばコア形成が完了した後、形成される。シリカシェル形成前駆物質の例には、オルトケイ酸テトラアルキル(例えば、TEOS及びTPOSなど)が含まれる。シリカシェル形成前駆物質の混合物を使用してもよい。TMOSは、シリカシェル形成前駆物質ではない。シリカシェル形成前駆物質は、極性非プロトン性溶媒中の溶液として、前記反応混合物に添加されてもよい。適切な極性非プロトン性溶媒の例として、DMSO及びDMFが挙げられる。
【0065】
シリカシェル形成前駆物質は別々のアリコートで添加することが望ましい。例えば、前記シェル形成モノマー(単数又は複数)を、別個のアリコート(例えば、40~500アリコート;その間のすべての整数のアリコートの値及びその間のすべての範囲を含む)で添加する。前記アリコートは、1つ以上のシェル形成前駆物質(例えば、TEOS及び/又はTPOS)と極性非プロトン性溶媒(例えば、DMSO)を含むことができる。各アリコートは、1~20マイクロモル(その間のすべての0.1マイクロモル値及びその間のすべての範囲を含む)のシェル形成モノマーを有してもよい。アリコートを添加する間隔は、1~60分(その間のすべての整数の秒の値とその間のすべての範囲を含む)とすることができる。反応混合物のpHは、シリカシェル形成プロセスの間に変動し得る。pHを7~8に維持するためにpHを調節することが望ましい。
【0066】
無機ナノ粒子形成後、前記無機ナノ粒子を、1つ以上のPEG-シラン・コンジュゲートと反応させてもよい。様々なPEG-シラン・コンジュゲートを、一緒に又は様々な順番で添加することができる。このプロセスは本明細書においてPEG化とも称される。PEG-シランの変換率は5%と40%の間であり、ポリエチレングリコールの表面密度は、nm2あたり1.3~2.1のポリエチレングリコール分子である。リガンド機能化PEG-シランの変換率は40~100%であり、各粒子と反応するリガンド機能化PEG-シラン前駆物質の数は3~90である。
【0067】
PEG化は様々な時間と温度で実施することができる。例えば、無機ナノ粒子の場合、PEG化は室温で0.5分から24時間(例えば一晩)ナノ粒子と接触させることによって実施できる。例えば、アルミノシリケートナノ粒子(例えば、アルミノシリケートコアナノ粒子、又は無機ナノ粒子)の場合、温度は80℃で一晩である。
【0068】
PEG-シランのPEG成分の鎖長(すなわち、PEG成分の分子量)は、3~24のエチレングリコールモノマー(例えば、3~6、3~9、6~9、8~12、又は8~24のエチレングリコールモノマー)に調節されてもよい。PEG-シランのPEG鎖長は、粒子を取り囲むPEG層の厚み、及び、PEG化粒子の薬剤動態(PK)及び生体内分布プロファイルを調節するために選択できる。リガンド-機能化PEG-シランのPEG鎖長は、粒子のPEG層の表面にあるリガンド基のアクセシビリティ(これにより結合性能及び標的指向性能が変化する)を調節するために使用することができる。
【0069】
PEG-シラン・コンジュゲートは、リガンドを含むことができる。リガンドは、PEG-シラン・コンジュゲートのPEG成分に共有結合する。前記リガンドは、シラン成分にコンジュゲートした末端と反対側のPEG成分の末端にコンジュゲートできる。PEG-シラン・コンジュゲートは、ヘテロ二官能性PEG化合物(例えば、マレイミド官能基を有するヘテロ二官能性PEG、NHSエステル官能基を有するヘテロ二官能性PEG、アミン官能基を有するヘテロ二官能性PEG、チオール官能基を有するヘテロ二官能性PEGなど)を使用して形成することができる。適切なリガンドの例として、ペプチド(天然又は合成)、環状ペプチド、放射標識(例えば、124I、131I、225Ac、又は、177Lu)含有リガンド、抗体、抗体断片、DNA、RNA、単糖、オリゴ糖、薬物分子(例えば小分子阻害剤、毒性薬物)、及び反応基(例えば、分子[薬物分子、ゲフィチニブなど]に結合させることができる反応基)含有リガンドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
さらなる粒子機能化のために(例えば、多機能性ナノ粒子を生成するために)、アミン-及び/又はチオール-官能化シラン分子を、PEG鎖の間及び無機ナノ粒子(例えば、C'ドット)のシリカ表面上に挿入してもよく、続いて、これに、追加の機能性リガンド(例えば、センサー色素分子、放射性金属のための追加のキレート剤、又は医薬化合物を付加するための追加の官能基)を、付着させてもよい。この挿入によるPEG化後表面修飾(PPSMI:post-PEGylation surface modification by insertion)アプローチは、高品質のNP生成を損なうことなく、ワンポット型水系合成において、ナノ粒子(例えば、C'ドット)のPEG化と精製との間に挟まれる小数の追加の工程のみを必要とする。追加の機能性を有する得られたナノ粒子(例えば、C'ドット)は、臨床応用されたナノ粒子(例えば、Cドット)に近い物理化学的特性(例えば、サイズ及びPEG密度)を示し、それらの臨床用途の多様化への扉を開く。ナノ粒子合成(例えば、C'ドット合成)の修正は、例えば、粒子当たり多数の標的化ペプチドを可能にし、且つ、個々の成分への吸収スペクトルのデコンボリューションによって、異なる表面リガンドの具体的な数を定量的に評価するための容易かつ汎用性の高い分光アプローチを可能にする。
【0071】
例えば、リガンドを含むPEG-シラン・コンジュゲートを、PEG-シランに加えて添加する(例えば、上記例のd)で)。この場合、リガンドを含むポリエチレングリコール基と、ポリエチレングリコール基とで表面機能化された無機ナノ粒子が形成される。リガンド-機能化又は反応基-機能化PEG-シランの変換率は40~100%であり、各粒子と反応するリガンド-機能化PEG-シラン前駆物質の数は3~600である。
【0072】
例えば、PEG-シラン・コンジュゲートを添加(例えば、上記例のd)で)する前後(例えば、20秒~5分前又は後)に、リガンドを含むPEG-シラン・コンジュゲートを(例えば、0.05mM~2.5mMの間の濃度で)、室温で、前記無機ナノ粒子を含む反応混合物(例えば、上記例のb)i)又はb)ii)から得られたもの)に添加する。得られた反応混合物を、ある時間(t4)と温度(T4)で(例えば、室温[T4]で0.5分から24時間[t4])保持し、PEG-シラン・コンジュゲート分子の少なくとも一部を、前記コアナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子(例えば、上記例のb)から得られたもの)の表面の少なくとも一部に吸着させる。続いて、前記反応混合物を、ある時間(t5)と温度(T5)で(例えば、40℃~100℃[T5]で1時間~24時間[t5])加熱し、リガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成する。任意で、その後に、得られた反応混合物(リガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を含む反応混合物)に、PEG-シラン・コンジュゲート(リガンド無しのPEG-シランの濃度は10mM~75mMの間)(例えば、極性非プロトン性溶媒[例えば、DMSO又はDMFなど]に溶解したPEG-シラン・コンジュゲート)を室温で添加し、得られた反応混合物をある時間(t6)と温度(T6)で(例えば、室温[T6]で0.5分~24時間[t6])保持する(それによって、PEG-シラン・コンジュゲート分子の少なくとも一部が、リガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子の表面の少なくとも一部に吸着される)、及び、得られた混合物をある時間(t7)と温度(T7)で(例えば、40℃~100℃[T7]で1時間~24時間[t7])加熱し、それによって、リガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成する。
【0073】
