(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】コバルトフリーシステム、正極スラリー、その均質化方法および使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1391 20100101AFI20230111BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230111BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230111BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230111BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20230111BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/131
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521736
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2020125049
(87)【国際公開番号】W WO2021232683
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】202010421063.X
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522139349
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】蘇 夏
(72)【発明者】
【氏名】楊 紅新
(72)【発明者】
【氏名】高 旭
(72)【発明者】
【氏名】王 代興
(72)【発明者】
【氏名】羅 必聖
(72)【発明者】
【氏名】馬 鋭
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA24
5H050GA10
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、コバルトフリーシステム、正極スラリー、その均質化方法および使用を提供し、前記コバルトフリーシステムは、コバルトフリー材料、粘着剤、導電剤およびpH調整剤を含む。該コバルトフリーシステムは、スラリーの静置後の粘度の反発程度を三元811単結晶と同じ程度に達するように低減することができるとともに、コバルトフリー材料の塗布面密度の安定性を三元材料と同じレベルに達するように向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトフリー材料、粘着剤、導電剤およびpH調整剤を含む、コバルトフリーシステム。
【請求項2】
前記コバルトフリー材料はLi
xNi
yMn
zO
2であり、xは1~1.1で、yは0.5~0.8で、zは0.2~0.5で、y+z=1である、請求項1に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項3】
前記コバルトフリー材料はLi
xNi
0.75Mn
0.25O
2であり、xは1~1.1である、請求項2に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項4】
前記粘着剤はポリフッ化ビニリデンであり、前記ポリフッ化ビニリデンの数平均分子量は50~150万である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項5】
コバルトフリー材料の添加量が95.4~97.8重量部で計算すると、前記粘着剤の添加量は1~1.8重量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項6】
前記導電剤は、第1導電剤と第2導電剤との組み合わせを含み、前記第1導電剤は導電性カーボンブラックであり、前記第2導電剤は単層カーボンナノチューブである、請求項1~5のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項7】
コバルトフリー材料の添加量が95.4~97.8重量部で計算すると、前記第1導電剤の添加量は1~2重量部で、第2導電剤の添加量は0.2~0.8重量部である、請求項6に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項8】
前記pH調整剤は、シュウ酸および/またはマレイン酸を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項9】
前記pH調整剤の添加量は、コバルトフリー材料、粘着剤および導電剤内の乾燥粉総質量の0.1~0.5%である、請求項1~8のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項10】
ペースト液と、ペースト液に分散された請求項1~9のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステムとを含む、正極スラリー。
【請求項11】
前記ペースト液の調製方法は、粘着剤Aと溶媒とでペーストを製造し、前記ペースト液を取得することを含む、請求項10に記載の正極スラリー。
【請求項12】
前記ペーストの製造はペースト製造機で行われ、前記ペーストの製造の時間は200~300minである、請求項11に記載の正極スラリー。
【請求項13】
前記粘着剤Aはポリフッ化ビニリデンであり、前記ポリフッ化ビニリデンの数平均分子量は50~150万である、請求項11または12に記載の正極スラリー。
【請求項14】
