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特表2023-500999真性プロセス信号に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタのオンライン検出方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-17
(54)【発明の名称】真性プロセス信号に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタのオンライン検出方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/25 20060101AFI20230110BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B23K11/25
B23K11/11
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544211
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2021070543
(87)【国際公開番号】W WO2021147681
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】202010064515.3
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】800 Dongchuan Rd.,Minhang District,Shanghai,200240,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】夏 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】沈 衍
(72)【発明者】
【氏名】李 永兵
(72)【発明者】
【氏名】雷 海洋
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165AA01
4E165AA12
4E165AA13
4E165AA14
4E165BB21
4E165CA13
4E165CA22
4E165CA24
4E165CA25
4E165EA14
(57)【要約】
真性プロセス信号に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタのオンライン検出方法であって、溶接プロセスにおいて、2つの電極キャップに設けられたセンサから出力される真性プロセス信号および電流信号をリアルタイムに取得して時間の経過に伴って変化する関係図を構築し、関係図に基づいてスパッタの判定を行って、スパッタの回数および単一特徴量を求め、さらにこれらを組み合わせてスパッタプロセスにおける累積特徴量を求めることと、累積特徴量および電極キャップの形態特徴量に基づいて、スパッタリング金属の体積を算出することによりスパッタリング金属の質量の予測値を求めることと、を含む。本発明によれば、抵抗スポット溶接における真性プロセス信号に基づいてスパッタリング金属の質量をオンラインで予測でき、スポット溶接におけるスパッタの程度をオンラインで定量評価でき、手動検出に依存する従来技術のデメリットを解消でき、検出効率を大幅に向上できる。また、本発明によれば、電極キャップの形状違いによる影響を考慮しているため、適用性が高く、スパッタリング金属の質量の予測値と実測値との間で良好な線形相関関係を有し、検出精度が高い。さらに、本発明に係るスパッタのオンライン検出方法は、算出が速く、ハードウェアシステム要件が低く、あらゆるタイプの抵抗スポット溶接の応用シーンに適用できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真性プロセス信号に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタのオンライン検出方法であって、
溶接プロセスにおいて、2つの電極キャップに設けられたセンサから出力される真性プロセス信号および電流信号をリアルタイムに取得して時間の経過に伴って変化する関係図を構築し、関係図に基づいてスパッタの判定を行って、スパッタの回数および単一特徴量を求め、さらにこれらを組み合わせてスパッタプロセスにおける累積特徴量を求めることと、
前記累積特徴量および電極キャップの形態特徴量に基づいて、スパッタリング金属の体積を算出することによりスパッタリング金属の質量の予測値を求めることと、
を含み、
前記真性プロセス信号は、動的抵抗信号、動的電極圧力信号、動的電極変位信号、アコースティックエミッション信号および超音波信号を含み、
前記形態特徴量は、電極の底面直径、端面直径、端面曲率半径および頂部の円錐角度を含む、
方法。
【請求項2】
