(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ニチノール針の電解研磨のための電解質溶液
(51)【国際特許分類】
C25F 1/08 20060101AFI20221228BHJP
C25F 3/26 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C25F1/08
C25F3/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525720
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 IB2020059575
(87)【国際公開番号】W WO2021090088
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】オウ・デュアン・リ
(57)【要約】
低有害電解研磨プロセスが、ニチノール針の表面から酸化物層を除去するために開発されてきた。低濃度のクエン酸及びスルファミン酸を中濃度の硫酸と混合して、電解質溶液として使用する。プロセスは、現在の縫合針製造プロセス並びにニチノール含有医療デバイスの電解研磨を必要とするプロセスに容易に取り付けることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル-チタン表面から酸化物層を除去するのに好適な電解研磨溶液であって、
a)約25~50重量%の硫酸と、
b)約0.5~10重量%のクエン酸と、
c)約0.2~2重量%のスルファミン酸と、を含む、非アルコール性水溶液を含む、電解研磨溶液。
【請求項2】
前記非アルコール性水溶液が、
a)約30~45重量%の硫酸と、
b)約0.8~5重量%のクエン酸と、
c)約0.5~1.5重量%のスルファミン酸と、を含む、請求項1に記載の電解研磨溶液。
【請求項3】
前記非アルコール性水溶液が、
a)約35~40重量%の硫酸と、
b)約1~2重量%のクエン酸と、
c)約0.8~1.2重量%のスルファミン酸と、を含む、請求項1に記載の電解研磨溶液。
【請求項4】
前記非アルコール性水溶液が、
a)約38重量%の硫酸と、
b)約1重量%のクエン酸と、
c)約1重量%のスルファミン酸と、を含む、請求項1に記載の電解研磨溶液。
【請求項5】
前記非アルコール性水溶液が、
a)約25~50重量%の硫酸と、
b)約0.5~10重量%のクエン酸と、
c)約0.2~2重量%のスルファミン酸と、
d)約0.2~2重量%のニッケル塩とその水和物と、を含む、請求項1に記載の電解研磨溶液。
【請求項6】
前記非アルコール性水溶液が、
a)約35~40重量%の硫酸と、
b)約1~2重量%のクエン酸と、
c)約0.8~1.2重量%のスルファミン酸と、
d)約1~2重量%のニッケル塩とその水和物と、を含む、請求項1に記載の電解研磨溶液。
【請求項7】
前記非アルコール性水溶液が、
a)約37重量%の硫酸と、
b)約1重量%のクエン酸と、
c)約1重量%のスルファミン酸と、
d)約1重量%の硫酸ニッケル六水和物と、を含む、請求項1に記載の電解研磨溶液。
【請求項8】
金属表面を電解研磨するためのプロセスであって、
d)金属を提供することと、
e)少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード、及び前記金属を浸漬するのに十分な溶液の量の請求項1に記載の前記電解溶液の前記封じ込めのための槽を含む電解研磨デバイスを提供することと、
f)前記アノードを前記金属に接触させることと、
g)前記金属を前記電解槽に浸漬することと、
h)前記金属を1~5アンペアの電流に、ある時間供して、前記金属を研磨することと、を含む、プロセス。
【請求項9】
前記電解溶液が、請求項2に記載の組成物を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記電解溶液が、請求項3に記載の組成物を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記電解溶液が、請求項4に記載の組成物を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
前記電解溶液が、請求項5に記載の組成物を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項13】
前記電解溶液が、請求項6に記載の組成物を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項14】
