IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2023-500766血液処置装置の調整可能な値を設定するためのコンピュータシステム
<>
  • 特表-血液処置装置の調整可能な値を設定するためのコンピュータシステム 図1
  • 特表-血液処置装置の調整可能な値を設定するためのコンピュータシステム 図2
  • 特表-血液処置装置の調整可能な値を設定するためのコンピュータシステム 図3a
  • 特表-血液処置装置の調整可能な値を設定するためのコンピュータシステム 図3b
  • 特表-血液処置装置の調整可能な値を設定するためのコンピュータシステム 図3c
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】血液処置装置の調整可能な値を設定するためのコンピュータシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/40 20180101AFI20221228BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
G16H20/40
A61M1/16 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577146
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2020081893
(87)【国際公開番号】W WO2021094446
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】102019130433.4
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】クレビンクハウス、ユルゲン
【テーマコード(参考)】
4C077
5L099
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE01
4C077EE03
4C077HH02
4C077HH03
4C077HH15
4C077HH21
4C077JJ02
4C077JJ03
4C077JJ08
4C077JJ16
4C077JJ24
4C077KK04
4C077KK25
5L099AA01
(57)【要約】
本発明は、第1の入力インターフェース(I1)と、第2の入力インターフェース(I2)と、出力インターフェースとを有する、血液処置装置(100)の設定値を指定するためのコンピュータシステム(1)に関する。また本コンピュータシステムは、コンピューティングデバイス(5)とディスプレイデバイス(I3)とを有し、コンピューティングデバイス(5)は、血液処置装置(100)を介して腎用量の目標値を読み込んだ後に、ディスプレイデバイス(I3)を使用して、各場合における、一方では血液ポンプ(101)からの流量についての正確に1つの設定値(Q 、Q 、Q )と、他方では透析流体ポンプ(121)からの流量についての正確に1つの設定値(D1、D2、D3)との複数の組合せ(K1、K2、K3)からの選択範囲(A)を含むグラフをユーザに表示するようにプログラムされている。ユーザは、表示された選択範囲Aを、第2の入力インターフェース(I2)を介して表示された組合せのうちの1つを選択するための基準として採用し得る。またコンピューティングデバイス(5)は、選択された組合せ(K)中の血液ポンプ(101)の設定値(Q )および透析流体ポンプ(121)の設定値(D )を、出力インターフェースを介して出力することができるようにプログラムされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液処置装置の調整可能な値を設定するコンピュータシステムであって、
- 第1の入力インターフェースと、
- 第2の入力インターフェースと、
- 出力インターフェースと、
- 計算デバイスと、
- ディスプレイデバイスと
を有し、
前記計算デバイスは、
- 血液処置装置を使用する患者の処置のためのパラメータ値として腎用量の目標値を読み取るために前記第1の入力インターフェースを使用することと、
- 前記ディスプレイデバイスを介して、選択範囲(A)をグラフでユーザに表示することと、ここにおいて、前記選択範囲(A)は、前記計算デバイスによって、一方では前記腎用量の前記読み取られた目標値と、他方では前記血液ポンプの流量についての正確に1つの調整可能な値(Q 、Q 、Q )および前記透析液ポンプの流量についての正確に1つの調整可能な値(D 、D 、D )の複数の組合せ(K、K、K)とを考慮して決定され、
- 前記表示された組合せ(K1、K2、K3)から組合せ(K)を前記ユーザによって選択するための第2の入力インターフェースと
を行うようにプログラムされており、
- 前記計算デバイスは、前記出力インターフェースを介して、前記選択された組合せ(K)の前記血液ポンプのための前記調整可能な値(Q )および前記透析液ポンプのための前記調整可能な値(D )を提示するようにさらにプログラムされている、コンピュータシステム。
【請求項2】
前記計算デバイスは、
- さらなるパラメータ値(B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7)を読み取るようにさらにプログラムされており、
- 前記選択範囲(A)は、前記計算デバイスによって前記さらなるパラメータ値(B1~B7)を考慮してさらに制限される、請求項1に記載のコンピュータシステム。
【請求項3】
前記さらなるパラメータ値(B1~B7)は、所望の抗凝固、特にクエン酸塩-カルシウム抗凝固、または血清中の所望の重炭酸塩濃度を考慮するか、またはそれに関連する、請求項1または2に記載のコンピュータシステム。
【請求項4】
前記コンピュータシステムは、モバイルデバイス、ハンドヘルドデバイス、携帯電話、スマートフォン、タブレット等、または本目的に好適なアプリケーションである、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
【請求項5】
前記計算デバイスは、前記ユーザの注意のために、前記ディスプレイデバイスを介して、前記選択された組合せ(K)の前記血液ポンプのための前記調整可能な値(Q )および前記透析液ポンプのための前記調整可能な値(D )を表示または提示するようにプログラムされている、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
【請求項6】
