IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンス エティカー アーゲー マシーネン− ウント アパラーテファブリークの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】プラスチック製のクイックコネクタ
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/098 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
F16L37/098
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520945
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2019074318
(87)【国際公開番号】W WO2021069048
(87)【国際公開日】2021-04-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514052379
【氏名又は名称】オエティカ シュヴァイツ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】ライマン・モーガン
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AB01
3J106BA02
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE31
3J106BE32
3J106CA19
3J106EA03
3J106EB04
3J106EC01
3J106EC07
3J106ED12
3J106EE02
(57)【要約】
本発明は、流体接続システムの管状のオス部(50)とメス部(40)との間のスナップ接続を確立するためのプラスチック材料製のクイックコネクタを提供する。コネクタは、メス部(40)の口部(41)内に配置されるように構成された保持手段(10)を有し、保持手段(10)は、オス部(50)およびメス部(40)とそれぞれスナップ係合するための第一および第二の湾曲部材(12、22)を有している。第一および第二の湾曲部材(12、22)は、保持手段(10)の、周方向に離れた部位に設けられており、保持手段(10)の全体的な軸方向寸法が減少するようになっている。
【選択図】FIG.1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のオス部(50)をメス部(40)に接続するためのクイックコネクタであって、
前記メス部(40)の口部(41)内に配置されて前記オス部(50)と前記メス部(40)とをシールするよう構成されたシーリング手段(30)と、
前記オス部(50)とのスナップ係合のために径方向内側に向かって突出した第一タン部(14)を有する少なくとも1つの第一の湾曲部材(12)と、前記メス部(40)との係合のために径方向外側に向かって突出した第二のタン部(24)を有する少なくとも1つの第二の湾曲部材(22)と、を有し、前記口部(41)内に配置されるように構成された管状の保持手段(10)と、を備え
前記第一および第二の湾曲部材(12、22)は、前記保持手段(10)の周方向に離れた部位に設けられている
ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のクイックコネクタであって、
軸方向のスリット(15)が、前記第一および第二の湾曲部材(12、22)の間に形成されている
ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクイックコネクタであって、
前記保持手段(10)は、プラスチック材料で形成され、および/または、好ましくは射出成形により、一体型の構造体として形成されている、
ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のクイックコネクタであって、
前記保持手段(10)は、少なくとも2つの第一の湾曲部材および少なくとも2つの第二の湾曲部材(12、22)を備え、
前記第一の湾曲部材(12)は、前記保持手段(10)の周方向に、前記第二の湾曲部材(22)と交互に配置されている、
ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のクイックコネクタであって、
前記第一の湾曲部材(12)は、前記保持手段(10)のリング形状のベース部(11)から軸方向に突出した第一のリングセグメント(13)を有し、前記第一のタン部(14)は、前記第一のリングセグメント(13)から径方向内側に向かって突出しており、および/または
