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特表2023-500989甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物及びその医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-17
(54)【発明の名称】甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物及びその医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/04 20060101AFI20230110BHJP
   C07H 1/00 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230110BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230110BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230110BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20230110BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20230110BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230110BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230110BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C07H15/04 E CSP
C07H1/00
A61P5/14
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P1/16
A61P9/10 101
A61P9/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K47/12
A61K47/40
A61K47/30
A61K47/28
A61K47/54
A61K31/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540641
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2020112941
(87)【国際公開番号】W WO2021135335
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911407857.4
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521235062
【氏名又は名称】キロノヴァ (シアメン) バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】ツイ クンユアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー ヤンチュン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C057AA18
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD03
4C057JJ09
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC30
4C076CC41
4C076DD41N
4C076DD70N
4C076EE39N
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF33
4C076FF34
4C076FF67
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA06
4C206NA12
4C206NA13
4C206NA20
4C206ZA36
4C206ZA45
4C206ZA70
4C206ZA75
4C206ZB26
4C206ZC06
4C206ZC21
4C206ZC33
4C206ZC35
4C206ZC41
(57)【要約】
本発明はバイオ医薬の分野に属し、具体的には標的医薬品の分野に関し、より具体的には、本発明は甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物及びその医薬組成物に関し、該化合物は式(1)に示す化合物である。該化合物はホルモン調節失調による疾患の治療及び/又は予防に用いられてもよく、血漿及び肝臓細胞中の脂質を効果的に低減してもよい。
式(1)
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)に示される化合物である、甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物である。
式(1)
【化1】
(ここで、nは1-10の整数であり、好ましくは1-3の整数であり、Xはカルボニル基であり、Yはアミノ基又は酸素原子である。)
【請求項2】
化合物GBL-0603である、請求項1に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物。
【化2】
【請求項3】
化合物Aと化合物Bとの間にエステル又はアミド結合を形成させるステップを含む方法である、請求項1又は2に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物を製造する方法。
【化3】
(ここで、nは1-10の整数であり、好ましくは1-3の整数であり、Xは-COOHであり、Yはアミノ基又はヒドロキシ基である。)
【請求項4】
甲状腺ホルモン調節失調による疾患又は代謝性疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造における、請求項1又は2に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物の適用。
【請求項5】