前記溶媒は、Nメチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシドのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の正極スラリー。
【請求項15】
前記溶媒の添加量が80~95重量部で計算すると、前記粘着剤Aの添加量は5~20重量部である、請求項11~14のいずれか1項に記載の正極スラリー。
【請求項16】
コバルトフリーシステムをペースト液に加え、分散して前記正極スラリーを取得することを含む、請求項10~15のいずれか1項に記載の正極スラリーの均質化方法。
【請求項17】
(1)コバルトフリーシステムにおける粘着剤、第1導電剤およびpH調整剤をペースト液に加えて混合させ、導電性ペーストAを取得するステップと、
(2)コバルトフリーシステムにおける第2導電剤をステップ(1)で取得された導電性ペーストAに加えて混合させ、導電性ペーストBを取得するステップと、
(3)コバルトフリーシステムにおけるコバルトフリー材料をステップ(2)で取得された導電性ペーストBに加えて混合させ、前記正極スラリーを取得するステップと、
を含む、請求項16に記載の均質化方法。
【請求項18】
ステップ(1)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が15~16m/sで、撹拌の時間が40~80minである、請求項17に記載の均質化方法。
【請求項19】
ステップ(2)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が15~16m/sで、撹拌の時間が40~80minである、請求項17または18に記載の均質化方法。
【請求項20】
ステップ(3)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が19~20m/sで、撹拌の時間が100~140minである、請求項17~19のいずれか1項に記載の均質化方法。
【請求項21】
正極集電体と、正極集電体の外面に設けられたスラリー層とを含み、前記スラリー層に使用されるスラリーは請求項10~15のいずれか1項に記載の正極スラリーである、正極極シート。
【請求項22】
正極極シート、負極極シートおよびセパレータを備え、前記正極極シートは請求項21に記載の正極極シートである、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の技術分野に関し、例えば、コバルトフリーシステム、正極スラリー、その均質化方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエネルギーの枯渇および環境問題の日増しに伴い、リチウムイオン電池の新たなクリーンエネルギーとしての発展方向は、ますます重視され、より実用的で効率的なリチウムイオン電池の開発研究が進められている。
【0003】
他の電池と比べ、リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、開放電圧が高く、メモリ効果がなく、安全で汚染がない等の利点を有する。二十数年の急速な発展を経て、リチウムイオン電池は、ノートパソコン、携帯電話機、デジタルカメラ、エネルギー蓄積等の分野に広く適用される。近年、人々の環境保護の意識の強化に伴い、自動車排気ガスによる環境汚染および地球温暖化現象は、既に広く注目され、自動車排気ガスによる環境汚染、地球温暖化現象を根治して石油資源の減少によるエネルギー危機を緩和するために、省エネルギーで環境にやさしい電気自動車の研究、開発および産業化は、世界中の関心を持つ問題となる。他のモバイル機器と比べ、電気自動車は、電池のサイクル寿命、電池の一貫性および大電流放電能力等の性能に対してより高い要求を提出する。
【0004】
スラリーの均質化は、リチウム電池業界におけるリチウム電池の作製の1つの重要な工程であり、スラリーの良否は、後期の塗布および最終的な電池性能の良否を決定する。現在、リチウムイオン電池の正極スラリーの均質化プロセスには2種類があり、1つ目は湿式プロセスと呼ばれ、まず、溶媒と粘着剤とを撹拌し、また、導電剤を加えて撹拌し、その後、活物質を加えて撹拌し、正極スラリーを調製する。このプロセスは調製時間が非常に長く、生産効率に大きく影響を及ぼし、且つ、スラリーの固形分が低く、スラリーの安定性が悪くになりやすく、スラリーがしばらく放置された後に分層しやすい。2つ目は乾式プロセスと呼ばれ、まず、粘着剤と、導電剤と、活物質とを共に均質化撹拌機内に入れてドライブレンドして撹拌し、その後、溶媒を加えて撹拌し、正極スラリーを調製し、このプロセスは、粘着剤をドライブレンドした後に溶媒を加えて撹拌すると溶解しにくいため、スラリーが分散しにくく、分散効果が悪く、スラリーの均一性に影響を及ぼす。
【0005】
現在、コバルトフリー材料はまだ新規材料に属し、それに対応する適当なシステムおよび均質化プロセスがなく、既存の三元材料システムおよび均質化プロセスに基づいて行うと、作製されるスラリーは静置後の粘度の変化が大きく、後続の使用に不利である。
【0006】
従って、コバルトフリーシステムに適用される均質化プロセスの提供は、非常に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コバルトフリーシステム、正極スラリー、その均質化方法および使用を提供する。該コバルトフリーシステムは、スラリーの静置後の粘度の反発程度を三元811単結晶と同じ程度に達するように低減することができるとともに、コバルトフリー材料の塗布面密度の安定性を三元材料と同じレベルに達するように向上させることができ、電池の品質を確保する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例において、コバルトフリー材料と、粘着剤と、導電剤と、pH調整剤とを含むコバルトフリーシステムを提供する。
