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▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(54)【発明の名称】光学フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20221227BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20221227BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221227BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02B5/04 A
B32B7/023
B32B3/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525965
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 IB2020060374
(87)【国際公開番号】W WO2021090207
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/932,643
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リウ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】プァム,トリ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ボイッド,ガリー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シュミッドット,ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,カレブ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,オウェン エム.
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA10
2H042BA12
2H042BA14
2H042CA13
4F100AA01E
4F100AA19E
4F100AA20E
4F100AA21E
4F100AD11B
4F100AD11H
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK25B
4F100AK42B
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA13B
4F100DC21B
4F100DC21D
4F100DC22B
4F100DC22D
4F100DC23B
4F100DC23D
4F100DC27B
4F100DC27D
4F100DD04D
4F100DD06B
4F100DE01B
4F100DE01H
4F100EH46E
4F100EH66E
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4F100EJ52
4F100GB41
4F100JB12C
4F100JD08B
4F100JD08D
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4F100JD14D
4F100JN01
4F100JN01C
4F100JN18B
4F100JN18C
4F100YY00C
(57)【要約】
光学フィルムは、構造化フィルムと、構造化フィルム上に形成された光制御フィルムとを含む。構造化フィルムは、基材と、基材の主表面上に形成された複数のポリマー微細構造とを含む。各微細構造は、光学ファセットと、微細構造のリッジにおいて光学ファセットと交わる側壁とを含む。光制御フィルムは、複数のポリマー微細構造上に配置され、かつ複数のポリマー微細構造を覆う光学的透明材料と、構造化フィルムの反対側の光学的透明材料内に形成された複数の光学的吸収ルーバとを含む。ルーバは、長手方向に沿って延び、かつ直交する横断方向に沿って間隔をあけられている。ルーバは、光学的透明材料内へと平均深さDを有し、横断方向に平均幅Wを有する。D/Wは、2超であり得る。光学フィルムは一体的に形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムであって、
基材と、前記基材の主表面上に形成された複数のポリマー微細構造とを含む構造化フィルムであって、各微細構造は、光学ファセットと、前記微細構造のリッジにおいて前記光学ファセットと交わる側壁とを含む、構造化フィルムと、
前記構造化フィルム上に形成された光制御フィルムであって、前記光制御フィルムは、
前記複数のポリマー微細構造上に配置され、かつ前記複数のポリマー微細構造を覆う光学的透明材料と、
前記構造化フィルムの反対側の前記光学的透明材料内に形成された複数の光学的吸収ルーバであって、前記ルーバは、長手方向に沿って延び、かつ直交する横断方向に沿って間隔をあけられ、前記ルーバは、前記光学的透明材料内へと平均深さDを有し、前記横断方向に平均幅Wを有し、D/W>2である、複数の光学的吸収ルーバと、を含む、光制御フィルムと、
を備え、
前記光学フィルムは、一体的に形成されている、光学フィルム。
【請求項2】
前記微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、光学的吸収層が、前記側壁上に配置され、かつ前記側壁を実質的に覆い、前記光学的吸収層は、平均厚さtを有し、100nm<t<1マイクロメートルである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、前記微細構造の前記側壁は、隣接する微細構造のベースから前記微細構造の前記リッジまでの高さHを有し、H/t>15である、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記複数のポリマー微細構造は、無機光学的透明層でコンフォーマルにコーティングされる、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、光学的吸収層が、前記側壁上に配置された前記無機光学的透明層上に配置され、かつ前記無機光学的透明層を実質的に覆う、請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記微細構造の少なくとも前記過半数における各微細構造に対して、第1の層が、前記無機光学的透明層と前記光学的吸収層との間に配置され、前記第1の層は吸光係数k1を有し、前記光学的吸収層は吸光係数k2を有し、k2-k1>0.05である、請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
各微細構造に対して、前記微細構造の前記リッジは、前記光学フィルムの長さの少なくとも過半にわたって前記長手方向に沿って延びている、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記複数のポリマー微細構造における各微細構造は、前記光学ファセットと前記側壁との間に実質的に同じ角度を有する線形プリズムである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記複数のポリマー微細構造における各微細構造は、線形フレネル要素である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記複数のポリマー微細構造は屈折率n1を有し、前記光学的透明材料は屈折率n2を有し、n1-n2>0.05である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項11】
第2の基材にラミネートされた請求項1に記載の光学フィルムを含む光学積層体であって、前記光制御フィルムは、前記第2の基材に面している、光学積層体。
【請求項12】
光学フィルムを作製する方法であって、
基材と、前記基材の主表面上に形成された複数のポリマー微細構造とを含む構造化フィルムを提供することであって、各微細構造は、光学ファセットと、前記微細構造のリッジにおいて前記光学ファセットと交わる側壁とを含む、提供することと、
前記構造化フィルム上に光制御フィルムを形成することであって、前記光制御フィルムは、
前記複数のポリマー微細構造上に配置され、かつ前記複数のポリマー微細構造を覆う光学的透明材料と、
前記構造化フィルムの反対側の前記光学的透明材料内に形成された複数の光学的吸収ルーバであって、前記ルーバは、長手方向に沿って延び、かつ直交する横断方向に沿って間隔をあけられ、前記ルーバは、前記光学的透明材料内へと平均深さDを有し、前記横断方向に平均幅Wを有し、D/W>2である、複数の光学的吸収ルーバと、を含む、形成することと、
を含み、
前記構造化フィルム上に前記光制御フィルムを形成することは、前記複数のポリマー微細構造上に樹脂を配置し、前記樹脂を硬化させて前記光学的透明材料を提供することを含む、方法。
【請求項13】
前記樹脂を硬化させることは、前記樹脂が構造化ツール表面と接触している間に前記樹脂を少なくとも部分的に硬化させることを含み、前記構造化フィルムの反対側の前記光学的透明材料内に複数の実質的に平行な溝が形成され、前記方法は、前記溝を光学的吸収材料で少なくとも部分的に充填して、前記複数の光学的吸収ルーバを提供することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記提供するステップと前記形成するステップとの間に、
