(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(54)【発明の名称】光マイクロフォン基板
(51)【国際特許分類】
H04R 23/00 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
H04R23/00 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526741
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 GB2020052867
(87)【国際公開番号】W WO2021094747
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521437781
【氏名又は名称】センシベル アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミュエルズ, エイドリアン ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】サグベルク, ホーコン
(72)【発明者】
【氏名】ベナーロド, ヤコブ
【テーマコード(参考)】
5D021
【Fターム(参考)】
5D021DD04
(57)【要約】
光マイクロフォンアセンブリ(2)は、基板(4)と、干渉計装置と、光源(8)と、少なくとも1つの光検出器(10)とを備える。干渉計装置は、膜(6)と、膜(6)から離間した少なくとも1つの回折光学素子(20、22)とを備える。(1つまたは複数の)回折光学素子(20、22)は、基板(4)の表面内に形成されたかまたはその表面上に配置され、第1のパターンにおいて構成されている複数の線(24)を備える。基板(4)は、それを完全に貫通して延びる1つまたは複数の孔(32)を備え、(1つまたは複数の)孔(32)は、第1のパターンとは異なる第2のパターンにおいて構成される。光源(8)は、光(26)の第1および第2の部分(28、30)が、前記干渉計装置を介してそれぞれの異なる第1および第2の光路に沿って伝搬するように、干渉計装置に光(26)を供給するように構成される。第1の光路と第2の光路との間の光路差は、膜(6)と(1つまたは複数の)回折光学素子(20、22)との間の距離に依存する。(1つまたは複数の)孔(32)は、第1および第2の光路のうちの少なくとも1つが(1つまたは複数の)孔(32)と少なくとも部分的に重なるように配置される。(1つまたは複数の)光検出器(10)は、前記光路差に依存する光の前記第1および第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光マイクロフォンアセンブリであって、
基板と、
膜および前記膜から離間した少なくとも1つの回折光学素子を備える干渉計装置であって、前記少なくとも1つの回折光学素子が、前記基板の表面内に形成されたかまたは前記基板の表面上に配置された複数の線を備え、前記複数の線が第1のパターンにおいて構成され、前記基板が、前記基板を完全に貫通して延びる1つまたは複数の孔を備え、前記1つまたは複数の孔が、前記第1のパターンとは異なる第2のパターンにおいて構成される、干渉計装置と
を備え、
光の第1の部分が前記干渉計装置を介して第1の光路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が前記干渉計装置を介して第2の異なる光路に沿って伝搬するように前記干渉計装置に前記光を供給し、それにより、前記膜と前記回折光学素子との間の距離に依存する前記第1の光路と前記第2の光路との間の光路差を生じさせるように構成された光源であって、前記1つまたは複数の孔が、前記第1の光路と前記第2の光路のうちの少なくとも1つが前記1つまたは複数の孔と少なくとも部分的に重なるように配置される、光源と、
前記光路差に依存する光の前記第1の部分および前記第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように構成された少なくとも1つの光検出器と
をさらに備える、光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項2】
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンが、それぞれの第1のエンベロープおよび第2のエンベロープを有し、前記第1のエンベロープと前記第2のエンベロープとが重なる、請求項1に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項3】
前記孔のうちの少なくとも1つ、少なくともいくつか、またはすべてが、前記第1のエンベロープ内に配置される、請求項2に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項4】
前記1つまたは複数の孔の長さスケールが、前記線の間の平均間隔の少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍大きい、請求項1、2または3に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項5】
孔の数が、1~8個、2~6個、または3~5個である、請求項1から4のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項6】
前記第2のパターンが、単一の中心孔、半径方向に延びる細長い孔、孔の、半径方向に延びる列、および孔の同心円のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項7】
前記1つまたは複数の孔が前記基板にエッチングされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項8】
(1つまたは複数の)前記回折光学素子の前記線が、前記基板にエッチングされるかまたは前記基板上に蒸着される、請求項1から7のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項9】