前記疾患は肥満、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝及びその肝炎、アルコール性脂肪肝及びその肝炎、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、甲状腺機能低下症、甲状腺癌を含む、請求項4に記載の適用。
【請求項6】
前記疾患は、非アルコール性脂肪性肝及びその肝炎である、請求項4又は5に記載の適用。
【請求項7】
治療有効量の請求項1又は2に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物及び任意の薬学的に許容可能な補助材料を含む、甲状腺ホルモン調節失調による疾患を治療及び/又は予防するための医薬組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容可能な補助材料は、中鎖脂肪酸ナトリウム塩、コール酸塩、シクロデキストリン及びその誘導体、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー及びメルカプト化ポリマーである腸管吸収促進剤を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記中鎖脂肪酸ナトリウム塩はデカン酸ナトリウムであり、好ましくは、前記甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物とデカン酸ナトリウムとの重量の比率は1:0.2~1:0.75である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物の剤形は、注射剤、又は即放性又は徐放性の経口製剤である、請求項7-9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ医薬の分野に属し、具体的には標的医薬品の分野に関し、より具体的には、本発明は甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物及びその医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性肝疾患として、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は肝細胞内脂質の過度な蓄積、主にトリグリセリド(TGs)の過度な蓄積を特徴としている。NAFLDの病変過程は一連の肝臓の病理変化を含み、肝細胞内の簡単なトリグリセリド蓄積(肝脂肪変性)から炎症性及び肝細胞のバルーン性損傷から、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に発展し、最終的に肝線維症及び肝硬変をもたらす。脂肪変性の脂肪性肝炎への転換の正確なメカニズムはまだ明らかではない。ダブルヒットの仮説がある。第一ヒットは、肝細胞におけるTGsの蓄積に関与し、代謝機能障害の悪性ループをもたらす。肝脂肪変性の存在が確定されると、酸化ストレスが重要な役割を果たす第二ヒットに関わる脂肪性肝炎が進行する。現在NAFLD/NASHは世界的な範囲内でますます一般的になっている慢性肝疾患であり、かつ若年化する傾向がある。公開情報は、NAFLDの世界的な発性率が15%~30%であり、そのうち10%~20%がNASHになることを示す。不完全な統計によると、2016年、中国では、NAFLDは約2.4億人いるが、2030年までに、NAFLDは約3.1億人まで増加し、そのうち肝硬変の患者は約230万に達すると予想される。米国の雑誌「ネイチャー」の2017年の記事によると、NASHは既に慢性C型肝炎に続いて肝臓移植の第二の要因となり、かつ2020年に追越しを実現することが予想され、アメリカの肝臓移植の主な要因になる。このような局面をもたらす主な要因は、現在のNASHに公認の薬理学的治療方法がないこと、及び、人々がこのような疾患を重視しないことである。現在、NASHの既知の主な発症要因は肥満、2型糖尿病、高脂血症及び高血圧等の代謝症候群を含む。グローバルには該適応症に対する治療薬がまだ登場を承認されていない。現在治療介入の方法は主に食事及び運動を含む生活様式の変化に基づいたものであるが、効果が明らかではない。
【0003】
甲状腺ホルモンT4及びT3は複数の作用を有し、糖、脂質代謝及び体重を調節する有効な物質である。特に、それらは重要な肝脂質定常作用を発揮する。それらはその特異的な核内受容体、甲状腺ホルモン受容体TR-α及びTR-βに結合することより生理学的効果を発揮し、全身に広く分布する特定のホルモン受容体TR-α及びTR-βと相互作用することにより影響を与える。TR-βは主に肝臓の発現に集中し、脂質代謝に対して、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール及びトリグリセリドの低下や、全身肥満及び体重(Pramfalk C等、Biochim Biophys Acta1812:929-937)の低減を含むような重要な影響を与え、かつ肝臓の脂質代謝量を向上させることにより脂質含有量を低減することができる。Perra Aなどの研究結果により、T3は肝細胞脂肪変性を抑制し、かつ脂肪変性した肝細胞(Perra A等、FASEBJ 22:2981-2989)を修復することができることを示す。しかし、過剰の甲状腺ホルモンは副作用を引き起こしやすく、副作用は甲状腺刺激ホルモン(TSH)、心臓及び骨及び筋肉の有害反応(Braverman LE等、editors. Lippincott: The Thyroid 2000:515-517)及び肝機能の損傷を含み、それによってALT、AST及びGGTなどの肝酵素の上昇をもたらす。甲状腺刺激ホルモン(TSH)は腺下垂体から分泌されたホルモンである。甲状腺刺激ホルモンの腺下垂体からの分泌は、視床下部から分泌された甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)によって促進されることによって影響される一方、甲状腺ホルモンのフィードバックによって抑制されることによって影響される。両者は互いに拮抗し、視床下部-腺下垂体-甲状腺軸を構成する。
【0004】
