(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】胎児/新生児同種抗体血小板減少症のマウスモデル
(51)【国際特許分類】
A01K 67/027 20060101AFI20221228BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20221228BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221228BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N15/10 Z
G01N33/53 N
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526031
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 US2019059869
(87)【国際公開番号】W WO2021091539
(87)【国際公開日】2021-05-14
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522176252
【氏名又は名称】ヴァーシティ ブラッド リサーチ インスティテュート ファウンデーション, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン ピーター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジ ホイイン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
GPIIIaにT30A、S32P、Q33L、N39DおよびM470Q変異を含むトランスジェニックマウス、ならびにトランスジェニックマウスを作製する方法およびトランスジェニックマウスを使用して試験化合物をスクリーニングする方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号25と少なくとも95%の同一性を有する変異体血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)をコードする核酸をゲノムが含むトランスジェニックマウスであって、前記変異体GPIIIaが、配列番号25における変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む、トランスジェニックマウス。
【請求項2】
配列番号26に示される配列を含む変異体GPIIIaを発現する、請求項1記載のトランスジェニックマウス。
【請求項3】
前記変異体GPIIIaが、配列番号25に関して変異V22Mをさらに含む、請求項1記載のトランスジェニックマウス。
【請求項4】
前記変異体GPIIIaが抗HPA-1a抗体に結合することができる、請求項1~3のいずれか一項記載のトランスジェニックマウス。
【請求項5】
変異体血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)に特異的に結合することができる分子を同定するインビトロ方法であって、
a)候補分子を請求項1~4のいずれか一項記載のトランスジェニックマウス由来の血小板と接触させること、および
b)前記候補分子が前記血小板に結合するかどうかを判定することを含み、
前記候補分子が前記トランスジェニックマウス由来の前記血小板に結合するが、野生型マウス由来の血小板には結合しない場合、前記候補分子が前記変異体GPIIIaに特異的に結合することができる、方法。
【請求項6】
前記候補分子が、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)
2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
雌マウスにおいて抗HPA-1a同種免疫応答を防止することができる分子を同定するインビボ方法であって、
a)野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ抗HPA-1a抗体について陰性である試験マウスに候補分子を投与すること、および
b)前記試験マウスにおける抗HPA-1a抗体力価を測定することを含み、
単一抗原ビーズアッセイによって測定された前記試験マウスにおける前記抗HPA-1a抗体力価が産後2週間で検出不能である場合、前記候補分子が抗HPA-1a同種免疫応答を防止することができる、方法。
【請求項8】
前記試験マウスにおける前記抗HPA-1a抗体力価が、産後6週間で検出不能である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記候補分子が、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)
2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
抗HPA-1a同種抗体が胎児または新生児血小板に結合するのを阻害することができる分子を同定するインビボ方法であって
a)野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ妊娠前に(i)請求項1に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板、または(ii)配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaで免疫化された試験マウスに候補分子を投与すること、および
b)胎児または新生児の血小板数を測定することを含み、
前記試験マウスの子における前記胎児または新生児血小板数が対照マウスの子における前記胎児または新生児血小板数よりも多い場合、前記候補分子が、抗HPA-1a同種抗体が胎児または新生児血小板に結合するのを阻害することができる、方法。
【請求項11】
対照マウスの子と比較して、前記試験マウスの子における出血が減少または防止される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記候補分子が、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)
2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
抗HPA-1a同種抗体が妊娠マウスの胎盤を通過するのを阻害することができる分子を同定するインビボ方法であって、
a)野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ妊娠前に(i)請求項1に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板、または(ii)配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaで免疫化された試験マウスに候補分子を投与すること、および
b)胎児または新生児抗HPA-1a抗体力価を測定することを含み、
前記試験マウスの子における前記胎児または新生児抗体力価が対照マウスの子における前記胎児または新生児抗体力価よりも低い場合、前記候補分子が、抗HPA-1a同種抗体が前記妊娠マウスの胎盤を通過するのを阻害することができる、方法。
【請求項14】
対照マウスの子と比較して、前記試験マウスの子における出血が減少または防止される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記候補分子が、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)
2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
配列番号26または配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む変異体血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)。
【請求項17】
請求項16記載の変異体GPIIIaへの結合について抗HPA-1a抗体と競合することができる分子を同定するインビトロ方法であって、
a)基質上に固定化される前記変異体GPIIIaを、標識を含む前記抗HPA-1a抗体と接触させてGPIIIa-抗体複合体を形成すること、
b)前記GPIIIa-抗体複合体を溶液中の候補分子と接触させること、および
c)前記基質上または前記溶液中の標識の量を検出することによって、前記候補分子が前記変異体GPIIIaに結合する抗HPA-1a抗体と競合するかどうかを判定することを含み、
前記基質上で検出された標識の量が、前記GPIIIa-抗体複合体と前記候補分子とを接触させる前に前記基質上で検出された標識の量と比較して、前記GPIIIa-抗体複合体と前記候補分子とを接触させた後に減少する場合、前記候補分子が、前記変異体GPIIIaへの結合について前記抗HPA-1a抗体と競合することができ、
または、前記溶液中の標識の量が、前記GPIIIa-抗体複合体を前記候補分子と接触させる前の前記溶液中の標識の量と比較して、前記GPIIIa-抗体複合体を前記候補分子と接触させた後に増加する場合、前記候補分子が、前記変異体GPIIIaへの結合について前記抗HPA-1a抗体と競合することができる、方法。
【請求項18】
前記抗HPA-1a抗体がモノクローナル抗体26.4である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記標識が、フルオロフォア、放射性同位体、化学発光プローブおよび生物発光プローブからなる群より選択される、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記基質が、ビーズ、樹脂、粒子、膜およびゲルからなる群より選択される、請求項17、18または19記載の方法。
【請求項21】
前記候補分子が、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)
2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される、請求項17~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
請求項1~4のいずれかに記載のトランスジェニックマウスを作製する方法であって、
a)受精マウス卵母細胞の細胞質にi)Cas9ヌクレアーゼまたはCas9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド、ii)マウスITGB3エクソン3を標的とするgRNA、iii)マウスITGB3エクソン10を標的とするgRNA、iv)配列番号25に関するGPIIIaにおいてT30A、S32P、Q33LおよびN39D変異をコードする一本鎖相同組換え修復(HDR)鋳型オリゴヌクレオチド、およびii)配列番号25に関するGPIIIaにおいてM470Q変異をコードする一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドを注入すること;
b)前記注入された卵母細胞から発生した2細胞期胚を偽妊娠雌マウスの卵管に移植すること;および
c)前記偽妊娠雌から生まれたマウスを、配列番号25に関するGPIIIaにおけるT30A、S32P、Q33L、N39DおよびM470Q変異の存在についてスクリーニングすることを含む、方法。
【請求項23】
ITGB3エクソン10を標的とする前記gRNAが配列番号7を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
M470Q変異をコードする前記一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドが、診断制限部位をさらにコードする、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
M470Q変異をコードする前記一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドが、ITGB3エクソン10に対する1つ以上のサイレント変異をさらにコードして、エクソン10におけるITGB3のCas9による反復消化をサイレンシングする、請求項22~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
M470Q変異をコードする前記一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドが、配列番号8を含む、請求項22~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
ITGB3エクソン3を標的とする前記gRNAが配列番号1を含む、請求項22~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
T30A、S32P、Q33L、およびN39D変異をコードする前記一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドが、診断制限部位をさらにコードする、請求項22~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
T30A、S32P、Q33LおよびN39D変異をコードする前記一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドが、ITGB3エクソン3に対する1つ以上のサイレント変異をさらにコードして、エクソン3におけるITGB3のCas9による反復消化をサイレンシングする、請求項22~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
T30A、S32P、Q33LおよびN39D変異をコードする前記一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドが、配列番号4を含む、請求項22~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
配列番号27と少なくとも95%の同一性を有する変異体血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)をコードする核酸をゲノムが含むトランスジェニックマウスであって、前記変異体GPIIIaが、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む、トランスジェニックマウス。
【請求項32】
配列番号27に示される配列を含む変異体GPIIIaを発現する、請求項31記載のトランスジェニックマウス。
【請求項33】
前記変異体GPIIIaが抗HPA-1a抗体に結合することができる、請求項31または32記載のトランスジェニックマウス。
【請求項34】
野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)、および配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29D、およびM470Qを含む変異体GPIIIaについてヘテロ接合性の子を妊娠しているマウス。
【請求項35】
抗HPA-1a抗体について陽性である、請求項34記載のマウス。
【請求項36】
