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特表2023-501114哺乳動物の過労の予防及び/又は治療に使用するための4-[5-[(RAC)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(54)【発明の名称】哺乳動物の過労の予防及び/又は治療に使用するための4-[5-[(RAC)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20230111BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P1/04
A61P1/00
A61P25/22
A61P13/12
A61P9/00
A61P17/02
A61P21/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P29/00
A61P29/00 101
A61K31/135
A61K31/137
A61K31/196
A61K31/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022523459
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020079178
(87)【国際公開番号】W WO2021089300
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】1951265-6
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478511
【氏名又は名称】スーリン、クラース
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スーリン、クラース
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA22
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA18
4C084ZA36
4C084ZA66
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086BC67
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZA18
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206FA14
4C206FA31
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206NA05
4C206ZA18
4C206ZB11
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、イヌ、ブタ、ネコ又はウマなどの哺乳動物における、任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び/又は食欲不振から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するための、化合物4-[5-[(rac)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4トリアゾール-3-イル]ピリジン(TT00、TT001及び/又はTT002)、又は前記TT00、TT001及び/又はTT002を含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の過労の予防及び/又は治療に使用するための、化合物4-[5-[(rac)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン(TT00)、又は4-[5-[(1R)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン、(TT001)及び/又は4-[5-[(1S)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン(TT002)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体、又はそれらの混合物。
【請求項2】
手術条件下で哺乳動物において使用するための、請求項1に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項3】
1つ又は複数の筋弛緩薬で処置された哺乳動物において使用するための、請求項1又は2に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項4】
前記化合物が手術前に投与される、請求項2又は3に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項5】
前記化合物が前記手術後に投与される、請求項2又は3に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項6】
イヌ、ネコ、ウマ又はブタにおいて使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項7】
潰瘍、腎臓及び/又は血管障害の予防及び/又は治療と組み合わせた、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項8】
創傷治癒及び/又は食欲不振の予防及び/又は治療と組み合わせた、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項9】
手術による胃食道逆流の予防及び/又は治療と組み合わせた、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくは混合物。
【請求項10】
不安症と組み合わせた、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項11】
手術による胃食道逆流及び不安症の予防及び/又は治療と組み合わせた、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項12】
任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び食欲不振を含む1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するための、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤又は担体と組み合わせた、化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
(i)化合物TT00、TT001及び/又はTT002、或いはその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは同位体若しくはそれらの混合物、(ii)更なる治療薬、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び(iii)薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤、を含む請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
(i)化合物TT00、TT001及び/又はTT002、或いはその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは同位体若しくはそれらの混合物、並びに薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤、(ii)更なる治療薬、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤、を含む請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記更なる治療薬が、ブチルピロリジン、オキシカム、プロピオン酸誘導体、フェナム酸、コキシブ、及び他の非ステロイド性抗炎症薬を含む群から選択されるNSAIDである、請求項12から14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記更なる治療薬が、トラマドール又はタペンタドールを含む群から選択されるオピエートである、請求項12から14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記更なる治療薬が抗リウマチ薬である、請求項12から14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
化合物TT00、TT001及び/又はTT002が、0.1~5.0mg/kgの用量で哺乳動物に投与される、請求項1から1のいずれか一項に記載の化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物、或いは請求項12から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記化合物が、TT001、又はその塩酸塩である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくは混合物、或いは請求項12から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌ、ブタ、ネコ又はウマなどの哺乳動物における、任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び/又は食欲不振から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するための、化合物4-[5-[(rac)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン(TT00、TT001及び/又はTT002)、又は前記TT00、TT001及び/又はTT002を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物における麻酔の誘導は、多くのレベルの課題を包含する。ネコ、ブタ、イヌ及びウマなどの哺乳動物による一般的なストレス経験は、麻酔を誘導及び維持するために必要な高濃度の医薬品の使用を引き起こす可能性がある。
【0003】
回復期間中、患者は再び不快感、痛み及びストレスを経験する。これらの条件は、回復期及び不活性期を延長する。患者の回復期間が長くなると、血管及び腎臓の事象のリスクが高まり、創傷治癒が減少する。それはまた、食欲に影響を及ぼし得、その結果、食欲不振が起こり得る。
【0004】
手術現場で今日一般的に使用されているのは、術前及び術後のストレス及び疼痛に対処するための抗不安薬及び鎮痛薬である。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が一般的に使用される。イヌにおけるNSAIDの典型的な副作用は、嘔吐、食欲不振、うつ病及び下痢である。他の重篤な副作用は、胃腸潰瘍、肝臓/腎臓不全であり、更には死亡さえも報告されている。
【0005】
CG Abdallah,et al.,Chronic Stress(Thousand Oaks).2017 Feb;1.doi:10.1177/2470547017704763.Epub 2017 Jun 8には、障害疼痛とストレスの違いについて記載されており、ストレスの定義は非常に広いと述べられている。例えば、激しい写真を見せること及び急性嫌悪刺激様急性疼痛は、両方ともストレスが多いが、異なる生理機能を伴う可能性がある。さらに、コルチゾールの放出及び海馬の活性化は、しばしばストレス後に観察されるが、急性疼痛後にはめったに見られない。疼痛に対して有効であり得る物質は、ストレスに対して非常に有効ではない場合がある。
【0006】