TSHは主に甲状腺細胞の増殖、甲状腺血液供給及び甲状腺ホルモンの合成及び分泌を調節することを担当し、正常な甲状腺機能を維持するために最も重要な調節作用を果たす。垂体自体の疾患はTSHの合成及び放出に直接的に影響を与えることができる。甲状腺自身の原因により甲状腺ホルモン合成及び分泌が異常を引き起こす場合、垂直体TSHの分泌及び血清TSHレベルに影響を与える可能性もある。同様に、視床下部疾患がTRHの分泌に影響する場合に垂体のTSHの分泌と血清TSHレベルに影響を与えることもある。
【0005】
TSHの主な機能は甲状腺を制御することである。それは甲状腺ホルモンの合成、さらに生成された甲状腺ホルモンの血中の放出を促進することができる。それは甲状腺自身の成長及び新陳代謝に対して重要な役割を果たす。外因性の甲状腺ホルモンの体内への進入は、甲状腺ホルモンに甲状腺ホルモンのフィードバックと同様の抑制効果をもたらし、それによって甲状腺ホルモンの正常な分泌に影響を与え、甲状腺機能亢進現象、心拍数の増加又はTSHの低下の現象を引き起こしやすい。臨床において、一つの医薬品は心拍数を15%増加させかつTSHを30%低下させると、この医薬品が心臓及び甲状腺に副作用があることを説明する。文献の研究による実証によると、T3は心拍数の15%の増加を引き起こすED15及びTSH30%を抑制するED30と高コレステロールTCを低下させるED50との比はそれぞれ1.5及び0.4(GARY Jなど、Endocrinology 145(4):1656-1661)であるため、外因性甲状腺ホルモンは、良好な脂質低下と肝細胞脂肪変性を抑制する効果が現れるが、それは脂質代謝の臨床の調節又はNASH治療のための医薬品として適していない。甲状腺ホルモンのこれらの悪影響により、その脂質代謝及びNASH治療上のさらなる適用が制限される。甲状腺軸及び心臓及び他の臓器に対する甲状腺ホルモンの副作用を除去するか又は減少させることができれば、予測可能な治療効果を奏することができる。
【0006】
甲状腺ホルモンβ受容体アゴニストは、甲状腺ホルモンT3構造に基づいて改変された新たな化合物又はそれらの前駆体化合物である。甲状腺ホルモンは様々な組織における甲状腺ホルモン受容体TR-α及びTR-βとの結合により、機体の分化、発達及び代謝バランスを調節する。甲状腺ホルモンβ受容体アゴニストはTR-β1のサブタイプTR-β1に選択的に作用することができ、TR-αよりもTR-β1に対する親和性及び選択性が遥かに大きい。TR-β1は、ほとんどの組織に存在し、特に肝臓に存在し、心臓における分布が少ないため、肝臓及び脂肪組織における甲状腺ホルモンの作用を媒介する。甲状腺ホルモンT3構造に基づいて改変された新たな化合物又はそれらの前駆体化合物は甲状腺ホルモンの上記作用を維持し、かつ少ないTR-α及び肝臓機能に対する副作用を呈し、現在、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を治療する新薬の重要な開発分野である。
【0007】
NAFLD又はNASHを治療するための医薬品の副作用を減少させるために、バイオ医学分野において新たな薬を開発する緊急な必要性がある。該新薬は、他の組織に対応する副作用を招くことがなく、甲状腺ホルモンの肝臓内での脂質代謝作用を維持することができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一つの目的は甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物を製造する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物の適用を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物を含む医薬組成物を提供することである。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、式(1)に示される化合物である、甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物を提供する。
【0013】
式(1)
【化1】
(ここで、nは1-10の整数であり、好ましくは1-3の整数であり、Xはカルボニル基であり、Yはアミノ基又は酸素原子である。)
【0014】
本発明の一実施形態において、式(1)に示される化合物は好ましくは化合物GBL-0603である。
【化2】
外因性甲状腺ホルモンは体内に入り、全身に分布し、甲状腺軸、心臓、筋肉、骨及び肝臓機能に対する副作用を引き起こす。
【0015】
N-アセチルガラクトサミンは、肝臓におけるアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR、肝細胞特異的発現の受容体)に対して高い親和性を有し、ガラクトサミンを含有する構造を持つ化合物を肝臓への能動的活性化にし、甲状腺ホルモンβ受容体アゴニストを、それ自体が高いTR-β1の親和性及び選択性を有する上、さらに肝臓への能動的活性化にし、さらに他の組織の分布を減少させ、その副作用を減少させることができる。
【0016】
本発明によって提供される甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物は、左側末端に三つのガラクトサミン構造が含まれ、右側末端がT3類似構造であり、エステル化又はアミド化によって接続されることで、化合物全体は、肝臓への標的化にして甲状腺ホルモンβ受容体アゴニストを維持する作用を有するだけでなく、副作用の発生を最大限に減少させる。
【0017】
本発明の別の態様は、化合物Aと化合物B(中間体又は出発材料とする)との間にエステル又はアミド結合を形成させるステップを含む、甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物を製造する方法を提供する。
【化3】
(ここで、nは1-10の整数であり、好ましくは1-3の整数であり、Xは-COOHであり、Yはアミノ基又はヒドロキシ基であり、X及びYは他の化合物Aと化合物Bとの間にエステル又はアミド結合を形成させる他の基であってもよい。)
【0018】