【0009】
コバルトフリー材料、粘着剤、導電剤およびpH調整剤の配合使用により、コバルトフリーシステムは、スラリーに使用されると、良好な分散性および短い膨潤時間を有する。該コバルトフリーシステムは、スラリーの静置後の粘度の反発程度を三元811単結晶と同じ程度に達するように低減することができるとともに、コバルトフリー材料の塗布面密度の安定性を三元材料と同じレベルに達するように向上させることができる。
【0010】
一実施例において、前記コバルトフリー材料はLixNiyMnzO2であり、xは1~1.1で、yは0.5~0.8で、zは0.2~0.5で、y+z=1である。例えば、xは、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1等であってもよく、yは0.5、0.52、0.55、0.58、0.6、0.62、0.65、0.68、0.7、0.72、0.75、0.78、0.8等であってもよく、zは0.2、0.22、0.25、0.28、0.3、0.32、0.35、0.37、0.4、0.42、0.45、0.48、0.5等であってもよい。
【0011】
一実施例において、前記コバルトフリー材料はLixNi0.75Mn0.25O2であり、xは1~1.1である。
【0012】
一実施例において、前記粘着剤はポリフッ化ビニリデンであり、前記ポリフッ化ビニリデンの数平均分子量は50~150万で、例えば、50万、60万、70万、80万、90万、100万、110万、120万、130万、140万、150万等である。該実施例において、粘着剤は、低分子量のポリフッ化ビニリデンを使用し、良好な分散性、短い膨潤時間を有する。
【0013】
一実施例において、コバルトフリー材料の添加量が95.4~97.8重量部で計算すると、前記粘着剤の添加量は1~1.8重量部である。例えば、コバルトフリー材料の添加量は、95.4重量部、95.8重量部、96重量部、96.2重量部、96.5重量部、96.8重量部、97重量部、97.2重量部、97.5重量部、97.8重量部等であってもよく、粘着剤の添加量は、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部等であってもよい。
【0014】
一実施例において、前記導電剤は、第1導電剤と第2導電剤との組み合わせを含み、前記第1導電剤は導電性カーボンブラックであり、前記第2導電剤は単層カーボンナノチューブを含む。
【0015】
単層カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブに対してより良好な導電効果を有し、コバルトフリー材料の導電性が悪いという欠点を補うことができるとともに、自身の添加量を低減して分散をより均一にすることができる。
【0016】
一実施例において、コバルトフリー材料の添加量が95.4~97.8重量部で計算すると、前記第1導電剤の添加量は1~2重量部で、第2導電剤の添加量は0.2~0.8重量部である。例えば、コバルトフリー材料の添加量は、95.4重量部、95.8重量部、96重量部、96.2重量部、96.5重量部、96.8重量部、97重量部、97.2重量部、97.5重量部、97.8重量部等であってもよく、第1導電剤の添加量は、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部、1.9重量部、2重量部等であってもよく、第2導電剤の添加量は、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部等であってもよい。
【0017】
一実施例において、前記pH調整剤は、シュウ酸および/またはマレイン酸を含む。本実施例において、pH調整剤は、コバルトフリー材料自身のpHが高いという問題を中和することができる一方、水分を吸収してスラリーの塊形成を回避し、スラリーの分散をより均一にすることもできる。
【0018】
一実施例において、前記pH調整剤の添加量は、コバルトフリー材料、粘着剤および導電剤内の乾燥粉総質量の0.1~0.5%で、例えば、0.1%、0.12%、0.15%、0.17%、0.2%、0.22%、0.25%、0.27%、0.3%、0.32%、0.35%、0.38%、0.4%、0.42%、0.45%、0.47%、0.5%等である。
【0019】
本発明の一実施例において、ペースト液と、ペースト液に分散された前記コバルトフリーシステムを含む正極スラリーを提供する。
【0020】
一実施例において、前記ペースト液の調製方法は、粘着剤Aと溶媒とでペーストを製造し、前記ペースト液を取得することを含む。
【0021】
一実施例において、前記ペーストの製造はペースト製造機で行われ、前記ペーストの製造の時間は200~300minで、例えば、200min、210min、220min、230min、240min、250min、260min、270min、280min、290min、300min等である。
【0022】
一実施例において、前記粘着剤Aはポリフッ化ビニリデンであり、前記ポリフッ化ビニリデンの数平均分子量は50~150万で、例えば、50万、60万、70万、80万、90万、100万、110万、120万、130万、140万、150万等である。
【0023】
一実施例において、前記溶媒は、Nメチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシドのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0024】
一実施例において、前記溶媒の添加量が80~95重量部で計算すると、前記粘着剤Aの添加量は5~20重量部である。例えば、溶媒の添加量は、80重量部、81重量部、82重量部、83重量部、84重量部、85重量部、86重量部、87重量部、88重量部、89重量部、90重量部、91重量部、92重量部、93重量部、94重量部、95重量部等であってもよく、粘着剤Aの添加量は、5重量部、8重量部、10重量部、12重量部、15重量部、18重量部、20重量部等であってもよい。
