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特表2023-500799CAL-Tコンストラクトおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】CAL-Tコンストラクトおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20221228BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20221228BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221228BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20221228BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221228BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221228BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221228BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221228BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20221228BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20221228BHJP
【FI】
C07K19/00
A61P37/06
A61K35/12
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K38/16
A61P17/00
A61P17/14
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P3/10
C07K14/725 ZNA
C12N5/10
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522834
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 US2020055980
(87)【国際公開番号】W WO2021076887
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/916,924
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301069856
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】パキャリ モハマドレザ
(72)【発明者】
【氏名】セトルロ カーチス
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】大熊 敦史
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA22
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA921
4C084ZA922
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC351
4C084ZC352
4C085AA16
4C085BB11
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA89
4C087ZA92
4C087ZA96
4C087ZB27
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書に記載されている技術は、多成分CALまたは多成分CARの成分、例えばTCR認識ドメインと、(a)細胞内シグナル伝達ドメインおよび(b)第1タイプのタンパク質相互作用ドメインのうちの一方または両方とを含む、組成物を対象とする。本明細書では、自己免疫疾患、移植片拒絶、または移植片対宿主病を治療または予防するための方法が、さらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. TCR認識ドメインと、
b. 細胞内シグナル伝達ドメイン、および
c. 第1タイプの生体分子相互作用ドメイン
のうちの一方または両方と
を含む、組成物。
【請求項2】
a. TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプおよび該第2タイプの生体分子相互作用ドメインが互いに特異的に結合する、
組成物。
【請求項3】
a. TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2認識ドメインおよび第3タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプおよび該第3タイプの生体分子相互作用ドメインが互いに特異的に結合する、
組成物。
【請求項4】
a. TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、
c. 第2認識ドメインおよび第3タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第2タイプおよび該第3タイプの生体分子相互作用ドメインが、該第1タイプの生体分子相互作用ドメインへの結合に関して競合する、
組成物。
【請求項5】
前記第3タイプの生体分子相互作用ドメインおよび前記第1タイプの生体分子相互作用ドメインが、互いに、前記第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび前記第1タイプの生体分子相互作用ドメインよりも高いアフィニティを有する、請求項3~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
a. TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプの生体分子相互作用ドメイン、第4タイプの生体分子相互作用ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、
c. 第2認識ドメインおよび第5タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプの生体分子相互作用ドメインと該第2タイプの生体分子相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、
該第4タイプの生体分子相互作用ドメインと該第5タイプの生体分子相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
【請求項7】
前記第4タイプの生体分子相互作用ドメインおよび前記第5タイプの生体分子相互作用ドメインが、前記第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび前記第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも弱いアフィニティを有する、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記第1ポリペプチドが第6タイプの生体分子相互作用ドメインをさらに含み、前記認識ポリペプチドが第7タイプの生体分子相互作用ドメインをさらに含み、それらが互いに特異的に結合する、請求項6~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記第1ポリペプチドがTCR認識ドメイン全体を含む、請求項2~8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記TCR認識ドメインが、少なくとも2つの別個のポリペプチド配列を含み、前記第1ポリペプチドが、該TCR認識ドメインの該別個のポリペプチド配列のうちの少なくとも1つを含み、該第1ポリペプチドが、該TCR認識ドメインの第2のまたはさらなるポリペプチド配列に結合するかまたはそれらと複合体化して該TCR認識ドメインを形成する、請求項2~8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記TCR認識ドメインが非ポリペプチド成分を含む、請求項1~10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
前記第2認識ドメインが、前記TCR認識ドメインによって認識されない標的に特異的である、請求項3~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記第2認識ドメインが、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出されかつ疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されない標的に特異的である、請求項3~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記TCR認識ドメインが、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)、MHC-ペプチド複合体、無特徴ペプチド(featureless peptide)MHC、またはMHC-ペプチド融合体を含む、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
前記ペプチドが、ヒトペプチドまたは非ヒトペプチドである、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記ペプチドが、マイナー組織適合性抗原(MiHA)である、請求項14~15のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
前記MHCが、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、請求項14~16のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
前記MHC-ペプチド複合体が、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、請求項14~17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
前記MHC-ペプチド融合体が、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、請求項14~17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
前記MHCが、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、請求項14~17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
前記MHC-ペプチド複合体が、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、請求項14~17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
前記MHC-ペプチド融合体が、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、請求項14~17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項23】
前記MHCが、MHCクラスIまたはMHCクラスIIである、請求項14~22のいずれか一項記載の組成物。
【請求項24】
前記TCR認識ドメインが、CD1ドメインまたはCD1ドメイン-リガンド複合体もしくは融合体を含む、請求項1~13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項25】
前記CD1がCD1dである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
前記生体分子相互作用ドメインが、それぞれのポリペプチドの細胞外部分に見出される、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
a. 前記生体分子相互作用ドメインがロイシンジッパーであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてロイシンジッパーのペアであり、
b. 前記生体分子相互作用ドメインがBZip(RR)および/もしくはAZip(EE)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてBZip(RR)およびAZip(EE)であり、
c. 前記生体分子相互作用ドメインがPSD95-Dlg1-zo-1(PDZ)ドメインであり、
d. 前記生体分子相互作用ドメインがストレプトアビジンおよび/もしくはストレプトアビジン結合生体分子(SBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてストレプトアビジンおよびストレプトアビジン結合生体分子(SBP)であり、
e. 前記生体分子相互作用ドメインがmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
f. 前記生体分子相互作用ドメインがシクロフィリン-Fas融合生体分子(CyP-Fas)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてシクロフィリン-Fas融合生体分子(CyP-Fas)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
g. 前記生体分子相互作用ドメインがカルシニューリンA(CNA)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてカルシニューリンA(CNA)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
h. 前記生体分子相互作用ドメインがジベレリン非感受性(GIA)および/もしくはジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてジベレリン非感受性(GIA)およびジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であり、
i. 前記生体分子相互作用ドメインがSnapタグおよび/もしくはHaloタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてSnapタグおよびHaloタグであり、
j. 前記生体分子相互作用ドメインがT14-3-3-cΔCおよび/もしくはPMA2のC末端ペプチド(CT52)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてT14-3-3-cΔCおよびPMA2のC末端ペプチド(CT52)であり、
k. 前記生体分子相互作用ドメインがPYLおよび/もしくはABIであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてPYLおよびABIであり、
l. 前記生体分子相互作用ドメインがヌクレオチドタグおよび/もしくはジンクフィンガードメインであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてヌクレオチドタグおよびジンクフィンガードメインであり、
m. 前記生体分子相互作用ドメインがヌクレオチドタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてヌクレオチドタグのペアであり、
n. 前記生体分子相互作用ドメインがフルオレセインイソチオシアネート(FITC)および/もしくはFITC結合生体分子であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてFITCおよびFITC結合タンパク質であり、かつ/あるいは
o. 前記タンパク質相互作用ドメインが(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)および/もしくはR-PE/PE結合タンパク質であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体として(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)およびR-PE/PE結合タンパク質である、
前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
前記ヌクレオチドタグが、DNAタグまたはdsDNAタグである、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、
TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ;CD35;CD3ζ;CD3C;CD22;CD79a;CD79b;CD66d;CARD11;CD2;CD7;CD27;CD28;CD30;CD40;CD54(ICAM);CD83;CD134(OX40);CD137(4-1BB);CD150(SLAMF1);CD152(CTLA4);CD223(LAG3);CD270(HVEM);CD273(PD-L2);CD274(PD-L1);CD278(ICOS);DAP10;LAT;KD2C SLP76;TRIM;およびZAP70
からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質からのシグナル伝達ドメインを含むか、または該シグナル伝達ドメインである、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
前記請求項のいずれか一項記載の組成物を含みかつ/または発現する、細胞。
【請求項31】
前記請求項のいずれか一項記載の第1ポリペプチドと、前記請求項のいずれか一項記載のシグナル伝達ポリペプチドを発現するかまたは含む細胞とを含む、組成物。
【請求項32】
前記TCR認識ドメインが、前記細胞にとって同種異系、自家、または異種であるMHCを含む、請求項30~31のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項33】
前記TCR認識ドメインが合成MHCを含む、請求項30~32のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項34】
前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが前記細胞にとって同種異系、自家、または異種である、請求項30~33のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項35】
前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが合成ペプチドである、請求項30~34のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項36】
前記細胞が、NK細胞、樹状細胞、制御性T細胞またはエフェクターT細胞である、請求項30~35のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項37】
前記細胞が、前記組成物のポリペプチドのうちの1つまたは複数を発現するように改変されている、請求項30~36のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項38】
前記細胞が、前記組成物のシグナル伝達ポリペプチドを発現するように改変されている、請求項30~37のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項39】
前記細胞が、ネイティブMHC I/IIがノックアウトまたはノックダウンされるように、さらに改変されている、請求項30~38のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項40】
前記細胞が、細胞表面上に発現するネイティブMHC I/IIがノックダウンされるように、さらに改変されている、請求項30~39のいずれか一項記載の細胞または組成物。
【請求項41】
a. 抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメイン、
b. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項42】
a. 抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメイン、ならびに
b. 第1タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第1ポリペプチドと、
c. 第2タイプのタンパク質相互作用ドメイン、および
d. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む第2ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
【請求項43】
a. 抗CD127認識ドメイン、および
b. 第1タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第1ポリペプチドと、
c. 抗CD45RO認識ドメイン、および
d. 第5タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第2ポリペプチドと、
e. 第2タイプおよび第4タイプのタンパク質相互作用ドメイン、ならびに
f. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む第3ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、
該第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
【請求項44】
請求項41~43のいずれか一項記載のCARまたは組成物を含む、細胞。
【請求項45】
それを必要とする対象における、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、またはGvHDを治療または予防する方法であって、前記請求項のいずれか一項記載の組成物および/または細胞を該対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項46】
前記TCR認識ドメインが、前記対象にとって同種異系のMHCを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記TCR認識ドメインが、移植細胞にとって自家のMHCを含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記TCR認識ドメインが、移植細胞にとって異種であるMHCを含む、請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが前記対象にとって同種異系である、請求項45記載の方法。
【請求項50】
前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが移植細胞にとって自家である、請求項45記載の方法。
【請求項51】
前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが移植細胞にとって自家である、請求項45記載の方法。
【請求項52】
前記MHCおよび/または前記ペプチドが合成である、請求項45~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
前記移植片が、任意のヒトまたは非ヒトの細胞、組織、または臓器である、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
前記移植が、同種異系の造血幹細胞または固形臓器の移植である、請求項45~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
前記悪性T細胞状態が、T細胞性急性リンパ芽球性白血病またはT細胞性リンパ芽球性リンパ腫である、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、白斑、多発性硬化症、脱毛症、セリアック病、天疱瘡、関節リウマチ、または強皮症である、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記自己免疫疾患が、甲状腺炎、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、アジソン病、およびレイノー現象、グッドパスチャー病、関節炎(関節リウマチ、例えば急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風または痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、急性免疫性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、II型コラーゲン誘導関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎(例えば治療後ライム病症候群)、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、および若年発症型関節リウマチ、慢性進行性関節炎、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、反応性関節炎、および強直性脊椎炎)、回帰性関節炎、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪乾癬、アトピー性疾患を含むアトピー、例えば枯草熱およびヨブ症候群、皮膚炎、例えば接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異性皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎、x連鎖性高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、じんま疹、例えば慢性アレルギー性じんま疹および慢性特発性じんま疹、例えば慢性自己免疫性じんま疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば視神経脊髄型MS、一次性進行型MS(PPMS)、および再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、散在性硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、潰瘍大腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、ポリープ性大腸炎、壊死性腸炎、および全層性大腸炎、および自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例えば成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、ぶどう膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、リウマチ性脊椎炎、リウマチ性滑膜炎、遺伝性血管浮腫、髄膜炎に見られるような脳神経損傷、妊娠性疱疹、妊娠性類天疱瘡、陰嚢そう痒症、自己免疫性早発卵巣不全、自己免疫状態による突発性難聴、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスムッセン脳炎ならびに辺縁系および/または脳幹脳炎、ぶどう膜炎、例えば前部ぶどう膜炎、急性前部ぶどう膜炎、肉芽腫性ぶどう膜炎、非肉芽腫性ぶどう膜炎、水晶体抗原性ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、または自己免疫性ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群を伴うおよびネフローゼ症候群を伴わない糸球体腎炎(GN)、例えば慢性または急性糸球体腎炎、例えば一次性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、I型およびII型を含む膜増殖性または膜性増殖性GN(MPGN)、および急速進行性GN、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌不全、亀頭炎、例えば形質細胞限局性亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、葉状魚鱗癬、表皮剥離性角化症、前悪性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー状態およびアレルギー応答、アレルギー反応、湿疹、例えばアレルギー性湿疹またはアトピー性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、および水疱性掌蹠湿疹、喘息、例えば気管支ぜんそく、気管支喘息、および自己免疫性喘息、T細胞浸潤および慢性炎症性応答を伴う病態、妊娠中の胎児A-B-O血液型などといった外来抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、ループス、例えばループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループスおよび円板状エリテマトーデス、ループス脱毛症、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えば皮膚SLEまたは亜急性皮膚SLE、新生児ループス症候群(NLE)、および播種状エリテマトーデス、若年発症型(I型)糖尿病、例えば小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性大動脈障害、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばリンパ腫様肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例えば血管炎、大型血管炎(リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中型血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、免疫性血管炎、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎などの壊死性血管炎、およびANCA関連血管炎、例えばチャーグ・ストラウス血管炎またはチャーグ・ストラウス症候群(CSS)およびANCA関連小型血管炎、側頭動脈炎、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、溶血性貧血または免疫性溶血性貧血、例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(悪性の貧血)、アジソン病、真性赤血球性貧血または赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、外傷または出血に続発するもの、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜天疱瘡-粘膜類天疱瘡、および紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病またはライター症候群、免疫複合体腎炎などの免疫複合体疾患、抗体関連腎炎、ポリニューロパチー、IgMポリニューロパチーまたはIgM関連ニューロパチーなどの慢性ニューロパチー、および自己免疫性または免疫介在性血小板減少症、例えば慢性ITPまたは急性ITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、強膜炎、例えば特発性角膜強膜炎、上強膜炎、精巣および卵巣の自己免疫疾患、例えば自己免疫性の精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)または亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、神経学的腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、例えばランバート・イートン筋無力症候群またはイートン・ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎またはアレルギー脳脊髄炎および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、胸腺腫関連重症筋無力症などの重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、オプソクローヌスまたはオプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ球様間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)vs NSIP、ギラン・バレー症候群、ベルジェ病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、急性熱性好中球性皮膚症、角層下膿疱性皮膚症、一過性棘融解性皮膚症、硬変、例えば原発性胆汁性肝硬変および肺硬変、自己免疫性腸疾患症候群、セリアック病または小児脂肪便症、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性難聴、多発性軟骨炎、例えば難治性または再燃性または再発性多発軟骨炎、肺胞タンパク症、コーガン症候群/非梅毒性角膜実質炎、ベル麻痺、スイート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状疱疹関連痛、アミロイドーシス、非がん性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば良性単クローン性ガンマグロブリン血症および意義不明の単クローン性γグロブリン血症、MGUS)を含む原発性リンパ球増加症、末梢性ニューロパチー、腫瘍随伴症候群、CNSのチャネロパチーを含むチャネロパチー、自閉症、炎症性ミオパチー、巣状糸球体硬化症または分節性糸球体硬化症または巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、網膜ぶどう膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛症、多内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、自己免疫性脱髄疾患および慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーなどの脱髄疾患、ドレスラー症候群、円形脱毛症、全頭脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、男性および女性自己免疫性不妊、例えば抗精子抗体によるもの、混合結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形紅斑、心臓切開後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎および線維化性肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、サムター症候群、カプラン症候群、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティ症候群、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、虹彩異色性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性または慢性)、またはフックス毛様体炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、SCID、敗血症、エンドトキシン血症、ワクチン接種後症候群、エバンス症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、溶連菌感染後腎炎、閉塞性血栓血管炎、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再灌流傷害、移植臓器再灌流、自己免疫網膜症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、無精子形成、自己免疫性溶血、ベック病、アレルギー性腸炎、癩性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、ハンマン・リッチ病、感音難聴、限局性回腸炎、白血球減少症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、交感性眼炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、後天性脾臓萎縮、白斑、毒素性ショック症候群、T細胞浸潤を伴う病態、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、白血球漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、アレルギー性神経炎、自己免疫性多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、リウマチ性疾患、混合結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌不全、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎、好酸球関連障害、例えば好酸球増加症、好酸球増多性肺浸潤、好酸球増多筋痛症候群、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、好酸球含有肉芽腫、血清陰性脊椎関節炎、多腺性自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、ブルートン症候群、乳児一過性低γグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病に関連する自己免疫性障害、リウマチ、アレルギー性過敏性障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、虚血再灌流障害、リンパ腫性気管気管支炎、炎症性皮膚疾患、急性炎症性要素を伴う皮膚疾患、および自己免疫性網膜ぶどう膜炎(AUR)である、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
前記T細胞媒介性免疫応答が、生物製剤、細胞治療、および/または遺伝子治療に対する抗薬物特異的応答である、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
前記生物製剤、細胞治療、または遺伝子治療が、アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療、ゲノム編集剤、または酵素補充治療である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記疾患が1型糖尿病であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:8~17のうちの1つまたは複数;HLA-A*0201ならびにSEQ ID NO:2013~2016および2031~2033のうちの少なくとも1つ;またはHLA-A*02:01およびSEQ ID NO:20128~2129のうちの少なくとも1つに対して少なくとも80%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
前記疾患が白斑であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとに対して少なくとも80%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むか、またはHLA-A*0201およびSEQ ID NO:2018、もしくはHLA-A*0301およびSEQ ID NO:2019を含むか、またはHLA-A*2402およびSEQ ID NO:2020、もしくはHLA-A*0101およびSEQ ID NO:2021を含む、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
前記方法が、GvHDを治療および/または予防する方法であり、前記TCR認識ドメインが、HLA-A*0101およびSEQ ID NO:2034~2037のうちの少なくとも1つ;またはHLA-B*0702およびSEQ ID NO:2038;またはHLA-B*0801およびSEQ ID NO:2039に対して少なくとも80%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
前記疾患が1型糖尿病であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:8~17のうちの1つまたは複数を含むか、HLA-A*0201ならびにSEQ ID NO:2013~2016および2031~2033のうちの少なくとも1つを含むか、またはHLA-A*02:01およびSEQ ID NO:20128~2129のうちの少なくとも1つを含む、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
前記疾患が白斑であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとを含むか、またはHLA-A*0201およびSEQ ID NO:2018を含むか、またはHLA-A*0301およびSEQ ID NO:2019を含むか、またはHLA-A*2402およびSEQ ID NO:2020を含むか、またはHLA-A*0101およびSEQ ID NO:2021を含む、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
前記方法が、GvHDを治療および/または予防する方法であり、前記TCR認識ドメインが、HLA-A*0101およびSEQ ID NO:2034~2037のうちの少なくとも1つを含むか、またはHLA-B*0702およびSEQ ID NO:2038を含むか、またはHLA-B*0801およびSEQ ID NO:2039を含む、請求項45~52のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2019年10月18日に出願された米国仮出願第62/916,924号の恩典を主張し、この米国仮特許出願の内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本願はASCIIフォーマットで電子提出された配列表を含み、この配列表は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。2020年10月16日に作成されたこのASCIIコピーの名称は701586-096030WOPT_SL.txtであり、サイズは540,018バイトである。
【0003】
技術分野
本明細書に記載の技術は、例えば自己免疫状態および/またはT細胞媒介状態を治療するための、キメラ抗原リガンド(CAL)技術に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
自己免疫および移植片拒絶(例えば、臓器移植後に起こるもの)の主原因は、患者またはドナーの臓器、組織、および/または細胞を攻撃する自己反応性および同種異系反応性T細胞である。自己免疫および移植片拒絶を予防するための現在の治療は、厳しい免疫抑制を必要とし、それは、極めて高い易感染性、悪性新生物および良性新生物、多臓器および多臓器系の不全などといった、不要な副作用につながる場合がある。不要な副作用を誘導することなく自己免疫および移植片拒絶を予防するには、免疫抑制薬を追加投与することも、同時に送達される免疫抑制レジメンの用量を低減することも必要とせずに、臓器移植を受けている患者において自己反応性および同種異系反応性T細胞を欠失させることが有益であるだろう。しかし、このタイプの治療の実証はまだ成功していない。
【0005】
T細胞は、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるその細胞表面上の受容体を使って、それぞれの標的細胞を認識する。TCRは、認識部分とシグナル伝達部分とを有する。疾患細胞の存在下で体内で形成される天然複合体に前記認識部分が結合すると、シグナル伝達部分が活性化して、T細胞は、その疾患細胞を破壊するための死滅活性または他の免疫細胞の動員に関与することになる。この天然複合体は、ペプチド-主要組織適合遺伝子複合体(pMHC複合体)としても公知である。CAR-T細胞治療は公知であり、T細胞が自己反応性および同種異系反応性T細胞を認識するのを助けようとするものである。これは、T細胞を、それがキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変することによって達成される。CARは、天然の認識部分が除去され、自己反応性および同種異系反応性T細胞にユニークな分子の存在を極めて特異的に検出することによって自己反応性および同種異系反応性T細胞をより効果的に認識するようにデザインされた合成認識部分で置き換えられている、改変されたTCRである。次にこれらのCAR-T細胞は患者に与えられる。患者の体内では、合成CAR分子が自己反応性および同種異系反応性T細胞に結合し、その結合中にT細胞を活性化させることで、結果として、患者自身の免疫系が病的T細胞を攻撃することになる。
【発明の概要】
【0006】
概要
本明細書には、キメラ抗原リガンド(CAL)に関連する方法および組成物が記載されている。本明細書に記載のCALは、TCR認識ドメインと生体分子相互作用ドメインとを含む。TCR認識は、CALが自己反応性および/または同種異系反応性T細胞に抗原特異的に結合することを可能にする。生体分子相互作用ドメインは、免疫キラー細胞(例えば、NK細胞、T細胞、または樹状細胞)がCALに結合し、それによって当該免疫キラー細胞による自己反応性および/または同種異系反応性T細胞の死滅を促進することを可能にする。
【0007】
CALのTCR認識ドメインは、TCR(例えば、自己反応性および/または同種異系反応性T細胞の表面上に発現しているTCR)に特異的に結合する。例示的であるが非限定的なTCR認識ドメインとして、例えばモノマー型、オリゴマー型、およびマルチマー型のペプチド-MHC複合体が挙げられる。TCR認識ドメインは、天然配列または合成配列を含むことができる。自己反応性または同種異系反応性抗原を含むペプチド-MHC複合体の具体例は、本明細書の別の箇所で挙げる。
【0008】
CALの生体分子相互作用ドメインは、CALと第2の生体分子(例えば、免疫キラー細胞上の受容体)との特異的結合を可能にする。いくつかの態様において、CALの生体分子相互作用ドメインは、免疫キラー細胞上の内在性受容体によって認識される。いくつかの態様において、CALの生体分子相互作用ドメインは、免疫キラー細胞上の改変受容体によって認識される。例示的であるが非限定的な生体分子相互作用ドメインとして、FITC(これはFITC CAR-T細胞系によって認識されうる)、ロイシンジッパードメイン、ジンクフィンガードメイン、PSD95-Dlg1-zo-1(PDZ)ドメイン、ストレプトアビジンドメインおよびストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)ドメイン、ジベレリン非感受性(gibberellin insensitive:GIA)および/またはジベレリン非感受性dwarf1(gibberellin insensitive dwarf1:GID1)、PYLドメインとABIドメイン、本明細書の別の箇所に記載されている化学的に誘導される相互作用ドメインのペア、Snapタグ、Haloタグ、T14-3-3-cΔCおよび/もしくはPMA2のC末端ペプチド(CT52)、(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)および/もしくはR-PE/PE結合タンパク質、Fabドメイン、ならびに/または抗CD3ドメインが挙げられる。
【0009】
上述のように、本明細書に記載のCALは、CAR-T系と併用することができる。本明細書に記載の方法および組成物との使用に適した、例示的であるが非限定的なCAR-T系として、SUPRA CARおよびSPLIT CARが挙げられる。CAR-T系は、本明細書の別の箇所でさらに詳しく議論するが、当技術分野では公知である。
【0010】
任意の態様の一局面において、本明細書には、a)TCR認識ドメインと、b)細胞内シグナル伝達ドメインおよびc)生体分子相互作用ドメイン(例えば第1タイプの生体分子相互作用ドメイン)のうちの一方または両方とを含む、組成物が記載される。
【0011】
任意の態様の一局面において、本明細書には、TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む第1ポリペプチドと、第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含むシグナル伝達ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプおよび第2タイプの生体分子相互作用ドメインが互いに特異的に結合する組成物が記載される。任意の態様の一局面において、本明細書には、TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む第1ポリペプチドと、第2認識ドメインおよび第3タイプの生体分子相互作用ドメインを含む認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプおよび第3タイプの生体分子相互作用ドメインが互いに特異的に結合する組成物が記載される。任意の態様の一局面において、本明細書には、TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む第1ポリペプチドと、第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含むシグナル伝達ポリペプチドと、第2認識ドメインおよび第3タイプの生体分子相互作用ドメインを含む認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第2タイプおよび第3タイプの生体分子相互作用ドメインが第1タイプの生体分子相互作用ドメインへの結合に関して競合する組成物が記載される。任意の局面のいくつかの態様において、第3タイプの生体分子相互作用ドメインと第1タイプの生体分子相互作用ドメインは、互いに、第2タイプの生体分子相互作用ドメインと第1タイプの生体分子相互作用ドメインよりも高いアフィニティを有する。
【0012】
任意の態様の一局面において、本明細書には、TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む第1ポリペプチドと、第2タイプの生体分子相互作用ドメイン、第4タイプの生体分子相互作用ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むシグナル伝達ポリペプチドと、第2認識ドメインおよび第5タイプの生体分子相互作用ドメインを含む認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプの生体分子相互作用ドメインと第2タイプの生体分子相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、第4タイプの生体分子相互作用ドメインと第5タイプの生体分子相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する組成物が記載される。任意の局面のいくつかの態様において、第4タイプの生体分子相互作用ドメインと第5タイプの生体分子相互作用ドメインは、第2タイプの生体分子相互作用ドメインと第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも弱いアフィニティを有する。任意の局面のいくつかの態様において、第1ポリペプチドは第6タイプの生体分子相互作用ドメインをさらに含み、認識ポリペプチドは第7タイプの生体分子相互作用ドメインをさらに含み、それらは互いに特異的に結合する。
【0013】
任意の局面のいくつかの態様において、第1ポリペプチドはTCR認識ドメイン全体を含む。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは少なくとも2つの別個のポリペプチド配列を含み、第1ポリペプチドは、TCR認識ドメインの前記別個のポリペプチド配列のうちの少なくとも1つを含み、第1ポリペプチドは、TCR認識ドメインの第2のまたはさらなるポリペプチド配列に結合するかまたはそれらと複合体化してTCR認識ドメインを形成する。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは非ポリペプチド成分を含む。
【0014】
任意の局面のいくつかの態様において、第2認識ドメインは、TCR認識ドメインによって認識されない標的に特異的である。任意の局面のいくつかの態様において、第2認識ドメインは、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出されかつ疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されない標的に特異的である。
【0015】
任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)、MHC-ペプチド複合体、無特徴ペプチド(featureless peptide)MHC、またはMHC-ペプチド融合体を含む。任意の局面のいくつかの態様において、ペプチドはヒトペプチドまたは非ヒトペプチドである。任意の局面のいくつかの態様において、ペプチドはマイナー組織適合性抗原(MiHA)である。任意の局面のいくつかの態様において、MHCは、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である。任意の局面のいくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体は、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である。任意の局面のいくつかの態様において、MHC-ペプチド融合体は、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である。任意の局面のいくつかの態様において、MHCは、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である。任意の局面のいくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体は、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である。任意の局面のいくつかの態様において、MHC-ペプチド融合体は、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である。任意の局面のいくつかの態様において、MHCはMHCクラスIまたはMHCクラスIIである。
【0016】
任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは、CD1ドメインまたはCD1ドメイン-リガンド複合体もしくは融合体を含む。任意の局面のいくつかの態様において、CD1はCD1dである。
【0017】
任意の局面のいくつかの態様において、生体分子相互作用ドメインは、それぞれのポリペプチドの細胞外部分に見出される。任意の局面のいくつかの態様において、
a. 生体分子相互作用ドメインはロイシンジッパーであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてロイシンジッパーのペアであり、
b. 生体分子相互作用ドメインはBZip(RR)および/もしくはAZip(EE)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてBZip(RR)およびAZip(EE)であり、
