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特表2023-500897実質的に純粋なクラリスロマイシン 9-オキシム(Clarithromycin 9-oxime)及びその調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】実質的に純粋なクラリスロマイシン 9-オキシム(Clarithromycin 9-oxime)及びその調製
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/08 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
C07H17/08 B CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526032
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 IB2020060051
(87)【国際公開番号】W WO2021084411
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201921043722
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515120154
【氏名又は名称】ハイカル リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514096395
【氏名又は名称】ガラパゴス エンフェー
【氏名又は名称原語表記】Galapagos NV
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スディール・ナンビアール
(72)【発明者】
【氏名】ラケシュ・ラメシュ・ガノルカル
(72)【発明者】
【氏名】キラン・チャウダリ
(72)【発明者】
【氏名】アニル・ゴハル
(72)【発明者】
【氏名】ディークシャ・シン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・クラーハウト・ステイン・ポル
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA04
4C057AA30
4C057CC03
4C057DD01
4C057KK12
(57)【要約】
本発明は、実質的に純粋なクラリスロマイシン 9-オキシム(Clarithromycin 9-oxime)、より特定すると、98%を超える純度を有し、対応する(Z)-異性体は1%以下である、クラリスロマイシン 9(E)-オキシムに関する。本発明は、更に式(I)のクラリスロマイシン9(E)-オキシムの調製方法、その薬学的に許容される塩及び精製に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
98%を超える純度を有し、対応するZ-異性体は1%以下である、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム及びその薬学的に許容される塩。
【化1】
【請求項2】
98%を超える純度を有し、対応するクラリスロマイシン 9(Z)-オキシムは1%以下である、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム及びその薬学的に許容される塩が、
工程:
a)塩基及び溶媒の存在下で、式(IV)のクラリスロマイシンをヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させる工程;
b)溶媒を、濃縮された反応溶液に添加し、有機層のpHを調節し、有機層を濃縮する工程;
c)塩素系溶媒を濃縮された反応物へと添加し、Z-異性体を分離させる工程;
d)任意に、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを精製する工程
を含む方法により得られる、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
実質的に純粋な、式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムであって、
【化3】
工程:
a)塩基及び溶媒の存在下で、式(IV)のクラリスロマイシンをヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させる工程;
【化4】
b)溶媒を、工程(a)の濃縮された反応溶液に添加し、有機層のpHを調節し、有機層を濃縮する工程;
c)任意に、式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムを精製する工程
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)における塩基が、モノ、ジ及びトリアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8 ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,5- ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、イミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムからなる群から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)及び工程(b)における溶媒が、水、アルコール溶媒、塩素系溶媒及びエーテル溶媒から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
精製のために使用される溶媒が、水、アルコール溶媒、炭化水素溶媒及びエーテル溶媒並びに極性プロトン性又は極性非プロトン性溶媒から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
アルコール溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール及びn-ブタノールからなる群から選択される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
