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  • 特表-プラズマを用いた組成物の処理 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】プラズマを用いた組成物の処理
(51)【国際特許分類】
   C22B 9/00 20060101AFI20221228BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
C22B9/00
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523134
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020079284
(87)【国際公開番号】W WO2021074432
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19306358.3
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522154375
【氏名又は名称】パリ サイエンス エ レトレ
(71)【出願人】
【識別番号】501455677
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】516213895
【氏名又は名称】エコール ナシオナル スュペリュール ドゥ シミー ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルソー,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】プリマ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】モルヴァン,ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G084
4K001
【Fターム(参考)】
2G084AA20
2G084BB11
2G084CC05
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084FF31
4K001AA01
4K001AA04
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA21
4K001AA24
4K001AA25
4K001AA38
4K001AA41
4K001BA22
4K001BA23
4K001FA12
4K001GA19
(57)【要約】
本発明は、プラズマを用いて少なくとも第1の化合物と第2の化合物とを包含する組成物を処理するためのプロセスに関し、前記プロセスは、少なくとも:-封入容器内において、前記封入容器内に存在するガスから非平衡プラズマ流を生成することと、-前記非平衡プラズマ流を用いて、前記第1の化合物の少なくとも一部が抽出されるように、前記封入容器内に入れられた前記組成物を処理することと、を包含することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用いて少なくとも第1の化合物と第2の化合物とを包含する組成物を処理するためのプロセスであって、少なくとも、
- 封入容器内において、前記封入容器内に存在するガスから非平衡プラズマ流を生成することと、
- 前記非平衡プラズマ流を用いて、前記第1の化合物の少なくとも一部が抽出されるように、前記封入容器内に入れられた前記組成物を処理することと、
を包含することを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記第1の化合物が、不純物または目的化合物であること、を特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記非平衡プラズマ流が、少なくとも1つの反応種を包含し、前記第1の化合物が、前記少なくとも1つの反応種または前記第2の化合物との前記第1の化合物の反応によってそれの当初の形態またはそれの派生物のうちの1つの形態で抽出されること、を特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記抽出された第1の化合物が、気体状態であることと、前記抽出された第1の化合物を包含する前記非平衡プラズマ流が横切るカーボン・フェルト内に捕獲されることと、を特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
プラズマを用いて少なくとも第1の化合物と第2の化合物を包含する組成物を処理するためのリアクタであって、
- 前記組成物が入れられる封入容器と、
- 前記封入容器内に存在するガスから非平衡プラズマ流を、前記組成物を処理するために前記プラズマ・ガス流が前記組成物と接触するように生成するべく構成された発生デバイスと、
- 前記プラズマ流が前記非平衡状態に維持されるように前記リアクタの1つ以上の動作パラメータをコントロールするべく構成された1つ以上のコントロール・デバイスと、
を包含することを特徴とする、リアクタ。
【請求項6】
前記組成物が支持体の上に配置されることと、前記リアクタが、前記支持体の温度をコントロールすることによって前記組成物の温度を調整するべく構成された温度調整デバイスを包含することと、を特徴とする、請求項5に記載のリアクタ。
【請求項7】
前記封入容器が、前記非平衡プラズマ流によって前記組成物から抽出された少なくとも1つの化合物またはそれの派生物のうちの1つを捕獲するべく構成されたカーボン・フェルトを包含すること、を特徴とする、請求項5または6に記載のリアクタ。
【請求項8】
前記封入容器が、前記封入容器内へガスを導入するべく構成された第1のコントロール・デバイスと連通する第1の開口を包含すること、を特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項9】
前記封入容器が、第2の開口であって、それを通じて前記封入容器内に負圧を作り出すべく構成された第2のコントロール・デバイスと連通する第2の開口を包含すること、を特徴とする、請求項5乃至8のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項10】
前記非平衡プラズマ流が、前記第2の開口を通じて作り出された前記負圧の作用の下に前記第1と前記第2の開口の間を循環することと、前記支持体が前記第1と前記第2の開口の間に位置することと、を特徴とする、請求項6に従属するときの請求項8および9に記載のリアクタ。
【請求項11】
前記カーボン・フェルトが、前記組成物のための前記支持体と前記第2の開口の間に配置されること、を特徴とする、請求項6および7に従属するときの請求項9に記載のリアクタ。
【請求項12】
少なくとも1つの化合物を捕獲するためのプロセスであって、
- 気体状態で前記少なくとも1つの化合物を包含する非平衡プラズマ流を生成することと、
- 前記プラズマ流によって横切られる多孔質材料を通じて前記少なくとも1つの化合物を捕獲することと、前記多孔質材料の温度が、前記化合物が液体または固体状態にある温度T1であることと、
を包含することを特徴とするプロセス。
【請求項13】
前記多孔質材料がファイバから作られること、を特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記多孔質材料から、前記材料の濯ぎまたは前記材料の破壊によって前記少なくとも1つの化合物を回収することを包含すること、を特徴とする、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記生成される非平衡プラズマ流が、プラズマ流を用いて少なくとも第1の化合物と第2の化合物とを包含する組成物を処理することによって得られること、を特徴とする、請求項12乃至15のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて組成物を処理するためのプロセス、プラズマを用いて組成物を処理するためのリアクタ、およびプラズマ内に含まれる化合物を捕獲するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子構成要素、プラスチック材料、および/または金属材料等の材料を包含するデバイスの製造および消費は、全世界的に増加し続けている。生態学的な理由のため、またその種の材料の価値があり、かつ/または有毒であり得ることから、その種の材料を包含するデバイスをリサイクルする方法が開発された。
【0003】
デバイスのリサイクルは、特に、それらのデバイスが異なる材料の混合物を包含するときに困難となる可能性がある。特に、ラップトップ、電話機、コンピュータ、車両、ソーラーパネル等々の電子デバイスは、金属、重金属、樹脂、ポリマ、およびそのほかの構成要素の混合物を包含する。
【0004】
従来的なリサイクル方法は、概して連続した湿式冶金および/または高温冶金作業を必要とする。しかしながら、その種の作業は、エネルギ消費が高く、汚染ガスを発生し、かつ/またはたとえば重金属による土壌および水の汚染を招く。
【0005】
それに加えて、湿式冶金および/または高温冶金作業は、特定タイプの材料のためにセットアップされ、そのほかのタイプの材料または異なる組成を有する材料に適合させることが容易でない。
【0006】