Christian L.M.et al.,Stress and Wound Healing,Neuroimmunomodulation.2006;13(5-6):337-346,doi.org/10.1159/000104862は、ストレスが創傷治癒を有意に遅延させ得ることが明らかになったことを開示している。大きさ及び持続時間に及ぶストレス因子は、ヒト及び動物の治癒を損なう。例えば、ヒトでは、介護の慢性的ストレス並びに学術試験の比較的短いストレスが治癒を妨げる。同様に、拘束ストレスはマウスの治癒を遅延させる。創傷治癒及び外科的回復に対するストレスの影響は、実験室での創傷及び手術の両方の一般的な症状である身体的疼痛の影響によって悪化し得る。
【0007】
G.B.Glavin et al.,The neurobiology of stress ulcers,Brain Research Reviews,16(1991)301-343,1991 Elsevier Science Publishers B.V.,doi.org/10.1016/0165-0173(91)90012-Wは、定量化が困難ないくつかを含む様々なストレス因子への曝露後に動物とヒトの両方で急性胃病変が発生することを開示している。1936年に、Selyeは、幅広い様々なストレス因子に応答した特定の生理学的変化の発生を報告する2つの短い論文を発表した。これらの応答には、副腎肥大、胸腺リンパ退縮及び胃の急性潰瘍が含まれた。これらは、ストレス症候群の典型的な症状になるはずであった。その時点で、Selyeは、実験用ラットの固定化がこの症候群を引き起こすことを報告した。したがって、1936年には、論文の図1に示されるように、ストレスと胃潰瘍形成との間に関連が作られた。しかし、この分野で更なる重要な刊行物が出現するまでには、さらに20年かかることとなった。拘束ストレスを受けたマウスはまた、ストレスを受けていない対照と比較して有意に高いレベルの血清コルチコステロンを有していた。ストレスを受けた動物を糖質コルチコイドレセプター拮抗薬(RU40555)で処置した場合、それらの治癒率はストレスを受けていない動物と同等であったので、血清コルチコステロンの上昇は、治癒の遅延及び感染の発生率の上昇にとって重要であることが分かった。これらの結果は、創傷部位での炎症活性に対するグルココルチコイドの抑制効果が、ストレスと治癒を結び付ける重要な因子であることを実証した。
【0008】
Lloyd JKF,et al.,Minimising Stress for Patients in the Veterinary Hospital,Veterinary Sciences,13 Apr 2017,4(2)DOI:10.3390/vetsci4020022は、イヌの恐怖を悪化させ、攻撃性を誘発する因子がネコにも当てはまることを開示している。イヌやネコは、飼い主から離れてケージに入れられていることで、極度のストレスを受けることがある。これらの動物は、心拍数の増加及びコルチゾールの放出などの生理学的変化を受け、これらは両方とも、恐怖及び不安などの否定的な感情に関連し得る。さらに、ストレスを受けた動物は十分に飲食しない可能性があり、これは回復を遅らせる可能性がある。
【0009】
Balcome at al.,Contemporary Topics 2004 by the American Association for Laboratory Animal Science.Vol43.No.6/November 2004は、実験室のルーチンがストレスに関連し、動物がそれらに容易に慣れないことを開示している。データは、著しい恐怖、ストレス、及び場合によっては苦痛が日常的な実験室手順の予測可能な結果であり、これらの現象が実験室研究における動物の使用のための実質的な科学的及び人道的な意味合いを有することを示唆している。
【0010】
単独で又は他の因子、最も一般的には冷たい室温と組み合わせた固定化は、治療戦略の探索において胃潰瘍の調節因子としての薬理学的薬剤を研究するために広く使用されてきた。現在使用されている最も一般的な手順は、冷たい(4℃)部屋又はチューブ拘束での仰臥位拘束+室温(20℃)水への部分浸漬である。これらの技術は、ストレス前負荷又は潰瘍形成ストレス因子後の安静状態などのストレス性潰瘍誘発技術の前及び後の両方の多数の処置によって修正可能な比較的大量の潰瘍形成(平均15~40mmの線状びらんが一般的である)を生じるので選択される。
【0011】
Nagy et al,Forced swimming test in mice:A review of antidepressant activity,February 2005,Psychopharmacology 177(3):245-55は、室温の水(23℃)中で5時間「強制水泳」すると出血性の胃腺病変も生じることを報告している。
【0012】
Saeid Golbidi,et al.,Am J Physiol Heart Circ Physiol 308:H 1476-H1498,2015.Review First published April 17,2015は、慢性ストレスが心血管系にどのように影響するかを開示している。強制水泳のアテローム性動脈硬化促進効果は、通常の食餌を与えたラットにおける抑制及び強制水泳からなるストレスプロトコルで示されている。この慢性ストレスモデルは、コレステロール及びトリグリセリド血中レベルの増加、HDLの減少、酸化ストレスの増加、血管弾性線維の減少、及びフォーム細胞形成の増強を含むアテローム性動脈硬化症の様々な態様を増強した。ストレスプロトコルの停止後20週間、ストレスの高コレステロール血症及び酸化的影響が残った。この実験設定では、心機能に対する強制水泳の有害な影響も示されている。
【0013】
Marchon R.G,et al.,Kidney Blood Press Res 2018;43:1919-1926,2018 The Author(s)Published by S.Karger AG,Basel,doi.org/10.1159/000496004は、未成熟ラット及び成体ラットの腎臓に対するストレスの即時及び後期の影響を開示している。結果は、直ちに評価した場合、対照群と比較して、ストレスを受けた未成熟動物が、腎臓の重量及び体積の減少並びに皮質-髄質比の増加を示したことを示す。さらに、直ちに評価したストレスを受けた未成熟動物及び成体動物は、糸球体体積密度が低下していた。最も重要なことに、全てのストレス負荷群は、腎臓当たりの糸球体数の減少を示した。他の分析されたパラメータは有意に異ならなかった。成熟期前後に誘発された慢性ストレスは不可逆的な糸球体損失をもたらしたが、ストレス刺激の除去によって腎機能障害が中断されたと結論付けられる。
【0014】
近年、コンパニオンアニマルの手術環境における逆流による合併症が「Prevalence of and risk factors for intraoperative gastroesophageal reflux and postanaesthetic vomiting and diarrhoea in dogs undergoing general anaesthesia,Journal of Veterinary Emergency and Critical Care 27(4)2017,pp397-408 doi:10.1111/vec.12613」において注目されている。著者らは、麻酔中のイヌにおいて逆流の高い有病率が存在すると結論付けている。これはネコ「Prevalence of Gastroesophageal Reflux in Cats During Anaesthesia and Effect of Omeprazole on Gastric pH,J Vet Intern Med 2017;31:734-742」にも当てはまる。
【0015】
逆流が哺乳動物の手術/外科手術における一般的な病気であるという認識は、治験薬の新しい分野を開いた。Rodriguez-Alarcon,C.A.et al.「Gastroesophageal reflux in anesthetized dogs:a review」In:Rev Colomb Cienc Pecu,2015,Vol.28,pp.144-155は、胃食道逆流(GER)の術後例を減少させるためのラニチジンなどの活性成分の使用を開示している。ラニチジンは酸産生を減少させ、これは胃中のpHを低下させるだけで、ラニチジンは逆流自体に影響を及ぼさない。
【0016】
逆流は、消化性潰瘍及び他の合併症を引き起こし、手術後の哺乳動物又は患者の回復期間に影響を及ぼす可能性がある。
【0017】
げっ歯類の動物モデルはヒトにおける効果を予測することができるが、げっ歯類モデルがイヌにおける結果を予測する研究は提示されていない。同時に、これらの効果を測定することができるより大きな動物のモデルはほとんどない。
【0018】
種代謝物の比較
分子が薬物候補になる前に、多くのことをクリアしなければならない。分子が通過しなければならない2つの重要な工程は、代謝物プロファイル評価による種適合性である。
【0019】
薬物開発の非臨床部分では、代謝物プロファイルを決定し、ラット及びヒト肝細胞における分子のインキュベーション後に生成される選択された代謝物を特徴付けるための研究が設計される。得られた結果を使用して、ヒトの肝臓代謝を安全性研究で使用されたげっ歯類モデルと比較する。
【0020】
使用される1つの方法は、ラット及びヒト肝細胞を採取し、それらを分子と共にインキュベートすることである。上清中の代謝物プロファイルを液体クロマトグラフィによって記録する。選択された代謝物は、正確な質量分析によって特徴付けられる。肝代謝由来の10を超える異なる代謝物が存在し得る。
【0021】
代謝物プロファイルは、2つの種間で同様であるべきである。これが当てはまらない場合、ヒトに対するげっ歯類モデルの予測可能性は明白ではなく、おそらく分子は薬物候補にならない。
【0022】
炎症性疾患などの特定の適応症では、ヒトに対するげっ歯類モデルの予測可能性が非常に低いことも周知である(PNAS|February 26,2013|vol.110|no.9|3507-3512,マウスモデルにおけるゲノム応答はヒト炎症性疾患をほとんど模倣していない)。
【0023】
これは臨床的疼痛にも当てはまる。残念なことに、げっ歯類の生物学は、ヒトにおける臨床的疼痛状態の生物学及び薬理学を正確に予測することができない場合が多々ある。(Blackburn-Munro 2004;Le Bars et al.2001,Translational Pain Research:From Mouse to Man.Kruger L,Light AR,editors.Boca Raton,FL:CRC Press/Taylor&Francis;2010.Chapter17 Large Animal Models for Pain Therapeutic Development,Darrell A.Henze and Mark O.Urban)。
【0024】
げっ歯類モデルに基づいて、薬物の代謝及び種間の代謝物プロファイルの両方、並びにヒトにおける応答を予測することが困難であることに基づいて、当業者は、化合物の活性を検証するために特定の研究が行われない限り、別の種からのデータに基づいて、ある種に対する薬物の有効性及び毒性を予測することができない。
【0025】
異なる種において異なる効果を有する薬物の例
トラマドールは、ヒトにおいて良好な効力を有する鎮痛剤として広く使用されているが、イヌにおける効果は存在しない。(J Am Vet Med Assoc.2018 Feb 15;252(4):427-432.doi:10.2460/javma.252.4.427.,Lack of effectiveness of tramadol hydrochloride for the treatment of pain and joint dysfunction in dogs with chronic osteoarthritis.,Budsberg SC,Torres BT,Kleine SA,Sandberg GS,Berjeski AK.)