前記コンピュータシステムは、血液処置装置の制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスであるか、または前記血液処置装置と信号通信している、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
【請求項7】
前記制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスは、前記選択された組合せ(K)の前記血液ポンプのための前記調整可能な値(Q )および前記透析液ポンプのための前記調整可能な値(D )に基づいて前記血液処置装置を制御または調節するようにプログラムされている、請求項6に記載のコンピュータシステム。
【請求項8】
透析装置として具現化され、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータシステムを備える、血液処置装置。
【請求項9】
血液透析装置、血液濾過装置、または血液透析濾過装置として、特に長期腎代替療法または持続的腎代替療法(CRRT)のための装置として具現化される、請求項8に記載の血液処置装置。
【請求項10】
- 透析装置として具現化される1つまたは複数の血液処置装置と、
- 請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータシステムと
を備え、またはそれらからなり、
前記1つまたは複数の血液処置装置および前記コンピュータシステムは、互いに分離して設けられている、システム。
【請求項11】
血液処置装置の調整可能な値を設定する方法であって、
- 請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータシステム、請求項8~9のいずれか一項に記載の血液処置装置、または請求項10に記載のシステムを提供することと、
- 血液処置装置を介して患者の前記処置のためのパラメータ値として前記腎用量の目標値を読み取ること、または前記第1の入力インターフェースを介して前記パラメータ値を入力することと、
- 前記ディスプレイデバイスを介して、前記ユーザの注意のために選択範囲(A)をグラフで表示することと、ここにおいて、前記選択範囲(A)は、前記計算デバイスによって前記腎用量の前記目標値を考慮して決定され、および、一方では前記血液ポンプの流量についての正確に1つの調整可能な値(Q 、Q 、Q )と、他方では前記透析液ポンプの流量についての正確に1つの調整可能な値(D 、D 、D )との複数の組合せを表示することと、
- 前記第2の入力インターフェースを介して前記ユーザによって前記表示された組合せ(K1、K2、K3)のうちの組合せ(K)を選択することと、
- 前記出力インターフェースを介して、前記選択された組合せ(K)の前記血液ポンプのための前記調整可能な値(Q )および前記透析液ポンプのための前記調整可能な値(D )を表示または提示することと
を行うステップを包含する、方法。
【請求項12】
- 前記ユーザの前記注意のために、前記ディスプレイデバイスを介して、前記選択された組合せ(K)の前記血液ポンプのための前記調整可能な値(Q )および前記透析液ポンプのための前記調整可能な値(D )を表示または提示するさらなるステップを包含する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
- 前記選択された組合せ(K)の前記血液ポンプのための前記調整可能な値(Q )および前記透析液ポンプのための前記調整可能な値(D )に基づいて前記血液処置装置を制御または調節するさらなるステップを包含する、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
プログラム可能なコンピュータシステムが請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータシステムとなるようにプログラムされることができるように前記コンピュータシステムと相互作用するように構成された、電子的に読み取り可能な制御信号を有する、特にディスケット、CDまたはDVD、EPROM、FRAMまたはSSDの形態のデジタル記憶媒体。
【請求項15】
プログラム可能なコンピュータシステムが請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータシステムとなるようにプログラムされることができるように前記コンピュータシステムと相互作用するための、信号波としての、または機械読取り可能キャリア上に保存されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、コンピュータシステムが請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータシステムとなるようにプログラムされることができるようにするプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のコンピュータシステムに関する。また、本発明は、請求項8のプリアンブルに記載の血液処置装置、および請求項10のプリアンブルに記載のシステムに関する。また、本発明は、請求項11のプリアンブルに記載の方法、請求項14に記載のデジタル記憶媒体、請求項15に記載のコンピュータプログラム製品、および請求項16に記載のコンピュータプログラム(各場合においてそれらのプリアンブルに記載される)に関する。
【0002】
血液処置の目的のために、可変の処置パラメータのための調整可能な値が、この目的のために使用される血液処置装置に、ユーザ、例えば病院スタッフによって入力される。ユーザは、そのような調整可能な値を、例えばスクリーン(タッチスクリーン)または他のインターフェースを介して手動入力によって変更することができる。
【0003】
透析治療における腎用量(renal dose)などの所定の治療目標または所定の目標を達成するために、ユーザは、部分的に相互に関連する一連の調整可能な値を決定または変更する必要があり得、これが、血液処置装置の設定が要求の厳しい誤りを起こしやすい行動となり得る理由である。
【発明の概要】
【0004】
また本発明の目的は、ユーザが血液処置装置の調整可能な値を設定する(または指定または決定または固定する(以下、設定するという))のを支援するコンピュータシステム、また本発明に係るコンピュータシステムを備える血液処置装置、システム、および方法を提案することからなり得る。さらに、デジタル記憶媒体、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータプログラムが提案される。
【0005】