さらに、湿式冶金および/または高温冶金作業では、廃棄材料から異なるタイプの構成要素を連続的におよび/または選択的に抽出し、回収することが可能にならない。したがって、これらの方法では、たとえば選択的に、かつ高い純度を伴って、たとえば電子デバイス等のデバイスの異なる構成要素を回収することが可能にならない。
【0007】
最近、熱プラズマを使用して母材から化合物をリサイクルする方法が開発された。プラズマは、物質の特定の状態であり、イオン、電子、ラジカル種、中性原子、および/または中性分子の混合物を包含することができる。その組成に起因して、プラズマは、物質のほかの状態(固体、液体、および気体)と比べて導電性が高く、かつ特異的性質を有する。プラズマは、中性気体をマイクロ波、強い電界、または電磁界に、当該中性気体が部分的に、または完全にイオン化するまで当てることによって発生させることができる。後者のプロセスの働きの下に非平衡プラズマ(『冷プラズマ』とも呼ばれる)が最初に形成され、その後さらに、この非平衡プラズマにエネルギを与えることによって平衡プラズマ(『熱プラズマ』とも呼ばれる)が生成される。
【0008】
非平衡プラズマは、イオン、および中性原子および/または分子といった重い種の温度より電子の温度が高いことから、熱力学的な平衡にないプラズマである。その種の非平衡プラズマは、概して、0.1から10,000パスカル(Pa)までの間をなす圧力において得られる。
【0009】
それに対して平衡プラズマまたは熱プラズマにおいては、すべての種(電子、ラジカル、イオン・・・)が同一の温度にある。その種の熱プラズマは、概して、10,000パスカル(Pa)より高い圧力において得られる。熱プラズマは、よりエネルギが高く、非平衡プラズマより高い温度を呈し、したがって、たとえば母材からの化合物のリサイクルに使用されるタイプのプラズマである。
【0010】
しかしながら、形成された後の熱プラズマの温度をコントロールすることは難しく、その種のプロセスは、たとえば満足が得られる歩留まりを伴って温度に敏感な金属または金属錯体を抽出することを可能にしない。それに加えて、熱プラズマを用いて抽出された化合物は、その種のプロセスが選択的でないことから、母材に含まれていた残渣によって、たとえば有機または無機残渣によって汚染されていることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、従来技術の方法の欠点の少なくとも1つを克服することを可能にし、かつ、特に、異なる材料を包含する組成物から満足が得られる純度で化合物を選択的に回収することを可能にする方法の必要性が未だに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、プラズマを用いて少なくとも第1の化合物と第2の化合物とを包含する組成物を処理するためのプロセスであって、少なくとも、
- 封入容器内において、前記封入容器内に存在するガスから非平衡プラズマ流を生成することと、
- 前記非平衡プラズマ流を用いて、前記第1の化合物の少なくとも一部が抽出されるように、前記封入容器内に入れられた前記組成物を処理することと、
を包含することを特徴とするプロセスとする。
【0013】
非平衡プラズマを用いて行われる前記組成物の処理のためのプロセスは、したがって、前記プラズマの前記温度をコントロールすることが可能である。前記プラズマの温度をコントロールすることによって、たとえば、前記第1および第2の化合物の蒸気圧をコントロールすることが可能である。このプロセスは、したがって、特に、前記第1の化合物と第2の化合物の間における沸騰温度および/または蒸気圧の差に影響を与えることによって、前記組成物から選択的に前記第1の化合物を少なくとも部分的に抽出することを可能にする。前記組成物から前記第1の化合物を抽出することによって、前記プロセスは、少なくとも部分的に、前記組成物内に残存する前記第2の化合物から前記第1の化合物を分離することを可能にする。このプロセスにおいて、前記第1の化合物は、前記第2の化合物と異なる。非平衡プラズマが平衡プラズマよりエネルギが高くないことから、前記組成物の劣化/変質を最小化しつつ、または回避さえしつつ、特に前記非平衡プラズマ内に含まれる前記第1および/または第2の化合物の劣化/変質、および/またはそれらの派生物の劣化/変質を回避しつつ、前記組成物を処理することができる。これにおいて化合物の劣化/変質は、前記化合物が、それの当初の形態の下に、または派生物として回収することが不可能となり、リサイクル可能でなくなるか、価値がなくなるか、または使用可能でなくなるような態様でこの化合物の構造が変更されることを意味する。
【0014】
前記プロセスの間は、前記化合物をその当初の形態の下に、またはそれの派生物のうちの1つの形態の下に抽出できる。前記第1の化合物がそれの派生物のうちの1つの形態の下に抽出されるとき、それを前記非平衡プラズマと前記第1の化合物の反応によって、または前記第1の化合物と第2の化合物の間における反応によって生成することができ、前記反応が前記非平衡プラズマによって誘導される。好ましい実施態様においては、前記第1の化合物を前記組成物から完全に抽出することができる。
【0015】
前記組成物から前記第1の化合物を部分的に、または完全に抽出した後は、前記組成物内に前記第2の化合物が残存し、したがって前記組成物は、前記第2の化合物で富化される。前記第2の化合物は、それの当初の形態の下に、またはそれの派生物のうちの1つの形態の下に前記組成物内に残存することができる。前記第2の化合物が、それの派生物のうちの1つの形態の下に前記組成物内に残存するとき、それを前記非平衡プラズマと前記第2の化合物の反応によって、または前記第1の化合物と第2の化合物の間における反応によって生成することができ、前記反応は前記非平衡プラズマによって誘導される。
【0016】
この説明の枠組みの中においては、化合物の派生物が、たとえば、前記化合物の還元された、酸化された、ハロゲン化された、特に塩化された形態として定義される。特に、派生物は、前記化合物がまだリサイクル可能であり、価値があり、かつ使用可能である化合物の形態である。派生物は、前記化合物がそれの当初の形態の下に、または別の派生物の形態の下に回収できる化合物の形態である。化合物の派生物は、したがって、前記化合物の劣化/変質によって得られる生成物(1つ以上)とは異なる。
【0017】
第1の実施態様によれば、前記第1の化合物を不純物とすることができ、前記第2の化合物を目的化合物とすることができる。この実施態様によれば、前記非平衡プラズマを用いた前記組成物の処理が、前記組成物からの前記第1の化合物の、すなわち前記不純物の少なくとも一部の抽出または取り除きを可能にすること、したがって、前記組成物を前記第2の化合物により、すなわち前記目的化合物により富化することができる。好ましい実施態様においては、前記第1の化合物を前記組成物から完全に抽出することができ、前記プロセスの終了時においては、前記第2の化合物を純化された状態で回収することができる。
【0018】
この説明の枠組みの中においては、化合物が包含する不純物および/またはほかの化合物が、前記化合物の総重量に対して10重量パーセントを超えない、好ましくは5重量パーセントを超えない、より好ましくは3重量パーセントを超えないとき、前記化合物は純粋であると見做す。
【0019】
第2の実施態様によれば、前記第1の化合物を目的化合物とすることができ、前記第2の化合物を不純物とすることができる。この実施態様によれば、前記非平衡プラズマを用いた前記組成物の処理は、前記封入容器の内側に前記組成物の残渣として前記不純物を残す一方、前記目的化合物を純化された状態で抽出することを可能にし得る。好ましい実施態様においては、前記第1の化合物を完全に抽出することができ、前記プロセスの終了時においては、前記第1の化合物全体を純化された状態で回収することができる。
【0020】
第3の実施態様によれば、前記第1の化合物を第1の目的化合物とすることができ、前記第2の化合物を第2の目的化合物とすることができる。この実施態様によれば、前記非平衡プラズマを用いた前記組成物の処理が、前記第1の目的化合物の少なくとも一部の抽出または取り除きを可能にすること、したがって、前記組成物を前記第2の目的化合物で富化することができる。好ましい実施態様においては、前記第1の目的化合物を前記組成物から完全に抽出することができ、前記プロセスの終了時においては、前記第2の目的化合物を純化された状態で前記封入容器の内側に回収することができる。前記プラズマによって抽出された前記第1の化合物もまた、たとえばフィルタ/捕獲材料、特に多孔質材料によって回収することができる。この好ましい実施態様によれば、前記プロセスは、前記第1と第2の目的化合物を分離することを可能にする。
【0021】
前記第1の化合物は、たとえば、金属、金属派生物、2つ以上の金属の合金、ポリマ、有機化合物、および樹脂のうちから選択することができる。前記第1の化合物が金属であるときは、前記金属を、たとえば、スズ(Sn)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、金(Au)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、アンチモン(Sb)、およびマグネシウム(Mg)のうちから選択することができる。
【0022】
