(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(54)【発明の名称】電気式スチームクラッカー
(51)【国際特許分類】
C10G 9/24 20060101AFI20221227BHJP
C10G 9/36 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C10G9/24
C10G9/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526352
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2020081700
(87)【国際公開番号】W WO2021094346
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】モーデンスン・ピーダ・ムルゴー
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA03
4H129CA02
4H129CA04
4H129DA03
4H129FA02
4H129HA04
4H129NA20
4H129NA45
(57)【要約】
炭化水素を含む供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するための反応器システムおよび方法であって、反応のための熱が電力による抵抗加熱によりもたらされ、その結果、少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流が得られる、反応器システムおよび方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を含む供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するための反応器システムであって、以下:
-炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの供給;
-炭化水素を含む前記供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するように構成された構造体、ただし、前記構造体は、導電性材料の巨視的構造を含む;
-前記構造体を収容する圧力シェル、ただし前記圧力シェルは、前記供給材料ガスを取り入れるための入口および生成物ガスを取り出すための出口を備えており、前記入口は、前記供給材料ガスが前記構造体の第1の端部において前記構造体に入り、前記生成物ガスが前記構造体の第2の端部から前記構造体を出るように位置決めされている;
-前記構造体と前記圧力シェルとの間の断熱層;
-前記構造体におよび前記圧力シェルの外側に配置された電力源に電気的に接続された少なくとも2つの導体、ただし、前記電力源は、前記巨視的構造を通して電流を流すことにより前記構造体の少なくとも一部を少なくとも500℃の温度まで加熱するように容量規定されており、前記少なくとも2つの導体は、前記構造体の前記第2の端部よりも前記構造体の前記第1の端部に近い前記構造体上の位置で前記構造体に接続されており、および前記構造体は、電流を、前記少なくとも2つの導体のうちの1つの導体から実質的に前記構造体の前記第2の端部まで流れ、そして第2の導体に戻るように案内するように構成されており;および
-少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流用の出口、
を備えた、反応器システム。
【請求項2】
前記電力源が、前記構造体の少なくとも一部を少なくとも700℃、好ましくは少なくとも900℃、より好ましくは少なくとも1000℃の温度まで加熱するように容量規定されている、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項3】
前記供給材料ガス中の炭化水素が、好ましくはナフサ、液化石油ガス(LPG)、エタン、プロパンまたはブタンから選択される、飽和炭化水素である、請求項1または2に記載の反応器システム。
【請求項4】
前記生成物流中の前記オレフィン化合物が、エテン、プロペンもしくはブテン、またはこれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項5】
前記巨視的構造がセラミックコーティングを支持する、請求項1~4のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項6】
前記導電性材料の抵抗率が、10
-5Ω・m~10
-7Ω・mである、請求項1~5のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項7】
前記少なくとも2つの導体が、当該少なくとも2つの導体が前記圧力シェルから電気的に絶縁されるように器具中において前記圧力シェルを通り抜けて導かれる、請求項1~6のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項8】
前記圧力シェルが、冷却ガスが前記圧力シェル内の少なくとも1つの導体の上方、周囲、近傍または内側を流れ得るように、少なくとも1つの器具の近傍にまたは当該器具と組み合わせて、1つまたは複数の入口をさらに備える、請求項1~7のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項9】
前記セラミックコーティングが、ZrO
2、Al
2O
3、MgAl
2O
4、CaAl
2O
4またはこれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項10】
前記構造体が、前記構造体の長さの少なくとも70%について、主電流路の電流密度ベクトルが前記構造体の長さと平行な非ゼロの成分値を有するように、電流を前記構造体を通して案内するように構成された少なくとも1つの電気的絶縁部を有する、請求項1~9のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項11】
前記巨視的構造の材料が、前記材料の抵抗加熱によって500~50000W/m
2の熱流束を生成するように構成された材料として選択される、請求項1~10のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項12】
前記反応器システム内の前記構造体が、0.1~2.0の範囲内の、前記構造体を通る水平断面の面積換算直径と前記構造体の高さとの比を有する、請求項1~11のいずれか一つに記載の反応器システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一つに記載の反応器システムにおいて、スチームクラッキング反応条件下で、炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの、少なくとも1種のオレフィンへのスチームクラッキングを実施するための方法であって、以下のステップ:
-前記供給材料ガスを加圧するステップ;
-前記の加圧された供給材料ガスを前記反応器システムに供給するステップ;
-前記圧力シェルの外側に配置された電力源を前記構造体に接続する導電体を介して電力を供給し、電流が前記導電性材料を通して流れ得るようにし、それによって前記供給材料ガスが前記構造体上でスチームクラッキング反応を受けるのに十分な温度まで前記構造体の少なくとも一部を加熱するステップ;
-前記供給材料ガスに前記構造体上でスチームクラッキング反応を受けさせるステップ;および
-前記反応器システムから、少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流を取り出すステップ、
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記構造体の少なくとも一部が、少なくとも700℃、好ましくは少なくとも900℃、より好ましくは少なくとも1000℃の温度まで加熱される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記冷却ガスが少なくとも1つの導体上を流れ得るように、前記圧力シェルを通り抜ける入口を通して冷却ガスを取り入れるステップをさらに含む、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスから少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物ガスへのスチームクラッキング反応を実施するための反応器システムおよび方法であって、反応のための熱が抵抗加熱によりもたらされる、反応器システムおよび方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
スチームクラッキングは、飽和炭化水素をより小さな不飽和炭化水素へと分解する吸熱石油化学プロセスである。通常は、反応温度が1000℃前後と非常に高く、大きな反応塔を必要とする。反応で生成される生成物は、供給材料の組成、炭化水素対蒸気比、ならびにクラッキング温度および炉滞留時間によって決まる。
【0003】
吸熱反応は、反応器システムの反応ゾーンへどのように高い効率の熱を伝達するかが課題となることが多い。対流、伝導および/または輻射による従来の熱伝達は、速度が遅く、多数の構成において大きな抵抗を受けることが多い。
【0004】
小型で操作が簡単なスチームクラッキングプロセス用の反応器システムを開発することが望ましい。本技術の別の利点は、特に反応器システムで使用する電力が再生可能エネルギー源由来である場合は、二酸化炭素および気候に有害な他の排出物の総排出量を大幅に削減し得ることである。
【0005】
吸熱触媒反応を実施するためのシステムおよび方法が同時係属特許出願PCT/EP2019/062424(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
したがって、本技術は、炭化水素を含む供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するための反応器システムであって、以下:
-炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの供給;
-炭化水素を含む前記供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するように構成された構造体、ただし、前記構造体は導電性材料の巨視的構造を含み、前記巨視的構造はセラミックコーティングを支持する;
-前記構造体を収容する圧力シェル、ただし、前記圧力シェルは、前記供給材料ガスを取り入れるための入口および生成物ガスを取り出すための出口を備え、前記入口は、前記供給材料ガスが前記構造体の第1の端部において前記構造体に入り、前記生成物ガスが前記構造体の第2の端部から前記構造体を出るように位置決めされている;
-前記構造体と前記圧力シェルとの間の断熱層;
