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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】弾道防護材料
(51)【国際特許分類】
   F41H 5/04 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
F41H5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524125
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 GB2020052689
(87)【国際公開番号】W WO2021079144
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】1915727.0
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522436503
【氏名又は名称】アドヴァンスト メイトリックス コンポジット システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】フォスター,トム
(57)【要約】
複合層(16)を有する弾道防護材料(10)であって、前記複合層は、バインダ材料(66)により相互に結合された圧縮粒子状材料(56)のまとまりに埋設されたメッシュ(54)を有する、弾道防護材料。メッシュ(54)は、金属メッシュであってもよく、粒子状材料(56)は、セラミック粒子(64)を有してもよく、バインダー材料(66)は、エポキシ樹脂マトリックスであってもよい。弾道防護材料(10)は、追加層を有し、例えば、第1のクラスの鋼を含む第1の層(12)と、第1のクラスの鋼とは異なる第2のクラスの鋼を有する第2の層(14)とを有してもよい。第2の層(14)は、第1の層(12)と複合層(16)との中間に配置され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合層を有する弾道防護材料であって、
前記複合層は、バインダ材料により相互に結合された圧縮粒子状材料のまとまりに埋設されたメッシュを有する、弾道防護材料。
【請求項2】
前記メッシュは、少なくとも1つのメッシュのシートを有し、
該少なくとも1つのメッシュのシートは、複数のフィラメントを有する、請求項1に記載の弾道防護材料。
【請求項3】
前記メッシュは、複数のメッシのシートを有する、請求項1または2に記載の弾道防護材料。
【請求項4】
メッシュのシート内の前記複数のフィラメントは、相互に接続されている、請求項2または3に記載の弾道防護材料。
【請求項5】
前記メッシュは、金属メッシュまたは金属合金メッシュである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項6】
前記少なくとも1つのメッシュのシートのフィラメントは、少なくとも0.25mmの直径を有する金属ワイヤである、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項7】
前記メッシュは、アルミニウム、チタン、またはステンレス鋼で構成される、請求項5または6に記載の弾道防護材料。
【請求項8】
前記粒子状材料は、セラミック材料で構成された粒子を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項9】
前記粒子状材料は、酸化アルミニウムで構成された粒子を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項10】
酸化アルミニウムの粒子は、結晶質酸化アルミニウムの粒子である、請求項9に記載の弾道防護材料。
【請求項11】
前記粒子の平均粒子サイズは、少なくとも0.25mmである、請求項9または10に記載の弾道防護材料。
【請求項12】
前記粒子の平均粒子サイズは、0.90mm未満である、請求項9、10または11に記載の弾道防護材料。
【請求項13】
前記酸化アルミニウムの粒子は、略球形である、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項14】
前記酸化アルミニウムの粒子は、角張っている、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項15】
前記メッシュは、金属メッシュであり、
前記圧縮粒子状材料は、セラミック粒子を含み、
前記バインダ材料は、マトリクスであり、