前記第2の化合物は、たとえば、金属、金属派生物、2つ以上の金属の合金、ポリマ、有機化合物、および樹脂のうちから選択することができる。前記第2の化合物が金属であるときは、前記金属を、たとえば、スズ(Sn)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、金(Au)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、アンチモン(Sb)、およびマグネシウム(Mg)のうちから選択することができる。
【0023】
好ましい実施態様においては、第1および第2の化合物のうちの少なくとも1つを金属、金属派生物、または2つ以上の金属の合金とすることができる。
【0024】
別の実施態様によれば、前記組成物が、3つ以上の化合物を包含できる。第1、第2、および第3の実施態様のそれぞれは、前記組成物内の化合物の数に関係なく適用できる。この実施態様によれば、前記プロセスは、1つの化合物をほかの2つの化合物から分離することを可能にし、その後に続いて前記ほかの2つの化合物が分離されるか、または分離されず、前記第1の化合物を前記抽出される化合物または前記封入容器内に残存する前記化合物であるとすることができる。
【0025】
前記組成物が、3つ以上の化合物を包含するとき、前記3つ以上の化合物のそれぞれは、金属、金属派生物、2つ以上の金属の合金、ポリマ、有機化合物、および樹脂のうちから選択することができる。前記3つ以上の化合物が1つ以上の金属を包含するときは、前記金属を、スズ(Sn)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、金(Au)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、アンチモン(Sb)、およびマグネシウム(Mg)のうちから選択することができる。
【0026】
この説明の枠組みの中においては、金属は、その種の金属の原子形態を指し、金属派生物または金属合金は、前記金属の分子形態を指す。
【0027】
また別の実施態様によれば、前記プロセスを、組成物からの異なる化合物の選択的な抽出に使用することができる。この実施態様によれば、前記組成物が、n個の異なる化合物を包含することができ、前記プロセスを(n-1)回行うことができる。前記プロセスが行われる毎に、前記非平衡プラズマ流を通じて前記組成物から前記n個の化合物のうちの1つの化合物を抽出することができる。n-1回のプロセスが行われた後は、最後の化合物が前記封入容器内に残存することができる。
【0028】
多様な動作パラメータをコントロールして前記プロセスを行うことができる。
【0029】
第1の動作パラメータは、前記封入容器内に存在するガスのタイプとすることができる。
【0030】
実施態様によれば、前記封入容器内に存在する前記ガスは、少なくとも1つの不活性ガスを包含できる。この実施態様によれば、前記封入容器内に存在する前記ガスは、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N)、およびこれらの混合物のうちの1つの中から選択することができる。不活性ガスまたは不活性ガスの混合物を包含するガスから生成される前記非平衡プラズマは、反応種を包含できる。前記反応種は、電子、イオン、および/またはラジカル種を包含できる。
【0031】
前記封入容器内に注入される前記不活性ガスの流量は、1から5000ml/分まで、好ましくは50から2000ml/分まで、より好ましくは100から1000ml/分までの範囲内とすることができる。
【0032】
反応種を包含する非平衡プラズマを用いた前記組成物の処理では、たとえば、前記第1と前記第2の化合物の間における化学反応を誘導することを可能にし得る。この例示的な実施態様によれば、前記第1の化合物を、それの派生物のうちの1つの形態の下に抽出することができる。別の例示的な実施態様によれば、反応種を包含する非平衡プラズマを用いた前記組成物の処理は、気化による前記第1の化合物の抽出を可能にし得る。
【0033】
別の実施態様によれば、前記封入容器内に存在する前記ガスが、少なくとも1つの不活性ガスを包含でき、さらに少なくとも1つの追加の反応性ガスを包含できる。この実施態様によれば、前記少なくとも1つの追加の反応性ガスは、O、HO、H、NH、N、Cl、Br、I、またはこれらの類、およびこれらの混合物のうちの1つの中から選択することができる。この実施態様によれば、その種のガスから生成された前記非平衡プラズマは、反応種および追加の反応種を包含できる。
【0034】
追加の反応種を包含する非平衡プラズマを用いた前記組成物の処理は、前記第1の化合物をそれの当初の形態の下に抽出し、かつ前記第2の化合物をそれの派生物のうちの1つの形態の下に前記封入容器内に残すこと、または前記第1の化合物をそれの派生物のうちの1つの形態の下に抽出し、かつ前記第2の化合物をそれの当初の形態の下に前記封入容器内に残すこと、または前記第1の化合物をそれの派生物のうちの1つの形態の下に抽出し、かつ前記第2の化合物をそれの派生物のうちの1つの形態の下に前記封入容器内に残すことを可能にし得る。
【0035】
前記追加の反応性ガスの流量は、20から2000ml/分まで、好ましくは30から1000ml/分まで、より好ましくは30から500ml/分までの範囲内とすることができる。
【0036】
好ましい実施態様によれば、前記封入容器内に含まれているガスが、少なくとも1つの不活性ガスと少なくとも1つの追加の反応性ガスを包含し、前記不活性ガスの流量は、前記追加の反応性ガスの流量より高くすることができる。好ましくは、前記追加の反応性ガスの流量を全体のガス流量の0.1から50%までと表すことができ、前記全体のガス流量は、前記不活性ガスの流量と前記反応性ガスの流量の合計とする。
【0037】
プロセスにおいては、前記少なくとも1つの不活性ガスおよび前記少なくとも1つの追加の反応性ガスを、1つ以上のインジェクタを用いて前記封入容器内に注入することができる。
【0038】
第2の動作パラメータは、前記封入容器の内側の圧力であるとすることができる。
【0039】
前記封入容器は、第2のコントロール・デバイスとしての圧力調整デバイスを用いて所望の圧力に維持することができる。前記圧力調整デバイスは、第2の開口を通じて前記封入容器と連通することができ、前記開口を通じて前記封入容器内に負圧を作り出すことができる。前記圧力調整デバイスは、たとえば、バルブとポンプを包含できる。好ましくは、前記圧力調整デバイスは、前記封入容器の内側を低い圧力に置くことを可能にし得る。前記封入容器の内側を低い圧力に置くことによって、前記第1の開口と前記第2の開口の間にガス流を発生させることができる。
【0040】
前記圧力のコントロール、特に10,000Paより低い、好ましくは5,000より低い、より好ましくは2,500Paより低い圧力の維持は、非平衡状態で前記プラズマ流を維持することを可能にし得る。
【0041】
さらに、前記圧力のコントロール、特に10,000Paより低い、好ましくは5,000Paより低い、より好ましくは2,500Paより低い圧力の維持は、気化によって前記第1の化合物(または、前記組成物内に含まれているほかの化合物)を抽出することを可能にし得る。好都合なことに、その種の圧力は、大気圧における気化と比べてより低い温度で前記第1の化合物(または、前記組成物内に含まれているほかの化合物)を気化させることを可能にする。言い換えると、前記封入容器の内側の前記圧力を10,000Paより低く、好ましくは5,000Paより低く、より好ましくは2,500Paより低く維持することは、抽出されることになる前記化合物の沸点を下げることを可能にする。好都合なことに、その種のプロセスは、前記組成物内に含まれている前記化合物の劣化/変質の回避を可能にする。
【0042】
前記封入容器内に存在するガスから前記非平衡プラズマを生成する前の前記封入容器の内側の圧力は、0.1から10,000Paまでの範囲、好ましくは0.5から5,000までの範囲、好ましくは1から3,500までの範囲、好ましくは1から2,500Paまでの範囲、好ましくは10から1,500Paまでの範囲、より好ましくは300から900Paまでの範囲内とすることができる。
【0043】
第3の動作パラメータは、前記封入容器の内側に注入される物質の状態とすることができる。
【0044】
前記封入容器の内側に注入される物質は、気体状態であり、プラズマは、前記ガスを加熱すること、または前記ガスをマイクロ波、電界、または電磁界に当てることを可能にするプラズマ発生デバイスによって発生させることができる。
【0045】
実施態様によれば、本発明の前記非平衡プラズマは、電弧によって、すなわち前記組成物の全表面を同時に処理することが可能でない高温において不均質なプラズマを発生させることになる電弧によって発生されるのではない。好都合なことに、本発明の中で使用される前記非平衡プラズマは、前記組成物の全表面を完全に覆い、かつ同時に前記全表面を効率的に処理することを可能にする均質なプラズマである。
【0046】