-前記構造体と、前記圧力シェルの外側に配置された電力源とに電気的に接続された少なくとも2つの導体、ただし、前記電力源は、前記巨視的構造に電流を流すことによって前記構造体の少なくとも一部を少なくとも500℃の温度まで加熱するように容量規定(dimensioned)されており、前記少なくとも2つの導体は、前記構造体の前記第2の端部よりも前記構造体の前記第1の端部に近い構造体上の位置で構造体に接続されており、および前記構造体は、電流を、前記少なくとも2つの導体のうちの1つの導体から実質的に構造体の第2の端部まで流れ、第2の導体に戻るように案内するように構成されている;および
-少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流用の出口、
を備える、反応器システムを提供する。
【0008】
また、本明細書に記載の反応器システムにおいて、スチームクラッキング反応条件下で、炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスから少なくとも1種のオレフィンへのスチームクラッキングを実施するための方法であって、以下のステップ:
-前記供給材料ガスを加圧するステップ;
-前記加圧された供給材料ガスを反応器システムに供給するステップ;
-前記圧力シェルの外側に配置された電力源を前記構造体に接続する導電体を介して電力を供給し、前記導電性材料を電流が流れ得るようにすることで、前記供給材料ガスが構造体上でスチームクラッキング反応を受けるのに十分な温度まで構造体の少なくとも一部を加熱するステップ;
-供給材料ガスに構造体上でスチームクラッキング反応を受けさせるステップ;
-反応器システムから、少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流を取り出すステップ;
を含む、方法を提供する。
【0009】
本技術の別の態様については、従属請求項、図面、および以下の説明に示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1a】
図1aは、断面において巨視的構造のアレイを有する構造体を含む本発明の反応器システムの一実施形態の断面を示す。
【
図1b】
図1bは、圧力シェルの一部および断熱層を除去した
図1aの反応器システムを示す。
【
図2】
図2は、反応器システムの一部の拡大図である。
【
図3a】
図3aおよび3bは、構造体を備えた本発明の反応器システムの一実施形態の模式断面を示す。
【
図3b】
図3aおよび3bは、構造体を備えた本発明の反応器システムの一実施形態の模式断面を示す。
【
図4】
図4および5は、それぞれ上からおよび横から見た、巨視的構造のアレイを備えた構造体の一実施形態を示す。
【
図5】
図4および5は、それぞれ上からおよび横から見た、巨視的構造のアレイを備えた構造体の一実施形態を示す。
【
図6】
図6は、本発明の構造体の一実施形態を示す。
【
図7】
図7および8は、コネクタを備えた構造体の一実施形態を示す。
【
図8】
図7および8は、コネクタを備えた構造体の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
具体的な実施形態
本技術は、電気加熱式反応器がオンデマンド方式で小型設計において、反応によるスチームクラッキングの作業を容易化し得る様子を説明するものである。
【0012】
本技術は、炭化水素を含む供給材料ガスの、少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流へのスチームクラッキングに使用可能である。供給材料ガス中の炭化水素は好適には、好ましくはナフサ、液化石油ガス(LPG)、エタン、プロパンまたはブタンから選択される、飽和炭化水素である。生成物流中のオレフィン化合物は、好適にはエテン、プロペン、もしくはブテン、またはこれらの混合物である。
【0013】
構造体を用いた小型電気反応器は、容易に操作することができ、簡単な起動原理を使用して、必要に応じてオレフィン化合物(複数可)を生成することができる。これにより、オレフィンを必要な量だけ生成可能で、オレフィンの保管もほとんど必要なく、オレフィンの輸送も削減または完全に排除された比較的安価なプラントが得られる。単純な反応装置およびスチームクラッキングプロセスの簡単な操作によって、オレフィン取り扱いのリスクを減じた移動式プラントにおけるオレフィン生成が優位なものとなる。
【0014】
従って、炭化水素を含む供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するための反応器システムであって、
-炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの供給と、
-炭化水素を含む前記供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するように構成された構造体であって、導電性材料の巨視的構造を含む、構造体と、
-前記構造体を収容し、前記供給材料ガスを取り入れるための入口および生成物ガスを取り出すための出口を備えた圧力シェルであって、前記入口が、前記供給材料ガスが前記構造体の第1の端部において前記構造体に入り、前記生成物ガスが前記構造体の第2の端部から前記構造体を出るように位置決めされている、圧力シェルと、
-前記構造体と前記圧力シェルとの間の断熱層と、
-前記構造体と、前記圧力シェルの外側に配置された電力源とに電気的に接続された少なくとも2つの導体であって、前記電力源が、前記巨視的構造に電流を流すことによって前記構造体の少なくとも一部を少なくとも500℃の温度まで加熱するように容量規定されており、前記少なくとも2つの導体が、前記構造体の前記第2の端部よりも前記構造体の前記第1の端部に近い前記構造体上の位置で前記構造体に接続され、構造体が、電流を、前記少なくとも2つの導体のうちの1つの導体から実質的に構造体の第2の端部まで流れ、第2の導体に戻るように案内するように構成された、少なくとも2つの導体と、
-少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流用の出口と、
を備えた、反応器システムを提供する。
【0015】
この反応器システムのレイアウトによれば、加圧された供給材料ガスを反応器システムに入口で供給し、このガスを反応器システムの圧力シェル中に案内することが可能となる。圧力シェルの内側では、断熱層および不活性材料の構成が、供給材料ガスを構造体を通して案内するように構成される。また、構造体の加熱によって、吸熱反応に必要な熱が供給されることになる。加熱された構造体からの生成物ガスは、反応器システムの出口へと導かれる。
【0016】
従って、抵抗加熱プロセスの重要な特徴は、エネルギーが、熱の伝導、対流および輻射によって外部の熱源から供給される代わりに、物体それ自体の内側で供給されることである。さらに、反応器システムの最も高温な部分は、反応器システムの圧力シェル内となる。電力源および構造体は、構造体の少なくとも一部が少なくとも700℃、好ましくは少なくとも900℃、より好ましくは少なくとも1000℃の温度に達するように容量規定されているのが好ましい。導電性材料の表面積、(任意選択の)セラミックコーティングで被覆された導電性材料の割合、ならびにセラミックコーティングの種類および構造は、所与の動作条件における特定の反応に合わせて調整されていてもよい。
【0017】
導電性材料は、好適には巨視的構造である。本明細書において、用語「巨視的構造(macroscopic structure)」は、拡大装置を使わずに肉眼で視認可能となる十分な大きさの構造を示す意図がある。巨視的構造の寸法は通常、センチメートルあるいはメートルの範囲である。巨視的構造の寸法は、構造体を収容する圧力シェルの内寸に少なくとも部分的に対応することにより、断熱層および導体用のスペースを確保しているのが好都合である。また、2mまたは5m等、メートルの範囲の外寸のうちの少なくとも1つを有する巨視的構造のアレイを提供するため、2つ以上の巨視的構造が接続されていてもよい。このような2つ以上の巨視的構造は、「巨視的構造のアレイ」として示す場合がある。この場合、巨視的構造のアレイの寸法は、構造体を収容する圧力シェルの内寸に少なくとも部分的に対応している(断熱層用のスペースを確保している)のが好都合である。巨視的構造のアレイとしては、0.1~10m3あるいはそれを超える体積を有することも考えられる。構造体は、単一の巨視的構造を含んでいてもよいし、または巨視的構造のアレイを含んでいてもよく、巨視的構造(複数可)がセラミックコーティングを支持する。巨視的構造のアレイにおいては、巨視的構造が互いに電気的に接続されていてもよい;しかしながら、代替的には、互いに電気的に接続されていない。このため、構造体は、互いに隣り合って位置決めされている2つ以上の巨視的構造を含んでいてもよい。巨視的構造(複数可)は、押し出し、焼結された構造であってもよいし、または3D印刷された構造であってもよい。3D印刷された巨視的構造は、後続の焼結を伴ってまたは伴わないで提供することができる。本明細書に記載の反応器システムにおいて、セラミックコーティングは、触媒活性材料を支持しない。
【0018】
巨視的構造の物理的寸法は、如何なる適当な寸法であってもよい。このため、巨視的構造の高さが幅より小さくてもよいし、またはその逆もまた同様である。
【0019】
巨視的構造は、巨視的構造上に保護層を提供可能なセラミックコーティングを支持していてもよい。用語「巨視的構造がセラミックコーティングを支持する(macroscopic structure supporting a ceramic coating)」は、巨視的構造が、セラミックコーティングにより、少なくとも、巨視的構造の表面の一部で、被覆されることを示す意図がある。したがって、この用語は、巨視的構造の表面全体がセラミックコーティングにより被覆されることを暗示しない。特に、少なくとも、導体に対して電気的に接続された巨視的構造の部分は、その上にコーティングを有しない。このコーティングは、構造中に細孔を有するセラミック材料である。
【0020】
巨視的構造は、粉末状金属粒子およびバインダの混合物を、押し出し構造となるように押し出し、押し出し構造を引き続き焼結することによって製造されているのが好ましく、これにより、材料の体積当たりの幾何学的表面積が大きくなる。押し出し構造を還元雰囲気中で焼結させることにより、巨視的構造を提供するのが好ましい。あるいは、巨視的構造は、金属積層造形溶融方法(metal additive manufacturing melting process)、すなわち、粉末床溶融または指向性エネルギー堆積方法等の後続の焼結を必要としない3D印刷方法で3D印刷される。このような粉末床溶融または指向性エネルギー堆積方法の例は、レーザビーム、電子ビーム、またはプラズマ3D印刷方法である。別の選択肢として、巨視的構造は、バインダベースの金属積層造形方法により3D金属構造として製造され、その後、第1の温度T1(T1>1000℃)の非酸化性雰囲気中で焼結されることにより巨視的構造が得られるようになっていてもよい。
【0021】
酸化性雰囲気中での第2の焼結の前に、セラミックコーティングを巨視的構造上に設けて、セラミックコーティングと巨視的構造との間に化学結合を形成するようにしてもよい。