前記第二の湾曲部材(22)は、前記保持手段(10)の前記リング形状のベース部(11)から軸方向に突出した第二のリングセグメント(23)を有し、前記第二のタン部(24)は、前記第二のリングセグメント(23)から径方向外側に向かって突出している、
ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のクイックコネクタであって、
前記第一および/または第二のタン部(14、24)はリングセグメント形状を有する
ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のクイックコネクタであって、
前記保持手段(10)は、前記シーリング手段(30)を、前記保持手段(10)と軸方向において隣り合うが重ならないシーリング位置に保持するように構成され、前記シーリング手段(30)が、前記クイックコネクタのロック状態において、前記オス部(50)および前記メス部(40)の双方と接触するようになっている
ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のクイックコネクタであって、
前記コネクタが組み込まれていない状態において、前記保持手段(10)および前記シール手段(30)を保持するためのプラグ(60)をさらに備え、
前記プラグ(60)は、
前記保持手段(10)および前記シール手段(30)を介して延びるように構成されたシャフト部(61)と、
前記保持手段(10)よりも大きな外径を有し、前記保持手段(10)から軸方向外側に突き出してユーザにより把持されるようにされたグリップ部(64)と、
を有することを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項9】
請求項8に記載のクイックコネクタであって、
前記シャフト部(61)は
前記保持手段(10)内に挿入されたときに、前記第一の湾曲部材(12)を外側に反らすように構成された、外径が徐々に増加するテーパー部(62)、および/または
前記プラグ(60)が前記保持手段(10)に完全に挿入されかつ前記プラグ(60)が前記保持手段(10)に対して第一回転位置に向けられたときに前記第一のタン部(14)と係合するための溝部(63)を有し、
周方向において前記溝部(63)に隣接する前記シャフト部(61)のセクションは、溝を有しておらず、前記プラグ(60)が前記保持手段(10)に対して軸方向に自由に移動可能な。前記保持手段(10)に対する第二回転位置では、前記プラグ(60)は前記保持手段(10)に係合しない
ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載のクイックコネクタと、
好ましくはスピゴットである管状のオス部(50)と
好ましくはコネクタブロックに穴として形成されたメス部(40)と、
を備えることを特徴とする流体接続システム。
【請求項11】
請求項10記載のシステムであって、
前記管状のオス部(50)は
前記テーパー部(51)が前記保持手段(10)に挿入されたときに前記第一の湾曲部材(12)を径方向外側に反らせるために外径が徐々に増加するテーパー部(51)、および/または
前記オス部(50)が前記保持手段(10)との係合位置にあるときに前記第一のタン部(14)と係合するように構成された肉厚部(52)を、有する
ことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10または11に記載のシステムであって、
前記メス部(40)は、その口部(41)の周囲に形成された環状溝(42)を有し、
前記第二のタン部(24)は、前記メス部(40)が前記保持手段(10)との係合位置にあるとき前記環状溝(42)内に突出するように構成されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記口部(41)は、前記メス部(40)の軸方向隣接部(44)よりも大きな内径を有し、
前記口部(41)は、前記シーリング手段(30)を受けるための段部(43)を有する、
ことを特徴とするシステム。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
クイックコネクタまたはスナップコネクタは、パイプソケット、スピゴットまたはニップルなどのオス部とメス部(特に流体伝導システムのブロック部の穴部)とを簡単に接続可能とするために広く用いられている。従来、そのようなコネクタは金属で作成されている。それらは、メス部にねじ込まれるネジ部と、内部にねじ部がねじ込まれた後にそこから延びるスリーブ部と、を備えており、スリーブ部は、オス部の凹部とスナップ係合するために径方向のバネ力を及ぼすヨークスプリング形の弾性部材を有している。