前記複数のポリマー微細構造上に光学的吸収層を配置することと、
前記光学ファセットから前記光学的吸収層を除去することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記光学的吸収層を配置するステップの前に、前記複数のポリマー微細構造上に無機光学的透明層を配置することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光制御フィルムは、交互の光学的透過領域及び光学的吸収領域を含むことができ、フィルムを透過した光の指向性を調整するために使用することができる。
【0002】
プリズムフィルムは、光を方向転換するために使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの態様では、本開示は、構造化フィルムと、構造化フィルム上に形成された光制御フィルムとを含む光学フィルムを提供する。構造化フィルムは、基材と、基材の主表面上に形成された複数のポリマー微細構造とを含む。各微細構造は、光学ファセットと、微細構造のリッジにおいて光学ファセットと交わる側壁とを含む。光制御フィルムは、複数のポリマー微細構造上に配置され、かつ複数のポリマー微細構造を覆う光学的透明材料と、構造化フィルムの反対側の光学的透明材料内に形成された複数の光学的吸収ルーバとを含む。ルーバは、長手方向に沿って延び、かつ直交する横断方向に沿って間隔をあけられている。ルーバは、光学的透明材料内へと平均深さDを有し、横断方向に平均幅Wを有する。D/Wは、2超であり得る。光学フィルムは、一体的に形成されている。
【0004】
いくつかの態様では、本開示は、光学フィルムを作製する方法を提供する。この方法は、基材と、基材の主表面上に形成された複数のポリマー微細構造とを含む構造化フィルムを提供することと、構造化フィルム上に光制御フィルムを形成することと、を含む。各微細構造は、光学ファセットと、微細構造のリッジにおいて光学ファセットと交わる側壁とを含む。光制御フィルムは、複数のポリマー微細構造上に配置され、かつ複数のポリマー微細構造を覆う光学的透明材料と、構造化フィルムの反対側の光学的透明材料内に形成された複数の光学的吸収ルーバとを含む。ルーバは、長手方向に沿って延び、かつ直交する横断方向に沿って間隔をあけられている。ルーバは、光学的透明材料内へと平均深さDを有し、横断方向に平均幅Wを有する。D/Wは、2超であり得る。構造化フィルム上に光制御フィルムを形成することは、複数のポリマー微細構造上に樹脂を配置し、その樹脂を硬化させて光学的透明材料を提供することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】光学フィルムの概略断面図である。
図2】構造化フィルムの概略断面図である。
図3】構造化フィルムの構造化表面の概略平面図である。
図4】光制御フィルムの概略平面図である。
図5A】光制御フィルムの概略断面図である。
図5B】光制御フィルムの概略断面図である。
図6】光学積層体の概略断面図である。
図7】構造化フィルムの一部分の概略断面図である。
図8】構造化フィルムの一部分の概略断面図である。
図9】構造化フィルムの一部分の概略断面図である。
図10】構造化フィルムの一部分の概略断面図である。
図11】構造化フィルムの一部分の概略断面図である。
図12】構造化フィルムの一部分の概略断面図である。
図13】微細構造の概略断面図である。
図14】微細構造の概略断面図である。
図15】微細構造の概略断面図である。
図16】平均偏差表面粗さの概略図である。
図17】光学フィルムを作製する方法のステップの概略図である。
図18】光学フィルムを作製する方法のステップの概略図である。
図19】光学フィルムを作製する方法のステップの概略図である。
図20】光学フィルムを作製する方法のステップの概略図である。
図21】光学フィルムを作製する方法のステップの概略図である。
図22】光学フィルムを作製する方法のステップの概略図である。
図23】光学フィルムを作製する方法のステップの概略図である。
図24】構造化フィルムを作製する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の説明では、本明細書の一部を形成し様々な実施形態が例示として示されている添付図面が参照される。図面は、必ずしも実際の縮尺ではない。他の実施形態が想到され、本明細書の範囲又は趣旨から逸脱することなく実施されてもよい点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、一体的に形成された光学フィルムは、光制御フィルムと、光制御フィルムに面している埋め込まれた光偏向素子(例えば、構造化フィルムの微細構造)と、を含む。光制御フィルムは、光学フィルムの光制御フィルム側に入射する光が、その光が光偏向素子に入射する前に、ルーバによって部分的にコリメートされるように配置された光学的吸収ルーバを含み得る。次いで、光偏向素子は、部分的にコリメートされた光の方向を変更することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、光制御フィルムは、国際公開第2019/118685号(Schmidtら)に全般的に記載されているように、高アスペクト比ルーバを利用する。いくつかの実施形態では、ルーバは、光学的吸収コア層と、コア層の片側又は両側上に配置されたクラッド層(単数又は複数)とを含む。高アスペクト比ルーバは、好ましくは、薄い層の光を効率的に吸収するために、比較的高い吸光係数を有する。高い吸光係数により、光制御フィルムの透過領域との反射性金属様界面を生成することができる。例えば、高い吸光係数のコアの両側上にクラッド層を追加することにより、ルーバの反射率が低減し、それによって光制御フィルムを通る角度の光漏れが低減されることが見いだされた。
【0009】
いくつかの実施形態では、光学フィルムは、光学ファセット及び側壁を有する複数の微細構造(すなわち、幅及び高さが1mm未満かつ100nm超などの、直交する少なくとも2つの寸法を有する構造)であり得る光偏向素子を含む構造化フィルムを含む。場合によっては、側壁上に光学的吸収材料を含めることは、これにより、そうでなければいくつかの用途において他の方法で発生するであろう、側壁によって引き起こされる光の望ましくない方向転換を低減することが見いだされたので望ましい。薄い光学的吸収層を利用することにより、光学的吸収層の望ましくない影響(例えば、透過されることが望ましい、層の端部に入射する光を遮断すること)を減少させることが見いだされた。光学的吸収層が薄い場合、光を効率的に吸収するために、比較的高い吸光係数を有することが好ましい。高い吸光係数により、(例えば、光学的吸収ルーバと光学的透明材料との間の反射界面と同様に)側壁との反射界面を生成することができる。高い吸光係数の吸収層と側壁との間にクラッド層を追加することにより、反射率を低減し、それによって側壁による望ましくない光の方向転換を低減することができることが見いだされた。クラッド層は、代替的又は追加的に、側壁の反対側の光学的吸収層上に配置され得る。
【0010】
図1は、構造化フィルム101と、構造化フィルム101上に形成された光制御フィルム155とを含む、光学フィルム100の概略断面図である。図2は、構造化フィルム101のいくつかの実施形態の概略断面図である。図3は、構造化フィルム101の構造化表面112の概略平面図である。図4は、光制御フィルム155の概略平面図である。
【0011】
構造化フィルム101は、基材164と、基材164の主表面123上に形成された複数のポリマー微細構造115と、を含み得る。各微細構造115は、光学ファセット117と、微細構造115のリッジ119において光学ファセット117と交わる側壁118とを含む。微細構造は、1mm未満かつ100nm超の幅及び高さなどの直交する少なくとも2つの寸法を有する構造である。構造化フィルム101は、微細構造115を含むポリマー層110を含み得る。
【0012】
光制御フィルム155は、複数のポリマー微細構造115上に配置され、かつ複数のポリマー微細構造115を覆う光学的透明材料150と、構造化フィルム101の反対側の光学的透明材料150内に形成された複数の光学的吸収ルーバ151とを含む。ルーバ151は、長手方向(z方向)に沿って延び、かつ直交する横断方向(x方向)に沿って間隔をあけられている。ルーバ151は、(y方向に沿って)光学的透明材料内へと平均深さD、及び横断方向に平均幅Wを有する。ルーバ151は、主表面(例えば、反対側を向いた主表面113又は520の一方又は両方)に対して実質的に直交する(例えば、直交の30度、又は20度、又は10度、又は5度以内の)方向(y方向)で光学的透明材料150内へと延びることができる。いくつかの実施形態では、D/W>1.5、又はD/W>2、又はD/W>2.5、又はD/W>3である。いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所で更に記載されるように、高アスペクト比ルーバが利用される。いくつかの実施形態では、D/W>10、又はD/W>15、又はD/W>20、又は本明細書の他の箇所に記載される範囲内のいずれか、である。ルーバ151は、ピッチPに配置され、光学的透過領域153と交互になっている。微細構造は、幅W0を有する(例えば、図3を参照)。P及びW0は、ほぼ同じであっても異なっていてもよい。P及びW0は各々、例えば、1マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲にあり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、光学フィルム100は、一体的に形成されている。本明細書で使用するとき、第2の要素と「一体的に形成された」第1の要素とは、第1の要素と第2の要素とが、別個に製造され、次いでその後に接合されるのではなく、一緒に製造されることを意味する。一体的に形成されるとは、第1の要素を製造した後に、続いて第2の要素を第1の要素上に製造することを含む。