【0022】
本明細書において、用語「3D印刷(3D printおよび3D printing)」は、金属積層造形方法を示す意図がある。このような金属積層造形方法は、コンピュータ制御下で材料を構造と結合して3次元物体を生成し、たとえば焼結によって、構造を固化して巨視的構造を提供する3D印刷方法を網羅する。さらに、このような金属積層造形方法は、粉末床溶融または指向性エネルギー堆積方法等の後続の焼結を必要としない3D印刷方法を網羅する。このような粉末床溶融または指向性エネルギー堆積方法の例は、レーザビーム、電子ビーム、またはプラズマ3D印刷方法である。
【0023】
前記反応器システムは、炉を必要としないため、反応器の全体サイズが大幅に抑えられる。
【0024】
導電性材料には、Fe、Ni、Cu、Co、Cr、Al、Si、またはこれらの合金を含む。このような合金は、Mn、Y、Zr、C、Co、Mo、またはこれらの組み合わせ等のさらなる元素を含んでいてもよい。導電性材料は、Fe、Cr、Al、またはこれらの合金を含むのが好ましい。このような合金は、Si、Mn、Y、Zr、C、Co、Mo、またはこれらの組み合わせ等のさらなる元素を含んでいてもよい。導体および導電性材料は、上記の導電性材料と異なる材料で構成されるのが好ましい。導体は、たとえば鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、銀、またはこれらの合金であってもよい。セラミックコーティングは電気的絶縁材料であり、通常、約100μmの範囲(たとえば、10~500μm)の厚さを有することになる。導電性材料は、導電性材料全体で導電性を実現することにより、構造体全体で熱伝導性を実現するため、コヒーレント材料または連続的に内部接続された材料であるのが好都合である。
【0025】
コヒーレント材料または連続的に内部接続された材料により、導電性材料内の電流の均一分布ひいては構造体内の熱の均一分布が可能となる。本明細書の全体を通して、用語「コヒーレント(coherent)」は、粘着性と同義であり、従って、連続的に内部接続された材料または連続的に結合された材料を表す意図がある。構造体がコヒーレント材料または連続的に内部接続された材料であることの効果として、構造体の材料内の接続性ひいては導電性材料の導電性の制御が可能となる。なお、導電性材料の一部にスリットを設けること、または、導電性材料内に絶縁材料を実装すること等、導電性材料の別途改良を実行したとしても、導電性材料は依然として、コヒーレント材料または連続的に内部接続された材料と表記する。
【0026】
構造体上のガス流は、構造体を通る電流路の軸方向または同軸方向であってもよいし、電流路と垂直であってもよいし、または電流路に関してその他任意の適切な方向であってもよい。
【0027】
スチームクラッキング反応の供給原料は、蒸気および炭化水素の実質的に純粋な流れであることが好ましい。また、この方法の供給原料には、反応器システムの下流での単位操作からのリサイクル再生流を含んでいてもよい。
【0028】
一実施形態において、供給材料ガスは、実質的に純粋な蒸気の流れと混合された複数の炭化水素の混合物である。
【0029】
用語「導電性(electrically conductive)」は、20℃での電気抵抗率が10-5~10-8Ω・mの範囲である材料を示す意図がある。このため、導電性の材料は、たとえば銅、銀、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル等の金属、または金属の合金である。さらに、用語「電気的絶縁(electrically insulating)」は、20℃での電気抵抗率が10Ω・mを上回る(たとえば、20℃で109~1025Ω・mの範囲である)材料を示す意図がある。
【0030】
反応器システムが構造体と圧力シェルとの間に断熱層を備える場合は、構造体と圧力シェルとの間に適当な断熱および電気的絶縁が得られる。圧力シェルと構造体との間に存在する断熱層は、圧力シェルの過剰な加熱の回避および周囲への熱損失の低減に役立つ。構造体の温度は、少なくともその一部において、およそ1300℃に達し得るが、構造体と圧力シェルとの間に断熱層を使用することで、圧力シェルの温度をかなり低い温度(たとえば500℃あるいは100℃)に保つことができる。これは、一般的な建築用鋼材が通常、1000℃を上回る温度での耐圧用途に適さないことから、都合が良い。さらに、圧力シェルと構造体との間の断熱層は、電気的絶縁でもあるため、反応器システム内の電流の制御に役立つ。断熱層としては、セラミックス、不活性材料、繊維材料、レンガもしくはガスバリア、またはこれらの組み合わせ等、固体材料の1つまたは複数の層も可能である。このため、パージガスまたは閉じ込めガスが断熱層の一部を構成または形成することも考えられる。
【0031】
さらに、用語「断熱材料(heat insulating material)」は、熱伝導率がおよそ10W・m-1・K-1以下の材料を示す意図があることに留意するものとする。断熱材料の例は、セラミックス、レンガ、アルミナベースの材料、ジルコニアベースの材料等である。
【0032】
好適には、構造体、断熱層、圧力シェル、および/または反応器システムの内側のその他任意の構成要素間の関連する如何なる間隙も、たとえば不活性ペレットの形態の、不活性材料で充填されている。このような間隙としては、たとえば構造体の下面と圧力シェルの底部との間の間隙および構造体の側面と圧力シェルの内面を覆う断熱層との間の間隙がある。不活性材料は、たとえばペレットまたはタイルの形態のセラミック材料であってもよい。不活性材料は、反応器システム内のガス分布の制御および構造体内のガス流の制御に役立つ。さらに、不活性材料は通常、断熱効果を有する。
【0033】
圧力シェルは、好適には2bar~30barの設計圧力を有する。実際の動作圧力は、とりわけ吸熱反応、プラントのサイズによって決まることになる。反応器システムの最も高温な部分が導電性材料であるが、これは、断熱層により反応器システムの圧力シェル内で囲まれるため、圧力シェルの温度を最大プロセス温度よりもかなり低く保つことができる。これにより、圧力シェルが比較的低い設計温度(たとえば、700℃もしくは500℃、または好ましくは、300℃もしくは100℃)を有し得る一方、最大プロセス温度は、構造体上で400℃、900℃、1100℃、あるいは1300℃まで可能である。材料強度は、これらの温度のより低い方でより高くなる(上述の通り、圧力シェルの設計温度に対応する)。このことは、化学反応器の設計に際して有利となる。圧力シェルは、好適には2bar~30barまたは30bar~200barの設計圧力を有する。プロセスの経済性と熱力学的限界との妥協点として、約30barが好ましい。
【0034】
導電性材料の抵抗率は、好適には10-5Ω・m~10-7Ω・mである。抵抗率がこの範囲の材料であれば、電源が投入された場合に、構造体を効率的に加熱することができる。グラファイトの抵抗率が20℃でおよそ10-5Ω・m、カンタルの抵抗率が20℃でおよそ10-6Ω・mである一方、ステンレス鋼の抵抗率は、20℃でおよそ10-7Ω・mである。導電性材料は、たとえば抵抗率が20℃でおよそ1.5・10-6Ω・mのFeCr合金で構成されていてもよい。
【0035】
通常、圧力シェルは、プロセスガスを取り入れるための入口および生成物ガスを取り出すための出口を備えており、入口が圧力シェルの第1の端部の近くに位置決めされ、出口が圧力シェルの第2の端部の近くに位置決めされており、少なくとも2つの導体がいずれも、出口よりも入口に近い位置で構造体に接続されている。これにより、反応器システムの実質により冷たい部分に少なくとも2つの導体を配置可能である。これは、入口ガスが生成物ガスよりも低い温度を有し、化学反応の進行により消費される熱によって材料の最上流部分で導電性材料がより冷たくなり、加熱された構造体上のガスの経路に沿って加熱構造体によりさらに加熱される前に、入口から供給された供給材料ガスが少なくとも2つの導電体を冷却し得るためである。導体と構造体との接続部を保護するため、導電性材料を除くすべての導電要素の温度を低く抑えることができるのは都合が良い。導体および導電性材料を除く他の導電要素の温度が比較的低い場合は、導体および導電性材料を除く他の導電要素に適した材料の制約が少ない。導電要素の温度が上昇すると、その抵抗率も高くなるため、反応器システム内では、導電性材料以外のすべての部分を不必要に加熱しないことが望ましい。用語「導電性材料を除く導電要素(electrically conducting elements,except the electrically conductive material)」は、導電性の構造体それ自体を除いて、電源を構造体に接続するように構成された関連する導電要素を網羅する意図がある。
【0036】
本発明のシステムは、任意適当な数の電源と、1つまたは複数の電源と構造体の導電性材料(複数可)とを接続する任意適当な数の導体とを具備していてもよいことに留意するものとする。
【0037】
少なくとも2つの導体は、好適には圧力シェルから電気的に絶縁されるように、器具中で圧力シェルに導かれる。器具は、部分的にプラスチックおよび/またはセラミック材料であってもよい。用語「器具(fitting)」は、耐圧構成にて2つのハードウェアの機械的接続を可能にするデバイスを示す意図がある。これにより、圧力シェル内の圧力は、その中に少なくとも2つの導体が導かれる場合であっても維持され得る。器具の非限定的な例は、電気的絶縁器具、誘電体器具、電力圧縮シール(power compression seal)、圧縮器具、またはフランジであってもよい。圧力シェルは通常、側壁、端壁、フランジ、および場合によりさらに別の部分を備える。用語「圧力シェル(pressure shell)」は、これらの構成要素のいずれかを網羅する意図がある。
【0038】
圧力シェルは、前記圧力シェル内の少なくとも1つの導体の上方、周囲、近傍、または内側を冷却ガスが流れ得るように、少なくとも1つの器具との近傍または組み合わせにおいて、1つまたは複数の入口をさらに備えていてもよい。これにより、導体が冷却されるため、器具の温度が低く抑えられる。冷却ガスを使用しない場合は、反応器システムへの供給材料ガス、印加電流による導体の抵抗加熱、および/または構造体からの熱伝達によって、導体が加熱される可能性がある。冷却ガスとしては、たとえば水素、アルゴン、窒素、メタン、アンモニア、またはこれらの混合物も考えられる。圧力シェルに入る際の冷却ガスの温度は、たとえばおよそ100℃であってもよいし、または200℃であってもよいし、または250℃であってもよい。一実施形態において、導体(複数可)は、冷却ガスが当該導体(複数可)の内部を流れて内部からそれ(それら)を冷却できるように中空である。器具を低温(たとえば、約100~200℃)に保つことによって、漏れ防止構成をより簡単に有することができる。通常は、反応物のうちの1つ等、供給材料ガスの一部が冷却ガスとして圧力シェルに供給される。別の実施形態においては、供給材料ガスの一部または供給材料ガスと同じ組成のガスが冷却ガスとして使用される。
【0039】