前記金属メッシュおよび前記セラミック粒子は、前記マトリクスに埋設される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項16】
前記マトリクスは、ポリマーを含む、請求項15に記載の弾道防護材料。
【請求項17】
第1の材料を含む第1の層と、第2の材料を含む第2の層と、前記複合層を含む第3の層と、を有する、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項18】
前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層の中間に配置される、請求項17に記載の弾道防護材料。
【請求項19】
前記第1の層は、前記第1の材料の、部分的に重なる複数のパネルを有する、請求項17または18に記載の弾道防護材料。
【請求項20】
前記第1の材料の、部分的に重なる複数のパネルは、2または3以上の重ねられたシートに配置される、請求項19に記載の弾道防護材料。
【請求項21】
前記第1の材料は、炭素鋼、高炭素鋼、炭素繊維、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、アラミド繊維から選択される、請求項17乃至20のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項22】
前記第1の層の前記第1の材料は、第1のクラスの鋼を有し、
前記第2の層の前記第2の材料は、前記第1のクラスの鋼とは異なる第2のクラスの鋼を有する、請求項17乃至21のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項23】
前記第2の層は、前記第2の材料の複数のシートを有する、請求項17乃至22のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項24】
前記第2の層は、前記第2の材料の少なくとも3つのシートを有する、請求項23に記載の弾道防護材料。
【請求項25】
前記第2の材料は、工具鋼、高速度鋼、炭素鋼、高炭素鋼、炭素繊維、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、アラミド繊維から選択される、請求項17乃至24のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項26】
前記第1の層は、第1の厚さを有し、前記第2の層は、第2の厚さを有し、前記第2の厚さに対する前記第1の厚さの比は、1:2である、請求項17乃至25のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項27】
前記第3の層は、第3の厚さを有し、前記第3の厚さに対する前記第2の厚さの比は、1:2である、請求項26に記載の弾道防護材料。
【請求項28】
前記第3の厚さに対する前記第1の厚さの比は、1:4である、請求項27に記載の弾道防護材料。
【請求項29】
前記第1の厚さは、約5mmである、請求項26、27、または28に記載の弾道防護材料。
【請求項30】
前記第2の厚さは、約10mmである、請求項26乃至29のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項31】
前記第3の厚さは、約20mmである、請求項27乃至30のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【請求項32】
前記第1の厚さ、前記第2の厚さ、および前記第3の厚さは、50mm未満の組み合わされた厚さを有する、請求項27乃至31のいずれか一項に記載の弾道防護材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾道防護材料に関する。より詳細には、本発明は、人員、建物および車両、例えば、戦車および装甲人員運搬車を、弾道脅威から保護するために使用され得る、改善された弾道防護材料に関する。本発明は、通常のおよび装甲貫通弾(armor piercing ammunition)に対する防御に成功している。
【背景技術】
【0002】
弾道防護材料は、人員、建物、および車両、例えば、戦車および装甲人員運搬車、例えば、航空機、列車、ボート、およびその他の船舶などを、装甲貫通弾およびその他の発射体のような、弾道的脅威による損傷から防護するために使用される。現在の弾道試験には、欧州のEN1522/1523、およびNATO内のSTANAG 4569の参照下で同定されたものが含まれる。本発明は、これらの基準の範囲内で、通常のおよび装甲貫通弾に対する防護に成功している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のタイプの現在の弾道防護材料は、しばしば、高重量で、製造コストが高く、効果的な軍備のために要求されるものよりもかなり厚いという問題を抱える。