【0014】
構造化フィルム101は、光学的透明材料150との界面に、構造化された第1の主表面112を有することができ、反対側の第2の主表面114を有することができる。各微細構造115は、光学ファセット117と、微細構造のリッジ119において光学ファセット117と交わる側壁118とを含む。光学ファセット117及び側壁118は、それらの間に斜角θを画定する。いくつかの実施形態では、斜角θは、少なくとも20度、又は少なくとも30度である。いくつかの実施形態では、斜角θは、80度以下、又は70度以下である。いくつかの実施形態では、複数のポリマー微細構造115における各微細構造は、光学ファセット117と側壁118との間に実質的に同じ角度θを有する線形プリズムである。例えば、光学素子116(例えば、図3を参照)は、線形プリズムであり得る。いくつかの実施形態では、複数のポリマー微細構造115は、フレネルレンズを画定することができる。フレネルレンズは、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第7,701,648号(Amanoら)、並びに例えば、米国特許出願公開第2010/0302654号(Amanoら)及び米国特許出願公開第2012/0204566号(Hartzellら)に記載されている。いくつかの実施形態では、複数のポリマー微細構造115における各微細構造は、線形フレネル要素である。例えば、光学素子116は、線形フレネル要素であり得る。いくつかの実施形態では、各微細構造115に対して、微細構造のリッジ119は、光学フィルムの長さLfの少なくとも過半にわたって長手方向に沿って延びている(例えば、図3を参照)。いくつかの実施形態では、Lf/W0>10又はLf/W0>100である。
【0015】
いくつかの実施形態では、微細構造の少なくとも過半数(例えば、微細構造の全て、又は1つ以上の端部に沿ったものを除く微細構造の全て、又は微細構造の少なくとも80%)における各微細構造115に対して、光学的吸収層152(例えば、図2を参照)は、側壁118上に配置され、かつ側壁118を実質的に覆う(例えば、側壁118の総面積の少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%を覆う)。光学的吸収層152は、100nm<t<2マイクロメートル又は100nm<t<1マイクロメートルである、平均厚さtを有し得る。いくつかの実施形態では、平均厚さtは、500nm未満である。光学的吸収層152は、そうでなければ望ましくない方向に方向転換されるであろう側壁118に入射する光を遮断するように含まれ得る。例えば、光線191及び192は、実質的に同じ方向に沿って構造化フィルム101の第2の主表面114に入射し、光線191は、光線192が側壁によって望ましくない方向に方向転換されることを遮断されている間に、光学ファセットによって所望の方向に屈折される。同様に、光線193及び194は、実質的に同じ方向に沿って第1の主表面112に入射し、光線193は、光線194が側壁によって望ましくない方向に方向転換されることを遮断されている間に、光学ファセットによって所望の方向に屈折される。別の例として、光線291は、光学フィルム100の主表面520に入射し(例えば、図1を参照)、次いで光制御フィルム155を通って透過され、次に微細構造115によって所望の方向に方向転換され、一方、光線292は、ルーバから反射され、側壁118に入射し、それによって、望ましくない方向に方向転換され得る。
【0016】
薄い(例えば、厚さ1マイクロメートル未満の)光学的吸収層を利用することにより、光学的吸収層の望ましくない影響(例えば、透過されることが望ましい、層の端部に入射する光を遮断すること)を低減させることが見いだされた。光学的吸収層が薄い場合、光を効率的に吸収するために、比較的高い吸光係数を有することが好ましい。高い吸光係数により、側壁との反射性金属様界面を生成することができる。高い吸光係数の吸収層と側壁との間、及び/又は吸収層と光学的透明材料150との間にクラッド層(例えば、吸光係数が光学的吸収層よりも小さく、かつ側壁材料よりも大きい層)を追加することにより、反射率を低減し、それによって、側壁による望ましくない光の方向転換を低減できることが見いだされた。薄い光学的吸収層、及び任意選択的にクラッド層は、例えば、構造化表面(例えば、全体)上に層(単数又は複数)を堆積させ、次いで光学ファセットから層を選択的に(例えば、異方性で)エッチングすることにより光学ファセットから層(単数又は複数)を除去することによって、側壁上に形成することができる。
【0017】
薄い光学的吸収層を使用することにより、高アスペクト比がもたらされ得る。いくつかの実施形態では、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、微細構造115aの側壁118は、隣接する微細構造115bのベース185から微細構造のリッジ119までの高さHを有する。いくつかの実施形態では、H/t>10、又はH/t>12、又はH/t>15、又はH/t>18、又はH/t>20である。例えば、いくつかの実施形態では、100>H/t>15である。いくつかの実施形態では、Hは1mm未満である。いくつかの実施形態では、Hは100nm超である。
【0018】
いくつかの実施形態では、光学的吸収層152は省略される。いくつかの実施形態では、拡散層又は(例えば、微細構造115を作製するために使用されるツールにより提供される)粗面化された側壁表面を使用して、側壁に入射する光の任意の望ましくない影響を低減するための拡散を提供することができる。代替的に、拡散は、光学フィルム100の他の層に提供され得る(例えば、基材164は、(例えば弱い)拡散体であり得る)。いくつかの実施形態では、側壁に入射する光の影響は、ポリマー微細構造115と光学的透明材料150との間の屈折率差を増大させることによって低減され、これにより、微細構造115の高さHを低減して所望の光学効果を達成することが可能になる。
【0019】
いくつかの実施形態では、複数のポリマー微細構造115は、屈折率n1を有し、光学的透明材料150は、屈折率n2を有し、n1-n2>0.05、又はn1-n2>0.1、又はn1-n2>0.15である。
【0020】
いくつかの実施形態では、光制御フィルム(LCF)は、国際公開第2019/118685号(Schmidtら)に記載された、高アスペクト比ルーバ(吸収領域)を利用する。簡潔に概要すると、そのようなルーバは、(例えば、構造化フィルム101に対して、及び構造化フィルムの反対側の構造化ツール表面に対して鋳造及び硬化することによって)チャネルとチャネル間の平面状の上面及び底面(例えば、図20に示される上面273及び底面274を参照)とを画定する構造化表面を形成し、少なくとも1つの光学的吸収層(例えば、光学的吸収コア層、及び任意選択的に光学的吸収コア層の両側のうちの1つ上の光学的吸収クラッド層(単数又は複数))で構造化表面をコンフォーマルにコーティングし、チャネルの側壁上に光学的吸収層を残しながら、(例えば、反応性イオンエッチング又はレーザアブレーションによって)平面状の上面及び底面から光学的吸収層を除去し、側壁上の光学的吸収層間のチャネルを光学的透明材料で充填することによって、作製することができる。高アスペクト比ルーバは、好ましくは、薄い層の光を効率的に吸収するために、比較的高い吸光係数を有する。高い吸光係数により、光制御フィルムの透過領域との反射界面を生成することができる。高い吸光係数のコアの片側又は両側上にクラッド層を追加することにより、ルーバの反射率が低減し、それによって高角度の光漏れ及びゴーストが低減されることが見いだされた。
【0021】
図5A図5Bは、光制御フィルム155に対応し得るLCF5100のいくつかの実施形態の概略断面図である。LCF5100は、構造化フィルムの反対側の主表面5120(図5A図5Bには示されていない)を有する。点線5110は、構造化フィルムのリッジ119のレベルを概略的に表し得る。LCF5100は、主表面5120と構造化フィルム(例えば、構造化フィルム101)との間に配置された交互の透過領域5130及び吸収領域5140を含む。吸収領域5140は、コア層5141及びクラッド層5142を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、図5Aに示されるように、透過領域5130は、典型的には、ランド領域Lと一体であり、これは、ランド領域と透過領域5130のベース5131との間に界面が存在しないことを意味する。代替的に、LCFには、そのようなランド領域Lがなくてもよい。
【0023】