本発明による目的は、請求項1の特徴を有するコンピュータシステムによって達成され得る。さらに、本発明による目的は、請求項8の特徴を有する血液処置装置、および請求項10の特徴を有するシステム、さらに請求項11の特徴を有する方法によって達成され得る。さらに、本発明による目的は、請求項14の特徴を有するデジタル記憶媒体、請求項15の特徴を有するコンピュータプログラム製品、および請求項16の特徴を有するコンピュータプログラムによって達成され得る。
【0006】
本発明に係るコンピュータシステムは、ユーザ(医師、職員等)が、後に使用するための調整可能な値を血液処置装置に設定するのを助け、それによってユーザをサポートする。コンピュータシステムは、少なくとも第1の入力インターフェース、第2の入力インターフェース、および出力インターフェースを備える。コンピュータシステムは、計算(またはコンピューティング)デバイスおよびディスプレイデバイスをさらに備えるか、または信号通信で上記インターフェースに接続される。
【0007】
計算デバイスは、第1の入力インターフェースを使用して、目標範囲でもよい目標値、ここでは例示的に腎用量を、血液処置装置を使用する後続または将来の患者の処置のためのパラメータ値として読み取るようにプログラムされている。
【0008】
さらに、計算デバイスは、計算デバイスによって計算された選択範囲を、好ましくはグラフで、ディスプレイデバイスを介してユーザに表示するようにプログラムされている。
【0009】
それによって、選択範囲は、腎用量の読み取られた目標値を考慮して計算デバイスによって決定される。例えば、選択範囲は、一方では血液ポンプの流量についての正確に1つの調整可能な値と、他方では透析液ポンプの流量についての正確に1つの調整可能な値との複数の組合せを表示するために使用され得る。これらの調整範囲は、それらが血液処置装置に設定された場合に、計算デバイスが利用可能な情報にしたがって目標値を達成することを可能にする(他の条件が等しければ)。
【0010】
第2の入力インターフェースを使用して、ユーザは、表示された組合せのうちの1つ、好ましくはいずれか1つを選択することができる。
【0011】
したがって、計算デバイスは、出力インターフェースを介して、選択された組合せの血液ポンプのための調整可能な値および透析液ポンプのための調整可能な値を提示するようにさらにプログラムされている。
【0012】
本発明に係る血液処置装置は、本発明に係るコンピュータシステムを備える透析装置として具現化される。
【0013】
本発明に係るシステムは、1つまたはいくつかの血液処置装置および本発明に係るコンピュータシステムを備えるか、またはそれらからなる。
【0014】
それによって、血液処置装置は、好ましくは透析装置として具現化される。
【0015】
1つまたは複数の血液処置装置およびコンピュータシステムは、互いに分離している。「分離」という用語は、例えば、空間的、物理的分離、および/または血液処置装置とコンピュータシステムとの間に信号通信がないような分離を包含し得る。
【0016】
血液処置装置の調整可能な値を設定する(または例えば医療従事者が適切な調整可能な値を求めるまたは設定するのを支援する)ための本発明に係る方法は、
a.本発明に係るコンピュータシステム、本発明に係る血液処置装置、または本発明に係るシステムを提供することと、
b.好ましくは本発明に係る方法の完了後の血液処置装置を介した患者の後続の処置のための、パラメータ値についての、例えば腎用量についての目標値および/または目標範囲を読み取ること、または第1の入力インターフェースを介してこれらのパラメータを入力することと、ここで、第1の入力インターフェースは、任意選択的に、読取りインターフェースとして使用されてもよく、
c.計算デバイスによって計算または決定された調整可能な値の組合せの選択範囲を表示することと、ここにおいて、表示することは、ディスプレイデバイスを介して、例えばグラフで、例えば図で行われ、
d.選択範囲により表示された組合せのうちの1つを、第2の入力インターフェースを介してユーザによって選択することと、
e.選択された組合せの血液ポンプのための調整可能な値および透析液ポンプのための調整可能な値を、出力インターフェースを介して提示することと、
を行うステップを包含する。
【0017】
本発明に係るコンピュータシステムまたはその特徴に関して先にまたは以下で言及されるものはいずれも、本発明に係る方法またはその可能な実施形態に限定されることなく同様に適用され、逆もまた同様である。したがって、繰り返しを避けるために、本明細書の他の箇所で同じ主題または用語についてなされた記述および定義を参照する。
【0018】
本発明に係るデジタル記憶媒体、特に不揮発性記憶媒体は、特に電子的または光学的に読み取り可能な制御信号を有する、特に機械読取り可能媒体の形態、特にディスケット、CD、DVD、EPROM、FRAM(登録商標)(Ferroelectric RAM)またはSSD(Solid-State-Drive)の形態であり、プログラム可能なコンピュータシステムと相互作用するように構成またはプログラムされ得、それにより、コンピュータシステムは、例えば、そのメモリコンテンツがプログラム可能なコンピュータシステム上で実行された場合に、本発明に係るコンピュータシステムとなるようにプログラムされ得る。
【0019】
本発明に係るコンピュータプログラム製品は、揮発性もしくは一時的もしくは機械読取り可能キャリア上に記憶されたプログラムコードまたは信号波を備え、コンピュータシステムのプログラム可能なコンピュータ構成と相互作用するように構成され、それにより、コンピュータシステムは、本発明に係るコンピュータシステムとなるように再プログラムされ得る。コンピュータプログラム製品は、例えば、本発明によれば、キャリアに記憶されたコンピュータプログラム、コンピュータプログラムを有する包括的システムである組込みシステム(例えばコンピュータプログラムを有する電子デバイス)、コンピュータ実装のコンピュータプログラムのネットワーク(例えば、クライアント/サーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等)、またはコンピュータプログラムがローディング、動作、記憶、実行、または開発されるコンピュータとして理解してよい。
【0020】
本明細書で使用される「機械読取り可能キャリア」という用語は、本発明のある特定の実施形態では、ソフトウェアおよび/またはハードウェアによって解釈可能なデータまたは情報を含む媒体を指す。キャリアは、例えば、ディスケット、CD、DVD、USBスティック、フラッシュカード、SDカードなどのデータキャリア、および本明細書で言及される任意の他の記憶装置または本明細書で言及される任意の他の記憶媒体であり得る。
【0021】
本発明によれば、コンピュータプログラム製品は、例えば、特にスマートフォン、タブレット、または別の任意のモバイルハンドヘルドデバイス用のプログラムされたアプリケーション(略称アプリ)を意味するとも理解することできる。