好ましい実施態様によれば、前記プラズマは、前記ガスを電磁界に当てることによって、たとえば無線周波数発生器を第3のコントロール・デバイスとして使用することによって発生させることができる。前記無線周波数発生器は、たとえば、前記封入容器を取り囲むコイル・アレンジメントまたは、誘導性ワイヤを包含するデバイスと接続することができる。好ましくは、前記コイル・アレンジメントまたはデバイスが、前記封入容器の前記第1の開口と前記第2の開口の間に位置することができる部分の周りに配置される。この好ましい実施態様によれば、50から6000Wまで、好ましくは50から3000Wまで、より好ましくは50から2000Wまでの範囲の電力を前記無線周波数発生器に印加することによって、前記無線周波数発生器が、前記封入容器内に存在するガスから非平衡プラズマを発生させる。より詳細に述べれば、前記無線周波数発生器は、前記封入容器内に存在する前記ガス流から非平衡プラズマ流を発生させることができる。好ましくは、前記非平衡プラズマ流は、前記コイル・アレンジメントまたはデバイスによって取り囲まれる前記封入容器の部分から前記第2の開口までを循環する。
【0047】
発生された前記非平衡プラズマは、次に挙げる物理的特徴のうちの1つ、2つ、または3つ、または次に挙げる4つの物理的特徴を有することができる:
- 50から6000Wまで、好ましくは50から3000Wまで、より好ましくは50から300Wまで、より好ましくは50から200Wまでの範囲の電力;前記プラズマの電力は、たとえばサーマル・カメラまたは熱量測定を使用して前記プラズマの温度を測定することによって測定することができる。
- 1Aより低い、好ましくは0.02Aから1Aまで、好ましくは0.06Aから0.8Aまで、好ましくは0.1Aから0.7Aまで、より好ましくは0.2Aから0.6Aまでの範囲の強度;前記プラズマの強度は、たとえば前記発生器の電極上においてオシロスコープまたはアンペア計を使用して測定することができる。
- 100Vから6kVまで、好ましくは150Vから2kVまで、好ましくは180Vから1kVまで、より好ましくは200Vから500Vまでの範囲の電圧;前記プラズマの電圧は、たとえば前記発生器の電極上においてオシロスコープまたは電圧計を使用して測定することができる。
- 10MHzから45MHzまで、好ましくは10MHzから42MHzまで、より好ましくは15MHzから40MHzまでの範囲の周波数;前記プラズマの周波数は、前記発生器の電極上においてオシロスコープを使用して測定することができる。
【0048】
前記非平衡プラズマの前記物理的特徴は、前記封入容器内に存在するガスから反応種を生成するには充分に反応的であり、かつ前記組成物内に存在する前記目的化合物の劣化/変質を回避するには充分に温和なプラズマを有することを可能にする。
【0049】
前記プラズマの強度および電圧は、前記封入容器内に存在するガスに対して前記プラズマ発生デバイスによって印加される電力値に依存することができる。前記非平衡プラズマの電力は、特に、前記無線周波数発生器の電力をコントロールすることによってコントロールすることができる。
【0050】
前記非平衡プラズマ流は、発生の後、500℃より低い温度、好ましくは350℃より低い温度、より好ましくは250℃より低い温度を有することができる。好都合なことに、その種の温度は、通常は1000℃を超える熱プラズマ流の温度より遙かに低い。前記非平衡プラズマの低い温度は、前記組成物内に存在する前記目的化合物の劣化/変質の回避を可能にする。
【0051】
好ましい実施態様においては、前記非平衡プラズマ流が発生した後、前記プロセスの間にわたって前記封入容器の内側の圧力を、0.1から5000Paまで、好ましくは100から3500Paまで、より好ましくは300から900Paまでの間に維持されるように前記圧力調整デバイスによって調整することができる。したがって、前記プラズマ流は、前記プロセス中、好ましくは前記プロセスの持続期間の全体にわたって非平衡状態に維持される。
【0052】
好都合なことに、前記封入容器の内側の圧力が減じられ、前記組成物内に含まれている、抽出しなければならない前記化合物(1つ以上)の沸点を下げることができ、前記化合物(1つ以上)の抽出を有利にすることができる。したがって、熱プラズマを用いるより低い温度においてその種の化合物(1つ以上)を抽出することができる。
【0053】
好ましくは、前記無線周波数発生器は、前記プロセスの終了まで、たとえば前記組成物から所望の量の第1の化合物が抽出されるまで、連続的に機能し、または動作することができる。好ましくは、前記プロセス全体の間にわたって前記無線周波数発生器に同じ電力を印加することができる。
【0054】
好ましい実施態様によれば、前記組成物を、好ましくは、前記コイル・アレンジメントまたはデバイスによって取り囲まれた前記封入容器の部分と前記第2の開口の間において前記非平衡プラズマ流が横切るように前記封入容器内に配することができる。
【0055】
別の実施態様によれば、前記組成物を前記封入容器内の支持体上に配置することができ、前記支持体を、好ましくは、前記コイル・アレンジメントまたはデバイスによって取り囲まれた前記封入容器の部分と前記第2の開口の間に配置することができる。
【0056】
好ましい実施態様によれば、前記支持体をるつぼとすること、好ましくは、カーボンるつぼ等の誘導によって加熱することが可能なるつぼ、特に1.90から2.30まで、好ましくは1.95から2.10まで、より好ましくは2.03から2.07までの密度を有するカーボンるつぼ等の高密度を有するるつぼとすることができる。
【0057】
第4の動作パラメータは、前記組成物が配置される前記支持体の温度とすることができる。
【0058】
可能性のある実施態様によれば、好ましくはるつぼとする前記支持体の温度が変更されず、前記支持体上に配置された前記組成物は、前記非平衡プラズマ流の温度、好ましくは500℃より低い温度とすることができる。
【0059】
別の可能性のある実施態様によれば、好ましくはるつぼとする前記支持体の温度を変更することができ、特に第4のコントロール・デバイスによって前記支持体を加熱または冷却することができる。この可能性のある実施態様によれば、前記組成物の温度を、前記非平衡プラズマ流の温度に応じて加熱または冷却することができる。この実施態様によれば、前記組成物の温度が前記非平衡プラズマ流の温度と異なること、特にそれより高く、またはそれより低くすることができる。
【0060】
この実施態様によれば、前記支持体の温度を、熱交換器、たとえば前記支持体と接触できるか、または前記支持体を取り囲むことができる熱伝達流体の回路を用いて加熱または冷却することができる。
【0061】
前記支持体が加熱されるときは、前記第4のコントロール・デバイスを、前記支持体と接触できるか、または前記支持体を取り囲むことができる抵抗加熱/加熱抵抗器とすることができる。
【0062】
好ましい実施態様によれば、前記支持体が加熱されるときは、前記第4のコントロール・デバイスを電磁誘導発生器とすることができる。前記電磁誘導は、たとえば、前記封入容器を取り囲むコイル・アレンジメントまたはデバイスを使用して前記支持体に適用することができ、前記コイル・アレンジメントまたはデバイスは、電磁誘導発生器と接続される。
【0063】
例示的な実施態様によれば、好ましくは前記るつぼとする前記支持体の温度を変更すること、すなわち熱交換器、たとえば前記るつぼと接触できるか、かつ/または前記るつぼを取り囲むことができる熱伝達流体の回路を用いて加熱または冷却することができる。
【0064】
前記支持体が加熱されるときは、前記るつぼの温度を、前記るつぼと接触できるか、かつ/または前記るつぼを取り囲むことができる1つ以上の加熱素子、たとえば加熱ワイヤ(1つ以上)、加熱抵抗器(1つ以上)等を用いて上昇させることができる。
【0065】
好ましい実施態様によれば、前記支持体が加熱されるときは、電磁誘導を用いて前記支持体の温度を上昇させることができる。前記電磁誘導は、たとえば、前記封入容器を取り囲むコイル・アレンジメントまたはデバイスを使用して前記支持体に適用することができ、前記コイル・アレンジメントまたはデバイスは、誘導発生器と接続される。
【0066】
好都合なことに、前記支持体の加熱または冷却を介した前記組成物の加熱または冷却は、より良好な前記第1の化合物の抽出のコントロールを可能にし得る。例示的な1つの実施態様によれば、前記組成物の温度を上昇させると、抽出が最適化されるように、前記組成物、または前記組成物の前記化合物のうちの1つの溶融を可能にし得る。別の実施態様によれば、前記組成物を冷却することが、前記組成物内に含まれている温度に敏感な化合物の劣化の防止を可能にし得る。さらに別の実施態様によれば、前記組成物を冷却することが、前記組成物内に含まれている2つの化合物の間、または前記プラズマ流の前記反応種と前記組成物内に含まれている化合物の間における反応の自由エンタルピの低減を、この反応、たとえばTaからTaへの前記プラズマ流による還元を促進するために可能にし得る。
【0067】
前記支持体の加熱または冷却は、前記プロセスの持続期間全体の間にわたって、または前記プロセスの特定の持続期間のみの間にわたって適用することができる。
【0068】
したがって、非平衡プラズマを用いた前記組成物の処理は、前記プロセスを適合させること、特に、前記組成物内に含まれている化合物のタイプに対して、および/または抽出することになる化合物のタイプに対して前記プロセスの動作パラメータを適合させることによって前記プロセスのコントロールを可能にし得る。特に、たとえば前記プラズマの電力、前記封入容器の内側の圧力、および/または前記組成物の温度等の動作パラメータをコントロールすることができる。その種のコントロールは、定義によれば非常に高い温度を有し、非常にコントロールが困難な平衡または熱プラズマを用いた場合には可能でない。
【0069】
