(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】制御圧縮比を有するエンジン用の可変長コネクティングロッド
(51)【国際特許分類】
F02B 75/04 20060101AFI20221228BHJP
F02B 75/32 20060101ALI20221228BHJP
F01B 31/14 20060101ALI20221228BHJP
F02D 15/02 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
F02B75/04
F02B75/32 B
F01B31/14
F02D15/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526707
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 FR2020051987
(87)【国際公開番号】W WO2021089940
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179987
【氏名又は名称】エムセウ 5 デヴェロプモン
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レネ-ピエール ベルトー
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA12
3G092DD06
(57)【要約】
本発明は、可変長コネクティングロッド(10)に関し、-クランクシャフトのクランクピンとのピボット接続を確立するように設計されたコネクティングロッドヘッド(102)、-コネクティングロッド(10)の長さを制御するための油圧回路(104)、-油圧回路を制御するためのシステム(110)を含む。制御システム(110)は、-コネクティングロッドヘッド(102)のハウジング内に配置された、少なくとも1つの線形油圧スライド(111)、-コネクティングロッドヘッド(102)の側壁に配置され、制御部材によって加えられる押圧力を受けるのに適し、押圧力は、スライド(111)が移動することを可能にする、少なくとも第1のシュー(113)、-押圧力の不存在で、スライド(111)を、その静止位置に戻すための戻し手段、-コネクティングロッドヘッド(102)の側壁に配置され、押圧力を受けるのに適した、少なくとも第2のシュー(115)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変長コネクティングロッド(10)であって、その本体(101)は、長手方向軸(z)に沿って延びており、前記可変長コネクティングロッド(10)は、
-前記長手方向軸(z)に垂直な横軸(y)に沿って、クランクシャフトのクランクピンとのピボット接続を確立するように設計された、コネクティングロッドヘッド(102)と、
-前記コネクティングロッド(10)の長さを制御するための油圧回路(104)と、
-前記油圧回路(104)を制御するためのシステム(110)と、
を含み、
前記制御システム(110)は、
-前記コネクティングロッドヘッド(102)のハウジング(112)内に配置された、少なくとも1つの線形油圧スライド(111、111a、111b)であって、前記少なくとも1つの線形油圧スライド(111、111a、111b)は、第1の静止位置(P1)と少なくとも1つの第2の位置(P2)を占めることが可能で、各位置は、前記油圧回路(104)との流体連通が開閉されることを可能にする、前記少なくとも1つの線形油圧スライド(111、111a、111b)と、
-前記コネクティングロッドヘッド(102)の側壁に配置され、前記スライド(111、111a、111b)の一端に固定された、少なくとも第1のシュー(113)であって、前記少なくとも第1のシュー(113)は、前記クランクピンと同軸で、前記コネクティングロッド(10)の外部にある、環状制御部材(50、50’)によって加えられる押圧力を受けるのに適しており、前記押圧力は、前記スライド(111、111a、111b)が、第2の位置(P2)に移動させさられることを可能にする、前記少なくとも第1のシュー(113)と、
-押圧力の不存在で、前記スライド(111、111a、111b)を、その第1の静止位置(P1)に戻すための戻し手段(114)と、
-前記コネクティングロッドヘッド(102)の側壁に配置され、押圧力を受けるのに適した、少なくとも第2のシュー(115)と、
を含むことを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、前記第1のシュー(113)、および、前記第2のシュー(115)は、前記押圧力がこれらに加えられたときに、前記シューが受ける力の重心が、実質的に、前記コネクティングロッドヘッド(102)の中心に位置づけられるように配置されることを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、前記シュー(113、115)の少なくとも1つは、前記横軸(y)に沿った、その可能な移動を制限するための端止め部材を含むことを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、前記油圧回路(104)は、少なくとも2つの油圧チャンバ(1041、1042)を含み、それぞれは、少なくとも1つのダクト(104a、104a’、104b、104b’)によって、前記スライド(111、111a、111b)に接続され、前記チャンバ(1041、1042)は、少なくとも1つの油圧ピストンに関連付けられ、その移動は、前記長手方向軸(z)に沿った、前記コネクティングロッド(10)の長さを変更するのに適していることを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項5】
請求項4に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、前記少なくとも1つのスライド(111、111a、111b)は、それが占める位置に応じて、油圧チャンバ(1041、1042)とオイル供給部(11)との間のオイル循環を確立するか、または、油圧チャンバ(1041、1042)とオイルドレン(12)との間のオイル循環を確立するか、または、2つの油圧チャンバ(1041、1042)の間のオイル循環を確立するか、または、前記2つの油圧チャンバ(1041、1042)との、いかなるオイル循環をも遮断することを可能にする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項6】
請求項5に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、前記オイル供給部(11)は、コネクティングロッドヘッド(102)のベアリング(103)から、潤滑オイルを回収するように構成されることを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項7】
請求項5または6に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、前記少なくとも1つのスライド(111、111a、111b)は、オイル循環の方向が定められることを可能にする、少なくとも1つのバルブ(1112、1115、1115’)を含むことを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか一項に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、前記油圧回路(104)は、前記2つの油圧チャンバ(1041、1042)を接続し、オイル循環の方向が定められることを可能にするバルブ(1046)を備えた、ダクト(104c)を含むことを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか一項に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、少なくとも1つの油圧ピストンに接続された、戻し、または、押し戻し部材(1042a)を含むことを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【請求項10】
請求項4から9のいずれか一項に記載の可変長コネクティングロッド(10)であって、油圧チャンバ(1042)と前記スライド(111b)とを接続する、少なくとも1つのダクト(104b)は、前記油圧ピストン(1045)が定められた位置に達したときに、前記油圧チャンバ(1042)と前記スライド(111b)との間のオイル循環を可能にするように構成された、シャッター装置(1047)を含むことを特徴とする可変長コネクティングロッド(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御可変長を有するコネクティングロッドを実装する、可変圧縮比を有するエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの圧縮比が可変とされることを可能にする解決策の中で、軸間距離(つまり、コネクティングロッドの長さ)が制御され得る、コネクティングロッドを実装する、解決策が知られる。例えば、コネクティングロッドが第1の長さを有するとき、エンジンは、第1の圧縮比を呈するように構成され、コネクティングロッドが第2の長さを有するとき、エンジンは、第2の圧縮比を呈するように構成される。
【0003】