【0002】
従来のコネクタのデメリットは、それらが主に金属で形成されているために、重量および製造コストが比較的高いことにある。さらに、それらは、軸方向の延長部が非常に長く、漏出可能性がある位置を2か所もたらす。第一の漏出部は、第一のOリングがコネクタとメス部との間にシールを形成するネジ部にあり、第二の漏出部は、第二のOリングがコネクタとオス部との間にシールを形成するスリーブ部の内周内にある。
【0003】
米国特許出願公開第2015/0145240号明細書には、ネジ部が省略されたクイックコネクタが開示されており、コネクタは、ねじ止めされないが、取り外しできない方法でメス部にクリンチ、ステークまたはスエージされている。この従来のソリューションにより、コネクタとメス部との間をシールする第一のOリングが不要になるが、それには、クイックコネクタがメス部に永久接続されるというデメリットがある。また、クイックコネクタは、メス部に永久接続されてもメス部の外側面から突き出しており、このことは、特にe-モビリティの自動車システムに必要なバッテリ冷却等の分野において、省スペースのコネクタソリューションには好ましくない。
【0004】
欧州特許第1104530号明細書および欧州特許第1682810号明細書には、プラスチックで作製された従来のクイックコネクタが開示されている。コネクタは、オス部とのスナップ係合のために径方向内側に向かって突出した第一のタン部と、メス部とのスナップ係合のために径方向外側に向かって突出した第二のタン部と、を有している。しかし、これら従来のコネクタの構造的配置(constructional setup)は、比較的複雑であり、第一および第二のタン部が小さな軸方向ウエブだけで接続されているコネクタ側面にある材料の放射状切り欠きによって第一および第二のタン部が囲まれているため、比較的ダメージを受けやすい。さらに、第一および第二のタン部は、コネクタの、軸方向に間隔をあけた部位に設けられており、コネクタは、軸方向の延長部が非常に長くなり、かつメス部の外面から突き出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0145240号明細書
【0006】
【特許文献2】欧州特許第1104530号明細書
【0007】
【特許文献3】欧州特許第1682810号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コネクタの重量およびコストを低減すること、その構造的配置(constructional setup)を簡略化すること、その軸方向の延長部を短縮すること、および、漏出可能性のある箇所を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本願の請求項1に定義されたコネクタにより達成される。従属請求項は、好ましい実施形態に関連しており、さらに、コネクタと、互いに接続されるオス部およびメス部と、を備える接続システムを要求する。
【0010】
本発明によれば、クイックコネクタは、メス部の口部内に配置される管状の保持手段を備え、この保持手段は、メス部およびオス部の双方とのスナップ係合のための第一および第二の湾曲部材を備えている。プラスチック製クイックコネクタの従来のソリューションとは異なり、本願の保持手段は、周方向に間隔をあけた部位に設けられた第一および第二の湾曲部材を有している。これにより、クイックコネクタの構造的配置が簡略化され、その軸方向の寸法を最小化することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、オス部とのスナップ係合用の第一の湾曲部材が複数あり、メス部とのスナップ係合用の第二の湾曲部材が複数ある。軸方向のスリットは、交互に配置された第一および第二の湾曲部材の間に形成されて、これらの弾性変形能を向上させる。好ましくは、保持手段は、ポリマーベースのプラスチック材料で形成される。射出成形等により、成形可能なプラスチック材料から保持手段を一体構造体として形成することが特に好ましい。これにより、コネクタの製造コストおよび耐久性が、最も競争力のある価値を実現する。
【0012】
好ましい実施形態では、管状の保持手段は、リング形状のベース部を有しており、第一および第二の湾曲部材が、その間に軸方向のスリットを挟んで、ベース部から軸方向に突き出している。第一の湾曲部材は第一のリングセグメントを有し、そこから第一のタン部が径方向内側に向かって突き出している。同様に、第二の湾曲部材は第二のリングセグメントを有し、そこから第二のタン部が径方向外側に突き出している。また、第一および第二のタン部は、リングセグメントの一般的な形状を有していてもよく、保持手段の全体的な形状は、n倍対称性(nは整数、最も好ましい実施形態においてn=2)を有していてもよい。
