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2023-500875抗メソテリンエリブリン抗体-薬物コンジュゲート及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】抗メソテリンエリブリン抗体-薬物コンジュゲート及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221228BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221228BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221228BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221228BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20221228BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20221228BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221228BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C12N15/63 Z
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61K47/65
A61K47/60
A61K47/54
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 N
A61K31/357
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525715
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2020000917
(87)【国際公開番号】W WO2021090062
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/932,373
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】アルボーン, アール, エフ.
(72)【発明者】
【氏名】スパイデル, ジャレド
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE03
4B064CE10
4B064CE12
4B064DA05
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD49
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA14
4C085AA25
4C085BB11
4C085DD32
4C085DD33
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA15
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
メソテリンに結合する抗体、抗原結合断片及びそのコンジュゲート(例えば、エリブリンを含むものなどの抗体-薬物コンジュゲート)が開示される。本開示は、本明細書で提供される組成物を投与することによる癌の治療における使用のための方法及び組成物に更に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗体又は抗原結合断片であって、メソテリンに結合する能力を有し、且つKabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域;並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域;又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域;並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、単離された抗体又は抗原結合断片。
【請求項2】
単離された抗体又は抗原結合断片であって、メソテリンに結合する能力を有し、且つ配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域からの3つの重鎖相補性決定領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域からの3つの軽鎖相補性決定領域を含む、単離された抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
ヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク又は1つ以上の復帰突然変異を有するヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークを含む、請求項1又は2に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトIgκ軽鎖定常領域を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
療法剤にコンジュゲートされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
前記療法剤は、エリブリンである、請求項11に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項13】
式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、
Abは、抗体又は抗原結合断片であり、前記抗体又は抗原結合断片は、メソテリンに結合する能力を有し、且つKabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域;並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域;又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域;並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み;
Dは、エリブリンであり;
Lは、AbをDに共有結合的に結び付ける切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項14】
pは、1~6の整数である、請求項13に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項15】
pは、6である、請求項13又は14に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項16】
pは、2である、請求項13又は14に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項17】
前記切断可能なリンカーは、切断時に前記リンカー又は前記抗体若しくは抗原結合断片のいかなる一部もエリブリンに結合されたままであることがないように配置される切断可能な部分を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項18】
前記切断可能なリンカーは、切断可能なペプチド部分を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項19】
前記切断可能なペプチド部分は、酵素によって切断可能である、請求項18に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項20】
前記切断可能なペプチド部分は、カテプシンによって切断可能である、請求項18又は19に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項21】
前記切断可能なペプチド部分は、カテプシンBによって切断可能である、請求項18~20のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項22】
前記切断可能なペプチド部分又は切断可能なリンカーは、アミノ酸単位を含む、請求項13~21のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項23】
前記アミノ酸単位は、バリン-シトルリン(Val-Cit)を含む、請求項22に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項24】
前記切断可能なリンカーは、少なくとも1つのスペーサー単位を含む、請求項13~23のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項25】
前記スペーサー単位又は切断可能なリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)部分を含む、請求項13~24のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項26】
前記PEG部分は、-(PEG)-を含み、及びmは、1~10の整数である、請求項25に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項27】
mは、2である、請求項26に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項28】
前記スペーサー単位は、マレイミド(Mal)部分を介して前記抗体又は抗原結合断片に結び付いている(「Mal-スペーサー単位」)、請求項24~27のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項29】
前記Mal-スペーサー単位は、前記抗体又は抗原結合断片上のシステイン残基を介して前記抗体又は抗原結合断片につなぎ合わされる、請求項28に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項30】
前記システイン残基は、Kabatの付番方式による、抗体又は抗原結合断片上の軽鎖可変領域のアミノ酸位置80位におけるシステイン残基(「LCcys80」)である、請求項29に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項31】
pは、2である、請求項30に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項32】
各-L-D部分は、前記抗体又は抗原結合断片上のLCcys80に結び付けられる、請求項31に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項33】
前記切断可能なリンカーは、前記Mal-スペーサー単位及び切断可能なペプチド部分を含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項34】
前記切断可能なペプチド部分は、Val-Citを含む、請求項33に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項35】
前記Mal-スペーサー単位は、前記抗体又は抗原結合断片を前記リンカー中の前記切断可能な部分に結び付ける、請求項28~34のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項36】
前記リンカー中の前記切断可能な部分は、切断可能なペプチド部分を含む、請求項35に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項37】
前記切断可能なペプチド部分は、Val-Citを含む、請求項36に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項38】
前記切断可能なリンカーは、Mal-(PEG)-Val-Citを含む、請求項35~37のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項39】
前記リンカー中の前記切断可能な部分は、エリブリンに直接つなぎ合わされるか、又はスペーサー単位は、前記リンカー中の前記切断可能な部分をエリブリンに結び付ける、請求項24~38のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項40】
前記コンジュゲートの切断は、前記抗体又は抗原結合断片及びリンカーからエリブリンを放出する、請求項39に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項41】
前記リンカー中の前記切断可能な部分をエリブリンに結び付ける前記スペーサー単位は、自己犠牲性である、請求項39又は40に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項42】
前記リンカー中の前記切断可能な部分をエリブリンに結び付ける前記スペーサー単位は、p-アミノベンジルオキシカルボニル(pAB)を含む、請求項39~41のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項43】
前記pABは、前記リンカー中の前記切断可能な部分をエリブリンに結び付ける、請求項42に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項44】
前記pABは、C-35アミンを介してエリブリンに共有結合的に結び付く、請求項42又は43に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項45】
前記リンカー中の前記切断可能な部分は、切断可能なペプチド部分を含む、請求項39~44のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項46】
前記切断可能なペプチド部分は、Val-Citを含む、請求項45に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項47】
前記切断可能なリンカーは、Val-Cit-pABを含む、請求項45又は46に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項48】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク又は1つ以上の復帰突然変異を有するヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークを含む、請求項13~47のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項49】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域を含む、請求項13~48のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項50】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項13~49のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項51】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項13~50のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項52】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項13~51のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項53】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgκ軽鎖定常領域を含む、請求項13~52のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項54】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項13~53のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項55】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項13~54のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項56】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項13~55のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項57】
式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、
Abは、抗体又は抗原結合断片であり、前記抗体又は抗原結合断片は、メソテリンに結合する能力を有し、且つKabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域;並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域;又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域;並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み;
Dは、エリブリンであり;
Lは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含む切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項58】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク又は1つ以上の復帰突然変異を有するヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークを含む、請求項57に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項59】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域を含む、請求項57又は58に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項60】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項57~59のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項61】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトIgκ軽鎖定常領域を含む、請求項57~60のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項62】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項57~61のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項63】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項57~62のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項64】
式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、
Abは、抗体又は抗原結合断片であり、前記抗体又は抗原結合断片は、メソテリンに結合する能力を有し、且つ配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;
Dは、エリブリンであり;
Lは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含む切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項65】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトIgκ軽鎖定常領域を含む、請求項64に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項66】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項64又は65に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項67】
前記抗体又は抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項64~66のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項68】
pは、1~6である、請求項57~67のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項69】
pは、6である、請求項57~68のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項70】
pは、2である、請求項57~68のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項71】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片又は請求項13~70のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲートと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項72】
前記抗体、抗原結合断片又は抗体-薬物コンジュゲートの複数のコピーを含む、請求項71に記載の医薬組成物。
【請求項73】
前記抗体-薬物コンジュゲートの複数のコピーを含み、前記組成物中の前記抗体-薬物コンジュゲートの平均pは、約1~約6であり、任意選択で、前記組成物中の前記抗体-薬物コンジュゲートの平均pは、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2又は約2.3である、請求項71又は72に記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記組成物中の前記抗体-薬物コンジュゲートの平均pは、約6である、請求項73に記載の医薬組成物。
【請求項75】
前記組成物中の前記抗体-薬物コンジュゲートの平均pは、約1.9又は約2.0である、請求項73に記載の医薬組成物。
【請求項76】
癌を有するか又は有する疑いがある対象を治療する方法であって、治療有効量の、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、請求項13~70のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート又は請求項71~75のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項77】
前記癌は、メソテリンを発現する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記癌は、中皮腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌又は白血病である、請求項76又は77に記載の方法。
【請求項79】
前記癌は、中皮腫、肺癌、卵巣癌又は胃癌である、請求項76~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
対象の癌細胞集団を減少させるか又はその成長を遅らせる方法であって、治療有効量の、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、請求項13~70のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート又は請求項71~75のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項81】
前記癌細胞集団は、メソテリンを発現する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記癌細胞集団は、固形腫瘍又は血液学的悪性腫瘍である、請求項80又は81に記載の方法。
【請求項83】
前記癌細胞集団は、中皮腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌又は白血病である、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記癌細胞集団は、中皮腫、肺癌、卵巣癌又は胃癌である、請求項80~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記抗体、抗原結合断片、抗体-薬物コンジュゲート又は医薬組成物の投与は、前記癌細胞集団を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%減少させる、請求項80~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記抗体、抗原結合断片、抗体-薬物コンジュゲート又は医薬組成物の投与は、前記癌細胞集団の成長を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%遅らせる、請求項80~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
癌を有するか又は有する疑いがある対象が、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、請求項13~70のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート又は請求項71~75のいずれか一項に記載の医薬組成物による治療に反応することになるかどうかを決定する方法であって、前記対象からの生体試料を提供することと;前記試料を前記抗体又は抗原結合断片と接触させることと;前記試料中の1つ以上の癌細胞への前記抗体又は抗原結合断片の結合を検出することとを含む方法。
【請求項88】
前記1つ以上の癌細胞は、メソテリンを発現する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記癌は、メソテリンを発現する、請求項87又は88に記載の方法。
【請求項90】
前記癌は、中皮腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌又は白血病である、請求項87~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記癌は、中皮腫、肺癌、卵巣癌又は胃癌である、請求項87~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記試料は、組織生検試料、血液試料、リンパ液試料、骨髄試料、皮膚試料又は脳脊髄液(CSF)試料である、請求項87~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
癌を有するか又は有する疑いがある対象の治療における使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、請求項13~70のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート又は請求項71~75のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項94】
前記癌は、メソテリンを発現する、請求項93に記載の抗体、抗原結合断片、抗体-薬物コンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項95】
前記癌は、中皮腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌又は白血病である、請求項93又は94に記載の抗体、抗原結合断片、抗体-薬物コンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項96】
前記癌は、中皮腫、肺癌、卵巣癌又は胃癌である、請求項93~95のいずれか一項に記載の抗体、抗原結合断片、抗体-薬物コンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項97】
癌を有するか又は有する疑いがある対象の治療における、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、請求項13~70のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート又は請求項71~75のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項98】
前記癌は、メソテリンを発現する、請求項97に記載の使用。
【請求項99】
前記癌は、中皮腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌又は白血病である、請求項97又は98に記載の使用。
【請求項100】
前記癌は、中皮腫、肺癌、卵巣癌又は胃癌である、請求項97~99のいずれか一項に記載の使用。
【請求項101】
癌を有するか又は有する疑いがある対象を治療するための医薬品を製造する方法における、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、請求項13~70のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート又は請求項71~75のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項102】
前記癌は、メソテリンを発現する、請求項101に記載の使用。
【請求項103】
前記癌は、中皮腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌又は白血病である、請求項101又は102に記載の使用。
【請求項104】
前記癌は、中皮腫、肺癌、卵巣癌又は胃癌である、請求項101~103のいずれか一項に記載の使用。
【請求項105】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片をコードする単離された核酸。
【請求項106】
請求項105に記載の核酸を含む単離されたベクター。
【請求項107】
請求項105に記載の核酸又は請求項106に記載のベクターを含む単離された細胞又は細胞集団。
【請求項108】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を作製する方法であって、請求項107に記載の細胞又は細胞集団を、前記抗体又は抗原結合断片を産生するために好適な条件下で培養することを含む方法。
【請求項109】
請求項13~70のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲートを作製する方法であって、コンジュゲーションを許容する条件下において、抗体又は抗原結合断片を、エリブリンに結び付けられた切断可能なリンカーと反応させることを含む方法。
【請求項110】
エリブリンに結び付けられた前記切断可能なリンカーは、前記抗体又は抗原結合断片の軽鎖上のシステイン残基と反応する、請求項109に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2019年11月7日に出願された米国仮特許出願第62/932,373号明細書に対する優先権の利益を主張するものであり、この仮特許出願は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、抗メソテリン抗体及びその抗原結合断片並びに抗体-薬物コンジュゲート(ADC)などのコンジュゲート、例えばエリブリンを含むものと、メソテリンを発現し、且つ/又はチューブリンを破壊するか、若しくは本明細書に開示される組成物を投与することによる治療が適用可能な癌の治療及び診断におけるそれらの使用とに関する。
【背景技術】
【0003】
世界的に、癌は、罹病及び死亡の主要な原因の1つであり、2012年の新規症例は、約1400万件であり、癌に関連した死亡は、820万件となっている。癌による死亡の最も多い原因は、肺癌(159万件の死亡例);肝癌(74万5000件の死亡例);胃癌(72万3000件の死亡例);結腸直腸癌(69万4000件の死亡例);乳癌(52万1000件の死亡例);及び食道癌(40万件の死亡例)である。癌の新規症例数は、今後20年間で約70%増加し、年間約2200万件の新規癌症例に上ることが予想されている(World Cancer Report 2014)。
【0004】
グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型細胞表面タンパク質であるメソテリンは、中皮腫、卵巣癌及び膵臓腺癌を含む様々な癌種で高発現するため、抗体ベースの癌治療に魅力的な標的である(Tang et al.(2013)Anticancer Agents Med.Chem.13(2):276-80)。メソテリンの生物学的機能について十分な理解が得られていないが、メソテリンノックアウトマウスにいかなる検出可能な表現型も見られないことを踏まえて、メソテリンが腫瘍の接着及び転移において役割を果たすことが示唆されている(Bera and Pastan(2000)Mol.Cell Biol.20(8):2902-6;Rump et al.(2004)J.Biol.Chem.279(10):9190-8)。メソテリンは、ある種の形態の化学療法に対する抵抗性を与え、且つ細胞に増殖効果を及ぼすことによって腫瘍進行の一因となるとも考えられている(Bharadwaj et al.(2011)Mol.Cancer.10:106;Li et al.(2008)Mol.Cancer Ther.7(2):286-96)。