前記基板が第1の基板部分を備え、前記少なくとも1つの回折光学素子が、前記第1の基板部分上に配置されるかまたは前記第1の基板部分内に形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項10】
前記基板または前記第1の基板部分が、1μm~20μm、好ましくは2μm~10μm、より好ましくは3μm~5μmの厚さの厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項11】
前記基板または前記第1の基板部分が、前記光源によって供給される前記光の波長において実質的に透過性である、請求項1から10のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項12】
前記基板または前記第1の基板部分が、その片面または両面に反射防止コーティングを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項13】
前記基板または前記第1の基板部分がシリコンから作製される、請求項1から12のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項14】
前記基板または前記第1の基板部分が層状構造を備え、前記層状構造が、2つ、3つ、または4つ以上の層から構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項15】
前記層状構造が、片面または両面に薄いフィルムを有する単結晶シリコン層を備え、前記薄いフィルムが反射防止コーティングを設け、および/または前記薄いフィルムが少なくとも1GPaの引張応力を有する、請求項14に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項16】
前記基板が、1つのまたは前記第1の基板部分を囲む第2の基板部分を備え、前記第2の基板部分が前記第1の基板部分よりも厚い、請求項1から15のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項17】
前記基板が単一の材料から一体的に形成され、前記第1の基板部分が前記単一の材料の薄くされた領域である、請求項16に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項18】
前記光マイクロフォンアセンブリは、光の前記第1の部分および前記第2の部分が前記第2の基板部分に入射しない、および/または前記第2の基板部分を通過しないように構成される、請求項16または17に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項19】
隙間容積をさらに備え、前記基板と前記膜とが一緒に、それらの間に前記隙間容積を画定し、前記光マイクロフォンアセンブリが音響キャビティをさらに備え、前記膜の第1の面が前記音響キャビティと流体連通し、前記膜の第2の面が前記光マイクロフォンアセンブリの外部と流体連通する、請求項1から18のいずれか一項に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項20】
前記基板が、前記基板を完全に貫通して延びる1つまたは複数の開口を含む開口領域を備え、前記開口が、前記隙間容積を、前記光マイクロフォンアセンブリの前記音響キャビティまたは前記光マイクロフォンアセンブリの前記外部のいずれかと接続する空気の通路を提供する、請求項19に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項21】
前記基板が、前記基板を完全に貫通して延びる穿孔を含む穿孔領域を備え、前記穿孔領域が、前記隙間容積を、前記光マイクロフォンアセンブリの前記音響キャビティまたは前記光マイクロフォンアセンブリの前記外部のいずれかと接続する空気の通路を提供する、請求項19または20に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項22】
前記穿孔の総面積が、前記穿孔領域の50%超、80%超、90%超または95%超を含む、請求項21に記載の光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項23】
基板と、膜と、光源と、少なくとも1つの光検出器とを備える光マイクロフォンアセンブリを製造する方法であって、
前記基板の表面内にまたは前記表面上に複数の線を形成することによって、前記表面上に前記複数の線を備える少なくとも1つの回折光学素子を設けることであって、前記複数の線が第1のパターンにおいて構成される、設けることと、
前記基板内に1つまたは複数の孔を形成することであって、前記1つまたは複数の孔が、前記基板を完全に貫通して延び、前記第1のパターンとは異なる第2のパターンにおいて構成される、形成することと、
干渉計装置を形成するように前記回折光学素子から離間した膜を設けることと、
光の第1の部分が前記干渉計装置を介して第1の光路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が前記干渉計装置を介して第2の異なる光路に沿って伝搬するように前記干渉計装置に前記光を供給し、それにより、前記膜と前記回折光学素子との間の距離に依存する前記第1の光路と前記第2の光路との間の光路差を生じさせるように光源を構成することであって、前記1つまたは複数の孔が、前記第1の光路と前記第2の光路のうちの少なくとも1つが前記1つまたは複数の孔と少なくとも部分的に重なるように配置される、構成することと、
前記光路差に依存する光の前記第1の部分および前記第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように少なくとも1つの光検出器を構成することと
を含む、方法。
【請求項24】
光マイクロフォンアセンブリであって、
第1の基板部分および第2の基板部分を備える基板であって、前記第1の基板部分が前記第2の基板部分よりも薄く、前記第1の基板部分が無孔である、基板と、
膜および前記膜から離間した少なくとも1つの光学素子を備える干渉計装置であって、前記少なくとも1つの光学素子が、前記第1の基板部分の表面を備え、および/または前記第1の基板部分の表面上に配置される、干渉計装置と
を備え、