妊娠前に、(i)請求項1に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板、または(ii)配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaで免疫化された、請求項35記載のマウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
該当なし。
【0002】
[EFS-WEBを通して提出された配列表の参照]
「160180_00134_ST25.txt」と名付けられたサイズ29.0kbの配列表のASCIIテキストファイルの内容は2019年11月4日に作成され、本明細書と共にEFS-Webを通して電子的に提出されたものであり、本出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
血小板特異的抗原に対する同種抗体は、臨床的に重要な3つの出血障害、輸血後紫斑病(PTP)、血小板輸血不応状態(RPT)および胎児/新生児同種免疫血小板減少症(FNAIT-文献ではNATPまたはNAITと様々に呼ばれている-総説については参考文献1を参照)の原因である。PTPは、経産婦が輸血を受けた後に、輸血された血小板だけでなく自身の血小板も不可解に消失する希少難治性疾患であり、重度の血小板減少症、挫傷、および点状出血をもたらす。RPTは、血小板を何度も輸血され、臨床的に問題のままである患者に見られ、出血合併症および入院の延長につながる。RPTは、免疫原因と非免疫原因とに分離され得る。免疫原因には、妊娠、輸血および/または移植からの事前曝露に起因する、HLAおよび/または血小板特異的抗原に対する同種免疫化が含まれる。非免疫原因には、急性骨髄性白血病(AML)患者または造血前駆細胞移植を受けた患者に関する研究に基づいて、発熱、敗血症、脾腫、播種性血管内凝固症候群(DIC)、出血、静脈閉塞性疾患(VOD)、移植片対宿主病(GVHD)および医薬品が含まれる54。PTPまたはRPTとは異なり、FNAITはかなり一般的な障害であり、おおよそ出生数1000人中1人~2000人中1人に重篤な胎児および/または新生児血小板減少症をもたらす2、3。多くの乳児は問題なく回復するが、FNAITは胎児および新生児における重度の血小板減少症の主な原因であり、ほぼ半分は「抗原陰性」血小板の輸血を必要とするほど重篤な出血を経験している4。しかしながら、FNAITの最も破壊的な結果は、早ければ妊娠20~24週での頭蓋内出血および子宮内死亡である2、5、6。治療の進歩にもかかわらず、FNAITは、満期出産児における頭蓋内出血の主要な原因のままであり4、7~10、多くの場合生涯にわたる身体障害をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過去60年間にわたって多くの研究室で行われた研究により、International Society of Blood Transfusion(ISBT)のPlatelet Nomenclature CommitteeおよびISTHによって現在認識されている11、5つの異なる糖タンパク質上に位置する30を超える別個の遺伝性ヒト血小板特異的同種抗原(HPA)系(HPA 1~30)の同定に至った。これらのうち、HPA-1a(PlA1としても知られる)エピトープは、PTPおよびFNAITを最も一般的に誘発するものであり、同種抗体が検出され得る症例の原因の約80%を占めており12、したがって最も広範囲に研究されている。しかしながら、当該技術分野では、HPA-1a/1bエピトープ研究のための改善されたモデル、ならびにPTPおよびFNAITの改善された診断、予防、および治療方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主要な態様のいくつかを以下に要約する。さらなる態様は、本開示の発明の詳細な説明、実施例、図面、および特許請求の範囲のセクションに記載されている。本開示の各セクションの説明は、他のセクションと併せて読まれることが意図されている。さらに、本開示の各セクションに記載された様々な実施形態は、様々な異なる方法で組み合わせることができ、実施形態の任意のおよびすべてのそのような組み合わせは、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0006】
第一の態様では、配列番号25と少なくとも95%の同一性を有する変異体血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)をコードする核酸をゲノムが含むトランスジェニックマウスが本明細書で提供され、変異GPIIIaは、配列番号25における変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む。いくつかの実施形態では、マウスは、配列番号26に示される配列を含む変異体GPIIIaを発現する。いくつかの実施形態では、変異体GPIIIaは、配列番号25に関して変異V22Mをさらに含む。いくつかの実施形態では、変異体GPIIIaは抗HPA-1a抗体に結合することができる。
【0007】
第2の態様では、変異体血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)に特異的に結合することができる分子を同定するインビトロ方法が本明細書で提供され、方法は、候補分子を本明細書に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板と接触させること、および候補分子が血小板に結合するかどうかを判定することを含み、候補分子がトランスジェニックマウス由来の血小板に結合するが、野生型マウス由来の血小板には結合しない場合、候補分子は変異体GPIIIaに特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、候補分子は、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される。
【0008】
第3の態様では、雌マウスにおいて抗HPA-1a同種免疫応答を防止することができる分子を同定するインビボ方法が本明細書で提供され、方法は、野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ抗HPA-1a抗体について陰性である試験マウスに候補分子を投与すること、および試験マウスにおける抗HPA-1a抗体力価を測定することを含み、単一抗原ビーズアッセイによって測定された試験マウスにおける抗HPA-1a抗体力価が分娩後2週間で検出不能である場合、候補分子は抗HPA-1a同種免疫応答を防止することができる。いくつかの実施形態では、試験マウスにおける抗HPA-1a抗体力価は、分娩後6週間で検出不能である。いくつかの実施形態では、候補分子は、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される。
【0009】
第4の態様では、抗HPA-1a同種抗体が胎児または新生児血小板に結合するのを阻害することができる分子を同定するインビボ方法が本明細書で提供され、方法は、野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ妊娠前に(i)本明細書に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板、または(ii)配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaで免疫化された試験マウスに候補分子を投与すること、および胎児または新生児の血小板数を測定することを含み、試験マウスの子における胎児または新生児血小板数が対照マウスの子における胎児または新生児血小板数よりも多い場合、候補分子は、抗HPA-1a同種抗体が胎児または新生児血小板に結合するのを阻害することができる。いくつかの実施形態では、対照マウスの子と比較して、試験マウスの子において出血が減少または防止される。いくつかの実施形態では、候補分子は、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される。
【0010】
第5の態様では、抗HPA-1a同種抗体が妊娠マウスの胎盤を通過するのを阻害することができる分子を同定するインビボ方法が本明細書で提供され、方法は、野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ妊娠前に(i)本明細書に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板、または(ii)配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaで免疫化された試験マウスに候補分子を投与すること、および胎児または新生児抗HPA-1a抗体力価を測定することを含み、試験マウスの子における胎児または新生児抗体力価が対照マウスの子における胎児または新生児抗体力価よりも低い場合、候補分子は、抗HPA-1a同種抗体が妊娠マウスの胎盤を通過するのを阻害することができる。いくつかの実施形態では、対照マウスの子と比較して、試験マウスの子において出血が減少または防止される。いくつかの実施形態では、候補分子は、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される。
【0011】
第6の態様では、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む変異体血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)が本明細書で提供される。
【0012】
第7の態様では、本明細書に記載の変異体GPIIIaへの結合について抗HPA-1a抗体と競合することができる分子を同定するインビトロ方法が本明細書で提供され、方法は、基質上に固定化される変異体GPIIIaを、標識を含む抗HPA-1a抗体と接触させてGPIIIa-抗体複合体を形成すること、GPIIIa-抗体複合体を溶液中の候補分子と接触させること、および基質上または溶液中の標識の量を検出することによって、候補分子が変異体GPIIIaに結合する抗HPA-1a抗体と競合するかどうかを判定することを含み、基質上で検出された標識の量が、GPIIIa-抗体複合体と候補分子とを接触させる前に基質上で検出された標識の量と比較して、GPIIIa-抗体複合体と候補分子とを接触させた後に減少する場合、候補分子は、変異GPIIIaへの結合について抗HPA-1a抗体と競合することができ、または、溶液中の標識の量が、GPIIIa-抗体複合体を候補分子と接触させる前の溶液中の標識の量と比較して、GPIIIa-抗体複合体を候補分子と接触させた後に増加する場合、候補分子は、変異GPIIIaへの結合について抗HPA-1a抗体と競合することができる。いくつかの実施形態では、抗HPA-1a抗体はモノクローナル抗体26.4である。いくつかの実施形態では、標識は、フルオロフォア、放射性同位体、化学発光プローブおよび生物発光プローブからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、基質は、ビーズ、樹脂、粒子、膜およびゲルからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、候補分子は、抗体、Fv、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、および前述のいずれかの一本鎖形態からなる群から選択される。
【0013】
第8の態様では、本明細書に記載のトランスジェニックマウスを作製するための方法が本明細書で提供され、方法は、受精マウス卵母細胞の細胞質にi)Cas9ヌクレアーゼまたはCas9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド、ii)マウスITGB3エクソン3を標的とするgRNA、iii)マウスITGB3エクソン10を標的とするgRNA、iv)配列番号25に関してGPIIIaのT30A、S32P、Q33LおよびN39D変異をコードする一本鎖相同組換え修復(HDR)鋳型オリゴヌクレオチド、およびii)配列番号25に関してGPIIIaのM470Q変異をコードする一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドを注入すること;注入された卵母細胞から生成された2細胞期胚を偽妊娠雌マウスの卵管に移植すること;および偽妊娠雌から生まれたマウスを、配列番号25に関してGPIIIaのT30A、S32P、Q33L、N39DおよびM470Q変異の存在についてスクリーニングすることを含む。いくつかの実施形態では、ITGB3エクソン10を標的とするgRNAは、配列番号7を含む。いくつかの実施形態では、M470Q変異をコードする一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドは、診断制限部位をさらにコードする。いくつかの実施形態では、M470Q変異をコードする一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドは、ITGB3エクソン10に対する1つ以上のサイレント変異をさらにコードして、エクソン10におけるITGB3のCas9による反復消化をサイレンシングする。いくつかの実施形態では、M470Q変異をコードする一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドは、配列番号8を含む。いくつかの実施形態では、ITGB3エクソン3を標的とするgRNAは、配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、T30A、S32P、Q33L、およびN39D変異をコードする一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドは、診断制限部位をさらにコードする。いくつかの実施形態では、T30A、S32P、Q33L、およびN39D変異をコードする一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドは、ITGB3エクソン3に対する1つ以上のサイレント変異をさらにコードして、エクソン3におけるITGB3のCas9による反復消化をサイレンシングする。いくつかの実施形態では、T30A、S32P、Q33L、およびN39D変異をコードする一本鎖HDR鋳型オリゴヌクレオチドは、配列番号4を含む。
【0014】
第9の態様では、配列番号27と少なくとも95%の同一性を有する変異血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)をコードする核酸をゲノムが含むトランスジェニックマウスが本明細書で提供され、変異体GPIIIaは、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む。いくつかの実施形態では、マウスは、配列番号27に示される配列を含む変異体GPIIIaを発現する。いくつかの実施形態では、変異体GPIIIaは抗HPA-1a抗体に結合することができる。
【0015】
