(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ハイブリッド駆動モータサイクルおよびモータサイクル用ハイブリッド化キット
(51)【国際特許分類】
B62M 23/02 20100101AFI20221228BHJP
【FI】
B62M23/02 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526055
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2020060422
(87)【国際公開番号】W WO2021090233
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】102019000020398
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522176779
【氏名又は名称】エフェスト・エス・ア・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・モルフィーノ
(57)【要約】
ハイブリッド駆動モータサイクルが、吸熱エンジン(3)と、スイングアーム(7)を介してキャリア構造部(2)に対して連結された後輪(6)と、一次変速機(8)を介して吸熱エンジン(3)に対しておよび二次変速機(9)を介して後輪(6)に対して連結された変速装置(4)と、反転可能電気機械(M)とを備える。補助変速機(14)が、二次変速機(9)のインプットシャフト(10)に対して電気機械(M)を連結し、電気機械(M)は、スイングアーム(7)の下方においてキャリア構造部(2)上に取り付けられる。モータサイクル用の対応するハイブリッド化キット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド駆動モータサイクルであって、キャリア構造部(2)と、前記キャリア構造部(2)上に取り付けられたまたは前記キャリア構造部(2)内に収容された吸熱エンジン(3)と、前輪(5)と、スイングアーム(7)を介して前記キャリア構造部(2)に対して連結された後輪(6)と、一次変速機(8)を介して前記吸熱エンジン(3)に対して連結され且つ二次変速機(9)を介して前記後輪(6)に対して連結された変速装置(4)と、反転可能電気機械(M)と、を備えるハイブリッド駆動モータサイクルにおいて、前記二次変速機(9)のインプットシャフト(10)に対して前記電気機械(M)を連結する補助変速機(14)と、前記キャリア構造部(2)に対して固定され、且つ前記スイングアーム(7)の下方に前記電気機械(M)を支持するように構成された支持ユニット(40)と、を備えることを特徴とする、ハイブリッド駆動モータサイクル。
【請求項2】
前記電気機械(M)は、前記モータサイクル(1)の鉛直方向正中面(P)に対して実質的に対称に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のモータサイクル。
【請求項3】
前記電気機械(M)は、前記二次変速機(9)に対して逆回転することを特徴とする、請求項1または2に記載のモータサイクル。
【請求項4】
前記補助変速機(14)は、前記二次変速機(9)の前記インプットシャフト(10)に対して前記電気機械(M)を選択的に連結するように構成された反転/結合解除ユニット(15)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータサイクル。
【請求項5】
前記反転/結合解除ユニット(15)は、前記電気機械(M)のアウトプットシャフト(18)と一体である第1の歯車と、アイドルシャフト(20)に対して選択的に連結可能な第2の歯車(19)と、を備えることを特徴とする、請求項4に記載のモータサイクル。
【請求項6】
前記補助変速機(14)は、前記二次変速機(9)の前記インプットシャフト(10)に対して前記アイドルシャフト(20)を連結する変速機(16)を備えることを特徴とする、請求項5に記載のモータサイクル。
【請求項7】
前記キャリア構造部(2)の下方エリアに対して連結されたインバータを備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のモータサイクル。
【請求項8】