実施態様によれば、前記プロセスは、前記抽出された第1の化合物を包含する前記非平衡プラズマ流によって横切られるフォーム、フェルト、またはウール等の多孔質材料、好ましくは有機ファイバ、たとえば人間または動物の毛、無機ファイバ、プラスチック・ファイバ、カーボンファイバ、グラスファイバ、またはロック・ファイバ等のファイバによって形成される多孔質材料によって前記抽出された第1の化合物を捕獲することを包含できる。好ましい実施態様によれば、前記多孔質材料をカーボン・フェルトとすることができる。
【0070】
例示的な実施態様においては、前記組成物が、抽出されることになる化合物を2つ以上包含できる。この実施態様によれば、前記組成物を処理するための前記プロセスは、連続的に各化合物について行うことができる。好都合なことに、前記動作パラメータは、前記プロセスの各反復または実行毎にコントロールすることができる。たとえば、前記動作パラメータが、1つの反復または実行から別のそれへと移るときに同一であることもあれば、1つ以上の動作パラメータによって異なることもある。
【0071】
実施態様によれば、前記プロセスは、非平衡プラズマ流を用いた前記組成物の処理の前の前記組成物の前処理を包含できる。前記前処理は、プラズマを必要としないこともあり、たとえば、前記封入容器が減圧下にある間に前記支持体が加熱される前処理プロセスとすることができ、前記前処理プロセスは、前記組成物の1つ以上の化合物を気化することを可能にする。
【0072】
別の実施態様によれば、前記封入容器は、たとえばリアクタ、好ましくは透明な壁(1つ以上)、たとえば石英の壁(1つ以上)を伴う円筒状のリアクタの一部とすることができる。好ましくは、前記壁(1つ以上)が、前記封入容器の外側にいる操作者による前記封入容器の内側の視覚的な監視を可能にし得る。前記プロセスは、したがって、前記多孔質材料に充填される抽出された化合物を視覚化することによって、たとえば前記組成物内の色の変化によって視覚的にコントロールできる。好都合なことに、石英は、誘導によって加熱されず、したがって、石英の壁(1つ以上)は、前記プロセスの間にわたって低い温度に置かれる。
【0073】
このプロセスは、電子構成要素(電話機、コンピュータ・・・)等のデバイス;プラスチック材料;コンデンセータ;バッテリ;ソーラーパネル;コンピュータ;電球、特にLED電球または低エネルギ電球;金属材料;ガラス;精錬されるべき鉱物、およびこれらの類の純化、リサイクル、および/または変換に使用できる。
【0074】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの化合物を捕獲するためのプロセスであって、前記プロセスは、
- 気体状態で前記少なくとも1つの化合物を包含するプラズマ流を発生させることと、
- 前記プラズマ流によって横切られる多孔質材料を通じて前記少なくとも1つの化合物を捕獲することと、前記多孔質材料の温度が、前記化合物が液体または固体状態にある温度T1であることと、
を包含することを特徴とする。
【0075】
好ましい実施態様によれば、発生される前記プラズマ流は、非平衡プラズマ流である。
【0076】
前記多孔質材料は、前記化合物を包含する前記非平衡プラズマ流によって横切られるフォーム、フェルト、またはウール等の3次元(3D)材料とすること、好ましくは有機ファイバ、たとえば人間または動物の毛、無機ファイバ、プラスチック・ファイバ、カーボンファイバ、グラスファイバ、またはロック・ファイバ等のファイバによって形成される多孔質材料とすることができる。
【0077】
化合物を捕獲するための前記プロセスは、非平衡プラズマ流および平衡(または、熱)プラズマ流に適用することができる。前記プラズマ流内に含まれている前記化合物は、たとえばプラズマ流を使用した組成物からの抽出または気化に起因して気体形態の下にあるとし得る。
【0078】
前記非平衡プラズマ流内に含まれている前記化合物は、たとえば金属、金属派生物、2つ以上の金属の合金、ポリマ、有機化合物、および樹脂のうちから選択することができる。前記第1の化合物が金属であるときは、前記金属を、スズ(Sn)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、金(Au)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、アンチモン(Sb)、およびマグネシウム(Mg)のうちから選択することができる。
【0079】
好都合なことに、前記多孔質材料の温度は、前記プラズマ流内に含まれている前記化合物の沸点より低くすることができ、前記化合物は、液体として、または固体として前記多孔質材料によって捕獲することができる。好ましい実施態様においては、前記化合物を包含している全体の前記非平衡プラズマ流が、必然的に前記多孔質材料を横切り、前記非平衡プラズマ流内に含まれていた前記化合物の総量をカーボン・フェルトによって捕獲することができる。
【0080】
実施態様によれば、前記多孔質材料の寸法および体積を、前記非平衡プラズマ流内に存在する化合物の量に対して適合させることができる。
【0081】
別の実施態様によれば、前記多孔質材料は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%の空隙率を有することができる。
【0082】
前記多孔質材料は、導電性とすること、または非導電性とすることができる。好ましくは、前記多孔質材料を伝熱性のものとしない。
【0083】
好都合なことに、前記多孔質材料によって捕獲される前記化合物は、前記多孔質材料の濯ぎによって、または前記多孔質材料の破壊によって回収または分離することができる。
【0084】
第1の例示的な実施態様においては、前記捕獲された化合物を包含する前記多孔質材料を、たとえば、水、酸溶媒、塩基性溶媒、アルコール(たとえば、エタノール)、アセトン、およびこれらの類といった溶剤によって濯ぐことができる。前記多孔質材料の濯ぎが達成されると、前記溶剤が前記捕獲された化合物を含み、その後、前記溶剤を蒸発させることによってそれを回収または分離することができる。この例示的な実施態様によれば、前記多孔質材料は、化合物を捕獲するための別のプロセスにおいて再使用することができる。
【0085】
第2の例示的な実施態様においては、前記多孔質材料を、前記捕獲された化合物を包含するカーボン・フェルトとすることができ、組成物の処理について手前に述べられている前記プロセスに従って、非平衡プラズマによってそれを処理することができ、前記プラズマは、追加の反応性ガスとして酸素(O)を包含する。その種のプロセスを用いると、前記カーボン・フェルトを二酸化炭素(CO)の形態の下に抽出することができ、前記捕獲された化合物を純粋な形態で回収することができる。
【0086】
第3の例示的な実施態様においては、前記多孔質材料を、前記捕獲された化合物を包含するカーボン・フェルトとすることができ、組成物の処理について手前に述べられている前記プロセスに従って、非平衡プラズマによってそれを処理することができ、前記プラズマは、追加の反応性ガスとして水素(H)を包含する。その種のプロセスを用いると、前記カーボン・フェルトをメタン(CH)の形態の下に抽出することができ、前記捕獲された化合物を純粋な形態で回収することができる。
【0087】
好都合なことに、前記多孔質材料内に含まれている前記捕獲された化合物を回収するための前記方法は、前記捕獲された化合物のタイプ(金属、金属派生物、有機化合物・・・)すなわち、前記多孔質材料を横切る前記非平衡プラズマ流内に含まれている化合物のタイプに応じて選択することができる。前記捕獲された化合物を回収するための前記方法は、溶剤、温度等に対する前記捕獲された化合物の敏感度に応じて選択することもできる。
【0088】
別の実施態様によれば、前記非平衡プラズマ流が1を超える数の化合物を包含できる。この実施態様によれば、前記非平衡プラズマ流内に含まれているすべての前記化合物を前記多孔質材料内に捕獲すること、または前記化合物のうちのいくつかだけを前記多孔質材料内に捕獲することができる。
【0089】
また別の実施態様によれば、前記プロセスを停止して前記多孔質材料を取り替えることができ、前記多孔質材料が取り替えられた後に、同一の動作パラメータを用いて、または異なる動作パラメータを用いて前記プロセスを再開することができる。この実施態様の例によれば、前記多孔質材料は、それが前記抽出された化合物で充満されたことに起因して取り替えることができ、新しい多孔質材料を伴って前記プロセスを再開し、同一の化合物の捕獲を継続することができる。この実施態様の別の例によれば、新しい多孔質材料を用いて異なる化合物を捕獲するために前記多孔質材料を取り替えることができる。
【0090】
1つの実施態様によれば、化合物を捕獲するための前記プロセスは、手前に述べられている組成物を処理するための前記プロセスの中で使用することができる。この実施態様によれば、前記多孔質材料を、前記非平衡プラズマ流によって横切られるように、処理されることになる前記組成物のための前記支持体と前記封入容器の前記第2の開口の間に配置することができる。したがって、前記化合物を前記組成物から抽出するとき、前記非平衡プラズマ流が、前記多孔質材料を横切る前およびその間にわたって前記抽出された化合物を運ぶ。またこの実施態様によれば、前記抽出された化合物を包含している全体の前記非平衡プラズマ流が、必然的に前記多孔質材料を横切り、前記抽出された化合物の総量を、多孔質材料によって捕獲することができる。
【0091】
本発明の別の目的は、プラズマを用いて少なくとも第1の化合物と第2の化合物を包含する組成物を処理するためのリアクタであって、前記リアクタは、