【0005】
最近の研究では、メソテリンは、癌転移及び再発に密接に関連する過程である上皮間葉転換(EMT)のマスターレギュレーターとして機能し得ることが示されている(He et al.(2017).Mol Cancer.16:63)。理論によって拘束されることを望むものではないが、メソテリンの阻害、例えば抗メソテリン抗体、抗原結合断片及び/又はADCによる結合は、TGF-β(形質転換成長因子β)シグナル伝達の抑制を介して、逆の過程である間葉上皮転換(MET)を誘導することによってEMTを低減し得ると考えられる。逆に、メソテリンの過剰発現は、腫瘍進行及び治療反応不良に関連する癌幹細胞様表現型の誘導を通してEMTを促進し得ると考えられる(He et al.(2017).Mol Cancer.16:63;Koyama et al.(2017).J.Clin.Invest.127(4):1254-1270)。
【0006】
癌治療でよく直面する課題は、化学療法薬の治療指数が限られているため、正常組織に深刻な毒性が生じ、従ってその治療上の有用性が限られることである。癌細胞のターゲティングに際して高い特異性を実現する1つの手法は、特定の腫瘍特異抗原を発現する細胞に細胞毒性効果が送達される一方、かかる抗原の発現レベルがはるかに低いか又はそれを発現しない正常細胞が温存されるように抗体を使用することによるものである(Awwad et al.Pharmaceutics(2018)10(3);Lambert and Berkenblit(2018)69:191-207)。かかる腫瘍特異的ターゲティングを利用すると、抗腫瘍活性の増加及び治療薬のオフターゲット細胞毒性の低下の両方を得ることができる。腫瘍特異抗原を標的とする抗体は、抗原の生物学的活性の阻害、免疫エフェクター活性の惹起及び/又は抗体依存性細胞毒性の誘導を含む種々の機構を通して細胞毒性効果を送達し得る(Hendrinks et al.International Review of Cell and Molecular Biology(2017);Therapeutic Antibody Engineering(2012):163-196,459-595)。
【0007】
抗体ベースの治療手法のための腫瘍特異抗原の選択には、腫瘍細胞による抗原の特異的発現及びその抗原を発現する腫瘍細胞のロバストな殺傷が関わり得る。幾つかのヒト癌は、肺癌、卵巣癌、膵癌及び胃癌を含めて、高レベルのメソテリンを発現することが認められている(Hassan et al.Eur.J.Cancer(2008)44(1):46-53;Hassan et al.J.Clin.Oncol.(2016)34(34):4171-4179)。メソテリン発現は、チェックポイント遮断免疫療法に対する臨床反応が不良である、KRAS及びSTK11突然変異を有する肺癌並びにHER2陰性胃癌など、薬剤抵抗性癌にも認められている。加えて、肺腺癌患者及び胃癌転移患者のメソテリン発現と全生存との間に相関があることが報告されており、メソテリン高発現が、臨床転帰の悪化を予測する因子であり得ることが示唆される(Kachala et al.(2014)Clin.Cancer.Res.20(4):1020-1028;Han et al.(2017)J.Pathol.Transl.Med.51(2):122-128)。ヒト癌におけるメソテリン発現の保有率及び臨床転帰不良とのその関連性により、メソテリンは、腫瘍抗原特異的薬物送達手法、例えば抗体媒介手法の潜在的な標的となる。化学療法薬などの細胞毒性化合物とコンジュゲートした抗体は、腫瘍細胞への抗体ベースの薬物送達の細胞殺傷活性を亢進させることも探究されている。それにも関わらず、効率的な腫瘍ターゲティング、オンターゲット効果、バイスタンダー殺傷及び/又はオフターゲット効果の低下の組み合わせをもたらす好適な抗体及び/又はADCを提供することが依然として必要とされている。
【0008】
エリブリンは、大環状化合物ハリコンドリンBの合成類似体であり、チューブリン重合、微小管集合及びチューブリン依存性GTP加水分解の強力な阻害薬であることが以前に示されている。チューブリンは、細胞内遊走及び輸送、細胞シグナル伝達、細胞形状の維持及び細胞分裂を含む種々の生体細胞機能に関与する、微小管と呼ばれる動的な糸状の細胞骨格タンパク質を構成する。癌細胞は、分裂速度が急速であるため、チューブリン機能の妨害に対する感受性が特に高い。そのため、ハリコンドリンB及びエリブリンは、インビトロ及びインビボで顕著な抗癌活性を実証している(Tan et al.(2009)Clin Cancer Res.15(12):4213-4219;Vahdat et al.(2009)J.Clin.Oncol.27(18):2954-2961)。現在、不応性転移性乳癌患者の治療向けにエリブリンのメシル酸塩(エリブリンメシレート)が商品名Halaven(商標)で販売されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当技術分野では、ADCのコンテクストを含めてエリブリンの使用が報告されているが、特定の組織、例えばメソテリンを発現する癌組織に標的化した方式でエリブリンをより良好に送達することが依然として必要とされている。同様に、当技術分野では、例えば、抗原結合性及び/又はメソテリンを発現する標的細胞若しくは組織にエリブリンなどのペイロードを有効に送達する能力の点で優れた特性を備えた、メソテリンに結合する改良された抗体が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
様々な実施形態において、本開示は、一部には、単独で使用されるか、1つ以上の追加の薬剤に(例えば、ADCとして)連結して使用されるか、又は大型高分子の一部として使用され(例えば、二重特異性抗体、多重特異性抗体であって、単独のもの又はADCフォーマットでペイロードに連結した多重特異性抗体としてのもの)及び医薬組成物又は併用療法の一部として投与され得る新規抗体及び抗原結合断片を提供する。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒト化されている。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限のみ含み、ヒトにおける免疫原性を抑えながら、非ヒト抗体の反応性を維持している。特定の実施形態において、抗体及び抗原結合断片は、ヒト癌患者の治療に有用であり得る。
【0011】
本開示は、より具体的には、様々な実施形態において、腫瘍細胞に結合し且つ/又はそれを殺傷する能力を有する抗体及び抗体-薬物コンジュゲート化合物に関する。様々な実施形態において、本化合物は、結合後に標的細胞にインターナライズする能力も有する。エリブリン薬物部分を抗体部分に結び付けるリンカーを含むADC化合物が開示される。抗体部分は、完全長抗体又は抗原結合断片であり得る。
【0012】
一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、Kabatの付番方式(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987 and 1991)))によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式(国際免疫遺伝学情報システム(IMGT(登録商標)))によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0013】
一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域からの3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域からの3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0014】
一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片である。様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域又はこれらの開示される配列と少なくとも90%同一の配列を含む可変領域を含む。様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含むヒトIgκ軽鎖定常領域を含む。様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号17の重鎖アミノ酸配列及び配列番号18の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0015】
様々な実施形態において、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、Kabatの付番方式によって定義される、配列番号19(HCDR1)、配列番号20(HCDR2)及び配列番号21(HCDR3)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号22(LCDR1)、配列番号23(LCDR2)及び配列番号24(LCDR3)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号25(HCDR1)、配列番号26(HCDR2)及び配列番号27(HCDR3)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号28(LCDR1)、配列番号29(LCDR2)及び配列番号30(LCDR3)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0016】
様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号31の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号32の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号33の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号34の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号35の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号36の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0017】
一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、完全長抗体である。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、単一特異性抗体若しくは抗原結合断片、二重特異性抗体若しくは抗原結合断片又は多重特異性抗体若しくは抗原結合断片である。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、単鎖可変断片(scFv)又はFab断片である。
【0018】
様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、療法剤、例えば1つ以上の小分子及び/又は追加の抗体若しくは抗原結合断片にコンジュゲートされる。一部の実施形態において、療法剤は、エリブリンである。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、345A12-HC15-LC4である。
【0019】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるADCは、式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、
Abは、抗体又は抗原結合断片であり、抗体又は抗原結合断片は、メソテリンに結合する能力を有し、且つKabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み;
Dは、療法剤、例えばエリブリン部分であり;
Lは、AbをDに共有結合的に結び付ける切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
を含む。
【0020】
一部の実施形態において、pは、1~6の整数である。一部の実施形態において、pは、2又は6である。
【0021】
一部の実施形態において、ADCは、切断時にリンカー又は抗体若しくは抗原結合断片のいかなる一部も療法剤(例えば、エリブリン)に結合されたままであることがないように配置される切断可能な部分を含む切断可能なリンカーを含む。一部の実施形態において、切断可能なリンカーは、カテプシンBなどの酵素によって切断可能である切断可能なペプチド部分を含む。一部の実施形態において、切断可能な部分は、切断可能なペプチド部分、例えばVal-Citなどのアミノ酸単位を含む。一部の実施形態において、アミノ酸単位は、バリン-シトルリン(Val-Cit)を含む。
【0022】
一部の実施形態において、切断可能なリンカーは、少なくとも1つのPEG部分を含む少なくとも1つのスペーサー単位を含む。一部の実施形態において、スペーサー単位又はリンカーは、(PEG)を含む。一部の実施形態において、スペーサー単位は、マレイミド(Mal)部分を介して抗体部分に結び付いている(「Mal-スペーサー単位」)。一部の実施形態において、Mal-スペーサー単位は、抗体又は抗原結合断片上のシステイン残基(例えば、抗体上のLCcys80残基)を介して抗体又は抗原結合断片につなぎ合わされる。一部の実施形態において、Mal-スペーサー単位は、抗体又は抗原結合断片上の軽鎖可変領域のシステイン残基(例えば、LCcys80)につなぎ合わされる。一部の実施形態において、pは、2であり、従って2つの-L-D部分が抗体又は抗原結合断片に結び付けられる。一部の実施形態において、各-L-D部分は、抗体又は抗原結合断片上の軽鎖可変領域のシステイン残基(例えば、LCcys80)に結び付けられる。一部の実施形態において、システイン残基は、LCcys80、即ちKabatの付番方式による、抗体又は抗原結合断片上の軽鎖可変領域のアミノ酸位置80位におけるシステイン残基である。一部の実施形態において、切断可能なリンカーは、Mal-スペーサー単位及び切断可能なペプチド部分を含み、切断可能なペプチド部分は、Val-Citを含む。一部の実施形態において、Mal-スペーサー単位は、抗体又は抗原結合断片を切断可能な部分に結び付ける。
【0023】
一部の実施形態において、Mal-スペーサー単位は、少なくとも1つのPEG部分を含む。一部の実施形態において、リンカーは、Mal-(PEG)を含む。一部の実施形態において、Mal-スペーサー単位は、抗体部分をリンカー中の切断可能な部分に結び付ける。一部の実施形態において、リンカー中の切断可能な部分は、切断可能なペプチド部分、例えばアミノ酸単位である。一部の実施形態において、リンカーは、Mal-(PEG)-Val-Citを含む。
【0024】
一部の実施形態において、ADCの切断可能な部分は、エリブリンに直接つなぎ合わされるか、又はスペーサー単位は、リンカー中の切断可能な部分をエリブリン薬物部分に結び付け、コンジュゲートの切断は、抗体又は抗原結合断片及びリンカーからエリブリンを放出する。
【0025】
一部の実施形態において、切断可能な部分をエリブリン薬物部分に結び付けるスペーサー単位は、自己犠牲性である。一部の実施形態において、自己犠牲性スペーサー単位は、p-アミノベンジルオキシカルボニル(pAB)を含む。一部の実施形態において、pABスペーサー単位は、C-35アミンを介して切断可能な部分をエリブリン薬物部分に結び付ける。一部の実施形態において、切断可能な部分は、切断可能なペプチド部分、例えばアミノ酸単位である。一部の実施形態において、切断可能なリンカーは、Val-Cit-pABを含む。一部の実施形態において、リンカーは、Val-Cit-pABと、リンカーをMal部分で抗体部分につなぎ合わせるPEGスペーサー単位とを含む。一部の実施形態において、リンカーは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含む。
【0026】
様々な実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク又は1つ以上の復帰突然変異を有するヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークを含む。様々な実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列又は配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。様々な実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含むヒトIgκ軽鎖定常領域を含む。様々な実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、配列番号17の重鎖アミノ酸配列及び配列番号18の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0027】
様々な実施形態において、ADCは、式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、
Abは、抗体又は抗原結合断片であり、抗体又は抗原結合断片は、メソテリンに結合する能力を有し、且つKabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み;
Dは、エリブリンであり;
Lは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含む切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数であり、例えば、pは、2~6又は3~4の整数である)
を有する。
【0028】
一部の実施形態において、pは、1~6の整数である。一部の実施形態において、pは、2又は6である。
【0029】
様々な実施形態において、ADC(例えば、上記に記載されるADC)の抗体又は抗原結合断片は、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク又は1つ以上の復帰突然変異を有するヒト重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークを含む。様々な実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列又は配列番号14と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。様々な実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含むヒトIgκ軽鎖定常領域を含む。様々な実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、配列番号17の重鎖アミノ酸配列及び配列番号18の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0030】
様々な実施形態において、ADCは、式I:
Ab-(L-D) (I)
(式中、Abは、抗体又は抗原結合断片であり、抗体又は抗原結合断片は、メソテリンに結合する能力を有し、且つ配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;
Dは、エリブリンであり;
Lは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含む切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数であり、例えば、pは、2~6又は3~4の整数である)
を有する。
【0031】
一部の実施形態において、pは、1~6の整数である。一部の実施形態において、pは、2又は6である。
【0032】
一部の実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトIgκ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含むIgG1重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含むIgκ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0033】
様々な実施形態において、本明細書では、記載される抗体、抗原結合断片、コンジュゲート及び/又はADC組成物を含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態において、医薬組成物は、本明細書に記載される1つ以上の抗体若しくは抗原結合断片及び/又は1つ以上のADCを、少なくとも薬学的に許容可能な担体と共に含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、抗体、抗原結合断片及び/又はADCの複数のコピーを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、本明細書に開示されるADCの複数のコピーを含み、ADCの平均pは、約1~約6である。一部の実施形態において、組成物中のADCの平均pは、約1.7若しくは2又は約6である。
【0034】
様々な実施形態において、本明細書では、例えば癌の治療における、記載される抗体、抗原結合断片、コンジュゲート及び/又はADC組成物の治療的使用が提供される。特定の態様において、本開示は、メソテリンなど、抗体、抗原結合断片及び/又はコンジュゲート若しくはADCの抗体部分が標的とする抗原を発現する癌を治療する方法を提供する。特定の態様において、本開示は、本明細書に記載される抗体、抗原結合断片、コンジュゲート及び/又はADCのいずれか1つの治療上有効な量及び/又はレジメンを投与することにより、腫瘍細胞又は癌細胞を殺傷するか又はその増殖を阻害する方法を提供する。一部の実施形態において、癌は、中皮腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、卵巣癌(例えば、漿液性又は明細胞性卵巣癌)、膵癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌又は白血病などのメソテリン発現癌である。
【0035】
特定の態様において、本開示は、例えば、癌(例えば、メソテリン発現癌)を有するか又は有する疑いがある対象が、メソテリンを標的とする薬剤、例えば本明細書に開示される抗体又は抗体結合断片、コンジュゲート又はADCによる治療に反応することになるかどうかを決定するための、記載される抗体、抗原結合断片、コンジュゲート及び/又はADC化合物及び組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本方法は、対象からの生体試料を提供することと;試料を、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片と接触させることと;試料中の1つ以上の癌細胞への抗体又は抗原結合断片の結合を検出することとを含む。
【0036】
特定の他の態様において、本開示は、抗体若しくは抗体結合断片、コンジュゲート及び/又はADCと、薬学的に許容可能な希釈剤、担体及び/又は賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。開示される抗体又は抗体結合断片、コンジュゲート又はADC化合物及び組成物を作製する方法も提供される。
【0037】
一部の実施形態において、本開示の抗体又は抗原結合断片、コンジュゲート又はADCをコードする1つ又は複数の核酸配列が提供される。この1つ又は複数の核酸は、単離核酸、含む単離ベクターに取り込まれた核酸及び/又は抗体若しくは抗原結合断片を産生するために好適な条件下で細胞集団によって発現される抗体又は抗原結合断片の形態であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】フローサイトメトリーによるヒトメソテリンに対する免疫血清の特異的反応性の検出を示す。
図2】ELISAによるヒトメソテリンに対する培養上清の特異的反応性の検出を示す。
図3】ゲル電気泳動による抗メソテリン抗体のIn-Fusion PCR増幅を示す。
図4】In-Fusionクローニング及び発現のための抗メソテリンクローンを示す。
図5】精製した48個のRb-hu-xi抗メソテリン抗体の概要を示す。
図6A】抗メソテリン-AuFコンジュゲートについてのインビトロ細胞ベース効力の結果を示す。
図6B】抗メソテリン-AuFコンジュゲートについてのインビトロ細胞ベース効力の結果を示す。
図7】エピトープビニングによる抗メソテリン抗体の特徴付けを示す。
図8】ヒト化345A12抗体についてのDSC分析結果を示す。345A12 F(ab’)2断片を、100℃/時間の走査速度を用いて25~100℃の範囲の熱分析に供した。
図9】様々なマトリックスにおけるMORAb-109(345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリン)(DAR2)の安定性を示す。
図10A】2.5mg/kgの345A12-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADC又は2.5mg/kgの102A6A2-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADCで治療したヒト非小細胞肺癌(NSCLC)NCI-H2110異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図10A)及び体重変化(図10B)を示す(研究M109-004-2016)。
図10B】2.5mg/kgの345A12-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADC又は2.5mg/kgの102A6A2-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADCで治療したヒト非小細胞肺癌(NSCLC)NCI-H2110異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図10A)及び体重変化(図10B)を示す(研究M109-004-2016)。
図11A】345A12-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADC(5、10、15又は20mg/kg)(図11A)又は345A12-HC15-LC4-ジOHエリブリン二量体ADC(5、10又は20mg/kg)(図11B)で治療した雌CD-1マウスの体重変化を示す(研究M109-006-2017)。
図11B】345A12-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADC(5、10、15又は20mg/kg)(図11A)又は345A12-HC15-LC4-ジOHエリブリン二量体ADC(5、10又は20mg/kg)(図11B)で治療した雌CD-1マウスの体重変化を示す(研究M109-006-2017)。
図12A】2.5mg/kgの345A12-HC10-LC4-ジOHエリブリン二量体ADC又は2.5mg/kgの345A12-HC15-LC4-ジOHエリブリン二量体ADCで治療したヒトNSCLC NCI-H2110異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図12A)及び体重変化(図12B)を示す(研究M109-007-2017)。
図12B】2.5mg/kgの345A12-HC10-LC4-ジOHエリブリン二量体ADC又は2.5mg/kgの345A12-HC15-LC4-ジOHエリブリン二量体ADCで治療したヒトNSCLC NCI-H2110異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図12A)及び体重変化(図12B)を示す(研究M109-007-2017)。
図13A】MORAb-109(DAR2又はDAR6)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図13A)及び体重変化(図13B)を示す(研究M109-010-2018)。
図13B】MORAb-109(DAR2又はDAR6)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図13A)及び体重変化(図13B)を示す(研究M109-010-2018)。
図14A】MORAb-109(DAR2又はDAR6)又はエリブリンで治療したヒト中皮腫HAY異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図14A)及び体重変化(図14B)を示す(研究M109-010-2018)。
図14B】MORAb-109(DAR2又はDAR6)又はエリブリンで治療したヒト中皮腫HAY異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図14A)及び体重変化(図14B)を示す(研究M109-010-2018)。
図15A】MORAb-109(DAR6)又はエリブリンで治療したヒト中皮腫PDXモデル(Meso7212)における抗腫瘍効果(図15A)及び体重変化(図15B)を示す。
図15B】MORAb-109(DAR6)又はエリブリンで治療したヒト中皮腫PDXモデル(Meso7212)における抗腫瘍効果(図15A)及び体重変化(図15B)を示す。
図16A】種々のDAR種のMORAb-109又はエリブリンで治療したヒト中皮腫PDXモデル(Meso7212)における抗腫瘍効果(図16A)及び体重変化(図16B)を示す。
図16B】種々のDAR種のMORAb-109又はエリブリンで治療したヒト中皮腫PDXモデル(Meso7212)における抗腫瘍効果(図16A)及び体重変化(図16B)を示す。
図17】様々な細胞株におけるメソテリン(MSLN)発現と、エリブリン及びMORAb-109(DAR2及びDAR6)のインビトロ効力(IC50)との間の相関分析を示す。全51種の細胞株及びメソテリン発現レベルが高い(平均蛍光強度(MFI)のFACS染色80以上の)細胞株のサブセットでMORAb-109(DAR2)の相関を分析した。メソテリン発現レベルが低い(MFIのFACS染色80未満の)細胞株は、このサブセットから除外した。
図18A】5mg/kg~25mg/kgの範囲の種々の用量のMORAb-109(DAR2)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図18A及び図18B)及び体重変化(図18C)を示す。
図18B】5mg/kg~25mg/kgの範囲の種々の用量のMORAb-109(DAR2)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図18A及び図18B)及び体重変化(図18C)を示す。
図18C】5mg/kg~25mg/kgの範囲の種々の用量のMORAb-109(DAR2)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図18A及び図18B)及び体重変化(図18C)を示す。
図19】5mg/kg~25mg/kgの範囲の種々の用量のMORAb-109(DAR2)による治療後のNCI-N87腫瘍担持マウスにおける全抗体及びインタクトMORAb-109(DAR2)の濃度(μg/mL)を示す。
図20A】MORAb-109(DAR2)(5mg/kg)又はエリブリン(0.1又は3.2mg/kg)で治療したヒト卵巣癌OVCAR-3-A1-T1異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図20A)及び体重変化(図20B)を示す。
図20B】MORAb-109(DAR2)(5mg/kg)又はエリブリン(0.1又は3.2mg/kg)で治療したヒト卵巣癌OVCAR-3-A1-T1異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図20A)及び体重変化(図20B)を示す。
図21A】MORAb-109(DAR2)(10mg/kg)又はエリブリン(0.1又は3.2mg/kg)で治療したヒトNSCLC PDXモデル(LC-F-25)における抗腫瘍効果(図21A)及び体重変化(図21B)を示す。
図21B】MORAb-109(DAR2)(10mg/kg)又はエリブリン(0.1又は3.2mg/kg)で治療したヒトNSCLC PDXモデル(LC-F-25)における抗腫瘍効果(図21A)及び体重変化(図21B)を示す。
図22A】MORAb-109(DAR2)(10mg/kg)又はエリブリン(0.2又は3.2mg/kg)で治療したヒトNSCLC PDXモデル(LXFA-737)における抗腫瘍効果(図22A)及び体重変化(図22B)を示す。
図22B】MORAb-109(DAR2)(10mg/kg)又はエリブリン(0.2又は3.2mg/kg)で治療したヒトNSCLC PDXモデル(LXFA-737)における抗腫瘍効果(図22A)及び体重変化(図22B)を示す。
図23A】10mg/kgの単回用量のMORAb-109(DAR2又はDAR6)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデル(各群3匹のマウス)における抗腫瘍効果(図23A)及び体重変化(図23B)を示す。
図23B】10mg/kgの単回用量のMORAb-109(DAR2又はDAR6)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデル(各群3匹のマウス)における抗腫瘍効果(図23A)及び体重変化(図23B)を示す。
図24A】10mg/kgの単回用量のMORAb-109(DAR2又はDAR6)で治療した後のNCI-N87腫瘍担持マウスからの血漿試料中におけるMORAb-109(DAR2)(図24A)又はMORAb-109(DAR6)(図24B)のDARを示す。
図24B】10mg/kgの単回用量のMORAb-109(DAR2又はDAR6)で治療した後のNCI-N87腫瘍担持マウスからの血漿試料中におけるMORAb-109(DAR2)(図24A)又はMORAb-109(DAR6)(図24B)のDARを示す。
図25A】NCI-N87胃癌細胞に対するMORAb-109(DAR2)(図25A)又はBAY 94-9343(図25B)の細胞毒性(%殺傷率)を示す。両方の抗MSLN ADCを単独で及び非コンジュゲート型抗体の存在下で評価した。
