(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】液相に冷媒を分配する吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ、及び、吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
F25B 17/08 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
F25B17/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526174
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2020081347
(87)【国際公開番号】W WO2021089818
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】102019130107.6
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521258072
【氏名又は名称】ソープション テクノロジーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SORPTION TECHNOLOGIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミッテルバッハ、ヴァルター
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093NN04
3L093PP03
3L093PP04
3L093PP07
3L093QQ01
3L093QQ05
(57)【要約】
本発明は、吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ及びその動作方法に関する。吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプは、吸着器と、混合蒸発器と、混合凝縮器とを有する少なくとも1つのモジュールを備える。吸着器は、モジュール内の混合蒸発器及び混合凝縮器と共に、吸着器を収容するための共通の好ましくは断熱された吸着器容器内に構造的に組み合わされて収容され、吸着器容器は、外部から熱的に接触され得る吸着器セクションを有するとともに、混合蒸発器及び混合凝縮器を収容するための外部から断熱された混合セクションを有し、混合セクションは、冷媒が混合セクションを通じて流れることができるように形成され、それにより、冷媒は、混合セクションを通じて流れた後に、モジュールから分離される外部熱交換器に供給されることができ、混合セクションは、冷媒を蒸発及び/又は凝縮させることができるようになっていることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着器(1,2)と、混合蒸発器(3a,4a)と、混合凝縮器(3b,4b)とを有する少なくとも1つのモジュール(5,6)を備える、吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプであって、
前記吸着器(1,2)は、前記モジュール(5,6)内の前記混合蒸発器(3a,4a)及び前記混合凝縮器(3b,4b)と共に、前記吸着器(1,2)を収容するための共通の好ましくは断熱された吸着器容器内に構造的に組み合わされて収容され、前記吸着器容器は、外部から熱的に接触され得る吸着器セクションを有するとともに、前記混合蒸発器(3a,3b)及び前記混合凝縮器(4a,4b)を収容するための外部から断熱された混合セクションを有し、前記混合セクションは、冷媒が前記混合セクションを通じて流れることができるように形成され、それにより、前記冷媒は、前記混合セクションを通じて流れた後に、前記モジュール(5,6)から分離される外部熱交換器(7,8)に供給されることができ、前記混合セクションは、前記冷媒を蒸発及び/又は凝縮させることができるようになっている、
ことを特徴とする吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項2】
