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特表2023-500776凝集性軟骨構築物のインビトロ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】凝集性軟骨構築物のインビトロ製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/38 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
A61L27/38 112
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022518344
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020076129
(87)【国際公開番号】W WO2021053157
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】20191140
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522110201
【氏名又は名称】コンドロ エンジニアリング アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン,オッドムンド,ヨハネス
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081BA12
4C081BA13
4C081CD34
4C081EA11
4C081EA13
(57)【要約】
本発明は、医療工学、特に臨床応用における軟骨損傷の修復のための軟骨組織工学の分野に属する。本発明は、移植可能な凝集性軟骨構築物及びそのインビトロ製造方法を提供する。さらに、本発明は、損傷軟骨を修復するための外科的方法における移植可能な凝集性軟骨構築物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集性軟骨構築物のインビトロ産生のための方法であって、
a)被験体に由来する軟骨形成細胞を増殖させて、1つ以上の軟骨マイクロ構築物の形成を可能にするステップと、
b)複数の前記軟骨マイクロ構築物を運動させて、前記軟骨マイクロ構築物の間の接触を促進し、これにより1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物の形成を可能にするステップと、
c)1つ以上の前記融合軟骨マイクロ構築物を低酸素環境で機械的刺激にさらし、凝集性軟骨構築物の形成を可能にするステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記ステップa)における前記細胞を低酸素環境で増殖させ、及び/又は、
前記ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物を運動させて、低酸素環境における前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が20%未満の環境であり、例えば18%未満、16%未満、14%未満、12%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップa)において述べた前記1つ以上の軟骨マイクロ構築物が、スフェロイドなどの三次元細胞構造である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物に、等速円運動又は滑らかな等速円運動などの円運動を行なわせ、前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物を一軸の周りに傾斜させることにより、前記ステップb)における前記軟骨マイクロ構築物を運動させて、前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記一軸の周りの傾斜は、揺動撹拌器又はミニ揺動撹拌器などの撹拌器を用いて達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物を、2つよりも多い独立した水平軸などの、2つ以上の軸の周りに傾斜させることにより、前記ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物を運動させて、前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記軟骨形成細胞が軟骨細胞である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体がヒト又は非ヒトであり、好ましくはヒトである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞及び/又は前記ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物及び/又は前記ステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物が細胞培地中に浸漬され、
前記細胞培地中の溶存分子状酸素の量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満又は空気飽和度10%未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記機械的刺激が、圧縮、引張、発振性及び/又は振動性刺激、せん断応力及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記圧縮は前記融合軟骨マイクロ構築物に直接印加され、
及び/又は、
前記ステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物は細胞培地中に浸漬され、前記圧縮は周囲の前記細胞培地に印加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記引張が二軸及び/又は一軸方向に加えられ、前記融合軟骨マイクロ構築物の一時的な構造的変形をもたらす、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
発振性及び/又は振動性の刺激が、前記融合軟骨マイクロ構築物に直接加えられ、及び/又は、
前記ステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物を細胞培地中に浸漬し、前記発振性及び/又は振動性刺激が周囲の前記細胞培地に加えられる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記機械的刺激が流体力学的刺激である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物が細胞培地中に浸漬され、前記機械的刺激が流体力学的刺激である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記機械的刺激が、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を12MPa以上の圧力に曝露することを含まない、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記機械的刺激が、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を10MPaより大きい圧力に曝露することを含まない、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記機械的刺激が、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を8MPa以上の圧力に曝露することを含まない、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記機械的刺激が、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を7MPa以上の圧力に曝露することを含まない、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記機械的刺激が、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を5MPa以上の圧力に曝露することを含まない、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖され、
前記ステップa)で述べた1つ以上の前記軟骨マイクロ構築物は、スフェロイドなどの三次元細胞構造である、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ステップa)における前記細胞を低酸素環境で増殖させ、
前記ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物を運動させて、低酸素環境における前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進し、
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップb)及び前記ステップc)は、組み合わされて一段階プロセスとなる、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ステップa)で得られた前記複数の軟骨マイクロ構築物を運動させて前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進し、且つ、低酸素環境で機械的刺激を受けさせ、これにより凝集性軟骨構築物の形成を可能にする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか1項に記載の方法により製造された凝集性軟骨構築物。
【請求項31】
前記凝集性軟骨構築物は、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば、約95体積%の細胞外マトリックスを含む、請求項30に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項32】
前記凝集性軟骨構築物は、少なくとも5mmの底面積と、少なくとも2mmの高さを有する、請求項30に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項33】
被験体における損傷軟骨を修復するための外科的方法において使用するための凝集性軟骨構築物であって、前記外科的方法は、損傷軟骨を除去し、前記凝集性軟骨構築物を移植することにより、前記損傷軟骨を置換することを含む、請求項30~32のいずれか一項に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項34】
前記凝集性軟骨構築物の細胞が由来する前記被験体は、前記凝集性軟骨構築物が移植される前記被験体である、請求項33に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項35】
前記損傷軟骨の部位の軟骨下骨は、
前記損傷軟骨が除去された後であって、前記凝集性軟骨構築物を移植する前に、
貫通されて、前記軟骨下骨の頂部の血管から出血を生じさせ、及び/又は、
傷つけられて、前記軟骨下骨の頂部の血管から小さな出血を生じさせる、
請求項33又は34に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項36】
前記損傷軟骨の原因は、変形性関節症などの変性疾患である、請求項33~35のいずれか1項に記載の凝集性軟骨構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療工学、特に臨床応用における軟骨損傷の修復のための軟骨組織工学の分野に属する。本発明は、移植可能な凝集性軟骨構築物及びそのインビトロ製造方法を提供する。さらに、本発明は、損傷軟骨を修復するための外科的方法における移植可能な凝集性軟骨構築物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの関節面は、関節軟骨、すなわち、機械的な力を分散させて下にある骨を保護する低摩擦で耐久性のある物質によって覆われている。関節軟骨の損傷は、特に膝において、よく見られることである。このような損傷は、最も一般的には若い活動的な人々に生じ、痛み、腫れ、及び関節運動の低下をもたらす。損傷した関節軟骨は治癒しない。典型的には、周囲の損傷のない軟骨の変性が経時的に生じ、慢性痛及び身体障害をもたらす。従って、軟骨損傷は、しばしば、生産的な労働年数の著しい損失を導き、患者のレクリエーション及び生活様式に甚大な影響を与える。
【0003】
関節面損傷は、軟骨層に限定されることもあり、軟骨下骨内まで延在することもある。軟骨下骨を貫通しない軟骨損傷は、治癒力が限られている(非特許文献1)。これは、組織に固有の性質のためである。関節軟骨のほぼ95%は、細胞外マトリックス(ECM)であり、これは、その中に分散された軟骨細胞によって生成され維持される。ECMは、組織の機械的一体性を提供する。周囲の組織における限られた数の軟骨細胞では、外傷により失われたECMを置換することができない。局所軟骨細胞によるマトリックス成分の短期間の過剰生産が観察された(非特許文献2)。しかし、この反応は、臨床的に関連する欠損の修復には不十分である。血管系からの細胞移動は、純粋な軟骨損傷に伴って起こることはなく、外因性修復は臨床的に有意ではない。
【0004】
軟骨下骨プレートが貫通される骨軟骨損傷は、骨髄からの修復細胞の流入による治療を受けることができる(非特許文献1)。しかしながら、多数の研究は、正常な軟骨機能に必要なECMの複雑な分子配列は反復されないことを示している。修復反応は、ガラス軟骨と繊維組織との混合物である線維軟骨を形成することにより特徴づけられる。線維軟骨は関節軟骨の耐久性を欠き、最終的には、関節の通常の使用の間に劣化する。多くの骨軟骨損傷は、二次変性が起こる前の2~3年から数年の間、臨床的に無症状となる。しかし、孤立性軟骨損傷と同様、これらの損傷は最終的には、関節機能の劣化、痛み、身体障害を招く。
【0005】