反応器システムは、構造体と熱交換関係にある内管であり、1つまたは複数の内管を流れる生成物ガスが構造体上を流れるガスと熱交換関係にありながら構造体から電気的に分離されるように、構造体から生成物ガスを引き出すように適合された、内管をさらに備えていてもよい。このレイアウトをここでは、バイオネット反応器システムとして示す。このレイアウトにおいて、内管内の生成物ガスは、構造体上を流れるプロセスガスの加熱に役立つ。内管と構造体との間の電気的絶縁としては、内管と構造体または内管および構造体の周りに配置された不活性材料との間の間隙または距離の形態のガスも可能である。このガスは、構造体を上向流または下向流方向に通過し得る。
【0040】
構造体と少なくとも2つの導体との間の接続は、機械的接続、溶接接続、ろう付け接続、またはこれらの組み合わせであってもよい。構造体は、導電性材料と少なくとも2つの導体との間の電気的接続を容易化するため構造体に対して物理的および電気的に接続された端子を備えていてもよい。用語「機械的接続(mechanical connection)」は、2つの構成要素が、電流が当該構成要素間を流れ得るように、機械的に、例えば螺合接続またはクランピングにより、一体保持された接続を示す意図がある。
【0041】
導電性材料のアレイ中に配置された導電性材料は、互いに電気的に接続されていてもよい。2つ以上の導電性材料の接続は、機械的接続、クランピング、はんだ付け、溶接、またはこれらの接続方法の任意の組み合わせであってもよい。各導電性材料は、電気的接続を容易化するための端子を備えていてもよい。2つ以上の導電性材料は、電源に対して直列に接続されていてもよいし、または並列に接続されていてもよい。2つ以上の導電性材料間の電気的接続は、2つ以上の導電性材料が単一のコヒーレント材料または連続的に内部接続された材料として作用するように、2つ以上の導電性材料間の接続面に沿ってコヒーレントかつ均一であるのが好都合である。これにより、2つ以上の導電性材料の全体にわたる均一な導電性が促進される。この代替または追加として、構造体は、互いに電気的に接続されていない導電性材料のアレイを含んでいてもよい。また、代替として、2つ以上の導電性材料が圧力シェル内に一体的に配置される一方、互いに電気的に接続されることはない。したがって、この場合、構造体は、電源に対して並列に接続された導電性材料を含む。
【0042】
ウォッシュコーティングによって、導電性材料の金属表面にセラミックコーティングを直接追加するようにしてもよい。金属表面のウォッシュコーティングは、周知の方法であって、たとえばCybulski, A.、Moulijn, J. A.、「Structured bodys and reactors」、Marcel Dekker, Inc、New York、1998、第3章に記載されており、これを本明細書に援用する。セラミックコーティングは、たとえばAl、Zr、Mg、Ce、および/またはCaを含む酸化物であってもよい。例示的なコーティングは、アルミン酸カルシウムまたはマグネシウムアルミニウム(スピネル)である。このようなセラミックコーティングは、La、Y、Ti、K、またはこれらの組み合わせ等のさらに別の元素を含んでいてもよい。セラミックコーティングは電気的絶縁材料であり、通常、約100μmの範囲(たとえば、10~500μm)の厚さを有することになる。
【0043】
巨視的構造の押し出し・焼結または3D印刷の結果、均一かつコヒーレントに成形された巨視的構造が得られるが、これを後でセラミックコーティングにより被覆可能である。
【0044】
導電性材料およびセラミックコーティングは、セラミックコーティングと導電性材料との間に化学結合を形成するため、酸化性雰囲気中で焼結されていてもよい。これにより、導電性材料とセラミックコーティングとの間の熱伝導率を特に高くすることができる。このため、構造体は熱伝達に関して小型であり、そして構造体を収容する反応器システムは小型で、主に化学反応の速度によって制限され得る。
【0045】
一実施形態において、構造体は、構造体の最大寸法よりも大きな長さまで、導体間の電流路を延ばすように構成された少なくとも1つの電気的絶縁部を有する。構造体の最大寸法よりも大きい導体間の電流路は、導体間に位置決めされ、構造体の一部に電流が流れないようにする電気的絶縁部(複数可)により与えられていてもよい。このような電気的絶縁部は、電流路を延ばすことにより、構造体の抵抗を増加させるように構成されている。これにより、構造体を通る電流路は、構造体の最大寸法よりも、例えば50%、100%、200%、1000%または10000%超長いことが可能である。
【0046】
さらに、このような電気的絶縁部は、構造体の第2の端部よりも第1の端部に近い1つの導体から構造体の第2の端部に向かって電流を案内するとともに、構造体の第2の端部よりも第1の端部に近い第2の導体に戻すように構成されている。電流は、構造体の第1の端部から第2の端部まで流れ、第1の端部に戻るように構成されるのが好ましい。図示のように、構造体の第1の端部は、構造体の上端である。
図5~
図7において「z」で示す矢印は、構造体の長さに沿ったz軸を示す。構造体全体の主電流路は、電流路の長さの大部分に沿って付随する電流密度ベクトルの正または負のz座標を有することになる。主電流路は、電流密度が最も高い構造体の巨視的構造を通る電子の経路を意図する。また、主電流路は、構造体の巨視的構造を通る長さが最も短い経路として了解され得る。幾何学的見地から、主電流路は、巨視的構造のコヒーレントセクションのガス流方向と垂直な平面内の最大の電流密度ベクトルとして定量化可能である。構造体の底部においては、図示のように、電流が折り返し、ここでは付随する電流密度ベクトルのz座標はゼロとなる。
【0047】
本明細書において、用語「コヒーレントセクション(coherent section)」は、コヒーレントセクションのすべての壁が同じ平面内でコヒーレントセクションの1つまたは複数の他の壁に対して幾何学的に接続された巨視的構造の断面領域を示す意図がある。
【0048】
一実施形態において、構造体は、前記構造体の長さの少なくとも70%について、主電流路の電流密度ベクトルが前記構造体の長さと平行な非ゼロの成分値を有するように、構造体に電流を案内するように構成された少なくとも1つの電気的絶縁部を有する。このため、構造体の長さの少なくとも70%について、電流密度ベクトルは、構造体の長さと平行な正または負の成分値を有することになる。したがって、構造体の長さの少なくとも70%(たとえば、90%または95%)について、すなわち、
図5~
図10に示すような構造体のz軸に沿って、主電流路の電流密度ベクトルは、z軸に沿う正または負の値を有することになる。これは、構造体の第1の端部から第2の端部に向かって電流が流された後、再び第1の端部に向かって流されることを意味する。構造体の第1の端部に入るガスの温度および構造体上で起こる吸熱性のスチームクラッキング反応によって、構造体から熱が吸収される。このため、構造体の第1の端部は第2の端部よりも冷たいままであり、これは、主電流路の電流密度ベクトルが前記構造体の長さと平行な非ゼロの成分値を有するようにすることで、制御可能な反応の先端を与える実質的に連続増加の温度プロファイルにより起こる。一実施形態において、電流密度ベクトルは、前記構造体の長さの70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%において、前記構造体の長さと平行な非ゼロの成分値を有する。用語「構造体の長さ(the length of the structured body)」は、ガス流の方向の構造体の寸法を示す意図があることに留意するものとする。図示のような構造体において、この長さは、長手方向すなわちその最長寸法である。一部の図面においては、矢印zによりこれを示す。
【0049】
絶縁部の非限定的な例は、構造中の切り込み、スリット、または孔である。任意選択的に、セラミックス等の固体絶縁材料を構造中の切り込みまたはスリットに使用可能である。切り込みまたはスリット内の固体絶縁材料は、切り込みまたはスリットの側面上の構造体の部分を互いに保持するのに役立つ。本明細書において、用語「構造体の最大寸法(largest dimension of the structured body)」は、構造体が占める幾何学的形状の最大内寸を示す意図がある。構造体がボックス形状の場合、最大寸法は、ある隅部から最も遠い隅部までの対角線であり、空間対角線とも呼ばれる。
【0050】
構造体を通る電流は、電流路を延ばすように構成された電気的絶縁部のために捩れたりもしくは曲がったりしながら構造体を通過するように構成され得るが、反応器システムを通過するガスは、反応器システムの一端から入り、構造体上を一度通過した後、反応器システムから出ることに留意するものとする。不活性材料は、構造体と反応器システムの残部との間の関連する間隙に存在して、反応器システム内のガスに構造体上を通過させるのが好都合である。
【0051】
構造体を通るガス通路の長さは、好適には1つの電極から構造体を通って次の電極に至る電流の通路の長さ未満である。電流通路の長さに対するガス通路の長さの比率は、0.6未満、0.3未満、0.1未満、あるいは0.002未満であってもよい。
【0052】
通常、構造体は、構造体を通る電流路をジグザグ経路にするように構成された電気的絶縁部を有する。ここで、用語「ジグザグ経路(zigzag path)」および「ジグザグルート(zigzag route)」は、角度の異なる隅部を有し、ある導体から別の導体への経路をたどる経路を示す意図がある。ジグザグ経路は、たとえば上方に向かい、折り返した後、下方に向かう経路である。ジグザグ経路は、構造体内に多くの折り返しを有し、上方に向かった後に下方へ向かうことを何度繰り返してもよい(経路をジグザグ経路とするには、1つの折り返しで十分であるが)。
【0053】
電流路を延ばすように構成された絶縁部は、必ずしも導電性材料上のセラミックコーティングとは関係がないことに留意するものとする。このセラミックコーティングも電気絶縁性と考えられるが、それは導電性材料に接続された導体間の電流路の長さを変えない。
【0054】
本発明に関して、巨視的構造は、3次元ネットワーク構造の形態を有し、このネットワーク構造は、供給材料ガスが構造体の第1の端部から第2の端部まで流れることを可能にする複数の流路を形成する。特定の一実施形態において、巨視的構造は、内部空間を構成し、導電性の金属材料により形成された周壁をさらに備えており、ネットワーク構造が内部空間に配置されている。
【0055】