液滴を透過させない分離手段、特に分離スクリーンが前記吸着器容器内に設けられ、前記分離手段が前記吸着器セクションと前記混合セクションとを仕切る、ことを特徴とする請求項1に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項3】
前記吸着器セクション及び前記混合セクションは、少なくとも前記吸着器容器内のセクションにおいて同心配置を構成する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項4】
前記同心配置を成す前記吸着器セクションが前記混合セクションによって取り囲まれる、ことを特徴とする請求項3に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項5】
前記混合セクションは、前記冷媒によって流通される際に、冷媒流を分割された液体流としてもたらすように形成され、前記吸着容器が液滴を生成するための手段を収容する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項6】
液滴を生成するための前記手段が充填材のバルクとして形成される、ことを特徴とする請求項6に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項7】
液滴を生成するための前記手段が霧化装置として形成される、ことを特徴とする請求項6に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項8】
液滴を生成するための前記手段は、永久湿潤液膜を形成するために、液体流を仕切ってそれを湿潤させることができる設備の装置である、ことを特徴とする請求項5に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項9】
前記混合蒸発器(3a,4a)及び前記混合凝縮器(3b,4b)は、混合蒸発器/混合凝縮器(3,4)として形成されるユニットの状態で構造的に組み合わされる、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項10】
前記混合セクションは、混合蒸発器/凝縮器(3,4)のための複合構造として形成される、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項11】
前記混合セクションは、混合蒸発器(3a,4a)のための第1のサブセクションと、混合凝縮器(3b,4b)のための第2のサブセクションとを有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項12】
冷媒が流通できる少なくとも2つのモジュール(5,6)の装置と、低温範囲(NT)に熱的に結合するための少なくとも1つの熱交換器(7)及び中温範囲(MT)に熱的に結合するための少なくとも1つの熱交換器(8)の装置と、冷媒流を生成するためのポンプ装置(9,10)と、前記低温範囲(NT)の前記少なくとも1つの熱交換器(7)及び前記中温範囲(MT)の前記少なくとも1つの熱交換器(8)に対して前記モジュール(5,6)を交互に結合するための弁回路(11,12,13,14)とを備える、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ。
【請求項13】
少なくとも1つの吸着器(1,2)と、混合蒸発器(3a,4a)と、混合凝縮器(3b,4b)とを備える吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプを動作させるための方法であって、
前記吸着器(1,2)は、共通モジュール(5,6)内で前記混合蒸発器(3a,4a)及び前記混合凝縮器(3b,4b)と構造的に組み合わされ、
前記吸着器(1,2)から脱離される冷媒は、前記混合凝縮器(3b,4b)で生成される冷媒流へと凝縮され、及び/又は、前記混合蒸発器(3a,4a)で前記冷媒流から蒸発される冷媒は、前記吸着器(1,2)に吸着され、
前記蒸発及び/又は凝縮に関与しない前記冷媒流の部分は、熱伝達流体として、低温範囲(NT)及び/又は中温範囲(MT)と熱的に結合している下流側の外部熱交換器(7,8)に導かれる、方法。
【請求項14】