関節軟骨の外科的修復の現在の方法は、基本的に3つのカテゴリーに分類される。すなわち、1)線維軟骨修復の刺激、2)骨軟骨移植、及び3)自家軟骨細胞移植である。
線維軟骨は、その比較的劣る機械的特性にもかかわらず、関節損傷における一時的な症状緩和を提供することができる。軟骨損傷領域における線維軟骨の形成を促進するために、いくつかの外科技術が開発されている。これらには、軟骨下ドリリング、剥離、マイクロフラクチャーが含まれる。これらの手順の概念は、軟骨下骨の貫通が、骨髄からの軟骨前駆細胞が欠損に移動して修復を行うことを可能にすることである。
【0006】
骨軟骨移植において、関節軟骨が軟骨下骨の層とともに採取され、関節欠損に移植される。移植片を宿主に固定することは、移植骨を宿主骨に癒着することによって達成される。この技術の主要な利点は、移植された軟骨が正常な関節軟骨の機械的特性を有し、従って繰り返し負荷に耐えられることである。主要な欠点は、ドナー部位の罹患率(自家移植の場合)及び疾病伝達のリスク(同種移植の場合)である。さらに、同種移植に伴って組織拒絶反応が起き、外科的成果を損なう可能性がある。
【0007】
自家軟骨細胞移植は、単離された軟骨細胞を使用する軟骨修復の方法である。臨床的には、これは2段階治療であり、まず軟骨生検を取得し、次に、生体外(ex vivo)処理の期間の後、培養した軟骨細胞を欠損に導入する(非特許文献3)。生体外処理中に、ECMを除去し、細胞分裂を促進する条件下で軟骨細胞が培養される。適切な数の細胞が生成されると、それらは、関節欠損に移植される。封じ込めは、典型的には、周囲の宿主軟骨に縫合される骨膜のパッチによって提供される。細胞は欠損壁に付着し、その場で(in-situ)細胞外マトリックスを生成する。この方法の主要な利点は、自己組織の使用及び細胞集団を増殖する能力である。この技術による関節軟骨修復にともなう困難は、細胞接着性、形質転換、及びECM産生の3つのカテゴリーに分類される。
【0008】
細胞接着性。個々の細胞(ECMを含まない)の移植の成功は、欠損床(defect bed)に付着する細胞に大いに依存する。軟骨ECMは抗接着性を有することが知られており、抗接着性は、小型プロテオグリカン、デルマタン硫酸、及びヘパラン硫酸によって付与されると考えられている。正常な軟骨細胞は、II型コラーゲンのための細胞表面レセプタ(非特許文献4)及びヒアルロン酸(非特許文献5)を有するが、生体外で操作された細胞が、機能的であるこれらのマトリックス分子のレセプタをどの程度有するかは明らかではない。
【0009】
形質転換。インビトロで細胞集団を増殖するプロセス中、軟骨細胞は、通常、形質転換又は脱分化を受ける(非特許文献6)。形態学的には、細胞は線維芽細胞に似ている。II型コラーゲン及びアグリカンの合成は減少し、線維軟骨の典型であるI型コラーゲンの合成が増加する。細胞が移植後にその場で再分化するという主張を支える限られたデータが存在する。軟骨細胞表現型の復元は、修復プロセスの成功にとって重要である。というのは、表現型的に線維芽細胞である細胞によって産生される組織が、関節軟骨の代替としてうまく機能しないからである。
【0010】
ECM産生。移植に先立って、培養された軟骨細胞は、ECMを酵素的に剥離される。細胞は、懸濁液として欠損床に注入される。移植片構築物は、負荷を支持することができず、長い回復時間を意味する数週間から数ヶ月間にわたって、体重負荷から保護されなければならない。
【0011】
軟骨修復の現在の方法の各々は、実質的な制限を有する。その結果、インビトロでの軟骨組織の製造に対するいくつかの実験室的アプローチが提案された。これらは一般に、培養細胞(軟骨細胞又は多能性幹細胞のいずれか)の生物学的足場又は合成足場への播種を含む。
【0012】
特許文献1は、インビトロでの軟骨組織の製造方法を開示している。患者から採取した軟骨細胞を単層培養において増加させ、次に、さらなる繁殖のために、ゲル又はスポンジの形態の三次元コラーゲンマトリックスに導入し、このマトリックスにおいて細胞は沈殿し不動となる。約3週間の細胞繁殖の後、欠損軟骨位置にコラーゲンマトリックスと細胞からなる材料を充填する。移植片を欠損位置に保持するために、その上に骨膜片が縫合される。この種の移植の領域における軟骨再生は、移植なしに比べてかなり良好である。
【0013】
特許文献2は、移植のための担体材料として三次元人工マトリックスを用いる同様の方法を記載している。このマトリックスは、移植に先立つ細胞培養に用いられ、培養される細胞のより良好な接着及びより良好な供給のために結合組織の層で覆われる。三次元マトリックス上でのインビトロ細胞繁殖の後、マトリックスを移植する。移植された細胞は、生体内で軟骨組織を形成する。
【0014】
非特許文献7は、インビトロで軟骨を増殖させるための三次元マトリックスに生体細胞を導入し、次いで、装填されたマトリックスを半透膜に封入することを提案している。軟骨成長の間、この膜は、培地が、細胞によって産生され細胞外マトリックスを構築するために用いられる化合物を洗い流すことを防止する。この種の膜に封入された細胞培養物の移植は、免疫反応を防ぐことでも知られている。
【0015】
特許文献3は、軟骨修復を必要とする個体の治療のための方法及び組成物を開示している。より具体的には、個体からの線維芽細胞又は幹細胞を採取して培養する。次いで、線維芽細胞は、低酸素、機械的ストレス、又はそれらの組み合わせなど、軟骨細胞の分化を促進する条件にさらされる。次に、損傷軟骨組織と同じ形状の型に、軟骨細胞を供給する。
【0016】
特許文献4は、複数の軟骨細胞を含む細胞サンプルを準備すること、細胞サンプルを培養して組織工学により作製された軟骨構築物を生成すること、及び組織工学により作製された軟骨構築物を処理することを含む、組織工学により作製された軟骨構築物を製造する方法を開示している。ここで、組織工学により作製された軟骨構築物を処理することは、生化学試薬、機械的な力、静水圧、又はそれらの任意の組み合わせを用いることを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4846835号明細書
【特許文献2】米国特許第4963489号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2014/044682号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/111390号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】A.I.Caplan、日本整形外科学会雑誌63、692~9頁(1989年)
【非特許文献2】R.G.Johnson、A.R.Poole、Exp.Pathol.38、37~52頁(1990年)
【非特許文献3】D.A.Grande、M.I.Pitman、L.Petersen、D.Menche、M.Klein、Journal of Orthopaedic Research 7、208~218頁(1989年)
【非特許文献4】M.P.Fernandez,et al.、J.Biol.Chem.263、5921~5925頁(1988年)
【非特許文献5】H.J.Hauselmann,et al.、Am J Physiol 271、C742~52頁(1996年)
【非特許文献6】K.Von Der Mark、Rheumatology 10、272~315(1986年)
【非特許文献7】Biomaterials Vol.17、No.10、1996年5月、Guilford
【非特許文献8】Martinez et al(Cell transplantation、vol.17、987頁~996頁、2008年
【非特許文献9】Biotechnol.Bioeng.83:173~180頁;2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
生物学的足場又は合成足場への培養細胞の播種に基づく上記技術の主要な欠点は、移植された及び在来の軟骨細胞と他の関節組織に対する足場材料の未知の生物学的効果、並びに、工学的に作製された組織構築物の欠損床への付着の制限である。移植は、軟骨組織に天然には存在しない物質を含むため、移植が、既存の軟骨と一致する機械的特性を有する軟骨組織の形成を促進するかどうかという問題もある。さらに、支持材の使用は、その分解生成物が他の組織に影響を及ぼす可能性があり、非自家支持材を使用する場合には、動物又はヒトの病原体との免疫反応又は感染が生じる可能性があるという点で、不利である。また、圧縮強度及び低摩擦の両方において、既存の軟骨と同等の機械的特性を有する凝集軟骨構築物が形成されることについての開示がない。
【0020】
そこで、上記の欠点を有することがなく、圧縮強度及び低摩擦の両方において既存の軟骨と一致する機械的特性を有する、移植可能な凝集性軟骨構築物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様は、凝集性軟骨構築物のインビトロ製造のための方法であって、前記方法は、
a)被験体に由来する軟骨形成細胞を増殖させて、1つ以上の軟骨マイクロ構築物の形成を可能にするステップと、
b)複数の前記軟骨マイクロ構築物を運動させて、前記軟骨マイクロ構築物の間の接触を促進し、これにより1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物の形成を可能にするステップと、
c)1つ以上の前記融合軟骨マイクロ構築物を低酸素環境で機械的刺激にさらし、凝集性軟骨構築物の形成を可能にするステップと、
を含む。
【0022】
一実施形態によれば、前記軟骨形成細胞は、軟骨細胞、特に、関節軟骨細胞である。
【0023】
一実施形態では、前記被験体は、ヒト又は非ヒト動物である。好ましくは、前記被験体はヒトである。
【0024】
一実施形態によれば、ステップa)における前記細胞は、低酸素環境で増殖される。前記低酸素環境は、好ましくは、分子状酸素(O)の分圧が20%未満の環境であり、例えば18%未満、16%未満、14%未満、12%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満などの環境である。
【0025】
1つの特に好ましい実施形態では、前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境である。
【0026】
一実施形態によれば、ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物は、低酸素環境で運動させる。前記低酸素環境は、好ましくは、分子状酸素(O)の分圧が20%未満の環境であり、例えば18%未満、16%未満、14%未満、12%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である。
【0027】
1つの特に好ましい実施形態では、前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境である。
【0028】
本発明の一実施形態では、前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が20%未満の環境であり、例えば18%未満、16%未満、14%未満、12%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である。1つの特に好ましい実施形態では、前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境である。
【0029】
一実施形態によれば、ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した、懸滴(ハンギングドロップ)培養などの技術によって増殖される。
【0030】
1つの特に好ましい実施形態では、ステップa)において述べた前記1つ以上の軟骨マイクロ構築物は、スフェロイドなどの三次元細胞構造である。
【0031】
一実施形態によれば、ステップa)における前記軟骨形成細胞及び/又はステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物及び/又はステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物が、細胞培地中に浸漬される。別の実施形態では、ステップa)における前記軟骨形成細胞及び/又はステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物及び/又はステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物が、細胞培地中に含められる。
【0032】
本発明のさらなる実施形態では、ステップa)における前記軟骨形成細胞は、細胞培地中で増殖され、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、そして最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満、又は空気飽和度10%未満である。
【0033】
本発明のさらなる実施形態では、ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物は、細胞培地中に含められるか、又は細胞培地中に浸漬され、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、そして最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満、又は空気飽和度10%未満である。
【0034】
本発明のさらなる実施形態では、ステップc)における前記融合軟骨マイクロ構築物は、細胞培養培地中に含められるか、又は細胞培地中に浸漬され、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、そして最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満、又は空気飽和度10%未満である。
【0035】
特に好ましい実施形態では、ステップa)における前記軟骨形成細胞及び/又はステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物及び/又はステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物が、細胞培地中に浸漬されるかもしくは細胞培地中に含められる。前記細胞培地中の溶存分子状酸素の量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満、又は空気飽和度10%未満である。