ロール角センサ(26)、立ち上がり角度センサ(27)、前輪角速度センサ(28)、および後輪角速度センサ(29)から受領した入力信号に応答して、前記電気機械(M)の駆動トルクおよび制動トルクを変動するように構成された制御ユニット(25)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のモータサイクル。
【請求項9】
前記制御ユニット(25)は、前記電気機械(M)が傾斜角度の偏差に応じて制動トルクを発生させる立ち上がり制御を実施するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載のモータサイクル。
【請求項10】
前記制御ユニット(25)は、前記電気機械(M)により発生した駆動トルクがロール角に応じて変調されるトルク制御を実施するように構成されることを特徴とする、請求項8または9に記載のモータサイクル。
【請求項11】
前記制御ユニット(25)は、前記後輪(6)の角速度が前記前輪(5)の角速度を上回る場合に、前記電気機械(M)が制動トルクを発生させる空転防止制御を実施するように構成されることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載のモータサイクル。
【請求項12】
前記支持ユニット(40)は、前記キャリア構造部(2)に対して固定され、且つ軸方向における対向側から前記電気機械(M)を支持する一対のアームを備えるブラケットを備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のモータサイクル。
【請求項13】
前記支持ユニット(40)は、前記キャリア構造部(2)の両側部に対して固定された、および前記スイングアーム(7)に対して外部に延在するように構成された一対のブラケット(43、44)を備え、前記ブラケット(43、44)は、軸方向における反対側において電気機械(M)に対して連結されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のモータサイクル。
【請求項14】
キャリア構造部(2)およびスイングアーム(7)を備えるモータサイクルのためのハイブリッド化キットにおいて、前記モータサイクルの二次変速機(9)のインプットシャフト(10)に対して連結されるように構成された電気機械(M)と、前記キャリア構造部(2)に対して固定され前記スイングアーム(7)の下方に前記電気機械(M)を支持するように構成された支持ユニット(40)と、前記電気機械を制御および前記電気機械に供給するための制御手段(30)および供給手段(31)と、を備えることを特徴とする、ハイブリッド化キット。
【請求項15】
前記制御手段および前記供給手段は、互換性テールピース(24)内に組み込まれたバッテリパック(31)と、インバータ(30)と、からなることを特徴とする、請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2019年11月5日に出願されたイタリア特許出願第102019000020398号に基づく優先権を主張するものであり、このイタリア特許出願は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ハイブリッド駆動モータサイクルに関する。
【背景技術】
【0003】
周知のように、燃料消費量を低下させ排気を削減する必要性により、自動車の分野ではハイブリッドトラクションの普及が高まりつつある。
【0004】
モータサイクルの分野では、ハイブリッドトラクションは、依然としてあまり普及しておらず、最適な性能上および安全上の条件を伴った様々な乗車モードを可能にするために吸熱エンジンと電気機械との間の統合を最適化する必要性が存在している。
【0005】
さらに、電気機械の質量に由来する動的問題と、モータサイクルにおいて利用可能な小さなスペースにこの電気機械を配置することがより困難になる問題とを最小限に抑える必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の欠点を解消することを可能にするハイブリッド駆動モータサイクルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、ハイブリッド駆動モータサイクルであって、キャリア構造部と、キャリア構造部上に取り付けられたまたはキャリア構造部内に収容された吸熱エンジンと、前輪と、スイングアームを介してキャリア構造部に対して連結された後輪と、一次変速機を介して吸熱エンジンに対して連結され且つ二次変速機を介して後輪に対して連結された変速装置と、反転可能電気機械と、を備える、ハイブリッド駆動モータサイクルにおいて、二次変速機のインプットシャフトに対して電気機械のシャフトを連結する補助変速機と、キャリア構造部に対して固定され、且つスイングアームの下方に電気機械を支持するように構成された支持ユニットと、を備えることを特徴とする、ハイブリッド駆動モータサイクルを用いることにより達成される。