本発明の他の態様は、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝及びその肝炎、アルコール性脂肪肝及びその肝炎、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、甲状腺機能低下症、甲状腺癌を含む甲状腺ホルモン調節による疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造における、甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物の適用を提供する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、前記疾患は非アルコール性脂肪性肝及びその肝炎である。
【0020】
本発明のさらなる態様は、甲状腺ホルモン調節による疾患を治療及び/又は予防するための医薬組成物を提供し、該医薬組成物は、治療有効量の上記の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物及び任意に薬学的に許容可能な補助材料を含み、前記薬学的に許容可能な補助材料は、中鎖脂肪酸ナトリウム塩、コール酸塩、シクロデキストリン及びその誘導体、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー及びメルカプト化ポリマーである腸管吸収促進剤を含む。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記中鎖脂肪酸ナトリウム塩はデカン酸ナトリウムであり、好ましくは、前記甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物とデカン酸ナトリウムの重量比率は1:0.2~1:0.75である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、前記医薬組成物の剤形は注射剤、又は即放性又は徐放性の経口製剤である。
【0023】
本発明によって提供される化合物又は医薬組成物は、ヒト及び動物を含む哺乳動物の臨床的使用に用いてもよく、口、鼻、皮膚、肺又は胃腸管等の経路により投与してもよい。最も好ましい投与経路は経口投与である。最も好ましい日用量は0.08-10mg/kg体重であり、1日1回で服用し、又は0.08-5mg/kg体重であり、1日数回服用する。どのような服用方法を採用しても、個人の最適な用量は具体的な治療計画に応じて決定されるべきである。一般的には小さな用量から、最適な用量を見つけるまで用量を徐々に増加させる。
【0024】
前記のように、本発明によって提供される甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物の利点が2つある。1)N-アセチルガラクトサミンを利用して肝臓細胞表面のアシアロ糖タンパク質受容体に対して肝臓に対する標的性を高く強化し、それが他の組織での分布を減少させる。2)T3構造類似体を利用してTR-βに対する高親和性作用を有し、さらに不必要な副作用を低減する。両者を一つの完全な化合物に組み合わせ、それを肝臓細胞に特異的に進入して甲状腺ホルモン受容体アゴニストの作用を発揮し、脂質代謝を調節し、肝臓脂肪の変化及び炎症を逆転させ、肝線維症を緩和することができる。
【0025】
従来の技術に比べて、本発明によって提供される甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物の技術的効果は以下のとおりである。
【0026】
現在、国内外の臨床では正式にNAFLDやNASHの治療に用いられる薬はない。本発明によって提供される甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物は甲状腺ホルモンβ受容体の特性を有し、さらに肝臓への能動的標的化にし、外因性甲状腺ホルモン及び早期甲状腺ホルモンβ受容体アゴニストがβ1受容体に対して高い選択性を有するが、それらに甲状腺軸、心臓、筋肉、骨及び肝機能に対する副作用が存在するという欠陥を克服し、市場潜在力のある医薬品である。本発明によって提供される化合物GBL-0603はdb/dbマウス血清のコレステロール(CHO)、低密度リポタンパク質(LDL)、トリグリセリド(TG)(図3、8)を効果的に低減することができるとともに、化合物GBL-0603はdb/dbマウス肝内のCHO及びTGを低減することができる(図4、9)。病理組織検査は、肝臓内の脂肪病変が用量の増加に伴って改善されたことを示す(図5)。db/dbと正常マウスにいずれも心臓、骨密度、骨のミネラル含有量への影響が現れない(図6、10、11、12)。化合物GBL-0603はdb/dbマウス肝臓の重量を明らかに減少させることができる。また、本発明者の早期発明の化合物Kylo-0101に比べて、新たに開発された化合物GBL-0603の肝臓機能への影響はより軽微である(図15、16)。各用量におけるGBL-0603の甲状腺軸の各指標は明らかに変動しない(図17)。
【0027】
本発明の目的、技術案及び有益な効果をより明確にするために、本発明は以下のような図面の簡単な説明を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】化合物Bの高分解能質量スペクトルである。
図2】化合物GBL-0603の高分解能質量スペクトルである。
図3】実施例2におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス血清中のCHO、TG及びLDLCの低減の効果図である。
図4】実施例2におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス肝臓組織細胞内のCHO及びTGの低減の効果図である。
図5】実施例2におけるGBL-0603によるHE染色の肝臓切片の病理組織学的変化の例示図である。
図6】実施例2におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス心臓重量への影響の図である。
図7】実施例2におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス肝臓重量への影響の図である。
図8】実施例3におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス血清中のCHO、TG及びLDLCへの影響の図である。
図9】実施例3におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス肝臓中のCHO及びTGへの影響の図である。