【0036】
一実施形態では、ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物に、等速円運動又は滑らかな等速円運動などの円運動を行なわせ、前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進する。
【0037】
別の実施形態では、ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物を一軸の周りに傾斜させることにより、ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物を運動させて、前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進する。一軸の周りの傾斜は、例えば、揺動撹拌器(rocker shaker)又はミニ揺動撹拌器などの撹拌器を用いることによって達成できる。
【0038】
別の実施形態では、ステップb)における前記複数の軟骨マイクロ構築物を、2つより多い独立した水平軸などの、2つ以上の軸の周りに傾斜させることにより、ステップb)における複数の前記軟骨マイクロ構築物を運動させて、前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進する。
【0039】
本発明に係る一実施形態では、ステップb)及びステップc)は、組み合わされて一段階プロセスとなる。これは、例えば、ステップa)で得られた前記複数の軟骨マイクロ構築物に低酸素環境で機械的刺激を受けさせ、前記複数の軟骨マイクロ構築物を低酸素環境で運動させて、前記軟骨マイクロ構築物間の接触を促進し、これにより、凝集性軟骨構築物の形成を可能にする。
【0040】
本発明の一実施形態では、機械的刺激は、圧縮、引張、発振性(oscillatory)及び/又は振動性(vibrational)刺激、せん断応力及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
圧縮は、前記融合軟骨マイクロ構築物に直接加えられてもよく、及び/又は、ステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物は、細胞培地中に浸漬されても細胞培地中に含められてもよく、前記圧縮は、周囲の前記細胞培地に加えられてもよい。
【0042】
引張は、二軸及び/又は一軸方向に加えられてもよく、融合軟骨マイクロ構築物の一時的な構造的変形をもたらす。
【0043】
発振性及び/又は振動性刺激を、前記融合軟骨マイクロ構築物に直接加えることができ、及び/又はステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物を細胞培地中に浸漬又は含有させ、前記発振性及び/又は振動性刺激を周囲の前記細胞培地に加えることができる。
【0044】
1つの特に好ましい実施形態では、前記機械的刺激は流体力学的刺激である。
【0045】
本発明の一実施形態では、ステップc)における前記1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物は、細胞培地中に浸漬されるか含有され、前記機械的刺激は流体力学的刺激である。
【0046】
本発明の一実施形態では、前記機械的刺激は、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を12MPa以上の圧力に曝露することを含まない。
【0047】
本発明の一実施形態では、前記機械的刺激は、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を10MPaより大きい圧力に曝露することを含まない。
【0048】
本発明の一実施形態では、前記機械的刺激は、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を8MPa以上の圧力に曝露することを含まない。
【0049】
本発明の一実施形態では、前記機械的刺激は、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を7MPa以上の圧力に曝露することを含まない。
【0050】
本発明の一実施形態では、前記機械的刺激は、前記融合軟骨マイクロ構築物及び/又は前記凝集性軟骨構築物を5MPa以上の圧力に曝露することを含まない。
【0051】
1つの特に好ましい実施形態では、前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖される。
【0052】
1つの特に好ましい実施形態では、
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、
ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖され、
ステップa)で述べた前記1つ以上の軟骨マイクロ構築物は、スフェロイド等の三次元細胞構造である。
【0053】
1つの特に好ましい実施形態では、
ステップa)における前記細胞を低酸素環境で増殖させ、
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、
ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖される。
【0054】
前記機械的刺激は、例えば、経時的に変化する圧力を含むプロセスであってもよい。前記機械的刺激が経時的に変化する圧力を含むプロセスである場合、前記経時的に変化する圧力は、5MPa未満、例えば4MPa未満、3MPa未満、2MPa未満、又は1.5MPa未満の最大圧力を有する。
【0055】
一実施形態では、前記融合軟骨構築物は、5MPa未満、例えば4MPa未満、3MPa未満、2MPa未満、又は1.5MPa未満の圧力を受ける。前記圧力は、前記機械的刺激であることが好ましい。
【0056】
別の実施形態では、前記機械的刺激は、最大圧力が12MPa未満、例えば10MPa以下となることを条件として、経時的に変化する圧力を含む。
【0057】
前記機械的刺激は、例えば、経時的に変化する圧力を含むプロセスであってもよい。 前記機械的刺激が時間と共に変化する圧力を含むプロセスである場合、前記経時的に変化する圧力は、12MPa未満、例えば10MPa以下、8MPa未満、7MPa未満、又は5MPa未満の最大圧力を有する。
【0058】
一実施形態では、融合軟骨マイクロ構築物は、12MPa未満、例えば10MPa以下、8MPa未満、7MPa未満、又は5MPa未満の圧力を受ける。前記圧力は、前記機械的刺激であることが好ましい。
【0059】
一実施形態では、前記機械的刺激は、最大圧力が10MPa未満であることを条件として、経時的に変化する圧力を含む。
【0060】
本発明の1つの実施形態では、ステップc)で得られる前記凝集性軟骨構築物は、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば、約95体積%の細胞外マトリックスを含む。
【0061】
本発明の一実施形態では、本方法は、生物学的足場又は合成足場への軟骨形成細胞の播種を含まない。
【0062】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係る方法により製造された凝集性軟骨構築物に関する。
【0063】
本発明の第2の態様に係る一実施形態では、前記凝集性組織構築物は、実質的に均質な凝集性軟骨構築物である。
【0064】
本発明の第2の態様に係る一実施形態では、前記凝集性軟骨構築物は、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば、95体積%の細胞外マトリックスを含む。
【0065】
本発明の一実施形態では、前記凝集性軟骨構築物は、細胞外マトリックスを含み、実質的に全ての前記細胞外マトリックスは、前記凝集性軟骨構築物の細胞によって産生される。
【0066】
本発明の一実施形態では、前記凝集性軟骨構築物の全ての細胞は、ステップa)で述べた前記軟骨形成細胞に由来する。
【0067】
本発明の第3の態様は、被験体の損傷軟骨を修復するための外科的方法に用いる本発明の第2の態様に係る前記凝集性軟骨構築物に関する。前記外科的方法は、前記損傷軟骨を除去し、前記凝集性軟骨構築物を移植することにより、前記被験体における前記損傷軟骨を置換するステップを含む。
【0068】
本発明の第3の態様に係る一実施形態では、前記凝集性軟骨構築物の前記細胞が由来する前記被験体は、前記凝集性軟骨構築物が移植される前記被験体である。
【0069】
本発明の第3の態様に係る一実施形態では、前記損傷軟骨は、損傷関節軟骨である。
【0070】
本発明の第3の態様に係る一実施形態では、
前記損傷軟骨が除去された後であって、前記凝集性軟骨構築物を移植する前に、前記損傷軟骨の部位の軟骨下骨は、
貫通されて、前記軟骨下骨の頂部の血管から出血を生じさせ、及び/又は、
傷つけられて、前記軟骨下骨の頂部の血管から小さな出血を生じさせる。
【0071】
本発明の第3の態様に係る一実施形態では、前記移植された凝集性軟骨構築物は、周囲の軟骨及び/又は骨に縫合される。
【0072】
本発明の第3の態様に係る一実施形態では、前記損傷軟骨の原因は、変形性関節症などの変性疾患である。
【0073】
本発明の代替態様は、凝集性組織構築物のインビトロ製造のための方法であって、
a)マイクロ構築物の形成を可能にするために、被験体に由来する細胞を増殖させるステップと、
b)融合マイクロ構築物の形成を可能にするために、複数の前記マイクロ構築物に緩やかな動きを受けさせるステップと、
c)凝集性組織構築物の形成を可能にするために、前記融合マイクロ構築物に機械的刺激を受けさせるステップとを含む方法に関する。
【0074】
代替態様に係る一実施形態によれば、前記細胞は軟骨形成細胞、例えば軟骨細胞特に関節軟骨細胞であり、前記マイクロ構築物は軟骨マイクロ構築物であり、前記融合マイクロ構築物は軟骨融合マイクロ構築物であり、前記凝集性組織構築物は凝集性軟骨構築物である。
【0075】
代替態様に係る一実施形態では、前記被験体は、ヒト又は非ヒト動物である。好ましくは、前記被験体はヒトである。
【0076】
代替態様に係る一実施形態では、前記マイクロ構築物は、三次元細胞構築物である。
【0077】
代替態様に係る一実施形態では、ステップa)における前記細胞は、三次元細胞構造の形成を可能にするのに適した技術、すなわち、前記マイクロ構築物が三次元細胞構造である技術によって増殖される。
【0078】
代替態様に係る一実施形態では、ステップa)における前記細胞は、低酸素環境で増殖される。代替態様に係る別の実施形態では、ステップb)における前記複数のマイクロ構築物は、低酸素環境において緩やかな動きを受ける。代替態様に係るさらに別の実施形態では、ステップc)における前記融合マイクロ構築物は、低酸素環境において機械的刺激を受ける。
【0079】
代替態様に係る1つの実施形態では、ステップa)における前記細胞は低酸素環境で増殖され、ステップb)における前記複数のマイクロ構築物は、低酸素環境で緩やかな動きを受け、及び/又はステップc)における前記融合マイクロ構築物は、低酸素環境で機械的刺激を受ける。
【0080】
代替態様に係る好ましい実施形態では、ステップa)における前記細胞は低酸素環境で増殖され、ステップb)における前記複数のマイクロ構築物は、低酸素環境で緩やかな動きを受け、ステップc)における前記融合マイクロ構築物は、低酸素環境で機械的刺激を受ける。
【0081】
代替態様に係る一実施形態では、前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が20%未満の環境であり、例えば10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である。
【0082】
代替態様に係る1つの実施形態では、ステップa)における前記細胞、ステップb)における前記複数のマイクロ構築物及び/又はステップc)における前記融合マイクロ構築物は、細胞培地中に浸漬される。代替態様に係る別の実施形態では、ステップa)における細胞、ステップb)における前記複数のマイクロ構築物及び/又はステップc)における前記融合マイクロ構築物は、細胞培地中に含められる。
【0083】
代替態様に係るさらなる実施形態では、ステップa)における前記細胞は、細胞培地中で増殖され、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは80%空気飽和度未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満、又は空気飽和度10%未満である。
【0084】
代替態様に係るさらなる実施形態では、ステップb)における前記マイクロ構築物は、細胞培地中で緩やかな動きを受け、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは60%空気飽和度未満、最も好ましくは空気飽和度40%未満の、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満の、空気飽和度20%未満の、又は空気飽和度10%未満である。
【0085】
代替態様に係るさらなる実施形態では、ステップc)における前記融合マイクロ構築物は、細胞培地中で機械的刺激を受け、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満、空気飽和度10%未満である。
【0086】
代替態様に係る一実施形態では、ステップb)及びステップc)は、組み合わされて一段階プロセスとなる。換言すれば、ステップa)において得られる前記マイクロ構築物は、緩やかな動きと機械的刺激を受けて、凝集組織構築物の形成を可能にする。
【0087】
代替態様に係る別の実施形態では、ステップa)において前記細胞を増殖させることは、懸滴培養などの、三次元細胞構造の形成を可能にする技術による。
【0088】
代替態様に係る一実施形態では、機械的刺激は流体力学的刺激である。
【0089】
