(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の貯蔵、輸送及び処分のための容器
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20230111BHJP
G21F 5/005 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G21F9/36 501A
G21F9/36 501F
G21F9/36 501G
G21F5/005
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516692
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 RU2020000483
(87)【国際公開番号】W WO2021049974
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522101690
【氏名又は名称】リミテッド ライアビリティ カンパニー セラミック テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲナディ イヴァノヴィチ ババヤンツ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンチン ゲンナジエヴィチ ババヤンツ
(72)【発明者】
【氏名】オレグ ヴィタリエヴィチ シャリーキン
(57)【要約】
本発明は、核技術の分野に関する。固体放射性廃棄物の貯蔵、輸送及び処分のための容器は、反応焼成したシリコンカーバイドで作成されたキャスク(コフィン)を含み、このキャスクは、3~30重量%の量で遊離シリコンを含み、キャスクの表面に堆積された気相シリコンカーバイドの層を有する。キャスクの外層は、60~70%の開放気孔率及び5~6mmの孔径を有する金属発泡体で作成され、孔は、40~50pmの分散度を有する炭化ホウ素粉末で満たされ、HLWによって放出される核放射線から環境を保護する。1~1.5mmの厚さを有するステンレス鋼で作成され、放射性廃棄物を受けることを意図されたキャニスターは、シリコンカーバイドキャスクの内側に置かれる。シリコンカーバイドキャスクとステンレス鋼キャニスターとの間の5mmの間隔は、HLWによって放出される核放射線から環境を保護する炭化ホウ素粉末で満たされる。シリコンカーバイドキャスクは、反応溶接法を用いてシリコンカーバイドで作成されたカバーでシールされる。開放気孔率を有する金属発泡体として使用される金属発泡体は、チタン、アルミニウム、銅などを含む金属の群から選択される。本発明は、固体放射性廃棄物用の容器の強度を高めることを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3~30重量%の量で遊離シリコンを含む反応焼成されたシリコンカーバイドで作成されたキャスクを含み、該キャスクの表面上に堆積された気相シリコンカーバイドを有する、固体放射性廃棄物を貯蔵し、輸送し、及び処分するための容器であって、前記キャスクの外側層が60~70%の開口気泡率及び5~6mmの孔径を有する金属発泡体で作成され、孔が40~50pmの分散度を有する炭化ホウ素粉末で満たされ、キャニスターが1~1.5mmの厚さを有するステンレス鋼で作成され、且つ固体放射性廃棄物を受けることを意図されたキャニスターがシリコンカーバイドキャスクの内側に配置され、シリコンカーバイドキャスクとステンレス鋼キャニスターとの間の5mmの間隙がHLWによって放出される核放射線から環境を保護する炭化ホウ素粉末で満たされ、シリコンカーバイドキャスクが反応溶接法を用いてシリコンカーバイドで作成されたカバーでシールされることを特徴とする、容器。
【請求項2】
アルミニウム、銅、ニッケル、スチール、ブロンズなどを含む金属の群から選択される、開口気泡率を有する金属発泡体として使用される金属発泡体を特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
HLWによって放出される核放射線から環境を保護する炭化ホウ素粉末を用いることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核技術の分野、特に、環境に有害な物質から環境を保護するためのデバイスに関し、当該デバイスは、原子力船(nuclear-power vessels)からの放射性廃棄物、化学産業の毒性物質及び他の有害な産業廃棄物などの、特に有毒な廃棄物の貯蔵、輸送及び処分に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