第10の態様では、野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)、および配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29D、およびM470Qを含む変異体GPIIIaについてヘテロ接合性の子を妊娠しているマウスが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、マウスは抗HPA-1a抗体について陽性である。いくつかの実施形態では、マウスを妊娠前に、(i)本明細書に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板、または(ii)配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaで免疫した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A-1B】ヒトGPIIIa PSIドメインおよびEGF1ドメインの三次元構造を示す。PSIドメインはGPIIIaのハイブリッドドメインとEGF1ドメインとの間にあり、HPA-1a(Pl
A1)エピトープの発現を制御する多型アミノ酸33は、EGF1ドメインの直線的に離れているが立体配置的に近い反対側にあることに留意されたい。Cys
13とのジスルフィド結合を介してEGF1ドメインをPSIドメインに連結するCys
435へのアラニンの変異は、すべてではないが一部の母体抗HPA-1a同種抗体の結合の喪失をもたらすことが以前に示されており、EGF1中の非多型アミノ酸がこれらのいわゆるII型抗体のエピトープの一部を構成するという推測につながる。
【
図2A-2F】APLDヒト化トランスジェニックマウスのCRISPR媒介発生を示す。
図2A:GPIIIa PSIドメインの三次元構造あり、マウスタンパク質中で変異して22~40アミノ酸ループをヒト化した残基の位置を示す。
図2B:ITGB3遺伝子座の概略図であり、gRNA結合部位(赤色の棒)、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列(マゼンタ色の棒)、およびCas9切断部位(赤色の矢印の先)の位置を示す。200bpのAPLD相同組換え修復(HDR)鋳型を、4つの所望のアミノ酸置換(赤色で標識された変異ヌクレオチド)、および80ヌクレオチド相同アームに隣接する診断用BamH1制限部位(青色で標識されたサイレント変異ヌクレオチド)を導入するように設計した。HDR鋳型はまた、サイレント変異をコードするヌクレオチド(緑色)を導入して、Cas9による再切断を防止する。
図2C:パネルBに示される、ITGB3遺伝子へのCas9ヌクレアーゼを標的化とするように設計された20bp gRNAを、Cas9およびピューロマイシン耐性遺伝子の両方をコードするCRISPRベクターpx459のBbsI部位にクローニングした。C57BL/6N受精卵の前核に、HDR鋳型と共にpx459プラスミドを微量注入して、ヒト化APLDマウスを作製した。
図2D:マウスITGB3遺伝子の標的部位を取り囲む717bp領域内へのHDR鋳型の組み込みを報告するように設計されたPCR戦略。導入されたBamH1を青色のボックスでマークする。
図2E:2匹の代表的な子の遺伝子型決定:子の尾からのゲノムDNAをPCR増幅し、BamH1で消化して、正しく標的化されたAPLD対立遺伝子を同定した。子#1のPCR産物をBamH1で切断し、HDRオリゴの取り込みの成功を実証する。矢印は、予想されるBamH1消化産物を示す。
図2F:ゲノム編集部位を取り囲むITGB3遺伝子座を、子#1のゲノムDNAからPCR増幅し、DNA配列分析に供したところ、マウスITGB3の両方の対立遺伝子へのヒト配列の正確なホモ接合性組込みが確認された。
【
図3A-3B】APLDヒト化マウスPSIドメインが、すべてではないが多くのヒト抗HPA-1a同種抗血清の結合を支援することを示す。
図3A:HPA-1a選択的マウスmAb、SZ21のヒトおよびマウス血小板への結合のフローサイトメトリー分析。SZ21は、アロ選択性を示し、HPA-1bではなく、ヒトHPA-1a陽性のヒト血小板に結合し、野生型ではなく、APLDマウス血小板に結合することに留意されたい。PSIドメイン特異的mAbであるPSIB1は、GPIIb-IIIaの発現の陽性対照として使用され、示されるように、種またはHPAアロタイプにかかわらず、すべてのPSIドメインに結合する。
図3B:ヒトおよびマウス形態のGPIIb-IIIaに結合する抗HPA-1a母体同種抗血清の抗原捕捉ELISA分析。5つの異なるヒトFNAIT同種抗血清を、示された表現型のヒトまたはマウスの血小板と共にインキュベートした。次いで、血小板/抗体複合体を界面活性剤溶解し、マウス血小板から免疫複合体を捕捉するための抗マウスCD41、またはヒト血小板から免疫複合体を捕捉するためのmAb AP2のいずれかでコーティングされたマイクロタイターウェルに添加した。ヒト同種抗血清2、3および4はヒトGPIIb-IIIaおよびAPLDマウスGPIIb-IIIaと同様に反応するが、同種抗血清1および5はマウスAPLD GPIIb-IIIaと反応せず、これらのポリクローナル血清中に存在するHPA-1a特異的同種抗体の大部分は、より複雑なエピトープ要件を有することを示唆していることに留意されたい。予想されるように、いずれのFNAIT同種抗血清も野生型マウスGPIIb-IIIaと反応しない。
【
図4A-4B】II型抗HPA-1a抗体の結合のための構造的要件を示す。
図4A:HPA-1a特異的モノクローナル抗体の、ヒトおよびマウス血小板との反応性のフローサイトメトリー分析。示された種からの、示された表現型を有する血小板を、mAb SZ21、26.4およびB2G1と反応させた。II型mAb 26.4は、
図4Bに示すように、PSIドメインに空間的に近いEGF1ドメインの残基470でマウスGPIIIaがMetからGlnにヒト化されることを必要とすることに留意されたい。別のII型HPA-1a特異的mAbであるB2G1は、APLDQ血小板と非反応性のままであり、HPA-1aエピトープの形成を制御するLeu33Pro多型に対するポリクローナル体液性応答におそらくは存在する結合特異性の複雑さを強調している。
【
図5A-5C】I-EGF1内の複数のアミノ酸がII型抗HPA-1a抗体の結合に寄与し得ることを示す。
図5A:PSIおよびI-EGF1ドメインのヒト対マウスの比較であり、相違が赤色で強調される。特に、PSIドメインにおけるAPLD配列ならびにEGF1内のQ470M、H446P、G463DおよびP464Qの相違に留意されたい。
図5B:β3 PSIおよびI-EGF1ドメインと結合した抗体B2G1の可変領域の構造モデル。抗体は、表示されるCDRループと共に黄褐色の表面として示され、一方、抗原-抗体界面のインテグリンβ3残基の側鎖は、棒および点として示されている。界面相互作用残基には、多型アミノ酸33だけでなく、PSIドメイン中のP
32、ならびにI-EGF1のH
446およびQ
470も含まれることに留意されたい。G
463およびP
464が、界面の近くにはないことにも留意されたい。
図5C上:ヒトGPIIb、および示されたヒト化アミノ酸置換を発現するように変異させたマウスGPIIIaアイソフォームを発現するプラスミドで一過性にトランスフェクションしたHEK293細胞を、示された抗体とインキュベートし、フローサイトメトリー分析に供した。PSIドメイン特異的mAb、PSIB1をトランスフェクション効率の対照として使用した。
図5Bのドッキングモデルで予測されるように、mAb 26.4はその結合にQ
470を必要とするが、B2G1はQ
470とH
446の両方を必要とすることに留意されたい。
図5C下:ヒトGPIIb、および示されたマウスアミノ酸を発現するように変異させたヒトGPIIIaアイソフォームを発現するプラスミドでトランスフェクションしたHEK293細胞を、示された抗体を使用してフローサイトメトリー分析に供した。Q
470→M変異は26.4とB2G1の両方の結合の喪失をもたらすが、H
446→Pアミノ酸置換はB2G1のみに影響を及ぼすことに留意されたい。
【
図6A-6D】APLDQヒト化トランスジェニックマウスのCRISPR媒介発生を示す。
図6A:GPIIIa PSIドメインの三次元構造あり、APLDマウスGPIIIaタンパク質中でQに変異したEGF1ドメイン中の残基M470の位置を示す。
図6B:ITGB3遺伝子座の概略図であり、gRNA結合部位(赤色の棒)、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列(マゼンタ色の棒)、およびCas9切断部位(赤色の矢印の先)の位置を示す。167bp相同組換え修復(HDR)鋳型を、82および77ヌクレオチド相同アームに隣接するMからQへのアミノ酸置換(赤色で標識された変異ヌクレオチド)を導入するように設計した。HDR鋳型はまた、サイレント変異を導入して(緑色のヌクレオチド)、Cas9による再切断を防止する。
図6C:APLD C57BL/6N受精卵の細胞質に、Cas-9タンパク質、gRNAをHDR鋳型と共に微量注入して、ヒト化APLDQマウスを作製した。
図6D:ゲノム編集部位を取り囲むITGB3遺伝子座を子のゲノムDNAからPCR増幅し、DNA配列分析に供したところ、マウスITGB3の1つの対立遺伝子へのHDR配列の正確なヘテロ接合性組込みが確認された。
【
図7】ヒトおよびマウス形態のGPIIb-IIIaに結合する抗HPA-1a母体同種抗血清の抗原捕捉ELISA分析を示す。16の異なるヒトFNAIT同種抗血清またはPTP同種抗血清を、示された表現型のヒトまたはマウスの血小板と共にインキュベートした。次いで、血小板/抗体複合体を界面活性剤溶解し、マウス血小板から免疫複合体を捕捉するための抗マウスCD41、またはヒト血小板から免疫複合体を捕捉するためのmAb AP2のいずれかでコーティングされたマイクロタイターウェルに添加した。ヒトFNAIT同種抗血清2、3、4、7、11、12、13ならびにPTP同種抗血清2および3はヒトGPIIb-IIIaおよびAPLDマウスGPIIb-IIIaと同様に反応するが、ヒトFNAIT同種抗血清1、5、9、10はマウスAPLD GPIIb-IIIaとあまり反応せず、これらのポリクローナル血清中に存在するHPA-1a特異的同種抗体の大部分は、より複雑なエピトープ要件を有することを示唆していることに留意されたい。予想されるように、いずれのFNAIT同種抗血清も野生型マウスGPIIb-IIIaと反応しない。
【
図8】I型ではなく、II型の抗HPA-1a同種抗体による、ヒトαIIbβ3へのPAC-1結合の阻害を示す。HEK293FT細胞を野生型ヒトαIIbβ3+EGFPでトランスフェクションした。細胞を、I型mAb SZ21、II型mAb B2G1および26.4、または以前に特徴決定されたI型PTP抗血清(PTP-1)、もしくは以前に特徴決定されたII型FNAIT抗血清(FNAIT-5およびFNAIT-9)からの精製IgG画分のいずれかとプレインキュベートした。プレインキュベーション後、フィブリノーゲンリガンド模倣体mAb PAC-1を、0.2mM Ca
+2および2mM Mn
+2を含有する緩衝液中に添加した。EGFP陽性細胞を、フローサイトメトリーによってPAC-1の結合について分析した。PAC-1結合を全β3表面発現に対して正規化し、緩衝液対照のパーセンテージとして示した。データは平均±SD(n≧2)である。モノクローナルおよびポリクローナルのII型抗体の両方が様々な程度でPAC-1結合を阻害するが、I型抗体はほとんど効果がないことに留意されたい。
【
図9】APLD
+/+雄と交配した予備免疫された野生型雌が、重度の血小板減少症の子を出産することを示す。繁殖対照#1は、APLD C57BL/6雄と交雑されたWT非免疫化Balb/c雌である。繁殖対照#2は、WT C57BL/6雄と交雑された免疫化Balb/c雌である。
【
図10A-10D】雌が1回だけ同種免疫化されたにもかかわらず、胎児/新生児血小板減少症が少なくとも5回のその後の妊娠の間持続することを示す。母体抗APLD β3インテグリン抗体は、子における血小板減少症および出血を引き起こす。
【
図11】
図9に示すAPLDモデルと同様に、APLDQ雄と交配した予備免疫された野生型雌が、重度の血小板減少症の子を出産することを示す。繁殖対照#1は、APLD C57BL/6雄と交雑されたWT非免疫化Balb/c雌である。繁殖対照#2は、WT C57BL/6雄と交雑された免疫化Balb/c雌である。
【
図12A-12D】
図11に概説される繁殖において、子の血小板減少症および出血が最大4回の妊娠まで続くことを示す。母体抗APLD β3インテグリン抗体は、子における血小板減少症および出血を引き起こす。
【
図13】4μg/mlのmAb 26.4が、マウスAPLDQ血小板へのマウスポリクローナル抗APLDQ抗体の結合をインビトロで効率的に阻害することを示す。2μg/ml~16μg/mlの間で試験したすべての濃度が、結合を効果的に阻害した。
【
図14】IVIGおよびmAb 26.4処置プロトコルを示す。交配後10日目および17日目にIV導入された1g/kgのヒトIVIGによる処置で、APLDQ同種免疫化した雌に生まれた子の血小板数が増加する。同様に、交配後10日目および17日目に導入された30μg/マウスのPG-LALA形態のmAb 26.4による処置で、APLDQ同種免疫化した雌に生まれた子の血小板数が増加する。
【
図15】IVIGおよびPG-LALA 26.4の両方が、APLDQ同種免疫化雌マウスの子における血小板数を効果的に上昇させることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[参照による組み込み]
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許および特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
FNAITおよびPTPは、血小板特異的抗原に対する同種抗体によって引き起こされる出血障害である。HPA-1a(Pl
A1としても知られる)エピトープは、PTPおよびFNAITを最も一般的に誘発するヒト血小板同種抗原であり、同種抗体が検出され得る症例の原因の約80%を占める。HPA-1a/-1b同種抗原系は、血小板膜糖タンパク質(GP)IIIa
13、14(=αIIbβ3血小板フィブリノーゲン受容体のβ3インテグリンサブユニット)におけるLeu33Pro多型によって制御され、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のHLA-DRB3*0101対立遺伝子も有する、Pro
33(=HPA-1b)ホモ接合性個体は、GPIIIaのLeu
33(HPA-1a)形態に対する同種免疫応答を発生させるリスクが最も高い
15-17。多型アミノ酸33は、プレキシン、セマフォリン、インテグリン(PSI)ドメインとして知られている高度にジスルフィド結合した結び目様構造内に位置し、それ自体はGPIIIaのハイブリッドおよびインテグリン上皮成長因子1(EGF、I-EGF1)ドメインの間にある
18(
図1A~
図1Bを参照されたい)。興味深いことに、I型抗体として分類されるいくつかの母体抗HPA-1a同種抗体が、PSIドメインとEGF1ドメインとを連結するジスルフィド結合が破壊されたGPIIIaの変異型に正常に結合する一方、その他(II型)は反応性を失い
19、(1)HPA-1aに対する同種免疫応答が不均一であること、および(2)直線的に離れたEGFドメイン内の配列が、少なくともいくつかの母体抗HPA-1a抗体についてGPIIIa上で高親和性抗体を形成するように要求され得ることを実証している(
図1A~
図1Bに概略的に示す)。
【0019】