前記スパッタの判定は、通電溶接段階において、真性プロセス信号の時間に対する微分が予め設けられた閾値と等しい場合、スパッタが開始したと判定し、スパッタが開始したと判定された後、真性プロセス信号の時間に対する微分が再び予め設けられた閾値と等しい場合、スパッタが終了したと判定し、スパッタの開始時刻および終了時刻に対応する真性プロセス信号の振幅値の差分の絶対値を単一特徴量とすることであり、
1回のスポット溶接プロセスにおいて複数回のスパッタが発生した場合、複数の真性プロセス信号の単一特徴量を組み合わせて真性プロセス信号の累積特徴量を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スパッタリング金属の体積ΔVは、
前記電極キャップが湾曲面を備えるドーム型電極である場合、
【数1】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選択する補正係数、Rは電極キャップの端面曲率半径、Dは電極キャップの端面直径、Dは電極キャップの底面直径、ΔXは累積特徴量、hおよびhは特徴高さとして
【数2】
および
【数3】
によって算出され、
前記電極キャップが湾曲面を備えるテーパー型電極である場合、
【数4】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選択される補正係数、Rは電極キャップの端面曲率半径、Dは電極キャップの端面直径、ΔXは累積特徴量、hは特徴高さとして
【数5】
によって算出され、
前記電極キャップがボールヘッド型電極である場合、
【数6】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選択される補正係数、Dは電極キャップの底面直径、ΔXは累積特徴量であり、
前記電極キャップがフラットトップのストレート型電極である場合、
【数7】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選択される補正係数、Dは電極キャップの底面直径、ΔXは累積特徴量であり、
前記電極キャップがフラットテーパー型電極である場合、
【数8】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選ばれる補正係数、Dは電極キャップの端面直径、θは頂部の円錐角度、ΔXは累積特徴量であり、
前記電極キャップが湾曲面を備えるストレート型電極である場合、
【数9】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選ばれる補正係数、Dは電極キャップの底面直径、Rは電極キャップの端面曲率半径、ΔXは累積特徴量、hは特徴高さとして
【数10】
によって算出される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電極キャップは、円柱あるいは円柱とドーム型、テーパー型、ボールヘッド型、フラットテーパー型または湾曲面の頂面とを組み合わせた形状を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記関係図は、溶接電流の導通および終了の観点から3つの段階、具体的には、前加圧段階T、通電溶接段階T、後加圧段階Tに分けられ、前加圧段階Tは溶接電流が導通されるまで電極が閉じて被測定物をクランプする段階であり、通電溶接段階Tは溶接電流の導通から遮断されるまでの段階であり、後加圧段階Tは溶接電流が遮断されてから電極が開くまでの段階である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スパッタの判定は、
通電溶接段階において、真性プロセス信号の時間に対する微分が予め設けられた閾値Aと等しい場合、すなわち点Qiaにおいて閾値水平線と交差した場合、スパッタが開始したと判定し、点Qiaに対応する時刻を開始時刻tiaと記録し、スパッタが開始したと判定した後、真性プロセス信号の微分が再び閾値Aと等しい場合、すなわち点Qibにおいて閾値水平線と交差した場合、スパッタが終了したと判定し、点Qibに対応する時刻を終了時刻tibと記録し、溶接スパッタが1回発生したとしてFと記録する。ここで、iは1回のスポット溶接プロセスにおいて発生した第i回目のスパッタを示し、0≦i≦N、Nは電流の導通時刻から電流が遮断されるまで上記判定処理を繰り返した回数、すなわち1回のスポット溶接プロセスにおいて発生したスパッタの回数であるステップ(1)と、
通電溶接段階において、第i回目のスパッタFの開始時刻tiaと終了時刻tibに対応する真性プロセス信号点Pia、Pibを抽出し、点Pia、Pibに対応する信号の振幅値Xia、Xibを差分した絶対値を第i回目の溶接におけるスパッタの真性プロセス信号の特徴量、すなわち単一特徴量ΔXとし、すなわちΔX=Xia-Xibであり、1回のスポット溶接プロセスにおいてN回のスパッタが発生した場合、N個の真性プロセス信号特徴量ΔXを組み合わせて真性プロセス信号の累積特徴量ΔXを求めるステップ(2)と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実現するためのシステムであって、