固体放射性廃棄物に使用できる容器は公知であり、この容器は、保護ハウジングの形態で作成され、保護ハウジングは、廃棄物が内部に置かれるスチール製収納部(steel capacity)を有するスチールで作成され、ハウジングと容器の間の空間は、ホルムアルデヒド樹脂で作成された充填剤で満たされる(米国特許第4,377,509号明細書(US Patent No. 4377509, G21F 9/24, 1983)(特許文献1))。
【0003】
公知の容器の不利な点は、この容器の不十分な耐腐食性に関連した廃棄物の処分の信頼性が不十分であることである。固体放射性廃棄物に使用できる容器は公知であり、この容器は多層ハウジングの形態で作成され、その中間層の1つがシリコンカーバイドで作成されている(特開昭60-022700号公報(Japan No. 60-022700, G21F 9/36, 1985)(特許文献2))。
【0004】
この容器の不利な点は、シリコンカーバイド層の脆さによる不十分な強度特性であり、これは、廃棄物の充填、その輸送の間の容器の移動、及びコンクリート又は鋳鉄で作成された輸送容器への充填に関連した技術的操作の間の操作上のその信頼性を低下する。
【0005】
技術的本質の観点から本発明に最も近く、且つ実現された結果は、固体放射性廃棄物用の容器であって、この容器は、反応性焼成したシリコンカーバイドで作成されたキャニスターを含み、このキャニスターは、3~30重量%の量で遊離シリコンを含み、キャニスターの表面に、気相シリコンカーバイドの層が適用されている容器である(ロシア国特許第2140402号(Patent RU No. 2140402, G21F 5/005, 1998)(特許文献3))。
【0006】
固体放射性廃棄物の貯蔵、輸送及び処分のための公知の容器の不利な点は、シリコンカーバイドキャニスターの衝撃強度の低さであり、この強度は、シリコンカーバイドキャニスターに1200℃の温度を有するガラス化された廃棄物を注ぐことによって容器に放射性廃棄物が置かれるので更に低下する。これは、キャニスターに熱ストレス及びガラス化された廃棄物の冷却後の残留ストレスの発生をもたらし、技術的な操作、即ち廃棄物の充填、その輸送中の容器の移動、及び他の扱いの間の操作信頼性を低下する。加えて、この容器の不利な点は、放射性廃棄物から放出される放射線に対する環境保護の欠如である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,377,509号明細書
【特許文献2】特開昭60-022700号公報
【特許文献3】ロシア国特許第2140402号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、固体放射性廃棄物用の容器の強度及びその信頼性を高めること、並びに、HLWから放出される放射線から環境を保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、3~30重量%の量で遊離シリコンを含むシリコンカーバイドを反応焼成して作成され、表面が気相シリコンカーバイドの層で覆われたキャニスターの外側層が、金属発泡体(発泡アルミニウム、発泡チタン、銅発泡体等)であって、発泡アルミニウムの特定の場合では60~70%の開放気孔率及び5~6mmの孔径を有する金属発泡体で作成され、当該孔が、40~50pmの分散度を有する炭化ホウ素粉末で満たされ、HLWによって放出される核放射線から環境を保護する、という形式で実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、原子力プラントからの放射性廃棄物、原子力船、化学産業の毒性物質、及び他の有毒な産業廃棄物などの高度に有毒な廃棄物の貯蔵、輸送及び処分のための容器の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この目標の達成と、本発明の明確な特徴との間の因果関係は以下のとおりである。
【0012】
技術的操作(廃棄物の充填、輸送容器に廃棄物を充填する時に容器を移動すること、及び他の行為)の間に可能な衝撃に備えて、シリコンカーバイドキャニスターが無傷であることを保証する数値に衝撃力を減少させるためには、容器の外側層は50~60%の開放気孔率及び5~6mmの孔径を有する金属発泡体で作成され、当該孔は、40~50ミクロンの分散度を有する炭化ホウ素粉末で満たされ、HLWによって放出される核放射線から環境を保護する。
【0013】