透過領域5130は、幅Wによって画定され得る。ランド領域Lを除くと、透過領域5130は、典型的には、吸収領域5140と名目上同じ高さを有する。典型的な実施形態では、吸収領域の高さHは、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、又は100マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、高さは、200、190、180、170、160、又は150マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、高さは、140、130、120、110、又は100マイクロメートル以下である。LCFは、典型的には、名目上同じ高さ及び幅を有する複数の透過領域を含む。いくつかの実施形態では、透過領域は、高さH、その最も広い部分における最大幅W、及び少なくとも1.75のアスペクト比H/Wを有する。いくつかの実施形態では、H/Wは、少なくとも2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0である。他の実施形態では、透過領域のアスペクト比は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。他の実施形態では、透過領域のアスペクト比は、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は50である。
【0024】
吸収領域5140は、底面5155と上面5145との間の距離によって画定される高さHを有し、そのような上面及び底面は、典型的には、表面5120に対して平行である。高さHはまた、光制御フィルム内への吸収領域の深さDと呼ばれ得る。吸収領域5140は、最大幅Wを有し、表面5120に沿ってピッチPだけ間隔をあけられている。
【0025】
ベースにおける(すなわち底面5155に隣接する)吸収領域の幅Wは、典型的には、上面5145に隣接する吸収領域の幅と名目上同じである。しかしながらベースにおける吸収領域の幅が上面に隣接する幅と異なる場合、幅は最大幅によって画定される。複数の吸収領域の最大幅は、透過率(例えば輝度)が測定される面積などの、対象となる面積に対して平均化され得る。LCFは、典型的には、名目上同じ高さ及び幅を有する複数の吸収領域を含む。典型的な実施形態では、吸収領域は、通常、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1マイクロメートル以下の幅を有している。いくつかの実施形態では、吸収領域は、通常、5、4、3、2、又は1マイクロメートル以下の幅を有している。いくつかの実施形態では、吸収領域は、少なくとも150、160、170、180、190、又は200ナノメートルの幅を有している。
【0026】
吸収領域は、1つ以上のクラッド層の間に挟まれたコアを含む。コアは、幅WAcoreを有し、クラッド層は、幅WAcladdingを有する。典型的な実施形態では、コアは、通常、5、4、3、2、又は1マイクロメートル以下の幅を有している。いくつかの実施形態では、コアは、通常、900、800、700、600、500、400、300、又は200ナノメートル以下の幅を有している。いくつかの実施形態では、コアは、少なくとも50、60、70、80、90、又は100ナノメートルの幅を有している。典型的な実施形態では、各クラッド層は、通常、5、4、3、2、又は1マイクロメートル以下の幅を有している。いくつかの実施形態では、各クラッド層は、通常、900、800、700、600、500、400、300、又は200ナノメートル以下の幅を有している。いくつかの実施形態では、各クラッド層は、少なくとも50、60、70、80、90、又は100ナノメートルの幅を有している。
【0027】
吸収領域は、吸収領域の高さを吸収領域の最大幅で割ったアスペクト比(H/W)によって画定され得る。いくつかの実施形態では、吸収領域のアスペクト比は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。好ましい実施形態では、吸収領域の高さ及び幅は、吸収領域が更に高いアスペクト比を有するように選択される。いくつかの実施形態では、吸収領域のアスペクト比は、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100である。他の実施形態では、吸収領域のアスペクト比は、少なくとも200、300、400、又は500である。アスペクト比は、最大10,000以上の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、アスペクト比は、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,000、3000、2,000、又は1,000以下である。
【0028】
図5Bに示されるように、LCF5100は、交互の透過領域5130並びにコア層5141及びクラッド層5142を含む吸収領域5140と、透過領域5130と吸収領域5140との間の界面5150とを含む。界面5150は、表面5120に対して垂直である線5160と壁角度θwをなしている。
【0029】
壁角度θwが大きくなるほど、垂直入射角、言い換えると0度の視野角における透過率が小さくなる。垂直入射における光の透過率を可能な限り大きくすることができるように、より小さい壁角度が好ましい。いくつかの実施形態では、壁角度θwは、10、9、8、7、6、又は5度未満である。いくつかの実施形態では、壁角度は、2.5、2.0、1.5、1.0、0.5、又は0.1度以下である。いくつかの実施形態では、壁角度はゼロであるか、又はゼロに近づく。壁角度がゼロである場合、吸収領域と表面5120との間の角度は90度である。透過領域は、壁角度に応じて、長方形又は台形の断面を有することができる。
【0030】
入射光が吸収領域と透過領域との間の界面から内部全反射(total internal reflection、TIR)すると、透過率(例えば可視光の輝度[brightness])を高くすることができる。光線がTIRすることになるか否かは、界面との入射角、並びに透過領域及び吸収領域の材料の屈折率の差から判定することができる。
【0031】
図5Bに示されるように、吸収領域5140間の透過領域5130は、交互の透過領域5130及び吸収領域の幾何学構造によって画定される界面角度θを有する。図5A及び図5Bに示されるように、界面角度θは、2本の線の交点によって画定され得る。第1の線は、第1の吸収領域の底面及び側壁表面によって画定される第1の点、及び最も近い第2の吸収領域の上面及び側壁表面によって画定される第2の点から延びている。第2の線は、第1の吸収領域の上面及び側壁表面によって画定される第1の点、及び第2の吸収領域の底面及び側壁表面によって画定される第2の点から延びている。
【0032】
極性遮断視野角θPは、極性遮断視野半角θ1と極性遮断視野半角θ2の合計に等しく、これらの各々は、表面5120に対する法線から測定される。典型的な実施形態では、極性遮断視野角θPは対称であり、極性遮断視野半角θ1は極性視野半角θ2に等しい。代替的に、極性遮断視野角θPは非対称であってもよく、極性遮断視野半角θ1は極性遮断視野半角θ2に等しくない。
【0033】
図1に戻ると、光学フィルム100は、光制御フィルム155の代わりに光制御フィルム5100を含むことができる。
【0034】
一体的に形成され得る光学フィルム100は、別々に形成され、かつ、その後接合される1つ以上の構成要素から形成され得る、光学積層体に含まれ得る。例えば、光学積層体は、1つ以上の追加の層に接合された光学フィルム100を含むことができる。図6は、光制御フィルム155が第2の基材161に面面している、第2の基材161にラミネートされた光学フィルム100を含む光学積層体105の概略断面図である。
【0035】
いくつかの実施形態では、構造化フィルム101は、無機光学的透明層157(例えば、図8を参照)で少なくとも部分的にコーティングされた(例えば、コンフォーマルにコーティングされた)微細構造化表面168を含むポリマー層110を含む。ポリマー層は、有機ポリマーの連続相を含む層である。ポリマー層はまた、例えば、有機ポリマーの連続相に分散された無機ナノ粒子を含み得る。ナノ粒子は、例えば、層の屈折率を増大させるために含まれ得る。無機光学的透明層157は、反対側を向いた第1の主表面167及び第2の主表面166を含むことができ、第2の主表面166は、ポリマー層110に面している。無機光学的透明層157の第1の主表面167は、構造化フィルム101の第1の主表面112の少なくとも過半を占め得る。例えば、ポリマー層110の表面168は、第1の主表面167が実質的に全ての第1の主表面112を含むように、実質的に完全に(例えば、ほとんどの端部領域を全て除いて)無機光学的透明層157でコンフォーマルにコーティングされた主表面であり得る(例えば、構造化フィルム101の第1の主表面112は、無機光学的透明層157の第1の主表面167であり得る)。いくつかの実施形態では、無機光学的透明層157の第1の主表面167は、構造化フィルム101の第1の主表面112の側壁部分を含む。
【0036】
本明細書の他の箇所で更に説明されるように、無機光学的透明層は、光学ファセットから光学的吸収層及び/又は他の層を除去するためのプロセスにおけるエッチングストップとして使用され得る。無機光学的透明層に好適な材料には、例えば、a-Si、SiOx、SiAlOx、SiCyOx、TiO、及びAlOxが含まれる。層は、例えば、垂直入射可視光の60%超が層を通って透過される、十分な薄さであり得る。層が、空気中においてその層に垂直入射する可視光(400nm~700nmの波長)の、少なくとも60%である平均光透過率(非偏光の波長に対して重み付けされていない平均)を有する場合、その層は、光学的に透明であると見なすことができる。いくつかの実施形態では、無機光学的透明層の平均光透過率は、60%超、又は70%超、又は80%超、又は85%超、又は90%超である。