【0022】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムが対応するコンピュータシステム上で実行されると、コンピュータシステムを本発明に係るコンピュータシステムへと再プログラムさせるためのプログラムコードを備える。本発明によれば、コンピュータプログラムは、例えば、プログラムを有する物理的な配布可能なソフトウェア製品を意味すると理解することができる。
【0023】
下記のすべてにおいて、「~であり得る」または「~を有し得る」等の表現の使用は、それぞれ、「好ましくは~である」または「好ましくは~を有する」等と同義に理解するべきであり、本発明に係る実施形態を例示することを意図するものである。
【0024】
本発明に係る実施形態は、上記または下記の特徴のうちの1つまたはいくつかを備え得る。ここにおいて、本明細書に記載の特徴は、いずれの組合せにおいても、当業者が特定の組合せが技術的に不可能と認識しない限り、本発明に係る実施形態の主題であり得る。
【0025】
さらに本発明に係る実施形態は、従属請求項に記載の主題である。
【0026】
数値を表す語が本明細書に記載されている場合は常に、当業者はそれらを数値の下限値の指示として認識または理解するものとする。当業者を明らかな矛盾に導かない限り、当業者は、例えば「1つ」という指定が「少なくとも1つ」を包含するものとして理解するものとする。この理解はまた、当業者にとって明白に技術的に可能である場合は常に、数値を表す語、例えば「1つ」が、代替的に「正確に1つ」を意味してもよいという解釈として、本発明によって同等に包含される。両方が本発明によって包含され、本明細書では使用されるすべての数値を表す語に適用される。
【0027】
適用性または方法ステップが本明細書に記載されている場合は常に、本発明は、好ましくは、好適な装置またはその一区間の特に本発明に係る対応するプログラムまたは構成を行うことも包含する。
【0028】
本明細書で一実施形態が記載されている場合は常に、本発明に係る例示的な一実施形態である。
【0029】
「上部」および「下部」という記述について、ここでは、不確かな場合、関連する構成要素の、その意図された使用中の配向に関連する、絶対的または相対的な空間的指示として当業者は理解するべきである。
【0030】
選択範囲は、グラフに表示される技術的に可能な組合せおよび/または全組合せよりも小さくてよい。
【0031】
また選択範囲により表示された組合せから選択することは、例えばコンピュータマウスを使用してマークすることであり得る。選択することは、任意選択的に、すでにマークされた値またはすでにマークされた組合せを新たな値または新たな組合せに移動させることを備えることができる。
【0032】
第1および/または第2の入力インターフェースはそれぞれ、対応して具現化されたタッチスクリーン、ロータリスイッチ、スライダ、キーボードなどであり得る。
【0033】
第1の入力インターフェースおよび第2の入力インターフェースは同一であり得、すなわち、それらは、1つのみの共通の入力インターフェースによって実現することができる。その代替として、それらは互いに異なっていてもよいし、および/または独立していてもよい。
【0034】
目標値または目標範囲は、例えば既知のアルゴリズムに基づいて、選択範囲の調整可能な値を決定または計算するときに考慮することができ、該アルゴリズムは、例えば補助テーブル等からのさらなるパラメータ値を含み得る。これらのアルゴリズムおよび/またはさらなるパラメータ値(ならびに後者に対応するさらなる調整可能な値)は、例えば、コンピュータシステムの記憶デバイスに記憶され得る。
【0035】
目標値は、ユーザによって入力されてもよいし、または、計算デバイスによって、例えば記憶デバイスへのインターフェースであり得る第1のインターフェースを介して読み出されてもよい。
【0036】
目標値は、処置される特定の患者に関連し得る。
【0037】
腎用量は、一方では排液流量または濾液流量と、他方では患者の体重との商として設定してよい。
【0038】
排液流量を決定するとき、治療のタイプに依存して、異なる流量(例えば、透析液流量、置換液流量、カルシウム流量、クエン酸塩流量、正味限外濾過量)を考慮する必要があり得る。
【0039】
腎用量は、例えば、目標腎用量(TRD)または有効腎用量(RRD)であり得る。
【0040】
目標腎用量(TRD)は、例えば、以下の式を使用することによって計算することができる。
【数1】
【0041】
ここで以下のことが当てはまる。
BF 血流量
DF 透析液流量
NFRF 正味液体除去流量
m 患者の体重
PostDF 後希釈流量
PreDF 前希釈流量
【0042】
有効腎用量(RRD)は、治療期間tに依存して、以下の式を使用して計算することができる。
【数2】
ここにおいて、以下が当てはまる。
BV 処理される血液量
DV 透析液量
NFRV 正味液体除去量
m 患者の体重
PostDV 後希釈量
PreDV 前希釈量
【0043】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステムの計算デバイスは、さらなるパラメータ値、例えば同じまたは別のパラメータを読み取り、これらのパラメータ値に基づいて可能な調整可能な値の選択範囲をさらに限定、セグメント化、細分、または分類することができるようにプログラムされている。これらの追加のパラメータ値は、目標値と同じ方法で読み取ることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、さらなるパラメータまたはパラメータ値は、処置のためまたは処置中の所望の抗凝固、特にクエン酸塩-カルシウム抗凝固、または例えば血清中の所望の重炭酸塩濃度を考慮する。
【0045】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステムはモバイルデバイスであるか、またはそれを備える。コンピュータシステムは、ハンドヘルドデバイス、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどであり得るか、またはそれらを備え得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、そのようなモバイルデバイスまたは他のデバイス上にロードされ得るか、またはそのようなデバイス上に記憶されるか、そのようなデバイス上で実行され得るか、またはそのようなデバイス上で動作しているコンピュータプログラムまたはアプリケーション(略称アプリ)を包含する。
