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特表2023-501036輸液システムの点滴チャンバ用プライミング装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】輸液システムの点滴チャンバ用プライミング装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/162 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A61M5/162 500V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505316
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 US2020043776
(87)【国際公開番号】W WO2021021756
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/879,262
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518363565
【氏名又は名称】モバイル アイ.ヴィ. システムズ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Mobile I.V. Systems, LLC
【住所又は居所原語表記】22730 Seneca Circle, Chugiak, AK 99567, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェロルド グーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ゲスラー
(72)【発明者】
【氏名】デール コンスタブル
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066EE10
4C066FF09
4C066MM04
4C066QQ15
(57)【要約】
輸液チューブセットの点滴チャンバのプライミング装置を記載する。プライミング装置は、点滴チャンバの入口側に取り付けられたまたはこれと一体的に形成された点滴チャンバキャップのような本体のキャビティに組み込まれていてよい。プライミング装置は、少なくともその一部が本体のキャビティに受容される閉鎖機構を含む。キャビティは、本体(例えば、点滴チャンバキャップ)を通る流出通路またはベント通路の一部であり、閉鎖機構は、例えば、ユーザの力に応答して流出通路が選択的に開放されるように作動可能であり、それによって周囲空気に対するベントキャビティの封止が解除され、かつ点滴チャンバのプライミング中に流体システムから空気をパージすることができる。閉鎖機構が閉鎖位置にあるとき、流出通路およびベントキャビティは周囲空気から封止され、それにより空気がキャップを通して流体システムへ入ることが防止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IVバッグに接続された点滴チャンバのプライミング装置であって、
前記点滴チャンバに結合されて該点滴チャンバの入口を覆うように構成された点滴チャンバキャップであって、遠位開口部と、前記点滴チャンバキャップの近位側にある第1の近位開口部と、前記遠位開口部を前記第1の近位開口部に接続して前記点滴チャンバの内部にIV流体を通すための流体通路と、を含む、点滴チャンバキャップと、
前記点滴チャンバキャップ内に形成されたベントキャビティであって、前記キャップの前記近位側にある第2の近位開口部および周囲空気に開口しているベント出口と流体連通している、ベントキャビティと、
ユーザの力の操作によって前記ベント出口を選択的に開放および封止する手段であって、該手段によって前記ベント出口が封止されると、前記ベントキャビティへの周囲空気の進入が防止される、手段と
を備える装置。
【請求項2】
前記手段は封止部を含み、該封止部は前記ベントキャビティ内にあり、かつ前記ベント出口に向かって付勢されることによって前記ベント出口が封止され、前記手段は、前記封止部の少なくとも一部を前記ベント出口から離れるように一時的に移動させることで前記ベント出口が開放されるように構成されたアクチュエータをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記封止部はOリングを含み、前記アクチュエータは、前記Oリングを前記ベント出口から離れるように平行移動させることで前記ベント出口が開放されるように構成されている、請求項4記載の装置。
【請求項4】
前記封止部は弾性部材を含み、該弾性部材のばね力によって前記封止部が前記ベント出口に向かって付勢されている、請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記弾性部材はシリコーン製である、請求項3記載の装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記封止部が前記ベントキャビティの基部に押し付けられることによって前記封止部の少なくとも一部が前記ベント出口から離れるように一時的に移動するように構成されている、請求項2記載の装置。
【請求項7】
前記ベント出口は、前記ベントキャビティを囲む環状保持具の中央開口部によって画定されており、前記アクチュエータは、前記環状保持具に対して移動するボタンを含み、該ボタンは、前記保持具によって前記ベントキャビティに保持される内部部分と、前記ベントキャビティの外部に位置する外部部分とを有する、請求項2記載の装置。
【請求項8】
前記ボタンは、前記中央開口部を通過する柱部と、前記キャビティ内の前記柱部の側面に接続された基部とを含み、前記基部は、前記中央開口部よりも広く、前記基部が前記封止部に係合することにより、前記封止部の少なくとも一部が前記ベント出口から離れるように移動して、前記ベント出口が開放される、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記基部は、前記ボタンの他のいずれの部分よりも広い、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記中央開口部はボアによって提供され、該ボアは、該ボアの長さに沿って可変の直径を有する、請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記ボアは、前記基部を受容する広径部分と、前記柱部を受容する狭径部分とを有する、請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記ボタンの前記外部部分の周囲にシュラウドをさらに備える、請求項7記載の装置。
【請求項13】
前記ボタンは、前記ボタンの表面に沿って少なくとも1つの長さ方向のベント溝を有する、請求項7記載の装置。
【請求項14】
前記封止部は、前記ベントキャビティの基部から前記環状保持具まで延在するエラストマー部材を含み、前記ボタンの前記基部は、前記エラストマー部材が押されて該エラストマー部材が前記ベントキャビティの前記基部に押し付けられることによって前記ベント出口が開放されるように構成されている、請求項7記載の装置。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の装置と、前記点滴チャンバと、前記点滴チャンバキャップの前記近位側に結合されたキャップフィルタアセンブリと、を備える、輸液チューブセット。
【請求項16】
前記キャップフィルタアセンブリは、それぞれ異なる構成を有する複数のキャップフィルタアセンブリのうちの別のキャップフィルタアセンブリと交換可能でありかつ取り外し可能に前記点滴チャンバキャップに結合されている、請求項15記載の輸液チューブセット。
【請求項17】
前記キャップフィルタアセンブリは、前記点滴チャンバキャップの前記近位側の環状キャビティ内に収容されている、請求項15記載の輸液チューブセット。
【請求項18】
前記点滴チャンバは、該点滴チャンバの任意の向きで静脈内に流体を送達するのに使用されるように構成されている、請求項15記載の輸液チューブセット。
【請求項19】
モジュールキットであって、該モジュールキットは、請求項1から14までのいずれか1項記載の装置と、前記点滴チャンバと、複数のキャップフィルタアセンブリとを備えており、前記複数の各キャップフィルタアセンブリは、サイズの異なる出口オリフィスを有し、前記複数の各キャップフィルタアセンブリは、前記点滴チャンバキャップの前記近位側に取り外し可能でかつ交換可能に結合されるように構成されており、前記モジュールキットは、複数の流入部材をさらに備えており、該複数の各流入部材は異なる構成を有しており、前記複数の各流入部材は、前記点滴チャンバキャップの前記遠位側に取り外し可能でかつ交換可能に結合されるように構成されている、モジュールキット。
【請求項20】
前記複数の各流入部材の近位端は、前記点滴チャンバキャップの前記遠位開口部の座部に挿入されて前記座部と摩擦的に係合するように構成されている、請求項19記載のモジュールキット。
【請求項21】
前記複数の流入部材のうち第1の流入部材は、尖っていない遠位端を含み、前記複数の流入部材のうち第2の流入部材は、その遠位端にスパイクを含む、請求項20記載のモジュールキット。
【請求項22】
輸液チューブセットの点滴チャンバのプライミング装置であって、
入口と、出口と、前記入口を前記出口に接続する流体通路と、を有する本体であって、該本体は、前記点滴チャンバに結合されることで、前記出口が前記点滴チャンバの内部と流体連通する状態で配置されるように構成されている、本体と、
前記本体のキャビティ内に収容された弁であって、該弁のキャビティは、弁入口を通じて前記点滴チャンバの内部と流体連通し、弁出口を通じて周囲空気と流体連通しており、前記弁は、ユーザによって作動されることで前記弁出口が選択的に開放および封止されるように構成されており、前記弁出口が封止されると、前記弁のキャビティは前記周囲空気から気密封止される、弁と、
を備える装置。
【請求項23】
前記弁は、前記弁出口に向かって押されることで該弁出口が封止されるように構成された封止部材と、該封止部材を前記弁出口から離れるように一時的にずらすことで前記弁が開放されるように構成されたアクチュエータと、を含む、請求項22記載の装置。
【請求項24】
前記アクチュエータはボタンを含み、該ボタンは、前記キャビティ内に移動可能に収容された基部と、前記基部より狭く、前記基部から前記弁出口を通って延在する柱部とを有する、請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記封止部は、前記弁出口に面する前記基部の側面に結合されている、請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記封止部は、前記弁出口とは反対の側の前記基部の側面に係合する、請求項24記載の装置。
【請求項27】
前記ボタンは、閉鎖位置に向かって付勢されている、請求項24記載の装置。
【請求項28】
前記ボタンは、前記封止部によって閉鎖位置に向かって付勢されている、請求項24記載の装置。
【請求項29】
前記本体の入口は、前記装置を静脈内(IV)流体バッグに接続するために前記本体と一体的に形成されたスパイクの尖った先端部に位置する、請求項22記載の装置。
【請求項30】
前記本体の出口および前記弁入口は、前記本体の同じ側にある、請求項22記載の装置。
【請求項31】
前記本体の出口と前記弁入口との間の前記流体経路内に位置するフィルタをさらに備える、請求項22記載の装置。
【請求項32】
輸液セットであって、
点滴チャンバであって、該点滴チャンバの内部に流体を供給するための点滴チャンバ入口を有する、点滴チャンバと、
前記点滴チャンバ入口を覆うキャップであって、該キャップはキャップ本体を含み、該キャップ本体は、前記キャップ本体の遠位側のキャップ入口と、前記キャップ本体の近位側のキャップ出口と、前記キャップ本体を通って延在しかつ前記キャップ入口を前記キャップ出口に接続する流体通路と、を画定する、キャップと、
前記キャップ本体のキャビティ内に収容された弁であって、前記キャビティは、前記キャップ本体の近位側の弁入口開口部を通じて前記点滴チャンバの内部と連通し、前記キャビティは、弁出口を通じて周囲空気と連通し、前記弁は、空気が前記弁出口を通過できる開放位置と、前記キャビティが前記周囲空気から気密封止される閉鎖位置との間でユーザによって作動可能な閉鎖機構を含む、弁と
を備える輸液セット。
【請求項33】
前記点滴チャンバは、前記点滴チャンバの任意の向きで静脈内に流体を送達するのに使用されるように構成されている、請求項32記載の輸液セット。
【請求項34】
前記点滴チャンバは、球状の本体部分とネック部とを含み、前記点滴チャンバの出口は、前記点滴チャンバが所定の充填レベルまで流体で満たされたときに、前記点滴チャンバの向きに関係なく流体に水没したままとなるように前記球状部分の内部に配置されている、請求項33記載の輸液セット。
【請求項35】
前記点滴チャンバは、実質的に剛性を示す材料から製造されている、請求項32記載の輸液セット。
【請求項36】
前記閉鎖機構は、前記閉鎖位置に向かって付勢されている、請求項32記載の輸液セット。
【請求項37】
前記閉鎖機構は、ボタンと、前記閉鎖機構が前記閉鎖位置にあるときに前記弁出口が封止されるように構成された封止部とを含み、該封止部は、前記ボタンの基部と前記弁出口との間に配置されている、請求項36記載の輸液セット。
【請求項38】
前記閉鎖機構は、ボタンと、前記閉鎖機構が前記閉鎖位置にあるときに前記弁出口が封止されるように構成された封止部とを含み、前記ボタンは、前記弁が開放位置にあるときに前記封止部を前記弁出口から離れる方向に圧縮する、請求項36記載の輸液セット。
【請求項39】
前記弁出口は、前記閉鎖機構の保持具の中央ボアによって画定され、前記保持具が前記キャビティの側壁を収容して前記側壁と摩擦的に係合することで、前記ボタンおよび前記封止部が前記キャビティ内に保持されている、請求項37または38記載の輸液セット。
【請求項40】
前記中央ボアの直径が該中央ボアの長さに沿って変化することにより、前記中央ボア内に前記基部の少なくとも一部が受容されている、請求項39記載の輸液セット。
【請求項41】
前記キャップ本体の遠位側からスパイクが延在している、請求項32記載の輸液セット。
【請求項42】
前記スパイクは、前記キャップ本体と一体化されている、請求項32記載の輸液セット。
【請求項43】
前記弁入口開口部に抗菌フィルタをさらに備える、請求項32記載の輸液セット。
【請求項44】
前記キャップ本体は、該キャップ本体の近位側に環状ボアを画定し、該環状ボア内に前記フィルタが設けられている、請求項43記載の輸液セット。
【請求項45】
前記フィルタは、前記環状ボア内に少なくとも部分的に収容されたフィルタ支持体に取り付けられている、請求項43記載の輸液セット。