図25B】NCI-N87胃癌細胞に対するMORAb-109(DAR2)(図25A)又はBAY 94-9343(図25B)の細胞毒性(%殺傷率)を示す。両方の抗MSLN ADCを単独で及び非コンジュゲート型抗体の存在下で評価した。
図26A】ルシフェラーゼアッセイにより測定したときの、MORAb-109(DAR2)及び345A12-HC15-LC4(図26A)又はBAY 94-9343及びアネツマブ(図26B)のADCC活性を示す。ADCC活性は、相対曲線下面積(AUC)によって計算した。
図26B】ルシフェラーゼアッセイにより測定したときの、MORAb-109(DAR2)及び345A12-HC15-LC4(図26A)又はBAY 94-9343及びアネツマブ(図26B)のADCC活性を示す。ADCC活性は、相対曲線下面積(AUC)によって計算した。
図27】マウス及びヒト血漿中における抗MSLN ADC、MORAb-109(DAR2)及びBAY 94-9343の安定性分析を示す。
図28A】MORAb-109(DAR2)(5mg/kg)、BAY 94-9343(5mg/kg)又はエリブリン(1mg/kg)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図28A)及び体重変化(図28B)を示す。
図28B】MORAb-109(DAR2)(5mg/kg)、BAY 94-9343(5mg/kg)又はエリブリン(1mg/kg)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図28A)及び体重変化(図28B)を示す。
図29A】MORAb-109(DAR2)(5mg/kg)、BAY 94-9343(5mg/kg)又はエリブリン(1mg/kg)で治療したヒト中皮腫HAY異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図29A)及び体重変化(図29B)を示す。
図29B】MORAb-109(DAR2)(5mg/kg)、BAY 94-9343(5mg/kg)又はエリブリン(1mg/kg)で治療したヒト中皮腫HAY異種移植モデルにおける抗腫瘍効果(図29A)及び体重変化(図29B)を示す。
図30A】MORAb-109(DAR2)(10mg/kg)、BAY 94-9343(10mg/kg)、エリブリン(1mg/kg)又はDM4(0.3mg/kg)で治療したヒト中皮腫PDXモデル(Meso7212)における抗腫瘍効果(図30A)及び体重変化(図30B)を示す。
図30B】MORAb-109(DAR2)(10mg/kg)、BAY 94-9343(10mg/kg)、エリブリン(1mg/kg)又はDM4(0.3mg/kg)で治療したヒト中皮腫PDXモデル(Meso7212)における抗腫瘍効果(図30A)及び体重変化(図30B)を示す。
図31A】MORAb-109(DAR2)(25mg/kg)、BAY 94-9343(DAR約4)(25mg/kg)又はエリブリン(3.2mg/kg)で治療したヒトNSCLC PDXモデル(LXFA-586)における抗腫瘍効果(図31A)及び体重変化(図31B)を示す。
図31B】MORAb-109(DAR2)(25mg/kg)、BAY 94-9343(DAR約4)(25mg/kg)又はエリブリン(3.2mg/kg)で治療したヒトNSCLC PDXモデル(LXFA-586)における抗腫瘍効果(図31A)及び体重変化(図31B)を示す。
図32A】MORAb-109(DAR2)(25mg/kg)、MORAb-109(DAR2)(12.5mg/kg)、MORAb-109(DAR2)(12.5mg/kg、QW×3)、BAY 94-9343(DAR約4)(12.5mg/kg)又はエリブリン(3.2mg/kg)で治療したヒトNSCLC PDXモデル(LXFL-529)における抗腫瘍効果(図32A)及び体重変化(図32B)を示す。
図32B】MORAb-109(DAR2)(25mg/kg)、MORAb-109(DAR2)(12.5mg/kg)、MORAb-109(DAR2)(12.5mg/kg、QW×3)、BAY 94-9343(DAR約4)(12.5mg/kg)又はエリブリン(3.2mg/kg)で治療したヒトNSCLC PDXモデル(LXFL-529)における抗腫瘍効果(図32A)及び体重変化(図32B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
開示される組成物及び方法は、この説明の一部を成す添付の図と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、更に容易に理解され得る。本明細書で使用される用語法は、あくまでも詳細な実施形態を例として説明することを目的とするに過ぎず、文脈上特に指示がない限り、特許請求される組成物及び方法を限定する意図はないことが理解されるべきである。
【0040】
本明細書全体を通して、本説明は組成物及びその組成物の使用方法に言及している。本開示が、ある組成物に関連する特徴又は実施形態を説明又は特許請求する場合、かかる特徴又は実施形態は、その組成物の使用方法にも等しく適用可能である。同様に、本開示が、ある組成物の使用方法に関連する特徴又は実施形態を説明又は特許請求する場合、かかる特徴又は実施形態は、その組成物にも等しく適用可能である。
【0041】
値の範囲が表されるとき、それには、その範囲内にある任意の特定の値を用いる実施形態が含まれる。更に、範囲で記述される値への言及には、その範囲内にあるあらゆる値が含まれる。いずれの範囲も、その端点を含み、且つ組み合わせ可能である。先行語「約」の使用によって値が近似値として表されるとき、その特定の値が別の実施形態を成すことが理解されるであろう。特定の数値への言及には、文脈上特に明確に指示されない限り、少なくともその特定の値が含まれる。「又は」の使用は、その使用の具体的な文脈上特に指示されない限り、「及び/又は」を意味するものとする。本明細書に引用する全ての参考文献は、あらゆる目的で参照によって援用される。参考文献と本明細書が矛盾する場合、本明細書が優先するものとする。
【0042】
明確にするため、本明細書において別々の実施形態に関連して説明されている本開示の組成物及び方法の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせても提供され得ることが理解されるべきである。逆に、簡略にするため、単一の実施形態に関連して説明されている本開示の組成物及び方法の様々な特徴は、別々に又は任意の部分的な組み合わせでも提供され得る。
【0043】
定義
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、本説明の態様に関して様々な用語が用いられる。特に指示されない限り、かかる用語には、当技術分野におけるその通常の意味が与えられるべきである。他の具体的に定義される用語は、本明細書に提供される定義と整合するように解釈されるべきである。
【0044】
本明細書で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形を含む。
【0045】
数的な値及び範囲の文脈で用語「約」又は「およそ」は、本明細書に含まれる教示から当業者に明らかなとおり、反応混合物中に所望の量の核酸又はポリペプチドを有するなど、実施形態が意図したとおりに機能し得るような、記載される値又は範囲に近似するか又はそれに近い値又は範囲を指す。従って、これらの用語は、系統誤差から生じる値を超える値を包含する。一部の実施形態において、約とは、数的な量の±10%を意味する。
【0046】
用語「抗体-薬物コンジュゲート」、「抗体コンジュゲート」、「コンジュゲート」、「イムノコンジュゲート」及び「ADC」は、同義的に使用され、治療用化合物(例えば、エリブリン部分)が抗体部分に連結しているものを指し、一般式:Ab-(L-D)(式I)(式中、Abは、抗体部分(例えば、抗体又は抗原結合断片)であり、Lは、リンカー部分であり、Dは、薬物部分(例えば、エリブリン薬物部分)であり、及びpは、各抗体部分の薬物部分の数である)によって定義される。エリブリン薬物部分を含むADCにおいて、「p」は、抗体部分に連結したエリブリン部分の数を指す。一部の実施形態において、リンカーLは、抗体部分と治療用化合物とに直接結び付くことのできる切断可能な部分を含むか、又は切断可能な部分は、1つ若しくは複数のスペーサー単位によって抗体部分及び治療用化合物のいずれか若しくは両方に結び付けられ得る。一部の実施形態において、スペーサー単位が切断可能な部分を治療用化合物に結び付けるとき、それは、自己犠牲性スペーサー単位である。
【0047】
用語「抗体」は、最も広義には、免疫グロブリン分子の可変領域内にある少なくとも1つの抗原認識部位を介してタンパク質、ポリペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質又は前述の組み合わせなどの標的を認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリン分子を指して使用される。抗体の重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)と重鎖定常領域(CH)とで構成される。軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VL)と軽鎖定常ドメイン(CL)とで構成される。本願の目的上、成熟重鎖及び軽鎖可変ドメインは、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)内においてN末端からC末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4に並んで含む。「抗体」は、天然に存在するもの又は従来のハイブリドーマ技術によって作製されるモノクローナル抗体などの人工的なものであり得る。用語「抗体」には、完全長モノクローナル抗体及び完全長ポリクローナル抗体並びにFab、Fab’、F(ab’)2、Fv及び単鎖抗体などの抗体断片が含まれる。抗体は、5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM又はそのサブクラス(例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のいずれか1つであり得る。この用語は、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及び所望の生物学的活性を示す限り、抗原認識部位を含有する任意の修飾免疫グロブリン分子を更に包含する。
【0048】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用されるとき、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、その集団を占める個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原エピトープを対象とする。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体製剤は、典型的には、異なるエピトープを対象とする(又はそれに特異的な)多数の抗体を含む。修飾語句「モノクローナル」は、その抗体が実質的に均質な抗体集団から得られているという特徴を指示するものであり、その抗体が任意の特定の方法によって作製されている必要があると解釈されてはならない。例えば、本開示において使用されることになるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、又は組換えDNA法によって作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。モノクローナル抗体は、例えば、Clackson et al.(1991)Nature 352:624-8及びMarks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581-97に記載される技法を用いてもファージ抗体ライブラリから単離され得る。
【0049】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である一方、1つ又は複数の鎖の残りの部分が、別の種に由来するか又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体と、標的抗原に特異的に結合し、且つ/又は所望の生物学的活性を呈する限り、かかる抗体の断片とを含む。
【0050】
用語「キメラ抗体」は、本明細書で使用されるとき、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。一部の例では、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域は、所望の特異性、親和性及び活性を有する1つの種に由来する抗体の可変領域に対応する一方、定常領域は、別の種(例えば、ヒト)に由来する抗体と相同であり、それにより後者の種における免疫応答が最小限に抑えられる。
【0051】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒト化抗体」は、非ヒト(例えば、ウサギ)抗体及びヒト抗体からの配列を含む抗体の形態を指す。かかる抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ及び典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、ここで、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分も含むことになる。ヒト化抗体は、抗体特異性、親和性及び/又は活性の精密化及び最適化のため、Fvフレームワーク領域及び/又は置き換えられた非ヒト残基内のいずれかにある残基の置換によって更に修飾され得る。
【0052】
抗体の「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合部分」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原(例えば、メソテリン)に特異的に結合する能力を保持している抗体又はタンパク質の1つ以上の断片を指す。抗原結合断片は、抗原発現細胞にインターナライズする能力も保持していることができる。一部の実施形態において、抗原結合断片は、免疫エフェクター活性も保持している。完全長抗体の断片が完全長抗体の抗原結合機能を果たし得ることが示されている。抗体の「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含される結合断片の例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)単一の可変ドメイン、例えばVHドメインを含むdAb断片(例えば、Ward et al.(1989)Nature 341:544-6;及び国際公開第1990/005144号パンフレットを参照されたい);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。更に、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、組換え方法を用いると、これらを合成リンカーによってつなぎ合わせることができ、VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる)として作製することが可能となる。例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-6;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-83を参照されたい。かかる単鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」又は「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含されることが意図され、当技術分野では、結合時に細胞内にインターナライズすることのできる例示的なタイプの結合断片として公知である(例えば、Zhu et al.(2010)9:2131-41;He et al.(2010)J.Nucl.Med.51:427-32;及びFitting et al.(2015)MAbs 7:390-402を参照されたい)。特定の実施形態において、scFv分子は、融合タンパク質に組み込まれ得る。ダイアボディなど、他の形態の単鎖抗体も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現する二価の二重特異性抗体であるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を許容しないほど短いリンカーを使用し、従ってそれらのドメインが強制的に別の鎖の相補ドメインと対合して2つの抗原結合部位を作り出す(例えば、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-8;及びPoljak et al.(1994)Structure 2:1121-3を参照されたい)。抗原結合断片は、当業者に公知の従来技法を用いて得られ、そうした結合断片は、インタクトな抗体と同じ方法で有用性(例えば、結合親和性、インターナリゼーション)に関してスクリーニングされる。抗原結合断片は、インタクトなタンパク質を例えばプロテアーゼ又は化学的切断によって切断することにより調製され得る。
【0053】
「インターナリゼーション性」は、抗体又は抗原結合断片に関連して本明細書で使用されるとき、細胞への結合時に細胞の脂質二重層膜を通して内部コンパートメント、典型的には細胞の分解性コンパートメント内に取り込まれる(即ち「インターナライズされる」)能力を有する抗体又は抗原結合断片を指す。例えば、インターナリゼーション性抗メソテリン抗体は、細胞膜上のメソテリンへの結合後に細胞内に取り込まれる能力を有するものである。一部の実施形態において、本明細書に開示されるADCに使用される抗体又は抗原結合断片は、インターナリゼーション性抗体又はインターナリゼーション性抗原結合断片を介して(ADCが抗原結合後に細胞膜を通して移行することが可能となる)、細胞表面抗原(例えば、メソテリン)を標的化する。
【0054】
用語「メソテリン」又は「MSLN」は、本明細書で使用されるとき、任意の天然形態のヒトメソテリン(MSLN)を指す。この用語は、完全長メソテリン(例えば、NCBI参照配列:AAC50348.1)及び細胞プロセシングから生じる任意の形態のヒトメソテリンを包含する。この用語は、限定はされないが、スプライス変異体、アレル変異体及びアイソフォームを含めて、メソテリンの天然に存在する変異体も包含する。メソテリンは、ヒトから単離され得るか、又は組換えで若しくは合成方法により作製され得る。この用語は、抗メソテリン抗体、例えば本明細書に開示される抗体及び/又は抗原結合断片が特異的に結合することのできる任意の合成変異体も包含し得る。
【0055】
用語「抗メソテリン抗体」又は「メソテリンに特異的に結合する抗体」は、メソテリンに特異的に結合する任意の形態の抗体又はその断片を指し、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体及びメソテリンに特異的に結合する限り、生物学的に機能性の抗体断片を包含する。一部の実施形態において、本明細書に開示されるADCに使用される抗メソテリン抗体は、インターナリゼーション性抗体又はインターナリゼーション性抗体断片である。345A12(例えば、345A12-HC15-LC4)及び102A6A2は、例示的なインターナリゼーション性抗ヒトメソテリン抗体である。本明細書で使用されるとき、用語「特異的」、「特異的に結合する(specifically binds)」及び「特異的に結合する(binds specifically)」は、抗体が標的抗原エピトープに選択的に結合することを指す。抗体は、所与の条件の組の下において、適切な抗原への結合を無関係な抗原又は抗原混合物への結合と比較することにより、結合の特異性に関して試験することができる。抗体が、無関係な抗原又は抗原混合物と比べて少なくとも2、5、7又は10倍高い親和性で適切な抗原に結合する場合、それは、特異的と見なされる。「特異的抗体」又は「標的特異的抗体」は、標的抗原(例えば、ヒトメソテリン)にのみ結合し、しかし他の抗原に結合しない(又は最小限の結合のみを呈する)ものである。
【0056】
用語「エピトープ」は、抗体によって認識され、且つ特異的に結合される能力を有する抗原の一部分を指す。抗原がポリペプチドであるとき、エピトープは、連続アミノ酸で形成され得るか、又はポリペプチドが三次構造に折り畳まれることにより隣り合って並ぶ非連続アミノ酸で形成され得る。抗体によって結合されるエピトープは、抗原-抗体複合体の直接的な視覚化によるエピトープ同定のためのX線結晶学並びに抗体による抗原の断片若しくは突然変異変種への結合のモニタリング又は抗体及び抗原の種々の部分の溶媒露出度のモニタリングを含めて、当技術分野において公知の任意のエピトープマッピング技法を用いて同定され得る。抗体エピトープのマッピングに使用される例示的戦略としては、限定はされないが、アレイベースのオリゴペプチドスキャニング、タンパク質限定分解、部位特異的突然変異誘発、ハイスループット突然変異誘発マッピング、水素-重水素交換及び質量分析法が挙げられる(例えば、Gershoni et al.(2007)21:145-56;及びHager-Braun and Tomer(2005)Expert Rev.Proteomics 2:745-56を参照されたい)。
【0057】
競合的結合及びエピトープビニングも、同一の又は重複するエピトープを共有する抗体の決定に用いることができる。競合的結合は、“Antibodies,A Laboratory Manual,”Cold Spring Harbor Laboratory,Harlow and Lane(1st edition 1988,2nd edition 2014)に記載されるアッセイなど、クロスブロッキングアッセイを用いて評価することができる。一部の実施形態では、クロスブロッキングアッセイにおいて参照抗体又は結合タンパク質(例えば、表1~表3に特定されるものから選択されるCDR及び/又は可変ドメインを含む結合タンパク質)によるメソテリンなどの標的抗原への結合が試験抗体又は結合タンパク質によって少なくとも約50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.5%若しくはそれを超えるか又はその間にある任意のパーセンテージ)だけ低下するとき及び/又はその逆のとき、競合的結合が同定される。一部の実施形態において、競合的結合は、共有されているか若しくは同様の(例えば、部分的に重複している)エピトープに起因し得るか、又は抗体若しくは結合タンパク質が近傍のエピトープに結合する立体障害に起因し得る(例えば、Tzartos,Methods in Molecular Biology(Morris,ed.(1998)vol.66,pp.55-66)を参照されたい)。一部の実施形態では、競合的結合を用いて、同様のエピトープを共有する結合タンパク質群を分取することができる。例えば、結合に関して競合する結合タンパク質は、重複するか又は近傍のエピトープを有する結合タンパク質群として「ビンに入れる」ことができる一方、競合しないものは、重複するか又は近傍のエピトープを有しない別の結合タンパク質群に分けられる。
【0058】
用語「kon」又は「k」は、抗体/抗原複合体を形成するための抗原への抗体の会合についてのオン速度定数を指す。この速度は、表面プラズモン共鳴、バイオレイヤー干渉法又はELISAアッセイなどの標準アッセイを用いて決定することができる。
【0059】
用語「koff」又は「k」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についてのオフ速度定数を指す。この速度は、表面プラズモン共鳴、バイオレイヤー干渉法又はELISAアッセイなどの標準アッセイを用いて決定することができる。
【0060】
用語「K」は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。Kは、k/kによって計算される。この速度は、表面プラズモン共鳴、バイオレイヤー干渉法又はELISAアッセイなどの標準アッセイを用いて決定することができる。
【0061】
用語「p」、又は「薬物負荷量」、又は「薬物:抗体比」、又は「薬物対抗体比」、又は「DAR」は、式(I)のADCにおける各抗体部分当たりの薬物部分の数、即ち各抗体又は抗原結合断片(Ab)当たりの薬物負荷量又は-L-D部分の数を指す。エリブリン薬物部分を含むADCでは、「p」は、抗体部分に連結したエリブリン部分の数を指す。例えば、2個のエリブリン部分が抗体部分に連結している場合、p=2である。式(I)のADCの複数のコピーを含む組成物では、「平均p」は、ADC集団中の各抗体又は抗原結合断片当たりの-L-D部分の数の平均を指し、「平均薬物負荷量」とも称される。
【0062】
「リンカー」又は「リンカー部分」は、本明細書では、化合物、通常、エリブリンなどの薬物部分を抗体部分などの別の部分に共有結合的につなぎ合わせる能力を有する任意の化学的部分を指して使用される。リンカーは、化合物又は抗体が活性のままである条件において、酸誘導切断、ペプチダーゼ誘導切断、光に基づく切断、エステラーゼ誘導切断及び/又はジスルフィド結合切断を起こし易いか、又はそれに対して実質的に抵抗性であり得る。
【0063】
用語「薬剤」は、本明細書では、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生物学的巨大分子又は生物学的材料から作られる抽出物を指して使用される。用語「療法剤」又は「薬物」は、生物学的過程を調節する能力があり、且つ/又は生物学的活性を有する薬剤を指す。本明細書に記載されるエリブリン単量体は、例示的療法剤である。
【0064】
用語「化学療法剤」又は「抗癌剤」は、本明細書では、作用機序に関わらず、癌の治療に有効なあらゆる薬剤を指して使用される。転移又は血管新生の阻害は、多くの場合に化学療法剤の特性である。化学療法剤には、抗体、生体分子及び小分子が含まれ、本明細書に記載されるとおりのエリブリンが包含される。化学療法剤は、細胞毒性剤又は細胞増殖抑制剤であり得る。用語「細胞増殖抑制剤」は、細胞成長及び/又は細胞の増大を阻害又は抑制する薬剤を指す。用語「細胞毒性剤」は、主に細胞の発現活性及び/又は機能に干渉することによって細胞死を引き起こす物質を指す。
【0065】
用語「エリブリン」又は「エリブリン単量体」は、本明細書で使用されるとき、元々、海洋性海綿動物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から分離された大環状化合物であるハリコンドリンBの合成類似体を指す。エリブリンは、微小管動態阻害薬であり、チューブリンに結合し、有糸分裂紡錘体集合を阻害することによってG2/M期の細胞周期停止を誘導すると考えられている。用語「エリブリンメシレート」は、商品名Halaven(商標)で販売されているエリブリンのメシル酸塩を指す。例示的エリブリン類似体には、米国特許第6,214,865号明細書及び米国特許第6,653,341号明細書(これらは、開示されるエリブリン構造及びその構造の合成方法に関して参照により本明細書に援用される)に示され、及び説明されているものが含まれる。
【0066】
用語「エリブリン二量体」は、本明細書で使用されるとき、2個のエリブリン単量体が直接又は化学的リンカー(例えば、第二級アミン、ジヒドロキシル第二級アミン)のいずれかで共有結合又は非共有結合によって結び付いている二量体形態のエリブリンを指す。エリブリン二量体は、一部の実施形態では、C-34位で第二級アミンによって共有結合的に連結した2個のエリブリン単量体又はC-35位でジヒドロキシル第二級アミンによって共有結合的に連結した2個のエリブリン単量体からなり得る。C-34位で第二級アミンによって共有結合的に連結した2個のエリブリン単量体からなるエリブリン二量体は、本明細書では、「脱OHエリブリン二量体」と称され得る。C-35位でジヒドロキシル第二級アミンによって共有結合的に連結した2個のエリブリン単量体からなるエリブリン二量体は、本明細書では、「ジOHエリブリン二量体」と称され得る。用語「エリブリン二量体薬物部分」は、エリブリン二量体の構造を提供するADC又は組成物の成分、例えば式(I)のADC中又は-L-Dを含む組成物中のエリブリン二量体(D)成分を指す。一部の実施形態において、脱OHエリブリン二量体及び/又はジOHエリブリン二量体は、他のエリブリン二量体フォーマットと比べて向上したコンジュゲーション適合性をもたらす。
【0067】
用語「クリプトフィシン」は、本明細書で使用されるとき、元々、シアノバクテリアのノストック属(Nostoc)から分離されたマクロライド化合物であるクリプトフィシン-1又は抗チューブリン活性を保持しているその任意の合成類似体を指す。例示的クリプトフィシン類似体には、国際公開第2017/136769号パンフレット(これは、その開示される全てのクリプトフィシン構造及びそれらの構造の合成方法に関して参照により本明細書に援用される)に示され、及び説明されているものが含まれる。用語「クリプトフィシン薬物部分」は、クリプトフィシンの構造を有するADC又は組成物の成分を指す。
【0068】
用語「相同体」は、例えば、対応する位置において同じ又は同様の化学的残基の配列を有することにより、別の分子との相同性を呈する分子を指す。
【0069】
用語「~を阻害する」又は「~の阻害」は、本明細書で使用されるとき、測定可能な大きさだけ減少させることを意味し、必須ではないが、完全な防止又は阻害を含み得る。
【0070】
用語「バイスタンダー殺傷」又は「バイスタンダー効果」は、標的陽性細胞の存在下における標的陰性細胞の殺傷を指し、標的陽性細胞の非存在下では、標的陰性細胞の殺傷が観察されない。標的陽性細胞と標的陰性細胞との間の細胞間接触又は少なくとも近接性がバイスタンダー殺傷を可能にする。この種の殺傷は、標的陰性細胞の無差別な殺傷を指す「オフターゲット殺傷」と区別可能である。「オフターゲット殺傷」は、標的陽性細胞の非存在下でも観察され得る。
【0071】
用語「癌」は、細胞集団が無制御な細胞成長によって特徴付けられる、哺乳類における生理的条件を指す。癌の例としては、限定はされないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が挙げられる。かかる癌の詳細な例としては、中皮腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、卵巣癌(例えば、漿液性、明細胞性又は上皮性卵巣癌)、膵癌、前立腺癌、腎癌、胃癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌又は白血病などのメソテリン発現癌が挙げられる。
【0072】
用語「腫瘍」及び「新生物」は、前癌病変を含む、良性又は悪性のいずれかである過剰な細胞成長又は増殖によって生じる任意の組織塊を指す。
【0073】
用語「腫瘍細胞」は、非腫瘍原性細胞及び癌幹細胞の両方を含めて、腫瘍に由来する個々の細胞又は全細胞集団を指す。本明細書で使用されるとき、用語「腫瘍細胞」は、単に再生及び分化能を欠いている腫瘍細胞を指す場合、用語「非腫瘍原性」で修飾されることになり、そうした腫瘍細胞が癌幹細胞と区別される。
【0074】
用語「対象」及び「患者」は、本明細書では、限定はされないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含めた任意の哺乳類など、任意の動物を指して同義的に使用される。一部の実施形態において、哺乳類は、マウスである。一部の実施形態において、哺乳類は、ヒトである。
【0075】
「医薬組成物」は、投与を可能にし、続いて1つ又は複数の活性成分の意図した生物学的活性を提供するような形態及び/又は治療効果を実現するような形態の調製物であって、その製剤が投与されるであろう対象にとって許容し難いほど毒性の高い構成成分を他に含有しない調製物を指す。医薬組成物は、無菌であり得る。
【0076】
「医薬賦形剤」は、補助剤、担体、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤、湿潤剤、保存剤などの材料を含む。
【0077】
「薬学的に許容可能」は、動物、より詳細にはヒトにおける使用が連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認済み若しくは承認見込みであること又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。
【0078】
例えば、本明細書に開示されるとおりの抗体、抗原結合断片及び/又はADCの「有効量」は、具体的に記載される目的を果たすのに十分である、例えば投与後に腫瘍成長速度又は腫瘍容積の低減、癌の症状又は他の何らかの治療有効性指標の低減などの治療効果をもたらすのに十分な量である。有効量は、記載される目的に関連したルーチンの方法で決定することができる。用語「治療有効量」は、対象の疾患又は障害を治療するのに有効な抗体、抗原結合断片及び/又はADCの量を指す。癌の場合、抗体、抗原結合断片及び/又はADCの治療有効量は、癌細胞数を低減し、腫瘍サイズを低減し、腫瘍転移を阻害し(例えば、遅らせるか又は止める)、腫瘍成長を阻害し(例えば、遅らせるか又は止める)、且つ/又は1つ以上の症状を緩和することができる。「予防有効量」は、所望の予防結果の実現に必要な投薬量及び期間でそれに有効な量を指す。典型的には、予防用量は、疾患が起こる前の又は疾患の初期段階にある対象において用いられるため、予防有効量は、治療有効量より少ないことになる。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「治療すること」又は「療法的」及び文法的に関連する用語は、生存期間の延長、低い罹患率及び/又は代替的な治療モダリティの副産物である副作用の軽減など、疾患の任意の帰結の任意の改善を指す。当技術分野で容易に理解されるとおり、疾患の完全な根絶が包含されるが、それが治療行為に必須というわけではない。「治療」又は「治療する」は、本明細書で使用されるとき、対象、例えば患者への、記載される抗体、抗原結合断片及び/又はADCの投与を指す。治療とは、例えば、癌などの障害、障害の症状又は障害になり易い素因を根治すること、治癒すること、緩和すること、軽減すること、変化させること、改善すること、寛解させること、緩和すること、好転させること又はそれに影響を及ぼすことであり得る。一部の実施形態において、ある病態を有する対象を治療することに加えて、本明細書に開示される組成物は、その病態が発症する可能性を防止又は低減するために予防的に提供することもできる。