別の例では、前記PEG-シランの少なくとも一部又はすべてが、PEG成分の末端(PEG-シラン・コンジュゲートのシラン成分コンジュゲート末端とは反対側の末端)に反応基を有する(ヘテロ二官能性PEG化合物から形成される)。そして、反応基を有するポリエチレングリコール基で、及び任意でポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子の形成後、任意で、ポリエチレングリコール基を、第二反応基(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化された無機ナノ粒子の反応基と同じであっても異なっていてもよい)で機能化された第二リガンド(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化された無機ナノ粒子のリガンドと同じであっても異なっていてもよい)と反応させ、それによって、第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基で、及び、任意でポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成する。
【0074】
別の例では、前記PEG-シランの少なくとも一部又はすべてが、PEG成分の末端(PEG-シラン・コンジュゲートのシラン成分コンジュゲート末端とは反対側の末端)に反応基を有し(ヘテロ二官能性PEG化合物から形成される)、反応基を任意で有するポリエチレングリコール基で、及び任意でポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成した後、第二反応基(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化された無機ナノ粒子の反応基と同じであっても異なっていてもよい)で機能化された第二リガンド(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化された無機ナノ粒子のリガンドと同じであっても異なっていてもよい)と反応させ、それによって、第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基で、及び、任意でポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成し、ここで、前記PEG-シランの少なくとも一部は、PEG成分の末端(PEG-シラン・コンジュゲートのシラン成分コンジュゲート末端とは反対側の末端)に反応基を有し(ヘテロ二官能性PEG化合物から形成される)、反応基を有するポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子、反応基を有するポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化された無機ナノ粒子の形成後、前記反応基を、ある反応基で機能化された第二リガンド(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化された無機ナノ粒子のリガンドと同じであっても異なっていてもよい)と反応させ、それによって、ポリエチレングリコール基と第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基とで表面機能化された無機ナノ粒子、又は第二リガンドで機能化されたリガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成する。
【0075】
反応基で機能化されたPEG基を有する無機ナノ粒子は、1つ以上のリガンドでさらに機能化することができる。例えば、機能化(官能化)リガンドを、PEG基の反応基と反応させることができる。ナノ粒子合成後の機能化のための適切な反応化学及び条件の例は、当技術分野において公知である。
【0076】
前記無機ナノ粒子は、狭い粒度分布(サイズ分布)を有することができる。様々な例において、前記ナノ粒子の粒度分布(PEG化の前又は後)(これは、外来性物質、例えば、未反応試薬、ダスト粒子/凝集物などを含まない)は、平均粒径(例えば、最長寸法)±5,10,15,又は20%である。粒径は、当該分野で既知の方法で測定できる。例えば、粒径は、TEM、GPS、又はDLSで決定される。DLSは、系統偏差を含み、それゆえ、DLS粒度分布は、TEM又はGPSによって決定される粒度分布と相関しないかもしれない。
【0077】
一面では、本開示は、本開示の無機ナノ粒子を含む組成物を提供する。前記組成物は、1つ以上の種類を含むことができる(例えば、異なる平均径及び/又は1つ以上の異なる組成的特徴を有する)。
【0078】
例えば、組成物は、複数の無機ナノ粒子(例えば、シリカコアナノ粒子、シリカコア-シェルナノ粒子、アルミノシリケートコアナノ粒子、アルミノシリケートコア-シェルナノ粒子)を含む。無機ナノ粒子は、1種以上のポリエチレングリコール基(例えば、ポリエチレングリコール基、機能化[例えば、一以上のリガンド及び/又は反応基で機能化された]ポリエチレングリコール基、又はそれらの組み合わせ)で表面機能化されていてもよい。無機ナノ粒子は、その中に封入された一つの色素基又は複数の色素基の組み合わせ(例えば、NIR色素、例えば正に帯電したNIR色素)を有していてもよい。色素基は、無機ナノ粒子に共有結合される。前記無機ナノ粒子は、本開示の方法によって製造できる。例えば、無機ナノ粒子内及び/又は無機ナノ粒子上の色素の位置は、色素の電荷によって決定することができる。色素基は、正に帯電していてもよく、負に帯電していてもよく、正味中性であってもよい。
【0079】
無機ナノ粒子に完全に封入された色素基は、無機ナノ粒子に封入されたままである(遊離色素が、ナノ粒子を懸濁させる水性媒体中に浸出しないように)。色素基は、6ヶ月~2年までの期間(例えば、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月)封入されたままである。例えば、正に帯電した色素を有する無機ナノ粒子を含む水性(例えば、水)組成物は、6ヶ月~2年までの期間(例えば、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月)安定であり、この期間の間、水性媒体(例えば、水)中で観察可能な遊離色素を示さない。例えば、組成物は、この期間の間、水性媒体(例えば、水)中でHPLC(例えば、本明細書に記載のHPLC法)によって観察可能な遊離色素を示さない。
【0080】
組成物中の無機ナノ粒子は、様々なサイズを有することができる。前記無機ナノ粒子は、2~50nmのコアサイズ(その間のすべての0.1nmの値及びその間のすべての範囲を含む)(例えば、2~10nm又は2~5nm)を有することができる。様々な例において、前記無機ナノ粒子は、2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5,8,8.5,9,9.5,9.99,10,10.5,11,11.5,12,12.5,13,13.5,14,14.5又は15nmのコアサイズを有する。様々な例において、前記無機ナノ粒子の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%又は100%が、2~50nmのサイズ(例えば、最長寸法)(例えば、2~10nm又は2~5nm)を有する。様々な例において、前記無機ナノ粒子の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%又は100%が、2~50nmのサイズ(例えば、最長寸法)を有する。例示的な粒度分布に関して、前記組成物は、いかなる粒径判別(粒径選択/除去)プロセス(例えば、ろ過、透析、クロマトグラフィー(例えば、GPC)、遠心分離など)にかけられなくてもよい。例えば、本開示の無機ナノ粒子は、前記組成物の唯一の無機ナノ粒子である。一例では、無機ナノ粒子は、0~4個(例えば、0、1、2、3、又は4個)のシェルを有し得る。
【0081】