多型アミノ酸33を取り囲む分子の領域におけるGPIIIaの三次元構造データの分析に基づいて、本明細書中に記載されるのは、PSIおよびEGF1ドメイン内に選択されたヒト化残基を有するマウスGPIIIaアイソフォームを発現したトランスジェニックマウスである。選択されたヒト化残基を有するGPIIIaアイソフォームに対する、一連のモノクローナルおよびポリクローナルHPA-1a特異的抗体の結合も記載されている。結合は、この臨床的に重要なヒト血小板同種抗原系に対するポリクローナル同種免疫応答の複雑な不均一性を示す。この同種免疫応答の高分解能マッピングは、FNAITの診断を改善し得、予防的および治療的抗HPA-1a剤の合理的な設計、選択および/またはスクリーニングを容易にするはずである。
【0020】
現在、ヒトFNAITにおいて見られるような、GPIIIaに対する抗HPA-1a抗血清に由来する広範囲のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の結合を正確に反映する、FNAITの動物モデルは存在しない。さらに、予防的および治療的試薬の設計、選択およびスクリーニングに適したFNAITの動物モデルは存在しない。これは、ヒトGPIIIaと比較したマウスGPIIIaの配列および構造の相違によるものであり、結合モノクローナルおよびポリクローナル抗体の変化をもたらす。
【0021】
GPIIIaにおけるヒト化変異を含むトランスジェニックマウスが本明細書で提供される。GPIIIaの変異によって、マウスは、抗HPA-1a抗血清からのモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体に結合する変異体GPIIIaを発現する。トランスジェニックマウスに由来する細胞および組織も本明細書で提供される。野生型マウスGPIIIa配列は、本明細書では配列番号25として含まれる。トランスジェニックマウスGPIIIa配列は、GPIIIa(配列番号25)中に少なくともT30A、S32P、Q33L、N29D、およびM470Q変異を含み、抗HPA-1a抗体、ならびにいくつかの実施形態ではモノクローナルおよびポリクローナル抗HPA-1a抗体に結合することができる変異体GPIIIaをもたらす。いくつかの実施形態では、変異体GPIIIa配列は、配列番号25の少なくともM470Q変異およびアミノ酸残基22~40の変異を含み、アミノ酸残基22~40は、ヒトGPIIIaのPSIドメインにおける、EGF1およびEGF2ドメインに隣接するループ領域に対応する配列MCAWCSDEALPLGSPRCD(配列番号28)で置き換えられている。一実施形態では、変異体GPIIIaは、モノクローナル抗体26.4に結合することができる。いくつかの実施形態では、トランスジェニックマウスは、配列番号26のアミノ鎖配列を含む変異GPIIIaを発現する。いくつかの実施形態では、トランスジェニックマウスは、配列番号27のアミノ鎖配列を含む変異GPIIIaを発現する。
【0022】
マウスGPIIIa(配列番号25)
ESNICTTRGVNSCQQCLAVSPVCAWCSDETLSQGSPRCNLKENLLKDNCAPESIEFPVSEAQILEARPLSSKGSGSSAQITQVSPQRIALRLRPDDSKIFSLQVRQVEDYPVDIYYLMDLSFSMKDDLSSIQTLGTKLASQMRKLTSNLRIGFGAFVDKPVSPYMYISPPQAIKNPCYNMKNACLPMFGYKHVLTLTDQVSRFNEEVKKQSVSRNRDAPEGGFDAIMQATVCDEKIGWRNDASHLLVFTTDAKTHIALDGRLAGIVLPNDGHCHIGTDNHYSASTTMDYPSLGLMTEKLSQKNINLIFAVTENVVSLYQNYSELIPGTTVGVLSDDSSNVLQLIVDAYGKIRSKVELEVRDLPEELSLSFNATCLNNEVIPGLKSCVGLKIGDTVSFSIEAKVRGCPQEKEQSFTIKPVGFKDSLTVQVTFDCDCACQAFAQPSSPRCNNGNGTFECGVCRCDQGWLGSMCECSEEDYRPSQQEECSPKEGQPICSQRGECLCGQCVCHSSDFGKITGKYCECDDFSCVRYKGEMCSGHGQCNCGDCVCDSDWTGYYCNCTTRTDTCMSTNGLLCSGRGNCECGSCVCVQPGSYGDTCEKCPTCPDACSFKKECVECKKFNRGTLHEENTCSRYCRDDIEQVKELTDTGKNAVNCTYKNEDDCVVRFQYYEDTSGRAVLYVVEEPECPKGPDILVVLLSVMGAILLIGLATLLIWKLLITIHDRKEFAKFEEERARAKWDTANNPLYKEATSTFTNITYRGT
【0023】
ヒト化マウスGPIIIa変異体1(配列番号26)
ESNICTTRGVNSCQQCLAVSPVCAWCSDEALPLGSPRCDLKENLLKDNCAPESIEFPVSEAQILEARPLSSKGSGSSAQITQVSPQRIALRLRPDDSKIFSLQVRQVEDYPVDIYYLMDLSFSMKDDLSSIQTLGTKLASQMRKLTSNLRIGFGAFVDKPVSPYMYISPPQAIKNPCYNMKNACLPMFGYKHVLTLTDQVSRFNEEVKKQSVSRNRDAPEGGFDAIMQATVCDEKIGWRNDASHLLVFTTDAKTHIALDGRLAGIVLPNDGHCHIGTDNHYSASTTMDYPSLGLMTEKLSQKNINLIFAVTENVVSLYQNYSELIPGTTVGVLSDDSSNVLQLIVDAYGKIRSKVELEVRDLPEELSLSFNATCLNNEVIPGLKSCVGLKIGDTVSFSIEAKVRGCPQEKEQSFTIKPVGFKDSLTVQVTFDCDCACQAFAQPSSPRCNNGNGTFECGVCRCDQGWLGSQCECSEEDYRPSQQEECSPKEGQPICSQRGECLCGQCVCHSSDFGKITGKYCECDDFSCVRYKGEMCSGHGQCNCGDCVCDSDWTGYYCNCTTRTDTCMSTNGLLCSGRGNCECGSCVCVQPGSYGDTCEKCPTCPDACSFKKECVECKKFNRGTLHEENTCSRYCRDDIEQVKELTDTGKNAVNCTYKNEDDCVVRFQYYEDTSGRAVLYVVEEPECPKGPDILVVLLSVMGAILLIGLATLLIWKLLITIHDRKEFAKFEEERARAKWDTANNPLYKEATSTFTNITYRGT
【0024】
ヒト化マウスGPIIIa変異体2(配列番号27)
ESNICTTRGVNSCQQCLAVSPMCAWCSDEALPLGSPRCDLKENLLKDNCAPESIEFPVSEAQILEARPLSSKGSGSSAQITQVSPQRIALRLRPDDSKIFSLQVRQVEDYPVDIYYLMDLSFSMKDDLSSIQTLGTKLASQMRKLTSNLRIGFGAFVDKPVSPYMYISPPQAIKNPCYNMKNACLPMFGYKHVLTLTDQVSRFNEEVKKQSVSRNRDAPEGGFDAIMQATVCDEKIGWRNDASHLLVFTTDAKTHIALDGRLAGIVLPNDGHCHIGTDNHYSASTTMDYPSLGLMTEKLSQKNINLIFAVTENVVSLYQNYSELIPGTTVGVLSDDSSNVLQLIVDAYGKIRSKVELEVRDLPEELSLSFNATCLNNEVIPGLKSCVGLKIGDTVSFSIEAKVRGCPQEKEQSFTIKPVGFKDSLTVQVTFDCDCACQAFAQPSSPRCNNGNGTFECGVCRCDQGWLGSQCECSEEDYRPSQQEECSPKEGQPICSQRGECLCGQCVCHSSDFGKITGKYCECDDFSCVRYKGEMCSGHGQCNCGDCVCDSDWTGYYCNCTTRTDTCMSTNGLLCSGRGNCECGSCVCVQPGSYGDTCEKCPTCPDACSFKKECVECKKFNRGTLHEENTCSRYCRDDIEQVKELTDTGKNAVNCTYKNEDDCVVRFQYYEDTSGRAVLYVVEEPECPKGPDILVVLLSVMGAILLIGLATLLIWKLLITIHDRKEFAKFEEERARAKWDTANNPLYKEATSTFTNITYRGT
【0025】
本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、参照配列と比較して1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を有するポリペプチドを指す。例えば、配列番号26は、配列番号25の変異体である。変異体GPIIIaは、例えば、配列番号25と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一であり、配列番号25に関してT30A、S32P、Q33L、N29D、およびM470Q変異を含むアミノ酸配列を有することができる。いくつかの実施形態では、変異体GPIIIaは、配列番号25に関してT30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Q変異、ならびに配列番号25に関して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、最大15、最大20、最大25、または最大30個の追加のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は保存的置換である。
【0026】
本明細書で使用される「保存的置換」という用語は、1つ以上のアミノ酸が別の生物学的に類似した残基によって置換されていることを示す。例としては、類似の特徴を有するアミノ酸残基、例えば、小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸および芳香族アミノ酸の置換が挙げられる。ペプチドおよびタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関するさらなる情報については、例えば、Bowie et.al.,Science 247:1306-1310(1990)を参照されたい。以下の表では、アミノ酸の保存的置換を物理化学的特性によって分類する。I:中性かつ/または親水性、II:酸およびアミド、III:塩基性、IV:疎水性、V:芳香族、かさ高いアミノ酸。
【表1】
【0027】
以下の表では、アミノ酸の保存的置換を物理化学的特性によって分類する。VI:中性または疎水性、VII:酸性、VIII:塩基性、IX:極性、X:芳香族。
【表2】
【0028】
タンパク質機能に影響を及ぼさない保存的ヌクレオチドおよびアミノ酸置換を同定する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Brummell et al.,Biochem.32:1180-1187(1993);Kobayashi et al.,Protein Eng.12(10):879-884(1999);およびBurks et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:412-417(1997)を参照されたい)。
【0029】
2つ以上の核酸またはポリペプチドの文脈における「同一」または「同一性」パーセントという用語は、配列同一性の一部として保存的アミノ酸置換を考慮せずに、最大の対応性について比較およびアラインメント(必要に応じてギャップの導入)した場合に、同じであるか、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の指定されたパーセンテージを有する2つ以上の配列または部分配列を指す。同一性パーセントは、配列比較ソフトウェアもしくはアルゴリズムを使用して、または目視検査によって測定することができる。当技術分野で知られている様々なアルゴリズムおよびソフトウェアを使用して、アミノ酸またはヌクレオチド配列のアラインメントを得ることができる。
【0030】
そのような配列アラインメントアルゴリズムの非限定的な1つの例は、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:2264-2268(1990)に記載され、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,90:5873-5877(1993)で修正され、NBLASTおよびXBLASTプログラム(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1991))に組み込まれている。特定の実施形態では、Gapped BLASTを、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)に記載されているように使用することができる。BLAST-2、WU-BLAST-2(Altschul et al.,Methods in Enzymology,266:460-480(1996))、ALIGN、ALIGN-2(Genentech、South San Francisco、California)またはMegalign(DNASTAR)は、配列をアライメントするために使用することができる、公開されたさらなるソフトウェアプログラムである。特定の実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して(例えば、NWSgapdna.CMPマトリックスおよび40、50、60、70、または90のギャップ重みおよび1、2、3、4、5、または6の長さ重みを使用して)決定される。特定の代替実施形態では、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))を組み込んだGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して(例えば、BLOSUM 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み、および1、2、3、4、5の長さ重みを使用して)、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを決定することができる。あるいは、特定の実施形態では、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Myers and Millerのアルゴリズム(CABIOS 4:11-17(1989))を使用して決定される。例えば、同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を使用して、かつ残基テーブル、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを含むPAM120を使用して決定することができる。当業者は、特定のアライメントソフトウェアによる最高のアライメントのための適切なパラメータを決定することができる。特定の実施形態では、アライメントソフトウェアのデフォルトパラメータが使用される。同一性を計算するための他のリソースには、Computational Molecular Biology(Lesk ed.,1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith ed.,1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part 1(Griffin and Griffin eds.,1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(G.von Heinje,1987);Sequence Analysis Primer(Gribskov et al.eds.,1991);およびCarillo et al.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載された方法が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「トランスジェニック動物」は、哺乳動物などの非ヒト動物、一般にラットまたはマウスなどのげっ歯類を指し、動物の細胞の1つ以上(好ましくはすべて)が本明細書に記載の導入遺伝子を含む。トランスジェニック動物の他の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類などが挙げられる。本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」は、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれ、したがって成熟動物のゲノムに残り、それによってトランスジェニック動物の1つ以上の細胞型または組織におけるコードされた遺伝子産物の発現を指示する外因性DNAを指す。ノックアウト動物は、トランスジェニック動物の定義に含まれる。