巨視的構造は、複数の平行チャネル、複数の非平行チャネル、および/または複数のラビリンスチャネル(labyrinthine channels)を有していてもよく、これらのチャネルは、チャネルを規定する壁を有する。このため、ガスに曝される構造体の表面積が可能な限り大きいのであれば、複数の異なる形態の巨視的構造を使用可能である。好ましい一実施形態において、巨視的構造は、平行チャネルを有する。このような平行チャネルによれば、構造体の圧力損失が非常に小さくなるためである。好ましい一実施形態においては、平行な長手方向チャネルが巨視的構造の長手方向において傾いている。このように、巨視的構造を流れるガスの分子は、壁と接触することなくチャネル内をただ直進する代わりに、チャネルの内側の壁に衝突することがほとんどである。チャネルの寸法は、巨視的構造に十分な抵抗性をもたらすのに適当なものとすべきである。たとえば、チャネルは、(チャネルと垂直な断面で見て)正方形であり、正方形の辺の長さを1~3mmとすることも可能である。ただし、断面の最大範囲がおよそ4cmのチャネルも考えられる。壁の厚さは、たとえば0.2~2mm(およそ0.5mm等)であってもよく、壁に支持されたセラミックコーティングの厚さは、10μm~500μm(50μm~200μm等(100μm等))である。別の実施形態において、構造体の巨視的構造は、断面波形状(cross-corrugated)である。
【0056】
代替的な一実施形態において、巨視的構造のネットワーク構造は、並列流路間に開口を有する格子の形態を有する。前記格子は、規則的な格子であってもよいし、不規則な格子であってもよい。
【0057】
一般的に、巨視的構造が押し出しまたは3D印刷による場合は、触媒材料がペレットの形態である反応器と比較して、反応器システムの入口から出口までの圧力損失が大幅に抑制され得る。
【0058】
巨視的構造の幾何学的表面積は、100~3000m2/m3(500~1100m2/m3等)であってもよい。通常、巨視的構造の材料は、材料の抵抗加熱によって500W/m2~50000W/m2の熱流束を供給するように構成された材料として選定される。材料の抵抗加熱によって、5kW/m2~12kW/m2(たとえば、8kW/m2~10kW/m2)の熱流束が供給されるのが好ましい。熱流束は、ガスに曝される表面の幾何学的表面積当たりの熱として与えられる。
【0059】
圧力シェル/反応器システムから出るガスの所定の温度範囲は、200~1300℃の範囲である。構造体からの生成物ガス出口温度は、構造体の直下または最下流面で測定される。測定技術としては、(電圧降下による)熱電対、抵抗温度検出器、または赤外線検出が可能である。測定点は、構造体から分離して、下流の不活性物質に埋め込むか、または、絶縁性の表面被覆で表面に直接設置することができる。
【0060】
前記反応器システム内の構造体は、好適には構造体を通る水平断面の面積換算直径と構造体の高さとの比として、0.1~2.0の範囲の比を有する。反応器システムを通る断面の面積換算直径は、断面の面積と同等の面積の円の直径として規定される。面積換算直径と構造体の高さとの比が0.1~2.0である場合、構造体を収容する圧力シェルは、他の反応器システムと比較して相対的に小さいことができる。
【0061】
通常、ガスは、構造体の高さに沿って構造体中のチャネル中を流れるように、上向流または下向流方向に反応器システム中を流れる。構造体が多くの巨視的構造、または巨視的構造のアレイを含む場合、アレイ内の個々の巨視的構造は、サイド・バイ・サイドで、重なり合って、またはこれらの組み合わせで配置されていてよい。構造体が1超の巨視的構造を含む場合は、構造体の寸法が当該1超の巨視的構造の寸法であることを強調しておく。このため、一例として、それぞれが高さhを有する互いに重ね合わされた2つの巨視的構造を構造体が含む場合、構造体の高さは、2hである。
【0062】
構造体の体積は、導電性材料の発熱容量と相関する所望の供給材料転化率および/または反応器システムからの温度を考慮して選定される。
【0063】
反応器システムの高さは、好適には0.5~7m、より好ましくは0.5~3mである。反応器システムの高さの例示的な値は、5メートル未満、好ましくは2mあるいは1m未満の高さである。反応器システムおよび反応器システム内の構造体の寸法は相関する。当然のことながら、圧力シェルおよび断熱層によって、反応器システムは構造体それ自体よりもいくらか大きくなる。
【0064】
反応器システムは、オレフィン化合物を含む生成物流を受け、それを高級オレフィン(upgraded olefin)流およびオフガス流に分離するように構成された高級化ユニット(upgrading unit)をさらに備えていてもよい。
【0065】
上述の反応器システムは、隔離されたシステムではない。熱は耐圧壁を越えて伝わらないため、機械的な故障のリスクは高くない。これは、起動が比較的速いことを意味する。実際のところ、本発明は、所与の電圧を印加することで開始することができ、その後システムは熱平衡に向かって作用して、追加のオペレータ入力なしに定常状態に到達する。
【0066】
本明細書に記載の反応器システムにおいて、スチームクラッキング反応条件下で、炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの、少なくとも1種のオレフィンへのスチームクラッキングを実施するための方法;
【0067】
この方法は、以下のステップ:
-前記供給材料ガスを加圧するステップと、
-前記の加圧された供給材料ガスを反応器システムに供給するステップと、
-前記圧力シェルの外側に配置された電力源を前記構造体に接続する導電体を介して電力を供給し、前記導電性材料を電流が流れ得るようにすることで、前記供給材料ガスが構造体上でスチームクラッキング反応を起こすのに十分な温度まで構造体の少なくとも一部を加熱するステップと、
-構造体上で供給材料ガスのスチームクラッキング反応を起こさせるステップと、
-反応器システムから、少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流を取り出すステップと、
を含む。
【0068】
上記システムの詳細はすべて、可能な限り、上述の方法に関連する。
【0069】
一態様において、供給材料ガスは、2~30barの圧力まで加圧される。供給材料ガスは、30~200barの圧力まで加圧されていてもよい。構造体の少なくとも一部は、好適には少なくとも700℃、好ましくは少なくとも900℃、より好ましくは少なくとも1000℃の温度まで加熱される。構造体が加熱される最高温度は、およそ1400℃である。
【0070】
この方法の一態様では、圧力シェルを通る入口から冷却ガスを取り入れて、前記冷却ガスが少なくとも1つの導体上を流れ得るようにするステップをさらに含む。
【0071】
この方法は、オレフィン化合物(複数可)を含む生成物流を高級化ユニットに供給して、それを高級オレフィン流およびオフガス流に分離するステップをさらに含んでいてもよい。
【0072】
高級化ユニットは、アブソーバ、スクラバ、ストリッパ、およびコンデンサの組み合わせを含んでいてもよい。
【0073】
以上から、本明細書に記載の反応器システムにおいて、スチームクラッキング反応条件下で、炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの、少なくとも1種のオレフィンへのクラッキングを第1の定常状態反応条件(A)から第2の定常状態反応条件(B)またはその逆に迅速に切り替える方法が提供される。
【0074】
定常状態の条件への到達は、中心的なプロセスパラメータ(供給材料流量、出口温度、および反応物転化率等)がその後の1時間にわたって、所与のプロセスパラメータの平均プロセル値の±15%以内の値に達した時として規定される。
【0075】
本発明の条件AまたはBは、炭化水素および蒸気を含む供給原料を300Nm3/h~100000Nm3/hの総流量にて5barg~150bargの圧力で、構造体からの生成物ガス出口温度を300~1300℃の温度まで加熱するように平衡が保たれた電力によりシステムが加熱されている状態を伴う。供給原料は、モノリスを通過すると、反応の平衡化に向けて反応することになる。
【0076】
用語「その逆(vice versa)」は、この方法が第1の反応条件(A)から第2の反応条件(B)に切り替わる場合と同様に、第2の反応条件(B)から第1の反応条件(A)に切り替わる場合にも同等に当てはまることを意図して使用している。特に、条件Aから条件Bへの切り替えは、システムのプロセス値が定常状態条件の85%以内に達した場合に完了するものと考えられる。
【0077】
反応器システムは、上述の通りである。すなわち、それは、炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの反応を促進するように構成された構造体を収容する圧力シェルを備え、前記構造体は導電性材料の巨視的構造を含み、前記巨視的構造はセラミックコーティングを支持し、そして、前記反応器システムは、前記構造体と前記圧力シェルとの間に断熱が施されている。反応器システムに関して上述した詳細はすべて、本技術に関連する。
【0078】
本発明の本態様の方法は、以下のステップ:
前記第1の定常状態反応条件(A)において、
-前記供給材料ガスを第1の総流量で反応器システムに供給するステップと、
-前記圧力シェルの外側に配置された電力源を前記構造体に接続する導電体を介して第1の電力を供給することで、前記導電性材料を第1の電流が流れ得るようにするステップと、
これによって、前記第1の定常状態反応条件(A)下で前記供給材料ガスが前記構造体上で第1の生成物ガス混合物に転化される第1の温度まで構造体の少なくとも一部を加熱するステップであって、前記第1の生成物ガスが反応器システムから排出される、ステップと、
前記第2の定常状態反応条件(B)において、
-前記供給材料ガスを第2の総流量で反応器システムに供給するステップと、
-前記圧力シェルの外側に配置された電力源を前記構造体に接続する導電体を介して第2の電力を供給することで、前記導電性材料を第2の電流が流れ得るようにするステップと、
これによって、前記第2の定常状態反応条件(B)下で前記供給材料ガスが前記構造体上で第2の生成物ガス混合物に転化される第2の温度まで構造体の少なくとも一部を加熱するステップであって、前記第2の生成物ガスが反応器システムから排出される、ステップと、
を含む。
【0079】
第1および第2の定常状態反応条件(A)および(B)を実現するために、第2の電力は、前記第1の電力より高く;および/または前記第2の総流量は、前記第1の総流量より高い。
【0080】
特に、総流量の増加は、冷たい供給材料ガスの入力を増加させ、従って、構造体が冷却され、反応性が抑えられ、その結果、第2の定常状態反応条件(B)が実現される。流量の大きな変化は、プロセスに要するエネルギーを変化させる。
【0081】
総流量の変化は、組成の変化を伴わない総流量の変化、または組成の変化、例えば、リサイクル流の増加もしくは供給原料の一部の変化を含み得る。
【0082】
一実施形態において、前記第1の反応条件Aにおけるガス供給材料総流量の前記第2の反応条件Bに対する比(A:B)は、少なくとも1:10である。条件AおよびBの間で切り替えることにより、生成物ガスの生成を大幅に増加/減少させることができる。これは、たとえばエネルギー供給網からの過剰な電気エネルギーが利用可能で、このように化学エネルギーとして貯蔵可能なエネルギー貯蔵、または逆に、他の場所で必要な場合における供給網の電気エネルギーの可用性の増大に本発明を使用できる場合に有利である。また、本実施形態によれば、下流方法で大量の生成物ガスが必要な期間にはその供給に本発明を使用し、それ以外の期間には、本発明を待機状態にて動作させることができる。これは、生成物ガスに継続的な需要がない場合に好都合である。