塩素系溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、エチレンジクロリド、トリクロロエチレン及びパークロロエチレンからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
エーテル溶媒が、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メトキシエタン、ジメトキシメタン、メチルtert-ブチルエーテル及びポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)におけるpHが、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド及びナトリウムエトキシドからなる群から選択される塩基を使用することにより調節される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)におけるpHが、pH 6から10の間で調節される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)における炭化水素溶媒が、脂肪族又は芳香族の炭化水素溶媒、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン及び石油エーテルから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムが、98%を超える(E)-異性体及び1.0%以下の(Z)-異性体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
実質的に純粋な、式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムが、5%以下の不純物を含む、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月29日に出願されたインドの仮出願である印国特許第201921043722号に対して利益を主張し、その内容は、本明細書の参照により包含される。
【0002】
本発明は、実質的に純粋なクラリスロマイシン 9-オキシム(Clarithromycin 9-oxime)、より特定すると、98%を超える純度を有するクラリスロマイシン 9(E)-オキシム(Clarithromycin 9(E)-oxime)及び1%以下の対応する(Z)-異性体に関する。本発明は、更に、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムの調製方法、その薬学的に許容される塩及び精製に関する。
【0003】
【化1】
【背景技術】
【0004】
クラリスロマイシン(6-O-メチルエリスロマイシン A)((Clarithromycin)(6-O-methylerythromycin A))は、肺炎、ヘリコバクターピロリを含む多様な細菌感染を処置するために使用される、強力なマクロライド系抗生物質であり、連鎖球菌性咽頭炎におけるペニシリンの代替手段である。クラリスロマイシンは、好気性及び嫌気性のグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して非常に効果的である。式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシム(6-O-メチルエリスロマイシン A 9-オキシム)(Clarithromycin 9-oxime(6-O-methylerythromycin A 9-oxime))は、現在前臨床研究下にある多様なAPIにおいて使用される高度な中間体であり、素晴らしい抗菌活性を有する抗生物質としての役割を果たしている。式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムは、分子式C38ON13及び分子量762.9を有する。
【0005】
【化2】
【0006】
式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムは、二つの形態、すなわち式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム[9(E)-6-O-メチル-エリスロマイシン オキシム](Clarithromycin 9(E)-oxime[9(E)-6-O-Methyl-erythromycin oxime])及び式(II)のクラリスロマイシン 9(Z)-オキシム[9(Z)-6-O-メチル-エリスロマイシン オキシム](Clarithromycin 9(Z)-oxime[9(Z)-6-O-Methyl-erythromycin oxime])で存在することが知られている。
【0007】
【化3】
【0008】
異性体の両方が構造的に類似しているため、式(II)のクラリスロマイシン 9(Z)-オキシムを実質的に含まない、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを得ることは難しい。
【0009】
クラリスロマイシン 9-オキシムは、6-O-メチルエリスロマイシン Aの誘導体として米国特許第4,680,386 A号(以下US’386)で最初に公開された。US’386は、6-O-メチルエリスロマイシン A 9-オキシムの調製のための方法を記載する。しかしながら、それは対応するE又はZ-オキシムの純度及び含有量については記載していない。
【0010】
米国特許第5,837,829 A号(以下US’829)は、2’,4”-O-ビス(トリメチルシリル)-6-O-メチルエリスロマイシン A 9(O-t-ブチルジフェニルシリル) オキシム(2’,4”-O-bis(trimethylsilyl)-6-O-methylerythromycin A 9(O-t-butyldiphenylsilyl) oxime)から6-O-メチルエリスロマイシン A-9-オキシムを調製する方法を記載する。主な欠点は、前記方法が、酸及び塩基に敏感である高価なシリル化剤を含むことである。さらに、US’829は、異性体の分離方法を記載していない。
【0011】
米国特許第6,110,965 A号は、6-O-メチルエリスロマイシン Aから6-O-メチルエリスロマイシン A-9(E)-オキシムを調製する方法を記載する。この方法は、カラムクロマトグラフィーによる、6-O-メチルエリスロマイシン A 9(E)-オキシム及び6-O-メチルエリスロマイシン A 9(Z)-オキシムの分離を含む。
【0012】