光の第1の部分が前記干渉計装置を介して第1の光路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が前記干渉計装置を介して第2の異なる光路に沿って伝搬するように前記干渉計装置に前記光を供給し、それにより、前記膜と前記光学素子との間の距離に依存する前記第1の光路と前記第2の光路との間の光路差を生じさせるように構成された光源であって、前記第1の光路と前記第2の光路のうちの少なくとも1つが前記第1の基板部分を通過する、光源と、
前記光路差に依存する光の前記第1の部分および前記第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように構成された少なくとも1つの光検出器と
をさらに備える、光マイクロフォンアセンブリ。
【請求項25】
基板と、膜と、光源と、少なくとも1つの光検出器とを備える光マイクロフォンアセンブリを製造する方法であって、
第1の基板部分および第2の基板部分を備える基板を設けることであって、前記第1の基板部分が前記第2の基板部分よりも薄く、前記第1の基板部分が無孔である、設けることと、
干渉計装置を形成するために膜および前記膜から離間した少なくとも1つの光学素子を設けることであって、前記少なくとも1つの光学素子が、前記第1の基板部分の表面を備え、および/または前記第1の基板部分の表面上に配置される、設けることと、
光の第1の部分が前記干渉計装置を介して第1の光路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が前記干渉計装置を介して第2の異なる光路に沿って伝搬するように前記干渉計装置に前記光を供給し、それにより、前記膜と前記光学素子との間の距離に依存する前記第1の光路と前記第2の光路との間の光路差を生じさせるように光源を構成することであって、前記第1の光路と前記第2の光路のうちの少なくとも1つが前記第1の基板部分を通過する、構成することと、
前記光路差に依存する光の前記第1の部分および前記第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように少なくとも1つの光検出器を構成することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光マイクロフォンアセンブリに関し、特に、光マイクロフォンアセンブリの基板に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロフォンは、典型的には、周囲の音響振動に応答して振動する可動部材(例えば、膜)の変位を測定することによって、音波を電気信号に変換するために使用される。(一般にコンデンサマイクロフォンと呼ばれる)容量性読出しおよび静電または電磁読出し機構(例えばダイナミックマイクロフォン)を含む、そのような可動部材の変位を測定するいくつかの方法がある。
【0003】
マイクロフォン膜の位置を読み出す代替の方法は、光干渉読出しである。そのようなシステムの典型的な例では、膜に隣接する基板上に回折格子が設けられ、その回折格子に電磁放射が向けられる。光の第1の部分は格子に反射して戻ってくる。第2の部分は格子を通して透過され、格子は放射を回折させる。回折された放射は膜に入射し、膜は、回折された放射を格子に反射させる。放射は格子を通過し、光の2つの部分が干渉して、検出器によって検出され得る干渉パターンを作り出す。干渉パターンは、格子の回折次数に一致する形状(すなわち、空間分布)を有するが、これらの回折次数に向けられる光強度は、光の2つの部分の相対位相、したがって格子と膜との間の距離に依存する。これにより、膜の位置(したがって動き)は、検出器における光の強度の変化から決定され得る。
そのようなマイクロフォンは、高い信号対雑音比(SNR)と、高い感度とを有する。しかしながら、そのようなマイクロフォンの性能のさらなる改善が望ましい。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様から見ると、本発明は、光マイクロフォンアセンブリであって、基板と、膜および膜から離間した少なくとも1つの回折光学素子を備える干渉計装置であって、少なくとも1つの回折光学素子が、基板の表面内に形成されたかまたは基板の表面上に配置された複数の線を備え、複数の線が第1のパターンにおいて構成され、基板が、基板を完全に貫通して延びる1つまたは複数の孔を備え、1つまたは複数の孔が、第1のパターンとは異なる第2のパターンにおいて構成される、干渉計装置とを備え、光の第1の部分が前記干渉計装置を介して第1の光路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が前記干渉計装置を介して第2の異なる光路に沿って伝搬するように前記干渉計装置に前記光を供給し、それにより、膜と回折光学素子との間の距離に依存する第1の光路と第2の光路との間の光路差を生じさせるように構成された光源であって、1つまたは複数の孔が、前記第1の光路と前記第2の光路のうちの少なくとも1つが1つまたは複数の孔と少なくとも部分的に重なるように配置される、光源と、前記光路差に依存する光の前記第1の部分および前記第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように構成された少なくとも1つの光検出器とをさらに備える、光マイクロフォンアセンブリを提供する。
【0005】
本発明の第1の態様は、基板と、膜と、光源と、少なくとも1つの光検出器とを備える光マイクロフォンアセンブリを製造する方法であって、基板の表面内にまたは表面上に複数の線を形成することによって、表面上に前記複数の線を備える少なくとも1つの回折光学素子を設けることであって、複数の線が第1のパターンにおいて構成される、設けることと、基板内に1つまたは複数の孔を形成することであって、1つまたは複数の孔が、基板を完全に貫通して延び、第1のパターンとは異なる第2のパターンにおいて構成される、形成することと、干渉計装置を形成するように回折光学素子から離間した膜を設けることと、光の第1の部分が前記干渉計装置を介して第1の光路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が前記干渉計装置を介して第2の異なる光路に沿って伝搬するように前記干渉計装置に前記光を供給し、それにより、膜と回折光学素子との間の距離に依存する第1の光路と第2の光路との間の光路差を生じさせるように光源を構成することであって、1つまたは複数の孔が、前記第1の光路と前記第2の光路のうちの少なくとも1つが1つまたは複数の孔と少なくとも部分的に重なるように配置される、構成することと、前記光路差に依存する光の前記第1の部分および前記第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように少なくとも1つの光検出器を構成することとを含む、方法に及ぶ。