組成物中の無機ナノ粒子は、様々なサイズを有することができる。前記無機ナノ粒子は、2~15nmのコアサイズ(その間のすべての0.1nmの値及びその間のすべての範囲を含む)(例えば、2~10nm又は2~9.99nm)を有することができる。様々な例において、前記無機ナノ粒子は、2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5,8,8.5,9,9.5,9.99,10,10.5,11,11.5,12,12.5,13,13.5,14,14.5又は15nmのコアサイズを有する。様々な例において、前記無機ナノ粒子の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%又は100%が、2~15nmのサイズ(例えば、最長寸法)(例えば、2~10nm又は2~9.99nm)を有する。様々な例において、コア-シェルナノ粒子の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%又は100%が、2~50nmのサイズ(例えば、最長寸法)を有する。例示的な粒度分布に関して、前記組成物は、いかなる粒径判別(粒径選択/除去)プロセス(例えば、ろ過、透析、クロマトグラフィー(例えば、GPC)、遠心分離など)にかけられなくてもよい。例えば、本開示の無機ナノ粒子は、前記組成物の唯一の無機ナノ粒子である。一例では、無機ナノ粒子は、0~4個(例えば、0、1、2、3、又は4個)のシェルを有し得る。
【0082】
前記組成物は、追加の成分を含んでもよい。例えば、前記組成物は、個体(例えば、哺乳類、例えばヒトなど)に投与するために適切なバッファーも含むことができる。前記バッファーは、薬学的に許容できるキャリアでもよい。
【0083】
前記組成物は、合成されて、合成後の加工/処理の前に、無機ナノ粒子、粒子(2~15nm、例えば、2~10nm、例えば2~10nm又は2~5nm)、ダスト粒子/凝集物(>20nm)、未反応試薬(<2nm)を有してもよい。
【0084】
様々な例において、合成されたままのナノ粒子は、合成後の精製プロセス(例えば、反応混合物からの単離以外)を受けない。精製プロセスの非限定的な例には、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)など)、再沈殿、塩交換、溶媒抽出など、及びこれらの組み合わせが含まれる。様々な例において、精製は、望ましくない物質、成分、方法の生成物などの1種以上、又はそれらの組み合わせの分離を含む。
【0085】
組成物は、複数の無機ナノ粒子を含むことができ、ここで、複数の無機ナノ粒子の個々の無機ナノ粒子は、1~7個の正に帯電した色素基を含み、ここで、i)正に帯電した色素基はいずれも、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されておらず;又は、ii)無機ナノ粒子の大半(例えば、50%を超える)が、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置された正に帯電した色素基を少なくとも1個(例えば、1、2、3、4、5、6、7個、又はそれらの組み合わせ)有し;又は、iii)正に帯電した色素基のすべてが、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されている。
【0086】
一例では、複数の無機ナノ粒子を含む組成物(ここで、複数の無機ナノ粒子の個々の無機ナノ粒子は、1~7個の正に帯電した色素基を含む)は、本質的に、無機ナノ粒子に完全に封入された0、1、2、3、4、5、6、又は7個の色素基を有する個々の無機ナノ粒子から構成されてもよい。
【0087】
組成物は、複数の無機ナノ粒子を含むことができ、ここで、複数の無機ナノ粒子の個々の無機ナノ粒子は、1~7個の正味中性色素基を含み、ここで、i)正味中性色素基はいずれも、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されておらず;又は、ii)無機ナノ粒子の大半(例えば、50%を超える)が、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置された正味中性色素基を少なくとも1個(例えば、1、2、3、4、5、6、7個、又はそれらの組み合わせ)有し;又は、iii)正味中性色素基のすべてが、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されている。
【0088】
一例では、複数の無機ナノ粒子を含む組成物(ここで、複数の無機ナノ粒子の個々の無機ナノ粒子は、1~7個の正味中性色素基を含む)は、本質的に、無機ナノ粒子に完全に封入された0、1、2、3、4、5、6、又は7個の色素基を有する個々の無機ナノ粒子から構成されてもよい。
【0089】
組成物は、複数の無機ナノ粒子を含んでおり、ここで、複数の無機ナノ粒子の個々の無機ナノ粒子は、1~7個の負に帯電した色素基を含み、ここで、i)負に帯電した色素基はいずれも、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されておらず;又は、ii)無機ナノ粒子の大半(例えば、50%を超える)が、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置された負に帯電した色素基を有しておらず;又は、iii)無機ナノ粒子の大半が、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置された、1、2、3、4、5、6、又は7個の負に帯電した色素基を有する。
【0090】
一例では、複数の無機ナノ粒子を含む組成物(ここで、複数の無機ナノ粒子の個々の無機ナノ粒子は、1~7個の負に帯電した色素基を含む)は、本質的に、無機ナノ粒子に完全に封入された0、1、2、3、4、5、6、又は7個の負に帯電した色素基を有する個々の無機ナノ粒子から構成されてもよい。
【0091】
一例では、1つ以上の色素基が、正に帯電しているか、又は正味の中性電荷を有し、及び、前記複数の無機ナノ粒子は、サイズ依存的な表面不均一性を示さない(サイズ依存的な表面不均一性はHPLCによって決定される)。
【0092】
ある態様において、本開示は、本開示の無機ナノ粒子及び組成物の使用を提供する。例えば、無機ナノ粒子又は無機ナノ粒子を含む組成物は、送達方法及び/又はイメージング(画像化)方法において使用される。
【0093】
無機ナノ粒子によって運ばれるリガンドは、診断及び/又は治療薬(例えば、薬物)を含んでもよい。治療薬の例には、化学療法剤、抗生物質、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。親和性リガンドが前記ナノ粒子にコンジュゲートされ、ナノ粒子の標的化送達を可能にしてもよい。例えば、前記無機ナノ粒子は、特定の細胞型に関連する細胞成分(例えば、細胞膜上の又は細胞内コンパートメント中の)に結合する能力のあるリガンドにコンジュゲートされてもよい。標的にされる分子は、腫瘍マーカー又はシグナル伝達経路の分子であってもよい。前記リガンドは、ある細胞型(例えば、腫瘍細胞など)に特異的に結合する親和性を有してもよい。ある例では、前記リガンドは、ナノ粒子を特定のエリア、例えば、肝臓、脾臓、脳などに導くために使用されてもよい。個体におけるナノ粒子の位置を決定するために、イメージングが使用できる。
【0094】
前記無機ナノ粒子又は無機ナノ粒子を含む組成物は、例えば、薬学的に許容できるキャリア(前記無機ナノ粒子を体の一つの器官又は部分から、体の別の器官又は部分に輸送するのを促進するもの)内に含まれて、個体に投与されてもよい。個体の例には、ヒト及び非ヒト動物などの動物が含まれる。個体の例には哺乳類も含まれる。
【0095】
薬学的に許容できるキャリアは、一般的に水性である。薬学的に許容できるキャリアにおいて使用できる物質の例には、糖(例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース);デンプン(例えば、コーンスターチ及びポテトスターチ);セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース);粉末トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバター及び坐剤ワックス);油(例えば、ピーナツ油、綿実油、サフラワー油、セサミ油、オリーブ油、コーン油、大豆油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル);アガー;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム):アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;及び製薬処方で採用される他の非毒性の適合物質が含まれる(REMINGTON'S PHARM. SCI., 22th Ed. (Mack Publ. Co., Easton (2012)参照)。