図10】実施例4におけるGBL-0603による正常マウスの骨密度への影響の図である。
図11】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス骨ミネラル量への影響の図である。
図12】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス心臓重量への影響の図である。
図13】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス肝臓重量への影響の図である。
図14】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス体重への影響の図である。
図15】実施例4におけるGBL-0603による正常なマウス肝機能への影響の図である。
図16】実施例4におけるKylo-0101による正常なマウス肝機能への影響の図である。
図17】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス血清中のT3、fT3、T4、fT4、TSHへの影響の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の実施例は本発明によって開示されるいくつかの実施形態を説明するが、これらに限定されるものではない。また、具体的な実施形態を提供する場合、本発明者はそれらの具体的な実施形態の適用、例えば異なる肝源性疾患の治療のための、具体的な同類又は類似の化学構造を有する化合物の適用を予測する。
【0030】
説明:
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール;
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;
Pd/C:パラジウム炭素触媒;
TBTU:O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート;
DCM:ジクロロメタン;
NBS:N-ブロモスクシンイミド;
n-BuLi:n-ブチルリチウム;
TIPSCl:トリイソプロピルクロロシラン;
THF:テトラヒドロフラン;
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル;
TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオリド。
【0031】
本発明に係る2種類の物質の比は、特に断りのない場合にいずれも体積比を指し、
本発明に係る含有量は、特に断りのない場合にいずれも体積パーセント濃度を指す。
【0032】
実施例1:化合物GBL-0603の製造
1、化合物Aの合成
1.1 化合物A-c1の合成
【化4】
反応フラスコ内にDMF(8mL)、cbz-6-アミノカプロン酸(24mg)、HOBt(21.6mg)、dlSANC-c12(84mg)及びDIPEA(53.5mg)を順に添加し、添加が完了し、室温で撹拌して一晩反応させ、TLCで検出し、反応が合格であれば、反応を停止し、後処理を行い、水を添加して焼き入れ、静止して相分離を行い、水相をDCMで3回、20mL/回で抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、カラムに通して精製し、白色固体72.8mgを得た。
【0033】
1.2 化合物Aの合成
【化5】
反応フラスコ内に化合物A-c1(72.8mg)、メタノール15mL、Pd/C(3.4mg)を順に加え、真空/水素置換を行い、置換が完了した後、Hを導入し、40℃で撹拌して1.0h反応させ、TLCで分析し、反応が合格であれば、反応を停止し、濾過してPd/Cを除去し、濾液を濃縮し、白色固体47mgを得た。
【0034】
2、化合物Bの合成
2.1 化合物B-c1の合成
【化6】
2-イソプロピルフェノール(30.3mg)を秤量し、アセトニトリルに溶解し(10mL)、NBS(34.2mg)を添加し、35℃で6h反応させた。反応液を濃縮し、さらに石油エーテル(50mL)に溶解し、濾過して不溶物を除去し、濾液をそれぞれ水(40mL)及びピリジン(40mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、回転蒸発し、得られた残留物(50.5mg)をアセトニトリル(40mL)に溶解し、無水炭酸カリウム(32.0mg)、臭化ベンジル(37.1mg)を加え、40℃で5h反応させた。冷却し、濾過し、カラムに通して化合物B-c1(63.1mg)を得た。
【0035】
2.2 化合物B-c2の合成
【化7】
化合物B-c1(63.1mg)を秤量し、無水THF(10mL)に溶解し、氷浴で冷却し、1.0mol/Lのn-BuLiのノルマルヘキサン溶液(5.0mL)を滴下し、3h反応させ、DMF(1.5mL)を滴下し、さらに3h反応させた。飽和塩化アンモニウム(5mL)を焼き入れ、酢酸エチルで抽出し(10mL)、ピリジン(10mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、カラムに通して化合物B-c2(33.4mg)を得た。
【0036】
2.3 化合物B-c3の合成
【化8】
4-ブロモ-3、5-ジメチルフェノール(30.8mg)を秤量し、ジクロロメタン(50mL)に溶解し、イミダゾール(18mg)を添加する。冷却し、TIPSCl(25.5mg)を滴下し、5h反応させた。さらにジクロロメタン(50mL)を加えて反応液を希釈し、有機相をそれぞれ水(50mL)とピリジン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発し、カラムに通して精製し、化合物B-c3(33.4mg)を得た。
【0037】
2.4 化合物B-c4の合成
【化9】
化合物B-c3(36.1mg)を秤量し、THF(60mL)に溶解し、氷浴で冷却し、1.0mol/Lのn-BuLiのノルマルヘキサン溶液(4mL)を滴下し、3h反応させた後に化合物B-c2(33.4mg)のTHF溶液(5mL)を滴下し、さらに3h反応させ、飽和塩化アンモニウム(20mL)を焼き入れ、酢酸エチル(20mL)で抽出し、ピリジン(30mL)で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、カラムに通して化合物B-c4(54.3mg)を得た。