【0006】
本出願人は、上記で説明されたように基板内に1つまたは複数の孔を設けることが、従来技術のマイクロフォンアセンブリに勝るいくつかの利点を提供することができることを諒解した。(1つまたは複数の)孔は、干渉計装置を通る光がとる光路と少なくとも部分的に重なるため、(1つまたは複数の)孔は、基板によって透過されるかまたは基板から反射される光に影響を及ぼし得る。例えば、(1つまたは複数の)孔は光の一部を除去し得、そうしなければ、その光の一部は、回折光学素子によって作り出される回折パターンに寄与したであろう。したがって、前記第1および第2の光路のうちの少なくとも1つが1つまたは複数の孔と少なくとも部分的に重なると言われる場合、これは、(1つまたは複数の)孔が存在しない場合、光源から(1つまたは複数の)検出器への光の第1および/または第2の部分がとったであろう(1つまたは複数の)光路に言及していることを理解されたい。孔は、例えば、光信号強度および/またはコントラストに負に寄与する光の部分を除去することによって、光マイクロフォンアセンブリの性能を向上させるのに役立ち得る。
【0007】
(1つまたは複数の)孔が光マイクロフォンアセンブリの性能を改善するのに役立ち得る別の方法は、その音響特性を変化させることによってである。例えば、(1つまたは複数の)孔は、場合によっては光マイクロフォン出力信号においてノイズを生じさせ得る、膜と基板との間の音響スクイズフィルム抵抗を低減するのに役立ち得る。(1つまたは複数の)孔はまた、基板のスクイズ・フィルム・ノイズ変位を低減するのに役立ち、それにより、光マイクロフォンにおける測定熱機械ノイズの総量を低減し得る。
【0008】
(1つまたは複数の)孔は、基板によって透過されるかまたは基板から反射される光に影響を及ぼし得るが、孔は回折光学素子の一部を形成しないことを理解されたい。特に、回折光学素子は、(1つまたは複数の)孔によって画定されず、すなわち、回折光学素子は、基板内に(1つまたは複数の)孔を形成することによって形成されない。回折光学素子は、第1のパターンにおいて構成された線(例えば、格子線)を備えることにより、回折性である。(1つまたは複数の)孔は、回折光学素子の線によって作成される回折パターンと相関しないものとして説明され得る。(1つまたは複数の)孔は、少なくとも1つの回折光学素子と重なり得る。例えば、実施形態のセットでは、第1のパターンおよび第2のパターンは、それぞれの第1のエンベロープおよび第2のエンベロープを有し、第1のエンベロープと第2のエンベロープとは重なる。(1つまたは複数の)孔のうちの少なくとも1つ、少なくともいくつか、またはすべては、第1のエンベロープ内に配置され得る。
【0009】
上述したように、(1つまたは複数の)孔の存在は、有利には、(例えば、スクイズフィルム抵抗を低減し、および/または光信号強度/コントラストへの負の寄与を除去することによって)光マイクロフォンの音響および/または光学特性を改善し得る。1つまたは複数の孔の存在はそのような利点を提供し得るが、利益は、孔の特性を選択する(例えば、最適化する)ことによって改善され得る。例えば、孔のサイズ、形状、構成および/または他の特性は、関連する利益を増加させるように選択され得る。
【0010】
1つまたは複数の孔の長さスケール(例えば、1つまたは複数の孔の幅または長さ)は、典型的には、線の間の平均間隔(例えば、隣接する線の間の距離)よりも大きい。例えば、1つまたは複数の孔の長さスケールは、線の間の平均間隔の少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍大きいことがある。いくつかの実施形態では、少数の大きい孔が設けられる。例えば、孔の数は、1~8個、2~6個、または3~5個であり得る
【0011】
。
孔がパターン(すなわち、第2のパターン)において構成されていると言われる場合、「パターン」という用語は、パターンが対称性、例えば回転対称性、反射対称性および/または並進対称性を有し得るとはいえ、必ずしも孔の構成における対称性または繰返しを暗示するとは限らないことを理解されたい。第2のパターンは、単一の中心孔、半径方向に延びる細長い孔、例えば2、3、4、5、6、7、8、または9つ以上の半径方向に延びる細長い孔、例えば2つまたはそれ以上の孔の列が中心点または中心孔から延びる、孔の、半径方向に延びる列、例えば中心孔を囲む孔の同心円のうちの1つまたは複数を含み得る。他のパターンが可能である。(1つまたは複数の)孔は円形であり得る。
【0012】
(1つまたは複数の)孔が基板を「完全に貫通して」延びると言われる場合、これは、例えば、基板の両面の領域が(1つまたは複数の)孔を通して流体連通するように、基板の一方の面を他方の面に接続する空気通路を形成するように(1つまたは複数の)孔が基板を通って延びることを意味することを理解されたい。この製造方法は、基板内に1つまたは複数の孔をエッチングすることを含み得る。
【0013】
(1つまたは複数の)回折光学素子の線は、基板内にエッチングされるかまたは基板上に蒸着され得る。それらの線がエッチングされる場合、それらは、好ましくは非穿孔性であり、すなわち、それらは、好ましくは基板を完全に貫通して延びない。線は、蒸着された金属線であり得る。
【0014】
線は、回折格子を形成し得る。線は直線であり得るが、これは必須ではなく、いくつかの実施形態では、線は湾曲している。例えば、回折光学素子は、フレネルレンズであり得る。
【0015】
本出願人は、回折光学素子を担持する基板またはその一部分が薄い場合、いくつかの利点が得られ得ることを諒解した。実施形態のセットでは、基板は第1の基板部分を備え、少なくとも1つの回折光学素子は、第1の基板部分上に配置されるかまたは第1の基板部分内に形成される。基板または第1の基板部分は、1μm~20μm、好ましくは2μm~10μm、より好ましくは3μm~5μmの厚さの厚さを有し得る。実施形態のセットでは、光の第1の部分および第2の部分の一方または両方が第1の基板部分に入射する。実施形態のセットでは、第1の光路と第2の光路のうちの少なくとも1つが第1の基板部分を通過する。