【0037】
ポリマー層110は、ポリマー基材であり得る基材164上に形成されたポリマー構造化層163を含み得る。代替的に、ポリマー層は、ポリマー基材上又は非ポリマー基材(例えば、ガラス基材)上に形成され得るポリマー構造化層163を指すことができる。ポリマー構造化層163は、当該技術分野で既知であるように、鋳造及び硬化プロセスを使用して基材164上に形成され得る(例えば、米国特許出願公開第2006/0114569号(Capaldoら)、並びに米国特許第5,175,030号(Luら)及び米国特許第5,183,597(Lu)を参照)。ポリマー構造化層163を作製するための他の方法には、押出、機械加工、及びエンボス加工が含まれる。任意の好適な材料を使用することができる。例えば、アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)を、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)基材上に鋳造及び硬化することができる。
【0038】
例えば、図1及び図8に示される実施形態では、ポリマー層110は、基材164に面している主表面113を有する。いくつかの実施形態では、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、微細構造の側壁118は、微細構造化表面168の反対側のポリマー層110の主表面114又は113に対して実質的に垂直(例えば、垂直の30度、又は20度、又は10度、又は5度以内)である。いくつかの実施形態では、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、微細構造の側壁118は、微細構造のベース185と角度φをなし、φは、例えば、80度~90度又は85度~90度の範囲内である(例えば、図2及び図13図15を参照)。いくつかの実施形態では、φは、例えば、製造上の制約により、90度未満(例えば、85~89.5度)である。
【0039】
図7は、構造化フィルムの(例えば、構造化フィルム101に対応する)一部分の概略断面図である。いくつかの実施形態では、微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、第1の層154は、側壁118と光学的吸収層152との間に配置される。クラッド層と呼ばれ得る第1の層154は、側壁と光学的吸収層152との間の界面における光の反射を低減するために含まれ得る。いくつかの実施形態では、第1の層154は、吸光係数k1を有し、光学的吸収層152は、吸光係数k2を有する。いくつかの実施形態では、k2>k1である。いくつかの実施形態では、複数のポリマー微細構造は、吸光係数k0<0.05を有する。いくつかの実施形態では、k2>k1>k0である。いくつかの実施形態では、k2-k1は、0.05超、0.1超、0.15超、又は0.2超である。いくつかの実施形態では、k2-k1は、1未満、又は0.8未満、又は0.5未満である。いくつかの実施形態では、k1-k0は、0.001超、0.005超、又は0.01超である。いくつかの実施形態では、k1-k0は、0.15未満、又は0.1未満、又は0.05未満である。いくつかの実施形態では、k0は、0.01未満、又は0.005未満、又は0.002未満である。いくつかの実施形態では、k1は、0.005~0.15、又は0.01~0.1の範囲内である。いくつかの実施形態では、k2は、0.1~0.5、又は0.2~0.4の範囲内である。いくつかの実施形態では、k1<0.5×k2である。いくつかの実施形態では、0.005<k1<0.5×k2である。他の実施形態では、第1の層154は、側壁118の反対側の光学的吸収層152上に配置される。
【0040】
同様に、いくつかの実施形態では、クラッド層(単数又は複数)5142は、吸光係数k1’を有し、光学的吸収コア層5141は、吸光係数k2’を有し、k1’及びk2’は、k1及びk2についてそれぞれ上述した範囲内のいずれかにあり得る。
【0041】
吸光係数に関して第1の層154及び光学的吸収層152、又はクラッド層(単数又は複数)5141及びコア層5141について説明する代わりに、又はそれに加えて、それらの層は、本明細書の他の箇所で更に説明されるように、光学的吸収材料の濃度に関して説明され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、光学的吸収層152は、屈折率n1’を有し、第1の層154は、屈折率n2’を有し、|n1’-n2’|は0.5未満、又は0.3未満、又は0.2未満、又は0.1未満である。同様に、コア層5141とクラッド層(単数又は複数)5141との屈折率の差の絶対値は、これらの範囲内のいずれかであり得る。
【0043】
吸光係数は、複屈折率の虚部として表すことができ、屈折率は、複屈折率の実部として表すことができる。吸光係数及び屈折率は、別途示されている場合を除いて、550nmの波長で評価されると理解され得る。
【0044】
例えば、薄膜コーティングの吸光係数kは、例えばエリプソメトリ又は分光法のいずれかによって判定することができ、例えば、kはαλ/(4π)として表すことができ、αは吸収係数であり、λは波長である。透明基材上の薄膜コーティングの場合、分光法を使用して、吸収率Aを100%-T-Rとして測定することができ、Tは透過率であり、Rは反射率である。測定されたAを基材のAについて適宜補正して、薄膜自体のAを得ることができる。次いで、結果であるAを使用して、式α=-ln[(100%-A)/100%]/hに従ってαを判定することができ、hは、薄膜コーティングの厚さであり、αに関するこの式は、Rが比較的小さくかつAが比較的大きい場合に使用される近似式である。厚さhは、例えば、スタイラスプロフィロメトリ又は断面走査型電子顕微鏡法によって測定することができる。
【0045】
光学的吸収層152用の、及び/又は第1の層154用の、及び/又は第2の層156用の、及び/又はクラッド層5142用の、及び/又は光学的吸収コア層5141用の、光吸収材料は、染料、顔料、又は粒子(例えば、ナノ粒子)のうちの1つ以上であり得る。好適な光吸収材料には、カーボンブラックナノ顔料、及びCAB-O-JETの商品名でCabot Corporation(Boston,MA)から入手可能なものなどの他のナノ顔料が含まれる。他の好適な光吸収材料には、国際公開第2019/118685号(Schmidtら)に記載されているものが含まれる。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の層154は、濃度C1の光吸収材料184を有し、光学的吸収層152は、濃度C2の光吸収材料182を有し、C2>C1である。いくつかの実施形態では、C1<0.7×C2又はC1<0.5×C2である。同様に、いくつかの実施形態では、クラッド層(単数又は複数)5142は、光吸収材料184の濃度C1’を有し、光学的吸収コア層5141は、光吸収材料182の濃度C2’を有し、C2’>C1’である。いくつかの実施形態では、C1’<0.7×C2’又はC1’<0.5×C2’である。
【0047】
光学的吸収層又はコア層内の光吸収材料(例えば、光吸収ナノ粒子)の濃度は、光学的吸収層又はコア層の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、又は50重量%であり得る。いくつかの実施形態では、光学的吸収層(それぞれコア層)内の光吸収材料の濃度は、光学的吸収層(それぞれコア層)の少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、又は95重量%である。いくつかの実施形態では、光学的吸収層又はコア層内の光吸収材料の濃度は、100重量%である。いくつかの実施形態では、光学的吸収層(それぞれコア層)内の光吸収材料の濃度は、光学的吸収層(それぞれコア層)の30~100重量%又は75~90重量%である。
【0048】
第1の層(それぞれクラッド層)内の光吸収材料の濃度は、好ましくは、光学的吸収層(それぞれコア層)内の光吸収材料の濃度よりも低い。第1の層(それぞれクラッド層)内の光吸収材料の濃度は、典型的には、第1の層(それぞれクラッド層)の少なくとも0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、又は45重量%である。いくつかの実施形態では、第1の層(それぞれクラッド層)内の光吸収材料の濃度は、第1の層(それぞれクラッド層)の20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、又は75重量%以下である。いくつかの実施形態では、第1の層(又はクラッド層)内の光吸収材料の濃度は、第1の層(それぞれクラッド層)の0.5~50重量%又は25~45重量%である。
【0049】