少なくとも1つの第1のモジュール(5)と、前記低温範囲(NT)と熱結合する少なくとも1つの熱交換器(7)と、中温範囲又は中温回路(MT)と熱結合する少なくとも1つの熱交換器(8)と、少なくとも1つの第2のモジュール(6)とが設けられ、前記低温範囲又は低温回路(NT)及び前記中温範囲(MT)に対する前記モジュール(5,6)の交互の熱結合が、前記冷媒流を含む2つの組み合わされた冷媒回路を介して行われ、前記冷媒が熱伝達流体として使用される、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに係る吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ、及び、請求項13に係る吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプは、通常、吸着器、蒸発器、及び、凝縮器から成る。この場合、蒸発器及び凝縮器は、装置を成す1つの蒸発器/凝縮器へと組み合わされる場合もある。吸着器では、冷媒が、凝縮器から蒸発してそこで外的熱接触により環境から熱を引き出しながら吸着される。その後の脱離工程では、外的熱供給によって吸着器から冷媒が取り出される。脱離された冷媒は、凝縮器内で再び凝縮され、それにより、蒸発プロセス中に事前に抽出された熱と、環境に対する更なる熱接触によって脱離中に供給された熱とを放出する。これにより、蒸発器の熱接触から凝縮器の熱接触へと熱が送出される。
【0003】
通常、連続冷凍又は連続ヒートポンプを可能にするために、2つ以上の吸着器が使用される。これらの2つの吸着器は、プッシュプルモードで対応する吸着及び脱離プロセスを実行し、それに対応して、冷媒の蒸発及び凝縮もプッシュプルモードで実質的に連続的に実行できるように凝縮器又は蒸発器に相互に結合される。
【0004】
そのような設備では水が冷媒として非常に頻繁に使用されるため、このように構成された吸着式冷凍機及び吸着式ヒートポンプを構築するためには、以下の複雑な問題が生じる。
【0005】
蒸発器及び凝縮器に別々の装置が設けられるようになっている場合、構成要素間の接続管及び弁は、水蒸気の低い密度に起因して大きな流れ断面積を有する必要がある。具体的には、低い蒸発温度では、これが費用効率の高い構造の障害となる。
【0006】
冷媒を蒸発させて凝縮させるために1つの装置が交互に使用されるようになっており、したがって、この装置が蒸発器/凝縮器の機能を果たす場合、大きな流れ断面積が実際に構造的に簡単な態様で実現され得る。しかしながら、そのような形態の場合、吸着器だけでなく蒸発器/凝縮器もこの場合に2つの温度レベル間で振動するという問題がある。これは、蒸発器/凝縮器が、必然的に、第1の温度と熱接触させられた後、不可避的に第1の温度とは異なる第2の温度と熱接触させられる必要があるからである。
【0007】
熱質量と熱回収の限られた選択肢とに起因して、2つの温度レベル間のこの振動は、吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプの性能損失及び熱効率低下をもたらす。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の課題は、前述の欠点を回避できる吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ及びそのような装置を動作させるための方法を提案することに基づく。特に、損失は、蒸発器、凝縮器又は蒸発器/凝縮器の熱質量によって最小化されるように意図される。
【0009】
課題の解決は、請求項1の特徴を有する吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ、及び、請求項13の特徴を有する吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプを動作させるための方法を用いて行われる。
【0010】
吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプは、吸着器と、混合蒸発器と、混合凝縮器とを有する少なくとも1つのモジュールを備える。本発明によれば、吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプは、混合蒸発器及び混合凝縮器を有する吸着器が、吸着器を収容するための外部から熱的に接触され得る吸着器セクションと混合蒸発器及び混合凝縮器を収容するための外部から断熱された混合セクションとを有する共通の好ましくは断熱された吸着器容器内に構造的に組み合わされて収容されることを特徴とする。この場合、混合セクションは、冷媒が混合セクションを通じて流れることができるように形成され、それにより、冷媒は、混合セクションを通じて流れた後、モジュールから分離される外部熱交換器に供給されることができ、混合セクションは、冷媒を蒸発及び/又は凝縮させることができるようになっている。