【0004】
前述の問題に関し、現在の材料よりも低コストでより効果的である一方、さらに同じ弾道抵抗に対して、既存の材料よりも薄くて軽量となり得る、弾道防護材料に対する要求が、依然として存在する。本発明では、容易に利用可能な低コスト材料を用い、容易に利用可能な機器を用いた製造プロセスを使用して、これらの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、バインダ材料により相互に結合された圧縮粒子状材料のまとまりに埋設されたメッシュを有する複合層を有する、弾道防護材料が提供される。
【0006】
有利には、粒子状材料は、移動機構により、発射体の進行を阻止することを助長する。この機構では、粒子状材料の個々の粒子の構造的欠陥、粒子状材料の個々の粒子の、前記材料の隣接する粒子に対する移動、またはバインダ材料により形成された粒子状材料の粒子間の結合の破壊、の1つ以上が使用される。
【0007】
好ましくは、メッシュは、少なくとも1つのメッシュのシートを有し、該少なくとも1つのメッシュのシートは、複数のフィラメントを有する。
【0008】
好ましくは、メッシュは、複数のメッシュのシートを有する。
【0009】
好ましくは、メッシュのシート内の複数のフィラメントは、互いに接続され、好ましくは織られている。
【0010】
より好ましくは、メッシュは、金属メッシュであり、または金属合金材料で構成される。複合層に構造的完全性を提供し、望ましい方法で複合層を通過する発射体の進行を妨げるために必要な材料特性、すなわち、衝撃時に生じ得る熱レベルで高い引張強度を保持するという条件で、メッシュは、非金属材料から構成され得る。
【0011】
好ましくは、少なくとも一つのメッシュのシートのフィラメントは、金属ワイヤであり、少なくとも0.25mm、より好ましくは少なくとも0.3mm、さらに好ましくは1mm未満の直径を有する。メッシュ開口は、好適には0.5mm、またはそれ以上である。メッシュ開口は、好適には1.5mmまたはそれ以下である。
【0012】
好ましくは、メッシュは、アルミニウム、チタン、またはステンレス鋼で構成される。
【0013】
好ましくは、粒子状材料は、セラミック材料で構成された粒子を有する。
【0014】
好ましくは、粒子状材料は、酸化アルミニウムで構成された粒子を有する。
【0015】
好ましくは、酸化アルミニウムの粒子は、結晶質酸化アルミニウムの粒子である。
【0016】
好ましくは、粒子の平均粒子サイズは、少なくとも0.25mmである。
【0017】
好ましくは、粒子の平均粒子サイズは、0.90mm未満、またはより好ましくは0.75mm未満である。
【0018】
好ましくは、酸化アルミニウムの粒子は、略球形である。
【0019】
好ましくは、酸化アルミニウムの粒子は、角張っている。
【0020】
好ましくは、メッシュは、金属メッシュまたは金属合金メッシュであり、圧縮粒子状材料は、セラミック粒子を含み、バインダ材料は、マトリクスであり、金属メッシュおよびセラミック粒子は、マトリクスに埋設される。
【0021】
好ましくは、マトリクスは、ポリマーを含み、例えば、エポキシ樹脂のようなポリエポキシドを含む。
【0022】
好ましくは、弾道防護材料は、第1の材料を含む第1の層と、第2の材料を含む第2の層と、複合層を含む第3の層とを有する。
【0023】
好ましくは、第2の層は、第1の層と第3の層の中間に配置される。
【0024】
好ましくは、第1の層は、第1の材料の、部分的に重ね合わされた複数のパネルを有する。
【0025】
好ましくは、第1の材料の、部分的に重ね合わされた複数のパネルは、2または3以上の重ねられたシートに配置される。
【0026】
好ましくは、第1の材料は、炭素鋼、高炭素鋼、炭素繊維、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、アラミド繊維のリストから選択される。
【0027】
好ましくは、第1の層の第1の材料は、第1のクラスの鋼を有し、第2の層の第2の材料は、第1のクラスの鋼とは異なる第2のクラスの鋼を有する。
【0028】
好ましくは、第2の層は、第2の材料の複数のシートを有する。
【0029】
好ましくは、第2の層は、少なくとも3つの第2の材料のシートを有する。
【0030】
好ましくは、第2の材料は、工具鋼、高速度鋼、炭素鋼、高炭素鋼、炭素繊維、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、アラミド繊維のリストから選択される。