【0025】
本発明の一実施例において、コバルトフリーシステムをペースト液に加え、分散して前記正極スラリーを取得することを含む前記正極スラリーの均質化方法を提供する。
【0026】
一実施例において、前記均質化方法は、
(1)コバルトフリーシステムにおける粘着剤、第1導電剤およびpH調整剤をペースト液に加えて混合させ、導電性ペーストAを取得するステップと、
(2)コバルトフリーシステムにおける第2導電剤をステップ(1)で取得された導電性ペーストAに加えて混合させ、導電性ペーストBを取得するステップと、
(3)コバルトフリーシステムにおけるコバルトフリー材料をステップ(2)で取得された導電性ペーストBに加えて混合させ、前記正極スラリーを取得するステップと、
を含む。
【0027】
一実施例において、ステップ(1)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が15~16m/sで、例えば、15m/s、15.1m/s、15.2m/s、15.3m/s、15.4m/s、15.5m/s、15.6m/s、15.7m/s、15.8m/s、15.9m/s、16m/s等で、撹拌の時間が40~80minで、例えば、40min、45min、50min、55min、60min、65min、70min、75min、80min等である。
【0028】
一実施例において、ステップ(2)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が15~16m/sで、例えば、15m/s、15.1m/s、15.2m/s、15.3m/s、15.4m/s、15.5m/s、15.6m/s、15.7m/s、15.8m/s、15.9m/s、16m/s等で、撹拌の時間が40~80minで、例えば、40min、45min、50min、55min、60min、65min、70min、75min、80min等である。
【0029】
一実施例において、ステップ(3)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が19~20m/sで、例えば、19m/s、19.1m/s、19.2m/s、19.3m/s、19.4m/s、19.5m/s、19.6m/s、19.7m/s、19.8m/s、19.9m/s、20m/s等で、撹拌の時間が100~140minで、例えば、100min、102min、105min、107min、110min、112min、115min、117min、120min、122min、125min、127min、130min、132min、135min、137min、140min等である。
【0030】
本発明の一実施例において、正極集電体と、正極集電体の外面に設けられたスラリー層とを含み、前記スラリー層に使用されるスラリーは前記正極スラリーである正極極シートを提供する。
【0031】
本発明の一実施例において、正極極シート、負極極シートおよびセパレータを備え、前記正極極シートは前記正極極シートであるリチウムイオン電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面は、本発明の技術案に対する更なる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、本発明の実施例と共に本発明の技術案を解釈するために用いられ、本発明の技術案を限定するものではない。
【0033】
【
図1】本発明の実施例1および比較例2で得られるスラリーの、せん断速度に伴う粘度の変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施例において、コバルトフリー材料と、粘着剤と、導電剤と、pH調整剤とを含むコバルトフリーシステムを提供し、前記コバルトフリー材料はLixNiyMnzO2であり、xは1~1.1で、yは0.5~0.8で、zは0.2~0.5で、y+z=1である。
【0035】
本発明のコバルトフリーシステムは、スラリーの静置後の粘度の反発程度を低減することができ、いくつかの実施例において、静置前のスラリーの粘度は5260~6980cpであり、12h静置した後のスラリーの粘度は12120~14950cpに反発し、三元811単結晶と同じ程度に達し、それとともに、コバルトフリー材料の塗布面密度の安定性を向上させることができ、塗布面密度の変動は±1.03%と低く、三元材料と同じレベルに達する。
【0036】
一実施例において、上記コバルトフリー材料は以下の方法で調製され、以下のステップを含む。
【0037】
S100において、前駆体NiyMnz(OH)2と、リチウム源LiOHと、ドーパントとを撹拌条件で混合させ、混合速度が600~1000rpmで、例えば、600rpm、700rpm、800rpm、900rpm、または1000rpm等であり、混合時間が10~40minで、例えば、10min、15min、20min、25min、30min、または40min等であり、混合物を取得する。
【0038】
一実施例において、ドーパントのドープ元素は、Ti、Zr、Alから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、ドープ量は2000~5000ppmで、例えば、2000ppm、2500ppm、3000ppm、4000ppm、4500ppm、または5000ppm等であり、ドープ量は、Li/ドーパント内の遷移金属=1.04~1.06で、例えば、1.04、1.05、または1.06等である。
【0039】
S200において、酸素ガス濃度90~100vol%の条件で、ステップS100で取得された混合物を一次焼成し、一次焼成の過程において、まず、昇温速度1~4度/minで930~950度に昇温し、その後、5~15h保持し、一次焼成材料を取得する。