【0080】
一部の実施形態において、標識された抗体、抗原結合断片及び/又はADCが使用される。好適な「標識」としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子などが挙げられる。
【0081】
「タンパク質」とは、本明細書で使用されるとき、少なくとも2つの共有結合的に結び付いたアミノ酸を意味する。この用語は、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドを包含する。一部の実施形態において、2つ以上の共有結合的に結び付いたアミノ酸は、ペプチド結合によって結び付いている。例えば、タンパク質が発現システム及び宿主細胞を使用して組換えで作られるとき、タンパク質は、天然に存在するアミノ酸及びペプチド結合で構成され得る。代わりに、タンパク質は、合成アミノ酸(例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン、オルニチン及びノルロイシン)を含み得る。「組換えタンパク質」は、当技術分野において公知の任意の技法及び方法を用いた組換え技術を用いて、即ち組換え核酸の発現を通して作られたタンパク質である。組換えタンパク質の作製方法及び技法は、当技術分野において周知である。
【0082】
アミノ酸配列について、配列同一性及び/又は類似性は、限定はされないが、Smith and Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所的配列同一性アルゴリズム、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の配列同一性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)、Devereux et al.(1984)Nucl.Acid Res.12:387-95によって記載されるBest Fitシーケンスプログラムであって、好ましくはデフォルト設定を使用するもの又は目視検査によることを含めて、当技術分野において公知の標準技法を用いて決定され得る。一部の実施形態において、パーセント同一性は、FastDBにより、以下のパラメータ:ミスマッチペナルティ1;ギャップペナルティ1;ギャップサイズペナルティ0.33;及びジョイニングペナルティ30に基づいて計算される(“Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,”Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp.127-149(1988),Alan R.Liss,Inc)。
【0083】
概して、本明細書に開示されるタンパク質及びその変異体、例えば標的抗原(メソテリンなど)の変異体、チューブリン配列の変異体及び抗体可変ドメインの変異体(個々の変異体CDRを含む)間のアミノ酸相同性、類似性又は同一性は、本明細書に示される配列と少なくとも80%であり、例えば少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、ほぼ100%又は100%の相同性又は同一性である。
【0084】
同じように、本明細書に特定される抗体及び他のタンパク質の核酸配列に関する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、抗原結合タンパク質のコード配列中のヌクレオチド残基と同一である、候補配列中にあるヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。具体的な方法は、デフォルトパラメータに設定した、オーバーラップ幅及びオーバーラップ率をそれぞれ1及び0.125に設定したWU-BLAST-2のBLASTNモジュールを利用する。
【0085】
アミノ酸配列変異を導入する部位又は領域は、予め決められているが、突然変異自体は、予め決められたものでなくてもよい。例えば、所与の部位における突然変異のパフォーマンスを最適化するため、標的コドン又は領域でランダム突然変異誘発を行い、発現した抗原結合タンパク質CDR変異体を所望の活性の最適な組み合わせに関してスクリーニングし得る。既知の配列を有するDNA中の予め決められた部位に置換突然変異を作り出す技法は、例えば、MI3プライマー突然変異誘発及びPCR突然変異誘発など、周知である。
【0086】
抗メソテリン抗体及び抗原結合断片
本開示は、様々な実施形態において、腫瘍細胞(例えば、メソテリン発現腫瘍細胞)に結合し且つ/又はそれを殺傷する能力を有する抗体又はその抗原結合断片並びにコンジュゲート及び治療用組成物におけるその使用に関する。
【0087】
一部の実施形態において、抗体は、単独で使用されるか、又は医薬組成物若しくは併用療法の一部及び/又はADC中の抗体部分として投与され得る。一部の実施形態において、本明細書に開示される抗メソテリン抗体及び抗原結合断片は、そのままで(即ちコンジュゲートしていない形態で)且つADC中の抗体部分として有用である。一部の実施形態において、抗メソテリン抗体及び抗原結合断片は、ヒト化されている。一部の実施形態において、抗メソテリン抗体及び抗原結合断片は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限のみ含み、ヒトにおける免疫原性を抑えながら、非ヒト(例えば、ウサギ)抗体の反応性を保持している。一部の実施形態において、本明細書に開示される抗メソテリン抗体及び抗原結合断片は、当業者に公知の1つ以上の抗メソテリン抗体と比較したとき、向上した安定性、製剤化し易さ、凝集、結合親和性、治療有効性、オフターゲット毒性及び/又は代謝プロファイルの1つ以上を提供する。
【0088】
様々な実施形態において、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、例えば、癌細胞上に発現するとおりのメソテリンに特異的に結合する。抗体又は抗原結合断片は、例えば、BIAcore(登録商標)分析により測定したとき、≦1mM、≦100nM又は≦10nM又はその間にある任意の大きさの解離定数(K)で標的抗原に結合し得る。特定の実施形態において、Kは、1pM~500pMである。一部の実施形態において、Kは、500pM~1μM、1μM~100nM又は100mM~10nMである。
【0089】
一部の実施形態において、抗体部分は、2本の重鎖と2本の軽鎖とを含む4本鎖抗体である(免疫グロブリンとも称される)。一部の実施形態において、抗体部分は、2本鎖半抗体(1本の軽鎖及び1本の重鎖)又は免疫グロブリンの抗原結合断片である。
【0090】
一部の実施形態において、抗体部分は、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施形態において、抗体部分は、インターナリゼーション性抗体又はそのインターナリゼーション性抗原結合断片である。一部の実施形態において、インターナリゼーション性抗体又はそのインターナリゼーション性抗原結合断片は、細胞の表面上に発現する標的癌抗原に結合し、結合次第、細胞に侵入する。一部の実施形態において、ADCのエリブリン薬物部分は、標的癌抗原を発現する細胞にADCが侵入してそこに存在するようになった後(即ちADCがインターナライズされ終えた後)、ADCの抗体部分から放出される。
【0091】
様々な実施形態において、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、表3~表5に掲載されるものから取った対を成す重鎖及び軽鎖可変ドメインの組又は対を成す重鎖及び軽鎖の組からの6つのCDR配列の組、例えば表1~表2に掲載されるCDRの組を含み得る。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒト重鎖及び軽鎖フレームワーク(任意選択で、結合親和性を改善するため1つ以上の復帰突然変異を含む)並びに/又はヒト重鎖及び軽鎖定常ドメイン若しくはその断片を更に含む。例えば、抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG重鎖定常ドメイン(IgG1など)及びヒトκ又はλ軽鎖定常ドメインを含み得る。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒト免疫グロブリンGサブタイプ1(IgG1)重鎖定常ドメインをヒトIgκ軽鎖定常ドメインと共に含む。
【0092】
本開示の例示的抗体のアミノ酸及び核酸配列を表1~表10に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
【表9】
【0102】
【表10】
【0103】
【表11】
【0104】
一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、ヒトメソテリンに結合し、Kabatの付番方式(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interestによって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0105】
一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、ヒトメソテリンに結合し、且つIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0106】
様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRを含み、CDRは、HCDR1(Kabatによる配列番号1又はIMGTによる配列番号7)、HCDR2(Kabatによる配列番号2又はIMGTによる配列番号8)、HCDR3(Kabatによる配列番号3又はIMGTによる配列番号9);及びLCDR1(Kabatによる配列番号4又はIMGTによる配列番号10)、LCDR2(Kabatによる配列番号5又はIMGTによる配列番号11)及びLCDR3(Kabatによる配列番号6又はIMGTによる配列番号12)の1、2、3、4、5又は6個以下のアミノ酸付加、欠失又は置換を含む。
【0107】
一部の実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、ヒト化されている。一部の実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限のみ含み、ヒトにおける免疫原性を抑えながら、非ヒト(例えば、ウサギ)抗体の反応性を保持している。一部の実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、1つ以上の別の抗メソテリン抗体と比較したとき、向上した安定性、製剤化し易さ、結合親和性、治療有効性及び/又は凝集レベルの低下の1つ以上を提供する。
【0108】
様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列若しくは配列番号13と少なくとも90%同一の配列を含む重鎖可変領域及び/又は配列番号14のアミノ酸配列若しくは配列番号14と少なくとも90%同一の配列を含む軽鎖可変領域を含む。様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列若しくは配列番号15と少なくとも90%同一の配列を含む重鎖定常領域及び/又は配列番号16のアミノ酸配列若しくは配列番号16と少なくとも90%同一の配列を含む軽鎖定常領域を含む。
【0109】
様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、配列番号17の重鎖アミノ酸配列若しくは配列番号17と少なくとも90%同一の配列及び/又は配列番号18の軽鎖アミノ酸配列若しくは配列番号18と少なくとも90%同一の配列を含む。
【0110】
一部の実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン及びヒトIgκ軽鎖定常ドメインを含む。
【0111】
様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、Kabatの付番方式によって定義される、配列番号19(HCDR1)、配列番号20(HCDR2)及び配列番号21(HCDR3)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号22(LCDR1)、配列番号23(LCDR2)及び配列番号24(LCDR3)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号25(HCDR1)、配列番号26(HCDR2)及び配列番号27(HCDR3)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号28(LCDR1)、配列番号29(LCDR2)及び配列番号30(LCDR3)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0112】
様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、配列番号31の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号32の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0113】
様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、配列番号33の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号34の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
【0114】
様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、配列番号35の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号36の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0115】
様々な実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、345A12-HC15-LC4である。
【0116】
本明細書に記載される抗メソテリン抗原結合ドメインは、単独で(例えば、抗体又は抗原結合断片として)、1つ以上の追加の薬剤に(例えば、ADCとして)連結して又は大型高分子(例えば、二重特異性抗体又は多重特異性抗体)の一部として有用であり得る。
【0117】
一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、療法剤にコンジュゲートされている。一部の実施形態において、化学療法剤は、エリブリンである。一部の実施形態において、化学療法剤は、エリブリン二量体である。
【0118】
一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、二重特異性又は多重特異性抗体中の抗原結合ドメインであり、且つ/又はその一部である。一部の実施形態において、二重特異性又は多重特異性抗体は、メソテリンに結合する能力を有し、且つKabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つのHCDR;並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態において、多重特異性抗体は、1つ以上の追加の抗原結合ドメイン、例えば同じ抗原(即ちメソテリン)又は他の抗原に対する抗原結合ドメインを含む。
【0119】
一部の実施形態において、抗原結合ドメインは、抗原結合断片である。一部の実施形態において、抗原結合ドメイン及び/又は抗原結合断片は、単鎖可変断片(scFv)又はFab断片である。
【0120】
一部の実施形態において、単独で又は大型高分子の一部として用いられる、本明細書に開示される抗原結合ドメイン(例えば、抗メソテリン抗原結合ドメイン)は、メソテリン結合機能を保持しながら、更なる修飾(例えば、1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入)を含み得る。
【0121】
抗体-薬物コンジュゲート
更に、本明細書では、様々な実施形態において、化学療法薬部分、例えばエリブリンを、本明細書に開示される抗メソテリン抗体に結び付けるリンカーを含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)化合物が提供される。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)化合物は、式I:
Ab-(L-D) (I)
(式中、Abは、本明細書に開示されるインターナリゼーション性抗メソテリン抗体又はそのインターナリゼーション性抗原結合断片であり;
Dは、エリブリンであり;
Lは、AbをDに共有結合的に結び付ける切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
によって表され得る。
【0122】
本開示のADC化合物は、薬物部分(例えば、エリブリン)にコンジュゲートした(例えば、リンカーによって共有結合的に結び付いた)抗体部分(その抗原結合断片を含む)を含み、薬物部分は、抗体部分にコンジュゲートしていないとき、細胞毒性効果又は細胞増殖抑制効果を有する。様々な実施形態において、薬物部分は、コンジュゲート中で結合しているとき、低下した細胞毒性を呈するか又はそれを全く呈さず、しかしリンカー及び抗体部分から切断された後、細胞毒性を取り戻す。様々な実施形態において、薬物部分は、コンジュゲート中で結合しているとき、低下したバイスタンダー殺傷を呈するか又はそれを全く呈さず、しかしコンジュゲートから切断された後、バイスタンダー殺傷の増加を呈する。
【0123】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるADC化合物は、ADCの抗体部分が標的とする抗原(例えば、メソテリン)を発現する癌細胞又は腫瘍組織に有効用量の薬物部分(例えば、エリブリン)を選択的に送達することができる。一部の実施形態において、開示されるADC化合物は、メソテリンを発現しないか又はメソテリンの発現レベルがはるかに低いかのいずれかである正常細胞又は組織を温存しつつ、メソテリンを発現する細胞又は組織にエリブリンを送達することにより、癌を特異的に標的化する。一部の実施形態において、開示されるADC化合物は、別の抗体、リンカー及び/又は薬物部分を含むADC、例えばBAY 94-9343と比較して、オンターゲット殺傷の向上及び/又はオフターゲット殺傷の低下を示す。一部の実施形態において、開示されるADC化合物は、別の抗体、リンカー及び/又は薬物部分を含むADC、例えばBAY 94-9343と比較して、ADCによるADCC活性保持の向上を示す。一部の実施形態において、開示されるADC化合物は、別の抗体、リンカー及び/又は薬物部分を含むADC、例えばBAY 94-9343と比較して、安定性(例えば、血漿安定性)の向上を示す。一部の実施形態において、開示されるADC化合物は、別の抗体、リンカー及び/又は薬物部分を含むADC、例えばBAY 94-9343と比較して、抗腫瘍有効性の向上を示す。
【0124】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるADC化合物は、単剤型の薬物(即ち抗体部分にコンジュゲートされていない)として評価したときのエリブリンの用量と比較して、低い用量のエリブリンで有利な抗腫瘍有効性を提供することができる。一部の実施形態において、本明細書に開示されるADC化合物の腫瘍特異的ターゲティングによれば、単剤型の薬物として評価したときのエリブリンと比較して、ADCの抗腫瘍活性が増加し、且つ/又はオフターゲット細胞毒性が低下する。例えば、一部の実施形態において、本明細書に開示されるADC化合物は、単剤型の薬物として評価したときのエリブリンの用量の少なくとも10分の1、少なくとも15分の1、少なくとも20分の1又は少なくとも30分の1の用量のエリブリンで有利な抗腫瘍活性を示す。一部の実施形態において、開示されるADC化合物は、そのままのエリブリンと比べて向上した毒性学的又は安全性プロファイルを提供しながら、単剤型の薬物として評価したときのエリブリンの活性と同等の又はそれより優れた抗腫瘍活性を実証する。
【0125】
一部の実施形態において、リンカーは、細胞外で安定しており、従って細胞外条件に存在するとき、ADCは、インタクトなままであるが、細胞、例えば癌細胞にインターナライズされると、切断される能力を有する。一部の実施形態において、メソテリンを発現する細胞にADCが侵入すると、エリブリン薬物部分が抗メソテリン抗体部分から切断され、切断によって非修飾形態のエリブリンが放出される。
【0126】
一部の実施形態において、リンカーは、切断時にリンカー又は抗体部分のいかなる部分もエリブリン薬物部分に結合されたままであることがないように配置される切断可能な部分を含む。一部の実施形態において、リンカー中の切断可能な部分は、切断可能なペプチド部分である。一部の実施形態において、切断可能なペプチド部分を含むADCは、別のリンカー部分を含むADCと比べて低い凝集レベル、抗体:薬物比の向上、癌細胞のオンターゲット殺傷の増加、非癌細胞のオフターゲット殺傷の減少及び/又は高い薬物負荷量(p)を実証する。一部の実施形態において、効力及び/又は細胞毒性の増加は、中程度のメソテリンを発現する癌において提供される。一部の実施形態において、切断可能なペプチド部分は、酵素によって切断可能であり、リンカーは、酵素切断可能なリンカーである。一部の実施形態において、酵素は、カテプシンBであり、リンカーは、カテプシン切断可能なリンカーである。一部の実施形態において、酵素切断可能なリンカー(例えば、カテプシン切断可能なリンカー)は、別の切断機構と比較して上述の向上した特性の1つ以上を呈する。
【0127】
一部の実施形態において、リンカー中の切断可能なペプチド部分は、アミノ酸単位を含む。一部の実施形態において、アミノ酸単位は、バリン-シトルリン(Val-Cit)を含む。一部の実施形態において、Val-Citを含むADCは、別のアミノ酸単位又は別の切断可能な部分を含むADCと比べて安定性の増加、オフターゲット細胞殺傷の減少、オンターゲット細胞殺傷の増加、低い凝集レベル及び/又は高い薬物負荷量を実証する。
【0128】
一部の実施形態において、リンカーは、抗体部分を切断可能な部分につなぎ合わせる少なくとも1つのスペーサー単位を含む。一部の実施形態において、リンカー中のスペーサー単位は、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)部分を含み得る。PEG部分は、例えば、-(PEG)-(式中、mは、1~10の整数である)を含み得る。一部の実施形態において、リンカー中のスペーサー単位は、(PEG)を含む。一部の実施形態において、短いスペーサー単位(例えば、(PEG))を含むADCは、リンカー長さが短いにも関わらず、長いスペーサー単位(例えば、(PEG))を含むADCと比べて低い凝集レベル及び/又は高い薬物負荷量を実証する。
【0129】
一部の実施形態において、リンカー中のスペーサー単位は、ADCの抗体部分にマレイミド部分(Mal)を介して結び付く。一部の実施形態において、抗体部分にMalを介して結び付いたリンカーを含むADCは、抗体部分に別の部分を介して結び付いたリンカーを含むADCと比べて高い薬物負荷量を実証する。一部の実施形態において、リンカー中のMalは、抗体部分にシステイン残基(例えば、LCcys80)を介してつなぎ合わされる。一部の実施形態において、リンカー中のMalは、抗体又は抗原結合断片上の軽鎖可変領域のシステイン残基(例えば、LCcys80)につなぎ合わされる。一部の実施形態において、pは、2であり、2つの-L-D部分が抗体又は抗原結合断片に結び付いている。一部の実施形態において、各-L-D部分は、抗体又は抗原結合断片上の軽鎖可変領域のシステイン残基(例えば、LCcys80)に結び付いている。一部の実施形態において、システイン残基は、LCcys80である。一部の実施形態において、Mal-スペーサー単位は、PEG部分を含む。一部の実施形態において、リンカーは、Mal-(PEG)、例えばMal-(PEG)を含む。一部の実施形態において、Mal-スペーサー単位は、抗体部分をリンカー中の切断可能な部分に結び付ける。一部の実施形態において、リンカー中の切断可能な部分は、切断可能なペプチド部分、例えばアミノ酸単位である。一部の実施形態において、リンカーは、Mal-(PEG)-Val-Citを含む。
【0130】
一部の実施形態において、リンカー中の切断可能な部分は、ADCのエリブリン薬物部分に直接つなぎ合わされ、切断可能な部分は、抗体部分に直接つながっているか、又はスペーサー単位を通してつながっているかのいずれかである。一部の実施形態において、スペーサー単位も、リンカー中の切断可能な部分をエリブリン薬物部分に結び付ける。一部の実施形態において、リンカー中の切断可能な部分をエリブリン薬物部分に結び付けるスペーサー単位は、自己犠牲性である。一部の実施形態において、自己犠牲性スペーサーは、標的細胞において非修飾エリブリンを放出する能力を有する。一部の実施形態において、自己犠牲性スペーサー単位は、p-アミノベンジルアルコール、例えばp-アミノベンジルオキシカルボニル(pAB)を含む。リンカー中のpABは、一部の実施形態において、切断可能な部分をエリブリン薬物部分に結び付ける。一部の実施形態において、切断可能な部分は、切断可能なペプチド部分、例えばアミノ酸単位である。一部の実施形態において、リンカーは、Val-Cit-pABを含む。一部の実施形態において、リンカーは、Val-Cit-pABと、リンカーを、Malを通して抗体部分につなぎ合わせるPEGスペーサー単位とを含む。
【0131】
一部の実施形態において、pは、1~8又は2~6の整数である。一部の実施形態において、pは、2又は6である。一部の実施形態において、リンカーは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含む。一部の実施形態において、リンカーは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含み、及びpは、2である。一部の実施形態において、リンカーは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含み、及びpは、6である。
【0132】
一部の実施形態において、抗体部分は、Mal部分と、PEG部分と、Val-Citと、pABとを含むリンカーを介してエリブリン薬物部分にコンジュゲートされる。これらの実施形態では、マレイミド部分がリンカー-薬物部分を抗体部分に共有結合的に結び付け、pABが自己犠牲性スペーサー単位としての役割を果たす。かかるリンカーは、「Mal-VC-pAB」リンカー、「Mal-VCP」、「マレイミド-VCP」又は「VCP」リンカー、「Mal-(PEG)-VCP」リンカー又は「Mal-(PEG)-Val-Cit-pAB」リンカーと称され得る。一部の実施形態において、エリブリン薬物部分は、C-35位で共有結合的に連結したエリブリンである。一部の実施形態において、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABリンカーのpABは、エリブリン薬物部分のC-35アミンに結び付けられている。
【0133】
345A12-HC15-LC4は、上記の表1~表10に示される配列を含むか又はそれによってコードされる、例えば配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む例示的抗メソテリン抗体である。一部の実施形態において、本明細書に開示されるADCの抗体部分は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示されるADCの抗体部分は、345A12-HC15-LC4である。
【0134】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるADCは、345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリンを含む。これらの実施形態において、345A12-HC15-LC4を含む抗体部分は、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含むリンカーを介してエリブリン薬物部分につなぎ合わされる。かかるADCは、「MORAb-109」と称され得る。一部の実施形態において、本明細書に開示されるADCは、MORAb-109である。
【0135】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるADCは、MORAb-109であり、2のpを有する。一部の実施形態において、pが2であるとき、このADCは、「MORAb-109(DAR2)」と称され得る。他の実施形態において、本明細書に開示されるADCは、MORAb-109であり、6のpを有する。一部の実施形態において、pが6であるとき、このADCは、「MORAb-109(DAR6)」と称され得る。
【0136】
様々な実施形態において、リンカーは、細胞内インターナリゼーション後の切断及び隣接細胞へのリンカー-薬物部分及び/又は薬物部分単独の拡散を通したバイスタンダー殺傷(隣接細胞、例えばメソテリンを発現しない隣接細胞の殺傷)を容易にするように設計される。一部の実施形態において、リンカーは、細胞インターナリゼーションを促進する。一部の実施形態において、リンカーは、標的組織へのADC結合性及びADCの抗体部分が標的とする抗原を発現しないが、その抗原を発現する標的癌組織を取り囲む癌性組織のバイスタンダー殺傷性を確保しつつ、細胞外環境での切断を最小限に抑え、それによりオフターゲット組織(例えば、非癌性組織)に対する毒性を低減するように設計される。一部の実施形態において、マレイミド(Mal)部分と、ポリエチレングリコール(PEG)部分と、バリン-シトルリン(Val-Cit又は「VC」)と、pABとを含むリンカーは、これらの機能的特徴を提供する。一部の実施形態において、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含むリンカーは、抗体部分及びエリブリン薬物部分をつなぎ合わせるとき、これらの機能的特徴を提供するのに特に有効である。一部の実施形態において、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含むリンカーは、345A12-HC15-LC4などの抗メソテリン抗体部分及びエリブリン薬物部分をつなぎ合わせるとき、これらの機能的特徴の一部又は全てを提供するのに有効である。
【0137】
一部の実施形態において、抗メソテリン抗体又は抗原結合断片は、本明細書に開示される配列(例えば、表1~表3に開示される6つのCDR及び/又は重鎖及び軽鎖可変ドメインを含む)を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、完全長抗体である。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、単一特異性抗体若しくは抗原結合断片、二重特異性抗体若しくは抗原結合断片又は多重特異性抗体若しくは抗原結合断片である。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、単鎖可変断片(scFv)又はFab断片である。
【0138】
一部の実施形態において、抗メソテリン抗体(Ab)部分と、切断可能なペプチド部分とを含むADCは、別の抗体又は抗原結合断片を含むADCと比べて低い凝集レベル、抗体:薬物比の向上、癌細胞のオンターゲット殺傷の増加、非癌細胞のオフターゲット殺傷の減少、高い薬物負荷量(p)、細胞毒性及び/又は効力の増加を実証する。一部の実施形態において、ADCは、式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、Abは、抗体又は抗原結合断片であり、抗体又は抗原結合断片は、メソテリンに結合する能力を有し、且つKabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み;
Dは、化学療法剤(例えば、エリブリン)であり;
Lは、AbをDに共有結合的に結び付ける切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
のADCである。
【0139】
一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン及びヒトIgκ軽鎖定常ドメインを含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0140】
一部の実施形態において、ADCは、式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、
Abは、抗体又は抗原結合断片であり、抗体又は抗原結合断片は、メソテリン及び/又はメソテリン発現細胞に結合する能力を有し、且つKabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み;
Dは、エリブリンであり;
Lは、AbをDに共有結合的に結び付ける切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
を有する。
【0141】
一部の実施形態において、メソテリン及び/又はメソテリン発現細胞を標的とする抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン及びヒトIgκ軽鎖定常ドメインを含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0142】
一部の実施形態において、ADCは、式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、
Abは、Kabatの付番方式によって定義される、配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR);又はIMGTの付番方式によって定義される、配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);並びに配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、メソテリン及び/又はメソテリン発現細胞を標的とする抗体又はその抗原結合断片であり;