【請求項46】
前記フィルタ支持体は、前記キャップ出口と位置合わせされており、かつ前記キャップ出口の直径とは異なる内径を有する中心管を含む、請求項45記載の輸液セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月26日に出願された米国仮出願第62/879,262号の優先権を主張し、その内容全体は、いかなる目的においても本明細書に援用されるものとする。
【0002】
本出願は、静脈内輸液チューブセットの点滴チャンバのプライミング装置を記載するものである。
【背景技術】
【0003】
静脈内(IV)療法とは、液体物質(例えば、ブドウ糖液、生理食塩水、液状の薬剤、生理的に許容される水性流体および血液または血漿)を直に静脈に送達することである。IV療法は、(注射器を用いた高圧での)注射によって行うことも、一般的に重力によって供給される圧力を利用し、通常はIV点滴と呼ばれる輸液によって行うことも可能である。IVラインは末梢ライン(PIV)として設定されるのが最も一般的であり、患者の腕、手、脚または足などの末梢静脈に流体が送達される。末梢ラインに対して禁忌であることにより、下大静脈や上大静脈などの胴体の太い中心静脈に流体を送達する中心IVラインの設置が必要となる場合がある。あるいは、上腕または脚の長骨の骨髄に直接輸液する骨間輸液によって流体を送達する場合もある。
【0004】
末梢IV(PIV)ラインのセットアップでは、末梢静脈カテーテル(PVC)、カニューレまたは大口径針を末梢静脈に挿入し、輸液チューブ/投与チューブセット(単にIVチューブセットとも呼ばれる)をPVC、カニューレまたは針に接続することが一般的である。ヒトの患者に流体を投与する場合、IVチューブセットは一般的に、通常は成人患者に使用されるマクロ点滴セット(例えば10~20滴/mLをいずれかに送達)と、通常は小児医療または新生児医療に使用されるマイクロ点滴セット(例えば約60滴/mLを送達)とのいずれかに分類される。IV流体はまた、例えば獣医学分野でヒト以外の被験者または患者に投与することも可能である。IV流体の投与は、様々な状況に望ましい場合があり、例えば治療の過程で、または予防的に、例えば労作後の回復を早め、脱水を防止するのに望ましい場合がある。IVチューブセットには一般的に、IVチューブと、IVチューブをIVバッグに接続するためのスパイクと、医療従事者が流体投与の速度を監視することを可能にする点滴チャンバとが含まれる。IVチューブは一般的に、可撓性の透明チューブであり、このチューブは、逆止弁と、1つ以上のアクセスポート(例えば、二次的薬剤の送達用)と、ローラクランプと、任意に二次チューブとを備えることができ、二次チューブは、YポートまたはYサイトを通じて一次チューブに接続可能である。
【0005】
IV療法は1900年代半ばから広く普及しているが、市販のIV輸液セットは数十年間ほぼ変化せず、それに伴うリスクや非効率性に対してはほとんど対処がなされていない。例えば、IV療法に伴う重大なリスクは空気塞栓症である。空気塞栓症は、空気が流体ラインを通って患者の循環系に入り込み、血管を閉塞させることに起因することがある。従来のチューブセットを使用する場合には、患者へのリスクを低減するために、患者への接続前にチューブセットをプライミングすること、IVバッグを挿入部位から少なくとも3フィート上方に保ち、点滴チャンバを常に垂直に保つことなどのセットアップやモニタリングの手順がいずれも必要となり得るが、遵守は困難であり、追加の装具および人員を必要とし、特に緊急対応のシナリオでは患者ケアの遅延を引き起こすおそれがある。戦場、テロリスト攻撃時、無差別発砲者緊急時などの高リスクのシナリオでは、これらの要件は、介護者および患者を危険にさらす不要なリスクを与えるおそれがある。さらに、適切/安全な使用のための従来の点滴チャンバの方向および位置に関する要件によって、患者または被験者に歩行制限が課される場合があるが、これは望ましくないかまたは達成が困難であることがある。したがって、IVチューブセットの設計者および製造者はその改善を追求し続けており、本明細書に記載される実施形態は、既存の解決策の制限のいくつかに対処し得るものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
総じて、本明細書に記載される実施形態は、IVバッグを含むIV輸液システムに関し、より具体的には、点滴チャンバのプライミング中に輸液システムから(例えば、バッグおよび点滴チャンバから)空気をパージするための装置に関する。IV流体は、静脈内(IV)流体(例えば、生理食塩水ベースのIV溶液、薬剤を含む流体、および/または血漿などの血液ベースの生成物)を含む可撓性の容器またはバッグから投与されることが多い。IVバッグは一般的に、IV流体を保持するバッグ内に封入されたある量の空気または他のガスを含んでおり、このガスは、流体中に残存しているかまたは流体の投与中に追加される。バッグ内のガスの種類は流体の種類に依存し得るが、空気という用語は、全体を通じて、空気、または輸液システム内(例えば、IVバッグ内)に存在し得る他の任意の種類のガスを指すために用いられる。この空気により、バッグを垂直に吊り下げた際に流体メニスカスによって体積を読み取ることが可能となる。本例による装置によって、プライミングプロセス中にIVバッグから実質的にすべての空気をパージすることが可能となり、これにより、点滴チャンバ出口の上流の流体システム内の空気の量が減少すると同時に、流体システム(例えば、IVバッグ)に空気が加えられることが防止され、これにより、空気が被験者(例えば、ヒトまたはヒト以外の患者)の血管を通るリスクが低減する。これに限定されるものではないが、本明細書の例は、加圧流体送達システムとの併用に好適であり、それにより外部圧力(例えば、圧力カフまたは手動で印加)がIVバッグに加えられて、このバッグから点滴チャンバへの流体の流れが促進される。
【0007】
いくつかの実施形態では、輸液チューブセットの点滴チャンバのプライミング装置は、入口と、出口と、入口を出口に接続する流体通路とを有する本体を備える。流体通路は、本体の入口から出口まで延在する単一または複数の通路によって実施可能である。本体は、点滴チャンバに結合されることで、出口が点滴チャンバの内部と流体連通する状態で配置されるように構成されている。いくつかの実施形態では、本体は、点滴チャンバの入口全体にわたって設けられることで、点滴チャンバの入口が封止されるように構成されている。したがって、本装置は、点滴チャンバキャップとして機能することができ、点滴チャンバキャップと呼ばれる場合がある。点滴チャンバキャップが点滴チャンバに接続されると、流体通路によって、IV流体をバッグから点滴チャンバに通すことが可能となる。本体は、キャップを通る二次(またはベント)通路をさらに画定することができ、この通路は、システム(例えば、点滴チャンバ)のプライミング中に流体システムから空気を吸引または排出するのに使用される。キャップを通じて流体システムに出入りする空気の流れを気密封止し、ひいてはこれを防止するための手段。この手段は、二次ベント通路と作動的に連結可能であり、ユーザによって操作可能である。この手段は、二次(ベント)通路の一部を形成する本体のキャビティへの周囲空気の流れが許容および遮断されるように構成された閉鎖機構を含む弁によって実施可能である。本装置のいくつかの実施形態では、閉鎖機構は、少なくとも部分的にキャビティ内に収容されており、このキャビティは、弁入口を通じて点滴チャンバの内部と流体連通し、弁出口を通じて周囲空気と流体連通している。弁(例えば、閉鎖機構)は、ユーザによって作動されることで弁出口が選択的に開放および封止されるように構成されており、弁出口が封止されると、キャビティは周囲空気から気密封止される。閉鎖機構は、ベントキャビティを周囲空気から気密封止するための任意の適切な手段を用いて実施可能である。閉鎖機構は、閉鎖機構のアクチュエータにユーザが力を加えることによって作動可能であり、このアクチュエータは、キャビティ内に作動的に配置された封止部材と係合して、閉鎖機構が閉鎖位置にあるときに弁出口を封止し、それによりキャビティを気密封止する。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、輸液セットは、点滴チャンバの内部に流体を供給するための点滴チャンバ入口を有する点滴チャンバと、点滴チャンバ入口を覆うキャップとを備え、このキャップは、キャップ本体によって提供されており、このキャップ本体は、キャップ本体の遠位側のキャップ入口と、キャップ本体の近位側のキャップ出口と、キャップ本体を通って延在し、かつキャップ入口をキャップ出口に接続する流体通路とを画定する。いくつかの実施形態では、キャップは、点滴チャンバとは別個に形成され、任意の適切な手段によって(例えば、プレス嵌めおよび/または接合可能なオス-メスカップリングなどのカップリングインターフェースによって)それに取り付けられる。いくつかの実施形態では、キャップ(例えば、キャップ本体)および点滴チャンバの少なくとも一部、例えば点滴チャンバの上部(例えば、上半分)は、一体形成可能である。
【0009】
本明細書の実施形態による輸液セットは、キャップ本体のキャビティ内に収容された弁をさらに備えることができ、キャビティは、キャップ本体の近位側の弁入口開口部を通じて点滴チャンバの内部と連通し、弁出口を通じて周囲空気と連通し、弁は、空気が弁出口を通過できる開放位置と、キャビティが周囲空気から気密封止される閉鎖位置との間でユーザによって作動可能な閉塞機構を含む。閉鎖機構は、閉鎖位置に向かって付勢されている。いくつかの実施形態では、閉鎖機構は、ボタンと、閉鎖機構が閉鎖位置にあるときに弁出口が封止されるように構成された封止部とを含む。封止部は、ボタンの基部と弁出口との間に配置可能である。他の実施形態では、ボタンは、弁が開放位置にあるときに封止部を弁出口から離れる方向に圧縮する。いくつかの実施形態では、出口は、閉鎖機構の保持具の中央ボアによって画定され、保持具がキャビティの側壁を収容してこれと摩擦的に係合することで、ボタンおよび封止部がキャビティ内に保持されている。いくつかの実施形態では、中央ボアの直径が中央ボアの長さに沿って変化することにより、中央ボア内に基部の少なくとも一部が受容されている。いくつかの実施形態では、キャップ本体の遠位側からスパイクが延在している。いくつかの実施形態では、スパイクは、キャップ本体と一体化されている。いくつかの実施形態では、輸液セットは、弁入口開口部に抗菌フィルタをさらに備える。いくつかの実施形態では、キャップ本体は、キャップ本体の近位側に環状ボアを画定し、環状ボア内にフィルタが設けられている。いくつかの実施形態では、フィルタは、環状ボア内に少なくとも部分的に収容されたフィルタ支持体に取り付けられている。いくつかの実施形態では、フィルタ支持体は、キャップ出口と位置合わせされており、かつキャップ出口の直径とは異なる内径を有する中心管を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、点滴チャンバは、点滴チャンバの任意の向きで静脈内に流体を送達するのに使用されるように構成された、全位置型点滴チャンバである。いくつかの実施形態では、点滴チャンバは、球状の本体部分とネック部とを含み、点滴チャンバの出口は、点滴チャンバが所定の充填レベルまで流体で満たされたときに、点滴チャンバの向きに関係なく流体に水没したままとなるように球状部分の内部に配置されている。いくつかの実施形態では、点滴チャンバは、実質的に剛性であり、例えば実質的に剛性を示すプラスチック材料から製造されている。
【0011】
本概要は、本開示の全内容および範囲を代表することを意図したものではなく、またそうしたものと解釈されるべきでもない。本開示は、本出願において様々なレベルで詳細に記載されており、特許請求の範囲に記載される主題の範囲に関するいかなる限定も、本概要における要素や構成要素などの包含または非包含のいずれかによって意図されるものではない。
【0012】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示の例を示し、上記で与えられる一般的な説明および下記で与えられる詳細な説明とともに、これらの例の原理を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】スパイクキャップを有する例示的な塞栓低減型点滴チャンバを示す図である。
図2】プライミング弁が第1の閉鎖構成にあることを示す、図1の線2-2での図1の点滴チャンバの断面図である。
図3図2と同様の断面図であるが、プライミング弁が第2の開放構成にあることを示す図である。
図4図1のスパイクキャップの断面図である。
図5図4のスパイクキャップの分解図である。
図6】A~Cは、本開示によるチューブセットの様々な構成を示す図であり、それぞれチューブセットの異なる位置に組み込まれたプライミング弁を含む図である。
図7】キャップ本体に一体化されたプライミング弁を有する点滴チャンバキャップの立面図である。
図8図7の線8-8での図7のキャップの断面図である。
図9】本開示のさらなる例によるスパイクキャップの立面図である。
図10図9の線10-10での図9のスパイクキャップの断面図である。
図11図10のスパイクキャップの拡大部分断面図である。
図12】フィルタ保持具の等角図である。
図13】本開示のさらなる例によるスパイクキャップの立面図である。
図14図13の線14-14での図13のスパイクキャップの断面図である。
図15】本開示のさらなる例によるボタンロックを含むスパイクキャップの立面図である。
図16】ボタンロックが係合位置またはロック位置にある、図15のスパイクキャップを示す図である。
図17】異なるフォームファクタの点滴チャンバと組み合わされる本開示のスパイクキャップを示す図である。
図18】複数の異なる流入部材と、プライミング装置が組み込まれた点滴チャンバキャップと、異なる構成の点滴チャンバを組み立てるための点滴チャンバ構成要素と、複数の異なる流出部材とを含む、IV投与チューブセット用のモジュールシステムを示す図である。
図19】本開示のさらなる例による点滴チャンバキャップに組み込まれたプライミング装置の分解図である。
図20図19の線20-20での図19のキャップの断面図である。
図21】プライミング弁の内部構成要素を示すためにキャップの一部を切り取った点滴チャンバアセンブリを示す図である。
図22】本開示のいくつかの例による輸液チューブセットを組み立てるためのプロセスのフロー図である。
図23】本開示のいくつかの例による輸液チューブセットの点滴チャンバをプライミングするためのプロセスのフロー図である。
図24】本開示によるプライミング装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