【0031】
好ましくは、第1の層は、第1の厚さを有し、第2の層は、第2の厚さを有し、第2の厚さに対する第1の厚さの比は、1:2である。
【0032】
好ましくは、第3の層は、第3の厚さを有し、第3の厚さに対する第2の厚さの比は、1:2である。
【0033】
好ましくは、第3の厚さに対する第1の厚さの比は、1:4である。
【0034】
好ましくは、第1の厚さは、約5mmである。
【0035】
好ましくは、第2の厚さは、約10mmである。
【0036】
好ましくは、第3の厚さは、約20mmである。
【0037】
第1の層、第2の層および/または第3の層の厚さは、弾道防護材料が使用される特定の脅威環境の要求に従って修正されてもよい。
【0038】
好ましくは、第1の厚さ、第2の厚さ、および第3の厚さは、50mm未満の組み合わされた厚さを有する、
以下、添付図面を参照して、本発明による実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明による弾道防護材料の概略的な斜視図である。
図2a図1の弾道防護材料の第1の層の概略的な斜視図である。
図2b図2aの第1の層のシートの概略的な面図である。
図2c図2bのシートのパネルの概略的な斜視図である。
図3a図1の弾道防護材料の第2の層の概略的な斜視図である。
図3b図3aの第2の層の第1のシートの概略的な平面図である。
図3c図3aの第2の層の第2のシートの概略的な平面図である。
図3d図3aの第2の層の第3のシートの概略的な平面図である。
図4a図1の弾道防護材料の第3の層の概略的な斜視図である。
図4b図4aの第3の層の概略的な平面図である。
図4c図4aの第3の層の金属メッシュのシートの概略的な平面図である。
図4d図4aの第3の層の粒子状セラミックの概略的な平面図である。
図4e】ポリマーマトリックス内の図4dの粒子状セラミックの概略的な平面図である。
図5図1の弾道防護材料とともに使用される支持層(backing layer)である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1を参照すると、本発明による弾道防護材料10が示されている。弾道防護材料10は、第1の層12と、第2の層14と、第3の層16とを有する。
【0041】
弾道防護材料10は、外側面または外面18と、内側面または内面20とを有する。外側面18および内側面20は、材料10の厚さTに対応する距離だけ離間されている。また、弾道防護材料10は、長手軸A-Aおよび横軸B-Bを有する。
【0042】
図2aを参照すると、第1の層12は、弾道防護材料10の外側面または外面18に対応する外側面または外面22と、内側面または内面24とを有する。外側面22および内側面24は、第1の層12の厚さT1に対応する距離だけ離間されている。
【0043】
本発明の一実施形態では、第1の層12は、略立方体形であり、材料10の横軸B-Bと平行な方向に延在する長さL1と、材料10の横軸B-Bに対して垂直な方向に延在する幅W1とを有する。
【0044】
第1の層12は、第1のシート26と、第2のシート28と、第3のシート30とを有する。第1のシート26は、第2のシート28と重なり、またはその上に配置され、第2のシート28は、第3のシート30と重なり、またはその上に配置され、第2のシート28は、第1のシート26と第3のシート30との中間に配置され、または両者の間にある。
【0045】
次に、図2bを参照すると、第1のシート26、第2のシート28および第3のシート30の各々は、複数のパネル32を有する。
【0046】
パネル32は、炭素鋼で構成され、例えば、0.6から1.0重量%の範囲の炭素含有量を有する高炭素鋼から構成される。
【0047】
本発明の一実施形態では、図2cに示すように、パネル32は、略立方体形であり、長さL1aは、約60mm、幅W1aは、約20mm、厚さT1aは、約1mmであってもよい。
【0048】
複数のパネルの各パネル32は、1または2以上の隣接するパネル32と少なくとも部分的に重なっており、複数の少なくとも重なり合うパネル32の各々は、シート26、28、30を形成する。シート26、28、30の各々は、相互に重なり合うように配置され、第1の層の厚さT1は、約5mmになるようにされる。
【0049】
次に、図3a乃至図3dを参照して、第2の層14について説明する。
【0050】
第2の層14は、外側面または外面34および内側面または内面36を有する。外側面34および内側面36は、第2の層14の厚さT2に対応する距離だけ離間されている。本発明の一実施形態では、第2の層14は、略立方体形であり、材料10の横軸B-Bと平行な方向に延在する長さL2と、材料10の横軸B-Bに対して垂直な方向に延在する幅W2とを有する。