Dは、エリブリンであり;
Lは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含む切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
を有する。
【0143】
一部の実施形態において、メソテリン及び/又はメソテリン発現細胞を標的とする抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン及びヒトIgκ軽鎖定常ドメインを含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含むIgG1重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含むIgκ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0144】
一部の実施形態において、ADCは、式(I):
Ab-(L-D) (I)
(式中、
Abは、抗体又は抗原結合断片であり、抗体又は抗原結合断片は、メソテリンに結合する能力を有し、且つ配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;
Dは、エリブリンであり;
Lは、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABを含む切断可能なリンカーであり;及び
pは、1~8の整数である)
を有する。
【0145】
一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトIgκ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0146】
一部の実施形態において、ADCの抗体又は抗原結合断片は、345A12-HC15-LC4である。一部の実施形態において、pは、1~8である。一部の実施形態において、pは、2又は6である。一部の実施形態において、pは、2である。
【0147】
一部の実施形態において、エリブリン薬物負荷量のレベルが低い(例えば、pが2である)、本明細書に開示されるADC(例えば、本明細書に開示される抗メソテリン抗体及びリンカーを含むもの)は、薬物負荷量のレベルが高い(例えば、pが6である)ADCと同じ又は同様のレベルのエリブリンを癌細胞又は腫瘍組織に送達することができる。一部の実施形態において、薬物負荷量のレベルが低い(例えば、pが2である)ADCは、薬物負荷量のレベルが高い(例えば、pが6である)ADCとほぼ同等の又はそれより優れた腫瘍成長阻害及び/又はインビボ抗癌治療有効性を提供することができる。
【0148】
一部の実施形態において、各エリブリン部分は、切断可能なリンカーによってメソテリン標的化抗体又は抗原結合断片に抗体又は断片上のシステイン残基(例えば、LCcys80)を介してつなぎ合わされる。一部の実施形態において、メソテリン標的化抗体又は抗原結合断片には、例えば、抗体又は抗原結合断片上の2つのシステイン残基を介して合計2つのリンカー-エリブリン部分が結び付いている(即ち、このADCは、DAR2を有することになる)。一部の実施形態において、1つ又は複数のシステイン残基は、LCcys80である。
【0149】
ヒト療法剤、例えば腫瘍学的薬剤として使用するためのADCの開発及び生産には、所望の1つ又は複数の標的に結合する能力及び単独で癌の治療に使用される薬物に結び付く能力を有する抗体を同定するだけではないより多くのことが必要となり得る。抗体を薬物に連結すると、抗体及び薬物の一方又は両方の活性に大きい予測不可能な効果が及ぶこともあり、効果は、抗体並びに/又は選択されるリンカー及び/若しくは薬物の種類に応じて異なることになる。従って、一部の実施形態において、ADCの成分は、(i)抗体及び薬物部分が単独で呈する1つ以上の治療特性が保持され、(ii)抗体部分の特異的結合特性が維持され;(iii)薬物負荷量及び薬物対抗体比が最適化され;(iv)抗体部分との安定した結び付きによる薬物部分の送達、例えば細胞内送達が可能であり;(v)標的部位に輸送又は送達されるまでインタクトなコンジュゲートとしてADCの安定性が保持され;(vi)投与前又は投与後のADCの凝集が最小限となり;(vii)細胞環境における切断後に薬物部分の治療効果、例えば細胞毒性効果が実現し;(viii)抗体及び薬物部分単独と同等であるか又はそれより優れたインビボ抗癌治療有効性を呈し;(ix)薬物部分によるオフターゲット殺傷が最小限となり;及び/又は(x)望ましい薬物動態特性及び薬力学特性、製剤化し易さ及び毒性学的/免疫学的プロファイルを呈するように選択される。治療的使用のための向上したADCの同定には、これらの特性の各々をスクリーニングする必要があり得る(Ab et al.(2015)Mol.Cancer Ther.14:1605-13)。
【0150】
一部の実施形態において、化学療法薬、例えばエリブリンにつなぎ合わされた抗メソテリン抗体又は抗原結合断片を含む、本明細書に開示されるADCは、望ましい特性の特定の組み合わせを実証する。それらの特性としては、限定はされないが、いずれも他の抗体部分を使用したADCと比較したときの、有効な薬物負荷レベル、低い凝集レベル、貯蔵条件下での及び/又は体内で循環中にあるときの安定性(例えば、血清及びマトリックス安定性)、非コンジュゲート化抗体と同等の標的発現細胞に対する親和性の保持、標的発現細胞に対する強力な細胞毒性、高レベルのバイスタンダー殺傷及び/又は有効なインビボ抗癌活性が挙げられる。一部の実施形態において、こうしたコンジュゲートの高い抗癌活性は、抗原発現が中程度の細胞株で試験したときにも見られ、このADCによって送達される毒素ペイロードに対する強力な感受性を実証している。一部の実施形態において、本明細書に開示される抗メソテリン抗体又は抗原結合断片を含むADCは、別の抗体部分を含むADCと比較して、特に有利な抗腫瘍細胞毒性及び/又は効力並びに向上したオフターゲット毒性並びに薬物代謝及び薬物動態(DMPK)プロファイルを呈する。一部の実施形態において、本明細書に開示されるヒト化抗メソテリン抗体とエリブリンとを含むADCは、意外にも、別の抗体部分及び/又はコンジュゲートを含むADCと比較して有利な薬理学的及び毒性学的特性を提供する。
【0151】
本開示のADC化合物は、有効用量の細胞毒性剤又は細胞増殖抑制剤を癌細胞又は腫瘍組織に選択的に送達し得る。一部の実施形態において、ADCの細胞毒性活性及び/又は細胞増殖抑制活性は、細胞の標的抗原発現レベルに依存する。一部の実施形態において、開示されるADCは、同じ抗原を低いレベルで発現する癌細胞と比較して、高いレベルの標的抗原を発現する癌細胞の殺傷に特に有効である。一部の実施形態において、開示されるADCは、同じ抗原を低いレベルで発現する癌細胞と比較して、標的抗原を中程度のレベルで発現する癌細胞の殺傷に特に有効である。
【0152】
例示的なメソテリン高発現癌としては、限定はされないが、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌、明細胞性卵巣癌)、膵癌、中皮腫、子宮内膜癌、非小細胞肺癌(例えば、腺癌)及び結腸直腸癌が挙げられる。例示的な中程度のメソテリン発現の癌としては、限定はされないが、胃癌、胸腺癌及び胆管細胞癌が挙げられる。例示的なメソテリン低発現癌としては、限定はされないが、黒色腫及びリンパ腫が挙げられる。一部の実施形態において、メソテリン発現癌としては、突然変異及び/又は薬剤抵抗性を有する癌、例えばKRAS/STK11変異型肺癌(非小細胞肺腺癌)、例えばPD-1チェックポイント遮断による治療に抵抗性を呈する変異型肺癌を挙げることができる。
【0153】
薬物部分
本明細書に記載されるADCの薬物部分(D)は、任意の化学療法剤であり得る。有用なクラスの化学療法剤としては、例えば、抗チューブリン剤が挙げられる。特定の実施形態において、薬物部分は、抗チューブリン剤である。記載されるADC及び組成物に使用される1つの例示的な薬物部分は、エリブリンである。記載されるADC及び組成物に使用される別の例示的な薬物部分は、エリブリン二量体である。
【0154】
様々な実施形態において、開示されるADCにおいてその天然形態で使用されるエリブリンの構造は、式(II)に示されるとおりである。
【化1】
【0155】
様々な他の実施形態において、開示されるADCにおいて使用されるエリブリンの構造は、米国特許出願公開第20180193478号明細書(これは、全てのエリブリン構造及びそれらの構造の合成方法に関して参照により本明細書に援用される)に示されるとおりである。
【0156】
薬物負荷量
薬物負荷量は、pによって表すことができ、本明細書では薬物対抗体比(DAR)とも称される。薬物負荷量は、例えば、各抗体部分につき1~10個の薬物部分の範囲であり得る。一部の実施形態において、pは、1~10の整数である。一部の実施形態において、pは、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2の整数である。一部の実施形態において、pは、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4又は2~3の整数である。一部の実施形態において、pは、1~8の整数である。一部の実施形態において、pは、1~6の整数である。一部の実施形態において、pは、2~6の整数である。一部の実施形態において、pは、2である。一部の実施形態において、pは、6である。
【0157】
薬物負荷量は、一部の実施形態では、抗体部分にある結び付ける部位の数によって制限され得る。一部の実施形態において、ADCのリンカー部分(L)は、抗体部分にある1つ以上のアミノ酸残基上の化学的に活性な基を通して抗体部分に結び付く。例えば、リンカーは、抗体部分に遊離アミノ、イミノ、ヒドロキシル、チオール又はカルボキシル基を介して(例えば、N末端若しくはC末端、1つ以上のリジン残基のεアミノ基、1つ以上のグルタミン酸若しくはアスパラギン酸残基の遊離カルボン酸基又は1つ以上のシステイン残基のスルフヒドリル基に)結び付けられ得る。リンカーが結び付けられる部位は、抗体部分のアミノ酸配列中の天然残基であり得るか、又はそれは、例えば、DNA組換え技術により(例えば、アミノ酸配列にシステイン残基を導入することにより)又はタンパク質生化学により(例えば、還元、pH調整又は加水分解により)抗体部分に導入され得る。
【0158】
一部の実施形態において、抗体部分にコンジュゲートすることのできる薬物部分の数は、遊離システイン残基の数によって制限される。例えば、システインチオール基で結び付く場合、抗体にあるシステインチオール基は、僅か1個若しくは数個であり得るか、又はそれを通してリンカーが結び付き得る十分に反応性のあるチオール基は、僅か1個若しくは数個であり得る。概して、抗体は、薬物部分に連結し得る、遊離した反応性のあるシステインチオール基を多く含まない。実際、抗体中のほとんどのシステインチオール残基は、鎖間又は鎖内のいずれかのジスルフィド結合に関与する。従って、システインにコンジュゲートするには、一部の実施形態では、抗体を少なくとも部分的に還元する必要があり得る。抗体にリンカー-毒素を過剰に結び付けると、ジスルフィド結合の形成に利用可能なシステイン残基が還元されることにより、抗体が不安定になり得る。従って、一部の実施形態では、薬物:抗体比を最適にすれば、抗体部分が不安定化することなく、ADCの効力が(各抗体に結び付いている薬物部分の数が増加することにより)増加するはずである。一部の実施形態において、最適な比は、2又は6であり得る。一部の実施形態において、最適な比は、2である。
【0159】
一部の実施形態では、1つ以上の部位特異的コンジュゲーション技術を用いることにより、定義付けられた薬物負荷量、即ち定義付けられた薬物対抗体比(DAR)を有する均一なADC生成物が作製される。一部の実施形態では、残基特異的コンジュゲーション技術(RESPECT)により、抗体の軽鎖又は重鎖に部位特異的コンジュゲーションのための遊離システイン残基を作成することができる。RESPECTフォーマット化した抗体の例示的な作成プロトコルについては、Albone et al.(2017)Cancer Biol.Ther.18(5):347-57及び国際公開第2016205618号パンフレット及び同第2017106643号パンフレット(これらの各々は、部位特異的コンジュゲーションの実施方法に関して参照により本明細書に援用される)に記載されている。一部の実施形態において、ADCは、リンカー(例えば、Mal-(PEG)-Val-Cit-pABリンカー)を介して抗体部分を薬物部分に共有結合的に結び付ける部位特異的コンジュゲーションを用いて作製される。一部の実施形態において、エリブリン薬物部分を含むADC又は組成物について約2のDARを目標として、部位特異的コンジュゲーションが用いられる。
【0160】
ヒト定常領域にキメラ化又はヒト化したウサギモノクローナル抗体では、軽鎖内に不対のシステインが生じ、それらの残基がコンジュゲーションに利用可能なまま残り得る(Albone et al.(2017)Cancer Biol.Ther.18(5):347-57;国際公開第2016205618号パンフレット)。一部の実施形態において、部位特異的コンジュゲーションに用いられる抗体部分は、RESPECT-Lフォーマット化抗体である。本明細書には、軽鎖80位に不対のシステイン(LCcys80)を有する例示的RESPECT-Lフォーマット化抗体が記載される。本明細書で使用されるとき、「LCcys80」又は「Cys80」は、Kabatの付番方式による、抗体又は抗原結合断片上の軽鎖可変領域のアミノ酸位置80位におけるシステイン残基を指す。例えば、一部の実施形態では、本明細書に開示される軽鎖可変領域において、LCcys80は、アミノ酸80位に存在する。RESPECT-L誘導体化抗体は、DARが約2のADCをもたらすことができる。一部の実施形態において、約2の薬物負荷量及び/又は平均薬物負荷量は、例えば、部位特異的コンジュゲーションを用いて実現される。
【0161】
医薬組成物
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示される1つ以上の抗体、抗原結合断片、コンジュゲート及び/又はADCと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を更に提供する。一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、少なくとも1つの追加の薬剤を含む。
【0162】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示される抗体、抗原結合断片、コンジュゲート及び/又はADCの複数のコピーを含む医薬組成物を更に提供する。一部の実施形態において、本開示は、本明細書に開示されるADCの複数のコピーを含む医薬組成物を更に提供する。一部の実施形態において、組成物中のADCの平均pは、約1~約8である。一部の実施形態において、組成物中のADCの平均pは、約2又は約6である。一部の実施形態において、組成物中のADCの平均pは、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2又は約2.3である。一部の実施形態において、組成物中のADCの平均pは、約5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4又は6.5である。
【0163】
一部の実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の追加の療法剤、例えばメソテリン発現癌を治療する能力を有する1つ以上の薬剤、ステロイドなどを更に含み得る。
【0164】
治療的使用及び治療方法
本明細書では、障害、例えば腫瘍学的障害に対する対象の治療において、開示される抗体、抗原結合断片、コンジュゲート、ADC及び/又は医薬組成物を使用する方法が開示される。抗体、抗原結合断片、コンジュゲート及び/又はADCは、単独で又は第2の療法剤と組み合わせて投与され得、任意の薬学的に許容可能な製剤、投薬量及び投与レジメンで投与され得る。抗体、抗原結合断片及び/又はADCの治療有効性が毒性並びに有効性指標に関して評価され、それに応じて調整され得る。有効性の尺度としては、限定はされないが、インビトロ又はインビボで観察される細胞増殖抑制効果及び/若しくは細胞毒性効果、腫瘍容積の減少、腫瘍成長阻害並びに/又は生存期間の延長が挙げられる。
【0165】
抗体、抗原結合断片及び/又はADCが細胞に細胞増殖抑制効果及び/又は細胞毒性効果を及ぼすかどうかを決定する方法は、公知である。例えば、抗体、抗原結合断片及び/又はADCの細胞毒性活性又は細胞増殖抑制活性は、抗体、抗原結合断片及び/又はADCの標的タンパク質を発現する哺乳類細胞を細胞培養培地に曝露することと;約6時間~約5日の期間にわたって細胞を培養することと;細胞生存率を測定することとによって測定され得る。細胞ベースのインビトロアッセイは、ADCの生存率(増殖)、細胞毒性及びアポトーシス誘導(カスパーゼ活性化)の測定にも用いることができる。
【0166】
抗体、抗原結合断片及び/又はADCが細胞増殖抑制効果を及ぼすかどうかの決定には、チミジン取込みアッセイが用いられ得る。例えば、標的抗原を発現する癌細胞を96ウェルプレートの1ウェル当たり5,000細胞の密度で72時間の期間にわたって培養し、その72時間の期間の最後の8時間中に0.5μCiの3H-チミジンに曝露することができる。抗体、抗原結合断片及び/又はADCの存在下及び非存在下における培養物の細胞への3H-チミジンの取込みが測定される。
【0167】
細胞毒性の決定のために、壊死又はアポトーシス(プログラム細胞死)が測定され得る。壊死には、典型的には、細胞膜の透過性の増加;細胞の膨張及び細胞膜の破裂が伴う。アポトーシスは、典型的には、膜の小疱形成、細胞質の凝縮及び内因性エンドヌクレアーゼの活性化によって特徴付けられる。癌細胞にこれらの効果のいずれかが決定されれば、それは、癌の治療においてADCが有用であることを示している。
【0168】
細胞生存率は、例えば、ニュートラルレッド、トリパンブルー、クリスタルバイオレット又はALAMAR(商標)ブルーなどの色素の細胞における取込みを決定することにより測定され得る(例えば、Page et al.(1993)Intl.J.Oncology 3:473-6を参照されたい)。かかるアッセイでは、色素を含有する培地で細胞がインキュベートされ、細胞が洗浄され、及び色素の細胞取込みを反映する残存色素が分光光度法で測定される。特定の実施形態において、調製したADCのインビトロ効力及び/又は細胞毒性は、クリスタルバイオレットアッセイを用いて判定される。クリスタルバイオレットは、トリアリールメタン色素であり、生細胞の核に蓄積する。このアッセイでは、細胞は、決められた時間にわたってADC又は対照薬剤に曝露され、その後、細胞は、クリスタルバイオレットで染色され、大量の水で洗浄され、次に1%SDSで可溶化され、分光光度法によって読み取られる。タンパク質結合色素のスルホローダミンB(SRB)も細胞毒性の測定に使用することができる(Skehan et al.(1990)J.Natl.Cancer Inst.82:1107-12)。
【0169】
アポトーシスは、例えば、DNA断片化を測定することによって定量化され得る。DNA断片化をインビトロで定量的に決定するための市販の光度測定方法が利用可能である。かかるアッセイの例は、TUNEL(これは、断片化されたDNA中の標識ヌクレオチドの取込みを検出する)及びELISAベースのアッセイを含めて、Biochemica(1999)No.2,pp.34-37(Roche Molecular Biochemicals)に記載されている。
【0170】
アポトーシスは、細胞の形態学的変化を測定することによっても決定され得る。例えば、壊死と同様に、ある種の色素(例えば、アクリジンオレンジ又は臭化エチジウムなど、例えば蛍光色素)の取込みを測定することにより、細胞膜の完全性の喪失を決定することができる。アポトーシス細胞数の測定方法については、Duke and Cohen,Current Protocols in Immunology(Coligan et al.,eds.(1992)pp.3.17.1-3.17.16)によって記載されている。細胞は、DNA色素(例えば、アクリジンオレンジ、臭化エチジウム又はヨウ化プロピジウム)で標識して、核の内膜に沿ったクロマチン凝縮及び辺縁趨向に関して細胞を観察することもできる。アポトーシスを決定するために測定し得る他の形態学的変化としては、例えば、細胞質凝集、膜の小疱形成の増加及び細胞萎縮が挙げられる。
【0171】
開示されるADCは、バイスタンダー殺傷活性に関しても評価され得る。バイスタンダー殺傷活性は、例えば、1つが標的抗原陽性であり、1つが標的抗原陰性である2つの細胞株を用いるアッセイにより決定され得る。これらの細胞株を標識して、それらを区別し得る。例えば、Nuclight(商標)グリーン(NLG)で標識した標的陽性細胞と、Nuclight(商標)レッド(NLR)で標識した標的陰性細胞とを共培養し、ADCで処理した後、細胞毒性をモニタし得る。標的陽性細胞と混合したときの標的陰性細胞の殺傷は、バイスタンダー殺傷を示す指標となる一方、標的陽性細胞の非存在下での標的陰性細胞の殺傷は、オフターゲット殺傷を示す指標となる。
【0172】
一部の実施形態において、本開示は、チューブリンの破壊によって癌細胞若しくは癌組織を殺傷するか、その成長を阻害若しくは調節するか、又はその代謝に干渉する方法を特徴とする。本方法は、チューブリンの破壊によって治療利益を得る任意の対象で用いることができる。チューブリンの破壊が有益となり得る対象としては、限定はされないが、胃癌、卵巣癌(例えば、上皮性卵巣癌)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、乳癌、子宮内膜癌(例えば、漿液性子宮内膜癌)、骨肉腫、カポジ肉腫、精巣胚細胞癌、頭頸部癌、肝癌、腎癌、尿路上皮癌、子宮癌、胆管癌、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、骨髄腫、頭頸部癌、食道癌、膵癌、前立腺癌、脳癌(例えば、膠芽腫)、甲状腺癌、結腸直腸癌及び/若しくは皮膚癌(例えば、黒色腫)又はこれらの任意の転移を有するか又は有するリスクがある者が挙げられる(Dumontet and Jordan(2010)Nat.Rev.Drug Discov.9:790-803)。
【0173】
様々な実施形態において、開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADCは、メソテリン発現癌細胞又は組織など、メソテリンを発現する任意の細胞又は組織において投与され得る。例示的実施形態には、メソテリン媒介性細胞シグナル伝達を阻害する方法又は細胞を殺傷する方法が含まれる。本方法は、癌性細胞又は転移性病変など、メソテリンを発現する任意の細胞又は組織で用いることができる。メソテリン発現癌の非限定的な例としては、中皮腫、膵癌(例えば、膵臓腺癌)、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌、明細胞性卵巣癌、上皮性卵巣癌)及び肺癌(例えば、非小細胞肺癌、肺腺癌)が挙げられる(Wang et al.(2012)PLoS ONE 7:e33214)。他の例示的メソテリン癌としては、子宮内膜癌、結腸直腸癌、胃癌、白血病、乳癌、子宮頸癌、頭頸部癌、肝癌、前立腺癌、腎癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌及び胆管癌が挙げられる。メソテリン発現細胞の非限定的な例としては、OVCAR3ヒト卵巣癌細胞、HEC-251ヒト類内膜細胞、H226ヒト肺扁平上皮細胞中皮腫細胞及びメソテリン又はその一部分をコードする組換え核酸を含む細胞が挙げられる。
【0174】
例示的方法は、有効量、即ち細胞を殺傷するのに十分な量の、本明細書に記載されるとおりの抗体、抗原結合断片及び/又はADCを細胞に接触させるステップを含む。本方法は、培養下の細胞に対して、例えばインビトロ、インビボ、エキソビボ又はインサイチューで使用することができる。例えば、メソテリンを発現する細胞(例えば、腫瘍又は転移性病変の生検により回収された細胞;樹立癌細胞株からの細胞;又は組換え細胞)を培養培地中でインビトロ培養することができ、接触させるステップは、培養培地に抗体、抗原結合断片及び/又はADCを加えることにより影響を受け得る。本方法は、詳細には、メソテリンを発現する腫瘍細胞を含めた、メソテリンを発現する細胞の殺傷を生じさせることになる。代わりに、抗体、抗原結合断片及び/又はADCは、インビボで効果を及ぼすため、任意の好適な投与経路(例えば、静脈内、皮下又は腫瘍組織との直接的な接触)によって対象に投与することができる。この手法は、他の細胞表面抗原を標的化する抗体及びADCにも用いることができる。
【0175】
開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADC治療用組成物のインビボ効果は、好適な動物モデルで評価することができる。例えば、異種癌モデルを使用し得、ここで、癌外植片又は継代異種移植片組織がヌードマウス又はSCIDマウスなどの免疫不全動物に導入される(Klein et al.(1997)Nature Med.3:402-8)。有効性は、腫瘍形成の阻害、腫瘍退縮又は転移などを測定するアッセイを用いて予測し得る。
【0176】
アポトーシスなどの機構による腫瘍死滅の促進を評価するインビボアッセも用いることができる。一部の実施形態において、治療用組成物で治療された腫瘍担持マウスからの異種移植片をアポトーシスフォーカスの存在に関して調べ、未治療の対照異種移植片担持マウスと比較することができる。治療したマウスの腫瘍にアポトーシスフォーカスがどの程度見られるかは、組成物の治療有効性の指標を与える。
【0177】
更に、本明細書では、癌の治療方法が提供される。本明細書に開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADCは、治療目的で非ヒト哺乳類又はヒト対象に投与することができる。治療的方法は、腫瘍を有する哺乳類に、癌細胞表面に発現する抗原に結合するか、それに結合するために接触可能であるか、又はそこに局在化する抗体、抗原結合断片及び/又はターゲティング抗体に連結したエリブリンを含むADCの生物学的に有効な量を投与することを伴う。
【0178】
例示的実施形態は、メソテリンを発現する細胞にエリブリンを送達する方法であって、メソテリンエピトープに免疫特異的に結合する抗体にエリブリンをコンジュゲートすることと、細胞を抗体、抗原結合断片及び/又はADCに曝露することとを含む方法である。本開示の抗体、抗原結合断片及び/又はADCが適応となるメソテリンを発現する例示的腫瘍細胞としては、卵巣癌細胞、類内膜細胞及び肺扁平上皮細胞中皮腫細胞が挙げられる。
【0179】
別の例示的実施形態は、標的抗原発現腫瘍(例えば、メソテリン発現腫瘍)の成長を低減又は阻害する方法であって、治療有効量の抗体、抗原結合断片及び/又はADCを投与することを含む方法である。一部の実施形態において、治療は、患者の腫瘍の成長を低減又は阻害し、転移性病変の数又はサイズを低減し、腫瘍負荷を低減し、原発腫瘍負荷を低減し、侵襲性を低減し、生存期間を延長させ、且つ/又はクオリティオブライフを維持するか若しくは向上させるのに十分である。一部の実施形態において、腫瘍は、単独投与時のADCの抗体又は抗原結合部分による治療に抵抗性又は難治性であり、及び/又は腫瘍は、単独投与時のエリブリンによる治療に抵抗性又は難治性である。
【0180】
更に、本開示の抗体は、獣医学的目的のため又はヒト疾患の動物モデルとして、メソテリンを発現する非ヒト哺乳類に投与され得る。後者に関して、かかる動物モデルは、開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADCの治療有効性の評価(例えば、投薬量及び投与の時間経過の試験)に有用であり得る。
【0181】
更に、本明細書では、開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADCの治療的使用が提供される。例示的実施形態は、標的抗原発現癌(例えば、メソテリン発現癌)の治療における抗体、抗原結合断片及び/又はADCの使用であり、それが開示される。標的抗原(例えば、メソテリン)を発現する癌を有する対象の同定方法は、当技術分野において公知であり、開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADCによる治療に好適な患者を同定するために用いられ得る。
【0182】
別の例示的実施形態は、標的抗原発現癌(例えば、メソテリン発現癌)の治療用医薬品の製造方法における抗体、抗原結合断片及び/又はADCの使用である。
【0183】
前述の方法の実施において使用される治療用組成物は、所望の送達方法に好適な薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に製剤化され得る。例示的実施形態は、本開示の抗体、抗原結合断片及び/又はADCと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物である。好適な担体には、治療用組成物と組み合わせたとき、治療用組成物の抗腫瘍機能を保持し、且つ概して患者の免疫系と反応しない任意の材料が含まれる。
【0184】
薬学的に許容可能な担体には、生理的に適合性のあるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容可能な担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、メシル酸塩などの1つ以上並びにこれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、組成物中には、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール類又は塩化ナトリウムが含まれる。薬学的に許容可能な担体は、湿潤剤又は乳化剤、保存剤又は緩衝剤など、ADCの保存期間又は有効性を亢進させる少量の補助物質を更に含み得る。
【0185】
治療用製剤は、可溶化され、その治療用組成物を腫瘍部位に送達可能な任意の経路によって投与され得る。潜在的に有効な投与経路としては、限定はされないが、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮内、臓器内、同所性などが挙げられる。治療用タンパク質調製液は凍結乾燥し、滅菌粉末として例えば真空下で保存し、次に注射前に静菌水中(例えば、ベンジルアルコール保存剤を含有する)又は滅菌水中に再構成することができる。治療用製剤は、抗体、抗原結合断片及び/又はADC又はその薬学的に許容可能な塩、例えばメシル酸塩を含み得る。
【0186】
本明細書に開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADCは、それを必要としている患者に対して、約0.2mg/kg~約10mg/kgの範囲の投薬量で投与され得る。一部の実施形態において、抗体、抗原結合断片及び/又はADCは、連日、隔月又はその間の任意の期間で患者に投与される。前述の方法を用いた癌治療のための投薬量及び投与プロトコルは、方法及び標的の癌によって異なることになり、概して当技術分野で認められている幾つもの他の要因に依存することになる。
【0187】
様々な送達システムが公知であり、本開示の1つ以上の抗体、抗原結合断片及び/又はADCの投与に用いることができる。抗体、抗原結合断片及び/又はADCの投与方法としては、限定はされないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与及び粘膜投与(例えば、鼻腔内及び経口経路)が挙げられる。加えて、例えば、インへラー又は噴霧器及びエアロゾル化剤を含む製剤の使用による肺内投与が用いられ得る。例えば、米国特許第6,019,968号明細書、同第5,985,320号明細書、同第5,985,309号明細書、同第5,934,272号明細書、同第5,874,064号明細書、同第5,855,913号明細書、同第5,290,540号明細書及び同第4,880,078号明細書;並びに国際公開第1992/019244号パンフレット、同第1997/032572号パンフレット、同第1997/044013号パンフレット、同第1998/031346号パンフレット及び同第1999/066903号パンフレットに記載される肺内投与のための組成物及び方法を参照されたい。ADCは、任意の好都合な経路、例えば注入若しくはボーラス注射によるか、又は上皮若しくは皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)からの吸収により投与され得る。投与は、全身投与又は局所投与のいずれでもあり得る。
【0188】
本明細書に開示される治療用組成物は、無菌であり、且つ製造及び貯蔵条件下で安定しているものであり得る。一部の実施形態において、抗体、抗原結合断片及び/若しくはADC又は医薬組成物の1つ以上は、乾燥滅菌凍結乾燥粉末又は水分を含まない濃縮物としてハーメチックシール容器に供給され、これは、対象への投与に際して適切な濃度となるように(例えば、水又は生理食塩水で)再構成することができる。一部の実施形態において、予防用又は治療用薬剤又は医薬組成物の1つ以上は、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg若しくは少なくとも100mg又はその間の任意の量の単位投薬量の乾燥滅菌凍結乾燥粉末としてハーメチックシール容器に供給される。一部の実施形態において、凍結乾燥した抗体、抗原結合断片及び/又はADC又は医薬組成物は、当初の容器に2℃~8℃で保存される。一部の実施形態において、本明細書に記載される抗体、抗原結合断片及び/又はADC又は医薬組成物の1つ以上は、ハーメチックシール容器、例えば薬剤の分量及び濃度を表示する容器に液体形態で供給される。一部の実施形態において、ハーメチックシール容器には、少なくとも0.25mg/mL、少なくとも0.5mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも2.5mg/mL、少なくとも5mg/mL、少なくとも8mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも15mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも75mg/mL又は少なくとも100mg/mL ADCの投与される組成物の液体形態が供給される。液体形態は、当初の容器に2℃~8℃で保存され得る。
【0189】