【0026】
また、トラマドールには、イヌが概念やバランスを失い、あたかも「ハイ」な状態であるかのような印象を与える有害作用があることが知られている。ヒトにおいて使用される、動物に有毒な薬物も存在する。この例は、ネコに与えるべきではないアセトアミノフェン及びアスピリンを含むフェノール系薬物である。(PLoS One.2011 Mar 28;6(3):e 18046.doi:10.1371/journal.pone.0018046,Evolution of a major drug metabolizing enzyme defect in the domestic cat and other felidae:phylogenetic timing and role of hypercarnivory.Shrestha B1、Reed JM,Starks PT,Kaufman GE、Goldstone JV,Roelke ME,O’Brien SJ,Koepfli KP,Frank LG,Court MH,and Author information Comparative and Molecular Pharmacogenomics Laboratory,Department of Molecular Physiology and Pharmacology,Tufts University School of Medicine,Boston,Massachusetts,United States of America.Life Sci.2006 Nov 25;79(26):2463-73.Epub 2006 Oct 5)。
【0027】
手術中に使用される医薬品の数が比較的多いと、回復/回復期間を最適化することがより困難になる。
【0028】
併用薬物療法(CDT)
疼痛管理のためにCDTを検討するいくつかの研究がある。
【0029】
Mao et al.J.Pain,2011,vol12,pp157-166は、疼痛の治療のための様々な併用薬物療法を開示している。ほとんどの治療法は、別の鎮痛剤と組み合わせたオピエートを使用する。mGluRは全く言及されていない。Mao J.et al,は、ヒトにおけるCDTについて入手可能なデータをレビューしているが、動物についての言及は全くない。表1では、異なる併用を列挙し、肯定的又は否定的結果に関して評価している。Mao et alの表1では、トラマドールとアセトアミノフェンとの併用[経口]が、ヒトにおいて、アドオン薬物による肯定的かつより良好な疼痛緩和を示したことも言及されている。このCDTがネコに与えられた場合、その毒性によりネコが死亡する可能性がある。
【0030】
Vet Rec.2019 Oct 5;185(13):406.doi:10.1136/vr.105009.Epub 2019 Jul 18,Randomised trial of perioperative tramadol for canine sterilisation pain management,and Meunier NV1,Panti A2,Mazeri S1,Fernandes KA3,Handel IG2,Bronsvoort BMC1,Gamble L3,Mellanby RJ2,Author information The Roslin Institute and Royal(Dick)School of Veterinary Studies,University of Edinburgh,Easter Bush,UK.Royal(Dick)School of Veterinary Studies、University of Edinburgh,Easter Bush,UK.Worldwide Veterinary Service,Cranborne,UK.Life Sci.2006 Nov 25;79(26):2463-73.Epub 2006 Oct 5.,cDNA cloning and characterization of feline CYP1A1 and CYP1A2.,Tanaka N1,Miyasho T,Shinkyo R,Sakaki T,Yokota H.,Author information Laboratory of Veterinary Biochemistry,Graduate School of Veterinary Medicine,Rakuno Gakuen University,Ebetsu,Hokkaido 069-8501,Japanも参照されたい。
【0031】
異なる薬物を組み合わせるだけで相加効果があるという一般的な誤解がある可能性がある。Mao et alの表1では、4つの併用のうち1つは肯定的な結果が得られない。組み合わせが治療の総効力を低下させている状況さえ存在する。
【0032】
当業者にとって、異なる種における臨床結果が他の種に自動的に変換されないことは明らかなはずである。したがって、当業者は、各種についての有効性及び毒性の独立した評価を示唆すべきであり、示唆するであろう。これは、ほとんどの国における医療製品庁の立場でもあることは明らかである。
【0033】
したがって、特にイヌ、ブタ、ネコ及びウマなどの哺乳動物において、手術後の回復のための時間を短縮するという課題がある。
【0034】
TT00、又は4-[5-[(rac)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン
【化1】

、及び
TT001、又は4-[5-[(1R)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン、AZD2066、CAS番号934282-55-0、
【化2】

、及び
TT002、又は4-[5-[(1S)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン、
【化3】

は、分子式C1916ClN及び381.8(塩基)の相対分子量を有する。
【0035】
TT00、特にTT001は、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)における選択的な非競合的拮抗薬であり、ヒトにおける神経障害性起源の慢性疼痛症候群、不安症及び胃食道逆流症(GERD)の経口治療のために開発された。
【0036】
TT00は、中枢神経系のmGluR5受容体に影響を及ぼし、中枢性疼痛の緩和、不安の軽減及び胃食道逆流の減少をもたらし得る。TT001の臨床開発は、全ての適応症において物質の効果が欠如したため中止した。
【0037】
臨床開発では、イヌが毒性研究に使用されているが、これらの適応症に対する有効性研究は行われていない。書誌検索では、前記分子についてイヌ、ブタ、ネコ又はウマにおける不安症及び/又は疼痛の回復の短縮並びに処置に関するいかなる論文も見出されない。
【0038】
国際公開第2007/040982号は、神経障害、精神障害又は疼痛障害の治療のためのヒトにおけるTT00、TT001及び/又はTT002の使用を開示している。mGluR受容体におけるIC50結合データ、並びに食物摂取に関連した健康なイヌのTLESRに対するTT00、TT001又はTT002の効果に関する研究が示されている。この研究の結果は開示されていない。臨床データは全く存在せず、特にTT00、TT001及び/又はTT002の投与後の疼痛治療に関連する臨床データは存在しない。
【0039】
Rohof,et al.,Aliment.Pharmacol.Ther.2012,vol35,pp1231-1242は、食物摂取に関連して健常志願者におけるTLESRに対するその効果を測定するためにTT001を使用する臨床試験を開示している。図2及び図4の結果は、13mg(約0.19mg/kg)の高用量のみが、食物摂取の2~3時間後にいくらかの効果を有するが、食物摂取前にも、食物摂取の1~2時間後にも、逆流に有意な効果はなかったことを示す。13mgの高用量に関連するいくつかの重篤な副作用が言及されている。TT00、TT001及び/又はTT002の投与後の疼痛治療に関連して臨床データは開示されていない。
【0040】
さらに、ラット及びイヌにおけるTT001並びに肝臓代謝及び代謝物プロファイルに関する公開されたデータはなく、ネコ及びウマと比較してラットについては確実にない。
【0041】
Richard H.P.,The American Society for Pharmacology and Experimental Therapeutics JPET 315:711-721,2005は、ヒトにおける不安症における代謝型グルタミン酸(mGlu)5受容体拮抗薬であるフェノバムの使用を開示している。結果は、用量10(p<0.001)及び30mg/kg(p<0.001)で、フェノバムがマウスにおいてストレス誘発性温熱症(SIH)を有意に逆転させたことを示す。ヒトにおいてTT001を用いて行われた研究は、ヒトにおける不安症に対する効果を何ら示さなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