コネクティングロッドは、例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2016/237889号明細書)で知られるような伸縮式のもの、または、偏心型のものであり得る。一般に、コネクティングロッドは、多くの場合、その長さが調整されることを可能にする、油圧機械的な性質の装置を取り付けられる。
【0004】
どの形状が選択されても、コネクティングロッドは、エンジンの圧縮比を連続的に調整するために、第1の長さと第2の長さの間で、その長さの連続的な調整を可能にするように構成され得る(いわゆる「連続レート」コネクティングロッド)。あるいは、コネクティングロッドは、「双安定」または「バイレート」と呼ばれ得、その場合、その第1および第2の長さのみが、安定した位置を形成し、エンジンの2つの動作モードが画定されることを可能にし、各モードは、定められた圧縮比に対応する。コネクティングロッドは、また、「トライレート」であり得、この場合、エンジンの定められた圧縮比に関連付けられた、3つの定められた長さが、安定した位置を形成する。
【0005】
コネクティングロッドを制御することは、エンジンに設定値の圧縮比を与えるために、その長さを目標の長さに調整するための、油圧機械装置を制御することにある。
【0006】
例えば、特許文献2(米国特許出願公開第2017/089257号明細書)から知られる、第1のアプローチによれば、設定値の伝達は機械的に実行される。例えば、制御は、コネクティングロッドがクランクシャフトによって駆動されている間に、調整装置のアクチュエータ(例えば、油圧分配器のスライド)とクランクケースに取り付けられた制御部品との間で、衝突することによって得られる。衝突は、非常に高速で発生し、この衝撃制御は、エンジンブロック内の制御部品の非常に正確な配置を必要とし、これは、その製造を、特に複雑で高価にする。さらに、この制御モードは、接触する部品の著しい音響放射と急速な摩耗につながる。
【0007】
別の既知のアプローチによれば、設定値の伝達は、油圧手段によって実行される。したがって、上述の特許文献1(米国特許出願公開第2016/237889号明細書)は、コネクティングロッドの長さ調整装置のアクチュエータに作用する、潤滑回路を有する、コネクティングロッドの使用を提供する。このタイプの油圧制御は、コマンドの慣性が大きく、エンジン速度に対する感度が高いという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/237889号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/089257号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述の欠点の、すべてまたはいくつかを克服することを目的とする。それは、特に、機械的伝達によって制御され、衝撃を伴わず、外部制御部材と協働し得る、可変長コネクティングロッドに関連する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の簡単な説明
本発明は、可変長コネクティングロッドに関し、その本体は、長手方向軸に沿って延び、
・長手方向軸に垂直な横軸に沿った、クランクシャフトのクランクピンとの、ピボット接続を確立するように設計された、コネクティングロッドヘッドと、
・コネクティングロッドの長さを制御するための油圧回路と、
・油圧回路を制御するためのシステムと、を含む。
【0011】
制御システムは、
・コネクティングロッドヘッドのハウジング内に配置され、第1の静止位置と少なくとも1つの第2の位置を占め得、各位置は、油圧回路との流体連通が開閉されることを可能にする、少なくとも1つの線形油圧スライドと、
・コネクティングロッドヘッドの側壁に配置され、スライドの一端に固定された、少なくとも第1のシューであって、シューは、クランクピンと同軸で、コネクティングロッドの外部にある環状制御部材によって加えられる押圧力を受けるのに適し、押圧力は、スライドが、第2の位置に移動することを可能にする、少なくとも第1のシューと、
・押圧力の不存在で、スライドを、第1の静止位置に戻すための戻し手段と、
・コネクティングロッドヘッドの側壁に配置され、押圧力を受けるのに適した少なくとも第2のシューと、を含む。
【0012】
個別に、または、任意の技術的に可能な組み合わせで採用される、本発明の他の有利で非限定的な態様によれば、
-第1および第2のシューは、押圧力がそれらに印加されたときに、シューが受ける力の重心が、実質的にコネクティングロッドヘッドの中心に位置づけられるように配置され、
-シューの少なくとも1つは、横軸に沿った、その可能な動きを制限するための端止め部材を備え、
-油圧回路は、少なくとも2つの油圧チャンバを備え、それぞれは、少なくとも1つのダクトによってスライドに接続され、チャンバは、少なくとも1つの油圧ピストンに関連付けられ、その動きは、長手方向軸に沿ったコネクティングロッドの長さを変更するのに適しており、特に、チャンバは、伸縮式コネクティングロッドの場合、中央ピストンに関連付けられ、チャンバは、偏心型コネクティングロッドの場合、それぞれ、第1のピストン、および、第2のピストンに関連付けられ、
-(少なくとも1つの)スライドは、それが占める位置に応じて、油圧チャンバとオイル供給部の間のオイル循環を確立すること、または、油圧チャンバとオイルドレンの間のオイル循環を確立すること、または、2つの油圧チャンバ間のオイル循環を確立すること、または、2つの油圧チャンバとのいかなるオイル循環をも遮断することを可能にし、
-オイル供給部は、コネクティングロッドヘッドベアリングから潤滑オイルを回収するように構成され、
-(少なくとも1つの)スライドは、オイル循環の方向が定められることを可能にする少なくとも1つのバルブを備え、
-油圧回路は、2つの油圧チャンバを接続し、オイル循環の方向が定められることを可能にするバルブを備えた、ダクトを備え、
-コネクティングロッドは、少なくとも1つの油圧ピストンに接続された、戻し、または、押し戻し部材を備え、
-油圧チャンバとスライドを接続する少なくとも1つのダクトは、油圧ピストンが定められた位置に達するときに、油圧チャンバとスライドの間でのオイルの循環を可能とするように構成された、シャッター装置を備える。
【0013】
本発明の他の態様および利点は、添付の図面を参照して、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】本発明による伸縮式コネクティングロッドを示す図である。
【
図1b】本発明による偏心型コネクティングロッドを示す図である。
【
図1c】本発明による偏心型コネクティングロッドを示す図である。
【
図2a】本発明によるコネクティングロッドの制御システムの全部または一部を示す分解図である。
【
図2b】本発明によるコネクティングロッドの制御システムの全部または一部を示す図である。
【
図2c】本発明によるコネクティングロッドの制御システムの全部または一部を示す図である。
【
図3a】本発明による、チャンバ間の移動を伴わない、偏心型コネクティングロッドの、油圧コネクティングロッド長さ制御回路の、「バイレート」動作の油圧回路図である。
【
図3b】本発明による、チャンバ間の移動を伴わない、伸縮式コネクティングロッドの、油圧コネクティングロッド長さ制御回路の、「バイレート」動作の油圧回路図である。
【
図3c】本発明による、チャンバ間の移動を伴う、伸縮式コネクティングロッドの、コネクティングロッドの長さを制御するための油圧回路の、「バイレート」動作の油圧回路図である。
【
図3d】本発明による、チャンバ間の移動を伴う、偏心型コネクティングロッドの、コネクティングロッドの長さを制御するための油圧回路の、「バイレート」動作の油圧回路図である。
【
図4a】油圧チャンバ間の移動を伴わない、本発明による偏心型コネクティングロッドの制御システムを示す図である。
【
図4b】油圧チャンバ間の移動を伴わない、本発明による偏心型コネクティングロッドの制御システムの、「バイレート」動作の関連油圧回路図である。
【
図5a】油圧チャンバ間の移動を伴う、本発明による伸縮式コネクティングロッドの制御システムを示す図である。
【
図5b】油圧チャンバ間の移動を伴う、本発明による伸縮式コネクティングロッドの制御システムの、「トライレート」動作の関連油圧回路図である。
【
図5c】油圧チャンバ間の移動を伴う、本発明による伸縮式コネクティングロッドの制御システムの変形例を示す図である。
【
図5d】油圧チャンバ間の移動を伴う、本発明による伸縮式コネクティングロッドの制御システムの変形例の、「トライレート」動作の関連油圧回路図である。
【
図6a】油圧チャンバ間の移動を伴わない、本発明による偏心型コネクティングロッドの制御システムを示す図である。
【
図6b】油圧チャンバ間の移動を伴わない、本発明による偏心型コネクティングロッドの制御システムを示す図である。
【
図6c】油圧チャンバ間の移動を伴わない、本発明による偏心型コネクティングロッドの制御システムの、「連続レート」動作の関連油圧回路図である。
【
図7a】油圧チャンバ間の移動を伴う、本発明による伸縮式コネクティングロッドの制御システムを示す図である。
【
図7b】油圧チャンバ間の移動を伴う、本発明による伸縮式コネクティングロッドの制御システムを示す図である。
【
図7c】油圧チャンバ間の移動を伴う、本発明による伸縮式コネクティングロッドの制御システムを示す図である。
【
図7d】油圧チャンバ間の移動を伴う、本発明による伸縮式コネクティングロッドの制御システムの、「連続レート」動作の関連油圧回路図である。
【