前記機械的刺激は、例えば、経時的に変化する圧力を含むプロセスであってもよい。前記機械的刺激が経時的に変化する圧力を含むプロセスである場合、前記経時的に変化する圧力は、5MPa未満、例えば4MPa未満、3MPa未満、2MPa未満、又は1.5MPa未満の最大圧力を有する。
【0090】
代替態様に係る一実施形態では、前記融合マイクロ構築物は、5MPa未満、例えば4MPa未満、3MPa未満、2MPa未満、又は1.5MPa未満の圧力を受ける。前記圧力は、前記機械的刺激であることが好ましい。
【0091】
代替態様に係る別の実施形態では、前記機械的刺激は、最大圧力が12MPa未満、例えば、10MPa以下であることを条件として、経時的に変化する圧力を含む。
【0092】
代替態様に係る別の実施形態では、機械的刺激は流体力学的刺激(hydrodynamic stimulation)である。
【0093】
前記機械的刺激は、例えば、経時的に変化する圧力を含むプロセスであってもよい。前記機械的刺激が経時的に変化する圧力を含むプロセスである場合、前記経時的に変化する圧力は、12MPa未満、例えば10MPa以下、8MPa未満、7MPa未満、又は5MPa未満の最大圧力を有する。
【0094】
代替態様に係る一実施形態では、前記融合マイクロ構築物は、12MPa未満、例えば、10MPa以下、8MPa未満、7MPa未満、又は5MPa未満の圧力を受ける。前記圧力は、前記機械的刺激であることが好ましい。
【0095】
代替態様に係る一実施形態では、前記機械的刺激は、最大圧力が10MPa未満であることを条件として、経時的に変化する圧力を含む。
【0096】
代替態様に係る1つの実施形態では、
前記細胞は軟骨細胞であり、前記マイクロ構築物は軟骨マイクロ構築物であり、前記融合マイクロ構築物は軟骨融合マイクロ構築物であり、前記凝集組織構築物は凝集性軟骨構築物であり、
前記マイクロ構築物は、三次元細胞構造であり、
ステップa)における前記細胞を低酸素環境で増殖させ、
ステップb)における前記複数のマイクロ構築物は、低酸素環境で緩やかな動きを受け、
ステップc)における前記融合マイクロ構築物は、低酸素環境で機械的刺激を受ける。
【0097】
代替態様に係る一実施形態では、ステップc)において得られる前記凝集性組織構築物は、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば、約95体積%の細胞外マトリックスを含む。
【0098】
本発明の第2の代替態様は、本発明の代替態様による前記方法によって製造される凝集性組織構築物に関する。
【0099】
本発明の第2の代替態様に係る一実施形態では、前記凝集性組織構築物は、実質的に均質な凝集性組織構築物である。
【0100】
本発明の第2の代替態様に係る一実施形態では、前記凝集性組織構築物は、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば約95体積%の細胞外マトリックスを含む。
【0101】
本発明の第2の代替態様に係る一実施形態では、前記凝集性組織構築物は、細胞外マトリックスを含み、実質的に全ての前記細胞外マトリックスは、前記凝集性組織構築物の前記細胞によって産生される。
【0102】
本発明の第2の代替態様に係る一実施形態では、前記凝集性組織構築物の全ての前記細胞は、ステップa)に述べた細胞に由来する。
【0103】
本発明の第3の代替態様は、被験体内の損傷組織を修復するための外科的方法において用いるための、本発明の第2の代替態様による前記凝集性組織構築物に関し、前記方法は、前記損傷組織を除去し、前記凝集性組織構築物を移植することによって、前記被験体内の前記損傷組織を置換するステップを含む。
【0104】
本発明の第3の代替態様に係る一実施形態では、前記凝集性組織構築物の前記細胞が由来する被験体は、前記凝集性組織構築物が移植される前記被験体である。
【0105】
本発明の第3の代替態様に係る一実施形態では、前記損傷軟骨が、損傷関節軟骨である。
【0106】
本発明の第3の代替態様に係る一実施形態では、
損傷軟骨が除去された後であって、前記軟骨構築物を移植する前に、前記損傷軟骨の部位における軟骨下骨が、
貫通されて、前記軟骨下骨の頂部の血管から出血を生じさせ、及び/又は、
傷つけられて、前記軟骨下骨の頂部の血管から小さな出血を生じさせる。
【0107】
本発明の第3の代替態様に係る一実施形態では、前記移植された凝集性軟骨構築物は、周囲の軟骨及び/又は骨に縫合される。
【0108】
本発明の第3の代替態様に係る一実施形態では、前記損傷軟骨の原因は、変形性関節症などの変性疾患である。
【0109】
本発明を以下の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1】関節軟骨(2.1)と、骨梁(2.4)と噛み合う相互嵌合部(2.3)を有する軟骨下骨(2.2)の3D図を示す。
図2】融合マイクロ構築物を機械的に刺激して凝集性構築物の形成を可能とするための装置を示し、本装置は、6.44ccのピストン変位を有するピストン/ロッド(1)と、ロッドブッシング(2)と、シリンダ/ボア(3)と、可撓性の床及び天井を有する容器(4)と、栄養物(5)と、半透性チャンバ(6)と、スフェロイド(7)と、チャンバ(9)と、蓋(11)と、真空ポート(12)及び圧力変換器(13)とを含む。チャンバ(8)の作動容積は540ccであり、チャンバには例えば蒸留水(10)が充填されている。
図3】様々な形態の機械的刺激の図を示す。黒矢印は、印加される力の方向を表す。圧縮(A)は、細胞を播種した構築物に直接、又は、静水圧として周囲の流体に直接加えることができる。引張(B)は、二軸又は一軸方向に加えることができ、細胞の一時的な構造的変形をもたらす。発振性又は振動性の刺激(C)は、細胞を播種した構築物に、又は周囲の媒体に直接加えることができる。層状せん断応力(D)は、流体流を介して、しばしば、細胞を播種した管腔(lumen)の内部に加えられる。中間の曲線及び直線によって示される流体速度プロファイルは、純粋な層流を経験する管腔内の流体速度の分布を示す。
図4a】膝の大腿骨側の軟骨における欠損(左画像)と、事故後の軟骨の遊離断片(loose fragment)(右画像)とを示す。
図4b図4aに示した軟骨の遊離シート(loose sheet)が固定される手法を示し、ここでは、断片を正常な周囲の軟骨に固定する縫合糸とシートを付着させるために、骨からの出血を緩やかに誘導する(左画像)。右側の画像は、骨及び周囲の軟骨に対して縫合された断片の癒着を示す磁気共鳴イメージング(MRI)画像である。
図5A】20個の軟骨マイクロ構築物が低酸素環境(3%O)の培地中で約24時間増殖された結果を示す(増殖中の細胞の運動はない)。軟骨マイクロ構築物は主として単離されたままであり、いくつかはくっつき合っていた。しかし、1つの融合軟骨マイクロ構築物への自己組織化は存在しない。
図5B】20個の軟骨マイクロ構築物が低酸素環境(3%O)の培地中で約24時間増殖された結果を示す。増殖中に軟骨マイクロ構築物を運動させた。軟骨マイクロ構築物は、1つの融合マイクロ構築物に自己組織化された。
図6】47個の軟骨マイクロ構築物が低酸素環境(3%O)の培地中で増殖された結果を示す。増殖中に軟骨マイクロ構築物を運動させた。軟骨マイクロ構築物は、融合マイクロ構築物に自己組織化され、これはマイクロ構築物間の完全な融合である。図6は、図5A及び図5Bの画像よりも高い拡大率を有する。
図7】47個の軟骨マイクロ構築物が低酸素環境(3%O)の培地中で約48時間増殖された結果を示し、軟骨マイクロ構築物は1日当たり3時間運動させた後、さらに48時間にわたり1日当たり1時間の機械的刺激にさらされた。図7に示すように、軟骨マイクロ構築物は、長さ約6mmで幅2mmの小型凝集性軟骨構築物(黒矢印で示す)に自己組織化されていた。
図8図7に示した小型凝集性軟骨構築物に基づく組織学的データを示す。組織学的データから分かるように、軟骨細胞は、細胞培養から本物の骨組織への移行を示す凝集性細胞シートを作製した。いくつかの軟骨細胞は、裂孔(lacuna)様空間(細矢印)に既に存在しており、未成熟軟骨に、新たに形成された組織との類似性を付与する好塩基性酸グリコサミノグリカンに富んだ細胞外マトリックス(太矢印)の形成が局所的に観察される。
【発明を実施するための形態】
【0111】
本明細書で特に定義しない限り、使用される全ての技術用語及び科学用語は、遺伝学、生化学、及び分子生物学の分野における当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0112】
本明細書に記載された方法及び材料と類似又は同等の全ての方法及び材料は、本明細書に記載される適切な方法及び材料を用いて、本発明の実施又は試験に使用することができる。本明細書に記載されている全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、それらの全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先される。
【0113】
ここで数値限界又は範囲が述べられる場合には、終点が含まれる。また、数値限界又は範囲内の全ての値及び副範囲は、あたかも明示的に記述されているかのように具体的に含まれる。
【0114】
非特許文献8には、支持構造の使用に基づかない培養技術が記載されており、これは、大きさ200~600μmの範囲の良好に形成された固形の(solid)軟骨マイクロ構築物を製造するためのものである。マイクロ構築物は、軟骨細胞懸濁液から導出され、天然ヒアリン軟骨と形態学的及び表現型的類似性を共有すると主張されている。
【0115】
しかしながら、我々が知る限り、先行技術の軟骨マイクロ構築物の融合を促進し、これにより凝集性軟骨構築物の形成を可能にする培養技術の開示は、先行技術には存在しない。
【0116】
本発明の第1の態様及び代替的な態様は、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物のインビトロ製造のための方法に関する。凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物の製造を可能とすることにより、軟骨欠損などの組織欠損に罹患した患者をより効率的に治療することができ、回復時間を大幅に短縮することが期待される。
【0117】
凝集性軟骨構築物は、典型的には、ヒト又は非ヒト動物から単離された細胞かに由来する。原理的には、細胞は任意の種類の細胞であり得るが、細胞は、軟骨細胞、特に関節軟骨細胞などの軟骨形成細胞であることが好ましい。軟骨細胞は、例えば、好ましくは低応力に曝される膝の領域から採取した生検から得ることができる。当業者は、このような細胞を単離するために首尾よく用い得る多数の異なる技術を認識しているであろう。このような方法の一例は、非特許文献8の988頁左欄の最終段落から988頁右欄の第1段落に記載されている。また、ヒト関節軟骨細胞を単離し増殖させる方法を開示している本出願の実施例1についても参照する。
【0118】
ステップa)
細胞が単離されると、細胞は、軟骨マイクロ構築物などのマイクロ構築物の形成を可能にするために十分な時間増殖される。当業者であれば、(軟骨)マイクロ構築物を得るために細胞をどのように増殖させるかを知るであろう。このような方法の一例は、非特許文献8の989頁左欄の第2節に記載されている。また、ヒト関節軟骨細胞の懸滴培養を開示している本出願の実施例2についても参照する。
【0119】
本発明の一実施形態では、(軟骨)マイクロ構築物は、スフェロイド等の三次元細胞構築物であり、細胞は増殖して三次元細胞構築物の形成を可能とする。
【0120】
本明細書で使用される「三次元細胞構造」という用語は、生体内でと同様に、3次元の全てにおいて増殖することができた細胞を指す。懸滴培養は、細胞の三次元培養に適した技術の一例である(非特許文献8)。
【0121】
このように、本発明の好ましい実施形態では、各(軟骨)マイクロ構築物が三次元細胞構築物であるところの(軟骨)マイクロ構築物の形成を可能にするために、懸滴培養により細胞を増殖させる。
【0122】
懸滴培養は、典型的には、発生学及びその他の分野で利用される技術であり、さもなければ培養皿の平面によって制限されるであろう成長を可能にし、また表面積対容積比を最小にして蒸発を遅くするものである。古典的な懸滴培養は、逆さにした時計皿から懸下された、血漿や組織成長を可能にするその他の媒体などの、小さな液滴である。その時、懸滴は、プレートを横切って広がるのではなく、重力と表面張力とによって懸下される。これにより、組織やその他の細胞型が皿に対して押し潰されずに検査されることが可能となる。これは、例えば、組織の三次元構造が望まれる場合に有用である。本件出願の実施例2には、ヒト関節軟骨細胞の懸滴培養の詳細な開示が提供される。
【0123】
本発明の一実施形態では、懸滴培養により細胞を増殖させ、懸滴培養は、
軟骨形成細胞などの細胞の懸濁液の液滴が表面上に分配され、細胞懸濁液の細胞は、ヒト又は非ヒト動物から単離された細胞であるステップと、
表面を反転させるステップと、
典型的には三次元細胞構造を有する(軟骨)マイクロ構築物であるところの(軟骨)マイクロ構築物の形成を可能にするために、細胞を増殖させるステップと、
を含む。
【0124】
一実施形態では、(軟骨)マイクロ構築物は球形である。各(軟骨)マイクロ構築物の大きさは、典型的には200~1000μmの範囲であり、例えば、200~900μmの範囲、200~800μmの範囲、200~700μmの範囲、200~600μmの範囲、200~500μmの範囲、又は200~400μmの範囲である。マイクロ構築物の大きさを算出するために、非特許文献8を参照する。
【0125】
1滴当たりの細胞数が多すぎると、自発的な細胞組立てが妨げられるおそれがあり、結果として得られる構造は、固形性に劣り(less solid)、均一性(稠度)が少ない(little consistent)ものとなる。より少ない数の細胞を用いることにより、細胞を供給することが容易となり、また、細胞が廃棄物を取り除くことが容易になる。
【0126】
このように、本発明に係る一実施形態では、各液滴における細胞数が1000~30000個/滴の範囲であり、例えば、2000~30000個/滴の範囲、2000~20000個/滴の範囲、2000~10000個/滴の範囲、2000~8000個/滴の範囲、2000~5000個/滴の範囲、又は、2000~5000個/滴である。
【0127】