イヌ、ブタ、ネコ又はウマなどの哺乳動物における、任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び/又は食欲不振から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に対する満たされていない必要性がある。胃腸毒性及び腎毒性などの副作用が低減された治療が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明は、哺乳動物の過労の予防及び/又は治療に使用するための、化合物4-[5-[(rac)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン(TT00)、4-[5-[(1R)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン、(TT001)及び/又は4-[5-[(1S)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン(TT002)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体、又はそれらの混合物に関する。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。
【発明の効果】
【0044】
CG Abdallah,et al.,Chronic Stress(Thousand Oaks).2017 Feb;1を参照すると、痛みに作用する物質をストレスの指標に用いることができると仮定する理由はない。さらに、疼痛治療に使用するためのTT001の効果は示されていない。TT001は、うつ病及び不安症の治療に有効ではないことが示されている。しかしながら、新たな結果は、ストレス/過労の治療における物質の予想外の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
別の態様では、化合物はTT001の塩酸塩である。更なる態様では、化合物はTT001の硫酸塩である。一態様では、哺乳動物は、イヌ、ネコ、ウマ又はブタである。
【0046】
通常の手術/外科的状況では、アセプロマジン、モルヒネ及びプロポフォールなどの麻酔薬が使用される。アセプロマジンなどの麻酔薬は、下部食道括約筋(LES)に影響を及ぼす筋弛緩特性を有し、麻酔中により多くの逆流エピソードを引き起こす。したがって、化合物TT00、TT001及び/又はTT002を手術条件下で投与することが有利であり得る。一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、手術条件下の哺乳動物における過労の予防及び/又は治療に使用するためのものである。別の態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、1つ又は複数の筋弛緩薬で治療された哺乳動物における過労の予防及び/又は治療に使用するためのものである。更なる態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、手術条件下の1つ又は複数の筋弛緩薬で治療された哺乳動物における過労の予防及び/又は治療に使用するためのものである。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。前記化合物は、哺乳動物に対する手術の前、間及び/又は後に投与され得る。一態様では、前記化合物は手術前に投与される。哺乳動物が手術前に弛緩している/ストレスを受けていない場合が有利である。ストレスが軽減されると、動物は手術前に扱いやすくなる。また、化合物TT001は逆流を減少させ得るので、胃食道逆流に対する効果は減少する。別の態様では、前記化合物は手術後に投与される。哺乳動物が手術後に弛緩していると有利である。手術後の哺乳動物におけるストレスレベルの低下は、胃障害、脳損傷、腎臓及び/又は血管障害、創傷治癒及び/又は食欲不振などの手術後のストレスに起因して起こり得るストレス関連合併症を軽減すると考えられている。
【0047】
一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、潰瘍、腎臓及び/又は血管障害の予防及び/又は治療と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するためのものである。一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、潰瘍の予防及び/又は治療と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するためのものである。一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、腎臓及び/又は血管障害の予防及び/又は治療と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するためのものである。別の態様では、哺乳動物は、手術条件下にあり、及び/又は1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。上述のように、潰瘍、腎臓及び/又は血管障害などの障害は、ストレスを受けた哺乳動物において、又は手術に関連して起こり得る。化合物TT00、TT001及び/又はTT002のようなmGluR拮抗薬は、特にストレスを受けた哺乳動物において、これらの障害の発生を予防し、及び/又はこれらの障害を治療することができると考えられている。
【0048】
一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、(不良な)創傷治癒の予防及び/又は治療と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するためのものである。一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、食欲不振の予防及び/又は治療と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するためのものである。別の態様では、哺乳動物は、手術条件下にあり、及び/又は1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。上述のように、創傷治癒不良及び/又は食欲不振のような障害は、ストレスを受けた哺乳動物において、又は手術に関連して起こり得る。手術/外科手術後の回復の2つの重要な部分は、創傷が迅速に合併症なく治癒すること、及び哺乳動物が飲食を開始することである。創傷治癒及び摂食のこれら2つの条件は、哺乳動物のストレスレベルによって制御される。化合物TT00、TT001及び/又はTT002のようなmGluR拮抗薬は、特にストレスを受けた哺乳動物において、これらの障害の発生を予防し、及び/又はこれらの障害を治療することができると考えられている。
【0049】
一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、手術による胃食道逆流の予防及び/又は治療と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するためのものである。別の態様では、哺乳動物は、手術条件下にあり、及び/又は1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される。逆流は、術前の胃食道逆流、術中の胃食道逆流及び/又は術後の胃食道逆流であり得る。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。前記化合物は、胃食道逆流に対してプラスの効果を有し得、これは、ストレスを受けた哺乳動物において、特に手術条件下で増加し得る。したがって、化合物TT00、TT001及び/又はTT002のようなmGluR拮抗薬は、哺乳動物、特にストレスを受けた哺乳動物における手術による胃食道逆流の発生を予防し、及び/又は手術による胃食道逆流を治療することができると考えられる。
【0050】
一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、不安症と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するためのものである。別の態様では、哺乳動物は、手術条件下にあり、及び/又は1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される。化合物TT001は不安症の治療に有効ではないことが示されているが、過労/ストレスの予防及び/又は治療に有効であることが分かっている。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。したがって、化合物TT00、TT001及び/又はTT002のようなmGluR拮抗薬は、哺乳動物、特にストレスを受けた哺乳動物における不安症の発生を予防し、及び/又は不安症を治療することができると考えられる。
【0051】
一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、手術による胃食道逆流及び不安症の予防及び/又は治療と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するためのものである。別の態様では、哺乳動物は、手術条件下にあり、及び/又は1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。化合物TT00、TT001及び/又はTT002のようなmGluR拮抗薬はまた、哺乳動物における胃食道逆流及び不安症の発生を予防し、及び/又は胃食道逆流及び不安症を治療することができると考えられている。