図8a】クランクシャフトによって支えられ、本発明による、コネクティングロッドと協働するように構成された、制御部材を示す図である。
【
図8b】クランクシャフトによって支えられ、本発明による、コネクティングロッドと協働するように構成された、制御部材を示す図である。
【
図8c】クランクシャフトによって支えられ、本発明による、コネクティングロッドと協働するように構成された、制御部材を示す図である。
【
図8d】クランクシャフトによって支えられる制御部材と協働する、本発明によるコネクティングロッドの制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、制御圧縮比エンジン用の、可変長コネクティングロッド10に関する。
【0016】
図において、同じ参照が、同じタイプの部材、または、同じ機能を実行する部材に対して使用され得ることが、留意されるべきである。
【0017】
コネクティングロッド10は、長手方向軸zに沿って延びる本体101を備える。本発明によるコネクティングロッド10は、伸縮式(
図1a)または偏心型(
図1b、
図1c)のものであり得、そして、中央シリンダ機構または偏心機構が、コネクティングロッド10の本体101に配置される。これらの機構は、コネクティングロッド10に含まれる、油圧制御回路104の一部である。2つのコネクティングロッド構成において、油圧回路104は、好ましくは、少なくとも1つの油圧ピストンに関連する、少なくとも2つの油圧チャンバ1041、1042を含む。特に、油圧チャンバ1041、1042は、伸縮式コネクティングロッドの場合、中央ピストン1045に関連付けられ(
図1a)、チャンバ1041、1042は、偏心型コネクティングロッド(
図1c)の場合、それぞれ、第1のピストンおよび第2のピストンに関連付けられる。これらの2つの油圧チャンバ1041、1042内、または、これらの2つの油圧チャンバ1041、1042間の、オイルの供給、排出、または、循環の変更は、油圧ピストンの動きを引き起こし、その動きは、コネクティングロッドの長さが、長手方向軸zに沿って変更されることを可能にする。
【0018】
有利には、伸縮式コネクティングロッド(
図1a)の場合、コネクティングロッドベース(本体101)に取り付けられた部分と、コネクティングロッドヘッド102に取り付けられた部分との間の、長い案内が優先され、長い案内は、一方では、ピストン1045で、他方では、スライドピボット接続1048で行われ、コネクティングロッド10が傾斜しているときに外力の吸収を確実にし、それらの摩擦、または、ジャミングさえも制限するであろう。
図1aに示されるように、中央ピストン1045は、コネクティングロッド本体のボアの下に延びるスタッドを備えたナットによって保持され、したがって、スライドピボット接続1048を生成する。さらに、機構において対向トルクの発生を避けるために、対向ピッチを備えた二重ばね1049が優先されるであろう。
【0019】
コネクティングロッド10は、また、長手方向軸zに垂直な横軸yに沿って、制御圧縮比エンジンのクランクシャフト200のクランクピン2とのピボット接続を確立するように設計された、コネクティングロッドヘッド102を備える。従来のエンジンと同様に、ベアリング103が、コネクティングロッドヘッド102とクランクピン2との間の摩擦を制限するために設けられる。
【0020】
コネクティングロッド10は、さらに、油圧回路104を制御することを意図された、制御システム110を備え、制御システム110は、油圧回路104との流体連通を管理すること、すなわち、連通を開閉し、油圧回路104と外部との間のオイルの循環、および/または、油圧回路104内のオイルの循環を調整することを可能にするであろう。この油圧回路104内を循環することを意図されたオイルは、エンジンのオイルであることが留意されるべきである。
【0021】
制御システム110は、コネクティングロッド10のヘッド102のハウジング112に配置された、少なくとも1つの線形油圧スライド111を備える(
図2a)。制御システム110は、コネクティングロッドヘッド102に配置され、ハウジング112と連通する、少なくとも1つのダクト104aを介して、油圧回路104と流体結合にある。
【0022】
ハウジング112は、好ましくは、横軸yに平行である。スライド111は円筒形で、典型的には、4-6mmの間に含まれる外径を有する。
【0023】
有利には、ハウジング112は、スライド111が収容される中央セクションと、オイル供給部11と連通する前部セクション112aと、前部セクション112aの反対側の、後部セクション112bとを有する(
図2b、
図2c)。後述されるいくつかの実施形態では、後部セクション112bは、オイルドレン12と連通する。
【0024】
スライド111の小さなスペース要件は、力が、コネクティングロッド10に伝達されるとき、ハウジング112の変形を制限するという利点を有し、また、それは、ヘッド102へのスライド111の簡単な配置の利点を有する。
【0025】
スライド111とハウジング112の間にシールは設けられず、発生した漏れは、油圧回路104内のオイルの徐々の更新を可能にする。スライド111の小さい直径は、この漏れのより適切な制御を可能にする。
【0026】
ハウジング112の後部セクション112bが、オイルドレン12と連通する、実施形態では、この漏れから生じるオイルは、ドレン12で排出され、したがって、セクション112bでの流体圧縮を回避する。
【0027】
有利には、スライド111は、供給部11から来るオイルが通過する、フィルタ1111と、フィルタ1111からスライド111の内部に向かうオイルの循環を可能にする、少なくとも第1のバルブ1112とを含む。それは、また、スライド111の内部と、油圧回路104の少なくとも1つのダクトとの間に、流体連通を確立するための、少なくとも1つのオリフィス1113を含む(
図2b、
図2c)。
【0028】
スライド111は、スライド111が、ハウジング112内で、横軸yに沿って移動し得るため、線形であると言われる。したがって、スライド111は、第1の静止位置P1と、少なくとも1つの第2の位置P2を占めることが可能である。スライド111の位置は、
・スライド111を介した、油圧回路104とオイル供給部11の間の流体連通の確立、
・または、スライド111を介した、油圧回路104とオイルドレン12の間の流体連通の確立、
・または、スライド111を介した、回路104の2つの油圧チャンバ間の流体連通の確立、
・または、油圧回路104との流体連通を遮断し、油圧回路104を閉回路に隔離すること、のいずれかを可能にするであろう。
これらの異なる構成は、特定の実施形態において、後で詳しく説明されるであろう。
【0029】
制御システム110は、また、コネクティングロッドヘッド102の側壁に配置され、スライド111の一端に固定された、第1のシュー113を備える。第1のシュー113は、コネクティングロッドの外部の制御部材50によって加えられる少なくとも1つの押圧力を受けるのに適し、制御部材50は、例えば、クランクシャフト200によって支えられる。この押圧力は、第1のシュー113によってスライド111に伝達され、スライド111の線形変位を引き起こし、それが、その(少なくとも1つの)第2の位置P2を占めることをもたらす。
【0030】
本発明の文脈において、外部制御部材50は、コネクティングロッドヘッド102の側壁に対向して配置された、クランクピン2と同軸の環状表面を有する。
【0031】
外部制御部材50は、横軸yに沿って移動するように構成され、したがって、第1のシュー113と接触し、それに押圧力を加え得る。コネクティングロッド10の外部の、コネクティングロッド10と協働する、制御部材50の実施形態の例が、以下に説明されるであろう。
【0032】
例として、
図2a、
図2b、および、
図2cに示されるように、第1のシュー113は、円筒形ピン113aによって、スライド111の端部に固定されて保持される。第1のシュー113は、また、横軸yに沿ったその可能な動きを制限するための、端止め部材113bを備える。これらの端止めは、ヘッド102に固定され、第1のシュー113に配置された窓113cに差し込まれた、2つの円筒形ピン113bによって作製され得、したがって、横軸yに沿った並進における、第1のシュー113の動きを、窓のサイズに制限する。このような止め部材113bを使用することは、また、クランクシャフト200に組み立てる前に、コネクティングロッド10のスライド111の事前組み立てを可能にする。
【0033】
有利には、ハウジング112の前部セクション112aは、第1のシュー113を部分的に収容するように構成される。
図2b、
図2cの例では、前部セクション112aは、第1のシュー113が、横軸yに沿った、コネクティングロッドヘッド102とのスライド結合を確立することを可能にする、拡大したハウジングを有する。
【0034】
制御システム110は、また、第1のシュー113に加えられる押圧力の不存在で、スライド111を、第1の静止位置P1に戻すための、戻し手段114、例えば、ばねを備える(
図2a)。
【0035】
制御システム110は、また、第1のシュー113と同じ、コネクティングロッドヘッド102の側壁に配置された、第2のシュー115を備える(
図1aおよび
図1b)。第2のシュー115は、また、外部制御部材50によって加えられる押圧力を受けるのに適する。それは、有利には、外部制御部材50によって加えられる押圧力をバランスさせ、第1のシュー113と制御部材50との間の、寄生トルクの出現を回避するように構成される。この目的のために、第1のシュー113および第2のシュー115は、押圧力がそれらに加えられるとき、シューが受ける力の重心が、実質的に、コネクティングロッドヘッド102の中心に位置づけられるように配置される。1つの可能な実施形態によれば、第2のシュー115は、コネクティングロッドヘッド102の中心に関して、第1のシュー113に対して対称であり、第1のシュー113と同等の接触面を有する。