【0051】
第2の層14は、第1のシート38、第2のシート40および第3のシート42を有する。第1のシート38は、第2のシート40と重なり、またはその上に配置され、第2のシート40は、第3のシート42と重なり、またはその上に配置され、第2のシート40は、第1のシート38と第3のシート42との中間、または第1のシート38と第3のシート42との間に配置される。
【0052】
次に、図3bを参照すると、第1のシート38は、材料の第1の平面シートである。
【0053】
図3cを参照すると、第2のシート40は、材料の第2の平面シートである。
【0054】
図3dを参照すると、第3のシート42は、材料の第3の平面シートである。
【0055】
第2の層14のシート38、40、42は、第1の層12のパネル32とは異なる種類の鋼で構成される。シート38、40、42は、高強度鋼のような工具鋼で構成され、例えば8重量%から10重量%の範囲のモリブデンを含む高強度鋼で構成される。
【0056】
本発明の一実施形態では、シート38、40、42は、1.1重量%の炭素、3.75重量%のクロム、9.5重量%のモリブデン、1.5重量%のタングステン、1.15重量%のバナジウム、および8重量%のコバルトを含む高速度鋼から構成される。
【0057】
シート38、40、42の各々は、第2の層14の厚さT2が約10mmとなるように、相互に重なり合うように、または一方を覆うように配置される。
【0058】
次に、図4a乃至図4eを参照して、第3の層16について説明する。
【0059】
第3の層16または複合層は、外側面または外面50と、内側面または内面52とを有する。外側面50および内側面52は、第3の層16の厚さT3に対応する距離だけ離間されている。本発明の一実施形態では、第3の層16は、略立方体形であり、材料10の横軸B-Bと平行な方向に延びる長さL3と、材料10の横軸B-Bに対して垂直な方向に延びる幅W3とを有する。
【0060】
第3の層16は、金属メッシュ54と粒子状セラミック56との組み合わせを含み、これらは、第3の層16の厚さT3が約20mmとなるように、後述するように組み合わされる。
【0061】
金属メッシュ54は、複数のメッシュシート58を有する。メッシュシート58の各々は、第1の方向(第3の層16の幅W3を横断して延びる方向)に延在する、複数の長手方向ワイヤ60を含む。換言すれば、ワイヤ60が延在する第1の方向は、材料10の横軸B-Bに対して垂直である。また、メッシュシート58の各々は、第2の方向(第3の層16の長さL3を横断して延びる方向)に延在する、複数の横断ワイヤ62を有する。換言すれば、横方向のワイヤ62が延在する第2の方向は、材料10の横軸B-Bに平行である。メッシュシート58の長手方向ワイヤ60が延在する第1の方向は、メッシュシート58の横方向ワイヤ62が延在する第2の方向とは異なる。メッシュシート58の長手方向ワイヤ60が延在する第1の方向は、メッシュシート58の横方向ワイヤ62が延在する第2の方向に対して垂直である。
【0062】
金属メッシュまたは合金金属メッシュのワイヤ60、62は、アルミニウム、チタン、またはステンレス鋼を含んでもよい。ワイヤの各々は、少なくとも0.25mm、好ましくは少なくとも0.3mmの直径を有すしてもよい。メッシュ開口の範囲は、好適には0.5mmから1.5mm、好ましくは1mmである。メッシュは、織られていることが好ましい。
【0063】
粒状セラミック56は、セラミック材料の複数の別個の粒子64である。材料の粒子64は、略球形であってもよいが、角張った突起または角張ったコーナを有する不規則な形状であってもよい。セラミック材料の粒子64は、平均粒子サイズが少なくとも0.25mmであり、0.90mm未満である。
【0064】
セラミック材料は、酸化アルミニウムを含み、例えば、コランダムとして知られている酸化アルミニウムの結晶形態を有する。
【0065】
また、本発明の一実施形態では、第3の層16は、マトリックス66を有し、金属メッシュ54および粒子状セラミック56は、ここに埋設される。マトリクスは、ポリマー、例えばエポキシ樹脂のようなポリエポキシドを含んでもよい。
【0066】
また、弾道防護材料10は、図5に示すように、支持層68を有してもよい。支持層68は、外側面または外面70、および内側面または内面72を有する。外側面70および内側面72は、支持層68の厚さT4に対応する距離だけ離間されている。
【0067】
支持層68は、略立方体形であり、材料10の横軸B-Bと平行な方向に延在する長さL4と、材料10の横軸B-Bに対して垂直な方向に延在する幅W4とを有する。