本発明に係る別の実施形態では、各液滴における細胞数の平均値が1000~30000個/滴の範囲、例えば、2000~30000個/滴の範囲、2000~20000個/滴の範囲、2000~10000個/滴の範囲、2000~8000個/滴の範囲、2000~5000個/滴の範囲、又は、2000~5000個/滴である。
【0128】
典型的には、細胞は、(軟骨)マイクロ構築物の形成を可能にするのに有効な時間だけ増殖される。典型的には、細胞は24時間後、液滴の底部に蓄積する。3日目までに、細胞は典型的にはより多く充填(packed)され、7日目には、細胞は、典型的には、均質で丸みを帯びた固形の凝集体を産生した。7日後、典型的には、凝集体の大きさと形状に関して有意な変化はなく、成長における安定状態に到達したことを明確に示す。細胞の生存率は、典型的には、トリパンブルー排除試験によって測定した培養21日目までと高い。前記凝集体は、典型的には、200~600μmの範囲の大きさの球体形状を有する。これらの凝集体は、本明細書では(軟骨)マイクロ構築物と呼ばれる。
【0129】
(軟骨)マイクロ構築物の形成を可能にするのに有効な時間量は、細胞型によって変化し、また、培養条件に依存しても変化し得ることが理解されるべきである。従って、本発明の一実施形態では、(軟骨)マイクロ構築物の形成を可能にするのに有効な時間量は、1~21日の範囲、好ましくは1~15日の範囲、より好ましくは1~7日の範囲、例えば3~7日の範囲である。
【0130】
軟骨細胞の最適なインビトロ増殖のための酸素要件は、理論的には、天然組織において遭遇する低酸素状態に近くなければならない。このように、本発明の一実施形態では、ステップa)における、軟骨形成細胞などの細胞を、低酸素環境で増殖させる。
【0131】
「低酸素」は低酸素状態を指す。1気圧の大気中の気体の約20.9%は分子状酸素である(すなわち、大気中の酸素分圧は全気圧の20.9%である)。試料が低酸素環境にさらされると、周囲の空気中の分子状酸素の分圧は典型的には20.9%未満である。
【0132】
ステップa)の細胞が低酸素環境にさらされると、細胞は、典型的には、分子状酸素(O)の分圧が20.9%未満である空気に暴露される培地中で培養される。このような条件を得る一つの方法は、インキュベータ内で細胞をインキュベートすることであり、インキュベータ内の分子状酸素の割合は、1気圧におけるインキュベータ外の分子状酸素の割合と比較して減少する。
【0133】
一実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が20%未満の環境であり、例えば10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である。好ましい実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が1~10%の範囲の環境であり、例えば1~8%、1~6%、1~4%、又は2~4%の範囲の環境である。特に好ましい実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が2~5%の範囲、例えば、2~4%の範囲の環境である。
【0134】
低酸素環境で細胞を増殖させることにより、培地中に溶解する分子状酸素の量も経時的に減少する。溶存酸素は、典型的には、一般的な温度及び塩分濃度において水に溶解する酸素の割合(その両方が水中の酸素の溶解度に影響を及ぼす)として表される。
【0135】
層化(stratification)のない水溶液の安定体では、溶存酸素が空気飽和度100%に維持される。空気飽和度100%とは、平衡状態においてできる限り多くの溶存気体分子を保持していることを意味する。平衡状態では、水中の各気体の割合は、大気中のそのガスの割合、すなわちその分圧と等価である。水は、完全飽和における平衡に達するまで、大気から酸素及びその他の気体をゆっくりと吸収する。
【0136】
100%空気飽和した2つの水体は、必ずしも同じ溶存酸素濃度を有していない。実際の溶存酸素量(mg/L)は、温度、圧力、塩分によって変動する。
【0137】
第1に、酸素の溶解度は、典型的には、温度が上昇するにつれて減少する。このことは、空気飽和度100%に達するために、より温かい表層水は、より深いより冷たい水よりも、より少ない溶存酸素を必要とすることを意味する。第2に、溶存酸素は、塩濃度が増加するにつれて指数関数的に減少する。これは、同じ圧力及び温度において、塩水が淡水よりも約20%少ない溶存酸素を保持することの理由である。第3に、圧力上昇に伴って溶存酸素が増加する。これは、大気圧と静水圧の両方に当てはまる。低高度の水は、より高い高度の水よりも溶存酸素を多く保持することができる。この関係はまた、水温躍層(thermocline)よりも低い水の「過飽和」(より大きな静水圧において、水はより多くの溶存酸素を逃すことなく保持することができる)の可能性を説明する。
【0138】
異なる条件下での酸素の溶解度を例示するために、異なる温度及び塩濃度における溶存分子状酸素の最大量、すなわち飽和度100%、を列挙する下記の表1を参照する。
【表1】
【0139】
25℃の温度と1気圧で空気中に放置された淡水溶液は、全飽和時、すなわち、空気飽和度100%において、8.2mg/Lの溶存分子状酸素を有する。同一条件下で空気飽和度50%において、淡水溶液は4.1mg/Lの溶存分子酸素を有するであろう。
【0140】
ステップa)の細胞、好ましくは、軟骨形成細胞は、典型的には、培養中に細胞培地中に浸漬又は含有される。ここで使用される「低酸素環境」という用語は、細胞培地を取り囲む環境を指し、すなわち、細胞培地自体を指すのではなく細胞培地を取り囲む空気を指す。従って、低酸素環境では、細胞培地中に溶解される分子状酸素の量に低酸素環境が影響を与えるまでに時間を要し、すなわち、新たな平衡を確立するのに時間を要する。
【0141】
そこで、新たな平衡を確立する時間を短縮するために、培地に、溶存分子状酸素の量を低減する処理を使用前に施すことができる。換言すれば、ステップa)における細胞(好ましくは、軟骨形成細胞)は、溶存分子状酸素の量が空気飽和度100%未満の培地中で増殖される。このことを低酸素環境での増殖と組み合わせると、空気飽和度100%の培地を用いた低酸素環境における増殖と比較して、細胞は、培地中に溶解した分子状酸素の量の迅速かつ長期的な低下を経験するであろう。
【0142】
従って、本発明の一実施形態では、ステップa)における前記細胞、好ましくは軟骨形成細胞は、培地中で増殖され、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%又は空気飽和度10%未満である。別の実施形態では、前記細胞培地中の溶存分子状酸素の量は、空気飽和度1~30%の範囲、たとえば、1~20%の範囲、1~10%の範囲、1~5%の範囲、又は2~3%の範囲である。
【0143】
空気飽和度は、空気の特性に直接的にリンクされた値を表す。この値を絶対値に変換するためには、基準点を確立する必要がある。
【0144】
本明細書中で使用される「空気飽和度100%における培地」なる用語は、平衡を確立するのに十分な時間にわたり室温(約20℃)と1気圧で空気中に放置された培地に対応する溶存分子状酸素の量を有する培地を指し、すなわち、分子状酸素が完全飽和度で溶解した培地である。このような培地は、典型的には、平衡を確立するのに十分な時間にわたり実験台上に培地を載置することによって、準備される。溶存O量が空気飽和度80%の培地は、1気圧及び室温における空気飽和度100%の培地と比較して、溶存分子状酸素が20%少ない培地である。
【0145】
本発明の目的は、圧縮強度及び低摩擦の両方において、既存の軟骨と同等の機械的特性を有する移植可能な凝集性軟骨構築物を製造することである。関節軟骨のほぼ95%は、細胞外マトリックス(ECM)であり、これは、その中に分散された軟骨細胞によって産生され維持される。ECMはプロテオグリカンとコラーゲンを主成分とし、軟骨中の主プロテオグリカンはアグリカンである。アグリカンは、その名称が示唆するように、ヒアルロン酸との大きな凝集体を形成する。このような凝集体は、負に帯電され、組織内に水を保持する。コラーゲン、大部分はII型コラーゲンは、プロテオグリカンを拘束する。ECMは、軟骨が経験する引張力及び圧縮力に応答して、組織の機械的一体性を維持する。
【0146】
従って、本発明による一実施形態では、ステップa)における細胞、好ましくは軟骨形成細胞は増殖され、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば約95体積%の細胞外マトリックスを含む、軟骨マイクロ構築物などの、マイクロ構築物の形成を可能にする。
【0147】
ステップb)
この方法の第2のステップは:
ステップa)で得られた、軟骨マイクロ構築物などの、複数のマイクロ構築物に緩やかな動きを受けさせて、融合軟骨マイクロ構築物などの、融合マイクロ構築物を形成することを可能にすること、又は、
複数の軟骨マイクロ構築物を運動させて、軟骨マイクロ構築物間の接触を促進し、それにより、1つ以上の融合軟骨マイクロ構築物の形成を可能にすること、
を含む。
【0148】
一実施形態によれば、ステップb)における複数の軟骨マイクロ構築物は、低酸素環境で運動させる。低酸素環境は、好ましくは、分子状酸素(O)の分圧が20%未満の環境であり、例えば18%未満、16%未満、14%未満、12%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である。
【0149】
1つの特に好ましい実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境である。
【0150】
本明細書で使用される用語「融合(軟骨)マイクロ構築物」は、一緒に「くっつき合い」、自己組織化されて融合(軟骨)マイクロ構築物となり、(軟骨)マイクロ構築物間に融合が存在する、少なくとも2つの(軟骨)マイクロ構築物である。一緒に「くっつき合い」、自己組織化されて融合(軟骨)マイクロ構築物となり、(軟骨)マイクロ構築物間に融合が存在する、得られた47個の(軟骨)マイクロ構築物である、融合(軟骨)マイクロ構築物の例は、図6に提供されている。
【0151】
大きさ200~600μmの範囲の良好に形成された固形状の軟骨マイクロ構築物をどのように調製するかは既に開示されている(非特許文献8)。軟骨マイクロ構築物は、軟骨細胞懸濁液に由来し、天然のガラス軟骨と形態学的及び表現型類似性を共有する。しかしながら、我々の知る限りでは、これらの軟骨マイクロ構築物の融合軟骨マイクロ構築物への融合を促進することは困難であることが証明されている。融合(軟骨)マイクロ構築物の形成は、圧縮強度及び低摩擦の両方において、既存の軟骨と一致する機械的特性を有する凝集性軟骨構築物の製造に重要であると考えられている。
【0152】
理論に拘束されることなく、ステップa)で形成された(軟骨)マイクロ構築物は、適切な条件下で一緒にくっつき合う能力を有することが仮定された。さらに、このような密接な接触は、(軟骨)マイクロ構築物間の融合をもたらし、それにより、融合(軟骨)マイクロ構築物を形成するとの仮説を立てた。
【0153】
(軟骨)マイクロ構築物が「くっつき合う」ための前提条件は、(軟骨)マイクロ構築物同士を互いに接触させることである。(軟骨)マイクロ構築物が互いに接触すればするほど、それらが一緒にくっつき合って、最終的に1つの融合(軟骨)マイクロ構築物に融合する可能性が高くなる。
【0154】
この理論に基づいて、
複数のマイクロ構築物に緩やかな動きを受けさせるか、又は
複数の軟骨マイクロ構築物を運動させて、軟骨マイクロ構築物間の接触を促進するか、
が決定され、
これは、(軟骨)マイクロ構築物を含む容器をミニ揺動撹拌器に載置することにより行われる。実施例4参照。ミニ揺動撹拌器は、10度の傾斜をもって起動され、0度に到達するのに約15秒、-10度の傾斜に到達するのにさらに15秒、0度に到達するのにさらに15秒、10度の傾斜での開始に戻るのにさらに15秒を要し、従って、10度の傾斜から-10度の傾斜までに合計30秒、運動の開始から完全な一巡が得られるまでに合計60秒を要した。
【0155】
驚くべきことに、本発明の発明者は、この種の動きが、融合(軟骨)マイクロ構築物の形成の機会を著しく増加させたことを示すことができた。図5Aは、(軟骨)マイクロ構築物が動きを受けたり運動したりしていない場合には、(軟骨)マイクロ構築物の大半は分離されたままであり、多少はくっつき合っていたことを明確に示している。しかし、図5Bに見られるような1つの融合(軟骨)マイクロ構築物への自己組織化は生じていない。(軟骨)マイクロ構築物が緩やかな動きを受けたり運動したりすると、(軟骨)マイクロ構築物は、図5Bに示すように、1つの融合(軟骨)マイクロ構築物に自己組織化される。
【0156】
複数のマイクロ構築物に緩やかな動きを受けさせたり、複数の軟骨マイクロ構築物を運動させたりすることは、(軟骨)マイクロ構築物が一緒にくっつき合うために重要であると考えられている。(軟骨)マイクロ構築物が強力な動きを受けると、(軟骨)マイクロ構築物は、互いにくっつき合うのに十分な時間を有さず、ビリヤードの球のようにぶつかっては離れることになると、当初は考えられていた。従って、本明細書で使用される「緩やかな動き」とは、(軟骨)マイクロ構築物に一緒にくっつき合うのに十分な時間を与えると同時に、上に述べたようなぶつかっては離れるという機能性を引き起こすほど強すぎる動きを与えないような動きを指す。
【0157】
強力な動きは好ましい選択肢でないにしても、動きの強さはあまり重要ではないと今では考えられている。最も重要な特徴は、複数の(軟骨)マイクロ構築物を運動させて(軟骨)マイクロ構築物間の接触を促進することであると思われる。従って、(軟骨)マイクロ構築物が他のマイクロ構築物と接触する回数が、接触時のマイクロ構築物の速度よりも重要であると思われる。
【0158】
例えば、ミニ揺動撹拌器を使用して(一軸まわりの傾斜の形態での動きを与え)複数の(軟骨)マイクロ構築物を運動させる場合、当業者であれば、ミニ揺動撹拌器の速度が高速すぎると、(軟骨)マイクロ構築物が他の(軟骨)マイクロ構築物と接触するのに十分な時間を有さないことを理解するであろう。
【0159】
実施例4では、緩やかな動きを提供するためにミニ揺動撹拌器を使用した。このミニ搖動撹拌器は、一軸まわりの傾斜の形態での動きのみを与えた。上記に挙げた仮説及び達成された結果に基づいて、ミニ揺動撹拌器が2つ以上の独立した水平軸まわりの傾斜の形態での動きを提供することができたならば、その結果がより良好であったと推定することは妥当と思われる。2つ以上の独立した水平軸まわりの傾斜の形態での動きを提供する装置の一例は、いわゆる軌道撹拌器(オービタルシェーカー)である。