図1aおよび
図1bに示されるように、第1のシュー113および第2のシュー115は、第1のシューは、コネクティングロッド10の本体101に可能な限り近くで、第2のシューは、コネクティングロッドヘッド102のキャップに、長手方向軸zに沿って整列させられ得る。あるいは、いくつかの第2のシュー115が、コネクティングロッドヘッド102の側壁に配置され、力をバランスさせるように配置され得るであろう。
【0036】
第1のシュー113と同様に、第2のシュー115は、コネクティングロッドヘッド102との横軸yに沿ったスライド接続を確立し、その移動振幅は、第1のシュー113のそれと同等である。第1のシュー113について上述された、戻し手段114、および、端止め部材が、使用され得る。
【0037】
図2bに示されるように、オイル供給11は、ボアから、ベアリング103の開口を通って、ハウジング112の前部セクション112aへとなされ得ることが留意されるべきである。あるいは、第1のシュー113は、コネクティングロッドヘッド102の側壁でベアリング103から潤滑オイルを収集するように構成された、キャビティ113dを備え、キャビティ113dは、さらに、ハウジング112の前部セクション112aと連絡し得る(
図2c)。
伸縮式または偏心型コネクティングロッドの制御システム
いわゆる偏心型可変長コネクティングロッドと、いわゆる伸縮式可変長コネクティングロッドは、それらの油圧回路104の間に類似性を共有する。実際、それぞれの場合において、目的は、少なくとも2つの油圧チャンバ1041、1042のオイル容積を制御し得ることである(
図3a、
図3b)。動作における違いは、制御ではなく、コネクティングロッドを延ばす機構にある。したがって、同じ制御システム110が、偏心型コネクティングロッド、または、伸縮式コネクティングロッドのいずれにも使用され得る。
【0038】
図3aは、偏心型コネクティングロッドに適した、2つのスライド111a、111bを含む制御システムを示し、
図3bは、伸縮式コネクティングロッドのための同じ制御システムを示す。制御システム110は、両方の場合において同一であり、したがって、第1のシュー113(および、第2のシュー115-不図示)で構成され、それ(ら)に、外部制御部材50が、押圧力を加えて、第1のスライド111aおよび第2のスライド111bの作動を可能にし、これは、第1の油圧チャンバ1041および第2の油圧チャンバ1042の、それぞれの、オイルの供給および排出を制御する。
図3aおよび
図3bの例では、制御システム110は、油圧回路104の2つのチャンバ1041、1042の間のオイルの移動を可能にしないことが留意されるべきである。
【0039】
図3aおよび
図3bに示される制御システム110の動作モードは、「バイレート」偏心型可変長コネクティングロッドを参照して、以下に詳述される。
【0040】
本発明による可変長コネクティングロッドの別の重要な態様は、コネクティングロッドの長さを変更するときに、油圧回路104のチャンバ1041、1042の、一方から他方に、オイルの一部を移動することの要請に関係するか否かである。したがって、油圧チャンバ1041、1042間のオイルの移動が望まれる場合、2つのチャンバ1041、1042の間に流体結合を追加することにより、油圧回路104を適合させることが必要である。この流体結合は、スライド111a、111bの位置に依存しないか、または、スライド111a、111bの位置に依存し得ることが留意されるべきである。
図3cおよび
図3dに示される例に関しては、流体結合は、移送ダクト104cによって確実にされ得るであろう。移送ダクト104cは、有利には、例えば、逆止バルブなどの、オイルの流れを方向付けるための装置1046を含む。
【0041】
油圧回路104のチャンバ1041、1042間のこの移動能力は、伸縮式コネクティングロッドの場合に、より一般的に想定されるが、偏心型コネクティングロッドに適用され得るであろう。
図3cおよび
図3dは、それぞれ、2つの油圧チャンバ1041、1042間の移動を伴う、伸縮式コネクティングロッドおよび偏心型コネクティングロッドのための制御システム110を示す。制御システム110は、それに、外部制御部材50が押圧力を加える、第1のシュー113によって作動させられる、単一のスライド111を含む。制御システム110は、両方のコネクティングロッドの場合において同一である。
【0042】
コネクティングロッド10の長さは、第1のシュー113に押圧力が加えられていない場合に最大であり、スライド111は、そのとき、その静止位置P1にあり、第1の油圧チャンバ1041から第2の油圧チャンバ1042へのオイルの循環を可能にし、また、;第2のチャンバ1042から第1のチャンバ1041へのオイルの移動もまた、移送ダクト104cを介して可能である。戻し、または、押し戻し部材1042a(
図3c、
図3dにおいて、油圧チャンバ1042に配置されたばね1042aによって示される)は、エンジンサイクル中に、コネクティングロッドに加えられる外力に依存しない力により、コネクティングロッド10の伸長を保証することを可能にする。したがって、第2のチャンバ1042は、ばね1042aの作用を介し、ピストン1045を押し戻すことによって拡張するであろう。戻し、または、押し戻し部材1042aは、チャンバ1042の外側に配置され(特に、偏心したコネクティングロッドの場合)、上記と同じ機能を実行し得ることが留意されるべきである。
【0043】
外部制御部材50が、第1のシュー113に押圧力を加えるとき、コネクティングロッドの長さは最小であり、第1のシュー113は、スライド111を、第2の位置P2に移動させ、オイルの循環を遮断し、油圧回路104を閉回路に隔離する。そのとき、オイルは、移送ダクト104cのバルブ1046により、油圧チャンバ1042から油圧チャンバ1041にのみ移動可能である。コネクティングロッドが外部圧縮力を受けると(特に、エンジンサイクルの圧縮および燃焼段階の間)、移動が徐々に生じ、最小長に達するまで、コネクティングロッドの長さが、ラチェット効果によって変化することをもたらす。
バイレートコネクティングロッド
第1の実施形態によれば、可変長コネクティングロッド10は、油圧回路104のチャンバ1041、1042間の移動を伴わず、バイレート動作を使用する(
図3a、
図3b、
図4a、
図4b)。コネクティングロッド10が、エンジンの最大圧縮速度に対応する最大長と、最小圧縮速度に対応する最小長の、2つの定められた長さで作動し得る場合、「バイレート」であると言われることが、思い出されるべきである。
【0044】
第1の実施形態は、偏心型コネクティングロッドを備えて、以下に説明される(
図3a、4a、4b)。しかしながら、この第1の実施形態による制御システム110は、伸縮式コネクティングロッドにも同様に適切に適用され得るであろうことが留意されるべきである(
図3b)。
【0045】
したがって、コネクティングロッド10の油圧制御回路104は、偏心機構を備える。この機構は、第1のチャンバ1041および第2のチャンバ1042内で、それぞれ、スライドする、第1および第2の油圧ピストンに、それぞれ、取り付けられた、2つのコネクティングロッドを備える(
図1c)。
【0046】
この第1の実施形態では、制御システム110は、2つのスライド111a、111bを備える(
図4a、
図4b)。また、油圧回路104は、2つのスライドの1つ111aを、第1のチャンバ1041に接続するための、ダクト104aと、他のスライド111bを、第2のチャンバ1042に接続するための、ダクト104bとを備える。
【0047】
各スライドは、その端部が第1のシュー113に固定されたフィルタ1111を含み、供給部11からのオイルは、フィルタ1111を通過する。各スライド111a、111bは、また、第1の入口バルブ1112を含み、これは、フィルタ1111からスライドの内部へのオイルの循環を可能にするが、逆の循環を可能にしない。各スライド111a、111bは、最終的に、2つのオリフィス1113、1114を含み、これらは、一方、および/または、他方のオリフィス1113、1114が、回路104のダクト104a、104bに対向する場合、油圧回路104との流体連通の確立を可能にする。
【0048】
流体連通は、油圧回路104に供給することにあり得、その場合、オイルの循環は、供給部11から、スライド111a、111bを通過して、ダクト104a、104bに向かって、確立され、あるいは、流体連通は、油圧制御回路104からオイルを排出することにあり得、そのとき、オイル循環は、ダクト104a、104bから、スライド111a、111bを通過して、ドレン12に向かって、確立される。
【0049】
図4bは、この第1の実施形態による、コネクティングロッド10の動作を示す。
【0050】
スライド111a、111bの第1の静止位置P1は、外部制御部材50によって第1のシュー113に押圧力が加えられていないときに得られる。
【0051】
この第1の静止位置P1において、スライドの1つ111aは、それが、ダクト104aによって接続される、第1のチャンバ1041にオイルを供給するように構成される。実際には、供給部11から来て、スライドのフィルタ1111を通過したオイルは、スライド111aが、第1の静止位置P1にあるときに、第1のバルブ1112を通過して、ダクト104aに対向して配置されたスライド111aのオリフィス1113に到達する。エンジンの燃焼ピストンによって受けられ、コネクティングロッドの偏心機構に作用する、外部燃焼力および慣性力は、第1のチャンバ1041へのオイルの循環を促進し、第1のチャンバ1041からの、反対方向への、オイルの戻りは、第1のバルブ1112によって禁止される。