PCT特許出願である国際公開第2009/007988 A1号は、6-O-メチルエリスロマイシン Aから6-O-メチルエリスロマイシン A 9(E)-オキシムを調製する方法を記載する。この方法は、6-O-メチルエリスロマイシン A 9-オキシムの望ましくない異性体(Z-異性体)の含有量を記載しておらず、望ましい異性体の純度は、たったの95%である。
【0013】
上記で議論される参考文献は、手順の任意の順番での、すなわち、6-OHのメチル化に続くオキシム形成又はオキシム形成に続くメチル化による、エリスロマイシンからのクラリスロマイシン オキシムの調製を公開する。これらの方法は、保護/脱保護の工程、低純度のオキシムを含み、及び単調で長い精製方法を含む。従って、純粋なクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを達成することは、依然として必要性があり、それゆえに、本発明者は、精製有り又は無しで、実質的に純粋なクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを得るための、改良した方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,680,386 A号
【特許文献2】米国特許第5,837,829 A号
【特許文献3】米国特許第6,110,965 A号
【特許文献4】国際公開第2009/007988 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の主な目的は、実質的に純粋な式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムを調製するための方法を提供することである。
【0016】
本発明のある目的は、精製を含んで又は含まないで、実質的に純粋な式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムを調製するための方法を提供することである。
【0017】
さらに本発明のある目的は、式(II)の対応する9(Z)-オキシムを実質的に含まない、実質的に純粋な式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを調製するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一つの態様において、本発明は、98%を超える純度を有し、一方で対応するZ-異性体は1%以下である、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム及びその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
ある態様において、本発明は、98%を超える純度を有し、一方で対応するZ-異性体は1%以下である、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム及びその薬学的に許容される塩を調製するための方法を提供する。
【0020】
ある態様において、本発明は、実質的に純粋な、式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシム及びその塩を調製するための方法を提供する。
【0021】
ある態様において、本発明は、精製を含み又は含まずに、実質的に純粋な、式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシム及びその塩を調製するための方法を提供する。
【0022】
ある態様において、本発明は、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム及びその塩を調製するための方法を提供する。
【0023】
ある態様において、本発明は、精製を含み又は含まずに、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを調製するための方法を提供する。
【0024】
一つの態様において、本発明は、98%を超える純度を有し、対応するクラリスロマイシン 9(Z)-オキシムは1%以下である、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム及びその薬学的に許容される塩を提供し、
【化4】
それらは、工程:
a)塩基及び溶媒の存在下で、式(IV)のクラリスロマイシンをヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させる工程;
b)溶媒を、濃縮された反応溶液に添加し、有機層のpHを調節し、有機層を濃縮する工程;
c)塩素系溶媒を濃縮された反応物へと添加し、Z-異性体を分離させる工程;
d)式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを精製する工程
を含む方法により得られる。
【0025】
一つの実施形態において、本発明は、実質的に純粋な、式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムを調製するための方法であって、工程:
a)塩基及び溶媒の存在下で、式(IV)のクラリスロマイシンをヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させる工程;
b)溶媒を、濃縮された反応溶液に添加し、有機層のpHを調節し、有機層を濃縮する工程;
c)任意に、式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムを精製する工程
を含む方法を提供する。
【0026】
ある実施形態において、本発明は、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを調製するための方法であって、工程:
a)塩基及び溶媒の存在下で、式(IV)のクラリスロマイシンをヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させる工程;
b)溶媒を、濃縮された反応溶液に添加し、有機層のpHを調節し、有機層を濃縮する工程;
c)塩素系溶媒を濃縮された反応物へと添加し、Z-異性体を分離させる工程
を含む方法を提供する。
【0027】
一つの実施形態において、実質的に純粋なクラリスロマイシン 9(E)-オキシムは、90%を超えるE異性体を含む。
【0028】
一つの実施形態において、実質的に純粋なクラリスロマイシン 9(E)-オキシムは、95%を超えるE異性体を含む。
【0029】