【0013】
シーリング手段、好ましくはOリング、Xシールまたはリップシールは、メス部の口部内で保持手段の軸方向前方に配置される。クイックコネクタがロック状態にあるときにシーリング手段がオス部およびメス部の双方に接触することができるように、シーリング位置は、軸方向において保持手段とは重ならない。これにより、オス部とメス部との結合にはシーリング位置が1つだけで十分であり、漏出可能性がある位置が1か所だけになるようになっている。
【0014】
本発明は、好ましくは、保持手段およびシーリング手段を、オス部の最終的なロック取り付け前にそれらの状態で保持するためのプラグをさらに備えている。保持手段およびシーリング手段は、プラグのグリップ部よりも外径が小さなシャフト部で受けられる。プラグは、オス部のプレースホルダーとして機能するとともに、コネクタの製造および搬送中も、特に自動車産業における流体接続システム内でのその後の組み立て中と同様に、コネクタを迅速かつ安全に取り扱うのに役立つ。
【0015】
シャフト部は、好ましくは、第一の湾曲部材を徐々に伸ばすためのテーパー部、および/または、第一のタン部を受けるための溝部を有している。第二の湾曲部材は、メス部に係合して、プラグがオス部に置き換わるまで、コネクタを、ロックかつシールされた状態に維持するように構成されている。溝部は、プラグの周方向隣接部分よりも径が小さいため、第一の湾曲部材を径方向のその弾性により収縮させて、それがプラグに係合するようになっている。この状態は、安全な搬送または組み込み前の圧力試験に有益である。
【0016】
プラグを取り外すため、第一の湾曲部材がもはやプラグの溝部に係合しないようにプラグをその長手方向軸周りに回転させる。この状態において、プラグをオス部に置き換えることができるように、メス部に係合したままのコネクタからプラグを取り出すことができる。要約すると、プラグは、第一回転位置において、メス部の口部を、完全にシールされた状態でふさぐことができるとともに、プラグがオス部に置き換わるとき、プラグを、第二回転位置において外すことができる。
【0017】
プラグが流体接続システムのオス部(好ましくはスピゴット)に置き換わると、第一の湾曲部材は、プラグと同様な方法でオス部により径方向に再度伸ばされて、コネクタを、完全にロックされた状態になるようにする。メス部は、その口部の内周に形成された溝を有する。溝は環状あるいは他の適当な任意形状を有していてもよい。それが有する内径は、オス部の挿入により第二の湾曲部材の第二タン部がその弾性復帰力に逆らって伸ばされるときに溝へロックできるように、口部の軸方向隣接部分よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面を参照しながら、本発明の詳細およびその実施形態を説明する。
FIG.1Aは、本発明の実施形態に係る管状の保持手段の斜視図、
FIG.1Bは、FIG.1Aの保持手段の上面図、
FIG.1Cは、FIG.1Aの保持手段の側面図、
FIG.2Aは、本発明の実施形態に係る流体接続システムの、接続されていない状態のクイックコネクタおよびメス部の斜視分解組み立て図、
FIG.2Bは、FIG.2Aの流体接続システムコンポーネントの断面図、
FIG.3Aは、本発明の実施形態に係る流体接続システムのメス部内に配置されたクイックコネクタの斜視図、
FIG.3Bは、FIG.3Aの流体接続システムコンポーネントの断面図、
FIG.4Aは、本発明の実施形態に係る、接続されていない状態の流体接続システムの斜視図
FIG.4Bは、FIG.4Aの流体接続システムの断面図、
FIG.5Aは、本発明の実施形態に係る、接続された状態の流体接続システムの斜視図、
FIG.5Bは、FIG.5Aの流体接続システムの断面図、
FIG.6Aは、本発明の実施形態に係る流体接続システムのメス部内に配置されたクイックコネクタに接続されるプラグの斜視図、
FIG.6Bは、FIG.6Aの流体接続システムコンポーネントの断面図、
FIG.7Aは、本発明の実施形態に係る流体接続システムのメス部内に配置されたクイックコネクタに接続されたプラグの斜視図、
FIG.7Bは、FIG.7Aの流体接続システムコンポーネントの断面図、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