シリコンカーバイドキャニスター内の残留ストレスを減少するためには、溶融ガラス化された高度に活性な廃棄物とシリコンカーバイドキャニスターの壁との接触を排除する。このためには、溶融ガラス化された高度に活性な廃棄物を、スチール収納容器であって、収容容器の壁とキャニスターの間の間隙が5mmであり、その間隙に100~150ミクロンの炭化ホウ素粉末を注いだシリコンカーバイドキャニスター内に配置されたスチール収納容器に注ぐ。
【0014】
外側層のパラメータ(キャニスターを破壊から保護するアルミニウム発泡体の厚さ、その多孔率、孔のサイズ、孔に配置された粉末の量)は、キャニスターの大きさ及びその重量に依存する。これらのパラメータの決定は、数学的方法によって行われ、全ての計算はANSISプログラムで実施される。初期データとして、容器の重量は170kgであり、キャニスターの材料の強度は270MPaであり、1.2mの高さから落下させた場合のキャニスターのストレスは20~25MPaを越えてはならなかった。これらの条件下で、計算の結果は、以下のとおりであった。60~70%の多孔率、5~6mmの孔径を有するアルミニウム発泡体の厚さは、110mmである。
【実施例1】
【0015】
提案されるデザインは以下のとおり実行される。
【0016】
シリコンを濾過していないシリコンカーバイドで作成されたキャニスターを、以下の技術を用いて製造する。必要な外形を有するビレット(billet)を静水圧によって必要な処方の充填物から押圧し、次いで、T=150℃での重合、T=900℃での炭素化、T=1500℃でのケイ化の熱処理を行い、3~30重量%の遊離のシリコンの含有量を有するシリコンカーバイドキャニスターを得た。サンドブラスト処理後、シリコンカーバイド層を気相法によってキャニスターの外側表面に適用する。この方法で得られたキャニスターの外側表面上に、110mmの厚さの金属発泡体(アルミニウム発泡体、チタン発泡体、銅発泡体など)の層を配置し、1.5mm厚のスチールシェルリングを金属発泡体の頂部に配置する。金属発泡体の孔は、40~50ミクロンの分散度を有するB
4C粉末で満たされる(
図1参照)。
【0017】
試験結果
1.2mの高さからスチールプレート上に落としたとき、試作品に従って作成された容器は、崩壊した。これは、衝撃によって生じるストレスのレベルが250MPaの、シリコンカーバイドの強度を超えるためである。
【0018】
50~60%の多孔率、5~6mmの孔径を有し、40~50ミクロンの分散度を有する炭化ホウ素粉末で埋められたアルミニウム発泡体の外側層を備えたシリコンカーバイドキャニスターを含む実験容器の外形及び堅さの安定性の実験的決定は、1.2mの高さからの投出試験による試験センター「TSNIIMASH-ANALIRIKA-PROCHNOST」に従って行った。
【0019】
以下の結果を得た。
- HLWを含有する容器シミュレーターを備えたシリコンカーバイドキャニスターを含む容器の垂直落下の間に、その完全性及び堅さが維持された。
- HLWを含有する容器シミュレーターを備えたシリコンカーバイドキャニスターを、側面を水平にして容器を垂直落下させた間に、その完全性及び堅さが維持された。
【0020】
投出の間に、キャニスターに生じたストレスは10~15MPaを越えなかった。
【0021】
1.2mの高さから落下させた場合にえられた、キャニスターの陽性の試験結果は、実験と予備計算結果の十分な一致、並びに、必要な特性を有する容器の強度と信頼性に準拠することを示した。
【0022】
従って、公知の容器(ロシア国特許第2140402号(Patent RU No. 2140402, G21F 5/005, 1998)(特許文献3))と比較して、放射性廃棄物の貯蔵、輸送及び処分用の提案された容器は、放射性廃棄物の貯蔵及び処分、並びに放射線からの環境保護に対する高められた強度及び信頼性を提供する。
【0023】
HLWを含む容器とシリコンカーバイドキャニスターの内側表面との間の間隙に配置され、更にアルミニウム発泡体の層内に配置された炭化ホウ素粉末は、バックグラウンドの値に対して、放射線の強度を減少する。
【0024】
容器は、以下のものを含む(
図1):
1 シリコンを濾過していないシリコンカーバイドで作成されたキャニスター
2 孔と連通し、60~70%の多孔率を有し、その孔が炭化ホウ素の粉末で満たされた金属発泡体の層
3 金属シェルリング
4 高度に活性な廃棄物で満たされたスチールキャニスター
5 高度に活性な廃棄物
6 キャニスターとキャニスターの内側表面との間の間隙
7 炭化ホウ素粉末の充填物
8 シリコンを濾過していないシリコンカーバイドで作成されたキャニスターの蓋であり、反応溶接によってキャニスターに溶接された蓋。
【国際調査報告】