【0008】
電気機械が二次変速機のインプットシャフトに対して連結されることにより、完全な電気駆動モードにおいて吸熱エンジンを完全に迂回し、それにより吸熱エンジンをオフに切り替え、変速装置をニュートラル状態にし、ギヤの変更を伴わずにモータサイクルを駆動することが可能となる。
【0009】
また、この構成により、制動トルクを印加し同時に吸熱エンジンの停電について介入する必要性を伴うことなくバッテリを再充電することによって、能動的な立ち上がり防止制御機能または空転防止制御機能を電気機械に与えることが可能となる。
【0010】
本発明の別の態様によれば、電気機械は、スイングアームの下方に位置する。この構成により、電気機械の質量増加に関連する動的問題が最小限に抑えられて、モータサイクルの安定性および乗車安全性が最適化される。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態によれば、電気機械は、モータサイクルの鉛直方向正中面に対して基本的に対称的に配置され、これは安定性および安全性の最適化を助ける。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態によれば、電気機械は、インプットシャフトに対して選択的に連結されることが可能であり、このようにすることで、吸熱モードにおいて、電気モータを完全に排除することが可能となり、これにより大きな質量のドラッギングが回避される。
【0013】
好ましくは、電気機械は、車輪のジャイロスコープ効果を少なくとも部分的に補償するために、二次変速機に対して逆回転する。
【0014】
添付の図面を参照として本発明の非限定的な実施形態の以下の説明を読むことにより、これらのおよび他の利点が明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態にしたがって作製されたモータサイクルの概略側面図である。
【
図2】
図1のモータサイクルのトラクションユニットのブロック図である。
【
図3】
図1のモータサイクルの補助変速機の別の実施形態を示す図である。
【
図4】
図1のモータサイクルの電気機械の支持ユニットの第1の実施形態の斜視図である。
【
図5】
図1のモータサイクルの電気機械の支持ユニットの第2の実施形態の斜視図である。
【
図6】
図1のモータサイクルの電気機械の支持ユニットの第2の実施形態の正面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、数字1は、本発明により製造されたハイブリッド駆動モータサイクルを、特にモータバイクを全体として示す。
【0017】
モータサイクル1は、キャリア構造部2を既知の様式で備え、このキャリア構造部2内には吸熱エンジン3および変速装置4が取り付けられるか、または組み込まれる(
図2)。キャリア構造部2は、エンジンおよび変速装置を収容するクランクケースが上に取り付けられるフレームから、もしくはクランクケースのみから(耐荷重エンジンを備えるモータサイクルの場合)、またはクランクケースおよび部分フレームを備える中間的ソリューションからなり得る。
【0018】
さらに、モータサイクル1は、前輪5および後輪6を備える。後輪6は、スイングアーム7によりキャリア構造部2に対して装着され、スイングアーム7は、その前方端部にてキャリア構造部2に対してヒンジ連結され、その後方端部にて後輪6を保持する。
【0019】
このモータサイクル(
図2)は、例えば歯車などを用いて変速装置4に対して吸熱エンジン3のドライブシャフトを連結する一次変速機8と、例えばチェーンなどにより後輪6に対して変速装置4のアウトプットシャフト10を連結する二次変速機9と、を備える。
【0020】
したがって、変速装置4のアウトプットシャフト10は、二次変速機9のインプットシャフトである。
【0021】