図8図12は、(例えば、構造化フィルム101に対応する)構造化フィルムの一部分の概略断面図である。いくつかの実施形態では、図8に概略的に示されるように、例えば、複数のポリマー微細構造115は、無機光学的透明層157でコンフォーマルにコーティングされている。いくつかの実施形態では、図9に概略的に示されるように、例えば、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、光学的吸収層152は、側壁118上に配置された無機光学的透明層157上に配置され、かつ無機光学的透明層157を実質的に覆う。いくつかの実施形態では、図10に概略的に示されるように、例えば、微細構造115における少なくとも過半数における各微細構造に対して、第1の層154は、側壁118と光学的吸収層152との間に配置される。いくつかの実施形態では、他の箇所で更に説明されるように、第1の層154は、吸光係数k1を有し、光学的吸収層152は、吸光係数k2を有し、k2-k1>0.05である。いくつかの実施形態では、図9に概略的に示されるように、例えば、第1の層154は省略される。いくつかの実施形態では、図11に概略的に示されるように、例えば、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、第2の層156は、側壁118の反対側又は第1の層154の反対側の光学的吸収層152上に配置される。第2の層156は、例えば、保護層及び/又は反射防止層であり得る。第2の層156は、第1の層154について全般的に説明されたものと同様であり得る(例えば、第1の層154について記載された範囲内の光学的吸収材料の平均厚さ及び/又は吸光係数及び/又は濃度を有する)。いくつかの実施形態では、第2の層156が含まれ、第1の層154は省略される。無機光学的透明層157は、任意選択的に省略され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、図12に概略的に示されるように、例えば、微細構造化表面168は、無機光学的透明層157で部分的にのみ(例えば、側壁上にのみ)コーティングされる。例えば、無機光学的透明層は、微細構造化表面168上にコンフォーマルにコーティングされ、次いで、光学ファセットから除去され(又は少なくとも部分的に除去され)得る。図8図11に示される実施形態のいずれかでは、無機光学的透明層157は、任意選択的に、例えば、光学ファセットから除去又は部分的に除去され得る(例えば、薄い層が残り得る)。いくつかの実施形態では、構造化フィルムの第1の主表面112は、無機光学的透明層157の主表面(例えば、複数の側壁118の表面167)を含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、無機光学的透明層157は、以下のように、光学的吸収層などの他の層(単数又は複数)と共に側壁上に提供され得る。無機光学的透明層は、微細構造化ポリマー層上にコンフォーマルにコーティングされ得、光学的吸収層(及び任意選択的に他の層)は、無機光学的透明層上にコンフォーマルにコーティングされ得、光学的吸収層(及び任意選択的に他の層)は、第1のエッチングステップにおいて光学ファセットから除去され得、次いで、無機光学的透明層は、第2のエッチングステップにおいて光学ファセットから除去又は部分的に除去され得る。第1及び第2のエッチングステップは、例えば、対応するエッチングステップにおいて所望の層(単数又は複数)を除去するために、異なるエッチャント(例えば、第1のエッチングステップ用の酸素のみのプラズマ、及び第2のエッチングステップ用のフッ素化ガス又は他のハロゲン化ガス)を利用することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、第1の層154は、平均厚さt1を有し、光学的吸収層152は、平均厚さt2を有する。いくつかの実施形態では、t1及びt2は各々、100nm超かつ2マイクロメートル未満又は1マイクロメートル未満又は500nm未満である。いくつかの実施形態では、t1及びt2は各々、500nm未満である。いくつかの実施形態では、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、微細構造の側壁118は、隣接する微細構造のベースから微細構造のリッジ119までの高さHを有する。いくつかの実施形態では、H/t1>10、又はH/t1>12、又はH/t1>15、又はH/t1>18、又はH/t1>20である。いくつかの実施形態では、H/t1<100である。いくつかの実施形態では、H/t2>10、又はH/t2>12、又はH/t2>15、又はH/t2>18、又はH/t2>20である。いくつかの実施形態では、H/t2<100である。例えば、いくつかの実施形態では、H/t1>15かつH/t2>15である。
【0053】
いくつかの実施形態では、微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、光学ファセット117は、(例えば、典型的な従来のフレネルレンズ、又は典型的な従来の光方向転換プリズムのように)平面状である。図13は、微細構造の側壁218が微細構造のベース285と角度φをなす平面状の光学ファセット217を備えた微細構造の概略図である。他の実施形態では、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、光学ファセット117は湾曲している。例えば、ファセットは、例えば、米国法定発明登録番号H423(Mohonら)に記載されているように、様々な光学特性を調整するように湾曲していてもよい。光学ファセット117は、例えば、(側壁218に向かって、及び/又はベース285に向かって、及び/又は主表面114に向かって凹状に(例えば、図1を参照))湾曲した光学ファセット317について図14に概略的に示されるように、あるいは(側壁218に向かって、及び/又はベース285に向かって、及び/又は主表面114に向かって凸状に)湾曲した光学ファセット417について図15に概略的に示されるように、湾曲していてもよい。図13図15における角度φは、他の箇所で説明されるように(例えば、85~90度の範囲内)であり得る。
【0054】
図16は、光学ファセットの表面であり得る表面517の平均偏差表面粗さRaの概略図である。平均偏差表面粗さRaは、平均表面高さからの表面高さの偏差の絶対値の平均(例えば、ファセットを通る断面(例えば、ファセットの長さに直交する断面)における長さにわたる平均、若しくはファセットの面積にわたる平均)である。湾曲したファセットの場合、表面高さの偏差は、平均又は名目曲面に対して定義され得る。いくつかの実施形態では、微細構造115の少なくとも過半数における各微細構造に対して、光学ファセット117は、平均偏差表面粗さRa<250nmを有する。いくつかの実施形態では、Raは、200nm未満、150nm未満、100nm未満、70nm未満、50nm未満、30nm未満、又は20nm未満である。いくつかの実施形態では、Raは、50nm超、70nm超、90nm超である。例えば、いくつかの実施形態では、50nm<Ra<200nm、又は70nm<Ra<200nmである。いくつかの用途では、光学ファセット117が光学的に平滑(例えば、Ra<50nm)であることが望ましい。他の用途では、ある程度の表面粗さ(例えば、50nm<Ra<250nm又は90nm<Ra<200nm)が望ましい場合がある。例えば、反射防止用に、(例えば、弱い)光学拡散を提供するために、及び/又は結合を改善するために、ある程度の表面粗さを有することが有用であり得る。国際公開第2019/118685号(Schmidtら)に記載されたプロセスを使用して光学的吸収層を堆積し、かつ傾斜したファセットから除去することで、たとえ水平ファセットに適用された同じプロセスが低い表面粗さをもたらす場合でも、多くの用途に対して所望なものよりも高い表面粗さ(例えば、300nm超又は400nm超のRa)が得られる。しかしながら、例えば、反応性イオンエッチングプロセスにおいて光学ファセットがプラズマに曝露される時間を注意深く制御することによって、表面粗さ(例えば、Ra)を(例えば、250nm未満又は200nm未満まで)低減できることが見いだされた。更に、光学的吸収層(及び/又は他の層)を適用する前にエッチングストップとして無機光学的透明層を適用することにより、たとえエッチング時間が長い場合でも、表面粗さを更に低減し、光学的に平滑な光学ファセット(例えば、Ra<50nm)を得ることができることが見いだされた。二乗平均平方根表面粗さRqもまた判定することができ、二乗平均平方根表面粗さRqは、Raについて記載された範囲内のいずれかにあり得る。
【0055】
表面粗さは、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)、スタイラスプロフィロメトリ、又は光学プロフィロメトリによって測定されてプロファイリングされた表面から判定することができる。AFMは、典型的には、小さい表面粗さ(例えば、50nm未満)に好ましい。
【0056】