【0032】
胚操作および多能性幹細胞または卵母細胞のエレクトロポレーションまたは微量注入を介してトランスジェニック動物、特にマウスなどの動物を作製する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,736,866号および4,870,009号、米国特許第4,873,191号、米国特許出願第10/006,611号、「Transgenic Mouse Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology)」、Hofker and van Deursen,Editors(Humana Press,Totowa,N.J.,2002);および「Manipulating the Mouse Embryo」、Nagy et al.,Editors(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2002)に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
一般に、本明細書に記載されるトランスジェニックマウスは、本明細書に記載されるように作製されたベクターを受精卵母細胞の前核または細胞質に注入することによって作製され、全細胞のGPIIIaにおいて、配列番号25に関してT30A、S32P、Q33L、N39DおよびM470Q変異を含むトランスジェニックマウスを、標準的なトランスジェニック技術を使用して、例えば「Transgenic Mouse Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology)」、Hofker and van Deursen,Editors(Humana Press,Totowa,N.J.,2002);米国特許第4,736,866および4,870,009号、米国特許第4,873,191および6,791,006号、ならびにHoganの、「Manipulating the Mouse Embryo」、Nagy et al.,Editors(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2002)に記載されるように作製するために使用される。
【0034】
遺伝子を変異させるための方法は、当技術分野で公知である。例えば、Takeda et al.の米国特許第7,022,893号およびGiros et al.の米国特許第6,218,595号、ならびにW.Velander et al.(American Grey Cross)の米国特許第6,344,596号;T.T.Sun(New York University)の米国特許第6,339,183号;D.CooperおよびE.Koren U.S.の米国特許第6,331,658号;H.Lubon et al.(American National Grey Cross;Virginia Polytechnic Institute)の米国特許第6,255,554号;P.Prieto et al.(Abbott Laboratories)の米国特許第6,204,431号;L.Diamond et al.(Nextran Inc.,Princeton,N.J.)の米国特許第6,166,288号;J.M.Hyttinin et al.(Pharming BV)の米国特許第5,959,171号;H.Lubon et al.(American Grey Cross)の米国特許第5,880,327号;G.Bremの米国特許第5,639,457号;I.Garner et al.(Pharmaceutical Proteins Ltd.;Zymogenetics Inc)の米国特許第5,639,940号;W.Drohan et al.(American Grey Cross)の米国特許第5,589,604号;Townes et al.(UAB Research Foundation)の米国特許第5,602,306号;LederおよびStewart(Harvard)の米国特許第4,736,866号;およびMeade and Lonberg(Biogen)の米国特許第4,873,316号を参照されたい。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるようなトランスジェニックマウスは、CRISPR/Cas9媒介相同組換え修復(HDR)を使用して作製される。例えば、Wang et al.(「One-step generation of mice carrying mutations in multiple genes by CRISPR/Cas-mediated genome editing」、Cell,2013,153(4):910-918)を参照されたい。GPIIIaを変異させ、トランスジェニックマウスを作製するために、i)Cas9ヌクレアーゼと、ii)目的の領域を標的とし、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位の前にあるガイドRNA(gRNA)との両方をコードするベクター、および一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)相同組換え修復鋳型を、受精したマウス卵母細胞の前核または細胞質に注入する。いくつかの実施形態では、単離されたgRNA、ssODN HDR鋳型およびCas9ヌクレアーゼが、受精マウス卵母細胞の前核または細胞質に注入される。いくつかの実施形態では、ベクターはレポーター遺伝子または選択マーカーを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、gRNAはマウスITGB3エクソン3を標的とし、ssODN HDR鋳型はGPIIIa T30A、S32P、Q33L、およびN39D変異をコードする。いくつかの実施形態では、マウスITGB3エクソン3を標的とするgRNAは、配列5’-TTCTCCTTCAGGTTACATCG-3’(配列番号1)を有する。いくつかの実施形態では、GPIIIa T30A、S32P、Q33LおよびN39D変異をコードするssODN HDR鋳型は、配列5’-GCCAGGGGGAGGTGACTTACCAGGCAGGAGGCACAGCCGCCCTAGCTCTGATGTTGACCTTTCCCTCGGGCTCTTCTCTTCATAGGCCTTGCCTCTGGGATCCCCACGCTGTGACCTGAAGGAGAACCTGCTGAAGGACAATTGTGCTCCAGAGTCTATTGAGTTCCCAGTCAGTGAGGCCCAGATCCTGGAGGCTAGGC-3’(配列番号4)を有する。いくつかの実施形態では、ssODN HDR鋳型は、診断制限部位を導入するサイレント変異をコードする。いくつかの実施形態では、ssODN HDR鋳型は、目的の標的遺伝子に対するサイレント変異をコードして、得られた変異遺伝子のCas9による反復消化をサイレンシングする。
【0037】
マウスITGB3遺伝子配列は、NCBI Gene ID:16416およびGenBank NC_000077.6として入手可能である。ITGB3におけるA30、P32、L33、D39およびQ470変異に対応するゲノムのヌクレオチド変異を
図2Bおよび
図6Bに概説する。
【0038】
いくつかの実施形態では、gRNAはITGB3エクソン10を標的とし、ssODN HDR鋳型はGPIIIa M470Q変異をコードする。いくつかの実施形態では、マウスITGB3エクソン10を標的とするgRNAは、配列5’-CTCCTCAGAGCACTCACACA-3’(配列番号7)を有する。いくつかの実施形態では、GPIIIa M470Q変異をコードするssODN HDR鋳型は、配列5’-AGCCTTCCAGCCCACGCTGCAACAATGGGAACGGGACTTTTGAGTGTGGGGTGTGCCGCTGTGACCAGGGCTGGCTGGGGTCCCAATGCGAGTGCTCTGAGGAGGATTACCGACCCTCTCAGCAGGAAGAGTGCAGCCCCAAGGAGGGCCAGCCCATCTGCAGCCA-3’(配列番号8)を有する。いくつかの実施形態では、ssODN HDR鋳型は、診断制限部位を導入するサイレント変異をコードする。いくつかの実施形態では、ssODN HDR鋳型は、目的の標的遺伝子に対するサイレント変異をコードして、得られた変異遺伝子のCas9による反復消化をサイレンシングする。
【0039】
トランスジェニック初代動物は、GPIIIaにおけるT30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Q変異の存在に基づいて同定することができる。変異の存在は、例えば、GPIIIa遺伝子の目的の領域のPCR増幅または配列決定によって直接検出され得る。次いで、トランスジェニック初代動物を使用して、導入遺伝子を有するさらなる動物を繁殖させることができる。さらに、GPIIIaにT30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Q変異を有するトランスジェニック動物を、他の導入遺伝子を有する他のトランスジェニック動物とさらに交配することができる。
【0040】
本明細書に記載のトランスジェニック動物、ならびにそれに由来する細胞および組織は、変異体GPIIIaに結合することができる因子、例えばモノクローナルまたはポリクローナル抗HPA-1a抗体またはそのフラグメントの同定および研究に有用である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のトランスジェニック動物を使用して、例えば、血小板数、血小板濃度、出血、または試験因子の薬物動態を監視することによって、RPT、PTP、またはFNAITの治療または予防に有用な試験因子を特徴付けることができる。
【0041】
スクリーニング方法
本発明は、インビトロおよびインビボスクリーニング方法を提供する。一実施形態は、変異体糖タンパク質IIIa(GPIIIa)に特異的に結合することができる分子を同定する、インビトロ方法である。この実施形態の一態様では、候補分子を、変異体GPIIIaをコードする核酸をゲノムが含むトランスジェニックマウス由来の血小板と接触させ、変異体GPIIIaは、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む。候補分子がトランスジェニックマウス由来の血小板に結合するが、野生型マウスまたは変異体GPIIIaを含まないマウス由来の血小板には結合しない場合、候補分子は変異体GPIIIaに特異的に結合するとみなすことができる。
【0042】
血小板結合は、フローサイトメトリー、免疫組織化学、ラジオイムノアッセイ、ELISA、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、バイオレイヤー干渉法および表面プラズモン共鳴を含む公知の方法によって定性的または定量的に測定することができる。
【0043】
別のインビトロ方法は、本発明の変異体GPIIIaへの結合について抗HPA-1a抗体と競合することができる分子を同定することができる。一実施形態では、方法は、(a)基質上に固定化された変異体GPIIIaを、標識を含む抗HPA-1a抗体と接触させてGPIIIa-抗体複合体を形成すること;(b)GPIIIa-抗体複合体を溶液中の候補分子と接触させること;(c)基質上または溶液中の標識の量を検出することによって、抗HPA-1a抗体の変異体GPIIIaへの結合について候補分子が競合するかどうかを決定すること、を含む。候補分子は、変異体GPIIIaに結合すること、および抗体の結合を妨げることによって抗体と競合する。このアッセイにおける陽性結果は、候補分子のGPIIIaへの結合部位が、抗体が結合するGPIIIa上のエピトープと重なるか、またはそれを含むことを示す。特定の実施形態では、変異体GPIIIaは、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む。
【0044】
「標識」は、標識された分子を生成するために、分子に直接的または間接的にコンジュゲートすることができる検出可能な化合物である。標識は、それ自体で検出可能であり得るか(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)、または間接的に、例えば、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的変化を触媒することによって(例えば、酵素標識)、または他の間接的検出手段によって(例えば、ビオチン化)検出され得る。一実施形態では、標識は、フルオロフォア、放射性同位体、化学発光プローブおよび生物発光プローブからなる群より選択される。
【0045】
候補分子による抗HPA-1a抗体結合の防止(すなわち、競合)は、標識の有無を検出することによって決定することができる。例えば、方法がクロマトグラフィーを介して行われる場合、溶出液中の標識の存在は、変異体GPIIIaへの結合についての候補分子による競合を示す。標識の不存在は、固定化GPIIIa上の抗体の保持/結合を示す(すなわち、競合しない、または競合が制限されている)。あるいは、抗体が固定化されている基質を標識の有無について分析することができ、標識の存在は候補分子による競合が制限されていることまたは競合がないことを示し、標識の不存在は候補分子がGPIIIaに結合し、抗体の結合を妨げたことを示す(すなわち、競合する)。I
【0046】
特定の実施形態では、HPA-1a抗体は、PSIB1、SZ21、および26.4からなる群から選択されるモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、抗HPA-1a抗体は26.4である。
【0047】
変異体GPIIIaは、当技術分野で公知の任意の多孔質または非多孔質基質に固定化することができる。固定化基質の非限定的な例としては、ビーズ、樹脂、粒子、膜およびゲルが挙げられる。基質は、アガロース、アルギネート、ガラス、および磁性材料を含む、様々な材料で構成することができる。固定化は、吸着、親和性タグ結合、または共有結合などの任意の既知の方法を使用して達成することができる。
【0048】