総じて、本明細書に記載される実施形態はIV輸液システムに関し、より詳細には、IVチューブセットおよびそれに関連する装置に関する。いくつかの実施形態では、輸液セット(例えば、IVチューブセット)は、塞栓低減型点滴チャンバであってもよいがそうである必要はない点滴チャンバと、点滴チャンバの入口を覆うキャップとを含むことができる。いくつかの実施形態では、キャップ本体は、点滴チャンバから(例えば、その上部から)別個に形成され、点滴チャンバの入口を覆うように点滴チャンバに好適に取り付けられていてよい。他の実施形態では、キャップ(例えば、キャップ本体)は、点滴チャンバの少なくとも一部(例えば、その上部)と一体的に形成されている。使用のために組み立てられたとき、点滴チャンバは、キャップから延在するスパイクまたはキャップから延在する可撓性チューブの遠位端に位置するスパイクをバッグの流体ポートに挿入することなどによりIVバッグと流体連通した状態で設けられていてよい。点滴チャンバをプライミングするためのプライミング装置(例えば、プライミング弁)は、点滴チャンバの出口の上流の流体経路に設けられていてよい。プライミング装置は、流出(またはベント)通路と、流出通路を選択的に(すなわち、ユーザの操作によって)開放および封止する手段とを含む。いくつかの実施形態では、プライミング装置は、点滴チャンバキャップと一体化されている。いくつかの実施形態では、プライミング装置は、一体型スパイクを有する点滴チャンバキャップに一体化されている。他の実施形態では、スパイクは、プライミング装置を含む点滴チャンバキャップから別個に形成されており、使用のためにIVチューブセットが組み立てられる際に、直接的にまたは中間チューブを通じて点滴チャンバキャップにスパイクが接続される。いくつかの実施形態では、交換可能に使用できるプライミング装置を組み込んだキャップを、複数の異なる流入部材(例えば、1つ以上のスパイクおよび/または直径の異なる1つ以上のチューブ部材)と、異なる点滴速度を提供する複数のフィルタ構成要素と、さらには異なる構成の点滴チャンバとともに含むモジュールシステムを提供することができる。
【0015】
図1および図2に、点滴チャンバに取り付けられた本開示のいくつかの実施形態によるキャップを有する例示的な塞栓低減型点滴チャンバの図を示す。点滴チャンバ100は、点滴チャンバ体積120を画定する実質的に球状の点滴チャンバ本体110を含む。流体は、点滴チャンバ入口130を通じて点滴チャンバ本体110に導入され、流体は、点滴チャンバ出口140を通じて点滴チャンバ100を出る。点滴チャンバ出口140は、点滴チャンバ本体110の内部に延在する細長い構造体(例えば、出口チューブ141)によって設けることができる。点滴チャンバ出口140は、点滴チャンバ100が所定量の流体で満たされた(例えば球状の本体の少なくとも50%、60%またはそれ以上が満たされた)ときに、点滴チャンバ体積120内の実質的に中央に配置可能であるその遠位開口部142が点滴チャンバ100の向きに関係なく流体に水没したままとなるように、点滴チャンバ体積120内に配置することができる。所定量の流体は、いくつかの例では、充填ラインによって点滴チャンバ100上に示すことができる。遠位開口部142が点滴チャンバ100内で流体中に水没したままとなることにより、点滴チャンバ100が使用中に配置される向きに関係なく、点滴チャンバ出口140の下流のチューブにガスが進入するリスクが実質的に排除され、これにより空気塞栓症の患者へのリスクが低減される。このように、本配置構成は、患者の上方に標準的な高い位置でIVバッグを保持するための空間、時間または人員がない場合に特に価値があると考えられる。出口チューブ141の反対側の端部143に、出口140の近位開口部144が位置することができる。近位開口部144は、そこに可撓性チューブを結合することで被験者(例えば、ヒトまたはヒト以外の患者)にIVラインが提供されるように構成されている。例えば、構造体141の端部143は、点滴チャンバと可撓性チューブとの間に漏れのない接続を形成するためのルーアーコネクタを備えていてよい。塞栓低減型点滴チャンバ本体110は球状として示されているが、他の例では、点滴チャンバ出口140の遠位開口部142が点滴チャンバ本体110の実質的に幾何学的中心に位置することにより、使用時に遠位出口142の流体内への連続的な水没が可能であるならば、長円、多角形状または他の三次元形状などの異なる幾何学形状を有することができる。さらに他の例では、本開示によるプライミング装置を備えるキャップは、点滴チャンバ100の塞栓低減型特徴を有しない従来の点滴チャンバと併用することができる。例えば、プライミング装置を備えるキャップは、実質的に垂直な向きでかつ患者または被験者の上方の高い位置での従来の使用に向けて設計された点滴チャンバの入口を封止することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、点滴チャンバ100には、点滴チャンバ100の塞栓低減型機能の適切な作動のために点滴チャンバ100内に提供されるべき流体量をユーザに示すための充填レベルインジケータ(例えば、図18の充填ライン856参照)が設けられていてよく、この充填レベルインジケータは、エンボス加工されていてもよいし、他の適切な隆起構造によって設けられていてもよく、また球状の本体110上に印刷(例えば、オーバーモールディング、積層、スクリーンまたはレーザ印刷など)されていてもよい。いくつかの実施形態では、適切な充填レベルを様々に示すことができる。例えば、点滴チャンバ100は、ネック部114を含むことができ、このネック部114は、球状の点滴チャンバ本体110から延在し、その遠位端で点滴チャンバの入口130を画定する。したがって、ネック部114は、総じて球状の点滴チャンバに、この場合は点滴チャンバ入口130のすぐ下流に、点滴速度を監視するための細長い観察部分または窓を提供することができる。ネック部114は、実質的に円筒形またはわずかにテーパ状のまたは円錐台状の形状を有することができる。いくつかの例では、ネック部114と球状の本体110との間の界面118(ネックライン118とも呼ばれる)は、充填レベルインジケータとして機能し得る。すなわち、球状の本体110、ネック部114、および細長い構造体141の相対的なサイズは、点滴チャンバが実質的にネックライン118まで流体で満たされたときに遠位開口部142の水没が保証されるように選択することができる。したがって、いくつかの実施形態では、点滴チャンバの適切な作動(または、すべての向きでの流体への開口部142の水没)を保証する流体量は、本明細書において点滴チャンバ体積と呼ばれるネックラインまで球状の本体を実質的に満たすのに十分な量であってよい。いくつかの実施形態では、適切な作動のための流体量は、全体積の少なくとも60%、全体積の少なくとも70%、または全体積の少なくとも90%など、全体積より少ない量であってよい。ネック部のサイズ(例えば、長さ、幅、ひいては追加の内部体積)は、図示の例では球体のほぼ幾何学的中心(または中点)にある出口140の開口部142が、所定量の流体が充填されたときに点滴チャンバの向きにかかわらず流体に水没したままでありながら、所望の点滴速度を監視または確認するための十分長い観察窓がなおも提供されるように、適切な充填レベルとの組み合わせで選択することができる。いくつかの実施形態では、充填ラインは、点滴チャンバ100のネック部に位置していてよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、点滴チャンバ100は、点滴チャンバを形成するために一緒に接合される2つの別個に形成された部品から製造することができる。例えば、実質的に球状の点滴チャンバ100の場合、上部は、球状の点滴チャンバの頂部の実質的に半球状の部分と、任意のネック部とを含むことができ、下部は、出口140を含む、球状の点滴チャンバの底部の実質的に半球状の部分を含むことができる。点滴チャンバを複数の部分から形成することによって、製造が容易であることや、内部構成要素(例えば、血液フィルタ)の包含が可能となること、および/または点滴チャンバの異なる部分(例えば、上半分および下半分)を異種材料から製造することが可能となることなど、1つ以上の利点を提供することができる。例えば、点滴チャンバの下部を比較的硬質の材料で形成し、上部を頂部において比較的より可撓性の高い材料で形成することができる。医療用途の場合、適切な可撓性材料は、医療グレードの可撓性PVC、または軟質デュロメータポリウレタンであり得るが、これらに限定されるものではない。可撓性の熱可塑性材料、または所望の(例えば、医療、獣医学、スポーツ)用途に適した他の可撓性材料を使用することができる。点滴チャンバまたはその一部(例えば、底部)を形成するのに適した剛性材料には、医療グレードのアクリル系物質、ポリウレタン、他の適切な硬質プラスチック、ガラスまたは金属を含むことができる。いくつかの実施形態では、点滴チャンバの上部および下部の双方とも、実質的に剛性を示す材料(例えば、医療グレードのアクリル系物質または他の任意の適切な硬質プラスチック、ガラスまたは金属)から製造することができる。さらにさらなる例では、点滴チャンバは、例えば付加製造(3D印刷)技術によって、単独の単一構成要素として形成されていてよい。
【0018】
(例えば、単一構成要素としてかまたは複数部品でのいずれかの)点滴チャンバは、モールディング、注型、付加製造、機械加工などの任意の適切な技術を用いて製造することができる。これらのプロセスには、射出成形法、ポリウレタン注型法、シリコーンモールディング法、またはソフトキャストTPU(熱可塑性ポリウレタン)法が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、点滴チャンバまたはその一部(例えば、底部)は、プラスチック以外の材料、例えば、金属から製造することができる。いくつかの実施形態では、点滴チャンバ100の少なくとも一部、例えばネック部114は、例えば点滴速度を視認するための監視窓として使用可能なように、十分に透明な材料(例えば、透明プラスチック)から製造することができる。他の実施形態では、点滴チャンバは、同じ材料または同様の特性(例えば、剛性)を有する材料の2つ以上の部分から製造することができる。さらに他の実施形態では、点滴チャンバ100は、(例えば、射出成形、オーバーモールディング、付加製造またはそれらの組み合わせによって)同じ材料または適切な材料の組み合わせから単一の物体として製造することができる。従来のシステムでは、例えばポンピングによる点滴チャンバのプライミングを容易にして、点滴チャンバを適切な充填レベルまで充填するには、点滴チャンバまたはその少なくとも一部を可撓性とする必要があったといえる。本開示によるプライミング装置(例えば、プライミング弁300)によって、点滴チャンバをプライミングするために手動でポンピングする必要性がなくなり、したがって今や、点滴チャンバを完全に適切な剛性材料(例えば、剛性プラスチック)から製造することができ、これにより、病院以外の使用により適し得るより堅牢な設計を提供することができる。
【0019】
図1図3に示すように、点滴チャンバ100の入口130は、キャップ200によって覆われている。キャップ200は、IVバッグから点滴チャンバ100へと流体を連通する流体通路220を画定する。流体通路220は、遠位端と近位端とを有する。流体通路220の近位端は、キャップ200が点滴チャンバ100に作動可能に結合されたときに、点滴チャンバ入口130に延在し得る出口チューブ240で終わることができる。出口チューブ240は、IV流体が所望の速度で点滴チャンバ100に点滴されるように構成されていてよい。例えば、出口チューブ240の内径は、所望の点滴速度が提供されるように選択することができる。出口チューブ240の内径は、例えば点滴チャンバ入口130よりも著しく小さくすることができ、そうすることで、流体が明確な液滴の状態で点滴チャンバ内に入り、それにより点滴速度を決定するための計数が可能となる。いくつかの実施形態では、キャップ200に通される流体の点滴速度を、流体通路220から近位に延在する点滴速度調整器によって調整または修正することができる。
【0020】
キャップ200には、本開示によるプライミング装置が組み込まれている。プライミング装置は、キャップ200に一体化され、かつ点滴チャンバ100をプライミングするように作動可能なプライミング弁300によって実施可能である。さらに、プライミング装置(例えば、弁300)は、以下でさらに説明するように、バッグが被験者に接続される前にIVバッグに含まれる実質的にすべての空気など、流体システムからすべての過剰な空気を実質的にパージするために使用可能であってよい。本例では、キャップ200は、点滴チャンバ100を流体源(例えば、IVバッグ)に接続するために使用されるスパイク260を有する(例えば、一体的に形成された)単一構成要素である。他の実施形態では、プライミング装置(例えば、弁200)は、(例えば、図6B図6C図7および図8に示す)可撓性チューブ203によって互いに分離可能なキャップまたはスパイクに一体化されていてよい。いくつかの実施形態では、プライミング装置は、図18を参照してさらに説明するように、複数の異なる流入部材(例えば、スパイクまたはチューブ)のうちのいずれか1つに交換可能に接続可能なキャップに一体化されていてよい。実質的に球状の塞栓低減型点滴チャンバ100を参照して本例で説明されるプライミング装置(例えば、弁300)、弁300および/または弁300を組み込んだ点滴チャンバキャップ(例えば、スパイク付きまたはスパイクなし)は、他の様々な点滴チャンバとの併用が可能であり、中には、非球状の形状を有するもの(例えば、図17で図示した点滴チャンバ700)や、塞栓低減型機能を備えていないものがあってよい。
【0021】
図4および図5を参照すると、キャップ200は、キャップ本体202を含む。キャップ本体202は、プラスチックなどの任意の適切な材料の単一構成要素(例えば、成形体または3D印刷体)として形成することができる。キャップ本体202は、点滴チャンバ100の入口を覆うように構成されている。いくつかの実施形態では、キャップ本体202は、点滴チャンバ100から別個に形成され、その後、点滴チャンバの入口を覆うように点滴チャンバ100に好適に取り付けられていてよい。他の実施形態では、キャップ本体202は、点滴チャンバの少なくとも一部、例えば、複数部品から構成される点滴チャンバ100の上部と一体的に形成されている。キャップ本体202は、本例のような円錐台状の形状、または(例えば、図18図20に示すような)実質的に円筒形状を有することができる。他の例では、キャップ本体202は、異なる適切な形状を有することができる。キャップ本体202は、遠位開口部212(入口212ともいう)と、第1の近位開口部214(出口214ともいう)と、IV流体容器(例えば、図7AのIVバッグ170)からキャップ200を通って点滴チャンバ100に流体を送達するための、キャップ200の入口212を出口214に接続する流体通路(または単に通路)220とを有する。第1の近位開口部(または出口)214は、キャップ200が点滴チャンバ100に作動的に接続されると、出口214が点滴チャンバ100の内部に面しかつそれと連通するように、キャップ200の近位側で開口している。本例では、スパイク260はキャップ200と一体化されており、したがって、キャップ200は、一体型スパイクキャップ201とも呼ぶことができる。他の例では、図7および図8、ならびに図18および図19の例のように、点滴チャンバをIVバッグに接続するためのスパイクは、キャップから分離可能であってよい。図4および図5の例では、スパイク260がキャップ本体202と一体化されているため、流体通路220の入口212は、スパイク260の尖端部262付近に位置するスパイク260の入口にもなっている。スパイクキャップ201の反対の近位側、より具体的にはここでは出口チューブ240の近位端には、流体通路220の出口214が設けられている。キャップ200は、IVバッグから点滴チャンバ100への単一の流体通路を画定する。この単一の流体経路は、図示のような単一の流体通路220によって設けることも、入口212を出口214に接続する複数の流体通路によって設けることも可能である。したがって、キャップ200のスパイク260は、流体通路とは別個にスパイクを通る追加のベント通路を提供することで、周囲空気がIV流体容器内に入ってIV容器から引き出されたIV流体の体積と置き換わることを許容するベントスパイクとは対照的に、非ベントスパイクと表現することができ、これは、特に剛性の容器では容器から出る流体の適切な流量を妨げるおそれのある真空の形成を防止することができる。