【0040】
S300において、ステップS200で取得された一次焼成材料をロール粉砕研磨し、325メッシュの篩にかけて篩分けし、篩分け物を取得する。
【0041】
S400において、ステップS300で取得された篩分け物を乾式被覆し、ナノZrおよびAl酸化物(そのうち、Zr含有量0.1%~0.3wt%、Al含有量0.1%~0.2wt%)を用い、高温にて回転数800~1200rpmで10~30min混合させ、回転数は、例えば、800rpm、850rpm、900rpm、1000rpm、1100rpm、または1200rpm等であり、時間は、例えば、10min、15min、20min、または30min等であり、被覆物を取得する。
【0042】
S500において、ステップS400で取得された被覆物を二次焼成し、昇温速度2~4度/minで400~700℃に昇温して5~8h保持し、二次焼成物を取得する。
【0043】
S600において、ステップS500で取得された二次焼成物を325メッシュまたは350メッシュの篩にかけて篩分けしてコバルトフリー材料を取得する。
【0044】
コバルトフリー材料LiNi0.75Mn0.25O2、LiNi0.8Mn0.2O2およびLiNi0.5Mn0.5O2は、いずれも上記調製方法で調製でき、LiNi0.8Mn0.2O2を例として、一実施例において、LiNi0.8Mn0.2O2の調製方法は以下のステップを含む。
【0045】
S100において、前駆体Ni0.8Mn0.2(OH)2と、リチウム源LiOHと、ドーパント(Ti、Zr、Alのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせ、ドープ量が5000ppmで、Li/ドーパント内の遷移金属=1.06である)とを撹拌条件で混合させ、混合速度が1000rpmで、混合時間が10minで、混合物を取得する。
【0046】
S200において、酸素ガス濃度90%の条件で、ステップS100で取得された混合物を一次焼成し、一次焼成の過程において、まず、昇温速度2度/minで950度に昇温し、その後、12h保持し、一次焼成材料を取得する。
【0047】
S300において、ステップS200で取得された一次焼成材料をロール粉砕研磨し、325メッシュの篩にかけて篩分けし、篩分け物を取得する。
【0048】
S400において、ステップS300で取得された篩分け物を乾式被覆し、ナノZrおよびAl酸化物(そのうち、Zr含有量0.2wt%、Al含有量0.1wt%)を用い、高温にて回転数1000rpmで15min混合させ、被覆物を取得する。
【0049】
S500において、ステップS400で取得された被覆物を二次焼成し、昇温速度3度/minで500℃に昇温して6h保持し、二次焼成物を取得する。
【0050】
S600において、ステップS500で取得された二次焼成物を325メッシュの篩にかけて篩分けしてコバルトフリー材料を取得する。
【実施例1】
【0051】
本実施例は、96.5重量部のコバルトフリー材料と、1.5重量部の粘着剤と、1.5重量部の第1導電剤と、0.5重量部の第2導電剤と、pH調整剤(添加量は、コバルトフリー材料、粘着剤、第1導電剤および第2導電剤内の乾燥粉添加量の0.3%である)とを含むコバルトフリーシステムを提供し、ここで、コバルトフリー材料はLiNi0.75Mn0.25O2であり、粘着剤は、数平均分子量が100万のポリフッ化ビニリデンであり、導電剤は、第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤は導電性カーボンブラックであり、第2導電剤は単層カーボンナノチューブであり、pH調整剤はシュウ酸であった。
【0052】
本実施例は、ペースト液と、ペースト液に分散された上記コバルトフリーシステムとを含む正極スラリーを提供し、ペースト液の調製方法は、90重量部のNメチルピロリドンと10重量部の数平均分子量が100万のポリフッ化ビニリデンとをペースト製造機に入れてペーストの製造を240min行い、ペースト液を取得することを含んだ。
【0053】
本実施例は、正極スラリーの均質化方法を提供し、以下のステップを含んだ。
【0054】
(1)コバルトフリーシステムにおける粘着剤と、第1導電剤と、pH調整剤とをペースト液に加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が15.7m/sで、撹拌の時間が60minであり、導電性ペーストAを取得した。
【0055】
(2)コバルトフリーシステムにおける第2導電剤をステップ(1)で取得された導電性ペーストAに加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が15.7m/sで、撹拌の時間が60minであり、導電性ペーストBを取得した。
【0056】
(3)コバルトフリーシステムにおけるコバルトフリー材料をステップ(2)で取得された導電性ペーストBに加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が19.7m/sで、撹拌の時間が120minであり、前記正極スラリーを取得した。
【0057】
本実施例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が5660cpで、12h静置した後、粘度は13000cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発は比較的小さいことが分かった。
【0058】
本実施例で取得されたスラリーを正極極シートに塗布し、長さ1mの長い極シートを切り出し、20cmおきに1回サンプリングし、毎回8つのデータで合計48個のデータをサンプリングし、48個のデータを計算し、塗布面密度の変動が±1.03%であり、ここで、面密度の変動(SD)の計算方式は以下を含んだ。