【0011】
したがって、本発明によれば、吸着器間の冷媒分配が気相状態で省かれる解決策が提案される。蒸気相の冷媒は、対応する吸着器が位置される吸着器容器内のそれぞれのモジュール内にのみ存在する。同時に、冷媒自体、より具体的には、蒸発及び凝縮中に相変化しない冷媒のセクションは、外部の熱交換器に熱を伝達する熱輸送手段としての機能を果たす。これは、蒸発又は凝縮が進行する構成要素と、外部の低温範囲又は中温範囲を伴う熱伝達に必要な構成要素との間の構造的分離を更に可能にする。この点において、本発明に係るモジュールは断熱されるとともに、吸着器の吸着動作と脱離動作との間を切り換えるために吸着器と外部熱媒体との熱接触のみがもたらされることが決定的である。有用な熱の実際の伝達は、モジュールから分離されて吸着器容器の内部空間、特にその中に配置された混合蒸発器及び混合凝縮器から空間的に物理的及び熱的に分離される外部熱交換器で行われる。吸着器容器は、好ましくは、気密であるとともに、蒸発プロセス及び吸着器領域と混合領域との間の蒸気交換を促進するために排気され又は負圧に調整され得るように実現される。
【0012】
一実施形態では、液滴を透過させない分離手段、特に分離スクリーンが、吸着器セクションと混合セクションとを仕切る吸着器容器内に設けられる。これにより、吸着材料は、混合セクション内を流れる冷媒と直接的に望ましくなく衝突することが防止される。
【0013】
更なる実施形態において、吸着器セクション及び混合セクションは、少なくとも吸着器容器内のセクションにおいて同心配置を構成する。これにより、吸着器セクションは、吸着及び脱離プロセスのために広く集中的に利用することができ、利用可能な空間を技術的に最適な態様で使用することができる。
【0014】
一変形例において、同心配置の吸着器セクションは、特に混合セクションによって取り囲まれる。
【0015】
適切には、混合セクションは、冷媒によって流通されると、冷媒流を分割された液体流として供給するように形成され、吸着容器は液滴を生成するための手段を収容する。これにより、冷媒流の面積が大幅に拡大される。
【0016】
特に、一実施形態において、液滴を生成するための手段は、充填材のバルクとして形成することができる。
【0017】
しかし、液滴を生成するための手段が霧化装置として形成される実施形態も想定し得る。
【0018】
更に、更なる実施形態において、液滴を生成するための手段は、永久湿潤液膜を形成するために、液体流を仕切ってそれを湿潤させることができる設備の装置であってもよい。そのような場合、冷媒流は、何度も細分化される設備の表面にわたって流れ、それにより、その表面も持続可能に拡大されるように分割されて分けられる。
【0019】
一実施形態において、混合蒸発器及び混合凝縮器は、混合蒸発器/混合凝縮器として形成されるユニットの状態で構造的に組み合わされる。
【0020】
更なる実施形態において、混合セクションは、混合蒸発器/凝縮器のための複合構造として形成される。
【0021】
想定し得る他の実施形態において、混合セクションは、混合蒸発器のための第1のサブセクションと、混合凝縮器のための第2のサブセクションとを有することができる。蒸発及び凝縮は、この実施形態では、吸着容器内の異なる位置で実行される。
【0022】
吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプの想定し得る実施形態において、この実施形態は、冷媒が流通できる少なくとも2つのモジュールの装置と、低温範囲に熱的に結合するための少なくとも1つの熱交換器及び中温範囲に熱的に結合するための少なくとも1つの熱交換器の装置と、冷媒流を生成するためのポンプ装置と、低温範囲の少なくとも1つの熱交換器及び中温範囲の少なくとも1つの熱交換器に対してモジュールを交互に結合するための弁回路とを備えることを特徴とする。これにより、プッシュプルモードで動作する2つあるいは更にはそれ以上のモジュールの装置の基本原理が実現され、この装置は継続的に冷たさを生成する又は熱を送出する。
【0023】