【0022】
スパイク260は、流体の流れが促進されるように構成されていてよい。IV流体の種類に応じて、スパイク260の構成は異なっていてもよい。例えば図4に示すように、スパイク260の尖端部262における入口212は、スパイク260の先端部付近に位置する1つ以上の貫通スロット264として設けられていてよい。各スロット264は、スパイク260の外面から内部流体通路220への貫通開口部を画定することができ、スパイクの長さに沿って(例えば、スパイクの先端部からキャップ本体200に向かって)実質的に長手方向に延在することができ、これにより入口212のアパーチャの長さが増加して、IVバッグから流体通路220への流体の流れが促進または増加する。別の例では、スパイク260の尖端部、ひいては細長い流れを促進する入口は、図9図13の例のように、スパイクの遠位端にあるベベルによって提供されていてよい。この構成は、通路220への流体の流れを全般的に促進するための細長い流れを促進する入口を依然として提供しつつ、特定の流体(例えば、コロイド)との使用に適し得る流体通路220へのより大きなサイズの開口部を提供することができる。使用前に、スパイク260は、スパイクを無菌に保つためにスリーブによって覆われていてもよく、このスリーブは、スパイク260の基部に設けられたスパイク肩部268によってスパイクに嵌め込んで保持することができる。使用時には、スリーブを取り外した後に、スパイクをバッグ170の流体ポート174に挿入することができ(例えば、図6A参照)、場合によっては、肩部268は、流体ポート174へのスパイクの挿入を制限するハードストップとして機能することもできる。
【0023】
キャップ本体202は、点滴チャンバのネック部に結合されて点滴チャンバ入口130を覆うように構成されており、その際、図2に示すように、キャップ200の出口214は、点滴チャンバ100に面して、場合によっては内部に配置されている。キャップ200は、キャップを点滴チャンバに結合するために、キャップ本体の近位側に位置する結合インターフェースを含むことができる。例えば、キャップ本体は、オス/メスカップリング245のメス部分243を提供する環状溝を画定することができる。オス/メスカップリング245は、ここでは、環状の目違い継ぎとして実施されている。本例のオス/メスカップリング245は、環状溝244を含む。環状溝244は、キャップ本体202に設けられ、この場合にはキャップ本体202の下面の外周に沿って延在し、点滴チャンバに面し、オス/メスカップリング245のメス部分243として機能する。環状溝244は、ネック部114のリム249を収容して環状の目違い継ぎが形成されるように構成されている。このようにして、リム249は、オス/メスカップリング245のオス部分247として機能する。いくつかの実施形態では、オス部分247(例えば、ネック部114のリム)およびメス部分243(例えば、環状溝244)は、締まり嵌め向けのサイズであってよい。例えば、リム249におけるネック部の内径は、ネック部の開口部をわずかに伸張させることによってリム249の溝244への挿入を実現できるように、溝244によって画定される直径よりもわずかに小さくすることができる。構成要素(例えば、点滴チャンバ100)のその公称の非伸張状態への自然な傾向によって、点滴チャンバ100とキャップ200との間の摩擦、ひいては保持または結合を強化することができる。いくつかの例では、ネック部のリムおよび環状溝は、スナップ嵌め用のサイズであってよく、その際、リム部分は、溝への挿入中にその公称(製造時の)状態からわずかに撓んでおり、かつ/またはキャップ上の機構と機械的に係合または連動してキャップを点滴チャンバに結合するスナップ機構を含む。部品のその後の分離を機械的に妨害するように設計された任意の機構を、連動またはスナップ機構として使用することができる。IVチューブセットの他の構成要素のうちオス/メスカップリング243は、最大で5psi、場合によってはそれを上回る内圧での分離に耐えるように構成されていてよい。いくつかの実施形態では、点滴チャンバ(例えば、ネック部114)とキャップ200との間の結合は、追加的にまたは代替的に、(例えば、化学接着剤による、またはレーザもしくはRF溶接などを用いた)2つの部品の接合または接着などによる他の適切な手段によって達成することができる。2部品設計の場合には、同様の目違い継ぎ(またはオス/メスカップリング)を使用して、点滴チャンバの上部を点滴チャンバの下部に接合することができる(例えば、図2参照)。さらに他の実施形態では、ラップジョイントまたは他の適切な接合部などの異なるタイプの接合部を、場合により接着および/または追加の機械的締結手段(例えば、スナップおよび/または連動機構)と組み合わせて使用することができる。チューブセットで使用するために組み立てられる、別個に製造された任意の2つの構成要素は、溶剤接着、紫外線(UV)活性化接着剤、音波溶接、オーバーモールディング、スピン溶接、および化学結合を用いた融合または接合を含むがこれらに限定されない様々な方法を用いて取り付けることができる。異種材料の部品を接合する場合には、UV光硬化接合、オーバーモールディング、RF溶接、レーザ溶接などによる、接合または接着のための任意の適切な技術を用いることができる。しかし、説明したように、いくつかの実施形態では、点滴チャンバ本体および一体型ネック部は、複数部品から構成されるアセンブリではなく、単一構成要素であってよい。
【0024】
図5を参照すると、キャップ本体200は、キャップ本体202から半径方向外側に延在するフランジ206を含むことができる。フランジ206は、スパイクを流体バッグに挿入する際にスパイク260を上方に押し上げるための表面が提供されるように構成されている。フランジ206は、キャップ本体から半径方向外側に延在する実質的に連続した環状フランジによって提供されてもよいし、ここではスパイクに対して横方向に延在する第1(または左)および第2(または右)のフランジ部分として示されている複数のフランジ部分によって、直径の反対側の方向に提供されてもよい。フランジ260には、各フランジ部分の下側に設けられた、ここでは複数のリブとして示されているトラクション機構208が設けられていてよい。トラクション機構208は、フランジ206の下側のエルゴノミクスを(例えば、ユーザの指との適合性を向上させるために)強化することができ、さらに任意にフランジ206を構造的に再強化することができる。本明細書に記載される点滴チャンバキャップ(例えば、キャップ400,900)のいずれも、このようなフランジを含むことができる。
【0025】
本開示の原理によれば、IVチューブセットには、点滴チャンバを「ポンピング」することなく点滴チャンバをプライミングすることを可能にする装置が設けられていてよい。点滴チャンバのプライミングに従来用いられているようなポンピングによって、流体系に追加の空気が導入される場合があり、これにより、特に(例えば、圧縮スリーブからの)外圧を受けるIVバッグを用いた急速な輸液の間に、または流体系の垂直な配置(例えば、点滴チャンバの垂直方向)が保証できない場合に、空気塞栓症のリスクが増大するおそれがある。点滴チャンバのポンピングを用いた従来のプライミングでは、作動流体高さを生じさせるために、点滴チャンバからIVバッグに空気が押し込まれる。対照的に、本明細書に記載される配置構成では、図22を参照して後述する例のように、輸液開始前のプライミングプロセス中に、ユーザがシステムから不要または過剰な空気を実質的にすべてパージすることが可能となるため、患者の血流に偶発的に気泡が導入されるリスクが潜在的にさらに低減される。本明細書に記載されるチューブセットは、気密封止して最大で5psi以上の内圧が保持されるように構成されていてよい。チューブセットの構成要素間の接合部(いくつかの例では接着剤接合部を含む)は、上述の圧力に耐えられるように構成されていてよく、いくつかの例では、チューブセットに沿って長手方向に加えられる少なくとも15Nの引張荷重に耐えられるように構成されていてよい。システムからより多くの空気をパージする能力に加えて、本明細書に記載されるプライミング装置はまた、10秒以上かかる場合がある従来の「ポンピング」によるプライミングと比較して、点滴チャンバをわずかな時間(例えば、1~2秒)で充填またはプライミングすることが可能である。
【0026】
図2図5に示すように、キャップ本体202のキャビティ204にプライミング弁300が設けられていてよい。入口開口部306は、キャビティ204に点滴チャンバを接続し、それにより点滴チャンバからキャビティ204に空気を通すことができる。出口開口部308は、キャビティ204をシステムの外部(すなわち、周囲空気)に接続し、それにより空気がキャビティ204から外部に出ることができる。弁300は、閉鎖機構(例えば、アクチュエータ)を含み、IVバッグから点滴チャンバまで画定される流体経路に沿って作動的に配置されており、それにより流体通路220が外部に、ひいては周囲圧力に選択的に連通結合される。いくつかの実施形態では、弁300は、流体経路の無菌性を損なうことなくこの機能が達成されるように構成されている。例えば、弁300は、例えば、バリア360(例えば、フィルタまたは多孔質膜)を含むことができ、このバリア360は、例えば細菌または他の微生物がバリア360を通過するのを防止することによって、無菌性が保持されるように構成されている。バリア360(例えば、フィルタまたは多孔質膜)は、例えば0.2ミクロン~約1.4ミクロンの範囲内の適切なミクロン定格を有することができる。フィルタは、特定の用途に望まれ得るように、細菌または他の微生物の通過を阻止するのに十分に小さい任意の適切な孔径(またはミクロン定格)を有することができる。追加的にまたは代替的に、バリア360は、その中を通る水の通過に抵抗する弁の能力を向上させるために、疎水性材料を含むかまたはそれで処理するなどによって、液体をはじくように構成されていてよい(例えば、バリアは疎水性であってよい)。バリア360は、弁キャビティ204への入口開口部306全体にわたって任意の適切な位置に設けられていてよい。ミクロン定格、厚さ、材料の種類などのバリア360の物理的パラメータは、それを通る空気の流れの速度など、バリア360の他の性能態様を調整するためにさらに選択または変化させることができ、例えば、弁300が流体経路から空気を排出することができる速度を調整するために、さらに選択または変化させることができる。
【0027】
出口開口部308は、アクチュエータ(例えば、ボタン310)を使用して選択的に開閉することができる。本例では、アクチュエータは、矢印301で示す方向に沿って移動して、封止要素(例えば、Oリング319)と出口開口部308との間の封止を破り、弁を選択的に開閉させる。開放位置にあるとき、キャビティ204は外部に(すなわち、周囲空気に)開口しているため、(図3に矢印213で示すように)空気がキャビティ204を通って点滴チャンバの外に排出される。点滴チャンバのプライミング後などに弁が閉鎖されると、キャビティ204の出口308、ひいてはキャビティ204は周囲空気から気密封止され、キャビティへの、ひいては流体システム(例えば、点滴チャンバ、キャップ、上流IVラインおよび/またはIVバッグの内部)への空気の出入りが防止される。したがって、キャビティ204は、点滴チャンバ内部を外部(すなわち、周囲空気)に選択的に連通結合する通路を提供し、これにより、システムからの空気のパージを促進することができる。システムをプライミングするために適切に操作された場合、弁300が開放されると、IVバッグ内の空気が流体通路を通って点滴チャンバに入るようになる。例えば、圧力カフで操作した場合、弁が開放されて流体システムの内部が周囲圧力に接続されると、周囲圧力がより低いために、矢印203で示すように、空気/流体がバッグから流れ出て点滴チャンバに入る。同時に、流体が点滴チャンバに充填されると、弁を通じて点滴チャンバから空気がパージされる。弁は、所望の量の流体(例えば、充填ラインまでの流体)がバッグから点滴チャンバに吐出されるまで開放された状態に保持され、その後、弁は閉鎖される。キャビティ204への入口開口部306は、キャップ200が点滴チャンバ100に固定されて点滴チャンバの入口130を覆うと入口開口部306が点滴チャンバの内部と流体連通するように、キャップ本体の近位側に形成されていてよい。他の例では、弁キャビティへの入口開口部は、他の場所に適切に配置されていてよい。いくつかの例では、多孔質バリア360(例えば、それを通る微生物の通過を低減または実質的に防止するのに適切なミクロン定格を有する任意の適切な多孔質膜またはフィルタ)が、入口開口部306全体にわたって設けられていてよい。
【0028】