【0083】
別の実施形態において、反応条件Bにおける構造体からの生成物ガス出口温度は、反応条件Aにおける構造体からの生成物ガス出口温度よりも50℃~800℃高い(例えば100℃~500℃高く、好ましくは150℃~400℃高い)。これにより、反応器システムを低温状態から動作条件まで迅速に起動可能となる。これは、起動手順が、以下:
・フル稼働容量でのプラントの定常状態条件の凝縮点を上回る温度まで、非凝縮ガス中でプロセス装置を加熱するステップと、
・供給材料ガス成分を加圧するステップと、
・第1の電力を適用しつつ、供給材料ガス成分を反応器システムに供給するステップと、
・第2の電力の適用によって、より高い動作温度に切り替えるステップと、
を含む場合のシステム起動の状況において有利である。
【0084】
このように、起動手順のすべてのステップが比較的速い。
【0085】
反応条件Bにおける構造体からの生成物ガス出口温度は通常、反応条件Aにおける構造体からの生成物ガス出口温度よりも50℃を超えて高くならない。これにより、システムからの生成物ガス組成を大幅に変えることなく、条件AおよびBの間で迅速に変更が可能となる。このように、これらの化学的環境に大きな影響を与えることなく、反応器システムの下流プロセスに対する生成物ガス需要を異なる量で容易に満たすことができる。
【0086】
一実施形態において、反応条件AおよびB間の切り替えには、ガス供給材料総流量を前記第1の総流量から前記第2の総流量へと徐々に変化させることと、前記導電性材料の印加電位を前記第1の電力から前記第2の電力へ同時に徐々に変化させることと、を含む。このように、移行段階においても、生成物ガスの組成をほぼ一定に保持可能である。一実施形態において、このような段階的変化は、電力を増やしつつ流量を小刻みに増やして、構造体からの生成物ガス出口温度をほぼ一定に維持するような方法で行う。
【0087】
一実施形態において、構造体は、第1の熱流束を生成するように構成された第1の部分および第2の熱流束を生成するように構成された第2の部分を備え、第1の熱流束が第2の熱流束よりも低く、第1の部分が第2の部分の上流にある。ここで、用語「第1の部分が第2の部分の上流にある(the first part is upstream the second part)」は、反応器システムに供給されたガスが、当該ガスが第2の部分に達する前に第1の部分に達することを示す意図がある。構造体の第1の部分および第2の部分は、セラミックコーティングを支持する2つの異なる巨視的構造であってもよく、これらの2つの異なる巨視的構造は、所与の電流および電圧に対して異なる熱流束を生成するように構成されていてもよい。たとえば、構造体の第1の部分が大きな表面積を有し得る一方、構造体の第2の部分はより小さい表面積を有する。これは、第1の部分の断面積よりも小さな断面積を有する第2の部分に構造体を設けることによって達成され得る。あるいは、構造体の第1の部分を通る電流路は、構造体の第2の部分を通る電流路よりも直線的であり得、従ってそのことは、電流を、構造体の第1の部分を通るよりも、構造体の第2の部分を通る際により捩れたり曲がったりするようにし、それによって、電流は、構造体の第2の部分において第1の部分よりも熱をより生成する。前述の通り、巨視的構造中のスリットまたは切り込みによって、巨視的構造を通る電流路がジグザグとなり得る。構造体の第1および第2の部分は、異なる熱流束を供給できるように、異なる電流および電圧であってもよいことに留意するものとする。ただし、第1および第2の部分の異なる熱流束は、上述のような第1および第2の部分の異なる物理的特性のため、第1および第2の部分を通して/これらの部分上で、同一の電流および電圧を供給することによって達成することもできる。別の実施形態において、構造体は、第3の熱流束を生成するように構成された第3の部分を備え、第3の熱流束が第1熱流束および/または第2の熱流束よりも低く、第3の部分が第1の部分および/または第2の部分の下流にある。
【0088】
一実施形態において、反応器システムは、圧力シェルから出るガスの温度が所定の範囲内にあることを確実にするためにおよび/または供給材料ガスの転化率が所定の範囲内にあることを確実にするために、電力源を制御するように構成された制御システムをさらに備える。電力源の制御は、電源からの電気出力の制御である。電力源の制御は、たとえば電力源からの電圧および/もしくは電流の制御、電力源のオン/オフ切り替えの制御、またはこれらの組み合わせとして実行され得る。構造体に供給される電力は、交流または直流の形態であり得る。
【0089】
一実施形態によれば、構造体からの生成物ガス出口温度のプロセス値のフィードバック読み出しに基づいて、比例・積分・微分(PID)コントローラが電位を制御する。
【0090】
本明細書に記載の方法は、条件AおよびB間の迅速な切り替えを可能にする。したがって、反応条件AおよびB間の切り替えは、好適には3時間未満(2時間未満、60分未満、好ましくは30分未満、より好ましくは15分未満等)の期間にわたって行われる。
【0091】
一実施形態において、反応条件AおよびB間の切り替えには、第2の電力の構造体への供給を伴う。これは、好適には総流量を本質的に一定に保つ間に生じる。
【0092】
一態様において、反応条件AおよびB間の切り替えは、前記反応条件AおよびB間の遷移状態を含み、前記遷移状態は、電力がオフにされる第1の期間と、その後、条件Bの前記第2の電力が構造体に供給される第2の期間と、を含む。これによって、定常状態をより高速に確立可能となる。
【0093】
一態様において、反応条件AおよびB間の切り替えは、前記反応条件AおよびB間の遷移状態を含み、前記遷移状態は、第3の電力が構造体に供給される第1の期間と、その後、条件Bの前記第2の電力が構造体に供給される第2の期間と、を含み、前記第3の電力が第2の電力よりも大きい。これによって、定常状態をより高速に確立可能となる。
【0094】
当該プロセスは、本発明の反応器システムの下流に適用するための最終生成物ガスを提供するために、生成物ガスに対して実施されるさらに別のステップ、例えば精製、加圧、加熱、冷却等を含み得る。
【0095】
供給材料ガスは、個々の供給材料ガスを含んでいてもよく、供給材料ガスを加圧するステップは、個々の供給材料ガスを個別に加圧することを含んでいてもよいことに留意するものとする。さらに、方法のステップの記載順序は、必ずしも方法のステップが行われる順序ではなく、2つ以上のステップが同時に行われる場合もあれば、または上記と異なる順序で行われる場合もあることに留意するものとする。
【0096】
一実施形態において、前記方法は、圧力シェルの上流で少なくとも2barの圧力までガスを加圧するステップを含む。選定される動作圧力は、吸熱反応および周囲のプロセスステップにおける反応器の統合によって規定される。
【0097】
本発明に係る方法の一実施形態において、反応器システムに導かれる供給材料ガスの温度は、100℃~700℃である。ただし、すべての実施形態において、供給材料ガスの温度および圧力は、供給材料ガスが露点を上回るように調整される。
【0098】
本発明の方法の一実施形態において、構造体は、構造体の最高温度が200℃~1300℃となるように加熱される。使用する温度は、吸熱反応によって決まる。構造体の最高温度は、導電性材料の材質によって決まり;従って、導電性材料が1380℃~1490℃の温度(実際の合金によって決まる)で溶融するFeCr合金の場合、最高温度は融点よりいくらか低く、たとえば導電性材料の融点がおよそ1400℃の場合は、およそ1300℃とすべきである。融点に近づくと材料が柔らかくなり、延性となるためである。また、最高温度は、コーティングの耐久性により制限され得る。
【0099】
一実施形態において、本発明に係る方法は、圧力シェルを通る入口を通して冷却ガスを取り入れて、冷却ガスが少なくとも1つの導体および/または器具にわたって流れ得るようにするステップをさらに含む。冷却ガスは、有利には、水素、窒素、アンモニア、メタン、または少なくとも1つの導体の周りの領域もしくはゾーンの冷却に適したその他任意のガスであり得る。供給材料ガスの一部が冷却ガスとして圧力シェルに供給されてもよい。
【0100】
本発明に係る一実施形態において、方法は、圧力シェルを通る入口を通して冷却ガスを取り入れて、冷却ガスが少なくとも1つの導体および/または器具にわたって流れ得るようにするステップをさらに含む。冷却ガスは、任意の適切なガスであってもよく、そのようなガスの例は、水素、窒素、アンモニア、メタン、またはこれらの混合物である。冷却ガスは、導体(複数可)を流れてそれ(それら)を内部から冷却してもよい。この場合、導体(複数可)は、それ/それらの内部を流れる冷却ガスのための場所があるように、中空である必要がある。
【0101】
セラミックコーティングは、Al2O3、ZrO2、MgAl2O3、CaAl2O3、またはこれらの組み合わせであってもよく、潜在的には、Y、Ti、LaまたはCeの酸化物と混合されている。反応器の最高温度は、850~1300℃であってもよい。供給材料ガスの圧力は、2~180bar、好ましくはおよそ5barであってもよい。一実施形態において、前記巨視的構造は、Fe Cr Alの合金で構成され、ZrO2およびAl2O3の混合物のセラミックコーティングを支持する。
【0102】
図面の詳細な説明
図面全体を通して、同じ参照番号は同じ要素を示す。
【0103】
図1aは、本発明に係る反応器システム100の一実施形態の断面を示している。反応器システム100は、巨視的構造5のアレイとして配置された構造体10を備える。アレイ中の各巨視的構造5は、セラミックコーティングにより被覆されている。反応器システム100は、電源(図示せず)および構造体10すなわち巨視的構造のアレイに接続された導体40、40’をさらに備える。導体40、40’は、器具50を介して、構造体を収容する圧力シェル20の壁を通り抜けてかつ圧力シェルの内側の絶縁材料30を通り抜けて導かれる。導体40’は、導体接触レール41によって、巨視的構造5のアレイに接続されている。
【0104】
一実施形態において、電力源は、26Vの電圧および1200Aの電流を供給する。別の実施形態において、電力源は、5Vの電圧および240Aの電流を供給する。電流は、導電体40、40’を通して導体接触レール41に導かれ、電流は、構造体10を通って、一方の導体接触レール41から(たとえば、
図1aの左側に見られる導体接触レールから)他方の導体接触レール41(たとえば、
図1aの右側に見られる導体接触レール)に流れる。電流は、交流(およびたとえば、両方向に交互に流れる)または、直流(および2方向のいずれかに流れる)の両方が可能である。
【0105】
巨視的構造5は、導電性材料で構成されている。特に、アルミニウム、鉄およびクロムから成るカンタル合金が好ましい。セラミックコーティングは、たとえば酸化物であり、構造体5に被覆されている。導体40、40’は、鉄、アルミニウム、ニッケル、銅、またはこれらの合金等の材料で構成されている。
【0106】