二次変速機9は、例えばシャフト10上に配置されたピニオン11と、後輪6に対して装着されたリアスプロケット12と、ピニオン11およびリアスプロケット12に係合するチェーン13と、を備え得る(
図1)。
【0022】
代替的には、二次変速機は、例えば歯付きベルトまたはドライブシャフトなどの任意の他の既知のタイプのものであることが可能である。
【0023】
また、モータサイクル1は、二次変速機9に対しておよび特に二次変速機9のインプットシャフト10に対して、永久的または選択的に連結される電気機械Mを備える。好ましくは、この電気機械は、外部ロータを有する軸流永久磁石機械であり、その固有の軸Aが車両の長手方向正中面Pに対して垂直を成す状態で配置される。
【0024】
図1に示す本発明の第1の実施形態によれば、電気機械Mは、例えば電気機械のアウトプットシャフト18に対して連結されたピニオン50と、変速装置のアウトプットシャフト10に対して固定的に連結されたピニオン51と、チェーン52と、を備える補助チェーン変速機14により、二次変速機9のインプットシャフト10に対して永久的に連結される。代替的には、補助変速機14は、ギヤ変速機またはベルト変速機であることが可能である。
【0025】
図3において概略的に示す本発明の別の実施形態によれば、補助変速機14は、相互に直列状態にある反転/結合解除ユニット15およびベルト変速機16を備える。
【0026】
さらに具体的には、反転/結合解除ユニット15は、電気機械Mのアウトプットシャフト18と一体化された第1の歯車17と、アイドルシャフト20に選択的に係合され得る第2の歯車19と、を備える。
【0027】
好都合には、アイドルシャフト20に対する歯車19の選択的係合は、シンクロナイザ(図示略)を備える前方歯を有する摺動スリーブ23により実現される。このスリーブ23は、電気機械Mのデカップラとして機能する。
【0028】
ベルト変速機16は、アイドルシャフト20上の第1の冠歯車21と、変速装置4のアウトプットシャフト10に対して回転連結された第2の冠歯車22と、を備える。
【0029】
本発明によれば、電気機械Mは、スイングアーム7の下方でキャリア構造部2上に取り付けられる。「スイングアーム7の下方で」という表現は、電気機械Mの少なくとも主要部分および電気機械自体の軸Aがスイングアーム7の下方に位置することを意味するものとして理解されるべきである点に留意されたい。したがって、仮に電気機械Mの全体がスイングアーム7の下方に位置するとは限らない場合であっても、スイングアーム7は、静的条件および動的条件の下で電気機械Mの全体寸法に干渉しないように構成されなければならない。例えば、2アーム型スイングアームの場合には、電気機械Mの上部部分が、スイングアーム7の移動の少なくとも一部の最中においてスイングアーム7と同一高さに位置し得ることが可能であり、この場合には、電気機械Mの横軸寸法は、干渉が生じないようにスイングアーム7の2つのアーム間に位置しなければならない。
【0030】
好都合には、電気機械Mは、モータサイクル1の鉛直方向正中面Pに対して対称的に配置される(
図3)。
【0031】
図4は、キャリア構造部2に対して電気機械Mを連結するための支持ユニット40の第1の実施形態を示す。
【0032】
支持ユニット40は、使用時に、横軸方向においてスイングアーム7のアーム同士の間に、および長手方向においてキャリア構造部2と後輪6との間に配置されるように設計された頂部プレート41を備えるブラケットからなる。この頂部プレート41は、好ましくはキャリア構造部2自体に予め存在する連結穴(例えばスイングアーム7ヒンジ穴)を使用して、ねじおよび/またはクランプによりキャリア構造部2に対して固定され得るように構成される。また、このユニット40は、1対のアーム42a、42bを備え、これらのアーム42a、42bは、頂部プレート41の両側において下方へ延在し、電気機械Mの軸方向における対向側にそれぞれ配置される。
【0033】
これらの一方のアーム42aは、電気機械Mのステータに対して固定され、他方のアーム42bは、電気機械Mのアウトプットシャフト18のためのリング形状支持部54で終端する。このリング形状支持部54内に、シャフト18が軸受(図示略)によって支持される。
【0034】
図5および
図6は、異なる実施形態を示し、ユニット40は、上部部分45、46をそれぞれ有する2つのブラケット43、44から構成される。これらの上部部分45、46は、モータサイクル1のキャリア構造部2の両側に対して固定されるように設計され、これを目的としてそれぞれが複数の固定穴47を有する。