閉鎖機構は、弁の出口開口部308を選択的に開放および封止するための任意の適切な機構を用いて実施することができる。閉鎖機構は、アクチュエータを含むことができ、このアクチュエータは、本例では、弁を開放するために押下され、弁を封止するために解放されるように構成されたボタン310によって実施される。図4および図5を参照すると、ボタン310は、実質的に円筒形のキャビティ204内に収容され、方向301に沿って移動可能な実質的に円形の基部312を有する。キャビティ204は、キャビティ204の口部224に対向する第1の壁222と、第1の壁222からキャビティ204の口部224に延在する側壁226とによって画定される。ボタン310は作動端部340を含み、これは、弁が開放位置または閉鎖位置のいずれかにあるときにキャビティ204の外側に留まるように構成されている。作動端部340は、(例えば、図1および図9の例のように)周辺に面する側に沿って、または(例えば、図13の例のように)キャップ本体202の遠位に面する側に沿ってなど、作動に適した任意の位置に配置されていてよい。ボタン310の基部312および作動端部(例えば、ここではボタンキャップ314として示されている)は、出口開口部308を通る柱部316によって接続されていてよい。柱部316は、開口部308内で自由に移動するようなサイズであってよく、ひいては空気が弁300を通過できるようなサイズであってよい。任意に、柱部316はフルート加工されていてよく、ここでは柱部の長さに沿って1つ以上のチャネル318を有するものとして示されており、それによって、弁が開放されたときの空気の流出が増大する。弁300の閉鎖機構は、弁が閉鎖位置にあるときに、出口開口部を画定する壁の内側、この場合には栓315の内側に押し当てることで出口開口部308が封止されるように配置されている、ここではOリング319として示されている封止部も含むことができる。示されるように、基部312は、組み立てられたときに、封止部(例えば、Oリング319)が基部312と栓315の内側面との間に挟まれるように、出口開口部308の対応する寸法(例えば、直径)よりも大きい寸法(例えば、直径)を有する。封止部は、(例えば、図4に示すように)概ね円形の横断面を有することができ、あるいは封止部は、異なる横断面を有する平坦な封止部であってもよく(例えば、図11に示すように、フラットOリングとも呼ばれる矩形の断面を有するOリング)、さらに別の適切なフォームファクタを有することもできる。
【0029】
ボタン310は、閉鎖位置に向かって付勢することができる。例えば、ここでは巻ばね322として示されている付勢要素が、ボタン310に対して作動的に配置されており、それによって、弁300が閉鎖される位置、この場合はボタン310が開放位置よりもキャビティ204からさらに外に延在する位置に向かってボタン310を付勢する。本例では、ばね322は、キャビティ204の第1の壁222とボタン310の基部312との間に配置されており、それによってボタン310をキャビティ204の外に出る方向に付勢している。しかし、他の例では、弁のアクチュエータを閉鎖位置に向かって付勢する別の操作配置構成を用いてよい。エラストマー(例えば、ゴムまたはシリコーン)、任意の適切な熱可塑性または熱硬化性材料(例えば、ポリウレタン)などの任意の適切な材料から製造することができる封止部319は、ボタンが閉鎖位置と開放位置との間で移動する際に封止部がボタン310とともに移動するようにボタン310に保持されていてよい。封止部は、例えば、柱部316の基部にある環状溝317に着座することによって、接着剤または機械的手段などの任意の適切な手段を用いてボタンに保持されていてよい。使用中、メカニカルロックが係合されていないと仮定すると、ユーザは、ばねの付勢力に打ち勝つのに十分な力(例えば、ユーザ力F)を加えて、ボタン310を所望の回数だけ開放位置と閉鎖位置との間で自由に作動させることができる。
【0030】
製造を容易にすべく、キャビティ204の口部224は、その中を基部312が通ることができるようなサイズであってよい。基部312がキャビティ204に挿入されると、例えば栓315が本体202にプレス嵌めされ、任意に栓が本体202に接着されることにより、口部224は栓315で覆われることができる。栓315は、出口開口部308を提供するアパーチャを画定する。組立中、柱部316が出口開口部308を通るように柱部316上にスリーブ付けされ、その後、ボタンキャップ314が柱部の自由端部に取り付けられることで、栓315はボタンの作動端部を提供することができる。ボタンキャップ314は、スナップ嵌め、プレス嵌め、機械的締結具、または接着剤を含むがこれらに限定されない、任意の適切な手段によって柱部に取り付けられていてよい。同様に、製造を容易にすべく、ボタン310は、栓315の設置を容易にするために分離可能な構成要素で形成されていてよく、あるいはまた栓315は、ボタン310の柱部316の周囲での設置を容易にするために2つの半分として形成されていてもよく、これは、後者の例では一体型または単一の構成要素として形成されていてよい。
【0031】
図4に示すように、キャビティ204は、キャビティ204を内側部分204-1と外側部分204-2とに分割するレッジ207を含むことができ、この場合、外側部分は、内側部分よりも大きな直径を有する。外側部分204-2は、ボタン310の基部312を受容するようなサイズであり、これによりボタン310が上部304-2内で方向301に沿って往復することができる。内側部分204-1は、巻ばねを受容するようなサイズであるが、ボタン310が内側部分204-1内に入ることを許容しない。このように、レッジ207は、ボタン310の移動を制限するハードストップとして機能する。組み立てられると、ばね322は、内側部分204-1に収容され、キャビティ204の第1の壁222に対して静止する。よって、ここでハードストップとして機能するレッジは、弁アクチュエータを縮小させるためのばね322の圧縮量も制限する。
【0032】
先に説明したように、スパイクキャップ201の近位端は、スパイクキャップ201がネック部114にしっかりと結合されるように構成されていてよい。さらに、スパイクキャップ201の近位端は、ここではフィルタ360として示されているバリア360を支持するように構成されていてよい。フィルタ360は、弁への入口(すなわち、入口開口部306)とスパイクの出口(すなわち、出口214)との間の点滴チャンバの内部に配置されるように、キャップの近位側に固定されていてよい。いくつかの例では、フィルタ360は、キャップ200の下側に設けられた環状ボア246内に(場合によっては、締まり嵌めで)嵌められるように構成された環状の形状を有することができる。環状ボア246は、キャップ本体202の下側から概ね中央に延在することができる出口チューブ240と、オス/メスカップリング243のメス部材の内壁との間に画定することができる。いくつかの実施形態では、フィルタ360は、キャップ200、またはキャップ200に挿入(例えば、プレス嵌め)および/または接合することができる中間構成要素(例えば、図11のフィルタ保持具362または他の適切な支持構造体)に追加的に接着または接合されていてよい。バリア(例えば、フィルタ360)は、抗菌性、耐水性、または水密性であってよい。いくつかの例では、バリア(例えば、フィルタ360)は、例えば、疎水性材料で形成されるかまたはコーティングされることによって、疎水性であってよい。例えば、バリア(例えば、フィルタ360)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、もしくはそれを通る水の通過に抵抗もしくは反発する他の適切な材料であるか、またはそれを含むことができる。バリア(例えば、フィルタ360)は、いくつかの例では、多層構造であってよい。フィルタの空隙率またはミクロン定格は、任意の所望のサイズの微生物、ひいては任意の所望の種類の微生物が阻止または濾過によって除去されるように調整または選択されていてよく、このようにして使用時のチューブセットの無菌性の保持を補助することができる。
【0033】
先に説明したように、弁キャビティ204の入口開口部306は、本例のようにキャップ本体の下側に位置していてよく、入口開口部306は、環状ボア246からキャビティ204に延在する通路305を通じてキャビティ204に接続されている。通路305は、図4に示すように、流体通路220と実質的に平行であってもよいし、他の適切な幾何学的形状を有していてもよい。いくつかの実施形態では、通路305に接続するボアの基部に、環状チャネル248が形成されていてよい。環状チャネル248は、フィルタ360(またはフィルタ360を担持する支持構造体)の後にあってよく、それにより、弁300への空気の流出をより効率的にすべくフィルタ(またはフィルタ/支持体の組み合わせ)の後に空気の空間が設けられる。いくつかの実施形態では、フィルタの空隙率、存在する場合にはチャネル248の幾何学的形状、および/または通路207の幾何学的形状は、空気の流出に対する、ひいてはプライミング中の点滴チャンバからの空気のパージ速度に対する所望の抵抗性が得られるように調整することができる。いくつかの実施形態では、弁は、弁300の開放時に5秒未満、場合によっては1~2秒以内に空気のパージ、ひいては点滴チャンバの充填が可能となるように構成されていてよい。弁が閉鎖されると、IVバッグから点滴チャンバ体積120への流体経路が封止され、ここで、弁は、最大で5psi以上の圧力で漏出防止の封止が保持されるように構成されている。
【0034】
前述のように、いくつかの例では、プライミング弁300は、例えば、図6Aに示され、また図1図5を参照して上記で詳細に説明したように、点滴チャンバ100に直接結合されている一体型スパイクキャップ201の本体内に収容されていてよい。他の例では、プライミング弁は、例えば図6Bに示すように、可撓性チューブ203によって点滴チャンバ100から分離されているスパイク260の本体内など、流体経路に沿った他の場所に位置していてよい。さらに他の例では、プライミング弁は、図6Cに示すように、可撓性チューブ203によってスパイク260から分離されているキャップ400の本体内に収容されていてよい。また、キャップおよびプライミング弁のアセンブリの例は、本明細書では空気塞栓低減型(または全位置型点滴チャンバ)を参照して説明されているが、本発明のキャップ(スパイク付きまたはなし)およびプライミング弁のアセンブリは、より好都合なプライミングおよびシステム内の空気の低減を可能にするなど、慣例や空気塞栓低減型であるか否かにかかわらず任意の他の点滴チャンバの幾何学的形状で使用することができる。
【0035】
図7および図8は、本開示によるプライミング装置(例えば、弁300)を組み込んだキャップ400の一例を示す。キャップ400は、一体型スパイクキャップ201を参照して説明したものと同様に作動する同様の機構を有することができるが、ここでの主な相違点は、キャップ400が一体型スパイクを有しないことである。その代わりに、キャップ400とは別個のスパイクが、チューブ(本図には図示せず)を通じてキャップ400に取り付けられていてよい。キャップ400の遠位側は、キャップ400をスパイクおよびIVバッグに接続するためのチューブへの漏れのない接続を確立するためのルーアーフィッティング446または他の任意の適切な手段を備えていてよい。キャップ200と同様に、キャップ400は、遠位開口部または入口412を画定する遠位側と、近位開口部または出口414を画定する近位側とを有するキャップ本体402を含む。入口412は、IVバッグから流体を収容し、流体は、流体通路420を通じて出口414に通され、そしてキャップ400の近位側を向くように配置された点滴チャンバに入る。流体通路420は、入口412を出口414に接続するとともに、バッグから点滴チャンバに流体を送達し、かつプライミングプロセスの開始時にバッグから点滴チャンバに過剰な空気を通すための流体通路を画定する。
【0036】
本明細書のいくつかの例では、弁300を開閉するためのアクチュエータ(例えば、ボタン310)は、キャップ本体(例えば、本体202または本体402)の周辺側面から延在している。本開示によるプライミング弁(例えば、弁300)を備える装置はさらに、弁300の偶発的または意図しない作動、ひいては開放のリスクが低減されるように構成されていてよい。図9図11は、本開示によるプライミング弁300を備えるスパイクキャップ501の別の例を示す。スパイクキャップ201と同様に、スパイクキャップ501は、点滴チャンバをIV流体源に直接結合するのに使用される一体型のキャップおよびスパイクである。このように、スパイクキャップ501は、点滴チャンバキャップから直接延在するスパイク260を含む。スパイクキャップ501には、ここではプライミング弁300として示されているプライミング装置が組み込まれている。しかし、他の例では、異なる構成のプライミング装置(例えば、プライミング弁901)を使用することができる。プライミング装置(例えば、弁300)は、ここではスパイク260に対して横方向に延在するように示されているアクチュエータ(例えば、ボタン310)を含むことができる。いくつかの使用例では(例えば、戦場もしくは他の緊急対応シナリオにおいて、または「患者」を固定することが非現実的であり得る獣医学的環境において)、チューブセット(例えば、IVバッグおよびそれに取り付けられた点滴チャンバ)は、あちこちに移動し、またはあちこちに移動され、患者の近傍または上に置かれ、総じてIV流体の投与中にその精密な配置または向きにさほど関心を持たずに扱われ、これらはすべて、弁の偶発的作動のリスクを増大させ得る。このリスクを低減するために、アクチュエータ(例えば、ボタン310)は、意図しない作動(例えば、ボタン310の押下)が防止されるように構成されたシュラウド510によって少なくとも部分的に囲まれていてよい。いくつかの実施形態では、弁アクチュエータは、追加的にまたは代替的に、アクチュエータロック(例えば、図15および図16のボタンロック514)を備えていてよい。
【0037】
図9図11の例では、シュラウド510は部分的なガード壁512として示されており、これはこの場合、ボタン310の頂部および両側を覆っている。他の例では、ガード壁512は、ボタンの周辺部の異なる部分の周辺に延在していてよい(例えば、片側ならびに頂部および底部の双方を覆い、作動のためにユーザの指によるアクセスを容易にするべく反対側を実質的に開放したままにする)。したがって、いくつかの例では、シュラウド510は、ボタンを部分的にのみ囲むかまたは覆うことができ、それにより、ボタン操作時にユーザの指を置くための開口部またはアクセスが提供される。他の例では、シュラウドは、ボタン310の周辺に実質的に完全に延在することができ、ひいては図12および図13の例のように、ボタン310を実質的に完全に囲むことができる。シュラウドは、図10に示すように、ボタンの突出部分と等しいかまたはそれをわずかに超える長さLまで、弁ハウジングに対して実質的に垂直に延在していてよい。この配置構成は、ボタン310を作動させるために、(例えば、シュラウド510の側面開口部と位置合わせした指での)ボタン310に対する作動物体(例えば、ユーザの指)のより意図的な配置/位置合わせを強制することによって、偶発的または意図しない作動のリスクを防止または低減することができる。他の例では、シュラウドは、異なるサイズ、形状および/または位置であるなど、異なる構成であってよい。例えば、図12および図13に示すように、シュラウドは、ボタン310が、解放時にシュラウドを越えてわずかに突出するようなサイズであってよい。そのような場合、シュラウドの長さは、ボタンの突出部分の長さよりもわずかに小さくていてよいが、それでも、弁の破壊圧力(この量は、ばねの強度、弁が完全に閉鎖された状態での封止部の圧縮量、またはそれらの組み合わせに依存し得る)に打ち勝つであろう量を超えてボタンを偶発的に押下するリスクを低減するのに十分な長さである。
【0038】