【0096】
本願の無機ナノ粒子を含む組成物は、任意の適切なルートで、単独で又は他の剤と組み合わせて、個体に投与できる。投与は、任意の手段、例えば、非経口的、粘膜、肺、局所、カテーテルによる、又は経口的手段による送達などによって、達成できる。非経口的送達には、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、及び臓器組織への注射が含まれ得る。粘膜送達には、例えば、鼻腔内送達が含まれる。肺送達には、薬剤の吸入が含まれ得る。カテーテルを使用する送達には、イオントフォレーシスカテーテル系送達による送達が含まれ得る。経口送達には、腸溶性剤による送達、又は経口での液体の投与が含まれ得る。経皮送達には、皮膚パッチの使用による送達が含まれ得る。
【0097】
本願の無機ナノ粒子を含む組成物の投与後、無機ナノ粒子の経路、位置、及びクリアランスを、一つ以上の画像処理技術を使用してモニターすることができる。適切な画像処理技術の例には、Artemis Fluorescence Camera Systemが含まれる。
【0098】
本開示は、細胞、細胞外成分又は組織などの生物材料をイメージング(画像化)する方法を提供し、当該方法は、前記生物材料を、1つ以上の正に帯電した色素を含む無機ナノ粒子あるいは当該ナノ粒子を含む組成物と接触させること;励起電磁(e/m)放射線(例えば、光)を、組織又は細胞に照射し、それによって、正に帯電した色素分子を励起させること;励起された正に帯電した色素分子から放射されるe/m放射線を検出すること;及び検出されたe/m放射線を捕獲し処理して、前記生物材料の一つ以上のイメージを提供することを含む。これらの工程の一つ以上を、インビトロ又はインビボで実施することができる。例えば、細胞又は組織は個体に存在してもよく、培地中に存在してもよい。e/m放射線への細胞又は組織の暴露は、インビトロで(例えば、培養条件下で)達成されてもよく、又はインビボで達成されてもよい。個体内又は個体の体の任意の部分内にあり、容易に到達できない細胞、細胞外物質、組織、器官などにe/m放射線を照射するために、光ファイバー装置が使用できる。
【0099】
例えば、個体内の領域をイメージングする方法は、(a)前記個体に、1つ以上の正に帯電した色素分子を含む本開示の無機ナノ粒子又は組成物を投与すること;(b)対象に励起光を照射し、それによって、前記1つ以上の正に帯電した色素分子の少なくとも1つを励起すること;(c)励起された光を検出すること(検出された光は、励起光による励起の結果として、個体内の前記正に帯電した色素分子によって放射されたものである);及び(d)検出された光に対応するシグナルを処理して前記対象内の領域のイメージを1つ以上提供すること(例えば、リアルタイムのビデオストリーム);を含む。
【0100】
蛍光粒子は遊離色素より明るいので、蛍光粒子は、組織画像処理のため、及び、転移腫瘍を画像化するために使用できる。加えて、又はその代わりに、リガンド-機能化粒子のリガンド基(例えば、チロシン残基又はキレート剤)に、又は特定のリガンド機能化がないPEG化粒子のシリカマトリクスに、光誘起電子移動イメージングのために、放射性同位体をさらに付着させることができる。前記放射性同位体が治療のために選択される場合(例えば、225Ac又は177Luなど)、これは付加的な放射線治療特性を有する粒子をもたらすであろう。
【0101】
例えば、薬物-リンカー・コンジュゲート(このリンカー基は、薬物放出のために、腫瘍内の酵素又は酸性条件で特異的に切断されることができる)を、薬物送達用の粒子上の機能性リガンドに、共有結合的に付着させることができる。例えば、マレイミド-PEG-粒子の合成後、薬物-リンカー-チオール・コンジュゲートを、チオール-マレイミド・コンジュゲーション反応を通じて、マレイミド-PEG-粒子に付着させることができる。さらに、腫瘍に特異的に薬物を送達するために、薬物-リンカー・コンジュゲート及び癌を標的とするペプチドの両方を、粒子表面に付着させてもよい。
【0102】
本明細書に開示された様々な実施形態と例において記載する方法の工程は、本開示の方法を実施し、本開示の組成物を製造するのに十分である。このように、一実施形態では、前記方法は本質的に、本明細書に開示の方法の工程の組み合わせのみからなる。別の実施形態では、前記方法は、そのような工程のみからなる。
【0103】
以下の陳述において、本開示の様々な実施形態を説明する。
陳述1
1つ以上の色素を含んでおり、ポリエチレングリコール(PEG)基で表面機能化されている無機ナノ粒子を合成する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)室温で、水、TMOS、及び色素前駆物質を含む反応混合物を形成すること、ここで、当該反応混合物のpHは6~11(例えば、6~9)である;
b)i)前記反応混合物を、ある時間(t1)及び温度(T1)で保持することにより、2~15nmの平均径を有する無機ナノ粒子を形成すること、又は
ii)前記反応混合物を、必要に応じて室温まで冷却し、及び、a)で得られた反応混合物に、シェル形成モノマーを添加することによって、コアサイズが2~15nm及び/又は平均径が2~50nmの無機ナノ粒子を形成すること;
c)必要に応じて、b)i)又はb)ii)で得られた無機ナノ粒子を含む反応混合物のpHを、pH6~10に調節すること;
d)b)i)又はb)ii)で得られた無機ナノ粒子を含む反応混合物に室温で、PEG-シラン・コンジュゲートを添加し、及び、得られた反応混合物をある時間(t2)及び温度(T2)で保持すること;
e)d)で得られた混合物をある時間(t3)及び温度(T3)で加熱することによって、PEG基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成すること;
f)前記反応混合物を液体クロマトグラフィーにより精製すること。
他の例では、1つ以上の色素を含んでおり、ポリエチレングリコール(PEG)基で表面機能化されている無機ナノ粒子を合成する方法は、以下の工程を含む:
a)室温で、水、TMOS、塩基、及び色素前駆物質を含む反応混合物を形成すること、
b)i)前記反応混合物を、ある時間(t1)及び温度(T1)で保持することにより、2~15nmの平均径を有する無機ナノ粒子を形成すること、又は
ii)前記反応混合物を、必要に応じて室温まで冷却し、及び、a)で得られた反応混合物に、シェル形成モノマーを添加することによって、コアサイズが2~15nm及び/又は平均径が2~50nmの無機ナノ粒子を形成すること;
c)必要に応じて、b)i)又はb)ii)で得られた無機ナノ粒子を含む反応混合物のpHを、pH6~10に調節すること;及び
d)b)i)又はb)ii)で得られた無機ナノ粒子を含む反応混合物に室温で、PEG-シラン・コンジュゲートを添加し、及び、得られた反応混合物をある時間(t2)及び温度(T2)で保持すること;
e)d)で得られた混合物をある時間(t3)及び温度(T3)で加熱することによって、PEG基で表面機能化された無機ナノ粒子を形成すること;
f)反応混合物を液体クロマトグラフィーにより精製すること、
ここで、色素前駆物質、TMOS、塩基、及びPEG-シランのモル比は、0.0090~0.032:11~46:0.5~1.5:5~20であり、及び
前記方法は、1つ以上の色素を含んでおり、ポリエチレングリコール(PEG)基で表面官能化されている無機ナノ粒子を産生する。この1つ以上の色素は、無機ナノ粒子中に完全に封入されている。
陳述2
塩基が、水酸化アンモニウム、エタノール中のアンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、及びこれらの組み合わせから選択される、陳述1に記載の方法。