本発明の範囲内で、少なくとも1つの吸着器と、混合蒸発器と、混合凝縮器とを備える吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプを動作させるための方法が更に示される。少なくとも1つの吸着器と、混合蒸発器と、混合凝縮器とを備える吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプを動作させるための本発明に係る方法であって、吸着器は、共通のモジュール内で混合蒸発器及び混合凝縮器と構造的に組み合わされ、吸着器から脱離される冷媒が混合凝縮器内で生成される冷媒流へと凝縮され及び/又は混合蒸発器内の冷媒流から蒸発される冷媒が吸着器に吸着されるように実行される。
【0024】
この場合、蒸発及び/又は凝縮に関与しない冷媒流の部分は、熱伝達流体として、低温範囲及び/又は中温範囲と熱結合している下流側の外部熱交換器に導かれる。
【0025】
方法の1つの形態では、少なくとも1つの第1のモジュールと、低温範囲と熱結合する少なくとも1つの熱交換器と、中温範囲と熱結合する少なくとも1つの熱交換器と、少なくとも1つの第2のモジュールとが設けられ、低温範囲及び中温範囲に対するモジュールの交互の熱結合が、冷媒流を含む2つの組み合わされた冷媒回路を介して行なわれ、冷媒が熱伝達流体として使用される。
【0026】
中温範囲と熱的に結合している熱交換器及び低温範囲と熱的に結合している熱交換器に対するモジュールの交互の熱的結合、特に流体的結合に起因して、中温範囲における熱交換器と接触しているモジュールは、モジュールの吸着器に吸着される冷媒が冷媒流で排出されて凝縮する脱離モードで動作され得る。冷媒に伝達されるこの場合の熱は、その後、中温範囲又は低温回路と熱的に接触している結合された熱交換器を介して排出される。低温範囲における熱交換器と接触しているモジュールは、冷媒流から蒸発する水蒸気がモジュールの吸着器に吸着される吸着モードで動作される。この場合には、低温範囲又は低温回路を冷却するための低温範囲における熱交換器でモジュールから出る冷媒を使用できるように冷媒流から熱が引き出される。これにより、吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプの連続動作が可能となる。
【0027】
ここで、本発明に係る吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプに関して説明した特徴及び達成可能な利点は、本発明に係る方法にも適用され、それに対応して転用可能かつ適用可能であることが指摘されるべきである。同様に、本方法の記載された特徴及び利点は、本発明に係る吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプに適用可能であり、かつ転用可能である。
【0028】
以下、例示的な典型的実施形態に基づき、本発明に係る吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ及び関連する方法について詳しく説明する。添付の図は、明確にするのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1の典型的な実施形態に係る典型的なモジュールが示される。
【
図2】第2の典型的な実施形態に係る典型的なモジュールが示される。
【
図3】本発明の典型的な実施形態に係る吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプが示される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、第1の典型的な実施形態にしたがった本発明に係る吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプで用いる典型的なモジュール5,6を示す。モジュール5,6は吸着器容器によって画定され、該容器の外壁が
図1に概略的に示される。吸着器容器は、中心付けられるように配置される吸着器領域を有し、この領域は
図1に破線によって画定される。混合領域が吸着器領域の両側に接合される。吸着器領域は吸着器1、2を収容し、吸着器1、2は端子Ad
in及びAd