本発明によって提供されるインビボ方法の中には、雌マウスにおいて抗HPA-1a同種免疫応答を予防することができる分子を同定する方法がある。一実施形態では、方法は、野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ抗HPA-1a抗体について陰性である試験マウスに候補分子を投与すること、および試験マウスにおいて抗HPA-1a抗体力価を測定することを含む。候補分子は、試験マウスにおける抗HPA-1a抗体力価が、分娩時、産後1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間および/または10週間で検出不能であれば、抗HPA-1a同種免疫応答を予防することができる。
【0049】
本発明はさらに、抗HPA-1a同種抗体が妊娠マウスの胎盤を通過するのを阻害することができる分子を同定するインビボ方法を提供する。一実施形態では、方法は、野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ妊娠前に、(i)本明細書に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板または(ii)配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaで免疫化された試験マウスに候補分子を投与すること、および胎児または新生児の抗HPA-1a抗体力価を測定することを含む。試験マウスの子における胎児または新生児の抗体力価が対照マウスの子における胎児または新生児の抗体力価よりも低い場合、候補分子は、抗HPA-1a同種抗体が妊娠マウスの胎盤を通過するのを阻害することができる。
【0050】
さらに、抗HPA-1a同種抗体が胎児または新生児血小板に結合するのを阻害することができる分子を同定するインビボ方法を提供する。一実施形態では、方法は、野生型血小板膜糖タンパク質IIIa(GPIIIa)と、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaとについてヘテロ接合性である子を妊娠しており、かつ妊娠前に、(i)本明細書に記載のトランスジェニックマウス由来の血小板または(ii)配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaで免疫化された試験マウスに候補分子を投与すること、および胎児または新生児の血小板数を測定することを含む。試験マウスの子における胎児または新生児血小板数が対照マウスの子における胎児または新生児血小板数よりも多い場合、候補分子は、抗HPA-1a同種抗体が胎児または新生児血小板に結合するのを阻害することができる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「対照マウス」は、対照マウスが候補分子で処置されていないことを除いて、比較されている試験マウスと同じ条件を含み、同じ方法および同じ時間枠で評価されるマウスである。例えば、試験マウスを妊娠前に本発明のトランスジェニックマウス由来の血小板または本発明の変異体GPIIIaで免疫化した場合、対照マウスを同じ条件下で予備免疫した。同様に、試験マウスが野生型GPIIIa、ならびに配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaについてヘテロ接合性である子を妊娠している本発明の方法では、対照マウスは、同様のヘテロ接合性の子を妊娠している。特定のパラメータが測定され、かつ/または結果が試験マウスと対照マウスとの間で比較される場合、測定または評価は、同じ条件下で同じ技術/アッセイを使用して行われる。ヘテロ接合性の子の妊娠を達成するために、野生型雌マウスを本発明のトランスジェニック雄マウスと交配する。
【0052】
本発明の方法に従って、多種多様な候補分子をスクリーニングすることができる。本明細書で使用される場合、「候補分子」は、任意の化学化合物であり得る。高分子、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質複合体、糖タンパク質、抗体、オリゴヌクレオチドおよび核酸、ならびに小分子、例えばアミノ酸、ヌクレオチド、有機化合物、無機化合物および有機金属化合物は、候補化合物の例である。候補分子は、天然に存在し得るか、合成され得るか、または天然成分と合成成分の両方を含み得る。
【0053】
本発明の方法において使用またはスクリーニングするための抗体には、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、およびそれらの抗原結合フラグメントが含まれ得る。抗原結合フラグメントには、Fv、F(ab)、F(ab’)およびF(ab’)2が含まれる。前述の抗体および抗原結合フラグメントのそれぞれの一本鎖形態も含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、候補分子は、ライブラリー、例えば無機または有機化学ライブラリー、ペプチドライブラリー、オリゴヌクレオチドライブラリー、抗体ライブラリー、または混合分子ライブラリーのメンバーであり得る。いくつかの実施形態では、方法は、小分子、例えば天然産物またはコンビナトリアル化学ライブラリーのメンバーをスクリーニングすることを含む。
【0055】
候補分子がライブラリー、例えば抗体またはその抗原結合フラグメントを含むライブラリーの一部である場合、本発明の変異体GPIIIaは、エピトープビニングアッセイで使用することができる。エピトープビニングは、標的抗原、例えば、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に対するモノクローナル抗体のライブラリーを特徴付け、選別するために使用され得る競合的イムノアッセイである。類似の標的に対する抗体を、ライブラリー中の他のすべての抗体に対してペアワイズ方式で試験して、抗体が抗原のエピトープへの結合を互いにブロッキングするかどうかを決定する。各抗体の競合的ブロッキングプロファイルは、ライブラリー中の他のすべての抗体に対して作成される。密接に関連するビニングプロファイルは、抗体が同じまたは密接に関連するエピトープを有し、一緒に「ビニング」されることを示す。(例えば、Brooks B.D.,Curr.Drug Discovery Technol.11:109-112(2014);Estep P.et al.、MAbs 5:270-278(2013)を参照されたい。)エピトープビニングは、当技術分野ではエピトープマッピングまたはエピトープ特性決定とも呼ばれる。
【0056】
候補分子は、当技術分野で公知の方法によって、例えば、経口、非経口、吸入、または局所経路のいずれかによって投与することができる。非経口投与には、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸、および膣内投与が含まれる。経口剤形としては、例えば、固体製剤、液体製剤および懸濁製剤が挙げられる。経口胃管栄養法は、経口投与の好ましい形態である。経鼻エアロゾル剤または吸入剤形は、例えば、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製することができる。候補分子は、緩衝剤(例えばアセテート、ホスフェートまたはシトレート緩衝液)、場合により界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、場合により安定剤(例えばヒトアルブミン)などを含む組成物で投与することができる。担体または希釈剤の形態および特徴は、組み合わせる有効成分の量、投与経路および他の周知の変数によって指図することができる。当業者は、候補分子の構造および性質に応じて、適切な経路および剤形を容易に決定することができる。候補分子の投与量は、当業者によって経験的に決定することができる。
【0057】
本発明の方法に応じて、候補分子は、妊娠前、妊娠中および産後の時点で1回または複数回投与することができる。例えば、候補分子は、交配前の1~14日の間、交配後1~24日の間、および/または産後1~28日の間の1回または複数回投与することができる。一実施形態では、候補分子は、交配後10日目および17日目に投与される。当業者は、候補分子およびスクリーニングされている特定の効果に応じて、投与スケジュールを経験的に決定することができる。
【0058】
本発明のいくつかの方法では、雌マウスを妊娠前に変異体GPIIIaで免疫化して、抗HPA-1a抗体の産生を誘導する。いくつかの実施形態では、免疫化は、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaを発現するトランスジェニックマウス由来の血小板の投与を含む。いくつかの実施形態では、免疫化は、例えば、配列番号25に関して変異T30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Qを含む変異体GPIIIaの投与を含む。投与は、既知の方法を介して、好ましくは注射によって行われる。免疫化は、例えば、交配前、マウスの妊娠期間中または子の誕生後の1~14日の間の1回または複数回行うことができる。いくつかの実施形態では、予備免疫化は、交配の1~14日前に1回または複数回行われる。
【0059】
本発明の特定の方法では、母体、胎児および/または新生児の抗HPA-1a抗体力価が測定される。抗体力価は、成体マウス、新生児マウス、または胎児マウスからの試料で測定することができる。抗体力価は、化学発光微粒子イムノアッセイ(CMIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、ラテラルフローアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などを含む公知の方法によって測定することができる。例えば、抗体力価は、ビーズ、マイクロウェルプレートまたは微粒子などの表面上に標識を含む適切な抗原、例えばHPA-1aをコーティングし、抗原を分析される試料と反応させ、次いで標識の強度を測定することによって測定することができる。間接的イムノアッセイも使用することができる。一実施形態では、抗体力価は、単一抗原ビーズアッセイを用いて測定される。一実施形態では、抗体力価は、平均蛍光強度(MFI)値として表される。
【0060】
抗体力価は、スクリーニングアッセイに応じて、1つ以上の時点で評価することができる。例えば、抗体力価は、雌マウスにおいて交配前の1~14日の間、交配後1~24日の間、および/または産後1~28日の間に測定することができる。新生児の抗体力価は、例えば、分娩直後、分娩の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12時間後、ならびに/または分娩の1、2、3、4、5、および/もしくは6日後、ならびに/または分娩の1、2、3、および/もしくは4日後に測定することができる。胎児の抗体力価は、例えば妊娠10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21および/または22日目に測定することができる。いくつかの実施形態では、抗体力価は、候補分子を母親に投与してから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24、30、36、42および/もしくは48時間後、ならびに/または1、2、3、4、5および/もしくは6日後、ならびに/または1、2、3もしくは4週間後に、成体、新生児または胎児マウスで測定される。
【0061】
本発明のいくつかの方法では、胎児または新生児血小板数を、解剖した胎児または新生児から採取した血液中で測定する。血小板数は、血球計を使用して手動で計算することができ、または例えば、光学的光散乱/蛍光分析、フローサイトメトリーもしくはインピーダンス分析を使用する自動化された方法によって測定することができる。血小板数は、スクリーニングアッセイに応じて、1つ以上の時点で決定することができる。例えば、新生児の血小板数は、分娩直後、分娩の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12時間後、ならびに/または分娩の1、2、3、4、5、および/もしくは6日後、ならびに/または分娩の1、2、3、および/もしくは4日後に測定することができる。胎児の血小板数は、例えば妊娠10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21および/または22日目に測定することができる。いくつかの実施形態では、血小板数は、候補分子を母親に投与してから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24、30、36、42および/もしくは48時間後、ならびに/または1、2、3、4、5および/もしくは6日後、ならびに/または1、2、3もしくは4週間後に、胎児または新生児で測定される。
【0062】
本発明のいくつかの態様では、胎児または新生児において出血を評価する。本明細書で使用される「出血」は、胎児または新生児の体腔、四肢、または頭蓋内への血液の貯留を意味する。一実施形態では、出血は頭蓋内出血である。出血は、解剖された胎児または新生児において視覚的に評価することができる。
【0063】
当業者は、評価スケジュールを決定することができ、例えば抗体力価、血小板数、出血などの測定を、候補分子およびそれがスクリーニングされている特定の効果に応じて経験的に決定することができる。
【0064】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で定義および使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、および/または定義された用語の通常の意味を制御すると理解されるべきである。
【0065】
本明細書に開示されるすべての参考文献、特許および特許出願は、それぞれが引用されている主題に関して参照により組み込まれ、場合によっては文書全体を包含し得る。さらに、本明細書で引用または言及される任意の製品の製造業者の説明書またはカタログは、参照により組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれる文献、またはその中の任意の教示は、本発明の実施に使用することができる。参照により本明細書に組み込まれる文献は、先行技術であるとは認められない。
【0066】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、そうでないことが明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されるべきである。
【0067】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または」という語句は、そのように結合された要素、すなわち、場合によっては結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙された複数の要素は、同じ様式で、すなわちそのように結合された要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に特定される要素以外に、具体的に特定される要素に関連するか否かにかかわらず、他の要素が任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンド用語と組み合わせて使用される場合、一実施形態ではAのみ(B以外の要素を任意選択的に含む)、別の実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(任意選択的に他の要素を含む)、等を指すことができる。