【0047】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステムの計算デバイスは、ユーザの注意のために、ディスプレイデバイスを介して、選択された組合せの血液ポンプのための調整可能な値および透析液ポンプのための調整可能な値を表示するように、および/または出力インターフェースを介して、例えば、それを血液処置装置の制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスに提示するようにプログラムされている。これは次に、送信された調整可能な値を読み込み、および/または記憶することができる。
【0048】
送信された調整可能な設定は、次回の処置セッションのために血液処置デバイスによって使用され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、出力インターフェースおよびディスプレイデバイスは同一であってよい。したがって、出力インターフェースを介した出力は、ディスプレイデバイスを使用した表示であり得、逆もまた同様である。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明に係るコンピュータシステムは、例えば前述の出力インターフェースを介して、設定流量および/または腎用量を示す値、例えば腎用量の目標値および/または実際の流量または本明細書に記載のポンプ、例えば血液ポンプ、透析液ポンプ、置換液ポンプ、カルシウムポンプ、クエン酸塩ポンプ、ヘパリンポンプ、ならびに/もしくは他のポンプの調整可能な値を提示するようにプログラムされている。
【0051】
コンピュータシステムは、例えば、これらの値をロジスティクスシステムおよび/またはインボイスシステムに転送するようにプログラムされ得る。ロジスティクスシステムおよび/またはインボイスシステムは、コンピュータシステムの外部に設けられてもよいにもかかわらず本発明に係るシステムの一部であり得るが、次に、配送フロー、注文、消費などを監視、記録、記憶、出力、インボイス作成、請求、および/または任意の他の方法で処理するようにプログラムされ得る。したがって、ロジスティクスシステムは、コンピュータシステムによって送信された値を使用して、例えばクエン酸塩溶液、透析液等の血液処置セッション中に使用される流体を再注文し、血液処置が実施されたクリニックへのそれらの配送を開始するように構成され得る。インボイスシステムは、コンピュータシステムによって送信された値を使用して、クリニックが提供した血液処置セッションに関連するサービスについて請求することができる。例えば、腎用量の目標値、または例えばヘパリン、クエン酸塩溶液等の液体の消費を反映するヘパリン流量などの値は、患者または保険会社などの費用負担者に請求するための基準として使用され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明に係るコンピュータシステムは、血液処置装置の制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスであるか、またはそのようなデバイスと信号通信している。
【0053】
本発明によれば、いくつかの実施形態では、本発明に係るコンピュータシステムが、例えば従来の血液処置装置の制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスに実装されることも提供され得、それによって血液処置装置が本発明に係る血液処置装置へと構成されることになる。これらの実施形態では、既存の入力インターフェースおよび出力インターフェースならびに血液処置装置の計算デバイスを、有利なことに本発明に係るコンピュータシステムを実装するために使用することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、サーバベースのソリューションであってもよいし、またはそれを備えてもよく、ここにおいて、ユーザは、本発明に係る方法のステップを実行または開始するために、サーバ上で実行されているプログラムに、例えば、ウェブサイトを介してアクセスすることができる。したがって、コンピュータシステムは、任意選択的にサーバを備えることができる。コンピュータシステムは、サーバと通信するようにセットアップされた、コンピュータ、携帯電話、またはタブレットなどのユーザインターフェースおよび/またはユーザデバイスを備えることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスは、特に選択が行われた後に、選択された組合せにしたがう血液ポンプのための調整可能な値および透析液ポンプのための調整可能な値に基づいて血液処置装置を制御または調節するようにプログラムされている。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明に係る血液処置装置は、血液透析装置、血液濾過装置、または血液透析濾過装置として、特に長期腎代替療法、急性腎代替療法、または持続的腎代替療法(CRRT)のための装置として具現化される。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明に係る方法は、さらなるステップとして、選択された組合せの血液ポンプのための調整可能な値および透析液ポンプのための調整可能な値を表示または提示することを備える。表示または出力は、任意選択的に、ユーザの注意および/またはユーザによる確認のためにディスプレイデバイスを介して実施することができる。
【0058】
確認は、単に「OK」ボタンなどの操作であり得る。
【0059】
確認は、いくつかの実施形態では、様々なオプションから調整可能な値をタイピング、入力、選択等することも、暗算により行うことも包含しない。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明に係る方法は、さらなるステップとして、選択された組合せの血液ポンプのための調整可能な値および透析液ポンプのための調整可能な値に基づいて血液処置装置を好ましくは自動的に制御または調節することを包含する。
【0061】
これは、例えば、ユーザによって行われた選択または選択の確認のすぐ後に続くことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明に係る方法は、さらなるステップとして、後続の処置もしくはまだ開始していない処置または血液処置デバイスを介した処置セッションのために、選択された組合せの血液ポンプのための調整可能な値および透析流体ポンプのための調整可能な値をメモリ(これは、例えば、揮発性または永続であり得る)、例えば血液処置デバイスに読み込むことを備える。
【0063】