動作時は、矢印11で示すように、炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスが上から反応器システム100に入る。そして、矢印12で示すように、生成物流が反応器システムの底部から出る。
【0107】
図1bは、圧力シェル20および断熱層30の一部を除いた
図1aの反応器システム100を示しており、
図2は、反応器システム100の一部の拡大図である。
図1bおよび
図2においては、導体40’と導体接触レール41との間の接続を
図1aよりも明確に示している。さらに、導体40が器具50中で圧力シェルの壁を通り抜けて導かれ、1つの導体40が圧力シェル内で3つの導体40’に分岐していることが分かる。導体40’の数は、3未満あるいは3超等、任意適当な数であってもよいことに留意するものとする。
【0108】
図1a、
図1b、および
図2に示す反応器システムにおいて、導体40、40’は、器具50を介して、構造体を収容する圧力シェル20の壁を通り抜けておよび圧力シェルの内側の絶縁材料30を通り抜けて導かれる。矢印11で示すように、反応器システム100の上面の入口を介して供給材料ガスが反応器システム100に入り、矢印12で示すように、反応器システム100の底部の出口を介して転化生成物流が反応器システム100から出る。さらに、器具50との近傍または組み合わせにおいて、1つまたは複数の追加的な入口(
図1a~
図2には示さず)が有利には存在している。このような追加的な入口によれば、圧力シェル内の少なくとも1つの導体の上方、周囲、近傍、または内側を冷却ガスが流れて、器具の加熱を低減することができる。冷却ガスは、たとえば水素、窒素、メタン、またはこれらの混合物であり得る。圧力シェルに入る際の冷却ガスの温度は、たとえばおよそ100℃であってもよい。
【0109】
図1a~
図2に示す反応器システム100において、構造体10の下面と圧力シェルの底部との間には、不活性材料(
図1a~
図2には示さず)が存在しているのが好都合である。さらに、巨視的構造5の構造体10の外側と絶縁材料30との間に不活性材料が存在しているのが好都合である。従って、絶縁材料30の一方の面が圧力シェル20の内面に対向し、絶縁材料30の他方の面が不活性材料に対向する。不活性材料は、たとえばセラミック材料であり、ペレットの形態であってもよい。不活性材料は、反応器システム100にわたる圧力損失の制御および反応器システム100を通るガスの流れの制御に役立ち、その結果ガスが構造体10の表面にわたって流れる。
【0110】
図3aおよび
図3bは、構造体10’を備えた本発明の反応器システム100’、100’’の一実施形態の模式断面図である。構造体10’は、セラミックコーティングを備えた単一の巨視的構造から成っていてもよいし、または2つ以上の巨視的構造を含んでいてもよい。反応器システム100’、100’’はそれぞれ、圧力シェル20と、構造体10’と圧力シェル20との間の断熱層80と、を備える。構造体10’と断熱層または圧力シェル20との間の間隙を充填するのに、不活性材料90を使用可能である。
図3aおよび
図3bにおいて、不活性材料90は、点線領域で示しており;不活性材料90は、任意適切な形態(たとえば、不活性ペレットの形態)であってもよく、たとえばそれはセラミック材料である。不活性材料90は、反応器システム内の圧力損失の制御および反応器システム内のガス流の制御に役立つ。さらに、不活性材料は通常、断熱効果を有する。
【0111】
図3aおよび
図3bから、反応器システム100’、100’’は、構造体10’と熱交換関係にある内管15をさらに備えることが分かる。内管15は、1つまたは複数の内管を通って流れる生成物ガスが構造体上を流れるガスと熱交換関係にあるように、構造体10’から生成物ガスを引き出すように適合されており;しかしながら、内管15は、断熱層80、不活性材料90、間隙、または組み合わせのいずれかによって、構造体10’から電気的に絶縁されている。これは、バイオネット反応器システムとして示されるレイアウトである。このレイアウトにおいて、内管内の生成物ガスは、巨視的構造上を流れるプロセスガスの加熱に役立つ。
図3aおよび
図3bに示すレイアウトにおいては、矢印11で示すように、供給材料ガスが反応器システム100’、100’’に入り、矢印13で示すように、構造体10’中へと続く。供給材料ガスは、構造体10’上の通過の間に、スチームクラッキング反応を受ける。構造体10’から出るガスは、少なくとも部分的にオレフィンに転化される。矢印14で示すように、少なくとも部分的に転化されたガスが構造体10’から内管15に流れ込み、矢印12で示すように、内管から出る。内管15と構造体10’との間には断熱層80が存在するものの、内管15内のガスと構造体10’内または構造体10’の上流のガスから、何らかの熱伝達が生じることになる。
図3aおよび
図3bに示す実施形態において、供給材料ガスは、構造体10’を通って下方に流れ、内管15を通って上方に流れる。ただし、供給材料ガスが構造体10’を通って上方に流れ、内管15を通って下方に流れるように、構成を上下反転させることも考えられる。
【0112】
図4および
図5はそれぞれ、上および横から見た、巨視的構造のアレイを備えた構造体の一実施形態を示す。
図4は、上から見た、すなわち
図1aおよび
図1bの矢印11から見た、巨視的構造5のアレイを備えた構造体10を示す。アレイは、5つの巨視的構造5の6つの列、すなわち1a、1b、1c、1d、1eおよび1fを有する。各列における巨視的構造5は、同じ列におけるその隣接する巨視的構造(複数可)に接続され、各列の最も外側の2つの巨視的構造は、導体接触レール41に接続されている。巨視的構造の列における隣接する巨視的構造5は、接続片3によって互いに接続されている。
【0113】
図5は、横から見た、
図4の巨視的構造5のアレイを有する構造体10を示す。
図5から、各巨視的構造5が
図4で示される断面と垂直に、長手方向に延びていることが分かる。各巨視的構造5は、その長手方向に沿ってそれに切り込まれたスリット60を有する(
図5参照)。したがって、電源が投入されると、電流が導体接触レール41を介して巨視的構造5のアレイに入り、スリット60の下限まで第1の巨視的構造5を下方に導かれた後、接続片3に向かって上方に導かれる。電流は、アレイ10中の巨視的構造5の各列1a~1fにおいて、対応するジグザグ経路を介して各巨視的構造5を下方および上方に導かれる。この構成は、有利には、構造体10での抵抗を増加させる。
【0114】
図6は、本発明に係る構造体10を斜視図で示す。構造体10は、セラミックコーティングにより被覆された巨視的構造を含む。構造体内では、巨視的構造5の長手方向(
図6の矢印「h」で示す)に沿ってチャネル70が延びている。これらのチャネルは、壁75により規定されている。
図6に示す実施形態において、壁75は、矢印12で示す流れ方向から見た場合に、多くの平行な正方形チャネル70を規定する。構造体10は、上から見た場合に、辺長e1およびe2により規定された実質的に正方形の外周を有する。ただし、この外周としては、円形も可能であるし、または別の形状も可能である。
【0115】
構造体10の壁75は、巨視的構造上に被覆されたセラミックコーティング(たとえば、酸化物)により被覆された押し出しまたは3D印刷材料である。図面には、セラミックコーティングを示していない。セラミックコーティングは、構造体10内のすべての壁(その上を動作時にガス流が流れ、構造体の加熱された表面と相互作用する)上に存在する。
【0116】
このため、スチームクラッキング反応用の反応器システムでの使用においては、供給材料ガスがチャネル70を通って流れ、構造体の加熱された表面と相互作用する。
【0117】
図6に示す構造体10においては、スリット60が構造体10に切り込まれている。このスリット60は、巨視的構造内で電流をジグザグルート(本例においては、下方の後、上方)に流すことによって、電流路を延ばすことにより抵抗を高くし、結果として、巨視的構造内で放散される熱を多くする。巨視的構造内のスリット60には、スリット60の横断方向に電流が流れることがないように、絶縁材料が埋め込まれていてもよい。
【0118】
構造体10中のチャネル70は、両端が開いている。反応器システムにおける構造体の使用時は、
図1aおよび
図1bの矢印11および12で示す方向に供給材料ガスがユニットを流れ、チャネル70の壁75との接触および熱輻射によって加熱される。この熱によって、所望のスチームクラッキング反応が開始となる。チャネル70の壁75は、たとえば0.5mmの厚さを有していてよく、また、壁75上に被覆されたセラミックコーティングは、たとえば0.1mmの厚さを有していてよい。矢印11および12(
図1aおよび
図1b参照)は、供給材料ガスの流れが下向流であることを示すが、反対の流れ方向すなわち上向流も考えられる。
【0119】
図7は、斜視図において、コネクタ7が取り付けられた、
図1aおよび
図1bの構造体10を示す。コネクタ7はそれぞれ、構造体10の一部を導体40に接続する。導体40は両方とも、電源(図示せず)に接続されている。コネクタ7はそれぞれ、構造体の上部に接続されている。導体40が電源に接続されると、電流が導体を介して対応するコネクタ7に導かれ、構造体10を流れる。スリット60は、構造体10の高さhに沿ったその長さ全体において、横断方向(
図7の水平方向)の電流の流れを妨げる。したがって、電流は、スリット60に沿う構造体の部分において、
図7に示すように下方の方向に流れた後、
図7に示すようにスリット60の下方で長手方向を横断する方向に流れ、最終的に、構造体の長手方向に他方のコネクタ7まで上方に流れる。
図7のコネクタ7は、とりわけ、ねじおよびボルト等の機械的固定手段によって、構造体に対して機械的に固定されている。ただし、付加的または代替的な固定手段が考えられる。一実施形態において、電力源は、3Vの電圧および400Aの電流を生成する。コネクタ7は、たとえば鉄、アルミニウム、ニッケル、銅、またはこれらの合金等の材料で構成されている。
【0120】
前述の通り、構造体10は、酸化物等のセラミックコーティングにより被覆されていてもよい。ただし、コネクタ7に接続される構造体10の部分は、酸化物により被覆されないべきである。代わりに、構造体の巨視的構造は、コネクタ7に、巨視的構造とコネクタとの間の良好な電気的接続を得るために、直接曝露または接続されるべきである。
【0121】
コネクタ7および従って導体40が、構造体10の同じ端部に、すなわち
図7に示すように上端に接続されている場合、構造体10を収容する反応器システムに入る供給材料ガスは、コネクタ7および導体40を冷却可能となる。たとえば、このような反応器システムに入る供給材料ガスは、200℃または400℃の温度を有することができ、従って、コネクタ7および導体40がこの温度よりもはるかに高い温度に達しないようにし得る。
【0122】
図8は、コネクタ7’’’を備えた構造体10’’’の別の実施形態を示している。構造体10’’’は、たとえば
図6に示すような構造体である。コネクタ7’’’はそれぞれ、その上側に、導体(図示せず)への接続のために、3つの孔を有する。構造体10’’’のスリット60(
図6参照)の内側には、1つの電気的絶縁材料61が存在する。
【0123】