いくつかの例では、弁の意図しない作動のリスクは、アクチュエータを側面に配置すること、または意図しない係合が見込まれない方向に作動されるようアクチュエータを構成することによって低減することができる。図13および図14をさらに参照すると、スパイクキャップ601の別の例が示されており、これは、本明細書に記載される1つ以上のキャップの多くの同じ機構を含むことができる。先の例とは異なり、スパイクキャップ601の弁キャビティ204およびボタン310は、スパイク260と実質的に同じ方向を向いており、したがって、弁の作動は、本例ではスパイクと実質的に位置合わせされた作動力を必要とし、これは、偶発的に起こることがより困難である。この配置構成により、IVバッグに接続されたときに、スパイクの長さ方向に沿ったボタン310の偶発的な作動のリスクは、ボタンがキャップ本体の周辺に配置された場合よりも著しく低くなり得る。さらにかつ任意に、スパイクキャップ601は、図13および図14に示すように、同様にスパイクと同じ方向を向いたシュラウド610を含むことができる。ここに示すように、シュラウド610は、ボタン310を実質的に完全に囲む完全シュラウドであってもよいし、前の例と同様にボタン310の周縁の一部の周りにのみ延在する部分シュラウドであってもよい。
【0039】
さらにさらなる例では、偶発的な作動のリスクは、アクチュエータに作動的に連結された機械的なロック機構によって低減または防止することができる。図15および図16は、スパイクキャップ501の別の例を示しており、ここではボタンロック514を備えている。ボタンロック514は、ここでは、第1の部分515-1と、第1の部分515-1に対して概ね垂直な第2の部分515-2とを有する概ねL字型の構造体として示されている。第1の部分515-1は、一組のタインを画定するフォーク状であり、これらのタインは、ボタンおよびシュラウドと係合するためにシュラウドに1つの連続したアパーチャまたは複数の個別のアパーチャを通じて挿入される。ボタンロックの第1の部分は、ここでは中間タイン516-2として示されているボタン係合機構と、一対の外側タイン516-1および516-3によって提供されるロック機構とを含む。タイン516-1、516-2、および516-3は、第1の部分と第2の部分との間の界面の近傍で互いに接続されているか、または第2の部分によって接続されていてよい。第2の部分は、ボタンの作動端部を提供する。他の例では、第2の部分は省略されていてよく、ボタンロック514は、実質的に平面的な構造体であってよい。他の適切な幾何学的形状を用いてもよい。スパイクキャップ501は、図15に示すように、ボタンロックを開放(または係合解除)位置で備えていてよく、ロックは、チューブセットがプライミングされて患者への使用の準備が整うまでこの位置のままであってよい。チューブセットからプライミング(例えば、空気パージ)され、かつ/またはチューブセットが患者に接続されると、ボタンロック514を、図16に示すようにロック位置へと作動させて(例えば、押して)よく、その際、ボタン係合機構(例えば、タイン516-2)がボタンキャップ314および弁ハウジングとの間に配置されて、弁キャビティへのボタンの移動が妨害され、ひいては阻止される。ボタンロック514のロック機構(例えば、外側タイン516-1および516-3)は、ボタンロック514が、開放(または係合解除)位置、ロック(または係合)位置、またはその双方に保持されるように構成されている。ここで、外側タイン516-1、516-3の各々は、1つまたは複数の位置でシュラウド510上の協働機構と連動するように構成された歯部または他の適切な構造体518を備えている。ここで、外側タイン516-1および516-3上の歯部518は、反対方向に、かつシュラウドの壁の最も近い部分に向かって面するように配置されている。シュラウドは、歯部を収容することでボタンロックがシュラウドから延在する第1の位置(これは、開放位置または係合解除位置に相当する)にボタン514がロックされるように配置された協働くぼみまたはアパーチャを含むことができる。シュラウドおよび歯部はまた、(例えば、歯部がシュラウド壁の下縁と係合した状態で)連動することで、ボタンロックがシュラウド内に下げられる第2の位置(これは、ロック位置または係合位置に相当する)にボタン514がロックされるように構成されていてもよい。他の適切なボタンロック配置構成を使用することもできる。さらにさらなる実施形態では、ロック514のような別個のロックは使用されない場合があるが、ボタンは、ボタン自体が1回のみ作動されるように構成されており、それによってボタンの1回の押下および解放に続いてボタンが自動的に閉弁位置にロックされるようなロック機構を含むことができる。
【0040】
説明したように、弁は、いくつかの実施形態では、バリア(例えば、フィルタ360)を含むことができ、これにより、外部からチューブセットへの微生物の移動を防止しつつシステムから空気をパージすることができ、かつシステムが無菌状態を保持することが可能となる。いくつかの実施形態では、バリアは、システムからの流体の移送が追加的に制限されるように構成されていてよい。図11を再度参照すると、バリア(例えば、フィルタ360)を、弁キャビティ204またはその入口と流体通路220またはその出口との間に作動的に配置することができ、それにより、ガス(例えば、空気)の流れを実質的に阻害することなく点滴チャンバへの流体の通過または流出が制限または防止される。いくつかの例では、フィルタ360は、例えば、5~10ミル(または5~1万インチ)の範囲の厚さを有する多孔質材料の薄いシートによって提供されていてよく、いくつかのそのような例では、ここでは環状フィルタ保持器362として示されている支持構造体上に担持されていてよい。支持構造体(例えば、フィルタ保持器362)は、フィルタをより容易かつ確実に作動的に(例えば、弁入口全体にわたって)配置し、そこに保持するために使用することができる。図13も参照すると、フィルタ保持具362は、環状ボア246のそれと相補的な形状を有することができ、ボア246にプレス嵌めされるようなサイズであってよい。いくつかの例では、環状ボア246は、保持具362とのプレス嵌めを容易にするために、遠位方向に寸法が減少するテーパ状であってよい。保持具362は、追加的にまたは代替的に、キャップに(例えば、環状ボア246に)接合されていてよい。保持具362およびフィルタ360のアセンブリは、ボア246に収容されたとき、ボアを実質的に満たすことができる。
【0041】
保持具362は、フィルタ360を効果的に支持し、キャップ本体にしっかりと結合するために、任意の適切な形状を有することができる。例えば、保持具362は、ボア246を実質的に満たすようなサイズであってよく、かつフィルタ360を担持する保持具の近位側から保持具362の遠位側への空気の流れを可能にする1つまたは複数の貫通通路364を含むことができる。追加的にまたは代替的に、保持具362は、剛性、ひいてはフィルタをキャップ本体にしっかりと結合する保持具の能力に悪影響を与えることなく、その全体重量が低減されるようにさらに成形されていてよい。保持具362は、射出成形または3D印刷などの任意の適切な製造技術を用いて、任意の適切な材料、例えば、ポリ乳酸(PLA)、医療グレードPVC、ポリウレタン、または医療/無菌用途に適した他のプラスチック材料からモノリシック体として形成されていてよい。図示の例では、保持具362本体は、同軸状に配置された一対の管状部分(例えば、内側管状部分363および外側管状部分365)を含み、それらの近位端で複数のフランジ366によって接続され、これらのフランジ366は貫通通路364によって離間しており、したがって貫通通路を画定する。フランジ366の任意の適切な数および配置構成を用いることができ、本例では、内側管状壁から外側管状壁まで直径の反対側の方向に延在する4つのフランジが使用される。他の例では、より少ないまたはより多い数のフランジを使用することができ、それらは等間隔であってもよいし、異なる不規則なパターンで配置されていてもよい。フィルタ360は、弁へのすべての空気流がフィルタ360を通過するように、通路364全体にわたって保持具の遠位側に結合(例えば、接合)されていてよい。
【0042】
使用時に、本開示によるチューブセットは、1つ以上の利点を提供することができる。使用時に、例えば図6Aに示すように、可撓性チューブを点滴チャンバ出口に(例えば、出口チューブ141に)接続することができ、このチューブは、ここでは近位チューブと呼ばれる。近位チューブは、例えば、ローラクランプまたは近位チューブを通る流れを止めることができる他のデバイスでクランプ止めされる。スリーブがスパイク260から取り外され、スパイクが流体の供給源(例えば、IVバッグ170)に挿入される。大半のIVバッグは、IV流体とともにバッグ内に多量の空気または他のガスを含む。総じて、重力圧力下で輸液を行う場合には、流体がすべて投与されたときにIVを停止してIVバッグを交換する時間が通常は非常に長いため、バッグ内の空気は大きなリスクを生じ得ない。しかし高圧力下で輸液を行う場合には、IVバッグ内の空気や点滴チャンバのプライミング時のポンピングによってバッグに加えられた空気は、患者への空気塞栓症のリスクを高めかねない。そのため、流体系から不要な空気をパージすることで、患者の塞栓症のリスクを大幅に低減することができる。
【0043】
IVバッグをスパイクし、近位チューブをクランプ止めした後、IVバッグを、例えば、同時係属中の米国特許出願第16/093,552号および米国特許出願第15/537,189号に記載されているような圧力カフによって昇圧に供することができ、ここで、この刊行物の開示内容を本明細書に援用するものとする。IVバッグが昇圧されると、IVバッグの位置と点滴チャンバの位置とを逆にすることができ、すなわち、点滴チャンバをIVバッグの上方に上げることで、IVバッグ内の空気が頂部に移動して、流体ポート174の近傍の位置まで移動する。チューブセットがその位置にある状態で弁を開放することができ、それにより、IVバッグおよびIVバッグを点滴チャンバに接続するチューブから空気が排出またはパージされる。実質的にすべての空気がIVバッグからパージされた状態で弁300が再び閉鎖され、これにより、流体経路、および通常の使用に向けて向きが変えられた(例えば、IVバッグを点滴チャンバの上方に置いた状態の)チューブセットが封止される。次に、点滴チャンバが通常の操作の向きにある状態で(例えば、ネック部が垂直または上向きの状態で)(例えば、ボタンを押すことによって)弁を再び開放して、点滴チャンバを適切な充填レベルまで充填するかまたはプライミングし、点滴チャンバがプライミングされたら、(例えば、ボタンを解放することによって)弁を閉鎖する。点滴チャンバのポンピングは不要であり、したがって、追加の空気がIVバッグに押し込まれることはなく、その代わりに、IVバッグから点滴チャンバ体積までの流体経路に残る空気の総量が、開始時点と比較して著しく減少する。その後、チューブセットを患者に接続し、ローラクランプを使用して点滴速度を所望の速度に調整することができる。チューブセット、より具体的には点滴チャンバは、使用中どのような向きでも患者にリスクを生じさせることはない。同様に加圧輸液の場合にも、バッグは、患者へのリスクを増大させることなく、例えば、患者の身体に隣接するストレッチャー上など、任意の位置に配置することができる。ヒト患者における空気塞栓症の低減の他に、本明細書に記載されるチューブセット、特に圧力送達システムとともに使用されるもの(例えば、本明細書に援用される米国特許出願第16/093,552号に記載される圧力調整器を備える圧力カフ)は、動物を単一の場所に閉じ込め、IVバッグを高い位置に保つことが緊急対応シナリオと同様に問題となり得る獣医学分野などのヒト以外の患者に対する流体の送達を有利に改善することができる。
【0044】
図18は、本開示によるプライミング装置を組み込んだ点滴チャンバキャップ820の別の例を示している。点滴チャンバキャップ820は、IV輸液チューブセットを組み立てるための複数の交換可能な構成要素を含むモジュールシステムまたはキット800の一部として提供されていてよい。いくつかの実施形態では、モジュールシステム800は、図18に示す構成要素のすべて、またはそこに示す構成要素のサブセットを含むことができる。いくつかの実施形態では、システム800は、単一で機能するIVチューブセットを組み立て、提供するのに必要な構成要素を少なくとも含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、モジュールシステム800は、少なくとも1つの流入部材810と、少なくとも1つの点滴チャンバキャップ320と、キャップフィルタ840を支持し、これを点滴チャンバキャップ820に結合するための少なくとも1つのフィルタ支持体と、完全に組み立てられた点滴チャンバ850の少なくとも1セットの構成要素と、少なくとも1つの流出部材860とを含むことができる。いくつかの実施形態では、モジュールシステム800は、生理食塩水ベースの溶液とともに使用するのに適したIVスパイクとして構成された第1の流入部材810-1、コロイド流体とともに使用するのに適したIVスパイクとして構成された第2の流入部材810-2、大径延長チューブとして構成された第3の流入部材810-3、および小径延長チューブとして構成された第4の流入部材810-4といった複数の異なる流入部材を含む。大径延長チューブ810-3は、特定の獣医学的用途(例えば、ウマまたは他の大型の動物用)のような大型の被験者への使用に適することができ、一方で小径延長チューブ810-4は、ヒトまたはヒト以外の小型の被験者での使用に適することができる。各流入部材810は、点滴チャンバキャップ820に交換可能に結合されるように構成されていてよい。例えば、各流入部材810はそれぞれ、それらの近位端に、点滴チャンバキャップ820に交換可能に結合するための共通の結合インターフェース(例えば、結合器具)を有することができる。いくつかの実施形態では、共通インターフェースは、点滴チャンバキャップ820の遠位側に挿入されるように構成されている。点滴チャンバキャップと結合するための共通インターフェースは、流入部材の近位端の外面によって提供されていてよく、一方で流入部材の内面(すなわち、内径または他のパラメータ)は、異なる使用例に対して異なる構成とすることができる。いくつかの実施形態では、結合インターフェースは、点滴チャンバキャップ820の遠位側と摩擦的に係合される(例えば、プレス嵌めされる)ように構成されていてよい。他の実施形態では、結合インターフェースは、ねじ式カップリングを含むことができる。いくつかの実施形態では、モジュールキットから選択される流入部材は、追加的にまたは代替的に、点滴チャンバキャップ820に結合されていてよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、キット800は、複数の点滴速度調整器830を含み、その各々はフィルタ支持体としても機能し、したがってフィルタ支持体830とも呼ぶことができる。各フィルタ支持体(例えば、第1のフィルタ支持体830-1、第2のフィルタ支持体830-2、第3のフィルタ支持体830-3、および第4のフィルタ支持体830-4)は、異なるサイズのオリフィスを有する中央貫通路を含み、したがって、点滴チャンバ850への異なる点滴速度(例えば、それぞれ約60DPML、約20DPLM、約15DPLMおよび約10DPLM)を供給することができる。フィルタ支持体の出口オリフィスは、事実上任意の所望のサイズを有するように構成されていてよく、したがって、事実上任意の所望の点滴速度を有する点滴チャンバキャップを、本発明の開示のモジュールキットの交換可能な点滴速度調整器とともに提供することができる。各フィルタ支持体は、フィルタ層840とともにフィルタアセンブリ870(図20参照)に組み立てられるように構成され、これは、次に、点滴チャンバキャップ820の近位側に結合され、したがって、キャップフィルタアセンブリまたは単にキャップフィルタとも呼ばれる。