前記電解溶液が、請求項7に記載の組成物を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項15】
前記電解溶液が、40~80℃の温度に維持される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項16】
前記電流が、約10~30秒維持される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項17】
請求項8~16のいずれか一項に記載のプロセスによって製造された医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係する技術分野は、医療デバイスに見られるものなどのニッケル-チタン(ニチノール)合金表面、特にニチノール外科用針の電解研磨に関する。
【背景技術】
【0002】
ニチノールは、航空宇宙から生物医薬品までのエンジニアリングの広範囲において興味深い用途を見出した形状記憶/超弾性合金として分類され、後者の用途は、その固有の特性に加えて、その生体適合性によるものである。形状記憶及び擬弾性などの独特の特性は、超弾性縫合針などの多くの機能設計においてニチノールを優れた候補にする。しかしながら、この合金の製造及び処理複雑化は、大規模な工業プロセスに対して障害をもたらす。本発明は、ニチノールベースの医療デバイス及び特にニチノール縫合針の製造スケール電解研磨プロセスのための解決策を提示する。
【0003】
ニッケルチタン合金ワイヤ(例えば、ニチノール)の表面を電解研磨することは現在、可燃性及び毒性溶媒(例えば、以下:「電解研磨固定具及びニチノールステント研磨用の電解質溶液及びその使用方法」、欧州特許出願第1255880(A1)号)を使用する必要があるため可燃性であるか、又は、高度に腐食性(すなわち、フッ化物)及びアルコール系(例えば、「有機溶液中の電解研磨」米国特許出願第20060266657号を参照)である解決策が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この技術分野において、医療デバイスを含むニッケルチタン用の新規の非有害電解研磨溶液が必要とされている。本発明は、非アルコール性不燃性水溶液を使用してニッケル-チタン合金を電解研磨するための電解研磨溶液及びプロセスを提示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、非アルコール性水溶液を含むニッケル-チタン表面から酸化物層を除去するのに適した電解研磨溶液に関し、
約25~50重量%の硫酸と、
約0.5~10重量%のクエン酸と、
約0.~2重量%のスルファミン酸と、を含む。
【0006】
本発明の別の態様は、金属表面を電解研磨するためのプロセスに関し、
金属を提供することと、
少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード、及び金属を浸漬するのに十分な量の本発明の新規電解溶液の封じ込めのための槽を含む電解研磨デバイスを提供することと、
アノードを金属に接触させることと、
金属を電解槽に浸漬することと、
金属を1~5アンペアの電流に、ある時間供して、金属を研磨することと、を含む。
【0007】
典型的には、電解溶液は、プロセスにおいて40~80℃の温度で維持され、1~5アンペアの範囲の電流は、約10~30秒間維持される。
【0008】
本発明のこれら及びその他の態様並びに利点は、以下の説明及び添付の図面からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本特許又は出願書類は、カラーで作成した少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を有する、本特許の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許商標庁によって提供されるであろう。
【
図1】本発明の電解質溶液で処理する前の、40ミル(0.040インチ)のニチノール針の画像である。
【
図2】本発明の電解質溶液で処理された電解研磨された50ミル(0.050インチ)ニチノールワイヤの画像である。
【
図3】本発明の電解質溶液で処理された電極研磨40ミル(0.040インチ)ニチノール針の画像である。
【
図4】本発明の電解質溶液で処理された電極研磨40ミル(0.040インチ)ニチノール針の画像である。
【