c. 生体分子相互作用ドメインはPSD95-Dlg1-zo-1(PDZ)ドメインであり、
d. 生体分子相互作用ドメインはストレプトアビジンおよび/もしくはストレプトアビジン結合生体分子(SBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてストレプトアビジンおよびストレプトアビジン結合生体分子(SBP)であり、
e. 生体分子相互作用ドメインはmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
f. 生体分子相互作用ドメインはシクロフィリン-Fas融合生体分子(CyP-Fas)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてシクロフィリン-Fas融合生体分子(CyP-Fas)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
g. 生体分子相互作用ドメインはカルシニューリンA(CNA)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてカルシニューリンA(CNA)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
h. 生体分子相互作用ドメインはジベレリン非感受性(GIA)および/もしくはジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてジベレリン非感受性(GIA)およびジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であり、
i. 生体分子相互作用ドメインはSnapタグおよび/もしくはHaloタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてSnapタグおよびHaloタグであり、
j. 生体分子相互作用ドメインはT14-3-3-cΔCおよび/もしくはPMA2のC末端ペプチド(CT52)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてT14-3-3-cΔCおよびPMA2のC末端ペプチド(CT52)であり、
k. 生体分子相互作用ドメインはPYLおよび/もしくはABIであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてPYLおよびABIであり、
l. 生体分子相互作用ドメインはヌクレオチドタグおよび/もしくはジンクフィンガードメインであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてヌクレオチドタグおよびジンクフィンガードメインであり、
m. 生体分子相互作用ドメインはヌクレオチドタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてヌクレオチドタグのペアであり、
n. 生体分子相互作用ドメインはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)および/もしくはFITC結合生体分子であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてFITCおよびFITC結合タンパク質であり、かつ/あるいは
o. タンパク質相互作用ドメインは(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)および/もしくはR-PE/PE結合タンパク質であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体として(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)およびR-PE/PE結合タンパク質である。
任意の局面のいくつかの態様において、ヌクレオチドタグはDNAタグまたはdsDNAタグである。
【0018】
任意の局面のいくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ;CD35;CD3ζ;CD3C;CD22;CD79a;CD79b;CD66d;CARD11;CD2;CD7;CD27;CD28;CD30;CD40;CD54(ICAM);CD83;CD134(OX40);CD137(4-1BB);CD150(SLAMF1);CD152(CTLA4);CD223(LAG3);CD270(HVEM);CD273(PD-L2);CD274(PD-L1);CD278(ICOS);DAP10;LAT;KD2C SLP76;TRIM;およびZAP70からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質からのシグナル伝達ドメインを含むか、または当該シグナル伝達ドメインである。
【0019】
任意の態様の一局面において、本明細書には、本明細書に記載の組成物を含みかつ/または発現する細胞が記載される。任意の態様の一局面において、本明細書には、前記請求項のいずれか一項記載の第1ポリペプチドと、前記請求項のいずれか一項記載のシグナル伝達ポリペプチドを発現するかまたは含む細胞とを含む組成物が記載される。
【0020】
任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは、その細胞にとって同種異系、自家、または異種であるMHCを含む。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは合成MHCを含む。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインはMHCおよびペプチドを含み、ペプチドはその細胞にとって同種異系、自家、または異種である。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインはMHCおよびペプチドを含み、ペプチドは合成ペプチドである。
【0021】
任意の局面のいくつかの態様において、細胞は、NK細胞、樹状細胞、制御性T細胞またはエフェクターT細胞である。任意の局面のいくつかの態様において、細胞は、組成物のポリペプチドのうちの1つまたは複数を発現するように改変される。任意の局面のいくつかの態様において、細胞は、組成物のシグナル伝達ポリペプチドを発現するように改変される。任意の局面のいくつかの態様において、細胞は、ネイティブMHC I/IIがノックアウトまたはノックダウンされるように、さらに改変される。任意の局面のいくつかの態様において、細胞は、細胞表面上に発現するネイティブMHC I/IIがノックダウンされるように、さらに改変される。
【0022】
任意の態様の一局面において、本明細書には、TCR認識ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを含むが生体分子相互作用ドメイン(例えば第1タイプの生体分子相互作用ドメイン)を含まない組成物が記載される。任意の態様の一局面において、本明細書には、TCR認識ドメインと生体分子相互作用ドメイン(例えば第1タイプの生体分子相互作用ドメイン)とを含むが細胞内シグナル伝達ドメインを含まない組成物が記載される。
【0023】
任意の態様の一局面において、本明細書には、治療または予防を必要とする対象における自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、またはGvHDを治療または予防する方法であって、前記請求項のいずれか一項記載の組成物および/または細胞を対象に投与する工程を含む、方法が記載される。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは対象にとって同種異系のMHCを含む。
【0024】
任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは、移植細胞にとって自家のMHCを含む。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインは、移植細胞にとって異種であるMHCを含む。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインはMHCおよびペプチドを含み、ペプチドは対象にとって同種異系である。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインはMHCおよびペプチドを含み、ペプチドは移植細胞にとって自家である。任意の局面のいくつかの態様において、TCR認識ドメインはMHCおよびペプチドを含み、ペプチドは移植細胞にとって自家である。任意の局面のいくつかの態様において、移植片は、任意のヒトまたは非ヒトの細胞、組織、または臓器である。任意の局面のいくつかの態様において、移植は、同種異系の造血幹細胞または固形臓器の移植である。
【0025】
任意の局面のいくつかの態様において、悪性T細胞状態はT細胞性急性リンパ芽球性白血病またはT細胞性リンパ芽球性リンパ腫である。
【0026】
任意の局面のいくつかの態様において、自己免疫疾患は、1型糖尿病、白斑、多発性硬化症、脱毛症、セリアック病、天疱瘡、関節リウマチ、または強皮症である。任意の局面のいくつかの態様において、自己免疫疾患は、甲状腺炎、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、アジソン病、およびレイノー現象、グッドパスチャー病、関節炎(関節リウマチ、例えば急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風または痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、急性免疫性関節炎(acute immunological arthritis)、慢性炎症性関節炎、変形性関節症(degenerative arthritis)、II型コラーゲン誘導関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎(例えば治療後ライム病症候群)、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、および若年発症型関節リウマチ、慢性進行性関節炎(arthritis chronica progrediente)、変形性関節炎(arthritis deformans)、原発性慢性多発性関節炎(polyarthritis chronica primaria)、反応性関節炎、および強直性脊椎炎)、回帰性関節炎、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬および爪乾癬、アトピー性疾患を含むアトピー、例えば枯草熱およびヨブ症候群、皮膚炎、例えば接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異性皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎およびアトピー性皮膚炎、x連鎖性高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、じんま疹、例えば慢性アレルギー性じんま疹および慢性特発性じんま疹、例えば慢性自己免疫性じんま疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば視神経脊髄型(spino-optical)MS、一次性進行型MS(PPMS)、および再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、散在性硬化症(sclerosis disseminata)、失調性硬化症(ataxic sclerosis)、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、潰瘍大腸炎(colitis ulcerosa)、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、ポリープ性大腸炎、壊死性腸炎、および全層性大腸炎、および自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例えば成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、ぶどう膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、リウマチ性脊椎炎、リウマチ性滑膜炎、遺伝性血管浮腫、髄膜炎に見られるような脳神経損傷、妊娠性疱疹、妊娠性類天疱瘡、陰嚢そう痒症(pruritis scroti)、自己免疫性早発卵巣不全、自己免疫状態による突発性難聴、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスムッセン脳炎ならびに辺縁系および/または脳幹脳炎、ぶどう膜炎、例えば前部ぶどう膜炎、急性前部ぶどう膜炎、肉芽腫性ぶどう膜炎、非肉芽腫性ぶどう膜炎、水晶体抗原性ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎または自己免疫性ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群を伴うおよびネフローゼ症候群を伴わない糸球体腎炎(GN)、例えば慢性または急性糸球体腎炎、例えば一次性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、I型およびII型を含む膜増殖性または膜性増殖性(membrano-or membranous proliferative)GN(MPGN)、および急速進行性GN、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌不全、亀頭炎、例えば形質細胞限局性亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、葉状魚鱗癬、表皮剥離性角化症、前悪性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー状態およびアレルギー応答、アレルギー反応、湿疹、例えばアレルギー性湿疹またはアトピー性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、および水疱性掌蹠湿疹(vesicular palmoplantar eczema)、喘息、例えば気管支ぜんそく(asthma bronchiale)、気管支喘息(bronchial asthma)、および自己免疫性喘息、T細胞浸潤および慢性炎症性応答を伴う病態、妊娠中の胎児A-B-O血液型などといった外来抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、ループス、例えばループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループスおよび円板状エリテマトーデス、ループス脱毛症(alopecia lupus)、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えば皮膚SLEまたは亜急性皮膚SLE、新生児ループス症候群(NLE)、および播種状エリテマトーデス、若年発症型(I型)糖尿病、例えば小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性大動脈障害、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばリンパ腫様肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例えば血管炎、大型血管炎(リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中型血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、免疫性血管炎(immunovasculitis)、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎などの壊死性血管炎、およびANCA関連血管炎、例えばチャーグ・ストラウス血管炎またはチャーグ・ストラウス症候群(CSS)およびANCA関連小型血管炎、側頭動脈炎、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、溶血性貧血または免疫性溶血性貧血、例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(pernicious anemia)(悪性の貧血(anemia perniciosa))、アジソン病、真性赤血球性貧血または赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、外傷または出血に続発するもの、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜天疱瘡-粘膜類天疱瘡(pemphigus mucus-membrane pemphigoid)、および紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病またはライター症候群、免疫複合体腎炎などの免疫複合体疾患、抗体関連腎炎、ポリニューロパチー、IgMポリニューロパチーまたはIgM関連ニューロパチーなどの慢性ニューロパチー、および自己免疫性または免疫介在性血小板減少症、例えば慢性ITPまたは急性ITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、強膜炎、例えば特発性角膜強膜炎(cerato-scleritis)、上強膜炎、精巣および卵巣の自己免疫疾患、例えば自己免疫性の精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)または亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、神経学的腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、例えばランバート・イートン筋無力症候群またはイートン・ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎(allergic encephalomyelitis)またはアレルギー脳脊髄炎(encephalomyelitis allergica)および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、胸腺腫関連重症筋無力症などの重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、オプソクローヌスまたはオプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ球様間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)vs NSIP(bronchiolitis obliterans(non-transplant)vs NSIP)、ギラン・バレー症候群、ベルジェ病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、急性熱性好中球性皮膚症、角層下膿疱性皮膚症、一過性棘融解性皮膚症、硬変、例えば原発性胆汁性肝硬変および肺硬変、自己免疫性腸疾患症候群、セリアック病または小児脂肪便症、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性難聴、多発性軟骨炎、例えば難治性または再燃性または再発性多発軟骨炎、肺胞タンパク症、コーガン症候群/非梅毒性角膜実質炎、ベル麻痺、スイート病/スイート症候群、自己免疫性酒さ(rosacea autoimmune)、帯状疱疹関連痛、アミロイドーシス、非がん性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば良性単クローン性ガンマグロブリン血症および意義不明の単クローン性γグロブリン血症、MGUS)を含む原発性リンパ球増加症、末梢性ニューロパチー、腫瘍随伴症候群、CNSのチャネロパチーを含むチャネロパチー、自閉症、炎症性ミオパチー、巣状糸球体硬化症または分節性糸球体硬化症または巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、網膜ぶどう膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛症、多内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、自己免疫性脱髄疾患および慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーなどの脱髄疾患、ドレスラー症候群、円形脱毛症、全頭脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、男性および女性自己免疫性不妊、例えば抗精子抗体によるもの、混合結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形紅斑、心臓切開後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎および線維化性肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、サムター症候群(Sampter's syndrome)、カプラン症候群、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティ症候群、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、虹彩異色性毛様体炎(heterochronic cyclitis)、虹彩毛様体炎(急性または慢性)、またはフックス毛様体炎(Fuch's cyclitis)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、SCID、敗血症、エンドトキシン血症、ワクチン接種後症候群、エバンス症候群(Evan's syndrome)、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、溶連菌感染後腎炎、閉塞性血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再灌流傷害、移植臓器再灌流、自己免疫網膜症(retinal autoimmunity)、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、無精子形成(aspermiogenesis)、自己免疫性溶血、ベック病、アレルギー性腸炎(enteritis allergica)、癩性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱(febris rheumatica)、ハンマン・リッチ病、感音難聴、限局性回腸炎(ileitis regionalis)、白血球減少症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、交感性眼炎、急性多発性神経根炎(polyradiculitis acuta)、壊疽性膿皮症、後天性脾臓萎縮(acquired spenic atrophy)、白斑、毒素性ショック症候群、T細胞浸潤を伴う病態、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介
される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、白血球漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、アレルギー性神経炎、自己免疫性多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、リウマチ性疾患、混合結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌不全、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎、好酸球関連障害、例えば好酸球増加症、好酸球増多性肺浸潤、好酸球増多筋痛症候群、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、好酸球含有肉芽腫(granulomas containing eosinophil)、血清陰性脊椎関節炎、多腺性自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、ブルートン症候群、乳児一過性低γグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病に関連する自己免疫性障害、リウマチ、アレルギー性過敏性障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、虚血再灌流障害、リンパ腫性気管気管支炎、炎症性皮膚疾患、急性炎症性要素を伴う皮膚疾患、および自己免疫性網膜ぶどう膜炎(AUR)である。
【0027】
任意の局面のいくつかの態様において、T細胞媒介性免疫応答は、生物製剤、細胞治療、および/または遺伝子治療に対する抗薬物特異的応答である。任意の局面のいくつかの態様において、生物製剤、細胞治療、または遺伝子治療は、アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療、ゲノム編集剤、または酵素補充治療である。
【0028】
任意の局面のいくつかの態様において、疾患は1型糖尿病であり、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:8~17のうちの1つまたは複数;HLA-A*0201ならびにSEQ ID NO:2013~2016および2031~2033のうちの少なくとも1つ;またはHLA-A*02:01およびSEQ ID NO:20128~2129のうちの少なくとも1つに対して少なくとも80%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。任意の局面のいくつかの態様において、疾患は白斑であり、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとに対して少なくとも80%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むか、またはHLA-A*0201およびSEQ ID NO:2018、もしくはHLA-A*0301およびSEQ ID NO:2019を含むか、またはHLA-A*2402およびSEQ ID NO:2020、もしくはHLA-A*0101およびSEQ ID NO:2021を含む。任意の局面のいくつかの態様において、本方法は、GvHDを治療および/または予防する方法であり、TCR認識ドメインは、HLA-A*0101およびSEQ ID NO:2034~2037のうちの少なくとも1つ;またはHLA-B*0702およびSEQ ID NO:2038;またはHLA-B*0801およびSEQ ID NO:2039に対して少なくとも80%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。任意の局面のいくつかの態様において、疾患は1型糖尿病であり、TCR認識ドメインはSEQ ID NO:8~17のうちの1つまたは複数を含むか、HLA-A*0201ならびにSEQ ID NO:2013~2016および2031~2033のうちの少なくとも1つを含むか、またはHLA-A*02:01およびSEQ ID NO:20128~2129のうちの少なくとも1つを含む。任意の局面のいくつかの態様において、疾患は白斑であり、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとを含むか、またはHLA-A*0201およびSEQ ID NO:2018を含むか、またはHLA-A*0301およびSEQ ID NO:2019を含むか、またはHLA-A*2402およびSEQ ID NO:2020を含むか、またはHLA-A*0101およびSEQ ID NO:2021を含む。任意の局面のいくつかの態様において、本方法は、GvHDを治療および/または予防する方法であり、TCR認識ドメインはHLA-A*0101およびSEQ ID NO:2034~2037のうちの少なくとも1つを含むか、またはHLA-B*0702およびSEQ ID NO:2038を含むか、またはHLA-B*0801およびSEQ ID NO:2039を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、pMHCテトラマー+FITC(アダプター)が用量依存的に標的細胞(OTi)に結合することを実証している。I-H2Kb:MHCクラスIテトラマー。I-Ab-:対照テトラマー。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2752~2753、2750、および2754を開示している。
図2図2は、異なる時点(24、48、72時間)におけるOTi細胞上の活性化マーカーCD69の発現を表す。OTi細胞へのJurkat+pMHCの結合はJurkat生細胞数(Jurkat live count)(右)を変化させない。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2750、2750、および2754を開示している。
図3図3は、異なる時点(24、48、72時間)におけるJurkat CAR、例えばCAL T細胞上のCD69の発現を表す。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2750および2755を開示している。
図4図4は、初代ヒトCD8 CARの、例えばさまざまな濃度のテトラマーによるCAL T細胞の、細胞傷害性を表す(左)。OTi細胞と共培養した後の、標的細胞の最小限の活性化(CAR、例えばCAL T細胞および標的細胞上のCD69)(図2左)。I-Ab:対照/H2Kb:MHC-I。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2750、2754、および2750を開示している。
図5図5は、ヒトCD8 CAR、例えばCAL Tの細胞傷害性が高度に特異的であり、対照テトラマーでは見られなかったことを実証している(左)。pMHCおよび脾細胞との共培養後に、キラーCAR、例えばCAL T細胞またはバイスタンダーCD4 T細胞に対する細胞傷害性は見られなかった。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2754、2750、2754、2750、2754および2750を開示している。
図6図6Aは、ユニバーサルCALを得るために応用されたSUPRA CARデザインの略図である。このデザインでは細胞ターゲティング分子モジュールがキラー細胞から分離される。図6Bは、本明細書に記載のユニバーサルCALを得るために、CD3ζドメインが共刺激ドメインと連結されていないSUPRA CARをデザインできることを表す。
図7A図7A~7Dは、ユニバーサルCALに応用することができるSUPRA CAR系の重要な特徴を表す。図7Aは、IFN-g生産によって実証されるとおり、zipCAR活性化が、zipFv濃度、ジッパーアフィニティ、scFvアフィニティ、およびヒト初代CD4 T細胞におけるzipCAR発現レベルの調整によってチューニング可能であることを実証している。
図7B図7Bは、ユニバーサルCALに応用されるSUPRA CAR系が、組合せ抗原検出(combination antigen detection)を行うことで、CD4 T細胞においてANDゲート論理を形成できることを実証している。
図7C図7Cは、異種移植片動物腫瘍モデルがSUPRA CAR T細胞による腫瘍根絶(腫瘍細胞によって与えられるルシフェラーゼ光子束によって実証されるもの)を示すことを実証している。
図7D図7Dは、ユニバーサルCALに応用されるSUPRA CARを使用することで、2つの異なる抗原に対して異なる細胞タイプ、例えばCD4 T細胞とCD8 T細胞を制御できることを実証している。CD4 T細胞およびCD8 T細胞についてCD69発現(T細胞活性化マーカー)がフローサイトメトリーで定量されている(Cho, Collins, and Wong, Cell. 2018より)。
図8図8は、二重Hu-PBMC-HSCT-皮膚移植マウスモデル作製のタイムラインを表す。
図9図9は、二重hu-PBMC-HSCT-皮膚移植マウスモデル作製の要約である。
図10図10は、pMHCマルチマー+CAR、例えばCAL T細胞系の重要な特徴を表す。
図11図11は、実験デザインの表である。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2750、2756および2754を開示している。
図12図12は、FITCコンジュゲートテトラマーが媒介する活性化の検証を示している。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2750および2751を開示している。
図13図13は、FITCコンジュゲートテトラマーが媒介する活性化の時間経過を表す。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2750、2751、2750、2751、2750、2751、2750および2751を開示している。
図14図14は、Jurkat細胞数のグラフを表す。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2750および2754を開示している。
図15図15は、テトラマー染色を表す。図は、左から右かつ上から下に、SEQ ID NO:2750、2754、2751、2756、2754、2750、および2754を開示している。
図16図16は、表示した染色レベルのヒートマップである。図は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2751、2757、2754、2750、2754、2751、2754、2757、2750、2754、2751、2754、2757、2750、および2754を開示している。
図17図17は、実験デザインの表である。
図18図18図20は、細胞傷害性レベルのグラフである。図18は、左から右に、SEQ ID NO:2754、2750、2754、および2750を開示している。
図19図19は、表示順にそれぞれSEQ ID NO:2754および2750を開示している。
図20図20は、左から右に、SEQ ID NO:2750、2754、2750、および2754を開示している。
図21図21は、OTi CD8 T細胞上のCD69のレベルを表す。図は、左から右に、SEQ ID NO:2750、2754、2750、および2754を開示している。
図22図22は、本明細書に記載する技術の2つの態様の略図である。
図23図23は、本明細書に記載する技術のFU-CAL態様の略図である。
図24図24は、本明細書に記載する技術のCAL-BITE態様の略図である。左図はブリナツモマブを表し、これについてはWeiner et al. The Molecular Basis of Cancer 2015 683-694. e3に詳述されている。
図25図25は、自己反応性T細胞を武装解除するCAL技術の略図である。
図26図26A図26Bは、T細胞デザインの略図である。MHCはマウスまたはヒトのものであることができる。MiHAは、卵白アルブミン(OTiまたはOTiiに対するもの)であるか、ドナーとレシピエントの間の非共通(disparate)抗原であることができる。
図27図27は、pMHCテトラマー+FITC(アダプター)が標的細胞(OTi)に用量依存的に結合し、一方、OTii特異的テトラマーは標的細胞に結合しないことを実証するグラフである。
図28図28Aは、異なる時点(24、48、72時間)におけるOTi細胞上でのCD69の発現を表す。図28Bは、OTi細胞へのJurkat+pMHCの結合がJurkat生細胞数を変化させないことを実証するグラフである。
図29図29は、1E6 T細胞クローンに対するpMHC-CARの細胞傷害性が、用量依存的関係を呈することを実証するグラフである。
図30図30は、標的細胞(OTiまたはOTii TCR発現T細胞)および対応するテトラマー(OTiまたはOTii特異的)への曝露後のCAR Jurkat T細胞活性化(CD69表面マーカーによって測定されるもの)を実証するグラフである(n=4)。
図31図31は、ヒトCD8 CAR Tの細胞傷害性は特異性が高く、対照テトラマーでは見られなかったことを実証するグラフである。pMHCおよび脾細胞との共培養後に、キラーCAR T細胞またはバイスタンダーCD4 T細胞に対する細胞傷害性は見られなかった(n=4)。
図32図32は、異なるテトラマー濃度によるOTi TCR T細胞に対する初代CD8 CAR T細胞の細胞傷害性を実証するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本明細書に記載の発明の局面はキメラ抗原リガンドに関する。本明細書にいう「キメラ抗原リガンド」または「CAL」は、TCR認識ドメイン(例えば本明細書に記載の少なくとも1つのMHC配列を含むポリペプチド)と少なくとも1つの生体分子相互作用ドメインとを含む、人工的に構築された分子を指す。TCR認識ドメインは、例えばT細胞媒介疾患における治療を目的として、標的にしかつ/または破壊することが望ましい特異的T細胞集団に結合するように選択される。いくつかの態様において、標的T細胞の集団はポリクローナル病原性T細胞の集団である。生体分子相互作用ドメインは、第2の細胞(例えばNK細胞)に結合し、それによって標的T細胞と第2の細胞とを共局在させ、標的T細胞の阻害および/または破壊を促進または増強するように選択される。さまざまな態様において、CALは、TCR(例えば、TCR可変ドメイン)に対して高いアフィニティまたは高いアビディティを有するように選択される。
【0031】
ここでは、CALを内在性細胞と共に使用することができ、例えばいくつかの態様では、改変細胞は対象に投与されない。別の態様では、CALを改変細胞、例えば改変NK細胞と共に使用することができる。そのような場合、改変細胞は、1つまたは複数のCAR、例えばCALの生体分子相互作用ドメインと特異的に結合する生体分子相互作用ドメインを持つ細胞外ドメインを含むCARを、含むことができる。
【0032】
したがって本明細書には、キメラ抗原受容体(CAR)の認識部分とシグナル伝達部分とが別個のポリペプチドであるCARが記載される。完全なCARを構成するそれら2つの別個のポリペプチドは、タンパク質相互作用ドメインを使って相互作用し、完全なCARを形成することができる。これにより、より正確で効果的な免疫治療へのアプローチを提供する、複雑な論理計算能力を有するフレキシブルなモジュール式のCAR-T治療が可能になる。
【0033】
任意の態様の一局面には、複数の成分を有するCALおよび/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)、ならびに/または多成分CALおよび/もしくは多成分CARを含む細胞もしくは組成物が含まれる。多成分CAL/CARは、本明細書では、別途、SMART CAL/CARまたはSUPRAとも呼ばれる。
【0034】
本明細書にいう従来型の「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、細胞シグナル伝達および/または細胞活性化ドメインに連結された抗原結合ドメイン(例えば抗体の抗原結合部分(例えばscFV))を含む人工的に構築されたハイブリッドポリペプチドを指す。いくつかの態様において、細胞シグナル伝達ドメインはT細胞シグナル伝達ドメインであることができる。いくつかの態様において、細胞活性化ドメインはT細胞活性化ドメインであることができる。CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、T細胞および他の免疫細胞(例えばNK細胞)の特異性および反応性を、選択された標的に、非MHC拘束的にリダイレクトする能力を有する。
【0035】
非MHC拘束的な抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングに依存せずに抗原を認識する能力を与え、これにより、腫瘍エスケープの主要な機序が回避される。そのうえ、T細胞において発現する場合、CARは、有利なことに、内在性T細胞受容体(TCR)α鎖およびβ鎖と二量体化しない。最も一般的には、CARの細胞外結合ドメインは、マウスモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体の可変重鎖領域と可変軽鎖領域とを融合することで得られる単鎖可変フラグメント(scFv)で構成される。あるいは、(抗体からではなく、例えばFabライブラリーから得られる)Fabから誘導されたscFvを使用してもよく、さまざまな態様において、このscFvは膜貫通ドメインに融合され、次に細胞内シグナル伝達ドメインに融合される。「第1世代」CARには、抗原結合時にCD3ゼータシグナルだけを提供するものが含まれ、「第2世代」CARには共刺激(例えばCD28またはCD137)と活性化(CD3Q)をどちらも提供するものが含まれる。「第3世代」CARには、複数の共刺激(例えばCD28およびCD137)と活性化(CO3Q)を提供するものが含まれる。さまざまな態様において、CARは、抗原に対して高いアフィニティまたはアビディティを有するように選択される。CARに関するさらなる議論は、例えばMaus et al. Blood 2014 123:2624-35、Reardon et al. Neuro-Oncology 2014 16:1441-1458、Hoyos et al. Haematologica 2012 97:1622、Byrd et al. J Clin Oncol 2014 32:3039-47、Maher et al. Cancer Res 2009 69:4559-4562、およびTamada et al. Clin Cancer Res 2012 18:6436-6445に見いだすことができ、これらの文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0036】
本明細書にいう「多成分CAL」は、少なくとも2つの別個のポリペプチドを含み、それらポリペプチドはどちらも、リガンド認識能とシグナル伝達活性化能の両方を単独で有することがないCALを指す。本明細書にいう「多成分CAR」は、少なくとも2つの別個のポリペプチドを含み、それらポリペプチドはどちらも、リガンド認識能とシグナル伝達活性化能の両方を単独で有することがないCARを指す。いくつかの態様において、前記少なくとも2つの別個のポリペプチドは、それぞれが、それら別個のポリペプチドの相互作用、例えば結合を可能にするタンパク質相互作用ドメインを含む。いくつかの態様において、前記少なくとも2つの別個のポリペプチドのうちの1つは、細胞内T細胞受容体(TCR)シグナル伝達ドメインを有する膜貫通ポリペプチドであり、前記少なくとも2つの別個のポリペプチドのうちの2つ目は、リガンド結合ドメインを有する細胞外ポリペプチドである。いくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARは、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の別個のポリペプチドを含むことができる。
【0037】
本明細書において提供されるさまざまな局面は、多成分CALおよび/または多成分CARの複数の成分を含む組成物を提供する。
【0038】
諸態様の一局面には、TCR認識ドメインと、(a)細胞内シグナル伝達ドメインおよび(b)第1タイプのタンパク質相互作用ドメインのうちの一方または両方とを含む組成物、例えば単一分子が含まれる。諸態様の一局面には、TCR認識ドメインと第1タイプの生体分子(例えばタンパク質)相互作用ドメインとを含む組成物、例えば単一分子が含まれる。本明細書では、TCR認識ドメインと(a)細胞内シグナル伝達ドメインおよび(b)第1タイプのタンパク質相互作用ドメインの一方または両方とを含む多成分CALおよび/または多成分CARが、さらに提供される。いくつかの態様において、TCR認識ドメインと第1タイプの生体分子(例えばタンパク質)相互作用ドメインとを含む組成物、例えば単一分子は、抗体、抗体ドメインまたは抗体試薬を含まない。
【0039】
諸態様の別の一局面は、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプおよび第2タイプのタンパク質相互作用ドメインが互いに特異的に結合する組成物である。本明細書では、a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドとを含む多成分CALおよび/または多成分CARであって、第1タイプおよび第2タイプのタンパク質相互作用ドメインが互いに特異的に結合する多成分CALおよび/または多成分CARが、さらに提供される。
【0040】
諸態様の別の一局面は、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2認識ドメインおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインが特異的に結合する組成物である。本明細書では、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2認識ドメインおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む多成分CALおよび/または多成分CARであって、第1タイプおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインが特異的に結合する多成分CALおよび/または多成分CARが、さらに提供される。
【0041】
諸態様の別の一局面は、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、(c)第2認識ドメインおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第2タイプのタンパク質相互作用ドメインと第3タイプのタンパク質相互作用ドメインとが第1タイプのタンパク質相互作用ドメインへの結合に関して競合する組成物である。本明細書では、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、(c)第2認識ドメインおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む多成分CALおよび/または多成分CARであって、第2タイプのタンパク質相互作用ドメインと第3タイプのタンパク質相互作用ドメインとが第1タイプのタンパク質相互作用ドメインへの結合に関して競合する多成分CALおよび/または多成分CARが、さらに提供される。
【0042】
さまざまな態様において、第3タイプのタンパク質相互作用ドメインと第1タイプのタンパク質相互作用ドメインは、互いに、第2タイプのタンパク質相互作用ドメインと第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも高いアフィニティを有する。当業者は、アフィニティを、標準的な方法を使って、例えばその平衡解離定数(Kd)を測定することによって、測定することができる。
【0043】
諸態様の別の一局面は、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメイン、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、(c)第2認識ドメインおよび第5タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する組成物である。本明細書では、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメイン、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、(c)第2認識ドメインおよび第5タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む多成分CALおよび/または多成分CARであって、第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する多成分CALおよび/または多成分CARが、さらに提供される。
【0044】
さまざまな態様において、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと第5タイプのタンパク質相互作用ドメインは、第2タイプのタンパク質相互作用ドメインと第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも弱いアフィニティを有する。アフィニティは上述のように測定することができる。
【0045】
さまざまな態様において、第1ポリペプチドは第6タイプのタンパク質相互作用ドメインをさらに含み、認識ポリペプチドは第7タイプのタンパク質相互作用ドメインをさらに含み、それらは互いに特異的に結合する。
【0046】
いくつかの態様において、第1ポリペプチドはTCR認識ドメイン全体を含む。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは少なくとも2つの別個のポリペプチド配列を含み、第1ポリペプチドは、TCR認識ドメインの前記別個のポリペプチド配列のうちの少なくとも1つを含み、第1ポリペプチドは、TCR認識ドメインの第2のまたはさらなるポリペプチド配列に結合するかまたはそれらと複合体化してTCR認識ドメインを形成する。
【0047】
いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物は複数コピーまたは複数インスタンス(instance)のTCR認識ドメインを含むことができる。例えばTCR認識ドメインはマルチマーまたはオリゴマーであることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物は、複数コピーまたは複数インスタンスの、本明細書に記載の第1ポリペプチドを含むことができる。
【0048】
さまざまな態様において、第2認識ドメインは、TCR認識ドメインによって認識されない標的に特異的である。一態様において、第2認識ドメインは、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出されかつ疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されない標的に特異的である。
【0049】
本明細書にいう「TCR認識ドメイン」は、TCR(例えば、T細胞の表面上に発現しているTCR)を標的にするかまたはそれに特異的に結合することができる、ポリペプチドのドメインまたは一部分を指す。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、TCR可変領域(TCR-VR)認識ドメインであることができる。すなわちTCR認識ドメインは、TCR(例えば、T細胞の表面上に発現しているTCR)の可変領域を標的にするかまたはそれに特異的に結合することができる。TCR認識ドメイン配列は、所与の対象に対して自家、同種異系または異種であることができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメイン配列は野生型のタンパク質または配列である。いくつかの態様において、TCR認識ドメイン配列は、天然の変異体、例えば野生型タンパク質または野生型配列のアレルである。いくつかの態様において、TCR認識ドメイン配列は、野生型タンパク質と比べて、修飾、例えば化学修飾されている。いくつかの態様において、TCR認識ドメイン配列は、野生型配列の誘導体および/または変異体である。いくつかの態様において、TCR認識ドメイン配列はヒト配列または非ヒト配列であることができる。
【0050】
TCR認識ドメインは、MHCポリペプチド、MHCポリペプチド配列を含み、および/またはMHC配列の一部分を含むことができる。MHCおよび/またはMHC配列は、所与の対象に対して、自家、同種異系または異種であることができる。いくつかの態様において、MHCおよび/またはMHC配列は、野生型のタンパク質または配列である。いくつかの態様において、MHCおよび/またはMHC配列は、天然の変異体、例えばMHCのアレルである。いくつかの態様において、MHCおよび/またはMHC配列は、野生型タンパク質と比べて、修飾、例えば化学修飾されている。いくつかの態様において、MHCおよび/またはMHC配列は、野生型MHC配列の誘導体および/または変異体である。いくつかの態様において、MHCおよび/またはMHC配列は、ヒト配列または非ヒト配列であるか、ヒト配列または非ヒト配列を含むことができる。
【0051】
一態様において、TCR認識ドメインは、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)、MHC-ペプチド複合体またはMHC-ペプチド融合体を含む。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、無特徴ペプチドMHCを含むか、ペプチドを伴わないMHCを含むか、またはTCRの可変領域を標的にするかもしくはそれに特異的に結合する他の任意の分子を含むことができる。
【0052】
MHCは、ヒト白血球抗原(HLA)とも呼ばれ、脊椎動物において獲得免疫系、例えば適応免疫系が外来分子を認識するのに不可欠であり、延いては組織適合性を決定する、細胞表面タンパク質をコードする一組の遺伝子で構成される。MHC遺伝子ファミリーは、MHCクラスI、MHCクラスIIおよびMHCクラスIIIという3つのサブグループに分割される。クラスI MHC分子は、CD8補助受容体によってのみ認識されうるβ2ミクログロブリンサブユニットを有する。クラスII MHC分子はβ1およびβ2サブユニットを有し、CD4補助受容体によって認識されうる。このようにして、MHC分子は、どのタイプのリンパ球が所与の抗原と高いアフィニティで結合するかをシャペロンする。というのも、異なるリンパ球は異なるT細胞受容体(TCR)補助受容体を発現しているからである。MHCの成分は当技術分野において公知であり、当業者であれば容易に同定することができる。MHCは、Janeway CA Jr, Travers P, Walport M, et al, Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 5th edn(New York: Garland Science, 2001)、Vigneron N, Stroobant V, Chapiro J, Ooms A, Degiovanni G, Morel S, et al.(April 2004)「An antigenic peptide produced by peptide splicing in the proteasome」Science. 304(5670):587-90、およびJaneway's Immunobiology, 8th, Ed., Garland Science, 2012, pp. 138-153のK. Murphy, "Antigen recognition by T cells"に、さらに詳しく説明されており、これらの文献は、参照により、それぞれの全体が本明細書に組み入れられる。完全なMHCクラスI複合体は、1つのMHCクラスI重鎖と、1つのペプチドリガンド配列と、β2ミクログロブリンとを含む。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、1つのMHCクラスI重鎖と、1つのペプチドリガンド配列と、β2ミクログロブリンとを含む。完全なMHCクラスII複合体は、MHCクラスIIα鎖と、MHCクラスIIβ鎖と、1つのペプチドリガンド配列とを含む。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、MHCクラスIIα鎖と、MHCクラスIIβ鎖と、1つのペプチドリガンド配列とを含む。これら3つの成分は、別個の配列として(例えば複数のペプチド分子の分子内結合によって)一つに組み立てられるか、または介在リンカー配列を持つ融合タンパク質として発現させることができる(例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられるSchmittnaegel et al., 2016を参照されたい)。
【0053】