- 前記組成物が入れられる封入容器と、
- 前記封入容器内に存在するガスから非平衡プラズマ流を、前記組成物を処理するために前記プラズマ・ガス流が前記組成物と接触するように生成するべく構成された発生デバイスと、
- 前記プラズマ流が前記非平衡状態に維持されるように前記リアクタの1つ以上の動作パラメータをコントロールするべく構成された1つ以上のコントロール・デバイスと、
を包含することを特徴とする。
【0092】
このリアクタは、非平衡プラズマ流を用いて、すなわち、平衡(または、熱)プラズマと比較してよりソフトな条件を用いて前記組成物を処理することを可能にする。
【0093】
第1の可能性のある動作パラメータは、前記封入容器内に存在するガスのタイプとすることができる。
【0094】
実施態様によれば、前記封入容器内に存在する前記ガスが、少なくとも1つの不活性ガスを包含でき、かつオプションとして、追加の反応性ガスを包含できる。この実施態様によれば、前記封入容器は、前記封入容器内へガスを導入するべく構成された第1のコントロール・デバイスと連通する第1の開口を包含できる。前記第1のコントロール・デバイスは、前記不活性ガスを、またオプションとして前記追加の反応性ガスを前記封入容器内に注入することを可能にし得る。前記第1のコントロール・デバイスは、たとえば、不活性ガスおよび追加の反応性ガスが圧縮ガスまたは液体の形態の下に貯蔵される1つ以上のタンク、および前記タンクからのガスの流れを生成するための膨張器を包含できる。
【0095】
別の実施態様によれば、前記封入容器は、第2の開口であって、それを通じて前記封入容器内に負圧を作り出すべく構成された第2のコントロール・デバイスと連通する第2の開口を包含できる。前記第2のコントロール・デバイスは、たとえば真空ポンプ等の圧力調整デバイスとすることができる。
【0096】
好都合なことに、前記第2のコントロール・デバイスを使用して前記封入容器の内側の圧力を調整することによって、前記封入容器の内側の圧力は、前記プラズマ流が非平衡状態に維持されるように低い圧力に維持することができ、前記低い圧力は、0.1から10,000Paまで、好ましくは0.5から5,000まで、好ましくは1から3,500まで、好ましくは1から2,500Paまで、好ましくは10から1,500Paまで、より好ましくは300から900Paまでの範囲内とする。
【0097】
さらなる実施態様によれば、前記リアクタは、プラズマ発生器とすることができる第3のコントロール・デバイスを包含できる。前記プラズマ発生器は、前記封入容器内に存在する前記ガスを加熱することによって、または前記ガスを磁界に当てることによって前記プラズマを発生させることができる。好ましい実施態様によれば、前記プラズマは、前記ガスをマイクロ波、電界または電磁界に当てることによって発生させることができる。
【0098】
前記ガスを電磁界に当てることによって前記プラズマを発生させるときには、前記第3のコントロール・デバイスを無線周波数発生器とすることができる。前記無線周波数発生器は、たとえば、前記封入容器を取り囲むコイル・アレンジメントまたは、誘導性ワイヤを包含するデバイスと接続することができる。好ましくは、前記コイル・アレンジメントまたはデバイスが、前記封入容器の前記第1の開口と前記第2の開口の間に位置することができる部分の周りに配置される。この好ましい実施態様によれば、50から6000Wまで、好ましくは50から3000Wまで、より好ましくは50から2000Wまでの範囲の電力を前記無線周波数発生器に印加することによって、前記無線周波数発生器が、前記封入容器内に存在するガスから非平衡プラズマを発生させることができる。より詳細に述べれば、前記プラズマ発生器は、前記封入容器内に存在する前記ガス流から非平衡プラズマ流を発生させることができる。
【0099】
前記プラズマ発生器は、次に挙げる物理的特徴のうちの1つ、2つ、または3つ、または次に挙げる4つの物理的特徴を有する非平衡プラズマを発生させることができる:
- 50から6000Wまで、好ましくは50から3000Wまで、より好ましくは50から300Wまで、より好ましくは50から200Wまでの範囲の電力;前記プラズマの電力は、たとえばサーマル・カメラまたは熱量測定を使用して前記プラズマの温度を測定することによって測定することができる。
- 1Aより低い、好ましくは0.02Aから1Aまで、好ましくは0.06Aから0.8Aまで、好ましくは0.1Aから0.7Aまで、より好ましくは0.2Aから0.6Aまでの範囲の強度;前記プラズマの強度は、たとえば前記発生器の電極上においてオシロスコープまたはアンペア計を使用して測定することができる。
- 100Vから6kVまで、好ましくは150Vから2kVまで、好ましくは180Vから1kVまで、より好ましくは200Vから500Vまでの範囲の電圧;前記プラズマの電圧は、たとえば前記発生器の電極上においてオシロスコープまたは電圧計を使用して測定することができる。
- 10MHzから45MHzまで、好ましくは10MHzから42MHzまで、より好ましくは15MHzから40MHzまでの範囲の周波数;前記プラズマの周波数は、前記発生器の電極上において、たとえばオシロスコープを使用して測定することができる。
【0100】
前記非平衡プラズマの前記物理的特徴は、前記封入容器内に存在するガスから反応種を生成するには充分に反応的であり、かつ前記組成物内に存在する前記目的化合物の劣化/変質を回避するには充分に温和なプラズマを有することを可能にする。
【0101】
さらに別の実施態様によれば、前記組成物を支持体の上に配置することができ、また前記リアクタは、前記支持体の温度をコントロールすることによって前記組成物の温度を調整するべく構成された温度調整デバイスを包含できる。好ましい実施態様によれば、前記支持体は、るつぼ、好ましくはカーボンるつぼとすることができる。また好ましい実施態様によれば、前記支持体の温度をコントロールできる。
【0102】
実施態様によれば、前記リアクタは、好ましくは前記るつぼとする前記支持体の温度をコントロールすることを可能にする第4のコントロール・デバイスを包含できる。この実施態様によれば、前記支持体の温度を、熱交換器、たとえば前記支持体と接触できるか、または前記支持体を取り囲むことができる熱伝達流体の回路を用いて加熱または冷却することができる。
【0103】
前記支持体が加熱されるときは、前記第4のコントロール・デバイスを、前記支持体と接触できるか、または前記支持体を取り囲むことができる抵抗加熱/加熱抵抗器とすることができる。
【0104】
好ましい実施態様によれば、前記支持体が加熱されるときは、前記第4のコントロール・デバイスを電磁誘導発生器とすることができる。前記電磁誘導は、たとえば、前記封入容器を取り囲むコイル・アレンジメントまたはデバイスを使用して前記支持体に適用することができ、前記コイル・アレンジメントまたはデバイスは、電磁誘導発生器と接続される。
【0105】
別の実施態様によれば、前記非平衡プラズマ流は、前記第2の開口を通じて作り出された前記負圧の作用の下に前記第1と前記第2の開口の間を循環することができる。前記支持体は、前記第1と前記第2の開口の間に、前記非平衡プラズマ流に完全に曝されるように位置する。
【0106】
また別の実施態様によれば、前記封入容器は、前記非平衡プラズマ流内に含まれている少なくとも1つの化合物を捕獲するべく構成された多孔質材料(手前に述べられているとおり)を包含できる。好ましくは前記多孔質材料を、前記非平衡プラズマ流によって横切られるように、前記組成物のための前記支持体と前記封入容器の前記第2の開口の間に配置することができる。
【0107】
好ましい実施態様によれば、手前に述べられている組成物の処理の前記プロセスを、前記リアクタを使用して行うことができる。
【0108】
このほかの特徴および利点は、非限定的な例としてのみ与えられ、かつ次に挙げる添付図面を参照した以下の説明の間に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1】プラズマを用いて組成物を処理するためのリアクタを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
図1に示されているとおり、リアクタ1は、石英から作られた円筒状の封入容器2を包含する。封入容器は、透明であり、前記封入容器2の内側においてプロセスが行われているとき、当該封入容器の外側にいる操作者が封入容器2の内側を視覚的に監視することが可能になり、その種のプロセスは、手前に述べられている組成物を処理するためのプロセスまたは手前に述べられている化合物を捕獲するためのプロセスとすることができる。
【0111】
動作においては、図1に示されているとおり封入容器2が垂直に向き付けされる。
【0112】
このほかの可能性のある実施態様においては、封入容器がそのほかの形式を有することができるが、好ましくは細長いものとする。代替として石英以外の材料を、その材料が減圧に耐えられる限りにおいて封入容器のために使用することができる。
【0113】
封入容器2は、第1の端部3に、不活性ガスが入った第1のタンク6および追加の反応性ガスが入った第2のタンク8と連通する第1の開口4を包含する。
【0114】
リアクタ1は、第1の開口4を通じて封入容器2内へ導入されることになる不活性ガスの流量の調整を可能にする第1の調整バルブ6’を包含する。リアクタ1は、第1の開口4を通じて封入容器2内へ導入されることになる追加の反応性ガスの流量の調整を可能にする第2の調整バルブ8’も包含する。