【0052】
依然として、第1の静止位置P1において、他のスライド111bは、それが、ダクト104bによって接続される、第2のチャンバ1042から、オイルを排出するように構成される。実際には、ハウジング112の後部セクション112bと連通し、したがって、ドレン12と連通する、スライド111bのオリフィス1114は、ダクト104bに対向して配置される。燃焼力および慣性力は、またここで、第2のチャンバ1042からドレン12に向かうオイルの循環に有利であろう。
【0053】
スライド111a、111bの第1の静止位置P1では、第1のチャンバ1041は、オイルを供給され、第2のチャンバ1042は、空にされ、これは、エンジンの最大速度に対応して、コネクティングロッドを、最大長に調整することを可能にする。
【0054】
スライド111a、111bの第2の位置P2は、外部制御部材50によって、力Fが、第1のシュー113に加えられたときに、横軸yに沿った、スライド111a、111bの並進に続いて得られる。
【0055】
この第2の位置P2において、スライドの1つ111aは、ダクト104aを介して、第1のチャンバ1041からオイルを排出するように構成される。実際には、ハウジング112の後部セクション112bと連通し、したがって、ドレン12と連通する、スライド111aのオリフィス1114が、ダクト104aに対向して配置される。燃焼力と慣性力は、再び、オイルの循環を促進する。
【0056】
依然として、この第2の位置P2において、他のスライド111bは、ダクト104bを介して、第2のチャンバ1042にオイルを供給するように構成される。実際には、供給部11から来て、スライドのフィルタ1111を通過したオイルは、第1のバルブ1112を通過して、ダクト104bに対向して配置された、スライド111bのオリフィス1113に到達する。第2のチャンバ1042へ向かうオイルの循環は、コネクティングロッド10が受ける燃焼力および慣性力によって有利にされる。
【0057】
スライド111a、111bの第2の位置P2では、第2のチャンバ1042は、オイルを供給され、第1のチャンバ1041は、空にされ、これは、コネクティングロッド10を、エンジンの最小速度に対応する、最小長に調整することを可能にする。
【0058】
本発明によるコネクティングロッド10の軸間距離の変化は、コネクティングロッド10によって受けられる、燃焼力および慣性力により起こり、これは、油圧回路104内、および、制御システム110のスライド111、111a、111bを通るオイルの循環をもたらし、コネクティングロッドの長さの変化を徐々に引き起こす。これは、今説明された第1の実施形態に対して当てはまり、また、説明において後に続く他の実施形態に対して当てはまる。
【0059】
第2の実施形態によれば、可変長コネクティングロッド10は、油圧回路104のチャンバ1041、1042間の移動を伴う、バイレート動作を使用する(
図3c、
図3d)。第2の実施形態は、伸縮式コネクティングロッドを用いて、以下に説明される(
図3c)。しかしながら、この第2の実施形態による制御システム110は、偏心型コネクティングロッドにも同様に適切に適用され得るであろうことが留意されるべきである(
図3d)。
【0060】
コネクティングロッド10を制御するための油圧回路104は、伸縮機構を備える。 伸縮機構は、コネクティングロッド10の本体101に配置され、油圧ピストン1045の両側に、上部チャンバ1042(または、第2のチャンバ)、および、下部チャンバ1041(または、第1のチャンバ)を画定する、中央ピストン1045と呼ばれる、中央ジャッキを備え、下部チャンバ1041は、コネクティングロッドヘッド102の側にある(
図3c)。有利には、上部チャンバ1042、および、下部チャンバ1041は、同等のセクションを有する。
【0061】
この第2の実施形態では、制御システム110は、単一のスライド111を含む。油圧回路104は、スライド111を、上部チャンバ1042に接続するための、ダクト104aと、スライド111を、下部チャンバ1041に接続するための、ダクト104bとを備える。シリンダピストン1045は、2つのチャンバ1041、1042を接続する移送ダクト104cと、ダクト104cに配置され、上部チャンバ1042から下部チャンバ1041へのオイルの循環のみを可能にする、バルブ1046(以下、第3のバルブと呼ばれる)を備える。
【0062】
上記されるように、スライド111は、その端部において、第1のシュー113に固定された、を含み、これを介して、オイルは、オイル供給部11から、フィルタ1111を通過する。それは、また、第1の入口バルブ1112を含み、これは、フィルタ1111からスライドの内部へのオイルの循環を可能にするが、逆の循環を可能にしない。さらに、それは、第1のバルブ1112と直列の、第2のバルブ1115を備える(
図2b、
図2c)。スライド111は、それぞれがバルブ1112、1115の下流にある、少なくとも2つのオリフィス1113、1114を含み、オリフィス1113、1114の一方および/または他方が、回路104のダクト104a、104bに対向するときに、油圧回路104との流体連通の確立を可能にする。流体連通は、油圧回路104に供給することと、ダクト104a、104bと、スライド111を通過することを介して、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042にオイルを循環させることとから成り得る。代わりに、流体連通は、遮断され得、油圧回路104を閉回路に置き、移送ダクト104cを介した移送は、上部チャンバ1042から下部チャンバ1041へのみ可能である。
【0063】
第2の実施形態では、スライド111は、横軸yに沿って、2つの異なる位置を占め得るように、準備がなされる。スライド111の第1の静止位置P1は、外部制御部材50によって、第1のシュー113に加えられる押圧力がない状態で確立される。そのとき、スライド111は、上部チャンバ1042にオイルを供給し、オイルが、下部チャンバ1041と上部チャンバ1042間に循環することを可能にするように構成される。実際には、第1のバルブ1112と第2のバルブ1115の間のオリフィス1113は、下部チャンバ1041と流体連通し、第2のバルブ1115の下流のオリフィス1114は、上部チャンバ1042と流体連通にある。下部チャンバ1041から上部チャンバ1042への流体の循環を妨げる、第3のバルブ1046の存在により、供給部11から来て、第1の入口バルブ1112を通過した、オイルは、第2のバルブ1115を通って循環し、上部チャンバ1042を満たす。同様に、下部チャンバ1041からのオイルは、第1の入口バルブ1112によって遮断され、第2のバルブ1115を循環し、上部チャンバ1042を満たす。上部チャンバ1042は、一杯になり、一方で、下部チャンバ1041は空になり、これは、コネクティングロッドを、その最大長に調整することを可能にする。
【0064】
スライド111の第2の位置P2は、第1のシュー113に外部制御部材50によって加えられる最大押圧力Fに対応する。その第2の位置P2では、スライド111は、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。上部チャンバ1042から下部チャンバ1041へのオイルの循環のみを許可する、第3のバルブ1046の存在により、コネクティングロッドが最小の長さに調整されるまで、流体は徐々に下部チャンバ1041を満たし、上部チャンバ1042を空にする。
【0065】
前述されるように、この実施形態でも、および、説明されるであろう、他のすべての実施形態でも、コネクティングロッド10によって受けられる、燃焼力および慣性力は、コネクティングロッド10の目標長さに達するまで、オイルの循環を促進するであろう。
トライレートコネクティングロッド
第3の実施形態によれば、可変長コネクティングロッド10は、油圧回路104のチャンバ1041、1042の間の移動を伴う、トライレート動作を使用する(
図5a、
図5b)。コネクティングロッド10は、それが、3つの定められた長さ、すなわち、エンジンの最大圧縮速度に対応する最大長、中間長、および、最小圧縮速度に対応する最小長、で動作し得る場合、「トライレート」と呼ばれることが思い出されるべきである。
【0066】
第3の実施形態は、伸縮式コネクティングロッドを備えて、以下に説明されるが、この第3の実施形態による制御システム110は、偏心型コネクティングロッドにも同様に適切に適用され得るであろう。
【0067】
この第3の実施形態では、制御システム110は、2つのスライド111a、111bを備える。油圧制御回路104は、4つの独立したダクト104a、104a’、104b、104b’を含み、2つは、第1のスライド111aを、一方では、上部チャンバ1042に、他方では、下部チャンバ1041に接続するためのものであり、2つは、第2のスライド111bを、一方では、上部チャンバ1042に、他方では、下部チャンバ1041に接続するためのものである。中央ピストン1045は、上部チャンバ1042と下部チャンバ1041との間に、移送ダクト104cを含み、そのバルブ1046(以下、第3のバルブと呼ばれる)は、上部チャンバ1042から下部チャンバ1041へのオイルの循環のみを可能にする。中央ピストン1045は、さらに、例えば、ニードルによって制御されるバルブ(以下、第4のバルブ1047と呼ばれる)の形態の、シャッター装置1047を、第2のスライド111bと上部チャンバ1042を接続するダクト104bに備える。