MHC(主要組織適合遺伝子複合体)、MHC-ペプチド複合体、MHC-ペプチド融合体、無特徴ペプチドMHCは、治療/予防されるべき疾患または状態に基づいて選択することができる。本明細書に記載の疾患と関連する具体的なMHC、ペプチドおよび/または抗原は当技術分野において公知であり、当業者であれば、適当なMHC、ペプチドおよび/または抗原を選択することができる。例えば適切なMHC、ペプチドおよび/または抗原配列のデータベースを、ワールドワイドウェブ上、iedb.org;immunespace.org;immgen.org;import/org;peptideatlast.org/repository/;uniprot.org;ncbi.nlm.nih.gov/protein/;immunedata.org/index.php;immuneprofiling.org/hipc/;allergenonline.org/databasebrowe.shtml;およびitntrialshare.orgで、利用することができる。さらなる例が、Smatti et al. 2019 Viruses 11:762、Beretta-Piccoli et al. 2019 J Autoimmu 94:1-6、およびCusick et al. 2012 Clinical Reviews in Allergy and Immunologyにも提供されており、これらの文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本明細書において提供されるTCR認識ドメインの具体例は、例示であって限定ではない。当業者は、本明細書に記載のものの他にも、例えば当技術分野からおよび/またはドナー細胞から、妥当な自己抗原pMHC、同種異系ペプチドMHC、および自家ペプチドMHCを同定することができる。そのような同定は当業者の技能の範囲内である。
【0054】
1型糖尿病に関係する組成物および方法に関する例示的かつ非限定的な一例として、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:8~17のうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:8と、SEQ ID NO:9と、SEQ ID NO:10~17のうちの1つとを含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:8と、SEQ ID NO:9と、SEQ ID NO:10~17のうちの1つとに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれより高い配列同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:8と、SEQ ID NO:9と、SEQ ID NO:10~17のうちの1つとに対して少なくとも95%の配列同一性を有し、かつSEQ ID NO:8と、SEQ ID NO:9と、SEQ ID NO:10~17のうちの1つとの野生型活性を保持している、配列を含むことができる。
【0055】
SEQ ID NO:8 HLA-A*0201(MHCクラスI重鎖アレル、野生型、ヒト)
【0056】
SEQ ID NO:9 β-2ミクログロブリン(野生型、ヒト)
【0057】
SEQ ID NO:10 プレプロインスリン15~24(野生型、ヒト)
ALWGPDPAAA
【0058】
SEQ ID NO:11 プレプロインスリン15~24改変ペプチドリガンド#1(合成、Cole et al., 2016)
AQWGPDPAAA
【0059】
SEQ ID NO:12 プレプロインスリン15~24改変ペプチドリガンド#2(合成、Cole et al., 2016)
RQWGPDPAAV
【0060】
SEQ ID NO:13 プレプロインスリン15~24改変ペプチドリガンド#3(野生型、クロストリジウム・アスパラギフォルメ(Clostridium asparagiforme)、Cole et al., 2016)
RQFGPDWIVA
【0061】
SEQ ID NO:14 プレプロインスリン15~24改変ペプチドリガンド#4(合成、Cole et al., 2016)
YQFGPDFPIA
【0062】
SEQ ID NO:15 プレプロインスリン15~24改変ペプチドリガンド#5(合成、Cole et al., 2016)
RQFGPDFPTI
【0063】
SEQ ID NO:16 プレプロインスリン15~24改変ペプチドリガンド#6(合成、Cole et al., 2016)
YLGGPDFPTI
【0064】
SEQ ID NO:17 プレプロインスリン15~24改変ペプチドリガンド#7(野生型、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、Cole et al., 2016)
MVWGPDLYV
【0065】
白斑に関係する組成物および方法に関するさらなる一具体例として、TCR認識ドメインはSEQ ID NO:18~22のうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとを含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれより高い配列同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとに対して少なくとも95%の配列同一性を有し、かつSEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとの野生型活性を保持している、配列を含むことができる。
【0066】
SEQ ID NO:18 HLA-A*0201(MHCクラスI重鎖アレル、野生型、ヒト、先のHLA-A2と同じ)
【0067】
SEQ ID NO:19 β-2ミクログロブリン(野生型、ヒト、先のβ-2ミクログロブリンと同じ)
【0068】
SEQ ID NO:20 MART-126~35(野生型、ヒト)
ELAGIGILTV
【0069】
SEQ ID NO:21 チロシナーゼ368~376(野生型、ヒト)
YMDGTMSQV
【0070】
SEQ ID NO:22 gp100209~217(野生型、ヒト)
ITDQVPFSV
【0071】
さらなる例示的かつ非限定的な例として、表5に掲載する以下のMHCと抗原のペアが、当技術分野において公知である。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは以下に示すMHC/ペプチドペアのうちの1つまたは複数を含むことができ、例えばTCR認識ドメインは表示のMHCアレルのうちの1つと表示の対応するペプチドとを含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、以下に示すMHC/ペプチドペアのうちの1つに対して、例えば表示のMHCアレルのうちの1つと表示の対応するペプチドとに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれより高い配列同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、以下に表示するMHC/ペプチドペアのうちの1つに対して、例えば表示のMHCアレルのうちの1つと表示の対応するペプチドとに対して、少なくとも95%の配列同一性を有し、かつそのMHCアレルと対応するペプチドとの野生型活性を保持している、配列を含むことができる。
【0072】
(表5)以下の表の各行に、MHCアレル(その配列は、公的にアクセス可能なデータベース、例えばNCBIで、入手することができる)と抗原配列とを掲載する。抗原の由来源および/または関連疾患も同じ行に示す。表5に掲載する一部の例では、ペプチドが抗原ミミックであり、それらの由来が示されている。
【0073】
さらなる例示的かつ非限定的な例として、表6に掲載する以下の抗原は、当技術分野において、セリアック病に関連することが公知である。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、表6に掲載するペプチドのうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、表6のペプチドのうちの1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれより高い配列同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、表6のペプチドのうちの1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ表6のそのペプチドの野生型活性を保持している、配列を含むことができる。
【0074】
(表6)配列は、提示する順に、SEQ ID NO:1000~2012である。
【0075】
一態様において、ペプチドは、ヒト、非ヒト、または合成/改変ペプチドである。例えばペプチドはマイナー組織適合性抗原(MiHA)である。
【0076】
例示的なMiHAは、当技術分野において、例えばSpierings et al. Tissue Antigens 2014 84:347-360において公知であり、この文献は参照により本明細書に組み入れられる。MiHAは、典型的には、移植に関連する態様において利用され、この場合それは、多型タンパク質におけるタンパク質配列変異ゆえに生成するエピトープを指す。
【0077】
MHC結合溝と会合する抗原ペプチドの残基は、MHC分子と会合してMHCペプチド複合体に安定性を付与するアンカー残基(例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられるBowness et al. 1999 Expert Reviews in Molecular Medicine 16:1-10における残基P2、P3、P5、P6、P7およびP9を参照されたい)と、溶媒に露出していてコグネイトT細胞受容体と会合することができる界面残基(例えばBownessの文献における残基P1、P4およびP8参照)との、2タイプに大別することができる。無特徴ペプチドは、アンカー残基は保存されているが、TCR結合を防止するためにペプチドの界面残基をアラニンまたはグリシン残基に変異させたペプチドである。それゆえに、無特徴ペプチド-MHCは、提示されるペプチドが無特徴ペプチドであるMHCペプチド複合体である。無特徴ペプチドMHCは、典型的には、移植寛容に関係する態様において使用される。MHC不適合の固形臓器または造血幹細胞移植を受ける患者では、適切なドナー不適合無特徴ペプチド-MHC CALを提示するCAL T細胞の使用によって、その不適合ドナーHLAを標的にするレシピエント同種異系反応性T細胞の選択的枯渇を可能にすることができる。
【0078】
MHCは、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型であることができる。2つ以上のMHCユニットが存在する態様、例えばMHCがオリゴマーである態様において、それらのユニットは、例えば鎖状に連続させて提供するか、または中心点もしくはリンカーの回りに1次元または多次元に配列して提供するか、スキャフォールドに対して任意の幾何学的配置でコンジュゲート/結合して提供するか、またはそれらの任意の組合せで提供することができる。当技術分野におけるTCR認識ドメイン構造の天然の例としては、MHCダイマー(Lebowitz et al., 1999 Cellular Immunology 192:175-184)、テトラマー(Altman et al., 1996 Science 274:94-96)、ペンタマー(proimmune.com/introduction-to-pentamers/)、オクタマー(Guillame et al., 2003 JBC 278:4500-4509)、デキストラマー(Batard et al., 2006 Journal of Immunological Methods 310:136-148)、ドデカマー(Huang et al., 2016 PNAS 113:E1890-7)、脂質小胞(Mallet-Designe et al., 2003 The Journal of Immunology 170:123-131)および量子ドット(Chattopadhyay et al., 2006 Nature Medicine 12:972-7)が挙げられる。上記の参考文献のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0079】
いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、CD1ドメイン(例えばCD1dドメイン)、例えば、CD1の細胞外ドメインを含む配列(例えばCD1)を含むことができる。本明細書にいう「分化抗原群1ファミリーメンバーd」または「CD1d」は、T細胞に脂質抗原を提示する細胞表面タンパク質を指す。いくつかのCD1dアイソフォームの配列およびCD1dの構造は当技術分野において公知である。例えば参照によりそれぞれの全体が本明細書に組み入れられる、CD1dに関するNCBIデータベース(Gene ID 912)ならびにBagchi et al., 2018およびOleinika et al., Nature Communcations 2018 9:684に掲載されている3つのアイソフォームを参照されたい。例えばCD1dのアイソフォーム1はSEQ ID NO:5(NCBI Ref Seq NP_001757.1)であり、CD1dのアイソフォーム2はSEQ ID NO:6(NCBI Ref Seq NP_001306074.1)であり、CD1dのアイソフォーム3はSEQ ID NO:7(NCBI Ref Seq NP_001358690.1)である。いくつかの態様において、CD1dドメインは、SEQ ID NO:5~7のうちの1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれより高い配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、CD1dドメインは、SEQ ID NO:5~7のうちの1つの細胞外ドメイン(例えばSEQ ID NO:5のアミノ酸20~301)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれより高い配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、CD1dドメインは、SEQ ID NO:5~7のうちの1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有しかつ野生型参照配列の脂質結合活性を保持している配列を含む。いくつかの態様において、CD1dドメインは、SEQ ID NO:5~7のうちの1つの細胞外ドメイン(例えばSEQ ID NO:5のアミノ酸20~301)に対して少なくとも95%の配列同一性を有しかつ野生型参照配列の脂質結合活性を保持している、配列を含む。
【0080】
いくつかの態様において、CD1ドメインは、リガンド、例えば非ペプチドリガンドを、さらに含む。CD1ドメインの例示的かつ非限定的なリガンドには、以下に挙げるものがあるが、それらに限定されるわけではない:
タンパク質(アレル)リガンド
【0081】
いくつかの態様において、TCR認識ドメインは、例えばMHC、pMHCまたはCD1ドメインおよび同配列の他にも配列または分子を含むことができる。例えば、多量体化を可能にする他のポリペプチドおよび/または非ポリペプチド成分を、さらに含むことができる。多量体化を可能にする例示的な成分としては、四量体化が可能になるように使用されるビオチン(非ポリペプチド)および/またはストレプトアビジンポリペプチドを挙げることができる。
【0082】
さまざまな態様において、タンパク質相互作用ドメインは、それぞれのポリペプチドの細胞外部分に見出される。
【0083】
本明細書にいう「認識ポリペプチド」は、リガンド結合ドメインを有する細胞外ポリペプチドを指す。いくつかの態様において、リガンド結合ドメインは抗体試薬であることができる。いくつかの態様において、認識ポリペプチドは、タンパク質相互作用ドメインを、さらに含むことができる。
【0084】
本明細書にいう「シグナル伝達ポリペプチド」は、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えばT細胞受容体(TCR)シグナル伝達ドメインを有する膜貫通ポリペプチドを指す。いくつかの態様において、シグナル伝達ポリペプチドはタンパク質相互作用ドメインをさらに含むことができる。いくつかの態様において、シグナル伝達ポリペプチドは細胞外タンパク質相互作用ドメインをさらに含むことができる。
【0085】
本明細書にいう「生体分子相互作用ドメイン」は、2つの別個の分子が互いに特異的に結合することを可能にするドメインを指す。それらの分子はポリペプチドであるか、またはポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、それらの分子または生体分子相互作用ドメインの一方または両方は非ペプチドであることができる。本明細書において生体分子相互作用ドメインのペアが提供される場合、それらは2つ以上の分子が特異的に結合することを可能にし、例えば生体分子相互作用ドメインのうちの1つが、第2の生体分子相互作用ドメインに特異的に結合することができる。いくつかの態様において、特異的結合は、例えばあるペアの2つの別個の生体分子相互作用ドメインが存在する場合に起こりうる。いくつかの態様において、特異的結合は、3つ以上の別個の生体分子相互作用ドメインが存在する場合に起こりうる。タンパク質相互作用ドメインは生体分子相互作用ドメインの一タイプであり、本明細書において一方が指定された場合は、それは常に他方で置き換えうることに注意されたい。
【0086】
本明細書において、ある分子をタンパク質またはポリペプチドという場合、それは、タンパク質、ペプチドまたはポリペプチド配列を含むが、これは、非タンパク質性のモチーフ、修飾またはドメインも、追加して含みうる。いくつかの例示的な生体分子相互作用ドメインを、タンパク質相互作用ドメインのペアと共に、本明細書の別の箇所に掲載する。いくつかの態様において、生体分子相互作用ドメインは、タンパク質もしくはポリペプチドを含み、タンパク質もしくはポリペプチドからなり、またはタンパク質もしくはポリペプチドから本質的になる。いくつかの態様において、生体分子相互作用ドメインは、非タンパク質分子を含み、非タンパク質分子からなり、または非タンパク質分子から本質的になる。いくつかの態様において、生体分子相互作用ドメインペアのうちの一方は、タンパク質もしくはポリペプチドを含み、タンパク質もしくはポリペプチドからなり、またはタンパク質もしくはポリペプチドから本質的になることができ、その生体分子相互作用ドメインペアのうちのもう一方は、非タンパク質分子を含み、非タンパク質分子からなり、または非タンパク質分子から本質的になることができる(例えばFITCと抗FITC)。例示的なタンパク質相互作用ドメインは当技術分野において公知であり、本明細書に記載の局面の諸態様において使用することができる。
【0087】
本明細書にいう「タンパク質相互作用ドメイン」は、2つの別個のポリペプチド同士の特異的結合を可能にするドメインを指す。いくつかの例示的なタンパク質相互作用ドメインを、タンパク質相互作用ドメインのペアと共に、本明細書の別の箇所に掲載する。いくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARのポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインは特異的に結合することができ、例えばタンパク質相互作用ドメインのうちの1つは、多成分CALおよび/または多成分CARのもう1つのタンパク質相互作用ドメインに特異的に結合することができる。いくつかの態様において、特異的結合は、2つの別個のタンパク質相互作用ドメインが存在する場合に起こりうる。いくつかの態様において、特異的結合は、3つ以上の別個のタンパク質相互作用ドメインが存在する場合に起こりうる。例示的なタンパク質相互作用ドメインは当技術分野において公知であり、本明細書に記載の局面の諸態様において使用することができる。
【0088】
本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、タンパク質相互作用ドメインはロイシンジッパードメインである。ロイシンジッパードメインは、αヘリックス全体に均等な間隔を置いて配置されたロイシン残基を特徴とする、転写因子によく見出されるタンパク質-タンパク質相互作用ドメインの一タイプである。ロイシンジッパーはヘテロダイマーまたはホモダイマーを形成しうる。いくつかのロイシンジッパードメインおよびそれらが互いに結合する能力は当技術分野において公知である。これらは、例えばReinke et al. JACS 2010 132:6025-31およびThompson et al. ACS Synth Biol 2012 1:118-129において、さらに議論されており、これらの文献のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。いくつかの態様では、1つのロイシンジッパードメインがBZip(RR)であり、もう1つのロイシンジッパードメインがAZip(EE)である。いくつかの態様において、BZip(RR)ロイシンジッパードメインの配列は
である。
いくつかの態様において、AZip(EE)ロイシンジッパードメインの配列は
である。
さらなる例示的ロイシンジッパードメインはReinke et al. JACS 2010 132:6025-31に記載されており、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。例えば、適切なロイシンジッパードメインは、SYNZIP1~SYNZIP48、ならびにBATF、FOS、ATF4、ATF3、BACH1、JUND、NFE2L3およびHEPTADを含むことができる。これらのドメインのさまざまな組合せの結合アフィニティは、例えばReinkeらの文献の図1に記載されている。いくつかの態様において、ロイシンジッパードメインの適切なペアは、1000nM以下の解離定数(Kd)を有する。いくつかの態様において、ロイシンジッパードメインの適切なペアは、100nM以下の解離定数(Kd)を有する。いくつかの態様において、ロイシンジッパードメインの適切なペアは、10nM以下の解離定数(Kd)を有する。いくつかの態様において、ロイシンジッパードメインの適切なペアは、1nM以下の解離定数(Kd)を有する。
【0089】
タンパク質相互作用ドメインのさらなる例示的ペアとしては、a)PSD95-Dlg1-zo-1(PDZ)ドメイン、b)ストレプトアビジンドメインとストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)ドメイン、およびc)PYLドメインとABIドメインを挙げることができる。
【0090】
本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、タンパク質相互作用ドメインは、化学的に誘導されるタンパク質相互作用ドメイン、例えば低分子または低分子薬などの第3分子の存在下でのみ、特異的に結合するドメインであることができる。例示的な、化学的に誘導されるタンパク質相互作用ドメインとしては、mTORのFKBP結合ドメイン(FRB)とFK506結合タンパク質(FKBP)(それらの結合は、タクロリムス、エベロリムス、またはラパログによって活性化する)、シクロフィリン-Fas融合タンパク質(CyP-Fas)とFK506結合タンパク質(FKBP)(それらの結合はFKCsAによって活性化する)、カルシニューリンA(CNA)とFK506結合タンパク質(FKBP)(それらの結合はFK506によって活性化する)、ジベレリン非感受性(GIA)とジベレリン非感受性dwarf1(GID1)(それらの結合はジベレリンによって活性化する)、SnapタグとHaloタグ(それらの結合はHaXSによって活性化する)、およびT14-3-3-cΔCとPMA2のC末端ペプチド(CT52)(それらの結合はフシコクシンによって活性化する)を挙げることができる。化学的に誘導されるタンパク質相互作用ドメインのさらなる説明は、当技術分野において、例えばMiyamoto et al. Nat Chem Biol. 2012 Mar 25;8(5):465-470およびBelshaw et al. PNAS 1996 93:4604-4607に見いだすことができ、これらの文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0091】
本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、タンパク質相互作用ドメインは、少なくとも1つのヌクレオチドタグと少なくとも1つのジンクフィンガードメインとを含むことができる。ジンクフィンガードメインは、それらの三次構造を安定化するための亜鉛イオンの配位を特徴とする。ジンクフィンガーに現われる具体的フォールドはさまざまであることができる。いくつかの態様において、ジンクフィンガードメインはヌクレオチド結合性ジンクフィンガードメインであることができる。いくつかの態様において、ジンクフィンガードメインはDNA結合性ジンクフィンガードメインであることができる。いくつかの態様において、認識ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインはヌクレオチドタグであり、シグナル伝達ポリペプチドの細胞外タンパク質相互作用ドメインはジンクフィンガードメインである。いくつかの態様において、ヌクレオチドタグはDNAタグであることができる。いくつかの態様において、ヌクレオチドタグは、使用されているジンクフィンガードメインの認識配列全体を含むdsDNAタグであることができる。例示的なジンクフィンガードメインとそれぞれのコグネイトヌクレオチドタグは、当技術分野において、例えばMali et al. Nature Methods 2013 10:403-406に記載されており、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。いくつかの態様において、ジンクフィンガードメインは、Mali et al. Nature Methods 2013 10:403-406に記載のsZF15であることができる。
【0092】
一態様において、タンパク質相互作用ドメインはBZip(RR)および/またはAZip(EE)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてBZip(RR)およびAZip(EE)である。
【0093】
本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、タンパク質相互作用ドメインは、実質的に相補的な、例えば完全に相補的なまたは特異的にハイブリダイズするには十分に相補的な、ヌクレオチドタグを含むことができる。必要な相補性の程度は、タグの全長と相補部分のG/C含量とに依存してさまざまでありうる。当業者は、所与のサイズおよび/またはG/C含量のタグにとって必要な、妥当なアフィニティを、すぐに決定することができる。いくつかの態様において、ヌクレオチドタグはDNAタグであることができる。
【0094】
いくつかの態様において、ヌクレオチドタグはDNAタグであることができる。いくつかの態様において、ヌクレオチドタグはdsDNAタグであることができる。
【0095】
一態様において、タンパク質相互作用ドメインはジベレリン非感受性(GIA)および/またはジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてジベレリン非感受性(GIA)およびジベレリン非感受性dwarf1(GID1)である。
【0096】
一態様において、タンパク質相互作用ドメインはSnapタグおよび/またはHaloタグであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてSnapタグおよびHaloタグである。
【0097】
一態様において、タンパク質相互作用ドメインはT14-3-3-cΔCおよび/またはPMA2のC末端ペプチド(CT52)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてT14-3-3-cΔCおよびPMA2のC末端ペプチド(CT52)である。
【0098】
一態様において、タンパク質相互作用ドメインはPYLおよび/またはABIであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてPYLおよびABIである。
【0099】
一態様において、生体分子相互作用ドメインはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)および/またはFITC結合タンパク質であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてFITCおよびFITC結合タンパク質である。
【0100】
一態様において、生体分子相互作用ドメインは(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)および/またはR-PE/PE結合タンパク質であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体として(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)および/またはR-PE/PE結合タンパク質である。
【0101】
いくつかの態様において、TCR認識ドメインと生体分子相互作用ドメインとを含む分子(すなわちCAL)上の生体分子ドメインは、NK細胞、樹状細胞またはT細胞上のネイティブ細胞表面分子に特異的に結合する。そのような態様では、対象を、改変細胞を投与することなく、本明細書に記載するように治療することができる。いくつかの態様において、TCR認識ドメインと生体分子相互作用ドメインとを含む分子(すなわちCAL)上の生体分子ドメインは、NK細胞上のネイティブ細胞表面分子に特異的に結合する。いくつかの態様において、TCR認識ドメインと生体分子相互作用ドメインとを含む分子(すなわちCAL)上の生体分子ドメインは、樹状細胞上のネイティブ細胞表面分子に特異的に結合する。そのような態様のための例示的なネイティブ細胞表面分子としてCD3が挙げられるが、それに限定されるわけではない。他の適切な細胞表面分子はCD細胞表面タンパク質である。CDは当技術分野において公知であり、当業者であれば所望の細胞タイプが発現するものをすぐに選択することができる。例えば、hcdm.orgのHCDMデータベース、ならびにワールドワイドウェブのchemeurope.com/en/encyclopedia/List_of_human_clusters_of_differentiation.html、およびdocs.abcam.com/pdf/immunology/Guide-to-human-CD-antigens.pdfで入手することができるリストを参照されたい。したがって、そのような態様のための例示的生体分子相互作用ドメインとしては、抗CD3抗体試薬またはFabドメインが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。当業者は、関連細胞タイプの細胞表面に見出されるまたはもっぱら見出される他の細胞表面分子、ならびにそのような細胞表面分子に結合(例えば特異的に結合)することができる複数の試薬を知っている。
【0102】
第3のポリペプチドがなくても特異的に結合することができる単一の認識ポリペプチドおよび単一のシグナル伝達ポリペプチドによる局面において、本明細書に記載の多成分CALまたは多成分CARは標的リガンドの存在下で活性化し、それによって標的リガンドの近くでT細胞活性を誘導するだろう。本明細書には、論理計算が可能な多成分CALまたは多成分CAR、例えばAND、ORまたはNOT論理ゲートとして役立つ多成分CALまたは多成分CARが、さらに記載される。
【0103】
いくつかの局面において、本明細書には、ANDゲート論理を可能にする多成分CALおよび/または多成分CARの成分を含む組成物が記載される。これらの局面では、多成分CALおよび/または多成分CARの活性化が、2つの標的リガンドの存在下でのみ起こり、単一の標的リガンドの認識では、活性化には十分でない。そのような多成分CALまたは多成分CARは、特異性の増加を可能にし、オフターゲット効果を低減することができる。標的細胞または標的組織の良いマーカーである単一リガンドはいずれも、対象における他の場所にも存在する可能性があり、それはオフターゲット効果をもたらす。しかし、2つの別個のマーカーリガンドの認識が必要になれば、オフターゲット活性の可能性は低減する。
【0104】
一態様において、ヌクレオチドタグはDNAタグまたはdsDNAタグである。
【0105】
本明細書にはAND論理ゲート多成分CALおよびAND論理ゲート多成分CARのさらなる態様も記載する。
【0106】
本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、組成物は、NOT論理ゲートである多成分CALおよび/または多成分CARの成分を含む。例えば、第2認識ポリペプチドによる第2標的リガンドの認識は、シグナル伝達ポリペプチドと第1認識ポリペプチドとの相互作用(例えば特異的結合)を防止することができる。そのような態様は、不適当なおよび/またはオフターゲットの組織におけるT細胞活性の抑制を可能にすることができる。例えば、第2標的リガンドは、T細胞活性に対する感受性がとりわけ高く、公知のオフターゲット活性領域であり、かつ/または所望の標的組織と共通するマーカーを有する組織のマーカーであることができる。いくつかの態様において、NOTゲート多成分CALおよび/またはNOTゲート多成分CARでは、第2標的リガンドが、標的組織および/または標的細胞中、例えば疾患T細胞中または疾患T細胞上に見出されるリガンドではない。いくつかの態様において、NOT論理ゲート多成分CALおよび/またはNOT論理ゲート多成分CARの第2標的リガンドは、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出され、疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されない。そのようなヌクレオチドペアのペアについては、さまざまな二次元および三次元構成が、当技術分野では公知である。
【0107】
いくつかの態様において、第2認識ポリペプチドによって認識される標的リガンドは、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出され、疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されない。いくつかの態様において、第2認識ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインと第1認識ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインは、シグナル伝達ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインと第1認識ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインよりも強いアフィニティを有する。いくつかの態様において、第2認識ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインとシグナル伝達ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインは、シグナル伝達ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインと第1認識ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインよりも強いアフィニティを有する。相対的結合アフィニティは、例えば当技術分野において公知の結合アフィニティアッセイにより、実験的に決定することができ、本明細書に記載のタンパク質相互作用ドメインのいくつかの組合せについては、相対的結合アフィニティが公知である。例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられるReinke et al. JACS 2010 132:6025-31を参照されたい。いくつかの態様において、認識ポリペプチドタンパク質相互作用ドメインの結合アフィニティは、第1認識ポリペプチドタンパク質相互作用ドメインとシグナル伝達ポリペプチド相互作用ドメインの結合アフィニティよりも少なくとも2倍は強いことができる。いくつかの態様において、認識ポリペプチドタンパク質相互作用ドメインの結合アフィニティは、第1認識ポリペプチドタンパク質相互作用ドメインとシグナル伝達ポリペプチド相互作用ドメインの結合アフィニティよりも、少なくとも5倍は強いことができる。いくつかの態様において、認識ポリペプチドタンパク質相互作用ドメインの結合アフィニティは、第1認識ポリペプチドタンパク質相互作用ドメインとシグナル伝達ポリペプチド相互作用ドメインの結合アフィニティよりも、少なくとも10倍は強いことができる。
【0108】
本明細書にいう「標的リガンド」は、リガンド結合ドメインによって結合されうる細胞中または細胞上の分子を指す。そのような分子の非限定的な例として、ポリペプチド、脂質、糖類などを挙げることができる。いくつかの態様において、標的リガンドは細胞外分子であることができる。いくつかの態様において、標的リガンドは細胞表面分子であることができる。
【0109】
いくつかの態様、例えば単一の認識ポリペプチドを持つ多成分CALおよび/もしくは多成分CARまたはANDゲート多成分CALおよび/もしくはANDゲート多成分CARに関係する態様において、標的リガンド(例えば第1および/または第2標的リガンド)は、標的組織において発現するリガンドであることができる。いくつかの態様において、標的リガンドは、標的組織および/または標的細胞において構成的に発現しうる。いくつかの態様において、標的リガンドは、もっぱら標的組織および/または標的細胞において発現しうる。いくつかの態様において、標的リガンドは、標的組織および/または標的細胞では、他の組織および/または細胞よりも高レベルに発現しうる。単一の認識ポリペプチドを持つ多成分CALおよび/もしくは多成分CARまたはANDゲート多成分CALおよび/もしくはANDゲート多成分CARに関する態様における標的リガンドの認識は、T細胞活性化(例えば標的リガンドを含む細胞の細胞死滅活性)をもたらしうるので、標的リガンドは、例えば疾患細胞を標的にすることにより、所望する形および/または治療に役立つ形でT細胞活性を標的にするように、選択することができる。いくつかの態様において、標的リガンドは、疾患細胞および/または標的細胞中/上に見出されるリガンドである。いくつかの態様において、シグナル伝達ポリペプチドと特異的に結合することができる認識ポリペプチドによって、またはANDゲート多成分CALおよび/またはANDゲート多成分CARの一部分である認識ポリペプチドによって、特異的に結合される標的リガンドは、疾患細胞および/または標的細胞中/上に見出されるリガンドである。いくつかの態様において、シグナル伝達ポリペプチドと特異的に結合することができる認識ポリペプチドによって、またはANDゲート多成分CALおよび/またはANDゲート多成分CARの一部分である認識ポリペプチドによって、特異的に結合される標的リガンドは、疾患細胞上および/または標的細胞上に見出されかつ健常細胞上および/または非標的細胞上には見出されないリガンドである。いくつかの態様において、疾患細胞は自己反応性または同種異系反応性T細胞である。いくつかの態様において、シグナル伝達ポリペプチドと特異的に結合することができる認識ポリペプチドによって、またはANDゲート多成分CALおよび/またはANDゲート多成分CARの一部分である認識ポリペプチドによって、特異的に結合される標的リガンドは、疾患細胞の表面上に見出される。いくつかの態様において、シグナル伝達ポリペプチドと特異的に結合することができる認識ポリペプチド、またはANDゲート多成分CALおよび/もしくはANDゲート多成分CARの一部分である認識ポリペプチドは、例えば正常細胞への結合と比較して、疾患細胞の表面上の標的リガンドに特異的に結合する。
【0110】
いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物および/または細胞は、第1の多成分CALおよび/または多成分CARについて本明細書に記載する局面および態様のいずれかに従う第2の多成分CALおよび/または多成分CARを、さらに含むことができる。非限定的な例として、第2のCALおよび/またはCARは、第1の多成分CALおよび/または多成分CARが特異的に結合する(そして例えばそれによって活性化するかまたは阻害される)ものとは異なる標的リガンドに特異的に結合する(そして例えばそれによって活性化または阻害される)ようにデザインすることができる。これにより、本明細書に記載の方法について、特異性を増加させ、オフターゲット効果を低減し、かつ/または有効投薬量を低減することができる。いくつかの態様において、第2の多成分CALおよび/または多成分CARの認識ドメインは、第1の多成分CALおよび/または多成分CARの認識ドメインによって結合されるものとは異なる標的リガンドに特異的に結合する。いくつかの態様において、第2の多成分CALおよび/または多成分CARの抗体試薬は、第1の多成分CALおよび/または多成分CARの抗体試薬によって結合されるものとは異なる標的リガンドに特異的に結合する。
【0111】
いくつかの態様において、第2の多成分CALおよび/または多成分CARは、阻害性の細胞内シグナル伝達ドメイン、例えばT細胞受容体(TCR)シグナル伝達ドメイン、例えば改変細胞(例えば改変T細胞)の活性を阻害するものを含むことができる。それゆえに、そのような態様では、第1の多成分CALおよび/または多成分CARがT細胞活性の活性化を可能にするのに対して、第2の多成分は、第1の多成分CALおよび/または多成分CARとは反対に作動して、例えばT細胞活性化の阻害を可能にするようにデザインされうる。阻害性細胞内TCRシグナル伝達ドメインは当技術分野において公知であり、非限定的な例として、PD1、CTLA4、BTLA、KIR、LAG-3、TIM-3、A2aR、LAIR-1、およびTGITを挙げることができる。一態様において、活性化TCRの非活性ミメティックを使用することができる。
【0112】
いくつかの態様において、本明細書には、細胞、CALおよびCAR(例えばCARは阻害ドメインまたは共刺激/活性化ドメインのどちらかを含む)を含む組成物が記載される。
【0113】
一態様において、TCR認識ドメインは細胞にとって同種異系のMHCを含む。一態様において、TCR認識ドメインは細胞にとって同種異系のペプチドを含む。一態様において、TCR認識ドメインは標的細胞にとって同種異系のMHCを含む。一態様において、TCR認識ドメインは、標的細胞にとって同種異系のペプチドを含む。一態様において、TCR認識ドメインは標的細胞に関して非自己のペプチドを含む。
【0114】
いくつかの態様において、阻害性細胞内シグナル伝達ドメインを含む第2の多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドと特異的に結合することができる認識ポリペプチドによって特異的に結合される標的リガンドは、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出されるリガンドである。いくつかの態様において、阻害性細胞内シグナル伝達ドメインを含む第2の多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドと特異的に結合することができる認識ポリペプチドによって特異的に結合される標的リガンドは、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出されかつ疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されないリガンドである。いくつかの態様において、阻害性細胞内シグナル伝達ドメインを含む第2の多成分CALおよび/または多成分CARは、本明細書に記載の態様のいずれかによるOR論理ゲートであることができ、第2標的リガンドは疾患細胞中/上に見出されるまたは疾患細胞に特異的なリガンドであることができる。
【0115】
任意の局面のいくつかの態様において、リガンド結合ドメインは、抗体試薬を含むか、または抗体試薬から本質的になることができる。いくつかの態様において、抗体試薬は、免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、二重特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、および/または二重特異性抗体であることができる。
【0116】
いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインはT細胞活性化ドメインであることができる。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIMおよびZAP70からなる群より選択されるタンパク質からのシグナル伝達ドメインである。いくつかの態様において、シグナル伝達ドメインは、上記のいずれかのパラログまたはオルソログであることができる。
【0117】
多成分CAR/CAL細胞
本明細書では、本明細書において提示される組成物または多成分CARおよび/または多成分CALを発現する細胞が提示される。細胞は、任意の細胞、例えば任意の哺乳動物細胞、例えばヒト細胞であることができる。一態様において、細胞は樹状細胞、制御性T細胞またはエフェクターT細胞である。一態様において、細胞は樹状細胞(CAL DC)、T細胞(例えばエフェクター、制御性など)(CAL-T)、制御性T細胞、エフェクターT細胞、ナチュラルキラー細胞(CAL NK)、または他の任意の骨髄系細胞である。
【0118】
一局面において、本明細書には、1つもしくは複数の多成分CAR/CAL、または本明細書に記載のものと同じものを含む組成物、例えば少なくとも1つのシグナル伝達ポリペプチドおよび少なくとも1つの認識ポリペプチドを含む組成物を、発現しおよび/または含む改変細胞が記載される。いくつかの態様において、細胞はナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、制御性T細胞、エフェクターT細胞である。多成分CAR/CALのシグナル伝達ポリペプチドと少なくとも1つの認識ポリペプチドとをどちらも発現しおよび/または含むそのような細胞を、本明細書では、「完全多成分CAR/CAL」細胞という。いくつかの態様において、完全多成分CAR/CAL細胞は、多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチド(例えばCAR)と少なくとも1つの認識ポリペプチド(例えば本明細書の別の箇所に記載するCALまたはアダプター)とをどちらも発現する。いくつかの態様において、完全多成分CALおよび/またはCAR細胞は、多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドと少なくとも1つの認識ポリペプチドとの両方をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、シグナル伝達ポリペプチドは細胞の膜上に存在する。いくつかの態様において、1つまたは複数の認識ポリペプチドは細胞外間隙に存在する。例えば認識ポリペプチドは細胞によって発現および分泌されるか、または細胞を別の供給源から提供される認識ポリペプチド(例えば合成的に生産されるか、別の細胞によって生産されて、場合によっては接触工程前に精製または加工されるもの)と接触させることができる。
【0119】
本明細書に記載の局面、例えば完全多成分CALおよび/もしくはCAR細胞または部分多成分CALおよび/もしくはCAR細胞のどちらかに関係するもののいずれにおいても、認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、誘導可能および/または抑制可能なプロモーターの制御を受けることができる。そのようなプロモーターは、ポリペプチドの発現を所望に応じて増加または減少させることを可能にし、構成的プロモーターとは対照的である。「構成的に活性なプロモーター」という用語は、所与の細胞において常時発現している遺伝子のプロモーターを指す。哺乳動物細胞において使用するための例示的プロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)、伸長因子1a(EF1a)などがある。「誘導性プロモーター」という用語は、所与のシグナル、例えばある作用物質の添加または低減に応答して発現しうる遺伝子のプロモーターを指す。誘導性プロモーターの非限定的な例は、特異的組織タイプにおいて調節されるプロモーターである。ステロイドホルモンによって調節されるプロモーター、ポリペプチドホルモンによって(例えばシグナル伝達経路を利用して)調節されるプロモーター、または異種ポリペプチドによって調節されるプロモーター(例えばテトラサイクリン誘導系「Tet-On」および「Tet-Off」、例えばClontech Inc.(カリフォルニア州)、Gossen and Bujard, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547, 1992、およびPaillard, Human Gene Therapy 9:983, 1989を参照されたい。これらの文献のそれぞれは、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる)である。いくつかの態様において、ポリペプチドの発現は、例えば一定の生理学的調節因子、例えば循環グルコースレベルまたはホルモンに対して感受性を示す誘導性調節配列を使用することにより、精密に調節することができる(Docherty et al., 1994, FASEB J. 8:20-24)。細胞または哺乳動物における発現の制御に適したそのような誘導性発現系としては、例えばエクジソンによる調節、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体化の化学誘導物質、およびイソプロピル-β-D1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による調節が挙げられる。当業者は、ポリペプチドの使用目的に基づいて適当な調節/プロモーター配列を選ぶことができるだろう。
【0120】
いくつかの態様において、認識ポリペプチドまたはシグナル伝達ポリペプチドのうちの1つまたは複数の発現は、構成的であることができる。いくつかの態様において、認識ポリペプチドまたはシグナル伝達ポリペプチドのうちの1つまたは複数の発現は、一過性であることができる。一過性発現は、例えば一過性および/または誘導性発現プロモーターの使用によって、または一過性ベクター、例えばゲノムに組み込まれおよび/または標的細胞中で存続することがないものを使用することによって、達成することができる。非限定的な例として、真核細胞における核酸の一過性発現には、ウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタイン・バー・ウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)などといったウイルスの誘導体を使用することができる。他の適切な発現系および一般的組換え手法については、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるMolecular Cloning A Laboratory Manual(第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis編)(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989)のChapter 16およびChapter 17を参照されたい。いくつかの態様では、多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドを構成的に発現させ、認識ポリペプチドを一過性に発現させることができる。いくつかの態様では、多成分CALおよび/または多成分CARの認識ポリペプチドを構成的に発現させ、シグナル伝達ポリペプチドを一過性に発現させることができる。いくつかの態様では、多成分CALの認識ポリペプチドを構成的に発現させ、シグナル伝達ポリペプチドを外因的に提供することができる。いくつかの態様では、多成分CALの認識ポリペプチドを一過性に発現させ、シグナル伝達ポリペプチドを外因的に提供することができる。いくつかの態様では、多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドを構成的に発現させ、認識ポリペプチドを外因的に提供することができる。いくつかの態様では、多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドを一過性に発現させ、認識ポリペプチドを外因的に提供することができる。
【0121】
本明細書に記載のCARおよびCALは、例えば組換え発現またはペプチド合成など、当技術分野において公知の任意の方法に従って生産することができる。例示的な方法として、NIH Tetramer Core FacilityのMHC発現プロトコール(ワールドワイドウェブのtetramer.yerkes.emory.edu/support/protocols#1で入手可能)、ProImmuneのペンタマープロトコール(ワールドワイドウェブのproimmune.com/protocols-2/で入手可能)、Immudexのデキストラマープロトコール(ワールドワイドウェブのimmudex.com/resources/protocols/で入手可能)、ならびにCho et al., 2018 Cell 173:1426-1438の「Method Details」セクションの「Primary Human T cells Isolation and Culture」および「Lentiviral Transduction of Human T cells」サブセクションに掲載されているCAR T細胞生産プロトコールを挙げることができ、これらの文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0122】
一局面において、本明細書には、標的細胞を死滅させる方法であって、細胞を本明細書に記載の態様のいずれかによる完全多成分CAR細胞、CARおよび/またはCALと接触させる工程を含む、方法が記載される。いくつかの態様において、標的細胞は疾患細胞、例えば自己反応性または同種異系反応性T細胞であることができる。一局面において、本明細書には、疾患、例えば自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、移植片拒絶、またはGvHDを治療または予防する方法であって、本明細書に記載の態様のいずれかによる完全多成分CAR細胞、CARおよび/またはCALを投与する工程を含む、方法が記載される。一局面において、本明細書には、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、移植片拒絶、またはGvHDを治療または予防する方法であって、本明細書に記載の態様のいずれかによる完全多成分CAR細胞、CARおよび/またはCALを投与する工程を含む、方法が記載される。
【0123】
本明細書において提供される別の局面は、悪性T細胞状態の予防および/または治療を必要とする対象における悪性T細胞状態を予防および/または治療する方法であって、本明細書に記載の組成物および/または細胞のいずれかを対象に投与する工程を含む、方法である。一局面において、本明細書には、対象における悪性T細胞状態を治療または予防する方法であって、本明細書に記載の態様のいずれかによる完全多成分CAR/CAL、CARおよび/またはCALを投与する工程を含む、方法が記載される。一局面において、本明細書には、対象における悪性T細胞状態を治療または予防する方法であって、本明細書に記載の態様のいずれかによる完全多成分CAR細胞、CARおよび/またはCALを投与する工程を含む、方法が記載される。
【0124】
いくつかの態様において、完全多成分CALおよび/またはCAR細胞は対象にとって自家または同種異系であることができる。いくつかの態様において、完全多成分CALおよび/またはCAR細胞は、対象または第三者から得られた細胞に由来しおよび/またはその子孫であることができ、少なくとも1つの多成分CALおよび/または多成分CARを含むようにエクスビボで修飾(例えば多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドと少なくとも1つの認識ポリペプチドとの両方をコードする核酸配列を含むように遺伝子改変)されている。いくつかの態様において、本方法は、対象から細胞(例えば樹状細胞、制御性T細胞またはエフェクターT細胞)を取得し、その細胞を、多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドと少なくとも1つの認識ポリペプチドとの両方をコードする核酸配列を含むように改変し、次にその細胞を対象に投与する工程を、さらに含むことができる。