図5】本発明の範囲内にない比較電解質溶液で処理された、電解研磨された40ミル(0.040インチ)ニチノール針の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ニッケル-チタン合金(ニチノール)針を電解研磨するための方法及び電解溶液は、以前の製造工程中に形成された針の表面上の酸化物層(複数可)の除去を確実にするために開発される。非アルコール性溶液中の中濃度の硫酸と混合された低濃度のクエン酸及びスルファミン酸は、不燃性である電解研磨プロセスのための優れた電解溶液を提供することを見出した。このプロセスは、既存の機器を用いて現在の製造プロセスに容易に取り付けることができる。
【0011】
金属表面の電解研磨は、電解質を用いて槽中に浸漬された金属表面に電流を通すことを含む。金属表面は、電源の正極(アノード)に接続され、負極は、電解質の槽内に位置する特殊電極(カソード)に接続される。
【0012】
電解溶液中の硫酸の有用な濃度に関して、硫酸の最小濃度は約25重量%である。濃度が高いほど、溶液はより腐食性が高くなる。推奨濃度は、約50重量%未満であり、好ましくは約30~45重量%、より好ましくは約35~40重量%、最も好ましくは約38重量%の硫酸の範囲である。
【0013】
電解溶液中のクエン酸濃度の有用な範囲は、約0.5~10重量%、好ましくは約0.8~5重量%、より好ましくは約1~2重量%、最も好ましくは約1重量%のクエン酸である。
【0014】
電解溶液中のスルファミン酸濃度の有用な範囲は、約0.2~2重量%、好ましくは約0.5~1.5重量%、より好ましくは約0.8~1.2重量%、最も好ましくは約1重量%のスルファミン酸である。
【0015】
任意選択的に、電解溶液へのNi2+イオンに寄与する物質を添加することが望ましい。そのようなNi2+イオン寄与物質としては、ニッケル(II)硝酸、塩化ニッケル(II)、ニッケル(II)ホスフェート及びニッケル(II)硫酸塩及びそれらの水和物などのニッケル塩が挙げられる。好ましい形態は、硫酸ニッケル(II)六水和物である。電解溶液中のこれらのニッケル塩濃度のいずれかの有用な範囲は、約0.2~2重量%、好ましくは約0.5~1.5重量%、より好ましくは約0.8~1.2重量%、最も好ましくは約1重量%である。最も好ましいのは、約1重量%の硫酸ニッケル六水和物である。
【0016】
使用中、本発明の新規電解溶液は、金属表面を電解研磨するためのプロセスにおいて使用され、
金属を提供することと、
少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード、及び金属を浸漬するのに十分な溶液の量で電解溶液を封じ込めるための槽と、を備える電解研磨デバイスを提供することと、
アノードを金属に接触させることと、
金属を電解槽に浸漬することと、
金属を1~5アンペアの電流に、ある時間供して、金属を研磨することと、を含む。
【0017】
電解研磨プロセス中に電解質溶液に使用される温度範囲は、約40~80℃である。ステンレス鋼針の現在の電解研磨プロセスを覆う典型的な温度は、約60℃である。
【0018】
本発明の電解研磨プロセスに好適な典型的な電流は、約1~5アンペア(amps又はA)の電流の使用を含む。当業者は、電流が処理される金属及びそのサイズに基づいて変化し得ることを理解するであろう。直径50ミル(0.050インチ)のニチノール針の電解研磨時間では、10~30秒の単一の針のプロセス時間にわたって約3Aがある。当業者は、金属の色が暗黒色/暗褐色から銀に変化すると、電解研磨プロセスが完了することを認識するであろう。
【0019】
好都合には、本発明の新規電解質溶液と共に使用されるすべての電解研磨パラメータは、ステンレス鋼針の電解研磨の現在のプロセスパラメータ内にある。これにより、本プロセスは、資本機器の大きな変化なしに、典型的な電解研磨ラインに容易に実装される。
【0020】
図1は、本発明の新規電解質溶液で処理する前に、典型的な40ミルのニチノールテーパ針がどのように見えるかを示す。
図1を参照すると、針の先端から針のステム上の位置まで始まる暗黒色/暗褐色の酸化物コーティングを見る。
【0021】
図2は、50ミルのワイヤに対する提案されたプロセスによる電解研磨の効果を示す。ワイヤの直線部分(領域B)は、研磨溶液の外に残され、対照として使用される。写真に示されるように、青色酸化物は、38重量%の硫酸、1重量%のクエン酸、及び1重量%のスルファミン酸を含有する電解質溶液中で50℃で30秒後に完全に除去された(領域A)。電流は、電解研磨プロセスの3Aであった。
【実施例】
【0022】
以下の実施例は、新規の電解質溶液がニチノール針上でどのように機能するか、酸化物除去に対するその意味が、研磨された針とシリコーン潤滑との間の接着によって示され、これは、針貫通測定によって測定されることを示す。
【0023】