陳述3
塩基が濃度を有し、その濃度が、0.001mM~60mM(その間のすべての0.001mM値及びその間のすべての範囲を含む)(0.01mM~1mM、0.01mM~2mM、0.01mM~2.5mM、0.01mM~3mM、0.01mM~4mM、0.01mM~5mM、0.01~10mM、0.1mM~1mM、0.1mM~2mM、0.1mM~2.5mM、0.1mM~3mM、0.1mM~4mM、0.1mM~5mM、0.1~10mM、0.001mM~1mM、0.001mM~2mM、0.001mM~2.5mM、0.001mM~3mM、0.001mM~4mM、0.001mM~5mM、0.001~10mM)である、陳述1又は陳述2に記載の方法。
陳述4
精製が、複数の無機ナノ粒子の選択された部分を、反応混合物から単離することを含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述5
GPCによって複数の無機ナノ粒子の選択された部分を分析することをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述6
HPLCによって複数の無機ナノ粒子の選択された部分を分析することをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述7
前記精製工程が、
クロマトグラフィーカラムに複数の無機ナノ粒子を注入すること;前記カラムは、固定相と流体連通しているインプットを含んでおり、前記固定相はアウトプットと流体連通しており、前記アウトプットは検出器と流体連通している、
移動相をクロマトグラフィーカラムに通過させて、前記複数の無機ナノ粒子をカラムから溶出させること;
前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分を含む溶離液を採取すること
を含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述8
前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分を、HPLCカラムに注入すること;前記カラムは、固定相と流体連通しているインプットを含んでおり、前記固定相はアウトプットと流体連通しており、前記アウトプットは検出器と流体連通している、
移動相をHPLCカラムに通過させて、前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分をカラムから溶出させて、検出器に入るようにし、前記検出器にシグナルを生成させること、ここで、前記シグナルは、前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分の個々の無機ナノ粒子上及び/又は個々の無機ナノ粒子内の1つ以上の色素の位置を示す;
前記シグナルを分析して、前記複数の無機ナノ粒子の選択された部分の個々の無機ナノ粒子上及び/又は個々の無機ナノ粒子内の1つ以上の色素の位置を決定すること;及び
任意で、溶離液の1つ以上の画分を採取すること
を含む、陳述6に記載の方法。
陳述9
前記反応混合物が、アルミナ又はアルミノシリケートコアモノマーをさらに含み、
前記反応混合物のpHが、前記アルミナ又はアルミノシリケートコア形成モノマーの添加前に、1~2のpHに調整され、及び
任意で、PEGが前記反応混合物に添加され、その後pHが、pH7~9に調整され、
前記コアがアルミノシリケートコアである、
前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述10
前記色素前駆物質が、正に帯電した色素前駆物質、負に帯電した色素前駆物質、又は正味中性色素前駆物質である、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述11
正に帯電した色素前駆物質が、Cy5.5、Cy5、Cy3、ATTO647N、メチレンブルー、ATTO663、ATTO620、ATTO665、ATTO465、ATTO495、ATTO520、ATTORho6G、ATTORho3B、ATTORho11、ATTORho12、ATTOThio12、ATTO580Q、ATTORho101、ATTORho13、ATTO610、ATTO612Q、ATTO647N、ATTORho14、ATTOOxa12、ATTO725、ATTO740、ATTOMB2など、及びこれらの組み合わせから選択される正に帯電した色素から形成される、陳述10に記載の方法。
陳述12
負に帯電した色素前駆物質が、スルホ-Cy5.5、スルホ-Cy5、スルホ-Cy3、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 430、ATTO430LS、ATTO488、ATTO490LS、ATTO532、ATTO594など、及びそれらの組み合わせから選択される負に帯電した色素から形成される、陳述10に記載の方法。
陳述13
正味中性色素前駆物質が、テトラメチルローダミン(TMR)、ATTO390、ATTO425、ATTO565、ATTO590、ATTO647、ATTO650、ATTO655、ATTO680、ATTO700など、及びこれらの組み合わせから選択される正味中性色素から形成される、陳述10に記載の方法。
陳述14
複数の無機ナノ粒子を含む組成物であって、前記複数の無機ナノ粒子の個々の無機ナノ粒子は、1~7個の色素基を含み、ここで、
i)前記色素基のいずれも、前記無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されていない;
ii)無機ナノ粒子の大半(例えば、50%を超える)が、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置された、少なくとも1個(例えば、1、2、3、4、5、6、7個、又はそれらの組み合わせ)の色素基を有し;又は
iii)すべての色素基が、無機ナノ粒子の表面に配置又は部分的に配置されており、
ここで、前記色素基は、正に帯電しているか、負に帯電しているか、又は正味の中性電荷を有している、
複数の無機ナノ粒子を含む組成物。
陳述15
複数の無機ナノ粒子が、無機ナノ粒子中に封入された(例えば、完全に封入された)0、1、2、3、4、5、6、又は7個の色素基を有する個々の無機ナノ粒子から本質的に構成される、陳述14に記載の組成物。
陳述16
1つ以上の色素基が、正に帯電しているか、又は正味の中性電荷を有しており、前記複数の無機ナノ粒子が、サイズ依存的な表面不均一性を示さない、陳述14に記載の組成物。
陳述17
サイズ依存的な表面不均一性が、HPLCによって決定される、陳述16に記載の組成物。
【0104】
以下の実施例は、本開示を説明するために提示される。いかなる事項による限定も意図しない。
[実施例]
【0105】
以下は、本開示のナノ粒子の合成及び特性評価の実施例である。
【0106】
粒子表面に露出した色素は、化学的分解又は潜在的な加水分解の傾向が大きく、したがって、人体のような複雑な生物学的環境において、これらのタイプのナノ粒子の挙動に有意な影響を及ぼし得る。これらの表面化学的不均一性とその主な促進要因(すなわち、色素電荷)を定量的に評価する方法を同定したことで、ゾルゲルシリカ合成で最初に形成された~2nmサイズのシリカクラスターと、最適な色素封入を支配する蛍光色素との間の相互作用のファクターに関する洞察を提供するための、系統的な研究を行うことが可能となった。
【0107】
本明細書に提示されるのは、コーネルプライムドット(C'ドット)と呼ばれるポリ(エチレングリコール)被覆コアシェル型シリカナノ粒子のシリカコア内の完全な共有結合蛍光色素封入を支配する物理的パラメータに関する新たな洞察である。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、及び蛍光相関分光法(FCS)の組み合わせを使用して、近赤外色素Cy5及びCy5.5の負及び正に荷電したバージョンからC'ドットを合成する際の、アンモニア濃度による結果をモニターした。特にHPLCは、シリカ粒子コアへの完全色素封入ケースと部分色素封入ケースとの区別を可能にし、これは、疎水性表面パッチの形で表面化学的不均一性をもたらしており、そして次にフェロプトティック(ferroptotic)細胞死実験において生物学的応答を調節する。これらの結果は、最適な色素封入を支配するゾル-ゲル合成においてもともと形成された、色素-色素及び色素-シリカクラスター相互作用の間に複雑な相互作用があることを実証する。表面化学的不均一性の低減は、結果として生じるナノ粒子を、生物学及び医学における多くの用途にとって魅力的なものにすることが期待される。