【0125】
一態様において、改変細胞は、例えば細胞表面で測定されるネイティブMHC I/IIの発現を欠くか、その発現が低減するように、さらに修飾される。ネイティブMHC I/IIを低減または排除するために細胞を改変する方法は、当技術分野において公知であり、これには例えば、RNA干渉(短鎖ヘアピンRNA、低分子干渉RNA、二本鎖RNAなど)の発現、阻害性オリゴヌクレオチドの発現、ヌクレアーゼベースの阻害(例えばCRISPR、TALEN、メガヌクレアーゼなど)、およびMHC I/IIを小胞体に拘束する能力を有する結合タンパク質を含有するKDELモチーフ(SEQ ID NO:2749)の発現が含まれる。当業者は、ネイティブMHC I/IIのノックダウンが達成されたかどうかを、MHC I/IIのmRNAレベルまたはタンパク質レベルを、例えばそれぞれPCRベースのアッセイまたはウェスタンブロッティングによって評価することによって、評価することができる。
【0126】
一態様において、細胞は、ネイティブMHC I/IIをノックアウトするために、さらに改変される。ネイティブMHC I/IIをノックアウトするために細胞を改変する方法は当術分野において公知であり、これには例えば、RNA干渉(短鎖ヘアピンRNA、低分子干渉RNA、二本鎖RNAなど)の発現、阻害性オリゴヌクレオチドの発現、ヌクレアーゼベースの阻害(例えばCRISPR、TALEN、メガヌクレアーゼなど)が含まれる。当業者は、ネイティブMHC I/IIのノックアウトが達成されたかどうかを、MHC I/IIのmRNAレベルまたはタンパク質レベルを、例えばそれぞれPCRベースのアッセイまたはウェスタンブロッティングによって評価することによって、評価することができる。
【0127】
一局面において、本明細書には、本明細書に記載の態様のいずれかによる組成物のうちの1つまたは複数を発現しおよび/または含む改変細胞が記載される。一局面において、本明細書には、本明細書に記載の態様のいずれかによる1つまたは複数の多成分CALおよび/または多成分CARシグナル伝達ポリペプチドを発現しおよび/または含む改変細胞が記載される。いくつかの態様において、細胞は樹状細胞、制御性T細胞またはエフェクターT細胞である。いくつかの態様において、細胞はT細胞である。多成分CALおよび/または多成分CARシグナル伝達ポリペプチドを発現しおよび/または含むそのような細胞を、本明細書では、「部分多成分CAL」細胞または「部分多成分CAR」細胞という。いくつかの態様において、部分多成分CALおよび/またはCAR細胞は、多成分CALおよび/または多成分CAR認識ポリペプチドをコードする核酸配列を発現しない(例えば含まない)。いくつかの態様において、部分多成分CALおよび/またはCAR細胞は、少なくとも1つの多成分CALおよび/または多成分CARシグナル伝達ポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARシグナル伝達ポリペプチドは、細胞の膜上に存在し、例えば膜貫通タンパク質として検出可能なレベルで発現する。いくつかの態様において、シグナル伝達ポリペプチドは、第2認識ポリペプチドのタンパク質相互作用ドメインと特異的に結合する第2のタンパク質相互作用ドメインをさらに含み、例えばシグナル伝達ポリペプチドは、本明細書の別の箇所に記載するANDゲート多成分CALおよび/またはANDゲート多成分CARの一部である。いくつかの態様において、細胞は、第2の多成分CALおよび/または多成分CARシグナル伝達ポリペプチド、例えば本明細書に記載の態様のいずれかによる第2の多成分CALおよび/または多成分CARの一部であるシグナル伝達ポリペプチドを、さらに含むことができる。
【0128】
一局面において、本明細書には、標的細胞を死滅させる方法であって、標的細胞を本明細書に記載の態様のいずれかによる部分多成分CALおよび/またはCAR細胞と接触させ、標的細胞を多成分CALおよび/または多成分CARの少なくとも1つの認識ポリペプチドと接触させる工程を含む、方法が記載される。いくつかの態様において、標的細胞は疾患細胞、例えば自己反応性または同種異系反応性T細胞であることができる。いくつかの態様において、標的細胞は疾患細胞、例えばがん細胞(例えばT細胞由来またはT細胞前駆細胞由来新生物、以下、「T細胞新生物」という)であることができる。いくつかの態様において、本方法は、対象から細胞(例えばNK細胞、樹状細胞、制御性T細胞またはエフェクターT細胞)を取得し、その細胞を、多成分CALおよび/または多成分CARのシグナル伝達ポリペプチドをコードする核酸配列を含むように改変し、次にその細胞を対象に投与する工程を、さらに含む。
【0129】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARのタンパク質相互作用ドメインのペアは、化学的に誘導される結合ドメインを含むことができ、本方法は、ドメインの結合を誘導する化合物を投与する工程を、さらに含むことができる。いくつかの態様において、1つのタンパク質相互作用ドメインがmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)であり、第2のタンパク質相互作用ドメインがFK506結合タンパク質(FKBP)である場合、本方法は、タクロリムス、ラパログまたはエベロリムスを投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、1つのタンパク質相互作用ドメインがシクロフィリン-Fas融合タンパク質(CyP-Fas)であり、第2のタンパク質相互作用ドメインがFK506結合タンパク質(FKBP)である場合、本方法はFKCsAを投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、1つのタンパク質相互作用ドメインがカルシニューリンA(CNA)であり、第2のタンパク質相互作用ドメインがFK506結合タンパク質(FKBP)である場合、本方法はFK506を投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、1つのタンパク質相互作用ドメインがジベレリン非感受性(GIA)であり、第2のタンパク質相互作用ドメインがジベレリン非感受性dwarf1(GID1)である場合、本方法はジベレリンを投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、1つのタンパク質相互作用ドメインがSnapタグであり、第2のタンパク質相互作用ドメインがHaloタグである場合、本方法はHaXSを投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、1つのタンパク質相互作用ドメインがT14-3-3-cΔCであり、もう1つのタンパク質相互作用ドメインがPMA2のC末端ペプチド(CT52)である場合、本方法はフクコクシンを投与する工程をさらに含む。
【0130】
本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは改変ポリペプチドであることができる。本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、トランスジェニックであることができる。本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、組換えポリペプチドであることができる。本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、細胞にとって異種であることができる。本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、T細胞にとって異種であることができる。本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、ヒトT細胞にとって異種であることができる。本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、細胞にとって外因性であることができる。本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、T細胞にとって外因性であることができる。本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの態様において、多成分CALおよび/または多成分CARの認識および/またはシグナル伝達ポリペプチドは、ヒトT細胞にとって外因性であることができる。
【0131】
本明細書では、本明細書に記載の個々の態様のそれぞれを、例えば単一の細胞において組み合わせることができると、明確に考えられている。非限定的な例として、単一の細胞は、第1の完全多成分CALおよび/または完全多成分CARと第2の部分多成分CALおよび/または部分多成分CARとを含むことができ、各多成分CALおよび/または多成分CARは本明細書に記載の態様のいずれかに従いうる。
【0132】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法はCAL-免疫細胞治療に関する。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、CAR-T治療などのCAR-免疫細胞治療に関する。標準CAR-T治療およびその関連治療は、対象を例えば自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症または免疫応答、移植片拒絶、またはGvHDについて治療するための、標的細胞タイプ(例えば疾患細胞、例えば自己反応性または同種異系反応性T細胞)に特異的に結合するCARを発現する免疫細胞(例えばT細胞)の養子細胞移入に関する。
【0133】
いくつかの態様において、治療の一部として投与される細胞は、対象にとって自家であることができる。いくつかの態様において、治療の一部として投与される細胞は、対象にとって自家ではない。いくつかの態様において、細胞は、本明細書に記載の多成分CALおよび/もしくは多成分CARまたはその一部分を発現するように、改変および/または遺伝子修飾される。CAR-T治療に関するさらなる議論は、例えばMaus et al. Blood 2014 123:2624-35、Reardon et al. Neuro-Oncology 2014 16:1441-1458、Hoyos et al. Haematologica 2012 97:1622、Byrd et al. J Clin Oncol 2014 32:3039-47、Maher et al. Cancer Res 2009 69:4559-4562、およびTamada et al. Clin Cancer Res 2012 18:6436-6445に見いだすことができ、これらの文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0134】
いくつかの態様において、本明細書に記載の技術は、治療有効量の本明細書に記載の組成物を含むシリンジまたはカテーテル、例えば臓器特異的カテーテル(例えば腎カテーテル、胆管カテーテル、心カテーテルなど)に関する。
【0135】
治療方法
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の1つまたは複数の組成物、CAL、CARまたは細胞による、細胞移植、組織移植、または臓器移植を受けた対象における移植片拒絶の治療または予防に関する。別の一態様において、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の1つまたは複数の組成物、CAL、CARまたは細胞による、細胞移植、組織移植、または臓器移植を受けた対象におけるGvHDの治療または予防に関する。
【0136】
本明細書にいう「GvHD」は、ドナー細胞がレシピエント自身の細胞を攻撃する活発なプロセスを特徴とする疾患を指す。GvHDは、移植後間もなく、例えば数週間または数ヶ月以内に発生する場合もあるし(急性GvHD)、移植からかなり経ってから、例えば少なくとも3~6ヶ月後に発生する場合もある(慢性GvHD)。急性GvHDの症状には、皮疹または水疱、腹痛または腹部不快感、下痢、黄疸および浮腫があるが、それらに限定されるわけではない。慢性GvHDの症状には、皮膚または爪の肌理の変化、脱毛または毛髪菲薄化、筋肉痛または筋力低下、かすみ目、口内炎、息切れ、しつこい咳、腹痛または腹部不快感、および下痢があるが、それらに限定されるわけではない。
【0137】
熟練した臨床家は、対象を、GvHDを有するかまたはそのリスクがあると同定することができる。GvHDを有する対象を同定するのに有用な診断検査は当技術分野において公知であり、対象が受けた移植のタイプに基づいてさまざまであるだろう。GvHDの診断は、例えば、当技術分野において公知のGvHDの徴候および症状に関する理学的検査、肝臓、胆嚢、腎臓および造血細胞の機能障害に関する血液検査、罹患臓器から得られる生検の組織学的解析、および罹患臓器の放射線イメージングによって下される。一態様において、本方法は、少なくとも第2の治療薬を投与する工程を、さらに含む。一態様において、本明細書に記載の組成物、CAR、CALまたは細胞は、アバタセプト(Orencia(登録商標))またはベラタセプト(Nulojix(登録商標))と組み合わせて投与される。Bristol-Meyers Squibbによって開発されたアバタセプトおよびベラタセプトは、CTLA-4の細胞外ドメインに融合された免疫グロブリンIgG1のFc領域で構成される融合タンパク質である。アバタセプトは現在、関節リウマチの治療薬として、FDAによって承認されている。アバタセプトとアミノ酸が2つ異なるだけのベラタセプトは、腎臓移植後の拒絶を予防することを意図した免疫抑制薬である。
【0138】
一態様において、移植は、血行再建複合同種組織移植(VCA)である。一態様において、移植片は、任意のヒトまたは非ヒトの細胞、組織、または臓器である。別の一態様において、移植は、任意のタイプの移植術、例えば任意の心臓移植、任意の肺移植、任意の肝臓移植、任意の膵臓移植、任意の角膜移植、任意の気管移植、任意の腎臓移植、任意の皮膚移植、任意の膵島細胞移植、任意の同種異系移植(例えば同種異系組織の移植)、任意の異種移植(例えば異種組織の移植)、または任意の自家移植(例えば組織の移植)である。熟練した開業医であれば、標準的手術プロトコールを使って、移植を行うこと、または移植を受けた対象を同定することができるだろう。
【0139】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の組成物、CAR、CALまたは細胞による、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、またはI~IV型過敏反応、または治療用の外来タンパク質/分子に対する免疫反応、またはT細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答の治療または予防に関する。医師は、最新の自己免疫疾患診断方法を使って、自己免疫疾患を有する対象を同定することができる。これらの状態を特徴づけ、診断の助けになる、自己免疫疾患の症状および/または合併症は、当技術分野において周知であり、疲労、筋肉痛、腫脹および発赤、微熱、手足のしびれ感もしくは刺痛、脱毛、ならびに/または皮疹などがあるが、それらに限定されるわけではない。自己疾患などの診断の助けになりうる検査として、血球数および抗核抗体検査(ANA)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。自己免疫疾患の家族歴、または自己免疫疾患のリスク因子(例えば性別、年齢、民族性、および環境作用因子、例えばプロカインアミド、ヒドララジン、水銀、金、または銀)を有することも、ある対象が自己免疫疾患を有する可能性が高いかどうかを決定する際の、または自己免疫疾患の診断を下す際の、助けになりうる。
【0140】
本明細書において使用される「自己免疫疾患」、「自己免疫状態」または「自己免疫疾患もしくは自己免疫障害」という用語は、本明細書においては、個体自身の組織から生じ個体自身の組織に対して向けられる疾患もしくは障害、またはそれと共分離するもの(co-segregate)もしくはその症状発現、またはそれに起因する状態をいう。
【0141】
自己免疫関連疾患および自己免疫関連障害は、体内に通常存在する物質(自己抗原)および組織、別名自己物質または自家物質に対する身体の過敏および/または異常な免疫応答から生じる。この調節不全を起こした炎症反応は、マクロファージ、顆粒球、リンパ球、および/またはTリンパ球による過大な応答を引き起こし、それが異常な組織損傷および細胞死につながる。続発する機能喪失は炎症性組織損傷に関連する。
【0142】
本明細書にいう自己抗原は、この病的免疫応答に関与しまたはこの病的免疫応答を誘発する内在性タンパク質またはそのフラグメントである。自己抗原は、哺乳動物内に通常見出される任意の物質またはその一部分であって、自己免疫疾患においては、免疫系による一次(または一次もしくは二次)攻撃対象になるものでありうる。この用語は、哺乳動物に投与された場合に、自己免疫疾患の特徴を有する状態を誘導する抗原物質も包含する。加えて、この用語は、自己抗原の免疫優性エピトープまたは免疫優性エピトープ領域から本質的になるペプチドサブクラスも包含する。誘導自己免疫状態における免疫優性エピトープまたは免疫優性領域は、疾患を誘導するのに自己抗原全体の代わりに使用されうる自己抗原のフラグメントである。自己免疫疾患に侵されたヒトにおいて、免疫優性エピトープまたは免疫優性領域は、自己免疫攻撃を受けている組織または臓器に特異的であって、自己免疫攻撃T細胞のかなりの部分(例えば必ずしも絶対多数ではないものの多数)によって認識される、抗原のフラグメントである。
【0143】
自己免疫疾患に関連することが公知である自己抗原として、ミエリンタンパク質と脱髄疾患、例えば多発性硬化症および実験的自己免疫性脊髄炎;コラーゲンと関節リウマチ;インスリン、プロインスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65);およびインスリン依存性糖尿病での膵島細胞抗原(ICA512;ICA12)が挙げられる。
【0144】
いくつかの自己免疫関連疾患および自己免疫関連炎症状態に共通する特徴は、炎症誘発性CD4+T細胞の関与である。これらのT細胞は炎症性Th1型サイトカインの放出をになっている。Th1型と特徴づけられるサイトカインとして、インターロイキン2(IL-2)、γ-インターフェロン、TNFαおよびIL-12が挙げられる。いくつかの態様において、Th1型と特徴づけられるサイトカインとして、インターロイキン2(IL-2)、インターフェロンγおよびTNFαが挙げられる。そのような炎症誘発性サイトカインは、免疫応答を刺激するように作用し、それが多くの場合、自家組織の破壊をもたらす。T細胞応答の抑制に関連するサイトカインはTh2型であり、これにはIL-10、IL-4およびTGF-βが含まれる。Th1型T細胞とTh2型T細胞は、免疫原に応答して同一の抗原受容体を使用しうることが見出されており、前者は刺激応答を生成し、後者は抑制応答を生成する。
【0145】
T細胞媒介性炎症またはT細胞媒介性免疫応答は、T細胞および/またはT細胞活性が炎症/免疫応答の一因となる、または炎症/免疫応答を引き起こす、炎症および/または免疫応答である。
【0146】
本明細書にいう「炎症」は、病原体、損傷した細胞または刺激物などの有害刺激に対する複雑な生物学的応答を指す。炎症は、有害な刺激を除去すると共に、組織の治癒プロセスを開始するための、生物による防御的試みである。したがって「炎症」という用語には、炎症誘発性サイトカイ、炎症メディエーターの生産、および/またはそうして生産されたサイトカインの作用に起因する関連下流細胞イベント、例えば発熱、体液貯留、腫脹、膿瘍形成および細胞死につながる任意の細胞プロセスが含まれる。炎症は、急性応答(すなわち炎症プロセスが活発な応答)および慢性応答(すなわち遅い進行と新しい結合組織の形成を特徴とする応答)をどちらも包含しうる。急性炎症および慢性炎症は関与する細胞タイプによって識別しうる。急性炎症には、多くの場合、多形核好中球が関与するのに対し、慢性炎症は通常、リンパ組織球性および/または肉芽腫性応答を特徴とする。炎症状態は、炎症組織(例えばリンパ球、好中球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球および樹状細胞などの白血球の浸潤)、またはこの疾患状態の異常な臨床的および組織学的特徴を惹起しもしくはその一因となる炎症プロセスを特徴とする、任意の疾患状態である。
【0147】
本明細書にいう「免疫応答」は、刺激(例えば疾患、抗原、または例えば自己免疫疾患の場合であれば健常細胞)に対する、免疫系の細胞、例えばB細胞、T細胞(CD4またはCD8)、制御性T細胞、抗原提示細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、NKT細胞、NK細胞、好塩基球、好酸球または好中球による、応答を指す。本明細書に記載の局面のいくつかの態様において、免疫応答はT細胞応答、例えばCD4+応答またはCD8+応答である。これらの細胞によるそのような応答としては、例えば細胞傷害性、増殖、サイトカインまたはケモカインの生産、輸送、または貪食を挙げることができ、それらは、応答を起こしている免疫細胞の性質に依存する。免疫応答の刺激とは免疫応答の誘導または増加を指す。免疫応答の抑制とは免疫応答の排除または減少を指す。
【0148】
「細胞媒介性免疫応答」は、T細胞および/または他の白血球によって媒介されるものである。「細胞媒介性免疫応答」は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のクラスIもしくはクラスII分子、CD1または他の非古典的MHC様分子と会合した抗原エピトープの提示によって誘発される。これは、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性リンパ球細胞(「CTL」)を活性化する。CTLは、古典的または非古典的MHCによってコードされていて細胞の表面に発現するタンパク質と会合して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊またはそのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導し、促進するのに役立つ。細胞性免疫の別の局面にはヘルパーT細胞による抗原特異的応答が関与する。ヘルパーT細胞は、その表面に古典的または非古典的MHC分子と会合したペプチドその他の抗原を提示している細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を集中させるのを助けるように作用する。「細胞媒介性免疫応答」は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞由来のものを含む、活性化T細胞および/または他の白血球によって生産されるサイトカイン、ケモカインその他同様の分子の生産も指す。細胞が媒介する免疫学的応答の刺激は、例えばリンパ増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害アッセイ、感作された対象中で抗原に対するTリンパ球をアッセイすること、または抗原による再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン生産の測定など、いくつかのアッセイによって決定されうる。そのようなアッセイは当技術分野において周知である。例えばErickson et al.(1993)J. Immunol.1 51:4189-4199およびDoe et al.(1994)Eur. J.Immunol. 24:2369-2376を参照されたい。
【0149】
いくつかの態様において、T細胞媒介性免疫応答は、対象に投与された薬物に対する応答である。本明細書では、投与された生物製剤、細胞治療、および/または遺伝子治療に対する免疫応答を防止するための抗薬物特異的T細胞の枯渇に、本発明の技術を利用することができると考えている。例えば、本明細書に記載の方法および組成物は、投与されたアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療に対する抗AAVおよび抗導入遺伝子免疫応答を予防または治療するため、CRISPR/Cas9、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)などのゲノム編集剤に対する免疫応答を予防または治療するため、ならびに組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(ポンペ病)、α-L-イズロニダーゼ(ムコ多糖症I)およびα-ガラクトシダーゼ(ファブリー病)などの酵素補充治療に対する免疫応答を予防または治療するために、使用することができる。
【0150】
記載される方法のいずれか一つの一態様において、自己免疫性障害は、甲状腺炎、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、アジソン病、およびレイノー現象、グッドパスチャー病、関節炎(関節リウマチ、例えば急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風または痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、急性免疫性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、II型コラーゲン誘導関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎(例えば治療後ライム病症候群)、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、および若年発症型関節リウマチ、慢性進行性関節炎、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、反応性関節炎、および強直性脊椎炎)、回帰性関節炎、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪乾癬、アトピー性疾患を含むアトピー、例えば枯草熱およびヨブ症候群、皮膚炎、例えば接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異性皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎、x連鎖性高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、じんま疹、例えば慢性アレルギー性じんま疹および慢性特発性じんま疹、例えば慢性自己免疫性じんま疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば視神経脊髄型MS、一次性進行型MS(PPMS)、および再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、散在性硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、潰瘍大腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、ポリープ性大腸炎、壊死性腸炎、および全層性大腸炎、および自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例えば成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、ぶどう膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、リウマチ性脊椎炎、リウマチ性滑膜炎、遺伝性血管浮腫、髄膜炎に見られるような脳神経損傷、妊娠性疱疹、妊娠性類天疱瘡、陰嚢そう痒症、自己免疫性早発卵巣不全、自己免疫状態による突発性難聴、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスムッセン脳炎ならびに辺縁系および/または脳幹脳炎、ぶどう膜炎、例えば前部ぶどう膜炎、急性前部ぶどう膜炎、肉芽腫性ぶどう膜炎、非肉芽腫性ぶどう膜炎、水晶体抗原性ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、または自己免疫性ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群を伴うおよびネフローゼ症候群を伴わない糸球体腎炎(GN)、例えば慢性または急性糸球体腎炎、例えば一次性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、I型およびII型を含む膜増殖性または膜性増殖性GN(MPGN)、および急速進行性GN、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌不全、亀頭炎、例えば形質細胞限局性亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、葉状魚鱗癬、表皮剥離性角化症、前悪性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー状態およびアレルギー応答、アレルギー反応、湿疹、例えばアレルギー性湿疹またはアトピー性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、および水疱性掌蹠湿疹、喘息、例えば気管支ぜんそく、気管支喘息、および自己免疫性喘息、T細胞浸潤および慢性炎症性応答を伴う病態、妊娠中の胎児A-B-O血液型などといった外来抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、ループス、例えばループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループスおよび円板状エリテマトーデス、ループス脱毛症、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えば皮膚SLEまたは亜急性皮膚SLE、新生児ループス症候群(NLE)、および播種状エリテマトーデス、若年発症型(I型)糖尿病、例えば小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性大動脈障害、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばリンパ腫様肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例えば血管炎、大型血管炎(リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中型血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、免疫性血管炎、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎などの壊死性血管炎、およびANCA関連血管炎、例えばチャーグ・ストラウス血管炎またはチャーグ・ストラウス症候群(CSS)およびANCA関連小型血管炎、側頭動脈炎、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、溶血性貧血または免疫性溶血性貧血、例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(悪性の貧血)、アジソン病、真性赤血球性貧血または赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、外傷または出血に続発するもの、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜天疱瘡-粘膜類天疱瘡、および紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病またはライター症候群、免疫複合体腎炎などの免疫複合体疾患、抗体関連腎炎、ポリニューロパチー、IgMポリニューロパチーまたはIgM関連ニューロパチーなどの慢性ニューロパチー、および自己免疫性または免疫介在性血小板減少症、例えば慢性ITPまたは急性ITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、強膜炎、例えば特発性角膜強膜炎、上強膜炎、精巣および卵巣の自己免疫疾患、例えば自己免疫性の精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)または亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、神経学的腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、例えばランバート・イートン筋無力症候群またはイートン・ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎またはアレルギー脳脊髄炎および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、胸腺腫関連重症筋無力症などの重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、オプソクローヌスまたはオプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ球様間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)vs NSIP、ギラン・バレー症候群、ベルジェ病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、急性熱性好中球性皮膚症、角層下膿疱性皮膚症、一過性棘融解性皮膚症、硬変、例えば原発性胆汁性肝硬変および肺硬変、自己免疫性腸疾患症候群、セリアック病または小児脂肪便症、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性難聴、多発性軟骨炎、例えば難治性または再燃性または再発性多発軟骨炎、肺胞タンパク症、コーガン症候群/非梅毒性角膜実質炎、ベル麻痺、スイート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状疱疹関連痛、アミロイドーシス、非がん性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば良性単クローン性ガンマグロブリン血症および意義不明の単クローン性γグロブリン血症、MGUS)を含む原発性リンパ球増加症、末梢性ニューロパチー、腫瘍随伴症候群、CNSのチャネロパチーを含むチャネロパチー、自閉症、炎症性ミオパチー、巣状糸球体硬化症または分節性糸球体硬化症または巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、網膜ぶどう膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛症、多内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、自己免疫性脱髄疾患および慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーなどの脱髄疾患、ドレスラー症候群、円形脱毛症、全頭脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、男性および女性自己免疫性不妊、例えば抗精子抗体によるもの、混合結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形紅斑、心臓切開後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎および線維化性肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、サムター症候群、カプラン症候群、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティ症候群、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、虹彩異色性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性または慢性)、またはフックス毛様体炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、SCID、敗血症、エンドトキシン血症、ワクチン接種後症候群、エバンス症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、溶連菌感染後腎炎、閉塞性血栓血管炎、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再灌流傷害、移植臓器再灌流、自己免疫網膜症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、無精子形成、自己免疫性溶血、ベック病、アレルギー性腸炎、癩性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、ハンマン・リッチ病、感音難聴、限局性回腸炎、白血球減少症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、交感性眼炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、後天性脾臓萎縮、白斑、毒素性ショック症候群、T細胞浸潤を伴う病態、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、白血球漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、アレルギー性神経炎、自己免疫性多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、リウマチ性疾患、混合結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌不全、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎、好酸球関連障害、例えば好酸球増加症、好酸球増多性肺浸潤、好酸球増多筋痛症候群、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、好酸球含有肉芽腫、血清陰性脊椎関節炎、多腺性自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、ブルートン症候群、乳児一過性低γグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病に関連する自己免疫性障害、リウマチ、アレルギー性過敏性障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、虚血再灌流障害、リンパ腫性気管気管支炎、炎症性皮膚疾患、急性炎症性要素を伴う皮膚疾患、および自己免疫性網膜ぶどう膜炎(AUR)からなる群より選択される。いくつかの態様において、自己免
疫疾患もしくは自己免疫状態またはT細胞媒介性炎症は、神経変性、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病であることができる。
【0151】
任意の局面のいくつかの態様において、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態またはT細胞媒介性炎症は、1型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、天疱瘡、脱毛症、ループス、白斑または慢性疲労症候群であることができる。
【0152】
本明細書にいう「悪性T細胞状態」は、T細胞が、制御されない成長(すなわち正常な限度を超える分裂)、浸潤(すなわち隣接組織への侵入と隣接組織の破壊)、および転移(すなわちリンパまたは血液を介した身体の他の場所への伝播)のうちの1つまたは複数を呈する状態を指す。悪性T細胞状態の非限定的な例として、T細胞がん、リンパ腫、白血病、T細胞急性リンパ芽球性白血病およびT細胞リンパ芽球性リンパ腫が挙げられる。
【0153】
本明細書に記載の組成物および方法は、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、または移植片拒絶を治療または予防するために、対象に投与することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、または移植片拒絶の症状を緩和するために、本明細書に記載の有効量の組成物、CAL、CARまたは細胞を対象に投与する工程を含む。本明細書にいう「症状を緩和する」とは、疾患または状態に関連する任意の状態または症状を寛解させることをいう。そのような低減は、任意の標準的技法による測定における、等価な無処置対照と比較して少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%、またはそれより大幅な低減である。本明細書に記載の組成物を対象に投与するためのさまざまな手段は、当業者に公知である。そのような方法としては、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、皮膚、外用、注射、または腫瘍内投与を挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。投与は局所的または全身性であることができる。
【0154】
本明細書において想定される組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸注、埋植、または移植によるなど、都合のよい任意の方法で実行されうる。好ましい一態様において、組成物は非経口投与される。本明細書において使用される「非経口投与」および「非経口投与される」というフレーズは、通常は注射による、経腸および外用投与以外の投与様式を指し、これには、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、腫瘍内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内および胸骨内の注射および注入が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。一態様において、本明細書において想定される組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位への直接注射によって対象に投与される。
【0155】
本明細書に記載の細胞、例えばT細胞またはCAL細胞またはCAR細胞を含む薬学的組成物は、102~1010細胞/kg体重、好ましくは105~106細胞/kg体重の投薬量(これらの範囲内のすべての整数値を含む)で投与しうると、一般に述べることができる。細胞の数は、その組成物の最終用途およびそこに含まれる細胞のタイプに依存するであろう。本明細書において提供される使用の場合、細胞は、一般に1リットル以下の体積中にあり、500mL以下、さらには250mL以下または100mL以下であることができる。したがって、望ましい細胞の密度は、典型的には106細胞/ml超であり、一般的には107細胞/ml超、一般的には108細胞/ml以上である。臨床的に妥当な数の免疫細胞は、累積的に105、106、107、108、109、1010、1011または1012細胞以上となる複数回の注入に分割することができる。本発明のいくつかの局面では、とりわけ、注入された細胞のすべてが特定のまたは特異的な標的抗原にリダイレクトされることになるので、投与する細胞の数を、106個/キログラム(患者1人あたり106~1011個)の範囲に、少なくすることができる。CALおよび/またはCAR発現細胞組成物は、これらの範囲内の投薬量で複数回投与されうる。細胞は、治療を受けている患者にとって同種異系、同系、異種または自家でありうる。所望であれば、治療は、免疫応答の誘導を強化するための、本明細書に記載のマイトジェン(例えばPHA)もしくはリンホカイン、サイトカインおよび/またはケモカイン(例えばIFN-γ、IL-2、IL-12、TNF-α、IL-18およびTNF-β、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与も含みうる。
【0156】
いくつかの態様において、投薬量は体重1kgあたり約1×105細胞~約1×108細胞であることができる。いくつかの態様において、投薬量は体重1kgあたり約1×106細胞~約1×107細胞であることができる。いくつかの態様において、投薬量は体重1kgあたり約1×106細胞であることができる。いくつかの態様において、細胞の投与は1回行うことができる。いくつかの態様において、細胞の投与は、例えば1回、2回またはそれ以上、繰り返すことができる。いくつかの態様において、細胞の投与は、日ベース、週ベース、または月ベースで行うことができる。
【0157】
作用物質、例えば本明細書に記載のCAL、CAR、細胞または組成物の投薬量範囲は、力価に依存し、所望の効果、例えば移植片拒絶の予防、炎症の低減などを生じさせるのに十分な量を包含する。投薬量は、許容できない有害副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般的に、投薬量は患者の年齢、状態および性別によって変動し、当業者はそれを決定することができる。何らかの合併症がある場合は、個々の医師が投薬量を調整することもできる。いくつかの態様において、投薬量は0.001mg/kg体重~0.5mg/kg体重の範囲にある。いくつかの態様において、用量範囲は5μg/kg体重~100μg/kg体重である。あるいは、用量範囲は、血清中レベルを1μg/mL~1000μg/mLに維持するようにタイトレートすることができる。全身性投与の場合、対象には、例えば0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kgまたはそれ以上などの治療量を投与することができる。
【0158】
上に具陳した用量の投与は繰り返すことができる。いくつかの態様において、用量は、1日1回または1日複数回、例えば限定するわけではないが1日3回、与えられる。いくつかの態様において、上に具陳した用量は、数週間または数ヶ月間、毎日投与される。処置の継続期間は対象の臨床進行度および治療への応答性に依存する。
【0159】
いくつかの態様において、用量は約2mg/kg~約15mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は約2mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は約4mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は約5mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は約6mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は約8mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は約10mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は約15mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は約100mg/m2~約700mg/m2であることができる。いくつかの態様において、用量は約250mg/m2であることができる。いくつかの態様において、用量は約375mg/m2であることができる。いくつかの態様において、用量は約400mg/m2であることができる。いくつかの態様において、用量は約500mg/m2であることができる。
【0160】
いくつかの態様において、用量は静脈内に投与することができる。いくつかの態様において、静脈内投与は、約10分~約3時間の期間にわたって行われる注入であることができる。いくつかの態様において、静脈内投与は、約30分~約90分の期間にわたって行われる注入であることができる。
【0161】
いくつかの態様において、用量はほぼ週に1回投与することができる。いくつかの態様において、用量は週に1回投与することができる。いくつかの態様において、用量は約12週間~約18週間にわたって週に1回投与することができる。いくつかの態様において、用量は約2週間ごとに投与することができる。いくつかの態様において、用量は約3週間ごとに投与することができる。いくつかの態様において、用量は、約2週間ごとに投与される約2mg/kg~約15mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は、約3週間ごとに投与される約2mg/kg~約15mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は、約2週間ごとに静脈内投与される約2mg/kg~約15mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は、約3週間ごとに静脈内投与される約2mg/kg~約15mg/kgであることができる。いくつかの態様において、用量は、約1週間ごとに静脈内投与される約200mg/m2~約400mg/m2であることができる。いくつかの態様において、用量は、約2週間ごとに静脈内投与される約200mg/m2~約400mg/m2であることができる。いくつかの態様において、用量は、約3週間ごとに静脈内投与される約200mg/m2~約400mg/m2であることができる。いくつかの態様では、全部で約2回~約10回投与される。いくつかの態様では、全部で4回投与される。いくつかの態様では、全部で5回投与される。いくつかの態様では、全部で6回投与される。いくつかの態様では、全部で7回投与される。いくつかの態様では、全部で8回投与される。いくつかの態様において、投与は、全部で約4週間~約12週間にわたって行われる。いくつかの態様において、投与は、全部で約6週間にわたって行われる。いくつかの態様において、投与は、全部で約8週間にわたって行われる。いくつかの態様において、投与は、全部で約12週間にわたって行われる。いくつかの態様において、初回用量は後続の用量よりも約1.5~約2.5倍多い。
【0162】
いくつかの態様において、用量は約1mg~約2000mgであることができる。いくつかの態様において、用量は約3mgであることができる。いくつかの態様において、用量は約10mgであることができる。いくつかの態様において、用量は約30mgであることができる。いくつかの態様において、用量は約1000mgであることができる。いくつかの態様において、用量は約2000mgであることができる。いくつかの態様において、用量は、毎日静脈内注入によって与えられる約3mgであることができる。いくつかの態様において、用量は、毎日静脈内注入によって与えられる約10mgであることができる。いくつかの態様において、用量は週3回の静脈内注入によって与えられる約30mgであることができる。
【0163】
治療有効量は、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、移植片拒絶、またはGvHDの発生に統計的に有意で測定可能な変化を生じさせるか、それを予防するのに足りる、作用物質の量である。そのような有効量は、臨床試験および動物研究で見積もることができる。
【0164】
作用物質は、注射によって、または時間をかけた緩徐注入によって、静脈内投与することができる。所与の経路のために適当な製剤が与えられるのであれば、例えば本明細書に記載の方法および組成物において有用な作用物質は、静脈内または鼻腔内に投与するか、吸入投与するか、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内に投与することができ、所望であれば蠕動的手段によって、または当業者に公知の他の手段によって、送達することができる。本明細書において使用される化合物は、経口投与、静脈内投与または筋肉内投与されることが好ましい。局所投与、例えば臓器移植部位または組織移植部位への直接的な局所投与も、特に考えられる。
【0165】
少なくとも1つの作用物質を含有する治療組成物は、従来どおり、例えば単位用量で投与することができる。「単位用量」という用語を治療組成物に関して使用する場合、それは、対象への単位投薬量として役立つ、物理的に不連続な単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性物質を、生理学的に許容される必要な希釈剤、すなわち担体または媒体と一緒に含有する。
【0166】
組成物は、その投薬製剤に適合する方法かつ治療有効量で投与される。投与されるべき量とタイミングは、治療される対象、対象の系の、活性成分を利用する能力、および所望する治療効果の程度に依存する。
【0167】
対象に部分多成分CALおよび/またはCAR細胞と認識ポリペプチドとが投与される態様において、その部分多成分CALおよび/またはCAR細胞と認識ポリペプチドは、一緒にまたは別々に投与することができる。対象に部分多成分CALおよび/またはCAR細胞と認識ポリペプチドとが別々に投与される態様において、組成物のそれぞれは、本明細書に記載の投薬量および投与経路/投与ルーチンのいずれかに従って、別々に投与することができる。
【0168】
投与する必要がある活性成分の正確な量は、開業医の判断に依存し、個々人に特有である。ただし、全身適用の場合の適切な投薬量範囲は本明細書において開示され、それは投与経路に依存する。適切な投与レジメンもさまざまであるが、初回投与と、それに続く、後続の注射または他の投与による1時間以上の間隔での反復投与とが、典型である。あるいは、血中濃度をインビボ治療のために指定された範囲に維持するのに足りる連続静脈内注入も考えられる。
【0169】
いくつかの態様において、本方法は、本明細書に記載の組成物、CALもしくはCAR、または細胞を、併用治療の一部としての1つまたは複数の追加の自己免疫剤、GvHD剤もしくは移植片拒絶剤、生物製剤、薬物または処置と一緒に投与する工程を、さらに含む。移植片拒絶またはGvHDのための例示的処置としては、免疫抑制薬、例えばシクロスポリン(Neoral、Sandimmune、GengrafおよびRestasis)、タクロリムス(Prograf、Protopic、Astagraf XLおよびEnvarsus XR)、メトトレキサート(Trexall、Rasuvo、RheumatrexおよびOtrexup(PF))、シロリムス(Rapamune)、ミコフェノール酸(MyforticおよびCellCept)、リツキシマブ(Rituxan)、エタネルセプト(Enbrel)、ペントスタチン(Nipent)、ルキソリチニブ(Jakafi);化学療法薬、例えばメトトレキサート(Trexall、Rasuvo、RheumatrexおよびOtrexup(PF))、抗胸腺細胞グロブリン(Atgam、Thymoglobulin);ステロイド、例えばプレドニゾン(Deltasone、RayosおよびPrednisone Intensol)、メチルプレドニゾロン(Medrol、Solu-MedrolおよびDepo-Medrol)、ブデソニド(Entocort EC、Uceris);抗真菌剤、例えばポサコナゾール(Noxafil);抗ウイルス薬、例えばアシクロビル(ZoviraxおよびSitavig)、バラシクロビル(Valtrex);および抗生物質、例えばスルファメトキサゾール/トリメトプリム(Bactrim、SulfatrimおよびBactrim DS);プロテアーゼ阻害剤、例えばα1-プロテイナーゼ阻害剤(Zemaira);体外循環式光化学療法;モノクローナル抗体(ダクリズマブ(Zinbryta)、バシリキシマブ(Simulect))、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris)、アレムツズマブ(Campath、Lemtrada)、トシリズマブ(Actemra);間葉系間質細胞の注入が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0170】