計算および分析モジュールと、これにそれぞれ接続された電流信号取得モジュールおよび真性プロセス信号取得モジュールと、を含み、
前記電流信号取得モジュールは、電極キャップに設けられた電流センサに接続されて電流信号を取得し、
前記真性プロセス信号取得モジュールは、2つの電極キャップのそれぞれに設けられた真性プロセス信号センサに接続されて溶接プロセスにおける真性プロセス信号を取得し、
前記計算および分析モジュールは、真性プロセス信号および電流信号に基づいてスパッタリング金属の質量の予測値を算出する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接の技術分野に関し、具体的には、真性プロセス信号(Intrinsic Process Signal)に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタ(SPATTER)のオンライン検出方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
全鋼製車体溶接作業の90%以上は、抵抗スポット溶接プロセスにおいて完了される。スパッタは、車体の表面品質や位置決め精度、さらにはスポット溶接の接合部の機械的性質に影響を与える。従来技術では、手動による剥離方法でスパッタリング前後の質量差を測定することによりスパッタリング金属の質量を求めているが、このような方法は、作業負荷が高く、測定精度が低く、リアルタイムにオンラインで検出することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、低コスト、リアルタイム性、高精度、複数回のスパッタ検出に適し、溶接生産ラインに応用できる真性プロセス信号に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタのオンライン検出方法およびシステムを提供することを目的とする。
【0004】
上記目的を達成するための本発明に係る真性プロセス信号に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタのオンライン検出方法は、
溶接プロセスにおいて、2つの電極キャップに設けられたセンサから出力される真性プロセス信号および電流信号をリアルタイムに取得して時間の経過に伴って変化(経時変化)する関係図を構築し、関係図に基づいてスパッタの判定を行って、スパッタの回数および単一特徴量を求め、さらにこれらを組み合わせてスパッタプロセスにおける累積特徴量を求めることと、
累積特徴量および電極キャップの形態特徴量に基づいて、スパッタリング金属の体積を算出することによりスパッタリング金属の質量の予測値を求めることと、
を含む。
【0005】
前記真性プロセス信号は、動的抵抗信号、動的電極圧力信号、動的電極変位信号、アコースティックエミッション信号および超音波信号を含み、ここで、動的抵抗信号はスポット溶接プロセスにおける2つの電極間の時間の経過に伴って変化する抵抗値であり、動的電極圧力信号はスポット溶接プロセスにおける2つの電極間に施される時間の経過に伴って変化する圧力であり、動的電極変位信号はスポット溶接プロセスにおける2つの電極間の相対距離の変化を示し、アコースティックエミッション信号はスポット溶接プロセスにおける2つの電極を介して伝播されるひずみ波であり、超音波信号はスポット溶接プロセスにおける空気を介して伝播される超音波である。
【0006】
前記電極キャップは、円柱あるいは円柱とドーム型、テーパー型、ボールヘッド型、フラットテーパー型または湾曲面の頂面とを組み合わせた形状を有し、前記電極キャップの形態特徴量は、電極の底面直径、端面直径、端面曲率半径および頂部の円錐角度を含む。
【0007】
前記スパッタの判定は、通電溶接段階において、真性プロセス信号の時間に対する微分が予め設けられた閾値と等しい場合、スパッタが開始したと判定し、スパッタが開始したと判定された後、真性プロセス信号の時間に対する微分が再び予め設けられた閾値と等しい場合、スパッタが終了したと判定し、スパッタの開始時刻および終了時刻に対応する真性プロセス信号の振幅値の差分の絶対値を単一特徴量とする。
【0008】
好ましくは、1回のスポット溶接プロセスにおいて複数回のスパッタが発生した場合、複数の真性プロセス信号の単一特徴量を組み合わせて真性プロセス信号の累積特徴量を求める。
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る上記方法を実現するためのシステムは、計算および分析モジュールと、これにそれぞれ接続された電流信号取得モジュールおよび真性プロセス信号取得モジュールと、を含み、
前記電流信号取得モジュールは、電極キャップに設けられた電流センサに接続されて電流信号を取得し、
前記真性プロセス信号取得モジュールは、2つの電極キャップのそれぞれに設けられた真性プロセス信号センサに接続されて溶接プロセスにおける真性プロセス信号を取得し、