FIG.1Aは、保持手段10を斜視側面図に示す。図示した保持手段10は、プラスチック材料、より具体的にはポリマーベースのプラスチック材料で形成され、さらにより具体的には、射出成形等により一体型ボディとして得られる。保持手段10はリング形状のベース部11を有し、それは、円筒形の外側の面と、以下のFIG.2Bに最もよく示されているようにテーパーが付けられたファネル状の内側の面と、を有している。リング形状のベース部11から第一および第二の湾曲(flexing)部材12、22が軸方向に突出している。第一および第二の湾曲部材12、22は、各組の第一および第二の湾曲部材12、22の間に軸方向のスリット15を設けながら交互に配置されている。スリット15とプラスチック材料の一般的特性とによって、第一および第二の湾曲部材12、22は、径方向にある程度の弾性変形能を有している。すなわち、それらは、管状の保持手段10の軸方向延長部に垂直な径方向にある程度まで柔軟に変形することができる。
【0020】
より詳細にFIG.1BおよびFIG.1Cに示したように、2つの第一の湾曲部材12は、それぞれ、第一のリングセグメント13と、第一のリングセグメント13から径方向内側に向かって突出した第一のタン部と、を有している。第一のタン部14自体は、再び、リングセグメントの形状をしている。同様に、2つの第二の湾曲部材22は、それぞれ、第二のリングセグメント23と、第二のリングセグメント23から径方向外側に向かって突出した第二のタン部24と、を有している。2つの第一の湾曲部材12および2つの第二の湾曲部材22を有する、図示した実施形態では、管状の保持手段10は、2倍回転対称性を有し、各リングセグメントは、約1/4のリング形状を実質的に有している。しかし、2つ以上のあるいは1つだけの第一の湾曲部材および1つだけの第二の湾曲部材を有するソリューションが可能であり、様々な種類の一般的にn倍回転対称性をもたらす。
【0021】
FIG.2Aの斜視分解組み立て図では、保持手段10が、ブロックとして形成されたメス部40の正面でシーリング手段30の隣に、プリアセンブルの状態で示されている。説明のために、FIG.2AおよびFIG.2Bでは、保持手段10およびシーリング手段30を、プリアセンブルの位置に示す。FIG.3AおよびFIG.3Bには、それらが組み立てられた位置を示す。FIG.2B~FIG.7Bの断面図のそれぞれは、軸方向のスリット15のうちの2つに沿って取られている。
【0022】
FIG.2Å~FIG.7Aに示された流体接続システムの斜視図では、メス部40がブロックの穴として形成されている。従来の流体接続システムでは、コネクタのネジ部をねじ込むために穴内にめねじが形成されていたが、メス部40の口部41は、そのようなねじ部なしで、コネクタを完全に受けて係合するようになっている。FIG.4およびFIG.5のスピゴット50の挿入方向は、図の下向きに延びており、以下、前方方向と呼ぶ。反対方向は後方方向と呼ぶ。
【0023】
メス部40は、シーリング手段およびリング形状のベース部11をつづけて受けるのに十分な大きさの径を有する口部41を有している。しかし、口部41の直径は、第二の湾曲部材22の第二のタン部24の外径よりも小さい。保持手段10を口部41内に下方に押し込むことにより、第二の湾曲部材22が径方向内側に弾性変形して、それらの外径が、口部41に入る程度に十分小さくなるようになっている。第二のタン部24が、口部41の外側の面から軸方向に離れて形成された環状溝42の軸方向位置に達するとすぐに、第二のタン部24が、それらの元の状態に弛緩して、メス部40の溝42とスナップ係合する。
【0024】
これにより、FIG.3AおよびFIG.3Bに示された接続状態が得られるが、この状態では、シーリング手段30および保持手段10が、ロックされた状態に達し、保持手段10が、第二のタン部24と環状溝42との間のスナップ相互作用によりメス部40と係合する。FIG.3AおよびFIG.3Bからわかるように、保持手段10は、メス部40から軸方向に突出していないが、その口部41内に完全に収容されている。このことは、このプリロック状態の保持手段10付きメス部40を処理および搬送する上で特に有利である。さらに、保持手段10は、そのロックされた軸方向のポジショニングにより、シーリング手段30が口部41から脱落するのを阻止する。シーリング手段30はメス部40の段部43にのっている。シーリング手段30がメス部40内にさらに内側にも移動できないように、段部43は、メス部40の下方の軸方向隣接部44より大きな径を有している。
【0025】