【0016】
薄い基板を有することは、光透過性、音響性能および製造可能性に関連する利点を提供し得る。
【0017】
好ましくは、基板または第1の基板部分は、例えば、基板または第1の基板部分に入射する光の大部分が、2回基板を通過した後に(すなわち、基板に入り、基板の表面から反射され、再び基板を通過した後に)透過されるように、光源によって供給される光の波長において実質的に透過性である。例えば、光の少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、2回基板を通過した後に透過され得る。基板の透過性は、第1の基板部分の基板が、光が透過されるのに十分薄いことによって達成され得、例えば、基板または第1の基板部分の厚さは、上記で指定されたパーセンテージに従って透過性を提供するように選択され得る。基板またはその一部(例えば、第1の基板部分)は、その片面または両面に反射防止コーティングを備え得る。それにより、基板表面からの反射が低減され得る。
【0018】
基板または第1の基板部分の透過性は波長依存であり得、特定の透過性を達成するために必要な厚さは、基板が作製される材料に依存し得る。したがって、基板または第1の基板部分の厚さは、所与の基板材料に関して、光源によって供給される光の波長に関して特定の透過性を達成するように選択され得る。光源によって供給される光の波長は、800nm~1000nmの範囲内にあり、例えば、850nmまたは940nmであり得る。波長が850nmである場合、基板または第1の基板部分の厚さは、基板がシリコンから作製される場合、約3μmであり得る。他の波長では、および/または他の材料の場合、厚さは3μm未満または3μm超であり得る。例えば、光の波長が940nmである場合、基板または第1の基板部分の厚さは、基板材料がシリコンである場合、約10μmであり得る。
【0019】
薄い基板の使用は、有利には、場合によっては使用されるのに不透過性すぎる基板材料の使用を可能にし得る。これらの材料は、例えば製造可能性の改善など、より大きい厚さにおいてでさえ透過性である従来の材料(例えば、ガラス)に勝る利点を提供し得る。例えば、基板は、シリコンから作製され得る。シリコンは、例えば、本明細書の他の箇所で説明されるように孔、開口、および/または穿孔を含む、基板の必要な形態を提供するために容易かつ正確にエッチングされ得るため、特に有利である。基板(または第1の基板部分)がシリコンから作製される場合、好ましくは、シリコンは単結晶シリコンである。シリコンは、(上記で説明された)適切な基板透過性が達成されるように、ドープされないかまたは低レベルでドープされ得る。
【0020】
基板および/または第1の基板部分は、層状構造(例えば、例えばシリコン層を含む、異なる材料のサンドイッチ)を備え得る。層状構造は、2つ、3つ、または4つ以上の層、例えば、片面または両面に薄フィルム層を有する第1の層から構成され得る。例えば、層状構造は、片面または両面に薄いフィルムを有する単結晶シリコン(例えば、3μm厚層)を備えるか、またはそれから構成され得る。薄いフィルムは、反射防止コーティングを備え得る。薄いフィルムは、例えば、基板または第1の基板部分を堅くするために、高い引張応力(例えば、1GPaまたは1GPa超)を有し得る。
【0021】
薄い基板はまた、光マイクロフォンアセンブリの音響特性を改善し得る。例えば、より低いアスペクト比を有する(すなわち、より薄い基板内に形成される)孔は、より厚い基板内の同じ形状、サイズおよびパターンの孔と比較して、光マイクロフォンの音響特性のより大きい改善を提供し得る。より薄い基板内に形成される孔は、より容易に製造され得る。
【0022】
光マイクロフォンアセンブリは、2つ以上の回折光学素子を備え得る。各回折光学素子は、回折光学素子によって透過または反射された光に対して、異なる相対位相遅延をもたらし得る。例えば、基板(または第1の基板部分)は、各回折光学素子が異なる高さを有するように、異なる厚さの領域を有し得る。したがって、膜の変位は、各回折光学素子について異なる作動点に関して測定され、それにより、光マイクロフォンの動作範囲を拡大し得る。
【0023】
基板は、例えば第1の基板部分を囲む第2の基板部分を備え得る。第2の基板部分は、第1の基板部分よりも厚いことがある。これは、全体として基板に、したがって第1の基板部分に剛性/スチフネスを提供するのに役立ち得る。剛性/スチフネスの増加は、例えば、基板(または第1の基板部分)の動きを低減することによって、ノイズを低減するのに役立ち得、そうしなければ、基板(または第1の基板部分)の動きはノイズフロアに寄与するであろう。
【0024】
基板は、第1の基板部分と第2の基板部分とが同じ材料から作製されるように、単一の材料から一体的に形成され得る。例えば、第1の基板部分は、単一の材料の薄くされた領域であり得る。この製造方法は、第2の基板部分よりも薄い第1の基板部分を設けるように基板の領域をエッチングすることを含み得、例えば、第2の基板部分は第1の基板部分を囲む。
【0025】
第1の基板部分と第2の基板部分とは、一緒に取り付けられる2つの別個の部片を含み得る。第1の基板部分はシリコンから形成され得る。
【0026】
光マイクロフォンアセンブリは、光の第1の部分および第2の部分が第2の基板部分に入射しない、および/または第2の基板部分を通過しないように構成され得る。第2の基板部分は、光源によって供給される光の波長において実質的に不透過性であり得る。例えば、第2の基板部分は、その厚さにより、例えば、第2の基板部分が第1の基板部分と同じ材料から作製される場合、当然のその材料、またはその上にカバーリングが設けられるために、実質的に不透過性であり得る。以下で説明されるように、第2の基板部分は、開口または穿孔を含み得る。したがって、第2の基板部分が実質的に不透過性であり得ると言われる場合、これは、任意の開口または穿孔以外の第2の基板部分の部分が不透過性であることを意味することを理解されたい。
【0027】