前記計算および分析モジュールは、真性プロセス信号および電流信号に基づいてスパッタリング金属の質量の予測値を算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スポット溶接におけるスパッタの検出を主に目視や圧痕測定などの手作業に頼っている従来の溶接組立生産プロセスに起因する高作業負荷、低測定精度、リアルタイム性が悪いとの問題およびスパッタの程度のリアルタイム検出ができないことによるプロセスパラメータの最適化が困難である問題を全面的に解決できる。
【0011】
従来技術に比べて、本発明によれば、抵抗スポット溶接における真性プロセス信号および電流信号に基づいてスパッタリング金属の質量をリアルタイムに検出でき、スポット溶接におけるスパッタの程度をオンラインで定量評価でき、手動検出に依存する従来技術の問題を解決し、検出効率を大幅に向上できる。また、本発明によれば、電極キャップの形状違いによる影響を考慮しているため、適用性が高く、スパッタリング金属の質量の予測値と実測値との間で良好な線形相関関係を示しているため、高い検出精度を有する。さらに、本発明に係るスパッタのオンライン検出方法は、算出が速く、ハードウェアシステム要件が低く、あらゆるタイプの抵抗スポット溶接の応用シーンに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る方法のフローチャートである
図2】電極キャップを示す図であり、図において、aは湾曲面を備えるドーム型電極、bは湾曲面を備えるテーパー型電極、cはボールヘッド型電極、dはフラットトップのストレート型電極、eはフラットテーパー型電極、fは湾曲面を備えるストレート型電極、Dは電極キャップの底面直径、Dは端面直径、Rは端面曲率半径、θは頂部の円錐角度である。
図3】本発明に係るシステムを示す図であり、図において、1は電極キャップ、2は上部電極棒、3は下部電極棒、4は被測定物、5は電流センサ、6は上部電極真性プロセス信号センサ、7は下部電極真性プロセス信号センサ、8は真性プロセス信号取得モジュール、9は電流信号取得モジュール、10は計算および分析モジュール10である。
図4】抵抗スポット溶接における真性プロセス信号を段階に分けて処理することを示す図である。
図5】スパッタの判定およびスパッタの特徴量抽出を説明するための図である。
図6】実施形態1に係る動的電極変位信号の時間の経過に伴う変化を示す図である。
図7】実施形態1に係る予測されたスパッタリング金属の質量および実際に測定されたスパッタリング金属の質量の散布図であり、図において、破線は、線形回帰により得られるトレンド線である。
図8】実施形態2に係る動的電極変位信号の時間の経過に伴う変化を示す図である。
図9】実施形態2に係る予測されたスパッタリング金属の質量および実際に測定されたスパッタリング金属の質量の散布図であり、図において、破線は、線形回帰により得られたトレンド線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
図1に示すように、本実施形態に係る真性プロセス信号に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタのオンライン検出方法は、測定により電極キャップ1の形態特徴量を求め、続いて溶接を行い、溶接電流および真性プロセス信号を取得し、通電溶接段階における真性プロセス信号の時間の経過に伴う変化の関係図を構築し、関係図およびスパッタ判定基準に基づいてスパッタの回数を判断し、各回におけるスパッタの特徴量を抽出し組み合わせることによりスパッタプロセスにおける真性プロセス信号の累積特徴量を求め、該累積特徴量および電極キャップ1の形態特徴量に基づいてスパッタリング金属の体積を算出することによりスパッタリング金属の質量の予測値を求める。
【0014】
図2aに示すように、本実施形態に係る電極キャップ1は、湾曲面を備えるドーム型電極である。
【0015】
上記形態的特徴量は、電極の底面直径、端面直径、端面曲率半径および頂部の円錐角度を含む。
【0016】
上記真性プロセス信号は、動的抵抗信号、動的電極圧力信号、動的電極変位信号、アコースティックエミッション信号および超音波信号を含む。好ましくは、本実施形態において、動的電極変位信号を用いる。
【0017】
図3に示すように、本実施形態に係る真性プロセス信号に基づく抵抗スポット溶接におけるスパッタのオンライン検出システムは、計算および分析モジュール10と、これにそれぞれ接続された電流信号取得モジュール9および真性プロセス信号取得モジュール8と、を含み、電流信号取得モジュール9は、電極に設けられた電流センサ5に接続されて電流信号を取得し、真性プロセス信号取得モジュール8は、電極2、3に設けられた一対の真性プロセス信号センサ6、7のそれぞれに接続されて溶接プロセスにおける真性プロセス信号を取得し、計算および分析モジュール10は、真性プロセス信号および電流信号に基づいてスパッタリング金属の質量の予測値を算出する。
【0018】