【0035】
また、ブラケット43、44は、アーム48、49をそれぞれ備え、これらのアーム48、49は、上部部分45、46に対して固定されるかまたは一体化され、電気機械Mの軸方向における対向側から下方に延在する。この場合においても、アーム48は、電気機械Mのステータに対して固定され、アーム49は、電気機械Mのアウトプットシャフト18のためのリング形状支持部55内において終端する。このリング形状支持部55内に、シャフト18が軸受(図示略)によって支持される。
【0036】
この解決策は、スイングアーム7のアーム同士の間にブラケットを設置するための十分なスペースがない場合の、またはスイングアームが単一アーム型のスイングアームである場合の状況に適したものである。好都合には、ブラケット43、44は、スイングアーム7の外部に配置され得るように形状設定されることにより、スイングアーム7の通過および鉛直方向移動が可能となるように、十分なスペースがキャリア構造部2との間に画成される。この解決策は、先述の解決策よりも大きな寸法を有するが、より自由度が高く、キャリア構造部上に予め存在する装着穴を使用して種々のモータサイクルモデルに対して容易に適合化させることが可能である。例えば、ブラケット43、44は、乗員ペダルの支持ブラケットに置換することが可能であり、これらのペダル自体と一体化することが可能である。
【0037】
【0038】
マイクロプロセッサ制御ユニット25が、ここで関係のある機能を参照すれば、少なくとも1つの側方傾斜センサまたは側方ロールセンサ26、少なくとも1つの傾斜センサまたは立ち上がりセンサ27、少なくとも1つの前輪5角速度センサ28、および少なくとも1つの後輪6角速度センサ29を含む、複数の内臓センサから入力信号を受領する。
【0039】
制御ユニット25は、電気機械Mに対して接合されたインバータ30に対して制御信号を送出する。この電気機械Mは、管理システム(BMS)32を備えるバッテリパック31に対して接続され、この管理システム32は、制御ユニット25と通信する。好都合には、インバータ30は、キャリア構造部2の下方エリアに対して装着され、例えば吸熱エンジン3の前方など可能な限り低い位置に収容される(
図1)。好都合には、バッテリパック31は、シートの下方にてモータサイクル1のテールピース24の内部に固定される。
【0040】
また、制御ユニットは、ハンドルバー上のノブにより従来式に制御される電位差計の形態の加速装置33から入力信号を受領する。
【0041】
モータサイクル1のハイブリッドトラクションシステムの動作は、以下のとおりである。
【0042】
1.吸熱モード
モータサイクル1は、吸熱エンジン3のみにより従来式に駆動される。
【0043】
デカップラ15が存在する場合には、スリーブ23は係合解除される。電気機械Mはキネマティックチェーンから排除され、ベルト変速機16のみが無視し得るレベルの慣性によりアイドル状態でドラッギングされる。
【0044】
2.電気モード
変速装置4をニュートラル状態に保持することにより(およびスリーブ23が存在する場合にはこのスリーブ23を係合状態に維持することにより)、モータサイクルは、電気機械Mのみにより駆動される。吸熱エンジン3は、切り離され、したがって望ましくない回転をもたらす慣性を伝達しない。制動時には、電気機械は、バッテリ31を再充電するための回生ブレーキとして使用される。
【0045】
3.ハイブリッドモード
このモードでは、吸熱エンジン3および電気機械Mの両方が同時に使用され、したがってそれにより加速装置33の位置に応じて駆動力(「ブースト」)または制動力の和を得ることが可能となる。制御ユニット25は、格納されたマップに基づき入力信号にしたがって、および特に速度、所要の出力、および負荷にしたがって、吸熱エンジン3と電気機械Mとの間でトルクを分配する。この場合においても、電気機械Mは、バッテリ31を再充電するための回生ブレーキとして使用されることが可能である。
【0046】
このモードでは、例えば以下に挙げるものなどの複雑な制御ストラテジが、入力信号に基づき識別される特定の動作状況において実施され得る。
【0047】
a.立ち上がり防止制御