光マイクロフォンアセンブリは隙間容積を備え得、基板と膜とが一緒に、それらの間に隙間容積を画定する。光マイクロフォンアセンブリは音響キャビティを備え得、膜の第1の面が音響キャビティと流体連通し、膜の第2の面が光マイクロフォンアセンブリの外部と流体連通する。
【0028】
実施形態のセットでは、基板は開口領域を備え、開口領域は、基板を完全に貫通して延びる1つまたは複数の開口を含む。例えば、基板は、基板の中央支持部分を囲む複数の開口を備え得、中央支持部分は、少なくとも1つの回折光学素子を備える。開口領域は、第1の基板部分または第2の基板部分内に設けられ得る。開口は、隙間容積を、光マイクロフォンアセンブリの音響キャビティまたは光マイクロフォンアセンブリの外部のいずれかと接続する空気の通路を提供し得、それにより、これらの領域は流体連通する。
【0029】
追加として、またはより典型的には代替として、基板は穿孔領域を備え得、穿孔領域は、基板を完全に貫通して延びる穿孔を含む。穿孔領域は、第1の基板部分または第2の基板部分内に設けられ得る。穿孔領域は、隙間容積を、光マイクロフォンアセンブリの音響キャビティまたは光マイクロフォンアセンブリの外部のいずれかと接続する空気の通路を提供し得、それにより、これらの領域は流体連通する。これは、膜と基板との間の音響抵抗を低減することによって光マイクロフォンアセンブリの性能を改善するのに役立ち得る。穿孔領域は、例えば、穿孔の総面積が、穿孔領域の50%超、80%超、90%超または95%超を含むように、高度に穿孔され得る。追加または代替として、穿孔は、モザイク形状、例えば正方形、六角形、三角形、長方形を有し得る。穿孔は、格子構成、例えば、正方格子、六方最密格子であり得る。第2の基板部分の穿孔領域は、最大に穿孔され得る。このコンテキストでは、最大に穿孔されるは、第1の基板部分を支持するために第2の基板部分の十分な構造的完全性を維持しながら、穿孔の総面積が実行可能な限り最大化されることを意味する。このようにして穿孔の程度を最大化することは、膜と基板との間の音響抵抗を最小化するのに役立つことができる。
【0030】
設けられる場合、開口および穿孔は第1の基板部分内の孔とは異なり、回折/反射光の部分を除去する機能を提供するためのものではないことを諒解されたい。したがって、穿孔領域および/または開口領域が第1の基板部分内に設けられる場合、開口も穿孔も第1の光路または第2の光路と重ならない。
【0031】
このコンテキストにおいて説明される開口および穿孔は、穿孔が典型的には開口よりも小さく、開口よりも数が多いという点で異なる。
【0032】
第2の基板部分は、第1の基板部分とは異なる材料から作製され得る。穿孔領域および/または開口領域が第1の基板部分内に形成される場合、穿孔領域および/または開口領域は、第1の基板部分の残りとは異なる材料から作製され得る。第2の基板部分、穿孔領域および/または開口領域は、光源からの光の波長において光を透過しない材料、例えばポリシリコンから作製され得る。この製造方法は、穿孔領域を形成するために基板内に穿孔をエッチングすることを含み得る。
【0033】
開口および/または穿孔の形状、サイズおよび/または構成は、例えば膜と基板との間の音響抵抗を低減または最小化するために、隙間容積と音響キャビティまたは光マイクロフォンアセンブリ外部との間の流体連通を増加させるように選択され、例えば最適化され得る。
【0034】
光マイクロフォンアセンブリは、膜および基板を支持するマウント構造を備え得る。マウント構造は、複合構造であり得、第2の基板部分を含み得る。マウント構造の厚さは、1mm未満、例えば500μm未満、例えば400μm未満であり得る。
膜は、任意の適切な材料、例えば窒化ケイ素から作製され得る。膜は、例えば、膜のコンプライアンスを増加させるために波形を備え得るが、波形は必須ではない。膜は通気孔を備え得るが、これは必須ではない。通気孔は、音響キャビティとマイクロフォンアセンブリ外部との間の圧力の静的均等化を可能にし得る。
【0035】
上記で説明されたように、比較的薄い第1の基板部分と、例えば第1の基板部分を囲むより厚い第2の基板部分とを設けることは、いくつかの利点を提供する。薄い第1の基板部分を使用することは、場合によっては使用するのに不透過性すぎる材料から基板を製造する可能性を開き、より厚い第2の基板部分を設けることは、ノイズの影響を緩和するための剛性を提供することができる。これを、第1の基板部分内に孔を有しない構成に適用することは、それ自体で新規かつ発明的であり、したがって、第2の態様から見ると、本発明は、第1の基板部分および第2の基板部分を備える基板であって、第1の基板部分が第2の基板部分よりも薄く、第1の基板部分が無孔である、基板と、膜および膜から離間した少なくとも1つの光学素子を備える干渉計装置であって、少なくとも1つの光学素子が、第1の基板部分の表面を備え、および/または第1の基板部分の表面上に配置される、干渉計装置とを備え、光の第1の部分が前記干渉計装置を介して第1の光路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が前記干渉計装置を介して第2の異なる光路に沿って伝搬するように前記干渉計装置に前記光を供給し、それにより、膜と光学素子との間の距離に依存する第1の光路と第2の光路との間の光路差を生じさせるように構成された光源であって、第1の光路と第2の光路のうちの少なくとも1つが第1の基板部分を通過する、光源と、前記光路差に依存する光の前記第1の部分および前記第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように構成された少なくとも1つの光検出器とをさらに備える、光マイクロフォンアセンブリを提供する。
【0036】
この態様は、基板と、膜と、光源と、少なくとも1つの光検出器とを備える光マイクロフォンアセンブリを製造する方法であって、第1の基板部分および第2の基板部分を備える基板を設けることであって、第1の基板部分が第2の基板部分よりも薄く、第1の基板部分が無孔である、設けることと、干渉計装置を形成するために膜および膜から離間した少なくとも1つの光学素子を設けることであって、少なくとも1つの光学素子が、第1の基板部分の表面を備え、および/または第1の基板部分の表面上に配置される、設けることと、光の第1の部分が前記干渉計装置を介して第1の光路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が前記干渉計装置を介して第2の異なる光路に沿って伝搬するように前記干渉計装置に前記光を供給し、それにより、膜と光学素子との間の距離に依存する第1の光路と第2の光路との間の光路差を生じさせるように光源を構成することであって、第1の光路と第2の光路のうちの少なくとも1つが第1の基板部分を通過する、構成することと、前記光路差に依存する光の前記第1の部分および前記第2の部分によって生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するように少なくとも1つの光検出器を構成することとを含む、方法に及ぶ。