自己免疫疾患のための例示的な処置としては、インスリン、例えばインスリングルリジン(ApidraおよびApidra SoloStar)、インスリンデテミル(LevemirおよびLevemir FlexTouch)、インスリンアスパルト(NovoLog、Novolog FlexpenおよびNovolog PenFill)、インスリンリスプロ(HumalogおよびHumalog KwikPen)、インスリン、インスリングラルギン(Lantus、Lantus SolostarおよびToujeo SoloStar);健康補助食品、例えばグルコースタブレット;およびホルモン、例えばグルカゴン(GlucaGenおよびグルカゴン緊急キット(ヒト))、抗糖尿病剤(メトホルミン(D-Care DM2、Fortamet、Glucophage、Glucophage XR、Glumetza、Riomet)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト(リラグルチド(Saxenda;Victoza)またはセマグルチド(Ozempic)またはナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤:エンパグリフロジン(Jardiance)、カナグリフロジン(Invokana);スルホニル尿素:グリピジド(GlipiZIDE XL、Glucotrol、Glucotrol XL);メグリチニド類似体:レパグリニド(Prandin);チアゾリジンジオン:ピオグリタゾン(Actos);ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤:シタグリプチン(Januvia)、サクサグリプチン(Onglyza)、リナグリプチン(Tradjenta)、アログリプチン(Nesina)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0171】
熟練した臨床家は、例えば自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、移植片拒絶、またはGvHDのための、所与の処置の効力を決定することができる。ただし処置は、本明細書に記載の作用物質による処置後に、徴候または症状のいずれか1つまたは全部が有益な形で変化するか、または他の臨床的に許容される症状が、例えば少なくとも10%は改善し、さらには寛解するのであれば、本明細書にいう意味で「有効な処置」とみなされる。効力は、入院または医学的インターベンションの必要によって評価される個体の悪化がない(すなわち疾患進行が停止する)ことによっても測定することができる。これらの指標を測定する方法は当業者には公知であり、かつ/または本明細書に記載される。
【0172】
疾患治療のための有効量とは、それを必要とする哺乳動物に投与した場合に、当該疾患について本明細書に定義する意味での有効な治療をもたらすのに十分な量を意味する。作用物質の効力は、例えば自己免疫疾患(例えばANAの結果)、T細胞媒介性の炎症または免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶(例えば高熱、移植部位の圧痛など)またはGvHD(例えば移植部位の発赤、痛みまたは他の症状)の身体的指標を評価することによって、決定することができる。有効量、毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物において、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための標準的な薬学的手順で決定することができる。投薬量は使用する剤形および利用する投与経路に応じて変動しうる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療係数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療係数を呈する組成物および方法が好ましい。治療有効用量はまず細胞培養アッセイから推定することができる。また、細胞培養または適当な動物モデルにおいて決定されたIC50(すなわち症状の50%最大阻害を達成する活性成分の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲が得られるように、動物モデルにおいて用量を策定することもできる。血漿中のレベルは、例えばイムノアッセイ、さまざまなDNA検出技術、または高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定投薬量の効果は、適切なバイオアッセイ、例えば移植後の反応、炎症のレベル、ANA測定、その他を評価するためのアッセイによってモニターすることができる。医師は投薬量を決定し、それを、必要に応じて、観察された治療効果に合わせて調整することができる。
【0173】
効力は、入院または医学的インターベンションの必要によって評価される個体の悪化がない(すなわち疾患進行が停止する)ことによっても測定することができる。これらの指標を測定する方法は当業者には公知でありおよび/または本明細書に記載される。治療には、個体または動物(いくつかの非限定的な例としてヒトまたは動物が挙げられる)における疾患の任意の治療が含まれ、これには例えば次に挙げるものがある:(1)疾患を阻害すること、例えば症状(例えば痛みまたは炎症)の悪化を予防すること、または(2)疾患の重症度を軽減すること、例えば症状の後退を引き起こすこと。疾患治療のための有効量とは、それを必要とする対象に投与した場合に、当該疾患について本明細書に定義する意味での有効な治療をもたらすのに十分な量を意味する。作用物質の効力は、ある状態または所望する応答の身体的指標(例えば炎症の低減など)を評価することによって決定することができる。そのようなパラメータのいずれか1つまたはパラメータの任意の組合せを測定することによって投与および/または処置の効力をモニターすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。効力は、本明細書に記載の状態の動物モデル、例えば自己免疫疾患、移植片拒絶、またはGVHDの治療の動物モデルにおいて、評価することができる。実験動物モデルを使用する場合、処置の効力は、例えば炎症などのマーカーに統計的に有意な変化が観察された場合に証明される。
【0174】
いくつかの態様において、本明細書に記載の技術は、本明細書に記載のCALおよび/もしくはCARまたは多成分CALおよび/もしくは多成分CAR(またはその一部分、あるいはCALおよび/もしくはCAR、または多成分CALおよび/もしくは多成分CARを含む細胞)と任意で薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。いくつかの態様において、薬学的組成物の活性成分は、本明細書に記載のCALおよび/もしくはCARまたは多成分CALおよび/もしくは多成分CAR(またはその一部分、あるいはCALおよび/もしくはCARまたは多成分CALおよび/もしくは多成分CARを含む細胞)を含む。いくつかの態様において、薬学的組成物の活性成分は、本明細書に記載のCALおよび/もしくはCARまたは多成分CALおよび/もしくは多成分CAR(またはその一部分、あるいはCALおよび/もしくはCARまたは多成分CALおよび/もしくは多成分CARを含む細胞)から本質的になる。いくつかの態様において、薬学的組成物の活性成分は、本明細書に記載のCALおよび/もしくはCARまたは多成分CALおよび/もしくは多成分CAR(またはその一部分、または多成分CALおよび/もしくは多成分CARを含む細胞)からなる。
【0175】
薬学的に許容される担体および希釈剤としては、食塩水、水性緩衝液、溶媒および/または分散媒が挙げられる。そのような担体および希釈剤の使用は当技術分野において周知である。薬学的に許容される担体として役立ちうる材料の非限定的な例を以下にいくつか挙げる:(1)糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロースおよび酢酸セルロース;(4)トラガント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルク;(8)賦形剤、例えばカカオ脂および坐剤用ワックス;(9)油、例えばラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG);(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;(22)増量剤、例えばポリペプチドおよびアミノ酸、(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDLおよびLDL;(22)C2~C12アルコール、例えばエタノール;および(23)薬学的製剤に使用される他の非毒性適合物質。湿潤剤、着色剤、放出剤、被覆剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤、および酸化防止剤も製剤中に存在しうる。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語は、本明細書では相互可換的に使用される。いくつかの態様において、担体は、本明細書に記載の活性作用物質の分解を阻害する。
【0176】
いくつかの態様において、本明細書に記載の多成分CALおよび/または多成分CAR(またはその一部分、または多成分CALおよび/もしくは多成分CARを含む細胞)を含む薬学的組成物は、非経口剤形であることができる。非経口剤形の投与は通例、汚染物質に対する患者の自然防御を迂回するので、非経口剤形は好ましくは滅菌状態にあるか、患者への投与に先だって滅菌することが可能である。非経口剤形の例としては、そのまま注射できる溶液剤、注射用の薬学的に許容される媒体にそのまま溶解または懸濁することができる乾燥製品、そのまま注射できる懸濁剤、および乳剤が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。加えて、患者への投与のために、限定ではないがDUROS(登録商標)型剤形および用量ダンピング(dose-dumping)を含む、制御放出非経口剤形を調製することができる。
【0177】
本明細書において開示される多成分CALおよび/または多成分CAR(またはその一部分、または多成分CALおよび/もしくは多成分CARを含む細胞)の非経口剤形を提供するために使用することができる適切な媒体は、当業者に周知である。例として、滅菌水;米国薬局方注射用水;食塩溶液;グルコース溶液;限定するわけではないが塩化ナトリウム注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸加リンゲル注射液などの水性媒体;限定するわけではないがエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどの水混和性媒体;ならびに限定するわけではないがトウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステートおよび安息香酸ベンジルなどの非水性媒体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。活性成分の薬学的に許容される塩の溶解度を変化させまたは修飾する化合物も、従来の制御放出非経口剤形を含む本開示の非経口剤形に組み入れることができる。
【0178】
薬学的組成物は、経口投与に適するように、例えば不連続な剤形として、例えば限定するわけではないが、錠剤(分割錠またはコート錠を含むが、それらに限定されるわけではない)、丸剤、カプレット剤、カプセル剤、チュアブル錠、散剤分包、カシェ剤、トローチ剤、ウエハース、エアロゾルスプレーまたは液剤、例えば限定するわけではないが、シロップ剤、エリキシル剤、溶液剤、または水性液体、非水性液体中の懸濁剤、水中油型エマルションもしくは油中水型エマルションとして、製剤化することもできる。そのような組成物は、予め決定された量の、開示される化合物の薬学的に許容される塩を含有し、当業者に周知の薬学的方法によって調製されうる。一般論については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott, Williams, and Wilkins, Philadelphia PA.(2005)を参照されたい。
【0179】
従来の剤形は一般に、製剤からの迅速または即時的な薬物放出をもたらす。薬物の薬理および薬物動態に依存して、従来型剤形の使用は、患者の血液および他の組織における薬物濃度の大きな揺らぎをもたらす場合がある。これらの揺らぎは、投与頻度、作用の発生、効力の持続時間、治療的血中レベルの維持、毒性、副作用など、いくつかのパラメータに影響を及ぼしうる。有利なことに、制御放出製剤は、薬物の作用の発生、作用の持続時間、治療ウインドウ内での血清中レベル、およびピーク血中レベルを制御するために使用することができる。特に、制御放出型または持続放出型の剤形または製剤は、薬物の過少量投与(すなわち最低治療レベルを下回ること)からも薬物の毒性レベルを超えることからも起こりうる潜在的な副作用および安全上の懸念を最小限に抑えつつ、薬物の有効性が最大限に達成されることを保証するために使用することができる。いくつかの態様において、本組成物は徐放製剤として投与することができる。
【0180】
制御放出型の薬学的製品には、対応する非制御放出物によって達成されるものとの比較で、薬物治療を改良するという共通の目的がある。理想的には、医学的処置における最適にデザインされた制御放出調製物の使用は、最小量の原薬の使用により、最短の時間で、状態が治癒しまたは管理されることを特徴とする。制御放出製剤の利点としては、1)長時間にわたる薬物の活性、2)投薬頻度の低減、3)患者コンプライアンスの向上、4)薬物の総使用量の減少、5)局所的副作用または全身性副作用の低減、6)最小限の薬物蓄積、7)血中レベル変動の低減、8)処置効力の改善、9)薬物活性の増強または喪失の低減、および10)疾患または状態の管理速度の改善が挙げられる。Kim, Cherng-ju, Controlled Release Dosage Form Design, 2(Technomic Publishing、ペンシルバニア州ランカスター、2000)。
【0181】
大半の制御放出製剤は、所望の治療効果を直ちに生じる量の薬物(活性成分)をまず放出し、そのレベルの治療効果または予防効果が長期間にわたって維持されるように、別の量の薬物を徐々に連続的に放出するようにデザインされる。体内でこの一定した薬物レベルを維持するには、代謝されて身体から排泄される薬物の量を補うことになる速度で、薬物が剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、限定するわけではないがpH、イオン強度、浸透圧、温度、酵素、水および他の生理的条件または化合物を含むさまざまな条件によって、刺激することができる。
【0182】
さまざまな公知の制御放出型または持続放出型の剤形、製剤およびデバイスは、本開示の塩および組成物と共に使用するために適合させることができる。例として、例えば以下の米国特許に記載されているものを挙げることができるが、それらに限定されるわけではない:米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、同第5,733,566号および同第6,365,185号B1(これらの米国特許はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる)。例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性メンブレン、浸透圧システム(例えばOROS(登録商標)(Alza Corporation、米国カリフォルニア州マウンテンビュー))を使用して、または所望の放出プロファイルが得られるようにさまざまな比率でそれらを組み合わせることで、これらの剤形を使って、1つまたは複数の活性成分の遅い放出または制御放出を提供することができる。
【0183】
本明細書には、免疫キラー細胞が自己反応性および同種異系反応性T細胞を認識するのを助けようとする「CAL細胞治療」と呼ばれる治療が記載される。これは、免疫細胞がキメラ抗原リガンド(CAL)を発現するように、免疫細胞を遺伝的に改変することによって達成される。CALは、天然の認識部分が除去されて、自己反応性および同種異系反応性T細胞にユニークなT細胞受容体の存在を極めて特異的に検出することによって自己反応性および同種異系反応性T細胞をより効果的に認識するようにデザインされた合成認識部分(すべての合成または天然ペプチドMHC複合体を含む)で置き換えられている、改変リガンドである。これらのCAL免疫細胞は次に患者に与えられる。患者の体内では、それらの合成CALリガンド分子が自己反応性および同種異系反応性T細胞に結合し、その結合の最中に、キラー免疫細胞を活性化することで、病的な自己反応性および同種異系反応性T細胞を攻撃して同種異系反応性または自己反応性免疫応答を排除または低減する改変CAL免疫細胞をもたらすことになる。これは、自己免疫状態、細胞移植、組織移植、臓器移植、および移植片対宿主病(GvHD)に、特に応用することができる。
【0184】
本発明は、一つには、本明細書において提示される改変ポリペプチドが、疾患を引き起こすT細胞上の特異的T細胞受容体を認識し、それに結合することができて、該T細胞を欠失させ、例えば自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、ならびに細胞移植、組織移植、臓器移植、および移植片対宿主病(GvHD)を排除または低減するという発見に基づく。いくつかの態様において、改変ポリペプチドは、同種異系または自己反応性T細胞のTCRにとっての認識部位としての、(例えばモノマー、オリゴマーまたはマルチマーとしての)ペプチド-主要組織適合遺伝子複合体(pMHC)で構成される。いくつかの態様において、pMHCは本明細書に記載の複合体のうちの1つである。表5および表6を参照されたい。
【0185】
いくつかの態様において、改変ポリペプチドは、FITC、PEまたは本明細書に記載の他の生体分子相互作用ドメインにコンジュゲートされた、pMHCで構成される。改変ポリペプチドは、生体分子相互作用ドメインに融合されたTCR認識ドメイン(例えばペプチド-HLAモノマー、オリゴマー、またはマルチマー)で構成されるアダプター分子(本明細書ではキメラ抗原リガンド(CAL)という)とみなすこともできる。本明細書に記載のCAL技術は、抗原特異的にT細胞クローンを標的にすることができ、いかなる特異的CARコンストラクトにも依存せずに、死滅効果を呈する。
【0186】
いくつかの態様において、改変ポリペプチドは、T細胞受容体由来のシグナル伝達ドメインに融合された認識部位としての、(例えばモノマー、オリゴマーまたはマルチマーとしての)ペプチド-HLAで構成されるCARである。本明細書では、このCAR系のスプリット(split)バージョンがさらに提供され、その場合は、CARが2つのピース(piece)で構成される。第1ピースは、細胞内部分としてのT細胞シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインとしての、例えば各疾患状態に特異的な、生体分子相互作用ドメインとを持つ、ユニバーサルCAR(本明細書ではUniCALともいう)である。第2ピースは、コグネイト生体分子相互作用ドメインに融合されたTCR認識ドメイン(例えばペプチド-HLAモノマー、オリゴマー、またはマルチマー)で構成されるアダプター分子(本明細書ではキメラ抗原リガンド(CAL)という)である。
【0187】
いくつかの態様において、改変ポリペプチドは、T細胞受容体由来のシグナル伝達ドメインに融合された認識部位としての、(例えばモノマー、オリゴマーまたはマルチマーとしての)ペプチド-HLAで構成されるCARである。本明細書では、このCAR系のスプリットバージョンがさらに提供され、その場合は、CARが2つのピースで構成される。第1ピースは、細胞内部分としてのT細胞シグナル伝達ドメインと、細胞外ドメインとしての、例えば各疾患状態に特異的な、生体分子相互作用ドメインとを持つ、ユニバーサルCAR(本明細書ではUniCALともいう)である。第2ピースは、コグネイト生体分子相互作用ドメインに融合されたTCR認識ドメイン(例えばペプチド-HLAモノマー、オリゴマー、またはマルチマー)で構成されるアダプター分子(本明細書ではキメラ抗原リガンド(CAL)という)である。タンパク質相互作用ドメインは生体分子相互作用ドメインの一タイプであり、本明細書において一方が指定された場合は、それは常に他方で置き換えうることに注意されたい。本明細書に記載のCAL技術は、抗原特異的にT細胞クローンを標的にすることができ、いかなる特異的CARコンストラクトにも依存せずに、死滅効果を呈する。
【0188】
したがって、本明細書に提示する一局面は、(a)キメラ抗原リガンドまたはTCR認識ドメインと、(a)細胞内シグナル伝達ドメインおよび(b)第1タイプのタンパク質相互作用ドメインのうちの一方または両方とを含む、組成物を提供する。
【0189】
本明細書において提供される別の一局面は、(a)キメラ抗原リガンドまたはTCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプおよび第2タイプのタンパク質相互作用ドメインが互いに特異的に結合する組成物を提供する。
【0190】
本明細書において提供される別の一局面は、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2認識ドメインおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインが特異的に結合する組成物を提供する。
【0191】
本明細書において提供される別の一局面は、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、(c)第2認識ドメインおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第2タイプのタンパク質相互作用ドメインと第3タイプのタンパク質相互作用ドメインとが第1タイプのタンパク質相互作用ドメインへの結合に関して競合する組成物を提供する。
【0192】
任意の局面の一態様において、第3タイプのタンパク質相互作用ドメインと第1タイプのタンパク質相互作用ドメインは、互いに、第2タイプのタンパク質相互作用ドメインと第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも高いアフィニティを有する。
【0193】
本明細書において提供される別の一局面は、(a)TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、(b)第2タイプのタンパク質相互作用ドメイン、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、(c)第2認識ドメインおよび第5タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する組成物を提供する。
【0194】
任意の局面の一態様において、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと第5タイプのタンパク質相互作用ドメインは、第2タイプのタンパク質相互作用ドメインと第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも弱いアフィニティを有する。
【0195】
任意の局面の一態様において、第1ポリペプチドは第6タイプのタンパク質相互作用ドメインをさらに含み、認識ポリペプチドは第7タイプのタンパク質相互作用ドメインをさらに含み、それらは互いに特異的に結合する。
【0196】
任意の局面の一態様において、第2認識ドメインは、TCR認識ドメインによって認識されない標的に特異的である。
【0197】
任意の局面の一態様において、第2認識ドメインは、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出されかつ疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されない標的に特異的である。
【0198】
TCR認識ドメインは、単一ポリペプチドを含むのではなくて2つ以上のポリペプチドを含んでもよく、加えて、非ポリペプチドも含みうる。例えば、単一のMHCクラスIIテトラマーTCR認識ドメインは、4つのビオチン低分子と、16個のポリペプチド(4つのペプチド、4つのMHCクラスIIα鎖、4つのMHCクラスIIβ鎖および4つのストレプトアビジンタンパク質)を含むことができる。他のタイプのTCR認識ドメインは、加えて、他の非ポリペプチド分子も含みうる(例えば、MHCデキストラマーは多糖骨格を含有し、MHCはそこにアンカリングされる)。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物は複数コピーまたは複数インスタンスのTCR認識ドメインを含むことができる。例えばTCR認識ドメインはマルチマーまたはオリゴマーであることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物は、複数コピーまたは複数インスタンスの、本明細書に記載の第1ポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、第1ポリペプチドはTCR認識ドメイン全体を含む。いくつかの態様において、TCR認識ドメインは少なくとも2つの別個のポリペプチド配列を含み、第1ポリペプチドは、TCR認識ドメインの前記別個のポリペプチド配列のうちの少なくとも1つを含み、第1ポリペプチドは、TCR認識ドメインの第2のまたはさらなるポリペプチド配列に結合するかまたはそれらと複合体化してTCR認識ドメインを形成する。
【0199】
任意の局面の一態様において、TCR認識ドメインは、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)、MHC-ペプチド複合体またはMHC-ペプチド融合体を含む。
【0200】
任意の局面の一態様において、ペプチドはヒト、非ヒトまたは合成/改変ペプチドである。ペプチドは、非タンパク質性のモチーフ、修飾またはドメインを、さらに含むことができ、例えばペプチドはグリコシル化および/または脂質を含むことができる。任意の局面の一態様において、ペプチドはマイナー組織適合性抗原(MiHA)である。
【0201】
任意の局面の一態様において、MHCは、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である。
【0202】
任意の局面の一態様において、タンパク質相互作用ドメインは、それぞれのポリペプチドの細胞外部分に見出される。
【0203】
任意の局面の一態様において、(a)タンパク質相互作用ドメインはロイシンジッパーであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてロイシンジッパーのペアであり、(b)タンパク質相互作用ドメインはBZip(RR)および/またはAZip(EE)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてBZip(RR)およびAZip(EE)であり、(c)タンパク質相互作用ドメインはPSD95-Dlg1-zo-1(PDZ)ドメインであり、(d)タンパク質相互作用ドメインはストレプトアビジンおよび/またはストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてストレプトアビジンおよびストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)であり、(e)タンパク質相互作用ドメインはmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)および/またはFK506結合タンパク質(FKBP)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)およびFK506結合タンパク質(FKBP)であり、(f)タンパク質相互作用ドメインはシクロフィリン-Fas融合タンパク質(CyP-Fas)および/またはFK506結合タンパク質(FKBP)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてシクロフィリン-Fas融合タンパク質(CyP-Fas)およびFK506結合タンパク質(FKBP)であり、(g)タンパク質相互作用ドメインはカルシニューリンA(CNA)および/またはFK506結合タンパク質(FKBP)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてカルシニューリンA(CNA)およびFK506結合タンパク質(FKBP)であり、(h)タンパク質相互作用ドメインはジベレリン非感受性(GIA)および/またはジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてジベレリン非感受性(GIA)およびジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であり、(i)タンパク質相互作用ドメインはSnapタグおよび/またはHaloタグであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてSnapタグおよびHaloタグであり、(j)タンパク質相互作用ドメインはT14-3-3-cΔCおよび/またはPMA2のC末端ペプチド(CT52)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてT14-3-3-cΔCおよびPMA2のC末端ペプチド(CT52)であり、(k)タンパク質相互作用ドメインはPYLおよび/またはABIであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてPYLおよびABIであり、(l)タンパク質相互作用ドメインはヌクレオチドタグおよび/またはジンクフィンガードメインであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてヌクレオチドタグおよびジンクフィンガードメインであり、(m)生体分子相互作用ドメインはヌクレオチドタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアは全体としてヌクレオチドタグのペアであり、(n)タンパク質相互作用ドメインはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)および/またはFITC結合タンパク質であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてFITCおよびFITC結合タンパク質であり、かつ/あるいは(o)タンパク質相互作用ドメインは(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)および/もしくはR-PE/PE結合タンパク質であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアは全体としてFITCおよびFITC結合タンパク質である。
【0204】
任意の局面の一態様において、ヌクレオチドタグはDNAタグまたはdsDNAタグである。
【0205】
任意の局面の一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ;CD35;CD3ζ;CD3C;CD22;CD79a;CD79b;CD66d;CARD11;CD2;CD7;CD27;CD28;CD30;CD40;CD54(ICAM);CD83;CD134(OX40);CD137(4-1BB);CD150(SLAMF1);CD152(CTLA4);CD223(LAG3);CD270(HVEM);CD273(PD-L2);CD274(PD-L1);CD278(ICOS);DAP10;LAT;KD2C SLP76;TRIM;およびZAP70からなる群より選択されるタンパク質からのシグナル伝達ドメインである。
【0206】
任意の局面の一態様において、TCR認識ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを含みかつ/または発現する細胞は、ペイロード導入遺伝子に機能可能に連結されたTCRシグナル伝達応答性プロモーターをさらに含む。そのような態様は、導入遺伝子ペイロード発現を、標的T細胞に特異的に、および/または標的T細胞の近傍において、可能にする。適切なプロモーターおよび導入遺伝子は、例えば「TRUCK CAR」技術において使用されるプロモーターおよび導入遺伝子など、当技術分野において公知である。例示的なプロモーターはNFAT感受性プロモーターである。例示的な導入遺伝子ペイロードとしては、チェックポイント阻害剤(例えばCTLA-4[イピリムマブ、トレメリムマブ]またはPD-1[ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ])または炎症誘発性サイトカイン(例えばIL-2、IL-12など)を挙げることができる。本発明者らの場合、これは、患者の抗がんT細胞を拡大およびエフェクター表現型へと押しやることができる1つまたは複数のチェックポイント阻害剤(CTLA-4[イピリムマブ、トレメリムマブ]またはPD-1[ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ])および/または炎症誘発性サイトカイン(例えばIL-2、IL-12など)のような活性化作用物質を極めて特異的かつ局所的に送達するための、患者の抗がんT細胞のインサイチュターゲティングに使用されるだろう。この標的送達により、チェックポイント阻害剤は、全身性に投与されたチェックポイント阻害剤およびサイトカインが引き起こす全身性副作用を伴わずに、より大きな効力を示すと予想される。さらに、記載の技術では、パラクリン送達ゆえに全身性副作用が最小限に抑えられるので、複数の異なる作用物質による併用療法が可能である。適切なプロモーター、ペイロードならびにTRUCK技術の製作および使用方法のさらなる説明は、例えばPeterson et al. Front. Oncol. 2019 9:69、Chmielewski et al. Advances in Cell and Gene Therapy 2020 3:e84、Chimielewski et al. Expert opinion Biol Ther 2015 15:1145-54およびChimieleski et al. Immunol Rev 2014 257:83-90に記載されており、これらの文献のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。いくつかの態様において、細胞は、同種異系であってもよく、例えば一度改変されていてもよく、パルス療法として与えられうる。いくつかの態様において、細胞は、T細胞または本明細書に記載の他の任意の細胞タイプ、例えばNK細胞であることができる。例示的かつ非限定的な炎症誘発性サイトカインとしては、IFN、IFN-γ、TNFα、TGF-β、IL-1β、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-2、IL-12、IL-15およびIL-27が挙げられる。
【0207】
プロモーターは、それが調節する核酸配列の発現を駆動するまたはその転写を駆動するということができる。「機能的に連結される」、「機能的に配置される」、「機能可能に連結される」、「制御下」および「転写制御下」というフレーズは、プロモーターが、それが調節する核酸配列に対して、その配列の転写開始および/または発現を制御するのに、正しい機能的位置および/または配向にあることを示す。
【0208】
いくつかの態様において、TCR認識ドメインと生体分子相互作用ドメインとを含む組成物は、可溶性分子および/または可溶性複合体である。
【0209】
本明細書において提供される別の一局面は、本明細書に記載の組成物のいずれかの組成物を含みかつ/または発現する細胞である。
【0210】
任意の局面の一態様において、TCR認識ドメインは、その組成物を含みかつ/または発現する細胞にとって、同種異系であるMHCを含む。任意の局面の一態様において、TCR認識ドメインは、TCRの由来である細胞にとって同種異系のMHCを含む。
【0211】
任意の局面の一態様において、TCR認識ドメインは、その組成物を含みかつ/または発現する細胞にとって、同種異系であるペプチドを含む。任意の局面の一態様において、TCR認識ドメインは、TCRの由来である細胞にとって同種異系のペプチドを含む。
【0212】
任意の局面の一態様において、細胞は、樹状細胞(CAL DC)、T細胞(例えばエフェクター、制御性など)(CAL-T)、制御性T細胞、エフェクターT細胞、ナチュラルキラー細胞(CAL NK)、または他の任意の骨髄系細胞である。任意の局面の一態様において、細胞は、組成物のポリペプチドを発現するように改変される。任意の局面の一態様において、細胞は、組成物のシグナル伝達ポリペプチドを発現するように改変される。任意の局面の一態様において、細胞は、ネイティブMHC I/IIをノックアウトするために、さらに改変される。任意の局面の一態様において、細胞は、ネイティブMHC I/IIの細胞表面発現を欠くようにさらに改変される。
【0213】
本明細書において提供される別の一局面は、(a)抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメインと、(b)細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0214】
本明細書において提供される別の一局面は、(a)抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメイン、(b)第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む第1ポリペプチドと、(a)第2タイプのタンパク質相互作用ドメイン、および(b)細胞内シグナル伝達ドメインを含む第2ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する組成物である。
【0215】
本明細書において提供される別の一局面は、(a)抗CD127認識ドメイン、(b)第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む第1ポリペプチドと、(a)抗CD45RO認識ドメイン、(b)第5タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む第2ポリペプチドと、(a)第2タイプおよび第4タイプのタンパク質相互作用ドメインならびに(b)細胞内シグナル伝達ドメインを含む第3ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する組成物である。
【0216】
本明細書において提供される別の一局面は、本明細書に記載のCARのいずれかまたは本明細書に記載の組成物のいずれかを含む細胞である。
【0217】
本明細書において提供される別の一局面は、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態またはT細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答を予防および/または治療する方法、または移植片拒絶もしくはGvHDの治療もしくは予防を必要とする対象における移植片拒絶もしくはGvHDを治療または予防する方法であって、対象に本明細書に記載の組成物および/または細胞のいずれかを投与する工程を含む、方法である。本明細書において提供される別の局面は、悪性T細胞状態の予防および/または治療を必要とする対象における悪性T細胞状態を予防および/または治療する方法であって、本明細書に記載の組成物および/または細胞のいずれかを対象に投与する工程を含む、方法である。
【0218】
任意の局面のさまざまな態様において、TCR認識ドメインは、対象にとって同種異系のMHC、移植細胞にとって自家のMHC、対象にとって同種異系のペプチド、または移植細胞にとって自家のペプチドを含む。
【0219】
任意の局面の一態様において、移植は、血行再建複合同種組織移植(VCA)である。
【0220】
任意の局面の一態様において、自己免疫疾患は、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、または強皮症である。
【0221】
本明細書において提供される諸態様の一局面は、CD127+/CD45RO+T細胞を標的にするCAR T細胞である。一態様において、CD127+/CD45RO+T細胞は、CD127+/CD45RO+メモリーT細胞である。一態様において、CD127+/CD45RO+T細胞は、同種異系反応性CD127+/CD45RO+T細胞である。
【0222】
したがって本明細書における一局面は、(a)抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメインと(b)細胞内シグナル伝達ドメインとを含むCARを提供する。本明細書では、(a)抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメインと(b)細胞内シグナル伝達ドメインとを含む組成物が、さらに提供される。
【0223】
諸態様の別の一局面は、(a)抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメイン、(b)第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む第1ポリペプチドと、(c)第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび(d)細胞内シグナル伝達ドメインを含む第2ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する組成物を提供する。
【0224】
諸態様の別の一局面は、(a)抗CD127認識ドメイン、(b)第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む第1ポリペプチドと、(c)抗CD45RO認識ドメイン、(d)第5タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む第2ポリペプチドと、(e)第2タイプおよび第4タイプのタンパク質相互作用ドメインならびに(f)細胞内シグナル伝達ドメインを含む第3ポリペプチドとを含む組成物であって、第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する組成物を提供する。
【0225】
一態様において、抗CD127認識ドメインは、CD127+細胞上の、例えばCD127+/CD45RO+T細胞上の、CD127の配列を認識し、それに結合する。本明細書にいう「CD127」は、インターロイキン7受容体a(IL7Ra)、ILRA、IL7RA、CDW127またはIL-7R-αとも呼ばれ、リンパ球発生中のV(D)J組換えに関与することが示されている細胞表面受容体である。CD127の欠損は重症複合型免疫不全症(SCID)と関連づけられている。CD127の配列は、例えばヒトのCD127(NCBI Gene ID:3575)、mRNA(NCBI Ref Seq: NM_002185.5)およびポリペプチド(NCBI Ref Seq: NP_002176.2)など、いくつかの種について公知である。CD127は、CD127のすべての天然変異体またはアイソフォームを指す。一態様において、CD127ポリペプチド配列はSEQ ID NO:1に提示される。任意の局面のいくつかの態様において、CD127ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のオルソログ、変異体および/またはアレルであることができる。
【0226】
一態様において、抗CD45RO認識ドメインは、CD45RO+細胞上の、例えばCD127+/CD45RO+T細胞上の、CD45ROの配列を認識し、それに結合する。本明細書にいう「CD45RO」は、PTPRC、LCA、LY5、B220、CD45、L-CA、T200、CD45RおよびGP180とも呼ばれ、T細胞およびB細胞抗原受容体シグナル伝達の必須の調節因子であることが示されている細胞表面シグナル伝達分子である。CD45ROの配列は公知であり、例えばヒトのCD45RO(NCBI Gene ID:5788)、mRNA(NCBI Ref Seq: NM_001267798.2)およびポリペプチド(NCBI Ref Seq: NP_001254727.1)など、いくつかの種について公知である。CD45ROは、CD45ROのすべての天然変異体またはアイソフォームを指す。一態様において、CD45ROポリペプチド配列はSEQ ID NO:2に提示される。任意の局面のいくつかの態様において、CD45ROポリペプチドは、SEQ ID NO:2のオルソログ、変異体および/またはアレルであることができる。
【0227】
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用されるいくつかの用語およびフレーズの意味を、以下に記載する。別段の言明がある場合または文脈上言うまでもない場合を除き、以下の用語およびフレーズは以下に記載する意味を包含する。これらの定義は、特定態様の説明を助けるために記載するのであって、請求項に係る発明を限定しようとするものではない。本発明の範囲は請求項によってのみ限定されるからである。別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。当技術分野におけるある用語の使用法と、本明細書に記載のその定義との間に明らかな矛盾がある場合は、本明細書に記載の定義が優先されるものとする。
【0228】
便宜上、本願の明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用される一定の用語を、ここに集める。
【0229】
「減少する」、「低減する」、「低減」または「阻害する」という用語は、いずれも本明細書では、統計的に有意な量の減少を表すために使用される。いくつかの態様において、「低減する」、「低減」または「減少する」または「阻害する」は、典型的には、参照レベル(例えば所与の処置がない場合)と比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の減少を含みうる。本明細書にいう「低減」または「阻害」は、参照レベルと比較して完全な阻害または完全な低減を包含しない。「完全な阻害」は参照レベルと比較して100%の阻害である。減少は、好ましくは、所与の障害を持たない個体にとって正常範囲内として許容されるレベルへの低下である。
【0230】
「増加した」、「増加する」、「強化する」または「活性化する」という用語は、いずれも、本明細書では、統計的に有意な量の増加を意味するために使用される。いくつかの態様において、「増加した」、「増加する」、「強化する」または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または100%を含む最大100%までの増加、または参照レベルと比較して10~100%の間の任意の増加、または参照レベルと比較して少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍または少なくとも約5倍または少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍もしくはそれ以上の間の任意の増加を意味することができる。マーカーまたは症状との関連において、「増加」は、そのようなレベルの統計的に有意な増加である。
【0231】
本明細書において、「対象」とはヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、ブタ、霊長類、齧歯類、家畜または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザルが挙げられる。齧歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが挙げられる。家畜および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、スイギュウ、ネコ科動物、例えばイエネコ、イヌ科動物、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、鳥類、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚類、例えばマス、ナマズおよびサケが挙げられる。いくつかの態様において、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「個体」、「患者」および「対象」という用語は、本明細書では相互可換的に使用される。
【0232】
好ましくは対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、ヒト以外のブタ、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであることができるが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、またはGvHDの動物モデルに相当する対象として、有利に使用することができる。対象は雄性または雌性であることができる。
【0233】
対象は、治療を必要とする状態(例えば自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、またはGvHD)またはそのような状態に関係する1つもしくは複数の合併症と既に診断されているか、そのような状態を患っているもしくはそのような状態にあると既に同定され、任意で、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、もしくはGvHD、または自己免疫疾患、移植片拒絶、もしくはGvHDに関係する1つもしくは複数の合併症について、既に治療を受けている者であることができる。あるいは、対象は、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、もしくはGvHD、または自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、もしくはGvHDに関係する1つもしくは複数の合併症を有すると、既に診断されているわけではない者であることもできる。例えば対象は、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、もしくはGvHD、または自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、もしくはGvHDに関係する1つまたは複数の合併症について1つまたは複数のリスク因子を呈する者、またはリスク因子を呈さない対象であることができる。
【0234】
特定の状態について治療を「必要とする対象」は、該状態、例えば自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、もしくはGvHDを有する対象、該状態を有すると診断された対象、または該状態を発生させるリスクがある対象であることができる。
【0235】
いくつかの態様では、本明細書に記載のCAL、CAR、多成分CALおよび/もしくは多成分CAR、またはその一部分をコードする核酸が、ベクターに含まれる。本明細書に記載の局面の一部において、本明細書に記載の多成分CALおよび/もしくは多成分CARまたはその一部分をコードする核酸配列、またはその任意のモジュールは、ベクターに機能的に連結される。本明細書において使用される「ベクター」という用語は、宿主細胞への送達または異なる宿主細胞間での移動のためにデザインされた核酸コンストラクトを指す。本明細書にいうベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであることができる。「ベクター」という用語は、適正な制御要素と関連づけられた場合に複製能を有し、遺伝子配列を細胞に移入することができる、任意の遺伝要素を包含する。ベクターとしては、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどを挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。
【0236】
本明細書において使用する「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列からのRNAまたはポリペプチドの発現を指示するベクターを指す。発現させる配列は、細胞にとって異種であることが多いが、必ずしもそうではない。発現ベクターは追加の要素を含みうる。例えば発現ベクターは2つの複製系を有することで、2つの生物において、例えば発現用のヒト細胞と、クローニングおよび増幅用の原核宿主において、維持されることを可能にしうる。「発現」という用語は、RNAおよびタンパク質の生産と、適宜、タンパク質の分泌に関与する細胞プロセスを指し、これは、適宜、例えば転写、転写産物プロセシング、翻訳ならびにタンパク質のフォールディング、修飾およびプロセシングを含むが、それらに限定されるわけではない。「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNAと、遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られるポリペプチドが含まれる。「遺伝子」という用語は、適当な調節配列に機能的に連結された場合にインビトロまたはインビボでRNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子は、コードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)の他に、コード領域前後の領域、例えば5'非翻訳(5'UTR)配列または「リーダー」配列および3'UTR配列または「トレーラー」を含んでも、含まなくてもよい。
【0237】
本明細書において使用される「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の要素を少なくとも1つは含み、ウイルスベクター粒子にパッケージングされる能力を有する、核酸ベクターコンストラクトを指す。ウイルスベクターは、本明細書に記載のCALおよび/またはCAR、例えば本明細書に記載の多成分CALおよび/もしくは多成分CARまたはその一部分をコードする核酸を、非必須ウイルス遺伝子の代わりに含有することができる。ベクターおよび/または粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞に任意の核酸を移入する目的で利用されうる。数多くの形態のウイルスベクターが当技術分野では公知である。
【0238】
「組換えベクター」は、インビボでまたは形質導入細胞において発現することができる異種核酸配列または「導入遺伝子」を含むベクターを意味する。いくつかの態様では、本明細書に記載のベクターを他の適切な組成物および治療と組み合わせうることは、理解されるべきである。いくつかの態様において、ベクターはエピソーマルである。適切なエピソーマルベクターの使用は、対象において高コピー数の染色体外DNA中に関心対象のヌクレオチドを維持し、それによって染色体組込みの潜在的効果を排除する手段になる。
【0239】
本明細書において使用される「核酸」または「核酸配列」という用語は、リボ核酸、デオキシリボ核酸またはその類似体の単位を組み入れた任意の分子、好ましくはポリマー分子を指す。核酸は一本鎖または二本鎖であることができる。一本鎖核酸は変性二本鎖DNAの一本の核酸鎖であることができる。あるいは、これは、いかなる二本鎖DNAにも由来しない一本鎖核酸であることができる。一局面において、核酸はDNAであることができる。別の局面において、核酸はRNA、例えば一本鎖または二本鎖RNAであることができる。適切な核酸分子はゲノムDNAまたはcDNAを含むDNAである。他の適切な核酸分子はmRNAを含むRNAである。
【0240】
本明細書において使用される「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、隣接残基のα-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いにつながれた一連のアミノ酸残基を指定するために相互可換的に使用される。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、修飾アミノ酸(例えばリン酸化、糖化、グリコシル化など)およびアミノ酸アナログを含むアミノ酸のポリマーを指し、そのサイズまたは機能は問わない。「タンパク質」および「ポリペプチド」が比較的大きなポリペプチドに関連して使用されることが多いのに対して、「ペプチド」という用語は小さなポリペプチドに関連して使用されることが多いが、これらの用語の使用法は当技術分野では部分的に重なっている。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、遺伝子産物およびそのフラグメントを指す場合に、本明細書では相互可換的に使用される。したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然のタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、フラグメント、およびそれらの他の等価物、変異体、フラグメントおよび類似体が含まれる。
【0241】