【0068】
支持層68は、第1のシート74、第2のシート76、および第3のシート78を有する。第1のシート74は、第2のシート76と重なり、またはその上に配置され、第2のシート76は、第3のシート78と重なり、またはまたはその上に配置され、第2のシート76は、第1のシート74と第3のシート78の中間、または第1のシート74と第3のシート78の間に配置される。支持層68の厚さT4は、約12mmである。
【0069】
支持層68の各シート74、76、78は、アルミニウムを有し、例えば、亜鉛および/またはマグネシウムおよび/または銅を含むアルミニウム合金を有し、あるいはアラミド、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、炭素繊維のようなポリマーを有し、あるいはガラス繊維を有する。支持層68のアルミニウムは、熱処理され、例えば、焼戻しされてもよい。
【0070】
次に、弾道防護材料10の製造について説明する。
【0071】
弾道防護材料10の第1の層12は、以下のように製造される。
【0072】
任意の好適な接着剤または結合剤、例えば、接着テープまたはエポキシ樹脂を用いて、炭素鋼の第1のパネル32が、炭素鋼の第2のパネル32に接着される。その結果、第2のパネル32は、第1のパネル32と少なくとも部分的に重なり合う。好適な接着剤を用いて、第2のパネル32に炭素鋼の第3のパネル32が接着される。その結果、第3のパネル23は、少なくとも部分的に第2のパネル32と重なり合う。好適な接着剤を用いて、第3のパネル32に炭素鋼の第4のパネル32が接着される。その結果、第4のパネル32は、少なくとも部分的に第3のパネル32と重なり合う。このプロセスは、第1の層12の第1のシート26が形成されるまで、繰り返される。本発明の一例では、各パネルは、表面積の少なくとも50%で隣接するパネルと重なり合う。
【0073】
このプロセスが繰り返され、第1の層12の第2のシート28および第3のシート30が形成される。
【0074】
第2のシート28は、任意の好適な接着剤または結合剤、例えば、接着テープまたはエポキシ樹脂を用いて、第3のシート30に接着される。その結果、第2のシート28は、第3のシート30と完全に重なり合い、またはその上を覆う。同様に、第1のシート26は、好適な接着剤を用いて、第2のシート28に接着され、第1のシート26は、第2のシート28と完全に重ね合わされる。このように、第2のシート28は、第1のシート26と第3のシート30との間の位置に固定される。従って、第1のシート26の最上面は、第1の層12の外側面22となり、第3のシート30の最下面は、第1の層12の内側面24となる。
【0075】
弾道防護材料の第2の層14は、以下のように製造される。
【0076】
接着剤、例えばエポキシ樹脂を用いて、第2のシート40が第3のシート42に接着される。同様に、接着剤、例えばエポキシ樹脂を用いて、第1シート38が第2シート40に接着される。従って、第1のシート38の最上面は、第2の層14の外側面34となり、第3のシート42の最下面は、第2の層14の内側面36となる。
【0077】
弾道防護材料10の第3の層16は、第3の層16を形成するために生成された混合物を受容するように形状化された制限支持フレームまたはモールドを使用して製造される。支持フレームまたはモールドは、モールドの外周を定めるように形状化され、第3の層は、これに対して成形され、成形タイルの外周が定められる。次に、本願に記載のように、これを用いて、前記複数のタイルを互いに対して配置することにより、第3の層が形成される。支持フレームまたはモールドは、圧縮ラムの動作に対する拘束力として機能し、これを用いて、以下のように実施される製造プロセスの間、粒子状材料が圧縮される。
【0078】
セラミック材料の粒子64は、エポキシ樹脂の第1の成分と混合され、粒子64の外表面がエポキシ樹脂の第1の成分で被覆されるまで混合される。エポキシ樹脂の第2の成分は、粒子64と混合され、クリームまたはペーストが形成される。支持フレーム(図示されていない)に、クリームまたはペーストの第1の層が添加される。クリームまたはペーストの第1の層の上に、金属メッシュ58の第1のシートが配置される。金属メッシュ58の第1のシートの上部に、クリームまたはペーストの第2の層が追加される。クリームまたはペーストの第2の層の上に、金属メッシュの第2のシート58が配置される。金属メッシュの第2のシート58の上部に、クリームまたはペーストの第3の層が追加される。クリームまたはペーストの第3の層の上に、金属メッシュ58の第3のシートが配置される。クリームまたはペーストと、金属メッシュとの交互層が支持フレーム内に配置されるまで、このプロセスが繰り返される。メッシュシート58およびエポキシ樹脂被覆粒子64の層の数は、弾道防護材料10が使用される用途の特定の脅威環境に応じて選択される。