【0037】
このコンテキストでは、無孔は、第1の基板部分を完全に貫通して延びる孔がないことを意味する。少なくとも1つの光学素子は、回折性であり得る。第1の態様の光マイクロフォンアセンブリおよび方法の任意選択の特徴は、適用可能な場合、第2の態様の光マイクロフォンアセンブリおよび方法の任意選択の特徴であり得る。
次に、いくつかの好ましい実施形態が、添付の図面を参照して、単に例として、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明による光マイクロフォンアセンブリの第1の実施形態の断面図である。
【
図2】
図1の光マイクロフォンアセンブリの基板の一部の斜視図である。
【
図3】本発明による光マイクロフォンアセンブリにおいて使用するための代替基板を示す図である。
【
図4】本発明による光マイクロフォンアセンブリの第2の実施形態の断面図である。
【
図5】本発明による光マイクロフォンアセンブリの第3の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、基板4と、膜6と、光源8と、2つの光検出器10とを備える光マイクロフォンアセンブリ2を示す。基板4は、概してその中心にある第1の基板部分12と、第1の基板部分を囲む第2の基板部分14とを備える。基板はシリコンから製造される。第1の基板部分12は、第1の基板部分12のシリコンが、850nmである、光源8によって供給される光の波長に対して実質的に透過性であるのに十分薄いように、約3μmの厚さを有する。この例では、第1の基板部分12の中央領域13が、各々がそれぞれの回折光学素子20、22を備えた2つのサブ部分16、18を備える。回折光学素子20、22は、第1の基板部分12の表面上に蒸着された複数の反射金属線24を備える。この例では、反射線は、基板上に高張力窒化ケイ素層を蒸着させるために高温低圧化学蒸着(low pressure chemical vapour deposition:LPCVD)処理ステップを実行する前に、金属層を蒸着およびパターニングすることによって、作製される。この手法は、典型的には、LPCVD蒸着ステップに耐えるために高い融点を有する金属(タングステンなど)を使用する。代替的に、より低温のプロセス(例えば、プラズマ強化化学蒸着(plasma-enhanced chemical vapour deposition:PECVD))で形成された引張フィルムが採用され得る。LPCVD窒化ケイ素層は、2つの有用な機能を提供し得る。それは、反射防止コーティングとして機能し得る。それはまた、その高い引張応力により、基板(または第1の基板部分)を堅くするのに役立ち得、これは、有利には、基板(または第1の基板部分)の動きからのノイズを低減し得る。ただし、LPCVD窒化ケイ素層もPECVD引張フィルムも、必須ではない。
【0040】
サブ部分16、18は、それらを通過する光に異なる位相遅延を導入するように異なる厚さを有する。これは、膜変位が測定される2つの異なる作動点を提供し、それが光マイクロフォンの動作範囲を拡大する。ただし、この特徴は必須ではなく、この実施形態および他の実施形態に対する変形形態では、第1の基板部分12は、均一な高さおよび単一の回折光学素子を有し得る。
【0041】
この例では垂直キャビティ面発光レーザ(vertical-cavity surface-emitting laser:VCSEL)である光源8は、光26を第1の基板部分12のほうへ向ける。光の第1の部分28が回折光学素子20、22に反射して戻り、検出器10に入射する。光の第2の部分30が回折光学素子20、22によって透過および回折され、膜6に入射する。光の第2の部分30は、膜6によって反射され、第1の基板部分12中を伝搬して戻り、検出器10に入射する。光の第1の部分28および第2の部分30は、一緒に、検出器10において干渉パターンを作り出す。干渉パターンは、膜6と回折光学素子20、22との間の分離に依存する。検出器10における測定された光強度は、膜6と回折光学素子20、22との間の分離を決定し、したがって、膜6の動きに対応する出力信号を生成するために使用される。
【0042】
第1の基板部分12内に複数の孔32が設けられる。複数の孔32は、2つの機能を果たす。第1に、孔32は、光26ならびに光の第1の部分28および第2の部分30がとる光路を遮断する。したがって、孔32は、検出器における干渉パターンに寄与しないように光の一部を除去させる。除去される光は、例えば、光信号強度およびコントラストに負に寄与する部分を含む。
【0043】
孔32は、基板4と膜6との間の隙間容積34が光マイクロフォンアセンブリ2の音響キャビティ36と流体連通するように、空気通路としても役立つ。孔32によって提供される空気通路は、膜の動きによって変位される空気が隙間容積から流れ出ることを可能にし、それにより、場合によっては光マイクロフォン出力信号においてノイズを生じさせ得る音響スクイズフィルム抵抗を低減する。
【0044】
この例では、光マイクロフォンアセンブリは、「上部ポート」構成、すなわち、音響キャビティ36が基板4の下に設けられ、基板4の反対側を向く膜6の面が光マイクロフォン37の外部と流体連通している構成を有するものとして示されている。ただし、光マイクロフォンアセンブリは、「底部ポート」構成、すなわち、音響キャビティが基板4の反対側を向く膜6の面上の容積を囲む構成における使用にも適し得る。そのような構成では、隙間容積34は、孔32を介して光マイクロフォンアセンブリの外部と流体連通する。
【0045】