【0115】
第1の端部3の反対側の第2の端部5においては、封入容器が、真空ポンプ12と連通する第2の開口10を包含する。真空ポンプ12は、第3の調整バルブ12’を用いて封入容器内側の圧力を減ずることを可能にする。
【0116】
真空ポンプが機能/動作している間の不活性ガスおよびオプションとしての追加の反応性ガスの封入容器2内への注入は、第1の開口4と第2の開口10の間における内側のガス流11(不活性ガスおよびオプションとしての追加の反応性ガス)の発生を可能にする。
【0117】
リアクタ1はまた、40MHzにおいて、またはそれより低い周波数において、かつ500乃至6000Wの電力で動作する無線周波数発生器14も包含する。無線周波数発生器14は、電源17に接続された、ここでは誘導性ワイヤ16を包含するコイル・アレンジメントまたはデバイスと接続されている。誘導性ワイヤ16は、ガス流11に沿って第1の開口の下流に位置する封入容器の外側部分を取り囲む。
【0118】
無線周波数発生器14は、50から600Wまでの範囲にわたる電力を有するプラズマ流13を生成するために誘導性ワイヤ16を用いてガス流11に電磁界を印加するべく構成されている。真空ポンプ12が10,000Paより低い、好ましくは5,000Paより低い圧力を維持する場合においては、プラズマ流13が非平衡状態に維持される。
【0119】
ほかの可能性のある実施態様によれば、プラズマ流を、電磁界発生器またはマイクロ波発生器等の任意のほかのタイプの発生器によって生成することもできる。
【0120】
またリアクタ1は、封入容器2の内側に位置するカーボンるつぼ18も包含し、そこにプラズマを用いて処理される組成物20(第1および第2の化合物を包含する)を配置できる。カーボンるつぼ18は、アルミナのレッグ22を用いて維持される。レッグ22は、封入容器2の内側に固定されており、たとえばここでは、封入容器の底を形成している第2の端部5に支えられている。カーボンるつぼ18は、生成されたプラズマ流13を受けるようにコイル・アレンジメントまたはデバイス16の下流に位置する。
【0121】
またリアクタは、15から35kHzまでの周波数において機能し、かつ1kWから6kWまでの範囲にわたる電力を提供することが可能な電磁誘導発生器26も包含する。電磁誘導発生器26は、るつぼ18を取り囲む封入容器2の外側部分に位置するコイル・アレンジメントまたはデバイス28に接続されている。電磁誘導発生器26は、るつぼ18を、したがって組成物20を所望の温度に加熱することを可能にする。
【0122】
ほかの可能性のある実施態様によれば、熱交換器を用いてるつぼを加熱または冷却すること、または1つ以上の加熱素子、たとえば加熱ワイヤ(1つ以上)、加熱抵抗器(1つ以上)、およびこれらの類によって加熱することができる。
【0123】
カーボン・フェルト24、たとえば円筒形式のそれが、カーボンるつぼ18と封入容器2の壁の間にある容積が満たされるようにカーボンるつぼ18を取り囲み、封入容器内に配置されている。
【0124】
たとえば、組成物20を処理するためのプロセスが進行中であるとき、プラズマ流13が組成物20と接触してそれから第1の化合物を抽出することを可能にする。特に、非平衡プラズマ流13が、気体状態の第1の化合物を運ぶ。気体の第1の化合物を運ぶ非平衡プラズマ流13は、結果として生じる非平衡プラズマ流13’を形成し、それがカーボン・フェルト24を横切る。
【0125】
カーボン・フェルト24は、それの組成に起因して、非平衡プラズマ流13’によって、またはるつぼ18を加熱する電磁誘導発生器26によって加熱されない。したがって、カーボン・フェルト24は、(以前は、組成物20から気相で抽出されていた)第1の化合物を液相または固相で捕獲することを可能にする。
【0126】
第1の化合物の状態におけるこの変化は、第1の化合物の凝結点より低いか、または凝固点より低いカーボン・フェルトの温度に起因する。
【0127】
捕獲された第1の化合物は、その後、手前に述べられているプロセスによって回収できる。
【0128】
図1に表されているとおり、コントロール・デバイス6、8、14、26および12は、封入容器の外部であり、取り外し可能にそれと接続することができる。
【0129】

プラズマ発生器は、40MHzの周波数において、500から6000Wまでの範囲にわたる電力を伴って動作し、50から600Wまでの範囲にわたるプラズマ放電を生成する無線周波数発生器である。
【0130】
電磁誘導発生器は、15から35kHzまでの範囲にわたる周波数において機能し、かつ1kWから6kWまでの範囲にわたる電力を提供することが可能である。
【0131】
支持体は、2.05g/cmの密度を有するカーボンるつぼであり、カーボン・フェルトは、88±2%の空隙率を有する。
【0132】
例1
組成物の総重量に対し、第1の化合物として70重量パーセントの銅(Cu)を、第2の化合物として30重量パーセントのスズ(Sn)を包含する2gの組成物Aをるつぼ上に配置した。
【0133】
真空ポンプが起動されて封入容器内の圧力が減じられ、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)が、300mL/分の流量で封入容器内に導入された。この段階における圧力は、800Paであった。
【0134】
2kWの電力において400秒(s)にわたって電磁誘導発生器が起動され、組成物が溶融する1080℃の温度における支持体の、したがって組成物の加熱を可能にした。この段階において、封入容器の内側の圧力は、1200Paであり、プロセスの終了までこの値が維持された。
【0135】
その後、無線周波数発生器が、2000W(2kV、1A)の電力および40MHzの周波数において起動され、追加の反応性ガスとして酸素(O)が、20秒間にわたり100mL/分の流量で封入容器内に導入された。200Wの電力を有し、反応種(アルゴン(Ar)から生成される)および追加の反応種(酸素(O)から生成される)を包含する非平衡プラズマ流が生成された。
【0136】
即座に、第1の化合物の派生物である酸化スズ(SnO)の白色粉体でカーボン・フェルトが覆われた。
【0137】
その後すべてのコントロール・デバイスが停止され、封入容器からカーボン・フェルトが取り除かれて計量された。カーボン・フェルトに含まれていた白色粉体の重量は、23mgであった。X線回折XRD)による分析から、抽出された化合物が、抽出された化合物の総重量に対して93重量パーセントの酸化スズ(SnO)および7重量パーセントの銅(Cu)を包含することが明らかにされた。
【0138】
この例においては、組成物の処理のためのプロセスが、プロセスの終了前に停止された。しかしながら、プロセスを延長して酸化スズ(SnO)の形態の下にスズを完全に抽出することは可能であった。
【0139】
例2
第1の化合物として2gのスズ(Sn)のインゴットがるつぼ上に配置され、第2の化合物として1gの塩化銅(CuCl)のタブレットが前記タブレットの下側に配置された。
【0140】
真空ポンプが起動されて封入容器内の圧力が減じられ、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)が、300mL/分の流量で封入容器内に導入された。この段階における圧力は、800Paであり、プロセスの終了までこの値が維持された。
【0141】
その後、無線周波数発生器が、2000W(2kV、1A)の電力および40MHzの周波数において起動され、反応種(アルゴン(Ar)から生成される)を包含する200Wの非平衡プラズマ流が生成された。
【0142】
この例においては、るつぼの温度が変更されず、したがって組成物は、処理の終了時に400℃より低い非平衡プラズマ流の温度であった。
【0143】
したがって、非平衡プラズマ流を用いて組成物が処理され、300秒後に、スズ(Sn)が溶融し、その中に塩化銅(CuCl)が埋め込まれていた。
【0144】
さらに40秒後に、第1および第2の化合物が一緒に反応することが可能になり、第1の化合物の派生物である塩化スズ(SnCl)の白色粉体でカーボン・フェルトが覆われた。
【0145】
その後すべてのコントロール・デバイスが停止され、封入容器からカーボン・フェルトが取り除かれて計量された。白色粉体の重量は、45mgであった。エネルギ分散X線分光分析(EDX)を使用した分析から、抽出された化合物が、抽出された化合物の総重量に対して90重量パーセントの塩化スズ(SnCl2)および10重量パーセントの銅(Cu+CuCl)を包含することが明らかにされた。
【0146】
例3
有機画分、セラミック画分、および金属画分を包含する8つの使用済みコンデンセータの組成物がるつぼ上に配置された。
【0147】
組成物は、最初に、準備ステップに供され、プラズマ流の使用を伴わない熱分解によって有機画分が取り除かれた。
【0148】
真空ポンプが起動されて封入容器内の圧力が減じられ、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)が、300mL/分の流量で封入容器内に導入された。この段階における圧力は、530Paであった。
【0149】
電磁誘導発生器が、1kWの電力において120秒(s)にわたって起動されてコンデンセータの加熱を可能にし、したがって有機画分の熱分解が実現され、気体(CHx、COx)およびオイルの形態の下に組成物から抽出された。120秒後に圧力が1100Paまで増加した。
【0150】