【0068】
各スライド111a、111bは、フィルタ1111、第1の入口バルブ1112、第2のバルブ1115、および、オリフィス1113、1114がダクト104a、104a’、104b、104b’に面しているときに、油圧回路104との流体連通の確立を可能にする、少なくとも2つのオリフィス1113、1114を含む。流体連通は、油圧回路104にオイルを供給すること、オイルを、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042に循環させることから成り得る。代わりに、流体連通は、遮断され得、油圧回路104を閉回路に置く。
【0069】
制御システムは、さらに、ハウジング112内に、第1のシュー113に固定された端部と対向する、各スライド111a、111bの端部に対して配置された、ばね1116を備える(
図5a)。
【0070】
図5bは、この第4の実施形態による、コネクティングロッド10の動作を示す。2つのスライド111a、111bが、横軸yに沿って、3つの異なる位置を占め得るように、準備がなされる。
【0071】
第1のスライド静止位置P1(外部制御部材50によって第1のシュー113に加えられる力が存在しない)では、第1のスライド111aは、上部チャンバ1042にオイルを供給し、オイルが、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042に循環するのを可能にする。第2のスライド111bは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。上部チャンバ1042は、一杯になり、一方で、下部チャンバ1041は、空になり、したがって、コネクティングロッド10は、その最大長に調整される。
【0072】
外部制御部材50により第1のシュー113に加えられる最大押圧力Fに対応する、スライド111a、111bの第2の位置P2では、第1のスライド111aおよび第2のスライド111bは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。上部チャンバ1042から下部チャンバ1041へのオイルの循環のみを許可する、第3のバルブ1046の存在により、流体は、コネクティングロッドが最小の長さに調整されるまで、下部チャンバ1041を徐々に満たし、上部チャンバ1042を空にする。
【0073】
スライド111a、111bの第3の位置P3は、外部制御部材50により第1のシュー113に加えられる、中間押圧力Fmedに対応する。各スライドの後ろの、ハウジング112内のスプリング1116の存在は、スライドが、極限位置において、ハウジング112の下部に移動するのを防止し、ばね1116は、スライド111a、111bの第1の静止位置P1と第2の(極限)位置P2との間に、第3の位置P3の実行を可能にする。
【0074】
第3の位置P3において、第1のスライド111aは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。第2のスライド111bは、上部チャンバ1042にオイルを供給し、第4のバルブ1047がニードルによって開かれるとき、オイルが、下部チャンバ1041と上部チャンバ1042との間を循環することを可能にするように構成され、実際には、中央ピストン1045が、定められた位置、典型的にはシリンダ内の中間位置に達するとき、ニードルは、バルブ1047を開くであろう。その後、上部チャンバ1042は、一杯になるであろうし、シリンダピストン1045が決められた位置の下方になるとすぐに、第4のバルブ1047が閉じて、2つのチャンバ間の流体の循環を遮断するであろう。その後、オイルは、第3のバルブ1046を介して、(コネクティングロッドによって受けられる燃焼力および慣性力により)上部チャンバ1042から下部チャンバ1041に通過する傾向があるであろうし、中央ピストン1045は、定められた位置に、または、それを超えて戻るであろうし、これは、第4のバルブ1047を再び開き、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042への流体の循環を回復するなどの結果を有するであろう。したがって、第3の位置P3において、制御システム110のスライド111a、111bは、中央ピストン1045の定められた(中間)位置に、多かれ少なかれ対応する、中間の長さで、コネクティングロッド10を維持することを可能にするであろう。
【0075】
例として、スライド111a、111bの第1の静止位置P1から開始して、第3の位置P3は、スライド111a、111bの1mmの並進によって得られ得、第2の位置P2は、2mmの並進によって得られ得る。
【0076】
本発明によるコネクティングロッド10の、この第3の実施形態の変形例によれば、制御システム110は、第1のシュー113および第2のシュー115が配置される側壁に対向する、コネクティングロッド10の他方の側壁に配置された、少なくとも1つの第3のシュー116を含む(
図5c、
図5d)。
【0077】
制御システム110は、また、有利には、コネクティングロッドヘッド102の中心に関して、第3のシュー116と対称である、第4のシュー117を含み、第4のシュー117は、第2のシュー115と同じ役割を果たすが、対向側で、第3のシュー116に加えられる可能性がある押圧力をバランスさせる。
【0078】
この変形例では、押圧力を加えるために、一方では、コネクティングロッドヘッド102の一方の側壁に配置された第1のシュー113および第2のシュー115、および、他方では、コネクティングロッドヘッド102の他方側に配置された、第3のシュー116および第4のシュー117の、2つの制御部材50、50’が必要である。
【0079】
第3の実施形態のこの変形例では、制御システム110は、2つのスライド111a、111bを含む。各スライドは、第1のシュー113に加えられる力により、横軸yに沿って、一方向に移動させられ得、さらに、第3のシュー116に加えられる力により、横軸yに沿って、他の方向に移動させられ得る。
【0080】
油圧回路104は、4つの独立したダクト104a、104a’、104b、104b’、バルブ1046を備えた移送ダクト104c、および、例えば、第3の実施形態に記載される、ニードルによって制御されるバルブの形態の、シャッター装置1047を備える。
【0081】
スライド111aは、その端部で、第1のシュー113に固定されたフィルタ1111を含み、スライド111bは、その端部で、第3のシュー116に固定されたフィルタ1111を含み、これらを、オイル供給部11から来るオイルが通過する。各スライド111a、111bは、また、第1の入口バルブ1112、第2のバルブ1115、および、油圧回路104との流体連通の確立を可能にする、少なくとも2つのオリフィス1113、1114を含む(
図5c)。流体連通は、油圧回路104にオイルを供給すること、オイルを、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042に循環させることから成り得る。代わりに、流体連通は、遮断され得、油圧回路104を閉回路に置く。
【0082】
図5dは、第3の実施形態のこの変形例による、コネクティングロッド10の動作を示す。2つのスライド111a、111bが、横軸yに沿って、3つの異なる位置を占め得るように準備がなされる。
【0083】
第1のスライド静止位置P1(外部制御部材50、50’による第1のシュー113または第3のシュー116に加えられる押圧力を伴わない)において、第1のスライド111aは、上部チャンバ1042へオイルを供給し、および、オイルが、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042へ循環することを可能にするように構成される。第2のスライド111bは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。上部チャンバ1042が一杯になり、一方で、下部チャンバ1041は空になり、したがって、コネクティングロッド10は、その最大長に調整される。
【0084】
外部制御部材の1つ50’によって第3のシュー116に加えられる(第1のシュー113に力は加えられない)最大押圧力Fに対応する、スライド111a、111bの第2の位置P2では、第1のスライド111aおよび第2のスライド111bは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。上部チャンバ1042から下部チャンバ1041へのオイルの循環のみを許可する、第3のバルブ1046の存在により、コネクティングロッドが最小長に調整されるまで、流体は、徐々に、下部チャンバ1041を満たし、上部チャンバ1042を空にする。
【0085】
スライドの第3の位置P3は、他の外部制御部材50により、第1のシュー113に加えられる(第3のシュー116に力は加えられない)、中間押圧力F
medに対応する。バルブ(
図5dに示される)は、外部制御部材50、50’を作動させる、独立したオイル回路(以下、流体制御回路と呼ばれる)に配置され得、それぞれ、2つの異なる油圧を得るために、制御部材50、50’の一方および他方の作動を可能にすることが留意されるべきである。
【0086】