以下の針貫通試験によって実証されるように、本発明の実施例から作製されたニチノール針の電解研磨表面は、シリコーンコーティングへの良好な接着性を有する。医療デバイスのコーティング性能は、様々な摩擦又は付着試験で試験され得る。外科用針の場合、コーティング性能及び完全性は、貫通試験デバイスを使用して評価される。コーティングされた外科用針を、自動ロック式ピンセット、又は同様の保持デバイスを使用して保持する。その後、コーティングされた針を、一般的なヒト組織を表す媒体に通過させる。針の長さの約半分を媒体に通過させ、その後、次の通過前に引き抜く。試験媒体は、典型的には、合成ゴムの一種である(Duraflex(商標),Manufacture by Monmouth Rubber and Plastic Corporation,Monmouth,NJ)。典型的な試験は、個々に媒体に各20回通過した10本の針を使用することを含む。各通過における最大力を記録し、コーティング性能の指標として使用する。典型的には、貫通力は、コーティングが針から擦り減るにつれて、一連の各通過に伴って増加する。設備及び方法の更なる詳細が、また、米国特許第5,181,416号で見ることができる。
【0024】
本発明の実施例1:本発明の溶液を用いた、本発明の電解質溶液1及び40ミルのテーパポイントニチノール針の電解研磨の調製
38.77gの98%硫酸溶液(Sigma Aldrich)を1gのクエン酸(Sigma Aldrich)及び1gのスルファミン酸(Sigma Aldrich)と、59.23gの水と、周囲温度で1時間混合した。この溶液により、約38重量%の硫酸、1重量%のクエン酸%、及び1重量%のスルファミン酸の水溶液が得られた。140ミルのテーパポイントニチノール針をアノードとして使用し、これを通して3Aの電流がこの電解質溶液で60℃で30秒間流動した。
図3に示すように、針(図示せず)の表面上の酸化物を除去し、電解研磨の結果として針を銀にした。
【0025】
本発明の実施例2:この溶液を用いた、本発明の電解質溶液2及び40ミルのテーパポイントニチノール針の電解研磨の調製
37.76gの98%硫酸溶液(Sigma Aldrich)を、1gのクエン酸(Sigma Aldrich)、1gのスルファミン酸(Sigma Aldrich)、1gのニッケル(II)硫酸塩六水和物(Sigma Aldrich)及び59.24gの水と、周囲温度で1時間混合した。この溶液により、約38重量%の硫酸、1重量%のスルファミン酸、1重量%のクエン酸及び1重量%のニッケル(II)六水和物硫酸を含む水溶液をもたらした。140ミルのタッパポイントニチノール針をアノードとして使用し、これを通して3Aの電流がこの電解質溶液で60℃で15秒間流動した。
図4に示すように、針(図示せず)の表面上の暗紫色の酸化物を除去し、電解研磨の結果として針を銀にした。本発明の実施例1と比較して、ニチノール針からの酸化物除去を完了するために、時間の半分(15秒対30秒)のみを要したことに留意されたい。
【0026】
対照例1:硫酸のみを含む従来の電解質溶液の調製
38.77gの98%硫酸溶液を、61.23gの水と周囲温度で1時間混合した。この溶液により、約38重量%の硫酸を含有する水溶液が得られた。1つの40ミルのテーパポイントニチノール針をアノードとして使用し、これを通して3Aの電流がこの電解質溶液で60℃で30秒間流動した。ニチノール針上に色変化の兆候は観察されなかった(図示せず)。処理時間はさらに2分間行われ、針の色は変化しないままであり、これは、ニチノール針の表面上の酸化物層が、電解溶液中でのみ硫酸を使用して除去することができないことを示す。
【0027】
対照例2:硫酸及びクエン酸のみを含む従来の電解質溶液の調製
38.77gの98%硫酸溶液及び1gのクエン酸を、60.23gの水と周囲温度で1時間混合した。この溶液により、約38重量%の硫酸及び1重量%のクエン酸を含有する水溶液が得られた。1つの40ミルのテーパポイントニチノール針をアノードとして使用し、これを通して3Aの電流がこの電解質溶液で60℃で30秒間流動した。ニチノール針では色の変化の兆候は観察されなかった。処理時間をさらに2分間行い、
図5に示すように針の色をわずかに深い青色に変化させ、これは、ニチノール針の表面上の酸化物除去が、電解溶液中の硫酸及びクエン酸を使用して効率的ではないことを示す。
【0028】
浸透試験実施例:ニチノール針のコーティング及び試験
10個の電解研磨40ミル先細ポイントニチノール針の1つのセットを、実施例1aに記載のシリコーン溶液でコーティングし、米国特許公開第2018/0353990号の実施例2aに記載されている方法で、等数の未研磨ニチノール針と一緒にコーティングした。同じ幾何学的形状(CT-1)を有する従来のステンレス鋼針の1つのセットはまた、同じシリコーン溶液でコーティングした。全ての6セットの針を浸透試験に供し、結果を表1に要約する。