【0052】
いくつかの態様では、哺乳動物は、上述の使用又は使用の組み合わせのいずれかにおけるイヌ、ネコ、ウマ又はブタである。一態様では、哺乳動物はイヌである。別の態様では、哺乳動物は、ネコ又はウマである。
【0053】
いくつかの態様では、化合物は、TT001、又はその塩酸塩若しくは硫酸塩である。
【0054】
いくつかの態様において、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び/又は食欲不振から選択される1つ又は複数の障害の予防及び/又は治療は、ストレスを受けた哺乳動物において、すなわち、コルチゾールの放出及び海馬の活性化のレベルが上昇している哺乳動物において行われる。
【0055】
いくつかの態様では、疼痛の予防及び/又は治療は否定される。いくつかの態様では、うつ病の予防及び/又は治療は否定される。
【0056】
化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、意図された用量で副作用をほとんど示さない。それらは、より長い投与期間にわたって効力を失わない。上に定義される化合物は、NSAIDなどの今日哺乳動物で使用されている従来の薬物と比較して、副作用の可能性が低いと考えられる。本発明の化合物は、胃腸及び腎臓毒性が低下していると考えられる。
【0057】
本発明はさらに、任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び食欲不振を含む又はそれらからなる群から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するための、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤又は担体と組み合わせた、化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくは混合物を含む医薬組成物に関する。別の態様では、哺乳動物は、手術条件下にあり、及び/又は1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。逆流は、術前の胃食道逆流、術中の胃食道逆流及び/又は術後の胃食道逆流であり得る。
【0058】
本発明はまた、化合物TT00、TT001及び/又はTT002を、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤又は担体と混合することを含む、上で定義される医薬組成物を調製するための方法に関する。一態様では、化合物は、TT001、又はその塩酸塩若しくは硫酸塩である。
【0059】
上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、1日当たり0.1~5.0mg/kg、又は0.1~2.0mg/kg、又は0.1~1.0mg/kgの用量で投与することができる。一態様は、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002を、1日1回又は1日2回、0.1~5.0mg/kgの用量で哺乳動物に投与する投与計画に関する。一態様では、投与計画は、1日1回、0.1~1.0mg/kgの用量での上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002の投与である。いくつかの態様では、化合物は、TT001、又はその塩酸塩若しくは硫酸塩である。いくつかの態様では、化合物はTT001又はその塩酸塩である。
【0060】
本明細書で定義される回復期間の短縮、並びに関連病変の予防及び/又は治療は、単独の治療として適用されてもよく、又は前記化合物に加えて、本明細書で言及される1つ又は複数の疾患状態を予防及び治療するのに有用な従来の治療との共同治療を含むことができる。そのような従来の治療は、以下のカテゴリーの薬剤であるNSAID及びオピエートの1つ又は複数を含むことができる。
【0061】
Mao et al.J.Pain,2011,vol12,pp157-166は、疼痛の治療のための様々な併用薬物療法を開示している。ほとんどの治療法は、別の鎮痛剤と組み合わせたオピエートを使用する。mGluRは、併用療法での使用については全く言及されていない。
【0062】
そのような共同治療は、治療の個々の成分の同時、逐次又は別個の投与によって達成することができる。そのような組み合わせ製品は、上記障害のいずれかで使用するために、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002を使用する。
【0063】
一態様では、本発明は、任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び食欲不振を含む又はそれらからなる群から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するための、(i)化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは同位体若しくは混合物、(ii)更なる治療薬、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、(iii)薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤を含む医薬組成物に関する。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。
【0064】
別の態様では、本発明は、任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び食欲不振を含むか又はそれらからなる群から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するための、(i)化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは同位体若しくは混合物、並びに薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤、(ii)更なる治療薬、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、並びに薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤を含む医薬組成物に関する。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。
【0065】
別の態様では、少なくとも1つの更なる治療薬は、NSAID及びオピエートからなる群から選択される。
【0066】
一態様では、更なる治療薬は、ブチルピロリジン、オキシカム、プロピオン酸誘導体、フェナム酸、コキシブ及び他の非ステロイド性抗炎症薬及び抗リウマチ薬などのNSAIDである。
【0067】
NSAIDの例には、抗炎症性、抗リウマチ性及び/又は非ステロイド性NDSAIDが含まれ得る。NSAIDは、ブチルピラゾリジナー(例えば、フェニルブタゾン)、又はオキシカム(例えば、メロキシカム)、又はプロピオンシラジバト(例えば、ケトプロフェン、ベダプロフェン、カルプロフェン及びテポキサリン)、又はフェナメーター(例えば、トルフェナンシュラ、メクロフェナムシュラ及びフルニキシン)、又はコキシバー(例えば、ポルマコキシブ、フィロコキシブ、ロベナコキシブ、マバコキシブ及びシミコキシブ)、又は他の非ステロイド性抗炎症薬及び抗リウマチ薬(例えば、グルコサミノグリカンポリスルファット、ペントサンポリスルファット及びグラピプラント)を含む群又はそれらからなる群から選択され得る。
【0068】
一態様では、更なる治療薬は、トラマドール又はタペンタドールなどのオピエートである。
【0069】
別の態様では、少なくとも1つの更なる治療薬は抗リウマチ薬である。
【0070】
一態様では、本発明は、任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び食欲不振を含む又はこれらからなる群から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、の予防及び/又は治療に使用するための、(i)化合物TT001、又はその塩酸塩若しくは硫酸塩、(ii)ブチルピロリジン、オキシカム、プロピオン酸誘導体、フェナム酸、コキシブ、並びに他の非ステロイド性抗炎症薬、及び抗リウマチ薬などのNSAID及びトラマドール及びタペンタドールなどのオピエートからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤、並びに(iii)薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤を含む医薬組成物に関する。一態様では、上に定義される化合物は、哺乳動物における過労の予防に使用するためのものである。
【0071】