【0108】
ナノ医療における用途に適している、NIR色素Cy5及びCy5.5の負及び正に荷電したバージョンが、ここに記載される。HPLCをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及びFCSと組み合わせると、両方の色素に関して、シリカコアへの完全な色素封入が達成される合成条件が分かり、個々の合成バッチから得られる粒子表面化学的特性の不均一性を最小化することにつながる。特に、封入を成功させるには、水溶液中の水酸化アンモニウムの出発濃度を注意深く調節する必要があることが、異なる色素で示された。これは、シリカ前駆物質の加水分解及び縮合の速度、及び結果として生じるシリカクラスター(ゾルゲルプロセスで最初に形成される)の表面電荷に直接影響し、これが次いで、成功的な粒子形成に重要であるクラスター-色素及びクラスター-クラスター相互作用の両方の静電気を支配する。最後に、最近発見された鉄依存性細胞死プログラムであるCドット誘発フェロトーシス(ferroptosis)を試験台として用いて、異なる程度の色素封入に基づく粒子不均一性が、生物学的応答をどのように調節するかが実証される。
【0109】
方法
【0110】
化学物質及び試薬
UHPLCグレードのアセトニトリルは、BDHから購入した。Superdex 200樹脂は、GE Healthcare Life Sciencesから購入した。Vivaspin 30k MWCOスピンフィルターは、GE Healthcare Life Sciencesから購入した。5M NaCl(水溶液中)は、Santa Cruz Biotechnologyから購入した。ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)、硝酸鉄(III)、及びエタノール中の2.0Mアンモニアはすべて、Sigma-Aldrich社から購入した。メトキシ-PEG(6-9)-シラン(~500g/mol)はGelestから購入した。スルホ-Cy5-マレイミド及びスルホ-Cy5.5-マレイミドは、GEから購入した。Cy5-マレイミド及びCy5.5-マレイミドは、Lumiprobeから購入した。DI水は、Millipore IQ7000システム(18.2 MΩ・cm)を用いて生成した。Xbridge Protein BEH C4カラム(300Å、3.5μm、4.6mm×150mm、10K-500K)は、Waters Technologies社から購入した。MDA-MB-468細胞をATCCから入手し、融解後3ヶ月以内に使用した。RPMI-1640、ウシ胎児血清(FBS)、及び透析FBCは、Gibcoから入手した。アミノ酸非含有RPMI-1640は、United States Biologicalから入手した。GlutaMax、Pen/Strep、及びPrestoBlue試薬は、Invitrogen社から入手した。すべての化学物質は、さらなる精製なしに受け取ったままの状態で使用した。
【0111】
粒子合成及び精製
C'ドットは、先に記載されているように合成した。簡単に説明すると、0.367μmolの単官能性マレイミド誘導体化色素を、グローブボックス中で一晩、DMSOに溶解した(10mLバッチ)。溶解した色素に、23倍過剰のメルカプトプロピル-トリメトキシシラン(MPTMS)を加え、グローブボックス内で一晩反応させた。翌日、0.5mL~2.5mLの0.02M水酸化アンモニウム(水酸化アンモニウムは、10mLの脱イオン水に、2.0Mのアンモニアを含むエタノール溶液100μLを混合して調製した)を用いてpH調整した脱イオン水を入れたフラスコを準備し、激しく撹拌した。スルホン化色素C'ドット合成のために、1mLの0.02M水酸化アンモニウムを、9mLの脱イオン水に加えた。68μLのテトラメチルオルトシリケート(TMOS)及び調製した色素-シラン・コンジュゲートをフラスコに滴下して添加し、一晩反応させた。翌日、100μLのmPEG(6-9)-シランをフラスコに滴下し、一晩反応させた。翌日、溶液の撹拌を停止し、フラスコを80℃に加熱した(24時間)。この加熱工程に続いて、粒子を10K MWCOセルロース透析チューブを用いて広範囲に透析し、続いて200nm膜でシリンジ濾過し、30K MWCO PES膜スピンフィルタを用いてスピン濾過し、そして最後にBio-Rad FPLCでSuperdex 200樹脂によりGPC精製を行った。その後、自家製セットアップによる蛍光相関分光法(FCS)、及び、Cary5000分光計によるUV/Vis分光法を用いて、粒子を特性評価した。
【0112】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
すべての注入は、標準化注入量8μL及び濃度30μMで行った。注入されたサンプル濃度は、FCSによる分析の前に測定した。使用したカラムは、300Åの孔径と3.5μmの粒子径を持つ150mmのWaters Xbridge BEH C4タンパク質分離カラムであった。使用した分離方法は以下の通りであった:サンプルをまず、カラムに注入し(90:10の水:アセトニトリル流:0.75mL/分の流速)、そしてこの均一濃度セグメントを20分間維持した。次いで、移動相組成を階段状の様式で45:55の水:アセトニトリルに変更し、ベースラインを5分間平衡化させた。最後に、水:アセトニトリルの組成勾配(45:55~5:95)を20分間にわたって実行した。この間に、分析物はカラムから溶出した。
【0113】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
分取スケールゲル浸透クロマトグラフィーを、275nmに設定したUV検出器を備えたBio-Rad FPLCで行った。0.9重量%NaCl(脱イオン水中)を用いて均一濃度条件下で粒子を精製した。溶離液は、0.2μm膜で濾過された5M NaCl水溶液(Santa Cruz Biotechnology)を、脱イオン水(18.2 MΩ、Millipore IQ7000から得た)で希釈することによって、ナノ粒子精製の直前に調製した。使用したカラムは、寸法20mm×300mmの標準ガラス製Bio-Radカラムであり、Superdex 200を充填した。カラムを2.0mL/分で操作し、サンプル精製前に少なくとも30分間、移動相と平衡化させた。すべてのサンプルを、注入前にGE Life Sciencesの30kDa MWCO VivaSpinフィルターで濃縮した。総注入量は、1ランあたり1mL未満であった。粒子は15分辺りで溶出し、合計30分間ランを続けた。
【0114】
蛍光相関分光法(FCS)
FCS測定は、635nmの固体レーザーと連続波レーザーを使用して、自家製装置で実施した。これは、650nm付近に吸光度最大値を有する蛍光色素に対して、標準的なレーザー装置である。連続波レーザーを、水浸顕微鏡対物レンズ(Zeiss Plan-Neofluar 63x NA 1.2)の像面に集束させた。放出された蛍光はストークスシフトされたため、同じ対物レンズを通過して戻った後、ダイクロイックミラーを正常に通過することができ、その後、50μmのピンホールで空間的にフィルタリングされ、最後に空間的にフィルタリングされたロングパスフィルタ(ET665lp, Chroma)を通過してから、アバランシェフォトダイオード検出器(SPCM-AQR-14, PerkinElmer)によって検出された。シグナルは、ラグタイム分解能が15nsのデジタル相関器(Flex03LQ, Correlator.com)によって自己相関された。自己相関曲線は、高速光物理プロセスと並進拡散を説明する式(1)でフィッテングされた。
【数1】