【0059】
【実施例2】
【0060】
本実施例は、95.4重量部のコバルトフリー材料と、1.8重量部の粘着剤と、2重量部の第1導電剤と、0.8重量部の第2導電剤と、pH調整剤(添加量は、コバルトフリー材料、粘着剤、第1導電剤および第2導電剤内の乾燥粉添加量の0.1%である)とを含むコバルトフリーシステムを提供し、ここで、コバルトフリー材料はLi1.1Ni0.8Mn0.2O2であり、粘着剤は、数平均分子量50万のポリフッ化ビニリデンであり、導電剤は、第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤は導電性カーボンブラックであり、第2導電剤は単層カーボンナノチューブであり、pH調整剤はマレイン酸であった。
【0061】
本実施例は、ペースト液と、ペースト液に分散された上記コバルトフリーシステムを含む正極スラリーを提供し、ペースト液の調製方法は、95重量部のNメチルピロリドンと5重量部の数平均分子量50万のポリフッ化ビニリデンとをペースト製造機に入れてペーストの製造を200min行い、ペースト液を取得することを含んだ。
【0062】
本実施例は、正極スラリーの均質化方法を提供し、以下のステップを含んだ。
【0063】
(1)コバルトフリーシステムにおける粘着剤と、第1導電剤と、pH調整剤とをペースト液に加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が15m/sで、撹拌の時間が80minであり、導電性ペーストAを取得した。
【0064】
(2)コバルトフリーシステムにおける第2導電剤をステップ(1)で取得された導電性ペーストAに加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が15m/sで、撹拌の時間が80minであり、導電性ペーストBを取得した。
【0065】
(3)コバルトフリーシステムにおけるコバルトフリー材料をステップ(2)で取得された導電性ペーストBに加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が19m/sで、撹拌の時間が140minであり、前記正極スラリーを取得した。
【0066】
本実施例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が5260cpで、12h静置した後、粘度は12770cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発は比較的小さいことが分かった。
【0067】
本実施例では、実施例1と同じ塗布面密度の試験方法を採用し、塗布面密度の変動が±1.05%であったことが分かった。
【実施例3】
【0068】
本実施例は、97.8重量部のコバルトフリー材料と、1重量部の粘着剤と、1重量部の第1導電剤と、0.2重量部の第2導電剤と、pH調整剤(添加量は、コバルトフリー材料、粘着剤、第1導電剤および第2導電剤内の乾燥粉添加量の0.5%である)とを含むコバルトフリーシステムを提供し、ここで、コバルトフリー材料はLiNi0.5Mn0.5O2であり、粘着剤は、数平均分子量150万のポリフッ化ビニリデンであり、導電剤は、第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤は導電性カーボンブラックであり、第2導電剤は単層カーボンナノチューブであり、pH調整剤はシュウ酸であった。
【0069】
本実施例は、ペースト液と、ペースト液に分散された上記コバルトフリーシステムを含む正極スラリーを提供し、ペースト液の調製方法は、80重量部のNメチルピロリドンと20重量部の数平均分子量150万のポリフッ化ビニリデンとをペースト製造機に入れてペーストを300min製造し、ペースト液を取得することを含んだ。
【0070】
本実施例は、正極スラリーの均質化方法を提供し、以下のステップを含む。
【0071】
(1)コバルトフリーシステムにおける粘着剤と、第1導電剤と、pH調整剤とをペースト液に加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が16m/sで、撹拌の時間が40minであり、導電性ペーストAを取得した。
【0072】
(2)コバルトフリーシステムにおける第2導電剤をステップ(1)で取得された導電性ペーストAに加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が16m/sで、撹拌の時間が40minであり、導電性ペーストBを取得した。
【0073】
(3)コバルトフリーシステムにおけるコバルトフリー材料をステップ(2)で取得された導電性ペーストBに加えて撹拌機で混合させ、撹拌の線速度が20m/sで、撹拌の時間が100minであり、前記正極スラリーを取得した。
【0074】
本実施例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が6640cpで、12h静置した後、粘度は12120cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発は比較的小さいことが分かった。
【0075】
本実施例では、実施例1と同じ塗布面密度の試験方法を採用し、塗布面密度の変動が±1.306%であったことが分かった。
【実施例4】
【0076】
実施例1との区別は、コバルトフリーシステムにおける導電剤が第1導電剤であったことのみにあり、他の組成および調製方法はいずれも実施例1と同じであった。
【0077】
本実施例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が6230cpで、12h静置した後、粘度は12130cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発は比較的小さいことが分かった。