【0079】
上部層と金属メッシュの組み合わせの上に、パネル(図示されていない)が配置され、粒子状セラミックは、混合物を圧縮するのに十分な重量下で圧縮される。好ましくは、少なくとも12トン、より好ましくは、少なくとも50トン、例えば、最大150トンで、3から4時間圧縮され、エポキシ樹脂マトリックスが硬化される。
【0080】
次に、第3の層16が支持フレームから除去される。
【0081】
支持層68は、支持層68の第1のシート74の上表面が支持層の外側面70を形成するように、支持層の第1のシート74を支持層の第2のシート76に接着させることにより、製造される。支持層68の第3のシート78の下側表面は、支持層の内側面を形成する。
【0082】
第1の層12、第2の層14、第3の層16および支持層68から弾道防護材料10を組み立てる方法は、以下の通りである。
【0083】
支持層68の第3のシート78が、テープフレーム(図示されていない)内に配置される。支持層の第1および第2の層74、76(相互に接着されている)は、支持層68の第3のシート78の上部に配置される。
【0084】
第3の層16は、接着剤、例えばエポキシ樹脂により支持層68に接着され、第3の層16の内側面52は、支持層68の外側面70に接着される。
【0085】
第2の層14は、接着剤、例えばエポキシ樹脂により第3の層16に接着され、第2の層14の内側面36は、第3の層16の外側面50に接着される。第1の層12は、第1の層の内側面24が第2の層の外側面34と接触するように、第2の層14の上部に配置される。
【0086】
テープフレームは、第1の層12、第2の層14、第3の層16および支持層68の各々を、弾道防護材料10の周端部の周囲の位置に保持する。
【0087】
次に、弾道防護材料10の使用について説明する。
【0088】
使用の際には、弾道防護材料10は、外側面18が外側を向き、内側面20が内側を向くように配向される。本発明の一例では、材料は、防弾チョッキに使用され、外側面18が着用者の身体に対して遠位となり、内側面20が着用者の外傷プレートまたはパッドに対して近位となり、着用者の身体に対して近位となるように使用される。本発明の別の例では、材料が車両の装甲に使用され、外側面18は、車両の外表面に設けられ、内側面20は、車両の壁内に配置される。
【0089】
弾道防護材料10が発射体に接触した場合、高引張強さを有する炭素鋼の重なり合うパネルを有する第1の層、または外側の層12により、弾丸の外側ケーシングまたはジャケットは、破砕化により除去される。
【0090】
非装甲貫通弾の場合、第2の層14は、弾丸を減速および停止させるように機能する。装甲貫通弾の場合、ピン(または貫通体)は、第2の層14に向かって、および第3の層16に向かって移動し続け、緻密で硬質な金属メッシュと硬質粒子状セラミックとの組み合わせが、ピン/貫通体のさらなる減速に作用し、さらにはこれを停止またはスナップさせる。
【0091】
異なる種類またはタイプの鋼と、メッシュおよび粒子状セラミックとの組み合わせにより、弾道的脅威に対抗する必要な機械的特性を有しながらも、あまり高重量ではなく、弾道的脅威に対して跳ね返す力を有する材料が提供される。
【0092】
本発明は、欧州弾道基準EN1522/1523およびNATO STANAG 4569基準のレベルに関する数回の弾道試験を受けている。本発明は、これらの基準の範囲内で、通常のおよび装甲貫通弾に対する防護に成功している。
【0093】
第1の材料/層が、炭素鋼、高炭素鋼、炭素繊維、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のリストから選択されてもよいことは、当業者には明らかである。また、第2の材料/層が、炭素鋼、高炭素鋼、炭素繊維、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のリストから選択さてもよいことも、当業者には明らかである。
【0094】
材料のサンプルが略立方体形である材料の概略図を参照して、弾道防護材料10について説明したが、使用の際、材料は、その必要な用途に形状化されることが理解される。
【0095】
弾道防護材料10の用途の一例には、
ボディアーマ(防弾チョッキ)、
ドア等の建材、
車両パネル
が含まれる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5
【国際調査報告】