そのような併用製品は、本明細書に記載される投与量範囲内の上に定義される化合物、並びに承認された投与量範囲内及び/又はその刊行物参照に記載される投与量内の他の薬学的に活性な化合物を使用する。一態様では、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002、並びに更なる治療薬が組み合わせ組成物で使用される場合、投与量範囲は、処方された投与量の75重量%又は50重量%である。
【0072】
上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002を含む医薬組成物は、任意選択で上に定義される更なる薬剤と一緒に、静脈内、筋肉内又は経口投与され得る。一態様では、医薬組成物は静脈内又は筋肉内投与される。TT001は、麻酔プロトコルと共に手術の前後に投与することができる。一態様では、前記化合物は筋肉内投与され得る。
【0073】
一態様では、哺乳動物におけるストレスを軽減するために、哺乳動物がストレスを経験するか、又は哺乳動物の手術などの1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される状況の前-最中及び/又は後に使用するための、化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、ジアステレオマー、エナンチオマー、同位体、プロドラッグ若しくは代謝産物若しくはそれらの混合物。一態様では、化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、ジアステレオマー、エナンチオマー、同位体、プロドラッグ若しくは代謝産物若しくはそれらの混合物は、哺乳動物における手術後の回復のための時間を短縮するのに使用するためのものであり、この時間は、TT00、TT001及び/又はTT002を使用しない前-最中及び/又は手術後と比較して少なくとも1時間短縮される。
【0074】
本発明はまた、手術に関連する不安症及び/又は疼痛と組み合わせた手術による胃食道逆流、すなわち手術に関連する不安症と組み合わせた手術による胃食道逆流、又は手術に関連する疼痛と組み合わせた手術による胃食道逆流、又は手術に関連する不安症及び疼痛と組み合わせた手術による胃食道逆流の予防及び/又は治療に使用するための、化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、ジアステレオマー、エナンチオマー、同位体、プロドラッグ若しくは代謝産物若しくはそれらの混合物に関する。逆流は、術前の胃食道逆流、術中の胃食道逆流及び/又は術後の胃食道逆流であり得る。
【0075】
本発明はまた、哺乳動物が手術などのストレスを経験するか、又は1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される状況に関連する潰瘍、腎臓及び/又は血管障害の予防及び/又は治療に使用するための、化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、ジアステレオマー、エナンチオマー、同位体、プロドラッグ若しくは代謝産物若しくはそれらの混合物に関する。
【0076】
本発明は、哺乳動物、任意選択で手術条件下及び/又は1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される哺乳動物における、任意選択で、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び/又は食欲不振から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、過労、のリスクを治療、予防又は低減する方法であって、それを必要とする哺乳動物、例えばイヌ、ブタ、ネコ又はウマに、上に定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002の治療有効量を投与することを含む方法に関する。
【0077】
本発明は、哺乳動物におけるストレス、又は手術による胃食道逆流、又は手術に関連する不安症及び/又は疼痛と組み合わされた手術による胃食道逆流、若しくは哺乳動物がストレスを経験するか、又は哺乳動物における手術などの1つ又は複数の筋弛緩薬で治療される状況に関連する潰瘍、腎臓及び/若しくは血管障害と組み合わせたリスクを治療、予防、又は低減する方法であって、治療有効量の化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、ジアステレオマー、エナンチオマー、同位体、プロドラッグ若しくは代謝産物若しくはそれらの混合物を、それを必要とするイヌ、ブタ、ネコ又はウマなどの哺乳動物に投与することを含む方法に関する。一態様では、化合物は、TT001、又はその塩酸塩若しくは硫酸塩である。
【0078】
本発明の様々な実施形態の詳細な説明
本出願に記載された定義は、本出願を通して使用される用語を明確にすることを意図している。「本明細書」という用語は、出願全体を意味する。
【0079】
本明細書で使用される場合、「回復」は、正常な健康状態及び機能の回復又は回復を意味する。
【0080】
「化合物TT00、TT001及び/又はTT002」という表現は、特に明記しない限り、薬学的に許容される塩、溶媒和物、ジアステレオマー、エナンチオマー、同位体、プロドラッグ若しくは代謝物若しくはそれらの混合物を含むことを理解されたい。
【0081】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、開示される化合物の形態を指し、親化合物は、その酸塩又は塩基塩を形成することによって修飾される。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸又は有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩又は第4級アンモニウム塩が含まれる。そのような従来の非毒性塩には、塩酸などの無機酸から誘導されるものが含まれる。塩の例は、塩酸塩又は硫酸塩、特に4-[5-[(1R)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン塩酸塩又は4-[5-[(1R)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン硫酸塩である。
【0082】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性部分又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸又は遊離塩基形態を、化学量論量の適切な塩基又は酸と、水又は有機溶媒中、又は2つの混合物中で反応させることによって調製することができ、一般に、ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルなどの非水性媒体が使用される。
【0083】
化合物TT00、TT001及び/又はTT002、特にTT001は、特定の幾何異性体又は立体異性体の形態で存在することができる。本発明は、互変異性体、R-及びS-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、それらのラセミ混合物、及びそれらの他の混合物を含む全てのそのような化合物を、本発明の範囲内に包含されるものとして考慮する。
【0084】
本明細書で使用される場合、「又は薬学的に許容される塩」という語句は、その水和物及び溶媒和物を含む。
【0085】
本明細書で使用される場合、「手術」は、哺乳動物が意識不明又は意識がある、昏睡及び非昏睡手術を意味する。手術は外科手術であってもよい。本明細書において、「手術条件下」とは、哺乳動物に手術を行うことを意味し、手術前から手術後までの期間を含み、手術前の期間は1日間~4日間、手術後の期間は1日間~21日間であり得る。したがって、この用語は、哺乳動物に対する手術の実施に起因して哺乳動物がストレスを経験する全期間を含む。
【0086】
本明細書で使用される場合、「過労」又は「ストレス」又は「哺乳動物がストレスを経験する状況」は、臨床医が哺乳動物に存在する1つ又は複数のストレス症状を診断する哺乳動物の臨床状態を指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「TLESR」は、一過性下部食道括約筋弛緩を意味する。下部食道括約筋の弛緩中、胃からの流体は食道に入ることができる。この事象を「逆流」と呼ぶ。
【0088】
本明細書中で使用される場合、「創傷治癒」は、創傷治癒の不良又は低下、すなわち、標準と比較してより長い時間を要する哺乳動物における創傷の治癒を意味する。
【0089】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」は、任意の哺乳動物を含み得る。いくつかの障害又は障害の組み合わせについて、「哺乳動物」はヒトを含んでいてもよい。いくつかの態様では、「哺乳動物」は、イヌ、ブタ、ネコ又はウマ、ウサギ、モルモット、ラット、鳥類、マウス及びウシを意味する。他の態様では、「哺乳動物」は、イヌ、ブタ、ネコ又はウマを意味する。
【0090】