【0038】
2.5 化合物Bの合成
【化10】
化合物B-c4(54.3mg)を秤量し、THF(50mL)に溶解し、1mol/LのTBAF溶液(3mL)を滴下し、TLCで表示反応が完了した後に酢酸エチル(50mL)を加え、水で洗浄し(20mL)、ピリジン(20mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、回転蒸発し、白色固体(23.3mg)を得て、DMF(5mL)に溶解し、冷却し、炭酸セシウム(40.4mg)を添加し、さらにブロモ酢酸ベンジル(15.9mg)を添加した。40℃で4h反応させた後に反応液をMTBEで希釈し(10mL)、濾過し、水(20mL)を加え、水相をMTBE(20mL*2)で抽出し、ピリジン(20mL)で洗浄して合わせた有機相を得た。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発し、カラムに通し、それを酢酸(5mL)に溶解し、触媒を10% Pd/C(0.2g)添加し、室温で水素化して一晩反応させ、濾過し、回転蒸発し、カラムに通して淡黄色の固体化合物B(15mg)を得て、化合物Bの高分解能質量スペクトルは図1に示すとおりである。
【0039】
3、GBL-0603の合成
3.1 GBL-0603-c1の合成
【化11】
反応フラスコ内にDMF(3.0mL)、化合物B(15mg)、TBTU(8.47mg)及びDIPEA(20.2mg)を順に加え、6h反応させた。そして、化合物A(47mg)を迅速に添加し、室温で2h撹拌した。HPLCで検出し、反応が合格であれば、反応が終了した。
【0040】
3.2 GBL-0603の合成
【化12】
GBL-0603-c1反応液をHPLCインプロセスコントロールより検出して合格した後、氷浴条件下で、1.0mol/Lのアンモニア水溶液で反応液のpH値を8-10に調節する。料液のpH値が合格した後、氷浴を撤去し、室温で撹拌し、半時間反応させてHPLCインプロセスコントロールより分析を行い、反応が合格して、氷酢酸調製液のpH値が7.0であり、調製液のpH値が合格した後、濃縮し、反応液中のDMFを留去し、濃縮残留物を35%アセトニトリル/水で溶解し、濾過し、凍結乾燥し、29.47mgの凍結乾燥品を得た。GBL-0603の高分解能質量スペクトルは図2に示すとおりである。
【0041】
実施例2: GBL-0603によるdbマウス脂質代謝作用への影響の効果的研究
実験動物と飼育:
雄性、7週齢(BKS-db)遺伝子肥満マウスモデル30匹を選択する。実験前のマウスをまず環境に一週間適応させる必要があり、健全マウスを試験動物として選択した。IVCケージ飼育し、飼育密度は5匹/ケージであり、1週あたりマットを2回交換した。実験動物室へ要求:室温22~24℃、相対湿度40~70%、自動照明、12h明暗交替(08時00分点灯、20時00分消灯)、実験動物室標準は中華人民共和国国家標準GB 14925-2010に合致する。
【0042】
医薬品の調製方法:
GBL-0603 210mgを正確に秤量し、35mLの溶媒に溶解し、6mg/mL母液に調製し、各用量群は順に該母液を使用してそれぞれ3倍、10倍、30倍、66.7倍希釈した後に同じ投与量で投与した。3日ごとに1回のGBL-0603母液を調製した。母液を調製した後に4℃で保存して使用に備えた。
【0043】
群分けと投与プロトコル:
【表1】
【0044】
実験操作:
実験開始前に、採血は各群のマウスの総コレステロール(CHO)を検出し、体重を秤量して体重に基づいてランダムに群分けした。投与期間に毎日マウスの体重を秤量した。最後に投与した後に6h断食し、各群のマウスを安楽死させ、心臓から採血し、血清を分離し、血清中のトリグリセリド(TG)、総コレステロール(CHO)、低密度リポタンパク質(LDLC)、ALT及びASTレベルを検出した。採血後、肝臓重量を秤量し、各群のマウス肝臓中葉の一部を液体窒素で急速冷凍し、-80℃で保存して使用に備えた。またマウス肝臓中葉を固定した後にパラフィンで包埋した。心臓を取って心臓重量を秤量した。肝組織におけるCHO及びTGの含有量を検出した。肝組織病理学的検出:全てのマウスをスライスしHE染色し、投与前後の肝細胞脂肪化、炎症化及び風船様変性を対照する。
【0045】
実施例3:促進剤としてデカン酸ナトリウムを添加する薬効の研究
動物飼育は実施例2と同じである。群分けと投与プロトコルは以下のとおりである:
【0046】
【表2】
備考:薬剤A処方にはデカン酸ナトリウムを添加せず、B及びC処方にそれぞれ20%及び75%の主薬重量のデカン酸ナトリウムを添加する。
【0047】
実験操作:
G2/G3/G4は医薬品の重量に応じて溶剤体積を計算し、溶剤を添加し、繰り返してスクロールし、完全に溶解した後に使用した。調製が完了した後、一時間内に投与を完了した。
【0048】
実験開始前に、体重を秤量して体重に基づいてランダムに群分けした。最後に投与した後に6h断食し、各群のマウスを安楽死させ、心臓から採血し、血清を分離し、血清中のトリグリセリド(TG)、総コレステロール(CHO)、低密度リポタンパク質(LDLC)を検出し、肝組織におけるCHO及びTGの含有量を検出した。
【0049】
実施例4:GBL-0603及びKylo-0101による正常なマウス及び肝酵素への影響の研究
66匹(雄雌各半)C57BL/6 Jマウス。群分けと投与プロトコルは下表に示すとおりである。
【0050】
【表3】
【0051】
実験操作:
実験開始前に、体重を秤量して体重に基づいてランダムに群分けした。投与期間に週一回にマウスの体重を秤量した。最後に投与した後に6h断食し、各群のマウスを安楽死させ、心臓から採血し、血清を分離し、血清中のブランク群及びGBL-0603投与群のT3、fT3、T4、fT4、TSHの含有量、骨密度、体重、肝臓及び心臓重量、肝酵素ALT、AST及びGGTを検出した。ブランク群とKylo-0101投与群の肝酵素ALT、AST及びGGTを検出した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2022-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)に示される化合物である、甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物である。