【0047】
キット800は、少なくとも1つの点滴チャンバ850を含むことができ、これは、全位置型点滴チャンバであってよいが、そうである必要はない。本明細書で使用される全位置型点滴チャンバという用語は、点滴チャンバの向きに関係なく点滴チャンバを適切に使用することができることを意味する。すなわち、点滴チャンバは、患者に対する点滴チャンバの向きおよび/または位置に関係しない静脈内流体送達用に特別に設計されている。いくつかの実施形態では、点滴チャンバ850は、複数の構成要素(例えば、上部および下部)から組み立てられており、少なくとも1つの点滴チャンバの構成要素が、キット800に含まれていてよい。点滴チャンバ850は、本明細書の例のいずれか(例えば、点滴チャンバ100)に従って、または既存のもしくは後に開発される任意の他の適切な点滴チャンバによって実施可能である。いくつかの実施形態では、キット800は、複数の異なる構成(例えば、4つの異なる構成)の点滴チャンバを組み立てるために交換される上部および下部の複数のセット(例えば、2つの上部および2つの下部)を含む。例えば、キット800は、第1の上部852a(例えば、剛性上部)と第2の上部852bとを含むことができ、これは、少なくとも部分的に可撓性材料で形成されていてよく、したがって、柔らかいまたは絞ることができるものであってよい。上部852aおよび852bの各々は、下部(例えば、第1の下部854-1および第2の下部854-2)に交換可能に結合するように構成されている。いくつかの実施形態では、キットは、血液ベースの生成物とともに使用されるように構成された第1の下部854-1を含む。第1の下部854-1は、図18の例に示すように、例えば、出口859全体にわたってまたはその上に設けられた血液フィルタ858を含む。いくつかの実施形態では、キット800は、血液フィルタを含むことが不要である非血液ベースの流体(例えば、生理食塩水ベースのIV流体)とともに使用されるように構成された第2の下部854-2を含む。上部(例えば、第1および第2の上部852aおよび852b)の各々は、下部(例えば、第1および第2の下部854-1および854-2)の各々に結合して、4つの構成のうちの1つを有する点滴チャンバ850を提供することができる。例えば、第1または第2の上部852aおよび852bのいずれか一方を第1の下部854-1に結合することで、血漿などの血液ベースの生成物の輸液のために、上部のいずれが使用されたかに応じて、軟質の頂部または硬質の頂部のいずれかの点滴チャンバ850-1を提供することができる。同様に、第1または第2の上部852aおよび852bのいずれか一方を第2の下部854-1に結合することで、生理食塩水ベースのIV流体のような非血液ベースの生成物の輸液に適した軟質の頂部または硬質の頂部のいずれかの点滴チャンバ850-2を提供することができる。いくつかの実施形態では、キット800は、1つのみの上部(例えば、剛性上部)と2つの下部とを含む。さらに他の実施形態では、キットは、2つの上部を含むが、単一の下部(例えば、第2の下部854-2)のみを含む。さらに他の実施形態では、キットは、1つのみの上部(例えば、剛性上部)と1つのみの下部(例えば、非血液ベースの下部)とを含む。
【0048】
モジュールシステム800は、複数の異なる流出部材860をさらに含むことができる。点滴チャンバの上流側の延長チューブと同様に、異なる内径の下流チューブが提供されていてよく、その各々は、異なる用途(例えば、医療用または獣医学用)に適していてよく、その各々は、出口859を被験者のIV部位に流体接続するために点滴チャンバの近位側に交換可能に結合されるよう構成されている。図18には、2つの異なる流出部材が示されており、すなわち、第1の大径流出部材860-1と第2の小径流出部材860-2が示されている。しかし、他の実施形態では、より少ないまたはより多くの流出部材860をキット800に含むことができる。本例の流出部材860の共通の結合インターフェース862は、点滴チャンバ850の近位側に挿入されてこれと摩擦的に係合されるように構成されている。他の例では、流出部材を点滴チャンバ850に結合する(例えば、ねじによる結合および/または接合)ための異なるインターフェースを使用することができる。
【0049】
図19図21をさらに参照して、本開示による点滴チャンバキャップ900に組み込まれるプライミング装置についてさらに説明する。点滴チャンバキャップ900を使用して、本明細書の例のいずれかによるIV輸液システムの点滴チャンバキャップ(例えば、モジュールシステム800の点滴チャンバキャップ820)を実施することができる。また、プライミング装置の要素、例えば閉鎖機構901を、本明細書に記載される点滴チャンバキャップの他の例のいずれか(例えば、スパイクキャップ201,501および601、またはキャップ400)の閉鎖機構(例えば、弁アクチュエータおよび弁300の封止部)の代わりに使用することができる。
【0050】
本開示のさらなる例によれば、使用時にIVバッグに接続される点滴チャンバのプライミング装置は、点滴チャンバキャップ900を含み、この点滴チャンバキャップ900は、点滴チャンバ(例えば、点滴チャンバ850-2)の入口に取り付けられ、これを覆うように構成された本体902によって部分的に実施可能である。いくつかの実施形態では、本体902は、点滴チャンバとの一体形成が可能であり、これにより、本体と点滴チャンバとの間の結合インターフェースの必要性を排除することができる。点滴チャンバキャップ900(例えば、本体902)は、遠位開口部903と、第1の近位開口部905と、遠位開口部903を第1の近位開口部905に接続する流体通路920とを備え、これにより、IV流体をIVバッグから点滴チャンバ850-2に通すことができる。点滴チャンバキャップ900は、第1の近位開口部905が点滴チャンバ内部と流体連通するように、その近位側によって点滴チャンバ850-2に結合されている。本体902は、ベントキャビティ927を画定する。ベントキャビティ927は、点滴チャンバキャップ900の近位側の第2の近位開口部926を通じて点滴チャンバ950-2の内部と連通し、またベント出口925を通じて周囲空気と連通する。このように、プライミングプロセス中に点滴チャンバ内部から空気を引き出すために、点滴チャンバ850-2の内部から点滴チャンバキャップ900を経て外部へ(すなわち、周囲空気へ)、ベント通路とも呼ばれる第2の流体通路が画定される。ある手段(例えば、閉鎖機構901)が、ベントキャビティ927、ひいては第2の流体通路に作動的に連結されている。この手段(例えば、閉鎖機構901)は、ベント出口925を選択的に開閉するために、ユーザの力によって操作される。手段が閉鎖位置にあり、したがってベント出口925が閉鎖または封止されると、ベントキャビティ927は周囲空気から気密封止され、したがって、周囲空気がキャップ900を通じてベントキャビティ927、ひいては流体システム(例えば、点滴チャンバおよび/またはIVバッグ)に進入することが防止される。このように、本開示のプライミング装置を使用して、IVバッグから実質的にすべての空気をパージすることができ、それによりさらに塞栓症のリスクが低減される。
【0051】
いくつかの実施形態では、ベントキャビティ927を選択的に開放および封止するための手段(例えば、閉鎖機構901)は、ベントキャビティ927内に配置された封止部(例えば、弾性部材907)を含む。閉鎖機構901は、封止部の少なくとも一部をベント出口925から離れるように一時的に移動させることでベント出口を開放するためのアクチュエータ(例えば、ボタン909)をさらに含む。閉鎖機構901(例えば、封止部およびアクチュエータ)は、閉鎖位置に向かって付勢されている。すなわち、封止部がベント出口に向かって付勢されることで、ベント出口が封止される。図19図21において、封止部は、弾性部材または本体907によって実施されている。弾性部材907は、任意の適切な形状を有する本体、例えば、本例のような実質的に円筒形の本体915、実質的に球状の本体、または別の適切な形状を有する本体(例えば、図24の例のようなカップ状の本体)によって実施可能である。弾性部材907は、任意の適切なエラストマー材料(例えば、シリコーン)から製造されていてよい。本例における封止部(例えば、弾性部材907)は、キャビティの基部917からベント出口まで延在している。アクチュエータ(例えば、ボタン909)は、(図20に破線で示すように)ベントキャビティ927の基部917に向かってベント出口から離れるように弾性部材を圧縮すべく弾性部材と係合(例えば、接触)するように配置されていてよい。本実施形態では、閉鎖機構901は、弾性部材907の弾性(またはばね力)によって閉鎖位置に向かって付勢されている(例えば、封止部がベント出口925に向かって付勢されている)。他の実施形態では、封止部は、例えば、図4および図5に示すように、封止部自体以外のばねまたは他の弾力的に変形可能な部材によってベント出口に向かって付勢されていてよい。例えば、いくつかのそのような他の実施形態では、封止部は、Oリング319によって実施可能であり、アクチュエータ(例えば、ボタン310)は、Oリングをベント出口に向かっておよびベント出口から離れるように平行移動させることでベント出口が開閉されるように構成されていてよい。
【0052】
閉鎖機構901の封止部およびアクチュエータは、ここでは実質的に環状構造体として示されている保持具911によってキャビティ927内に保持されていてよい。環状保持具911は、キャビティ927内にプレス嵌めされ、ひいては摩擦的に保持されるように構成されていてよい。他の実施形態では、保持具911は、使用中にキャビティ927に対して固定されたままとなるように、本体902にねじ込まれかつ/または接合されていてよい。ベントキャビティ927は、座部919を含むことができ、この座部919に弾性部材907がプレス嵌めされる。保持具911は、キャビティ927にプレス嵌めされると肩部に接することができ、この肩部の下方で基部917が凹んでいることによって座部919が画定される。弾性部材907は、純粋に弾性部材907と座部919との間の摩擦力によって、または任意に追加的にキャビティ927に接合されることによって、キャビティ927内(例えば、座部919内)に保持されていてよい。いくつかの実施形態では、キャビティ927は、保持具911および/または圧縮下にあるときの弾性部材907の任意の拡張を受容するために、肩部からベント出口925に向かってより広くなっていてよい。弾性部材907は、幅、この場合直径D、および弾性部材907の第1の側面907aと第2の側面907bとの間に画定される高さHを有する実質的に円筒形のエラストマー体として示されている。他の実施形態では、弾性部材907は、異なる形状(例えば、矩形角柱、円錐台状、または他の適切な形状)を有することができる。例えばボタン909によって弾性部材907の第2の側面907bが押されることで、図20に示すようにアクチュエータ(例えば、ボタン909)が開放位置へと作動されると、弾性部材907がキャビティ927の基部907に押し付けられ、その高さHがわずかに減少して、ベントキャビティ927から流体経路813が開放される。いくつかの実施形態では、弾性部材907は、その静止(例えば、閉鎖)状態でボタンへの所望の量の付勢力を提供するために、その閉鎖状態または公称状態で少なくとも部分的に圧縮されていてよい。そのような例では、ボタンが押されると、弾性部材907は、その部分的に圧縮された(または公称)状態からさらに圧縮または変形される。
【0053】
上述したように、保持具911は、ベントキャビティを実質的に囲み、かつベント出口を画定する中央ボアを有する環状構造体によって実施可能である。アクチュエータは、基部906および柱部908を有するボタン909によって実施可能である。基部906は、柱部908よりも広い。いくつかの実施形態では、基部は、ボタン909の他のどの部分よりも広い。基部906は、保持具911によってベントキャビティ927内に配置され保持されており、一方で柱部908は、保持具911およびベント出口925の中央ボアを通じてベントキャビティ927の外に延在している。基部906が封止部(例えば、弾性部材907)に(例えば、接触によって)係合することにより、封止部の少なくとも一部がベント出口925から離れるように一時的に移動する。使用中、ボタン909は、保持具911に対して移動する。ボタン909は、封止部材の弾性によって外部に向かって付勢され、ユーザの力に応答して封止部の付勢力に逆らって反対方向に移動することで、ベント出口が開放される。いくつかの実施形態では、保持具911の中央ボアの直径は、ボアの長さに沿って変化し得る。中央ボアは、外部(すなわち、周囲空気)に面する側の近傍よりも、キャビティ927に面する保持具911の側の近傍で広くなっていてよい。中央ボアは、基部906よりも狭いが、通路およびそれを通る柱部908の自由な移動を受容するのに十分な幅の第1の部分を有することができる。ボアは、第1の部分に隣接し、第1の部分よりも広い第2の部分を含むことができる。第2の部分は、基部が第2の部分へ自由に出入りできるように、基部906の幅を受容するのに十分な幅を有することができる。ボアは、第2の部分に隣接し、第2の部分よりも広い第3の部分を有することができる。テーパ面は、第2の部分を中央ボアの第3の部分に接続し、ベント出口925の封止面913を提供することができる。封止部は、基部917からベント出口まで、より具体的にはベント出口925の封止面913まで延在するようなサイズであってよい。本例では、円筒形の弾性部材907は、その公称の、実質的に圧縮されていない状態において、座部917の幅と一致し、かつ中央ボアの第3の部分の直径よりも小さい直径Dを有し、基部917とテーパ状の封止面913との間の距離と一致する高さHを有する。保持具911を越えて延在するボタン909の外部部分は、ボタン909を偶発的な作動から保護するように構成されたシュラウドによって囲まれていてよい。図19図21の例では、柱部908のすべての周辺側面を囲む実質的に円筒形の筐体である。いくつかの実施形態では、1つ以上の長さ方向の溝904が、ボタン909の外面に沿って形成され、キャビティ927からの空気の流出を促進していてよい。