上記電極キャップ1、上部電極棒2、上部電極真性プロセス信号センサ6はこの順で被測定物4の上面側に設けられ、電極キャップ1、下部電極棒3、下部電極真性プロセス信号センサ7はこの順で被測定物4の下面側に設けられ、下部電極棒3には電流センサ5が搭載されている。
【0019】
上記上部電極真性プロセス信号センサ6は、グレーティング変位センサであり、上記下部電極真性プロセス信号センサ7は、レーザ変位センサである。
【0020】
上記被測定物4は、板状部品、管状部品、棒状部品、釘状部品、ブロック状部品およびこれらの組み合わせであり、その材質は、鋼、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金、チタン合金およびこれらの組み合わせであってよい。
【0021】
上記電流センサ5は、ロゴスキーコイルである。
【0022】
上記計算および分析モジュール10は、マイクロプロセッサ、産業用制御機械、PLC、モニタリング機器、溶接コントローラ、デスクトップパソコン、ノートパソコン、サーバまたはワークステーションを含む。本実施形態においては、溶接コントローラを用いる。
【0023】
図4に示すように、上記関係図は、溶接電流の導通および終了の観点から3つの段階、具体的には、前加圧(溶接前に予め圧力を加える)段階T、通電溶接段階T、後加圧(溶接後に圧力を保持する)段階Tに分けられ、前加圧段階Tは溶接電流が導通されるまで電極が閉じて被測定物4をクランプする段階であり、通電溶接段階Tは溶接電流の導通から遮断されるまでの段階であり、後加圧段階Tは溶接電流が遮断されてから電極が開くまでの段階である。
【0024】
図5に示すように、上記スパッタの判定は、具体的には以下のようなステップを含む。
(1)通電溶接段階において、真性プロセス信号の時間に対する微分が予め設けられた閾値Aと等しい場合、すなわち点Qiaにおいて閾値水平線と交差した場合、スパッタが開始したと判定し、点Qiaに対応する時刻を開始時刻tiaと記録し、スパッタが開始したと判定した後、真性プロセス信号の微分が再び閾値Aと等しい場合、すなわち点Qibにおいて閾値水平線と交差した場合、スパッタが終了したと判定し、点Qibに対応する時刻を終了時刻tibと記録し、溶接スパッタが1回発生したとしてFと記録する。ここで、iは1回のスポット溶接プロセスにおいて発生した第i回目のスパッタを示し、0≦i≦N、Nは電流の導通時刻から電流が遮断されるまで上記判定処理を繰り返した回数、すなわち1回のスポット溶接プロセスにおいて発生したスパッタの回数である。
【0025】
(2)通電溶接段階において、第i回目のスパッタFの開始時刻tiaと終了時刻tibに対応する真性プロセス信号点Pia、Pibを抽出し、点Pia、Pibに対応する信号の振幅値Xia、Xibを差分した絶対値を第i回目の溶接におけるスパッタの真性プロセス信号の特徴量、すなわち単一特徴量ΔXとし、すなわちΔX=Xia-Xibであり、1回のスポット溶接プロセスにおいてN回のスパッタが発生した場合、N個の真性プロセス信号特徴量ΔXを組み合わせて真性プロセス信号の累積特徴量ΔXを求める。
【0026】
上記組み合わせの方法は、N個のΔXの算数平均、二乗平均、幾何平均または加重平均を算出することを含み、好ましくは、本実施形態においては、幾何平均を算出する。
【0027】
図6に示すように、本実施形態においては、閾値Aを8μmとし、動的電極変位微分信号と閾値水平線との交差点に基づいてスパッタの開始時刻および終了時刻を判定し、スパッタの回数が1回であると判定してFと表記する。
【0028】
上記スパッタリング金属の体積について、スパッタリング金属の体積ΔVまたはスパッタリング金属の重量ΔMは、累積特徴量ΔXおよび電極の形態特徴量に基づいて算出され、ここで、スパッタリング金属の重量ΔMはスパッタリング金属の体積ΔVに正比例し、その比例係数は被測定物4の液状金属密度ρで、すなわち、ΔM=ρΔVであり、
【数1】
であり、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選択される補正係数、Rは電極キャップの端面曲率半径、Dは電極キャップの端面直径、Dは電極キャップの底面直径、ΔXは累積特徴量、hおよびhは特徴高さであって、
【数2】
および
【数3】
である。
【0029】
補正係数Kを0.8μm-1とした場合,求められた累積特徴量を用いて溶接プロセスにおけるスパッタリング金属の体積ΔV
【数4】
を算出し,さらにΔM=ρΔVに基づいてスパッタリング金属の重量を算出する。
【0030】
本実施形態においては、電極キャップ1の電極キャップの端面曲率半径Rを50mm、電極キャップの端面直径Dを5mm、電極キャップの底面直径Dを16mm、金属密度ρを6.9Kg/mmとする。図7に示すように、本実施形態に係る予測されたスパッタリング金属の質量および実際に測定されたスパッタリング金属の質量の散布図を見ると、スパッタリング金属の質量の予測値と実測値との間で良好な線形相関関係があり、決定係数は0.9425で、二乗平均誤差は8mgで、予測精度が高い。また、スパッタリング金属の質量を予測する平均計算時間は0.05sで、算出速度も速い。