無機光学的透明層、第1の層(例えば、クラッド層)、光学的吸収層、及び/又は第2の層(例えば、保護層)は、任意の好適な堆積技術を使用して(例えば、構造化表面全体にわたるコンフォーマルなコーティングとして)堆積させることができる。同様に、光制御フィルムを作製する際に、クラッド層(単数又は複数)5142及び光学的吸収コア層5141を、任意の好適な堆積技術を使用して堆積させることができる。例えば、レイヤバイレイヤ(layer-by-layer、LbL)コーティング、化学蒸着(CVD)、スパッタリング、反応性スパッタリング、及び原子層堆積(atomic layer deposition、ALD)を含む様々なコーティング方法を使用することができる。堆積された層のうちの少なくともいくつか(例えば、層の全て、又は任意選択の無機光学的透明層を除く層の全て)は、その後、光学ファセットから実質的に除去され得る(例えば、少なくとも、光学ファセット上に残っている堆積された層のうちの少なくともいくつかのうちの任意の材料が光学性能に有意に影響しない範囲で除去され得る)。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1の層及び光学的吸収層のうちの少なくとも1つ、あるいはクラッド層及びコア層のうちの少なくとも1つは、「レイヤバイレイヤ自己集合プロセス」と一般に呼ばれるものによって堆積された少なくとも2つの二分子層を含む。このプロセスは、逆極性に帯電した高分子電解質のフィルム又はコーティングを静電的に集合させるために広く使用されているが、水素結合ドナー/アクセプタ、金属イオン/リガンド、及び共有結合部分などの他の官能基を、フィルムを集合させるための駆動力とすることができる。好適なプロセスのいくつかの例は、米国特許第8,234,998号(Krogmanら)及び米国特許第8,313,798号(Nogueiraら)、米国特許出願公開第2011/0064936号(Hammond-Cunninghamら)、及び国際公開第2019/118685号(Schmidtら)に記載されたものが含まれる。レイヤバイレイヤディップコーティングは、例えば、StratoSequence VI(nanoStrata Inc.,Tallahassee,FL)ディップコーティングロボットを使用して実施することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、レイヤバイレイヤ自己集合によって堆積された複数の二分子層は、有機ポリマーポリイオン(例えば陽イオン)と、光吸収材料(例えば顔料)を含む対イオン(例えば陰イオン)とを含む、高分子電解質積層体である。陽イオン層、陰イオン層又はそれらの組合せの少なくとも一部は、高分子電解質にイオン結合された光吸収材料(例えば顔料)を含み得る。光吸収化合物は、高分子電解質層の少なくとも一部分内に分散され得る。シリカ又はケイ酸塩、並びに様々なホスホノカルボン酸及びその塩(その一部は、米国特許第10,365,415号(Schmidt)に記載されている)などの無機化合物を含む、様々な高分子電解質を利用することができる。
【0059】
二分子層の厚さ及び二分子層の数は、所望の光学特性(例えば、光学的吸収層の場合には光学的吸収率、又は第1の層の場合には側壁と光学的吸収層との間の低減された反射率)を達成するように選択することができる。いくつかの実施形態では、二分子層の厚さ、及び/又は二分子層の数は、自己集合層の最小の総厚、及び/又は最小数のレイヤバイレイヤ堆積ステップを使用して所望の光学特性を達成するように選択される。個々の二分子層の厚さは、典型的には約5nm~350nmの範囲である。二分子層の数は、典型的には少なくとも5、6、7、8、9、又は10である。いくつかの実施形態では、スタック当たりの二分子層の数は、150以下又は100以下である。最終物品中の個々の二分子層は、走査型電子顕微鏡法(scanning electron microscopy、SEM)又は透過型電子顕微鏡法(transmission electron microscopy、TEM)などの当該技術分野における一般的な方法によって互いに区別可能でなくてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、二分子の厚さ及び二分子の総数は、第1の層及び光学的吸収層の総厚が2マイクロメートル未満になるように選択される。
【0060】
光学的吸収層、並びに任意選択的に第1の層及び/若しくは第2の層、並びに/又は無機光学的透明層をフィルムの(例えば全)微細構造化表面に適用し乾燥させた後、光学的吸収層並びに第1の層及び第2の層は、存在する場合、光学ファセットから除去され、また、隣接する微細構造間のランド領域から除去され得る。エッチングストップとして機能し得る無機光学的透明層は、典型的には除去されないが、任意選択的に、その後のエッチングステップで除去され得る。同様に、コア層及び/又はクラッド層は、光制御フィルムを作製するために使用される構造化表面の上面から除去され得る。
【0061】
任意の好適な方法を使用して、光学ファセット又は上面から層(単数又は複数)を選択的に除去することができる。いくつかの実施形態では、層(単数又は複数)は、反応性イオンエッチングによって除去される。反応性イオンエッチング(Reactive ion etching、RIE)は、イオン衝撃を利用して材料を除去する指向性エッチングプロセスである。RIEシステムを使用して、イオン衝撃の方向で表面をエッチングすることによって、有機材料又は無機材料が除去される。反応性イオンエッチングと等方性プラズマエッチングの間の最も顕著な相異はエッチング方向である。反応性イオンエッチングは、1より大きい、横方向エッチング速度に対する垂直方向エッチング速度の比率によって特徴付けられる。反応性イオンエッチング用のシステムは、典型的には、耐久性のある真空チャンバの周囲に構築される。エッチングプロセスを開始する前に、典型的には、1トル未満、100ミリトル未満、20ミリトル未満、10ミリトル未満、又は1ミリトル未満のベース圧力までチャンバが排気される。典型的に、電極は、処理される材料を保持し、真空チャンバから電気的に絶縁されている。電極は、円筒形状の回転可能電極であってもよい。典型的に、対向電極もまた、チャンバ内に提供され、対向電極は、真空反応器壁を含み得る。エッチャントを含むガスは、典型的には、制御弁を通ってチャンバに入る。プロセス圧力は、真空ポンプを介してチャンバガスを連続的に排気することによって維持され得る。使用されるガスのタイプは、エッチングプロセスに応じて変化する。エッチャントには、例えば、酸素、フッ素化ガス、又は他のハロゲン化ガスのうちの1つ以上が含まれ得る。通常、エッチングには、四フッ化炭素(CF)、六フッ化硫黄(SF)、オクタフルオロプロパン(C)、パーフルオロヘキサン(C14)、フルオロホルム(CHF)、三塩化ホウ素(BCl)、臭化水素(HBr)、三フッ化窒素(NF)、塩素、アルゴン、及び酸素が使用される。無線周波数(RF)電力が電極に印加され、プラズマが生成される。反応性イオンエッチングは、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第8,460,568号(Davidら)及び国際公開第2019/118685号(Schmidtら)に更に記載されている。
【0062】
特定のエッチング深さを達成するために、又は除去することが望ましい層(単数又は複数)の下にエッチングが浸透しないようにエッチングを制限するために制御された期間にわたって、プラズマによって試料が電極上に搬送され得る。例えば、光学的吸収層を除去することが望ましく、かつ無機光学的透明層が含まれていない場合、その期間は、光学ファセットがプラズマに曝露され得る時間を最小限に抑えるように調整することができる。これにより、他の箇所で説明されるように、光学ファセットの表面粗さを(例えば、Ra<250nmとなるように)低減することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、光学的吸収層(及び/又は他の層)は、レーザアブレーション、例えば、パルス化レーザアブレーションによって除去される。パルス化レーザアブレーション(pulsed laser ablation、PLA)は、酸化及び/又はスパッタリングによって材料を除去するのに十分な光子フルエンスを生成するために光子束を利用する指向性アブレーションプロセスである。PLAシステムは、プラズマプルームの生成においてターゲットを気化させることができる光子フルエンスの方向に表面をエッチングすることによって、有機材料又は無機材料を除去するために使用される。PLAは、レーザの波長、及び光吸収材料においてその波長で存在する吸収の量に依存する。レーザパルスの吸収は、熱的、化学的、又は機械的な蒸発、アブレーション、及び/又はプラズマ形成のためのエネルギーを生成する。レーザパルスの位置での酸化ガスの存在は、PLAプロセス中に生じる化学的酸化の量を変化させ得る。フルエンスは、焦点のサイズ及び位置を変更する光学構成によって、並びにレーザシステムの電力設定値によって変化し得る。レーザフルエンス及び試料の相対的な配向により、当業者であれば、斜角で構造化表面上にコーティングされた光学的吸収層をアブレーションすることができる。
【0064】
図17図19は、(例えば、光学フィルム100に対応する)光学フィルムを作製する方法を概略的に示している。方法は、基材164と、基材164の主表面上に形成された複数のポリマー微細構造115とを含む構造化フィルム101を提供することを含み得る。各微細構造は、他の箇所で更に説明されるように、光学ファセット117と、微細構造115のリッジ119において光学ファセット117と交わる側壁18とを含み得る。方法は、構造化フィルム101上に光制御フィルム155を形成することを含み得る。他の箇所で更に説明するように、光制御フィルムは、複数のポリマー微細構造115上に配置され、かつ複数のポリマー微細構造115を覆う光学的透明材料150と、構造化フィルム101の反対側の光学的透明材料150内に形成された複数の光学的吸収ルーバ151とを含み得る。構造化フィルム101上に光制御フィルム155を形成することは、複数のポリマー微細構造115上に樹脂149を配置し、その樹脂を硬化させて光学的透明材料150を提供することを含み得る。図18は、微細構造115上に配置され、かつツール158の構造化ツール表面159と接触している樹脂149を概略的に示している。いくつかの実施形態では、樹脂149を硬化させることは、樹脂が構造化ツール表面159と接触している間に樹脂を少なくとも部分的に硬化させることを含み、構造化フィルムの反対側の光学的透明材料150内に複数の実質的に平行なチャネル又は溝171が形成される。方法は、溝を光学的吸収材料で少なくとも部分的に充填して、複数の光学的吸収ルーバ151を提供することを更に含み得る(例えば、図1を参照)。