さらなるパラメータ値は、患者または患者の血液の成分の酸/塩基バランスであり得るか、またはそれに関連し得る。
【0064】
「プログラムされた」または「構成された」が本明細書に記載されている場合は常に、これらの用語が交換可能であることを理解すべきである。
【0065】
本発明に係るいくつかまたは全部の実施形態は、上述および/または以下の利点のうちの1つ、複数、または全部を備え得る。
【0066】
本発明の利点は、調整可能な値を用いた血液処置中に所定の目標値を達成することができるようにするために、次回または現在の血液処置のためにどの調整可能な値を血液処置装置ポンプに対して選択することができるかについて、ユーザ、すなわち通常は担当医が行う決定を容易にするかまたは補助することであり得る。なお、この所望の目標値は、同時に、ポンプのうちの1つの目標の調整可能な値ではない。本発明を使用すると、目標値を考慮して、多数の可能な組合せから好ましくない組合せを初めから除外するので、これにより医師の意思決定作業の複雑さが大幅に軽減される。
【0067】
本発明のさらなる利点は、本発明に係る簡易化を使用して調整可能な値を変更すると、有利なことに、調整を実施するときに経験の浅いユーザに確実性をより与えることができるということもあり得る。
【0068】
本発明によれば、例えば、暗算ステップおよび/またはユーザによって行われるヒューマンエラーなどの誤りのリスクをなくすことができるので、調整可能な値を求めるときに誤りを起こす可能性を著しく低減することができる。
【0069】
これは、有利なことに、患者の安全性も間接的に高めることができることを意味する。
【0070】
ただし、調整可能な値を求めるまたは変更するための能力および責任は、有利なことにユーザに留めることができる。したがって、ユーザは、コンピュータシステムが許可なく作用して驚かされることなく、本発明に係るコンピュータシステムから有益なサポートを受ける。
【0071】
血液処置装置およびコンピュータシステムが分離したデバイスのままである場合、既存の血液処置装置を本発明に係るコンピュータシステムと組み合わせて、本発明に係るシステムを形成してよい。血液処置装置の制御に介入する必要がないので、血液処置装置を医療機器として再承認する必要はない。
【0072】
本発明について、添付図面に関連して例示的に説明し、ここで同じ参照番号は同じまたは同様の要素を指す。図面の図において、以下のことが適用される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本発明に係るコンピュータシステムの隣に血液処置装置を有する本発明に係るシステムを非常に簡略化した表現で示す図である。
図2】本発明に係る方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す図である。
図3a】本発明に係るコンピュータシステムまたは本発明に係る方法の例示的な実施形態において、ディスプレイデバイスを介してユーザに表示され得るグラフ(またはグラフ表示)の一部を示す図である。
図3b】新たな調整可能な値についてのマークされた選択範囲を有する図3aのグラフを示す図である。
図3c】設定手順中の図3bのグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、本発明に係るシステムの一部として、任意選択的に体外血液回路300に接続された血液処置装置100を非常に簡略化した表現で示す。
【0075】
体外血液回路300は、ここでは動脈ライン区間の形態である第1のライン301を備える。
【0076】
第1のライン301は、ここでは例示的に血液フィルタまたは透析器303である血液処置デバイスと流体接続している。血液フィルタ303は、透析液チャンバ303aおよび血液チャンバ303bを備え、これらはほとんど半透膜303cによって互いに分離されている。
【0077】
さらに体外血液回路300は、ここでは静脈ライン区間の形態である少なくとも1つの第2のライン305を備える。第1のライン301および第2のライン305の両方は、患者の血管系(図示せず)に接続する働きをすることができる。
【0078】
第1のライン301は、任意選択的に、ライン301を遮断または閉鎖するための(第1の)チューブクランプ302に接続される。第2のライン305は、任意選択的に、ライン305を遮断または閉鎖するための(第2の)チューブクランプ306に接続される。
【0079】
図1に概略的にそのデバイスのうちのいくつかのみによって表される血液処置装置100は、血液ポンプ101を備える。患者の処置中、血液ポンプ101は、各図において流れの方向を全体的に示す小矢印によって示されるように、体外血液回路300の区間を通して、血液フィルタまたは透析器303に向かって血液を運搬する。
【0080】
ローラポンプまたはそれ以外では任意の閉塞ポンプ(occluding pump)として具現化され得る透析液用ポンプ121を使用して、新しい透析液が、供給源200から透析液入口ライン104に沿って透析液チャンバ303aに圧送されていく。透析液は、場合により濾液で富化された透析液として透析液チャンバ303aを出て任意選択の排液バッグ400に向かい、本明細書では排液と呼ばれる。
【0081】
供給源200は、例えばバッグまたは容器であり得る。さらに供給源200は、オンラインおよび/または連続して生成もしくは混合された液体の供給元である流体ライン、例えば血液処置装置100の水圧出口または水圧ポートであり得る。
【0082】
置換液を伴うさらなる供給源201が任意選択的に設けられ得る。これは、供給源200に対応してもよいし、または別個の供給源であってもよい。
【0083】
概略的にのみ示す制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス150が、血液処置セッションを制御または調節するように構成され得る。
【0084】
排液バッグ400が血液処置装置100bに接続される場所は、図1の右下に示されている。
【0085】
図1に示す配置構成は、上述の血液ポンプ101に加えて、単に任意選択的に、いくつかの他の任意選択のポンプ、すなわち置換液用ポンプ111、透析液用ポンプ121、および排液用ポンプ131をさらに備える。
【0086】
ポンプ121は、透析液を、供給源200、例えばバッグから、加熱バッグを有する任意選択的に利用可能なバッグヒータH2を通して、透析液入口ライン104を使用して、血液フィルタ303に供給するために設けられる。
【0087】
このように供給された透析液は、任意選択のポンプ131によって補助されて、再び血液フィルタ303から透析液出口ライン102を介して出て、廃棄され得る。
【0088】