【0029】
【0030】
表1を参照すると、ニチノール針の表面上の酸化物(以前のプロセスステップから得られる)は、針へのシリコーンコーティング層の接着に影響を及ぼす。電解研磨による酸化物除去により、研磨された針(本発明の実施例1及び2)における浸透性能の改善によって例示されるように、シリコーン潤滑層間のニチノール針の表面への接着がより良好になる。未研磨針及び対照例から調製されたそれらのニチノール針(対照例1及び対照例2)の浸透性能と比較した。本発明の新規電解溶液で処理された電解研磨ニチノール針の浸透性能(本発明の実施例1及び2)は、酸化物層を有しない従来のステンレス鋼針と同等であり、同じシリコーンコーティングを有する。
【0031】
まとめると、低コストで害の少ない不燃性の電解溶液が、ニチノール針の表面上の酸化物層を除去するために開発された。低濃度のクエン酸及びスルファミン酸を、中濃度の硫酸に添加した。この溶液は、現在の電解研磨装置に容易に添加することができる。
【0032】
以上、本発明をその詳細な実施形態について図示及び説明してきたが、当業者であれば、特許請求される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の形態及び詳細に様々な変更を行い得る点が理解されるであろう。
【0033】
〔実施の態様〕
(1) ニッケル-チタン表面から酸化物層を除去するのに好適な電解研磨溶液であって、
a)約25~50重量%の硫酸と、
b)約0.5~10重量%のクエン酸と、
c)約0.2~2重量%のスルファミン酸と、を含む、非アルコール性水溶液を含む、電解研磨溶液。
(2) 前記非アルコール性水溶液が、
a)約30~45重量%の硫酸と、
b)約0.8~5重量%のクエン酸と、
c)約0.5~1.5重量%のスルファミン酸と、を含む、実施態様1に記載の電解研磨溶液。
(3) 前記非アルコール性水溶液が、
a)約35~40重量%の硫酸と、
b)約1~2重量%のクエン酸と、
c)約0.8~1.2重量%のスルファミン酸と、を含む、実施態様1に記載の電解研磨溶液。
(4) 前記非アルコール性水溶液が、
a)約38重量%の硫酸と、
b)約1重量%のクエン酸と、
c)約1重量%のスルファミン酸と、を含む、実施態様1に記載の電解研磨溶液。
(5) 前記非アルコール性水溶液が、
a)約25~50重量%の硫酸と、
b)約0.5~10重量%のクエン酸と、
c)約0.2~2重量%のスルファミン酸と、
d)約0.2~2重量%のニッケル塩とその水和物と、を含む、実施態様1に記載の電解研磨溶液。
【0034】
(6) 前記非アルコール性水溶液が、
a)約35~40重量%の硫酸と、
b)約1~2重量%のクエン酸と、
c)約0.8~1.2重量%のスルファミン酸と、
d)約1~2重量%のニッケル塩とその水和物と、を含む、実施態様1に記載の電解研磨溶液。
(7) 前記非アルコール性水溶液が、
a)約37重量%の硫酸と、
b)約1重量%のクエン酸と、
c)約1重量%のスルファミン酸と、
d)約1重量%の硫酸ニッケル六水和物と、を含む、実施態様1に記載の電解研磨溶液。
(8) 金属表面を電解研磨するためのプロセスであって、
d)金属を提供することと、
e)少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード、及び前記金属を浸漬するのに十分な溶液の量の実施態様1に記載の前記電解溶液の前記封じ込めのための槽を含む電解研磨デバイスを提供することと、
f)前記アノードを前記金属に接触させることと、
g)前記金属を前記電解槽に浸漬することと、
h)前記金属を1~5アンペアの電流に、ある時間供して、前記金属を研磨することと、を含む、プロセス。
(9) 前記電解溶液が、実施態様2に記載の組成物を有する、実施態様8に記載のプロセス。
(10) 前記電解溶液が、実施態様3に記載の組成物を有する、実施態様8に記載のプロセス。
【0035】
(11) 前記電解溶液が、実施態様4に記載の組成物を有する、実施態様8に記載のプロセス。
(12) 前記電解溶液が、実施態様5に記載の組成物を有する、実施態様8に記載のプロセス。
(13) 前記電解溶液が、実施態様6に記載の組成物を有する、実施態様8に記載のプロセス。
(14) 前記電解溶液が、実施態様7に記載の組成物を有する、実施態様8に記載のプロセス。
(15) 前記電解溶液が、40~80℃の温度に維持される、実施態様8に記載のプロセス。
【0036】
(16) 前記電流が、約10~30秒維持される、実施態様8に記載のプロセス。
(17) 実施態様8~16のいずれかに記載のプロセスによって製造された医療デバイス。
【国際調査報告】