outを有し、該端子を介して吸着器1、2と外部熱源との熱接触を確立することができる。吸着器1、2は、混合領域内に配置される混合蒸発器3a、4a及び混合凝縮器3b、4bによって両側が取り囲まれる。混合蒸発器3a、4a及び混合凝縮器3b、4bは、吸着器1、2を全ての側で同心円状に囲繞してもよい。ここで、互いに押し込まれる円筒の形状が特に想定し得る。この点において、モジュール5、6内の構成要素の配置の概略図は、主要な性質のものに過ぎず、モジュール5、6の構成要素の形態に関するいかなる制限も表わすものではない。
【0031】
モジュール5、6の吸着器容器の内部空間は、混合領域及びそこに配置される混合蒸発器3a、4a及び混合凝縮器3b、4bを通じて導かれる冷媒のための相転移空間としての機能を果たす。
図1に示されるように、冷媒は、霧化装置へと向かうKM
inで示される端子を介して混合蒸発器3a、4a及び混合凝縮器3b、4bに導入され、液滴状の冷媒流へと分割される。冷媒流は、例えば概略的に表された収集装置によって、混合蒸発器3a、4a及び混合凝縮器3b、4bの下側領域に収集されるとともに、吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプの下流側構成要素に供給されるための、特に熱交換器に供給されるためのKM
outで示される端子を介して排出される。混合蒸発器3a、4a及び混合凝縮器3b、4bが配置されて冷媒の供給によって冷媒流が形成される混合領域は、冷媒の凝縮又は蒸発が行われる場所である。冷媒流は、凝縮中に温まり、蒸発中に冷える。
【0032】
したがって、冷媒流、より正確には、モジュール5、6における相転移に関与しない冷媒の部分は、モジュール5、6内の熱輸送手段としての機能を果たす。主に、外部環境との熱交換は、混合領域内及びそこに設けられる混合蒸発器3a、4a及び混合凝縮器3b、4b内では意図されていない。吸着器1、2のみが、端子ADin及びADoutを介して外部から熱的に接触される。この点で、モジュール5、6の構造は、吸着器と直接に熱接触している蒸発器及び凝縮器が外部の熱媒体に熱を伝達するための熱交換器として機能する従来の冷凍機の構造とは根本的に異なる。本発明に係るモジュール5、6において、外部熱媒体への熱伝達は、相転移空間内に収容される熱交換器に熱を伝導することによって行われるのではなく、吸着器容器又はモジュール5、6から出る冷媒の部分を冷却又は加熱することによって直接に行われる。相転移空間内の相転移に関与しない冷媒の部分は、外部熱交換器内で熱を伝達するのに役立つ。
【0033】
混合領域と吸着器領域との間には、分離手段、特に分離格子又は分離スクリーンが配置される。分離手段は、液滴が混合領域から吸着器領域へと直接通過するのを防止する。これにより、冷媒の気相のみが吸着器1、2に到達する又は吸着器1、2から冷媒流に浸透することが確保される。
【0034】
図2は、本発明に係るモジュール5、6の別の典型的な実施形態を示す。モジュール5、6は、この場合も先と同様に相転移空間を形成する吸着器容器によって画定される。吸着器容器内には、吸着器1、2を収容する吸着器領域が形成される。更に、吸着器領域と熱接触する混合領域が形成される。
図1に示される形態とは対照的に、混合領域は、分離された混合蒸発器3a、4a及び混合凝縮器3b、4bの代わりに、モジュール5、6の動作に応じて混合蒸発器又は混合凝縮器として機能する複合混合蒸発器/凝縮器3、4を収容する。これにより、モジュール5、6に必要な構造空間及び必要な端子の数を減らすことができる。そうでない場合、形態及び動作モードは、
図1に示されるモジュールに対応する。
【0035】
図1及び
図2に示されるモジュール5、6において、吸着器1、2が冷媒を吸着するように中温回路に接続される場合、熱は、混合蒸発器3a、4aにより冷媒流から引き出される(
図1)又は混合蒸発器/凝縮器3、4(
図2)内の冷媒流から引き出される。その結果、冷媒流が冷却される。飽和吸着器1、2が脱離のための高温回路に接続されると、吸着器1、2からの冷媒は、混合蒸発器3a、4a(
図1)又は混合蒸発器/凝縮器3、4(
図2)によって冷媒流で脱離及び凝縮する。この場合、冷媒流は吸熱する。
【0036】
冷媒流から引き出される又は冷媒流に供給される熱を有用なものにするために、モジュール5、6からの冷媒流は、外部熱媒体との熱接触を確立するために、モジュール5、6から空間的に物理的かつ熱的に分離される熱伝達装置に供給される。既に上述したように、これは本発明の核心概念である。
【0037】
図3は、上述の種類の第1のモジュール5及び第2のモジュール6と関連する冷媒回路とを伴う本発明の典型的な実施形態に係る吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプを示す。