本明細書で定義される化合物TT00、TT001及び/又はTT002、特にTT001は、同位体標識(又は「放射性標識」)されていてもよい。その場合、1つ又は複数の原子は、自然界に通常見られる(すなわち、天然に存在する)原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられる。組み込まれ得る適切な同位体の例としては、H(重水素については「D」とも表記される)、H(トリチウムについては「T」とも表記される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I及び131Iが挙げられる。使用される放射性核種は、その放射性標識誘導体の特定の用途に依存する。例えば、インビトロ受容体標識及び競合アッセイのために、H又は14Cを組み込んだ化合物が有用であることが多い。放射線撮像用途では、11C又は18Fが有用であることが多い。いくつかの実施形態では、放射性核種はHである。いくつかの実施形態では、放射性核種は14Cである。いくつかの実施形態では、放射性核種は11Cである。いくつかの実施形態では、放射性核種は18Fである。本発明は、イヌ、ブタ、ネコ又はウマなどの哺乳動物の診断に使用するための任意の同位体を含む。
【0091】
化合物TT00、TT001及び/又はTT002、特にTT001は、経口、非経口、頬側、膣、直腸、吸入、吹送、舌下、筋肉内、皮下、局所、鼻腔内、腹腔内、胸腔内、静脈内、硬膜外、髄腔内、脳室内及び関節内への注射によって投与することができる。
【0092】
最適な投与量及び投与頻度は、治療される特定の状態及びその重症度、種、特定の哺乳動物の年齢、性別、大きさ及び体重、食事、並びに一般的な身体状態、哺乳動物が服用している可能性のある他の医薬品、投与経路、製剤、並びに医師及び他の当業者に公知の様々な他の要因に依存する。
【0093】
投与される化合物TT00、TT001及び/又はTT002、特にTT001の量は、治療されている哺乳動物について変化し、1日当たり約0.01ng/kg体重~10mg/kg体重、又は0.1ng/kg~1mg/kgまで変化する。例えば、投与量は、本開示及び当業者の知識から当業者によって容易に確認され得る。したがって、当業者は、本明細書に記載の方法で投与される組成物中の化合物及び任意の添加剤、ビヒクル及び/又は担体の量を容易に決定することができる。
【0094】
化合物TT00、TT001及び/又はTT002は、参照により本明細書に含まれる米国特許第7,476,684号又は国際公開第2007/040982号に記載されている方法によって、遊離塩基又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物として調製することができる。
【0095】
化合物TT00、TT001及び/又はTT002、特にTT001から医薬組成物を調製するために、不活性な薬学的に許容される担体は、固体又は液体のいずれかであってもよい。固体形態の組成物には、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤及び坐剤が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、又は錠剤崩壊剤としても作用することができる1つ又は複数の物質であってもよく、封止材料であってもよい。
【0096】
液状組成物には、軟膏、クリーム、ゲル、水性液体が含まれ、これらは経皮パッチの内部に製剤化することができる。
【0097】
カプセルの調製方法は、以下の工程、
a)化合物TT00、TT001又はTT002、特にTT001を、水素カルシウム、ホスファート及びヒドロキシプロピルセルロースなどの添加剤と混合し、一定期間撹拌すること、
b)マンニトール及びクロスカルメロースナトリウムなどの更なる添加剤を添加すること、
c)水を添加し、混合物を造粒すること、
d)得られた顆粒を乾燥させること、
e)乾燥した顆粒を粉砕すること、
f)フマル酸ステアリルナトリウムなどの更なる添加剤を添加すること、
g)得られた混合物を混合すること、
h)混合物をカプセルに充填すること、又は混合物をプレスして錠剤にすることを含むことができる。
【0098】
医薬組成物
軟膏
TT001の重量:0.1~100ミリグラム
炭酸プロピレンの重量:50ミリグラム
固形パラフィンの重量:30ミリグラム
白色蜜蝋の重量:35ミリグラム
流動パラフィンの重量:110ミリグラム
白色軟パラフィンの重量:774.7ミリグラム
【0099】
クリーム
TT001の重量:0.1~100ミリグラム
プロピレングリコールの重量:100ミリグラム
ミリスチン酸イソプロピルの重量:50ミリグラム
セトステアリルアルコールの重量:52.5ミリグラム
クエン酸一水和物(e330)の重量:0.5ミリグラム
無水リン酸二ナトリウムの重量:0.6ミリグラム
水の重量:30又は100グラムの目標重量を達成するのに十分な量を添加する
流動パラフィンの重量:400ミリグラム
マクロゴールセトステアリルエーテルの重量:7.5ミリグラム
リン酸二ナトリウム十二水和物(e339)の重量:1.5ミリグラム
イミドウレアの重量:2ミリグラム
【0100】
静脈内投与のためのTT001の調製の製剤化方法投与、0.1~10mg/ml
製剤化方法は、0.262μmol/mL~26.2μmol/mLに相当する0.1mg/mL~10mg/mLの製剤中濃度で適用可能である。
【0101】
TT001のM.W.:381.8g/mol
TT001の溶解は中程度であり、完全な溶解には数時間かかる。
【0102】
ビヒクル
注射用水中の40%w/v HPβCD溶液の調製
賦形剤ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、クレプトース、Roquette社(HPβCD)400mg(40%w/v)
注射用水1mL(1.13g)
外観透明
密度1.13g/cm
【0103】
製剤
0.1~10mg/mlのTT001静脈内投与製剤の調製
TT001親形態0.1~10mg
ビヒクル(注射用水中の40%w/v HPβCD溶液)1mL(1.13g)まで
外観透明
密度1.13g/cm
コメント
TT001の溶解は中程度であり、完全な溶解には数時間かかる。
【0104】
軟膏
TT001の重量に対応する活性物質:0.1~50ミリグラム
炭酸プロピレンの重量:50ミリグラム
固形パラフィンの重量:30ミリグラム
白色蜜蝋の重量:35ミリグラム
流動パラフィンの重量:110ミリグラム
白色軟パラフィンの重量:774.7ミリグラム
【0105】
クリーム
TT001の重量:0.1~100ミリグラム
プロピレングリコールの重量:100ミリグラム
ミリスチン酸イソプロピルの重量:50ミリグラム
セトステアリルアルコールの重量:52.5ミリグラム
クエン酸一水和物(e330)の重量:0.5ミリグラム
無水リン酸二ナトリウムの重量:0.6ミリグラム
水の重量:30又は100グラムの目標重量を達成するのに十分な量を添加する
流動パラフィンの重量:400ミリグラム
マクロゴールセトステアリルエーテルの重量:7.5ミリグラム
リン酸二ナトリウム十二水和物(e339)の重量:1.5ミリグラム
イミドウレアの重量:2ミリグラム
【0106】
カプセル剤
【表1A】
【実施例
【0107】
例1
選択的去勢又は卵巣子宮摘出を受けているネコ又はイヌでは、TT001は回復期間の持続時間にプラスの効果を有する。
【0108】
不妊化後の回復を研究するために、単純な記述的尺度を使用したケージ行動スコアリングを使用した。第1の群のイヌに筋間(i.m.)のアセプロマジン及びペチジンを事前投与し、又は第2の群にはTT001も前投薬として加えた。
【0109】
事前投与の20~40分後、鎮静をSDS(単純な記述的尺度)でスコア化した。イヌをプロポフォールで誘導した。酸素中イソフルランで麻酔を維持した。術中鎮痛は、手術前にモルヒネを用いて行った。手術の終了時に、群1はメロキシカムを受け、群2は追加の治療を受けなかった。
【0110】
手順及び回復の最後にSDSをスコア化した。
【0111】
群2は以下を示した。
抜管までの時間が短くなった。
手術後に頭部を持ち上げるまでの時間が短くなった。
手術後にベッドから起き上がるまでの時間が短くなった。
手術後の自発的/自発的排尿開始時間が短くなった。
吐き気が少ない。
手術後に食事を開始するまでの時間が短くなった。
一般的に使用される麻酔プロトコルよりも低いコルチゾール値。
【0112】
例2
選択的去勢又は卵巣子宮摘出を受けているネコ又はイヌでは、TT001は回復期間の持続時間にプラスの効果を有する。
【0113】
不妊化後の回復を研究するために、単純な記述的尺度を使用したケージ行動スコアリングを使用した。第1の群のイヌにアセプロマジン及びペチジンをi.m.で事前投与し、メロキシカムを経口投与し、又は第2の群にはTT001も前投薬として加えた。
【0114】
事前投与の20~40分後、鎮静をSDS(単純な記述的尺度)でスコア化した。イヌをプロポフォールで誘導した。酸素中イソフルランで麻酔を維持した。術中鎮痛は、手術前にモルヒネを用いて行った。手術の終了時に、群1はメロキシカムの投与を継続し、群2はTT001及びメロキシカムの投与を継続した。更なる処置は行わなかった。
【0115】
手順及び回復の最後にSDSをスコア化した。
【0116】
群2は以下を示した。
抜管までの時間が群1よりも短くなった。
手術後に頭を持ち上げるまでの時間が群1よりも短くなった。
手術後にベッドから起き上がるまでの時間が群1よりも短くなった。
手術後の自発的/自発的排尿開始時間が群1よりも短くなった。
吐き気が群1よりも少ない。
手術後に食事を開始するまでの時間が群1よりも短くなった。
群1よりも低いコルチゾール値。及び