【0160】
本発明の一実施形態では、ステップa)で述べた細胞は、軟骨細胞などの軟骨形成細胞であり、マイクロ構築物は軟骨マイクロ構築物であり、ステップb)で述べた融合マイクロ構築物は、融合軟骨マイクロ構築物である。
【0161】
(軟骨)マイクロ構築物の最適なインビトロ融合のための酸素要件は、理論的には、天然組織において遭遇する低酸素状態に近くなければならない。このように、本発明に係る一実施形態では、ステップb)における(軟骨)マイクロ構築物は、
低酸素環境で緩やかな動きを受けさせるか、あるいは
低酸素環境で運動させて(軟骨)マイクロ構築物間の接触を促進する。
【0162】
「低酸素」は低酸素状態を指す。1気圧の大気中の気体の約20.9%は分子状酸素である(大気中の酸素分圧は全気圧の20.9%である)。試料が低酸素環境にさらされると、周囲の空気中の酸素分圧は典型的には20.9%未満である。
【0163】
ステップb)の(軟骨)マイクロ構築物が低酸素環境にさらされると、マイクロ構築物は、典型的には、分子状酸素(O)の分圧が20.9%未満である空気に曝露される培地中で培養される。このような条件を得る一つの方法は、インキュベータ内で(軟骨)マイクロ構築物をインキュベートすることであり、インキュベータ内の分子状酸素の割合は、1気圧におけるインキュベータ外の分子状酸素の割合と比較して減少する。
【0164】
一実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が20%未満の環境であり、例えば10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である。好ましい実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が1~10%の範囲の環境であり、例えば1~8%、1~6%、1~4%、又は2~4%の範囲の環境である。特に好ましい実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が2~5%の範囲、例えば、2~4%の範囲の環境である。
【0165】
ステップb)における(軟骨)マイクロ構築物は、典型的には、培地中に浸漬又は含有される。(軟骨)マイクロ構築物を低酸素環境に維持することにより、培地中に溶解する分子状酸素の量も経時的に減少する。
【0166】
ここで使用される「低酸素環境」という用語は、細胞培地を取り囲む環境を指し、すなわち、細胞培地自体を指すのではなく、細胞培地を取り囲む空気を指す。従って、低酸素環境では、細胞培地中に溶解される分子状酸素の量に低酸素環境が影響を与えるまでに時間を要し、すなわち、新しい平衡を確立するのに時間を要する。
【0167】
そこで、新たな平衡を確立する時間を短縮するため、培地に、溶存分子状酸素の量を低減する処理を使用前に施すことができる。換言すれば、ステップb)における(軟骨)マイクロ構築物は、溶存分子状酸素の量が空気飽和度100%未満の培地中で緩やかな動きを受ける。このことを低酸素環境で(軟骨)マイクロ構築物を維持することと組み合わせると、マイクロ構築物は、培地中に溶解した分子状酸素の量の迅速かつ長期的な低下を経験するであろう。
【0168】
従って、本発明による一実施形態では、ステップb)における(軟骨)マイクロ構築物は、培地中で穏やかな動きを受け、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、そして最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満又は空気飽和度が10%未満である。別の実施形態では、前記細胞培地中の溶存分子状酸素の量は、空気飽和度の1~30%範囲、例えば、1~20%の範囲、1~10%の範囲、1~5%の範囲、又は2~3%の範囲である。
【0169】
空気飽和度は、周囲の空気の特性に直接的にリンクされた値を表す。この値を絶対値に変換するためには、基準点を確立する必要がある。
【0170】
本明細書中で使用される「100%空気飽和度における培地」なる用語は、平衡を確立するのに十分な時間にわたり1気圧及び室温(約20℃)で空気中に放置された培地に対応する溶存分子状酸素の量を有する培地を指し、すなわち、分子状酸素が完全飽和度で溶解した培地である。このような培地は、典型的には、平衡を確立するのに十分な時間にわたり実験台上に培地を載置することによって準備される。溶存O量が空気飽和度80%の培地は、1気圧及び室温における空気飽和度100%の培地と比較して、溶存分子状酸素が20%少ない培地である。
【0171】
本発明の一実施形態では、複数のマイクロ構築物とは、少なくとも3個のマイクロ構築物、例えば、少なくとも5個のマイクロ構築物、少なくとも10個のマイクロ構築物、少なくとも20個のマイクロ構築物、少なくとも30個のマイクロ構築物、少なくとも40個のマイクロ構築物、少なくとも50個のマイクロ構築物、少なくとも60個のマイクロ構築物、少なくとも80個のマイクロ構築物、少なくとも100個のマイクロ構築物、少なくとも120個のマイクロ構築物、少なくとも140個のマイクロ構築物、少なくとも160個のマイクロ構築物、少なくとも180個のマイクロ構築物、又は少なくとも200個のマイクロ構築物を表す。
【0172】
本発明の別の実施形態では、複数のマイクロ構築物は、10~200個の範囲のマイクロ構築物、例えば、10~100個の範囲のマイクロ構築物、10~80個の範囲のマイクロ構築物、10~60個の範囲のマイクロ構築物、10~40個の範囲のマイクロ構築物、10~20個の範囲のマイクロ構築物、又は20~100個のマイクロ構築物である。
【0173】
本発明の目的は、圧縮強度及び低摩擦の両方において、既存の軟骨と同等の機械的特性を有する移植可能な凝集性軟骨構築物を製造することである。
【0174】
従って、本発明による一実施形態では、ステップb)で得られた(軟骨)マイクロ構築物は緩やかな動きを受け、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば約95体積%の細胞外マトリックスを含む融合(軟骨)マイクロ構築物の形成を可能にする。
【0175】
ステップc)
本発明の方法の第3のステップは、ステップb)で得られた融合(軟骨)マイクロ構築物に、好ましくは低酸素環境で、機械的刺激を受けさせ、凝集性軟骨構築物などの、凝集性組織構築物の形成を可能にすることを含む。
【0176】
本発明の一実施形態では、ステップa)における細胞は軟骨細胞であり、ステップa)で得られたマイクロ構築物は軟骨マイクロ構築物であり、ステップb)で得られた融合マイクロ構築物は、融合軟骨マイクロ構築物であり、ステップc)で得られた凝集組織構築物は、凝集性軟骨構築物である。
【0177】
本明細書中で使用される「凝集性軟骨構築物」なる用語は、圧縮強度及び/又は低摩擦の両方において、既存の軟骨と同等の機械的特性を有する移植可能な凝集性軟骨構築物を指す。図7には、凝集性軟骨構築物の一例が提供される。
【0178】
軟骨細胞が生体内でさらされる生理学的力が組織工学により作製される軟骨の開発にとって重要であるという考えに基づいて、本発明の発明者は、インビトロ組織形成中に加えられる機械的刺激の影響を研究することを開始した。
【0179】
インビトロで融合(軟骨)マイクロ構築物に流体力学的力(hydrodynamic forces)を伝達することができるバイオリアクタ(図2)が開発され、成長に対する機械的刺激の効果及び融合(軟骨)マイクロ構築物の特性が判定された(実施例3)。驚くべきことに、融合(軟骨)マイクロ構築物は、凝集性軟骨構築物のような凝集性組織構築物に成長し、これは、従来技術の構築物と比較してサイズが大きく、天然軟骨と形態学的及び表現型的類似性を共有していたことが観察された(図8参照)。
【0180】
したがって、本発明の一実施形態では、機械的刺激が流体力学的刺激である。本明細書に開示される「流体力学的刺激」なる用語は、流体力学的力が融合(軟骨)マイクロ構築物に印加される状況を指す。本出願の実施例3には、融合(軟骨)マイクロ構築物に流体力学的刺激を受けさせる手順の一例が記載されている。
【0181】
本発明に係る一実施形態では、融着(軟骨)マイクロ構築物は、培地が充填された第1の容器(6)の内部に配置されている。第1の容器(6)の床及び/又は天井は、半透膜であることが好ましい。
【0182】
「半透膜」という用語は、生物学的膜又は合成の高分子膜であって、促進拡散、受動輸送又は能動輸送などのより特殊なプロセスによる拡散によって、特定の分子又はイオンを通過させる膜を意味する。一実施形態では、半透膜は生物学的膜又は合成膜であり、好ましくは合成膜であって、栄養素及び廃棄物がそれを通過することを可能にする。通過の速度は、典型的には、両側の分子又は溶質の圧力、濃度及び温度、並びに各溶質に対する膜の透過性に依存する。半透膜の目的は、栄養素及び廃棄物の移送を可能にすると同時に、膜に印加される流体力学的力を伝達することである。
【0183】
第1の容器は、第2の容器(4)の内部に配置されていることが好ましい。第2の容器には液体が充填され、前記液体は好ましくは培地であり、最も好ましくは第1の容器の培地と第2の容器の培地が同一である。第2の容器の面のうちの少なくとも1つ、例えば、面のうちの少なくとも2つは、不透過性膜である。
【0184】
本明細書中で使用される「不透過性膜」という用語は、分子又はイオンが通過することを許さない生物学的膜又は合成膜を意味する。不透過性膜の目的は、膜に加えられる流体力学的力を伝達することである。
【0185】
第2の容器は、バイオリアクタ容器(9)の内部に配置されていることが好ましい。バイオリアクタ容器には、液体が充填され、この液体は蒸留水であることが好ましい。このバイオリアクタ容器は、円筒形であることが好ましい。バイオリアクタチャンバの全ての面は、好ましくは非可撓性材料である。バイオリアクタチャンバ内の液体は、好ましくは、ピストン(1)などの、バイオリアクタチャンバ内の圧力の変化を誘導するのに適した手段と流体連通している。
【0186】
機械的刺激の間、0.5Mpa~50MPaの範囲、例えば、1MPa~10MPaの範囲、1MPa~5MPaの範囲、又は1MPa~4MPaの範囲のエネルギーを、例えばピストンに印加して、バイオリアクタ容器内の圧力上昇をもたらす。任意選択的に、0.5Mpa~12MPaの範囲、例えば、1MPa~12MPaの範囲、1MPa~10MPaの範囲、又は1MPa~5MPaの範囲のエネルギーを、機械的刺激時に例えばピストンに印加する。
【0187】
バイオリアクタ容器内の圧力、すなわち、流体力学的力、の変化は、第2の容器の不透過性膜を介して伝達される。さらに、第2の容器内の圧力、すなわち流体力学的力、の変化は、軟骨マイクロ構築物が配置される第1の容器の半透膜を越えて伝達される。予め定められた時間の後、バイオリアクタチャンバ内の圧力の変化を誘導するのに適した手段に印加されるエネルギーを減少させ、バイオリアクタチャンバ内の圧力を低下させる。
【0188】
本発明に係る一実施形態では、バイオリアクタチャンバ内の圧力の変化を誘導するのに適した手段に加えられるエネルギーの変化は、圧力の発振的変化である。したがって、本発明の一実施形態では、機械的刺激は発振的流体力学的刺激である。
【0189】
「発振的流体力学的刺激」という用語は、流体力学的力、例えば、中心値に対しての又は2つの異なる状態の間でのバイオリアクタチャンバ内の圧力の変化を誘導するのに適した手段に加えられるエネルギー、の反復的時間変動を意味する。
【0190】
本発明の別の実施形態では、バイオリアクタチャンバ内の圧力の変化を誘導するのに適した手段に加えられるエネルギーの変化は、圧力の脈動的変化である。したがって、本発明の一実施形態では、機械的刺激は脈動性(パルス的)流体力学的刺激である。
【0191】
「脈動性流体力学的刺激」という用語は、流体力学的力の周期的な時間変動を指す。パルスは、不規則、すなわち、時間的に非反復性であってもよいし、規則的、すなわち、時間的に反復性であってもよい
【0192】
本発明の一実施形態では、機械的刺激は、発振的又は脈動的な機械的刺激である。脈動的な機械的刺激は、不規則な脈動的機械的刺激又は規則的な脈動的機械的刺激であってもよい。
【0193】
本発明の別の実施形態では、機械的刺激は、圧力の変化である。圧力の変化は、圧力の発振的変化又は圧力の脈動的変化であってもよい。脈動的な圧力変化の場合には、パルスは不規則であっても規則的であってもよい。
【0194】
本発明の一実施形態では、機械的刺激は、一軸圧縮負荷などの、z時間に対してxMPa、yHzをもつ圧縮負荷であり、ここで、
xは0.5~50の範囲、例えば1~40の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~20の範囲、又は1~10の範囲である。
yは0.1~2の範囲、例えば0.5~1.5の範囲、又は約1である。
zは、50~400、50~300、60~300、70~250、20~60、72~240の範囲内である。
【0195】
本発明に係る一実施形態では、機械的刺激は、融合マイクロ構築物に直接、又は静水圧として周囲の流体に直接加えられ得る圧縮である(図3A)。
【0196】
本発明の別の実施形態では、機械的刺激は、二軸及び/又は一軸方向に印加され、融合マイクロ構築物(図3B)の一時的な構造的変形をもたらし得る張力である。
【0197】
本発明の別の実施形態では、機械的刺激は、融合(軟骨)マイクロ構築物に、又は、直接周囲の媒体に、印加され得る発振性又は振動性刺激である(図3C)。
【0198】
本発明の別の実施形態では、機械的刺激は、流体の流れを介して、しばしば、融合(軟骨)マイクロ構造管腔(図3D)の内部に印加され得る層状せん断応力である。
【0199】
本発明の別の実施形態では、機械的刺激は、圧縮、張力、発振、振動、又は層状せん断応力からなる群から選択される2つ以上の力の組み合わせである。
【0200】
本発明の一実施形態では、機械的刺激は、1~15日の間、例えば1~12日の間、1~10日の間、2~10日の間、又は3~10日の間の持続時間を有する。
【0201】
本発明の一実施形態では、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物の形成を可能にするのに有効な時間の量は、1~15日の範囲、好ましくは1~12日の範囲、より好ましくは1~10日の範囲、例えば2~10日の範囲、又は3~10日の範囲である。