式(1)
【化1】
(ここで、nは1-10の整数であり、Xはカルボニル基であり、YはNH又は酸素原子である。)
【請求項2】
nは1-3の整数である、請求項1に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物。
【請求項3】
化合物GBL-0603である、請求項1又は2に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物。
【化2】
【請求項4】
化合物Aと化合物Bとの間にエステル又はアミド結合を形成させるステップを含む方法である、請求項1から3のいずれか1項に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物を製造する方法。
【化3】
(ここで、nは1-10の整数であり、X は-COOHであり、Yはアミノ基又はヒドロキシ基である。)
【請求項5】
nは1-3の整数である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
甲状腺ホルモン調節失調による疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造における、請求項1から3のいずれか1項に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物の適用。
【請求項7】
前記疾患は代謝性疾患である、請求項6に記載の適用。
【請求項8】
前記疾患は肥満、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性脂肪肝疾患、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、甲状腺機能低下症、又は甲状腺癌である、請求項に記載の適用。
【請求項9】
前記疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患である、請求項に記載の適用。
【請求項10】
前記疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎又はアルコール性脂肪性肝炎である、請求項6に記載の適用。
【請求項11】
治療有効量の請求項1から3のいずれか1項に記載の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物及び任意の薬学的に許容可能な補助材料を含む、甲状腺ホルモン調節失調による疾患を治療及び/又は予防するための医薬組成物。
【請求項12】
前記薬学的に許容可能な補助材料は、中鎖脂肪酸ナトリウム塩、コール酸塩、シクロデキストリン、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー又はメルカプト化ポリマーである腸管吸収促進剤を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記中鎖脂肪酸ナトリウム塩はデカン酸ナトリウムである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物とデカン酸ナトリウムとの重量の比は1:0.2~1:0.75である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物の剤形は、注射剤、又は即放性又は徐放性の経口製剤である、請求項11から14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
慢性肝疾患として、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は肝細胞内脂質の過度な蓄積、主にトリグリセリド(TG)の過度な蓄積を特徴としている。NAFLDの病変過程は一連の肝臓の病理変化を含み、肝細胞内の簡単なトリグリセリド蓄積(肝脂肪変性)から炎症性及び肝細胞のバルーン性損傷から、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に発展し、最終的に肝線維症及び肝硬変をもたらす。脂肪変性の脂肪性肝炎への転換の正確なメカニズムはまだ明らかではない。ダブルヒットの仮説がある。第一ヒットは、肝細胞におけるTGの蓄積に関与し、代謝機能障害の悪性ループをもたらす。肝脂肪変性の存在が確定されると、酸化ストレスが重要な役割を果たす第二ヒットに関わる脂肪性肝炎が進行する。現在NAFLD/NASHは世界的な範囲内でますます一般的になっている慢性肝疾患であり、かつ若年化する傾向がある。公開情報は、NAFLDの世界的な発性率が15%~30%であり、そのうち10%~20%がNASHになることを示す。不完全な統計によると、2016年、中国では、NAFLDは約2.4億人いるが、2030年までに、NAFLDは約3.1億人まで増加し、そのうち肝硬変の患者は約230万に達すると予想される。米国の雑誌「ネイチャー」の2017年の記事によると、NASHは既に慢性C型肝炎に続いて肝臓移植の第二の要因となり、かつ2020年に追越しを実現することが予想され、アメリカの肝臓移植の主な要因になる。このような局面をもたらす主な要因は、現在のNASHに公認の薬理学的治療方法がないこと、及び、人々がこのような疾患を重視しないことである。現在、NASHの既知の主な発症要因は肥満、2型糖尿病、高脂血症及び高血圧等の代謝症候群を含む。グローバルには該適応症に対する治療薬がまだ登場を承認されていない。現在治療介入の方法は主に食事及び運動を含む生活様式の変化に基づいたものであるが、効果が明らかではない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
式(1)
【化1】
(ここで、nは1-10の整数であり、好ましくは1-3の整数であり、Xはカルボニル基であり、YはNH又は酸素原子である。)