【0068】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的であると解釈されるべきであり、すなわち、要素の数またはリストのうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、任意選択的に、追加の列挙されていない項目も含む。明確にそうでないことを示された用語だけ、例えば「~のうちの1つのみ(only one of)」または「~のうちの正確に1つ(exactly one of)」、または特許請求の範囲で使用される場合、「~からなる(consisting of)」は、いくつかの要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「~のうち1つ」、「~のうちの1つのみ」、または「~のうちの正確に1つ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものする。「~から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0069】
実施形態が「含む(comprising)」という言葉で説明されている場合はいつでも、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で説明されている他の類似の実施形態が含まれる。
【0070】
本明細書で使用される場合、数に関して「およそ」または「約」という用語は、特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除いて)、数のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)の5%の範囲内に入る数を含むと一般的に解釈される。
【0071】
数値範囲は、範囲を定義する数を含み、本明細書で提供される任意の個々の値は、本明細書で提供される他の個々の値を含む範囲の終点として機能することができる。例えば、1、2、3、8、9、および10などの値のセットは、1~10、1~8、3~9などの数の範囲の開示でもある。同様に、開示された範囲は、その範囲に包含される各個々の値の開示である。例えば、5~10の記載された範囲は、5、6、7、8、9、および10の開示でもある。
【0072】
本発明は、1つまたは複数の好ましい実施形態に関して説明されており、明示的に述べられたものを除いて、多くの均等物、代替物、変形、および修正が可能であり、本発明の範囲内であることを理解されたい。
【0073】
実施例
実施例1
本明細書中に記載される実施形態は、CRISPR/Cas9媒介相同組換え修復を使用したFNAITのマウスモデルの発生を実証する。具体的には、この実施形態は、配列番号25に関してGPIIIaにT30A、S32P、Q33L、N29DおよびM470Q変異を含むトランスジェニックマウスの発生を実証する。
【0074】
材料および方法
抗体-ヒトGPIIIaのLeu33対立遺伝子アイソフォームに対する特異性を有する、以下の3つの抗体をこの研究で使用した:マウスモノクローナル抗体(mAb)SZ2120、FNAITに罹患した乳児を出産した、HPA-1a同種免疫化女性からの不死化B細胞に由来するヒトmAb 26.421、およびHPA-1a同種免疫化女性からの、ファージディスプレイによって単離されたscFvフラグメントに由来するヒト化IgGであるB2G122。ヒト母体抗HPA-1a抗血清は、Dr.Richard Aster、Dr.Dan Bougie、およびDr.Brian Curtis(Blood Research Institute、BloodCenter of Wisconsin、Milwaukee、WI)によって提供された。ヒトおよびマウス両方のβ3インテグリンPSIドメインの両方に結合し、その結合がLeu33Pro多型23の影響を受けない、マウスmAbであるPSIB1は、親切にもDr.Heyu Ni(University of Toronto)から提供された。GPIIb-IIIa上の複合体依存性エピトープを認識したが、HPA-1a抗体結合を妨害しない24mAb AP2は、Dr.Robert Montgomery(Blood Research Institute、BloodCenter of Wisconsin)から提供された。
【0075】
マウスGPIIIaのAPLDヒト化形態を発現するマウスの一段階発生-gRNAを、オフターゲット効果を最小限に抑えるためにCRISPR Design Tool(crispr.mit.edu)を使用して設計し、5’-NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に先行するように選択した。Cas9、およびITGB3エクソン3を標的とするsgRNA(TTCTCCTTCAGGTTACATCG、配列番号1)を共発現するベクターを生成するために、一対のオリゴ(5’-CACCGTTCTCCTTCAGGTTACATCG-3’(配列番号2)および5’-AAACCGATGTAACCTGAAGGAGAAC-3’(配列番号3))をアニーリングし、Cas9発現プラスミドpx459(Addgene、Cambridge、MA)のBbsI部位にクローニングした。5’-GCCAGGGGGAGGTGACTTACCAGGCAGGAGGCACAGCCGCCCTAGCTCTG-ATGTTGACCTTTCCCTCGGGCTCTTCTCTTCATAGGCCTTGCCTCTGGGATCCCCACGCTGTGACCTGAAGGAGAACCTGCTGAAGGACAATTGTGCTCCAGAGTCTATTGAGTTCCCAGTCAGTGAGGCCCAGATCCTGGAGGCTAGGC-3’(配列番号4)の配列を有する200ヌクレオチド長の一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)をIntegrated DNA Technologies(IDT,Coralville,IA)で合成した。このオリゴは、マウスβ3遺伝子のアンチセンス鎖に対応し、マウスβ3インテグリンサブユニットのPSIドメインに4つのヒトアミノ酸置換を導入する5つのヌクレオチド置換を含む。ssODNはまた、4つのサイレント変異を含み、そのうちの2つは診断用BamH1制限部位をプラスミドに導入し、そのうちの2つはCas9によるヒト化マウスβ3遺伝子の反復消化を回避するように配列を変異させる。
【0076】
C57BL/6N雌マウスを過剰排卵させ、C57BL/6N雄と交配させ、卵管から受精卵を回収した。px459プラスミド(10ng/μl)およびssODN(5ng/μl)を受精卵母細胞の前核に注入した。注入した接合子を、アミノ酸を含む単純カリウム最適化培地(KSOM)中、5%CO2および95%加湿空気中、37°Cで一晩培養した。次いで、二細胞期胚を偽妊娠雌マウスの卵管に移植した。子の尾から単離したゲノムDNAを、PCRおよびその後の配列分析によって遺伝子型決定した。標的遺伝子座を囲む領域を、GPIIIa fw1:5’-AACCATGGAAGGACCATGAC-3’(配列番号5)およびGPIIIa rev1:5’-CACCCCAGTCCTATCCTG-TG-3’(配列番号6)を用いて増幅した。PCR反応は、Herculase II Fusionポリメラーゼ(Agilent、Waldbronn、ドイツ)を用いて行った。PCR産物をQiaQuickスピンカラムを用いて精製し、BamHI(New England Biolabs Inc.,Ipswich,MA)で消化し、2%アガロースゲルで分析し、配列決定してDNA二本鎖切断が忠実に修復されたことを確認した。
【0077】
マウスGPIIIaのAPLDQヒト化形態を発現するマウスの一段階発生-gRNA(CTCCTCAGAGCACTCACACA,(配列番号7))、ssODN 5’-AGCCTTCCAGCCCACGCTGCAACAATGGGAACGGGACTTTTGAGTGTGGGGTGTGCCGCTGTGACCAGGGCTGGCTGGGGTCCCAATGCGAGTGCTCTGAGGAGGATTACCGACCCTCTCAGCAGGAAGAGTGCAGCCCCAAGGAGGGCCAGCCCATCTGCAGCCA-3’(配列番号8)、およびCas-9タンパク質を含むCRISPR/Cas9微量注入カクテルを、受精APLD GPIIIa卵母細胞の細胞質に注入した(
図6A~
図6D)。微量注入から生まれたマウスを、PCRおよびその後の配列決定分析によって所望の点変異の存在についてスクリーニングした。標的遺伝子座を囲む領域を、GPIIIa fw2:5’-GAGAAGGAGCAGTCTTTCACTATCAAGCC-3’(配列番号9)およびGPIIIa rev2:5’-GCAGGAGAAGTCATCGCACTCAC-3’(配列番号10)を用いて増幅した。
【0078】
マウスおよびヒトGPIIIaプラスミドへのアミノ酸置換の導入-マウスGPIIIaをコードするcDNA発現ベクター、pCMV3-マウスITGB3を、Creative Biogene(Shirley、NY)から購入した。Quick-Change site-directed mutagenesis kit(Stratagene,La Jolla,CA)を使用してこのプラスミドにヌクレオチド置換を導入して、T30→A、S32→P、Q33→L、およびN39→Dに変換すると、APLDマウスGPIIIaと呼ばれる、完全ヒト化PSIドメインを含有するマウスGPIIIaをコードするプラスミドが得られた。これを鋳型として使用して、マウスEGF1ドメイン内のM470およびP446をコードするコドンにさらなる変異を導入して、それらをそれぞれQ470およびH446にヒト化し、得られた構築物をAPLDQ、APLDHおよびAPLDQHと呼んだ。逆に、G463P464→DQ、H446→P、およびQ470→M変異をヒトITGB3発現ベクター、pcDNA3-ヒトITGB3に導入して、ヒトEGF1ドメイン内のD463Q464、P446またはM470を含むヒトGPIIIaをコードするプラスミドを作製した。これらの変異を導入するために使用されるプライマーを表1に列挙する。すべての構築物および変異をヌクレオチド配列決定によって確認した。
【0079】
【0080】
野生型および変異αllbβ3アイソフォームの発現-HEK293FT細胞を、マウスまたはヒトGPIIIaの野生型または変異形態をコードするプラスミドと共に、ヒトαIIbをコードするプラスミドでトランスフェクションした。HEK293FT細胞を、トランスフェクションの1日前に、抗生物質を含まない10% FBSを含有するDMEM中で6ウェルプレートで増殖させて、トランスフェクション時に80~90%の細胞密集度を得た。細胞を、250μLのOpti-MEM I Reduced Serum Medium中1μgの各プラスミドおよび5μLのLipofectamine 2000(Invitrogen)でトランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を37°Cでさらに48時間増殖させてタンパク質を発現させた。
【0081】
フローサイトメトリー-一過性にトランスフェクションしたHEK293細胞への抗体結合のフローサイトメトリー分析を、FACSCanto IIまたはAccuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences)を使用してトランスフェクションの48時間後に行った。トランスフェクションされていない細胞を陰性対照として使用した。抗体結合は、FITC標識ヤギ(Fab’)2抗ヒトIgG、FITC標識ヤギ(Fab’)2抗マウスIgGを適宜用いて検出した。FlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.,Ashland,OR)を使用してデータを分析した。
【0082】
抗HPA-1a同種抗体によるヒトαIIbβ3へのPAC-1結合の阻害-HEK293FT細胞を、野生型ヒトαIIbβ3+EGFPでトランスフェクションした。細胞を、2.5μg/mlのmAb SZ21、B2G1、もしくは26.4、または正常対照、PTPもしくはFNAIT試料からの精製された総IgGと共に、室温で30分間、1:50希釈でプレインキュベートし、次いで、0.2mM Ca+2および2mM Mn+2を含む2.5μg/mlのPAC-1を添加した後、さらに30分間インキュベートした。総β3表面発現を検出して結合および競合データを正規化できるように、細胞をマウスmAb、AP3で別々に染色した。EGFP陽性細胞を、Alexa Fluor647コンジュゲートヤギ抗マウスIgM(PAC-1用)またはAlexa Fluor647コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(AP3用)で染色した後、フローサイトメトリーによって分析した。PAC-1結合の平均蛍光強度(MFI)をβ3発現に対して正規化し、抗HPA-1a同種抗体の非存在下での対照のパーセンテージとして表した。
【0083】
修正した抗原捕捉酵素結合免疫吸着アッセイ-8×107の洗浄ヒトまたはマウス血小板を、1:5に希釈したヒトFNAIT同種抗血清と室温で1時間インキュベートし、洗浄し、次いで、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を含む200μlの氷冷溶解緩衝液[20mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl、1%Triton X-100、1 mMエチレンジアミン四酢酸、10mM N-エチルマレイミド]に溶解した。溶解物を、マウス血小板から免疫複合体を捕捉するための抗マウスCD41(eBioscience、San Diego、CA)、またはヒト血小板から免疫複合体を捕捉するためのmAb AP2でコーティングされたマイクロタイターウェルに添加した。結合した免疫複合体を、アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA)を使用して検出した。
【0084】
分子モデリングおよびドッキング-B2G1 Fabの可変領域のモデルを、Rosetta Antibody Protocol25-29を使用して生成した。αIIbβ330(PDBコード:3FCS)の結晶構造からのPSIおよびI-EGF1ドメインの構造を、ClusProタンパク質-タンパク質ドッキングサーバ31~35を使用して抗体B2G1のCDRループ領域にドッキングした。残基A30、P32およびL33をインテグリンβ3上のドッキング部位として定義した。「抗体モード」36を使用して、非相補性決定領域を自動的にマスキングした。
【0085】
統計-示すデータは平均±SEMである。統計的比較は、対応のない両側スチューデントt検定を用いて行った。差をP<0.05で統計学的に有意とみなした。
【0086】
結果
マウス血小板GPIIIaのPSIドメインにおけるHPA-1aエピトープの再現-
図1A~
図1Bおよび
図2Aに示すように、多型アミノ酸Leu
33は、GPIIIaのPSIドメインから延びる長い柔軟なループの末端に位置する。マウスGPIIIaのN末端残基1~66で構成される小さな構築物に一連のアミノ酸置換を組み込む以前の研究は、T30A、S32P、Q33L、およびN39Dのヒト化(
図2Aに概略的に示す)が、I型、HPA-1a選択的mAb、SZ21、および少なくともいくつかのヒトポリクローナル抗HPA-1a同種抗血清の結合を再構成するために必要であることを実証した