【0202】
凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物の最適なインビトロ成長のための酸素要件は、理論的には、天然組織において遭遇する低酸素状態に近くなければならない。このように、本発明に係る一実施形態では、ステップb)で得られた融合(軟骨)マイクロ構築物は、低酸素環境で機械的刺激を受ける。
【0203】
「低酸素」は低酸素状態を指す。1気圧の大気中の気体の約20.9%は分子状酸素である(大気中の酸素分圧は全気圧の20.9%である)。試料が低酸素環境にさらされると、周囲の空気中の酸素の分圧は典型的には20.9%未満である。
【0204】
ステップb)で得られた融合(軟骨)マイクロ構築物が低酸素環境にさらされると、融合(軟骨)マイクロ構築物は、典型的には、分子状酸素(O)の分圧が20.9%未満である空気に暴露される培地中で培養される。このような条件を得る一つの方法は、インキュベータ内で(軟骨)マイクロ構築物をインキュベートすることであり、インキュベータ内の分子状酸素の割合は、1気圧におけるインキュベータ外の分子状酸素の割合と比較して減少する。
【0205】
一実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が20%未満の環境であり、例えば10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である。好ましい実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が1~10%の範囲の環境であり、例えば1~8%、1~6%、1~4%、又は2~4%の範囲の環境である。特に好ましい実施形態では、低酸素環境は、分子状酸素の分圧が2~5%の範囲、例えば、2~4%の範囲の環境である。
【0206】
ステップb)で得られた融合(軟骨)マイクロ構築物は、典型的には培地中に浸漬される。この融合(軟骨)マイクロ構築物を低酸素環境に維持することにより、培地中に溶解する分子状酸素の量も経時的に減少する。
【0207】
ここで使用される「低酸素環境」という用語は、細胞培地を取り囲む環境を指し、すなわち、細胞培地自体を指すのではなく細胞培地を取り囲む空気を指す。従って、低酸素環境では、細胞培地中に溶解される分子状酸素の量に低酸素環境が影響を与えるまでに時間を要し、すなわち、新しい平衡を確立するのに時間を要する。
【0208】
そこで、新たな平衡を確立する時間を短縮するために、培地に、溶存分子量を低減する処理を使用前に施すことができる。換言すれば、ステップb)で得られた融合(軟骨)マイクロ構築物は、溶存分子状酸素の量が空気飽和度100%未満の培地中で機械的刺激を受ける。このことを低酸素環境での融合(軟骨)マイクロ構築物の維持と組み合わせると、融合(軟骨)マイクロ構築物は、培地中に溶解した分子状酸素の量の迅速かつ長期的な低下を経験するであろう。
【0209】
従って、本発明の一実施形態では、ステップb)で得られた融合(軟骨)マイクロ構築物は、培地中で機械的刺激を受け、ここで、前記細胞培地中の溶存Oの量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、そして最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満、又は空気飽和度10%未満である。別の実施形態では、前記細胞培地中の溶存分子状酸素の量は、空気飽和度1~30%の範囲、例えば1~20%の範囲、1~10%の範囲、1~5%の範囲、又は2~3%の範囲にある。
【0210】
百分率空気飽和度は、空気の特性に直接的にリンクされた値を表す。この値を絶対値に変換するためには、基準点を確立する必要がある。
【0211】
本明細書中で使用される「100%空気飽和度における培地」なる用語は、平衡を確立するのに十分な時間にわたり1気圧及び室温(約20℃)で空気中に放置された培地に対応する溶存分子状酸素の量を有する培地を指し、すなわち、分子状酸素が完全飽和度で溶解した培地である。このような培地は、典型的には、平衡を確立するのに十分な時間にわたり培地を実験台上に載置することによって準備される。溶存O量が空気飽和度80%の培地は、1気圧及び室温における空気飽和度100%の培地と比較して、溶存分子状酸素が20%少ない培地である。
【0212】
本発明の目的は、圧縮強度及び低摩擦の両方において、既存の軟骨と同等の機械的特性を有する移植可能な凝集性軟骨構築物を製造することである。
【0213】
従って、本発明の一実施形態では、ステップb)で得られた融合(軟骨)マイクロ構築物は、機械的刺激を受けて、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば約95体積%の細胞外マトリックスを含む、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物の形成を可能にする。
【0214】
一般的な態様
前述したように、インビトロでの軟骨組織の製造に対するいくつかの実験室的アプローチが提案されている。これらは、一般に、培養細胞(軟骨細胞又は多能性幹細胞のいずれか)の生物学的足場又は合成足場への播種を含む。本明細書に示すように、本発明の発明者は、生物学的、合成又は人工の足場などの支持構造を用いることなく、インビトロで凝集性軟骨構築物を製造することができた。
【0215】
したがって、本発明の一実施形態では、本発明の方法は、いかなる支持材の使用も必要としない。支持材の例は、生物学的、合成及び人工の足場である。
【0216】
当業者であれば、ステップa)が必ずしも直接ステップb)に続く必要はなく、ステップb)は必ずしも直接ステップc)に続く必要はないことを理解するであろう。例えば、ステップa)で得られた(軟骨)マイクロ構築物に、この(軟骨)マイクロ構築物が、
緩やかな動きを受けるか、あるいは、
軟骨マイクロ構築物間の接触を促進するために、運動させられる
前に、ある種の処理を受けさせてもよく、
また、融合(軟骨)マイクロ構築物が機械的刺激を受ける前に、ステップb)で得られた融合(軟骨)マイクロ構築物にある種の処理を受けさせることもできる。
【0217】
本発明に係る一実施形態では、ステップb)及びステップc)は、組み合わされて一段階プロセスとなる。換言すれば、ステップa)で得られた(軟骨)マイクロ構築物は、緩やかな動きを受けるか又は運動させられて、軟骨マイクロ構築物間の接触を促進し、機械的刺激を受けて、凝集性軟骨構築物などの凝集組織構築物を形成することができる。
【0218】
しかしながら、理論に拘束されることなく、機械的刺激が強ければ強いほど、機械的刺激を受ける前に(軟骨)マイクロ構築物が融合して融合(軟骨)マイクロ構築物になることがより重要になると考えられる。しかし、それほど強くない機械的刺激においては、ステップb)及びステップc)を一段階プロセスで行うことが可能である。
【0219】
本発明の第2の態様及び第2の変形態様は、本発明の第1の態様及び第1の代替態様のそれぞれによる方法によって製造された、凝集性軟骨構築物などの、凝集性組織構築物に関する。
【0220】
本発明の代替態様に係る一実施形態では、凝集性組織構築物は、凝集性軟骨構築物である。
【0221】
前述したように、インビトロでの軟骨組織の製造に対するいくつかの実験室的アプローチが提案されている。これらは一般に、培養細胞(軟骨細胞又は多能性幹細胞のいずれか)の生物学的又は合成足場への播種を含む。本明細書に示すように、本発明の発明者は、生物学的、合成又は人工の足場などのいかなる支持構造も用いることなく、インビトロで凝集性軟骨組織を製造することができた。
【0222】
したがって、本発明の一実施形態では、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物は、いかなる支持材も含まない。支持材の例は、生物学的、合成又は人工の足場である。
【0223】
先に開示したように、懸滴培養中の1滴当たりの細胞数が多すぎると、自発的な細胞組立てが妨げられ、結果として得られる構造は、固形性に乏しく、均一性(稠度)が少ない。従って、本発明の一実施形態によれば、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物は、実質的に均質な、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物である。
【0224】
前述したように、関節軟骨のほぼ95%は、細胞外マトリックス(ECM)であり、これは、その中に分散された軟骨細胞によって生成され維持される。
【0225】
従って、本発明による一実施形態では、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物の細胞外マトリックスは、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物の細胞によって生成される。好ましくは、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物の全ての細胞は、本発明の第1の態様又は代替の態様の第1のステップにおいて述べた細胞に由来する。
【0226】
本発明の別の実施形態では、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物は、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば、約95体積%の細胞外マトリックスを含む。
【0227】
本発明の別の実施形態では、凝集性軟骨構築物などの凝集性組織構築物は、少なくとも5mmの底面積と少なくとも2mmの高さを有し、より好ましくは、凝集性組織構築物、例えば、凝集性軟骨構築物は、少なくとも10mmの底面積と、少なくとも2mmの高さを有する。
【0228】
本発明の代替態様による方法により製造される凝集性組織構築物及び本発明の第1の態様による方法によって製造される凝集性軟骨構築物は、被験体における損傷組織を修復するための外科的方法において使用するのに適している。被験体の損傷組織を修復するための成功した外科的処置の結果が、図4a及び4bに示されている。
【0229】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に係る凝集性軟骨構築物であって、被験体における損傷軟骨を修復するための外科的方法において使用するための凝集性軟骨構築物に関する。この外科的方法は、損傷軟骨を除去し、修復を必要とする部位に凝集性軟骨構築物を移植することにより、被験体における損傷軟骨を置換するステップを含む。
【0230】
本発明の第3の代替態様は、本発明の第2の代替態様に係る凝集性組織構築物であって、被験体における損傷組織を修復するための外科的方法において使用するための凝集性組織構築物に関する。この外科的方法は、損傷組織を除去し、修復を必要とする部位に凝集性組織構築物を移植することにより、被験体における損傷組織を置換するステップを含む。
【0231】
本明細書中で使用される「移植」は、インビトロで製造された構築物が、損傷組織を置換するためにレシピエントの体内に配置される医療処置を指す。組織のレシピエントに由来する組織は、すなわち、凝集性組織構築物又は凝集性軟骨構築物の細胞が由来する被験体は、凝集性組織構築物又は凝集性軟骨構築物が移植される被験体であるが、本明細書では自家移植片と呼ばれる。
【0232】
移植が拒絶されることを回避するために、凝集性組織構築物又は凝集性軟骨構築物の細胞が由来する被験体は、凝集性組織構築物又は凝集性軟骨構築物が移植される被験体であることが好ましい。このように、凝集性組織構築物又は凝集性軟骨構築物は、自家移植片であることが好ましい。
【0233】
本発明の一実施形態では、凝集性組織構築物は、凝集性軟骨構築物である。
【0234】
本発明の第3の態様及び第3の代替態様による一実施形態では、損傷軟骨は損傷関節軟骨である。
【0235】
凝集性軟骨構築物の移植の成功は、構築物の、修復を必要とする部位に付着する能力に非常に依存する。構築物の、修復を必要とする部位に付着する能力を改善するために、修復を必要とする部位の軟骨下骨(図1参照)を貫通し又は傷つけて、好ましくは傷つけて、軟骨下骨の頂部の血管からの小さな出血を生じさせることができる。骨からの刺激出血は、接着剤として作用し、修復を必要とする部位への凝集性軟骨構築物の付着を強化する。
【0236】
このように、本発明の一実施形態では、損傷軟骨の部位の軟骨下骨(図1)を貫通又は傷つけて、好ましくは傷つけて、軟骨下骨の頂部の血管から、出血、好ましくは小さな出血を生じさせることができ、損傷軟骨が除去された後であって凝集性軟骨構築物を移植する前に、軟骨下骨(図1)を貫通又は傷つける。
【0237】
本発明の第3の態様及び第3の代替態様に係る別の実施形態では、移植された凝集性軟骨構築物は、周囲の軟骨及び/又は骨に縫合される。
【0238】
本発明の第3の態様及び第3の代替態様に係る一実施形態では、損傷軟骨の原因は、変形性関節症などの変性疾患である。
【0239】
本発明の第3の態様及び第3の代替態様に係る一実施形態では、被験体は、ヒト又は非ヒト動物、好ましくはヒトである。
【0240】
本発明の第3の代替態様に係る一実施形態では、損傷組織は、欠損軟骨などの欠損組織である。
【実施例
【0241】
実施例1:ヒト関節軟骨細胞の単離及び増殖(非特許文献8)
自家軟骨細胞移植を受ける患者からの余剰細胞から得られるヒト関節軟骨細胞を使用した。非体重負荷領域から関節鏡を介して初期生検(重量300~500mg)を得、肉眼的に正常な軟骨を得ることができた。軟骨生検を0.9%NaCl中で約2時間維持した後、1~1.5mmの断片に切断した。これらを、コラゲナーゼ(Cat.No.C-9407,Sigma Aldrich,Norway AS,Oslo,Norway)を最終濃度0.8mg/mlで含む、2~5mlのDMEM/Ham’sF-12(Cat.No.T481-50,BioChrom Labs, Terre Haute,IN)中で18時間保持した。200×gでの遠心分離後に、DMEM/Ham’sF-12を用いた連続洗浄工程により、酵素溶液を除去した。その後、ペレットを新鮮な成長培地(10%子ウシ血清を補充したDMEM/Ham’sF-12)に再懸濁した。トリプシン処理(Catl.No.T-3924,Sigma)により培養物をさらに増殖させ、洗浄を繰り返した後、10%子ウシ血清を補充したDMEM/Ham’sF-12に再懸濁した。