シーリング手段としてのOリング30は、口部41の前方端部に形成された環状の段部43(FIG.3B参照)に配置される。FIG.2AおよびFIG.2Bには、Oリング30とコネクタの他の部分とが、口部41から軸方向に離れて示されており、FIG.4AおよびFIG.4Bには、オス部としてのスピゴット50が、そこからさらに後方に軸方向に間隔をおいて示されている。FIG.3およびFIG.5に示された流体接続システムの完全な接続状態を確立するために、FIG.3に示すように、まず、シーリング手段30が、メス部40の段部43の位置で口部41内に配置され、リング形状の保持手段10が、その後、軸方向後方にシーリング手段30に隣接して配置される。コネクタは、口部41に挿入されたときすでに、プリロックされた係合状態になっている。これは、保持手段10の第二の湾曲部材22が口部41に入るときにある程度圧縮され、その後、その第二タン部24がメス部40の環状溝42にスナップ留めされるからである。これにより、第二の湾曲部材22は、搬送中等に、口部41から保持手段10およびシーリング手段30が脱落するのを防止する。
【0026】
最終的に、FIG.4およびFIG.5に示すように、オス部50は、径方向内側にむかって突き出した第一の湾曲部材12の第一のタン部14がオス部50とのスナップ係合を形成するまで、保持手段10およびシーリング手段30を介して押し込まれる。管状のオス部50は、その最も前方の部分で標準外径を有しており、それは、オス部50が保持手段10を通って押し込まれるときに第二の湾曲部材20を徐々に伸ばすために配置されたテーパー部51においてその後徐々に増加する。テーパー部51から後方には、第二の湾曲部材22(より具体的には、その2つの第二タン部22)を環状溝42内でロックされた状態に保つ程度に大きな外径を有する肉厚部52がある。より具体的には、まず2つの第一の湾曲部材12がテーパー部51により伸ばされて、その後、2つの第一タン部14がテーパー部51の後方の肉厚部52上にのるようになる。テーパー部51の後方端部に形成されたラチェットが第一の湾曲部材12の第一タン部14に当接して、オス部50がコネクタ内にロックされたままもはや後方には移動できないようになっている。
【0027】
FIG.5は、ロックされた状態の流体接続システムを示す。上述したように、メス部40がブロックの穴として形成されている。穴は、オス部50の前方部の外径よりわずかに大きな標準径部44を有している。標準径部44から後方には、標準径部44よりも大きな内径を有する口部41がある。口部41は、シーリング手段30を受けるための段部43と、保持手段10をメス部40から軸方向外側に突き出させずに受ける、段部43よりも大径の部分と、を有している。口部41は、口部41の後方隣接部分よりも大径の環状溝42をさらに有しており、2つの第二の湾曲部材22が、管状のオス部50によってそれらがロックされた状態にされるときに環状溝42内に突き出すことができるようになっている。
【0028】
FIG.4BおよびFIG.5Bの断面図内のシーリング手段を比較することでわかるように、オス部50が、保持手段10およびシーリング手段30を通って、FIG.5AおよびFIG.5Bに示した完全ロック位置に押し込まれたときに、シーリング手段30が広がる。これにより、流体接続システムは、オス部50がメス部40に対して完全にシールされた状態に達する。これは、オス部50の最も前方の部位が、シーリング手段30の内径よりわずかに大きな外径を有し、オス部50の最も前方の部位が押し込まるとシーリング手段30が径方向に広がらなければならないようになっているという事実のためである。
【0029】
オス部50の挿入前には、コネクタが、プラグ60により、プリロックされた状態にされていることが多い。FIG.6の断面図において最もよく示されているように、プラグ60のシャフト部61は、それがプレースホルダーとして機能するオス部50の外径と一致する標準外径を有している。また、テーパー部62は、オス部50のテーパー部51に実質的に対応しており、プラグ60が保持手段10およびシーリング手段30を通って押し込まれるときに第二の湾曲部材20を伸ばすために機能する。
【0030】
プラグ60は、軸方向に延びた停止リッジ(ridge)65をさらに有し、停止リッジ65により、プラグ60が完全挿入位置にあるときに保持手段10への当接を停止するための、拡大された外径がプラグ60に設けられている。プラグ60のグリップ部64は、3つの停止リッジ65とディスク部66とを備える。停止リッジ65は、ユーザが手でプラグ60を容易に回転可能にするとともに、プラグの直径を十分に拡大してプラグがコネクタに押し込まれすぎるのを防止する。それらはさらに、プラグ60のどの円周部分に2つの溝部63が形成されているのかをユーザに示すことができるとともに、それらは、最も後方部分にプラグ60の末端エッジを形成しているディスク部66まで伸びている。
【0031】