図2の斜視図に示されているように、第1の基板部分12は、第1の基板部分12の中央領域13を囲む穿孔領域38を備える。第1の基板部分12の中央領域13内に設けられた孔32は、中央孔32aを中心として同心円で構成されることが分かる。穿孔領域38は、六角形の穿孔40を含む。六角形の穿孔40は、六方最密格子構成で構成される。穿孔40は、穿孔領域38の面積の大部分、この例では、第1の基板部分12の中央領域13を支持するために孔の間の材料42からの十分な構造的完全性を依然として維持しながら実行可能な最大面積を占める。穿孔領域38は、隙間容積34がそれを介して音響キャビティ36と流体連通する空気通路を提供する。これは、膜のスクイズフィルム減衰をさらに排除し、それにより光マイクロフォンの性能を改善するのに役立つ。
【0046】
図1に戻ると、膜6が波形44を備えることが分かり、これが膜コンプライアンスを増加させ、したがって光マイクロフォン感度を増加させるのに役立つ。膜6は、中央通気孔46をも備える。これは、音響キャビティとマイクロフォンアセンブリ外部との間の圧力の静的均等化を可能にする。
【0047】
光マイクロフォンアセンブリ2はまた、第2の基板部分14を備える取付け構造48を備える。取付け構造48は、膜6および第1の基板部分12を支持する周方向構造を備える複合構造であることが分かる。取付け構造48は、第1の基板部分12よりも厚いことが分かる。この例では、取付け構造48は400μmの厚さである。
図1の寸法は一定の縮尺で示されていないことが諒解されよう。取付け構造48の厚さは、場合によっては薄い第1の基板部分12の動きによって引き起こされ得るノイズ(例えば、熱機械ノイズ)を低減するための剛性を提供する。
【0048】
図3は、本発明による光マイクロフォンアセンブリ、例えば、
図1に示されている光マイクロフォンアセンブリ2において使用され得る代替基板50を示す。基板50は、その中央領域53上に配置された回折光学素子(図示せず)を有する第1の基板部分52を備える。中央領域53は、それを通る孔54を有する。孔54は、細長く、第1の基板部分52上の中心点から半径方向に延びる。孔54は、
図1および
図2に示されている孔32と同等の機能を果たす。
【0049】
基板50は、開口領域56を備える。開口領域56は、基板50を完全に貫通して延びる3つの開口58を有する。開口56は、中央領域53が、3つの半径方向に延びる梁60によって支持される中央支持プラットフォームの形態を有するように、中央領域53を囲む円弧状部分である。例えば
図1のアセンブリ2など、光マイクロフォンアセンブリでは、開口50は、
図2に示されている穿孔40と同様の機能を果たし、すなわち、隙間容積を音響キャビティと流体連通させる。基板50はまた、第1の基板部分52よりも厚く、基板50が光マイクロフォンアセンブリ内で組み立てられたときに取付け構造の一部を形成する第2の基板部分62を含む。この例では、梁60は中央領域53と同じ厚さを有するが、このおよび他の実施形態に対する変形形態では、梁60は中央領域53よりも厚く、例えば、第2の基板部分62の一部を形成し、第2の基板部分と同じ厚さを有し得る。
【0050】
図4は、光マイクロフォンアセンブリ64の第2の実施形態を示す。光マイクロフォンアセンブリ64は、
図1に示されている光マイクロフォンアセンブリ2と同等の特徴、すなわち、基板66、膜68、光源70および2つの検出器72を有する。基板66は、第1の基板部分74および第2の基板部分76を備え、第1の基板部分74は、その上に回折光学素子78、80を有する。ただし、複数の孔32の代わりに、単一の中心孔82が設けられる。孔82は、当然のその異なる位置、それが光源8からの光の異なる部分を除去することを除いて、
図1の実施形態の孔32と同様の機能を提供する。したがって、孔82は、
図1に示されている構成と比較して、検出器72において検出される干渉パターンに異なる影響を与える。
【0051】
図5は、光マイクロフォンアセンブリ84の第3の実施形態を示す。光マイクロフォンアセンブリ84は、
図1および
図4に示されている光マイクロフォンアセンブリ2と同等の特徴、すなわち、基板86、膜88、光源90および2つの検出器92を有する。基板86は、第1の基板部分94および第2の基板部分96を備え、第1の基板部分94は、その上に回折光学素子98、100を有する中央領域95を備える。ただし、この実施形態では、第1の基板部分94の中央領域95内に孔が設けられていない。加えて、第1の基板部分94は中央領域95のみを備え、(第1の基板部分94よりも厚い)第2の基板部分96は、中央領域95を囲み、その中に開口106が形成された周辺領域97を含む。隙間容積102が、開口106を介して音響キャビティ104と流体連通している。開口106は、この例では梁60が第2の基板部分96の一部を形成し、したがって第1の基板部分94よりも厚い(ただし、これは必須ではない)ことを除いて、
図3に示され、
図3を参照して説明された開口50と同様の形態を有する。この実施形態に対する変形形態では、開口106の代わりに、
図1および
図2の穿孔領域38と同様の穿孔領域が設けられ得る。基板86はシリコンから作製され、基板は、3μmの厚さを有することにより、この例では850nmの波長を有する、光源90によって放射される光に対して実質的に透過性であり、すなわち、基板86は、十分に薄いために透過性である。シリコンは容易かつ正確にエッチングされ、これが、開口106(または、この実施形態に対する変形形態では穿孔)が基板86にエッチングされることを可能にするので、基板86にシリコンを使用することは有利である。
【0052】
光マイクロフォンアセンブリ84は、第2の基板部分96を備える取付け構造108を備える。取付け構造108および第2の基板部分96は、第1の基板部分94よりもはるかに厚い。この例では、(一定の縮尺で示されていない)取付け構造は400μmの厚さである。取付け構造108および第2の基板部分96は、第1の基板部分94の動きに起因するノイズを低減するための剛性を提供する。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態のみが上記で説明されこと、ならびに他の実施形態および上記で説明された実施形態に対する変形形態が本発明の範囲内で可能であることが諒解されよう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】