本明細書にいう「抗体」は、IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE分子またはその抗原特異的抗体フラグメント(Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド連結scfv、ダイアボディを含むが、それらに限定されない)を指し、抗体を天然に生産する任意の種に由来するか、組換えDNA技術によって作製されたかを問わず、血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、酵母または細菌のいずれから単離されたかを問わない。
【0242】
本明細書にいう「抗原」は、抗体作用物質上の結合部位によって結合される分子である。典型的には、抗原は抗体リガンドによって結合され、インビボで抗体応答を生じさせる能力を有する。抗原は、ポリペプチド、タンパク質、核酸もしくは他の分子、またはそれらの位置部分であることができる。「抗原決定基」という用語は、抗原結合分子によって、より具体的には該分子の抗原結合部位によって認識される、抗原上のエピトープを指す。
【0243】
本明細書において使用される「抗体試薬」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、所与の抗原に特異的に結合するポリペプチドを指す。抗体試薬は、抗体を含むか、抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、抗体試薬は、モノクローナル抗体を含むか、モノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含むことができる。例えば抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)と軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)とを含むことができる。別の一例において、抗体は2つの重(H)鎖可変領域と2つの軽(L)鎖可変領域とを含む。「抗体試薬」という用語は、完全な抗体だけでなく、抗体の抗原結合性フラグメント(例えば単鎖抗体、FabおよびsFabフラグメント、F(ab')2、Fdフラグメント、Fvフラグメント、scFvおよびドメイン抗体(dAb)フラグメント(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるde Wildt et al., Eur J. Immunol. 1996;26(3):629-39参照))も包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(ならびにそのサブタイプおよび組合せ)の構造的特徴を有することができる。抗体は、マウス、ウサギ、ブタ、ラットおよび霊長類(ヒトおよび非ヒト霊長類)ならびに霊長類化抗体を含む任意の供給源に由来しうる。抗体には、ミディボディ(midibody)、ヒト化抗体、キメラ抗体なども含まれる。
【0244】
VH領域およびVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれる保存度の高い領域が間に挿入された「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変領域に、さらに細分することができる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は正確に定義されている(Kabat, E. A., et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保険社会福祉省、NIH Publication No. 91-3242、およびChothia, C. et al.(1987)J. Mol. Biol. 196:901-917参照;これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で配置された3つのCDRと4つのFRとで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0245】
「抗原結合性フラグメント」または「抗原結合ドメイン」という用語は、本明細書では相互可換的に使用され、完全長抗体の1つまたは複数のフラグメントであって関心対象の標的に特異的に結合する能力を保っているものを指すために使用される。完全長抗体の「抗原結合性フラグメント」という用語に包含される結合性フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントである、Fabフラグメント、(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab')2フラグメント、(iii)VHドメインとCH1ドメインとからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVLドメインとVHドメインとからなるFvフラグメント、(v)VHドメインまたはVLドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、および(vi)特異的抗原結合機能性を保っている単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0246】
本明細書において使用される「特異的結合」という用語は、2つの分子、化合物、細胞および/または粒子間の化学的相互作用であって、第1の実体が、第2の標的実体に、標的でない第3の実体に結合する場合よりも高い特異性およびアフィニティで結合するものを指す。いくつかの態様では、特異的結合が、第3の非標的実体に対するアフィニティの少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍またはそれ以上である、第2の標的実体に対する第1の実体のアフィニティを指す場合もある。所与の標的に対して特異的な試薬は、利用されるアッセイの条件下でその標的に対して特異的な結合を呈するものである。いくつかの態様において、本明細書に記載の結合は、優先的結合、例えば2つの分子、化合物、細胞および/または粒子の間の結合であり、第1の実体は、第2の標的実体に、標的でない第3の実体に結合する場合よりも少なくとも2倍は高い特異性およびアフィニティで結合する。
【0247】
加えて、本明細書に記載されているとおり、組換えヒト化抗体は、ヒトにおける治療のために、機能的活性を維持しつつ、潜在的免疫原性が減少するように、さらに最適化することができる。これに関連して、機能的活性とは、本明細書に記載の組換え抗体またはその抗体試薬に付随する1つまたは複数の公知の機能的活性を呈する能力を有するポリペプチドを意味する。そのような機能的活性としては、例えば標的への結合能が挙げられる。
【0248】
本明細書において使用される「治療する」、「治療」、「治療すること」または「寛解」は、疾患または障害、例えば自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、もしくはGvHDに関連する状態の進行または重症度を逆転させ、緩和し、寛解させ、阻害し、減速しまたは停止することを目的とする治療的処置を指す。「治療する」という用語は、例えば自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、またはGvHDと関連する状態、疾患または障害の少なくとも1つの有害作用または症状を低減しまたは緩和することを包含する。治療は一般に、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減するのであれば、「有効」である。あるいは、治療は、疾患の進行が低減しまたは停止するのであれば、「有効」である。すなわち「治療」は、症状またはマーカーの改善を包含するだけでなく、治療がない場合に予想されるものとの比較で、症状の進行または悪化の停止または少なくとも減速も包含する。有益な臨床結果または望ましい臨床結果としては、検出可能であれ検出不可能であれ、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち悪化しないこと)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の寛解または緩和、緩解(remission)(部分的であるか完全であるかを問わない)、および/または死亡率の減少が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。疾患の「治療」という用語は、疾患の症状または副作用の軽減(待期的治療を含む)も包含する。
【0249】
本明細書において使用される「薬学的組成物」という用語は、薬学的に許容される担体、例えば医薬産業においてよく使用される担体と組み合わされた活性作用物質を指す。「薬学的に許容される」というフレーズは、本明細書では、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、化合物、材料、組成物および/または剤形を指すために使用される。
【0250】
本明細書において使用される「投与する」という用語は、本明細書において開示される作用物質、例えばCAL、CAR、組成物または細胞を、所望する部位における作用物質の少なくとも部分的送達をもたらす方法または経路によって、対象に入れることを指す。本明細書において開示される化合物を含む薬学的組成物は、対象における有効な治療をもたらす任意の適当な経路によって投与することができる。
【0251】
免疫チェックポイント阻害剤は、1つまたは複数の免疫チェックポイントタンパク質を阻害する。免疫系は、自己寛容を維持し免疫応答を調整するのに不可欠な複数の阻害経路を有する。例えばT細胞では、応答の強さおよび質が、T細胞受容体による抗原認識を介して開始され、共刺激シグナルと阻害シグナルのバランスを保つ免疫チェックポイントタンパク質によって調節される。任意の局面のいくつかの態様において、対象または患者は免疫チェックポイントタンパク質の少なくとも1つの阻害剤で処置される。本明細書にいう「免疫チェックポイントタンパク質」は、活性である場合に、免疫活性、例えばT細胞活性に対して阻害効果を呈するタンパク質を指す。例示的な免疫チェックポイントタンパク質としては、PD-1(例えばNCBI Gene ID:5133)、PD-L1(例えばNCBI Gene ID:29126)、PD-L2(例えばNCBI Gene ID:80380)、TIM-3(例えばNCBI Gene ID:84868)、CTLA4(例えばNCBI Gene ID:1493)、TIGIT(例えばNCBI Gene ID:201633)、KIR(例えばNCBI Gene ID:3811)、LAG3(例えばNCBI Gene ID:3902)、DD1-α(例えばNCBI Gene ID:64115)、A2AR(例えばNCBI Gene ID:135)、B7-H3(例えばNCBI Gene ID:80381)、B7-H4(例えばNCBI Gene ID:79679)、BTLA(例えばNCBI Gene ID:151888)、IDO(例えばNCBI Gene ID:3620)、TDO(例えばNCBI Gene ID:6999)、HVEM(例えばNCBI Gene ID:8764)、GAL9(例えばNCBI Gene ID:3965)、2B4(CD2分子ファミリーに属し、NK細胞、γδT細胞およびメモリーCD8+(αβ)T細胞のすべてに発現する)(例えばNCBI Gene ID:51744)、CD160(BY55とも呼ばれる)(例えばNCBI Gene ID:11126)、および種々のB-7ファミリーリガンドを挙げることができる。B7ファミリーリガンドとしては、B7-1、B7-2、B7-DC、B7-H1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6およびB7-H7が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0252】
免疫チェックポイント阻害剤の非限定的な例としては、以下の阻害剤を挙げることができる(チェックポイント標的と製造者を括弧内に記す):MGA271(B7-H3:MacroGenics)、イピリムマブ(CTLA-4;Bristol Meyers Squibb)、ペンブロリズマブ(PD-1;Merck)、ニボルマブ(PD-1;Bristol Meyers Squibb)、アテゾリズマブ(PD-L1;Genentech)、ガリキシマブ(B7.1;Biogen)、IMP321(LAG3:Immuntep)、BMS-986016(LAG3;Bristol Meyers Squibb)、SMB-663513(CD137;Bristol-Meyers Squibb)、PF-05082566(CD137;Pfizer)、IPH2101(KIR;Innate Pharma)、KW-0761(CCR4;協和キリン)、CDX-1127(CD27;CellDex)、MEDI-6769(Ox40;MedImmune)、CP-870, 893(CD40;Genentech)、トレメリムマブ(CTLA-4;Medimmune)、ピディリズマブ(PD-1;Medivation)、MPDL3280A(PD-L1;Roche)、MEDI4736(PD-L1;AstraZeneca)、MSB0010718C(PD-L1;EMD Serono)、AUNP12(PD-1;Aurigene)、アベルマブ(PD-L1;Merck)、デュルバルマブ(PD-L1;Medimmune)、IMP321、可溶性Ig融合タンパク質(Brignone et al., 2007, J. Immunol. 179:4202-4211)、抗B7-H3抗体MGA271(Loo et al., 2012, Clin. Cancer Res. July 15(18)3834)、TIM3(T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3)阻害剤(Fourcade et al., 2010, J. Exp. Med. 207:2175-86およびSakuishi et al., 2010, J. Exp. Med. 207:2187-94)、米国特許第5,811,097号、同第5,811,097号、同第5,855,887号、同第6,051,227号、同第6,207,157号、同第6,682,736号、同第6,984,720号および同第7,605,238号に記載の抗CTLA-4抗体、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)、イピリムマブ(10D1、MDX-D010としても公知)、米国特許第7,488,802号、同第7,943,743号、同第8,008,449号、同第8,168,757号、同第8,217,149号ならびにPCT特許出願公開番号WO03042402、WO2008156712、WO2010089411、WO2010036959、WO2011066342、WO2011159877、WO2011082400およびWO2011161699に記載のPD-1ならびにPD-L1遮断薬、ニボルマブ(MDX 1106、BMS 936558、ONO4538)、ランブロリズマブ(MK-3475またはSCH900475)、CT-011、AMP-224、およびBMS-936559(MDX-1105-01)。上記の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0253】
「統計的に有意」または「有意に」という用語は、統計的有意性、例えば0.05未満のp値による帰無仮説の棄却を指し、一般的には2標準偏差(2SD)以上の差を意味する。
【0254】
実施例を除き、または別段の表示がある場合を除き、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表す数字はすべて、いずれの場合も、「約」という用語で修飾されていると理解すべきである。パーセンテージと一緒に使用される場合、「約」という用語は、±1%を意味することができる。
【0255】
本明細書において使用される「含む」という用語は、本方法または組成物にとって本質的な組成物、方法およびそれらの各成分に関連して使用されるが、本質的であるか否かを問わず、指定されていない要素の包含も許容される。
【0256】
「からなる」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法およびそれらの各構成要素を指し、その態様の当該説明において列挙されていない要素はいずれも除外される。
【0257】
本明細書において使用される「から本質的になる」という用語は、所与の態様にとって必要な要素を指す。この用語は、当該態様の基本的かつ新規または機能的な特徴に実質的な影響を及ぼさない要素の存在を許容する。
【0258】
単数の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含する。同様に、「または」という単語は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、「および」を包含するものとする。本開示の実施または試験では、本明細書に記載するものと類似するか等価な方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料を以下に説明する。「e.g.」という略号はexempli gratiaというラテン語に由来し、本明細書では非限定的な例を示すために使用される。したがって「e.g.」という略号は「例えば」と同義である。
【0259】
本明細書において別段の定義がある場合を除き、本願との関連で使用される科学用語および技術用語は、本開示が属する技術分野の通常の技能を有する者に一般に理解されている意味を有するものとする。本発明は本明細書に記載の特定の方法、プロトコールおよび試薬に限定されず、したがってさまざまでありうると理解すべきである。本明細書において使用される術語には、特定の態様を説明する目的しかなく、本願の請求項によってのみ規定される本発明の範囲を限定する意図はない。免疫学および分子生物学における一般的用語の定義は、「The Merck Manual of Diagnosis and Therapy」第19版、Merck Sharp&Dohme Corp.刊、2011(ISBN 978-0-911910-19-3);Robert S. Porterら編「The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine」Blackwell Science Ltd.刊、1999-2012(ISBN 9783527600908);およびRobert A. Meyers編「Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference」VCH Publishers, Inc.刊、1995(ISBN 1-56081-569-8);Werner Luttmann著「Immunology」Elsevier刊、2006;「Janeway's Immunobiology」Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver編、Taylor&Francis Limited, 2014(ISBN 0815345305、9780815345305);「Lewin's Genes XI」Jones&Bartlett Publishers刊, 2014(ISBN-1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2012)(ISBN 1936113414);Davisら著「Basic Methods in Molecular Biology」Elsevier Science Publishing, Inc.、米国ニューヨーク(2012)(ISBN 044460149X);「Laboratory Methods in Enzymology: DNA」Jon Lorsch編、Elsevier, 2013(ISBN 0124199542);「Current Protocols in Molecular Biology」(CPMB)、Frederick M. Ausubel編、John Wiley and Sons、2014(ISBN 047150338X, 9780471503385)、「Current Protocols in Protein Science」(CPPS)、John E. Coligan編、John Wiley and Sons, Inc.、2005;および「Current Protocols in Immunology」(CPI)(John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe編、John Wiley and Sons, Inc.、2003(ISBN 0471142735、9780471142737)に見いだすことができ、これらの文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0260】
他の用語は、本明細書において、本発明のさまざまな局面の説明内で定義する。
【0261】
本願において言及する特許および他の刊行物は、参考文献、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願を含めてすべて、例えば本明細書に記載の技術に関連して使用されるかもしれないそのような刊行物に記載の方法論を記載し開示するために、参照により、特に本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、それらの開示が本願の出願日より前になされたという理由で提供されるにすぎない。この点について、本発明者らが先行発明を理由に、または他の何らかの理由で、そのような開示に先行する資格がないことの自白であるとみなすべきものは何もない。これらの文書の日付に関する陳述またはこれらの文書の内容に関する表現はいずれも出願人が入手できる情報に基づくが、これらの文書の日付または内容の正しさに関する承認を構成するものではない。
【0262】
本開示の態様の説明は網羅的であることを意図しておらず、開示した形態そのものに本開示を限定しようとするものでもない。本明細書には本開示の具体的態様または実施例が例示を目的として記載されているが、関連分野の当業者にはわかるであろうとおり、さまざまな等価な変更が本開示の範囲内で可能である。例えば、方法の工程または機能は所与の順序で提示されているが、代替的態様では、機能を異なる順序で履行してもよく、実質的に同時に履行してもよい。本明細書において提供される開示の教示は、適宜、他の手順または方法にも応用することができる。本明細書に記載のさまざまな態様を組み合わせてさらなる態様を提供することができる。必要であれば、上記参考文献および出願の組成物、機能および概念を利用するように本開示の局面を改変することで、本開示のさらなる態様を提供することもできる。さらにまた、生物学的機能の等価性を考慮することにより、生物学的作用または化学的作用の種類または量に影響を及ぼすことなく、いくつかの変更をタンパク質構造に加えることができる。これらの変更および他の変更は、詳細な説明に照らして、本開示に加えることができる。そのような変更はすべて添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0263】
前述の態様のいずれかの具体的要素を、他の態様の要素と組み合わせ、または置き換えることができる。さらにまた、本開示の一定の態様に関連する利点をこれらの態様との関連において説明したが、他の態様もそのような利点を呈しうるし、本開示の範囲内に包含されるために、すべての態様がそのような利点を必ずしも呈する必要があるわけではない。
【0264】
本明細書および実施例において同定された特許および他の刊行物はすべて、あらゆる目的で、参照により本明細書に、明らかに組み入れられる。これらの刊行物は、それらの開示が本願の出願日より前になされたという理由で提供されるにすぎない。この点について、本発明者らが先行発明を理由に、または他の何らかの理由で、そのような開示に先行する資格がないことの自白であるとみなすべきものは何もない。これらの文書の日付に関する陳述またはこれらの文書の内容に関する表現はいずれも出願人が入手できる情報に基づくが、これらの文書の日付または内容の正しさに関する承認を構成するものではない。
【0265】
好ましい態様を本明細書において詳細に描写し説明したが、本発明の要旨から逸脱することなくさまざまな変更、付加、置換などを行いうること、そしてそれゆえに、それらは後述する特許請求の範囲に定義される発明の範囲内にあるとみなされることは、当業者には明らかだろう。さらに、まだ表示されていない範囲で、本明細書において記載され例示されるさまざまな態様のいずれか一つが、本明細書において開示される他の態様のいずれかに示される特徴を組み込むように、さらに修飾されうることは、当業者には理解されるだろう。
【0266】
本明細書に記載の技術のいくつかの態様は、以下の番号付きの項目により定義することができる。
第1項. a. TCR認識ドメインと、
b. 細胞内シグナル伝達ドメイン、および
c. 第1タイプのタンパク質相互作用ドメイン
のうちの一方または両方と
を含む、組成物。
第2項. a. TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと
を含む組成物であって、該第1タイプおよび該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインが互いに特異的に結合する、組成物。
第3項. a. TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2認識ドメインおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、該第1タイプおよび該第3タイプのタンパク質相互作用ドメインが特異的に結合する、組成物。
第4項. a. TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、
c. 第2認識ドメインおよび第3タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第3タイプのタンパク質相互作用ドメインとが、該第1タイプのタンパク質相互作用ドメインへの結合に関して競合する、組成物。
第5項. 前記第3タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび前記第1タイプのタンパク質相互作用ドメインが、互いに、前記第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび前記第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも高いアフィニティを有する、第3項~第4項のいずれか一項記載の組成物。
第6項. a. TCR認識ドメインおよび第1タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプのタンパク質相互作用ドメイン、第4タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、
c. 第2認識ドメインおよび第5タイプのタンパク質相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、
該第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
第7項. 前記第4タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび前記第5タイプのタンパク質相互作用ドメインが、前記第2タイプのタンパク質相互作用ドメインおよび前記第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも弱いアフィニティを有する、第6項記載の組成物。
第8項. 前記第1ポリペプチドが第6タイプのタンパク質相互作用ドメインをさらに含み、認識ポリペプチドが第7タイプのタンパク質相互作用ドメインをさらに含み、それらが互いに特異的に結合する、第6項~第7項のいずれか一項記載の組成物。
第9項. 前記第2認識ドメインが、前記TCR認識ドメインによって認識されない標的に特異的である、第3項~第8項のいずれか一項記載の組成物。
第10項. 前記第2認識ドメインが、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出されかつ疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されない標的に特異的である、第3項~第9項のいずれか一項記載の組成物。
第11項. 前記TCR認識ドメインが、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)、MHC-ペプチド複合体またはMHC-ペプチド融合体を含む、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
第12項. 前記ペプチドが、ヒトペプチドまたは非ヒトペプチドである、第11項記載の組成物。
第13項. 前記ペプチドが、マイナー組織適合性抗原(MiHA)である、第11項~第12項のいずれか一項記載の組成物。
第14項. 前記MHCが、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、第11項~第13項のいずれか一項記載の組成物。
第15項. 前記タンパク質相互作用ドメインが、それぞれのポリペプチドの細胞外部分に見出される、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
第16項. a. タンパク質相互作用ドメインがロイシンジッパーであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてロイシンジッパーのペアであり、
b. タンパク質相互作用ドメインがBZip(RR)および/またはAZip(EE)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてBZip(RR)およびAZip(EE)であり、
c. タンパク質相互作用ドメインがPSD95-Dlg1-zo-1(PDZ)ドメインであり、
d. タンパク質相互作用ドメインがストレプトアビジンおよび/またはストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてストレプトアビジンおよびストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)であり、
e. タンパク質相互作用ドメインがmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)および/またはFK506結合タンパク質(FKBP)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)およびFK506結合タンパク質(FKBP)であり、
f. タンパク質相互作用ドメインがシクロフィリン-Fas融合タンパク質(CyP-Fas)および/またはFK506結合タンパク質(FKBP)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてシクロフィリン-Fas融合タンパク質(CyP-Fas)およびFK506結合タンパク質(FKBP)であり、
g. タンパク質相互作用ドメインがカルシニューリンA(CNA)および/またはFK506結合タンパク質(FKBP)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてカルシニューリンA(CNA)およびFK506結合タンパク質(FKBP)であり、
h. タンパク質相互作用ドメインがジベレリン非感受性(GIA)および/またはジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてジベレリン非感受性(GIA)およびジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であり、
i. タンパク質相互作用ドメインがSnapタグおよび/またはHaloタグであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてSnapタグおよびHaloタグであり、
j. タンパク質相互作用ドメインがT14-3-3-cΔCおよび/またはPMA2のC末端ペプチド(CT52)であるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてT14-3-3-cΔCおよびPMA2のC末端ペプチド(CT52)であり、
k. タンパク質相互作用ドメインがPYLおよび/またはABIであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてPYLおよびABIであり、かつ/あるいは
l. タンパク質相互作用ドメインがヌクレオチドタグおよび/またはジンクフィンガードメインであるか、タンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてヌクレオチドタグおよびジンクフィンガードメインである、
前記項目のいずれか一項記載の組成物。
第17項. 前記ヌクレオチドタグが、DNAタグまたはdsDNAタグである、第16項記載の組成物。
第18項. 前記細胞内シグナル伝達ドメインが、
TCRC、FcRy、FcRp、CD3y、CD35、CD3s、CD3C、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、KD2C SLP76、TRIM、ZAP70、および41BB
からなる群より選択されるタンパク質からのシグナル伝達ドメインである、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
第19項. 前記項目のいずれか一項記載の組成物を含みかつ/または発現する細胞。
第20項. 前記TCR認識ドメインが、前記細胞にとって同種異系のMHCを含む、第19項記載の細胞。
第21項. 前記TCR認識ドメインが、前記細胞にとって同種異系のペプチドを含む、第19項記載の細胞。
第22項. 前記細胞が、樹状細胞、制御性T細胞、またはエフェクターT細胞である、第19項~第21項のいずれか一項記載の細胞。
第23項. 前記細胞が、組成物のポリペプチドを発現するように改変されている、第19項~第22項のいずれか一項記載の細胞。
第24項. 前記細胞が、組成物のシグナル伝達ポリペプチドを発現するように改変されている、第19項~第22項のいずれか一項記載の細胞。
第25項. 前記細胞が、ネイティブMHC I/IIをノックアウトするために、さらに改変されている、第19項~第24項のいずれか一項記載の細胞。
第26項. a. 抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメイン、
b. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
第27項. a. 抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメイン、ならびに
b. 第1タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第1ポリペプチドと、
c. 第2タイプのタンパク質相互作用ドメイン、および
d. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む第2ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
第28項. a. 抗CD127認識ドメイン、および
b. 第1タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第1ポリペプチドと、
c. 抗CD45RO認識ドメイン、および
d. 第5タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第2ポリペプチドと、
e. 第2タイプおよび第4タイプのタンパク質相互作用ドメイン、ならびに
f. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む第3ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、
該第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
第29項. 第26項~第28項のいずれか一項記載のCARまたは組成物を含む、細胞。
第30項. 治療または予防を必要とする対象における自己免疫疾患を治療するか、または移植片拒絶もしくはGVHDを治療もしくは予防する方法であって、前記項目のいずれか一項記載の組成物および/または細胞を対象に投与する工程を含む、方法。
第31項. 前記TCR認識ドメインが、前記対象にとって同種異系のMHCを含む、第30項記載の方法。
第32項. 前記TCR認識ドメインが、移植細胞にとって自家のMHCを含む、第30項記載の方法。
第33項. 前記TCR認識ドメインが、前記対象にとって同種異系のペプチドを含む、第30項記載の方法。
第34項. 前記TCR認識ドメインが、移植細胞にとって自家のペプチドを含む、第30項記載の方法。
第35項. 前記移植が血行再建複合同種組織移植(VCA)である、第32項または第34項のいずれか一項記載の方法。
第36項. 前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、または強皮症である、第35項のいずれか記載の方法。
【0267】
本明細書に記載の技術のいくつかの態様は、以下の番号付きの項目により定義することができる。
第1項. a. TCR認識ドメインと、
b. 細胞内シグナル伝達ドメイン、および
c. 第1タイプの生体分子相互作用ドメイン
のうちの一方または両方と
を含む、組成物。
第2項. a. TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプおよび該第2タイプの生体分子相互作用ドメインが互いに特異的に結合する、
組成物。
第3項. a. TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2認識ドメインおよび第3タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプおよび該第3タイプの生体分子相互作用ドメインが互いに特異的に結合する、
組成物。
第4項. a. TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、
c. 第2認識ドメインおよび第3タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第2タイプおよび該第3タイプの生体分子相互作用ドメインが、該第1タイプの生体分子相互作用ドメインへの結合に関して競合する、
組成物。
第5項. 前記第3タイプの生体分子相互作用ドメインおよび前記第1タイプの生体分子相互作用ドメインが、互いに、前記第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび前記第1タイプの生体分子相互作用ドメインよりも高いアフィニティを有する、第3項~第4項のいずれか一項記載の組成物。
第6項. a. TCR認識ドメインの少なくとも一部分および第1タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、第1ポリペプチドと、
b. 第2タイプの生体分子相互作用ドメイン、第4タイプの生体分子相互作用ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、シグナル伝達ポリペプチドと、
c. 第2認識ドメインおよび第5タイプの生体分子相互作用ドメインを含む、認識ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプの生体分子相互作用ドメインと該第2タイプの生体分子相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、
該第4タイプの生体分子相互作用ドメインと該第5タイプの生体分子相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
第7項. 前記第4タイプの生体分子相互作用ドメインおよび前記第5タイプの生体分子相互作用ドメインが、前記第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび前記第1タイプのタンパク質相互作用ドメインよりも弱いアフィニティを有する、第6項記載の組成物。
第8項. 前記第1ポリペプチドが第6タイプの生体分子相互作用ドメインをさらに含み、前記認識ポリペプチドが第7タイプの生体分子相互作用ドメインをさらに含み、それらが互いに特異的に結合する、第6項~第7項のいずれか一項記載の組成物。
第9項. 前記第1ポリペプチドがTCR認識ドメイン全体を含む、第2項~第8項のいずれか一項記載の組成物。
第10項. 前記TCR認識ドメインが、少なくとも2つの別個のポリペプチド配列を含み、前記第1ポリペプチドが、該TCR認識ドメインの該別個のポリペプチド配列のうちの少なくとも1つを含み、該第1ポリペプチドが、該TCR認識ドメインの第2のまたはさらなるポリペプチド配列に結合するかまたはそれらと複合体化して該TCR認識ドメインを形成する、第2項~第8項のいずれか一項記載の組成物。
第11項. 前記TCR認識ドメインが非ポリペプチド成分を含む、第1項~第10項のいずれか一項記載の組成物。
第12項. 前記第2認識ドメインが、前記TCR認識ドメインによって認識されない標的に特異的である、第3項~第11項のいずれか一項記載の組成物。
第13項. 前記第2認識ドメインが、健常細胞上および/または非標的細胞上に見出されかつ疾患細胞上および/または標的細胞上には見出されない標的に特異的である、第3項~第12項のいずれか一項記載の組成物。
第14項. 前記TCR認識ドメインが、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)、MHC-ペプチド複合体、無特徴ペプチド(featureless peptide)MHC、またはMHC-ペプチド融合体を含む、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
第15項. 前記ペプチドが、ヒトペプチドまたは非ヒトペプチドである、第14項記載の組成物。
第16項. 前記ペプチドが、マイナー組織適合性抗原(MiHA)である、第14項~第15項のいずれか一項記載の組成物。
第17項. 前記MHCが、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、第14項~第16項のいずれか一項記載の組成物。
第18項. 前記MHC-ペプチド複合体が、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、第14項~第17項のいずれか一項記載の組成物。
第19項. 前記MHC-ペプチド融合体が、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、第14項~第17項のいずれか一項記載の組成物。
第20項. 前記MHCが、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、第14項~第17項のいずれか一項記載の組成物。
第21項. 前記MHC-ペプチド複合体が、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、第14項~第17項のいずれか一項記載の組成物。
第22項. 前記MHC-ペプチド融合体が、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、第14項~第17項のいずれか一項記載の組成物。
第23項. 前記MHCが、MHCクラスIまたはMHCクラスIIである、第14項~第22項のいずれか一項記載の組成物。
第24項. 前記TCR認識ドメインが、CD1ドメインまたはCD1ドメイン-リガンド複合体もしくは融合体を含む、第1項~第13項のいずれか一項記載の組成物。
第25項. 前記CD1がCD1dである、第24項記載の組成物。
第26項. 前記生体分子相互作用ドメインが、それぞれのポリペプチドの細胞外部分に見出される、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
第27項. a. 前記生体分子相互作用ドメインがロイシンジッパーであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてロイシンジッパーのペアであり、
b. 前記生体分子相互作用ドメインがBZip(RR)および/もしくはAZip(EE)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてBZip(RR)およびAZip(EE)であり、
c. 前記生体分子相互作用ドメインがPSD95-Dlg1-zo-1(PDZ)ドメインであり、
d. 前記生体分子相互作用ドメインがストレプトアビジンおよび/もしくはストレプトアビジン結合生体分子(SBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてストレプトアビジンおよびストレプトアビジン結合生体分子(SBP)であり、
e. 前記生体分子相互作用ドメインがmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
f. 前記生体分子相互作用ドメインがシクロフィリン-Fas融合生体分子(CyP-Fas)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてシクロフィリン-Fas融合生体分子(CyP-Fas)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
g. 前記生体分子相互作用ドメインがカルシニューリンA(CNA)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてカルシニューリンA(CNA)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
h. 前記生体分子相互作用ドメインがジベレリン非感受性(GIA)および/もしくはジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてジベレリン非感受性(GIA)およびジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であり、
i. 前記生体分子相互作用ドメインがSnapタグおよび/もしくはHaloタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてSnapタグおよびHaloタグであり、
j. 前記生体分子相互作用ドメインがT14-3-3-cΔCおよび/もしくはPMA2のC末端ペプチド(CT52)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてT14-3-3-cΔCおよびPMA2のC末端ペプチド(CT52)であり、
k. 前記生体分子相互作用ドメインがPYLおよび/もしくはABIであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてPYLおよびABIであり、
l. 前記生体分子相互作用ドメインがヌクレオチドタグおよび/もしくはジンクフィンガードメインであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてヌクレオチドタグおよびジンクフィンガードメインであり、
m. 前記生体分子相互作用ドメインがヌクレオチドタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてヌクレオチドタグのペアであり、
n. 前記生体分子相互作用ドメインがフルオレセインイソチオシアネート(FITC)および/もしくはFITC結合生体分子であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてFITCおよびFITC結合タンパク質であり、かつ/あるいは
o. 前記タンパク質相互作用ドメインが(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)および/もしくはR-PE/PE結合タンパク質であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体として(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)およびR-PE/PE結合タンパク質である、
前記項目のいずれか一項記載の組成物。
第28項. 前記ヌクレオチドタグが、DNAタグまたはdsDNAタグである、第27項記載の組成物。
第29項. 前記細胞内シグナル伝達ドメインが、
TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ;CD35;CD3ζ;CD3C;CD22;CD79a;CD79b;CD66d;CARD11;CD2;CD7;CD27;CD28;CD30;CD40;CD54(ICAM);CD83;CD134(OX40);CD137(4-1BB);CD150(SLAMF1);CD152(CTLA4);CD223(LAG3);CD270(HVEM);CD273(PD-L2);CD274(PD-L1);CD278(ICOS);DAP10;LAT;KD2C SLP76;TRIM;およびZAP70
からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質からのシグナル伝達ドメインを含むか、または該シグナル伝達ドメインである、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
第30項. 前記項目のいずれか一項記載の組成物を含みかつ/または発現する、細胞。
第31項. 前記項目のいずれか一項記載の第1ポリペプチドと、前記項目のいずれか一項記載のシグナル伝達ポリペプチドを発現するかまたは含む細胞とを含む、組成物。
第32項. 前記TCR認識ドメインが、前記細胞にとって同種異系、自家、または異種であるMHCを含む、第30項~第31項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第33項. 前記TCR認識ドメインが合成MHCを含む、第30項~第32項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第34項. 前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが前記細胞にとって同種異系、自家、または異種である、第30項~第33項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第35項. 前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが合成ペプチドである、第30項~第34項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第36項. 前記細胞が、NK細胞、樹状細胞、制御性T細胞またはエフェクターT細胞である、第30項~第35項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第37項. 前記細胞が、前記組成物のポリペプチドのうちの1つまたは複数を発現するように改変されている、第30項~第36項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第38項. 前記細胞が、前記組成物のシグナル伝達ポリペプチドを発現するように改変されている、第30項~第37項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第39項. 前記細胞が、ネイティブMHC I/IIがノックアウトまたはノックダウンされるように、さらに改変されている、第30項~第38項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第40項. 前記細胞が、細胞表面上に発現するネイティブMHC I/IIがノックダウンされるように、さらに改変されている、第30項~第39項のいずれか一項記載の細胞または組成物。
第41項. a. 抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメイン、
b. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
第42項. a. 抗CD127および/または抗CD45RO認識ドメイン、ならびに
b. 第1タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第1ポリペプチドと、
c. 第2タイプのタンパク質相互作用ドメイン、および
d. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む第2ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
第43項. a. 抗CD127認識ドメイン、および
b. 第1タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第1ポリペプチドと、
c. 抗CD45RO認識ドメイン、および
d. 第5タイプのタンパク質相互作用ドメイン
を含む第2ポリペプチドと、
e. 第2タイプおよび第4タイプのタンパク質相互作用ドメイン、ならびに
f. 細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む第3ポリペプチドと
を含む組成物であって、
該第1タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第2タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合し、
該第4タイプのタンパク質相互作用ドメインと該第5タイプのタンパク質相互作用ドメインとが互いに特異的に結合する、
組成物。
第44項. 第41項~第43項のいずれか一項記載のCARまたは組成物を含む、細胞。
第45項. それを必要とする対象における、自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞媒介性の炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、またはGvHDを治療または予防する方法であって、前記項目のいずれか一項記載の組成物および/または細胞を該対象に投与する工程を含む、方法。
第46項. 前記TCR認識ドメインが、前記対象にとって同種異系のMHCを含む、第45項記載の方法。
第47項. 前記TCR認識ドメインが、移植細胞にとって自家のMHCを含む、第45項記載の方法。
第48項. 前記TCR認識ドメインが、移植細胞にとって異種であるMHCを含む、第45項記載の方法。
第49項. 前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが前記対象にとって同種異系である、第45項記載の方法。
第50項. 前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが移植細胞にとって自家である、第45項記載の方法。
第51項. 前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが移植細胞にとって自家である、第45項記載の方法。
第52項. 前記MHCおよび/または前記ペプチドが合成である、第45項~第51項のいずれか一項記載の方法。
第53項. 前記移植片が、任意のヒトまたは非ヒトの細胞、組織、または臓器である、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第54項. 前記移植が、同種異系の造血幹細胞または固形臓器の移植である、第45項~第53項のいずれか一項記載の方法。