【0078】
本実施例では、実施例1と同じ塗布面密度の試験方法を採用し、塗布面密度の変動が±1.446%であったことが分かった。
【0079】
実施例1と実施例4との比較により、コバルトフリーシステムに第1導電剤だけが含まれている場合、塗布面密度の変動は比較的大きいことが分かった。
【実施例5】
【0080】
実施例1との区別は、導電剤が第2導電剤であったことのみにあり、他の組成および調製方法はいずれも実施例1と同じであった。
【0081】
本実施例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が6210cpで、12h静置した後、粘度は13250cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発は比較的小さいことが分かった。
【0082】
本実施例では、実施例1と同じ塗布面密度の試験方法を採用し、塗布面密度の変動が±1.485%であったことが分かった。
【0083】
実施例1と実施例5との比較により、コバルトフリーシステムに第2導電剤のみが含まれている場合、塗布面密度の変動は比較的大きいことが分かった。
【実施例6】
【0084】
実施例1との区別は、コバルトフリーシステムにおける単層カーボンナノチューブをカーボンナノチューブに置き換えたことのみにあり、他の組成および調製方法はいずれも実施例1と同じであった。
【0085】
本実施例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が6980cpで、12h静置した後、粘度は13260cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発は比較的小さいことが分かった。
【0086】
本実施例では、実施例1と同じ塗布面密度の試験方法を採用し、塗布面密度の変動が±1.37%であったことが分かった。
【0087】
実施例1と実施例6との比較により、単層カーボンナノチューブの代わりにカーボンナノチューブを用いる場合、スラリーの塗布面密度の変動は比較的大きかったことが分かった。
【実施例7】
【0088】
実施例1との区別は、粘着剤であるポリフッ化ビニリデンの数平均分子量が500万であったことのみにあり、他の組成および準備方法はいずれも実施例1と同じであった。
【0089】
本実施例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が6350cpで、12h静置した後、粘度は14950cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発は比較的小さいことが分かった。
【0090】
本実施例では、実施例1と同じ塗布面密度の試験方法を採用し、塗布面密度の変動が±1.32%であったことが分かった。
【0091】
実施例1と実施例7との比較により、粘着剤が高分子量のポリフッ化ビニリデンを採用する場合、スラリーの粘度の反発は比較的大きく、塗布面密度の変動は比較的大きかったことが分かった。
【0092】
[比較例1]
実施例1との区別は、コバルトフリーシステムにpH調整剤であるシュウ酸が含まれなかったことのみにあり、他の組成および調製方法はいずれも実施例1と同じであった。
【0093】
本比較例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が5630cpで、12h静置した後、粘度は47000cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発が比較的大きかったことが分かった。
【0094】
本比較例では、実施例1と同じ塗布面密度の試験方法を採用し、塗布面密度の変動が±2.02%であったことが分かった。
【0095】
実施例1と比較例1との比較により、コバルトフリーシステムにシュウ酸が含まれなかった場合、スラリーの粘度の反発は大きく、塗布面密度の変動も大きく、実際応用に不利であったことが分かった。
【0096】
[比較例2]
本比較例は、均質化方法を提供し、以下のステップを含む。
【0097】
(1)6.25重量部のポリフッ化ビニリデン(数平均分子量80万)と93.75重量部のNメチルピロリドンとをペースト製造機に加えてペーストの製造を240min行い、ペースト液を取得した。
【0098】
(2)1.2重量部のポリフッ化ビニリデン(数平均分子量80万)と、0.7重量部のカーボンナノチューブとを撹拌機に加えて撹拌し、導電性ペースト1を取得した。
【0099】
(3)1.8重量部の導電性カーボンブラックと、ステップ(2)で取得された導電性ペースト1とを撹拌機に加えて撹拌し、導電性ペースト2を取得した。
【0100】
(4)96.3重量部のコバルトフリー材料とステップ(3)で取得された導電性ペースト2とを撹拌機に加えて撹拌し、スラリーを取得した。
【0101】
本比較例で取得されたスラリーに対して粘度試験を行うことにより、スラリーの粘度が6850cpで、12h静置した後、粘度は70000cpに反発したことが分かり、12h静置した後、スラリーの粘度の反発は比較的大きかったことが分かった。
【0102】
本比較例では、実施例1と同じ塗布面密度の試験方法を採用し、塗布面密度の変動が±2.28%であったことが分かった。
【0103】
実施例1と比較例2との比較により、三元系の均質化方法を適用する場合、取得されたスラリーの粘度の反発は大きく、塗布面密度の変動も大きく、実際応用に不利であったことが分かった。
【0104】
図1は、実施例1および比較例2で得られるスラリーの、異なる回転数(回転数が0から300r/minへおよび回転数が300から0r/minへ)でのせん断速度に伴う粘度の変化のグラフである。