任意選択の動脈センサPS1が血液ポンプ101の上流に設けられる。これは、患者の処置中に動脈ライン内の圧力を測定する。
【0089】
血液ポンプ101の下流に、ただし血液フィルタ303の上流に、また設けられている場合にはヘパリンの添加点25の上流に、さらなる任意選択の圧力センサPS2が設けられる。これは血液フィルタ303の上流(「プレヘモフィルタ」)の圧力を測定する。
【0090】
再び血液フィルタ303の濾液圧を測定するために、血液フィルタ303の下流に、ただし好ましくは透析液出口ライン102内のポンプ131の上流に、さらなる圧力センサがPS4として設けられ得る。
【0091】
血液フィルタ303を出た血液は、任意選択の静脈血チャンバ29を通り、この静脈血チャンバ29は、通気デバイス31(ベント、脱気もしくは空気除去デバイスともいう)および/またはさらなる圧力センサPS3を備え得る。
【0092】
図1に示す制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス150は、血液処置装置100を制御または調節するために、本明細書に記載の構成要素のいずれかに、特にまたは少なくとも血液ポンプ101に、ワイヤードまたはワイヤレス信号通信し得る。
【0093】
任意選択のポンプ111は、置換液を、任意選択の供給源201、例えばバッグから、ヒートバッグを有する任意選択の利用可能なバッグヒータH1を介して、第2のライン305に供給するために設けられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、クエン酸塩溶液が、ここでは例示的にクエン酸塩バッグ9として具現化される任意選択的に設けられるクエン酸塩溶液用の供給源から、場合によりクエン酸塩ポンプ15によって第1のライン301内に定量吐出される。例えば、4%のNaCitrateがクエン酸塩溶液供給源から添加される。
【0095】
本明細書ではカルシウムポンプ12として具現化される任意選択の添加デバイスが、例示的に図1ではカルシウムバッグ13として具現化される任意選択のカルシウム溶液用の供給源からライン305にカルシウム溶液を供給するために設けられる。例えば、CaCl溶液を、カルシウム溶液の供給源から供給する。これは、91mmol/l、100mmol/lのカルシウム濃度、または別の好適なカルシウム濃度を有し得る。
【0096】
図1では、血液処置装置100の右側に、計算デバイス5および任意選択の記憶デバイス7を有する本発明に係るコンピュータシステム1が例示されている。コンピュータシステムは、第1の入力インターフェースI1と、第2の入力インターフェースI2と、出力インターフェースI3とを有する。
【0097】
血液処置装置100およびコンピュータシステム1が共に、本発明に係るシステムの一実施形態を表す。
【0098】
コンピュータシステム1は、血液処置装置100から物理的に分離されたモバイルハンドヘルドデバイス、例えば携帯電話またはタブレット上に提供され得る。図1に示す実施形態では、コンピュータシステム1は、信号通信で血液処置装置100に接続されていない。
【0099】
コンピュータシステム1は、本発明に係る方法のステップを実行または開始するために、ユーザが、例えば、ウェブサイトを介して、サーバ上で実行されるプログラムにアクセスすることができるサーバベースのソリューションであるか、またはそれを備えることができる。したがって、コンピュータシステム1はサーバを備えることができる。コンピュータシステム1は、サーバと通信するようにセットアップされたコンピュータ、携帯電話、またはタブレットなどのユーザインターフェースおよび/またはユーザデバイスを備え得る。
【0100】
しかしながら、ここに示されるもの以外の血液処置装置の実施形態では、コンピュータシステムは、信号通信でおよび/または物理的に血液処置装置100に接続されるか、またはその一部である。しかしながら、後者では、そのように接続されたデバイスは、本発明に係るシステムにはもはや関連せず、むしろ本発明に係る血液処置装置に関連する。
【0101】
コンピュータシステム1が、ここに示されるものとは異なり、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス150と同一であるか、またはそれによって包含されることも、本発明によって包含される。
【0102】
図2は、本発明に係る方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。
【0103】
そこで方法ステップS1は、本発明に係るコンピュータシステム1、本発明に係る血液処置装置100、または本発明に係るシステムの提供を示す。
【0104】
方法ステップS2において、患者の処置のためのパラメータ値についての、例えば腎用量についての目標値および/または目標範囲が、血液処置装置100を使用して読み取られるか、または該パラメータ値が第1の入力インターフェースI1を介して入力される。
【0105】
S3は、例えば上述したように計算デバイス(5)によって計算された選択範囲(図3bの参照符号Aを参照)を、ディスプレイデバイス(I3)を介して、例えばグラフ、例えば図で表示することを表す。
【0106】
方法ステップS4において、図3bに示すように、表示された組合せのうちの1つが、第1の入力インターフェースと任意選択的に同一であり得る第2の入力インターフェースI2を使用してユーザによって選択される。
【0107】
方法ステップS5において、選択された組合せの血液ポンプ101のための調整可能な値および透析液ポンプ121のための調整可能な値は、出力インターフェースを介して提示される。
【0108】
任意選択的に、方法ステップS6において、選択された組合せの血液ポンプ101のための調整可能な値および透析液ポンプ121のための調整可能な値は、ユーザがそれらに気付くことができるように、ディスプレイデバイスI3を介して表示または提示される。
【0109】
S7は、選択された組合せの血液ポンプ101のための調整可能な値および透析液ポンプ121のための調整可能な値に基づいて血液処置装置100を制御または調節する任意選択の方法ステップを表す。
【0110】
図3aは、コンピュータシステムの例示的な実施形態または方法の例示的な実施形態において、ディスプレイデバイスI3を介してユーザに表示され得るグラフまたはグラフ表示の本質的な部分を示す。
【0111】
グラフ表示の図において、縦軸は、横軸の透析液流量[ml/h]に対する血流量[ml/min]を表す。
【0112】