式中、Nmは、任意の時点で焦点体積(focal volume)を通って拡散する蛍光粒子の数であり、τDは、焦点体積を通過して拡散する蛍光材料の平均並進拡散時間であり、τPは、高速光物理プロセスに特有の緩和時間であり、κは径方向及び軸方向半径から計算された焦点体積構造因子であり(κ=ωzxy)、Pは、実験中に高速光物理プロセスを受けている蛍光粒子の画分である。すべての自己相関曲線は、式(2)に従って正規化された。
【数2】
【0115】
UV/Vis分光法
C'ドットサンプルの吸光度スペクトルを、200nmから800nmまで(1nmインクリメント)の10mm光路(HellmaAnalytics)を備えた3mL石英キュベット中で、Varian Cary 5000分光光度計にて、DI水中で測定した。すべてのスペクトルは、基準セルとしてDI水を含むキュベットを用いてベースライン補正した。色素吸収波長における極大吸収は0.01~0.06の間に保たれた。
【0116】
細胞研究
MDA-MB-468細胞は、摂氏37度、完全培地(RPMI-1640に10%FBSを補充)中5%CO2で維持された。細胞を、ウェルあたり2×104の濃度にて、96ウェルプレートに播種し、一晩定着させた。その後、培地を除去し、示された量の硝酸鉄(III)又はC'ドットを伴う、10%透析FBS、1X GlutaMax、及び1X Pen/Strepを補充したアミノ酸フリーRPMI-1640と交換した。C'ドットを用いた実験では、すべての条件に1μM硝酸鉄(III)も含まれていた。細胞を6日間インキュベートした。次いで、培地を完全培地と交換し、製造業者の指示に従ってPrestoBlue試薬を用いて細胞生存率を評価した。データは、Tecan Safire装置にて、吸光度モードで読み出した。
【0117】
結果と考察
【0118】
正に帯電した色素化学は、粒子表面化学的均質性を大幅に改善する
図1は、-1の正味電荷を有するスルホン化Cy5を示す(上段、左)。序論で論じ、図2aに示されているように、わずかに塩基性の合成条件で負に帯電するシリカとの反発クーロン相互作用のために、この正味の負電荷は、かなりの量のナノ粒子表面化学的不均一性を引き起こす(HPLCクロマトグラムにおける3つの顕著なピーク及び1つの弱いピークの発生において示されるように)。図2aのインサートに示されるように、これらのピークは、シリカ表面に共有結合した0、1、2、又は3個の色素を有する粒子に対応する(図2a)。Cy5の非スルホン化誘導体に切り替えることにより(図1、上段、右)、溶液中の色素電荷は-1から+1に変化し、図2aに示されるように、完全な封入が促進された(その結果、現在は誘引性の色素-シリカ相互作用であるため)。HPLCクロマトグラムが示すように、正の色素を封入する粒子はすべて、同じ時間に溶出し、高い粒子表面均一性を反映する単一のピークをもたらした。
【0119】
正味-1電荷を有する色素の封入によって引き起こされるC'ドットの表面化学的不均一性は、HPLCを介して調査され、現在理解されているが、さらに高い正味負電荷を有する色素の、粒子表面不均一性に対する影響は依然として未解決の問題である。これは、Cy5.5(abs./em.: 675/695nm)などの近赤外(NIR)色素に特に関連しており、Cy5.5は、NIRでさらに放射するため、Cy5(abs./em.: 650/670 nm)よりも大きく、ゆえに著しく疎水性が高い。Cy5.5の市販のスルホン化類似体は、大きな疎水性分子フレームワークにもかかわらず、水溶液中で良好な溶解性を提供するために、4つのスルホネート基を担持し、-3の正味電荷を有する(図1、下段、左)。これは、C'ドットのゾルゲル合成で最初に形成される高度に負に荷電した一次シリカクラスターと、負に荷電した色素との間の強い反発相互作用のために、超小型蛍光コアシェル型シリカナノ粒子への封入に大きな課題を提起する。C'ドット合成が典型的に行われるpH範囲における一次クラスターの負電荷は、それらが凝集するにつれて、及びより多くのケイ酸がTMOSの加水分解によって生成されるにつれて減弱する。以前の分子動力学シミュレーションによると、合成が進行するにつれてクラスター表面電荷が減少することで、最終的に負に帯電した色素が、形成されるC'ドットの表面に凝縮するようになる。スルホ-Cy5.5で合成したC'ドットのHPLCクロマトグラムを図2bに示す。スルホ-Cy5由来粒子と比較して(図2C)、それは、はるかに長い溶出時間(有意に多くの疎水性粒子を示唆する)に及ぶ少なくとも5つのピークに現れるように、劇的に増加した不均一性を示す。このデータから、Cy5.5ベースのC'ドット合成における色素の大部分が、最終的には粒子表面上にあることは明らかである。
【0120】
一次クラスター電荷は、制御に重要なパラメータである
陰性色素から陽性色素類似体への切り替えは、一般にナノ粒子の均質性に有意な増強をもたらすものの、合成パラメータは、最適なナノ粒子表面化学的特性を確実にするために個々の色素化学の関数として調整されなければならない。Cy5やCy5.5のような色素の正に帯電した非スルホン化類似体に切り替えると、色素は、負に帯電した一次シリカクラスターから形成されるナノ粒子の核生成部位として働き、このため、C'ドットが成長するとシリカに完全に封入される。次に、完全に最適化された合成条件(下記参照)の場合、これは、高度の表面化学的均質性につながる(HPLCクロマトグラムにおける単一ピークによって証明される;Cy5及びCy5.5についてそれぞれ図2a及びbに示されるように)。しかし、正に帯電したNIR色素は、スルホン化色素類似体が持つ水溶性の増加という利点を持たず、その結果、水中で凝集しやすいため、色素化学のこの切り替えには課題がないわけではない。NIR C'ドット合成条件を最適化するために、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び蛍光相関分光法(FCS)の組み合わせに着目した。共有結合的に封入された正の近赤外NIR色素を有する超小型蛍光コアシェルシリカナノ粒子の最適化は、負に帯電した色素から正に帯電した色素への単純な移行よりもニュアンス的であるが、均質なペグ化ナノ粒子表面を確実にするために同様に重要である。このプロセスでは、色素-色素相互作用、色素-一次クラスター相互作用、クラスター-クラスター相互作用の3つの主要な相互作用を考慮する必要がある。色素-色素相互作用は、スルホン化されていない正に帯電している色素でより重要である(この色素がより疎水性であり、凝集を起こしやすいため)。色素の濃度は、十分に高い合成収率を提供するのに十分に高い遊離色素濃度を維持しながら、あまりにも多くの色素凝集及び沈殿(これらは、効率的な色素封入を妨げる)を引き起こさないように慎重に制御されなければならない。
【0121】
正に荷電したCy5及びCy5.5色素は、シリカ前駆物質TMOSが反応水溶液に添加されたときに形成される負に荷電した~2nmの一次シリカクラスターの核生成部位として作用する可能性が高い。これは、ナノ粒子の成長及びそれに続く色素封入を促進する(上記参照)。一次クラスターが正に荷電した色素の周囲で凝集すると、正電荷は静電的に遮蔽され、粒子が成長を介して静電的安定化に達するにつれて、成長するナノ粒子は追加のクラスター会合に対してより反発的になる。合成溶液中のアンモニア濃度が十分に高い場合、高度に負に荷電したクラスター間のこれらの反発的なクラスター間相互作用は、色素がシリカ一次クラスター内に完全に封入される前に、さらなるクラスター付加を停止し得る。これは、全体的により小さなナノ粒子、及び表面上の疎水性色素パッチの数の増加につながるであろう。
【0122】
NIR色素Cy5(+)の共有結合封入のための表面化学最適化