一つの実施形態において、実質的に純粋なクラリスロマイシン 9(E)-オキシムは、98%を超えるE異性体を含む。
【0030】
ある実施形態において、本発明は、実質的に純粋な、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを調製するための方法であって、工程:
a)塩基及び溶媒の存在下で、式(IV)のクラリスロマイシンをヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させる工程;
b)溶媒を、濃縮された反応溶液に添加し、有機層のpHを調節し、有機層を濃縮する工程;
c)塩素系溶媒を濃縮された反応物へと添加し、Z-異性体を分離させる工程;
d)式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを精製する工程
を含む方法を提供する。
【0031】
一つの実施形態において、実質的に純粋なクラリスロマイシン 9(E)-オキシムは、95%を超えるE異性体を含む。
【0032】
一つの実施形態において、実質的に純粋なクラリスロマイシン 9(E)-オキシムは、98%を超えるE異性体を含む。
【0033】
本明細書の目的のために、上記で使用される用語「式(IV)のクラリスロマイシン」の意味は、詳細に言及される場合を除いて、任意の多形、又は水和物、クラスレート、溶媒和物若しくはその混合物、及び任意の純粋な状態にある、式(IV)のクラリスロマイシンを含む。
【0034】
本明細書の目的のために、本明細書における用語「実質的に純粋な」式(III)のクラリスロマイシン 9-オキシムの意味は、10%以下の;好ましくは5%以下の、他の不純物を含む。
【0035】
本明細書の目的のために、本明細書における用語「実質的に純粋な」式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムの意味は、5%以下の;好ましくは2%以下の;より好ましくは1%以下の、Z-異性体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を、以下でより十分に記載する。本発明は、数多くの異なる形態で具体化され、本明細書で説明される実施形態に制限されると解釈されるべきではない;それどころか、これらの実施形態は、この公開が適用される法的要件を満たすために、提供される。明細書及び添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上他が明確に示される場合を除いて、複数の指示対象を含む。
【0037】
本発明のある実施形態において、用語「塩(salt)」は、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、ステアリン酸、コハク酸、エチルコハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ラウリルスルホン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等;及び無機酸、例えば塩酸、スルホン酸、リン酸、ヨウ化水素酸等との、薬理学的に許容される塩を意味する。
【0038】
本明細書で使用される用語である溶媒(solvent)は、単一の溶媒又は複数の溶媒の混合物を参照する。
【0039】
本明細書で使用される用語「濃縮された(concentrated)」は、混ぜることのできる最小の容積まで、溶媒を除去することを参照する。
【0040】
本明細書の目的のために、上記で使用される用語「実質的に純粋な(substantially free)」の意味は、1.0%以下の式(II)のクラリスロマイシン 9(Z)-オキシムを含む、式(I)のクラリスロマイシン 9(E)-オキシムを参照する。
【0041】
本明細書で言及される「精製」工程は、先行技術分野においてよく知られた異なる精製技術を使用することにより、実施される。
【0042】
方法は、以下の一般的な合成スキームにおいて説明される:
【化5】
本発明のある実施形態において、工程(a)において使用される塩基は、モノ(mono)、ジ(di)及びトリ(tri)アルキルアミン、例えばトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8 ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,5- ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、イミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等からなる群から選択される。
【0043】
本発明のある実施形態において、工程(a)及び工程(b)における溶媒は、水、アルコール溶媒、塩素系溶媒、エーテル溶媒等又はその混合物から選択される。
【0044】
本発明のある実施形態において、工程(d)における精製は、水、アルコール溶媒、炭化水素溶媒及びエーテル溶媒、極性プロトン性若しくは極性非プロトン性溶媒等又はその混合物から選択される溶媒において実施される。
【0045】
本発明のある実施形態において、工程(a)、工程(b)及び工程(d)におけるアルコール溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、n-ブタノール等又はその混合物からなる群から選択される。
【0046】
本発明のある実施形態において、工程(a)、工程(b)及び工程(c)における塩素系溶媒は、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、エチレンジクロリド、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等及びその混合物からなる群から選択される。
【0047】
本発明のある実施形態において、工程(a)、工程(b)及び工程(d)におけるエーテル溶媒は、好ましくは、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メトキシエタン、ジメトキシメタン、メチルtert-ブチルエーテル、ポリエチレングリコール等及びその混合物からなる群から選択される。
【0048】
本発明のある実施形態において、工程(b)におけるpHは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等又はその混合物からなる群から選択される塩基を使用して調節される。