初期立ち上がりは、センサ27により生成される傾斜信号の急激な変化として検出され得る。具体的には、この条件は、この信号の数値の経時的偏差を所定の閾値と比較することにより検出することが可能であり、この所定の閾値を超過した場合には、電気機械Mは、後輪6に対して放出される動力を低減させるために回生ブレーキとして動作される。電気機械は、傾斜の軽減が検出されると、駆動トルクの伝達へと復帰し得る。したがって、この機能は、吸熱エンジン3の制御マップへ介入することなく単純な方法で実装され得る。
【0048】
b.空転防止制御
空転条件、すなわち後輪のグリップ喪失は、各車輪に対して接続された角速度センサ28、29により生成される信号同士を比較することにより検出され得る。後輪の角速度が前輪の角速度を超過する場合には、電気機械Mは、後輪6の速度を低下させ後輪6を再度着地させるために回生ブレーキとして使用される。電気機械は、これらの車輪の角速度が均等であると検出されると、駆動トルクの伝達へと復帰し得る。
【0049】
c.コーナリング時の加速制御
熱機関3と電気機械Mとの間のトルク伝達マップが、モータサイクルの側方傾斜角度または側方ロール角度にしたがって修正され得る。
【0050】
具体的には、電気機械のトルク寄与は、最大許容傾斜角度の数値にて相殺され、傾斜角度の減少と共に(すなわちカーブから退出したときに)漸増するように構成され得る。このマッピングは、傾斜角度だけではなく速度を入力パラメータとして使用することにより実施され得る。
【0051】
最後に、したがって、特許請求の範囲により定義されるような保護範囲から逸脱することなく、既述のモータサイクルに対して修正および変更を行い得ることが明らかである。
【0052】
例えば、反転/結合解除ユニットが存在する場合には、これは、電気モードにおいて高始動トルクを実現するための「ショート」ギヤと、電気機械が吸熱エンジンとの組合せにおいてブーストとして使用される場合に使用されることとなる「ロング」ギヤとを規定するために2速変速装置として構成され得る。
【0053】
さらに、電気機械、支持ユニット、ならびにその制御および供給手段(インバータおよびバッテリ)が、熱機関のみを有する従来のモータサイクルに対して供給可能なハイブリッド化キットとして個別に供給され得る。好都合には、このキットは、バッテリが組み込まれた元のモータサイクルテールピースと互換性のあるテールピースからなるものであってもよい。
【0054】
さらに、相互に組み合わされたものとして説明したこれらのモータサイクル特徴部は、単独でおよび種々の組合せで使用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 モータサイクル
2 キャリア構造部
3 吸熱エンジン、熱機関
4 変速装置
5 前輪
6 後輪
7 スイングアーム
8 一次変速機
9 二次変速機
10 アウトプットシャフト、インプットシャフト
11 ピニオン
12 リアスプロケット
13 チェーン
14 補助チェーン変速機、補助変速機
15 反転/結合解除ユニット、デカップラ
16 ベルト変速機
17 第1の歯車
18 アウトプットシャフト
19 第2の歯車
20 アイドルシャフト
21 第1の冠歯車
22 第2の冠歯車
23 摺動スリーブ
24 テールピース
25 マイクロプロセッサ制御ユニット
26 側方傾斜センサまたは側方ロールセンサ
27 傾斜センサまたは立ち上がりセンサ
28 前輪5角速度センサ
29 後輪6角速度センサ
30 インバータ
31 バッテリパック、バッテリ
32 管理システム
33 加速装置
40 支持ユニット
41 頂部プレート
42a アーム
42b アーム
43 ブラケット
44 ブラケット
45 上部部分
46 上部部分
47 固定穴
48 アーム
49 アーム
50 ピニオン
51 ピニオン
52 チェーン
54 リング形状支持部
55 リング形状支持部
【手続補正書】
【提出日】2022-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド駆動モータサイクルであって、キャリア構造部(2)と、前記キャリア構造部(2)上に取り付けられたまたは前記キャリア構造部(2)内に収容された吸熱エンジン(3)と、前輪(5)と、スイングアーム(7)を介して前記キャリア構造部(2)に対して連結された後輪(6)と、一次変速機(8)を介して前記吸熱エンジン(3)に対して連結され且つ二次変速機(9)を介して前記後輪(6)に対して連結された変速装置(4)と、反転可能電気機械(M)と、を備えるハイブリッド駆動モータサイクルにおいて、前記二次変速機(9)のインプットシャフト(10)に対して前記電気機械(M)を連結する補助変速機(14)と、前記キャリア構造部(2)に対して固定され、且つ前記スイングアーム(7)の下方に前記電気機械(M)を支持するように構成された支持ユニット(40)と、を備えることを特徴とする、ハイブリッド駆動モータサイクル。