第55項. 前記悪性T細胞状態が、T細胞性急性リンパ芽球性白血病またはT細胞性リンパ芽球性リンパ腫である、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第56項. 前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、白斑、多発性硬化症、脱毛症、セリアック病、天疱瘡、関節リウマチ、または強皮症である、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第57項. 前記自己免疫疾患が、甲状腺炎、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、アジソン病、およびレイノー現象、グッドパスチャー病、関節炎(関節リウマチ、例えば急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風または痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、急性免疫性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、II型コラーゲン誘導関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎(例えば治療後ライム病症候群)、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、および若年発症型関節リウマチ、慢性進行性関節炎、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、反応性関節炎、および強直性脊椎炎)、回帰性関節炎、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪乾癬、アトピー性疾患を含むアトピー、例えば枯草熱およびヨブ症候群、皮膚炎、例えば接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異性皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎、x連鎖性高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、じんま疹、例えば慢性アレルギー性じんま疹および慢性特発性じんま疹、例えば慢性自己免疫性じんま疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば視神経脊髄型MS、一次性進行型MS(PPMS)、および再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、散在性硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、潰瘍大腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、ポリープ性大腸炎、壊死性腸炎、および全層性大腸炎、および自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例えば成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、ぶどう膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、リウマチ性脊椎炎、リウマチ性滑膜炎、遺伝性血管浮腫、髄膜炎に見られるような脳神経損傷、妊娠性疱疹、妊娠性類天疱瘡、陰嚢そう痒症、自己免疫性早発卵巣不全、自己免疫状態による突発性難聴、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスムッセン脳炎ならびに辺縁系および/または脳幹脳炎、ぶどう膜炎、例えば前部ぶどう膜炎、急性前部ぶどう膜炎、肉芽腫性ぶどう膜炎、非肉芽腫性ぶどう膜炎、水晶体抗原性ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、または自己免疫性ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群を伴うおよびネフローゼ症候群を伴わない糸球体腎炎(GN)、例えば慢性または急性糸球体腎炎、例えば一次性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、I型およびII型を含む膜増殖性または膜性増殖性GN(MPGN)、および急速進行性GN、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌不全、亀頭炎、例えば形質細胞限局性亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、葉状魚鱗癬、表皮剥離性角化症、前悪性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー状態およびアレルギー応答、アレルギー反応、湿疹、例えばアレルギー性湿疹またはアトピー性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、および水疱性掌蹠湿疹、喘息、例えば気管支ぜんそく、気管支喘息、および自己免疫性喘息、T細胞浸潤および慢性炎症性応答を伴う病態、妊娠中の胎児A-B-O血液型などといった外来抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、ループス、例えばループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループスおよび円板状エリテマトーデス、ループス脱毛症、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えば皮膚SLEまたは亜急性皮膚SLE、新生児ループス症候群(NLE)、および播種状エリテマトーデス、若年発症型(I型)糖尿病、例えば小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性大動脈障害、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばリンパ腫様肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例えば血管炎、大型血管炎(リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中型血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、免疫性血管炎、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎などの壊死性血管炎、およびANCA関連血管炎、例えばチャーグ・ストラウス血管炎またはチャーグ・ストラウス症候群(CSS)およびANCA関連小型血管炎、側頭動脈炎、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、溶血性貧血または免疫性溶血性貧血、例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(悪性の貧血)、アジソン病、真性赤血球性貧血または赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、外傷または出血に続発するもの、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜天疱瘡-粘膜類天疱瘡、および紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病またはライター症候群、免疫複合体腎炎などの免疫複合体疾患、抗体関連腎炎、ポリニューロパチー、IgMポリニューロパチーまたはIgM関連ニューロパチーなどの慢性ニューロパチー、および自己免疫性または免疫介在性血小板減少症、例えば慢性ITPまたは急性ITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、強膜炎、例えば特発性角膜強膜炎、上強膜炎、精巣および卵巣の自己免疫疾患、例えば自己免疫性の精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)または亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、神経学的腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、例えばランバート・イートン筋無力症候群またはイートン・ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎またはアレルギー脳脊髄炎および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、胸腺腫関連重症筋無力症などの重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、オプソクローヌスまたはオプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ球様間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)vs NSIP、ギラン・バレー症候群、ベルジェ病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、急性熱性好中球性皮膚症、角層下膿疱性皮膚症、一過性棘融解性皮膚症、硬変、例えば原発性胆汁性肝硬変および肺硬変、自己免疫性腸疾患症候群、セリアック病または小児脂肪便症、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性難聴、多発性軟骨炎、例えば難治性または再燃性または再発性多発軟骨炎、肺胞タンパク症、コーガン症候群/非梅毒性角膜実質炎、ベル麻痺、スイート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状疱疹関連痛、アミロイドーシス、非がん性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば良性単クローン性ガンマグロブリン血症および意義不明の単クローン性γグロブリン血症、MGUS)を含む原発性リンパ球増加症、末梢性ニューロパチー、腫瘍随伴症候群、CNSのチャネロパチーを含むチャネロパチー、自閉症、炎症性ミオパチー、巣状糸球体硬化症または分節性糸球体硬化症または巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、網膜ぶどう膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛症、多内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、自己免疫性脱髄疾患および慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーなどの脱髄疾患、ドレスラー症候群、円形脱毛症、全頭脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、男性および女性自己免疫性不妊、例えば抗精子抗体によるもの、混合結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形紅斑、心臓切開後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎および線維化性肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、サムター症候群、カプラン症候群、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティ症候群、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、虹彩異色性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性または慢性)、またはフックス毛様体炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、SCID、敗血症、エンドトキシン血症、ワクチン接種後症候群、エバンス症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、溶連菌感染後腎炎、閉塞性血栓血管炎、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再灌流傷害、移植臓器再灌流、自己免疫網膜症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、無精子形成、自己免疫性溶血、ベック病、アレルギー性腸炎、癩性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、ハンマン・リッチ病、感音難聴、限局性回腸炎、白血球減少症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、交感性眼炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、後天性脾臓萎縮、白斑、毒素性ショック症候群、T細胞浸潤を伴う病態、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、白血球漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、アレルギー性神経炎、自己免疫性多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、リウマチ性疾患、混合結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌不全、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎、好酸球関連障害、例えば好酸球増加症、好酸球増多性肺浸潤、好酸球増多筋痛症候群、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、好酸球含有肉芽腫、血清陰性脊椎関節炎、多腺性自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、ブルートン症候群、乳児一過性低γグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病に関連する自己免疫性障害、リウマチ、アレルギー性過敏性障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、虚血再灌流障害、リンパ腫性気管気管支炎、炎症性皮膚疾患、急性炎症性要素を伴う皮膚疾患、および自己免疫性網膜ぶどう膜炎(AUR)である、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第58項. 前記T細胞媒介性免疫応答が、生物製剤、細胞治療、および/または遺伝子治療に対する抗薬物特異的応答である、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第59項. 前記生物製剤、細胞治療、または遺伝子治療が、アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療、ゲノム編集剤、または酵素補充治療である、第58項記載の方法。
第60項. 前記疾患が1型糖尿病であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:8~17のうちの1つまたは複数;HLA-A*0201ならびにSEQ ID NO:2013~2016および2031~2033のうちの少なくとも1つ;またはHLA-A*02:01およびSEQ ID NO:20128~2129のうちの少なくとも1つに対して少なくとも80%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第61項. 前記疾患が白斑であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとに対して少なくとも80%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むか、またはHLA-A*0201およびSEQ ID NO:2018、もしくはHLA-A*0301およびSEQ ID NO:2019を含むか、またはHLA-A*2402およびSEQ ID NO:2020、もしくはHLA-A*0101およびSEQ ID NO:2021を含む、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第62項. 前記方法が、GvHDを治療および/または予防する方法であり、前記TCR認識ドメインが、HLA-A*0101およびSEQ ID NO:2034~2037のうちの少なくとも1つ;またはHLA-B*0702およびSEQ ID NO:2038;またはHLA-B*0801およびSEQ ID NO:2039に対して少なくとも80%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第63項. 前記疾患が1型糖尿病であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:8~17のうちの1つまたは複数を含むか、HLA-A*0201ならびにSEQ ID NO:2013~2016および2031~2033のうちの少なくとも1つを含むか、またはHLA-A*02:01およびSEQ ID NO:20128~2129のうちの少なくとも1つを含む、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第64項. 前記疾患が白斑であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:18と、SEQ ID NO:19と、SEQ ID NO:20~22のうちの1つとを含むか、またはHLA-A*0201およびSEQ ID NO:2018を含むか、またはHLA-A*0301およびSEQ ID NO:2019を含むか、またはHLA-A*2402およびSEQ ID NO:2020を含むか、またはHLA-A*0101およびSEQ ID NO:2021を含む、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
第65項. 前記方法が、GvHDを治療および/または予防する方法であり、前記TCR認識ドメインが、HLA-A*0101およびSEQ ID NO:2034~2037のうちの少なくとも1つを含むか、またはHLA-B*0702およびSEQ ID NO:2038を含むか、またはHLA-B*0801およびSEQ ID NO:2039を含む、第45項~第52項のいずれか一項記載の方法。
【0268】
本明細書に記載の技術のいくつかの態様は、以下の番号付きの項目により定義することができる。
第1項. a. TCR認識ドメインと、
b. 細胞内シグナル伝達ドメイン、および
c. 生体分子相互作用ドメイン
のうちの一方または両方と
を含む、組成物。
第2項. 前記TCR認識ドメインと前記生体分子相互作用ドメインとを含む、第1項記載の組成物。
第3項. 前記TCR認識ドメインと前記細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、第1項記載の組成物。
第4項. c)の生体分子相互作用ドメインが第1タイプの生体分子相互作用ドメインであり、前記組成物が、第2タイプの生体分子相互作用ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含むシグナル伝達ポリペプチドをさらに含み、
該第1タイプおよび該第2タイプの生体分子相互作用ドメインが互いに特異的に結合する、
第1項記載の組成物。
第5項. 前記TCR認識ドメインが、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)、MHC-ペプチド複合体、無特徴ペプチドMHC、またはMHC-ペプチド融合体を含む、第1項記載の組成物。
第6項. 前記TCR認識ドメインが、CD1ドメインまたはCD1ドメイン-リガンド複合体もしくは融合体を含む、第1項記載の組成物。
第7項. 前記CD1がCD1dである、第6項記載の組成物。
第8項. 前記TCR認識ドメインが、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、デキストラマー、または他のオリゴマー型である、第1項記載の組成物。
第9項. a. 前記生体分子相互作用ドメインがロイシンジッパーであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてロイシンジッパーのペアであり、
b. 前記生体分子相互作用ドメインがBZip(RR)および/もしくはAZip(EE)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてBZip(RR)およびAZip(EE)であり、
c. 前記生体分子相互作用ドメインがPSD95-Dlg1-zo-1(PDZ)ドメインであり、
d. 前記生体分子相互作用ドメインがストレプトアビジンおよび/もしくはストレプトアビジン結合生体分子(SBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてストレプトアビジンおよびストレプトアビジン結合生体分子(SBP)であり、
e. 前記生体分子相互作用ドメインがmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてmTORのFKBP結合ドメイン(FRB)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
f. 前記生体分子相互作用ドメインがシクロフィリン-Fas融合生体分子(CyP-Fas)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてシクロフィリン-Fas融合生体分子(CyP-Fas)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
g. 前記生体分子相互作用ドメインがカルシニューリンA(CNA)および/もしくはFK506結合生体分子(FKBP)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてカルシニューリンA(CNA)およびFK506結合生体分子(FKBP)であり、
h. 前記生体分子相互作用ドメインがジベレリン非感受性(GIA)および/もしくはジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてジベレリン非感受性(GIA)およびジベレリン非感受性dwarf1(GID1)であり、
i. 前記生体分子相互作用ドメインがSnapタグおよび/もしくはHaloタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてSnapタグおよびHaloタグであり、
j. 前記生体分子相互作用ドメインがT14-3-3-cΔCおよび/もしくはPMA2のC末端ペプチド(CT52)であるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてT14-3-3-cΔCおよびPMA2のC末端ペプチド(CT52)であり、
k. 前記生体分子相互作用ドメインがPYLおよび/もしくはABIであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてPYLおよびABIであり、
l. 前記生体分子相互作用ドメインがヌクレオチドタグおよび/もしくはジンクフィンガードメインであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてヌクレオチドタグおよびジンクフィンガードメインであり、
m. 前記生体分子相互作用ドメインがヌクレオチドタグであるか、またはいずれかの生体分子相互作用ドメイン結合ペアが全体としてヌクレオチドタグのペアであり、
n. 前記生体分子相互作用ドメインがフルオレセインイソチオシアネート(FITC)および/もしくはFITC結合生体分子であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体としてFITCおよびFITC結合タンパク質であり、かつ/あるいは
o. タンパク質相互作用ドメインが(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)および/もしくはR-PE/PE結合タンパク質であるか、またはタンパク質相互作用ドメインの任意の結合ペアが全体として(R)-フィコエリトリン(R-PE/PE)およびR-PE/PE結合タンパク質である、
第1項記載の組成物。
第10項. 前記ヌクレオチドタグが、DNAタグまたはdsDNAタグである、第9項記載の組成物。
第11項. シグナル伝達ポリペプチドを発現するかまたは含む細胞をさらに含む、第2項記載の組成物。
第12項. 前記TCR認識ドメインが、前記細胞にとって同種異系、自家、または異種である、第11項記載の組成物。
第13項. 前記TCR認識ドメインが合成ペプチドである、第11項記載の組成物。
第14項. 前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが前記細胞にとって同種異系、自家、または異種である、第11項記載の組成物。
第15項. 前記TCR認識ドメインがMHCおよびペプチドを含み、該ペプチドが合成ペプチドである、第11項記載の組成物。
第16項. 前記細胞が、NK細胞、樹状細胞、制御性T細胞、またはエフェクターT細胞である、第11項記載の組成物。
第17項. 前記細胞が、細胞表面上に発現するネイティブMHC I/IIがノックダウンされるように、さらに改変されている、第11項記載の組成物。
第18項. 治療または予防を必要とする対象における自己免疫疾患もしくは自己免疫状態、T細胞が媒介する炎症もしくは免疫応答、悪性T細胞状態、移植片拒絶、またはGvHDを治療または予防する方法であって、第1項記載の組成物および/または細胞を対象に投与する工程を含む、方法。
第19項. 前記移植が、同種異系の造血幹細胞または固形臓器の移植である、第18項記載の方法。
第20項. 前記悪性T細胞状態が、T細胞性急性リンパ芽球性白血病またはT細胞性リンパ芽球性リンパ腫である、第18項記載の方法。
第21項. 前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、白斑、多発性硬化症、脱毛症、セリアック病、天疱瘡、関節リウマチ、または強皮症である、第18項記載の方法。
第22項. 前記T細胞媒介性免疫応答が、生物製剤、細胞治療、および/または遺伝子治療に対する抗薬物特異的応答である、第18項記載の方法。
第23項. 前記生物製剤、細胞治療、または遺伝子治療が、アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療、ゲノム編集剤、または酵素補充治療である、第22項記載の方法。
第24項. 前記疾患が1型糖尿病であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:8~17のうちの1つまたは複数;HLA-A*0201ならびにSEQ ID NO:2013~2016および2031~2033のうちの少なくとも1つ;またはHLA-A*02:01およびSEQ ID NO:20128~2129のうちの少なくとも1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、第18項記載の方法。
第25項. 前記疾患が白斑であり、前記TCR認識ドメインが、SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:19ならびにSEQ ID NO:20~22のうちの1つ;もしくはHLA-A*0201およびSEQ ID NO:2018;もしくはHLA-A*0301およびSEQ ID NO:2019に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むか、またはHLA-A*2402およびSEQ ID NO:2020;もしくはHLA-A*0101およびSEQ ID NO:2021を含む、第18項記載の方法。
第26項. 前記方法が、GvHDを治療および/または予防する方法であり、前記TCR認識ドメインが、HLA-A*0101およびSEQ ID NO:2034~2037のうちの少なくとも1つ;またはHLA-B*0702およびSEQ ID NO:2038;またはHLA-B*0801およびSEQ ID NO:2039に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、第18項記載の方法。
【実施例
【0269】
実施例1
患者またはドナーの細胞または臓器を攻撃する自己反応性および同種異系反応性T細胞は、自己免疫および移植片拒絶の主原因である。現在の治療は厳しい免疫抑制治療を必要とし、それが重篤な副作用につながる場合もある。具体的には、自己反応性および同種異系反応性T細胞の枯渇により、免疫抑制モダリティなしで、自己免疫および移植片拒絶が予防される。キメラ抗原リガンド(CAL)で改変されたT細胞は、その特異性を病的T細胞にリダイレクトすることができる。キメラ抗原受容体(CAR)で改変されたT細胞は、その特異性をリダイレクトすることができ、B細胞悪性疾患の一部のタイプを治療するために、既に承認されている。現在は、例えば自己免疫疾患および移植片拒絶など、CAR T細胞治療の応用範囲を拡張するために、抗原依存的に免疫反応を阻害することができる改変制御性T細胞が検討されている。
【0270】
疾患の原因となるT細胞を特異的に枯渇させるために、疾患の原因となるT細胞上の特異的T細胞受容体を認識し、それに結合することができるCALおよび/またはCARが、本明細書に記載されている。このCALおよび/またはCARは、T細胞受容体由来のシグナル伝達ドメインに融合された認識ドメインとしてのペプチド-HLA(例えばモノマーまたはそのマルチマーもしくはオリゴマー)で構成される。この系のスプリットバージョンも作製することができ、その場合は、系が2つのピースで構成される。1つのピースは、細胞内部分としてのT細胞シグナル伝達ドメインと、細胞外部分としての生体分子相互作用ドメインとを持つ、ユニバーサルCARである。第2のピースは、アダプター分子、例えば、コグネイト生体分子相互作用ドメインに融合されたペプチド-HLAオリゴマー(またはモノマーもしくはマルチマー)で構成されるCALである。
【0271】
自己免疫疾患および移植片拒絶のCAR T細胞治療の多くは、制御性T細胞を使用し、臓器特異的な(例えば局所的な)免疫抑制を得るために臓器を標的にするようにデザインされる。対照的に、本デザイン(例えばCALデザイン)は、疾患を引き起こしている患者内のソース免疫細胞を標的にしている。したがって本明細書では、自己免疫疾患および移植片拒絶のための細胞ベースの治療が提供される。
【0272】
実施例2
樹状細胞(DC)は、自然免疫系と適応免疫系の相互接続部であり、さまざまな刺激による刺激後に防御免疫応答を誘導することができる。DCは、それぞれの表現型および機能に基づいて、通常型DCと形質細胞様DC(pDC)とに分類することができる。多くの研究により、DCは、炎症誘発性応答または抗炎症性(免疫寛容原性)応答の不可欠なメディエーターであることが示されている。DCのうち、免疫応答を抑制するサブセットは、T細胞アポトーシス、アネルギーおよび制御性T細胞(Treg)を誘導するそれらの機能ゆえに、免疫寛容原性DCとして一般に公知である。
【0273】
DCにおける免疫寛容原性の状態(tol-DC)は、シクロスポリンA、ラパマイシン、デキサメタゾン、ビタミンA、ビタミンD、または他のサイトカイン、および増殖因子などといった、いくつかの薬学的作用物質を使って誘導することができる。最近、tol-DC機能を強化するための外因性DNAの挿入が、自己免疫疾患を治療するための考えうる治療選択肢として調べられた。FasLまたはTNF関連アポトーシス誘導性リガンドをコードするDNAのトランスフェクションによって得られる「キラー」DCは、T細胞アポトーシスを効率よく誘導し、動物モデルにおいて心臓移植片の拒絶を予防する。
【0274】
しかし、これらのDCの効果は特異的ではない。IL-10、TGF-β、CTLA-4、およびSOCS1を含む阻害分子の過剰発現は、全身的免疫抑制を引き起こすかもしれないTregを、tol-DCが、より効率よく誘導することを可能にする。
【0275】
同種異系反応性免疫細胞は、本明細書に記載の方法を使って、例えばドナーのpMHCテトラ/デキストラマー(例えばCAL)を提示して、遺伝子改変されたDC(K/O MHC I/IIであるが、テトラ/デキストラマー上のドナーペプチドを提示するもの)に結合するユニバーサルUniCAR DC系を使用することによって、特異的に抑制することができる。いくつかの態様において、pMHCは、モノマー、オリゴマー、またはマルチマーとして提供されうる。
【0276】
レシピエントにおける同種異系反応性T細胞の抑制には、任意の形態のレシピエントpMHC(例えばモノマー/オリゴマー/テトラマー/デキストラマー)+ターゲティング分子(例えばCAL)を、CAR-DCと共に使用することができる。同定された異なる同種異系抗原+CALおよび/またはCAR系のMHCモノマー/オリゴマー/テトラマー/デキストラマーと関連づけもしくは会合させ(例えばHLA-A2+インスリンペプチド)、ターゲティング分子に取り付けたもののライブラリーを、生産することができる。そのようなライブラリーは市販されて、自己反応性T細胞をターゲティングし破壊するために、DCと組み合わせることができる。
【0277】
いくつかの遺伝子の特異的遺伝子欠失(IL-12およびNF-κB、MHC IおよびMHC II[ターゲティングモジュールはこれらの細胞にドナーのMHCを提供することになる])およびいくつかの他の遺伝子の挿入(IL-10、TGF-β、CTLA-4およびSOCS1)で遺伝子修飾された細胞を生産することができる。これらの細胞は市販されて、前述のライブラリーから選ばれた特異的ドナーpMHCおよびターゲティングモジュールと組み合わせることができる。
【0278】
実施例3
同種異系反応性メモリーT細胞は、レシピエント免疫系の活性化および同種異系移植片の拒絶に重要な役割を有することが示されている。それらは、混合キメリズムおよび他の戦略による寛容誘導にとって主な障壁であることが公知である。これらの細胞は復元力が極めて高く、プレコンディショニングプロトコールには不応であり、照射およびT細胞枯渇から迅速に回復する。CAR-T-エフェクター(従来型、Supra、ユニバーサルCALまたはCAR)を使用し、任意の形態のドナーpMHC(モノマー、オリゴマー、テトラマーまたはデキストラマー)(例えばCAL)を系に取り付けることにより、結果として生じる本発明の組成物を使って、移植との関連における改良された免疫抑制治療の必要性を減少させ、または排除することができる。造血幹細胞の生着は、最小限の有毒なプレコンディショニングプロトコールで、または有毒なプレコンディショニングプロトコールを必要とすることなく、持続的な混合キメリズム(durable mixed chimerism)を達成することができる。
【0279】
同種異系/異種反応性T細胞を抑止するために、ドナーpMHC(モノマー/オリゴマー/テトラマー/デキストラマー、例えばCAL)をCAR Tエフェクターと組み合わせて使用すれば、免疫抑制の必要性が減少しまたは排除されるだろう。SUPRA/UNI/ユニバーサルCALおよび/またはCAR系のターゲティング分子に取り付けられた異なるドナーMHCモノマー/オリゴマー/テトラマー(例えばCAL)を生産して市販することができる。最も一般的なMHC(+そのMHCと組み合わせて使用されうる免疫学的野生型または合成ペプチド分子)モノマー/オリゴマー/テトラマーの既製(shelf ready)ライブラリーを商業的に生産し、この系と共に使用するために提供することができるだろう。
【0280】
実施例4
自己免疫性疾患における適応免疫系の関与は広く特徴づけられている。T細胞は自己免疫疾患の極めて重要な寄与因子である。B細胞の活性化と分化に関与する従来のT(TeffまたはTヘルパー)細胞サブセットは、さまざまな炎症性サイトカインを生産し、直接的な細胞傷害性で標的細胞を破壊する。CAR-T細胞は、CD19 CAR T細胞が白血病細胞を標的にして破壊するのと同様の方法で、自己免疫性BおよびT細胞を破壊するために用いられている。自己反応性メモリーTおよびB細胞のターゲティングはいくつかの結果を示している。これらの方法は非特異的であるため、それらは、ある程度の全般的免疫抑制を誘導し、完全には有効でない。特定ペプチド+MHC分子と一定の自己免疫状態との相関は広く研究されてきた。利用可能なヒト/動物モデルpMHCモノマー/オリゴマー/テトラ/デキストラマーを使用し、それらをSUPRA/UNI/ユニバーサルCALおよび/またはCAR技術と組み合わせることにより、本発明者らは、自己反応性免疫細胞を著しく特異的に標的にすることができる。
【0281】
レシピエントにおける自己反応性T細胞を抑止するために、pMHC(モノマー/オリゴマー/テトラマー/デキストラマー)(例えばCAL)上の何らかの形態の自己抗原を、CAR Tエフェクター/Tregと組み合わせて使用すれば、免疫調節薬の必要性が減少しまたは排除されるだろう。自己反応性T細胞を標的にして破壊すべく、理想的なSUPRAまたはユニバーサルCAR T-reg/Tエフェクターと組み合わせるために、同定された自己抗原と、SUPRA/UNI/ユニバーサルCALおよび/またはCAR系のターゲティング分子に取り付けられた関連MHCモノマー/オリゴマー/テトラ/デキストラマー(例えばHLA-A2+インスリンペプチド)とのライブラリーを生産して市販することができる。
【0282】
実施例5
新しい進歩により、同種異系造血幹細胞移植(HCT)後の生存率は向上しているが、慢性移植片対宿主病(GvHD)は依然として移植後の長期罹病率および長期死亡率の主原因である。現在の治療選択肢は、特にステロイド難治性疾患では、効力に限界があり、管理上の意思決定に役立つロバストなデータはない。
【0283】
養子T細胞治療(ACT)とはT細胞の治療的使用を指す。キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞は、CD19陽性の白血病およびリンパ腫の治療について現在までに承認されたACTの中で臨床的に最も進歩した形態に該当し、臨床において注目に値する結果を生み出している。本明細書に記載の技術により、特異的抗原または受容体を持つ疾患細胞を極めて正確に標的にする機会が得られる。GvHDに関連して、ドナーT細胞集団中のレシピエント反応性T細胞を見つけるために、ユニバーサルUNICAR T細胞をデザインすることができる。レシピエントのpMHCを、UniCARに結合する(例えばその結果CALを形成する)標的モジュールに融合すれば、この系は、それらのMHCに結合することができるドナーT/B細胞集団中のTCRレパトアを認識することができる。レシピエントのpMHCをユニバーサルCARに結合する標的モジュールに融合すれば、この系は、それらのMHCに結合する異ができるドナーT細胞集団中のT細胞レパトアを認識し、それらに結合することができる。
【0284】
ドナーHSC中のレシピエント反応性T細胞を抑止するために、レシピエントpMHC(モノマー/オリゴマー/テトラマー/デキストラマー)(例えばCAL)を、CAR Tエフェクター/Tregと組み合わせて使用すれば、これらの反応性T細胞は枯渇することになり、GvHDは起こらないだろう。レシピエントに対する反応性T細胞を標的にして破壊すべく、理想的なSUPRA CAR T-reg/Tエフェクターと組み合わせるために、同定された異なる抗原+SUPRA/UNI CAR系のターゲティング分子に取り付けられた関連ヒト/動物モデルMHCテトラマー/デキストラマー(例えばHLA-A2+ペプチド)のライブラリーを生産して市販することができる。ドナーT細胞集団内のレシピエントに対する反応性T細胞を標的にして死滅させるために、ユニバーサルCAL系のターゲティング分子に取り付けられた野生型および/または合成MHCモノマー/オリゴマー(例えばHLA-A2+ペプチド)のライブラリーを作製し、それをユニバーサルCAL T-reg/Tエフェクターと混合することができる。
【0285】
実施例6
新しい進歩により、同種異系造血幹細胞移植(HCT)後の生存率は向上しているが、慢性移植片対宿主病(GvHD)は依然として移植後の長期罹病率および長期死亡率の主原因である。現在の治療選択肢は、特にステロイド難治性疾患では、効力に限界があり、管理上の意思決定に役立つロバストなデータはない。
【0286】
養子T細胞治療(ACT)とはT細胞の治療的使用を指す。キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞は、CD19陽性の白血病およびリンパ腫の治療について現在までに承認されたACTの中で臨床的に最も進歩した形態に該当し、注目に値する臨床結果を生み出している。この技術により、特異的抗原または受容体を持つ細胞を極めて正確に標的にする機会が得られる。GvHDに関連して、ドナーT細胞集団中のレシピエント反応性T細胞を見つけるために、UNICAR T細胞をデザインすることができる。レシピエントのpMHCを、UniCARに結合する標的モジュールに融合すれば、この系は、それらのMHCに結合することができるドナーT/B細胞集団中のTCRレパトアを認識することができる。
【0287】
ドナーHSC中のレシピエント反応性T細胞を抑止するために、レシピエントpMHC(テトラマー/デキストラマー)を、CAR Tエフェクター/Tregと組み合わせて使用すれば、これらの細胞は枯渇することになり、GvHDは起こらないだろう。レシピエントに対する反応性T細胞を標的にして破壊すべく、理想的なSUPRA CAR T-reg/Tエフェクターと組み合わせるために、同定された異なる抗原+SUPRA/UNI CAR系のターゲティング分子に取り付けられた関連ヒト/動物モデルMHCテトラマー/デキストラマー(例えばHLA-A2+ペプチド)のライブラリーを生産して市販することができる。
【0288】
実施例7-小児科血行再建複合同種組織移植片拒絶を予防するための改変リンパ球
本明細書には、最新技術のCALおよび/またはCAR T細胞養子免疫治療および合成生物学によって増強された、安定な混合キメリズムの樹立による、VCA移植のための臨床応用可能な寛容誘導レジメンの開発を記載する。
【0289】
動物モデルおよびヒト同種異系移植片レシピエントにおける混合キメリズムは、一過性であることしか示されていないことから、ここでの寛容はドナー特異的T細胞の末梢不活化に依拠することが示唆される。持続的な混合キメリズムおよび長期移植片受容を達成する上での障害は、感作された齧歯類、NHPおよびヒトにおいて寛容誘導を妨害することが公知である同種異系反応性メモリーT細胞が高レベルに存在することである。安定な混合キメリズムを達成するための本アプローチは、HSCTの生着および安定な混合キメリズムに役立つように、ドナーの骨髄細胞および組織細胞に反応するレシピエントの同種異系反応性メモリー免疫細胞を特異的に欠失させるためのCALおよび/またはCAR T細胞治療薬を、先進の改変技法を利用して作製することである。CALおよび/またはCAR-T細胞治療によるメモリーTリンパ球の選択的枯渇は、究極的には免疫抑制薬フリーレジメンにつながる持続的な混合キメリズムおよび寛容を達成するのに役立ちうる。現在、この難題は、強力な全身照射と組み合わせて、いくつかの免疫抑制薬の組合せを投与することによって対処されているが、これらは、非特異的ターゲティングの結果としてすべての免疫細胞の枯渇をもたらす。このショットガンアプローチは、深刻な免疫無防備状態をレシピエントに強要し、それは続いて、日和見感染および悪性疾患を含む無数の帰結を招く。本明細書における技術は、メモリーT細胞(狙い1)を特異的に、または同種異系反応性メモリーT細胞(狙い2)だけを特異的に、欠失させることができる。
【0290】
狙い1:CD127+/CD45RO+メモリーT細胞は、中枢、エフェクターおよび幹細胞メモリーT細胞として重要な役割を有し、同種異系反応性T細胞レパトアの最も強力な構成成分として公知であることが示されている。これらの細胞は、同種異系移植片の慢性拒絶における主たる寄与因子であることが示されている。メモリーT細胞という難題に対処するために、メモリーT細胞の2つの一般的マーカー(CD127+およびCD45RO+)に対するscfvを使って、CALおよび/またはCAR T-エフェクター細胞を作製することができる。これに続いて、二重ヒト化マウスモデルにおける混合キメリズム誘導プロトコールが行われることになる。この狙いからの結果は、メモリーT細胞の枯渇が、造血幹細胞の生着を改良することによって混合キメリズムプロトコールの効力を増加させ、よって混合キメリズム誘導プロトコールにおける免疫抑制の必要性を排除しまたは減少させるのに役立つことを示すだろう。
【0291】
狙い2:移植との関連において抗原特異的T細胞は多様であることから、異なる同種異系反応性T細胞を同時に突き止めて攻撃するフレキシビリティを有するCALおよび/またはCAR系が提供される。CALおよび/またはCAR T-eff細胞とドナーpMHCは、ドナーMHCに対するTCRを有する同種異系反応性T細胞を標的にすることができる。本発明者らは単一特異性および二重特異性抗原-MHC系から始めるだろう。次に本発明者らは、ドナーの同種異系移植片ペプチドームから作製されたペプチドライブラリーを利用して、それを市販の交換可能なペプチド-MHCマルチマー上に負荷するだろう。これらのpMHCとCALおよび/またはCAR T細胞との組合せが、レシピエントの同種異系反応性T細胞を標的にして破壊するために使用されるだろう。この開発により、抗原特異的同種異系反応性T細胞を標的にすることができるフレキシブルなCALおよび/またはCARデザインが得られる。
【0292】
本明細書には、CALおよび/またはCAR T細胞技術を利用する、VCA寛容誘導のための新規適応免疫細胞治療戦略の研究が記載される。
【0293】
実施例8-小児科血行再建複合同種組織移植片拒絶を予防するための改変リンパ球
意義:米国には肢欠損を持つ人々が200万人近くいて、毎年185,000例の肢切断が行われており、その大半は、熱傷、交通事故および医学的状態の犠牲者によるものである1。1990年~2002年の間だけで、112600人の小児が肢切断で米国の救急部門の処置を受けた。小児はしばしば肢欠損を伴う重症熱傷の犠牲となり2、その後終生、その結果に苦しむことになる。過去十年間に、血行再建複合同種組織移植(VCA)、死亡したドナーからの肢および顔面の移植は、これらの特殊化した組織の壊滅的な損傷の再構築のための良い代替的選択肢になっている。VCAは、熱傷後の重度の軟部組織欠損にとって、心理社会的回復と機能回復の両方を達成するための、ユニークな新しい治療選択肢である3。世界初の小児両側手移植は非血縁ドナー-レシピエントペアの間で、2016年に成功裡に行われた4。短所は、強力な免疫抑制薬の使用にもかかわらず、「外来」VCAの急性拒絶が患者の最大90%で起こることである5。生命を脅かす数多くの合併症を伴う免疫抑制の用量増加が、VCAの喪失を防止するための現在のアプローチである5
【0294】
進化の過程において、我々の免疫系は、自己細胞を非自己細胞と識別し、Tリンパ球などの細胞によって「外来物」を攻撃する能力を獲得している。ヒト白血球抗原(HLA)系(ヒトにおける主要組織適合遺伝子複合体[MHC])は、T細胞に抗原ペプチドを提示することに特化した細胞表面分子を含む67。これらのペプチドはマイナー組織適合性抗原(MiHA)として公知である。MiHA配列は個体間で相違する場合があり、それらの相違の多くはT細胞によって認識されうるので、拒絶プロセスの開始を引き起こすことになる。T細胞は、自己MHC/ペプチドを非自己MHC/ペプチドと識別するよう訓練されている。各人は、12の異なるMHCクラスI/IIの組合せを、その人の細胞上に提示することができる。移植のためにレシピエントとドナーのMHCを一致させるには(HLA)タイピングが使用される。ドナーのHLAマーカーとレシピエントのHLAマーカーとがよく一致することが、成功した移植アウトカムにとって不可欠である。潜在的ドナーは、最低6~8つのHLAマーカーが一致しなければならず、そのことが理想的なドナーを見つけ出すことを極めて困難にしている。準理想的なドナーを見つけた後でさえ、これらの患者は、その後終生、免疫抑制薬を常用することになる8。これらの薬物は一般に有効であるが、そのような慢性的免疫抑制の続発症は周知であり、大半のレシピエントは、日和見感染、多臓器機能障害および悪性疾患を含む無数の副作用および合併症を発症し続ける。
【0295】
免疫抑制薬の排除を可能にする移植寛容は、移植医学にとっては、その発端以来、「究極の目標(holy grail)」であり続けてきた9。再現性のある安全な寛容誘導プロトコールを開発することにより、腕および手6ならびに下肢10の移植の成功によって実証されるとおり、先天異常だけでなく、熱傷患者におけるVCAの使用も拡大されるだろう。他の臓器移植への拡張も、意義を拡げるための明確な方向性である。この研究の総合的な目標は、最新技術の養子免疫治療および合成生物学によって増強された、安定な混合キメリズムの樹立による、VCA移植のための臨床応用可能な寛容誘導レジメンを可能にすることである。
【0296】
寛容は、部分的に不一致である対象におけるVCA移植のための混合キメリズムプロトコールの開発によって誘導することができる8,11。混合キメリズムとは、ドナーVCAを「自己」として認識しそれゆえにそれを拒絶しないハイブリッド免疫系を、レシピエントにおいて誘導するために、VCAと共に、ドナー造血幹細胞移植(HSCT)を使用することである。非ヒト霊長類(NHP)およびヒト同種異系移植片レシピエントにおける混合キメリズムは、一過性であることしか示されていないことから、ここでの寛容はドナー特異的T細胞の末梢不活化に依拠することが示唆される。持続的な混合キメリズムおよび長期移植片受容を達成する上での障害は、感作された齧歯類12,13とNHP14,15のどちらにおいても寛容誘導を妨害することが公知である同種異系反応性メモリーT細胞が高レベルに存在することである。安定な混合キメリズムを達成するための本アプローチは、ドナーの骨髄細胞および組織細胞に反応するレシピエントの同種異系反応性メモリー免疫細胞を特異的に欠失させるためのT細胞治療薬を、先進の改変技法を利用して作製することである。
【0297】
細胞免疫治療
最近、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞が、CD19陽性白血病およびリンパ腫の治療に関して、小児患者における完全寛解につながり16,17、CAR T細胞技術によって免疫細胞を標的にして排除できることの証拠となる、注目に値する結果を生んだ。これまでのところ、CAR T治療薬は2つのFDA承認治療につながっており、それら2つの薬物治療は、NovartisおよびGileadにより、90億ドルおよび120億ドルの価格でライセンスされた18。第1世代のCARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびCD3zのシグナル伝達ドメインだけを含有した。その後の世代のCARでは、増殖、持続性および活性を強化するために、CD28/4-1BBのいずれかに由来する細胞内共刺激ドメインが付加された19。最近になって、本発明者らは、CAR T細胞の能力を拡張するために、複数の決定的特徴を同時に包含するスプリット、ユニバーサルおよび「プログラマブル」(split, universal, and "programmable")(SUPRA)CAR系を導入した20。この系は、T細胞を改変し直すことなく標的を切り換え、T細胞活性化強度を微調整し、複数の抗原を検知して、それらに応答する能力を有する。これらの特徴により、スプリットCAR-T技術は、レシピエントにおける同種異系反応性T細胞を標的にして移植寛容を強化するのに、比類なく好適である。
【0298】
VCAにおける混合キメリズムおよび寛容誘導
混合キメリズムの大動物モデル:本発明者らの研究室では、2-ハプロタイプ完全ミスマッチMGHミニブタにおいて、骨髄移植(BMT)に付随する筋皮VCAおよび骨髄非破壊的レシピエントコンディショニング(全身照射(TBI)および一過性T細胞枯渇)後に一過性混合キメリズムを達成した21。BMTの免疫調節効果はドナーに対するインビトロ不応性によって実証されたが、免疫抑制の停止後はキメリズムレベルが迅速に低下し、結果としてVCAの拒絶と喪失が起きた。これは、移植寛容を達成するにもVCA生存を引き延ばすにも、一過性キメリズムだけでは十分でないことを実証するための、最初の実験的VCA研究であった。
【0299】
最近、臨床への橋渡しを進めるために、ミニブタにおける先の混合キメリズム誘導プロトコール(MCIP)に、手術の2日前に開始される高線量TBIおよびTIと引き換えに、T細胞枯渇を完全に除く変更を加えた。骨筋皮VCA後に、タクロリムスの30日レジメン(標的レベル:10~15ng/mL)とPOD45での中断に至る漸減に加えて22、周術期共刺激遮断を(POD 0、2、4および6に)与えた。このMCIPにより、本発明者らは、実際に、ドナーBMT後にMHCクラスIミスマッチ/クラスIIマッチレシピエントにおいて部分寛容の発生を伴うことなく安定な混合キメリズムを達成することができ(n=2)、>100日にわたってすべての免疫抑制を中止することに成功した。これらの結果を元に、これらの研究の臨床への橋渡しに向けた次のイテレーション(iteration)は、これを拡張して完全MHCミスマッチ障壁を乗り越えて安定な混合キメリズムを達成することができるように、現在のプロトコールの毒性を減少させることであり、これには、最終的にはVCA移植に関して免疫抑制レジメンの排除または削減をもたらしうる同種異系反応性メモリーT細胞を枯渇させるためのCALおよび/またはCAR T細胞治療などといった免疫調節戦略を利用することができる。
【0300】
混合キメリズムの小動物モデル:混合キメリズム誘導プロトコールによる寛容誘導の基礎をなす原理は、すべての種で同じである。簡単に述べると、マウスは、(BMTに対して0日目に)抗CD8および抗CD40L、抗CD154共刺激遮断薬を含む腹腔内mAb注射でコンディショニングすることができる。これは、2.5×105個の骨髄細胞(BMC)注射の6時間前に施行されるTBIと併用されるだろう。本明細書に記載の組成物および方法は、マウスモデルにおける混合キメリズム誘導プロトコールの改良に使用することができる。
【0301】
本明細書には、同種異系反応性メモリーT細胞を標的にしそれを破壊することにより、最小限の有毒なプレコンディショニングプロトコールで、または有毒なプレコンディショニングプロトコールを必要とすることなく、造血幹細胞の生着を改良し、持続的な混合キメリズムを達成するようにデザインされた、CALおよび/またはCARが記載される。この多面的アプローチを検証するために、本発明者らはまず、同種異系反応性メモリーT細胞を標的にする2つの異なる戦略を評価する。1つ目のアプローチは、メモリーT細胞の集団をそれぞれのTCR特異性とは関わりなくユニークに同定する表面マーカーによってメモリーT細胞を特異的に攻撃するCALおよび/またはCAR系をデザインすることである。このアプローチは、他の免疫細胞には危害を加えないので、健常な免疫系が保たれる。
【0302】
2つ目のアプローチは、レシピエントのT細胞上の同種異系反応性TCRに特異的に結合するCALおよび/またはCARをデザインすることである。そうするために、本発明者らは、すべての古典的CAR T細胞にある単鎖可変フラグメント(scFv)を使用する代わりに、CALおよび/またはCAR上のリガンド認識ドメインとしてペプチド-MHCマルチマーを使用する。しかし、ユニークな同種異系反応性TCRの数は多いので、多くの異なるCALおよび/またはCAR/pMHCが必要になる。これは、これらのCALおよび/またはCARをデザインしてT細胞に導入する上で、難題となる。この難題を克服するために、本発明者らは、ユニバーサルCALおよび/またはCARと、CALおよび/またはCAR T細胞を同種異系反応性T細胞に橋渡しするアダプター分子とで構成される二成分スプリットCALおよび/またはCARデザインの使用を提案する。ユニバーサルCALおよび/またはCARは、TCRシグナル伝達ドメインに融合されたFITCを標的にするscFvを含む。アダプター分子はFITCに融合されたpMHCテトラマーからなる。pMHCテトラマーの付加は、同種異系反応性TCRに結合し、ユニバーサルCALおよび/またはCAR T細胞を動員することで、同種異系反応性T細胞を殺す。このデザインにより、我々は、たった1つのCALおよび/またはCARで、多くのTCR変異体を標的にすることができるようになる。次に、ドナーMHCに、以前に公表されたプロトコールを利用することによって生成させたドナー組織特異的ペプチドが負荷される。本発明者らは、まず、ヒト化/皮膚移植マウスモデル中のマウスMHCを標的にするために、CALおよび/またはCARをデザインすることができる。
【0303】
データ-ペプチド-MHCテトラマーによる同種異系反応性T細胞のターゲティング
インビトロデータにより、以下の事項に取り組んだ。
1. CAR T+pMHCマルチマーの使用によるメモリーT細胞のターゲティングを達成できるかどうか。この態様では、Jurkat細胞において発現する抗FITC CARがCARであり、pMHCマルチマーがCALである。
A. テトラマーはCALおよび/またはCARならびに標的T細胞に効率よく結合するか?
B. Jurkat CALおよび/またはCAR T細胞は、アダプター+標的への結合によって活性化するか。
C. 標的OT I細胞は活性化して、キラー標的T細胞を殺そうとするか?
2. 初代CD8 T細胞+pMHCマルチマーによるメモリーT細胞の死滅が実現可能かどうか?