これは、正に荷電したCy5[Cy5(+)]を用いたC'ドット合成実験で観察されるものである:アンモニア濃度を増加させると、GPCの主なナノ粒子ピークは右に移動し(図3a、d、g、j)、FCSによって裏付けられるように、より小さな粒子を示す(図3c、f、i、l;表1);対応するHPLCトレース(図3b、e、h、k)は、不均一性の増強を示す(より高い溶出時間での追加のピークによって)。部分的に封入された色素のみを有するナノ粒子の形成を防ぐために、C'ドットのコアを形成する一次シリカクラスターの表面電荷は、溶液中の水酸化アンモニウムの濃度を調節することによって慎重に制御されなければならない。水酸化アンモニウムは、C'ドット合成におけるシリカの塩基性加水分解及び縮合のための触媒である。それは、加水分解及び縮合の速度だけでなく、ゾルゲル合成の開始時に形成される一次シリカクラスターの表面電荷も制御する。一方、水酸化アンモニウム濃度が低すぎると、一次シリカクラスターが有意に凝集しやすくなる。これらのナノ粒子は色素を完全に封入するであろうが、一次シリカクラスターの制御されない凝集のためにサイズが著しく増加する。これにより、図3jに示すように、GPCにおいて一次ナノ粒子ピークとナノ粒子凝集ピークとが分離できなくなる。以前に実証されたように、GPC分画による非常に慎重な精製を行っても、ナノ粒子ピークは分離できないいくらかの凝集体を常に含む。図3g-iで実証されているように、正のCy5-シランを用いて作業する場合、10mLバッチ(方法の項を参照)では1.0mLの濃度(0.02アンモニア溶液)で、最適な開始一次クラスター表面電荷に達した。開始アンモニア濃度が高いほど色素は完全に封入されず、他方、アンモニア濃度が低いほど、非常に低い表面電荷のためクラスターの過剰な凝集が生じた。図4は、一次シリカクラスター電荷と色素電荷のバランスをとるこの原理と、その結果生じる封入効果を示す。
【0123】
NIR色素Cy5.5(+)の共有結合封入のための表面化学最適化
次に、この原理を適用して、C'ドットの第二の臨床的に意義のある変化体である、正に帯電したCy5.5[Cy5.5(+)]からのNIR C'ドットの合成を最適化した。Cy5.5-C'ドットの合成を、Cy5(+)ベースのC'ドットについて議論されたことに沿って評価すると、異なる色素化学の結果として、Cy5.5(+)の最適な合成条件が異なることが明らかになった。正に荷電したCy5.5は、Cy5(+)よりも有意に大きく、疎水性が高いため、結果として、合成プロトコルの調整が必要であった。合成における異なるアンモニア濃度に対するGPC、HPLC、及びFCSの結果を比較すると(図5)、10mLバッチの場合、Cy5.5-C'ドットの最適アンモニア濃度は、Cy5(+)での約1mLではなく、約0.75mL(0.02Mアンモニア溶液)であった(図5g-iを参照)。
【0124】
Cy5.5-C'ドットの最適化は、所定の色素について、完全な色素封入を得るために、一次シリカクラスターのための最適な表面電荷が存在することを強調する。反応開始時のアンモニア濃度を単に下げることは、直接的な解決策ではない。TMOS加水分解及びケイ酸形成の結果として合成開始時のpHが低くなると(上記参照)、正に荷電した色素の溶解度が増加し、これにより、成長するナノ粒子の表面上に色素が凝縮する傾向が高くなる。図5j-lにおいて、GPC、HPLC、及びFCSの結果から実証されるように、反応で0.5mLのアンモニア溶液を使用した場合、粒径は1mLの結果に対してさらに増加する。しかしこの場合、粒子の表面不均一性が増加しすぎる(図5k参照)。対照的に、Cy5(+)-C'ドットは、最適な水酸化アンモニウム濃度を下回っても、均質な表面化学を有していた(図3kを5kと比較)。
【0125】
GPC-HPLCが、低脱プロトン化条件のためのさらなる不均一性を解明する
Cy5.5(+)のケースは、個々の色素ごとに合成溶液の水酸化アンモニウム濃度を正しく最適化することの重要性を強調した。低い一次シリカクラスター表面電荷のレジームで発生した不均一性の起源をさらに理解するために、我々はPEG-Cy5.5(+)-C'ドットのサンプルをGPC分画した(PEG-Cy5.5(+)-C'ドットは、合成において、Cy5.5(+)色素の最適アンモニア濃度(0.75mL)を下回る、0.5mLの0.02M水酸化アンモニウムで表面不均一性の再発を示した(図6a、b)]。次に、3つのGPC画分をHPLC(図6c-e)で分析して、表面不均一性が、より大きな粒径を反映するより速い時間の画分で増加することを示し、これは、ナノ粒子表面に余分なCy5.5色素が凝縮し、ナノ粒子ペグ化ステップの前に余分な疎水性パッチが生じることを示唆している。興味深いことに、粒度分布を反映するGPCトレースは、単一のガウス関数で十分にフィッティングできたが(図6b)、GPCピークが水酸化アンモニウム1mL未満の条件で歪曲したCy5(+)合成では、そうではなかった(図3jと5jのフィッティングクオリティを比較)。このことは、0.5mLアンモニア合成条件では、色素媒介性の初期色素クラスターコンジュゲート形成後、Cy5(+)-C'ドットの粒子成長メカニズムが、主に成長するナノ粒子への一次シリカクラスターの継続的な追加に基づいているのに対し、Cy5.5(+)-ドット合成では、一次シリカクラスターの継続的な追加は、ナノ粒子表面への余分な色素凝縮を伴うことを示唆している。これらの結果は、C'ドット合成中の色素-色素相互作用及び色素-シリカ相互作用の同時制御が、非常に非自明であり、最小の表面化学的不均一性を有する最適な蛍光コアシェルシリカナノ粒子形成を達成するためには、新しい色素候補のために合成条件を慎重に調整する必要があることを合わせて実証している。
【0126】
異なる程度の表面化学的不均一性が生物学的反応を調節する
非封入NIR色素に由来する疎水性表面パッチ形態のナノ粒子不均一性が、生物学的反応に何らかの影響を与えたかどうかを究明した。そのために、癌細胞集団の栄養欠乏条件下で観察されるC'ドット誘導性-鉄媒介細胞死プログラムであるフェロトーシス(コアシェル型シリカナノ粒子は、シリカコアのミクロポアの結果として、溶液から鉄をキレートし、それを癌細胞内に運ぶ)を、試験台として選択した。アミノ酸(AA)欠乏状態下で、硝酸鉄(III)による処置に対する、MDA-MB-468トリプルネガティブ乳癌細胞の感受性を評価した。図7aに示すように、細胞は1μM鉄に対して非感受性であったが、完全培地対照とは対照的に、ほぼ全面的な細胞死が、6μM鉄によって惹起された。C'ドットがこの生物学的応答をどの程度調節できるかを決定するために、無毒量の鉄(1μM)の存在下にて、様々な濃度のC'ドットで細胞を処理した。図7bで実証されるように、正に帯電したCy5色素を用いて調製した粒子は、1μMの鉄単独よりもはるかに大きな細胞死応答を惹起することができたが(特に、10μM付近及びそれを超える粒子濃度で)、負に帯電したスルホ-Cy5色素を用いて調製された粒子は、比較的小さな細胞死応答しか惹起できなかった。したがって、正に帯電したCy5色素封入粒子は、癌細胞に鉄を導入し、フェロプトティック細胞死を誘導するのに優れていると思われる(おそらく、これらの粒子の疎水性表面パッチ性が低下し、及びそれに関連してシリカコアのミクロポアへのアクセスが容易になったことに起因して)。
【0127】
結論
表面化学的粒子不均一性を決定する、蛍光色素内包コアシェル型シリカナノ粒子の合成における制御パラメータが解明された。本開示は、使用される色素に応じて、合成条件のわずかな変動、ここではゾルゲル反応における触媒としてのアンモニアの濃度が、シリカコア表面にコンジュゲートした色素(完全に封入された色素ではなく)から生じる疎水性表面パッチの形の表面化学的特性に有意な変化をもたらし得ることを強調する。最終的なナノ粒子の表面化学を効果的に制御するために、色素-色素相互作用及び色素-シリカクラスター相互作用の複雑な関係を理解することは極めて重要である。粒子表面の化学的性質/不均一性の変動は、次いでナノ粒子に対する生物学的反応を調節する(負及び正のいずれかに帯電したCy5色素由来のC'ドットを用いたフェロプトティック細胞死実験によって実証されるように)。特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、水溶液中で調製された蛍光コアシェル型シリカナノ粒子の核生成及び成長に関するこれらの合成的洞察は、バイオイメージング及びナノ医療におけるこのようなナノ粒子の適用に意義を有すると考えられる。
【0128】
表1.図3及び4に示すサンプルのFCS分析の結果をまとめた表。
【表1】
【0129】
1つ以上の特定の実施形態及び/又は実施例を参照して本開示を説明してきたが、本開示の他の実施形態及び/又は実施例が、本開示の範囲を逸脱することなく可能であることが理解される。
図1
図2ab
図2cd
図3abc
図3def
図3ghi
図3jkl
図4
図5abc
図5def
図5ghi
図5jkl
図6
図7
【国際調査報告】