図面に示す構造体は、z軸と垂直に見て正方形断面のチャネルを有するように示しているが、チャネルの断面としては、任意適当な形状が考えられることに留意するものとする。したがって、構造体のチャネルとしては代替的に、たとえば三角形、六角形、八角形、または円形も可能であり、三角形、正方形、および六角形の形状が好ましい。
【0124】
以下の番号付き項を提供する。
【0125】
項1.炭化水素を含む供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するための反応器システムであって、以下:
-炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの供給;
-炭化水素を含む前記供給材料ガスのスチームクラッキングを実施するように構成された構造体、ただし、前記構造体は、導電性材料の巨視的構造を含む;
-前記構造体を収容する圧力シェル、ただし前記圧力シェルは、前記供給材料ガスを取り入れるための入口および生成物ガスを取り出すための出口を備えており、前記入口は、前記供給材料ガスが前記構造体の第1の端部において前記構造体に入り、前記生成物ガスが前記構造体の第2の端部から前記構造体を出るように位置決めされている;
-前記構造体と前記圧力シェルとの間の断熱層;
-前記構造体におよび前記圧力シェルの外側に配置された電力源に電気的に接続された少なくとも2つの導体、ただし、前記電力源は、前記巨視的構造を通して電流を流すことにより前記構造体の少なくとも一部を少なくとも500℃の温度まで加熱するように容量規定されており、前記少なくとも2つの導体は、前記構造体の前記第2の端部よりも前記構造体の前記第1の端部に近い前記構造体上の位置で前記構造体に接続されており、および前記構造体は、電流を、前記少なくとも2つの導体のうちの1つの導体から実質的に前記構造体の前記第2の端部まで流れ、そして第2の導体に戻るように案内するように構成されており;および
-少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流用の出口、
を備えた、反応器システム。
【0126】
項2.前記電力源が、前記構造体の少なくとも一部を少なくとも700℃、好ましくは少なくとも900℃、より好ましくは少なくとも1000℃の温度まで加熱するように容量規定されている、項1に記載の反応器システム。
【0127】
項3.前記供給材料ガス中の炭化水素が、好ましくはナフサ、液化石油ガス(LPG)、エタン、プロパンまたはブタンから選択される、飽和炭化水素である、項1または2に記載の反応器システム。
【0128】
項4.前記生成物流中の前記オレフィン化合物が、エテン、プロペンもしくはブテン、またはこれらの混合物である、項1~3のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0129】
項5.前記巨視的構造が、セラミックコーティングを支持する、項1~4のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0130】
項6.前記圧力シェルが、5~30barの設計圧力を有する、項1~5のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0131】
項7.前記圧力シェルが、2~30barの設計圧力を有する、項1~6のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0132】
項8.前記圧力シェルが、30~200barの設計圧力を有する、項1~5のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0133】
項9.前記導電性材料の抵抗率が、10-5Ω・m~10-7Ω・mである、項1~8のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0134】
項10.前記少なくとも2つの導体が、当該少なくとも2つの導体が前記圧力シェルから電気的に絶縁されるように器具中において前記圧力シェルを通り抜けて導かれる、項1~9のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0135】
項11.前記圧力シェルが、冷却ガスが前記圧力シェル内の少なくとも1つの導体の上方、周囲、近傍または内側を流れ得るように、少なくとも1つの器具の近傍にまたは当該器具と組み合わせて、1つまたは複数の入口をさらに備える、項1~10のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0136】
項12.前記反応器システムが、前記構造体と熱交換関係にあるが前記構造体から電気的に絶縁された内管をさらに備え、前記内管が、前記構造体から生成物ガスを引き出すように適合されており、その結果、前記内管を通って流れる前記生成物ガスが前記構造体にわたって流れるガスと熱交換関係にある、項1~11のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0137】
項13.前記構造体と前記少なくとも2つの導体との間の前記接続が、機械的接続、溶接接続、ろう付け接続またはこれらの組み合わせである、項1~12のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0138】
項14.前記導電性材料が、3D印刷もしくは押出成形され焼結された巨視的構造を含み、当該巨視的構造がセラミックコーティングを支持する、項1~13のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0139】
項15.前記セラミックコーティングが、ZrO2、Al2O3、MgAl2O4、CaAl2O4、またはこれらの混合物から選択される、項1~14のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0140】
項16.前記構造体が、互いに電気的に接続された巨視的構造のアレイを含む、項1~15のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0141】
項17.前記構造体が、前記構造体の長さの少なくとも70%について、主電流路の電流密度ベクトルが前記構造体の長さと平行な非ゼロの成分値を有するように、電流を前記構造体を通して案内するように構成された少なくとも1つの電気的絶縁部を有する、項1~16のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0142】
項18.前記巨視的構造が、複数の平行チャネル、複数の非平行チャネルおよび/または複数のラビリンスチャネルを有する、項1~17のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0143】
項19.前記巨視的構造の材料が、前記材料の抵抗加熱によって500~50000W/m2の熱流束を生成するように構成された材料として選択される、項1~18のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0144】
項20.前記構造体が、第1の熱流束を生成するように構成された第1の部分および第2の熱流束を生成するように構成された第2の部分を備え、前記第1の熱流束が前記第2の熱流束よりも低く、前記第1の部分が前記第2の部分の上流にある、項1~19のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0145】
項21.前記構造体が、第3の熱流束を生成するように構成された第3の部分を備え、前記第3の熱流束が前記第1の熱流束および/または前記第2の熱流束よりも低く、前記第3の部分が前記第1の部分および/または前記第2の部分の下流にある、項1~20のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0146】
項22.前記反応器システムが、前記圧力シェルを出るガスの温度が所定の範囲内にあるようにおよび/または前記供給材料ガスの転化率が所定の範囲内にあるように電力源を制御するように構成された制御システムをさらに備える、項1~21のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0147】
項23.前記反応器システム内の前記構造体が、0.1~2.0の範囲内の、前記構造体を通る水平断面の面積換算直径と前記構造体の高さとの比を有する、項1~22のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0148】
項24.前記反応器システムの高さが、0.5~7m、より好ましくは0.5~3mである、項1~23のいずれか一つに記載の反応器システム。
【0149】
項25.項1~24のいずれか一つに記載の反応器システムにおいて、スチームクラッキング反応条件下で、炭化水素および蒸気を含む供給材料ガスの、少なくとも1種のオレフィンへのスチームクラッキングを実施するための方法であって、以下のステップ:
-前記供給材料ガスを加圧するステップ;
-前記の加圧された供給材料ガスを前記反応器システムに供給するステップ;
-前記圧力シェルの外側に配置された電力源を前記構造体に接続する導電体を介して電力を供給し、電流が前記導電性材料を通して流れ得るようにし、それによって前記供給材料ガスが前記構造体上でスチームクラッキング反応を受けるのに十分な温度まで前記構造体の少なくとも一部を加熱するステップ;
-前記供給材料ガスに前記構造体上でスチームクラッキング反応を受けさせるステップ;および
-前記反応器システムから、少なくとも1種のオレフィン化合物を含む生成物流を取り出すステップ、
を含む、前記方法。
【0150】
項26.前記供給材料ガスが、2~30barの圧力まで加圧される、項25に記載の方法。
【0151】
項27.前記供給材料ガスが、30~200barの圧力まで加圧される、項25に記載の方法。
【0152】
項28.前記構造体の少なくとも一部が、少なくとも700℃、好ましくは少なくとも900℃、より好ましくは少なくとも1000℃の温度まで加熱される、項25~27のいずれか一つに記載の方法。
【0153】
項29.前記冷却ガスが少なくとも1つの導体上を流れ得るように、前記圧力シェルを通り抜ける入口を通して冷却ガスを取り入れるステップをさらに含む、項25~28のいずれか一つに記載の方法。
【0154】
以上、種々実施形態および例をかなり詳細に記載しつつ、これらの実施形態および例の記述によって本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲をこのような詳細に限定することも、如何なる方法で制限することも、本出願人の意図するところではない。当業者には、別の利点および改良点が容易に明らかとなるであろう。したがって、本発明は、その広い態様において、図示および記載の特定の詳細、代表的な方法、および説明例に制限されるものではない。以上より、本出願人の一般的な発明概念の趣旨からも範囲からも逸脱することなく、上記のような詳細から逸脱可能である。
【国際調査報告】