一部の実施形態において、開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADCは、非経口投与に好適な医薬組成物に取り込むことができる。注射用溶液は、フリント若しくはアンバーバイアル、アンプル又はプレフィルドシリンジ或いは他の公知の送達又は保存装置内にある液体又は凍結乾燥のいずれかの投薬形態で構成され得る。
【0190】
本明細書に記載される組成物は、種々の形態であり得る。それらとしては、例えば、液体、半固体及び固体投薬形態、例えば液体溶液(例えば、注射用及び注入用溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸薬、散剤、リポソーム及び坐薬などが挙げられる。形態は、意図される投与様式及び治療上の適用に依存する。
【0191】
様々な実施形態において、治療は、許容可能な投与経路による抗体、抗原結合断片及び/又はADC製剤の単回ボーラス又は反復投与を含む。
【0192】
最も有効な投与レジメンの決定を促進する等のため、所与の試料中の標的抗原レベル(例えば標的抗原発現細胞レベル)に関して患者が評価され得る。例示的実施形態は、本開示の抗体、抗原結合断片及び/又はADCによる治療が患者に反応することになるかどうかを決定する方法であって、患者からの生体試料を提供することと、生体試料に抗体、抗原結合断片及び/又はADCを接触させることとを含む方法である。例示的生体試料としては、炎症性滲出物、血液、血清、腸液、便試料又は腫瘍生検(例えば、標的抗原発現癌、例えばメソテリン発現癌を有するか又はそのリスクがある患者に由来する腫瘍生検)などの組織又は体液が挙げられる。一部の実施形態において、対象から試料(例えば、組織及び/又は体液)を入手することができ、好適な免疫学的方法を用いて標的抗原(例えば、メソテリン)のタンパク質発現を検出及び/又は測定することができる。かかる評価は、療法全体を通したモニタリングのためにも用いられ、他のパラメータの評価と組み合わせて療法の成功を判断するのに有用である。
【0193】
一部の実施形態において、抗体、抗原結合断片及び/又はADCの有効性の評価は、対象からの腫瘍試料に抗体、抗原結合断片及び/又はADCを接触させることと、腫瘍成長速度又は容積を評価することとにより得る。一部の実施形態において、抗体、抗原結合断片及び/又はADCが有効であると決定された場合、それを対象に投与し得る。
【0194】
上記の治療手法は、多様な追加の手術、化学療法又は放射線療法レジメンのいずれか1つと組み合わせることができる。一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADC又は組成物は、1つ以上の追加の療法剤、例えば1つ以上の化学療法剤と共製剤化及び/又は共投与される。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、エチレンイミン化合物及びスルホン酸アルキル;代謝拮抗薬、例えば葉酸、プリン又はピリミジン拮抗薬;抗有糸分裂剤、例えばエリブリン又はエリブリンメシレート(Halaven(商標))、ビンカアルカロイド類及びアウリスタチン類などの抗チューブリン剤;細胞毒性抗生物質;DNA発現又は複製に損傷を与えるか又はそれに干渉する化合物、例えばDNA副溝結合剤;及び成長因子受容体拮抗薬が挙げられる。一部の実施形態において、化学療法剤は、細胞毒性剤又は細胞増殖抑制剤であり得る。細胞毒性剤の例としては、限定はされないが、エリブリン又はエリブリンメシレート(Halaven(商標))、アウリスタチン類(例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF))、メイタンシノイド類(例えば、メイタンシン)、ドラスタチン類、デュオスタチン類、クリプトフィシン類、ビンカアルカロイド類(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン)、タキサン類、タキソール類及びコルヒチン類などの抗有糸分裂剤;アントラサイクリン類(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン);細胞毒性抗生物質(例えば、マイトマイシン類、アクチノマイシン類、デュオカルマイシン類(例えば、CC-1065)、オーレオマイシン類、デュオマイシン類、カリケアマイシン類、エンドマイシン類、フェノマイシン類);アルキル化剤(例えば、シスプラチン);インターカレート剤(例えば、臭化エチジウム);トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、エトポシド、テニポシド);At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212又は213、P32などの放射性同位体及びルテチウムの放射性同位体(例えば、Lu177);及び細菌、真菌、植物又は動物起源の毒素(例えば、リシン(例えば、リシンA鎖)、ジフテリア毒素、シュードモナス属(Pseudomonas)外毒素A(例えば、PE40)、エンドトキシン、ミトゲリン、コンブレスタチン、レストリクトシン、ゲロニン、αサルシン、アブリン(例えば、アブリンA鎖)、モデシン(例えば、モデシンA鎖)、クリシン、クロチン、サボンソウ(Saponaria officinalis)阻害薬、グルココルチコイド)が挙げられる。
【0195】
また、本明細書では、例えば、上記に記載される方法に係る癌の治療用医薬品の製造における開示される抗体、抗原結合断片及び/又はADCの1つ以上の使用も開示される。一部の実施形態において、本明細書に開示されるADCは、例えば、上記に記載される方法に係る癌の治療に使用される。
【0196】
様々な実施形態において、本明細書に記載される臨床検査及び治療適用における使用のためのキットは、本開示の範囲内にある。かかるキットは、バイアル、チューブなどの1つ以上の容器であって、その各々が本明細書に開示される方法で使用される別個の要素の1つを含む容器を受けるように区画化されている運搬手段、パッケージ又は容器を、本明細書に記載される使用など、使用に関する説明書を含む表示又は添付文書と共に含み得る。キットは、薬物部分を含む容器を含み得る。本開示は、薬剤の分量を表示するアンプル又はサシェットなどのハーメチックシール容器にパッケージングされた抗体、抗原結合断片及び/又はADCの1つ以上又はその医薬組成物も提供する。
【0197】
キットは、上記に記載される容器と、それに関連する1つ以上の他の容器であって、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ;内容物を列挙する運搬手段、パッケージ、容器、バイアル及び/又はチューブの表示及び/又は使用説明書並びに使用説明書を含む添付文書を含めた、商業的観点及び使用者の観点から望ましい材料を含む容器とを含み得る。
【0198】
本組成物が特定の治療法又は予後判定、予防、診断若しくは臨床検査適用などの非治療適用に使用されることを指示するため、容器上又は容器と共に表示が存在し得る。表示は、本明細書に記載されるものなど、インビボ又はインビトロのいずれかの使用についての指図も指示し得る。指図及び/又は他の情報は、キットと共に又はキット上に含まれる1つ若しくは複数の添付文書又は1つ若しくは複数の表示にも含まれ得る。表示は、容器上にあるか又はそれに付随し得る。表示は、表示を形成する英字、数字又は他の文字が容器自体に成形又はエッチングされているとき、容器上にあるとし得る。表示は、それが同時に容器も保持する入れ物又は運搬手段内に例えば添付文書として存在するとき、容器に付随するとし得る。表示は、本組成物が本明細書に記載される癌などの病態の診断又は治療に使用されることを指示し得る。
【0199】
本明細書に記載される本発明の方法の他の好適な変形形態及び適合形態は、当業者に自明であり、本明細書に開示される本発明又は実施形態の範囲から逸脱することなく、好適な均等物を用いてなされ得ることが容易に理解されるであろう。ここで、本発明を詳細に記載したが、あくまでも説明のために含まれる、限定することを意図しない以下の例を参照することにより、それが更に明確に理解されるであろう。
【実施例
【0200】
実施例1:ヒトメソテリンに対するキメラ抗体作成
以下に記載する手順に従い、ウサギ及びヒト免疫グロブリン配列を含有するキメラ抗体を作成した。抗体をヒトメソテリンへの結合及びエピトープ結合に関して分析した。様々なレベルのメソテリンを発現するヒト細胞株において、これらの組換えキメラ抗メソテリン抗体の初期ADC細胞毒性を評価した。ヒト化及びADC開発のためのリード抗体については、実施例2~3に記載する。
【0201】
1.1 試薬及び材料
1.1.1 抗体
以下の研究で使用した抗体は、ウサギ-ヒトキメラ(-xi)形態の抗ヒトメソテリン抗体であり、軽鎖80位(LCcys80)に不対のシステインを有する。この抗体を以下の第1.5節に記載するとおり精製し、脱システイン化した。最終的なタンパク質含量は、BCAアッセイ及びSDS-PAGEにより判定した。
【0202】
1.1.2 コンジュゲーション可能な細胞毒及びLCcys80 ADC
以下の研究で使用したリンカー-細胞毒化合物には、Mal-PEG-アウリスタチンFが含まれる。抗体をMal-PEG-アウリスタチンFと1:5(mAb:ペイロード)のモル比でコンジュゲートした。コンジュゲートしたLCcys80抗体を、ランニング緩衝液として1×DPBSを使用した、AKTA FPLC上の2×5mL HiTrap脱塩カラム(GE Healthcare)による脱塩クロマトグラフィーを用いて精製した。最終的なタンパク質含量は、BCAアッセイにより決定した。
【0203】
1.1.3 腫瘍細胞株
ウサギ-ヒトキメラADCの分析に使用したヒト腫瘍細胞株には、A431-K5(ヒトメソテリンを安定にトランスフェクトしたヒトメラノーマ細胞A431、MSLNhi)、A431(MSLNlo)及びOVCAR3(ヒト卵巣癌、MSLNhi)が含まれた。A431-K5細胞は、国立癌研究所(National Cancer Institute)から入手した。使用した細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から直接入手した。
【0204】
1.1.4 他の試薬
使用した試薬の全ては、特に指示されない限り、供給業者から研究グレード以上で入手した。
【0205】
1.2 ウサギにおけるヒトメソテリンに対する抗体の作成
ベクターp0301からのヒトメソテリンcDNAをAldevron発現ベクターにクローニングした(pB8-メソテリン-hum)。次に、2羽のウサギをこの免疫ベクターpB8-メソテリン-ヒトで免疫した。4回の遺伝子適用後、免疫プロトコルの52日目に免疫血清を採取した。1%BSAを含有するPBS中にウサギ免疫血清を1:1000又は1:5000希釈し、Aldevron発現ベクターにクローニングしたヒトメソテリンcDNA(pB1-メソテリン-hum)を、予め一過性にトランスフェクトした哺乳類細胞及び同じベクターにクローニングした無関係のcDNAを一過性にトランスフェクトした哺乳類細胞を使用したフローサイトメトリーによって試験した。次に、10μg/mLヤギ抗ウサギIgG R-フィコエリトリン(Southern Biotech、#4030-09)で免疫血清から抗体を検出した。免疫化、フローサイトメトリー及び細胞の凍結保存は、Aldevron(Dreiburg、独国)によって実施された。
【0206】
1.3 抗メソテリン抗体を産生する培養物のハイスループットスクリーニング
1.3.1 細胞培養
凍結保存したウサギリンパ節細胞(2.0×10細胞)を解凍し、次に2.5μg/mLのヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)由来レクチンで活性化し、DNアーゼIによって37℃、5%COで1時間回復させた。細胞を384ウェルプレートに各ウェル5細胞でフィーダー細胞(ウサギCD154を発現するCHO)と共に播種し、10.5ng/mLヒトIL2及び10.5ng/mLヒトIL21サイトカイン(PeproTech)を含有する完全IMDM(10%FBS、2mM L-グルタミン、1×MEM NEAA、1mMピルビン酸ナトリウム、50U/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン、55μM 2-Meを補足したIMDM)で培養した。
【0207】
1.3.2 ヒトメソテリンに対するウサギIgG及びポリクローナル抗体の単離
2週目に、ユウロピウムクリプテートを使用したIgG FRETにより、ウサギIgG抗体を産生するウェルを同定した。IgGを産生するウェルについて、1μg/mLのCHO-MT40メソテリンをコートしたプレートに対するELISAにより、ウサギIgG Fcγ抗体の存在に関してスクリーニングした。メソテリン特異的ウサギIgGを産生する培養物が1μg/mLのメソテリンに対するELISAスクリーニングによって確認され、それらを1μg/mLのCD73-hisに対してカウンタースクリーニングした。FRET及びELISAは、Biomek(登録商標)FXロボットシステム(Beckman)で実施した。
【0208】
1.3.3 ヒトメソテリンに対するウサギ抗体のmRNA遺伝子レスキュー
RNAqueous(商標)-96全RNA単離キット(Ambion)を使用して、ウサギIgG抗メソテリン抗体を産生するウェルから全RNAを単離した。cDNAを合成し、インハウスのプライマー(表11)を用いるPlatinum TaqワンステップRT-PCRキット(Invitrogen)を使用したPCRにより、軽鎖及び重鎖可変領域を増幅した。この軽鎖及び重鎖可変領域を、Platinum Taq増幅キット及びサーモサイクラー(40サイクル、94℃1分、54℃1分、68℃1.5分)を使用してネステッドプライマー(表12)で増幅した。増幅したDNA鋳型をゲル電気泳動によって視覚化し、QIAquick 96 PCR精製キット(Qiagen)によって精製し、及びGeneWiz(South Plainfield、NJ)によってインハウスのプライマー(表13)を用いてDNA配列が決定された。V遺伝子及びJ遺伝子ウサギファミリー(IMGT/V-QUEST)並びにインハウスのIn-Fusionプライマーデータベース(Blastn)に対して、DNA配列を分析した。V及びJ遺伝子プライマーのために5’末端に付加されるヒトFcリンカーを含有するIn-Fusionプライマー(表14)は、同定するか又は設計するかのいずれかであった。プライマーは、IDT(Coralville、IA)によって合成された。
【0209】
【表12】
【0210】
【表13】
【0211】
【表14】
【0212】
【表15】
【0213】
1.3.4 PCR断片
PCR増幅した可変ドメインは、5’末端及び3’末端において、サブクローニングベクター内にあるクローニング部位と相同な15塩基対を含んだ。In-Fusion HDクローニングキット(Clontech)を製造者のプロトコルに従って使用して、ヒトγ(p1974 pC+75IZ-ldr-InFusion-hugamma)又はκ定常領域(p1975 pC+75IB-ldr-InFusion-hukappa)を含有する発現プラスミドにPCR断片をサブクローニングした。1μLのIn-Fusion反応物を製造者のプロトコルに従ってStellarコンピテント細胞(Clontech)に形質転換した。形質転換体をマイクロタイタープレート振盪機上で1mL TB培地(Teknova)中37℃で一晩成長させた。翌日、epMotion 5075を製造者のプロトコルに従って使用して、QIAprep 96 Turboミニプレップキット(Qiagen)で培養物をミニプレップした。
【0214】
1.3.5 遺伝子合成断片
ヒト化重鎖及び軽鎖可変ドメインをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における発現のためにコドン最適化し、これがGeneArtによって合成された。これらの可変ドメインは、コザック翻訳開始配列及びIg分泌リーダー配列と共に合成し、5’末端及び3’末端において、サブクローニングベクター内にあるクローニング部位と相同な15塩基対を含んだ。GeneArtによって合成されたPCR断片を、InFusion HDクローニングキット(Clontech)を使用して、ヒトγ(p1974 pC+75IZ-ldr-InFusion-hugamma)又はκ定常領域(p1975 pC+75IB-ldr-InFusion-hukappa)を含有する発現プラスミドにサブクローニングした。クローンは、全てシーケンシングして挿入物の存在及び忠実度を確認した。
【0215】
1.4 一過性mAb産生
1.4.1 HEK細胞
ExpiFectamine(ThermoFisher)でトランスフェクトする3×10細胞の1ミリリットルにつき、333.3ng HCプラスミド及び333.3ng LCプラスミドを50μL Opti-MEM(ThermoFisher)中で5~10分間インキュベートした。同様に、2.67μL ExpiFectamineを50μL Opti-MEM中でインキュベートした。このDNA混合物にExpiFectamine溶液を追加し、室温で20~30分間インキュベートした。DNA:ExpiFectamine混合物をかき混ぜながら細胞に加え、37℃、8%COで、125rpmで振盪してインキュベートした。翌日、このトランスフェクションに細胞1mL当たり5μLのエンハンサー1及び50μLのエンハンサー2を加え、インキュベーションを更に7~10日間継続した。48~72時間後、10g/LのYeastolate(BD Biosciences)、5mM吉草酸(Sigma-Aldrich)及び1:100のCD脂質濃縮物(ThermoFisher)当たり10gの最終濃度の細胞を供給した。
【0216】
1.4.2 CHO細胞
ExpiFectamine CHO(ThermoFisher)でトランスフェクトする6×10細胞の1ミリリットルにつき、500ng HCプラスミド及び500ng LCプラスミドをOpti-PRO(ThermoFisher)中に40μLの総容積として混合した。同様に、3.2μL ExpiFectamine CHOを36.8μL Opti-PRO中に混合した。このDNA混合物にExpiFectamine CHO溶液を加え、室温で1~5分間インキュベーションした。DNA:ExpiFectamine CHO混合物をかき混ぜながら細胞に加え、37℃、8%COで、125rpmで振盪してインキュベートした。翌日、このトランスフェクションに細胞1mL当たり6μLのエンハンサー及び160μLのフィードを加え、細胞を32℃、5%COに移した。5日目、細胞1mL当たり160μLの追加のフィードを加えた。12~14日目、上清を回収した。
【0217】
1.5 mAb精製及び脱システイン化
1.5.1 抗体精製
Prosep-vA High CapacityプロテインA樹脂(Millipore)をDPBSで平衡化させて、2mLの試料に50μLを加えた。室温で1時間インキュベートした後、フィルタプレートに培地及び樹脂を加え、1mL DPBSで2回洗浄した。400μL 0.1Mグリシン、pH2.9を加えることにより、樹脂から試料を溶出させた後、続いて15,000×gで30秒間遠心した。20μLの1Mトリス、pH8.0で試料を中和した。0.5mL Amicon Ultra、10kカットオフフィルタ(Millipore)を用いて15,000×gで5分間遠心することにより試料を約100μLに濃縮し、0.5mL Zeba脱塩カラム、7K MWCOを製造者のプロトコルに従って使用してDPBSで緩衝液交換した。AU280を測定することによりmAb濃度を決定し、mAbの消衰係数を用いてmg/mLに変換した。
【0218】
1.5.2 システインキャップ除去
AKTA Xpress精製プラットフォーム(GE Healthcare)を使用して精製を実施した。20mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.0で平衡化させた5mL MabSelectカラム(GE Healthcare)に最大1Lまでの馴化培地をロードした。ロードした後、安定したベースラインが観察されるまで、カラムを大量の平衡化緩衝液で洗浄した。結合した材料を、100mMグリシン、pH2.9を用いて溶出させた。溶出した材料を、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化させた26/10 HiPrep脱塩カラム(GE Healthcare)に直ちに注入し、同じ緩衝液中に溶出させた。ピーク画分をプールした。BCAアッセイ(ThermoFisher)並びに還元及び非還元SDS-PAGEによる電気泳動法によって材料のタンパク質含量を分析した。
【0219】
1.6 ADC開発のための組換えキメラ抗メソテリン抗体の初期スクリーニング及び特徴付け
抗メソテリン抗体を一過性に発現させて、96ディープウェルプレートでExpi-293培地を使用して培養した。上清から抗体を精製し、上記に記載したとおり脱システイン化した。Mal-PEG-アウリスタチンFをペイロードとして使用して、1:5(mAb:ペイロード)のモル比を用いて抗体をコンジュゲートした。コンジュゲートした抗体をThermo Zebaスピン脱塩プレートを使用して脱塩することにより、余分な遊離ペイロードを除去した。
【0220】
1.7 結合の特徴付け
1.7.1 Octetを使用した抗メソテリンエピトープビニング
初めに、カスタマイズした結合アッセイを用いて、ストレプトアビジンチップでOctetを使用して、メソテリンに対する抗体結合エピトープを特徴付けた。抗メソテリン抗体のエピトープ結合は、公知の抗メソテリン抗体、MORAb-009(アマツキシマブ)が結合するエピトープに対して正規化した。MORAb-009と同じ、近い又は異なるエピトープに対するその結合に基づいて抗体をグループ化した。全ての抗体が異なるエピトープビニングとつながるまで、ステップを繰り返した。Octetの結果に基づき、結合親和性を、高い、中程度及び低いとして順位付けした。結合ステップは、全て0.2%BSAを含有するPBST緩衝液中で実行した。
【0221】
1.7.2表面プラズモン共鳴(BIAcore)結合分析
メソテリンに対する抗メソテリン抗体結合親和性をBIAcore(BIAcore T-100、GE healthcare、#1426075)により、S CM5シリーズのチップを使用して測定した。1×HBS-P+緩衝液(GE Healthcare)で抗体濃度を1μg/mLに、且つメソテリン(50μg)を100nMに調整した。製造者のプロトコルに従い、固定化ウィザードでCM5チップを使用して抗ヒト抗体捕捉チップを調製した。最終的な捕捉抗体レベルは、HBS-P+中、8000~9000RUであった。チップは、300秒の緩衝液注入と、続く30秒の再生のサイクルを5回、いずれも全4フローセルにわたって30μL/分で行うアッセイのために調製した。個々のリガンド溶液を10μL/分で90秒間順次注入することにより、抗体がフローセル2~4に捕捉された。分析物の注入は、分析物溶液を低濃度から高濃度に順次、30μL/分で各240秒間注入することによる単一サイクル反応速度方式で行った。検出は、2-1、3-1、4-1であった。一連の同一のリガンド捕捉注入と、続く5回の各240秒間の緩衝液単独注入、1800秒間の解離及び上記のとおりの再生による二重参照法を実施した。リガンドは、全てメソテリンへの結合に関してデュプリケートで分析した。反応速度解析は、BIAEvaluationsソフトウェアを使用して、1:1ラングミュア当てはめモデルを用いて実施した。デュプリケートランからオン速度、オフ速度及び親和性定数の平均を求めた。
【0222】
1.8 インビトロ細胞毒性分析
A431、A431-K5及びOVCAR3細胞を継代培養し、96ウェル組織培養プレート内の完全成長培地に5,000細胞/ウェルで播種し、37℃、5%COで一晩(16時間)インキュベートした。2mLディープウェル希釈プレートに、試験試薬を200nMから出発して1:3段階希釈した(合計10点の希釈)。希釈した試料(100μL)を細胞プレートに加えた(試験試料の出発濃度100nM)。プレートを37℃、5%COで更に5日間インキュベートした。次に、培地を廃棄し、プレートを200μL DPBSで1回洗浄し、50μLの0.2%クリスタルバイオレット溶液によって室温で15分間染色し、次に大量の水道水で洗浄した。プレートを風乾させて、クリスタルバイオレットを200μLの1%SDS溶液で溶解した。プレートを570nmで読み取った。データは、GraphPad Prism 6を使用して分析した。
【0223】
1.9 結果
1.9.1 ウサギの免疫化
2羽のウサギをプラスミドpB8-メソテリン-ヒトで4回の遺伝子適用にわたってDNA免疫した。免疫化プロトコルの52日目に免疫血清を採取し、1%BSAを含有するPBS中に1:1000又は1:5000希釈し、メソテリン発現細胞を使用したフローサイトメトリーによって試験した。いずれの免疫ウサギからの血清も、pB1-メソテリン-huをトランスフェクトした細胞であるメソテリン発現細胞に結合した(図1、下の曲線)。逆に、免疫ウサギからの血清は、無関係のcDNAをトランスフェクトした細胞に結合しなかった(図1、上の曲線)。
【0224】
1.9.2 ヒトメソテリンに対するウサギポリクローナル抗体を産生する培養物のハイスループットスクリーニング
ウサギリンパ節細胞を回収し、凍結保存した。解凍したリンパ節からの細胞(2×10細胞)を384ウェルプレートに各ウェル5細胞でフィーダー細胞と共に播種し、10.5ng/mLヒトIL-2及び10.5ng/mLヒトIL-21サイトカインを含有する完全IMDMで培養した。播種から2週間後、ユウロピウムクリプテートを使用したIgG FRETにより、ウサギIgG抗体を産生するウェルを同定し、18,715個のIgG産生培養物について、ELISAによりヒトメソテリン反応性に関してスクリーニングした。85個のメソテリン特異的培養物がメソテリンに対する反応性に関して再確認され、それらをヒトCD73への反応性に対してカウンタースクリーニングした。ウサギFcγ抗体を産生する培養物で、CD73との交差反応性のない、0.2を上回るOD450でメソテリンに結合したことが確認されたものは、54個あった(図2)。一次ELISA結果は、最も右側の一連のバーによって示され、二次ELISA結果は、最も左側の一連のバーによって示され、及びヒトCD73結合は、中央の一連のバーによって示される。
【0225】
1.9.3 可変領域のRT-PCR、シーケンシング及びクローニング
ウサギIgG抗メソテリン抗体を産生する54個の確認された培養物から全RNAを単離し、RT-PCRによってcDNAを合成し、軽鎖及び重鎖可変領域をPCR増幅した。V遺伝子及びJ遺伝子ウサギファミリー(IMGT/V-QUEST)を使用して52個のDNA配列を分析し、定常領域発現ベクターへのIn-Fusionクローニングに特異的なプライマーで51個をPCR増幅した(図3)。合計48個の抗体をヒト定常領域発現ベクターにクローニングし、続いてexpi293F細胞にトランスフェクトした。51個のトランスフェクタントのうちの45個に抗体が検出され(図4)、ウサギ可変領域をヒト定常領域発現ベクターにIn-Fusionクローニングした。
【0226】
1.9.4 メソテリン発現細胞に対するADCの初期スクリーニング
第1.5節に記載した方法に従ってキメラウサギ抗ヒトメソテリン(rb-hu-xi抗MSLN)抗体を精製した。精製抗体のタンパク質濃度を決定した(図5)。ADC開発のための抗メソテリン抗体のスクリーニングを完了するため、抗メソテリン抗体とMal-PEGアウリスタチンFのマイクロコンジュゲーションを実施し、OVCAR3、A431-K5及びA431細胞株を使用してインビトロ細胞ベースの効力アッセイでADCを特徴付け、ここで、OVCAR3及びA431-K5は、高レベルのメソテリンを発現し、A431(MSLN)は、ADCのオフターゲット殺傷及び特異性の評価のための対照細胞株として使用した(図6)。
【0227】
1.9.5 抗メソテリン抗体のエピトープ結合
48個の抗メソテリン抗体のメソテリンに対する結合エピトープについて、第1.7.1節に指示するとおりOctetを用いて特徴付けた。これらの抗体について6個の異なるエピトープが同定され、Octetによれば、102A6は現行のフォーマットでは結合がないことが観察された(図7)。メソテリンに対する抗体結合親和性について、第1.7.2節に指示するとおりBIAcoreにより測定した。結合親和性結果を表15にまとめる。
【0228】
【表16】
【0229】
上記の結果に基づき、スケールアップコンジュゲーション及び特徴付けに、表16に指示するとおりの、全てのエピトープビンを網羅する15個の抗体を選択した。102A6Aも、アウリスタチンFにコンジュゲートしたときの有利なインビトロ効力に基づいて選択した。
【0230】
【表17】
【0231】
実施例2:抗メソテリンADCのヒト化
以下に記載する手順に従い、ヒト化抗メソテリン抗体を作成した。抗体及びADCについて、ヒトメソテリンに対する結合活性の保持及びメソテリンを発現する細胞に対する細胞殺傷効力を分析した。抗体は、薬物負荷量、凝集、熱安定性並びに血清及びマトリックス安定性に関しても生物物理学的に特徴付けた。リードヒト化抗体及びADCは、実施例3に記載されるとおりインビボで評価した。
【0232】
2.1 試薬及び材料
2.1.1 抗体
以下の研究で使用した抗体は、軽鎖80位に不対のシステイン(LCcys80)を有し、ウサギ-ヒトキメラ(-xi)形態及びヒト化(-zu)形態の両方の抗ヒトメソテリン抗体33O11、201C15、111B10、324O5、178F16、264E24、237N18、383I18、393L14、346C6、62B10、55B4、MORAb009、120N18、345A12及び102A6A2を含む。Prosep-vA High CapacityプロテインA樹脂及びZeba脱塩カラムを使用して、これらの抗体をバッチ精製した。馴化培地を精製し、第1.5節(実施例1)に記載されるとおり脱システイン化した。最終的なタンパク質含量は、BCAアッセイ及びSDS-PAGEにより判定した。
【0233】
2.1.2 コンジュゲーション可能な細胞毒及びLCcys80 ADC
以下の研究で使用したリンカー-細胞毒化合物には、マレイミド-VCP-エリブリン、マレイミド-VCP-クリプトフィシン及びマレイミド-VCP-エリブリン二量体が含まれる。1×DPBSで平衡化させたHiTrap脱塩カラム(GE Healthcare)による脱塩クロマトグラフィーを用いてコンジュゲート型抗体を精製した。最終的なタンパク質含量は、BCAアッセイにより決定した。
【0234】
2.1.3 腫瘍細胞株
ウサギ-ヒトキメラADCの分析に使用したヒト腫瘍細胞株には、A431(ヒトメラノーマ細胞、MSLNneg)、A3(ヒトメソテリンを安定にトランスフェクトしたA431、MSLNhi) OVCAR3(ヒト卵巣癌細胞、MSLNhi)、HEC-251(ヒト類内膜、MSLNmed)及びH226(ヒト肺扁平上皮細胞中皮腫、MSLNlo)が含まれた。使用した細胞株は、全てアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から直接入手したものであり、但し、A3は、MorphotekでA431親細胞株から作成され、HEC-251は、JCRBから入手した。
【0235】
2.1.4 他の試薬
使用した試薬の全ては、特に指示されない限り、供給業者から研究グレード以上で入手した。
【0236】
2.2 ADCの生物物理学的特徴付け
2.2.1 SEC-HPLC凝集分析
Agilent 1200 HPLCシステムを使用して、SEC-HPLC分析を実行した。AdvanceBio SEC 300A(2.7μm、7.8×50mm、シリアル番号0006344424-13、バッチ番号0006344424)ガードカラムをAdvanceBio SEC 300A分析カラム(2.7μm、7.8×300mm、シリアル番号0006336837-4、バッチ番号0006336837)に接続し、0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、5%IPA、pH7.4によって0.5mL/分の流量で平衡化させた。
【0237】
Agilent 1200 HPLCを使用したサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)により、LCcys80 ADCの凝集を分析した。抗体及びADCは、1×DPBS中2mg/mLで調製し、8μL(16μg)の各試料を注入し、36分間のランにかけた。データは、全てAgilent ChemStationソフトウェアを使用して分析した。パーセント凝集率、パーセント単量体率及びパーセント断片化率が報告された。
【0238】
2.2.2 疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC-HPLC)DAR分析
Agilent HPLC 1260システムで疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC-HPLC)を用いてDARを分析した。試料をTSKgel Ethyl-5PWカラム(TOSOH Bioscience、7.5mm内径×7.5cm、10μm、非多孔性サイズ)に注入し、0.7mL/分での、100%の移動相Aにおける3分間の平衡化、15分間のグラジエント(0~100%B)、100%Bにおける5分間の保持、100%Aへの1分間の切り替え及び再び100%の移動相Aにおける5分間の平衡化によってカラムから溶出させた。移動相Aは、25mMリン酸ナトリウム、1.5M硫酸アンモニウム、pH7.0であった。移動相Bは、25mMリン酸ナトリウム、25%イソプロパノール、pH7.0であった。検出は、280nm(参照320nm)で実施した。DARは、以下の式により決定した:
[AUC+1+2(AUC+2)+3(AUC+3)+...n(AUC+n)]/ΣAUCtot]
(式中、AUC+1は、1つの細胞毒とコンジュゲートしたADCに対応する抗体ピークの曲線下面積であり、及びAUC+2は、2つの細胞毒とコンジュゲートしたADCに対応する抗体ピークの曲線下面積である。ΣAUCtotは、コンジュゲート型のピーク及び非コンジュゲート型のピーク(DAR=0、1及び2)を合わせた曲線下面積である)。
【0239】
2.2.3 液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS)DAR分析