【0038】
図3に係る典型的な吸着式冷凍機は、吸着器1、2がそれぞれ位置される2つのモジュール5、6を有する。モジュール5、6は
図3に概略的に示されており、それらの構造は、収容される吸着器1、2及び混合蒸発器/凝縮器3、4に縮小される。同様に、
図1に示される構成にしたがってモジュール5、6の一方又は両方を形成することも想定し得る。
【0039】
吸着器領域内で、モジュール5、6はそれぞれ、吸着材と接触する伝熱装置を更に収容し、吸着材は、例えばバルクとして導入され又はコーティング法によって伝熱面に塗布される。モジュール5、6内の混合蒸発器/凝縮器3、4のための混合領域は、噴射ユニットのみ又は相転移を改善するための更に充填材又は構造を収容することができるとともに、
図1,2に関して既に上述したように、液滴分離器として機能するウェブ(図の破線)によって吸着器空間から分離され得る。
【0040】
低温範囲NTにおける熱媒体回路及び中間温度範囲MTcdの凝縮器部分への熱伝達は、2つの熱伝達装置7、8によって行なわれ、これらの熱伝達装置は、それぞれの通常の構造形態において、液体、すなわち冷媒の熱を熱媒体回路の熱媒体流体(水、伝熱油、空気、又は、他のガス、蒸気、冷凍機のカスケード接続の場合は二次冷媒)に伝達するために実現され得る。
【0041】
冷媒は、交互に、熱交換器7が混合蒸発器/凝縮器3に接続され、熱交換器8が混合蒸発器/凝縮器4に接続され、熱交換器7が混合蒸発器/凝縮器4に接続され、熱交換器8が混合蒸発器/凝縮器3に接続されるように、2つのポンプ9、10と、4つの三方弁11、12、13、14によって
図3に示される弁アセンブリ11、12、13、14とによって制御される。三方弁11、12、13、14の代わりに、二方弁又は特殊弁のそれぞれ2つも想定し得る。
【0042】
その混合蒸発器/凝縮器が第1の熱交換器7に接続されるモジュールは、吸着モードで動作される。この場合、モジュールの関連する吸着器は、冷媒流から蒸発される冷媒を吸着器に吸着させるように中温回路MTadに接続される。この場合、冷媒流は、冷却されて、第1の熱交換器7内の低温回路を冷却するために使用され得る。
【0043】
その混合蒸発器/凝縮器が第2の熱交換器8に接続されるモジュールは、脱離モードで動作される。この場合、モジュールの関連する吸着器は、冷媒を吸着器で脱離させて吸着器から冷媒を排出させるように高温回路に接続され、吸着器は、混合蒸発器/凝縮器内の冷媒流で凝縮する。この場合、冷媒流は加熱される。加熱された冷媒は、第2の熱交換器8にそこで熱を放出するために供給される。
【0044】
冷媒として水などの低圧冷媒が使用される場合には、ポンプ9,10、弁11,12,13,14、熱交換器7,8、及び、冷媒回路を真空気密に実現する必要がある。このとき、ポンプ9、10は、駆動装置と磁気的に有利に結合され、キャビテーションが回避されるように設置されなければならない。
【0045】
2つの吸着器回路AD1、AD2は、外部の高温HT回路及び中温回路MTadの吸着器部分に対して三方弁によって周知の態様で接続される。
【0046】
図3に記載される典型的な実施形態では、図示の装置が吸着式冷凍機として動作される。同様に、第2の熱交換器8に接続される中温回路を利用回路として使用することによって図示の装置を吸着式ヒートポンプとして使用することも想定し得る。
【0047】
吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプの本発明に係る構造は、吸着器における蒸発/凝縮プロセス及び冷媒と加熱流体又は冷却流体との間の熱伝達を分離できるようにする。
図1,2に関して上述したように、冷媒は、混合蒸発器又は混合凝縮器の原理にしたがってモジュールの吸着器チャンバに直接に導入され、そこで蒸発又は排出された冷媒が表面で凝縮する。この方法は、直接相転移(蒸発/凝縮)とも呼ばれる。ここで、外部の熱媒体への熱伝達は、相転移空間内に収容される熱伝達装置への熱伝導によって行われるのではなく、相転移空間を出る液体の部分を冷却又は加熱することによって直接に行われる。相転移に関与しない液体の部分は、外部の熱伝達装置に熱を伝達するのに役立つ。
【0048】