この準備ステップの後のるつぼは、セラミック画分および金属画分を擁していた。両方の画分は、砕かれ、磁性によって分離された。
【0151】
EDX分析により以下が明らかにされた:
- 砕かれたセラミック画分が、主として酸化物または金属の形態の下におけるシリコン(Si+SiO)、炭素(C)、タンタル(Ta°+Ta)、およびマンガン(Mn°+MnO+MnO)を含んでおり、かつ
- 砕かれた金属画分が、主として金属形態の下における鉄(Fe)、銅(Cu)、スズ(Sn)、および少量の銀(Ag)を含んでいた。
【0152】
この例において、砕かれた金属画分だけは、プラズマによって処理されなかった。
【0153】
砕かれたセラミック画分は、ふるい分けされてシリカ(SiO)、炭素(C)が除去され、マンガン(MnO+MnO)を包含する組成物が第1の化合物として、またタンタル(Ta°+Ta)の混合物が第2の化合物として回収された。その後、この組成物が、非平衡プラズマを用いた処理に供された。
【0154】
組成物が、るつぼ上に配置された。
【0155】
真空ポンプが起動されて封入容器内の圧力が減じられ、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)が、300mL/分の流量で封入容器内に導入された。この段階における圧力は、750Paであった。
【0156】
1kWの電力において300秒(s)にわたって電磁誘導発生器が起動され、最高で850℃の温度でるつぼの、したがって組成物の加熱を可能にした。この段階における圧力は、1200Paであり、プロセスの終了までこの値が維持された。
【0157】
その後、無線周波数発生器が、2000W(2kV、1A)の電力および40MHzの周波数において起動され、追加の反応性ガスとして水素(H)が、120秒間にわたり120mL/分の流量で封入容器内に導入された。その後、反応種(アルゴン(Ar)から生成される)および追加の反応種(水素(H)から生成される)を包含する200Wの非平衡プラズマ流が生成された。
【0158】
このプロセスは、マンガン(第1の化合物)全体の抽出を可能にし、それがMn°+MnOの形態の下にカーボン・フェルトによって捕獲された。非平衡プラズマ流によって還元された第2の化合物、すなわち金属形態の下におけるタンタルが、第2の化合物の総重量に対して99.2重量パーセントの純度でるつぼ内に回収され、残りの0.8重量パーセントは、Mn°であった。
【0159】
例4
第1の化合物として500mgの硫黄(S)粉体(平均直径1pm)を、第2の化合物として200mgの酸化タンタル(Ta)粉体(平均直径200nm)を包含する組成物がるつぼ内に配置された。
【0160】
真空ポンプが起動されて封入容器内の圧力が減じられ、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)が、300mL/分の流量で封入容器内に導入された。この段階における圧力は、400Paであった。
【0161】
1kWの電力において30秒(s)にわたって電磁誘導発生器が起動されて500℃の温度での支持体の、したがって組成物の加熱を可能にした。この段階における圧力は、750Paであった。
【0162】
同じ圧力における30秒の動作の後、硫黄が完全に抽出され、カーボン・フェルトが、硫黄(S)の黄色粉体で覆われ、さらに10秒間にわたって動作パラメータが維持された。その後、電磁誘導および無線周波数発生器が停止された。
【0163】
この段階において、第2の化合物が、それの当初の形態の下における酸化タンタル(Ta)(白色粉体)としてるつぼ内に残り、るつぼの温度は、約400℃であった(すなわち、硫黄(S)の抽出に使用された非平衡プラズマの温度)。
【0164】
その後、るつぼの温度の低下を可能にするアルゴン(Ar)の流量が維持され、したがって、1分後の組成物の温度は、250℃であった。この段階における圧力は、630Paであった。
【0165】
その後、無線周波数発生器が、180W(0.3kV、0.6A)の電力および40MHzの周波数において起動され、追加の反応性ガスとして水素(H)が、2分間にわたり50mL/分の流量で封入容器内に導入された。このようにして、反応種(アルゴン(Ar)から生成される)および追加の反応種(水素(H)から生成される)を包含する非平衡プラズマ流が、700Paにおいて生成された。
【0166】
その後、るつぼの温度が30℃/分のレートで上昇された。
【0167】
2分後に酸化タンタル(Ta)の粉体がタンタル(それの金属形態の下に)で覆われ、水素(H)から発生した追加の水素の反応種の働きの下に還元が行われた。
【0168】
プロセスが停止され、混合物の総重量に対して91重量パーセントの酸化タンタル(Ta)および9重量パーセントのタンタル金属(Ta)の混合物がるつぼ内に得られた。当初は白色であった酸化タンタル(Ta)の粉体は、タンタル金属(Ta)の形成に起因してグレイに転じた。プロセスは、タンタル金属(Ta)のみがるつぼ上に得られるまで続行することができた。
【0169】
例5
この例においては、熱伝達流体(たとえば、空気または水)の内部回路が装備された特別なカーボンるつぼが使用された。この内部冷却チャンネルは、プロセスの間におけるるつぼの冷却を可能にした。
【0170】
るつぼ内には例4と同じ組成物が配置された。
【0171】
硫黄が例4に述べられているプロセスに従って抽出され、硫黄の抽出の終了時におけるるつぼの温度は、約400℃であった(すなわち、硫黄(S)の抽出に使用された非平衡プラズマの温度)。
【0172】
その後、るつぼの温度の低下を可能にするアルゴン(Ar)の流量が維持された。さらにるつぼの温度を低下させるために、2分間にわたり熱伝達回路内における空気の循環がセットアップされ、その後、水の循環がセットアップされ、プロセスの終了まで維持された。このように、るつぼの温度が25℃において安定化され、プロセスの終了までこの値に維持された。
【0173】
その後、無線周波数発生器が、180W(0.3kV、0.6A)の電力および40MHzの周波数において起動され、追加の反応性ガスとして水素(H)が、2分間にわたり50mL/分の流量で封入容器内に導入された。このようにして、580Paにおいて反応種(アルゴン(Ar)から生成される)および追加の反応種(水素(H)から生成される)を包含する非平衡プラズマ流が生成された。
【0174】
2分後に酸化タンタル(Ta)の粉体がタンタル(それの金属形態の下に)で覆われ、水素(H)から発生した追加の反応種の働きの下に還元が行われた。プロセスの終了時には、混合物の総重量に対して87重量パーセントの酸化タンタル(Ta)および13重量パーセントのタンタル金属(Ta°)の混合物がるつぼ内に得られた。当初は白色であった酸化タンタル(Ta)の粉体は、例4よりも量の多いタンタル金属の形成に起因して暗いグレイに転じた。
【0175】
例4および5は、加熱または冷却ができるるつぼを使用して行われる組成物の処理のプロセスが、温度に敏感な化合物に対して有利に適用できることを明らかにした。温度に敏感な酸化タンタル(Ta)を還元してタンタル金属(Ta°)を形成するプロセスにおいては、るつぼの冷却によって歩留まりが向上した。
【0176】
例6
この例に使用されたプラズマ発生器は、4.5MHzの周波数において、24から60kWまでの範囲にわたる電力を伴って動作し、12から30kWまでの範囲にわたるプラズマ放電を生成する無線周波数発生器である。
【0177】
誘導発生器は、15から35kHzまでの範囲にわたる周波数において機能し、かつ1kWから6kWまでの範囲にわたる電力を提供することが可能である。
【0178】
るつぼ内には、リサイクル・キャパシタからの3gの誘電体を包含する組成物が配置された。この組成物は、組成物の総重量に対して、14.37重量パーセントの酸素(O)、2.38重量パーセントの炭素(C)、64.13重量パーセントのタンタル(Ta)、19.04重量パーセントのマンガン(Mn)、および0.08重量パーセントの不純物が含まれていた(電子顕微鏡/エネルギ分散X線分光分析(SEM/EDX)によって決定された)。
【0179】
2000Paにおいて真空ポンプが起動されて封入容器内の圧力が減じられ、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)が、3000L/分の流量で封入容器内に導入された。
【0180】
その後、無線周波数発生器が36kWの電力において起動され、アルゴンの流量が50L/分まで増加され、この段階における圧力は1バールであった。これらの条件の下に18kWの電力を有する熱プラズマが形成され、カーボンるつぼの温度は、高温計による測定で1210℃であった。
【0181】
熱プラズマによっても加熱されるるつぼを加熱するべく、2kWの電力において電磁誘導発生器が起動された。結果としてもたらされたるつぼの、したがって組成物の温度は、1400℃であった。
【0182】
熱プラズマの高い温度は、(Mn°+MnOの形態の下に)マンガンが抽出されることを可能にし、それがカーボン・フェルトによって固体の形態で捕獲された。
【0183】
その後、反応性ガスとして250ml/分の水素流が、封入容器内に注入され、酸化タンタル(Ta)からタンタル(Ta)への還元が可能になった。プロセスの終了時においては、1.9gのタンタル(Ta)が、99%の純度(SEM/EDXによる分析)を伴ってるつぼ内に得られ、炭素および酸素は、CHおよび気体HOの形態の下において除去された。
図1
【国際調査報告】