第3の位置P3において、第1のスライド111aは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。第2のスライド111bは、上部チャンバ1042にオイルを供給し、第4のバルブ1047が、ニードルバルブによって開かれるとき、オイルが、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042に循環することを可能にするように構成され、これは、中央ピストン1045の定められた(中間)位置に対応する。次いで、上部チャンバ1042が一杯になり、中央ピストン1045が定められた位置の下方になるとすぐに、第4のバルブ1047が閉じて、2つのチャンバ間の流体の循環を遮断するであろう。したがって、第3の位置P3において、制御システム110のスライド111a、111bは、中央ピストン1045の定められた(中間)位置に対応する、中間の長さで、コネクティングロッド10を維持することを可能にするであろう。
連続レートコネクティングロッド
第4の実施形態によれば、可変長コネクティングロッド10は、油圧回路104のチャンバ1041、1042の間での移動を伴わない、連続レート動作を使用する(
図6a、6b、6c)。したがって、コネクティングロッド10は、複数の長さで動作し得る。
【0087】
第4の実施形態は、偏心型コネクティングロッドを備えて、以下に説明されるが、この第4の実施形態による制御システム110は、伸縮式コネクティングロッドにも同様に適切に適用され得るであろう。
【0088】
制御システム110は、2つのスライド111a、111bを備える。また、油圧制御回路104は、2つのスライドの1つ111aを、第1のチャンバ1041に接続するための、2つの独立したダクト104a、104a’と、他のスライド111bを、第2のチャンバ1042に接続するための、2つの独立したダクト104b、104b’とを備える。
【0089】
図6aおよび
図6bに示されるように、各スライドは、フィルタ1111、第1の入口バルブ1112、および、オリフィス1113、1114の一方または他方がダクト104a、104a’、104b、104bに対向するとき、油圧回路104との流体連通の確立を可能にする、2つのオリフィス1113、1114を含む。流体連通は、油圧回路104に供給することから成り得、そのとき、オイルの循環は、供給部11から、スライド111a、111bを通過して、ダクト104a、104a’、104b、104b’の1つに向かって確立される。代わって、流体連通は、油圧制御回路104からオイルを排出することから成り、そのとき、オイルの循環は、ダクト104a、104a’、104b、104b’から、スライド111a、111bのうちの1つを通過して、ドレン12に向かって確立される。最後に、流体連通が遮断され得、油圧回路104を閉回路に置く。
【0090】
制御システム110は、第1のシュー113に固定された端部に対向した、各スライド111a、111bの端部に対する、ハウジング112内に配置されたばね1116を備える。
【0091】
図6cは、この第4の実施形態による、コネクティングロッド10の動作を示す。2つのスライド111a、111bは、それぞれ、第1の位置P1、第2の位置P2、および、第3の位置P3と呼ばれる、横軸yに沿った、3つの異なる位置を占め得るように準備がなされる。明確さのために、第1の静止位置P1は、他の2つの位置に言及した後で説明されるであろう。
【0092】
スライド111a、111bの第2の位置P2は、外部制御部材50によって、第1のシュー113に加えられる、最大押圧力Fに対応する。この第2の位置P2では、スライドの1つ111aは、それが、ダクト104a’を介して接続される、第1のチャンバ1041から、オイルを排出するように構成され、ハウジング112の後部セクション112b(したがって、オイルドレン12)と流体連通する、スライド111aのオリフィス1114は、ダクト104a’の対向側に配置される。もう一方のスライド111bは、それが、ダクト104bによって(オイル供給部11と流体連通する、第2のスライド111bのオリフィス1113を介して)接続される、第2のチャンバ1042に、オイルを供給するように構成される。スライド111a、111bの第2の位置P2では、第2のチャンバ1042は、オイルを供給され、第1のチャンバ1041は、空にされ、これは、コネクティングロッドを、エンジンの最小速度に対応する、最小長に調整することを可能にする。
【0093】
スライド111a、111bの第3の位置P3は、外部制御部材50により第1のシュー113に加えられる、中間押圧力Fmedに対応する。各スライド111a、111bの後ろの、ハウジング112内のスプリング1116の存在は、それが、極限位置にある、ハウジング112の底部に移動することを防止し、ばね1116は、スライド111a、111bの、第1の静止位置P1と第2の(極限)位置P2との間に、第3の位置P3の実行を可能にする。
【0094】
この第3の位置P3では、スライドの1つ111aは、第1のチャンバ1041にオイルを供給するように構成され、他のスライド111bは、第2のチャンバ1042からオイルを排出するように構成される。スライド111a、111bの第3の位置P3において、第1のチャンバ1041は、オイルを供給され、第2のチャンバ1042は空にされ、これは、コネクティングロッドを、エンジンの最大速度に対応する、最大長に調整することを可能にする。
【0095】
スライド111a、111bの第1の静止位置P1は、第1のシュー113に力が加えられないときに得られる。そのとき、2つのスライド111a、111bは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。スライド111a、111bを第1の静止位置P1に置くことによって、油圧回路104は、閉回路にあると認められ、したがって、コネクティングロッド10は、中間エンジン速度に対応する、最大長と最小長との間の、中間長に維持され得る。中間長を制限するか増加させることが望まれるかどうかによって、最大の力Fまたは中間の力Fmedで、第1のシュー113に衝撃を加えることにより、この中間長を、徐々に変更することが可能である。
【0096】
第5の実施形態によれば、可変長コネクティングロッド10は、油圧回路104のチャンバ1041、1042間の移動を伴い、連続レートで作動する(
図7a、
図7b、
図7c、
図7d)。第5の実施形態は、伸縮式コネクティングロッドを備えて、以下に説明されるが、この第5の実施形態による制御システム110は、偏心型コネクティングロッドにも同様に適切に適用され得るであろう。
【0097】
制御システム110は、2つのスライド111a、111bを備える(
図7a)。油圧回路104は、4つの独立したダクト104a、104a’、104b、104b’を含み、各スライド111a、111bを、2つのチャンバ1041、1042に接続する。
【0098】
各スライドは、フィルタ1111、第1の入口バルブ1112、第2のバルブ1115、1115’、および、ダクト104a、104a’、104b、104b’を介して、油圧回路104との流体連通の確立を可能にする、少なくとも二つのオリフィス1113、1114を備える。
【0099】
流体連通は、油圧回路104に供給すること、ダクト104a、104a’を介し、第1のスライド111aを通過して、上部チャンバ1042から下部チャンバ1041に、オイルを循環させることから成り得る。あるいは、流体連通は、油圧回路104に供給すること、ダクト104b、104b’を介し、第2のスライド111bを通過して、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042にオイルを循環させることから成り得る。最後に、流体連通は遮断され得、油圧回路104を閉回路に置く。
【0100】
制御システムは、さらに、第1のシュー113に固定された端部に対向する、各スライド111a、111bの端部に対する、ハウジング112内に配置されたばね1116を備える。
【0101】
図7dは、この第5の実施形態による、コネクティングロッド10の動作を示す。2つのスライド111a、111bが、横軸yに沿って、3つの異なる位置を占め得るように、準備がなされる。
【0102】
外部制御部材50によって加えられる押圧力Fの不存在で、スライド111a、111bによって占められる、第1の静止位置P1において、第1のスライド111aおよび第2のスライド111bは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される(
図7a)。そのとき、油圧回路104は、閉回路であり、中央ピストン1045は、その位置、例えば、中間位置にロックされる。したがって、コネクティングロッド10は、中間長を有する。
【0103】
第1のシュー113に、外部制御部材50によって加えられる最大押圧力Fに対応する、スライドの第2の位置P2(
図7c)において、第1のスライド111aは、オイルを下部チャンバ1041に供給し、オイルが、第1スライド111aの第2バルブ1115’を通って、上部チャンバ1042から下部チャンバ1041に、循環することを可能にするように構成され、したがって、スライド111aのこの位置P2は、2つのチャンバ1041、1042の間の移動を可能にする。第2のスライド111bは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。
【0104】