37。これらのデータに基づいて、これらの4つのアミノ酸置換をコードするマウスITGB3遺伝子座のエクソン3に修復鋳型を導入するためのCRISPR戦略が考案された(
図2B)。
図2Bに示されるgRNA、Cas9エンドヌクレアーゼおよびAPLD HDR鋳型をコードするプラスミド構築物(
図2C)を微量注入した60個の接合子から、1匹の雌子孫が適切に確認された遺伝子型(
図2D-
図2F)を示し、これをAPLDマウスに指定した。
【0087】
GPIIIaのEGF1ドメイン内の特定のアミノ酸は、II型HPA-1a抗体の結合を支持するために必要とされる-以前の研究は、HPA-1aに対する免疫応答がポリクローナルかつ異質であり、いくつかの同種抗体血清は、多型アミノ酸33に加えて、直線的に離れたEGF1ドメインのまだ特徴付けられていない領域内の不連続配列を必要とする亜集団を含むことを示している
19、38。
図3Aに示すように、プロトタイプI型HPA-1a特異的mAbであるSZ21は、野生型ではなく、APLDマウスGPIIIa(muGPIIIa)に容易に結合し、マウスPSIドメイン内のそのエピトープの再現が確認されている。より複雑なポリクローナルヒト母体抗HPA-1a同種抗血清中に存在する可能性が高い抗体集団の結合に必要な構造的要件についてのさらなる洞察を得るために、本発明者らは、5つの異なるヒトFNAIT同種抗血清の、マイクロタイターウェルに固定化されたmuGPIIIa、APLD muGPIIIaまたはヒトGPIIIaに結合する能力を調べた。
図3Bに示すように、5つの代表的な同種抗血清のうちの3つはAPLD muGPIIIaと反応したが、他の2つは反応せず、これらの同種抗血清が、結合のためにヒト化PSIドメインの外側の残基を必要とする、いわゆるII型抗HPA-1a同種抗体
19の大部分を含有するという考えと一致した。さらなるヒト抗HPA-1a同種抗血清の反応性および特異性を
図7に示す。
【0088】
II型抗HPA-1a抗体の結合のための構造的要件を決定するために、本発明者らは、マウスAPLD血小板へのプロトタイプII型抗体、mAb 26.4の結合を調べた。
図4Aに示すように、
図3Bのヒト同種抗血清1および5と同様に、mAb 26.4は、APLD GPIIIaを発現するマウス血小板に結合することができなかった。PSIとEGF1ドメインとの間の界面の詳細な調査(
図4B)により、ヒトGPIIIaのEGF1ドメインから伸長するループが、アミノ酸Q
470を多型残基Leu
33に近接させることが明らかになった。この残基は、マウスGPIIIaにおけるメチオニンである(Ser
469は両種において保存されている)。Q
470がII型抗HPA-1a抗体によって認識されるエピトープの一部を形成するかどうかを決定するために、本発明者らは、マウスEGF1ドメインにおいてM470をQに変化させる(方法を参照)HDRを導入することによって、本発明者らのAPLDマウスから始まるマウスGPIIIaの配列をさらに改変した。mAb26.4はここで、本発明者らがAPLDQマウスと命名した、この第二世代HPA-1aヒト化トランスジェニックマウス由来の血小板に容易に結合した(
図4A)。対照的に、mAb SZ21の結合は、EGF1ドメインのさらなるヒト化によって増強されず、エピトープが完全にPSIドメイン内に含まれるI型抗体として分類されることと一致する。予想外にも、APLDQマウス由来の血小板は、B2G1と呼ばれる、HPA-1a同種免疫化女性
22からファージディスプレイによって単離されたHPA-1a特異的mAbと完全に非反応性であり、ポリクローナル母体抗HPA-1a同種抗血清中に存在し得る抗体亜集団の特異性におけるさらなる予想外の複雑性を実証した。
【0089】
図5Aは、GPIIIaのPSIドメインおよびEGF1ドメインの、マウス対ヒト間のアミノ酸の違いを強調している。示されるように、多型残基33に空間的に近いQ470Mの相違に加えて、EGF1では2つの種の間に6つのさらなるアミノ酸の相違がある。GPIIIaのEGF1ドメインおよびPSIドメインとのB2G1の分子ドッキング分析(
図5B)は、これらの7つのアミノ酸のうち、H
446およびQ
470のみがL
33と一緒に抗体/抗原界面にあると予測されることを明らかにした。したがって、追加のPro
446→Hisアミノ酸置換を有するマウスGPIIIaのAPLDQアイソフォームの発現は、B2G1結合を支持した。逆に、ヒトH
446をプロリン残基で置換すると、B2G1結合が完全に失われたが、Q
470をメチオニン残基で置換した場合、B2G1およびmAb 26.4の両方がヒトGPIIIaとの反応性を失った。対照的に、HPA-1a特異的抗体のいずれも、G463DおよびP464Qの変異によって影響されず(
図5C)、抗体/抗原界面に存在しないことと一致した(
図5B)。まとめると、これらのデータは、可変数の空間的に近い非多型アミノ酸が、それぞれ多型残基33周りに集中する複数のエピトープを形成し、これが、抗HPA-1a抗血清中に存在するポリクローナル抗体亜集団によって認識される標的認識部位を共に含むことを実証している。
【0090】
考察
HPA-1aエピトープの分子的性質を特徴付けることを目的とした初期の研究は、サイズが17kDa39から66kDa40の範囲のGPIIIaのトリプシンまたはキモトリプシンタンパク質分解フラグメントがHPA-1a特異的同種抗体に結合することができることを見出した。後のBeerおよびColler41による研究では、66kDaポリペプチドが、残基348~654を含有するより大きな50kDaフラグメント(現在はEGF1ドメインを含有することが知られている)に結合したGPIIIaジスルフィドの17kDaアミノ末端フラグメント(現在はPSIドメインを含有することが知られている)から構成されることが見出された。HPA-1aエピトープの形成がGPIIIaのアミノ末端におけるLeu33Proアミノ酸置換によって制御されているという発見に続いて13、14、この多型残基を取り囲む小さな合成ペプチドが合成されたが、HPA-1a同種抗体に結合することができず42、これはおそらく、複雑なジスルフィド結合の結び目様の構造を形成するGPIIIaの最初の55アミノ酸内に7つのシステイン残基が存在するので、直鎖ペプチドが畳まれて適切な三次立体配座をとることができないためである。興味深いことに、原核生物のλgt22バクテリオファージプラークで産生されたGPIIIaの最初の66アミノ酸(すなわち、PSIドメイン全体)から構成される幾分大きな組換えタンパク質は、PTP患者からの4つの異なる抗HPA-1a血清と反応することができ43、それにより、HPA-1aエピトープを多型アミノ酸33を取り囲むGPIIIaのアミノ末端7kDaに集中させた。
【0091】
1990年代半ばに発表された2つの研究は、HPA-1a抗体のサブセットによって認識されるHPA-1エピトープが、より複雑であり得ることを明らかにした。Valentin et al.は、部位特異的変異導入を使用して、PSIドメインをGPIIIaのEGF1ドメインに連結するジスルフィド結合を破壊し、いくつかの抗HPA-1a同種抗体は良好に結合し続けたが、ほぼ3分の1が変異タンパク質との一部または全部の反応性を失ったことを見出した19。これらの知見に基づいて、発明者らは、PSIドメインおよびEGF1ドメインに存在する不連続な線状配列への依存性に基づいて、HPA-1a抗体をI型またはII型として分類できることを提案した。この概念は、121の母体抗HPA-1a同種抗体の約20%が、フラグメントがPSIドメインおよびEGF1ドメインの両方を含む場合に限り、GPIIIaの組換えフラグメントと反応することを見出したStaffordおよび共同研究者ら44の研究によって支持された。Hondaおよび共同研究者ら38は、Xenopusタンパク質がヒトアミノ酸26~38ならびにアミノ酸287~490を含む場合にのみ、ヒトGPIIIa配列の様々なパッチを含むアフリカツメガエルGPIIIa分子から構成されるキメラタンパク質と反応するII型抗体の存在を検出した。
【0092】
抗体の観点から見たエピトープ:HPA-1a抗体力価のみが臨床転帰の重症度と相関することは一貫して見出されておらず
45、46、HPA-1a特異的同種抗体をI型対II型にさらに分割することは、期待に反して、診断上の利点も予後上の利点ももたらさなかった
44。しかしながら、最近、Santosoおよび共同研究者らは、抗HPA-1a同種抗体の特定の集団が、内皮細胞上に存在する、αIIbではなく、αvインテグリンサブユニットと複合体を形成する場合に、GPIIIaに優先的に結合すること、およびそのような抗体はFNAITにおける頭蓋内出血の発症と強く関連することを報告した
47。これらの知見は、いくつかの重要な意味を有する。第1に、すべての母体ポリクローナル抗HPA-1a抗血清内に常に存在する抗HPA-1a抗体の異なる集団を同定し、それらを識別することが、血小板減少症およびFNAITの症例における出血のリスクを予測するための鍵であり得ることを、それらは強く示唆している。第2に、それらは、多型アミノ酸残基33を取り囲む局所的立体配座の影響が、同種抗体結合のためのコア標的認識部位、およびその後のエフェクター結果の決定に大きな影響を及ぼすことを実証している。2つの異なるII型モノクローナル抗HPA-1a抗体の結合が、GPIIIaのEGF1ドメイン内の異なるアミノ酸に対するそれらの要求によって互いから識別され得るという本発明者らの発見は(
図5A~
図5C)、抗体/エピトープ認識が単に多型アミノ酸よりも多く関与し、おそらくは実質的に任意の同種免疫応答を含む抗体亜集団間で異なるという考えに、さらに支持を添える。特定のマウス→ヒトのアミノ酸置換を含有するマウスGPIIIaを発現する細胞を使用して、ポリクローナル免疫応答をHPA-1aにマッピングすることは、HPA-1a特異的モノクローナル抗体の数の増加と共に、同種抗体亜集団の高分解能分析を可能にして、予測診断上の利益を提供し得る。興味深いことに、予備的研究(
図8)は、I型およびII型の同種抗体集団が、血小板がそれらのリガンドと相互作用する能力に対して異なる効果を有することを示している。I型抗体は最小限の効果しか有さないが、II型抗体は、おそらくインテグリン活性化プロセス中のGPIIIaの伸長を抑制することによって、フィブリノーゲン模倣物であるPAC-1のGPIIb-IIIa複合体への結合を有意に遮断する
48。この点に関するさらなる研究は、計画された広範囲にわたる臨床研究の対象である。
【0093】
所与のポリクローナル血清内の個々の抗体集団が異なる表面トポグラフィ要件を有することは、それらが様々な病態生理学的効果を誘導することができる理由を説明する。組織適合性試験の世界では、細胞表面抗原の遺伝子型マッチングに加えて、分子表面上で一緒にクラスター形成する不連続な位置の残基によって寄与されるエピトープを含む、レシピエントの抗体/エピトープレパートリーの表現型決定が、移植成功の重要な予測因子であり得るという証拠が増えている49。構造に基づくマッチングは、難治性血小板減少症患者における血小板輸血支援を改善するための戦略として既に検証されている50、51。したがって、多形性の違いだけでなく、同種抗体亜集団の接触面積も考慮する精密な医薬ベースの診断レジメンが、免疫応答のポリクローナル性のより正確な解析を提供するために必要とされることが可能であり、血小板減少症、出血、および頭蓋内出血のリスクをより正確に予測することを可能にする。
【0094】
GPIIIaにおける臨床的に重要なLeu33Pro多型によって生成される応答のポリクローナル性質は複雑であり、依然として予防および治療の両方に関連する興味深い調査領域である。HPA-1特異的抗体のポリクローナル性質、および任意の母体抗血清が、異なる角度から多型アミノ酸33に来て、異なるトポグラフィ分布で結合し、さらなる残基の関与に起因して異なる親和性で結合する抗体を含有する可能性を考慮すると、本発明者らは、ポリクローナル母体抗体の結合を遮断し、胎児血小板の循環からのクリアランスを防ぐために、単一ではなくHPA-1特異的mAbの混合物が必要であり得ると推測する。EGF1内の2つの残基(H446およびQ470)がII型抗HPA-1a同種抗体の結合に必要かつ十分であると同定することは、まだ特徴付けられていないII型同種抗体の結合を支持するために、EGF1内または外部の残基が必要とされ得る可能性を排除しない。例えば、PSIドメイン内のD39およびハイブリッド/PSI界面のR93は両方とも、ヒト抗HPA-1a抗体の結合に影響を及ぼすことが報告されているが37、52、他の抗体は、インテグリンの屈曲した立体配座に特異的であり、それは、この研究に記載されるような、PSIドメインおよびEGF1ドメインの両方に対するそれらの要求に起因する可能性がある。53HPA-1a同種免疫化個体の同種抗血清内に存在する抗体亜集団の範囲が拡大していることを実証する本発明者らの原子レベル精査は、同種抗体媒介血小板破壊を阻害するための狭いエピトープ特異性を有する単一試薬の開発の課題を強調している。妊娠中または出産直後に母体循環に導入されたヒト化抗HPA-1a特異的mAbの予防的送達を使用して、母体を通過した新生児血小板を除去することができ、それによって第一に同種免疫応答の発生を予防または軽減する。
【0095】
実施例2
抗HPA-1a mAbの腹腔内注射は、APLDQマウスにおいて重度の血小板減少症を誘発したが、野生型マウスでは誘発しなかった。さらに、APLDQマウス由来の血小板は、野生型マウスに導入した場合、これらのヒト化残基によって作り出されたエピトープに特異的、かつ重要なことに限定される強力なポリクローナル免疫応答を誘発し、APLDQヒト化形態のマウスGPIIIaがマウスにおいて免疫原性であることを実証している。APLDQ血小板で予備免疫し、APLDQ雄マウスと交配した野生型雌マウスは、重度の血小板減少症の子を出産し、その多くは付随する出血表現型を示した(
図11および
図12A~
図12D)。しかしながら、mAb 26.4は、マウスAPLDQ血小板へのマウスポリクローナル抗APLDQ抗体の結合を効率的に阻害する(
図13)。
【0096】
IVIG(静脈内免疫グロブリン)は、バッチあたり1000~15,000人の健康なドナーのプール血漿から得られる高度に精製されたグロブリン調製物である。IVIGは、自然免疫細胞および適応免疫細胞を含む、複数のレベルの細胞免疫区画を標的とする。IVIGは、主に活性化かつ阻害性FcγRを介して、樹状細胞、マクロファージおよび顆粒球と相互作用する。FNAITの治療のためのIVIGの最初の母体注入が1988年に報告され(Bussel JB、et al.New Engl J Med.1988;319(21):1374-8)、その後、IVIGは、FNAIT用の標準的な出生前治療戦略としての根拠を急速に得た。最近の系統的な総説は、コルチコステロイドの添加の有無にかかわらず、週1回のIVIG投与がFNAITにおけるファーストライン出生前治療であり、乳児におけるFNAITの影響を軽減または緩和し、血小板減少症の重症度を軽減するのに役立つことを示唆している(Dian Winkelhorst,et al.BLOOD.2017;129(11):1538-1547)。
【0097】
妊娠中の雌マウスに静脈内免疫グロブリンG(IVIG)またはmAb 26.4を交配後10および17日目に投与すると、母体循環と胎児循環の両方で抗APLDQ同種抗体の濃度が低下し、重要なことに、子の血小板数が正常化した(
図14および
図15)。まとめると、これらのデータは、臨床的に重要なFNAITの特徴の多くを再現する、FNAITの新規なマウスモデルを確立する。
【0098】
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