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明の他の態様は、代謝性疾患、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性脂肪疾患、アルコール性脂肪性肝炎、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、甲状腺機能低下症、甲状腺癌を含む甲状腺ホルモン調節失調による疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造における、甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物の適用を提供する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、前記疾患は非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明のさらなる態様は、甲状腺ホルモン調節失調による疾患を治療及び/又は予防するための医薬組成物を提供し、該医薬組成物は、治療有効量の上記の甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物及び任意に薬学的に許容可能な補助材料を含み、前記薬学的に許容可能な補助材料は、中鎖脂肪酸ナトリウム塩、コール酸塩、シクロデキストリン及びその誘導体、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー及びメルカプト化ポリマーである腸管吸収促進剤を含む。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明の一実施形態において、前記中鎖脂肪酸ナトリウム塩はデカン酸ナトリウムであり、好ましくは、前記甲状腺ホルモン受容体アゴニスト特性を有する肝臓標的化合物とデカン酸ナトリウムの重量は1:0.2~1:0.75である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
図1】化合物Bの高分解能質量スペクトルである。
図2】化合物GBL-0603の高分解能質量スペクトルである。
図3】実施例2におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス血清中のCHO、TG及びLDLCの低減の効果図である。
図4】実施例2におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス肝臓組織細胞内のCHO及びTGの低減の効果図である。
図5】実施例2におけるGBL-0603によるHE染色の肝臓切片の病理組織学的変化の例示図である。
図6】実施例2におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス心臓重量への影響の図である。
図7】実施例2におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス肝臓重量への影響の図である。
図8】実施例3におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス血清中のCHO、TG及びLDLCへの影響の図である。
図9】実施例3におけるGBL-0603によるdb/db肥満モデルマウス肝臓中のCHO及びTGへの影響の図である。
図10】実施例4におけるGBL-0603による正常マウスの骨密度への影響の図である。
図11】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス骨ミネラル量への影響の図である。
図12】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス心臓重量への影響の図である。
図13】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス肝臓重量への影響の図である。
図14】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス体重への影響の図である。
図15】実施例4におけるGBL-0603による正常なマウス肝機能への影響の図である。
図16】実施例4におけるKylo-0101による正常なマウス肝機能への影響の図である。
図17】実施例4におけるGBL-0603による正常マウス血清中のT3、fT3、T4、fT4、TSHへの影響の図である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
実験操作:
実験開始前に、採血は各群のマウスの総コレステロール(CHO)を検出し、体重を秤量して体重に基づいてランダムに群分けした。投与期間に毎日マウスの体重を秤量した。最後に投与した後に6h断食し、各群のマウスを安楽死させ、心臓から採血し、血清を分離し、血清中のトリグリセリド(TG)、総コレステロール(CHO)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDLC)、ALT及びASTレベルを検出した。採血後、肝臓重量を秤量し、各群のマウス肝臓中葉の一部を液体窒素で急速冷凍し、-80℃で保存して使用に備えた。またマウス肝臓中葉を固定した後にパラフィンで包埋した。心臓を取って心臓重量を秤量した。肝組織におけるCHO及びTGの含有量を検出した。肝組織病理学的検出:全てのマウスをスライスしHE染色し、投与前後の肝細胞脂肪化、炎症化及び風船様変性を対照する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
実験開始前に、体重を秤量して体重に基づいてランダムに群分けした。最後に投与した後に6h断食し、各群のマウスを安楽死させ、心臓から採血し、血清を分離し、血清中のトリグリセリド(TG)、総コレステロール(CHO)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDLC)を検出し、肝組織におけるCHO及びTGの含有量を検出した。
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【手続補正13】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【手続補正14】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【手続補正15】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正の内容】
図8
【手続補正16】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正の内容】
図9
【国際調査報告】