したがって、示された図内の各点は、一方では、血液ポンプの送出速度についての可能な調整可能な値Q と、他方では、透析液ポンプの送出速度についての可能な調整可能な値D との組合せに対応する。したがって、例えば、組合せK1は、血液ポンプの速度である100ml/min(調整可能な値Q =100ml/min)と、透析液ポンプの速度である2000ml/min(調整可能な値D =2000ml/min)との組合せに対応する。しかしながら、組合せK2は、血液ポンプの速度である120ml/min(調整可能な値Q =120ml/min)と、既に組合せK1にある、透析液ポンプの速度である2000ml/min(調整可能な値D =2000ml/min)を表す。
【0113】
血液ポンプの送出速度および透析液ポンプの送出速度のいくつかのそのような組合せK1、K2、K3、…の可能な設定により、数学的に、予想される酸塩基状態(血清中の予想される(または期待される)重炭酸塩濃度)がもたらされる。
【0114】
血清中の予想される重炭酸塩濃度は、図に放射線状の形態で、各場合における血流量および透析流体流量のいくつかの組合せについて示される。図示の線はB1~B7で示されている。それらの各々について、予想される重炭酸塩の値(mmol/lの単位)が、線上にある流量の組合せを設定すると、図の端に提示される(図3aのグラフの値はシミュレーションで決定されたものである)。
【0115】
本実施例において、K1からK2へ20%血流量が増加すると、血清中の予想される重炭酸塩濃度が約4mmol/l(24mmol/lから28mmol/lへ、すなわち代謝性アルカローシスに向かって)変化することが分かる。(K3へ)20%透析液流量も増加すると、この効果を補償する。
【0116】
本実施例における基礎となる一定の処置パラメータは、血液1リットルあたりクエン酸塩用量4mmol、血液1リットルあたりカルシウム用量1.7mmol、正味限外濾過量100ml/hである。
【0117】
本発明に係るユーザが利用可能な選択範囲は、明確にするために、図3aには示されていない。選択範囲は、図3bおよび図3cにおいて参照符号Aによって示される。
【0118】
図3bは、図3aの例示的なグラフまたはグラフ表示を示す。
【0119】
したがって、図3aについてのすべての記述は図3bにも適用される。
【0120】
ここで図3bに例示されているのは、血液ポンプの送出速度についての調整可能な値Q と、透析液ポンプの送出速度についての調整可能な値D との無限数n個の可能な組合せを有する選択範囲Aである。
【0121】
選択範囲Aは、n個の可能な組合せからの組合せを視覚的に強調表示し、該組合せにおいて、関連付けられた調整可能な値は、それらを用いて実施される処置中または処置で目標値、すなわち腎用量の目標値を達成するために血液処置装置100に設定されるのに好適である。したがって、選択範囲Aによってマークされた組合せは、腎用量の目標値を考慮して選択または決定される。
【0122】
図3bの実施例では、選択範囲Aは陰影によってマークされている。図3bに示すように陰影を付ける必要はなく、他の方法で強調表示することもできる。着色された背景も可能である。その形状は、当然のことながら、ここに示す棒形状とは異なるようにすることもできる。
【0123】
単に一例として、図3bでは、ユーザが、例えばコンピュータマウスを使用してマークすることによってKの組合せに決めたと仮定し、これは選択範囲A内の丸によって例示されているはずである。この組合せKに起因する、血液ポンプの送出速度についての調整可能な値Q および透析液ポンプの送出速度についてのD は、任意選択的に、例えばml/minの単位で、正確な調整可能な値のインジケーションと共に、ユーザに表示され得る。血液処置装置がそれに基づいて何らかの行動をとる前に、ユーザによる確認のために提供が行われ得る。
【0124】
しかしながら、調整可能な値Q 、D を使用する処置により、所望の腎用量、すなわち目標値を取得する処置が可能となる。
【0125】
選択された組合せKの表示または強調表示は、出力インターフェースを介した出力および/またはディスプレイデバイスを介した表示に対応し得る。
【0126】
しかしながら、図3bの表現とは対照的に、図3Cでは、ユーザは、選択範囲Aの外側にある組合せKを選択している。この組合せの調整可能な値は、それらを用いて血液処置を実施すると腎用量の目標値に到達するのに好適でない。
【0127】
ユーザは、任意選択的に警告、インジケーションなどを介してこれに気付くことができる。ユーザは、選択を訂正し、第1の選択された組合せKを選択範囲Aの中に移動させる機会をもつことができる。ユーザが図3cに示す矢印に従うと所望の重炭酸塩濃度を維持することになる。
【符号の説明】
【0128】
1…コンピュータシステム
5…計算デバイス(またはコンピューティングデバイス)
7…記憶デバイス(任意選択)
9…クエン酸塩溶液用の供給源、ここでは、例えばクエン酸塩バッグ
12…カルシウムポンプ
13…カルシウム溶液用の供給源、カルシウムバッグ
15…クエン酸塩ポンプ
25…ヘパリンの添加点(任意選択)
29…静脈血チャンバ(任意選択)
31…通気(またはベント、脱気もしくは空気除去デバイス)
100…血液処置装置
101…血液ポンプ
102…透析液出口ライン、排液入口ライン
104…透析液入口ライン
111…置換液用ポンプ
121…透析液用ポンプ
131…排液入口ライン内の透析液または排液用ポンプ
150…制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス
200…透析液供給源
201…置換液供給源(任意選択)
300…体外血液回路
301…第1のライン(動脈ライン区間)
302…(第1の)チューブクランプ
303…血液フィルタまたは透析器
303a…透析液チャンバ
303b…血液チャンバ
303c…半透膜
305…第2のライン(静脈ライン区間)
306…(第2の)チューブクランプ
A…選択範囲
I1…第1の入力インターフェース
I2…第2の入力インターフェース
I3…ディスプレイデバイス
K1…組合せ1
K2…組合せ2
K3…組合せ3
…選択された組合せ
B1…30mmol/lの血清中の予想(または期待)される重炭酸塩濃度
B2…28mmol/lの血清中の予想される重炭酸塩濃度
B3…26mmol/lの血清中の予想される重炭酸塩濃度
B4…24mmol/lの血清中の予想される重炭酸塩濃度
B5…22mmol/lの血清中の予想される重炭酸塩濃度
B6…20mmol/lの血清中の予想される重炭酸塩濃度
B7…18mmol/lの血清中の予想される重炭酸塩濃度
S1…方法ステップa
S2…方法ステップb
S3…方法ステップc
S4…方法ステップd
S5…方法ステップe
S6…さらなる方法ステップ
S7…さらなる方法ステップ
、Q 、Q 、Q …血液ポンプのための調整可能な値
、D 、D 、D …透析液ポンプのための調整可能な値
図1
図2
図3a
図3b
図3c
【国際調査報告】