スライドのこの第2の位置P2では、下部チャンバ1041が、一杯になり、上部チャンバ1042が、空になり、コネクティングロッドの長さは、それが、最小長に達するまで減少する。スライド111a、111bを、第1の静止位置P1にもたらすことにより(油圧回路104は、そのとき、閉回路に戻る)、コネクティングロッド10は、中間長と最小長の間の、様々な長さに維持され得る。
【0105】
第1のシュー113に、外部制御部材50により加えられる中間押圧力F
medに対応する、スライド111a、111bの第3の位置P3(
図7b)では、第2のスライド111bは、上部チャンバ1041に、オイルを供給し、オイルが、第2のスライド111bの第2のバルブ1115を介して、下部チャンバ1041から上部チャンバ1042に循環することを可能にするように構成される。スライド111aのこの位置P3は、2つのチャンバ1041、1042間の移動を可能にする。第1のスライド111aは、油圧回路104との流体連通を遮断するように構成される。
【0106】
スライドのこの第3の位置P3において、上部チャンバ1043は、一杯になり、下部チャンバ1044は、空になり、コネクティングロッドの長さは、それが、最大長に達するまで増加する。スライドを、第1の静止位置P1に戻すことにより(油圧回路104は、そのとき、閉回路に戻る)、コネクティングロッド10は、中間長から最大長の間の、様々な長さに維持され得る。この第5の実施形態によるコネクティングロッド10は、連続レート制御圧縮比エンジンを駆動するために、連続的に可変の長さの値を提供する。
【0107】
オイルドレン12との特定の流体連通が確立されていない、上記のすべての実施形態において、スライド111、111a、111bが、密封することなく、コネクティングロッドヘッド102のハウジング112内に取り付けられるという事実は、オイル品質の劣化(密閉された閉回路で起こり得るであろう、劣化)を回避する、油圧回路104のオイルの漸進的な更新を可能にすることが留意されるべきである。
押圧力を加える外部制御部材
図8a、
図8b、
図8c、および、
図8dを参照して説明される、以下の実施形態は、例として与えられ、本発明によるコネクティングロッド10と互換性のある、コネクティングロッド10の外部の、制御部材50を示す。
【0108】
コネクティングロッド10を支持するクランクシャフト200は、接続アーム4によって接続された、少なくとも1つのクランクピン2と、少なくとも1つのジャーナル3を含む。それは、さらに、少なくとも1つの制御部材50を含む。制御部材50は、横軸yに沿って、並進運動し得、コネクティングロッド10の長さの制御システム110の第1のシュー113(および第2のシュー115)と協働する。
【0109】
好ましくは、制御部材50の総ストロークは、構成および実施形態に応じて、約1mmから2mmまで変化する。もちろん、エンジンの寸法によっては、他のストロークが、また、考慮され得る。
【0110】
制御部材50は、クランクピン2の一端で、接続アーム4に配置される。それは、その平坦な表面52が、横軸yに垂直な平面(x、z)に延びる、環状部分51を含む。環状部分51は、クランクピン2と同軸であり、それは、クランクシャフト1のどの角度位置でも、その平坦な表面52を介して、制御システム110の第1のシュー113(および第2のシュー115)との、連続的な接触を確立し得る。そのような構成は、第1のシュー113および第2のシュー115に連続的な押圧力を加えることにより、衝撃のない機械的伝達の利点を有する。
【0111】
クランクシャフト100は、また、横軸yに沿って、制御部材50を移動させるように構成された、流体制御回路60を備える。流体回路60は、流体が、制御部材50の背面(平坦な表面52の反対側)と連通することをもたらすことを意図された、少なくとも1つのオリフィス61を備え、制御部材50に圧力を加えて、それが、移動することをもたらす。流体は、気体または液体であり得る。気体流体は、その非常に低い密度のため、液体流体と比較して、クランクシャフトの回転により、より少なく影響されるという利点を有する。
【0112】
有利なことに、流体制御回路60は、クランクピン2の端部の一方から、この端部に対向する、最後のクランクピン2までの、クランクシャフト100の全長にわる、穿孔されたダクト62によって形成される。流体回路60は、上記されるように、接続アーム4に、少なくとも1つの流体出口オリフィス61を有し、制御要素50の背面と連通する。クランクシャフト100のボア62は、クランクピンとジャーナル3を接続する、潤滑穴から独立している。流体制御回路60は、クランクシャフト1の外側に向かう、各ボア62の出口で一、連のプラグ63によって密封される。
【0113】
制御部材50の特定の実施形態によれば、環状空洞40が、クランクピン2の一端で、接続アーム4に配置される(
図8b)。この空洞40は、環状ピストンのシリンダ本体を形成することを意図され、順に、環状ピストンは、制御部材50によって形成される。流体制御回路60の流体のための出口オリフィス61は、空洞40に開口する。接続アーム4は、また、クランクピン2と同軸の外部センタリング41、および、2つのラグハウジング42を含み、その機能は、後で概説されるであろう。制御要素50は、クランクピン2の周りに組み立てられ、次に、環状空洞40に配置されるように設計される、例えば、H字形のプロファイルを有する、2つのハーフフレーム53を含む。有利には、ハーフフレーム53は、金属である。それらが取り付けられた後、2つのハーフフレーム53を位置合わせして固定するために、ピンが設けられる。
【0114】
制御部材50が環状空洞40に配置されるときに、制御部材50の背面55と平坦な表面52との間のシールを提供するために、ハーフフレーム53のそれぞれにおいて、エラストマー54が成型される。このタイプのシール付き環状ピストンの場合、これらの同じシールによって生成される摩擦トルクが、コネクティングロッド10のシュー113との接触の摩擦トルクよりも大きくなることが留意されるべきである。したがって、制御部材50に回転防止システムを追加することは無意味に思える。
【0115】
クランクシャフト200は、外部センタリング41で中央揃えされ、ラグハウジング42で、接続アーム4に直接クリップされる、ヨークジョイント45を備える。ヨークジョイント45は、制御部材50が、横軸yに沿って、第1の方向Y1に移動するときに、制御部材50の端止め部材を形成する。それは、好ましくは環状セグメントを有し、制御部材50の環状部分51に対する、当接点の標準化を可能にする。有利には、ヨークジョイント45は、また、コネクティングロッドヘッド102に対する横方向当接部として機能し得る。
【0116】
制御部材50の環状部分51(環状ピストンを形成する)は、第1のシュー113および第2のシュー115に対して、連続的な接触を確立し得る、平坦な表面52を有する。制御要素50が、第1の方向Y1に移動させられるとき、シュー113、115との接触が確立され得る(
図8a、
図8c)。この移動は、制御部材50の背面55への流体圧力の印加によって引き起こされる。流体は、流体制御回路60のダクト62によって、環状空洞40(制御部材50の背面に位置する)に送られる。流体回路60の減圧は、制御要素50の第2の方向Y2への変位を引き起こし、したがって、シュー113、115との接触を中断する。あるいは、その背面55での流体圧力が閾値を下回るとき、制御部材50を押し戻すために、戻し要素が配置され得る。
【0117】
変形例によれば、制御部材50、50’は、クランクシャフト200の各クランクピン2のいずれかの側で、各接続アーム4に配置される。そのような構成は、コネクティングロッド10の第3の実施形態の変形例(トライレートコネクティングロッド)に概説されるように、コネクティングロッドヘッド102の一方の側壁に第1のシュー113および第2のシュー115を含み、他方の側壁に第3のシュー116および第4のシュー117を含む、トライレートコネクティングロッドの制御を可能にする。
【0118】
クランクピン2が、2つのコネクティングロッド10を受け入れるように精密に構成される場合、制御部材のこの変形例は、また、2つのコネクティングロッド10の制御を可能にすることが留意されるべきである。
可変圧縮比エンジン
本発明は、また、直列形またはV字形の構造を有し得る、制御可変圧縮比エンジンに関する。エンジンは、エンジンブロック、および、エンジンブロックに配置された、上述のクランクシャフト200を備える。エンジンは、さらに、クランクシャフト200のクランクピン2に関連する、上述した、少なくとも1つの可変長コネクティングロッド10を備える。
【0119】
クランクシャフト200の流体制御回路60は、クランクシャフト200の端部により、外部に接続される。端部は、回転部分(クランクシャフト)と静止部分(エンジンブロック)との間の接続を可能にし、したがって、制御回路60の、エンジンブロックの外側に配置された外部制御アセンブリとの流体結合を可能にする、回転シールを受容するように配置される。外部制御アセンブリは、流体を制御回路60に運ぶように構成される。それは、流体が、圧縮空気である場合、特に、例えば、空気圧縮機などの、圧力源を備える。制御回路60を真空下に置くために(そして、第2の方向Y2への制御要素50の移動を制御するために)、外部制御アセンブリは、また、専用の、または、共用される真空ポンプを含み得る。外部制御アセンブリは、エンジン速度と負荷に応じて、エンジン制御ユニット(コンピューター)によって制御される。
【0120】
もちろん、本発明は、記載された様々な実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって画定される、本発明の範囲から逸脱することなく、変形の実施形態を追加することが可能である。
【国際調査報告】