【0304】
1. ペプチド-MHCテトラマーはJurkat細胞を活性化するが、標的細胞は活性化しない。
本発明者らは抗FITC CAR Jurkat細胞を使用した。これらの細胞は、T細胞の活性化、シグナル伝達、およびさまざまなケモカイン受容体の発現を調べるために使用されるTリンパ球細胞の不死化株である。Jurkat細胞は、キラー細胞として作用することはできないが、リガンドにより、実際のT細胞と同じように活性化する。図1は、テトラマーが用量依存的にOTi標的T細胞に結合してそれを染色することを示している。
【0305】
これらの実験で使用した抗FTC CAR Jurkat細胞は、以下のヌクレオチド配列を含み、以下のポリペプチド配列を発現する。
【0306】
SEQ ID NO:2747. 抗FITC CARのDNA配列。ヌクレオチド1~9=Kozak配列。ヌクレオチド10~78=CD8aリーディングペプチド。ヌクレオチド79~831=抗FITC ScFv。ヌクレオチド832~861=myc。ヌクレオチド874~1008=CD8ヒンジ。ヌクレオチド1009~1211=CD28。ヌクレオチド1212~1338=4-1BB。ヌクレオチド1339~1677=CD3ζ。ヌクレオチド1678~2388 mCHERRY。
【0307】
SEQ ID NO:2748. 抗FITC CARのペプチド配列。残基1~21=CD8aリーディングペプチド。残基22~274=抗FITC ScFv。残基275~284=myc。残基289~333=CD8ヒンジ。残基334~401=CD28。残基402~443=4-1BB。残基444~556=CD3ζ。残基557~792 mCHERRY。
【0308】
次に、本発明者はOTi標的T細胞へのアダプターの結合がそれらを活性化しないことを明らかにした。それを評価するために、本発明者らは、T細胞に関する一般的活性化マーカーであるCD69発現を調べた。興味深いことに、アダプターは標的T細胞に結合してそれを染色するものの(図1)、OTi標的T細胞の活性化は引き起こさなかった(図2)。
【0309】
B. 次に、本発明者らは、アダプターへの結合後のJurkat CAR T細胞の活性化を調べた。図3に示すように、Jurkat T細胞へのアダプターの結合は、すべての測定時点において、CD69の高発現を引き起こす。
【0310】
Jurkat細胞-pMHCのこの活性化結合は、OTi(標的)-アダプターの結合とは対照的である(図2)。この興味深い知見についての最も良い説明は、Jurkat-pMHC間のFITC/抗FITC結合の方がOT I-pMHCよりもはるかに強いという事実の背後にあるのかもしれない。というのも、前者は高アフィニティ抗原-抗体結合であり、後者はそれより弱いTCR-pMHC結合だからである。CAR-アダプターと標的-アダプターの間のこの結合強度の相違は、この新規アプローチを、メモリーT細胞を標的にするという目的にとって理想的な状況にする。
【0311】
C. 本発明者らは、24時間後のJurkat細胞数も、それらの細胞の状態およびこの活性化がそれらの細胞の数の減少によって示される細胞死を多少なりとも引き起こすかどうかの指標として調べた(図2)。
【0312】
2. 初代CD8抗FITC CAR T細胞は、同種異系反応性OTi細胞を特異的に標的にして、それを殺すことができる。
Jurkat+アダプター+OTi標的細胞による先の一組の実験では、アダプター分子による同種異系反応性T細胞のターゲティングが実行可能であることが確認され、標的細胞に対するCAR T細胞の活性化が示された。次に、本発明者らは、初代CD8 CAR Tキラー細胞+アダプター分子を使って、OTi T細胞を同定するだけでなく、OTi T細胞を殺すこともできるかどうかを調べたいと考えた。先の一組の実験で示されたとおり、pMHCと標的細胞の間の結合は、アダプター(FITC+pMHC、例えばCAL)-CAR T細胞結合とは対照的に、標的T細胞の活性化を引き起こしていなかった。そこで本発明者らは、ヒト初代CD8 T細胞を使って、CART+アダプター(例えばCAL)+標的の強度が、死滅プロセスを開始し成し遂げるのに十分であるかどうかを見た。異なる濃度のアダプター+CD8 CAR TをOTi T細胞と共培養して、各T細胞タイプの活性化および細胞傷害性を見た。図4および図5に示すように、OTi細胞に対するCD8 CAR T細胞の細胞傷害性は、アダプター(例えばCAL)濃度に依存し、本発明者らが使用した最大容量では50%を上回った。加えて、この細胞傷害性は高度に特異的であった(図5)。ここでは、ヒトCD8抗FITC CAR T細胞を使用した。同様の検証を、マウス抗FITC CARを使って、インビボ実験とインビトロ実験の両方で行うことができる。
【0313】
本明細書には、移植片拒絶および自己免疫疾患の原因である同種異系/自己反応性T細胞を特異的に標的にして破壊する目的でpMHCマルチマーを使用するための新規な方法が記載される。本発明者らのアプローチは、同種異系反応性T細胞集団の特異的ターゲティングのためにpMHCマルチマー(例えばCAL)をCAR T細胞技術と併用する初めての実証である。本発明者らは、このアプローチが、移植における同種異系反応性T細胞の破壊的役割を排除するための、最も特異的な戦略であると考えている。この方法の潜在的応用は移植拒絶およびGVHDの治療における免疫抑制には到底留まらず、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、強皮症、および自己反応性T細胞機能障害から派生する無数の障害を含む多くの自己免疫状態に応用可能だろう。
【0314】
本明細書では、CALおよび/またはCAR T細胞治療を使って抗CD45RO/CD127でメモリーレパトアを標的にするための新規アプローチが提供される。この戦略はpMHCマルチマーを使用する場合ほど特異的ではないかもしれないが、それでもなお、著しい新規性を表す。メモリーT細胞集団を枯渇させることにより、誘導プロトコールの必要性ははるかに少なくなる。
【0315】
本明細書では、レシピエントとドナーのプロテオームおよび免疫ペプチドーム(immune-peptidome)の相違に基づく個別化されたペプチドライブラリーも企図される。現在、最適な生物学的モデル系を使った1回の測定で、数百~数千のMHC関連ペプチドを同定することができる。先に述べたように、MHC同一移植片が関わる研究では、マイナー組織適合性抗原も拒絶を媒介しうることが示される。ヒトイムノペプチドームプロジェクト(Human Immuno-Peptidome Project:HIPP)は、イムノペプチドームのロバストで包括的な解析に向けて研究を加速するために創設された国際プロジェクトである。HIPPは、免疫ペプチドーム実験のすべてを十分に実行し解釈するために必要な情報に相当する技術的ガイドラインを公表している。これらの同一でない(nonhomogeneous)ペプチドは、同種異系反応性T細胞を活性化することによって、潜在的に拒絶を開始することができる。
【0316】
これらのペプチドを交換可能なMHCテトラマー系と組み合わせて利用することにより、本発明者らは、これらのペプチドを使って、ドナー反応性T細胞を同定し、標的にすることができる。交換可能なペプチドMHC系上のデフォルトペプチドは、UV光曝露によって除去して、所望する任意のペプチドで置き換えることができる。ドナーマルチマーMHCは商業的サービスを使って作製し、UVでペプチドを取り外した後、以前に公表されたプロトコールを利用することによって作製されるドナー組織特異的ペプチドを負荷することができる。これらのペプチドを交換可能なMHCテトラマー系と組み合わせて利用することにより、本発明者らは、これらのペプチドを使って、ドナー反応性T細胞を同定し、標的にすることができる。
【0317】
本明細書に記載されているとおり、CAR-T細胞治療によるメモリーT細胞の選択的枯渇は、免疫抑制レジメンの排除または削減につながる持続的な混合キメリズムおよび寛容の達成に役立ちうる。現在のところ、この難題は、すべての免疫細胞集団を標的にするためのいくつかの免疫抑制の併用と共に、強い全身照射の施行によって対処されている。このショットガンアプローチは、レシピエントにおける深刻な免疫無防備状態をもたらし、それは続いて日和見感染、腎血管機能障害および悪性疾患を含む、無数の副作用および合併症を招く。
【0318】
メモリーT細胞(CD127+/CD45RO+)が同種異系移植片の拒絶における主要寄与因子であることは公知である2425。したがって、それらの枯渇はHSCの生着に役立ち、同種異系移植片の生存率を増加させると予想される。この仮説を検討するために、本発明者らは、メモリーT細胞(CD127+およびCD45RO+)の一般的マーカーに対するscFvを使って、CALおよび/またはCAR T-エフェクター細胞を作製する。続いて、ヒト化マウスモデルにおける混合キメリズム誘導プロトコールが行われる。生着および混合キメリズムの安定性は、試験終了時点まで、レシピエントの血流におけるドナーリンパ系細胞およびドナー骨髄系細胞の存在によって追跡される。
【0319】
作業1.1 CD127+とCD45RO+の両方を共発現する標的細胞だけを標的にするAND論理CALおよび/またはCAR T細胞の作製と評価。単一の表面マーカーではメモリーT細胞をユニークに特定することができないので、本発明者らは特異性を確保するためにCDマーカーの組合せを標的にする必要があるだろう。本発明者らはCD127およびCD45ROを選ぶ。これらはメモリーT細胞をユニークに同定することが判明しているからである2627。このコンビナトリアルターゲティングを達成するために、SUPRAと呼ばれる先行CAR系に手を入れて活用する。この(SUPRA)CARは、T細胞上に発現したユニバーサル受容体(zipCAR)とターゲティングscFvアダプター(zipFv)とを含む二成分受容体系である。zipCARユニバーサル受容体は、細胞内シグナル伝達ドメイン(図6)と細胞外ドメインとしてのロイシンジッパーとの融合によって作製される。zipFvアダプター分子はコグネイトロイシンジッパーとscFvとの融合によって作製される。zipFv上のscFvは抗原に結合し、一方、ロイシンジッパーはT細胞上のzipCALおよび/またはzipCARに結合してそれを活性化する。移植免疫治療では、これらの特徴によって、過剰活性化を和らげ、特異性を強化することができる。
【0320】
SUPRA CALおよび/またはCAR系は、抗原認識のANDコンビナトリアル論理を実行するようにデザインすることもできる。直交するロイシンジッパーペアを使って、スプリットシグナルドメイン(例えばCD3z、CD28、4-1BB)を持つCALおよび/またはCARを作製することができ、そうすることで、これらの経路の独立した同時制御が可能になる(図6B)。T細胞は、完全に活性化するために、CD3zと共刺激シグナル伝達の両方を同時に必要とするので、各CALおよび/またはCARを、異なる抗原を標的にするscFvとのペアにすることで、二抗原コンビナトリアル論理抗原検知(two antigen combinatorial and logical antigen sensing)を可能にすることは容易にできる。
【0321】
本発明者らは、ヒト初代T細胞においてSUPRA系を使用することにより、SUPRA CARの活性は、過剰活性化を制限する複数の機序によって微調節されうることを実証した(図7)。SUPRA CAR T細胞は、標的特異性が改良されるように、複数の抗原に対して論理的に応答することもできる。さらにまた、直交するSUPRA CARを使用することで、複数のシグナル伝達経路またはT細胞サブタイプを誘導性に調節して、達成することができる免疫応答の幅を拡げることもできる。このプロジェクトに使用されるSUPRA CALおよび/またはCAR T細胞の特徴の要約は、図6A~6B、図7A~7Dに見いだすことができる。
【0322】
zipCAR受容体コンストラクトデザイン:本明細書に記載されているとおり、AND論理CALおよび/またはCAR Tは、ヒトCD8a鎖のヒンジ領域、ならびにヒトCD28の膜貫通および細胞質領域、またはCD3zシグナル伝達エンドドメインに、異なるロイシンジッパーを融合することによって作製される。すべてのCALおよび/またはCARは、表面発現を証明するために、mycタグを含有することができる。加えて、これらの初代T細胞は、発現を視覚化するために、CD3z鎖の後でmCherryにも融合されるだろう。
【0323】
zipFvコンストラクトデザイン:zipFv分子は、SYN2に融合されたCD127に対するscFv(CD3z SYN1 zipCARを刺激するため)、およびJUNジッパーに融合されたCD45ROに対するscFv(共刺激FOS zipCARを刺激するため)を含有する。scfvの配列は入手可能であり、商業的DNA合成によって迅速に構築することができる28
【0324】
zipCAR形質導入:ヒトPBMCは分離キットを使って精製され、レトロウイルス形質導入によって初代ヒトT細胞に導入される。zipCARの発現は、mycおよびV5-タグ免疫染色およびフローサイトメトリーによって定量される。対照として、CD3zとCD28の両方を含有するzipCAR(すなわちSYN1-CD28-CD3z)を使用することができる。このzipCARは論理計算を行うことができない。zipCARがCD45RO+細胞またはCD127+細胞を殺すことができることを保証するために、CD45RO-SYN2またはCD127-SYN2 zipFvを加えることができる。これらの対照は特異性に関するリファレンスとしても役立つだろう。
【0325】
抗CD127+/CD45RO+CAR T細胞の活性および効力をインビトロで評価する
CD127+/CD45RO+細胞を含むPBMCとSUPRA CAR T細胞との共培養による、ターゲティング特異性の検討
この実験では、この系が、大きなPBMC集団の中でCD127+およびCD45RO+二重陽性T細胞を特異的に殺すかどうかを検討する。PBMCは、IRBの承認を得た後、既知のVCAレシピエントまたはMass General Blood Bank Centerのどちらかから入手する。まず、ヒトCD45RO+およびCD127+を染色して、集団全体におけるメモリー細胞の初期パーセンテージを同定する(CD45RO/CD127二重陽性対二重陰性)。次にPBMCを、zipCAR発現CD8+T細胞およびzipFv(抗CD127および抗CD45RO)と、同じ条件で共培養する。試験時点(24、48、72時間)におけるCD45RO/CD127+/+対-/-の比の有意な変化が、非特異的な細胞傷害効果ではなく特異的T細胞のターゲティングにSUPRA CARが有効であるかどうかの指標とみなされることになる。加えて、細胞死滅とzipFv濃度の間の相関を決定するために、改変T細胞およびzipFvは、3つの異なるzipFv濃度(5、25、50ng/ウェル)で、メモリーT細胞と共培養される。T細胞活性化(CD69発現、培地中のIL-2およびIFN-g)およびメモリーT細胞に対する細胞傷害性(残存生細胞の数)も測定される。T細胞の増殖は細胞の計数によって測定される。すべての条件が少なくとも三重に試験される。
【0326】
(表1)実験のアウトライン
【0327】
HSCTの生着に対するメモリーT細胞の効果を評価し特徴づける
VCA-レシピエントPBMCによるヒト化マウスモデルの作製
CAR T細胞によるCD45RO/CD127ターゲティングが移植片の定着および混合キメリズムの持続可能性に及ぼす効果を検討するために、VCA-レシピエントのPMBCを利用することによってヒト化マウスモデルを作製した(図8A図8B)。ヒト化PBMCモデルは成人PBMCを使用した場合に最も早い生着速度を有し、強いメモリーT細胞機能を必要とする研究を可能にする。VCAレシピエントのPBMCは、メモリーT細胞(CD45RO+/CD127+)の同種異系反応性集団を保持しているので、それらの枯渇が移植片の拒絶に及ぼす効果を研究するための信頼できるモデルになる。この研究において各群に使用されるマウスの数は、先の研究からの推奨に基づいて選ばれる29。簡単に述べると、照射NSG(MHC I/II K/O)(3Gy)マウスに5×105個のPBMC細胞を注射し、ヒト末梢再構成(peripheral reconstitution)を1週おきにフローサイトメトリーによって測定する30
【0328】
メモリーT細胞枯渇が皮膚移植ヒト化マウスモデルにおける混合キメリズム樹立細胞に及ぼす効果の試験:VCA-レシピエントPBMCを使用することによって作製したNSG(MHC I/II K/O)マウスモデルを、混合キメリズム誘導のための基礎として使用する。このモデルのヒトPBMCにおけるメモリーT細胞の存在は、ヒト対象における混合キメリズムの誘導にとっての難題を模擬する。NSG Hu-PBMCに対して、それらのT細胞集団のメモリーコンパートメントを枯渇させるための抗CD45RO/CD127 CAR Tによる処置を行う/行わない(対照)(図8A図8B)。
【0329】
胎児CD34+HSC(および皮膚組織)はAdvanced Bioscience Resourcesから入手することができる。胎児HSCを利用して、以前に公表されたマウスにおける混合キメリズム誘導プロトコール(MCIP)を使用することによる多系譜生着(multi-lineage engraftment)の生成および樹立を評価する23。手短に述べると、雄マウスを抗CD154、抗CD40、CTLA-4で処置し、3GyのTBIを施行する。6時間後に、2×105個のCD34+HSC骨髄細胞を与える。生着は、異なる時点でドナーの骨髄系細胞およびリンパ系細胞の存在を測定することによって決定される。混合キメリズムは、各系譜における白血球の少なくとも5%がドナー由来であることと定義される。5%未満または多系譜状態の喪失はキメリズムの失敗とみなされる。
【0330】
次に、前述のヒト化マウスモデル(VCA-レシピエントPBMC-CD34 HSC)を、CD45RO/CD127細胞の枯渇が同種異系移植片の生残に及ぼす効果を試験するための皮膚移植モデルとして利用する。同じCD34+HSCドナーからの胎児皮膚移植片をAdvanced Bioscience Resourcesから入手する。PBMC注射10週後に、HSCドナーからの皮膚移植片および別の同種異系供給源からの異種移植片を使って、メモリーT細胞レパトアの非特異的枯渇が皮膚移植片の生残に影響を及ぼすかどうかを試験する(図8図9)。マウスを移植片拒絶またはPOD100まで追跡する。
【0331】
皮膚移植は以前に公表されたプロトコールを使って行われるだろう31。手短に述べると、ドナーの尾皮膚2片を1匹のレシピエントの背部に移植する。包帯除去(POD7)に続いて、マウスおよびそれぞれの皮膚移植片を毎日評価する。移植不全は、色、肌理および輪郭を含む移植片の物理的外観によって決定される。移植片拒絶または移植片生着の臨床徴候に関して裏づけとなるデータを得るために、組織学的検査も行う。50%を上回るサイズの収縮または色および柔軟性の変化(黒ずんだ硬い移植片)を起こした移植片は、失敗とみなされる。皮膚移植片は100日間追跡される。
【0332】
(表2)実験のアウトライン
【0333】
T細胞が正常細胞を標的細胞と区別できない場合は、オフターゲット毒性が生じる。この場合、CD45ROがT細胞上に主に発現するマーカーであるが、CD127はより一般的な表面マーカーであり、B細胞および樹状細胞上に見いだすことができる。本明細書に記載の「コンビナトリアルAND論理」CAR系は極めて特異的であることが示されているとはいえ、この系でもオフターゲット効果の可能性はある。代替的アプローチとして、CD45RO+集団のすべてを標的にすることもできる。これはセントラルメモリーT細胞からなるだけでなく、エフェクターT細胞も標的にする。これにより、より多くのT細胞が非特異的に標的とされることになるが、同時に、移植片に対する免疫反応の可能性は減少するかもしれない。
【0334】
CAR Tエフェクター細胞の一部は、活性化状態を一定期間保った後に、CD45RO/CD127などのメモリー表現型を発現するだろう。これは、CAR T細胞が表現型を変化させた後に互いに攻撃しあうかもしれないことを意味する。患者の体内でのCAR T細胞の長い活性化は常に懸念事項であった。この仮定上の状況は、CAR T細胞はメモリーT細胞を破壊するというその任務を完了した後に自分自身を片付けることになるので、セーフティステップ(safety step)とみなすことができる。一方、この自己排除現象は、それが実際に起こると判明すれば、患者を効果的に治療するために必要となるCAR T細胞の数を増加させることになるかもしれない。
【0335】
成功の評価基準:末梢血キメリズムを評価するために、1週おきに、尾静脈から採血した血液(40ul)を使用する。CD3+/CD8+、CD3+/CD4+、CD3+/CD8-/CD4-(ナイーブT細胞)、T-Reg、ナイーブおよび成熟B細胞(CD19+/CD78-およびCD19-/CD78+)を含むさまざまな白血球系譜におけるキメリズムのモニタリングには、モノクローナル抗ドナーHLA抗体を使用する。これらの系譜のすべてにおいてWBCの少なくとも5%がドナー由来である場合に、動物はキメラであるとみなされる。加えて、ヒト化マウスの全身的免疫状態をHSC移植前と移植4週後および8週後に、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)混合リンパ球反応(MLR)増殖アッセイによって評価する。PMBC-HSC移植前および試験終了時点後のMLR結果を比較する。
【0336】
レシピエント同種異系反応性T細胞の特異的枯渇および混合キメリズムの樹立に対するpMHC-CAR T-エフェクター細胞の効力を決定する。
本明細書には、任意の同種異系抗原特異的T細胞を標的にすることができるフレキシブルなCALおよび/またはCARデザインが記載される。移植との関連において同種異系抗原特異的T細胞は多様であることから、異なる同種異系反応性T細胞を同時に突き止めて攻撃するフレキシビリティを有するCALおよび/またはCAR系。(ドナー)pMHCを伴ったCALおよび/またはCAR T-eff細胞は、同種異系反応性T細胞を標的にすることができる。
【0337】
CALおよび/またはCAR T細胞治療が二重抗原-MHC系(OTiおよびOTii)のターゲティングに及ぼす効果
手短に述べると、単一特異性および二重特異性抗原-MHC系では、アダプター分子に取り付けられたpMHCマルチマー(例えばCAL)+CAR Tエフェクター細胞が使用される。抗原特異的CALおよび/またはCAR系は、インビトロでも、OTiおよびiiトランスジェニックマウスモデルでも、試験することができる。このモデルは、すべてのT細胞がニワトリ卵白アルブミン(H2Kb(OTi)およびI-A b(OTii)を背景とする257~264(OTi)および329~337(OTii))を特異的に認識する受容体を発現するように遺伝子改変される。これらのマウスモデルのT細胞は、pMHCクラスI/II+卵白アルブミンペプチドを特異的に認識するTCRを発現するように改変される。さらに重要なことに、この高度に制御されたモデルに手を入れて活用することで、T細胞活性とCALおよび/またはCAR T細胞実験パラメータ、例えば培養条件、pMHCアフィニティ、pMHCマルチマー濃度との間の相関関係を確立することができる。
【0338】
抗原特異的T細胞に対するインビトロの抗FITC CAR/pMHC(例えばCAL)系をデザインし、構築し、試験する。
【0339】
上述のように、古い世代のCAR T細胞では、新しい標的または複数の標的を認識できるようにするには、遺伝子的に再設計する必要があった。この難題を克服するために、本明細書に記載するように、マウススプリットユニバーサルCD8 CARが作製された。マウスFITC-CARの作製には、以前にヒト抗FITC CARについて記載したものと類似する工程を利用することができる20。C67BL/6マウス抗FITC CAR T細胞効力の効力を評価するために、ヒトCAR T細胞を使って上記のセクションで実行され言及される研究(図1~5)を、マウスCAR T細胞で繰り返す。
【0340】
(表3)実験のアウトライン
【0341】
OTiおよびOTiiトランスジェニックマウスにおける同種異系反応性T細胞のターゲティングについてCAR T-eff.+FITC-pMHCテトラマー(例えばCAL)の効力を評価する。
【0342】
OTiおよびOTii T細胞の認識と破壊に有効な卵白アルブミン-pMHC-CAR T細胞、OTiおよびOTii T細胞の混合物を野生型マウス(B6)レシピエントに移入する。この実験の読み出し情報は、CALおよび/またはCAR T細胞治療前後のOTiおよびiiの細胞数である。結果は、CAR T-eff細胞と卵白アルブミンペプチド+MHCテトラマー(例えばCAL)の効果が、OTiおよびOTii細胞の特異的クローンのターゲティングに成功することを示す。
【0343】
混合キメリズムおよび皮膚移植の生残に関して、同種異系反応性T細胞レパトアを標的にするための複数ペプチド/複数MHC(例えばCAL)-CAR T細胞治療の有効性を確立する。
【0344】
移植片の定着にとって最も大きな障壁は、ドナーとレシピエントのMHC間の完全ミスマッチである32。この難題は、本明細書では、同種異系反応性T細胞を標的にするためにMHC(例えばCAL)+CAR T細胞を使用することによって対処される。これらのMHCマルチマーは市販されており、抗FITC CAR T細胞によって認識されるように、FITCラベリングと容易にコンジュゲートすることができる。あるいは、スプリットユニバーサルCALおよび/またはCAR技術に関して利用できる選択肢は、アダプター(例えばCAL)とCARの間の結合のアフィニティを調整する選択肢を与えるロイシンジッパーを含めて、他にも数多くある。一方、マイナー組織適合性抗原(MiHA)は、主要組織適合遺伝子複合体(ヒト白血球抗原)によって提示される消化された細胞内/細胞外タンパク質に由来する短い免疫原性ペプチドである。MHCが一致している個体間にさえ存在するマイナー組織適合性抗原の差異は、移植後の免疫応答を誘導しうる。これらの相違は混合キメリズムによる寛容誘導を妨げる33
【0345】
ヒト化マウスモデルにおける同種異系反応性T細胞ターゲティングの効力を評価するためにドナー-レシピエント差異ペプチドライブラリーを作製する。
【0346】
これらの交換可能なペプチドMHC系上のデフォルトペプチドの役割は、UV光を使って、所望のペプチド(ドナー由来)と交換することができる34,35。ヒト白血球抗原(HLA)に関連するペプチドの大きなコレクションをヒトイムノペプチドームという。この研究のための望ましいペプチドは、免疫ペプチドームライブラリーを作製するための以前に確立されたプロトコールによって作製されるだろう36,37,38
【0347】
ドナーおよびレシピエントから組織特異的免疫ペプチド(immune peptide)ライブラリーを作製する。
【0348】
本発明者らは、以前に確立されたプロトコールを利用して、ドナーとレシピエントのイムノペプチドームを抽出し、同定することができる。次に本発明者らは、ソフトウェアツール(下記)を使って、ドナーとレシピエントとの間で弁別的に異なるペプチド配列を同定する。ドナーとレシピエントの免疫ペプチド配列におけるこれらの差異は、免疫拒絶を媒介する潜在能力を有する。ドナー-レシピエント差異ペプチドライブラリーからのペプチド配列を、商業的サービス39によって実用規模で作製し、ペプチド交換可能なMHCマルチマー(例えばCAL)(QuickSwitch MBL internationalまたはBiolegend FlexTetramer)に負荷することで、最終的にはCAR T細胞に結合させて、前述のインビトロおよびインビボモデルにおける同種異系反応性T細胞のターゲティングに使用する(図8図9)。簡単に述べると、ドナーおよびレシピエントのMHC関連ペプチドを、抗HLAモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティ精製により、独立して単離する36。溶出させたペプチドは、LC-MS/MSシステムにより、DIA(データ非依存型A)モードで同定される。質量分析出力ファイルは、ソフトウェアツール(NETMHC、SysteMHC)を使って、変換され、検索され、統計的に検証される。同定されたペプチドは次に、(GibbsCluster v.1によって)クラスタリングされ、長さおよび予測MHC結合アフィニティによってアノテートされる(NetMHC v.4)。信頼度の高いドナー/レシピエントMHC関連ペプチドの最終リストがレシピエントとドナーの間で比較され、MBL QuickSwitch(またはBio-legend FlexT)MHCテトラマー系と組み合わされるペプチドを作製するための供給源として使用される高品質ドナー-レシピエント差異ペプチドライブラリーの構築に、非共通配列が使用される。
【0349】
(表4)実験のアウトライン
【0350】
皮膚移植ヒト化マウスモデルにおける混合キメリズム樹立に関して、複数抗原/MHC設定における同種異系反応性T細胞ターゲティングの効力を評価する。
【0351】
実際の同種異系移植では、MHCミスマッチとMiHAの両方が、免疫応答および免疫拒絶の潜在的原因になるだろう。この実験では、ドナー-レシピエント非共通ペプチド配列と交換可能なペプチドMHC系(例えばCAL)との組合せを、スプリットCAR T細胞と併用することで、同種異系反応性T細胞を標的にすることができるかどうかという疑問に取り組む。
【0352】
この実験を開始する前に、同じドナーからのヒト胎児HSC+皮膚移植片を、Advanced Bioscience Resources(米国カリフォルニア州)から入手する。ドナー細胞のHLAタイピングを行い、ドナー(FITC+交換可能なペプチド)MHCマルチマーを作製するために使用する。これらのマルチマーと共に使用されるペプチドは、本明細書において上述した作業の結果に基づいて作製される。簡単に述べると、交換可能なペプチドMHC(例えばCAL)は、それぞれのデフォルトUV不安定ペプチドを解離させるために、UVにばく露される。差異ペプチドライブラリーは、この系のデフォルトペプチドを置き換えるために、望ましいペプチドを提供する。同じ二重ヒト化PBMC/HSCTマウスモデルを使って、このドナー/レシピエント差異ペプチドライブラリー+MHCの効力を、同種異系反応性メモリーT細胞の特異的ターゲティングおよび皮膚同種異系移植片の生残について評価する。図8A~8Bに示すように、Hu-PBMCを交換済ペプチドMHC(例えばCAL)+CAR Tで処理する。次に、胎児HSCによるHSCTを行い、6週間後に同じHSCドナーからの皮膚をマウスの背部に移植する。混合キメリズムの存在および移植片の生残は、本明細書において上述した基準を使って評価される。
【0353】
本イムノペプチドームライブラリーは新規であり、移植との関連で以前に応用されたことはない。イムノペプチドームマッピングおよび差異ライブラリー作製の代わりに、本発明者らは、周知の方法である全ペプチドーム(ドナー-レシピエント)差異ライブラリーを応用することもできる。
【0354】
CALおよび/またはCAR T細胞の特異性および死滅効率ならびにキメリズムレベルはインビトロおよびインビボで調べることができる。拒絶または調節の末梢機序は、実験の終了時点で、一連の混合リンパ球アッセイ(MLR)アッセイによって評価することができる。本発明者らのインビボ研究の場合、評価基準として役立つであろう齧歯類における寛容の本発明者らの標準的臨床定義は、HSCT後100日にわたる、拒絶および免疫抑制を伴わない生残であり、これは評価基準として役立つだろう。皮膚移植片は、前述のように、色、肌理および収縮のサイズに基づいて評価される。
【0355】
影響:本明細書には、VCA寛容誘導のための、CALおよび/またはCAR T細胞技術を利用する、新規適応免疫細胞治療戦略が記載されている。外傷性肢切断を含む筋骨格四肢傷害は小児熱傷および外傷集団には、しばしば見られる。これらの患者は、深刻な機能的および心理社会学的困難、ならびに生活の質の低下および生存期間の短縮と戦う。結果として、明らかな利益があるVCAの幅広い応用にとってのボトルネックは解消され、しばしば深刻な美観損傷および肢切断をもたらす壊滅的な小児熱傷の現在の管理にパラダイムシフトをもたらすだろう。加えて、結果が良ければ、外傷または先天性欠損にもVCAを行うことが可能になる。
【0356】
参考文献
【0357】
実施例9
Jurkat+pMHC-OTi
ここでは、キラーCAR T細胞がアダプター(pMHC、例えばCAL)+標的への結合によって活性化するかどうかの研究を説明する。実験デザインを図11に示す。
【0358】
FITCコンジュゲートテトラマーが媒介する活性化を検証し(図12)、それを経時的に追跡した(図13)。抗FITC Jurkat対OT-Iの実験は、抗FITC CAR Jurkat細胞100k個、OT-Iマウス由来の脾細胞100k個および5ug/mL~78ng/mLのFITCコンジュゲートテトラマー(陽性、H2Kb-SIINFEKL(SEQ ID NO:2750);陰性、I-Ab-AAHAEINEA(SEQ ID NO:2751))を使って行った。24時間時点における総Jurkat細胞数(図14)およびテトラマー染色レベル(図15)も決定した。テトラマーおよびCD69のレベルも決定した(図16)。
【0359】
この実験により、Jurkat細胞は1ug/mlのテトラマーまでは用量依存的に活性化すること、そしてOTiの結合および染色が用量依存的であることが実証された。キラー細胞に対する細胞傷害効果は見られず、標的細胞では目立った活性化が見られなかった。
【0360】
初代T細胞-OTi
実験デザインを図17に示す。ヒトCD8 pMHC-CAR Tによる死滅は極めて特異的であり、MHC-CAR T細胞はバイスタンダーCD4 T細胞を殺さない(図18)。ヒトCD8 pMHC-CAR Tに対する細胞傷害効果は見られなかった(図19)。CAR T細胞に対する細胞傷害性は長続きした(図20)。また、OTi CD8 T細胞上のCD69のレベルを追跡した(図21)。
【0361】
この実験により、キラー細胞に対する有意な細胞傷害性を伴わない標的細胞の活性化が実証された。これらの条件下ではキラー細胞の活性化は最適とはいえない可能性があり、初代T細胞の使用には、活性化を改良するために、新鮮な同系細胞を含めることができるだろう。
【0362】
実施例10
1E6 T細胞は、主なβ細胞自己抗原であるプレプロインスリン(PPI)に特異的な、確立されたCD8+である。1E6クローンは、ヒトβ細胞の表面においてグルコース依存的な提示を示す極めて弁別的なHLA A*0201提示シグナルペプチドエピトープ(PPI15~24)の認識により、β細胞特異的な死滅を媒介する(9)。本発明者らは、A*0201+ペプチドを介して1E6 T細胞を標的にするスプリットpMHC-CARを作製し、試験した。1E6 T細胞の効果的な死滅が観察された(図29)。
【0363】
実施例11
卵白アルブミンMiHAを含むCAL(OTiまたはOTiiに対するもの)を構築した(図26)。pMHCテトラマー+FITC(アダプター)は標的細胞(OTi)に用量依存的に結合するが、OTii特異的テトラマーは標的細胞に結合しない(図27)。OTi細胞へのJurkat+pMHCの結合はJurkat生細胞数を変化させない(図28Bおよび図30)。しかしヒトCD8 CAR Tは高い特異性で細胞傷害性だった(図31および図32)。対照テトラマーでは細胞傷害性は見られなかった。pMHCおよび脾細胞との共培養後に、キラーCAR T細胞またはバイスタンダーCD4 T細胞に対する細胞傷害性は見られなかった。
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【配列表】
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【国際調査報告】