【0054】
フィルタアセンブリ870は、本体902の近位側に結合されていてよい。フィルタアセンブリは、フィルタ層840(例えば、微生物フィルタ)を含む。フィルタ層840は、細菌または他の生物を濾過するための任意の適切なミクロン定格を有することができる。いくつかの例では、フィルタ層840は、1ミクロンの定格を有するフィルタであってよい。いくつかの実施形態では、フィルタ層840は、1.2ミクロンのフィルタであってよい。フィルタ層840は、フィルタ担体または支持体830に取り付けられていてよい。図20の例では、フィルタ支持体830は、点滴チャンバキャップ900の近位側の環状キャビティ874に収容されている。環状キャビティ874は、点滴チャンバキャップ900の出口905を画定する点滴チャンバキャップ900の出口チューブ924を取り囲んでいる。フィルタ支持体830は、その遠位側に凹部878を含み、その近位側に管状延在部879を含む。中央貫通路872は、遠位側の凹部878から管状延在部879の近位端の開口部まで延在している。中央貫通路878は、流体通路920と実質的に位置合わせされていてよいが、流体通路920とは異なる直径を有することができ、したがって、例えば出口チューブ924によって提供される点滴速度から点滴チャンバへの点滴速度を低下させるための点滴速度調整器として機能することができる。フィルタアセンブリ870がキャップ900に結合されると、出口チューブ824はフィルタアセンブリの凹部878に収容され、一方でフィルタ支持体の実質的に環状の部分876は環状キャビティ874に収容(例えば、摩擦的に係合)される。フィルタ支持体は、フィルタ支持体830の近位側で中央貫通路872の周囲に放射状に配置された1つまたは複数の開口部879を含む。1つ以上の開口部879は、フィルタ支持体830の反対側の遠位側にある環状溝に接続する。空気は、フィルタ支持体830を通って第2の近位開口部926に向かって、1つ以上の開口部879を通ってベントキャビティ927に連通される。いくつかの実施形態では、ベントキャビティを通るおよびベントキャビティから出る空気の流量を減らすことが望ましい場合があり、フィルタ支持体830を通る開口部879および付属のチャネルのサイズを用いて、空気の流れをそのように制限することができ、これによって、点滴チャンバの充填速度が制限され、かつ点滴チャンバの過剰充填リスクを低減させることができる。フィルタ層840は、流体システムの内部を無菌に保持するために、1つ以上の開口部879のそれぞれを覆うように配置されている。その近位側において、本体902は、流入部材の近位端を収容するための座部964を画定することができる。座部964は、流体通路920と位置合わせされていてよく、それと流体連通している。
【0055】
図24は、本明細書のさらなる例によるプライミング装置1001を示す。本明細書の他の例と同様に、プライミング装置1001は、点滴チャンバ入口に近接した位置で点滴チャンバアセンブリに組み込まれていてよい。図24では、本体902は、ここではコロイドスパイク810-2として示されている流入部材を、本体902の遠位側の結合インターフェースに作動的に結合した(例えば、中に挿入された)状態で組み立てられた状態で図示されている。他の実施形態では、異なる流入部材が、本体902に組み付けられていてもよいし、それと一体形成されていてもよい。図25では、プライミング装置1001は、キャップ本体902のキャビティに受容された状態で示されている。プライミング装置1001は、図19および図20の例を参照して説明したプライミング装置と同様の構成要素を含み、同様に機能することができる。例えば、図24のプライミング装置1001は、ここでは弾性本体907として示されている封止部材または単に封止部を含み、これは、任意の適切なエラストマー材料(例えば、シリコーン、ゴムまたは他のエラストマー)で形成されていてよい。プライミング装置はまた、封止部(例えば、弾性本体907)と係合し、封止部の少なくとも一部をベント入口から離れるように一時的にずらすことでプライミング装置を開放位置にするアクチュエータ(例えば、ボタン909’)を含む。封止部およびアクチュエータは、保持具911によってキャビティ927内にしっかりと保持されていてよい。
【0056】
上述したように、ベント出口は、保持具911、具体的には保持具911の中央ボアによって少なくとも部分的に画定することができる。中央ボアは、保持具911を通るボタン909’の断面形状と協働する断面形状を有することができる。したがって、実質的に円形の断面を有するものとして示されているが、保持具911の中央ボアは、他の例では非円形(例えば、矩形または三角形)の断面を有することができる。保持具911の中央ボアの幅(例えば、直径)は、先に説明したように、その長さに沿って変化し得る。保持具911は、封止部がベント出口を封止するために押す封止係合面を画定する。保持具911の封止係合面は、図24に示すように、封止部に最も近い中央ボアの2つの隣接部分を接続するテーパ面(例えば、実質的に平面または曲面)によって提供されていてよい。テーパ状の封止係合面は、より大きな係合面積を提供することによって、より一貫した信頼性のある封止インターフェースを提供することができるが、いくつかの実施形態では、テーパ面を省略することができ、封止部は、代わりに、封止部に最も近い中央ボアの2つの部分の間の縁部を押すことができる。いくつかの実施形態では、長さ方向の溝1011は、保持具の中央ボアの第3の部分で画定されており、特にベント出口を開放するために封止部がキャビティ927内でさらに圧縮されるときに、実質的に遮られないままの空気の流れの経路を提供することができる。
【0057】
弾性本体907は、ここでは、周壁(または脚部分)1019および中央部分1015によって画定された実質的にU字形の断面を有する実質的にカップ状の本体として示されている。弾性本体907は、周壁(または脚部分)1019がキャビティ927の基部917に接するように提供された状態で、キャビティ927の座部内に収容されている。ボタン909’は、中央部分1015と係合する。具体的には、ボタン909’は、キャビティに面する基部917’の側面から延在する中央突出部916を含むことができる。ボタン909’の基部917’、より具体的には中央突出部916は、ユーザの力に応答して弾性本体907の中央部分1015を押し、弾性本体907を基部917に向かって圧縮する。そのように圧縮されると、中央部分1015は、基部917に向かって変形またはずれることができ、これにより、脚部分1019が半径方向内側に変形するかまたはずれ、弾性本体907と封止係合面との間の封止が破られてベント出口が開放される。封止部(例えば、弾性本体907)および/またはアクチュエータ(例えば、ボタン909またはボタン909’)は、他の実施形態では異なるように構成されていてよい。例えば、弾性本体907は、実質的にボール形状(例えば、実質的に球状の弾性本体)であってよく、これは、座部に着座していてもよいし、任意に保持具911によってのみキャビティ内に保持されていてもよい。さらに他の実施形態では、封止部は、例えばアコーディオン、バッフルまたは他の形状を有する異なる構成であってよく、これには、ベント出口から離れる封止部の圧縮を促進するための弾性部材の高さ(H)に沿った1つ以上の撓みが含まれ、このような場合、これはいくつかの非弾性材料で形成されていてよい。保持具911の中央ボアは、様々な異なる形状を有する封止部を受容し、保持し、かつ作動的な圧縮が可能となるように好適に構成されていてよい。いくつかの実施形態では、封止部(例えば、弾性部材907)は、弾性部材の非圧縮状態に相当し得る公称状態、または弾性部材が保持具に対して少なくともわずかに圧縮されてベント出口が封止される状態で、(例えば、保持具911によって)キャビティ内に保持されていてよい。ボタンに加えられたユーザの力に応答してベント出口が開放されると、場合によってはその公称圧縮状態からさらに、ベント出口から離れるように封止部が圧縮される。
【0058】
本明細書のいくつかの実施形態によるプライミング装置を備える輸液システムの組み立ておよび操作について、図21の部分切断図に示す点滴チャンバアセンブリを参照して、また図22および図23のフロー図を参照して、さらに説明する。図22は、本開示のいくつかの例による、モジュールシステムまたはキットから輸液チューブセットを組み立てるためのプロセス2200のフロー図である。図18を参照して説明したように、モジュールキットは、複数の異なる流入部材を含むことができ、その各々は、本開示によるプライミング装置を具現化する点滴チャンバキャップと交換可能に使用可能であってよい。プロセス2200は、ブロック2210に示すように、フィルタアセンブリを選択することによって開始することができる。モジュールシステムにおける各フィルタアセンブリのフィルタ支持体は、異なる点滴速度が提供されるように構成されていてよく、したがって、フィルタアセンブリは、所望の点滴速度に基づき選択することができる。選択されたフィルタアセンブリは、ブロック2212に示すように、例えば、キャップの底部側の環状キャビティにフィルタ支持体をプレス嵌めすることによって、点滴チャンバキャップの底部側に結合することができる。点滴チャンバは、ブロック2214に示すように、チューブセットで投与されるIV流体の種類に基づいて選択することができる。例えば、血液ベースの生成物の場合、ブロック2216に示すように、血液フィルタを有する点滴チャンバを選択し、選択した点滴チャンバの入口に点滴チャンバキャップを取り付ける。点滴チャンバキャップは、本開示の実施形態のいずれかによるプライミング装置を組み込んだキャップであってよい。流入部材をブロック2218に示すように選択して、ブロック2220に示すように点滴チャンバキャップの入口に作動的に結合する。いくつかの実施形態では、流入部材の近位端を点滴チャンバキャップの遠位側に(例えば、座部964に)挿入することによって、選択した流入部材を点滴チャンバキャップに結合する。選択した流入部材がスパイクと一体型でない場合(ブロック2221参照)、例えば、選択した流入部材が延長チューブである場合には、ブロック2222に示すように、流入部材の遠位端にスパイクを接続する。流出部材は、ブロック2224に示すように、複数の異なる流出部材(例えば、直径の異なるチューブ)から選択することができる。プロセス2200の1つ以上のステップは、異なる順序で実行することができ、例えば、ブロック2218のステップは、ブロック2216のステップの前に実行することができる。同様に、ブロック2224のステップは、ブロック2218のステップの前に実行することができる。例えば図21に示すような輸液チューブセットを組み立てるために、各ステップの順序を変えても、各ステップを組み合わせても、省略してもよく、また追加のステップが含まれていてもよい。
【0059】
図23は、本開示のいくつかの例による輸液チューブセットの点滴チャンバをプライミングするためのプロセスのフロー図である。プロセス2300は、例えば上述したプロセス2200を用いて輸液チューブセットを少なくとも部分的に組み立てた後に開始することができる。プロセス2300は、ブロック2310に示すように、点滴チャンバの下流の近位チューブ上に位置するレギュレータクランプを閉鎖することなどにより、点滴チャンバの流れを制限することによって開始することができる。次に、スパイクキャップを取り外し、ブロック2312に示すように、スパイクをIVバッグの流体ポートに挿入する。次に、ブロック2314に示すように、スパイクバッグを圧縮スリーブに入れ、スリーブを膨らませて、適切な(例えば、調整された)圧力となるまでバッグを圧縮する。圧縮スリーブを通じてバッグに加えられる外部圧力は、圧力調整器を用いて適切な圧力(例えば、約100mmHg、200mmHg、またはIV療法中の周囲圧力に応じて適切となり得る他の圧力)に調整することができる。ブロック2316に示すように、流体ポートがバッグの頂部に位置するようにIVバッグを逆にする。ブロック2318に示し、また図21にも示すように、プライミング装置を備えるキャップが点滴チャンバの頂部に位置するように、点滴チャンバを直立位置に向ける。点滴チャンバを直立位置に保持しながら、そしてブロック2320に示すように、例えば、キャップに一体化された閉鎖機構901のボタンを押すことによって、プライミング装置を開放位置へと作動させる。ブロック2322において、IVバッグからの実質的にすべての空気がバッグからパージされるまで、ボタンを押下位置で保持する。流体803(図21参照)が点滴チャンバ850-2を満たすと、バッグからの空気が点滴チャンバ内に入り、その後キャップ内のベント経路813を通って点滴チャンバから出る。ブロック2322に示すように、点滴チャンバが充填ラインまで充填されるまでボタンを押下した状態で保持するが、これは、数秒という短い時間で達成することができる。ブロック2324に示すように、点滴チャンバ内の流体が充填ラインまできたらボタンを解放し、これにより、点滴チャンバキャップのベント通路が気密封止され、点滴チャンバおよびバッグが気密封止される。プライミング弁が閉鎖された状態では、バッグおよび点滴チャンバには空気が進入することができない。ブロック2326に示すように、プライミング弁が閉鎖された状態で、レギュレータクランプを開放して点滴チャンバの下流のIVラインをパージし、ブロック2328に示すように、IVラインを被験者のIV部位に安全に接続してローラクランプを所望の点滴速度に調整することができる。
【0060】
本例の説明は、本開示の理解の一助とするために提供されるものである。本開示の様々な態様および特徴の各々を、有利には、いくつかの例において個別に、または他の例において本開示の他の態様および特徴と組み合わせて使用することができる。したがって、本開示は例の観点から示されているが、任意の例の個々の態様を、個別に、またはその例もしくは任意の他の例の態様および特徴と組み合わせて特許請求することができる。本例の説明は、本開示の全内容および範囲を代表することを意図したものではなく、またそうしたものと解釈されるべきでもない。本開示は、本出願において様々なレベルで詳細に記載されており、特許請求の範囲に記載される主題の範囲に関するいかなる限定も、本明細書における要素や構成要素などの包含または非包含のいずれかによって意図されるものではない。本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化することができる。記載された実施形態は、すべての点において例示としてのみ考慮され、限定的なものではない。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等物の意味および範囲に合致するすべての変更が、その範囲内に包含されるものとする。
図1
図2
図3
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図5
図6A
図6B
図6C
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【国際調査報告】