【0242】
実施例2:ヒト関節軟骨細胞の懸滴培養(非特許文献8)
実施例1で得られた新たに単離された関節軟骨細胞を、標準成長培地(10%子ウシ血清を補充したDMEM/Ham’sF-12)中で3~5週間増殖させた。関節軟骨細胞の単層をトリプシン処理により解離させ、細胞数を血球計で測定した。非特許文献9によって既に説明されているように、細胞懸濁液を用いて懸滴培養を開始した。48ウェルリッド(Nunc)の各ウェルに約20000個の軟骨細胞を含む40μlの液滴を分注し、リッドを反転させた(0日)。この懸滴を6日間、3%Oに相当する低酸素環境に暴露して、1ウェル当たり1つの軟骨マイクロ構築物の形成を可能にした。
【0243】
実施例3:緩やかな動きと低酸素環境
実施例2で得られた軟骨マイクロ構築物を、別々の非結合の皿に移した。8個の皿に10個の軟骨マイクロ構築物を各々充填し、8個の皿に20個の軟骨マイクロ構築物を各々充填し、4個の皿に47個の軟骨マイクロ構築物を各々充填した。
【0244】
全ての皿を、低酸素(3%酸素)環境のインキュベータ(HERA cell VIOS 160i-C02インキュベータ)内で3日間維持した。皿の半分(10個の軟骨マイクロ構築物を各々充填した4皿、20個の軟骨マイクロ構築物を各々充填した4皿、47個の軟骨マイクロ構築物を充填した2皿)を低酸素環境で動かさないまま維持した。他の半分の皿は、低酸素(3%酸素)環境でミニ揺動撹拌器(PMR-30;Grant-bio、最初は約10度の傾斜、運動開始から完全な一巡が得られるまで60秒)上に置くことにより、毎日3時間緩やかな動きを受けさせた。3時間の緩やかな動きを除いて、その日の残りの時間は皿を動かさないまま維持した。
【0245】
図5Aは、約24時間にわたり低酸素(3%酸素)環境のインキュベータ(HERA cell VIOS 160i-C02インキュベータ)内で20個の軟骨マイクロ構築物をインキュベートすることによって得られた結果を示す。図5Aは、マイクロ構築物が分離されたままであり、1つの融合軟骨マイクロ構築物に自己組織化されなかったことを示す。同様の結果が、10個及び47個の軟骨マイクロ構築物を有する皿についても観察された。
【0246】
図5Bは、約24時間にわたり低酸素(3%酸素)環境のインキュベータ(HERA cell VIOS 160i-C02インキュベータ)内で20個の軟骨マイクロ構築物をインキュベートすることによって得られた結果を示す。この24時間の間、軟骨マイクロ構築物に3時間にわたり緩やかな動きを受けさせた。図5Bから分かるように、マイクロ構築物は、1つの融合マイクロ構築物に自己組織化されていた。同様の結果が、10個及び47個の軟骨マイクロ構築物を有する皿についても観察された。
【0247】
実施例4:流体力学的刺激
実施例3で得られた融合マイクロ構築物(緩やかな動き+低酸素環境にさらされた)を第1の容器(6)に移した。第1の容器(6)は、内側底面積が約1cmであり、高さが2mmである。第1の容器(6)の床と天井は、それぞれ約1cm の表面積を有し、半透膜(Duapore PVDF、Merck Life Science,A/S、Norway、SVLP 04700,細孔径5μm)である。第1の容器(6)には、第1の容器(6)に充填される前に低酸素環境(3%)に2時間暴露された成長培地(10%子ウシ血清を補充したDMEM/Ham’sF-12)が充填されている。
【0248】
次に第1の容器(6)を第2の容器(4)の内部に配置する。第2の容器(4)は、底面積が約30cmであり、高さが10mmである。第2の容器(4)の天井は、表面積が約30cmであり、不透膜(ショアA40のシリコーン膜、厚さ1ミリ、Teknolab A/S,Ski,Norway)である。第2の容器(4)には、第2の容器(4)に充填される前に低酸素環境(3%)に2時間暴露された成長培地(10%子ウシ血清を補充したDMEM/Ham’sF-12)が充填されている。
【0249】
次に、第2の容器(4)は、バイオリアクタチャンバ(9)内に配置される。バイオリアクタチャンバ(9)は、円筒の形状を有している。チャンバ(9)の全ての面は非可撓性材料であり、チャンバ(9)には蒸留水(10)が充填されている。蒸留水(10)は、ピストン(1)と流体連通している。ピストン(1)は空圧駆動モータに接続され、空圧駆動モータは、ピストン(1)を引き押し可能であり、これによりバイオリアクタチャンバ(9)内の圧力変化及び間接的に第2のチャンバ(4)及び第1のチャンバ(6)内の圧力変化を生じさせる。
【0250】
1.4MPaの力を1秒間ピストン(1)に印加し、続いて1秒間の圧力解放を行う。この流体力学的刺激は、変動圧力の形で、毎日1時間、2日間にわたって継続した。
【0251】
ピストン(1)に加えられる力は、バイオリアクタチャンバ(9)内の圧力上昇をもたらし、これは間接的に第2の容器(4)及び第1の容器(6)内の圧力をも変化させる。流体力学的刺激がない場合には、第1の容器(6)を低酸素環境(3%)でインキュベートする。
【0252】
図7は、流体力学的刺激によって得られた結果を示す。融合マイクロ構築物は、長さ約6mmで幅2mmの小型凝集性組織構築物(黒矢印で示す)に自己組織化されていた。
【0253】
小型凝集性組織構築物を第1の容器(6)の外に移動させてホルマリンに入れた。組織の組織構造は図8に示されており、これは、軟骨細胞が、細胞培養から本物の組織への移行を示す小型凝集性組織構築物を作り出したことを明らかに示している。さらに、軟骨細胞のいくつかは、既に裂孔様空間(細矢印)に存在しており、未成熟軟骨に、新たに形成された組織との類似性を付与する好塩基性酸グリコサミノグリカンに富んだ細胞外マトリックス(太矢印)の形成が局所的に観察される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5A)】
図5B)】
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集性軟骨構築物のインビトロ産生のための方法であって、
a)被験体に由来する軟骨形成細胞を増殖させて、1つ以上の軟骨スフェロイドを形成するステップと、
b)複数の前記軟骨スフェロイドを運動させて、各スフェロイドが他のスフェロイドと接触する回数を増加させ、これにより前記軟骨スフェロイドの間の接触を促進し、1つ以上の融合軟骨スフェロイドを形成するステップと、
c)1つ以上の前記融合軟骨スフェロイドを低酸素環境で流体力学的刺激にさらし、凝集性軟骨構築物を形成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
記ステップb)における前記複数の軟骨スフェロイドを低酸素環境で運動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が20%未満の環境であり、例えば18%未満、16%未満、14%未満、12%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2.5%未満の環境である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造を形成するのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップb)における前記複数の軟骨スフェロイドに、等速円運動又は滑らかな等速円運動などの円運動を行なわせ、前記軟骨スフェロイド間の接触を促進する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップb)における前記複数の軟骨スフェロイドを一軸の周りに傾斜させることにより、前記ステップb)における前記軟骨スフェロイドを運動させて、前記軟骨スフェロイド間の接触を促進する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記一軸の周りの傾斜は、揺動撹拌器又はミニ揺動撹拌器などの撹拌器を用いて達成される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップb)における前記複数の軟骨スフェロイドを、2つよりも多い独立した水平軸などの、2つ以上の軸の周りに傾斜させることにより、前記ステップb)における前記複数の軟骨スフェロイドを運動させて、前記軟骨スフェロイド間の接触を促進する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記軟骨形成細胞が軟骨細胞である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体がヒト又は非ヒトであり、好ましくはヒトである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞及び/又は前記ステップb)における前記複数の軟骨スフェロイド及び/又は前記ステップc)における前記1つ以上の融合軟骨スフェロイドが細胞培地中に浸漬され、
前記細胞培地中の溶存分子状酸素の量は、空気飽和度100%未満、より好ましくは空気飽和度80%未満、さらに好ましくは空気飽和度60%未満、最も好ましくは空気飽和度40%未満、例えば、空気飽和度40%未満、空気飽和度30%未満、空気飽和度20%未満又は空気飽和度10%未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップc)における前記1つ以上の融合軟骨スフェロイドが細胞培地中に浸漬される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記流体力学的刺激が、前記融合軟骨スフェロイド及び/又は前記凝集性軟骨構築物を12MPa以上の圧力に曝露することを含まない、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記流体力学的刺激が、前記融合軟骨スフェロイド及び/又は前記凝集性軟骨構築物を10MPaより大きい圧力に曝露することを含まない、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記流体力学的刺激が、前記融合軟骨スフェロイド及び/又は前記凝集性軟骨構築物を8MPa以上の圧力に曝露することを含まない、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記流体力学的刺激が、前記融合軟骨スフェロイド及び/又は前記凝集性軟骨構築物を7MPa以上の圧力に曝露することを含まない、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記流体力学的刺激が、前記融合軟骨スフェロイド及び/又は前記凝集性軟骨構築物を5MPa以上の圧力に曝露することを含まない、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造を形成するのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造を形成するのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖され、
前記ステップa)で述べた1つ以上の前記軟骨スフェロイドは、スフェロイドなどの三次元細胞構造である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップa)における前記細胞を低酸素環境で増殖させ、
前記ステップb)における前記複数の軟骨スフェロイドを運動させて、各スフェロイドが他のスフェロイドと接触する回数を増加させ、これにより、低酸素環境における前記軟骨スフェロイド間の接触を促進し、
前記低酸素環境は、分子状酸素(O)の分圧が10%未満の環境であり、
前記ステップa)における前記軟骨形成細胞は、1つ以上の三次元細胞構造を形成するのに適した、懸滴培養などの技術によって増殖される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップb)及び前記ステップc)は、組み合わされて一段階プロセスとなる、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップa)で得られた前記複数の軟骨スフェロイドを運動させて各スフェロイドが他のスフェロイドと接触する回数を増加させ、これにより、前記軟骨スフェロイド間の接触を促進し、且つ、低酸素環境で流体力学的刺激を受けさせ、これにより凝集性軟骨構築物を形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項に記載の方法により製造された凝集性軟骨構築物。
【請求項25】
前記凝集性軟骨構築物は、少なくとも40体積%の細胞外マトリックス、例えば、少なくとも60体積%の細胞外マトリックス、少なくとも80体積%の細胞外マトリックス、少なくとも90体積%の細胞外マトリックス、例えば、約95体積%の細胞外マトリックスを含む、請求項24に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項26】
前記凝集性軟骨構築物は、少なくとも5mmの底面積と、少なくとも2mmの高さを有する、請求項24に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項27】
被験体における損傷軟骨を修復するための外科的方法において使用するための凝集性軟骨構築物であって、前記外科的方法は、損傷軟骨を除去し、前記凝集性軟骨構築物を移植することにより、前記損傷軟骨を置換することを含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項28】
前記凝集性軟骨構築物の細胞が由来する前記被験体は、前記凝集性軟骨構築物が移植される前記被験体である、請求項27に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項29】
前記損傷軟骨の部位の軟骨下骨は、
前記損傷軟骨が除去された後であって、前記凝集性軟骨構築物を移植する前に、
貫通されて、前記軟骨下骨の頂部の血管から出血を生じさせ、及び/又は、
傷つけられて、前記軟骨下骨の頂部の血管から小さな出血を生じさせる、
請求項27又は28に記載の凝集性軟骨構築物。
【請求項30】
前記損傷軟骨の原因は、変形性関節症などの変性疾患である、請求項27~29のいずれか1項に記載の凝集性軟骨構築物。
【国際調査報告】