【請求項2】
前記電気機械(M)は、前記モータサイクル(1)の鉛直方向正中面(P)に対して実質的に対称に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のモータサイクル。
【請求項3】
前記電気機械(M)は、前記二次変速機(9)に対して逆回転することを特徴とする、請求項
1に記載のモータサイクル。
【請求項4】
前記補助変速機(14)は、前記二次変速機(9)の前記インプットシャフト(10)に対して前記電気機械(M)を選択的に連結するように構成された反転/結合解除ユニット(15)を備えることを特徴とする、請求項
1に記載のモータサイクル。
【請求項5】
前記反転/結合解除ユニット(15)は、前記電気機械(M)のアウトプットシャフト(18)と一体である第1の歯車と、アイドルシャフト(20)に対して選択的に連結可能な第2の歯車(19)と、を備えることを特徴とする、請求項4に記載のモータサイクル。
【請求項6】
前記補助変速機(14)は、前記二次変速機(9)の前記インプットシャフト(10)に対して前記アイドルシャフト(20)を連結する変速機(16)を備えることを特徴とする、請求項5に記載のモータサイクル。
【請求項7】
前記キャリア構造部(2)の下方エリアに対して連結されたインバータを備えることを特徴とする、請求項
1に記載のモータサイクル。
【請求項8】
ロール角センサ(26)、立ち上がり角度センサ(27)、前輪角速度センサ(28)、および後輪角速度センサ(29)から受領した入力信号に応答して、前記電気機械(M)の駆動トルクおよび制動トルクを変動するように構成された制御ユニット(25)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のモータサイクル。
【請求項9】
前記制御ユニット(25)は、前記電気機械(M)が傾斜角度の偏差に応じて制動トルクを発生させる立ち上がり制御を実施するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載のモータサイクル。
【請求項10】
前記制御ユニット(25)は、前記電気機械(M)により発生した駆動トルクがロール角に応じて変調されるトルク制御を実施するように構成されることを特徴とする、請求項
8に記載のモータサイクル。
【請求項11】
前記制御ユニット(25)は、前記後輪(6)の角速度が前記前輪(5)の角速度を上回る場合に、前記電気機械(M)が制動トルクを発生させる空転防止制御を実施するように構成されることを特徴とする、請求項
8に記載のモータサイクル。
【請求項12】
前記支持ユニット(40)は、前記キャリア構造部(2)に対して固定され、且つ軸方向における対向側から前記電気機械(M)を支持する一対のアームを備えるブラケットを備えることを特徴とする、請求項
1に記載のモータサイクル。
【請求項13】
前記支持ユニット(40)は、前記キャリア構造部(2)の両側部に対して固定された、および前記スイングアーム(7)に対して外部に延在するように構成された一対のブラケット(43、44)を備え、前記ブラケット(43、44)は、軸方向における反対側において電気機械(M)に対して連結されることを特徴とする、請求項
1に記載のモータサイクル。
【請求項14】
キャリア構造部(2)およびスイングアーム(7)を備えるモータサイクルのためのハイブリッド化キットにおいて、前記モータサイクルの二次変速機(9)のインプットシャフト(10)に対して連結されるように構成された電気機械(M)と、前記キャリア構造部(2)に対して固定され前記スイングアーム(7)の下方に前記電気機械(M)を支持するように構成された支持ユニット(40)と、前記電気機械を制御および前記電気機械に供給するための制御手段(30)および供給手段(31)と、を備えることを特徴とする、ハイブリッド化キット。
【請求項15】
前記制御手段および前記供給手段は、互換性テールピース(24)内に組み込まれたバッテリパック(31)と、インバータ(30)と、からなることを特徴とする、請求項14に記載のキット。
【国際調査報告】