図1から分かるように、比較例2は、回転数が0から300r/minへ変化した場合、1r/min時にスラリーの粘度は133000cpであり、回転数が300から0r/minへ変化した場合、1r/min時にスラリーの粘度は10901cpであり、実施例1は、回転数が0から300r/minへ変化した場合、1r/min時にスラリーの粘度は24544cpであり、回転数が300から0r/minへ変化した場合、1r/min時にスラリーの粘度は12311cpであった。比較例2と実施例1との比較により、実施例1は、回転数が300から0r/minへ変化した場合、1r/min時にスラリーの粘度は著しく低下し、チキソトロピーループ面積(即ち、0から300r/minへと、300から0r/minへとの2本の粘度曲線の間の面積)は著しく小さくなったことが見られ、実施例1で形成されたスラリーは、流動性、初期状態に復帰する能力がより強く、塗布レベリングにより寄与することを意味し、実施例1におけるコバルトフリーシステムを均質化することは、効果を著しく最適化して改善する方式であることを意味する。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトフリー材料、粘着剤、導電剤およびpH調整剤を含む、コバルトフリーシステム。
【請求項2】
前記コバルトフリー材料はLi
xNi
yMn
zO
2であり、xは1~1.1で、yは0.5~0.8で、zは0.2~0.5で、y+z=1である、請求項1に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項3】
前記コバルトフリー材料はLi
xNi
0.75Mn
0.25O
2であり、xは1~1.1である、請求項2に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項4】
前記粘着剤はポリフッ化ビニリデンであり、前記ポリフッ化ビニリデンの数平均分子量は50~150万であり、
好ましくは、コバルトフリー材料の添加量が95.4~97.8重量部で計算すると、前記粘着剤の添加量は1~1.8重量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項5】
前記導電剤は、第1導電剤と第2導電剤との組み合わせを含み、前記第1導電剤は導電性カーボンブラックであり、前記第2導電剤は単層カーボンナノチューブであり、
好ましくは、コバルトフリー材料の添加量が95.4~97.8重量部で計算すると、前記第1導電剤の添加量は1~2重量部で、第2導電剤の添加量は0.2~0.8重量部である、請求項請求項1~4のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項6】
前記pH調整剤は、シュウ酸および/またはマレイン酸を含み、
好ましくは、前記pH調整剤の添加量は、コバルトフリー材料、粘着剤および導電剤内の乾燥粉総質量の0.1~0.5%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステム。
【請求項7】
ペースト液と、ペースト液に分散された請求項1~6のいずれか1項に記載のコバルトフリーシステムとを含む、正極スラリー。
【請求項8】
前記ペースト液の調製方法は、粘着剤Aと溶媒とでペーストを製造し、前記ペースト液を取得することを含み、
好ましくは、前記ペーストの製造はペースト製造機で行われ、前記ペーストの製造の時間は200~300minである、請求項7に記載の正極スラリー。
【請求項9】
前記粘着剤Aはポリフッ化ビニリデンであり、前記ポリフッ化ビニリデンの数平均分子量は50~150万である、請求項8に記載の正極スラリー。
【請求項10】
前記溶媒は、Nメチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシドのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、前記溶媒の添加量が80~95重量部で計算すると、前記粘着剤Aの添加量は5~20重量部である、請求項8または9に記載の正極スラリー。
【請求項11】
コバルトフリーシステムをペースト液に加え、分散して前記正極スラリーを取得することを含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の正極スラリーの均質化方法。
【請求項12】
(1)コバルトフリーシステムにおける粘着剤、第1導電剤およびpH調整剤をペースト液に加えて混合させ、導電性ペーストAを取得するステップと、
(2)コバルトフリーシステムにおける第2導電剤をステップ(1)で取得された導電性ペーストAに加えて混合させ、導電性ペーストBを取得するステップと、
(3)コバルトフリーシステムにおけるコバルトフリー材料をステップ(2)で取得された導電性ペーストBに加えて混合させ、前記正極スラリーを取得するステップと、
を含む、請求項11に記載の均質化方法。
【請求項13】
ステップ(1)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が15~16m/sで、撹拌の時間が40~80minであり、
ステップ(2)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が15~16m/sで、撹拌の時間が40~80minであり、
ステップ(3)に記載の混合は撹拌条件で行われ、前記撹拌の線速度が19~20m/sで、撹拌の時間が100~140minである、請求項12に記載の均質化方法。
【請求項14】
正極集電体と、正極集電体の外面に設けられたスラリー層とを含み、前記スラリー層に使用されるスラリーは請求項7~10のいずれか1項に記載の正極スラリーである、正極極シート。
【請求項15】
正極極シート、負極極シートおよびセパレータを備え、前記正極極シートは請求項14に記載の正極極シートである、リチウムイオン電池。
【国際調査報告】