【0049】
本発明のある実施形態において、工程(d)における炭化水素溶媒は、脂肪族又は芳香族の炭化水素溶媒、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル等及びその混合物から選択される。
【0050】
本発明のある実施形態において、工程(a)における反応のpHは、選択的であり、それは6~10;好ましくは7~8の範囲にあり、pHは炭酸水素ナトリウムを使用して調節される。
【0051】
本発明のある実施形態において、工程(b)におけるpHの範囲は、6~10;好ましくは7~8の間である。
【0052】
更に本発明のある実施形態において、反応、単離及び精製工程は、0℃から120℃の温度の間で実施される。
【0053】
本発明の方法は、以下の実施例により記載され、それは単なる説明であり、どのような方法においても発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0054】
[実施例1:クラリスロマイシン 9(E)-オキシムの調製]
ヒドロキシルアミン塩酸塩(0.92Kg)、メタノール(2.5L)の溶液に対して、酢酸ナトリウム三水和物(1.85Kg)が室温(rt)で添加され、続いてクラリスロマイシン(0.5Kg)が添加された。反応混合物は、20から24時間、かき混ぜながら、還流させた。反応溶液は、混ぜることのできる最小の容積まで濃縮され、ジクロロメタン(3.0L)及び水(2.5L)が補充された。有機層は分離され、pHを約8に調節するために10%の炭酸水素ナトリウムで処理され、ろ液はジクロロメタンにより抽出され、ブラインによりウォッシュされ、真空下で濃縮された。ジクロロメタンが、濃縮物に添加され、30分間室温でかき混ぜられ、ろ過及び濃縮された。イソプロピルアルコール(3.5L)が、40℃から50℃で、濃縮された有機層へと添加され、結果として生じた産物は、かき混ぜられる最小の容積まで濃縮され、更に75℃から85℃へと0~2時間温められた。反応混合物は、かき混ぜられながら0℃から5℃へと冷却され、ろ過され、得られた固体は、イソプロピルアルコールでウォッシュされ、乾燥させて、HPLC純度98.19%のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム(0.32Kg、収率62.72%)及び0.84%のクラリスロマイシン 9(Z)-オキシム、LCMS:764 [M+H]を得た。
【0055】
H NMR (CDCl, 400 MHz)δ:5.079-5.052 (d, 1H), 4.921-4.910 (d, 1H), 4.525 (br s, 1H), 4.413-4.395 (d, 1H), 4.010-3.979 (m, 1H), 3.736-3.715 (m, 3H), 3.623-3.605 (d, 1H), 3.458-3.449 (m, 1H), 3.298-3.277 (m, 4H), 3.226-3.183 (q, 1H), 3.064 (s, 3H), 3.007-2.982 (m, 1H), 2.856-2.834 (m, 1H), 2.543-2.525 (m, 1H), 2.461-2.396 (m, 1H), 2.357-2.319 (d, 1H), 2.270 (s, 6H), 1.914-1.879 (m, 2H), 1.660-1.629 (d, 1H), 1.571-1.375 (m, 7H), 1.280-1.264 (d, 3H), 1.217-1.160 (m, 12H), 1.097-1.086 (m, 6H), 1.044-1.025 (d, 3H), 0.959-0.942 (d, 3H), 0.817-0.780 (t, 3H);
【0056】
13C NMR (CDCl, 400 MHz)δ: 175.71, 170.15, 102.77, 95.97, 80.47, 78.67, 78.36, 77.99, 76.82, 74.05, 72.67, 71.20, 70.24, 68.59, 65.57, 65.28, 64.36, 51.13, 49.43, 45.05, 40.30, 39.03, 37.37, 34.87, 32.70, 29.16, 25.32, 25.25, 21.45, 21.38, 21.11, 19.97, 18.63, 18.55, 16.01, 14.93, 10.56, 9.13;
【0057】
NXRFTラマンモジュール及びKBrペレットに分散させたサンプルを用いたFTIRスペクトロメーターは、以下の特徴的なピーク値を有した:3421.25, 2978.19, 2941.04, 2882.48, 2831.58, 2793.93, 1746.47, 1715.30, 1644.10, 1460.93, 1403.33, 1349.50, 1288.36, 1264.59, 1250.18, 1184.68 1169.86, 1111.79, 1075.25, 1011.72 及び 955.84 cm-1
【0058】
[実施例2:クラリスロマイシン 9(E)-オキシムの調製]
ヒドロキシルアミン塩酸塩(0.92Kg)、メタノール(2.5L)の溶液に対して、酢酸ナトリウム三水和物(1.85Kg)が室温(rt)で添加され、続いて炭酸水素ナトリウム(0.028Kg)及びクラリスロマイシン(0.5Kg)が10℃から20℃で添加された。反応混合物は、20~24時間、かき混ぜながら、還流させた。反応溶液は、混ぜることのできる最小の容積まで濃縮され、ジクロロメタン(5.0L)及び水(3.0L)が補充された。有機層は分離され、pHを約8に調節するために10% aq.の炭酸水素ナトリウム溶液で処理された。エマルションを含む二相性の反応混合物は、ろ過され、くっきりとした二相性のろ液は分離され、ブラインによりウォッシュされ、真空下で濃縮された。ジクロロメタンは、濃縮物に添加され、30分間室温でかき混ぜられ、ろ過及び濃縮された。イソプロピルアルコール(2.0L)は、40℃から50℃で、濃縮された有機層へと添加され、結果として生じた産物は、かき混ぜられる最小の容積まで濃縮され、更に80℃から85℃へと0~2時間温められた。反応混合物は、かき混ぜられながら0℃から10℃へと冷却され、ろ過され、得られた固体は、イソプロピルアルコールでウォッシュされ、乾燥させて、HPLC純度98.19%のクラリスロマイシン 9(E)-オキシム(0.34Kg、収率66.67%)及び0.84%のクラリスロマイシン 9(Z)-オキシム、LCMS:764 [M+H]を得た。
【国際調査報告】