DARは、SQD/PDA検出を備えたWaters Alliance HPLCによるLC-MS法を用いても分析した。試料を65℃でProteomix RP-1000カラム(5μm、1000Å、4.6mm×15cm、Sepax)に注入し、25%Bでの3分間の平衡化、25%から55%Bへの27分間の直線グラジエント、55%Bでの5分間の保持、90%Bへの1分間の切り替え、90%Bでの5分間の保持、25%Bへの1分間の切り替え戻し及び25%Bでの5分間の再平衡化によって溶出させた。移動相Aは、水中0.1%TFAであり、及び移動相Bは、アセトニトリル中0.1%TFAであった。次に、溶出液をPDA検出器とSQD検出器とに10:1分割した。SQD検出器は、ESポジティブ、キャピラリー電圧3.5KV、コーン電圧50V、エクストラクター5V及びRFレンズ0.3V、ソース温度150℃、脱溶媒和温度350℃にセットアップした。質量データは、200~2000m/zで40分間、連続モード及び走査時間1秒で取得した。MassLynx及びMaxEnt1を使用してオフラインでデータを分析し、デコンボリューション処理を行った。DARは、以下の式を用いて計算した:
2[[AUCLC+1+2(AUCLC+2)+3(AUCLC+3)+...n(AUCLC+n)]/ΣILCtot]+2[[AUCHC+1+2(AUCHC+2)+3(AUCHC+3)+...n(AUCHC+n)]/ΣAUCHCtot]
(式中、AUCLC+1は、1つの細胞毒とコンジュゲートした軽鎖ピークの曲線下面積であり、AUCLC+2は、2つの細胞毒とコンジュゲートした軽鎖ピークの曲線下面積であり、以下同様である。AUCHCは、対応する重鎖の曲線下面積であり、ΣAUCLCtot及びΣAUCHCtotは、それぞれ、全ての非コンジュゲート型及びコンジュゲート型軽鎖及び重鎖を合わせた曲線下面積である)。
【0240】
2.3 結合の特徴付け
2.3.1 Octetを使用した抗メソテリンエピトープビニング
初めに、カスタマイズした結合アッセイを用いて、ストレプトアビジンチップでOctetを使用して、メソテリンに対する抗体結合エピトープを特徴付けた。抗メソテリン抗体のエピトープ結合は、公知の抗メソテリン抗体、MORAb-009が結合するエピトープに対して正規化した。MORAb-009と同じ、近い又は異なるエピトープに対するその結合に基づいて抗体をグループ化した。全ての抗体が異なるエピトープビニングとつながるまで、ステップを繰り返した。octetの結果に基づき、結合親和性を、高い、中程度及び低いとして順位付けした。結合ステップは、全て0.2%BSAを含有するPBST緩衝液中で実行した。
【0241】
2.3.2 表面プラズモン共鳴(BIAcore)結合分析
メソテリンに対する抗メソテリン抗体結合親和性をBIAcore(BIAcore T-100、GE healthcare、#1426075)により、S CM5シリーズのチップを使用して測定した。1×HBS-P+緩衝液(GE Healthcare)で抗体濃度を1μg/mLに、且つメソテリン(50μg)を100nMに調整した。製造者のプロトコルに従い、固定化ウィザードでCM5チップを使用して抗ヒト抗体捕捉チップを調製した。最終的な捕捉抗体レベルは、HBS-P+中、8000~9000RUであった。チップは、300秒の緩衝液注入と、続く30秒の再生のサイクルを5回、いずれも全4フローセルにわたって30μL/分で行うアッセイのために調製した。個々のリガンド溶液を10μL/分で90秒間順次注入することにより、抗体がフローセル2~4に捕捉された。分析物の注入は、分析物溶液を低濃度から高濃度に順次、30μL/分で各240秒間注入することによる単一サイクル反応速度方式で行った。検出は、2-1、3-1、4-1であった。一連の同一のリガンド捕捉注入と、続く5回の各240秒間の緩衝液単独注入、1800秒間の解離及び上記のとおりの再生による二重参照法を実施した。リガンドは、全てメソテリンへの結合に関してデュプリケートで分析した。反応速度解析は、BIAEvaluationsソフトウェアを使用して、1:1ラングミュア当てはめモデルを用いて実施した。デュプリケートランからオン速度、オフ速度及び親和性定数の平均を求めた。
【0242】
2.4 示差走査熱量測定(DSC)熱安定性分析
VPキャピラリー示差走査熱量計(VP-CapDSC;Microcal、VP-CapDSC、#12-07-149、付属Origin-7グラフ作成及びMicroCal VP-キャピラリーDSCソフトウェア v.2.0)を使用して、様々なF(ab’)2断片及び対照の高次構造及び熱安定性を解読し、比較した。20%Contrad溶液を用いて試料を96ウェルアッセイプレート(Microliter Analytical Supply)に調製し、10℃でオートサンプラーにおいて分析した。
【0243】
2.5 キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)分析
CFR導入及び始動手順に従ってオートサンプラー試薬を充填した。システム安定性標準物質としてはヘモグロビンを使用した。バッチデータ解析にはデフォルト設定を使用した。焦点化時間#1は、システム適合性標準物質及び試料の両方について1,500Vで1分間実施した。焦点化時間#2は、システム適合性標準物質について3,000Vで5分間、TIGC試料及び対応緩衝液対照について3,000Vで11分間実施した。デュプリケートのTIGC試料は4.5分で焦点化時間#2を用い、試料は、全てシステム適合性標準物質でブラケット法を適用した。試料は、0.1のピーク幅パラメータ及び5の閾値を用いて自動的に積分され、pI7.5~9.4で積分された。
【0244】
2.6 DAR2及びDAR 6MORAb-109 ADCの調製
345A12-HC15-LC4 CHOZN細胞株を生存率が30%未満になるまでwaveバッグ(20L)内で培養し、TFFを使用して2Lに濃縮した。20mMリン酸ナトリウム、10mM EDTA、pH7.2で予め平衡化させたAmosphere A3樹脂に抗体を捕捉し、安定したベースラインが実現するまで同じ緩衝液で洗浄し(未結合の材料を除去する)、次に、20mMリン酸ナトリウム、10mM EDTA、10mMシステイン、pH7.2を使用して低速の流量においてオンカラムで8時間還元し、次に20mMトリス、pH7.5を使用してオンカラムで60時間、再び酸化させた。結合した材料を0.1Mグリシン、pH3.0で溶出させて、次に1×PBS、2mM EDTA、pH7.4でダイアフィルトレーションし、10mg/mL超に濃縮した。最終的な回収率は100%であった。
【0245】
DAR2 MORAb-109については、マレイミド-VCP-エリブリンを1:2.5(mAb:ペイロード)のモル比で(DMSO中に)室温で1時間加えた。コンジュゲーション後、材料を2mg/mLに希釈し、1×PBS、2mM EDTAでのダイアフィルトレーションによって未コンジュゲートのリンカー-ペイロードを除去し、5mg/mLに濃縮した。DAR2材料を分取Ether-5PW HICクロマトグラフィーによって精製した。最終的な材料は、SEC-HPLC、RP-HPLC及びHIC-HPLCによって特徴付けた。
【0246】
DAR6 MORAb-109については、精製/脱システイン化した抗体を1×PBS、2mM EDTA中に7.5mg/mLとなるように希釈し、等容積の同じ緩衝液中の250μM TCEPを50分間加えることにより更に還元し、次に等しい総容積の1×DPBS/1mM EDTA中の50%プロピレングリコールを加え、次に最後にマレイミド-VCP-エリブリンを1:8(mAb:ペイロード)のモル比で加え、室温で1時間インキュベートした。ADCをG-25クロマトグラフィーによって精製することにより、未コンジュゲートのペイロードを除去し、1×PBS、2mM EDTAに製剤化した。最終的な材料は、SEC-HPLC、RP-HPLC及びHIC-HPLCによって特徴付けた。
【0247】
2.7 インビトロ血清安定性
PBS又はヒト血清のいずれかに、抗メソテリンADC(ペイロードとしてマレイミド-VCP-エリブリン)を0.5mg/mLで調製した。試料を37℃で0、24、48、72、96又は240時間インキュベートし、次に-80℃に移して保存した。全ての試料を周囲温度に解凍し、試験のために1:2,000で一回希釈した。全mAb、全ADCに関して且つ細胞ベースの効力で試料を試験した。全mAbアッセイは、Gyrolab XP上での段階的サンドイッチフォーマットとして開発し、ビオチン化メソテリンで捕捉し、Alexa Fluor 647抗IgG1 Fcで検出した。全mAb及びインタクトADCアッセイの定量化可能な範囲は、それぞれ、6.25~800ng/mL及び6.25~800ng/mLであった。検量線及びQCはMORAb-109(345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリン)で行った。
【0248】
2.8 MORAb-109 ADCのインビトロDAR感受性マトリックス安定性
PBS又はヒト、サル、ラット若しくはマウス血清のいずれかに、0.1mg/mLのMORAb-109(345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリン)DAR 2をトリプリケートで調製した。試料を37℃で0、24、48、72、96又は240時間インキュベートした。各時点で取り出した試料を-80℃に移して保存した。分析は、無標識バイオレイヤー干渉アッセイを用いて実施した。マトリックス試料は、0.05%Tween-20及び1%BSAを含有する1×PBS(アッセイ緩衝液)中に1:20に希釈した。MORAb-109 DAR 0、DAR 1、DAR 2及びDAR 6の対照試料は、対応するマトリックス中に0.1mg/mLに希釈した。陰性対照試料は5%マトリックス単独であった。アッセイ緩衝液中の5μg/mLのビオチン化メソテリンをSAストレプトアビジンバイオセンサーチップ(300秒;Pall-ForteBio)に捕捉し、続いて希釈した安定性試料及び対照を捕捉した(300秒)。次に、100mg/mLのウサギ-ヒトキメラ抗エリブリン抗体5E4を結合させることによってペイロードを定量化した。会合を300秒間モニタした時点で、結合は平衡に達していた。295秒間の会合時点における各試料について、解離相の終了時の結合レベル(Req)を決定した。tに対する相対的なパーセントReq(ここで、パーセントReq=Req/Req[100]及びt=0~240時間である)をプロットすることにより、安定性を決定した。
【0249】
2.9 インビトロ細胞毒性分析
A431、A3、OVCAR3、HEC-251及びH226細胞を継代培養し、96ウェル組織培養プレート内の完全成長培地に5,000細胞/ウェルで播種し、37℃、5%COで一晩(16時間)インキュベートした。2mLディープウェル希釈プレートに、試験試薬を200nMから出発して1:3段階希釈した(合計10点の希釈)。希釈した試料(100μL)を細胞プレートに加えた(試験試料の出発濃度100nM)。プレートを37℃、5%COで更に5日間インキュベートした。次に、培地を廃棄し、プレートを200μL DPBSで1回洗浄し、50μLの0.2%クリスタルバイオレット溶液によって室温で15分間染色し、次に大量の水道水で洗浄した。プレートを風乾させて、クリスタルバイオレットを200μLの1%SDS溶液で溶解した。プレートを570nmで読み取った。データは、GraphPad Prism 6を使用して分析した。
【0250】
2.10 結果
2.10.1 ヒト化抗メソテリンエリブリンADCの初期スクリーニング
15個の抗メソテリン抗体をサブクローニングし、スケールアップ発現させて精製し、マレイミド-VCP-エリブリンをペイロードとして使用してCys80位にコンジュゲートした。全てのADCを精製し、SEC-HPLCによる凝集分析、HIC-HPLCによるDAR分析並びにA431-A3(MSLNhi)、A431(MSLNlo)及びOVCAR3(MSLNhi)細胞株での細胞ベースのアッセイを用いて特徴付けた。細胞をADCで6時間処理し、次に洗い流すか、又は効力比較のため48時間(A431-A3及びA431細胞)若しくは72時間(OVCAR3細胞)処理した。特徴付けデータを表17にまとめる。以下の特徴付けデータに基づき、6つの抗体(太字)をヒト化に選択した。
【0251】
【表18】
【0252】
2.10.2 ADCのHC1-LC1ヒト化及びインビトロ細胞毒性
IGBLAST(国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI))及びIMGT/DomainGapAlign(国際免疫遺伝学情報システム(International ImMunoGeneTics Information System:IMGT(登録商標)))ツールを使用して、ヒト生殖細胞系列可変ドメインタンパク質配列との最も近い相同性に関して、ウサギ102A6A2、11B10、201C15、345A12及び346C6 Fv領域の配列をBLASTにかけた。ウサギフレームワーク配列を、最も近い相同性を示すヒト生殖系列配列に置き換えて、CDRグラフト化ヒト化変異体(HC1及びLC1)を作成した。Kabat定義によるFWRH2の最終的な2つの残基が、ウサギ残基として保持された。111B10については、最終的なKabat定義によるFWRH3残基が保持された。全てのクローンについて、Vκ領域のRESPECT-LモチーフCys80及びAla83が保持された。ヒト化抗体を作成した後、キメラ抗体及びヒト化抗体を両方とも、様々な疎水性の3つの異なるペイロード(マレイミド-VCP-エリブリン、マレイミド-VCP-クリプトフィシン及びマレイミド-VCP-エリブリン二量体)とコンジュゲートした。全ての抗体について、メソテリンに対する結合親和性をBIAcoreにより測定し、表18にまとめるとおり、パーセント(%)凝集、DAR及びインビトロ効力に関してADCを特徴付けた。ヒト化抗メソテリンADCのペイロード効力も測定しており、表19にまとめる。ADCは、試験した5つの細胞株全てにおいて、低いナノモル濃度の細胞殺傷EC50値を示した。
【0253】
【表19】
【0254】
【表20】
【0255】
【表21】
【0256】
【表22】
【0257】
2.10.3 ヒト化精密化
201C15、345A12及び346C6クローンについてはメソテリン結合が失われたため、続いてメソテリンへの結合を保持するように突然変異させる必要があった。ウサギ及びCDRグラフト化Fv配列を用いて可変ドメインのインシリコモデルを作成した。ウサギ及びヒト化モデルの理論上の構造を重ね合わせ、CDRに近接している残基について、CDRループが構造全体に構造的影響を及ぼす可能性を分析した。ウサギ配列とヒト化配列との間で異なる残基を同定した。これらの異なる残基のほとんどは、二量体界面に位置しなかったか、又はCDRから遠隔にあった。VH及びVκ領域の幾つかの残基はCDRに近接している(5Å以内にある)ことが分かり、これらを更に分析した。
【0258】
VH領域の2つのヒト化領域が、クローン201C15、345A12及び346C6の抗原結合に干渉する可能性があると同定された。いずれのクローンも、ウサギ配列と比べてHC1のN末端が1アミノ酸長かった。また、各々が、FWRH3に2つのアミノ酸欠失も有した(残基72~73)。これらのクローンの各々について、HC1の最初の5アミノ酸及びFWRH3欠失を取り囲む6アミノ酸(残基71~76)をウサギ配列に復帰させた。345A12の残基93もHC5でウサギに復帰させた。LC1に関して、201C15、345A12及び346C6のN末端をウサギ配列に復帰させた。201C5(残基67)及び345A12(残基70)のFWRL3の1つの残基が、CDRと相互作用する可能性があると同定され、346C6のFWRL2の1つの残基(残基36)も同様に同定された。
【0259】
2.10.4 345A12の超ヒト化
抗原結合に決定的に重要であるものとしてVκに追加のウサギ残基が同定されたことに伴い、345A12の更なる突然変異体を作成して、VH及びVκ領域全体にわたって導入するヒト残基の数を増やした。インシリコモデルの分析により、VHの残基35、48、49、57、58、61、62、63及び64並びにVκの残基1、3、24、55及び70が同定された。
【0260】
2.10.5 超ヒト化345A12抗体の生物物理学的特徴付け
350mLのスケールアップ細胞培養物から超ヒト化345A12抗体を精製し、1×DPBS中に製剤化した。これらの抗体を物理化学特性の評価のために濃縮した。表20に示されるとおり、濃縮ステップ中にHC10-LC7及びHC15-LC7の組み合わせが沈殿し、これは相対的に低いpI又は溶解不良に起因した可能性があった。精製した抗体をメソテリン結合親和性に関してBIAcoreにより分析した。データを以下の表21にまとめる。
【0261】
【表23】
【0262】
【表24】
【0263】
2.10.6 DSC及びcIEF分析
F(ab’)2断片の熱融解曲線をDSCにより分析した。HC15-LC4 F(ab’)2及びHC10-LC4 F(ab’)2のプロファイルを図8に示す。
【0264】
345A12-HC10-LC4及び345A12-HC15-LC4 mAbのpIをcIEFにより分析した。pIは、各mAb、345A12-HC10-LC4についての8.19と345A12-HC15-LC4についての8.25との間の0.06pH単位以内の差があった(表22)。
【0265】
【表25】
【0266】
2.10.7 血清安定性
345A12-HC10-LC4及び345A12-HC15-LC4 ADCのPBS/ヒト血清安定性評価について、第2.7節に記載されるとおり、最長10日間試験した。データを以下の表23にまとめる。
【0267】
【表26】
【0268】
【表27】
【0269】
【表28】
【0270】
2.10.8 DAR感受性Octetアッセイを用いた様々なマトリックス中における345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリンのマトリックス安定性
345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリン(DAR2)について、マウス、ラット、カニクイザル及びヒト血漿及び血清におけるインビトロ安定性を分析した。ADCをマトリックス中において0.1mg/mLで1週間インキュベートし、1、2、3、4及び10日後に時点を取り出した。第2.3.1節に記載されるとおり、DAR感受性Octet(バイオレイヤー干渉法)ベースのアッセイを用いて分析を行った。結果を図9に示す。345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリン(DAR2)は、ペイロードの時間依存的放出を実証し、37℃で10日間インキュベートした後の平均放出率は20%であった。
【0271】
2.10.9 ヒトメソテリンに対するウサギIgG及びポリクローナル抗体を産生する培養物
2週目に、ユウロピウムクリプテートを使用したIgG FRETにより、ウサギIgG抗体を産生するウェルを同定した。IgGを産生するウェルについて、1μg/mLのCHO-MT40メソテリンをコートしたプレートに対するELISAにより、ウサギIgG Fcγ抗体の存在に関してスクリーニングした。メソテリン特異的ウサギIgGを産生する培養物が1μg/mLのメソテリンに対するELISAスクリーニングによって確認され、それらを1μg/mLのCD73-hisに対してカウンタースクリーニングした。FRET及びELISAは、Biomek(登録商標)FXロボットシステム(Beckman)で実施した。
【0272】
実施例3:インビボ研究
ヒト肺及び胃癌異種移植モデル並びにヒト中皮腫患者由来異種移植片(PDX)モデルを使用して、以下に記載するプロトコルに従ってリードヒト化抗メソテリン抗体とエリブリンコンジュゲートとを含むADCをマウスで評価した。種々のDAR種のADCの抗癌活性及びオフターゲット毒性を判定した。
【0273】
3.1 試薬及び材料
3.1.1 抗体
以下の研究で使用した抗体は、軽鎖80位に不対のシステイン(LCcys80)を有し、ウサギ-ヒトキメラ(-xi)形態及びヒト化(-zu)形態の両方の抗ヒトメソテリン抗体xi345A12-HC1-LC2、xi102A6A2-HC1-LC2、zu345A12-HC1-LC2、zu345A12-HC10-LC4及びzu345A12-HC15-LC4を含む。
【0274】
3.1.2 コンジュゲーション可能な細胞毒及びLCcys80 ADC
以下の研究で使用したリンカー-細胞毒化合物には、マレイミド-VCP-エリブリン及びマレイミド-VCP-ジOHエリブリン二量体が含まれる。
【0275】
3.1.3 腫瘍細胞株
以下の研究では、ヒトNSCLC細胞株NCI-H2110、ヒト胃癌細胞株NCI-N87及びヒト中皮腫癌細胞株HAYを使用した。使用した細胞株は、全てアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から直接入手し、但し、HAY細胞については、NCIから入手した。
【0276】
3.1.4 他の試薬
使用した試薬の全ては、特に指示されない限り、供給業者から研究グレード以上で入手した。
【0277】
3.2 ヒト癌異種移植モデルにおけるインビボスクリーニング及び有効性研究
3.2.1 研究動物
最大耐用量(MTD)研究には、雌CD-1 IGSマウス(Charles River、7~9週齢)を使用し、NCI-H2110及びHAY異種移植片研究には、雌NOD.CB17-SCIDマウス(Jackson Laboratory)を使用し、及びNCI-N87異種移植片研究には、雌NCrヌードマウス(Taconic、5週齢)を使用した。動物は、入荷次第、接種前に5~7日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物には耳標を付け、研究開始前に秤量した。
【0278】
3.2.2 細胞培養
凍結ストックからの凍結保存NCI-H2110、NCI-N87又はHAY細胞を、必要な補足成分を含有する培地で培養した。細胞を完全培地で2代にわたって継代培養した後、インビボ接種に使用した。
【0279】
3.2.3 腫瘍移植、登録手順及び治療
氷冷Matrigelと1:1(vol:vol)で混合したPBS中に、NCI-H2110及びHAY細胞について1.0×10細胞/mL又は5.0×10細胞/mLの最終濃度となるように細胞を懸濁した。マウスに100μL/マウスの細胞混合物を皮下注射し、体重及び腫瘍成長をモニタした。移植後3日目から週に3回、デジタルノギスによって測定値を取った。
【0280】
3.2.4 腫瘍測定及び治療
腫瘍容積は、以下の式を用いて計算した:W(mm)×L(mm)×D(mm)×π/6。腫瘍移植片が100mmの平均容積に達したところで、マウスを各群5匹のマウスに無作為化した。治療は、200μLの容積で静脈内投与した。各研究の終了時に最終的な体重を測定し、記録した。
【0281】
3.2.5 統計分析
反復測定二元配置ANOVAと、続くボンフェローニ事後検定により、各治療群からの動物の腫瘍容積を対照群と比較した。各実験群内での腫瘍成長の比較も同じ統計分析を用いて実施した。
【0282】
3.3 ヒト中皮腫PDXモデルにおけるインビボ有効性研究
3.3.1 研究動物
NMRI nu/nu雌マウス(Janvier Labs、5~6週齢)は、入荷次第、接種前に少なくとも4日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物に耳印を付け、研究開始前に秤量した。
【0283】
3.3.2 異種移植
研究0日目、無菌条件下で5匹のドナーマウスからMeso 7212腫瘍を採取した。ドナー腫瘍組織を2×2mm片に切り出し、0.9%生理食塩水で覆われている滅菌ペトリ皿に置いた。並行して、受容側の動物を鎮痛薬Metacam(登録商標)(2mg/kg)で皮下治療し、次にEtomidat-Lipuro(登録商標)(12mg/kg)の単回静脈内注射(0.15mL/マウス)によって麻酔した。左側腹部の5~8mmの皮膚に表層縦切開を入れた。側腹部から直接、切開部に外科用ハサミの先端を挿入し、それを用いて皮下腔にポケットを形成した。外科用ピンセットを用いてポケットに各マウス1つの腫瘍片を移植した。金属クリップで切開部を閉じ、動物を清潔なケージに戻した。
【0284】
3.3.3 実験手順
腫瘍の増殖中、デジタルノギス(Mitutoyo)を使用して腫瘍直径を測定した。動物をその腫瘍容積に基づいて実験群に無作為に割り付けた(腫瘍容積の組入れ基準、0.1~0.3cm)。腫瘍容積及び体重を週2回記録した。
【0285】
3.3.4 治療
無作為化当日、エリブリンを0.2、0.3及び3.2mg/kgの用量で静脈内投与した。MORAb-109(DAR 0、2及び6)を無作為化当日に10.0mg/kgの用量又は4日間連日2.5mg/kgの用量で静脈内投与した。全実験群で、静脈内注射の投与容積は10mL/kgであった。
【0286】
3.3.5 統計分析
腫瘍容積及び体重のデータに関して記述統計量を求めた。反復測定二元配置ANOVAと、続くボンフェローニ事後検定を用いることにより、各治療群の動物の腫瘍容積を対照群と比較した。加えて、各群内での動物の腫瘍成長比較も同じ統計分析で実施した。
【0287】
3.4 結果-インビボスクリーニング及び有効性研究
3.4.1 研究M109-004-2016:ヒトNSCLC異種移植モデルにおける345A12-HC1-LC2及び102A6A2 HC1-LC2エリブリン二量体ADCのインビボスクリーニング
ヒト非小細胞肺癌(NSCLC)NCI-H2110異種移植モデルにおいて、抗メソテリン抗体の2つのクローン(345A12-HC1-LC2及び102A6A2-HC1-LC2)の比較インビボスクリーニングを実施した。2.5mg/kgの345A12-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADC又は2.5mg/kgの102A6A2-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADCでマウスを治療した。両方のADCの抗腫瘍活性及び体重変化を、それぞれ図10A及び図10Bに示す。
【0288】
3.4.2 研究M109-006-2017:CD-1マウスにおける345A12-HC1-LC2及び345A12-HC15-LC4エリブリン二量体ADCの最大耐用量(MTD)の予備的評価
5、10、15若しくは20mg/kgの345A12-HC1-LC2-ジOHエリブリン二量体ADC又は5、10若しくは20mg/kgの345A12-HC15-LC4-ジOHエリブリン二量体ADCの投与後、雌CD-1マウスの体重変化を測定した。各ADCの体重変化を、それぞれ図11A及び図11Bに示す。
【0289】
3.4.3 研究M109-007-2017:ヒトNSCLC異種移植モデルにおける345A12-HC10-LC4及び345A12-HC15-LC4エリブリン二量体ADCのインビボスクリーニング
ヒトNSCLC NCI-H2110異種移植モデルにおいて、抗メソテリン抗体の2つの更なるクローン(345A12-HC10-LC4及び345A12-HC15-LC4)の比較インビボスクリーニングを実施した。2.5mg/kgの345A12-HC10-LC4-ジOHエリブリン二量体ADC又は2.5mg/kgの345A12-HC15-LC4-ジOHエリブリン二量体ADCでマウスを治療した。両方のADCの抗腫瘍活性及び体重変化を、それぞれ図12A及び図12Bに示す。
【0290】
その抗腫瘍活性及び毒性プロファイルに基づき、MORAb-109 ADCに使用される抗体の候補クローンとして345A12-HC15-LC4クローンを選択した。
【0291】
3.4.4 研究M109-010-2018:ヒト胃癌異種移植モデルにおける345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリンADC(MORAb-109)のDAR2及びDAR6種の抗腫瘍効果
ヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおいて、345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリンADC(MORAb-109)の2つのDAR種(DAR2及びDAR6)を10mg/kgの用量で比較した。両方のDAR2及びDAR6 ADC種とも、持続性のある同程度の抗腫瘍応答を実証し(図13A)、いずれのDAR種の投与後にも、体重減少はほとんど乃至全く観察されなかった(図13B)。
【0292】
3.4.5 研究M109-010-2018:ヒト中皮腫異種移植モデルにおける345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリンADC(MORAb-109)のDAR2及びDAR6種の抗腫瘍効果
ヒト中皮腫HAY異種移植モデルにおいて、345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリンADC(MORAb-109)の2つのDAR種(DAR2及びDAR6)を比較した。両方のDAR2及びDAR6 ADC種とも、単回用量(5mg/kg)のMORAb-109で治療したマウスにおいて持続性のある同程度の抗腫瘍応答を実証した一方、エリブリン単独(MTD(3.2mg/kg)又はMORAb-109(0.1mg/kg)に見られるのと等価なモル量のエリブリンで投与した)は、限られた抗腫瘍効果のみを示した(図14A)。MTD用量のエリブリンで治療したマウスでは、急性の一時的な体重減少が観察された一方、いずれのADCで治療したマウスにおいても、体重減少は観察されなかった(図14B)。
【0293】
3.4.6 ヒト中皮腫PDXモデルにおけるMORAb-109(DAR6)の抗腫瘍効果
ヒト中皮腫PDXモデル、Meso7212(MV15369)において、345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリンADC(MORAb-109)(DAR6)の抗腫瘍効果を調べた。2つの異なる治療レジメン:10mg/kg MORAb-109の単回投与又は2.5mg/kgの4日連日投与を試験した。MORAb-109の両方の治療レジメンとも、持続性のある同等の抗腫瘍応答を実証した一方、等価なモル量のエリブリン単独(0.2mg/kg)は、限られた抗腫瘍効果のみを示した(図15A)。両方のMORAb-109 ADC治療とも、MTD用量のエリブリン単独と比較して抗腫瘍活性の有意な増加を示した(P<0.05)。全ての治療についての体重変化を図15Bに示す。
【0294】
3.4.7 ヒト中皮腫PDXモデルにおけるMORAb-109(DAR2及びDAR6)の抗腫瘍効果
ヒト中皮腫PDXモデル、Meso7212(MV16071)において、345A12-HC15-LC4-VCP-エリブリンADC(MORAb-109)の2つのDAR種(DAR2及びDAR6)の抗腫瘍効果を10mg/kgの単回投与で調べた。MORAb-109の両方のDAR2及びDAR6種とも、持続性のある同等の抗腫瘍応答を実証した一方、等価なモル量のエリブリン単独(0.3mg/kg)及びエリブリンがコンジュゲートされていないMORAb-109種(DAR0)は、限られた抗腫瘍効果のみを示すか又はそれを全く示さなかった(図16A)。いずれの群においても、体重減少は観察されなかった(図16B)。MORAb-109のDAR2種とDAR6種との間に抗腫瘍効果の統計学的差異はなかった。
【0295】
実施例4:メソテリン(MSLN)発現及びインビトロ効力
4.1 方法
細胞毒性:細胞を継代培養し、96ウェル組織培養プレート内の完全成長培地に5,000細胞/ウェルで播種し、37℃、5%COで一晩(16時間)インキュベートした。2mLディープウェル希釈プレートに、試験試薬を200nMから出発して1:3段階希釈した(合計10点の希釈)。希釈した試料(100μL)を細胞プレートに加えた(試験試料の出発濃度100nM)。プレートを37℃、5%COで更に5日間インキュベートした。次に、培地を廃棄し、プレートを200μL DPBSで1回洗浄し、50μLの0.2%クリスタルバイオレット溶液によって室温で15分間染色し、次に大量の水道水で洗浄した。プレートを風乾させて、クリスタルバイオレットを200μLの1%SDS溶液で溶解した。プレートを570nmで読み取った。データは、IC50の決定に関してGraphPad Prism 6を使用して分析した。GraphPad Prismでノンパラメトリックスピアマン分析を用いて相関分析を実施した。
【0296】
4.2 結果
全ての細胞株について、MORAb-109(DAR6)の効力とメソテリン発現との間に相関が観察された(図17;表24及び表25)。
【0297】
MORAb-109(DAR2)については、メソテリン発現が低い(平均蛍光強度(MFI)のFACS染色が80未満の)細胞株を分析から除外したとき、効力とメソテリン発現との間に有意な相関が観察された(図17;表24及び表25)。MORAb-109(DAR2)の効力は、メソテリン発現レベルが高いほど、メソテリン発現と相関した。
【0298】
【表29】
【0299】
【表30】
【0300】
【表31】
【0301】
実施例5:ヒト胃癌(NCI-N87)異種移植モデルにおけるMORAb-109の用量反応
5.1 方法
5.1.1 インビボ有効性
動物:入荷時に5週齢の雌NCrヌードマウス(Taconic)を接種前に5~7日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物には耳標を付け、研究開始前に秤量した。
【0302】
細胞培養:凍結保存NCI-N87細胞を解凍し、必要な補足成分を含有する培地で成長させた。細胞を完全培地で2代にわたって継代培養した後、インビボ接種に使用した。
【0303】
腫瘍移植、登録手順及び治療:PBS中の細胞懸濁液を1.0×10細胞/mLの最終濃度となるように氷冷Matrigelと1:1(vol:vol)で混合した。100μL/マウスの混合物を皮下注射した。マウスの臨床的ウェルビーイングに関して、移植後3日目から週3回、体重及びデジタルノギスによる腫瘍測定値でモニタした。
【0304】
腫瘍測定及び治療:腫瘍容積(TV)(mm)は、以下の式を用いて計算した:W(mm)×L(mm)×D(mm)×π/6。腫瘍が平均約100mmに達したとき、動物を各群5匹に無作為化した。治療は、200μLの容積の被験物質を静脈内投与した。研究終了時、最終的な体重を測定し、記録した。
【0305】
統計分析:腫瘍容積及び体重のデータに関して記述統計量を求めた。反復測定二元配置ANOVAと、続くボンフェローニ事後検定を用いることにより、各治療群の動物の腫瘍容積を対照群と比較した。加えて、各群内での動物の腫瘍成長比較を同じ統計分析で実施した。
【0306】
5.1.2 薬物動態(PK)
インタクトADCアッセイ及び全抗体アッセイの両方を用いてPK分析を実施した。全抗体とは、コンジュゲート種及び非コンジュゲート種を含む全ての種を合わせた全体を指す(即ちDAR0+DAR1+DAR2+...+DARn)一方、インタクトADCとは、全てのコンジュゲート種を指す(即ちDAR1+DAR2+...+DARn)。全抗体アッセイでは、捕捉にビオチン化メソテリンを使用した。インタクトADCアッセイでは、捕捉にビオチン化抗エリブリン5E4 Fab断片を使用し、検出にAlexaFluor647標識抗ヒトFcを使用した。試料分析はGyrosアナライザーで実施した。データ分析はWatsonLIMS 7.4.1で実施し、Microsoft Excelでプロットした。