【0065】
図20は、上面273及び底面274を画定する複数の溝又はチャネル271を含む構造化主表面276を有する、構造化光学的透明材料150の代替的な実施形態の概略断面図である。構造化主表面276は、ツールの好適な選択によって形成され得る。チャネルは、ツールからの材料150の除去を容易にするために、わずかにテーパ状(例えば、0.5~5度)の壁を有し得る。図21に概略的に示されるように、いくつかの実施形態では、方法は、構造化主表面276を1つ以上の光学的吸収層940(例えば、コア層の片側又は両側上のコア層、並びに任意選択的にクラッド)でコンフォーマルにコーティングすることを含む。図22に概略的に示されるように、いくつかの実施形態では、方法は、上面273及び底面274から1つ以上の光学的吸収層940を(例えば、他の箇所に記載されるような反応性イオンエッチング又はレーザアブレーションによって)除去することを含む。図23に概略的に示されるように、いくつかの実施形態では、方法は、チャネル271を光学的透明材料150で充填して、(例えば、光制御フィルム5100に対応する)光制御フィルム255を提供することを含む。
【0066】
方法は、構造化フィルム101を提供することと、構造化フィルム101上に光制御フィルム155を形成することとを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、提供するステップと形成するステップとの間に、複数のポリマー微細構造上に光学的吸収層152を配置することと、光学ファセットから光学的吸収層を除去することと、を更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、光学的吸収層を配置するステップの前に、複数のポリマー微細構造115上に無機光学的透明層157を配置することを更に含む。例えば、図24に概略的に示されるように、方法は、基材264上に配置された複数のポリマー微細構造215を有する構造化フィルム201aを提供することと、複数のポリマー微細構造215上に(例えば、光学的吸収層及び任意選択的に無機光学的透明層を含む)1つ以上の層252を配置することと、微細構造215の光学ファセット217から1つ以上の層252(又は1つ以上の層252の少なくとも一部分)を除去して、構造化フィルム201bを提供することと、を含み得る。
【0067】
微細構造を含む光学フィルムであって、微細構造が各々光学ファセットと、微細構造のリッジにおいて光学ファセットと交わる側壁とを有し、側壁上には光学的吸収層が配置されているが光学ファセット上には配置されていない、光学フィルムの例は、2019年11月8日に出願され「OPTICAL FILM」と題する米国特許出願第62/932578号に記載されている。
【0068】
以下は、本明細書の例示的な実施形態の列挙である。
【0069】
第1の実施形態は、光学フィルムであって、
基材と、基材の主表面上に形成された複数のポリマー微細構造とを含む構造化フィルムであって、各微細構造は、光学ファセットと、微細構造のリッジにおいて光学ファセットと交わる側壁とを含む、構造化フィルムと、
構造化フィルム上に形成された光制御フィルムであって、
複数のポリマー微細構造上に配置され、かつ複数のポリマー微細構造を覆う光学的透明材料と、
構造化フィルムの反対側の光学的透明材料内に形成された複数の光学的吸収ルーバであって、ルーバは、長手方向に沿って延び、かつ直交する横断方向に沿って間隔をあけられ、ルーバは、光学的透明材料内へと平均深さDを有し、横断方向に平均幅Wを有し、D/W>2である、複数の光学的吸収ルーバと、を含む、光制御フィルムと、を備え、
光学フィルムは、一体的に形成されている、光学フィルムである。
【0070】
第2の実施形態は、微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、光学的吸収層が、側壁上に配置され、かつ側壁を実質的に覆い、光学的吸収層は、平均厚さtを有し、100nm<t<1マイクロメートルである、第1の実施形態に記載の光学フィルムである。
【0071】
第3の実施形態は、微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、微細構造の側壁が、隣接する微細構造のベースから微細構造のリッジまでの高さHを有し、H/t>15である、第2の実施形態に記載の光学フィルムである。
【0072】
第4の実施形態は、複数のポリマー微細構造が、無機光学的透明層でコンフォーマルにコーティングされる、第1~第3の実施形態のいずれか1つに記載の光学フィルムである。
【0073】
第5の実施形態は、微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、光学的吸収層が、側壁上に配置された無機光学的透明層上に配置され、かつ無機光学的透明層を実質的に覆う、第4の実施形態に記載の光学フィルムである。
【0074】
第6の実施形態は、微細構造の少なくとも過半数における各微細構造に対して、第1の層が、無機光学的透明層と光学的吸収層との間に配置され、第1の層は吸光係数k1を有し、光学的吸収層は吸光係数k2を有し、k2-k1>0.05である、第5の実施形態に記載の光学フィルムである。
【0075】
第7の実施形態は、各微細構造に対して、微細構造のリッジが、光学フィルムの長さの少なくとも過半にわたって長手方向に沿って延びている、第1~第6の実施形態のいずれか1つに記載の光学フィルムである。
【0076】
第8の実施形態は、複数のポリマー微細構造における各微細構造が、光学ファセットと側壁との間に実質的に同じ角度を有する線形プリズムである、第1~第7の実施形態のいずれか1つに記載の光学フィルムである。
【0077】
第9の実施形態は、複数のポリマー微細構造における各微細構造が、線形フレネル要素である、第1~第7の実施形態のいずれか1つに記載の光学フィルムである。
【0078】
第10の実施形態は、複数のポリマー微細構造が屈折率n1を有し、光学的透明材料が屈折率n2を有し、n1-n2>0.05である、第1~第9の実施形態のいずれか1つに記載の光学フィルムである。
【0079】
第11の実施形態は、第2の基材にラミネートされた第1~第10の実施形態のいずれか1つに記載の光学フィルムを含む光学積層体であって、光制御フィルムが第2の基材に面している、光学積層体である。
【0080】
第12の実施形態は、光学フィルムを作製する方法であって、
基材と、基材の主表面上に形成された複数のポリマー微細構造とを含む構造化フィルムを提供することであって、各微細構造は、光学ファセットと、微細構造のリッジにおいて光学ファセットと交わる側壁とを含む、ことと、
構造化フィルム上に光制御フィルムを形成することであって、光制御フィルムは、
複数のポリマー微細構造上に配置され、かつ複数のポリマー微細構造を覆う光学的透明材料と、
構造化フィルムの反対側の光学的透明材料内に形成された複数の光学的吸収ルーバであって、ルーバは、長手方向に沿って延び、かつ直交する横断方向に沿って間隔をあけられ、ルーバは、光学的透明材料内へと平均深さDを有し、横断方向に平均幅Wを有し、D/W>2である、複数の光学的吸収ルーバと、を備える、ことと、を含み、
構造化フィルム上に光制御フィルムを形成することは、複数のポリマー微細構造上に樹脂を配置し、その樹脂を硬化させて光学的透明材料を提供することを含む、方法である。
【0081】
第13の実施形態は、樹脂を硬化させることが、樹脂が構造化ツール表面と接触している間に樹脂を少なくとも部分的に硬化させることを含み、構造化フィルムの反対側の光学的透明材料内に複数の実質的に平行な溝が形成され、方法は、溝を光学的吸収材料で少なくとも部分的に充填して、複数の光学的吸収ルーバを提供することを更に含む、第12の実施形態に記載の方法である。
【0082】
第14の実施形態は、提供するステップと形成するステップとの間に、
複数のポリマー微細構造上に光学的吸収層を配置することと、
光学ファセットから光学的吸収層を除去することと、を更に含む、第12又は第13の実施形態に記載の方法である。
【0083】
第15の実施形態は、光学的吸収層を配置するステップの前に、複数のポリマー微細構造上に無機光学的透明層を配置することを更に含む、第14の実施形態に記載の方法である。
【0084】
上記において参照された参照文献、特許、又は特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれた参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先される。
【0085】
図中の要素についての説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されると理解されたい。特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のいずれの適応例又は変形例も包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
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【国際調査報告】