【0031】
(実施形態2)
図2bに示すように、実施形態1と比較して、本実施形態に係る電極キャップ1は湾曲面を備えるテーパー型電極であり、好ましくは真性プロセス信号として動的電極圧力信号を用い、上部電極真性プロセス信号センサ6は重量センサ、下部電極真性プロセス信号センサ7は表面ひずみセンサ、電流センサ5はホール電流センサ5、計算および分析モジュール10はモニタリング機器を用いる。
【0032】
図8に示すように、本実施形態においては、閾値Aを30Nに設け、動的電極圧力微分信号と閾値水平線との交差点に基づいてスパッタの開始時刻および終了時刻を判定し、スパッタの回数が1回であると判定しFと表記し、求められた累積特徴量を用いて溶接プロセスにおけるスパッタ金属の体積ΔVは
【数5】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選択される補正係数、Rは電極キャップの端面曲率半径、Dは電極キャップの端面直径、Dは電極キャップの底面直径、ΔXは累積特徴量、hは特徴高さとして
【数6】
によって算出され、さらに、ΔM=ρΔVに基づいてスパッタリング金属の重量ΔMを算出する。
【0033】
本実施形態において、補正係数Kを4N-1とし、電極キャップ1の電極キャップの端面曲率半径Rを50mm、電極キャップの端面直径Dを5mm、頂部の円錐角度θを75°、電極キャップの底面直径Dを16mm、金属密度ρを6.9Kg/mmとする。図9に示すように、本実施形態に係る予測されたスパッタリング金属の質量および実際に測定されたスパッタリング金属の質量の散布図を見ると、スパッタリング金属の質量の予測値と実測値との間で良好な線形相関関係があり、決定係数は0.9794で、二乗平均誤差7.6mgで、予測精度が高い。また、スパッタリング金属の質量を予測する平均計算時間は0.06sで、計算速度も速い。
【0034】
(実施形態3)
図2cに示すように、実施形態1と比較して、本実施形態に係る電極キャップ1はボールヘッド型電極であり、電極キャップ1の底面直径Dを測定する必要があり、スパッタリング金属の体積ΔVは
【数7】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選択される補正係数である。
【0035】
(実施形態4)
図2dに示すように、実施形態1と比較して、本実施形態に係る電極キャップ1はフラットトップのストレート型電極であり、電極キャップ1の底面直径Dを測定する必要があり、スパッタリング金属の体積ΔVは
【数8】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選択される補正係数である。
【0036】
(実施形態5)
図2eに示すように、実施形態1と比較して、本実施形態に係る電極キャップ1はフラットテーパー型電極であり、電極キャップ1の底面直径D、端部直径Dおよび頂部の円錐角度θを測定する必要があり、スパッタリング金属の体積ΔVは
【数9】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選ばれる補正係数である。
【0037】
(実施形態6)
図2fに示すように、実施形態1と比較して、本実施形態に係る電極キャップ1は湾曲面を備えるストレート型電極であり、電極キャップ1の底面直径Dおよび端面曲率半径Rを測定する必要があり、スパッタリング金属の体積ΔVは
【数10】
によって算出され、ここで、Kは異なる真性プロセス信号に応じて選ばれる補正係数であり、hは特徴高さとして
【数11】
によって算出される。
【0038】
従来技術に比べて、本発明によれば、電極キャップの特徴量および抵抗スポット溶接における真性プロセス信号の特徴量のスパッタリング質量の計算式に基づいて、スパッタリング金属の質量をリアルタイムに予測するため、スポット溶接におけるスパッタの程度をオンラインで定量評価でき、手動検出に依存する従来技術のデメリットを解消できる。また、目視や圧痕測定などの手作業に頼っている従来方法に比べて、本発明によれば、スパッタの程度を自動測定でき、測定効率や精度が著しく向上されるとともに計算速度が速く、ハードウェアシステム要件が低いため、あらゆるタイプの抵抗スポット溶接の応用シーンに適用できる。さらに、異なる電極キャップの形状による影響を考慮しているため、適用性が強く、スパッタリング金属質量の予測値と実測値との間で良好な線形相関関係を示し、高い検出精度を有する。
【0039】
上記らの具体的な実施形態は、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内において、いわゆる当業者が異なる方法によって一部について改良できる。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められ、上記らの具体的な実施形態に制限されず、その範囲に含まれる様々な実施形態はいずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】