相転移空間内の冷媒分配のために、記載された霧化装置などの直接相転移のための全ての既知の装置を使用することができるが、噴射装置、表面分布のための充填材(例えば、ラシヒリング又はポールリング)、面分布変形例、冷却塔で使用されるような多孔質構造までも使用することができる。高感度吸着材、例えば、一部のケイ酸塩ゲル及び冷媒として水を有するゼオライトの場合、液体が液滴の形態で吸着器に直接入るのを避けるために保護を加えることが推奨される。水などの低圧冷媒の場合、設備の真空適合性に特に注意を払う必要がある。これは、理想的には磁気結合によって密封される使用されるポンプにも当てはまる。ポンプ選択及び導管構造(特に排気側)では、キャビテーションを回避するために注意を払わなければならない。
【0049】
この原理が吸着式冷凍機に適用され、冷媒が吸着器容器内で交互に蒸発又は凝縮する場合、低温回路及び中温回路の2つの外部熱媒体回路への熱伝達は、これらが蒸発温度と凝縮温度との間で振動することなく、分離された熱伝達装置内で実行され得る。この場合、温度振動は、冷媒分配、場合によっては相転移を改善するための設備(例えば、充填材(ただし、その熱質量は、低い材料厚さ又はプラスチックの使用によって制限され得る))及びモジュール入口/出口と弁との間の管部分にのみ及ぶが、これを非常に短く保つことができる。
【0050】
本明細書に記載の吸着式冷凍機又は吸着式ヒートポンプ及びその動作のための本明細書に記載の方法の利点は、以下のように要約される。
【0051】
・ 蒸発及び凝縮の振動割合内で熱質量を減少させることによる性能及び熱効率の改善。
【0052】
・ 相転移及び熱転移は、それぞれの効率的な装置によって、例えばポールリング及びプレート熱交換器によって別々に最適化することができる。これにより、振動蒸発器/凝縮装置を両方のタスクのために最適化することができないため、全体の効率が大幅に向上する。更に、2つの目標方向、すなわち相転移のための大きな表面と熱転移のための短い経路との間には矛盾がある。
【0053】
・ 低温回路及び/又は中温回路の凝縮器部分のための相互接続された熱媒体回路を何ら伴わないプロセス水と空気又はガスとの間の直接的な熱伝達の可能性。吸着式冷凍機が室外機として用いられるときには、リターンクーラーが凝縮用と吸着器冷却用の2つの別々の管回路を備える場合、これにより、直接空冷ユニットを構築することができる。
【0054】
・ 低温回路用の相互接続された熱媒体回路を何ら伴わないプロセス水と空気又はガスとの間の直接的な熱伝達の可能性。吸着式冷凍機が室内装置として用いられるときには、特に吸着式冷凍機と空気冷却器との間に長いライン経路がない場合、これにより、直接空冷ユニットを構築することができる。これは、例えば、水冷式プロセッサからの排熱を駆動に利用するラック一体型吸着式冷凍機に適用することができる。液体は真空下にあるので、漏れの場合、空気が流入して液体を例えばリザーバに押し込むため、ここでは漏れ安全構造を追加の利点として選択することができる。
【0055】
・ 蒸発又は凝縮空間が外面に又は吸着器の周りに環状に配置されている場合、モジュールの非常にコンパクトな構成の可能性。これにより、流れは全ての側面から均一に吸着器に到達し、流れ断面積は最大であり、したがって蒸気速度は非常に低く、環境に対する吸着器の熱損失は最小限に抑えられる。
【0056】
・ 不活性ガスは大きな表面に起因して液体により良好に吸収されることから、不活性ガスをシステムから除去するための非常に簡単な可能性。不活性ガスの除去は、弁の出口で直接行われるが、これは、そこでは圧力が最も高いためである。次いで、脱気を、膜又は充填材による一般的な方法にしたがって行うことができる。ポンプ設計が1バールを超える過圧を許容しない場合、二次容器内の単純な真空ポンプによって低真空、例えば500mbarを生成する可能性もあり、二次容器は定期的に自動的に空にされる。
【0057】
実施形態の典型的な例に基づいて本発明の主題を説明してきた。熟練を要する動作の範囲内で更なる形態が想定し得る。更なる実施形態が従属請求項によって更にもたらされる。
【符号の説明】
【0058】
1 第1の吸着器
2 第2の吸着器
3 第1の混合蒸発器/凝縮器
3a 第1の混合蒸発器
3b 第1の混合凝縮器
4 第2の混合蒸発器/凝縮器
4a 第2の混合蒸発器
4b 第2の混合凝縮器
5 第1のモジュール
6 第2のモジュール
7 熱交換器又は熱伝達手段のNT回路
8 熱交換器又は熱伝達手段のMT回路
9 蒸発器冷媒ポンプ
10 凝縮器冷媒ポンプ
11~14 弁回路
【国際調査報告】