FIG.6 およびFIG.7は、溝部63が保持手段10の第一のタン部14とスナップ係合する第一回転位置にあるプラグ60を示す。この第一回転位置では、プラグ60は、軸方向にロックされた位置にあり、汚れが入らないように口部41をふさいでいる。シーリング手段30の拡大(プラグ60を、保持手段10およびシーリング手段30を介して、FIG.7AおよびFIG.7Bに示した完全ロック位置に押し込むことにより達成される)により、プラグはまた、液体あるいは他の流体が口部41に出入りできない、完全にシールされた状態を実現する。これは、プラグ60の最も前方の部分がシーリング手段30の内径よりもわずかに大きな外径を有し、プラグ60の最も前方の部分が押しこまれるとシーリング手段30が径方向に広がらなければならないようになっているという事実のためである。特に自動車産業において、プラグ60によって達成される予備組み立て状態のコネクタのシーリング能力が、電動システムの流体冷却に関する様々な処理および試験工程中に最も有利である。
【0032】
プラグを、その長手方向軸周りに、図示した第一回転状態から第二回転状態へと回転させることができる。図示した実施形態において、この回転は、プラグ60を90度まで時計周りまたは反時計周りの方向に回転させることにより達成される。この第二の回転状態では、溝部63が第一のタン部14とのスナップ係合を脱して周方向に移動して、プラグ60がロック状態から解放状態になるようになっている。プラグ60は、その最も前方の部位でまだシーリング手段30とシーリング係合しているけれども、それは、メス部の口部41から後方に引き抜くことができるように、もはや軸方向においてロックされていない。これは、通常、プラグ60が、FIG.4からFIG.5に示され、かつそれらの図を参照しながら上述したオス部50に置き換わるときである。
【0033】
要約すると、本発明は、流体接続システムの管状オス部50とメス部40との間のスナップ接続を確立するためのプラスチック材料製のクイックコネクタを提供する。コネクタは、メス部40の口部41に配置されるように構成された保持手段10を有しており、保持手段10は、オス部50およびメス部40とそれぞれスナップ係合するための第一および第二の湾曲部材12、22を有している。第一および第二の湾曲部材12、22は、保持手段10の、周方向に間隔をおいた部位に設けられており、保持手段10の全体的な軸方向寸法が減少するようになっている。
【符号の説明】
【0034】
10:保持手段
11:リング形状のベース部
12:第一の湾曲部材
13:第一リングセグメント
14:第一タン部
15:スリット
22:第二の湾曲部材
23:第二リングセグメント
24:第二タン部
30:シーリング手段
40:メス部
41:口部
42:環状溝
43:段部
44:軸方向隣接部
50:管状のオス部
51:テーパー部
52:肉厚部
60:プラグ
61」シャフト部
62:テーパー部
63:溝部
64:グリップ部
65:停止リッジ
66:ディスク部

図1
図1A
図1B
図1C
図2
図2A
図2B
図3
図3A
図3B
図4
図4A
図4B
図5
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】手続補正書
【補正対象項目名】手続補正2
【補正方法】追加
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
図1】FIG.1Aは、本発明の実施形態に係る管状の保持手段の斜視図FIG.1Bは、FIG.1Aの保持手段の上面図FIG.1Cは、FIG.1Aの保持手段の側面図を示す。
図2】FIG.2Aは、本発明の実施形態に係る流体接続システムの、接続されていない状態のクイックコネクタおよびメス部の斜視分解組み立て図FIG.2Bは、FIG.2Aの流体接続システムコンポーネントの断面図を示す。
図3】FIG.3Aは、本発明の実施形態に係る流体接続システムのメス部内に配置されたクイックコネクタの斜視図FIG.3Bは、FIG.3Aの流体接続システムコンポーネントの断面図を示す。
図4】FIG.4Aは、本発明の実施形態に係る、接続されていない状態の流体接続システムの斜視図FIG.4Bは、FIG.4Aの流体接続システムの断面図を示す。
図5】FIG.5Aは、本発明の実施形態に係る、接続された状態の流体接続システムの斜視図FIG.5Bは、FIG.5Aの流体接続システムの断面図を示す。
図6】FIG.6Aは、本発明の実施形態に係る流体接続システムのメス部内に配置されたクイックコネクタに接続されるプラグの斜視図FIG.6Bは、FIG.6Aの流体接続システムコンポーネントの断面図を示す。
図7】FIG.7Aは、本発明の実施形態に係る流体接続システムのメス部内に配置されたクイックコネクタに接続されたプラグの斜視図FIG.7Bは、FIG.7Aの流体接続システムコンポーネントの断面図示す。
【国際調査報告】