【0307】
5.2 結果
5mg/kgから25mg/kgまでのMORAb-109(DAR2)の用量範囲について、用量依存的有効性が観察された(図18A及び図18B)。いずれの用量群においても、体重減少は観察されなかった(図18C)。治療した動物では、AUCの用量依存的増加によって示されるとおり、ADCの用量依存的曝露が観察された(図19及び表26)。
【0308】
【表32】
【0309】
実施例6:ヒト卵巣癌(OVCAR-3-A1-T1)異種移植モデルにおけるMORAb-109のインビボ抗腫瘍有効性
6.1 方法
動物:入荷時に5週齢の雌NOD.CB17-SCIDマウス(Jackson Laboratory)を接種前に5~7日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物には耳標を付け、研究開始前に秤量した。
【0310】
細胞培養:凍結保存OVCAR-3-A1-T1細胞を解凍し、必要な補足成分を含有する培地で成長させた。細胞を完全培地で2代にわたって継代培養した後、インビボ接種に使用した。
【0311】
腫瘍移植、登録手順及び治療:PBS中の細胞懸濁液を5.0×10細胞/mLの最終濃度となるように氷冷Matrigelと1:1(vol:vol)で混合した。100μL/マウスの混合物を皮下注射した。マウスの臨床的ウェルビーイングに関して、移植後3日目から週3回、体重及びデジタルノギスによる腫瘍測定値でモニタした。
【0312】
腫瘍測定及び治療:腫瘍容積(TV)(mm)は、以下の式を用いて計算した:W(mm)×L(mm)×D(mm)×π/6。腫瘍が平均約100mmに達したとき、動物を各群5匹に無作為化した。治療は、200μLの容積の被験物質を静脈内投与した。研究終了時、最終的な体重を測定し、記録した。
【0313】
統計分析:腫瘍容積及び体重のデータに関して記述統計量を求めた。反復測定二元配置ANOVAと、続くボンフェローニ事後検定を用いることにより、各治療群の動物の腫瘍容積を対照群と比較した。加えて、各群内での動物の腫瘍成長比較を同じ統計分析で実施した。
【0314】
6.2 結果
MORAb-109(DAR2)は、ヒト卵巣癌OVCAR-3-A1-T1異種移植モデルにおいて腫瘍増殖遅延を実証した(図20A及び図20B)。
【0315】
実施例7:ヒトNSCLC PDXモデル(LC-F-25)におけるMORAb-109のインビボ抗腫瘍有効性
7.1 方法
動物:入荷時に5週齢の非近交系無胸腺(nu/nu)雌マウス(HSD:Athymic Nude-Foxn1nu)を接種前に少なくとも4日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物に耳印を付け、研究開始前に秤量した。
【0316】
異種移植:ヒト患者由来の原発性非小細胞肺腺癌から、LC-F-25を増殖腫瘍(P9.1.1/0)として樹立した。LC-F-25は、免疫組織化学(IHC)分析に基づけば、他の腫瘍型(例えば、LXFA-737など(実施例8))と比べて陽性率及び全体的な強度の点でMSLN発現が低い。
【0317】
実験手順:108~288mmの樹立増殖LC-F-25腫瘍(P9.1.1/0)を有する31匹のマウスについて、腫瘍容積平均値及び中央値がそれぞれ153.5及び126mmに達したとき、治療に割り付けた。
【0318】
治療:各7~8匹のマウスの4群で有効性を評価した:
・群1では、1日目に媒体を5mL/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群2及び群3では、1日目にエリブリンをそれぞれ0.1mg/kg(5mL/kg)及び3.2mg/kg(6.4mL/kg)、i.v.、単回用量で投与した。
・群4では、1日目にMORAb-109を10mg/kg(5mL/kg)、i.v.、単回用量で投与した。
【0319】
実験期間中は週2回、腫瘍を測定し、マウスを秤量した。
【0320】
統計分析:測定毎にマン・ホイットニーノンパラメトリック比較検定による統計分析を実施した。各治療群を対照群と比較した。
【0321】
7.2 結果
静脈内経路によって10mg/kgの単回用量で投与したMORAb-109(DAR2)は、LC-F-25腫瘍担持マウスによって体重減少なしに良好に忍容された(図21B)。MORAb-109(DAR2)は、LC-F-25 NSCLC PDXモデルにおいて10mg/kgで腫瘍増殖遅延を実証した(図21A)。
【0322】
静脈内経路によって0.1mg/kgの単回用量(10mg/kgで投与したときのMORAb-109におけるペイロードの等価なモル量)で投与したエリブリンは、LC-F-25腫瘍担持マウスによって良好に忍容されたが、統計的に有意な腫瘍成長阻害は誘導しなかった(図21A及び図21B)。
【0323】
静脈内経路によって3.2mg/kgの単回用量(マウスMTD投薬量又は10mg/kgで投与したときのMORAb-109におけるエリブリンのモル量の32倍)で投与したエリブリンは、LC-F-25腫瘍担持マウスによって良好に忍容されたが、投与から3~10日後に僅かな一過性の体重減少を引き起こした(図21B)。この用量で、エリブリンは統計的に有意な腫瘍成長阻害を誘導し、8匹中6匹のマウスに部分的な腫瘍退縮があった(図21A)。
【0324】
実施例8:ヒトNSCLC PDXモデル(LXFA-737)におけるMORAb-109のインビボ抗腫瘍有効性
8.1 方法
動物:雌NMRI nu/nuマウス(Crl:NMRI-Foxn1nu)、4~6週齢。
【0325】
異種移植:ヒト患者由来の原発性非小細胞肺腺癌から、LXFA-737を増殖腫瘍(P14N4)として樹立した。LXFA-737は、IHC分析に基づけば、他の腫瘍型(例えば、LC-F-25(実施例7)など)と比べて全体的な強度及び高い陽性率の点で中程度のMSLN発現を有する。
【0326】
実験手順:十分な数の動物において腫瘍移植片が50~250mm(例えば、80~200mm)の研究容積基準に達するまで、動物をモニタした。腫瘍容積中央値及び平均値が同等の群となることを目指して、マウスを群に割り付けた。無作為化当日を0日目に指定した。
【0327】
治療:各6~7匹のマウスの4群で有効性を評価した:
・群1では、1日目に媒体を5mL/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群2及び群3では、1日目にエリブリンをそれぞれ0.2mg/kg及び3.2mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群4では、1日目にMORAb-109を10mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
【0328】
実験期間中は週2回、腫瘍を測定し、マウスを秤量した。無作為化(0日目)の翌日の投与初日が1日目であった。
【0329】
統計分析:腫瘍成長の阻害、%単位の試験/対照値(Min.T/C):X日目における対照群に対する試験群の残存腫瘍容積(RTV)中央値の比に100を乗じることにより、試験対対照値(%単位のT/C)を計算した。試験群及び対照群について、腫瘍容積が2倍になる時間及び4倍になる時間(Td、Tq)は、ある群が200%又は400%のRTV中央値に達するまでにかかる時間間隔(日数単位)として定義した。
【0330】
8.2 結果
MORAb-109(DAR2)は、LXFA-737 NSCLC PDXモデル(図22A)において10mg/kgでロバストな抗腫瘍有効性を実証し(T/C最小値、41日目に2.3%)、研究中にそのTqに達することはなかった。単回用量で投与したMORAb-109も、LXFA-737腫瘍担持マウスによって体重減少なしに良好に忍容された(図22B)。
【0331】
静脈内経路によって3.2mg/kg(マウスMTD投薬量又は10mg/kgで投与したときのMORAb-109におけるエリブリンのモル量の32倍)の単回用量で投与したエリブリンは、LXFA-737腫瘍担持マウスによって良好に忍容され、抗腫瘍有効性を示し(T/C最小値、27日目に4.2%)、そのTqは80.1%であった。しかしながら、エリブリンは、投与後に僅かな一過性の体重減少を引き起こした(図22A及び図22B)。10mg/kgで投与したときのMORAb-109におけるエリブリンのモル量の2倍である0.2mg/kgの単回用量では、限られた抗腫瘍有効性のみを示した(T/C最小値、44日目に51.1%)。
【0332】
実施例9:ヒト胃癌(NCI-N87)異種移植モデルにおけるMORAb-109の用量反応
9.1 方法
9.1.1 インビボ有効性
動物:入荷時に5週齢の雌NCrヌードマウス(Taconic)を接種前に5~7日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物には耳標を付け、研究開始前に秤量した。
【0333】
細胞培養:凍結保存NCI-N87細胞を解凍し、必要な補足成分を含有する培地で成長させた。細胞を完全培地で2代にわたって継代培養した後、インビボ接種に使用した。
【0334】
腫瘍移植、登録手順及び治療:PBS中の細胞懸濁液を1.0×10細胞/mLの最終濃度となるように氷冷Matrigelと1:1(vol:vol)で混合した。100μL/マウスの混合物を皮下注射した。マウスの臨床的ウェルビーイングに関して、移植後3日目から週3回、体重及びデジタルノギスによる腫瘍測定値でモニタした。
【0335】
腫瘍測定及び治療:腫瘍容積(TV)(mm)は、以下の式を用いて計算した:W(mm)×L(mm)×D(mm)×π/6。腫瘍が平均約100mmに達したとき、動物を各群5匹に無作為化した。治療は、200μLの容積の被験物質を静脈内投与した。研究終了時、最終的な体重を測定し、記録した。
【0336】
統計分析:腫瘍容積及び体重のデータに関して記述統計量を求めた。反復測定二元配置ANOVAと、続くボンフェローニ事後検定を用いることにより、各治療群の動物の腫瘍容積を対照群と比較した。加えて、各群内での動物の腫瘍成長比較を同じ統計分析で実施した。
【0337】
9.1.2 薬物動態(PK)
インタクトADCアッセイ及び全抗体アッセイの両方を用いてPK分析を実施した。全抗体とは、コンジュゲート種及び非コンジュゲート種を含む全ての種を合わせた全体を指す(即ちDAR0+DAR1+DAR2+...+DARn)一方、インタクトADCとは、全てのコンジュゲート種を指す(即ちDAR1+DAR2+...+DARn)。全抗体アッセイでは、捕捉にビオチン化メソテリンを使用し、検出にAlexaFluor647標識抗ヒトFcを使用した。インタクトADCアッセイでは、捕捉にビオチン化抗エリブリン5E4を使用し、検出にAlexaFluor647標識抗ヒトFcを使用した。試料分析はGyrosアナライザーで実施した。データ分析はWatsonLIMS 7.4.1で実施し、Microsoft Excelでプロットした。エリブリンは、血漿、腫瘍及び骨髄試料からLC-MSを用いて定量化した。
【0338】
9.1.3 LC-MS
分析には、個々のマウスからの20~50μLのMORAb-109(DAR2)血漿又はMORAb-109(DAR6)投与マウスからの50μLの等しくプールした血漿を使用した。Dynabeads M-280ストレプトアビジン(100μL)を3μgの捕捉選択ヒトIgG-Fc PKビオチンコンジュゲートと共に室温で1時間インキュベートし、次にHBS-EP緩衝液で洗浄した。次に、MORAb-109複合体を捕捉するため、HBS-EP緩衝液に希釈した血漿試料を、複合体化/洗浄したビーズと混合し、室温で1時間インキュベートし、次にHBS-EP緩衝液で2回洗浄した。複合体を含有する洗浄したビーズをPNGase緩衝液中のRapid PNGaseF(1μL)によって37℃で1時間脱グリコシルし、次にHBS-EP緩衝液で1回洗浄した。捕捉/脱グリコシルしたMORAb-109の溶出を0.1%ギ酸含有10%アセトニトリル(30μL)で行った。Synapt G2/MクラスUPLC分析で、インタクトな質量又は換算質量に関して試料を分析した。
【0339】
9.2 結果
10mg/kgの単回用量のMORAb-109(DAR2又はDAR6)で治療したヒト胃癌NCI-N87異種移植モデルにおける抗腫瘍効果及び体重変化を、それぞれ図23A及び図23Bに示す。
【0340】
MORAb-109(DAR2)、MORAb-109(DAR6)及び非コンジュゲート型抗体のPK分析を表27に示す。非コンジュゲート型及びMORAb-109(DAR2)の全抗体は同様であった一方、MORAb-109(DAR6)は低く、MORAb-109(DAR2)が循環中で安定していることが示された。
【0341】
血漿試料からのADCのDAR分析により、DAR6種についてペイロード放出率が高く、エリブリンの高い血漿レベルに寄与したことが示された(表28及び表29)。
【0342】
【表33】
【0343】
【表34】
【0344】
【表35】
【0345】
実施例10:345A12 HC15 LC4とアネツマブとの比較-結合親和性
10.1 方法
抗体:345A12 HC15 LC4(MORAb-109中の抗メソテリン抗体)及びアネツマブ。ヒト抗メソテリン抗体であるアネツマブの配列は、表30に示す。
【0346】
結合親和性:BIAcore T-100機器においてHBS-P+緩衝液中で結合測定を実施した。抗体をHBS-P+で1μg/mLに希釈した。試料を室温で5分間、14,000×gで遠心し、次に上清を新しい1.5mL BIAcoreチューブに移し、キャップをかぶせた。メソテリン(50μg)を1×HBS-P+緩衝液で100nMに希釈し、次にBIAcoreチューブに100、20、4、0.8及び0.16nMで5倍段階希釈し、キャップをかぶせた。製造者のプロトコルに従い、固定化ウィザードでCM5チップを使用して抗ヒト抗体捕捉チップを調製した。最終的な捕捉抗体レベルは、HBS-P+中、8000~9000RUであった。チップは、300秒の緩衝液注入と、続く30秒の再生のサイクルを5回、いずれも全4フローセルにわたって30μL/分で行うアッセイのために調製した。
【0347】
個々のリガンド溶液を10μL/分で90秒間順次注入することにより、抗体がフローセル2~4に捕捉された。分析物の注入は、分析物溶液を低濃度から高濃度に順次、30μL/分で各240秒間注入することによる単一サイクル反応速度方式で行った。検出は、2-1、3-1、4-1であった。一連の同一のリガンド捕捉注入と、続く5回の各240秒間の緩衝液単独注入、1800秒間の解離及び上記のとおりの再生による二重参照法を実施した。リガンドは、全てメソテリンへの結合に関してデュプリケートで分析した。反応速度解析は、BIAEvaluationsソフトウェアを使用して、1:1ラングミュア当てはめモデルを用いて実施した。デュプリケートランからオン速度、オフ速度及び親和性定数の平均を求めた。
【0348】
10.2 結果
345A12 HC15 LC4は、アネツマブの40倍高い親和性を呈した(表31)。345A12 HC15 LC4は、カニクイザルメソテリンに対する結合親和性を保持していた一方、アネツマブはカニクイザルメソテリンに結合しなかった。いずれの抗体もラットメソテリンに結合しなかった。
【0349】
【表36】
【0350】
【表37】
【0351】
【表38】
【0352】
実施例11:MORAb-109とBAY 94-9343との比較-インビトロ効力
11.1 方法
ADC:MORAb-109(DAR2及びDAR6)及びアネツマブラブタンシン(BAY 94-9343)を評価した。アネツマブラブタンシン、別名BAY 94-9343は、アネツマブがジスルフィド含有リンカー(還元可能なSPDBリンカー[4-(2-ピリジルジチオ)ブタン酸N-スクシンイミジル])を介してメイタンシノイドチューブリン阻害薬DM4にコンジュゲートしたものを含むADCである。BAY 94-9343は、実施例15に記載されるとおり作成した。
【0353】
細胞毒性:細胞を継代培養し、96ウェル組織培養プレート内の完全成長培地に5,000細胞/ウェルで播種し、37℃、5%COで一晩(16時間)インキュベートした。2mLディープウェル希釈プレートに、試験試薬を200nMから出発して1:3段階希釈した(合計10点の希釈)。希釈した試料(100μL)を細胞プレートに加えた(試験試料の出発濃度100nM)。プレートを37℃、5%COで更に5日間インキュベートした。次に、培地を廃棄し、プレートを200μL DPBSで1回洗浄し、50μLの0.2%クリスタルバイオレット溶液によって室温で15分間染色し、次に大量の水道水で洗浄した。プレートを風乾させて、クリスタルバイオレットを200μLの1%SDS溶液で溶解した。プレートを570nmで読み取った。データは、IC50の決定に関してGraphPad Prism 6を使用して分析した。
【0354】
11.2 結果
MORAb-109(DAR2及びDAR6)は、MSLN陽性細胞株に対して特異的細胞毒性を示した(表32)。対照的に、BAY 94-9343は、MSLN陽性細胞株及びMSLN陰性細胞株の両方に対して殺傷を実証した。
【0355】
【表39】
【0356】
実施例12:MORAb-109とBAY 94-9343との比較-特異性
12.1 方法
細胞毒性:細胞を継代培養し、96ウェル組織培養プレート内の完全成長培地に5,000細胞/ウェルで播種し、37℃、5%COで一晩(16時間)インキュベートした。2mLディープウェル希釈プレートに、試験試薬を200nMから出発して1:3段階希釈した(合計10点の希釈)。希釈した試料(100μL)を細胞プレートに加えた(試験試料の出発濃度100nM)。プレートを37℃、5%COで更に5日間インキュベートした。次に、培地を廃棄し、プレートを200μL DPBSで1回洗浄し、50μLの0.2%クリスタルバイオレット溶液によって室温で15分間染色し、次に大量の水道水で洗浄した。プレートを風乾させて、クリスタルバイオレットを200μLの1%SDS溶液で溶解した。プレートを570nmで読み取った。データは、IC50の決定に関してGraphPad Prism 6を使用して分析した。
【0357】
12.2 結果
非コンジュゲート型抗体による細胞毒性アッセイでは、MORAb-109(DAR2)によるメソテリン発現細胞の特異的殺傷が実証され(図25A)、しかしBAY 94-9343によっては実証されなかった(図25B)。理論によって拘束されるものではないが、BAY 94-9343について観察される非コンジュゲート型抗体による競合の欠如は、ペイロードの放出を示唆し、これは、抗体結合が非コンジュゲート型の競合相手によって阻止されたときであっても、殺傷につながり得る。このペイロード放出は、BAY 94-9343について観察されるメソテリン陰性細胞株に対する細胞毒性レベルが比較的高いことと整合している(表32)。ペイロード放出は、図27(血漿安定性比較)でも直接観察される。
【0358】
実施例13:MORAb-109とBAY 94-9343との比較-ADCC活性
13.1 方法
MSLN発現CHO細胞を解凍し、96ウェル組織培養プレート内の完全RPMI-4%超低濃度IgG FBSに1,000細胞/ウェル(25μL)で播種した。試験試薬(345A12抗体、MORAb-109(DAR2)及びBAY 94-9343)を完全RPMI-4%超低濃度IgG FBSで20μg/mLから出発して1:2.5段階希釈し、次に細胞プレートに移し(25μL)、37℃、5%COで60分間インキュベートした。6,000個のジャーカットエフェクター細胞(Promega)を解凍し、細胞プレートに加え(25μL)、プレートを37℃、5%COで18~22時間インキュベートした。
【0359】
ルシフェラーゼアッセイ試薬を暗所で解凍した。各ウェルに75μLのルシフェラーゼアッセイ試薬を加え、プレートをプレート振盪機で30秒間振盪した。5分間インキュベートした後、プレートをルミノメーターで読み取った。
【0360】
13.2 結果
MORAb-109(DAR2)及び345A12 HC15 LC4は同程度のADCC活性を有する(図26A及び表33)一方、BAY 94-9343はアネツマブよりも弱いADCC活性を有した(図26B及び表34)。
【0361】
【表40】
【0362】
【表41】
【0363】
実施例14:マトリックスにおけるMORAb-109及びBAY 94-9343の安定性
14.1 方法
抗MSLN ADCをヒト血漿又はマウス血漿のいずれかに0.1mg/mLで調製し、試料を37℃で0、24、48、72、96及び240時間インキュベートし、次に時点が達成されたところで-80℃に移して保存した。全ての試料を周囲温度に解凍し、試験のために1:100希釈した。DAR感受性安定性アッセイをGyrolabでの段階的サンドイッチフォーマットとして開発した。アッセイでは、遮断及び試料結合後の捕捉にビオチン化メソテリンを使用し、検出にAlexa Fluor 647抗エリブリン5E4 Fab又はAlexa Fluor 647抗DM4(Levena Biopharma)を使用した。検量線及び品質管理は、MORAb-109及びBAY 94-9343で行った。
【0364】
14.2 結果
MORAb-109(DAR2)は、ヒト血漿及びマウス血漿の両方でBAY 94-9343よりも安定性が高かった(図27)。
【0365】
実施例15:ヒト胃癌(NCI-N87)異種移植モデルにおけるMORAb-109及びBAY 94-9343の抗腫瘍有効性
15.1 方法
15.1.1 BAY 94-9343の作成
BAY 94-9343は、アネツマブがジスルフィド含有リンカー(還元可能なSPDBリンカー[4-(2-ピリジルジチオ)ブタン酸N-スクシンイミジル])を介してメイタンシノイドチューブリン阻害薬DM4にコンジュゲートしたものを含むADCである。アネツマブからの配列は、Beaconデータベース(Hanson-Wade)から入手した。オーバーラップオリゴヌクレオチドから抗体配列(表30)を作成し、PCR増幅し、発現プラスミドにクローニングし、配列を確認した。293F細胞に安定プールを作成し、生存率が30%未満になるまで細胞を成長させた。アネツマブを、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて馴化培地から精製した。SPDB-DM4(Levena BioPharma)とのリジン反応性コンジュゲーションによってBAY 94-9343を作成し、3.7のDARを実現した。非コンジュゲート型ペイロードを脱塩クロマトグラフィーによって除去した。
【0366】
15.1.2 インビボ有効性
動物:入荷時に5週齢の雌NCrヌードマウス(Taconic)を接種前に5~7日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物には耳標を付け、研究開始前に秤量した。
【0367】
細胞培養:凍結保存NCI-N87細胞を解凍し、必要な補足成分を含有する培地で成長させた。細胞を完全培地で2代にわたって継代培養した後、インビボ接種に使用した。
【0368】
腫瘍移植、登録手順及び治療:PBS中の細胞懸濁液を1.0×10細胞/mLの最終濃度となるように氷冷Matrigelと1:1(vol:vol)で混合した。100μL/マウスの混合物を皮下注射した。マウスの臨床的ウェルビーイングに関して、移植後3日目から週3回、体重及びデジタルノギスによる腫瘍測定値でモニタした。
【0369】
腫瘍測定及び治療:腫瘍容積(TV)(mm)は、以下の式を用いて計算した:W(mm)×L(mm)×D(mm)×π/6。腫瘍が平均約100mmに達したとき、動物を各群5匹に無作為化した。治療は、200μLの容積の被験物質を静脈内投与した。研究終了時、最終的な体重を測定し、記録した。
【0370】
統計分析:腫瘍容積及び体重のデータに関して記述統計量を求めた。反復測定二元配置ANOVAと、続くボンフェローニ事後検定を用いることにより、各治療群の動物の腫瘍容積を対照群と比較した。加えて、各群内での動物の腫瘍成長比較を同じ統計分析で実施した。
【0371】
15.2 結果
MORAb-109(DAR2)及びBAY 94-9343は両方とも、NCI-N87腫瘍担持マウスにおいて同程度の有効性を実証した(図28A)。いずれの群においても体重減少は観察されなかった(図28B)。
【0372】
実施例16:ヒト中皮腫(HAY)異種移植モデルにおけるMORAb-109及びBAY 94-9343の抗腫瘍有効性
16.1 方法
動物:入荷時に5週齢の雌NOD.CB17-SCIDマウス(Jackson Laboratory)を接種前に5~7日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物には耳標を付け、研究開始前に秤量した。
【0373】
細胞培養:凍結保存HAY細胞を解凍し、必要な補足成分を含有する培地で成長させた。細胞を完全培地で2代にわたって継代培養した後、インビボ接種に使用した。
【0374】
腫瘍移植、登録手順及び治療:PBS中の細胞懸濁液を5.0×10細胞/mLの最終濃度となるように氷冷Matrigelと1:1(vol:vol)で混合した。100μL/マウスの混合物を皮下注射した。マウスの臨床的ウェルビーイングに関して、移植後3日目から週3回、体重及びデジタルノギスによる腫瘍測定値でモニタした。
【0375】
腫瘍測定及び治療:腫瘍容積(TV)(mm)は、以下の式を用いて計算した:W(mm)×L(mm)×D(mm)×π/6。腫瘍が平均約100mmに達したとき、動物を各群5匹に無作為化した。治療は、200μLの容積の被験物質を静脈内投与した。研究終了時、最終的な体重を測定し、記録した。
【0376】
統計分析:腫瘍容積及び体重のデータに関して記述統計量を求めた。反復測定二元配置ANOVAと、続くボンフェローニ事後検定を用いることにより、各治療群の動物の腫瘍容積を対照群と比較した。加えて、各群内での動物の腫瘍成長比較を同じ統計分析で実施した。
【0377】
16.2 結果
MORAb-109(DAR2)及びBAY 94-9343は両方とも、HAY腫瘍担持マウスにおいて同程度の有効性を実証した(図29A)。いずれの群においても体重減少は観察されなかった(図29B)。
【0378】
実施例17:ヒト中皮腫PDXモデル(Meso7212)におけるMORAb-109及びBAY 94-9343の抗腫瘍有効性
17.1 方法
動物:入荷時点で5~6週齢のNMRI nu/nu雌マウス(Janvier Labs)を接種前に少なくとも4日間順化させた。動物は、換気されたケージに各3~5匹のマウスを飼育し、滅菌飼料ペレット及び給水ボトルは自由に利用可能とした。動物に耳印を付け、研究開始前に秤量した。
【0379】
異種移植:0日目、無菌条件下で5匹のドナーマウスからMeso 7212腫瘍を採取した。腫瘍組織を2×2mm片に切り出し、0.9%生理食塩水で覆われている滅菌ペトリ皿に置いた。並行して、受容側の動物を鎮痛薬Metacam(登録商標)(2mg/kg)で皮下治療し、次にEtomidat-Lipuro(登録商標)(12mg/kg)の単回静脈内注射(0.15mL/マウス)によって麻酔した。左側腹部の5~8mmの皮膚に表層縦切開を入れた。側腹部から直接切開部に外科用ハサミの先端を挿入し、それを用いて皮下腔にポケットを形成した。外科用ピンセットを用いてポケットに各マウス1つの腫瘍片を移植した。最後に、金属クリップで切開部を閉じ、動物を清潔なケージに入れた。
【0380】
実験手順:異種移植後、マウスにおける腫瘍の生着及び増殖を触診によって少なくとも週2回コントロールした。腫瘍が触知可能なったところで、デジタルノギス(Mitutoyo)による腫瘍直径の測定を実施した。
【0381】
治療開始前、動物をその腫瘍容積に基づいて実験群に無作為に割り付けた(腫瘍容積の組入れ基準、0.1~0.3cm)。治療初日から、腫瘍容積及び体重を週2回記録した。動物福祉を1日2回検査した。
【0382】
治療:薬剤は、全て無作為化当日に単回用量として静脈内投与した。対照群の動物は、同じ方法でDPBSによって治療した。
【0383】
統計分析:腫瘍容積及び体重のデータに関して記述統計量を求めた。反復測定二元配置ANOVAと、続くボンフェローニ事後検定を用いることにより、各治療群の動物の腫瘍容積を対照群と比較した。加えて、各群内での動物の腫瘍成長比較も同じ統計分析で実施した。
【0384】
17.2 結果
MORAb-109(DAR2)及びBAY 94-9343は両方とも、Meso7212腫瘍担持マウスにおいて腫瘍退縮を実証した(図30A)。いずれの群においても体重減少は観察されなかった(図30B)。
【0385】
実施例18:ヒトNSCLC PDXモデル(LXFA-586)におけるMORAb-109及びBAY 94-9343の抗腫瘍有効性
18.1 方法
動物:雌NMRI nu/nuマウス、4~6週齢。
【0386】
異種移植:原発性非小細胞肺腺癌ヒト患者由来のLXFA-586樹立増殖腫瘍(T2N1M0)。
【0387】
実験手順:十分な数の動物において腫瘍移植片が50~250mm(例えば、80~200mm)の研究容積基準に達するまで、動物をモニタした。腫瘍容積中央値及び平均値が同等の群となることを目指して、マウスを群に割り付けた。群への割り付け作業(登録、層別無作為化)は、無作為化と称することもできる。無作為化当日を実験0日目に指定した。
【0388】
治療:各6~7匹のマウスの4群で有効性を評価した:
・群1では、1日目に媒体を5mL/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群2では、1日目にBAY 94-9343(DAR約4)を25mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群3では、1日目にMORAb-109(DAR2)を25mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群4では、1日目にエリブリンを3.2mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
【0389】
実験期間中は週2回、腫瘍を測定し、マウスを秤量した。無作為化(0日目)の翌日の投与初日が1日目であった。
【0390】
18.2 結果
MORAb-109(DAR2)は、LXFA-586 NSCLC PDXモデルにおいて25mg/kgでロバストな抗腫瘍有効性を実証し(T/C最小値、41日目に1.8%)(図31A)、研究中にそのTqに達することはなかった。単回用量で投与したMORAb-109も、LXFA-586腫瘍担持マウスによって体重減少なしに良好に忍容された(図31B)。
【0391】
BAY 94-9343(DAR約4)は、LXFA-586 NSCLC PDXモデルにおいて25mg/kgでMORAb-109と同程度のロバストな抗腫瘍有効性を実証し(図31A)、研究中にそのTqに達することはなかった。しかしながら、BAY 94-9343中のDM4ペイロードのモル量は、MORAb-109中のエリブリンペイロードの量のおよそ2倍である。
【0392】
静脈内経路によって3.2mg/kg(マウスMTD投薬量又は10mg/kgで投与したときのMORAb-109におけるエリブリンのモル量の32倍)の単回用量で投与したエリブリンは、LXFA-586腫瘍担持マウスによって良好に忍容され、抗腫瘍有効性を示した(T/C最小値、21日目に14.8%)。しかしながら、エリブリンは、投与後に僅かな一過性の体重減少を引き起こした(図31A及び図31B)。
【0393】
実施例19:ヒトNSCLC PDXモデル(LXFL-529)におけるMORAb-109及びBAY 94-9343の抗腫瘍有効性
19.1 方法
動物:雌NMRI nu/nuマウス、4~6週齢。
【0394】
異種移植:原発性非小細胞肺腺癌ヒト患者からのLXFL-529樹立増殖腫瘍(T3N1M0)。
【0395】
実験手順:十分な数の動物において腫瘍移植片が50~250mm(例えば、80~200mm)の研究容積基準に達するまで、動物をモニタした。腫瘍容積中央値及び平均値が同等の群となることを目指して、マウスを群に割り付けた。群への割り付け過程(登録、層別無作為化)は、無作為化と称することもできる。無作為化当日を実験0日目に指定した。
【0396】
治療:各6~7匹のマウスの6群で有効性を評価した:
・群1では、1日目に媒体を5mL/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群2では、1日目にBAY 94-9343(DAR約4)を12.5mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群3では、1日目にエリブリンを3.2mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群4では、1日目にMORAb-109(DAR2)を25mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群5では、1日目にMORAb-109(DAR2)を12.5mg/kg、i.v.、単回用量で投与した。
・群6では、MORAb-109(DAR2)を12.5mg/kg、i.v.、1、8及び16日目の用量で投与した。
【0397】
実験期間中は週2回、腫瘍を測定し、マウスを秤量した。無作為化(0日目)の翌日の投与初日が1日目であった。
【0398】
19.2 結果
MORAb-109(DAR2)は、LXFL-529 NSCLC PDXモデルにおいて12.5及び25mg/kgでロバストな抗腫瘍有効性を実証した(図32A)。単回用量で投与したMORAb-109も、LXFL-529腫瘍担持マウスによって体重減少なしに良好に忍容された(図32B)。
【0399】
しかしながら、BAY 94-9343(DAR約4)は、12.5mg/kg(25mg/kgのMORAb-109中のエリブリンペイロードの量と等価なDM4ペイロードのモル量)では、抗腫瘍有効性を実証しなかった(図32A)。
【0400】
静脈内経路によって3.2mg/kg(マウスMTD投薬量)の単回用量で投与したエリブリンは、LXFL-529腫瘍担持マウスによって良好に忍容され、抗腫瘍有効性を示した。しかしながら、エリブリンは、投与後に僅かな一過性の体重減少を引き起こした(図32A及び図32B)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図18C
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
図27
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
図31A
図31B
図32A
図32B
【配列表】
2023500875000001.app
【国際調査報告】