集中治療/PACU単位の時間がグループ1よりも短い。
【0117】
この研究では、TT001はLES圧に影響を示さなかった。この研究ではTT001で観察された嚥下に対する有意な効果もなかったが、より高い投与量では嚥下の減少に向かう数値的傾向があり、これはCNS媒介効果と調和し得る。
【0118】
例3、強制水泳試験
TT001は強制水泳試験で使用されている。プロトコルについては、Can A.,et al.,The Mouse Forced Swim Test,J Vis Exp.2012;(59):3638を参照されたい。
【0119】
表1の結果は、試験動物が依然としてプラセボ群よりも有意に短い期間であることを示す。
【0120】
【表1B】
【0121】
この試験は、TT001が応力を低減することを示す。さらに、試験動物のいずれも胃潰瘍の徴候又は粘膜のいかなる変化も有さなかった。
【0122】
例4、学習性無力感研究
Nomura S.et al.,Studies on animal model of depression:review and perspective,Review,Yakubutsu Seishin Kodo,1989 Dec;9(4):349-58。
【0123】
TT001をラットの学習性無力試験に使用した。結果を表2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
結果は、TT001がストレスを低下させ、胃潰瘍が現れなかったことを示している。したがって、TT001は、ストレス及び胃潰瘍に対する特異的な治療効果を有する。
【0126】
例5、ストレス及び実験-潰瘍
イヌにおけるTT001の毒性研究を、2、6、7又は31mg/kgを使用して最大52週間、イヌに対して行った。イヌにこの期間を通して胃管栄養を与え、期間を通して採血した。
【0127】
Balcome at al Contemporary Topics 2004 by the American Association for Laboratory Animal Science.Vol43.No.6/November 2004は、胃管栄養及び定期的な採血が動物に多くのストレスをもたらし、コルチゾール値の増加がこれらの状況下では正常であることを示した。さらに、動物は分離され、ストレスをさらに増加させる小さな領域で生活する。
【0128】
52週間後、52週間の間の環境及び取り扱いがストレスを引き起こしていたという事実にもかかわらず、いずれの動物も胃潰瘍の徴候を示さなかった。結果は、TT001がストレス、したがって胃潰瘍のリスクを軽減する物質であることを示している。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ、ネコ、ウマ又はブタにおける、手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び食欲不振を含む群から選択される1つ又は複数の障害と組み合わせた、ストレスの予防及び/又は治療に使用するための、化合物4-[5-[(rac)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン(TT00)、又は4-[5-[(1R)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン、(TT001)及び/又は4-[5-[(1S)-1-[5-(3-クロロフェニル)-3-イソオキサゾリル]エトキシ]-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピリジン(TT002)、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体、又はそれらの混合物。
【請求項2】
前記イヌ、ネコ、ウマ又はブタが手術条件下にある、請求項1に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項3】
前記イヌ、ネコ、ウマ又はブタが1つ又は複数の筋弛緩薬で処置された請求項1又は2に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項4】
前記化合物が手術前に投与される、請求項2又は3に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項5】
前記化合物が前記手術後に投与される、請求項2又は3に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項6】
潰瘍、腎臓及び/又は血管障害の予防及び/又は治療と組み合わせた、請求項1からのいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項7】
創傷治癒及び/又は食欲不振の予防及び/又は治療と組み合わせた、請求項1からのいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項8】
手術による胃食道逆流の予防及び/又は治療と組み合わせた、請求項1からのいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項9】
不安症と組み合わせた、請求項1からのいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項10】
手術による胃食道逆流及び不安症の予防及び/又は治療と組み合わせた、請求項1からのいずれか一項に記載の使用のための化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物。
【請求項11】
手術による胃食道逆流、不安症、潰瘍、腎臓及び血管障害、創傷治癒及び食欲不振を含む1つ又は複数の障害と組み合わせた、ストレス、の予防及び/又は治療に使用するための、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤又は担体と組み合わせた、化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物を含む医薬組成物。
【請求項12】
(i)化合物TT00、TT001及び/又はTT002、或いはその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは同位体若しくはそれらの混合物、(ii)更なる治療薬、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び(iii)薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤、を含む請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
(i)化合物TT00、TT001及び/又はTT002、或いはその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは同位体若しくはそれらの混合物、並びに薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤、(ii)更なる治療薬、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤、を含む請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記更なる治療薬が、ブチルピロリジン、オキシカム、プロピオン酸誘導体、フェナム酸、コキシブ、及び他の非ステロイド性抗炎症薬を含む群から選択されるNSAIDである、請求項11から13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記更なる治療薬が、トラマドール又はタペンタドールを含む群から選択されるオピエートである、請求項11から13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記更なる治療薬が抗リウマチ薬である、請求項11から13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
化合物TT00、TT001及び/又はTT002が、0.1~5.0mg/kgの用量でイヌ、ネコ、ウマ又はブタに投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物、或いは請求項11から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記化合物が、TT001、又はその塩酸塩である、請求項1から10、17のいずれか一項に記載の化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくは混合物、或いは請求項11から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
イヌにおける使用のための、請求項1から10、17、18のいずれか一項に記載の化合物TT00、TT001及び/又はTT002、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体若しくはそれらの混合物、或いは請求項11から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】